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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】無線給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/40 20160101AFI20240412BHJP
   H02J 50/20 20160101ALI20240412BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20240412BHJP
【FI】
H02J50/40
H02J50/20
H02J50/80
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023122040
(22)【出願日】2023-07-26
【審査請求日】2023-07-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520354692
【氏名又は名称】エイターリンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】村井 彬人
(72)【発明者】
【氏名】小舘 直人
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-073930(JP,A)
【文献】特開2020-025400(JP,A)
【文献】特開2019-154195(JP,A)
【文献】特開2017-055596(JP,A)
【文献】特開2009-239640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/40
H02J 50/20
H02J 50/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1送信機と、第2送信機と、少なくとも1の受信機から構成される無線給電システムにおいて、
前記第1送信機および前記第2送信機は、前記受信機に対して給電電波を介して無線により電力供給が可能であり、
前記第1送信機の給電電波の中心周波数は、前記第2送信機の給電電波の中心周波数と異なり、
前記第1送信機および前記第2送信機の給電電波は、略継続的な連続波とみなすことができる無線電波であり、
前記第1送信機および前記第2送信機の出力端子に接続されたキャパシタ容量は互いに異なることにより、前記第1送信機の給電電波の中心周波数は、前記第2送信機の給電電波の中心周波数と異なる、
無線給電システム。
【請求項2】
第1送信機と、第2送信機と、少なくとも1の受信機から構成される無線給電システムにおいて、
前記第1送信機および前記第2送信機は、前記受信機に対して給電電波を介して無線により電力供給が可能であり、
前記第1送信機の給電電波の中心周波数は、前記第2送信機の給電電波の中心周波数と異なり、
前記第1送信機および前記第2送信機の給電電波は、略継続的な連続波とみなすことができる無線電波であり、
前記第1送信機の給電電波の中心周波数f1[Hz]は、前記第2送信機の給電電波の中心周波数をf2[Hz]とした場合に、f2 × (1+1000/1,000,000)[Hz]以下であり、かつ、f2 × (1-1000/1,000,000)[Hz]以上である、
無線給電システム。
【請求項3】
前記第1送信機の給電電波の中心周波数f1[Hz]は、前記第2送信機の給電電波の中心周波数をf2[Hz]とした場合に、f2 × (1+0.001/1,000,000)[Hz]以上であり、または、f2 × (1-0.001/1,000,000)[Hz]以下である、
請求項2記載の無線給電システム。
【請求項4】
第1送信機と、第2送信機と、少なくとも1の受信機から構成される無線給電システムにおいて、
前記第1送信機および前記第2送信機は、前記受信機に対して給電電波を介して無線により電力供給が可能であり、
前記第1送信機の給電電波の中心周波数は、前記第2送信機の給電電波の中心周波数と異なり、
前記第1送信機および前記第2送信機の給電電波は、略継続的な連続波とみなすことができる無線電波であり、
前記第1送信機および前記第2送信機の中心周波数は、前記第1送信機および前記第2送信機の温度を制御する温度制御手段に基づき、前記第1送信機および前記第2送信機の中心周波数が異なるように制御される、
無線給電システム。
【請求項5】
第1送信機と、第2送信機と、少なくとも1の受信機と、前記第1送信機および前記第2送信機を制御可能な制御装置と、から構成される無線給電システムにおいて、
前記第1送信機および前記第2送信機は、前記受信機に対して給電電波を介して無線により電力供給が可能であり、
前記第1送信機の給電電波の中心周波数は、前記第2送信機の給電電波の中心周波数と異なり、
前記第1送信機および前記第2送信機の給電電波は、略継続的な連続波とみなすことができる無線電波であり、
前記制御装置は、前記第1送信機の給電電波の中心周波数が、前記第2送信機の給電電波の中心周波数とは異なるように制御し、
前記制御装置は、前記第1送信機、前記第2送信機および前記少なくとも1の受信機とは異なる情報処理装置である、
無線給電システム。
【請求項6】
第1送信機と、第2送信機と、少なくとも1の受信機から構成される無線給電システムにおいて、
前記第1送信機および前記第2送信機は、前記受信機に対して給電電波を介して無線により電力供給が可能であり、
前記第1送信機の給電電波の中心周波数は、前記第2送信機の給電電波の中心周波数と異なり、
前記第1送信機および前記第2送信機の給電電波は、略継続的な連続波とみなすことができる無線電波であり、
前記第1送信機および前記第2送信機は、互いに通信するための通信手段を備え、
前記第1送信機または前記第2送信機は、前記通信手段を介して受信した通信情報に基づき、前記第1送信機の給電電波の中心周波数が、前記第2送信機の給電電波の中心周波数と異なるように制御する、
無線給電システム。
【請求項7】
前記第1送信機または前記第2送信機は、互いに通信情報を受信することなしに、前記第1送信機の給電電波の中心周波数が、前記第2送信機の給電電波の中心周波数と異なるように制御する、
請求項1から4のいずれか記載の無線給電システム。
【請求項8】
前記第1送信機の給電電波の周波数は、前記第2送信機の給電電波の周波数と同じチャネルに属する無線電波である、
請求項1から6のいずれか記載の無線給電システム。
【請求項9】
前記第1送信機および前記第2送信機は、前記受信機と通信電波を介して無線による情報通信が可能であり、
前記第1送信機および前記第2送信機の給電電波は、無変調、変調信号無し、無情報の無線電波である、
請求項1から6のいずれか記載の無線給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線により電力を送電する技術が知られている。
