(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】メタルマスクの製造に適した高平坦度金属箔材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21B 1/40 20060101AFI20240412BHJP
C21D 9/46 20060101ALI20240412BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20240412BHJP
C22C 19/07 20060101ALI20240412BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20240412BHJP
C22C 1/04 20230101ALI20240412BHJP
C22C 33/02 20060101ALI20240412BHJP
B22F 9/08 20060101ALI20240412BHJP
C22C 1/02 20060101ALI20240412BHJP
C22F 1/10 20060101ALI20240412BHJP
B21B 3/00 20060101ALI20240412BHJP
C22B 9/16 20060101ALI20240412BHJP
C22B 23/02 20060101ALI20240412BHJP
C22B 34/32 20060101ALI20240412BHJP
C22B 47/00 20060101ALI20240412BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20240412BHJP
【FI】
B21B1/40
C21D9/46 P
C22C38/00 302R
C22C19/07 Z
B22F3/105
C22C1/04 B
C22C33/02 B
B22F9/08 A
C22C1/02 503G
C22F1/10 J
B21B3/00 A
C22B9/16
C22B23/02
C22B34/32
C22B47/00
C22F1/00 606
C22F1/00 622
C22F1/00 623
C22F1/00 650E
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C22F1/00 687
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 691Z
(21)【出願番号】P 2022150759
(22)【出願日】2022-09-21
【審査請求日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】202111108320.5
(32)【優先日】2021-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210129423.8
(32)【優先日】2022-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210196923.3
(32)【優先日】2022-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522374674
【氏名又は名称】寰采星科技(寧波)有限公司
【氏名又は名称原語表記】Magic Star Technology(Ningbo)Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】Xinlian Village, Gaoqiao Town, Haishu District, Ningbo City, Zhejiang Province, China
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】陳鼎国
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/159748(WO,A1)
【文献】特開2021-014639(JP,A)
【文献】特開平02-104624(JP,A)
【文献】特開2021-088743(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0127384(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 1/40
B21B 3/00
B22F 10/00-12/90
B22F 9/08
C21D 9/46
C22C 38/00
C22C 19/07
C22C 1/04
C22C 33/02
B22F 9/08
C22C 1/02
C22F 1/10
C22B 9/16
C22B 23/02
C22B 34/32
C22B 47/00
C22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の加工プロセス(ステップ)を有するFMM製造に適した高平坦度金属箔材の製造方法である。
S101_金属粗箔素材成形ステップ;成形した金属粗箔の材質は、
インバー合金である。
インバー合金の組成は、質量%で、Ni:35~39wt%、残部はFeと不可避的不純
物である。
S102_精密圧延ステップ;金属粗箔素材を少なくとも1回圧延し、所望の精密な厚さと平坦な表面を有する高平坦度金属箔材とし、圧延率の範囲が5~80%の間であり、精密圧延後に成形された高平坦度金属箔厚を5μm~5mmとする。
S103_熱処理ステップ;処理装置は、予め設定された温度及び時間に基づいて、精密圧延された金属箔材に対して、少なくとも1回の熱処理加工を実施する。最終熱処理はアニール、応力除去、及び材料安定化時効処理の少なくとも1つを選択し、且つ、熱処理雰囲気は乾燥した不活性雰囲気又は還元雰囲気または真空環境を選択し、予め設定された温度範囲は60±5℃~1050±25℃、予め設定された時間は2秒~5時間。
S104_テンションレベリングのステップ;テンションレベラーを用いて圧延及び熱処理された金属箔材に対して、少なくとも1回のテンションレベリングを実施する。テンションレベリングによる、テンション範囲は3~30kgf/mm
2であり、また、乾燥した還元ガス、及び酸素含有量が100 ppm以下の雰囲気下、または還元雰囲気下、または真空環境下で、得られた金属箔材に残留応力を除去処理を行い、処理温度は105±50oC、時間は2~60分。
S105_テンションレベリング処理が終了すると、高平坦度金属箔材が得られ、かつ連続成形中にロール状の金属箔材を形成するステップ;
上記ステップ調製により
高平坦度インバー合金金属箔材を得て、その一部を断裁採取し、平坦度検査、残留応力検査と結晶相組織検査を行った。
平坦度検査において、
高平坦度インバー合金金属箔材の、両端部における平均三次元平坦度(HSR)は1.5%未満であり、中央部の平均三次元平坦度は1%未満であった。
残留応力試験において、高平坦度インバー合金金属箔材の残留応力は200Mpa以下であった。
結晶相組織検査において、高平坦度インバー合金金属箔材の結晶粒組織の結晶方位は、(200)、(220)、及び(311)の3方向に集中し、それらの主要な結晶方位の結晶粒の体積割合は其々5%~50%であった。
【請求項2】
ステップS101において、金属粗箔素材は、
S1011_清浄な金属粉末に対して粒径選別を行った後、レーザー溶接加工装置の金属粉末ディスペンサーに充填する金属粉末充填のステップと、
S1012_金属粉末ディスペンサーにより、レーザー溶接加工装置内の作業台上の基板に金属粉末を均一に注入して金属粉末層を形成し、さらにレーザー溶接加工装置内のレーザーフラットベッドスキャナーにより金属粉末層を金属粗箔として溶接する金属粗箔成形のステップと、
S1013_熱処理装置は、予め設定された温度及び時間に基づいて、金属粗箔を少なくとも1回の一次熱処理加工を行って金属粗箔素材を成形する。この際、ステップS102に進む一次熱処理のステップ、
これらの加工プロセス(ステップ)によって成形されることを特徴とする、請求項1に記載のFMM製造に適した高平坦度金属箔材の製造方法。
【請求項3】
ステップS1013において、一次熱処理は、アニール処理、応力除去処理及び材料安定化時効処理の少なくとも1つを用い、また、熱処理雰囲気は、乾燥した不活性雰囲気または還元雰囲気または真空環境を用い、予め設定された温度範囲は60±5℃~1050±25℃、予め設定された時間は2秒~5時間である、請求項2に記載のFMM製造に適した高平坦度金属箔材の製造方法。
【請求項4】
金属粉末形成ステップをさらに含み、その具体的な生産プロセス(ステップ)は、
S99_選択された高純度金属材料を真空溶融によって溶融し、金属材料を溶融状態にする金属溶融のステップと、
S100_溶融状態の金属を霧化、冷却、凝固させると、微細で清浄な金属粉末となる金属粉末製造のステップ、
