(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】生分解性樹脂粒子を含む化粧料用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/85 20060101AFI20240412BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20240412BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20240412BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20240412BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
A61K8/85
A61K8/02
A61Q1/00
A61Q5/00
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2018109689
(22)【出願日】2018-06-07
【審査請求日】2021-03-05
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 宏和
【合議体】
【審判長】瀬良 聡機
【審判官】宮崎 大輔
【審判官】関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-108165(JP,A)
【文献】特開2015-214690(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103849003(CN,A)
【文献】特開2016-210981(JP,A)
【文献】WANG, Hualin et al., Hollow Porous poly(lactic acid) Microspheres,2008,Journal of Applied Polymer Science, Vol.107, p.1189-1193
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
C08J3/00-3/28,99/00
C08G63/00-64/42
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
B01J13/02-13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査透過電子顕微鏡による断面写真において粒子内部に1つ以上の単孔が観察され、粒子長径と粒子短径の合計をD1とし、単孔長径と単孔短径の合計をD2とした時、D2/D1が0.05以上、0.20以下となる単孔の数が粒子1つあたり5個以上であり、体積平均粒子径が1.0~30μmであることを特徴とする生分解性樹脂粒子を含
み、前記生分解性樹脂が、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとの脱水縮合体である化粧料用組成物。
【請求項2】
前記単孔の長径と短径の合計D2の算術平均値が、0.1~4.5μmである請求項1に記載の生分解性樹脂粒子を含む、化粧料用組成物。
【請求項3】
走査透過電子顕微鏡による断面写真において粒子内部に1つ以上の単孔が観察され、粒子長径と粒子短径の合計をD1とし、単孔長径と単孔短径の合計をD2とした時、D2/D1が0.05以上、0.20以下となる単孔の数が粒子1つあたり5個以上であることを特徴とする化粧料に用いる生分解性樹脂粒子の製造方法であって、生分解性樹脂を水非混和性有機溶媒に可溶な水溶性高分子と共に水非混和性有機溶媒に溶解させる工程1と、分散剤を含有する水と前記生分解性樹脂液とを撹拌し懸濁液を調製する工程2を含み、前記水非混和性有機溶媒に可溶な水溶性高分子がポリビニルピロリドンである、化粧料に用いる生分解性樹脂粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生分解性を有する樹脂粒子を含む化粧料用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境意識が高まるにつれて、従来の樹脂を生分解性樹脂に置き換える動きが強まっており、こうした動きは樹脂粒子の分野でも同様である(例えば、特許文献1など)。
しかし、特許文献1の生分解性粒子は、他の樹脂と共に溶融混練、押出した後、他の樹脂を溶解することによって製造されるため、粒子内部が多孔質化されず、中実構造を有しているものと思われる。中実構造の生分解性粒子は、比表面積が小さいため、生分解性効率が劣り、環境中に長くとどまることが心配される。
【0003】
また特許文献2には、疎水性の生分解性ポリマーを疎水性有機溶媒に溶解させた後、アパタイト粉末を加えて原料溶液を調製し、無機塩を含む界面活性剤水溶液に前記原料溶液を加えて乳化し、この乳化液から分散微粒子を回収することで生分解性ポリマー粒子を製造している。この方法で得られた生分解性ポリマー粒子は、表面が多孔質化できているが、内側は中実構造のままである。そのため表面の生分解が終わった時点で生分解性効率が低下し、やはり環境中に長くとどまることが心配される。