特許文献1には、端末に対し効率的な給電を実現する電子装置及び給電方法を提供する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-154195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無線給電システムにおいて、受信機が安定的に複数の送信機から電力供給を受けることができない場合があるという課題がある。
そこで、本開示は、上記課題を解決すべくなされたものであって、その目的は、受信機が安定的に複数の送信機から電力供給を受けることを可能とする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1送信機と、第2送信機と、少なくとも1の受信機から構成される無線給電システムにおいて、第1送信機および第2送信機は、受信機に対して給電電波を介して無線により電力供給が可能であり、第1送信機の給電電波の中心周波数は、第2送信機の給電電波の中心周波数と異なり、第1送信機および第2送信機の給電電波は、略継続的な連続波とみなすことができる無線電波である、無線給電システム。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、無線給電システムにおいて、受信機が安定的に複数の送信機から電力供給を受けることを可能とする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係るWPTシステム1の全体の構成を示す図である。
図2】第1送信機100、第2送信機110と、受信機200との構成例を表すブロック図である。
図3】制御装置C10の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。実施形態を説明する全図において、共通の構成要素には同一の符号を付し、繰り返しの説明を省略する。なお、以下の実施形態は、特許請求の範囲に記載された本開示の内容を不当に限定するものではない。また、実施形態に示される構成要素のすべてが、本開示の必須の構成要素であるとは限らない。また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。
【0009】
<1 システム全体の構成図>
図1は、本実施形態に係るWPTシステム1の全体の構成を示す図である。
【0010】
図1に示すWPTシステム1は、例えば、第1送信機100、第2送信機110、受信機200、第1情報処理装置300、及び第2情報処理装置400を備える。図1に示すWPTシステム1は、例えば、ビル、又は工場等で利用される。なお、第1送信機100、第2送信機110と第1情報処理装置300との接続、及び第1情報処理装置300と第2情報処理装置400との接続は、有線であっても無線であっても構わない。
【0011】
図1において、WPTシステム1が送信機を3台(第1送信機100、第2送信機110、第3送信機120)含む例を示しているが、WPTシステム1に含まれる送信機の数は、3台に限定されない。WPTシステム1に含まれる送信機は、2台以下であってもよいし、4台以上であってもよい。
【0012】
図1において、WPTシステム1が受信機200を7台含む例を示しているが、WPTシステム1に含まれる受信機200の数は、7台に限定されない。WPTシステム1に含まれる受信機200は、6台以下であってもよいし、8台以上であってもよい。
【0013】
第1送信機100および第2送信機110は、複数の受信機200に対して給電電波を介して無線により電力供給が可能である。
第1送信機100および第2送信機110は、複数の受信機200と通信電波を介して無線による情報通信が可能である。
【0014】
第1送信機100および第2送信機110の給電電波は、略継続的な連続波とみなすことができる無線電波としても良い。
第1送信機100および第2送信機110から送信される給電信号は所定の電力を有する無線周波数信号であり、かつ、この無線周波数信号に、休止期間以外の期間と比較してわずかな期間である任意の周期の休止期間を設けることで、略継続的な連続波とみなすことができる無線周波数信号とすることが好適である。
具体的に、第1送信機100および第2送信機110から送信される給電信号(給電電波)は、一例として、所定の電力を有する連続波(CW)であってもよい。また 、給電信号の周波数帯域は、第1送信機100および第2送信機110と受信機200との間の距離を考慮して、例えば920MHz帯域である。例示した周波数帯域より高周波数の帯域であると、第1送信機100および第2送信機110と受信機200の距離を短くしないと、受信機200が動作可能な所定の電力を給電できない可能性があるので、実用的範囲を考慮する(一例として第1送信機100および第2送信機110と受信機200との間の距離が数mであるとか)ことで適切な周波数帯域を決定することができる。
なお、本開示においては第1送信機100および第2送信機110が送信する無線電波の周波数は920MHz帯域を中心に互いに相違する。
【0015】
この際、WPTシステム1が設置された国の法律等により、所定の電力を有する給電信号を間欠的に行う制限が生じることがある。一例として、第1送信機100および第2送信機110からの給電信号が、日本の電波法に規定する無線局の規定に該当する場合(免許の有無は問わない)、電波法に基づいて給電信号に対して一定の休止期間を設ける必要が生じる場合がある。この場合、ある程度の時間軸上で考えると、給電信号は連続波とは言えない。但し、休止期間を設けることが肝要であり、この休止期間はわずかであれば足りるので、第1送信機100および第2送信機110から送信される給電信号は略継続的な連続波であると見なすことができる。給電信号の継続時間と休止期間の時間との比は、上述したように、第1送信機100および第2送信機110から送信される給電信号が略連続的な連続波であると見なすことができる程度のものであればよいが、一例として、休止期間の時間が給電信号の継続時間の1/50~1/100程度である。
【0016】
第1送信機100および第2送信機110の給電電波は、無変調、変調信号無し、無情報の無線電波とすることが好適である。
具体的に、一般に通信システムで使用される電波の特性を表す電波型式というものがある。電波型式は、主搬送波の変調の型式、主搬送波を変調する信号の性質、および伝送情報の型式を示すアルファベットまたは数値を組み合わせた3文字の文字列により表現される。
主搬送波の変調の型式は、無変調:N、振幅変調(両側波帯):A、振幅変調(単側波帯・全搬送波):H、振幅変調(単側波帯・低減搬送波):R、振幅変調(単側波帯・抑圧搬送波):J、振幅変調(独立側波帯):B、振幅変調(独立側波帯):C、角度変調(周波数変調):F、角度変調(位相変調):G、振幅変調及び角度変調を同時に又は一定の順序で変調:Dのいずれか1つからなる。
主搬送波を変調する信号の性質は、変調信号無し:0、副搬送波を使用しないデジタル信号の単一チャネル:1、副搬送波を使用するデジタル信号の単一チャネル:2、アナログ信号の単一チャネル:3、デジタル信号の2以上のチャネル:7、アナログ信号の2以上のチャネル:8、1以上のアナログ信号のチャネルと1以上のデジタル信号のチャネルの複合方式:9のいずれか1つからなる。