これらの加工プロセス(ステップ)を含むことを特徴とする、請求項3に記載のFMM製造に適した高平坦度金属箔材の製造方法。
【請求項5】
ステップS99において、純度が99%より高く、酸素含有量<2000ppmまたは酸素含有量<200ppmの純金属原料を選択し、成分や比率に応じて配合した後、真空溶融炉内に投入して溶融させ、溶融時、温度範囲は350℃~1700℃、真空度範囲は0.01~10
4Paまたは10
-4~100mbar、溶融パワーは200~1200KWであることを特徴とする、請求項4に記載のFMM製造に適した高平坦度金属箔材の製造方法。
【請求項6】
ステップS101において、金属粗箔素材は、
S1014_粗製して得られた金属原料または回収金属原料を選別して洗浄し、溶融する合金の成分に応じて金属原料を配合して調整し、かつ
還元剤を添加して金属を溶融し、溶融後、溶融した金属液を鋳型に流し込んで凝固させてインゴットにする金属溶融のステップと、
S1015_溶融されたインゴットを精錬して、金属インゴットを形成する精錬のステップと、
S1016_精錬された金属インゴット材料を高温で鍛造して、大きな円筒形の金属インゴットを四角形の金属ブロックに鍛造する熱間鍛造のステップと、
S1017_熱間鍛造された金属ブロックを表面処理し、連続熱間圧延を実施して、金属ブロックをミリメートルからセンチメートル単位の厚さの金属板に製造する熱間圧延のステップと、
S1018_熱間圧延された金属板に対して、少なくとも1回の熱処理を実施し、結晶構造及び内部応力を調整する一次熱処理のステップと、
S1019_金属板の表面処理後、表面酸化層を除去して洗浄し、洗浄終了後、金属板に対して少なくとも1回の冷間圧延処理を行う冷間圧延のステップと、
S1020_冷間圧延された金属板に対して、少なくとも1回の熱処理を実施し、結晶構造及び内部応力を調整し、金属粗箔素材を成形し、この際、ステップS102に進む二次熱処理のステップ、
これらの加工プロセス(ステップ)によって成形されることを特徴とする、請求項1に記載のFMM製造に適した高平坦度金属箔材の製造方法。
【請求項7】
ステップS101において、金属粗箔素材は、
S1021_化学洗浄剤を用いてステンレス基板の表面の残留物、汚染物、有機物や酸化層を除去し、除去完了後に水洗いし、その後、さらに空気乾燥させる金属基板洗浄のステップと、
S1022_高濃度酸溶液で金属基板の表面を浸漬させ、浸漬した後に水洗いし、その後、さらに空気乾燥させる金属基板の前処理のステップと、
S1023_金属基板を負極に接続した後、電鋳槽に投入して電鋳を行い、金属粗箔基材を形成する精密電鋳のステップと、
S1024_電鋳により形成された金属粗箔基材上の電解液を水で洗浄し、洗浄終了後に空気乾燥させる金属粗箔基材の洗浄ステップと、
S1025_洗浄後の金属粗箔基材を熱処理環境に置き、結晶相の微細構造を調整し、内部応力を除去する初回熱処理のステップと、一次熱処理は、アニール処理、応力除去処理及び材料安定化時効処理の少なくとも1つを用い、また、熱処理雰囲気は、乾燥した不活性雰囲気または還元雰囲気または真空環境を用い、予め設定された温度範囲は300℃~700℃、予め設定された時間は2秒~2時間であり、
S1026_一次熱処理後、金属粗箔基材を金属基板から機械的に分離して金属粗箔素材を成形し、この時、ステップS102に進む金属基板剥離のステップ、これらの加工プロセス(ステップ)によって成形されることを特徴とする、
請求項1に記載のFMM製造に適した高平坦度金属箔材の製造方法。
【請求項8】
ステップS103において、予め設定された温度範囲は300±5℃~775±25℃を選択し、予め設定された時間は2秒~1時間であることを特徴とする、請求項7に記載のFMM製造に適した高平坦度金属箔材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、FMM(Fine Metal Mask、以下FMMと称する)の製造技術の分野に関し、特に、メタルマスクの製造に適した高平坦度金属箔材の製造方法である。
【背景技術】
【0002】
OLED(Organic Light Emitting Diode)は、有機発光ダイオードであり、液晶ディスプレイに比べて小型軽量、広視野角、高速応答、低温耐性や高発光効率などの利点があり、次世代の新しいディスプレイ技術として期待されている。真空熱蒸着技術を用いて有機エレクトロルミネッセンス薄膜デバイスを製造することは一般的であり、すなわち、真空環境中で有機半導体材料を加熱し、その材料は熱によって昇華し、特殊なサブピクセルパターンを有するメタルマスクを介することにより、設計形状を有する有機薄膜デバイス積層構造を基板表面に形成する。様々な材料を連続して蒸着成膜した上で、積層構造の両端にそれぞれアノード及びカソードを蒸着させることにより、多層の薄膜を有するOLED発光デバイス構造を形成することができる。OLED発光デバイスの製造において最も重要な部材は、高平坦度の金属箔材で製造されたFMMである。
【0003】
多段階の従来の熱間圧延、熱処理や冷間圧延を経て、所望の厚さに調整し、熱処理により製造された超薄型金属シートは、通常、厚さ20~100μmの鉄-ニッケル合金である。この超薄型金属箔材を用い、フォトリソグラフィー(photolithography)、ウェットエッチング(wet etching)を施し、所望のAMOLEDディスプレイにおける発光サブピクセルのOLED発光デバイスの設計に対応した多数の微細孔パターンを超薄型金属シートに形成し、FMMを製作する。溶融や多段階の熱間圧延、熱処理、冷間圧延、及び熱処理の製造工程を経て生産される超薄型金属箔材には、多くの不純物や介在物及び汚染物質が含まれ、FMMの製造に問題や良品率の低下を引き起こす。使用する原材料の純度や清浄度、及び最終的に多段階の圧延工程で作られた金属箔材の品質や厚さはエッチング精度に影響を及ぼす。現在、FMMは400~800ppiを超える解像度に達することができ、その金属箔材の製造には多くの設備投資が必要であり、製造工程と製造過程が長く、製造コストが高くなる。一方で、FMM生産良品率は常に高くなく、高平坦度の薄い(≦0.1mm)超薄型金属箔材の良品率が40%未満という事が大きく影響を与えている。また、既存の最適化されていない方法で製造された超薄型金属箔材は、平坦度や残留応力が理想的でないため、良品率が低下し、FMMの製造に適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記の技術的な問題を解決し、FMMの製造に適した高平坦度超薄型金属箔材の製造方法を提供することであり、その具体的な解決手段は、以下の通りである。
【0005】
本発明によって設計されたFMMの製造に適した高平坦度金属箔材の製造方法は、具体的には次の手順がある。
【0006】
S101_金属粗箔素材の成形;金属粗箔の材質は、インバー合金、鉄-ニッケル-コバルト合金、鉄-ニッケル合金、鉄-ニッケル-マンガン合金、鉄-ニッケル-コバルト合金、鉄-コバルト-クロム合金である。
【0007】
S102_精密圧延;金属粗箔素材を少なくとも1回圧延し、所望の精密な厚さと平坦な表面を有する高平坦度金属箔材とし、精密圧延後に成形された高平坦度金属箔の厚さは5μm~5mmである。
【0008】
S103_最終熱処理;熱処理装置は、予め設定された温度及び時間に基づいて、精密圧延された金属箔材に対して、少なくとも1回の熱処理加工を実施する。
【0009】
S104_テンションレベリング;テンションレベラーを用いて圧延及び熱処理された金属箔材に対して、少なくとも1回のテンションレベリングを実施する。
【0010】
S105_テンションレベリング処理が終了すると、高平坦度金属箔材が得られ、かつ連続成形中にロール状の金属箔材を形成する。
【0011】
好ましくは、インバー合金の組成は、質量%で、Ni=35~39wt.%、残部がFe及び不可避不純物。前記、鉄-ニッケル合金の組成は、質量%で、Ni=42~46wt.%、残部がFe及び他の微量元素。前記、鉄-ニッケル-コバルト合金の組成は、質量%で、Ni=31~39wt.%、Co=0.02~6wt.%、残部がFe及び他の微量元素。前記、鉄-ニッケル-マンガンの組成は、質量%で、Ni=35~37wt.%、Mn、Si、Crの合計量が0.001~1wt.%、残部がFe及び他の微量元素。前記、鉄-コバルト-クロムの組成は、質量%で、Co=52~54wt.%、Cr=9~10wt.%、残部がFe及び他の微量元素である。
【0012】
好ましくは、ステップS104において、テンションレベリングを実施する際、テンションレベラーによる張力範囲は3~30kgf/mm2であり、また、乾燥した還元ガス、及び酸素含有量100ppm以下の雰囲気、または還元雰囲気、または真空環境下で、得られた金属箔材に残留応力の除去処理を行い、その処理温度は105±50℃、時間は2~60分である。
【0013】
