(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】青果物の包装袋に用いるフィルム
(51)【国際特許分類】
B65D 85/50 20060101AFI20240412BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240412BHJP
B65B 31/04 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
B65D85/50 120
B65D65/40 D
B65B31/04 A
(21)【出願番号】P 2018240722
(22)【出願日】2018-12-25
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150072
【氏名又は名称】藤原 賢司
(74)【代理人】
【識別番号】100185719
【氏名又は名称】北原 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 泰宏
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-025524(JP,A)
【文献】特開2018-118744(JP,A)
【文献】特許第6302726(JP,B2)
【文献】特開2010-013148(JP,A)
【文献】特開2004-059037(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181011(WO,A1)
【文献】特開2007-253349(JP,A)
【文献】特開2003-225979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/50
B65D 65/40
B65B 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
青果物の包装袋に用いるフィルムであって、
前記フィルムの総厚みは、15μm以上30μm未満であって、
前記包装袋を用いた前記青果物の包装は、自動包装機によって行なわれ、
前記フィルムは、表面層、基材層、及びシール層の少なくとも3層を有する二軸延伸ポリプロピレン系フィルムあり、
前記表面層のポリプロピレン系樹脂は、融点が120℃~165℃であり、
前記シール層は、プロピレン系ランダム共重合体及びポリエチレン系樹脂を含有し、
2枚の前記フィルムが、前記シール層の面が互いに向かい合うように重ねられた状態で、温度140℃、圧力0.2MPa、シール時間1.0秒の条件でヒートシールされた場合に、ヒートシール強度が
7N/15mm以上、10N/15mm以下であることを特徴とするフィルム。
【請求項2】
前記シール層の厚みが、3μm以上、4μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記シール層は、プロピレン系ランダム共重合体を60重量%~95重量%、及びポリエチレン系樹脂を5重量%~40重量%含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記青果物は、もやしである、請求項1から3のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項5】
前記請求項1から3のいずれか1項に記載のフィルムを用いた、もやしの脱気包装袋。
【請求項6】
青果物の包装袋に用いるフィルムを用い、
前記フィルムの総厚みは、15μm以上30μm未満であって、
前記フィルムは、表面層、基材層、及びシール層の少なくとも3層を有する二軸延伸ポリプロピレン系フィルムであり、
前記表面層のポリプロピレン系樹脂は、融点が120℃~165℃であり、
前記シール層は、プロピレン系ランダム共重合体を60重量%~95重量%、及びポリエチレン系樹脂を5重量%~40重量%含有し、
2枚の前記フィルムが、前記シール層の面が互いに向かい合うように重ねられた状態で、温度140℃、圧力0.2MPa、シール時間1.0秒の条件でヒートシールされた場合に、ヒートシール強度が
7N/15mm以上、10N/15mm以下であり、
前記フィルムを用いて、青果物を包装する工程を含み、
前記フィルムを用いた前記青果物の包装は、自動包装機によって行なわれることを特徴とする、脱気包装後の脱気戻りを防止する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青果物の包装袋に用いるフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
生野菜、果物、芋、キノコ等の青果物は、鮮度の保持や外部との接触による損傷から守る為、袋状に加工された樹脂フィルムにより包装され、流通している。
【0003】