伝送情報の型式は、無情報:N、電信(聴覚受信):A、電信(自動受信):B、ファクシミリ:C、データ伝送・遠隔測定・遠隔指令:D、電話(音響):E、テレビジョン(映像):F、NからFまでの組合せ:Wのいずれか1つからなる。
本開示における、第1送信機100および第2送信機110の給電電波の電波型式はN0Nであり、無変調:N、副搬送波を使用しないデジタル信号の単一チャネル:0、無情報:Nである。この場合、給電電波は、主搬送波が変調されず(無変調)、デジタル信号もなく(副搬送波を使用しないデジタル信号の単一チャネル)、伝送される情報もない(無情報)ことを示している。
これにより、変調がないため、周囲の他の通信システムとの干渉が少なくなることにより、安定したエネルギー伝送が可能になる。また、無変調であるため、送信エネルギーが搬送波に集中する。これにより、送信機と受信機間でエネルギーを効率的に伝送することができる。情報を伝送しないため、システムがシンプルであり、送信機と受信機の設計と実装を簡素なものとすることができる。
【0017】
なお、本明細書において、第1送信機100、第2送信機110は無線で電力を送信するという意味での(電力)第1送信機100、(電力)第2送信機110であり、同様に、受信機200は無線で電力を受信するという意味での(電力)受信機200である。後述するように、受信機200は、例えば、受信機200の状態に関する情報、又はセンサによる計測結果に関する情報を、データ信号(通信電波)として第1送信機100、第2送信機110へ送信し、第1送信機100、第2送信機110はかかるデータ信号を受信することがある。この場合、第1送信機100、第2送信機110はデータ信号を受信する受信機であり、受信機200はデータ信号を送信する送信機として機能する。
【0018】
図1において、WPTシステム1が第1情報処理装置300を2台含む例を示しているが、WPTシステム1に含まれる第1情報処理装置300の数は、2台に限定されない。WPTシステム1に含まれる第1情報処理装置300は、1台であってもよいし、3台以上であってもよい。
【0019】
以下、第1送信機100と受信機200、第1情報処理装置300、第2情報処理装置400などとの関係を説明する。なお、第2送信機110は、第1送信機100と同様であるため詳細な説明は省略する。
【0020】
第1送信機100は、例えば、受信機200へ給電信号、又はデータ信号を送信する。第1送信機100は、例えば、920MHz帯の電波により、受信機200へ給電信号を送信する。第1送信機100は、例えば、2.4GHz帯の電波により、受信機200へデータ信号を送信する。第1送信機100は、データ信号を、920MHz帯の電波により送信してもよい。
【0021】
第1送信機100は、例えば、1台の受信機200へ給電してもよいし、複数台の受信機200へ給電してもよい。第1送信機100は、例えば、1台の受信機200へデータ信号を送信してもよいし、複数台の受信機200へデータ信号を送信してもよい。第1送信機100は、例えば、他の第1送信機100と同じデータ信号を送信してもよいし、他の第1送信機100と異なるデータ信号を送信してもよい。第1送信機100は、例えば、所定のコマンド信号をデータ信号として受信機200へ送信してもよいし、予め設定された信号をデータ信号として受信機200へ送信してもよい。
【0022】
第1送信機100は、例えば、受信機200から送信されるデータ信号を受信する。第1送信機100は、例えば、1台の受信機200から送信されるデータ信号を受信してもよいし、複数の受信機200から送信されるデータ信号を受信してもよい。第1送信機100は、受信機200から送信されるデータ信号を第1情報処理装置300へ送信する。第1送信機100は、第1送信機100の状態に関する情報を第1情報処理装置300へ送信する。
【0023】
受信機200は、例えば、第1送信機100から送信される給電信号、又はデータ信号を受信する。受信機200は、例えば、蓄電部を有する場合、第1送信機100から送信される給電信号を電力へ変換し、変換した電力を蓄電部に貯える。受信機200は、例えば、所定のセンサを有する場合、第1送信機100から送信される給電信号を電力へ変換し、変換した電力によりセンサを駆動させる。
【0024】
受信機200は、例えば、受信機200の状態に関する情報、又はセンサによる計測結果に関する情報を、データ信号として第1送信機100へ送信する。
【0025】
第1情報処理装置300は、WPTシステム1に収容される第1送信機100、受信機200の動作を監視する情報処理装置である。例えば、第1情報処理装置300は、第1送信機100から送信される、第1送信機100、及び受信機200の状態に関する情報に基づき、第1送信機100、又は受信機200が予め設定された状態になっているか否かを判断する。予め設定された状態になっていると判断した場合、第1情報処理装置300は、所定の情報を第2情報処理装置400へ送信する。
【0026】
また、第1情報処理装置300は、WPTシステム1に収容される第1送信機100、受信機200についての情報を蓄積する。例えば、第1情報処理装置300は、第1送信機100から送信される、第1送信機100及び受信機200の状態に関する情報を、第1情報処理装置300に設けられる記憶部に記憶する。
【0027】
また、第1情報処理装置300は、WPTシステム1に収容される第1送信機100の動作を制御する。例えば、第1情報処理装置300は、所定の指示、又は情報を第1送信機100へ送信する。
【0028】
また、第1情報処理装置300は、第2情報処理装置400の動作を制御する。
【0029】
第2情報処理装置400は、例えば、WPTシステム1の管理者が操作する情報処理装置である。第2情報処理装置400は、WPTシステム1に収容される第1送信機100、受信機200、又はこれらの両方が所定の状態になっている旨の連絡を第1情報処理装置300から受信すると、第1送信機100、受信機200、又はこれらの両方が所定の状態になっていることをユーザに提示する。
【0030】
また、第2情報処理装置400は、第1情報処理装置300に蓄積されている、第1送信機100及び受信機200の状態に関する情報を分析し、所定の情報をユーザに提示する。所定の情報は、例えば、以下である。
・第1送信機100の配置に関する情報
・受信機200の配置に関する情報
・消費電力に関する情報
・電力量に関する情報
【0031】
<送信機と受信機の構成>