【0004】
このような生分解性を有する樹脂粒子は化粧料用途においても求められているが、上記生分解性樹脂粒子は、生分解性の観点から、化粧料用途で用いるには改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-73233号公報
【文献】特開2010-126588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、より生分解性に優れた構造を有する生分解性樹脂粒子を含む化粧料用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
表面積を高めて生分解性を高めるには、内部まで多孔質化されていることが有効である。しかし、内部の孔径が小さすぎると、水の流通性が低下する観点から加水分解効率が悪くなる。また微生物乃至菌の大きさによっては、内部に侵入し難くなってくる。そうした中、本発明者らは、生分解性樹脂の孔制御に成功し、適度な大きさの単孔を適度な個数で粒子内部に形成することに成功した。こうした粒子は、内部孔の形状等に照らして、生分解性改善に有効であることが期待される。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1] 走査透過電子顕微鏡による断面写真において粒子内部に1つ以上の単孔が観察され、粒子長径と粒子短径の合計をD1とし、単孔長径と単孔短径の合計をD2とした時、D2/D1が0.05以上、0.20以下となる単孔の数が粒子1つあたり5個以上であることを特徴とする生分解性樹脂粒子を含む化粧料用組成物。
[2] 体積平均粒子径が1.0~30μmである前記[1]に記載の生分解性樹脂粒子を含む化粧料用組成物。
[3] 前記単孔の長径と短径の合計D2の算術平均値が、0.1~4.5μmである前記[1]又は[2]に記載の生分解性樹脂粒子を含む化粧料用組成物。
[4] 前記生分解性樹脂が、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとの脱水縮合体、または脂肪族ヒドロキシカルボン酸の脱水縮合体である前記[1]~[3]のいずれかに記載の生分解性樹脂粒子を含む化粧料用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の化粧料用組成物は、適度な大きさの単孔が適度な個数で粒子内部に形成されていることから生分解性に優れる粒子を含む。よって、本発明によれば、環境に優しい化粧料用組成物を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は合成例1で得られた生分解性微粒子断面の走査透過電子顕微鏡写真である。
【
図2】
図2は合成例2で得られた生分解性微粒子断面の走査透過電子顕微鏡写真である。
【
図3】
図3は比較合成例1で得られた生分解性微粒子断面の走査透過電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.生分解性樹脂粒子
1-1.成分
本発明で粒子とする生分解性樹脂としては、公知の種々の生分解性樹脂が使用でき、中でも脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとの脱水縮合体、または脂肪族ヒドロキシカルボン酸の脱水縮合体などの生分解性ポリエステル樹脂が好ましい。
【0012】
1-1-1.脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとの脱水縮合体(以下、生分解性樹脂1という)
前記脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの炭素数が2~10程度、好ましくは3~8程度のジカルボン酸(特にα,ω-アルカンジカルボン酸)が挙げられ、コハク酸が最も好ましい。これら脂肪族ジカルボン酸は、1種でもよく、2種以上を適宜組み合わせてもよい。
【0013】
前記脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコールなどの炭素数が2~10程度のジオール(特にα,ω-アルカンジオール)が挙げられ、エチレングリコールが最も好ましい。これら脂肪族ジオールは、1種でもよく、2種以上を適宜組み合わせてもよい。
【0014】
生分解性樹脂1は、必要に応じてポリエーテルジオール、ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシ基とカルボン酸基の片方又は両方を合計で3個以上有する化合物、アミノ酸、ポリアミンなど、ヒドロキシ基又はカルボン酸基と縮重合可能な成分を含んでいてもよい。
【0015】
生分解性樹脂1としては、ポリエチレンオキサレート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンアゼレート、ポリブチレンオキサレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンセバケート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリネオペンチルオキサレートなどが挙げられ、ポリエチレンサクシネートが好ましい。