好ましくは、ステップS101において、金属粗箔素材を成形するステップは以下の通りである。
【0014】
S1011_金属粉末充填;清浄な金属粉末に対して粒径選別を行った後、レーザー溶接加工装置の金属粉末ディスペンサーに充填する。
【0015】
S1012_金属粗箔成形;金属粉末ディスペンサーにより、レーザー溶接加工装置内の作業台上の基板に金属粉末を均一に注入して金属粉末層を形成し、さらにレーザー溶接加工装置内のレーザーフラットベッドスキャナーにより金属粉末層を金属粗箔として溶接する。
【0016】
S1013_一次熱処理;熱処理装置は、予め設定された温度及び時間に基づいて、金属粗箔を少なくとも1回の一次熱処理加工を行って金属粗箔素材を成形する。この際、ステップS102に進む。
【0017】
好ましくは、ステップS1013において、一次熱処理は、アニール処理、応力除去処理及び材料安定化時効処理の少なくとも1つを用い、また、熱処理雰囲気は乾燥した不活性雰囲気または還元雰囲気または真空環境を用い、予め設定された温度範囲は60±5℃~1050±25℃、予め設定された時間は2秒~5時間である。
【0018】
ステップS103において、最終熱処理は、アニール処理、応力除去処理及び材料安定化時効処理の内、少なくとも1つを用い、また、熱処理雰囲気は、乾燥した不活性雰囲気または還元雰囲気または真空環境を用い、予め設定された温度範囲は60±5℃~1050±25℃、予め設定された時間は2秒~5時間である。
【0019】
好ましくは、金属粉末形成ステップをさらに含み、それは、具体的には以下の通りである。
【0020】
S99_金属溶融;選択された高純度金属材料を真空溶融によって溶融し、金属材料を溶融状態にする。
【0021】
S100_金属粉末製造;溶融状態の金属を霧化、冷却、凝固させると、微細で清浄な金属粉末となる。
【0022】
好ましくは、ステップS99において、純度が99%より高く、酸素含有量<2000ppmまたは酸素含有量<200ppmの純金属原料を選択し、成分や比率に応じて配合した後、真空溶融炉内に投入して溶融させる。溶融時、温度範囲は350℃~1700℃、真空度範囲は0.01~104Paまたは10-4~100mbar、溶融パワーは200~1200KWである。
【0023】
好ましくは、ステップS101において、金属粗箔素材の成形手順は以下の通りである。
【0024】
S1014_金属溶融;粗製して得られた金属原料または回収金属原料を選別して洗浄し、溶融する合金の成分に応じて金属原料を配合して調整し、かつ還元剤などを添加して金属を溶融し、溶融後、溶融した金属液を鋳型に流し込んで凝固させてインゴットにする。
【0025】
S1015、精錬_溶融されたインゴットを精錬して、金属インゴットを形成する。
【0026】
S1016_熱間鍛造;精錬された金属インゴット材料を高温鍛造し、大きな円筒形の金属インゴットを四角形の金属ブロックに鍛造する。
【0027】
S1017_熱間圧延;熱間鍛造された金属ブロックを表面処理し、連続熱間圧延を実施して、金属ブロックをミリメートルからセンチメートル単位の厚さの金属板に製造する。
【0028】
S1018_一次熱処理;熱間圧延された金属板に対して、少なくとも1回の熱処理を実施し、結晶構造及び内部応力を調整する。
【0029】
S1019_冷間圧延;金属板の表面処理後、表面酸化層を除去して洗浄し、洗浄終了後、金属板に対して少なくとも1回の冷間圧延処理を行う。
【0030】
S1020_二次熱処理;冷間圧延された金属板に対して少なくとも1回の熱処理を実施して結晶構造及び内部応力を調整し、金属粗箔素材を成形する。この際、ステップS102に進む。
【0031】
好ましくは、ステップS101において、金属粗箔素材の成形手順は以下の通りである。
【0032】
S1021_金属基板洗浄;化学洗浄剤を用いてステンレス基板の表面の残留物、汚染物、有機物や酸化層を除去し、除去完了後に水洗いし、その後、さらに空気乾燥させる。
【0033】
S1022_金属基板前処理;高濃度酸溶液で金属基板の表面を浸漬させ、浸漬した後に水洗いし、その後、さらに空気乾燥させる。
【0034】
S1023_精密電鋳;金属基板を負極に接続した後、電鋳槽に投入して電鋳を行い、金属粗箔基材を形成する。
【0035】
S1024_金属粗箔基材洗浄;電鋳により形成された金属粗箔基材上の電解液を水で洗浄し、洗浄終了後に空気乾燥させる。
【0036】
S1025_一次熱処理;洗浄後の金属粗箔基材を熱処理環境に置き、結晶相の微細構造を調整し、内部応力を除去する。
【0037】
S1026_金属基板剥離;一次熱処理後、金属粗箔基材を金属基板から機械的に分離して金属粗箔素材を成形する。この際、ステップS102に進む。
【0038】
好ましくは、ステップS1025において、一次熱処理は、アニール処理、応力除去処理及び材料安定化時効処理の少なくとも1つを用い、また、熱処理雰囲気は、乾燥した不活性雰囲気または還元雰囲気または真空環境を用い、予め設定された温度範囲は300℃~700℃、予め設定された時間は2秒~2時間である。
【0039】
ステップS103において、最終熱処理は、アニール処理、応力除去処理及び材料安定化時効処理の少なくとも1つを用い、また、熱処理雰囲気は、乾燥した不活性雰囲気または還元雰囲気または真空環境を用い、予め設定された温度範囲は300±5℃~775±25℃、予め設定された時間は2秒~1時間である。
【0040】
好ましくは、高平坦度インバー合金の金属箔材を製造し得て、高平坦度インバー合金の金属箔材の一部を切り取って、平坦度・残留応力測定及び結晶相組織分析を行う。
【0041】
平坦度を測定したところ、高平坦度インバー合金の金属箔材の両端のwaviness領域の平均三次元平坦度が1.5%未満、その中央領域の平均三次元平坦度が1%未満である。
【0042】
残留応力を測定したところ、高平坦度インバー合金の金属箔材が200MPa以下である。
【0043】
結晶相組織を分析したところ、高平坦度インバー合金の金属箔材の結晶粒組織の結晶粒方向は、(200)、(220)及び(311)の3つの方向に集中し、かつ金属箔材中の主要結晶粒方向の結晶粒の体積比率はそれぞれ5%~50%である。
【0044】
本発明は、従来技術と比較して以下の有益な効果を有する。
【0045】
製造された金属箔材は、平坦度が高く、且つ残留応力が低く、金属箔材の品質及び性能を向上させ、FMM製造、及び、その後のAMOLED製造の信頼性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】高平坦度金属箔材の製造工程を示すフローチャート(一)
【
図2】高平坦度金属箔材の製造工程を示すフローチャート(二)
【
図3】高平坦度金属箔材の製造工程を示すフローチャート(三)
【
図4】高平坦度金属箔材の製造工程を示すフローチャート(四)
【
図5】レーザー溶融金属箔材製造設備の構造を示す図
【
図6】インバー金属粉末のレーザー加工溶融の一例を示す模式図
【
図7】連続レーザー溶融による金属箔製造の工程を示すフローチャート
【
図8】大型高精密メタルマスクスティックの画面領域の縦方向全長と横方向全長の測定例を示す図
【
図15】高平坦度金属箔材の平均三次元平坦度(Hump Size Ratio,HSR)と、それによって製造されたFMMスティックの特性を示す模式図
【
図16】高平坦度金属箔材の結晶相微細構造の特徴を示す模式図
【
図17】FMMスティックの製造を示すフローチャート(一)
【
図18】ロール・ツー・ロールFMMスティックの製造を示すフローチャート(一)
【
図19】FMMスティックの製造を示すフローチャート(二)
【
図20】金属箔材レーザー微細孔加工設備の構造を示す模式図
【
図21】シート型レーザー微細孔加工によるFMMスティックの製造プロセスを示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0047】
図中において、金属粉末ディスペンサー1、金属粉末層2、基板3、作業台4、レーザー装置5、X~Y平面走査反射ミラー6、集束光学レンズ群7、金属粗箔8、環境9、金属箔片材211、加工用キャビティ412、環境雰囲気413、光学窓414、レーザー装置415、レーザービームホモゲナイザー416、フォトマスク417、レンズシステム418、反射ミラー419、投射ミラー群420。
【0048】
以下、本発明の実施例における図面を参照しながら、本発明の実施例における技術的解決手段を明確かつ完全に説明するが、当然ながら、説明された実施例は本発明の実施例の一部に過ぎず、その全てではない。本発明における実施例に基づき、当業者によって得られた他の全ての実施例は、本発明の保護範囲に含まれる。
【0049】
実施例1
図1に示すように、本実施例で記載されたFMMの製造に適した高平坦度金属箔材の製造方法は、具体的には以下の工程(ステップ)を含む。
【0050】
