(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240412BHJP
【FI】
H01G4/30 201F
H01G4/30 513
(21)【出願番号】P 2021014261
(22)【出願日】2021-02-01
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】高田 匡平
(72)【発明者】
【氏名】永井 佑一
【審査官】清水 稔
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-083291(JP,A)
【文献】米国特許第10366834(US,B1)
【文献】特開2020-113673(JP,A)
【文献】国際公開第2014/024593(WO,A1)
【文献】米国特許第05339068(US,A)
【文献】特開2021-015950(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112242252(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体形状を呈しており、第一方向で互いに対向している一対の端面と、互いに対向している一対の第一側面と、互いに対向している一対の第二側面と、を有する素体と、
前記第一方向での前記素体の両端部上にそれぞれ配置されている一対の外部電極と、を備え、
前記一対の外部電極のそれぞれは、
前記一対の端面のうち対応する端面上と、前記一対の第一側面上と、前記一対の第二側面上と、に設けられた焼結金属層と、
前記焼結金属層を覆うように、少なくとも前記一対の第一側面上と、前記一対の第二側面上と、に設けられた絶縁性樹脂層と、
前記絶縁性樹脂層上に設けられた導電性樹脂層と、
前記導電性樹脂層上に設けられためっき層と、を有し、
前記焼結金属層は、前記絶縁性樹脂層から露出し、前記導電性樹脂層と直接接している露出部を含み、
前記露出部は、前記一対の第一側面、及び、前記一対の第二側面の
全てに設けられている、
電子部品。
【請求項2】
前記露出部は、前記対応する端面の中央部に設けられている、
請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記露出部は、前記対応する端面の全体に設けられている、
請求項1又は2に記載の電子部品。
【請求項4】
直方体形状を呈しており、第一方向で互いに対向している一対の端面と、互いに対向している一対の第一側面と、互いに対向している一対の第二側面と、を有する素体と、
前記第一方向での前記素体の両端部上にそれぞれ配置されている一対の外部電極と、を備え、
前記一対の外部電極のそれぞれは、
前記一対の端面のうち対応する端面上と、前記一対の第一側面上と、前記一対の第二側面上と、に設けられた焼結金属層と、
前記焼結金属層を覆うように、前記対応する端面上と、前記一対の第一側面上と、前記一対の第二側面上と、に設けられた絶縁性樹脂層と、
前記絶縁性樹脂層上に設けられた導電性樹脂層と、
前記導電性樹脂層上に設けられためっき層と、を有し、
前記焼結金属層は、前記絶縁性樹脂層から露出し、前記導電性樹脂層と直接接している露出部を含
み、
前記露出部は、前記対応する端面と隣り合う前記素体の稜線部及び角部の少なくとも一部のみに設けられている、
電子部品。
【請求項5】
前記絶縁性樹脂層の端部は、前記導電性樹脂層から露出している、
請求項1~4のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項6】
前記絶縁性樹脂層は、前記一対の第一側面、及び、前記一対の第二側面のそれぞれと直接接している接合部を有している、
請求項1~5のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項7】
前記露出部が前記素体を覆う面積は、前記焼結金属層が前記素体を覆う面積の5%以上である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項8】
前記露出部は、前記第一方向に沿う中心軸に関して2回対称となるように設けられている、
請求項1~7のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項9】
前記露出部は、前記第一方向に沿う中心軸に関して4回対称となるように設けられている、
請求項1~8のいずれか一項に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
素体と、素体に配置されている外部電極と、を備えている電子部品が知られている(たとえば、特許文献1参照)。外部電極は、導電性樹脂層と、導電性樹脂層上に配置されているめっき層と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子部品が電子機器にはんだ実装されている状態で、電子機器がたわむと、電子機器から電子部品に応力(たわみ応力)が作用する場合がある。この場合、特許文献1に記載の積層セラミックコンデンサでは、導電性樹脂層に起因して外部電極が剥離するおそれがある。
【0005】
本開示の各態様は、耐たわみ性の向上が可能な電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一つの態様に係る電子部品は、直方体形状を呈しており、第一方向で互いに対向している一対の端面と、互いに対向している一対の第一側面と、互いに対向している一対の第二側面と、を有する素体と、第一方向での素体の両端部上にそれぞれ配置されている一対の外部電極と、を備え、一対の外部電極のそれぞれは、一対の端面のうち対応する端面上と、一対の第一側面上と、一対の第二側面上と、に設けられた焼結金属層と、焼結金属層を覆うように、対応する端面上と、一対の第一側面上と、一対の第二側面上と、に設けられた絶縁性樹脂層と、絶縁性樹脂層上に設けられた導電性樹脂層と、導電性樹脂層上に設けられためっき層と、を有し、焼結金属層は、絶縁性樹脂層から露出し、導電性樹脂層と直接接している露出部を含む。
【0007】
