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特許7471015複合材料およびこの複合材料を含む放熱部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】複合材料およびこの複合材料を含む放熱部品
(51)【国際特許分類】
   C22C 1/05 20230101AFI20240412BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20240412BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20240412BHJP
   B32B 15/01 20060101ALI20240412BHJP
   B22F 1/18 20220101ALI20240412BHJP
   B22F 7/04 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C22C1/05 P
H01L23/36 M
H01L23/36 D
B32B15/01 H
B22F1/18
B22F7/04 A
H01L23/36 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022190227
(22)【出願日】2022-11-29
(65)【公開番号】P2023087658
(43)【公開日】2023-06-23
【審査請求日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0178079
(32)【優先日】2021-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517262106
【氏名又は名称】ザ グッドシステム コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ミョン-ファン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ソク-ウ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン-ソク
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特公昭49-010968(JP,B1)
【文献】米国特許第05783316(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0328677(US,A1)
【文献】特開2018-111883(JP,A)
【文献】特開2015-140456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 1/05
C22C 26/00
C04B 41/80-41/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基地と、前記金属基地の内部にダイヤモンド粒子が分散した組織を有する複合材料であって、
前記金属基地は、銅(Cu)または銅(Cu)の合金からなり、
前記ダイヤモンド粒子は、体積比で15%~80%含まれ、
前記金属基地と前記ダイヤモンド粒子との間の少なくとも一部には、チタン(Ti)とチタン炭化物の複合組織を含む界面層が形成されてお
前記界面層の平均厚さが、100nm~10μmであり、
前記界面層の断面組織には、前記金属基地が前記界面層に浸透して形成された、前記金属基地と同じ金属からなるアイランド相が形成されており、
前記アイランド相は前記界面層の断面組織で5~50%の面積分率を占め、
前記複合材料をMIL-STD-883K-Cスタンダードでテストしたとき、熱伝導度の低下が10%以下である、複合材料。
【請求項2】
銅(Cu)または銅(Cu)合金からなる第1層と、
前記第1層上に形成され、銅(Cu)とモリブデン(Mo)を含む合金からなる第2層と、
前記第2層上に形成され、請求項1に記載の複合材料からなる第3層と、
前記第3層上に形成され、銅(Cu)とモリブデン(Mo)を含む合金からなる第4層と、
前記第4層上に形成され、銅(Cu)または銅(Cu)合金からなる第5層と、を含む、複合材料。
【請求項3】