この樹脂フィルムを袋状に加工し、生野菜等の青果物を自動包装する装置として、縦ピロー機等の包装機が用いられている。縦ピロー機とは、先ず樹脂フィルムを筒状にし、次に袋の底をシールし、次に袋上方より内容物を投入し、最後に袋上部をシールすることにより、内容物を袋状の樹脂フィルムで包装する装置である。この時、シール直後のシール部(袋の底部)に内容物の荷重がかかると、生野菜等の重量物の場合には、シール部が開く等の不具合が発生するというおそれがある。
【0004】
そこで、本出願人は、青果物を包装するためのフィルムを提供している(特許文献1)。この包装用のポリプロピレン系フィルムは、ヒートシール強度に優れ、内容物充填時のホットタック性に優れる為、内容物が生野菜等の比較的重い物であってもシール部が開き難く、縦ピロー包装機を使って効率的に包装することができる。
【0005】
また、青果物の中でも、もやしは、収穫された後、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等からなる袋で包装され、低温で流通され、低温で販売される。このもやしは、低温で流通、販売されるとはいえ、変質し易い。
【0006】
そこで、本出願人は、もやし等を日持ちさせる包装用フィルムを提供している(特許文献2)。このもやし包装用フィルムは、もやしの変質によって発生する硫化メチルに対して脱臭効果が優れている。
【0007】
また、収穫後のもやしや菌茸類を内容物とし、脱気包装して保存した時に、時間が経過しても、包装体が膨らむことを抑えることを目的として、もやし又は菌茸類用鮮度保持包装袋が開示されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第6302726号
【文献】特許第4854881号
【文献】特開2018-76081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、青果物の包装袋に用いるフィルムとして、脱気包装袋の膨らみ(脱気戻り)を抑制できるフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、青果物、特にもやしの包装袋に関する。青果物、特にもやしの包装袋の素材として、ポリエチレン、ポリプロピレンのフィルム等が使用されている。もやしは、低温流通されるとはいえ、変質し易い。もやしの包装袋として、脱気包装により、袋内の空気を抜いた状態で包装される。
【0011】
もやしの呼吸を抑制する効果がある。この脱気包装により、袋全体が腰感を有し、袋の取り扱い性や陳列性等が向上する。しかし、店頭に並んだ段階で、脱気した袋が空気を含み、若干膨らんだ状態になるものがある。その結果、手に取った際の「しっかり感」がなくなったり、陳列性が悪くなったりする。
【0012】
本発明者は、脱気包装された袋の膨らみは、フィルムに使用される合成樹脂のガス透過量以上にガスの出入りがないと、起こり得ないことを突き止めた。そこで、脱気包装袋の膨らみ(脱気戻り)を抑制できる脱気包装に用いることができるフィルムを提供することに至った。
【0013】
ガスの出入りは、袋に製袋した時のシール部分から起こっている。そのシール部分の不良部分からガスが出入りする。安定したシール性を実現することで、脱気包装袋の膨らみ(脱気戻り)を低減することができる。
【0014】
本発明者は、青果物の包装袋に用いるフィルムが、以下の特徴を備えることにより、脱気包装袋の膨らみ(脱気戻り)を抑制できることを見出した。
【0015】
項1.
青果物の包装袋に用いるフィルムであって、
前記フィルムは、プロピレン系ランダム共重合体及びポリエチレン系樹脂を含有するシール層を少なくとも1層有することを特徴とするフィルム。
【0016】
項2.
前記フィルムは、表面層、基材層、及びシール層の少なくとも3層を有する二軸延伸ポリプロピレン系フィルムあり、
前記シール層は、プロピレン系ランダム共重合体を60重量%~95重量%、及びポリエチレン系樹脂を5重量%~40重量%含有することを特徴とする、前記項1に記載のフィルム。
【0017】
項3.
前記青果物は、もやしである、前記項1又は2に記載のフィルム。
【0018】
項4.
前記項1又は2に記載のフィルムを用いた、もやしの脱気包装袋。
【0019】
項5.
青果物の包装袋に用いるフィルムを用い、
前記フィルムは、表面層、基材層、及びシール層の少なくとも3層を有する二軸延伸ポリプロピレン系フィルムであり、
前記シール層は、プロピレン系ランダム共重合体を60重量%~95重量%、及びポリエチレン系樹脂を5重量%~40重量%含有し、
前記フィルを用いて、青果物を包装する工程を含む、
ことを特徴とする、脱気包装後の脱気戻りを防止する方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、青果物の包装袋に用いるフィルムとして、脱気包装袋の膨らみ(脱気戻り)を抑制できるフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、青果物の包装袋に用いるフィルムに関する。