S101_金属粗箔素材成形のステップ;成形した金属粗箔の材質は、インバー合金、鉄-ニッケル-コバルト合金、鉄-ニッケル合金、鉄-ニッケル-マンガン合金、鉄-ニッケル-コバルト合金、鉄-コバルト-クロム合金である。
【0051】
S102_精密圧延のステップ;金属粗箔素材を少なくとも1回圧延し、所望の精密な厚さと平坦な表面を有する高平坦度金属箔材を成形し、精密圧延後に成形された高平坦度金属箔厚を5μm~5mmとする。
【0052】
S103_最終熱処理のステップ;熱処理装置は、予め設定された温度及び時間に基づいて、精密圧延された金属箔材に対して、少なくとも1回の熱処理加工を実施する。
【0053】
S104_テンションレベリングのステップ;テンションレベラーを用いて圧延及び熱処理された金属箔材に対して、少なくとも1回のテンションレベリングを実施し、テンションレベリング後に得られた金属箔材は、高平坦度と15~50μmの厚さを有し、目標厚さが非常に薄い場合、または初期の粗金属箔材の厚さが大きい場合、目標となる高平坦度金属箔材の所望の厚さを得るために、ステップS102及びステップS103を複数回繰り返して行うことができる。
【0054】
S105_テンションレベリング処理が終了すると、高平坦度金属箔材が得られ、かつ連続成形中にロール状の金属箔材を形成する。
【0055】
好ましくは、ステップS104において、テンションレベリングを実施する際、テンションレベラーによる張力範囲は3~30kgf/mm2であり、また、乾燥した還元ガス、及び酸素含有量100ppm以下の雰囲気、または還元雰囲気、または真空環境下で、得られた金属箔材に残留応力の除去処理を行い、その処理温度は105±50℃、時間は2~60分である。ここで、還元雰囲気は、例えばアルゴン~水素の混合、或いは水素雰囲気であり、不活性雰囲気の酸素含有量は100ppm以下とする必要がある。
【0056】
本実施例の製造方法によれば、低熱膨張係数を有する金属箔材を製造することができ、例えば、質量%で、Ni=35~39wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であるインバー合金。質量%で、Ni=42~46wt.%、残部がFe及び他の微量元素である前記鉄-ニッケル合金。質量%で、Ni=31~39wt.%、Co=0.02~6wt.%、残部がFe及び他の微量元素である前記鉄-ニッケル-コバルト合金。質量%で、Ni=35~37wt.%、Mn、Si、Crの合計量が0.001~1wt.%、残部がFe及び他の微量元素である前記鉄-ニッケル-マンガン合金。質量%で、Co=52~54wt.%、Cr=9~10wt.%、残部がFe及び他の微量元素である前記鉄-コバルト-クロム合金。及び、他の超合金などの金属箔材を製造することもできる。得られたインバー合金の物理的特性は、伝統的な材料と同等であることができるが、清浄度が高く、コストが低く、製造工期が短く、特にFMMの製造に適している。
【0057】
本実施例では、高平坦度インバー合金の金属箔材を製造し得て、高平坦度インバー合金の金属箔材の一部を切り取って、平坦度・残留応力測定及び結晶相組織分析を行った。
【0058】
平坦度を測定したところ、高平坦度インバー合金の金属箔材の両端のwaviness領域の平均三次元平坦度が1.5%未満、その中央領域の平均三次元平坦度が1%未満である。
【0059】
残留応力を測定したところ、高平坦度インバー合金の金属箔材が200MPa以下である。
【0060】
結晶相組織を分析したところ、高平坦度インバー合金の金属箔材の結晶粒組織の結晶粒方向は、(200)、(220)及び(311)の3つの方向に集中し、かつ金属箔材中の主要結晶粒方向の結晶粒の体積比率はそれぞれ5%~50%である。
【0061】
具体的には、製造された高平坦度金属箔材の平坦度は、三次元の表面平坦度測定器で測定した三次元平坦度のデータから求めることができ、三次元平坦度(Hump Size Ratio,HSR)の式は次のとおりである。
HSR=(((H*(X+Y))/(X*Y))*100
【0062】
Hは、箔材上の凸部領域の高さであり、Xは、圧延方向からの断面で測定した凸部領域の幅であり、Yは、幅方向(横方向)からの断面で測定した凸部領域の幅である。
【0063】
図8に示すように、大面積FMMスティック上の画面領域(cell)ごとにエッジ部に存在する8つのサブピクセル点を測定し、製造される高平坦度金属箔材の縦方向全長TP
x及び横方向全長TP
yと設計値との差分、及びそれらの間(例えばTP
x1、TP
x2及びTP
x3の間、又はTP
y1~TP
y15の間)の差分はすべて数ミクロンの範囲内である必要がある。TP
x1とTP
x3の縦方向全長の差分を±20μm以内、横方向全長のTP
y間のレンジ(TP
ymax.~TP
ymin.)を±5μm以内にするだけで、高品質のスマートフォン用のAMOLEDディスプレイを製造することが可能である。
【0064】
縦方向全長及び横方向全長の定義の例は次のとおりである。
Tpx1=(点1~15間の測定距離~点1~15間の理論距離)
Tpx2=(点25~16間の測定距離~点25~16間の理論距離)
Tpx3=(点26~40間の測定距離~点26~40間の理論距離)
Tpy1=(点1~26間の測定距離~点1~26間の理論距離)
Tpy7=(点7~32間の測定距離~点7~32間の理論距離)
Tpy15=(点15~40間の測定距離~点15~40間の理論距離)
【0065】
三次元平坦度(HSR)は、プローブ型高度計、光学高度計、表面高度計などで測定することができる。得られたデータは、三次元等高線図で表すことができ、
図9~
図11、
図12~
図14及び
図15に示すように、大面積の精密圧延によって製造された高平坦度金属箔材は、内部応力の分布が不均一であるため、表面の高さが異なる凸部領域として表示される。両端Edge部のWaviness領域及び中央の主要な凸部領域の全てを1つずつ測定し、統計した後、両端Edge部のWavinessの個々、平均三次元平坦度とその面積の割合、及び中央領域の凸部領域の個々、平均三次元平坦度とその面積の割合、並びに凸部がない平坦領域の面積割合を算出することができる。
【0066】
縦方向全長(Total Pitch)の差分が小さく(縦方向全長の差分(TPx1~TPx3)~<±20μm)、横方向全長の差分((TPymax.~TPymin.)<±5μm)が小さいFMMスティックを製造する場合、両端のwaviness領域の平均三次元平坦度は1.5%以下、好ましくは1%未満である必要があり、中央の平均三次元平坦度(HSR)は1%以下、好ましくは0.8%未満である必要がある。
【0067】
高平坦度金属箔材の残留応力も低くする必要があるため、高精度X線回折(XRD)または二次元ナノ圧痕計で測定することができ、精密蒸着シャドーマスクとしての機能に影響するエッチング後の箔材の局部応力解放と変形を低減するために、その残留応力は、一般的に200MPa以下、好ましくは140MPa未満である必要がある。高平坦度金属箔材は自然状態で、500mm取り、カールさせずに大理石の台上に平らに置き、材料の反りの高さ≦15mmは合格である。或いは、1mの金属箔材を吊り下げて湾曲量を測定し、総湾曲量は≦30mmを合格とする。金属箔材の片面をその半分の厚さにエッチングして、その内部応力分布のばらつきを最大化する場合、例えば、その任意の一面から1/2の厚さにエッチングした後、60x250mmのものを、カールさせずに大理石の台上に平らに置き、材料の反りの高さは≦40mm必要である。
【0068】
最後の精密圧延及び熱処理後、その結晶構造には、優先的に配向する結晶粒の結晶相組織が存在し、
図16に示すように、従来のインバー鋼の多結晶微細結晶相構造の主結晶相は、
図16のインバーの標準サンプルに示すように、結晶粒方向(111)の結晶粒体積が約50%、結晶粒方向(200)の結晶粒体積が約25%、結晶粒方向(220)及び結晶粒方向(311)の結晶粒の体積がそれぞれ約10%を占める。結晶粒方向(222)の結晶粒の割合は、5%未満である。しかし、実施例1~実施例3で製造された高平坦度インバー金属箔材の特徴として、優先的に配向した結晶粒組織の結晶粒方向は、(200)、(220)及び(311)の3つの方向に集中し、組成部により、精密圧延及びその後のアニール熱処理が異なり、結晶粒方向(200)の結晶粒体積は≧30%、結晶粒方向(220)の結晶粒体積は≧9%、結晶粒方向(311)の結晶粒体積は≧10%(体積%、volume%)であり、本発明の高平坦金属箔材の結晶粒方向(111)の結晶粒は10%より小さく、従来のインバー材料の比較的優先的に配向した結晶相組織と比較して、高平坦度金属箔材の物性及びその後のFMMの精密微細孔のパターン化に重要な影響を与える。
【0069】