【0016】
1-1-2.脂肪族ヒドロキシカルボン酸の脱水縮合体(以下、生分解性樹脂2という)
ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸などが挙げられ、ヒドキシカルボン酸は、環状多量化したものであってもよく、例えば、グリコリド(1,4-ジオキサン-2,5-ジオン)、ジラクチド(3,6-ジメチル-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン)などであってもよい。好ましいヒドロキシカルボン酸は、乳酸、ジラクチドなどであり、より好ましくは乳酸である。
【0017】
また生分解性樹脂2は、ヒドロキシカルボン酸の脱水縮合体と同一構造になることから、ラクトンの開環重合体であってもよい。ラクトンとしては、β-プロピオラクトン、ε-カプロラクトンなどの炭素数が3~10程度のラクトンが挙げられる。
【0018】
生分解性樹脂2は、必要に応じて脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸、ポリエーテルジオール、ヒドロキシ基とカルボン酸基の片方又は両方を合計で3個以上有する化合物、アミノ酸、ポリアミンなど、ヒドロキシ基又はカルボン酸基と縮重合可能な成分を含んでいてもよい。
【0019】
生分解性樹脂の重量平均分子量は、例えば、1万以上、好ましくは3万以上であり、例えば、30万以下、好ましくは20万以下、より好ましくは16万以下である。
【0020】
1-2.形態
本発明の生分解性樹脂粒子は、粒子内に適度な大きさの単孔を有している。この単孔は、走査透過電子顕微鏡写真の白色部であり、外縁を特定可能な独立孔(不連続孔)として表示される。そして本発明では、前記単孔(独立孔)が適度な大きさに制御され、かつ適度な数が存在するため、生分解性改善、光散乱性の向上、薬剤の内包効率向上などに効果的である。具体的には、粒子サイズをその長径(L)と短径(S)の合計値D1(=L+S)で表し、単孔(独立孔)サイズをその長径(l)と短径(s)の合計値D2(=l+s)で表した時、D2/D1が0.05以上、0.20以下となる単孔(独立孔)(以下、R0.05-0.20と表すことがある。添字の左側はD2/D1の下限値を、添字の右側はD2/D1の上限値を示す)が適度な大きさの単孔(独立孔)とされ、以下、本明細書では良孔という場合がある。良孔の数は、生分解性樹脂粒子断面1つあたり平均で、5個以上、好ましくは7個以上、より好ましくは9個以上である。良孔が多くなるほど、生分解性改善、光散乱性の向上、薬剤の内包効率向上などに効果的である。良孔の数の上限は、生分解性樹脂粒子の粒径に応じて論理的に設定される上限値と同等であってもよいが、例えば、20以下、好ましくは18以下であってもよい。
【0021】
前記単孔は、D2/D1の範囲がより適切に制御されていてもよい。例えば、D2/D1が0.05以上、0.15以下となる第2の良孔(以下、R0.05-0.15と表す場合がある)の数は、生分解性樹脂粒子断面1つあたり、例えば、6個以上、より好ましくは8個以上であり、例えば、19個以下、より好ましくは17個以下である。
【0022】
本発明の生分解性樹脂粒子では、前記単孔(独立孔)が粒子の表面ではなく、主に粒子の粒子内部に存在しており、粒子中心近傍まで存在していることもある。こうした中心部に着目して良孔の数をカウントした場合、例えば、粒子断面において長径(L)の中央を中心とし、直径を0.8×(L+S)とする円(80%円という)内に重心を有する良孔(R0.05-0.20)の数をカウントした場合、該良孔(R0.05-0.20)の数は平均で、例えば、3~12個程度、好ましくは5~10個程度である。また前記直径を0.5×(L+S)とする円(50%円)内に存在する良孔(R0.05-0.20)の数をカウントした場合、50%円内に重心を有する良孔(R0.05-0.20)の数は平均で、例えば、1~5個程度、好ましくは2~4個程度である。
【0023】
生分解性樹脂粒子の体積平均粒子径は、例えば、1.0~30μmである。体積平均粒子径を前記範囲にすることで、単孔の大きさを適度にすることができる。また可視光の波長よりも大きな径の粒子が多くなるため、粒子自体が光散乱性を有することが可能となる。また粒子の体積平均粒子径を30μm以下にすることで単位質量当たりの粒子の個数密度を増やすことができ、粒子の光散乱効果を大きくすることもできる。さらに体積平均粒子径は、好ましくは1.5μm以上、より好ましくは2.0μm以上であり、また好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下である。
【0024】
粒子中の単孔(独立孔)サイズD2の算術平均値は、例えば、0.1~4.5μmである。算術平均値がこの範囲になる様に単孔のサイズD2を揃えることで、生分解性改善、光散乱性の向上、薬剤の内包効率向上などの効果がさらに改善される。D2の算術平均値は、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.3μm以上であり、また好ましくは4.0μm以下、より好ましくは3.0μm以下である。