【0022】
本発明では、前記青果物の包装袋に用いるフィルムにおいて、前記青果物はもやしであることが好ましい。
【0023】
本発明は、前記フィルムを用いたもやしの脱気包装袋にも関する。
【0024】
本発明は、青果物の包装袋に用いるフィルムを用い、青果物を包装する工程を含む、ことを特徴とする、脱気包装後の脱気戻りを防止する方法に関する。
【0025】
(1)青果物の包装袋に用いるフィルム
本発明は、青果物の包装袋に用いるフィルムであって、
前記フィルムは、プロピレン系ランダム共重合体及びポリエチレン系樹脂を含有するシール層を少なくとも1層有することを特徴とする。
【0026】
本発明では、前記フィルムは、表面層、基材層、及びシール層の少なくとも3層を有する二軸延伸ポリプロピレン系フィルムあり、
前記シール層は、プロピレン系ランダム共重合体を60重量%~95重量%、及びポリエチレン系樹脂を5重量%~40重量%含有することが好ましい。
【0027】
本発明では、前記青果物は、もやしであることが好ましい。
【0028】
本発明は、前記フィルムを用いた、もやしの脱気包装袋である。
【0029】
(1-1)シール層
本発明のフィルムは、シール層を少なくとも1層有する。
【0030】
シール層は、例えば縦ピロー機で青果物等を包装する場合、最初に樹脂フィルムを筒状にするに際して、筒の内側になる層であり、当該シール部では、シール層同士が互いに接着する。
【0031】
シール層は、プロピレン系ランダム共重合体及びポリエチレン系樹脂を含有する。シール層は、プロピレン系ランダム共重合体を60重量%~95重量%、及びポリエチレン系樹脂を5重量%~40重量%含有することが好ましい。
【0032】
プロピレン系ランダム共重合体
プロピレン系ランダム共重合体は、プロピレンとそれ以外のα-オレフィンとの共重合体である。
【0033】
プロピレン以外のα-オレフィンとしては、例えば、炭素数2~20のプロピレン以外のα-オレフィンを挙げることができる。具体的には、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、3-メチル-1-ブテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-エチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-エチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン等が挙げられる。
【0034】
この中、炭素数2~4の、例えば、エチレン、ブテンが好ましく、エチレンがより好ましい。これらプロピレン以外のα-オレフィンは、1種であっても、2種以上の併用であっても良い。
【0035】
プロピレン系ランダム共重合体中のプロピレン以外のα-オレフィンの含有割合は、14重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。
【0036】
プロピレン系ランダム共重合体としては、プロピレンとそれ以外のα-オレフィンとのランダム共重合体であれば特に限定されないが、具体的には、例えば、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体等を挙げることができる。この中、プロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体が好ましい。
【0037】
プロピレン系ランダム共重合体の中、ISO1133(1997)に準拠して230℃、21.18N(2.16Kg)荷重の条件で測定された場合のメルトフローレート(MFR)値が0.5g/10分~20g/10分の範囲内であるプロピレン系ランダム共重合体が好ましい。また当該MFR値が、4g/10分~8g/10分の範囲内であるプロピレン系ランダム共重合体がより好ましい。なお、重合体のMFR値は、プロピレン以外のα-オレフィンの種類や含有量、重合体の分子量や重合度によって適宜調整することができる。
【0038】
ポリエチレン系樹脂
ポリエチレン系樹脂は、エチレンとそれ以外のα-オレフィンとの共重合体である。
【0039】
エチレン以外のα-オレフィンとしては、例えば、炭素数3~20のα-オレフィンを挙げることができ、具体的には、例えば、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。
【0040】
この中、炭素数3~8の、例えば、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンが好ましい。これらエチレン以外のα-オレフィンは1種であっても、また2種以上の併用であってもよい。
【0041】