前記チタン(Ti)とチタン炭化物の複合組織において、チタン炭化物の含有量が、1~45重量%である、請求項1または2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記複合材料は、板状からなり、
前記板状の厚さ方向への熱伝導度は、500W/mK以上であり、
前記板状の面方向への熱膨張係数は、25℃~200℃において3×10-6/K~13×10-6/Kである、請求項1または2に記載の複合材料。
【請求項5】
請求項1または2に記載の複合材料を含む放熱部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属とダイヤモンドの複合材料と、この複合材料で構成された放熱部品に関する。より詳細には、金属基地内に熱伝導性に優れたダイヤモンド粒子が分散した構造を含み、特に苛酷な熱サイクルが加わる軍事、航空および宇宙のような使用環境でも優れた放熱特性を維持できる高信頼性の放熱部品用複合材料と、この複合材料で製作された放熱部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高出力化に伴い、電子機器に備える半導体素子の作動時の発熱量がますます増加する傾向にある。これによって、半導体素子に放熱部品を設置し、半導体素子から発生する熱を外部に放出している。このような放熱部品は、高い熱伝導度とともに、半導体素子の熱膨張係数との差が小さい熱膨張係数を有することが要求される。
【0003】
熱伝導度を高め、半導体素子との熱膨張係数を低く維持するために、銅(Cu)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)のような金属基地にダイヤモンドや炭化シリコン(SiC)のような熱伝導性が良好な粒子を分散させて複合化した複合材料で製作された放熱部品が用いられている。このような複合材料としては、Cu-ダイヤモンド複合材料、Ag-ダイヤモンド複合材料、Al-ダイヤモンド複合材料、Mg-SiC複合材料、Al-SiC複合材料など様々な組み合わせが知られている。
【0004】
この中で、銅(Cu)のような金属基地内に熱伝導性に優れたダイヤモンド粒子を分散させた金属基ダイヤモンド複合材料は、優れた熱伝導性および半導体素子と類似した熱膨張係数を具現することができるので、高出力素子の放熱部品用に注目を集めている。
【0005】
ところで、従来の金属基ダイヤモンド複合材料の場合、低い温度と高い温度間の繰り返し熱サイクルが加わる環境では放熱特性が低下する信頼性に問題がある。特に、軍事、航空および宇宙のような苛酷な使用環境では短時間内に放熱特性が低下する問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本国特許公開第2018-111883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一目的は、軍事および宇宙作戦用電子素子のテスト条件であるMIL-STD-883K-Cの熱サイクルテストにも放熱特性の低下が小さい高信頼性を有し、かつ、高出力半導体素子に要求される熱膨張係数を具現できる複合材料を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、前記複合材料を用いた放熱部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一目的を達成するための本発明の一態様は、金属基地と、前記金属基地の内部にダイヤモンド粒子が分散した組織を有する複合材料であって、前記金属基地は、Cu、Ag、Al、Mgまたはこれらの合金からなり、前記ダイヤモンド粒子は、体積比で15%~80%含まれ、前記金属基地と前記ダイヤモンド粒子との間の少なくとも一部には、チタン(Ti)とチタン炭化物の複合組織を含む界面層が形成されており、前記チタン(Ti)とチタン炭化物の複合組織内には、前記金属基地と同じ金属からなるデンドライト(dendrite)が形成されている複合材料を提供することにある。
【0010】