図2は、図1に示す第1送信機100と、受信機200との構成例を表すブロック図である。図2に示すように、第1送信機100と受信機200とは、例えば、互いに所定間隔で離間する。例えば、第1送信機100と受信機200とは、数m程度の距離だけ隔てられて設置される。具体的には、例えば、第1送信機100は、屋内の高所、例えば、天井、又は壁に設けられた所定の高位置に固定して設置される。受信機200は、屋内の所定のデバイスに設置されたり、給電が必要なデバイスの近傍に載置されたりする。また、受信機200は、ユーザにより携帯されてもよい。第1送信機100は、所定の周波数、例えば、920MHz帯の電波により、受信機200へ給電信号を送信する。受信機200は、第1送信機100から送信される給電信号を電力へ変換し、変換した電力を充電するか、又は、変換した電力を所定のデバイスへ供給する。
【0032】
第1送信機100は、例えば、発振器101、送信アンテナ102、マイコン(制御器)103、データ送受信機104、データ送受信アンテナ105、キャパシタ、PLL107、電力増幅部108、電源109を有する。発振器101、マイコン103、データ送受信機104、データ送受信アンテナ105、キャパシタ、PLL107、電力増幅部108、電源109、又はこれらのうち少なくともいずれかの組み合わせは、例えば、PCB(プリント基板)に実装されていてもよい。
【0033】
発振器101は、所定周波数帯、例えば、920MHz帯の信号を発振させる。発振された信号は、必要に応じて、増幅されて、不要周波数成分が除去されてもよい。
【0034】
送信アンテナ102は、例えば、920MHz帯の電波を効率的に送信可能に形成されている。送信アンテナ102は、発振器101で発振された信号を、給電信号として放射する。
【0035】
マイコン103は、第1送信機100の動作を制御する。マイコン103は、例えば、ARMプロセッサを搭載した半導体素子により実現される。マイコン103は、例えば、送信アンテナ102による電波の送信を制御する。マイコン103は、電力増幅部108に供給する電力の電流および電圧を制御することにより、送信アンテナ102による電波の送信強度を制御することができる。
【0036】
データ送受信機104は、デジタルデータのアナログ化、アナログデータの変調等の処理を実施する。また、データ送受信機104は、データ送受信アンテナ105で受信されるデータ信号の復調、復調されたデータのデジタル化等の処理を実施する。データ送受信機104は、例えば、データ送受信アンテナ105で受信されるデータ信号から所定の信号を抽出し、デジタルデータに変換してマイコン103へ送信する。
【0037】
データ送受信アンテナ105は、例えば、2.4GHz帯の電波を効率的に送受信可能に形成されている。データ送受信アンテナ105は、データ送受信機104から供給されるデータ信号を放射する。また、データ送受信アンテナ105は、受信機200から送信されたデータ信号を受信する。
【0038】
キャパシタは、PLL107と、電源109と、GND(グランド、0V)の間に設けられ、高品質な信号を生成するためのバイパスコンデンサとしての役割を有する。
なお、キャパシタは、PLL107と接続され、高品質な信号を生成し、不要な高周波成分を除去するためのローパスフィルタとしての役割を有するキャパシタとしても構わない。ローパスフィルタは、抵抗器とキャパシタを含み、高周波成分をキャパシタに流し、低周波成分を通過させる機能を有する。発振器101と、PLL107との間にローパスフィルタを設置することで、不要な高周波成分を除去し、出力信号の品質を向上させることができる。
【0039】
PLL107は、Phase-Locked Loopとよばれる周波数と位相を制御するための電子回路である。PLLには、キャパシタが接続されており、キャパシタ容量に応じて、送信アンテナ102が送信する無線電波の周波数が変化する。本開示においては、キャパシタは、発振器101とPLL107との間に設けられる。
【0040】
電力増幅部108は、PLL107から出力された信号をマイコン103からの電力に基づき増幅し、送信アンテナ102に出力する電子回路である。
【0041】
電源109は、発振器101、マイコン103へ電力を供給する電源である。
【0042】
受信機200は、例えば、受信アンテナ201、整流器202、電力管理部203、蓄電部204、マイコン205、データ送受信機206、データ送受信アンテナ207を有する。受信アンテナ201、整流器202、電力管理部203、蓄電部204、マイコン205、データ送受信機206、データ送受信アンテナ207、又はこれらのうち少なくともいずれかの組み合わせは、例えば、PCB又はFPC(フレキシブル基板)に実装されていてもよい。
【0043】
受信アンテナ201は、例えば、920MHz帯の電波を効率的に受信可能に形成されている。受信アンテナ201は、送信アンテナ102から放射された給電信号を受信する。
【0044】
整流器202は、給電信号として受信した電波を整流し、直流電圧に変換する。
【0045】
電力管理部203は、直流電圧を管理する。例えば、電力管理部203は、直流電圧に基づいて充電電圧を制御する。電力管理部203は、充電電圧を制御することで、蓄電部204を充電する。また、電力管理部203は、例えば、蓄電部204に所定容量以上の電力が蓄えられると、直流電圧を、接続される部材へ供給する。
【0046】
また、電力管理部203は、マイコン205からの制御に応じ、蓄電部204に蓄えられた電力を放出させる。
【0047】
蓄電部204は、電力管理部203からの指示に応じて電力を蓄える。蓄電部204は、例えば、バッテリー、又はキャパシタ等により実現される。また、蓄電部204は、電力管理部203からの指示に応じて蓄えている電力を放出する。
【0048】
マイコン205は、受信機200の動作を制御する。マイコン205は、電力管理部203から供給される直流電圧、又は蓄電部204に蓄えられた電力により駆動される。マイコン205は、電力管理部203を制御し、蓄電部204に蓄えられた電力を放出させる。
【0049】
受信機200には、例えば、種々のセンサが接続可能である。例えば、熱センサ、温度センサ、光センサ、湿度センサ、振動センサ等が受信機200に接続される。受信機200に接続されたセンサは、例えば、電力管理部203から供給される直流電圧、又は蓄電部204から放出される電力により駆動される。マイコン205は、受信機200の所定部位における電圧値、受信機200に接続されるセンサの状況、センサにより検出された情報等を、継続的又は断続的に監視する。マイコン205は、受信機200の所定部位における電圧値、受信機200に接続されるセンサの状況、センサにより検出された情報等をデジタルデータとしてデータ送受信機206へ送信する。なお、センサは、受信機200に内蔵されていてもよい。
【0050】
データ送受信機206は、マイコン205から供給されるデジタルデータのアナログ化、アナログデータの変調等の処理を実施する。また、データ送受信機206は、データ送受信アンテナ207で受信されるデータ信号の復調、復調されたデータのデジタル化等の処理を実施する。データ送受信機206は、例えば、電力管理部203から供給される直流電圧、又は蓄電部204から放出される電力により駆動される。
【0051】