ポリエチレン系樹脂中のエチレンとそれ以外のα-オレフィンとの含有割合としては、通常、エチレンが75重量%~100重量%であり、それ以外のα-オレフィンが0~25重量%であり、好ましくはエチレンが85重量%~99.9重量%であり、それ以外のα-オレフィンが0.1重量%~15重量%であり、より好ましくはエチレンが90重量%~99.5重量%であり、それ以外のα-オレフィンが0.5重量%~10重量%であり、更に好ましくはエチレンが90重量%~99重量%であり、それ以外のα-オレフィンが1重量%~10重量%である。
【0042】
ポリエチレン系樹脂の中、ISO1133(1997)に準拠して190℃、21.18N(2.16Kg)荷重の条件で測定されたメルトフローレート(MFR)値が0.5g/10分~20g/10分の範囲内であるポリエチレン系樹脂が好ましい。また、当該MFR値が、2g/10分~4g/10分の範囲内であるポリエチレン系樹脂がより好ましい。
【0043】
更にポリエチレン系樹脂の中、JIS K 7112に準拠して測定した場合の密度が850Kg/m3~900Kg/m3の範囲内であるポリエチレン系樹脂が好ましく、860Kg/m3~890Kg/m3の範囲内であるポリエチレン系樹脂がより好ましい。
【0044】
含有比率
本発明のフィルムでは、前記シール層は、プロピレン系ランダム共重合体を60重量%~95重量%、及びポリエチレン系樹脂を5重量%~40重量%含有することが好ましい。
【0045】
シール層中のプロピレン系ランダム共重合体の含有量は、より好ましくは62重量%~94重量%であり、更に好ましくは63重量%~93重量%であり、特に好ましくは65重量%~91重量%である。プロピレン系ランダム共重合体の含有量は、95重量%より多いと十分なヒートシール強度が得られない場合があり、60重量%より少ないとホットタック性が低下する場合がある。
【0046】
シール層中のポリエチレン系樹脂の含有量は、より好ましくは6重量%~38重量%であり、更に好ましくは7重量%~37重量%であり、特に好ましくは9重量%~35重量%である。ポリエチレン系樹脂の含有量は、5重量%より少ないと十分なヒートシール強度が得られない場合があり、40重量%より多いとホットタック性が低下する場合がある。
【0047】
アンチブロッキング剤又は滑剤
シール層には、樹脂フィルムの表面が平滑になり、樹脂フィルム同士が密着することを防ぐ目的で、透明性を損なわない範囲で、アンチブロッキング剤又は滑剤を含んでいても良い。かかるアンチブロッキング剤としては、一般的に用いられている無機系のシリカやカオリン、ゼオライト等、又は有機系の架橋アクリルビーズ等が挙げられる。また、滑剤としては、ステアリン酸カルシウム等が挙げられる。アンチブロッキング剤及び滑剤は、いずれも1種のみでもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0048】
上記アンチブロッキング剤又は滑剤の添加量は、樹脂の種類等により適宜調整することができるが、層を構成する樹脂100重量部に対して、0.05重量部~30重量部が適当であり、好ましくは0.5重量部~20重量部である。
【0049】
(1-2)基材層
本発明では、前記フィルムは、表面層、基材層、及びシール層の少なくとも3層を有する二軸延伸ポリプロピレン系フィルムあることが好ましい。基材層は、前記シール層と後記表面層との間に挟まれた中間層である。
【0050】
基材層は、結晶性ポリプロピレン系樹脂を主成分として含有していることが好ましい。
【0051】
結晶性ポリプロピレン系樹脂
結晶性ポリプロピレン系樹脂は、結晶性のプロピレン系樹脂であれば特に限定されないが、融点155℃~165℃の結晶性ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0052】
この融点155℃~165℃の結晶性ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体又はプロピレンとそれ以外のα-オレフィンとの共重合体である。
【0053】
プロピレン以外のα-オレフィンとしては、例えば、炭素数2~10のプロピレン以外のα-オレフィンを挙げることができ、具体的には、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン等のα-オレフィンを挙げることができる。この中、炭素数2~4の、例えば、エチレン、1-ブテンが好ましく、エチレンがより好ましい。これらプロピレン以外のα-オレフィンは、1種であっても、2種以上の併用であっても良い。
【0054】
プロピレン以外のα-オレフィンの含有割合は、1.3重量%以下が適当であり、0.8重量%以下が好ましい。
【0055】
主成分とは、通常、基材層中の融点155℃~165℃の結晶性ポリプロピレン系樹脂が、50重量%以上であり、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。