本発明の一目的を達成するための本発明の他の態様は、銅(Cu)または銅(Cu)合金からなる第1層と、前記第1層上に形成され、銅(Cu)とモリブデン(Mo)を含む合金からなる第2層と、前記第2層上に形成され、前記複合材料からなる第3層と、前記第3層上に形成され、銅(Cu)とモリブデン(Mo)を含む合金からなる第4層と、前記第4層上に形成され、銅(Cu)または銅(Cu)合金からなる第5層と、を含む複合材料を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的を達成するために、本発明は、前記本発明の一態様または他の態様による複合材料で構成された放熱部品を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明による複合材料は、軍事および宇宙作戦用電子素子のテスト条件の1つであるMIL-STD-883K-Cスタンダードテスト後にも、熱伝導度特性の低下が10%以下(好ましくは、5%以下、さらに好ましくは、1%以下)であり、従来の複合材料に比べて顕著に向上した特性を示す。
【0013】
また、本発明による複合材料で作られた板材は、厚さ方向に高出力半導体素子に要求される400W/mK以上の優れた熱伝導度を具現することができ、同時に、面方向に25℃~200℃において3×10-6/K~13×10-6/Kに制御された熱膨張係数を得ることができる。
【0014】
また、本発明による放熱部品は、一般的な使用環境はもちろん、温度差(150℃以上)が大きい熱サイクルが繰り返し加わる環境でも信頼性が高い放熱特性を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の第1実施形態による複合材料で作られた板材の断面構造を概略的に示す図である。
図2図2は、本発明の第2実施形態による複合材料で作られた板材の断面構造を概略的に示す図である。
図3図3は、本発明の実施例1による複合材料を製造するために用いられるチタン(Ti)をコートしたダイヤモンド粉末のXRD分析結果である。
図4図4は、本発明の実施例1によって製造された複合板材の断面写真である。
図5図5aは、本発明の実施例1による複合材料の界面層に対する走査電子顕微鏡写真であり、図5bは、図5aの複合材料の界面層に対するEDSマッピング結果である。
図6図6aは、本発明の実施例2による複合材料の界面層に対する走査電子顕微鏡写真であり、図6bは、図6aの複合材料の界面層に対するEDSマッピング結果である。
図7図7aは、本発明の実施例3による複合材料の界面層に対する走査電子顕微鏡写真であり、図7bは、図7aの複合材料の界面層に対するEDSマッピング結果である。
図8図8aは、本発明の実施例4による複合材料の界面層に対する走査電子顕微鏡写真であり、図8bは、図8aの複合材料の界面層に対するEDSマッピング結果である。
図9図9は、本発明の実施例8によって製造された複合板材を他の板材と積層した構造の断面写真である。
図10図10は、比較例1による複合材料の界面に対する走査電子顕微鏡写真である。
図11図11は、比較例2による複合材料の界面に対する走査電子顕微鏡写真である。
図12図12は、比較例3による複合材料の界面に対する走査電子顕微鏡写真である。
図13図13は、比較例4による複合材料の界面に対する走査電子顕微鏡写真である。
図14図14は、MIL-STD-883K-Cスタンダードによる熱サイクルテストプロファイルを示す図である。
図15図15は、界面層を構成するチタン(Ti)とチタン炭化物の複合組織でTiCの含有量による熱伝導度(TC)と熱伝導度低下率(%)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について添付の図面を参照してその構成および作用を説明することとする。
【0017】
下記において、本発明を説明するに際して、関連した公知機能または構成に関する具体的な説明が本発明の要旨を不明にすることができると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。また、任意の部分が或る構成要素を「含む」というとき、これは、特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0018】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態による複合材料で作られた板材の断面構造を概略的に示す図である。
【0019】