上記一つの態様では、焼結金属層を覆うように絶縁性樹脂層が設けられ、絶縁性樹脂層上には導電性樹脂層が設けられている。つまり、焼結金属層と導電性樹脂層との間に絶縁性樹脂層が設けられている。焼結金属層に対する絶縁性樹脂層の接合性は、焼結金属層に対する導電性樹脂層の接合性よりも高い。よって、たわみ応力による導電性樹脂層の剥離が抑制され、耐たわみ性の向上が可能となる。焼結金属層は絶縁性樹脂層から露出し、導電性樹脂層と直接接している露出部を含むので、絶縁性樹脂層が設けられていても焼結金属層と導電性樹脂層との電気的接続を確保することができる。
【0008】
特許文献1に記載の電子部品では、導電性樹脂層の樹脂成分が吸湿した状態でリフロー工程が実施されると、素体とめっき層との間の隙間から行われる脱水が間に合わず、端面に設けられた導電性樹脂層が気化膨張により剥離するおそれがある。特に、端面上に設けられた導電性樹脂層からの脱水が端面と各側面との間に位置している稜線部で滞り、稜線部と隣り合う端面の外縁部に水分が残り易い。そこで、上記一つの形態では、露出部は、対応する端面の中央部に設けられていてもよい。この場合、導電性樹脂層に対する接合性が低い露出部が、外縁部に設けられる場合に比べて、気化膨張による導電性樹脂層の剥離が抑制される。
【0009】
上記一つの形態では、露出部は、対応する端面と隣り合う素体の稜線部及び角部の少なくとも一部に設けられていてもよい。この場合、稜線部及び角部の導電性樹脂層は、製法上、端面の導電性樹脂層よりも薄くなり易いので、焼結金属層が稜線部及び角部の導電性樹脂層と直接接することにより、外部電極の低ESR化を図ることができる。
【0010】
本開示の別の一つの態様に係る電子部品は、直方体形状を呈しており、第一方向で互いに対向している一対の端面と、互いに対向している一対の第一側面と、互いに対向している一対の第二側面と、を有する素体と、第一方向での素体の両端部上にそれぞれ配置されている一対の外部電極と、を備え、一対の外部電極のそれぞれは、一対の端面のうち対応する端面上と、一対の第一側面上と、一対の第二側面上と、に設けられた焼結金属層と、焼結金属層を覆うように、少なくとも一対の第一側面上と、一対の第二側面上と、に設けられた絶縁性樹脂層と、絶縁性樹脂層上に設けられた導電性樹脂層と、導電性樹脂層上に設けられためっき層と、を有し、焼結金属層は、絶縁性樹脂層から露出し、導電性樹脂層と直接接している露出部を含み、露出部は、一対の第一側面、及び、一対の第二側面の少なくとも一部に設けられている。
【0011】
上記別の一つの態様では、焼結金属層を覆うように絶縁性樹脂層が設けられ、絶縁性樹脂層上には導電性樹脂層が設けられている。つまり、焼結金属層と導電性樹脂層との間に絶縁性樹脂層が設けられている。焼結金属層に対する絶縁性樹脂層の接合性は、焼結金属層に対する導電性樹脂層の接合性よりも高い。よって、たわみ応力による導電性樹脂層の剥離が抑制される。この結果、耐たわみ性の向上が可能となる。焼結金属層は絶縁性樹脂層から露出し、導電性樹脂層と直接接している露出部を含むので、焼結金属層と導電性樹脂層との電気的接続が確保される。上述の気化膨張による導電性樹脂層の剥離は、一対の第一側面及び一対の第二側面では、端面と比べて生じ難い。露出部は、一対の第一側面、及び、一対の第二側面の少なくとも一部に設けられている。よって、気化膨張による導電性樹脂層の剥離が生じた場合でも、焼結金属層と導電性樹脂層との電気的接続を確実に確保することができる。
【0012】
上記各態様では、絶縁性樹脂層の端部は、導電性樹脂層から露出していてもよい。この場合、たわみ応力により剥離し易い導電性樹脂層の端部を絶縁性樹脂層上に設けることができるので、導電性樹脂層の剥離を更に抑制することができる。
【0013】
上記各態様では、絶縁性樹脂層は、一対の第一側面、及び、一対の第二側面のそれぞれと直接接している接合部を有していてもよい。この場合、素体と導電性樹脂層との間に絶縁性樹脂層を介在させ、素体と導電性樹脂層とが直接接することを抑制できる。よって、導電性樹脂層の剥離を更に抑制することができる。
【0014】
上記各態様では、露出部が素体を覆う面積は、焼結金属層が素体を覆う面積の5%以上であってもよい。この場合、外部電極の低ESR化を図ることができる。
【0015】
上記各態様では、露出部は、第一方向に沿う中心軸に関して2回対称となるように設けられていてもよい。この場合、一方の第一側面のいずれを実装面としたときでも、耐たわみ性に差が生じ難い。また、一対の第二側面のいずれを実装面としたときでも、耐たわみ性に差が生じ難い。
【0016】
上記各態様では、露出部は、第一方向に沿う中心軸に関して4回対称となるように設けられていてもよい。この場合、一対の第一側面及び一対の第二側面のいずれを実装面としたときでも、耐たわみ性に差が生じ難い。
【発明の効果】
【0017】
本開示の各態様によれば、耐たわみ性の向上が可能な電子部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、第一実施形態に係る積層コンデンサの斜視図である。
【
図2】
図2は、第一実施形態に係る積層コンデンサの断面構成を示す図である。
【
図3】
図3は、第一実施形態に係る積層コンデンサの断面構成を示す図である。
【
図4】
図4は、第一実施形態に係る積層コンデンサの側面図である。
【
図5】
図5は、第二実施形態に係る積層コンデンサの断面構成を示す図である。
【
図6】
図6は、第二実施形態に係る積層コンデンサの断面構成を示す図である。
【
図7】
図7は、第二実施形態に係る積層コンデンサの側面図である。
【
図8】
図8は、第三実施形態に係る積層コンデンサの断面構成を示す図である。
【
図9】
図9は、第三実施形態に係る積層コンデンサの断面構成を示す図である。
【
図10】
図10は、第三実施形態に係る積層コンデンサの側面図である。
【
図11】
図11は、第三実施形態の第一変形例に係る積層コンデンサの側面図である。
【
図12】
図12は、第三実施形態の第二変形例に係る積層コンデンサの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
(第一実施形態)
図1~