【0056】
防曇剤
基材層には、フィルムに防曇性能を付与する目的で防曇剤を含有することができる。かかる防曇剤は基材層に添加するのが一般的であるが、本発明フィルム成膜後は、表面層やシール層に拡散していくため、水分の多い内容物を包装する用途に使用された場合、良好な防曇性を発現する。かかる防曇剤としては、その目的に適うものであれば特に限定されず、従来、防曇性フィルムに用いられている防曇剤をそのまま使用することができる。具体的には、例えば、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルの3系が挙げられる。
【0057】
アルキルジエタノールアミンにおけるアルキル基は、通常、炭素数8~22、好ましくは炭素数12~18のものである。具体的なアルキルジエタノールアミンとしては、ラウリルジエタノールアミン、ミリスチルジエタノールアミン、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、オレイルジエタノールアミン等を挙げることができる。
【0058】
アルキルジエタノールアミン脂肪酸エステルにおける脂肪酸エステル基は、通常、炭素数8~22、好ましくは炭素数12~22の飽和又は不飽和の脂肪酸エステルであり、好ましくは後者の不飽和の脂肪酸エステルである。具体的なアルキルジエタノールアミン脂肪酸エステルとしては、ラウリルジエタノールアミンモノステアリン酸エステル、ミリスチルジエタノールアミンモノオレイン酸エステル、ラウリルジエタノールアミンモノステアリン酸エステル、パルミチルジエタノールアミンモノステアリン酸エステル、ステアリルジエタノールアミンモノパルミチル酸エステル、ステアリルジエタノールアミンモノステアリン酸エステル、オレイルジエタノールアミンモノステアリン酸エステル等を挙げることができる。
【0059】
グリセリン脂肪酸エステルにおける脂肪酸エステル基は、上記のアルキルジエタノールアミン脂肪酸エステルにおける脂肪酸エステル基と同様のものを挙げることができる。また、グリセリンの-OHに結合する脂肪酸エステル基数は1又は2個が好ましく、より好ましいのは1個の脂肪酸エステルモノグリセライドである。
【0060】
以上の各防曇剤は、上記同系の中で1種又は2~3種の混合で、異系の中で2~3種の混合の形で使用されることが好ましい。防曇剤は、中でも異系の中での3種混合の形での使用、つまりアルキルジエタノールアミンとアルキルジエタノールアミン脂肪酸エステル及び脂肪酸エステルモノグリセライドの3成分混合で、且つアルキルジエタノールアミン脂肪酸エステルを主成分として組成するのがより好ましい。
【0061】
防曇剤の添加量としては、防曇剤の種類等により適宜調整すれば良いが、5,000ppm~15,000ppmが適当であり、4,000ppm~10,000ppmが好ましい。防曇剤の添加量が5,000ppm未満であると充分な防曇効果が得られない場合があり、15,000ppmを超えると必要以上に表面へのブリードアウトが起こり、透明性が劣化する場合がある。
【0062】
(1-3)表面層
本発明では、前記フィルムは、表面層、基材層、及びシール層の少なくとも3層を有する二軸延伸ポリプロピレン系フィルムあることが好ましい。表面層は、樹脂フィルムを包装用袋に成形した際、外面となる層である。
【0063】
表面層は、ポリプロピレン系樹脂を含有していることが好ましい。
【0064】
ポリプロピレン系樹脂
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体又はプロピレンとそれ以外のα-オレフィンとの共重合体である。プロピレン以外のα-オレフィンとしては、例えば、炭素数2~10のプロピレン以外のα-オレフィンを挙げることができる。具体的には、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン等のα-オレフィンを挙げることができる。この中、炭素数2~4の、例えば、エチレン、1-ブテンが好ましく、エチレンがより好ましい。これらプロピレン以外のα-オレフィンは、1種であっても、2種以上の併用であっても良い。プロピレン以外のα-オレフィンの含有割合は、14重量%以下が適当であり、10重量%以下が好ましい。
【0065】
ポリプロピレン系樹脂の中、ISO1133(1997)に準拠して230℃、21.18N(2.16Kg)荷重の条件で測定された場合のメルトフローレート(MFR)値が0.5g/10分~20g/10分の範囲内にあることが好ましい。また、MFR値が、4g/10分~8g/10分の範囲内であるポリプロピレン系樹脂がより好ましい。なお、重合体のMFR値は、プロピレン以外のα-オレフィンの種類や含有量、重合体の分子量や重合度によって適宜調整することができる。
【0066】
更に、ポリプロピレン系樹脂は、融点が120℃~165℃の範囲内にあることが好ましい。
【0067】