図1に示されたように、本発明の第1実施形態による複合材料は、板(plate)状からなり、金属基地と、前記金属基地の内部にダイヤモンド粒子が分散した組織を有し、前記金属基地は、Cu、Ag、Al、Mgまたはこれらの合金からなり、前記ダイヤモンド粒子は、体積比で15%~80%含まれ、前記金属基地と前記ダイヤモンド粒子との間の少なくとも一部には、チタン(Ti)とチタン炭化物の複合組織を含む界面層が形成されており、前記チタン(Ti)とチタン炭化物の複合組織内には、前記金属基地と同じ金属からなるデンドライト(dendrite)が形成されていることを特徴とする。
【0020】
前記「これらの合金」とは、Cu合金、Ag合金、Al合金およびMg合金を意味し、それぞれの合金は、主元素であるCu、Ag、AlまたはMgを80重量%以上、好ましくは、90重量%以上、より好ましくは、95重量%以上含み、合金成分としては、前記主元素に合金可能な公知の全ての元素を含んでもよいし、好ましくは、熱伝導度の低下が大きくない合金元素を含む。
【0021】
前記「金属基地と同じ金属からなるデンドライト(dendrite)」は、前記複合組織の内部に界面層に沿って延びながら多数の突起が形成された形状の組織であり、断面組織上に多数のアイランド形状の金属が連結または分離された形状で示される。
【0022】
前記チタン(Ti)とチタン炭化物の複合組織内に形成されるデンドライト(dendrite)は、複合化されるダイヤモンド表面に金属基地と同じ金属をコートする方法で形成することもできるが、前記金属基地を構成する金属がチタン(Ti)とチタン炭化物の複合組織の内部に浸透して形成された形状が金属基地との結合力をさらに増大させることができるので好ましい。
【0023】
前記デンドライト(dendrite)組織は、図4aのように断面観察したとき、界面層全面積の1~70%程度で含まれることが好ましい。1%未満である場合、前述したデンドライト組織の効果が不十分であり、70%を超過する場合、チタンとチタン炭化物の複合組織が付与するダイヤモンド粒子と銅基地との接合面における結合力維持という効果を得にくいからである。より好ましいデンドライト組織の面積分率は、5~50%である。
【0024】
チタン(Ti)とチタン炭化物の複合組織の内部に形成された金属基地と同じ金属からなるデンドライト(dendrite)組織は、熱サイクルが加わるとき、金属基地とダイヤモンド間の熱膨張係数の差によって界面層に加わる応力を緩和させ、金属基地と界面層との接合状態が維持されるようにして、熱サイクルに対して信頼性の高い放熱特性が得られるようにする。
【0025】
前記ダイヤモンド粒子を体積比で15%未満で含むと、高出力素子に要求される熱伝導性を具現することが難しく、熱膨張係数を合わせにくく、80%を超過して含むと、熱伝導性は良好になるが、ダイヤモンド粒子を結合させることが容易でなく、熱膨張係数も過度に低くなるので好ましくない。生産性、熱伝導性および熱膨張特性の観点から、ダイヤモンド粒子の体積比は15~60%であることがさらに好ましく、30~50%であることが最も好ましい。
【0026】
第1実施形態による複合材料において、前記界面層は、前記金属基地と前記ダイヤモンド粒子間の全ての界面に形成されていてもよい。前記デンドライトを含む界面層が形成されていない部分が存在する場合、信頼性の低下が大きくなり得るので、金属基地とダイヤモンド粒子間の全ての界面に前記界面層が形成されることが好ましい。
【0027】
第1実施形態による複合材料において、前記界面層の平均厚さは、100nm~10μmであってもよい。前記界面層の平均厚さが100nm未満の場合、本発明において目的とするデンドライトが形成されたチタン(Ti)とチタン炭化物の複合組職を得にくいからであり、10μmを超過する場合、熱伝導度の低下が激しくなるからである。より好ましい界面層の平均厚さは、200nm~5μmであり、最も好ましい界面層の平均厚さは、200nm~2μmである。
【0028】
前記「界面層の平均厚さ」は、複合化されたダイヤモンド粒子別に最小厚さと最大厚さを求めた後、求められた値の平均値を意味する。
【0029】
第1実施形態による複合材料において、前記チタン(Ti)とチタン炭化物の複合組織で、チタン炭化物の含有量は、10~45重量%であってもよい。前記チタン炭化物の含有量が全体複合組織で10重量%未満の場合、熱伝導度が低くなることがあり、45重量%超過する場合、温度差が150℃~300℃の熱サイクルが加わる場合、熱伝導度の低下が10%以上発生し得るので、前記範囲を維持することが好ましい。