【0025】
2.製法
所定の大きさの単孔(良孔)を所定の個数有する生分解性樹脂粒子は、例えば、工程1~4を行うことによって製造できる。
工程1:生分解性樹脂を水非混和性有機溶媒に可溶な水溶性高分子(以下、両可溶性高分子という)と共に水非混和性有機溶媒に溶解させる(生分解性樹脂液)。
工程2:分散剤(界面活性剤、水非混和性有機溶媒に難溶な水溶性高分子など)を含有する水と前記生分解性樹脂液とを撹拌し、懸濁液を調製する。
工程3:懸濁液から前記水非混和性有機溶媒を蒸発留去し、水相中に生分解性樹脂粒子を浮遊させる。
工程4:水相と生分解性樹脂粒子とを分離し、生分解性樹脂粒子を必要に応じて洗浄した後、乾燥する。
生分解性樹脂の種類に応じて、両可溶性高分子や分散剤の割合、懸濁強度などを適宜調整することによって、良孔を制御できる。
【0026】
水非混和性有機溶媒は生分解性樹脂の溶解能を有し、かつ工程2の懸濁液中で油滴を形成可能な溶媒が使用され、生分解性樹脂の粒子化に有用である。前記水非混和性有機溶媒としては、例えば、クロロメタン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロエタン等のハロゲン系炭化水素溶媒;2-ペンタノン、3-ペンタノン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;などが挙げられ、ハロゲン系炭化水素溶媒が好ましい。
【0027】
水非混和性有機溶媒の量は、生分解性樹脂1質量部に対して、例えば、0.5~100質量部程度、好ましくは1~60質量部程度、より好ましくは3~30質量部程度である。
【0028】
工程1で使用する両可溶性高分子は、工程2の懸濁液の油滴中に水と共に存在することで、油滴内に水を導入し、この水が良孔を形成するものと推察される。こうした役割をもつ両可溶性高分子としては、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、メチルセルロース等が挙げられ、ポリビニルピロリドンが好ましい。
【0029】
両可溶性高分子のK値は必要に応じて設定でき、例えば、5以上、好ましくは10以上、より好ましくは15以上であり、例えば、150以下、好ましくは90以下、より好ましくは50以下である。
【0030】
K値は分子量と相関する粘性特性値であり、毛細管粘度計により測定される相対粘度値(25℃)を下記のFikentscherの式に適用して計算される。
K=(1.5logηrel-1)/(0.15+0.003c)+(300clogηrel+(c+1.5clogηrel)2)1/2/(0.15c+0.003c2)
[式中、ηrelは、両可溶性高分子水溶液の水に対する相対粘度を示し、cは両可溶性高分子水溶液中の両可溶性高分子濃度(%)を示す]
なおK値は、実測せず、メーカー測定値を採用することもできる。
【0031】
工程1で使用する両可溶性高分子の量は、生分解性樹脂100質量部に対して、例えば、0.1~100質量部程度、好ましくは1~60質量部程度、より好ましくは3~30質量部程度である。
【0032】
工程2で使用する分散剤は、懸濁液の油相安定性を高める作用を有し、界面活性剤や水非混和性有機溶媒に難溶な水溶性高分子などを使用できる。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0033】
また水非混和性有機溶媒に難溶な水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。
【0034】
工程2の懸濁液調製段階では、通常、強制撹拌を行う。強制撹拌によって生分解性樹脂粒子のサイズを調製できる。該強制撹拌には、公知の乳化分散装置を用いることができ、例えばT.K.ホモミクサー(プライミクス株式会社(旧社名:特殊機化工業)製)等の高速剪断タービン型分散機;ピストン型高圧式均質化機(ゴーリン社製)、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディックス社製)等の高圧ジェットホモジナイザー;超音波ホモジナイザー(日本精機製作所製)等の超音波式乳化分散機;アトライター(三井鉱山社製)等の媒体撹拌型分散機;コロイドミル(日本精機製作所製)等の強制間隙通過型分散機等を用いることができる。連続生産の際は、エバラマイルダー(荏原製作所製)を用いることができる。なお、上記の強制撹拌の前に、通常のパドル翼等で予備撹拌しておいてもよい。
【0035】
撹拌速度は、懸濁液中の油滴の粒子径に影響を及ぼし、撹拌速度を速くするほど、生分解性樹脂粒子の粒子径が小さくなる。例えば、上記T.K.ホモミクサー(懸垂型)を用いて1リットル容器で撹拌する場合は、5000rpm~15000rpm程度の範囲が好ましい。撹拌時間も油滴の粒子径に影響を及ぼし、所望の粒子径に応じて適宜設定できる。
【0036】