アンチブロッキング剤又は滑剤
表面層には、樹脂フィルムの表面が平滑になり、樹脂フィルム同士が密着することを防ぐ目的で、透明性を損なわない範囲で、アンチブロッキング剤又は滑剤を含んでいても良い。当該アンチブロッキング剤又は滑剤の好ましい種類や添加量は、前記シール層に記載のものと同様である。
【0068】
(1-4)フィルムの構成
本発明のフィルムは、表面層、基材層、及びシール層の少なくとも3層を有しており、これら各層は、本発明フィルムを包装用袋に成形した際、外面が表面層、中間が基材層、内側がシール層の順になる。
【0069】
フィルムの各層の厚さ
本発明のフィルムの総厚みは、通常10μm~80μmの範囲内であり、好ましくは10μm~40μmの範囲内である。
【0070】
シール層は、通常1.0μm~12μmの範囲内であり、好ましくは1.2μm~6μmの範囲内である。
【0071】
基材層は、通常1μm~40μmの範囲内であり、好ましくは2μm~25μmの範囲内である。
【0072】
表面層は、通常0.3μm~40μmの範囲内であり、好ましくは0.5μm~37μmの範囲内である。
【0073】
シール層及び表面層の厚さがこの範囲にあると良好なシール強度を有し、取り扱い性が良好なフィルムとなる。
【0074】
本発明のフィルム中には、種々の添加剤を適量更に混合することができる。かかる添加剤としては、造核剤、酸化防止剤、難燃剤、静電気防止剤、充填剤、顔料等を挙げることができる。
【0075】
本発明のフィルムは、前記3層の他に、開口性付与層、ガスバリア性付与層等その他の層を有していても構わない。
【0076】
(2)フィルムの製造方法
本発明のフィルムを用いることで、安定したシールを実現することでき、脱気戻りを低減することができる。本発明のフィルムを用いることで、シール部分に不良部分が無く、袋に製袋した時のシール部分からガスの出入りが起こらない。
【0077】
本発明フィルムの製造方法は、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。
【0078】
本発明フィルムの製造方法は、生産性や出来上がったフィルムの物性等を考慮すると、フラット状シートを押出成形により製膜し、次いで逐次二軸延伸して、フィルムを製造するのが好ましい。
【0079】
より具体的には、適正な温度に設定された3台の押出機に、表面層を構成する樹脂、基材層を構成する樹脂及びシール層を構成する樹脂を夫々投入し、押出機内で樹脂を溶融・混練した後、210℃~250℃のTダイスよりシート状に押出す。この場合、3層の多層構成を形成する為に、フィードブロック方式を用いても、マルチマニホールド方式を用いても良い。
【0080】
押出されたシートは25℃の冷却ロールにて冷却固化され、縦延伸工程へと送られる。縦延伸は130℃~140℃に設定された加熱ロールにより構成されており、ロール間の速度差によって縦方向(以下、MD方向という。)に延伸される。この加熱ロールの本数には特に制限はないが、少なくとも低速側と高速側の2本は必要である。縦延伸の延伸倍率は4倍~6倍、好ましくは4.5倍~5.5倍である。
【0081】
次にテンターによる横延伸工程に送られ、横方向(以下、TD方向という。)に延伸される。テンター内は予熱、延伸、アニールゾーンに分かれており、予熱ゾーンは165℃~170℃に、延伸ゾーンは165℃~170℃に、そしてアニールゾーンは165℃~170℃に設定されている。延伸ゾーンでの延伸倍率は6倍~10倍程度が好ましい。延伸された後、アニールゾーンで冷却、固定された後、巻き取り機にて巻き取ってフィルムロールとなる。
【0082】
本発明のフィルムの製造においては、テンターのアニールゾーンを出た後、巻き取り機で巻き取る前に、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線照射処理等公知の表面処理を施すことが好ましく、簡便性の点から特に、コロナ放電処理を行うことが好ましい。当該表面処理を施すことにより、フィルムの表面にぬれ張力を持たせ、防曇効果を高めることができるだけでなく、フィルム表面に印刷をする場合の印刷インキとの密着性を高めることもできる。
【0083】
コロナ放電処理は、表面層面、シール層面の両面を処理しても良いし、表面層面又はシール層面のどちらか一方の面を処理しても良い。コロナ放電処理の強度としては、1.8×102J/m2~9.0×102J/m2の範囲内にあるのが好ましく、両面処理する場合に、両面共、同じ強度であっても、異なっていても良い。
【0084】
本発明の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムの表面のぬれ張力は、38mN/m~44mN/mが好ましい。ぬれ張力が38mN/m未満であると、防曇性の発現が充分でなく、また印刷する場合には印刷インキの密着性に劣り好ましくない。ぬれ張力が44mN/mを超えると、防曇剤の表面へのブリードアウトが激しく白化やブロッキングの原因となるほか、溶断シール強度の低下の原因となり好ましくない。