テンションレベリングにより、精密圧延のみで製造された金属薄板の平坦度が悪いという技術的課題が解決されるが、この技術的課題は、精密圧延して製造された金属薄板の加工プロセスでは、特に精密圧延時に、鋼帯の上、下両面の縦方向(圧延方向)の延びが等しくないためであるか、中央の幅方向の不均一な塑性変形で生じる残留応力によるものである。この残留応力が大きすぎると、箔材に「盛り上がり」の凸部領域が形成され、または切断したエッジ部に反りの領域が形成される。FMMの製造に適した金属箔材を製造する場合、平坦度を確保するために、テンションレベリング(S104)の前/或いは(及び)後で低温熱処理を施して、残留応力を除去してもよい。
【0070】
実施例2
図2に示すように、本実施例で記載されたFMMの製造に適した高平坦度金属箔材の製造方法は、実施例1と大体同様であるが、その相違点として、ステップS101において、金属粗箔素材の成形方法は以下の通りである:
【0071】
S1011_金属粉末充填;清浄な金属粉末に対して粒径選別を行った後、レーザー溶接加工装置の金属粉末ディスペンサーに充填し、ここで、選別時に所望の粉末粒径範囲内の金属粉末を選択する。
【0072】
S1012_金属粗箔成形;金属粉末ディスペンサーにより、レーザー溶接加工装置内の作業台上の基板に金属粉末を均一に注入して金属粉末層を形成し、さらにレーザー溶接加工装置内のレーザーフラットベッドスキャナーにより金属粉末層を金属粗箔として溶接し、ここで、敷かれた金属粉末層の厚さの範囲は1~300μmであり、レーザー溶接した単一層の薄金属粗箔の厚さは、使用される金属粉末の粒径及びレーザーエネルギーによって決められ、通常、レーザー溶接により5μm~5mmの厚さの高清浄度金属粗箔を製造することができ、レーザー溶接設備がシングルステーションのものである場合、所定の箔厚にするために、必要に応じて、この工程を複数回繰り返して行うことができる。レーザー溶接設備がマルチステーションを直列に接続した生産ライン自動加工システムの場合、複数台のレーザー溶接設備を設置し、厚さを追加してレーザー溶接を行って所定の厚さの箔材を得ることができ、また、一次熱処理は、必要に応じてレーザー溶接ステーションの間に追加することもできる。
【0073】
S1013_一次熱処理;熱処理装置は、予め設定された温度及び時間に基づいて、金属粗箔を少なくとも1回の一次熱処理加工を行って金属粗箔素材を成形する。この際、ステップS102に進む。ここで、熱処理は複数回であってもよく、1回だけでも良い。
【0074】
好ましくは、ステップS1013において、一次熱処理は、アニール処理、応力除去処理及び材料安定化時効処理の少なくとも1つを用い、また、熱処理雰囲気は、乾燥した不活性雰囲気または還元雰囲気または真空環境を用い、予め設定された温度範囲は60±5℃~1050±25℃、予め設定された時間は2秒~5時間であり、ステップS103における最終熱処理は、アニール処理、応力除去処理及び材料安定化時効処理の少なくとも1つを用い、また、熱処理雰囲気は、乾燥した不活性雰囲気または還元雰囲気または真空環境を用い、予め設定された温度範囲は60±5℃~1050±25℃、予め設定された時間は2秒~5時間である。
【0075】
上記熱処理は、制御された雰囲気中で実行する必要があり、かつ雰囲気は乾燥した不活性雰囲気(例えば、アルゴン(Ar))であってもよく、酸素含有量は100ppm以下とする必要がある。材料により厳しい要求がある場合は、アルゴン~水素の混合雰囲気、水素雰囲気などの乾燥した還元雰囲気を使用でき、または真空環境を使用することもできる。二次熱処理を複数回実行する場合、残留応力が少なく、安定した金属箔材を得るために、処理温度を順次下げる必要がある。
【0076】
金属粉末の厚さが非常に薄い場合、または初期の粗金属箔材の厚さが大きい場合、目標となるレーザー溶融高平坦度金属箔材の厚さを得るために、ステップS102及びS103を複数回繰り返して行うことができる。二次熱処理後、厚さの範囲が5μm~5mmの高清浄度精密金属箔材が製造される。
【0077】
好ましくは、金属粉末形成ステップをさらに含み、それは具体的に以下の通りである。
【0078】
S99_金属溶融;選択された高純度金属材料を真空溶融によって溶融し、金属材料を溶融状態にし、純金属を選択する時、純度が99%より高く、酸素含有量<2000ppmまたは酸素含有量<200ppmの純金属原料を選択し、成分や比率に応じて配合した後、真空溶融炉内に投入して溶融させる。溶融時、温度範囲は350℃~1700℃、真空度範囲は0.01~104Paまたは10-4~100mbar、溶融パワーは200~1200KWである。
【0079】
S100、金属粉末の作製;溶融状態の金属を霧化、冷却、凝固させて微細な清浄金属粉末を形成する。溶融状態の金属は、不活性、還元性、或いは真空雰囲気で霧化し、かつ粉末の粒径の範囲は0.1~60μmである。
【0080】
好ましくは、ステップS99において、所望の金属の清浄度または純度に応じて再溶融し、再溶融方法は、エレクトロスラグ再溶融または真空アーク再溶融を用いる。
【0081】
ステップS1012の処理方法に基づいて、不活性雰囲気または還元雰囲気の環境9下で、金属粉末ディスペンサー1を、X軸またはX軸~Y軸に沿って移動させて、作業台の基板に金属粉末層を一層ディスペンスし、かつディスペンスした金属粉末層の厚さを1~300μmとし、この時、レーザーフラットベッドスキャナーで金属粉末層の平面走査溶接を行い、走査時、レーザーエネルギーは50~500Wであり、レーザーエネルギー密度は10~350J/mm3であり、走査速度は100~5000mm/秒であり、基板上の金属粉末層2と成形された金属粗箔8との溶接を促進して連続性金属粗箔を形成し、連続性金属箔材は、基板に溶接された各セクションの金属粗箔を互いに溶接させて形成され、その後、ステップS1013に進む。
【0082】
ここで、
図5に示すように、作業台4は、基板3の載置、金属粉末層の敷き、金属箔のレーザー溶融のために使用される。Z方向の精密な(1±0.2μm)昇降制御が可能であるため、多層の金属箔の溶接が必要な場合、作業台を下げ、ディスペンサーによる金属粉末層の敷き及びレーザー溶接のステップを繰り返して行い、所望のレーザー溶融金属粗箔の厚さを得ることができる。高清浄度金属粗箔の厚さは、一般的に5μm~5mmである。
【0083】
レーザーフラットベッドスキャナーは、レーザー装置5、X~Y平面走査反射ミラー6及び集束光学レンズ群7を含む。
【0084】
高エネルギーのレーザー装置は、金属粉末層2を照射し、粉末層を溶融させて金属箔に凝固させるためのレーザーエネルギーを提供するために用いられる。レーザーエネルギーは、一般的に50~500Wである。材料によって、最適なレーザー装置を選択することができる。例えば、イッテルビウム添加ファイバーレーザー装置(Ytterbiumfiberlaser)やNd:YAGレーザー装置(Nd:YAGlaser)などの固体レーザー装置、及び二酸化炭素レーザー装置(CO2laser)やエキシマレーザー装置(Excimerlaser)などの気体レーザー装置がある。レーザーの波長は、赤外線(946nm~10.6μm)、可視光線(488~694nm)及び紫外線(157~355nm)のレーザー波長の範囲を含む。
【0085】
X~Y平面走査反射ミラー:レーザー装置から射出されたエネルギーを、作業台上の金属粉末層に反射する。このスキャナーにより、X~Y平面で高速かつ高精度で走査することができる。
【0086】
集束光学レンズ群:この光学レンズ群により、走査反射ミラーからの光エネルギーを集束して、溶融対象となる金属粉末層の領域に投射する。
【0087】
レーザー溶融金属箔:金属のレーザー溶接過程で、金属粉末はレーザーにより照射された後、高温で溶融し、互いに連結し、かつ一体型のレーザー溶融した高清浄度金属箔に迅速に凝固する。
【0088】
雰囲気制御環境:レーザー溶融金属箔内の酸化物または窒化物の形成を低減するため、レーザー溶融の過程は雰囲気制御の環境で作らなければならない。雰囲気は不活性雰囲気(例えば、アルゴン(Ar))であってもよく、酸素含有量は100ppm以下とする必要がある。材料により厳しい要求がある場合、アルゴン~水素の混合雰囲気、水素雰囲気などの還元雰囲気を使用でき、または真空環境を使用することもできる。
【0089】
図7に示すように、ステップS1013の処理方法に基づいて、第1リール11に基板を巻き取り、第2リール12に連続性金属粗箔を巻き取ることで、連続性金属粗箔を基板から分離し、かつ溶接終了した金属粗箔を一次熱処理用の熱処理装置へ搬送して熱処理を行い、一次熱処理終了後に基板と連続式金属粗箔が別々にロール状となり、ここで、レーザー溶融した金属粗箔は、熱処理後にも、微細孔、粗い表面及び不均一な厚さなどの多くの欠陥がある。高清浄度金属粗箔は、製造された金属材料の基準値(例えば、ASTM国際基準)の92%以上の相対密度を持つ。組成部の非原材料に含まれる不純物の量が低く、例えば、窒素(N)<0.01wt.%、硫黄(S)<0.01wt.%、炭素(C)<0.02wt.%、リン(P)<0.02wt.%、さらに精密加工して箔材の品質を改善する必要があり、この時、ステップS102に進む。