図4を参照して、第一実施形態に係る積層コンデンサC1の構成を説明する。
図1は、第一実施形態に係る積層コンデンサの斜視図である。
図2及び
図3は、第一実施形態に係る積層コンデンサの断面構成を示す図である。
図4は、第一実施形態に係る積層コンデンサの側面図である。本実施形態では、電子部品は、たとえば、積層コンデンサC1である。
【0021】
積層コンデンサC1は、
図1に示されるように、直方体形状を呈している素体3と、一対の外部電極5とを備えている。一対の外部電極5は、素体3の外表面に配置されている。一対の外部電極5は、互いに離間している。直方体形状は、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状を含む。
【0022】
素体3は、互いに対向している一対の側面3aと、互いに対向している一対の側面3cと、互いに対向している一対の端面3eと、を有している。一対の側面3a、一対の側面3c、及一対の端面3eは、長方形状を呈している。一対の側面3aが対向している方向が、第二方向D2である。一対の側面3cが対向している方向が、第三方向D3である。一対の端面3eが対向している方向が、第一方向D1である。
【0023】
積層コンデンサC1は、電子機器にはんだ実装される。電子機器は、たとえば、回路基板又は電子部品を含む。積層コンデンサC1では、一方の側面3aが、電子機器と対向する。一方の側面3aは、実装面を構成するように配置される。一方の側面3aは、実装面である。一対の側面3cのうち、一つの側面3cが実装面を構成するように配置されてもよい。たとえば、側面3aが、第一側面を構成する場合、側面3cは、第二側面を構成する。
【0024】
第二方向D2は、各側面3aに直交する方向であり、第三方向D3と直交している。第一方向D1は、各側面3aと各側面3cとに平行な方向であり、第二方向D2と第三方向D3とに直交している。第三方向D3は、各側面3cに直交する方向であり、第一方向D1は、各端面3eに直交する方向である。本実施形態では、素体3の第一方向D1での長さは、素体3の第二方向D2での長さより大きく、かつ、素体3の第三方向D3での長さより大きい。第一方向D1が、素体3の長手方向である。素体3の第二方向D2での長さと素体3の第三方向D3での長さとは、互いに同等であってもよい。素体3の第二方向D2での長さと素体3の第三方向D3での長さとは、互いに異なっていてもよい。
【0025】
素体3の第二方向D2での長さは、素体3の高さである。素体3の第三方向D3での長さは、素体3の幅である。素体3の第一方向D1での長さは、素体3の長さである。本実施形態では、素体3の高さは、0.1mm以上3.0mm以下であり、素体3の幅は、0.1mm以上6.5mm以下であり、素体3の長さは、0.2mm以上8.0mm以下である。たとえば、素体3の高さは、2.5mmであり、素体3の幅は、2.5mmであり、素体3の長さは、3.2mmである。
【0026】
一対の側面3cは、一対の側面3aを連結するように第二方向D2に延在している。一対の側面3cは、第一方向D1にも延在している。一対の端面3eは、一対の側面3aを連結するように第二方向D2に延在している。一対の端面3eは、第三方向D3にも延在している。
【0027】
素体3は、四つの稜線部3gと、四つの稜線部3iと、四つの稜線部3jと、を有している。稜線部3gは、端面3eと側面3aとの間に位置している。稜線部3iは、端面3eと側面3cとの間に位置している。稜線部3jは、側面3aと側面3cとの間に位置している。本実施形態では、各稜線部3g,3i,3jは、湾曲するように丸められている。素体3には、いわゆるR面取り加工が施されている。端面3eと側面3aとは、稜線部3gを介して、間接的に隣り合っている。端面3eと側面3cとは、稜線部3iを介して、間接的に隣り合っている。側面3aと側面3cとは、稜線部3jを介して、間接的に隣り合っている。
【0028】
素体3は、八つの角部3kを有している。角部3kは、端面3eと側面3aと側面3cとの間に位置している。角部3kは、稜線部3gの端部と、稜線部3iの端部と、稜線部3jの端部とからなる。つまり、角部3kは、各稜線部3g,3i,3jの一部である。本実施形態では、各角部3kは、湾曲するように丸められている。
【0029】
素体3は、第二方向D2に複数の誘電体層が積層されて構成されている。素体3は、積層されている複数の誘電体層を有している。素体3では、複数の誘電体層の積層方向が第二方向D2と一致する。各誘電体層は、たとえば、誘電体材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成されている。誘電体材料は、たとえば、BaTiO3系、Ba(Ti,Zr)O3系、又は(Ba,Ca)TiO3系などの誘電体セラミックを含む。実際の素体3では、各誘電体層は、各誘電体層の間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0030】
積層コンデンサC1は、
図2及び
図3に示されるように、複数の内部電極7と複数の内部電極9とを備えている。各内部電極7,9は、素体3内に配置されている内部導体である。各内部電極7,9は、積層型電子部品の内部導体として通常用いられる導電性材料からなる。導電性材料は、たとえば、卑金属を含む。導電性材料は、たとえば、Ni又はCuを含む。内部電極7,9は、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成されている。本実施形態では、内部電極7,9は、Niからなる。
【0031】
内部電極7と内部電極9とは、第二方向D2において異なる位置(層)に配置されている。内部電極7と内部電極9とは、素体3内において、第二方向D2に間隔を有して対向するように交互に配置されている。内部電極7と内部電極9とは、互いに極性が異なる。内部電極7,9の一端は、対応する端面3eに露出している。内部電極7,9は、対応する端面3eに露出している一端を有している。
【0032】