【0030】
第1実施形態による複合材料において、前記チタン炭化物は、TiCであってもよい。
【0031】
第1実施形態による複合材料において、前記ダイヤモンド粒子のサイズは、熱伝導度の向上の観点から、200μm以上であることが好ましく、300μm以上であることがさらに好ましく、400μm以上であることが最も好ましい。
【0032】
第1実施形態による複合材料において、前記金属基地の内部に分散するダイヤモンド粒子は、互いに接することなく、金属基地が介在した状態で分散していてもよい。
【0033】
金属基地に分散するダイヤモンド粒子は、互いに接することなく、金属基地を介在した状態で分散していることが、複合材料に熱サイクルが加わるとき、放熱特性を維持するのに有利であるからである。
【0034】
第1実施形態による複合材料は、MIL-STD-883K-Cスタンダードでテストしたとき、熱伝導度の低下が10%以下であってもよく、より好ましくは、5%以下であってもよい。
【0035】
MIL-STD-883スタンダードは、軍事および宇宙作戦を含んで自然要素および条件の有害な影響に対する電子装置の耐久性を評価するためのスタンダードであり、本発明の第1実施形態による複合材料は、軍事および宇宙作戦に用いられるほどの信頼性を提供する。
【0036】
第1実施形態による複合材料は、板状からなり、前記板状の厚さ方向への熱伝導度は、500W/mK以上であり、前記板状の面方向への熱膨張係数は、25℃~200℃において3×10-6/K~13×10-6/Kであってもよい。
【0037】
本発明において、「厚さ方向」とは、板状の複合材料において板の厚さに平行な方向であり、「面方向」とは、板の面に平行な方向を意味する。
【0038】
第1実施形態による複合材料は、半導体素子のような電子素子の放熱部品に用いられる。
【0039】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態による複合材料は、図2に示されたように、銅(Cu)または銅(Cu)合金からなる第1層と、前記第1層上に形成され、銅(Cu)とモリブデン(Mo)を含む合金からなる第2層と、前記第2層上に形成され、上述した複合材料からなる第3層と、前記第3層上に形成され、銅(Cu)とモリブデン(Mo)を含む合金からなる第4層と、前記第4層上に形成され、銅(Cu)または銅(Cu)合金からなる第5層と、を含む積層構造を有することを特徴とする。
【0040】
前記第1層、第3層および第5層は、銅(Cu)99.9重量%以上の銅を含む純銅(Cu)はもちろん、様々な合金元素を0.1重量%超過で含む銅(Cu)合金からなってもよく、銅(Cu)合金の場合、放熱特性を考慮して、銅(Cu)を80重量%以上、好ましくは、90重量%以上、より好ましくは、95重量%以上含んでもよい。
【0041】
前記第2層と第4層は、銅(Cu)とモリブデン(Mo)を含む合金は、銅(Cu):5~40重量%、モリブデン(Mo):60~95重量%含むことが好ましい。これは、銅(Cu)の含有量が5重量%未満であれば、銅(Cu)層との結合力を良好に維持しにくく、板材の厚さ方向への熱伝導度が減少し、40重量%超過であれば、板材の面方向の熱膨張係数を低く維持しにくいからである。
【0042】
前記第1層、第3層および第5層の厚さは、10~1000μmの範囲を維持する場合、放熱板材の面方向の熱膨張係数をセラミック素材と類似した7~12×10-6/Kの範囲に維持し、厚さ方向の熱伝導度を400W/mK以上で具現するのに有利であるため、前記範囲に維持することが好ましい。
【0043】
前記第2層と第4層の厚さは、10μm未満の場合、板材の面方向への熱膨張係数を7~12×10-6/Kの範囲に維持することが難しく、60μm超過の場合、板材の厚さ方向への熱伝導度を400W/mK以上に維持しにくいので、10~60μmの範囲に維持することが好ましい。
【0044】
<実施例1>
実施例1では、銅(Cu)基地(matrix)にダイヤモンド粒子が均一に分散して複合化された複合材料を下記のような方法を通じて製造した。
【0045】
まず、粒子のサイズが200μmのダイヤモンド粉末を準備した。粉末を構成する粒子のサイズは、前記代表値(平均)の±20%以内(さらに好ましくは、±10%以内)のサイズを有する均一なサイズのダイヤモンド粒子を用いた。