工程3で懸濁液から有機溶媒を蒸発留去することで、生分解性樹脂粒子を水相中に分散させることができると共に、生分解樹脂粒子内に両可溶性高分子が生分解性樹脂粒子内に残されるものと思慮される。この両可溶性高分子が水を抱き込むことによって生分解性樹脂粒子内に微細な水泡が形成され、良孔に変化するものと推定される。有機溶媒を蒸発させるにあたっては、懸濁液を有機溶媒の沸点以上の温度にする。必要に応じて、懸濁液を加熱してもよく、減圧を行って沸点を下げてもよい。ただし、水の沸点以下の温度に制御されていることが好ましい。
【0037】
減圧時の絶対圧は、例えば、1~300Torr、好ましくは5~200Torr、より好ましくは10~100Torrである。また溶媒留去時の温度は、例えば、5~80℃、好ましくは20~70℃、より好ましくは30~60℃程度にすることができる。
【0038】
有機溶媒を留去した後は、水相から生分解性樹脂粒子を分離する。この分離には、遠心分離、濾過などの通常の固液分離手段が適宜利用できる。分離後の生分解性樹脂粒子は、必要に応じて、水、水溶性有機溶媒などで洗浄してもよい。こうした洗浄を行うことで、生分解性樹脂粒子中の分散剤量を下げることができる。水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;THF、ジオキサン等の環状エーテル類;ジメトキシエタン、ジエチレングリコール等のエーテル系ポリオール;アセトンなどのケトン類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類などが挙げられる。好ましい水溶性有機溶媒は、アルコール類である。
【0039】
分離された生分解性樹脂粒子の乾燥条件は特に限定されないが、粒子同士の接着を防止する観点から高温にすることなく乾燥することが好ましく、そのためには減圧乾燥(特に真空乾燥)することが好ましい。
【0040】
3.化粧料用組成物
本発明の化粧料用組成物は、上記生分解性樹脂粒子を含む。上記生分解性樹脂粒子は優れた生分解性を有することから、化粧料用組成物において好適に使用することができる。
【0041】
化粧料用組成物における、上記生分解性樹脂粒子の含有量は、組成物とした際に十分な生分解性を発現できる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。また、生分解性以外の化粧料としての性能を確保する観点から、好ましくは50質量%以下である。
【0042】
本発明の化粧料には、通常化粧料に配合される成分、例えば、油性成分、粉体成分、界面活性剤、油ゲル化剤、水性成分、水溶性高分子、紫外線吸収剤、酸化防止剤、美容成分、防腐剤などを各種の効果を付与するために適宜配合することができる。
【0043】
油性成分としては、動物油、植物油、合成油等の起源及び、固形、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、エステル油類、硬化油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類等が挙げられる。具体的には、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、フィッシャートロプシュワックス、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン等の炭化水素類、モクロウ、ミンク油、オリーブ油、アボカド油、ヒマシ油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ等のロウ類、ロジン酸ペンタエリスリットエステル、ホホバ油、トリ2―エチルヘキサン酸グリセリル、イソノナン酸イソトリデシル、2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール等のエステル類、オレイン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール類、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、トリメチルシロキケイ酸、架橋型ポリエーテル変性メチルポリシロキサン、メタクリル変性メチルポリシロキサン、オレイル変性メチルポリシロキサン、ポリビニルピロリドン変性メチルポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン等のシリコーン油類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類、イソステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸等の油性ゲル化剤類等が挙げられ、これらの1種又は2種以上用いることができる。これらの中でもトリ2―エチルヘキサン酸グリセリル、イソノナン酸イソノニル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール等の低分子量エステル油が、伸び広がりや付着性の観点から好ましい。
【0044】