データ送受信アンテナ207は、例えば、2.4GHz帯の電波を効率的に送受信可能に形成されている。データ送受信アンテナ207は、データ送受信機206から供給されるデータ信号を放射する。また、データ送受信アンテナ207は、第1送信機100から送信されたデータ信号を受信する。例えば、データ送受信アンテナ207は、例えば、電力管理部203から供給される直流電圧、又は蓄電部204から放出される電力により駆動される。
【0052】
<制御装置C10の構成>
制御装置C10は、記憶部C101、制御部C104を備える情報処理装置である。
本開示において、制御装置C10は、第1情報処理装置300、第2情報処理装置400とは異なる情報処理装置として開示するが、第1情報処理装置300または第2情報処理装置400が、制御装置C10の機能を有するものとしても構わない。つまり、制御装置C10は、第1情報処理装置300または第2情報処理装置400であっても良い。
また、制御装置C10が有する機能は、複数の第1送信機100の少なくともいずれか1つに含まれ、第1送信機100の機能の一部として実現しても良い。つまり、制御装置C10が実行可能な処理は、第1送信機100により実行されても良い。つまり、第1送信機100は、制御装置C10のハードウェアおよびソフトウェア構成を一部に含んでも良い。
例えば、複数の第1送信機100のいずれかが他の第1送信機100の親機(ホスト)として、制御装置C10の機能を発揮し、各種処理を実行しても良い。つまり、親機にかかる第1送信機100は、制御装置C10として機能するためのハードウェアおよびソフトウェア構成を一部に含む。
なお、全ての第1送信機100が、制御装置C10として機能するためのハードウェアおよびソフトウェア構成を一部に含む構成としても良い。この場合、選択された所定の第1送信機100が親機として、制御装置C10の機能を発揮しても良い。親機は、ユーザによる入力操作により選択されても良い。
図3は、制御装置C10の機能構成を示すブロック図である。
【0053】
<制御装置C10の記憶部C101の構成>
制御装置C10の記憶部C101は、アプリケーションプログラムC1011を備える。
【0054】
アプリケーションプログラムC1011は、制御装置C10の制御部C104を各機能ユニットとして機能させるためのプログラムである。
アプリケーションプログラムC1011は、ウェブブラウザアプリケーションなどのアプリケーションを含む。
【0055】
<制御装置C10の制御部C104の構成>
制御装置C10の制御部C104は、記憶部C101に記憶されたアプリケーションプログラムC1011を実行することにより、各機能ユニットが実現される。
【0056】
制御装置C10は、前記複数の送信機と有線接続を介して制御可能である。
具体的に、制御装置C10は、複数の第1送信機100とイーサネット(Ethernet)、USB(Universal Serial Bus)、シリアル接続等の任意の有線接続規格に基づき有線接続されていても良い。制御装置C10の制御部C104は、有線接続を介して制御信号を第1送信機100へ送信することにより、第1送信機100の給電信号の送信、データ信号の送受信を制御することができる。
【0057】
制御装置C10は、前記複数の送信機を無線接続を介して制御可能である。
具体的に、制御装置C10は、複数の第1送信機100とWiFi、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)、Zigbee(登録商標)、Z-Wave、LTE等の任意の無線接続規格に基づき無線接続されていても良い。制御装置C10の制御部C104は、無線接続を介して制御信号を第1送信機100へ送信することにより、第1送信機100の給電信号の送信、データ信号の送受信を制御することができる。
【0058】
<WPTシステム1の動作>
本開示におけるWPTシステム1の特徴を以下に説明する。
【0059】
第1送信機100の給電電波の中心周波数は、第2送信機110の給電電波の中心周波数と異なる。
具体的に、中心周波数とは、第1送信機100および第2送信機110が送信する給電電波の周波数範囲のうち、周波数帯域の中央に位置する周波数のことを示す。なお、本開示において第1送信機100および第2送信機110が送信する給電電波は、電波法で定められた同じチャネル(略同一の周波数)の無線電波を送信するものとする。所定のチャネルごとに所定の基準周波数が割り当てられており、通常、当該基準周波数(センター周波数)に対して、±20ppm(Parts Per Million)の範囲内に含まれる周波数を有する無線電波は、同じチャネルの無線電波となる。例えば、所定チャネルの基準周波数をfとして、f × (1±20/1,000,000)[Hz]の範囲内に含まれる周波数を有する複数の電波は、同じチャネルの無線電波となる。
なお、本開示においては一例として日本の電波法に基づく同一チャネルの定義を説明したがこれに限られない。具体的に実施国の法令や、業界慣習等に基づき同一チャネルの範囲が定められても構わない。
例えば、アメリカ大陸系諸国では902MHz~928MHz、ヨーロッパ系諸国では865.0~865.6MHzの範囲内で任意の中心周波数を取ることとしても構わない。例えば、第1の送信機の中心周波数が902MHz、第2の送信機の中心周波数が928MHzとしても構わない。
その他、24GHz(ミリ波)などに対して適用しても構わない。
【0060】
本開示において、第1送信機100および第2送信機110が送信する給電電波は、無変調、変調信号無し、無情報の無線電波(電波型式N0N)である。そのような場合において、中心周波数は、給電電波の周波数となる。
本開示における第1送信機100および第2送信機110が送信する給電電波は、電波型式N0Nである。電波形式がN0Nの電波は、無変調の連続波(CW)として知られおり、理論上は単一の周波数を持つべきものであるが、実際の送信機においては完全に一定の周波数を保つことは困難である。例えば、送信機が設置された環境における外気温の変化は、送信機のコンポーネント(特に発振器)の特性に影響を与え、送信機が送信する給電電波の周波数にも影響を与える。また、送信機が備える発振器、キャパシタ、抵抗などの電子部品には製造過程での微妙な個体差があり、送信周波数に影響を及ぼす場合がある。送信機に供給される電源からのノイズや電源の不安定さも送信機の周波数に影響を及ぼす。
本開示における中心周波数は、第1送信機100および第2送信機110が設置された所定の設置環境において、所定の期間に渡って送信される給電電波の最小値および最大値の平均値とする場合を一例として説明する。
【0061】
第1送信機100の給電電波の中心周波数f1[Hz]は、第2送信機110の給電電波の中心周波数をf2[Hz]とした場合に、f2 × (1+100/1,000,000)[Hz]以下であり、かつ、f2 × (1-100/1,000,000)[Hz]以上である。第1送信機100の給電電波の中心周波数f1[Hz]は、第2送信機110の給電電波の中心周波数をf2[Hz]とした場合に、f2 × (1+1/1,000,000)[Hz]以上であり、かつ、f2 × (1-1/1,000,000)[Hz]以下である。