【0046】
ダイヤモンド粒子の表面にチタン(Ti)をコートし、この際、ダイヤモンドとチタン(Ti)との界面に、図3から確認されるように、ダイヤモンドを構成する炭素(C)とチタン(Ti)の一部が反応して炭化チタン(TiC)が形成された。チタン(Ti)コーティング方法としては、PVD(Physical vapor deposition)法、スパッタリング法(Sputtering)、CVD(Chemical vapor deposition)法を用いることができる。この際、Tiコーティング量は、全体複合粉末の重量に対して約0.4wt%となるようにした。
【0047】
チタン(Ti)がコートされたダイヤモンド粒子の表面に無電解メッキ法を用いて銅(Cu)コーティング層を形成した。この際、銅(Cu)コーティング層の厚さは、約50~100μmとなるようにした。
【0048】
次に、ダイヤモンド粒子がこわれない圧力範囲内でダイヤモンド粒子の最大サイズの1.1~1.3倍の厚さとなるようにプレス成形した。この際、プレスの成形圧は、200MPaに設定した。
【0049】
このようなプレス成形を通じてダイヤモンド粒子が単層を形成した成形体を得た。得られた成形体を放電プラズマ焼結(spark plasma sintering)法を用いて1,000℃で焼結することによって、図4に示されたような断面組織を有するCu-ダイヤモンド複合材料からなるシート(sheet)を製作した。
【0050】
このように製作したシート(sheet)を必要な厚さに合わせて2層、3層、4層、5層など様々な層数で積層した後、焼結して、接合させる方法を通じて、様々な厚さを有し、ダイヤモンド粒子の体積比が15%~80%程度で含まれ、かつ、ダイヤモンド粒子が互いに接触しない複合材料からなる放熱基板を製作した。
【0051】
実施例1によって製作した放熱基板は、ダイヤモンド粒子の体積比が約35%であり、55mm×55mm×1.1mm(横×縦×厚さ)で製作された。
【0052】
<実施例2>
実施例1と大部分の構成は同一にして、銅-ダイヤモンド複合板材を製造した。実施例2の場合、実施例1とは異なって、ダイヤモンド粒子にコートされるTiの量を0.5wt%として製造し、その結果、本発明のデンドライトが形成された界面層を有する放熱基板を得た。
【0053】
<実施例3>
実施例1と大部分の工程は同一にして、銅-ダイヤモンド複合板材を製造した。実施例3の場合、実施例1とは異なって、ダイヤモンド粒子にコートされるTiの量を0.6wt%として製造し、その結果、本発明のデンドライトが形成された界面層を有する放熱基板を得た。
【0054】
<実施例4>
実施例1と大部分の工程は同一にして、銅-ダイヤモンド複合板材を製造した。実施例4の場合、実施例1とは異なって、ダイヤモンド粒子にコートされるTiの量を0.7wt%として製造し、その結果、本発明のデンドライトが形成された界面層を有する放熱基板を得た。
【0055】
<実施例5>
実施例1と大部分の工程は同一にして、銅-ダイヤモンド複合板材を製造した。実施例5の場合、実施例1とは異なって、ダイヤモンド粒子にコートされるTiの量を0.8wt%として製造し、その結果、本発明のデンドライトが形成された界面層を有する放熱基板を得た。
【0056】
<実施例6>
実施例1と大部分の工程は同一にして、銅-ダイヤモンド複合板材を製造した。実施例6の場合、実施例1とは異なって、ダイヤモンド粒子にコートされるTiの量を0.9wt%として製造し、その結果、本発明のデンドライトが形成された界面層を有する放熱基板を得た。
【0057】
<実施例7>
実施例1と大部分の工程は同一にして、銅-ダイヤモンド複合板材を製造した。実施例7の場合、実施例1とは異なって、ダイヤモンド粒子にコートされるTiの量を1.0wt%として製造し、その結果、本発明のデンドライトが形成された界面層を有する放熱基板を得た。
【0058】
<実施例8>
実施例8では、実施例1によって製造したCu-ダイヤモンド複合板材をクラッドして、5層積層構造の放熱基板を製作した。
【0059】
まず、銅(Cu)板材、銅-モリブデン(Cu-Mo)板材、Cu-ダイヤモンド複合板材、銅-モリブデン(Cu-Mo)板材、銅(Cu)板材の順に積層した後、放電プラズマ焼結(spark plasmaintering)法を用いて1,000℃で焼結することによって、図9に示されたような断面組織を有し、55mm×55mm×1.4mm(横×縦×厚さ)の寸法を有するCu/Cu-Mo/Cu-ダイヤモンド/Cu-Mo/Cu積層板材を製作した。