粉体成分としては、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的には、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色無機顔料、酸化鉄、カーボンブラック、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青等の有色無機顔料、タルク、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、絹雲母(セリサイト)、合成セリサイト、カオリン、炭化珪素、ベントナイト、スメクタイト、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、珪ソウ土、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素、シリカ等の白色体質粉体、二酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄被覆雲母チタン、酸化鉄雲母、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等の光輝性粉体、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン-アクリル共重合体等のコポリマー樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の有機高分子樹脂粉体、ステアリン酸亜鉛、N-アシルリジン等の有機低分子性粉体、澱粉、シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体、赤色201号、赤色202号、赤色205号、赤色226号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色404号、黄色401号等の有機顔料粉体、赤色3号、赤色104号、赤色106号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料粉体あるいは更にアルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン二酸化珪素、酸化亜鉛二酸化珪素等の複合粉体、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末のラメ剤、タール色素、天然色素等が挙げられ、これら粉体はその1種又は2種以上を用いることができ、更に複合化したものを用いても良い。尚、これら粉体成分は、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、レシチン、水素添加レシチン、コラーゲン、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックスクワランス、ロウ、界面活性剤等の1種又は2種以上を用いて表面処理を施してあっても良い。
【0045】
界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビトールの脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、ポリオキシアルキレンアルキル共変性シリコーン等の非イオン性界面活性剤類、アルキルベンゼン硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α-スルホン化脂肪酸塩、アシルメチルタウリン塩、N-メチル-N-アルキルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩等の陰イオン性界面活性剤類、アルキルアミン塩、ポリアミン及びアルカノイルアミン脂肪酸誘導体、アルキルアンモニウム塩、脂環式アンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤類、レシチン、N,N-ジメチル-N-アルキル-N-カルボキシメチルアンモニウムベタイン等の両性界面活性剤等が挙げられ、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0046】
油ゲル化剤としては、デキストリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、疎水性煙霧状シリカ、有機変性ベントナイト等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いてもよい。
【0047】
水性成分としては、水及び水に可溶な成分であれば何れでもよく、水の他に、例えば、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液等が挙げられる。
【0048】
水溶性高分子としては、グアーガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等の天然系のもの、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の半合成系のもの、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成系のものを挙げることができる。
【0049】
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等が挙げられる。