複数の内部電極7と複数の内部電極9とは、第二方向D2で交互に並んでいる。複数の内部電極7,9は、第二方向D2に並ぶように素体3内に配置されている。各内部電極7,9は、側面3aと略平行な面内に位置している。内部電極7と内部電極9とは、第二方向D2で互いに対向している。内部電極7と内部電極9とが対向している方向(第二方向D2)は、側面3aと平行な方向(第三方向D3及び第一方向D1)と直交している。各内部電極7,9は、一対の側面3a及び一対の側面3cには露出していない。
図3では、説明のため、各内部電極7,9は、意図的に、第三方向D3に互いにずれて図示されている。
【0033】
外部電極5は、
図1に示されるように、素体3の第一方向D1での両端部にそれぞれ配置されている。各外部電極5は、素体3における、対応する端面3e側に配置されている。本実施形態では、各外部電極5は、一対の側面3a、一対の側面3c、及び一つの端面3eに配置されている。外部電極5は、
図2及び
図3に示されるように、複数の電極部5a,5c,5eを有している。電極部5aは、側面3a上及び稜線部3g上に配置されている。電極部5cは、側面3c上及び稜線部3i上に配置されている。電極部5eは、端面3e上に配置されている。外部電極5は、稜線部3j上に配置されている電極部も有している。
【0034】
外部電極5は、一対の側面3a、対応する一つの端面3e、及び一対の側面3cの五つの面、並びに、稜線部3g,3i,3jに形成されている。外部電極5は、角部3kにも形成されている。互いに隣り合う電極部5a,5c,5eは、一体的に形成されており、電気的に接続されている。電極部5eは、対応する内部電極7,9の一端をすべて覆っている。電極部5eは、対応する内部電極7,9と直接的に接続されている。外部電極5は、対応する内部電極7,9と電気的に接続されている。
【0035】
各外部電極5は、
図2及び
図3にも示されるように、第一電極層E1、第二電極層E2、第三電極層E3、第四電極層E4、及び第五電極層E5を有している。第一電極層E1は、素体3を覆うように素体3上に設けられている。第二電極層E2は、第一電極層E1を覆うように第一電極層E1上に設けられている。第三電極層E3は、第二電極層E2を覆うように第二電極層E2上に設けられている。第四電極層E4は、第三電極層E3を覆うように第三電極層E3上に設けられている。第五電極層E5は、第四電極層E4を覆うように第四電極層E4上に設けられている。第五電極層E5は、外部電極5の最外層を構成している。本実施形態では、各電極部5a,5c,5eは、第一電極層E1、第二電極層E2、第三電極層E3、第四電極層E4、及び第五電極層E5を有している。
【0036】
第一電極層E1は、素体3の表面に付与された導電性ペーストを焼き付けることにより形成された下地金属層である。第一電極層E1は、対応する端面3e上と、一対の側面3a上と、一対の側面3c上と、稜線部3g,3i,3j上とに設けられている。第一電極層E1は、角部3kにも設けられている。第一電極層E1は、対応する端面3eの全面を覆っている。第一電極層E1は、一対の側面3aにおける対応する端面3e寄りの一部を覆っている。第一電極層E1は、一対の側面3cにおける対応する端面3e寄りの一部を覆っている。第一電極層E1は、対応する端面3eと隣り合う稜線部3g,3iの全面と、稜線部3jにおける対応する端面3e寄りの一部を覆っている。第一電極層E1の厚さは、たとえば、2μm以上100μm以下である。
【0037】
第一電極層E1は、導電性ペーストに含まれる金属成分(金属粒子)が焼結することにより形成されている。第一電極層E1は、素体3に形成された焼結金属層である。本実施形態では、第一電極層E1は、Cuからなる焼結金属層である。導電性ペーストは、たとえば、Cuからなる粒子、ガラス成分、有機バインダ、及び有機溶剤を含んでいる。各電極部5a,5c,5eが有している第一電極層E1は、一体的に形成されている。
【0038】
第一電極層E1は、第二電極層E2から露出し、第三電極層E3と直接接している露出部21を含む。本実施形態では、露出部21は、対応する端面3eの中央部に設けられている。露出部21は、対応する端面3eの外縁部から離間して配置されている。露出部21は、たとえば、矩形状を呈している。
【0039】
露出部21は、
図4に示されるように、第一方向D1に沿う中心軸AXに関して2回対称となるように設けられている。つまり、積層コンデンサC1を中心軸AXに関して180度回転させたときに、回転の前後で露出部21の配置及び形状が同じである。本実施形態では、露出部21は、第一方向D1に沿う中心軸AXに関して4回対称となるように設けられている。つまり、積層コンデンサC1を中心軸AXに関して90度回転させたときに、回転の前後で露出部21の配置及び形状が同じである。
【0040】
露出部21が素体3を覆う面積は、たとえば、第一電極層E1が素体3を覆う面積の5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。露出部21が素体3を覆う面積とは、素体3の表面における露出部21が設けられた部分の面積である。第一電極層E1が素体3を覆う面積とは、素体3の表面における第一電極層E1が設けられた部分の面積である。露出部21が素体3を覆う面積は、たとえば、第一電極層E1が素体3を覆う面積の90%以下である。
【0041】
第二電極層E2は、第一電極層E1及び素体3の表面に付与された絶縁性樹脂ペーストを硬化させることにより形成されている。第二電極層E2は、第一電極層E1及び素体3の表面上にわたって形成されている。第二電極層E2は、第一電極層E1を覆うように、対応する端面3e上と、一対の側面3a上と、一対の側面3c上と、稜線部3g,3i,3j上とに設けられている。第二電極層E2は、角部3kにも設けられている。第二電極層E2は、第一電極層E1の露出部21を露出させるように、第一電極層E1を覆っている。第二電極層E2の厚さは、たとえば、2μm以上200μm以下である。
【0042】
第二電極層E2は、一対の側面3a、一対の側面3c、及び、稜線部3jのそれぞれと直接接している接合部23を有している。接合部23は、第一電極層E1の外縁に沿って設けられている。接合部23は、各側面3aに設けられた部分と、各側面3cに設けられた部分と、各稜線部3jに設けられた部分とを有している。接合部23のこれらの部分は一体的に設けられている。接合部23は、第一電極層E1の外縁に沿って途切れることなく連続している。接合部23の幅(第一方向D1における長さ)は、第三電極層E3の厚さよりも大きく、たとえば、50μm以上700μm以下である。