【0090】
ステップS102の処理方法に基づいて、ロール状の連続性金属粗箔から放出された金属粗箔に対して、少なくとも1回の精密冷間圧延を行い、連続性金属粗箔から所望の厚さ及び平坦な表面を有するコイル状金属箔材を得て、この際、ステップS103に進み、残存する微細孔を除去し、致密化、平坦化して平坦な外観と均一な厚さを有する金属箔材を得る。精密冷間圧延は、一般的にロール精密圧延機で行われるが、レーザー溶融金属箔が厚い場合、まずロール冷間圧延機で圧延し、熱処理した後、さらにロール圧延機で精密圧延を施してもよい。圧延率の範囲は、5~80%である。圧延率が高いほど、材料の加工硬化が高くなり、その結果、加工しにくくなり、欠陥が増加し、良品率が悪くなる。圧延率は、好ましくは25~60%である。精密冷間圧延により、厚さ10~100ミクロン(μm)のレーザー溶融金属箔材を製造することができ、所望の厚さを実現するために、複数回繰り返して圧延することができる。
【0091】
ステップS103の処理方法に基づいて、精密冷間圧延を少なくとも1回行ったロール状金属薄材に少なくとも1回の二次熱処理を施し、二次熱処理終了後にステップS106に進み、ロール状の高平坦度金属箔材を得る。
【0092】
S106_ロール状の高平坦度金属箔材を所望のサイズに断裁した後、ステップS107に進む。
【0093】
S107_断裁後の高平坦度金属箔材の品質検査(欠陥検出)を行い、検査終了後、ロール状の高清浄度の精密金属箔材を得る。その最終的な高平坦度金属箔材は、製造された金属材料の基準値(例えば、ASTM国際基準)の98%以上の相対密度を持つ。組成部の非原材料に含まれる不純物の量が低く、例えば、窒素(N)<0.01wt.%、硫黄(S)<0.01wt.%、炭素(C)<0.02wt.%、リン(P)<0.02wt.%などである。材料を洗浄した後、1000mm長さのものを光学検出設備に載せて欠陥(例えば、不純物、異物、微細孔など)を走査したところ、3μmより大きい欠陥が100以下である。
【0094】
本実施例の新規製造方法で、レーザー溶融高平坦度金属箔材を製造する。それは、優れた機械的強度と物理的特性を備え、組成が均一な金属箔材を製造することができ、大面積で製造でき、また、高清浄度及び高製造効率の利点を有する。
【0095】
東芝などの日本企業は、1985年代から、インバー36(Fe~Ni36)などの低膨張係数の合金をカラーCRTのシャドーマスクに応用した。2010年頃には、インバー合金も熱蒸着AMOLEDのファインシャドーマスクに応用される。これまでディスプレイ業界で使用される金属箔材は、いずれも従来の製造プロセスで作られたインバー36である。金属の清浄度が低く、製造コストが高いという技術的課題の他に、AMOLEDのFMM(Fine Metal Mask、本発明内ではFMMと称する)のために、電鋳でインバー36材料のシャドーマスクを製造する場合、その組成、性能の均一度、機械的強度及び大きなサイズなどの実現できない技術的課題も、上記製造工程によって解決される。
【0096】
上記の製造工程は、インバー合金の金属箔材を製造できるが、これに限定されず、さらに、ステンレス、鉄~ニッケル(Fe~Ni)合金、ニッケル(Ni)合金、チタン(Ti)合金、アルミニウム(Al)合金、超合金(Superalloys、Fe~Ni~Co合金)などの金属箔材を製造することもできる。上記金属粉末をレーザー溶融して薄金属箔とした場合の安定溶融領域のレーザーエネルギー密度は、約10~350J/mm3である。例えば、インバー合金に適した安定レーザー溶融エネルギー密度は約45~95J/mm3であり、316ステンレスなどの他の金属の安定レーザー溶融エネルギー密度は約50~115J/mm3である。得られたインバー合金の物理的特性は、伝統的な材料と同等であるが、清浄度が高く、コストが低く、製造工期が短い。
【0097】
本実施例で記載された金属箔材製造方法では、レーザー溶融により形成された金属箔材の製造工程が少なく、製造設備への投資も低く、全体の製造工程及びサプライチェーンが短い。また、異なる工程による不純物や汚染物が少なく、全体の清浄度や純度が良く、品質管理が容易である。高平坦度を持つ薄(Ra<0.1μm)金属箔を製造する際の良品率は、一般的に50%より高く、レーザー溶融した金属箔材は、金属粉末を使用して再び高速溶融及び凝固したものであるため、特殊な微細構造の特徴、または異なる結晶相及び微細構造制御の新しい可能性を提供することができ、レーザー溶融によって成形された金属箔材は、組成が均一で、大面積で製造でき、高清浄度及び高製造効率の利点を有する。
【0098】
上記より、金属粉末としてインバー合金粉末を選択する場合、具体的な一次熱処理及び二次熱処理の方法は以下のとおりである。
【0099】
一次熱処理は、アニール処理、応力除去処理及び材料安定化時効処理を用い、アニール処理の温度条件>600℃、応力除去処理の温度条件は250~400℃、材料安定化時効処理の温度条件は60~200℃であり、時間は2秒~72時間である。二次熱処理は、アニール処理、応力除去処理及び材料安定化時効処理を用い、熱処理温度は200±5℃~1450±25℃であり、時間は2秒~48時間である。ここで、熱処理は、制御された雰囲気中で実行する必要がある。雰囲気は乾燥した不活性雰囲気(例えば、アルゴン(Ar))であってもよく、酸素含有量は100ppm以下とする必要がある。材料により厳しい要求がある場合、アルゴン~水素の混合雰囲気、水素雰囲気などの乾燥した還元雰囲気を使用でき、または真空環境を使用することもできる。金属箔材は精密冷間圧延中に加工硬化するので、二次熱処理によって、加工硬化した金属箔材を再結晶化することで、内部応力が除去され、応力の放出による箔材の微変形が低下し、金属箔材の性能が向上する。
【0100】
上記では、インバー合金(Fe~、Ni:35~39wt.%)粉末の大きさが2~50μmの材料を選択してインバー合金箔材を製造し、レーザーエネルギーの範囲は50W~400Wであり、レーザー走査速度は50~3000mm/秒である。
図6に示すように、製造全体の結果は次のように要約できる。
【0101】
領域I.不完全溶融領域:走査速度が速すぎ、またはレーザーエネルギーが低すぎる場合、金属粉末を完全に溶融することができない。
【0102】
領域II.不完全溶結領域:レーザーエネルギーが領域Iより高い場合、一部の粉末は溶融できるが、完全に溶融できない粉末も残るため、溶接した箔材全体に不完全な溶接による欠陥が多く存在する。
【0103】
領域III.安定溶融領域:レーザーエネルギーが引き続き増加し、または走査速度が僅か遅い場合、粉末のほとんどが完全に溶融し、連結され、凝固し、緻密で薄い金属箔を形成することができる。安定溶融の加工条件として、レーザーエネルギーが50W~400W、レーザー走査速度が50~3000mm/秒であるが、量産のための十分に大きな安定加工領域を総合的に考慮すると、最適化される加工条件は、レーザーエネルギーが200W~350W、レーザー走査速度が800~2000mm/秒であることが好ましい。しかし、最適化されたレーザー溶接パラメータの範囲は、複数の加工パラメータの調整の影響により変動する。
【0104】
領域IV.蒸発領域:レーザーエネルギーが高すぎ、または走査速度が遅すぎる場合、高すぎるエネルギーによって一部の溶融金属が蒸発し、欠陥が増加する可能性がある。
【0105】
領域V:不安定溶融領域:レーザーエネルギーが引き続き増加し、または走査速度が遅すぎる場合、金属粉末が溶融し、しかも大量の蒸発により、溶融が不安定になり、製造された金属箔に大量の穴や表面欠陥が発生する。
【0106】
レーザー溶融金属箔は、安定溶融領域で、適切なレーザーエネルギー及び走査速度で製造する必要がある。インバー金属粉末をレーザー溶融する。一般的には、鉄系合金の金属粉末の安定溶融領域のレーザーエネルギー密度は、約10~350J/mm3である。インバー合金の適切な安定レーザー溶融のエネルギー密度は、45~95J/mm3である。しかし、最適化されたレーザー溶接パラメータは、複数の加工パラメータの調整の影響により変動する。レーザー焼結により製造された金属粗箔には、若干の微細孔や粗い表面、残留応力が残っており、高品質、高精密度、高清浄度、高平坦度や薄いインバー合金の金属箔材を得るために、その後の製造工程で改善する必要がある。
【0107】
実施例3
図3に示すように、本実施例で記載されたFMMの製造に適した高平坦度金属箔材の製造方法は、実施例1と大体同様であるが、その相違点として、ステップS101において、金属粗箔素材は、以下のステップによって成形される。
【0108】