【0050】
酸化防止剤としては、例えばα-トコフェロール、アスコルビン酸等が挙げられる。
【0051】
美容成分としては、例えばビタミン類、タンパク質、消炎剤、生薬等が挙げられる。
【0052】
防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0053】
また、上記以外の各種成分としては、例えば、保湿剤、皮膜形成剤、褪色防止剤、消泡剤、香料、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカリン、パーフルオロオクタンなどのフッ素系油剤;多価アルコール、糖類、アミノ酸、各種ポリマー、エタノール、増粘剤、PH調整剤、血行促進剤、冷感剤、殺菌剤、皮膚賦活剤なども、本発明の効果を損なわない範囲内で配合可能である。
【0054】
また本発明の化粧料は、その剤形や製品形態が特に限定されるものではなく、油中水型、水中油型、水分散型、プレス状、固形等、パウダーなどの剤形とすることができ、また製品形態としては、洗顔フォーム・クリーム、クレンジング、マッサージクリーム、パック、化粧水、乳液、クリーム、美容液、化粧下地、日焼け止めなどの皮膚用化粧料、ファンデーション、水白粉、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、アイブロウ、コンシーラー、口紅、リップクリーム等の仕上げ用化粧料、ヘアミスト、シャンプー、リンス、トリートメント、ヘアトニック、ヘアクリーム、ポマード、チック、液体整髪料、セットローション、ヘアスプレー、染毛料等の頭髪用化粧料、パウダースプレー、ロールオン等の制汗剤などを例示することができる。この中でも、ファンデーション、フェースパウダーなど固形状製剤等が本発明の効果が発揮されやすい化粧料である。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下実施例を示していくが、各成分の配合量はすべて質量%である。
【0056】
〔物性測定方法〕
各種物性の測定は以下の方法で行った。
【0057】
<良孔(R0.05-0.20)の数>
生分解性樹脂粒子の断面を倍率10,000倍~30,000倍、加速電圧20kVの条件で走査透過電子顕微鏡により撮影した。撮影して得られた画像は、装置付属のノギス径算出ツールを使用し、粒子断面の長径(L)と短径(S)とそれらの合計D1(D1=L+S)(粒子サイズ)、及び粒子断面の単孔の長径(l)と短径(s)とそれらの合計値D2(単孔サイズ)を算出し、D2/D1が0.05以上、0.20となる良孔(R0.05-0.20)の数を求めた。1種類の生分解性ポリエステル粒子につき、20個の粒子について良孔(R0.05-0.20)を求め、その算術平均値を該生分解性樹脂粒子での良孔(R0.05-0.20)の数とした。
【0058】
<第2の良孔(R0.05-0.15)の数>
D2/D1の範囲を0.05以上、0.15以下とする以外は、前記良孔(R0.05-0.15)の数と同様にして、粒子断面内の第2の良孔(R0.05-0.15)の数を決定した。
【0059】
<80%円内の良孔(R0.05-0.20)の数>
前記<良孔(R0.05-0.20)>の数と同様にして、粒子サイズD1と単孔サイズD2を求め、良孔(R0.05-0.20)を特定し、粒子長径の中央を中心とする直径0.8×(L+S)の円(80%円)内に重心を有する良孔(R0.05-0.20)の数を求めた。1種類の生分解性ポリエステル粒子につき、20個の粒子についてR0.05-0.20を求め、その算術平均値を該生分解性樹脂粒子での80%円内での良孔の数とした。
【0060】
<50%円内の良孔(R0.05-0.20)の数>
粒子長径の中央を中心とする直径0.5×(L+S)の円(50%円)内に重心を有する良孔(R0.05-0.20)を数える以外は、前記<80%円内の良孔(R0.05-0.20)の数>と同様にして決定した。
【0061】
<単孔サイズ>
前記<良孔(R0.05-0.20)の数>で測定した20個の粒子に含まれる全単孔で測定したD2を対象として統計処理をしてその算術平均値を求め、単孔サイズとした。
【0062】
<体積平均粒子径とその変動係数(CV値)>
樹脂粒子0.1質量部に、乳化剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬株式会社製「ハイテノール(登録商標)N-08」)の1%水溶液20質量部を加え、超音波で10分間分散させた分散液を測定試料として、粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製「コールターマルチサイザーIII型」)により30000個の粒子の粒子径(μm)を測定し、体積平均粒子径を求めた。また体積基準での粒子径の標準偏差も求め、下記式に従って粒子径の変動係数(CV値)を算出した。
粒子径の変動係数(%)=100×(粒子径の標準偏差/体積平均粒子径)。
【0063】
〔製造例1〕ポリエチレンサクシネートの製造