【0043】
第二電極層E2の端部25は、第三電極層E3から露出している。端部25は、接合部23の先端部を構成している。端部25は、各側面3aに設けられた部分と、各側面3cに設けられた部分と、各稜線部3jに設けられた部分とを有している。端部25のこれらの部分の全体が第三電極層E3から露出している。本実施形態では、端部25は、第四電極層E4及び第五電極層E5からも露出している。
【0044】
第二電極層E2は、第一電極層E1及び素体3の表面を覆う絶縁性樹脂層である。絶縁性樹脂ペーストは、たとえば、電気絶縁性を有する樹脂及び有機溶媒を含んでいる。樹脂は、たとえば、熱硬化性樹脂である。熱硬化性樹脂は、たとえば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、又はポリイミド樹脂である。各電極部5a,5c,5eが有している第二電極層E2は、一体的に形成されている。
【0045】
第三電極層E3は、第一電極層E1の露出部21上と第二電極層E2上とに付与された導電性樹脂ペーストを硬化させることにより形成されている。第三電極層E3は、第一電極層E1の露出部21上と第二電極層E2上とにわたって形成されている。第三電極層E3は、第一電極層E1の露出部21と第二電極層E2とを覆う導電性樹脂層である。第三電極層E3の厚さは、たとえば、2μm以上200μm以下である。第三電極層E3は、たとえば、端面3eにおいて各側面3a,3cよりも厚く形成されている。たわみ応力は、外部電極5のうち、端面3eに設けられた部分に強く作用する。端面3eに設けられた第三電極層E3を厚くすることにより、耐たわみ性を向上させることができる。第三電極層E3の電気抵抗は、第三電極層E3の厚さに依存するので、各側面3a,3c及び稜線部3g,3iに設けられた第三電極層E3を薄くすることにより、外部電極5の低ESR化を図ることができる。
【0046】
図2及び
図3では、第三電極層E3は略均一の厚さで示されているが、導電性樹脂ペーストが特にディップ法で付与される場合、稜線部3g,3i及び角部3kの第三電極層E3の厚さ(平均厚さ)、並びに、各側面3a,3cの第三電極層E3の厚さ(平均厚さ)は、端面3eの第三電極層E3の厚さ(平均厚さ)よりも薄くなり易い。本実施形態では、稜線部3g,3i及び角部3kの第三電極層E3の厚さ(平均厚さ)、並びに、各側面3a,3cの第三電極層E3の厚さ(平均厚さ)は、端面3eの第三電極層E3の厚さ(平均厚さ)よりも薄い。稜線部3g,3i及び角部3kの第三電極層E3の厚さ(平均厚さ)は、各側面3a,3cの第三電極層E3の厚さ(平均厚さ)よりも薄いが、同等であってもよい。
【0047】
導電性樹脂ペーストは、たとえば、電気絶縁性を有する樹脂、複数の導電性粒子、及び有機溶媒を含んでいる。樹脂は、たとえば、熱硬化性樹脂である。導電性粒子は、たとえば、金属粒子である。金属粒子は、たとえば、Ag粒子である。本実施形態では、第三電極層E3は、複数のAg粒子を含んでいる。すなわち、第三電極層E3は、複数の金属粒子を含んでいる。熱硬化性樹脂は、たとえば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、又はポリイミド樹脂である。各電極部5a,5c,5eが有している第三電極層E3は、一体的に形成されている。
【0048】
第四電極層E4及び第五電極層E5は、第三電極層E3上にめっき法により形成されためっき層である。このように本実施形態のめっき層は、多層構造を有しているが、単層構造であってもよい。第四電極層E4は、第三電極層E3と、第二電極層E2の接合部23の一部とを覆っている。第四電極層E4は、たとえば、Niめっき層を含んでいる。Niめっき層の代わりに、Snめっき層、Cuめっき層、又はAuめっき層を含んでいてもよい。第四電極層E4は、第二電極層E2に含まれる金属よりも耐はんだ喰われ性に優れている。各電極部5a,5c,5eが有している第四電極層E4は、一体的に形成されている。
【0049】
第五電極層E5は、第四電極層E4と、第二電極層E2の接合部23の一部とを覆っている。第五電極層E5は、第三電極層E3とは直接接していない。第五電極層E5は、はんだめっき層を含んでいる。はんだめっき層は、たとえば、Snめっき層、Sn-Ag合金めっき層、Sn-Bi合金めっき層、又はSn-Cu合金めっき層である。各電極部5a,5c,5eが有している第五電極層E5は、一体的に形成されている。
【0050】
次に、積層コンデンサC1の製造方法について説明する。
【0051】
まず、誘電体層を形成するためのセラミックペーストと、内部電極7,9を形成するための内部電極ペースト(導電性ペースト)とを準備する。セラミックペーストは、たとえば、上述した誘電体材料の原料粉末と、有機ビヒクルとを含んでいる。有機ビヒクルは、バインダと溶剤とを含んでいる。溶剤は、たとえば、有機溶剤である。セラミックペーストは、分散剤、可塑剤、誘電体、ガラスフリット、又は絶縁体を含んでいてもよい。セラミックペーストは、この技術分野では既知であるため、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0052】
内部電極ペーストは、たとえば、上述した導電性材料の粉末と、有機ビヒクルとを含んでいる。導電性材料の粉末は、たとえば、金属粉末である。粉末は、たとえば、球状又は鱗片状を呈している。有機ビヒクルは、バインダと溶剤とを含んでいる。溶剤は、たとえば、有機溶剤である。内部電極ペーストは、無機化合物を含んでいてもよい。内部電極ペーストは、可塑剤を含んでいてもよい。内部電極ペーストは、この技術分野では既知であるため、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0053】