【0060】
前記積層板材を構成する各層の厚さは、Cu層100μm、Cu-Mo層50μm、Cu-ダイヤモンド層1.1mmとした。
【0061】
<比較例1>
実施例1と大部分の工程は同一にして、銅-ダイヤモンド複合板材を製造した。比較例1の場合、実施例1とは異なって、ダイヤモンド粉末の表面にチタンコーティング層を形成せず、銅メッキのみを行ったものを用いた。
【0062】
<比較例2>
実施例1と大部分の工程は同一にして、銅-ダイヤモンド複合板材を製造した。比較例2の場合、実施例1とは異なって、ダイヤモンド粉末の表面にチタンコーティング層を100nm程度の比較的薄い厚さで一部コートした形態で形成し、Tiの量を0.1wt%として製造したが、界面にデンドライト形状が形成されていないことを確認することができる。
【0063】
<比較例3>
実施例1と大部分の工程は同一にして、銅-ダイヤモンド複合板材を製造した。比較例3の場合、実施例1とは異なって、コーティング層を100nm程度の比較的薄い厚さで均一にコートした形態で形成し、Tiの量を0.2wt%として製造したが、界面にデンドライト形状が形成されていないことを確認することができる。
【0064】
<比較例4>
実施例1と大部分の工程は同一にして、銅-ダイヤモンド複合板材を製造した。比較例4の場合、実施例1とは異なって、表面にチタンコーティングを500nm程度で比較的厚い厚さで形成し、SPS焼結温度を実施例1に比べて100℃低い温度で行った。
【0065】
(微細組織)
実施例1~4、比較例1~4によって製作された複合板材の微細組織を走査電子顕微鏡で観察した。
【0066】
図5aは、本発明の実施例1による複合材料の界面層に対する走査電子顕微鏡写真であり、図5bは、図5aの複合材料の界面層に対するEDSマッピング結果であり、図6aは、本発明の実施例2による複合材料の界面層に対する走査電子顕微鏡写真であり、図6bは、図6aの複合材料の界面層に対するEDSマッピング結果であり、図7aは、本発明の実施例3による複合材料の界面層に対する走査電子顕微鏡写真であり、図7bは、図7aの複合材料の界面層に対するEDSマッピング結果であり、図8aは、本発明の実施例4による複合材料の界面層に対する走査電子顕微鏡写真であり、図8bは、図8aの複合材料の界面層に対するEDSマッピング結果である。
【0067】
図10図13は、それぞれ比較例1~4によって製作された複合板材の走査電子顕微鏡写真である。
【0068】
図5aおよび図5bから確認されるように、本発明の実施例1によって製作された複合板材においてダイヤモンド粒子(図5aで「C」で表示された領域)と銅基地(図5aで「Cu」で表示された領域)との間にチタン(図5aで「Ti」で表示された領域)とチタン炭化物(図5aで「TiC」で表示された領域)の複合組織が形成された界面層が形成されていることが分かる。
【0069】
また、実施例1による複合板材の界面層の内部に金属基地を構成する銅(Cu)が前記複合組織の内部に浸透して界面層に沿って多数の突起を有する銅デンドライト(dendrite)組織が形成されている。
【0070】
図6図8から確認されるように、実施例2~4による複合板材の界面層の内部にも金属基地を構成する銅(Cu)が前記複合組織の内部に浸透して界面層に沿って多数の突起を有する銅デンドライト(dendrite)組織(断面上ではアイランド組織と見られる)が形成されている。
【0071】
これに対し、図10から確認されるように、比較例1の場合には、ダイヤモンド粒子の表面にチタンコーティング処理を施さなかったため、銅基地とダイヤモンド粒子との間にチタンとチタン炭化物からなる境界層が形成されていない。
【0072】
また、比較例2の場合には、図11から確認されるように、界面層は、断面組織上にチタン炭化物(Ti)の間にチタン組織がアイランド形態で存在しており、この複合組織の内部に銅基地から突出した銅デンドライト(dendrite)組織が形成されていない。
【0073】