300mLの撹拌装置付きのガラス製反応器に無水コハク酸0.5モル、エチレングリコール0.52モルを仕込み、撹拌下に140℃で生成水を留去し縮合反応を行った。反応開始から3時間後に反応触媒としてチタンテトラブトキシド0.02gを投入し、さらに反応温度は反応開始から5時間後に160℃、8時間後に180℃、9時間後に200℃に変更し、12時間後に反応を終了した。反応開始から5時間後に真空ポンプを接続し、以後は減圧下とした。クロロホルム溶液のGPC測定(条件は下記の通り)によりポリスチレン換算の分子量を求めたところ、数平均分子量Mnは2.9万、重量平均分子量Mwは6.3万であった。
【0064】
〔製造例2〕ポリブチレンサクシネート/アジペートの製造
300mLの撹拌装置付きのガラス製反応器に無水コハク酸0.72モル、アジピン酸0.08モル、1,4‐ブタンジオール0.81モルを仕込み、撹拌下に180℃で生成水を留去し縮合反応を行った。反応開始から3時間後に反応触媒としてチタンテトラブトキシド0.05gを投入し、10時間後に末端結合剤としてヘキメチレンジイソシアネートを2.0g投入した。反応温度は反応開始から1時間後に200℃、2時間後に220℃に変更し、12時間後に反応を終了した。反応開始から5時間後に真空ポンプを接続し、以後は減圧下とした。クロロホルム溶液のGPC測定(条件は下記の通り)によりポリスチレン換算の分子量を求めたところ、数平均分子量Mnは5.7万、重量平均分子量Mwは12.8万であった。
【0065】
<GPC測定条件>
測定システム:東ソー社製「GPCシステムHLC-8220」
展開溶媒:クロロホルム(和光純薬工業社製、特級)
溶媒流量:0.6mL/分
標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー社製「PS-オリゴマーキット」)
測定側カラム構成:ガードカラム(東ソー社製「TSK guardcolumn SuperHZ-L」)、分離カラム(東ソー社製「TSK Gel Super HZM-M」)、2本直列接続
リファレンス側カラム構成:リファレンスカラム(東ソー社製「TSK Gel Super H-RC」)。
【0066】
〔合成例1〕
製造例1で得られたポリエチレンサクシネート5.0gとポリビニルピロリドン(日本触媒社製、商品名「ポリビニルピロリドンK-30」)0.63gを45.0gの塩化メチレンに加え、撹拌しながら溶解した。この溶液を過剰の1質量%ポリビニルアルコール水溶液200gに撹拌しながら加えることで、一次懸濁液を調製した。一次懸濁液をT.K.ホモジナイザー(プライミクス株式会社(旧社名:特殊機化工業株式会社)製)により8000rpmで7分間撹拌して、二次懸濁液を調製した。二次懸濁液をフラスコに移し、ロータリーエバポレーターを駆動して、温度40℃、圧力30torrの減圧条件下にてフラスコを100rpmの速度で回転させることで塩化メチレンを除去した。分散液を減圧ろ過し、メタノールにて洗浄した。ろ過物を真空乾燥し、生分解性樹脂粒子を得た。
【0067】
〔合成例2〕
ポリエチレンサクシネート5.0gをポリ乳酸(三井化学社製、商品名「レイシアH440」)5.0gに変更する以外は合成例1と同様にした。
【0068】
〔合成例3〕
ポリエチレンサクシネート5.0gを製造例2で得られたポリブチレンサクシネート/アジペート5.0gに変更する以外は合成例1と同様にした。
【0069】
〔比較合成例1〕
ポリビニルピロリドン0.63gを使用しない以外は、合成例1と同様にした。
【0070】
各実施例及び比較例で得られた樹脂粒子について、走査透過電子顕微鏡を撮影すると共に諸特性を調べた。走査透過電子顕微鏡写真は
図1(合成例1)、
図2(合成例2)、
図3(比較合成例1)に示し、求めた諸特性については表1に示す。
【0071】
【0072】
〔実施例〕
下記に記載する基本配合において、表1に示す合成例1~2および比較合成例1の生分解性樹脂粒子を用い、ファンデーションを下記製法によりそれぞれ製造し、化粧仕上がり感、使用感触、持続性について下記評価方法により評価した。
【0073】
(基本配合)
(1) メチコン処理タルク 18.00 質量%
(2) メチコン処理酸化チタン 12.00 質量%
(3) メチコン処理セリサイト 43.00 質量%
(4) 生分解性樹脂粒子 8.00 質量%
(5) メチコン・シリカ処理微粒子酸化チタン 5.00 質量%
(6) ベンガラ 0.50 質量%
(7) 黄酸化鉄 1.00 質量%
(8) 黒酸化鉄 0.10 質量%
(9) ジメチルポリシロキサン 6.00 質量%
(10)イソノナン酸イソトリデシル 3.00 質量%
(11)スクワラン 3.00 質量%
(12)防腐剤 0.30 質量%
(13)抗酸化剤 0.10 質量%
(製法)
上記基本配合に示す粉体成分(1)~(8)を混合粉砕して、これをミキサーに移す。別の容器に油相成分(9)~(13)を混合する。ミキサーを撹拌しながら油相成分を加えて均一になるよう撹拌混合し、その後粉砕した。これをアルミ皿にプレス成型して製品を得た。
【0074】
(評価)
得られたファンデーションをパネラーが通常の使用方法にて用い、化粧仕上がり、使用性、持続性について評価したところ、いずれの性能にも優れたファンデーションであった。更に本発明のファンデーションは、仕上がり感が自然なだけ出なく、立体感や明確な陰影を与え、優れた性能を示した。