S1014_金属溶融のステップ;粗製して得られた金属原料または回収金属原料を選別して洗浄し、溶融する合金の成分に応じて金属原料を配合して調整し、かつ還元剤などを添加して金属を溶融し、溶融後、溶融した金属液を鋳型に流し込んで凝固させてインゴットにし、溶融時にサンプリングして溶鋼の組成をテストし、必要な成分調整を行うことができる。溶融は、高温で多くの化学と物理反応が同時に起こる激しい製造工程である。溶融後、溶融した金属液を鋳型に流し込んで金属をインゴットに凝固させる。溶融及びインゴット鋳造の過程では、多くの不純物が残り、または様々な表面との接触により凝固後の金属材料に混入するため、材料の特性に影響を与える。高い純度または清浄度が求められる場合、純度の高い原料を使用することができ、チタンやニッケルなどの空気と反応しやすい金属であれば、真空溶融することでその純度を高めることもできる。
【0109】
S1015_精錬のステップ;溶融されたインゴットを精錬して、金属インゴットを形成し、このステップによって内部の不純物が低減される。
【0110】
S1016_熱間鍛造のステップ;精錬された金属インゴット材料を高温で鍛造して、大きな円筒形の金属インゴットを四角形の金属ブロックに鍛造し、このステップによって、その後の高温成形加工が容易になる。
【0111】
S1017_熱間圧延のステップ;熱間鍛造された金属ブロックを表面処理し、連続熱間圧延を実施して、金属ブロックをミリメートルからセンチメートル単位の厚さの金属板に製造する。
【0112】
S1018_一次熱処理のステップ;熱間圧延された金属板に対して、少なくとも1回の熱処理を実施し、結晶構造及び内部応力を調整する。
【0113】
S1019_冷間圧延のステップ;金属板の表面処理後、表面酸化層を除去して洗浄し、洗浄終了後、金属板に対して少なくとも1回の冷間圧延処理を行い、ここで、冷間圧延は1回でも複数回でもよい。
【0114】
S1020_二次熱処理のステップ;冷間圧延された金属板に対して、少なくとも1回の熱処理を実施し、結晶構造及び内部応力を調整し、金属粗箔素材を成形する。この際、ステップS102に進む。ここで、熱処理は1回でも複数回でもよい。より薄い金属材料を製造するためには、S1019及びS1020を繰り返して行い、所望の金属板材の厚さを得る必要がある。一般的には冷間圧延で得られる金属板の厚さは、1ミリメートル以下である。
【0115】
金属箔材の製造には、複数の溶融及び成形加工及び熱処理を経て、高平坦度の薄さ(≦0.1mm)にする。FMMの製造は、この方法で製造された2x10-6/℃(-50~100℃の温度範囲内)より小さい低熱膨張係数の高清浄度インバー合金(Fe、Ni:35~39wt.%)金属箔材を用いることができ、または、例えば、鉄-ニッケル-コバルト合金(Fe、Ni=31~39wt.%)、Co=0.02~6wt.%))、鉄-ニッケル合金(Fe、~Ni=42~46%)、鉄-ニッケル-マンガン合金(Fe、Ni=35~37wt.%、Mn+Si+Cr=0.001~1wt.%)、鉄-ニッケル-コバルト合金(Fe、~Ni=28%~33%)、Co=13~17wt.%)、または鉄-コバルト-クロム合金(Co=52~54wt.%、Cr=9~10wt.%、Fe)のような製造できる他の低熱膨張係数の金属材料を用いることもできる。
【0116】
実施例4
図4に示すように、本実施例で記載されたFMMの製造に適した高平坦度金属箔材の製造方法は、実施例1と大体同様であるが、その相違点として、ステップS101において、金属粗箔素材は、以下のステップによって成形される。
【0117】
S1021_金属基板洗浄のステップ;化学洗浄剤を用いてステンレス基板の表面の残留物、汚染物、有機物や酸化層を除去し、除去完了後に水洗いし、その後、さらに空気乾燥させる。
【0118】
S1022_金属基板の前処理のステップ;高濃度酸溶液で金属基板の表面を浸漬させ、浸漬した後に水洗し、その後、さらに空気乾燥させ、高濃度酸溶液(例えば、塩酸溶液、10~30%)で基板の表面を浸漬させ、または二クロム酸カリウム溶液(5~15%)で基板を浸漬させる。
【0119】
S1023_精密電鋳のステップ;金属基板を負極に接続した後、電鋳槽に投入して電鋳を行い、金属粗箔基材を形成し、インバー合金金属基板を電鋳する場合、槽内にはニッケルと鉄の化合物、及び様々な添加剤が含まれる。例えば、NiSO4~6H2O、NiCl2~6H2O、Boricacid、FeSO4~7H2O、マロン酸(Malonicacid)、サッカリンナトリウム(Saccharinsodium)など、電鋳液のpH値は、2.0~3.5に制御され、温度は35~55℃であり、電鋳金属箔の均一性を確保するためにリアルタイムで均一に撹拌する。電鋳の電流密度は、約30~50mA/cm2である。堆積した電鋳膜の厚さは、電解槽溶液の組成濃度、電流密度、及び金属基板の槽内での保持時間によって制御することができる。
【0120】
S1024_金属粗箔基材の洗浄ステップ;電鋳により形成された金属粗箔基材上の電解液を水で洗浄し、洗浄終了後に空気乾燥させる。
【0121】
S1025_一次熱処理のステップ;洗浄後の金属粗箔基材を熱処理環境に置き、結晶相の微細構造を調整し、内部応力を除去する。
【0122】
S1026_金属基板剥離のステップ;一次熱処理後、金属粗箔基材を金属基板から機械的に分離して金属粗箔素材を成形する。この際、ステップS102に進む。
【0123】
好ましくは、ステップS1013において、一次熱処理は、アニール処理、応力除去処理及び材料安定化時効処理の少なくとも1つを用い、また、熱処理雰囲気は、乾燥した不活性雰囲気または還元雰囲気または真空環境を用い、予め設定された温度範囲は300℃~700℃、予め設定された時間は2秒~2時間である。
【0124】
ステップS103において、最終熱処理は、アニール処理、応力除去処理及び材料安定化時効処理の少なくとも1つを用い用い、また、熱処理雰囲気は、乾燥した不活性雰囲気または還元雰囲気または真空環境を用い、予め設定された温度範囲は300±5℃~775±25℃、予め設定された時間は2秒~1時間である。
【0125】
実施例5
本実施例で記載されたFMMの製造方法は、実施例1または実施例2または実施例3または実施例4に記載の高平坦度金属箔材の製造方法を含む。高平坦度金属箔材の製造方法によって得られた高平坦度金属箔材でFMMスティックを製造し、FMMスティックをAMOLED発光デバイスの熱蒸着の際にシャドーマスクとして用いられる部材に製造し、それは、具体的には次のとおりである。
【0126】
金属箔材として、熱膨張係数が2x10-6/℃(-50~100℃の温度範囲内)より小さい高清浄度インバー合金(Fe、Ni=35~39wt.%)金属箔材を使用し、または、例えば、鉄-ニッケル-コバルト合金(Fe、Ni=31~39wt.%)、Co=0.02~6wt.%))、鉄-ニッケル合金(Fe、~Ni=42~46%)、鉄-ニッケル-マンガン合金(Fe、Ni=35~37wt.%、Mn+Si+Cr=0.001~1wt.%)、鉄-ニッケル-コバルト合金(Fe、~Ni=28%~33%)、Co=13~17wt.%)、または鉄-コバルト-クロム合金(Co=52~54wt.%、Cr=9~10wt.%、Fe)のような製造できる他の低熱膨張係数の金属材料を用いることもできる。
【0127】
S301_洗浄;金属箔材表面の汚染物や酸化層を除去し、金属箔材の表面をきれいに洗浄し、洗浄時に洗浄剤で金属箔材の表面をきれいに洗浄する。
【0128】
S302_金属箔材のパターニング加工;洗浄した金属箔材にパターン形成プロセスを施すことにより、メタルマスクに必要なパターン化された金属箔材を形成する。
【0129】
S303_パターン化された金属箔材を設定されたサイズに応じて断裁し、FMMスティックを形成する。
【0130】
S304_検査(欠陥検出);FMMスティックの品質検査を行い、主に、FMMスティックが出荷基準に合致しているか否かを検出する。
【0131】
S305_梱包;仕様を満たしたFMMスティックを梱包して出荷する。
【0132】
実施例6
図17に示すように、本実施例で記載されたFMMの製造方法は、ステップS302のパターン化金属箔材を成形する具体的なプロセス以外、実施例5と実質的に同様であるが、それは、以下のステップを含む。
【0133】
S3021_フォトレジスト膜の貼り付けステップ;フォトレジスト膜を洗浄後の金属箔材に貼り付け、密着力を高める必要がある場合、真空貼り付け、高温ベーキング、または界面接着剤を使用することができる。シート金属箔材の製造に際しては、ドライフィルムフォトレジストの代わりに、ウェットコーティングフォトレジストと高温ベーキングの組み合わせを使用してもよい。
【0134】
S3022_露光のステップ;フォトレジスト膜が貼り付けられた金属箔材を露光機に入れ、露光機が照射した光はフォトマスクを透過し、製造するパターンをフォトレジストに投影する。
【0135】
或いは、フォトレジスト膜が貼り付けられた金属箔材に対して、レーザー直描イメージングを行い、製造するパターンをレーザー照射によりフォトレジスト膜に直接描画し、金属箔材の両面を同時に露光させ、ここでフォトマスクを使用する必要はない。
【0136】