また、比較例3の場合には、図12から確認されるように、銅基地とダイヤモンド粒子との間にチタンとチタン炭化物の複合組織が形成された界面層が形成されている。比較例3の界面層は、本発明の実施例1と同様に、チタン組織がチタン炭化物(TiC)組織に比べて相対的にさらに多くの組織からなっているが、この複合組織の内部には銅基地から突出した銅デンドライト(dendrite)組織が形成されていない。
【0074】
また、比較例4の場合には、図13から確認されるように、銅基地とダイヤモンド粒子との間にチタンとチタン炭化物の複合組織が形成された界面層が形成されているが、境界層の内部には銅デンドライト(dendrite)組織が形成されていない。
【0075】
(熱伝導度および熱膨張係数の測定)
実施例1~8、比較例1~4によって製作された複合板材について、熱伝導度および熱膨張係数を測定した。
【0076】
熱伝導度は、複合板材の厚さ方向に対して、シンチレーション法(laserlight flash method)を用いた熱伝導度測定装置で測定した。また、熱膨張係数は、熱膨張係数測定装置(Dilatometer)を用いて四角形で作られた板材の横と縦の熱膨張係数を測定した。下記の表1は、測定された熱伝導度および熱膨張係数(板材の横と縦値の平均値)を示すものである。
【0077】
【表1】
【0078】
本発明の実施例1による複合板材は、銅-ダイヤモンド複合板材のみからなっていて、複合板材の厚さ方向の熱伝導度が676W/mKと非常に優れている。
【0079】
また、実施例2~7による複合板材は、596~669W/mKと良好なレベルであり、大部分の実施例が600W/mK以上の優れた熱伝導度を示した。
【0080】
一方、実施例8による複合板材は、Cu/Cu-Mo/Cu-ダイヤモンド/Cu-Mo/Cuの積層構造からなっていて、厚さ方向の熱伝導度が591W/mKと多少低い。
【0081】
比較例1~4の場合、本発明の実施例に比べて厚さ方向の熱伝導度が多少優れ、面方向の熱膨張係数は実施例1と類似のレベルで示された。
【0082】
(熱サイクルテスト)
実施例1、実施例7、比較例1~4によって製作された複合板材に対して、図14および表2に示したようなプロファイルで熱サイクル試験を行った。
【0083】
【表2】
【0084】
前記表2のテストを通じて熱伝導度低下率を測定した。熱伝導度低下率は、下記[式1]で計算し、下記の表3は、行った熱サイクル試験結果を示すものである。
【0085】
[式1]
熱伝導度低下率(%)=(加熱前の熱伝導度-加熱後の熱伝導度)/(加熱前の熱伝導度)×100
【0086】
【表3】
【0087】
表3から確認されるように、本発明の実施例1と7による複合板材は、熱伝導度の低下がほとんど起こらなかった。すなわち非常に苛酷なサイクル条件と言えるMIL-STD-883K-Cの条件で優れた信頼性を示した。
【0088】
これに対し、比較例1~4は、15%~55%まで厚さ方向の熱伝導度の低下が発生した。すなわち、熱サイクルが繰り返される使用環境における信頼性が、本発明の実施例による製品に比べて顕著に低い結果を示した。
【0089】
(界面層のチタン炭化物と熱伝導度)
図15は、界面層を構成するチタン(Ti)とチタン炭化物(TiC)の複合組織でTiCの含有量の割合による熱伝導度(TC)と熱伝導度低下率(%)を示すものである。また、「TC drop」は、温度範囲-5~350℃で加熱10分、冷却10分、サイクル数100回の加速条件で行った試験結果を示すものである。
【0090】
図15に示されたように、界面層にチタン炭化物(TiC)の割合が低いときには、界面層の内部に金属基地から突出するデンドライト組織が形成されている場合、熱サイクルによる熱伝導度の低下(図面上、「TC drop」で示したデータ)は殆どないが、チタン炭化物(TiC)の不足によって熱伝導度レベルが相対的に低く示され、界面層にチタン炭化物(TiC)の割合が高い場合には、界面層の内部に金属基地から突出するデンドライト組織が形成されていないので、熱伝導度の低下が発生する。
【0091】
したがって、チタン(Ti)とチタン炭化物(TiC)の複合組織を含む界面層で、チタン(Ti)とチタン炭化物(TiC)を合わせた重量に対してチタン炭化物(TiC)の含有量が1~45重量%(図15に青色で表示された領域)であることが好ましく、より好ましいチタン炭化物(TiC)の含有量は10~45重量%である。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15