次に、上述したセラミックペーストを用い、セラミックグリーンシートを形成する。本過程では、たとえば、キャリアシート上に、セラミックペーストをシート状に付与した後、シート状のセラミックペーストを乾燥させる。これにより、セラミックグリーンシートが得られる。キャリアシートは、たとえば、PET(Polyethylene terephthalate)からなる。セラミックペーストは、たとえば、ドクターブレード法により付与される。
【0054】
次に、内部電極ペーストを用い、セラミックグリーンシート上に複数の内部電極パターンを形成する。本過程では、たとえば、セラミックグリーンシート上に内部電極ペーストをパターン化して付与した後に、内部電極ペーストを乾燥させる。これにより、複数の内部電極パターンが得られる。内部電極ペーストは、たとえば、スクリーン印刷法により付与される。
【0055】
次に、内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートから、グリーン積層体を形成する。本過程では、たとえば、セラミックグリーンシートを所定の大きさに揃えた後、所定の枚数のセラミックグリーンシートを積層する。その後、たとえば、積層されたセラミックグリーンシートを積層方向から加圧する。これにより、グリーン積層体が得られる。
【0056】
次に、グリーン積層体から複数のグリーンチップを得る。本過程では、たとえば、切断機でグリーン積層体をチップ状に切断する。これにより、所定の大きさを有する複数のグリーンチップが得られる。
【0057】
次に、グリーンチップからバインダを除去した後、このグリーンチップを焼成する。この焼成により、素体3が得られる。その後、素体3にR面取り加工を施す。R面取り加工は、たとえば、バレル研磨である。バインダの除去は、たとえば、グリーンチップを還元雰囲気下で加熱することにより行う。還元雰囲気は、たとえば、空気、又は、N2及びH2の混合ガスで構成される。焼成は、たとえば、バインダが除去されたグリーンチップを還元雰囲気下で加熱することにより行う。バインダの除去及び焼成は、この技術分野では既知であるため、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0058】
次に、素体3に、第一電極層E1を形成する。本過程では、上述したように、導電性ペーストを素体3の表面における所定の領域に付与し、付与した導電性ペーストを加熱処理により素体3に焼き付ける。これにより、第一電極層E1が得られる。導電性ペーストは、たとえば、ディップ法、印刷法、又は転写法により付与される。導電性ペーストの加熱処理は、この技術分野では既知であるため、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0059】
次に、第一電極層E1の露出部21となる部分に、第二電極層E2の形成を阻止するためのマスク層を形成する。マスク層は、たとえば、脂肪酸アミドを塗布することにより形成される。脂肪酸アミドとしては、たとえば、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エトキシ脂肪酸アミドを用いることができる。
【0060】
次に、素体3、第一電極層E1、及びマスク層を備えているチップに、第二電極層E2を形成する。本過程では、まず、チップの所定の領域に絶縁性樹脂ペーストを付与する。絶縁性樹脂ペーストは、上述したように、たとえば、電気絶縁性を有する樹脂及び有機溶媒を含んでいる。絶縁性樹脂ペーストは、たとえば、ディップ法により付与される。露出部21となる部分では、マスク層により絶縁性樹脂ペーストがはじかれる。よって、絶縁性樹脂ペーストは、露出部21となる部分を避けて付与される。続いて、加熱により絶縁性樹脂ペーストを乾燥及び硬化させる。絶縁性樹脂ペーストは、たとえば、50度以上300度以下の温度で、10分以上120分以下の時間加熱される。これにより、第二電極層E2が得られる。マスク層はこの加熱処理により除去される。
【0061】
次に、素体3、第一電極層E1及び第二電極層を備えているチップに、第三電極層E3を形成する。本過程では、まず、チップの所定の領域に導電性樹脂ペーストを付与する。導電性樹脂ペーストは、上述したように、たとえば、電気絶縁性を有する樹脂、複数の導電性粒子、及び有機溶媒を含んでいる。導電性樹脂ペーストは、たとえば、ディップ法により付与される。導電性樹脂ペーストは、露出部21にも付与される。続いて、加熱により導電性樹脂ペーストを乾燥及び硬化させる。導電性樹脂ペーストは、たとえば、80度以上300度以下の温度で、20分以上300分以下の時間加熱される。これにより、第三電極層E3が得られる。
【0062】
次に、第一電極層E1、第二電極層E2及び第三電極層E3が形成されたチップに、めっき法により第四電極層E4及び第五電極層E5を順次形成する。第四電極層E4は、第三電極層E3に形成される。第五電極層E5は、第四電極層E4に形成される。めっき法は、たとえば、電気めっき法である。めっき法は、この技術分野では既知であるため、これ以上の詳細な説明を省略する。上述した過程を経ることにより、積層コンデンサC1が得られる。
【0063】
以上説明したように、積層コンデンサC1では、第一電極層E1を覆うように第二電極層E2が設けられ、第二電極層E2上には第三電極層E3が設けられている。つまり、第一電極層E1と第三電極層E3との間に第二電極層E2が設けられている。第一電極層E1に対する第二電極層E2の接合性、及び、第三電極層E3に対する第二電極層E2の接合性は、それぞれ第一電極層E1に対する第三電極層E3の接合性よりも高い。よって、第二電極層E2を介さず、第一電極層E1と第三電極層E3とを直接接合させる場合に比べて、たわみ応力による第三電極層E3の剥離を抑制することができる。この結果、耐たわみ性の向上が可能となる。第一電極層E1は、第二電極層E2から露出し、第三電極層E3と直接接している露出部21を含むので、第二電極層E2が設けられていても第一電極層E1と第三電極層E3との電気的接続を確保することができる。
【0064】