S3023_現像のステップ;露光されたフォトレジスト膜及び金属箔材を現像液に浸漬させることで、光誘導した部分を硬化して残し、光誘導していない部分を現像液に溶解し、投影されるパターンを、残ったフォトレジストに顕在化する。
【0137】
S3024_ウェットエッチングのステップ;現像したフォトレジスト膜及び金属箔材をエッチング槽に入れ、金属箔材のフォトレジスト膜によって覆われていない部分を、エッチング液に接触させて化学反応を行い、接触した金属をエッチングし、エッチング終了後、フォトレジストのパターンは、金属箔材にエッチングされ、ウェットエッチングは両面を別々に順にエッチングしても、同時にエッチングしてもよい。
【0138】
S3025_フォトレジスト除去のステップ;エッチング終了後、剥離装置に投入し、フォトレジスト膜を除去することにより、エッチングされたパターンを有する金属箔材だけを残して、パターン化金属箔材を形成する。
【0139】
上記のステップは、
図18に示すような、ロール状の連続性金属箔材をロール・トゥ・ロールでFMMに製造する加工プロセスに適用可能である。
【0140】
ロール・トゥ・ロールの加工プロセスにおいて、ウェットエッチング加工による微細孔のサイズは、8μm~1000μmである。また、ウェットエッチング加工による微細孔アレイ領域の面積は、AMOLEDディスプレイの製造に必要なFMMのサイズによって決められる。現在のスマートフォン用AMOLEDの量産ラインは、925mm×1500mmのG6Halfサイズであるため、FMMを製造する場合、薄金属箔上の単一露光面積は同様なサイズ範囲内にある。フォトレジストを除去する場合、FMMに必要な、AMOLEDディスプレイのサブピクセル設計パターンが付いたインバー合金の金属箔材だけを残す。
【0141】
上記では、ロール・トゥ・ロールの生産方法に加えて、高平坦度金属箔材をシート状に切断し、枠付けした後、同様な製造工程でFMMスティック製品を製造することもできる。
【0142】
実施例7
図19に示すように、本実施例で記載されたFMMの製造方法は、ステップS300を加える以外、実施例5と実質的に同様であるが、それは、ステップS301の前に、金属箔材をシート状の金属箔片材に断裁し、シート状の金属箔片材を枠付けした後、枠付けした金属箔材をステップS301の処理方法で洗浄し、洗浄終了後にステップS302に進む。枠付けの目的は、薄い金属箔片材のサンプル製造工程での搬送による損傷を避けることであり、このようにすれば、FMMスティックの製造が簡単になる。
【0143】
ステップS302において、パターン化金属箔材を成形する具体的なプロセスは、以下のステップを含む。
【0144】
S3026_レーザー投影による微細孔加工のステップ;高エネルギーレーザーをフォトマスクに透過させて金属箔材に投影し、金属箔材でレーザービームの投影によりアブレーションを行って微細孔パターンを形成し、それは、光学システムにより、このレーザービームエネルギーを金属箔材に投影し、箔材では、高エネルギーレーザーによってレーザーアブレーションが局所的に発生することで、金属箔にフォトマスク上のような微細孔パターンが形成される。レーザーは、アブレーションする材料によって選択可能である。例えば、二酸化炭素レーザー装置やエキシマレーザーなどの気体レーザー装置、イッテルビウム添加ファイバーレーザー装置やNd:YAGレーザー装置などの固体レーザー装置である。
【0145】
図20に示すように、特定のレーザー投影による微細孔加工に用いられる用具は、具体的には、以下を含む。
【0146】
高平坦度金属箔材;断裁された後、枠に入れて加工用キャビティ412の加工台410に載せられる。
【0147】
加工台410;金属箔材レーザー微細孔加工設備の加工用キャビティ412内にあり、X~Y平面で正確に移動できるので、レーザー微細孔加工を容易にし、薄金属箔片材211に微細孔パターンのレーザーアブレーションを施す。
【0148】
枠付けした薄金属箔片材211;加工台410に固定され、加工台を介してX~Y平面で正確に移動し、フォトマスク及び集光投影用のレーザビームにより、薄金属箔全面に所望のパターンをレーザーアブレーションすることができる。
【0149】
加工用キャビティ412;レーザーアブレーションが高エネルギー、高温の製造工程であるため、加工領域及び加工部品の雰囲気を制御する必要がある。制御される領域は、加工用キャビティによって画定される。
【0150】
環境雰囲気413;金属の酸化及び窒化を低減するために、加工用キャビティ内の雰囲気を制御する必要がある。雰囲気は不活性雰囲気(例えば、アルゴン(Ar))であってもよく、酸素含有量は100ppm以下である。材料により厳しい要求がある場合、アルゴン~水素の混合雰囲気、水素雰囲気などの還元雰囲気を使用でき、または真空環境を使用することもできる。
【0151】
光学窓414;加工用キャビティにあり、レーザービームがキャビティを透過する領域に使用される高透過率の光学窓であるため、レーザービームを加工される薄金属箔片材211に効果的に投射し、照射領域のレーザーアブレーションの反応を完了することができる。
【0152】
レーザー装置415;高エネルギーのレーザー装置は、所望のレーザービームを提供する。レーザーエネルギーは、一般的に1~500Wである。材料によって、最適なレーザー装置を選択することができる。例えば、様々なパルスレーザー装置(ナノ秒オーダー、ピコ秒オーダーまたはフェムト秒オーダー)であり、レーザー装置は、チタンサファイアレーザー装置、イッテルビウム添加ファイバーレーザー装置、Nd:YAGレーザー装置などの固体レーザー装置、二酸化炭素レーザー装置、アルゴンレーザー装置やエキシマレーザー装置などの気体レーザー装置であってもよい。レーザーの波長は、赤外線(946nm~10.6μm)、可視光線(488~694nm)及び紫外線(157~355nm)のレーザー波長の範囲を含む。
【0153】
レーザービームホモゲナイザー416;レーザー装置からのレーザービームのビームエネルギー分布をガウス曲線の分布から平面での均一分布に変化させる。それは、多面鏡式ビームホモゲナイザー、回折ビームホモゲナイザー、またはマイクロレンズアレイビームホモゲナイザーを用いることができる。
【0154】
フォトマスク417;フォトマスクには透過領域及び非透過領域があり、AMOLEDディスプレイのサブピクセルパターンに対応して分布する。しかし、所望のサブピクセルデバイスのサイズ(すなわち、金属箔材でレーザーアブレーションを行う微細孔アレイのサイズ)よりも大きい。薄金属箔でレーザーアブレーションした微細孔アレイパターンの実際の寸法は、その後の光学投射システム(レンズシステム418、反射ミラー419及び投射ミラー群420を含む)の投射倍数によって決定される。
【0155】
レンズシステム418;フォトマスクを透過した開口パターンを集束して、その後の光路での放射ミラー419及び投射ミラー群420に均一に投射し、ここで、反射ミラー419は、レンズシステム418から投射されたレーザービームのパターンを変化させて、投射ミラー群420に均一に反射する。
【0156】
投射ミラー群420;入射したレーザービームパターンを集束して、光学窓414を透過してレーザーアブレーションを行う薄金属箔片材211に、所望の微細孔アレイパターンのアブレーションが終了するまで投射する。作業台は、薄金属箔を次の領域に移動し、薄金属箔全面における加工する必要がある領域が加工されるまでレーザーアブレーション加工を繰り返して行う。
【0157】
上記のレーザー投影による微細孔加工は、固定光学システムを介して、X~Y平面で正確に移動できる作業台の移動によって加工領域を変えて、薄金属箔全面の微細孔アレイ加工を徐々に完了させるものである。また、作業台及び加工すべき金属箔材を固定し、走査機能を備えた光学投影システムによって、レーザーアブレーション領域の位置を正確に変えることで、薄金属箔全面の微細孔アレイ加工を完了させて、FMMスティック製品を製造してもよい。
【0158】
S3027_洗浄のステップ;微細孔パターンを有する金属箔材から汚染物を除去し、パターン化金属箔材を得る。
【0159】
図21に示すように、本実施例に基づいて、得られたロール状の連続性インバー合金箔材をFMMスティックとして製造することができ、かつ、レーザーアブレーション加工による微細孔のサイズは2μm~300μmである。レーザー投影によりアブレーション加工された微細孔アレイ領域の面積は、一般的に、毎回10~300mm
2の間である。
【0160】
上記の製造方法により、ニッケル合金、鉄-ニッケル-インバー合金、ニッケル-コバルト合金、コバルト-クロム合金、鉄-ニッケル-コバルト合金、鉄-ニッケル-マンガン合金、鉄-コバルト-クロム合金などの低熱膨張係数の金属箔材を製造することができる。得られたインバー合金の物理的特性は、伝統的な材料と同等であることができるが、純度及び清浄度が高く、コストが低く、製造工期が短い。