第1送信機100の給電電波の中心周波数f1[Hz]は、第2送信機110の給電電波の中心周波数をf2[Hz]とした場合に、f2 × (1+1/1,000,000)[Hz]以上であり、かつ、f2 × (1+100/1,000,000)[Hz]以下の範囲で、第1送信機100の中心周波数f1および第2送信機110の中心周波数f2を相違させることが好適である。
第1送信機100の給電電波の中心周波数f1[Hz]は、第2送信機110の給電電波の中心周波数をf2[Hz]とした場合に、f2 × (1-1/1,000,000)[Hz]以下であり、かつ、f2 × (1-100/1,000,000)[Hz]以上の範囲で、第1送信機100の中心周波数f1および第2送信機110の中心周波数f2を相違させることが好適である。
【0062】
具体的に、第1送信機100および第2送信機110が送信する給電電波は、所定のチャネルごとに電波法で定められた基準周波数fcを基準に,電波法で定められた範囲内(±20ppm、Parts Per Million)で相違することが好適である。
【0063】
第1送信機100の給電電波の中心周波数f1[Hz]は、第2送信機110の給電電波の中心周波数をf2[Hz]とした場合に、f2 × (1+20/1,000,000)[Hz]以下であり、かつ、f2 × (1-20/1,000,000)[Hz]以上の範囲とすることが好適である。
第1送信機100の給電電波の中心周波数f1[Hz]は、第2送信機110の給電電波の中心周波数をf2[Hz]とした場合に、f2 × (1+1,000/1,000,000)[Hz]以下であり、かつ、f2 × (1-1,000/1,000,000)[Hz]以上であることが好適である。
【0064】
第1送信機100の給電電波の中心周波数が920MHzである場合に、第2送信機110の給電電波の中心周波数は、920MHz±9.2kHz前後が好適である。具体的に、第2送信機110の給電電波の中心周波数は、第1送信機100の給電電波の中心周波数から920MHz×(10/1,000,000)[Hz]=9.2kHz程度相違することが好適である。
上記2波の周波数の異なる波が重なると、9.2kHzで振幅(受信電力)が変動する。変動とは電力が強くなることと弱くなること両方が時間的に発生することである。強くなる時間と弱くなる時間の変動は短いほど時間的にロバストなふるまいといえる。第1送信機100の給電電波の中心周波数f1と、第2送信機110の給電電波の中心周波数f2とが、9.2kHz程度相違する場合の供給電力の時間的な変動は、概ね1/9.2kHz=100μ秒程度となる。特に、FA(Factory Automation)機器、ビーコン等に用いられるセンサ等における無線給電に適用する場合には、その程度の供給電力の時間的変動は給電装置の動作に影響を与えないため好適である。
【0065】
第1送信機100の給電電波の中心周波数f1[Hz]は、第2送信機110の給電電波の中心周波数をf2[Hz]とした場合に、f2 × (1+0.001/1,000,000)[Hz]以上であり、または、f2 × (1-0.001/1,000,000)[Hz]以下であることが好適である。
具体的に、第1送信機100の給電電波の中心周波数が920MHzである場合に、第2送信機110の給電電波の中心周波数は、920MHz±9.2Hz前後が好適である。具体的に、第2送信機110の給電電波の中心周波数は、第1送信機100の給電電波の中心周波数から920MHz×(0.001/1,000,000)[Hz]=9.2Hz程度相違することが好適である。
上記2波の周波数の異なる波が重なると、9.2Hzで振幅(受信電力)が変動する。変動とは電力が強くなることと弱くなること両方が時間的に発生することである。強くなる時間と弱くなる時間の変動は短いほど時間的にロバストなふるまいといえる。第1送信機100の給電電波の中心周波数f1と、第2送信機110の給電電波の中心周波数f2とが、9.2Hz程度相違する場合の供給電力の時間的な変動は、概ね1/9.2Hz=10ミリ秒程度となる。特に、設置環境の環境条件(気温、湿度、気圧、照明条件、音響条件、放射線レベル、振動、風速と風向、またはその他の種類の環境要素等)を検出、測定、監視するためのデバイスである環境センサにおいては、蓄電される容量も多いためその程度の供給電力の時間的変動は給電装置の動作に影響を与えないため好適である。
【0066】
第1送信機100の給電電波の中心周波数と、第2送信機110の給電電波の中心周波数とは、以下の条件に基づき相違するものとすることができる。
・第1送信機100および第2送信機110の出力端子に接続されたキャパシタの容量が相違する。なお、ここでいうキャパシタは、PLL107に接続され、送信する電波信号の電源ノイズの影響を抑えるために用いられるローパスフィルタに含まれるキャパシタである。キャパシタは、第1送信機100または第2送信機110に少なくとも含まれる。
・第1送信機100および第2送信機110の設置環境の外気温が相違することにより、第1送信機100および第2送信機110のコンポーネント特性が相違する。また、第1送信機100および第2送信機110のコンポーネントが相違することにより、第1送信機100および第2送信機110の温度特性が変化する場合も含む。
・第1送信機100および第2送信機110に供給される電源電圧または電源電流が相違する。具体的に、マイコン103は、PLL107に対して供給する電力の電圧および電流を制御する。具体的に、第1送信機100および第2送信機110において、マイコン103がPLL107に対して供給する電力の電圧および電流を制御することにより、第1送信機100の給電電波の中心周波数と、第2送信機110の給電電波の中心周波数とを相違させる。
【0067】
第1送信機100または第2送信機110は、互いに通信情報を受信することなしに、第1送信機100の給電電波の中心周波数が、第2送信機110の給電電波の中心周波数と相違するようにしても良い。
具体的に、第1送信機100および第2送信機110が送信する給電電波の中心周波数を、予め互いに相違する周波数としておくことが考えられる。また、第1送信機100および第2送信機110が送信する給電電波の中心周波数を、所定期間ごとにランダム、所定の時間変化パターンに応じて制御することにより、第1送信機100および第2送信機110が送信する給電電波の中心周波数を、互いに通信情報を受信することなしに相違させることができる。
これにより、無線給電システムの複雑さが低減され、送信機間の干渉が減少し、電力伝送の効率が向上する。また、通信が不要なため、セキュリティリスクを低減させることができる
【0068】
<制御装置C10の動作>
制御装置C10の制御部C104による、第1送信機100の制御について説明する。
【0069】