上述のように、特許文献1に記載の電子部品では、導電性樹脂層の樹脂成分が吸湿した状態でリフロー工程が実施されると、端面に設けられた導電性樹脂層が気化膨張により剥離するおそれがある。このような剥離は、特に、稜線部と隣り合う端面の外縁部で生じ易い。積層コンデンサC1では、露出部21は、対応する端面3eの中央部に設けられている。露出部21には、第二電極層E2が設けられていないので、第三電極層E3に対する接合性が低い。第三電極層E3に対する接合性が低い露出部21が、端面3eの外縁部に設けられていないので、リフロー工程において気化膨張による第三電極層E3の剥離が抑制される。
【0065】
第三電極層E3は、各稜線部3g,3iにおける厚さが端面3e及び各側面3a,3cにおける厚さよりも薄くなるように形成される場合がある。この場合、脱水経路が各稜線部3g,3iにおいて狭くなるため、脱水が各稜線部3g,3iで更に滞り易くなる。よって、脱水経路における各稜線部3g,3iの手前、すなわち、端面3eの外縁部において第三電極層E3の剥離が更に生じ易くなる。したがって、露出部21が端面3eの外縁部ではなく中央部に設けられる構成が更に有効である。
【0066】
第二電極層E2の端部25は、第三電極層E3から露出している。たわみ応力による第三電極層E3の剥離は、各側面3a,3c上に設けられた端部から生じ易い。積層コンデンサC1では、剥離し易い第三電極層E3の端部を第二電極層E2上に設けることができる。よって、第三電極層E3の剥離を更に抑制することができる。
【0067】
第二電極層E2は、各側面3a,3cと直接接している接合部23を有している。このため、第三電極層E3と各側面3a,3cとの間に第二電極層E2を介在させ、第三電極層E3と各側面3a,3cとが直接接することを抑制できる。素体3に対する第二電極層E2の接合性は、素体3に対する第三電極層E3の接合性よりも高い。よって、第三電極層E3の剥離を更に抑制することができる。
【0068】
露出部21が素体3を覆う面積は、第一電極層E1が素体3を覆う面積の5%以上である。これにより、第一電極層E1と第三電極層E3との電気的接続を確保し、外部電極5の低ESR化を図ることができる。露出部21が素体3を覆う面積は、第一電極層E1が素体3を覆う面積の90%以下である。これにより、耐たわみ性を向上することができる。
【0069】
たわみ応力による第三電極層E3の剥離は、特に実装面に設けられた第三電極層E3の端部から生じ易い。上述のように、露出部21は第三電極層E3に対する接合性が低い。よって、露出部21が実装面及び実装面寄りに多く設けられている場合、実装面における第三電極層E3の端部を起点とした剥離が進展し易い。これに対し、露出部21が実装面及び実装面寄りにほとんど設けられていない場合、実装面における第三電極層E3の端部を起点とする剥離の進展が抑制され易い。つまり、耐たわみ性が実装方向によってばらつく。
【0070】
積層コンデンサC1では、露出部21は、中心軸AXに関して2回対称となるように設けられている。このため、たとえば、一対の側面3aのいずれを実装面としたときでも、実装面に対する露出部21の配置及び形状が同じである。よって、一対の側面3aのいずれを実装面としたときでも、たわみ応力による剥離の進展に露出部21が与える影響が均一化される。このため、耐たわみ性に差が生じ難い。同様に、一対の側面3cのいずれを実装面としたときでも、耐たわみ性に差が生じ難い。よって、積層コンデンサC1を実装する際に、耐たわみ性によって実装方向を限定する必要がない。
【0071】
露出部21は、中心軸AXに関して4回対称となるように設けられている。このため、一対の側面3a及び一対の側面3cのいずれを実装面としたときでも、実装面に対する露出部21の配置及び形状が同じである。よって、一対の側面3a及び一対の側面3cのいずれを実装面としたときでも、耐たわみ性に差が生じ難い。第一方向D1から見て、露出部21は、中心軸AXに関して点対称となるように設けられている。
【0072】
(第二実施形態)
図5~
図7を参照して、第二実施形態に係る積層コンデンサC2の構成を説明する。
図5及び
図6は、第二実施形態に係る積層コンデンサの断面構成を示す図である。
図7は、第二実施形態に係る積層コンデンサの側面図である。積層コンデンサC2は、第二電極層E2の点で積層コンデンサC1と相違し、これに伴い露出部21の点でも積層コンデンサC1と相違している。以下では、積層コンデンサC1との相違点を中心に、積層コンデンサC2について説明する。
【0073】
図5~
図7に示されるように、積層コンデンサC2では、露出部21は、一対の側面3a、及び、一対の側面3cの少なくとも一部に設けられている。この例では、露出部21は、対応する端面3e上と、一対の側面3a上と、一対の側面3c上と、各稜線部3j上とに設けられている。第二電極層E2は、第一電極層E1を覆うように、一対の側面3a上と、一対の側面3c上と、稜線部3g,3i,3j上とに設けられている。第二電極層E2は、角部3k上にも設けられている。
【0074】
第二電極層E2は、一対の側面3a上と、一対の側面3c上と、各稜線部3j上とに設けられた第一電極層E1の少なくとも一部を露出部21として露出させている。露出部21のうち、各側面3aに設けられた部分と、各側面3cに設けられた部分と、各稜線部3jに設けられた部分とは、一体的に形成されている。これらの部分の幅(第一方向D1における長さ)は、たとえば、10μm以上250μm以下である。露出部21は、一対の側面3aと一対の側面3cと稜線部3jとにわたって途切れることなく連続して設けられている。
【0075】
第二電極層E2は、対応する端面3e上には設けられていない。第二電極層E2は、対応する端面3e上に設けられた第一電極層E1、すなわち、電極部5eの有する第一電極層E1の全体も露出部21として露出させている。露出部21のうち、対応する端面3e上に設けられた部分は、露出部21の他の部分から離間して設けられている。露出部21は、稜線部3g,3i上には設けられていない。
【0076】
積層コンデンサC2においても、第一電極層E1と第三電極層E3との間に第二電極層E2が設けられている。よって、耐たわみ性の向上が可能となる。積層コンデンサC2は、露出部21を備えるので、第一電極層E1と第三電極層E3との電気的接続が確保される。露出部21は、各側面3a,3c及び稜線部3jに設けられている。各側面3a,3c及び稜線部3jでは、端面3eと比べて気化膨張による第三電極層E3の剥離が生じ難い。よって、気化膨張による第三電極層E3の剥離が生じた場合でも、第一電極層E1と第三電極層E3との電気的接続を確実に確保することができる。