無線給電システム(WPTシステム1)は、第1送信機100および第2送信機110を制御可能な制御装置C10を備え、制御装置C10は、第1送信機100の給電電波の中心周波数が、第2送信機110の給電電波の中心周波数とは異なるように制御する。
第1送信機100および第2送信機110の中心周波数は、第1送信機100および第2送信機110の温度を制御する温度制御手段と、第1送信機100および第2送信機110の電源電圧を制御する電源電圧制御手段と、第1送信機100および第2送信機110に電源電流を制御する電源電流制御手段と、の少なくともいずれか1以上の制御手段に基づき、第1送信機100および第2送信機110の中心周波数が異なるように制御される。
【0070】
制御装置C10は、第1送信機100または第2送信機のマイコンに対して制御信号を送信することにより、コンポーネントの温度または外気温を制御する。これにより、第1送信機100および第2送信機110の中心周波数は、異なるように制御される。
例えば、第1送信機100または第2送信機110が備えるマイコン103を制御することにより、送信機が備えるコンポーネントを発熱させ温度を制御しても良い。その他、別途、送信機が備える不図示のヒーター等を制御することにより、送信機の温度を制御しても良い。また、第1送信機100または第2送信機110が設置された設置環境における空調機器等を制御することにより第1送信機100または第2送信機110の温度を制御しても良い。
【0071】
制御装置C10は、第1送信機100または第2送信機のマイコンに対して制御信号を送信することにより、PLL107に供給される電源電圧または電源電流を制御する。これにより、第1送信機100および第2送信機110の中心周波数は、異なるように制御される。具体的に、マイコン103は、PLL107に対して供給する電力の電圧および電流を制御する。具体的に、第1送信機100および第2送信機110において、マイコン103がPLL107に対して供給する電力の電圧および電流を制御することにより、第1送信機100の給電電波の中心周波数と、第2送信機110の給電電波の中心周波数とを相違させる。
【0072】
なお、第1送信機100または第2送信機110は、互いに通信情報を受信することなしに、第1送信機100の給電電波の中心周波数が、第2送信機110の給電電波の中心周波数と異なるように制御しても良い。
具体的に、第1送信機100および第2送信機110が送信する給電電波の中心周波数を、予め互いに相違する周波数としておくことが考えられる。また、第1送信機100および第2送信機110が送信する給電電波の中心周波数を、所定期間ごとにランダム、所定の時間変化パターンに応じて制御することにより、第1送信機100および第2送信機110が送信する給電電波の中心周波数を、互いに通信情報を受信することなしに相違させることができる。
これにより、送信機間の干渉が低減され、各送信機が効率的に電力を伝送することができ、無線給電システムの電力伝送性能が向上する。
【0073】
第1送信機100および第2送信機110は、互いに通信するための通信手段を備え、第1送信機100または第2送信機110は、通信手段を介して受信した通信情報に基づき、第1送信機100の給電電波の中心周波数が、第2送信機110の給電電波の中心周波数と異なるように制御しても良い。
具体的に、第1送信機100は、第2送信機110が送信する給電電波の周波数に関する情報を無線または有線通信により取得し、第1送信機100が送信する給電電波の周波数を、第2送信機110が送信する給電電波の周波数と異なるように制御しても良い。その他、第1送信機100は、制御装置C10を介して取得した、第2送信機110が送信する給電電波の周波数に関する情報に基づき、第1送信機100が送信する給電電波の周波数を、第2送信機110が送信する給電電波の周波数と異なるように制御しても良い。
【0074】
受信機200が移動体に備え付けられている場合において、受信機200が給電空間に入ってきた際に、制御装置C10は本開示にかかる給電制御を実行する構成としても良い。具体的に、受信機200が空間に新たに入ってきた際に、所定期間に渡って本開示にかかる給電制御を実行し、所定期間経過後に本開示にかかる給電制御を実行しないものとしても良い。これにより、受信機200の位置が給電空間内において定まらない場合においても安定的に電力を供給することができる。また、所定期間経過後は受信機200の位置に安定的に電力供給ができるように給電電波を送信することができれば、本開示にかかる制御を実行しないものとしても良い。
【0075】
第1送信機100および第2送信機110の送信する無線電波の周波数の相違は、第1送信機100および第2送信機110の間の距離に応じて変化させるものとしても良い。例えば、第1送信機100および第2送信機110が設置された給電空間内の位置に応じて、給電空間の全体に対して安定的に電力を供給できるように第1送信機100および第2送信機110の無線電波の周波数を異なるように制御しても良い。
例えば、第1送信機100および第2送信機110の距離が遠いほど、第1送信機100および第2送信機110の給電電波の周波数をより大きく相違させても良い。例えば、第1送信機100および第2送信機110の距離が遠いほど、第1送信機100および第2送信機110の給電電波の周波数をより小さく相違させても良い。
【0076】
その他、第1送信機100および第2送信機110の送信する無線電波の周波数の相違は、第1送信機100および第2送信機110の間の出力に応じて変化させるものとしても良い。例えば、第1送信機100および第2送信機110の給電電波の出力値、出力値の差、出力値の比等に応じて、給電空間の全体に対して安定的に電力を供給できるように第1送信機100および第2送信機110の無線電波の周波数を異なるように制御しても良い。
例えば、第1送信機100および第2送信機110の給電電波の出力値の差が大きいほど、第1送信機100および第2送信機110の給電電波の周波数をより大きく相違させても良い。例えば、第1送信機100および第2送信機110の給電電波の出力値の差が小さいほど、第1送信機100および第2送信機110の給電電波の周波数をより小さく相違させても良い。
【0077】
本開示においては、第1送信機100および第2送信機110は、それぞれ独立した筐体に収められた送信装置を一例として説明した。なお、第1送信機100および第2送信機110は、複数のアンテナ素子から構成されるアレーアンテナのそれぞれのアンテナ素子として構成しても良い。具体的に、一の筐体に収められた複数のアンテナ素子に含まれる第1アンテナ素子、第2アンテナ素子を、第1送信機100および第2送信機110として捉えても良い。
そのような場合においては、1の受信機が1のアレーアンテナから無線電波により電力供給を受ける場合において、受信機が設置されている空間内の位置によらず受信機は安定的に1のアレーアンテナから電力供給を受けることができる。具体的に、受信機が十分な電力供給を受けることができない空間的位置(デッドスポット)が発生することを抑制することができる。これにより、1のアレーアンテナは給電空間の全体に渡ってより均一に電力を給電することができる。
【0078】
<付記>
以上の各実施形態で説明した事項を以下に付記する。
【0079】
(付記1)
第1送信機と、第2送信機と、少なくとも1の受信機から構成される無線給電システムにおいて、第1送信機(100)および第2送信機(110)は、受信機(200)に対して給電電波を介して無線により電力供給が可能であり、第1送信機の給電電波の中心周波数は、第2送信機の給電電波の中心周波数と異なり、第1送信機および第2送信機の給電電波は、略継続的な連続波とみなすことができる無線電波である、無線給電システム。
1の受信機が複数の送信機から無線電波により電力供給を受ける場合において、受信機が設置されている空間内の位置によらず受信機は安定的に複数の送信機から電力供給を受けることができる。具体的に、受信機が十分な電力供給を受けることができない空間的位置(デッドスポット)が発生することを抑制することができる。これにより、送信機は給電空間の全体に渡ってより均一に電力を給電することができる。
【0080】
(付記2)
第1送信機(100)の給電電波の周波数は、第2送信機(110)の給電電波の周波数と同じチャネルに属する無線電波である、付記1記載の無線給電システム。
これにより、同一の無線電波の周波数帯域にかかるチャネルに属する給電電波を送信する第1送信機および第2送信機において、受信機へ十分な電力を供給しつつ、給電空間内に安定的な電力供給を行うことができない空間的位置(デッドスポット)が生じることを抑制することができる。これにより、複数の送信機は同一チャネルの周波数帯の給電電波により受信機に対して電力を供給しつつ、送信機は給電空間の全体に渡ってより均一に電力を給電することができる。
【0081】
(付記3)
第1送信機(100)および第2送信機(110)は、受信機(200)と通信電波を介して無線による情報通信が可能であり、第1送信機および第2送信機の給電電波は、無変調、変調信号無し、無情報の無線電波である、付記1記載の無線給電システム。
これにより、電力伝送効率が向上する。給電電波に対して、通信に不要な情報を含めないことができる。
【0082】
(付記4)
第1送信機の給電電波の中心周波数f1[Hz]は、第2送信機の給電電波の中心周波数をf2[Hz]とした場合に、f2×(1+1000/1,000,000)[Hz]以下であり、かつ、f2×(1-1000/1,000,000)[Hz]以上である、付記1記載の無線給電システム。
1の受信機が複数の送信機から無線電波により電力供給を受ける場合において、受信機が設置されている空間内の位置によらず受信機は安定的に複数の送信機から電力供給を受けることができる。具体的に、デッドスポットの発生を特に抑制することができる。
【0083】
(付記5)
第1送信機の給電電波の中心周波数f1[Hz]は、第2送信機の給電電波の中心周波数をf2[Hz]とした場合に、f2×(1+0.001/1,000,000)[Hz]以上であり、または、f2×(1-0.001/1,000,000)[Hz]以下である、付記4記載の無線給電システム。
1の受信機が複数の送信機から無線電波により電力供給を受ける場合において、受信機が設置されている空間内の位置によらず受信機は安定的に複数の送信機から電力供給を受けることができる。
【0084】
(付記6)
第1送信機および第2送信機の出力端子に接続されたキャパシタ容量は互いに異なることにより、第1送信機の給電電波の中心周波数は、第2送信機の給電電波の中心周波数と異なる、付記1記載の無線給電システム。
これにより、第1送信機と第2送信機との中心周波数とを相違させることができる。受信機が設置されている空間内の位置によらず、複数の送信機から1の受信機へ安定的に電力を供給可能な無線給電システムを実現することができる。
【0085】
(付記7)
第1送信機および第2送信機の中心周波数は、第1送信機および第2送信機の温度を制御する温度制御手段と、第1送信機および第2送信機の電源電圧を制御する電源電圧制御手段と、第1送信機および第2送信機に電源電流を制御する電源電流制御手段と、の少なくともいずれか1以上の制御手段に基づき、第1送信機および第2送信機の中心周波数が異なるように制御される、付記1記載の無線給電システム。
受信機が設置されている空間内の位置によらず、複数の送信機から1の受信機へ安定的に電力を供給可能な無線給電システムを実現することができる。
【0086】
(付記8)
無線給電システムは、第1送信機および第2送信機を制御可能な制御装置を備え、制御装置は、第1送信機の給電電波の中心周波数が、第2送信機の給電電波の中心周波数とは異なるように制御する、付記1記載の無線給電システム。
受信機が設置されている空間内の位置によらず、複数の送信機から1の受信機へ安定的に電力を供給可能な無線給電システムを実現することができる。
【0087】
(付記9)
第1送信機および第2送信機は、互いに通信するための通信手段を備え、第1送信機または第2送信機は、通信手段を介して受信した通信情報に基づき、第1送信機の給電電波の中心周波数が、第2送信機の給電電波の中心周波数と異なるように制御する、付記1記載の無線給電システム。
受信機が設置されている空間内の位置によらず、複数の送信機から1の受信機へ安定的に電力を供給可能な無線給電システムを実現することができる。送信機間の干渉が低減され、各送信機が効率的に電力を伝送することができ、システムの電力伝送性能が向上する。
【0088】
(付記10)
第1送信機または第2送信機は、互いに通信情報を受信することなしに、第1送信機の給電電波の中心周波数が、第2送信機の給電電波の中心周波数と異なるように制御する、付記1記載の無線給電システム。
受信機が設置されている空間内の位置によらず、複数の送信機から1の受信機へ安定的に電力を供給可能な無線給電システムを実現することができる。システムの複雑さが低減され、送信機間の干渉が減少し、電力伝送の効率が向上する。また、通信が不要なため、セキュリティリスクを低減させることができる。
【符号の説明】
【0089】
1 WPTシステム、300 第1情報処理装置、3001 記憶部、3004 制御部、3006 入力装置、3008 出力装置、400 第2情報処理装置、4001 記憶部、4004 制御部、4006 入力装置、4008 出力装置、C10 制御装置、C101 記憶部、C104 制御部、C106 入力装置、C108 出力装置、100 送信機、110 送信機、200 受信機


【要約】
【課題】無線給電システムにおいて、受信機が安定的に複数の送信機から電力供給を受けることができない場合がある。
【解決手段】第1送信機と、第2送信機と、少なくとも1の受信機から構成される無線給電システムにおいて、第1送信機および第2送信機は、受信機に対して給電電波を介して無線により電力供給が可能であり、第1送信機の給電電波の中心周波数は、第2送信機の給電電波の中心周波数と異なり、第1送信機および第2送信機の給電電波は、略継続的な連続波とみなすことができる無線電波である、無線給電システム。
【選択図】 図1
図1
図2
図3