【0077】
積層コンデンサC2においても、第二電極層E2の端部25は、第三電極層E3から露出している。また、第二電極層E2は、各側面3a,3cと直接接している接合部23を有している。これらのことから、第三電極層E3の剥離を更に抑制することができる。
【0078】
積層コンデンサC2においても、露出部21が素体3を覆う面積は、第一電極層E1が素体3を覆う面積の5%以上である。よって、外部電極5の低ESR化を図ることができる。また、露出部21は、中心軸AXに関して2回対称及び4回対称となるように設けられている。よって、実装面による耐たわみ性のばらつきを抑制することができる。
【0079】
(第三実施形態)
図8~
図10を参照して、第三実施形態に係る積層コンデンサC3の構成を説明する。
図8及び
図9は、第三実施形態に係る積層コンデンサの断面構成を示す図である。
図10は、第三実施形態に係る積層コンデンサの側面図である。積層コンデンサC3は、第二電極層E2の点で積層コンデンサC1と相違し、これに伴い露出部21の点でも積層コンデンサC1と相違している。以下では、積層コンデンサC1」との相違点を中心に、積層コンデンサC3について説明する。
【0080】
図8~
図10に示されるように、積層コンデンサC3では、露出部21は、対応する端面3eと隣り合う稜線部3g,3i及び角部3kの少なくとも一部に設けられている。この例では、露出部21は、角部3k上に設けられている。第二電極層E2は、第一電極層E1を覆うように、対応する端面3e上と、一対の側面3a上と、一対の側面3c上と、稜線部3g,3i,3jの角部3k以外の部分とに設けられている。第二電極層E2は、角部3k上に設けられた第一電極層E1を露出部21として露出させている。露出部21の各部分は、互いに離間して設けられている。
【0081】
図11は、第三実施形態の第一変形例に係る積層コンデンサの側面図である。積層コンデンサC3Aにおいても、露出部21は、対応する端面3eと隣り合う稜線部3g,3i及び角部3kの少なくとも一部に設けられている。この例では、露出部21は、各稜線部3g,3iの長さ方向の中央部と、端面3e上と設けられている。露出部21は、端面3e上において、一対の稜線部3gに設けられた部分同士を接続するように第二方向D2に延びる矩形状部分と、一対の稜線部3iに設けられた部分同士を接続するように第三方向D3に延びる矩形状部分とを有している。これらの矩形状部分は、端面3eの中央部で互いに交差している。
【0082】
図12は、第三実施形態の第二変形例に係る積層コンデンサの側面図である。積層コンデンサC3Bにおいても、露出部21は、対応する端面3eと隣り合う稜線部3g,3i及び角部3kの少なくとも一部に設けられている。この例では、露出部21は、各稜線部3g,3i及び角部3kの全体に設けられている。露出部21は、第一方向D1から見て、矩形環状を呈している。露出部21は、端面3eの外縁に沿って途切れることなく連続的に設けられている。
【0083】
積層コンデンサC3,C3A,C3Bにおいても、第一電極層E1と第三電極層E3との間に第二電極層E2が設けられている。よって、耐たわみ性の向上が可能となる。積層コンデンサC3,C3A,C3Bは、露出部21を備えるので、第一電極層E1と第三電極層E3との電気的接続が確保される。露出部21は、稜線部3g,3i及び角部3kの少なくとも一部に設けられている。上述のように、稜線部3g,3i及び角部3kの第三電極層E3は、製法上、端面3eの第三電極層E3よりも薄くなり易い。よって、第一電極層E1が稜線部3g,3i及び角部3kの第三電極層E3と直接接することにより、外部電極5の低ESR化を図ることができる。
【0084】
積層コンデンサC3,C3A,C3Bにおいても、第二電極層E2の端部25は、第三電極層E3から露出している。また、第二電極層E2は、各側面3a,3cと直接接している接合部23を有している。これらのことから、第三電極層E3の剥離を更に抑制することができる。
【0085】
積層コンデンサC3,C3A,C3Bにおいても、露出部21が素体3を覆う面積は、第一電極層E1が素体3を覆う面積の5%以上である。よって、外部電極5の低ESR化を図ることができる。また、露出部21は、中心軸AXに関して2回対称及び4回対称となるように設けられている。よって、実装面による耐たわみ性のばらつきを抑制することができる。
【0086】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0087】
積層コンデンサC2では、露出部21が端面3eに設けられているが、設けられていなくてもよい。つまり、第二電極層E2が端面3eに設けられていてもよい。この場合、端面3eにおける第三電極層E3の剥離が第二電極層E2により抑制される。
【0088】
積層コンデンサC2では、各側面3a,3cに露出部21が設けられているが、露出部21は、たとえば、一対の側面3cのみに設けられ、一対の側面3aには設けられていなくてもよい。上述のように、たわみ応力による第三電極層E3の剥離は、実装面に設けられた第三電極層E3の端部から生じ易い。よって、露出部21が設けられていない一対の側面3aのいずれかを実装面とすることにより、たわみ応力による第三電極層E3の剥離を抑制し易くなる。この場合も、露出部21は中心軸AXに関して2回対称であるため、一対の側面3aのいずれを実装面としても、実装面による耐たわみ性のばらつきを抑制することができる。
【0089】
積層コンデンサC1,C2,C3,C3A,C3Bでは、端部25は、第四電極層E4及び第五電極層E5から露出しているが、露出していなくてもよい。
【符号の説明】
【0090】
3…素体、3a…側面、3c…側面、3e…端面、3g,3i,3j…稜線部、3k…角部、5…外部電極、21…露出部、23…接合部、25…端部、AX…中心軸、D1…第一方向、C1,C2,C3,C3A,C3B…積層コンデンサ、E1…第一電極層、E2…第二電極層、E3…第三電極層、E4…第四電極層、E5…第五電極層。