【0085】
(3)フィルムを用いて袋状に加工する方法
本発明は、前記フィルムを用いた青果物の包装袋を包含する。
【0086】
本発明は、前記フィルムを用いたもやしの脱気包装袋を包含する。
【0087】
本発明の包装用袋は、本発明のフィルムを用いて、自動包装機等により成形し得ることができる。フィルムを袋状に加工し、生野菜等の青果物を自動包装する装置として、縦ピロー機等の包装機が用いられている。縦ピロー機とは、先ず(樹脂)フィルムを筒状にし、次に袋の底をシールし、次に袋上方より内容物を投入し、スポンジで袋と内容物を挟み、袋内の空気を押し出して脱気し、最後に袋上部をシールすることにより、内容物を袋状の(樹脂)フィルムで包装する装置である。
【0088】
本発明のフィルムは、内容物充填時のホットタック性に優れるため、縦ピロー包装機で包装用袋を成形する際に特に好適に用いられる。本発明のフィルムは、横ピロー包装機等その他包装機で成形する際にも、用いることができる。
【0089】
本発明の包装用袋で包装される内容物としては、包装され得るものであれば特に限定されないが、例えば、青果物(例:生野菜、果物、芋、キノコ等)等の農産物を挙げることができ、農産物が好ましい。
【0090】
農産物としては、例えば、ネギ、もやし、ホウレン草、ブロッコリー、ピーマン等の野菜類;キャベツ、レタス、ニンジン等のカット野菜類;又はいちご、バナナ、レモン等の果物類;又はえのき茸、まいたけ、しめじ茸、しいたけ等のキノコ類を挙げることができる。中でも、もやし、カット野菜類が好ましい。
【0091】
本発明のフィルムを用いることで、安定したシールを実現することでき、脱気戻りを低減することができる。本発明のフィルムを用いることで、シール部分に不良部分が無く、袋に製袋した時のシール部分からガスの出入りが起こらない。
【0092】
(4)脱気包装後の脱気戻りを防止する方法
本発明は、青果物の包装袋に用いるフィルムを用い、脱気包装後の脱気戻りを防止する方法を包含する。
【0093】
本発明は、青果物の包装袋に用いるフィルムを用い、
前記フィルムは、表面層、基材層、及びシール層の少なくとも3層を有する二軸延伸ポリプロピレン系フィルムであり、
前記シール層は、プロピレン系ランダム共重合体を60重量%~95重量%、及びポリエチレン系樹脂を5重量%~40重量%含有し、
前記フィルを用いて、青果物を包装する工程を含む、
ことを特徴とする、脱気包装後の脱気戻りを防止する方法である。
【0094】
フィルムの詳細は前記の通りである。
【0095】
フィルを用いて青果物を包装する工程は、例えば、前記の通り、縦ピロー機等の包装機が用いて包装する。
【0096】
本発明では、前記青果物はもやしである、ことが好ましい。
【0097】
本発明のフィルムを用いることで、安定したシールを実現することでき、脱気戻りを低減することができる。本発明のフィルムを用いることで、シール部分に不良部分が無く、袋に製袋した時のシール部分からガスの出入りが起こらない。
【実施例】
【0098】
実施例を挙げて本発明を説明する。本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0099】
(1)包装袋のフィルムの原料
PP-1:プロピレン-エチレン共重合体
エチレン成分:0.5重量%、MFR:3.0g/10分、融点:161℃、密度:900Kg/m3
PP-2:プロピレン-エチレン共重合体
エチレン成分:0.4重量%、MFR:2.3g/10分、融点:160℃、密度:900Kg/m3
PP-3:プロピレン-エチレン-ブテン共重合体
エチレン成分:3.4重量%、ブテン成分:1.4重量%、
MFR:5.0g/10分、融点:125℃、密度:900Kg/m3
LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン
MFR:3.5g/10分、融点:60℃、密度:880Kg/m3
【0100】
(2)包装袋の製袋条件
包装袋は、自動計量包装機DT-1080(大生機械製)を用いて下記の条件により製袋した。
ショット数:56ショット/分
製袋ピッチ:224mm
実包量:もやし200g
縦シール温度:220℃
横シール温度:140℃
脱気用スポンジ:有り
【0101】
(3)実施例
(実施例1)
表面層を構成する樹脂:PP-1(100重量%)
基材層を構成する樹脂:PP-2(100重量%)
シール層を構成する樹脂:PP-3(80重量%)及びPE-1(20重量%)
各層を構成する樹脂を3台の押出機に夫々投入し、表面層/基材層/シール層の順に積層されるようにして、温度230℃の3層Tダイスから共押出し、25℃の冷却ロールで冷却、固化して原反シートを得た。次いで、前記シートを130℃に加熱し、MD方向に4.6倍ロール延伸した後、テンターにて設定温度165℃で予熱し、設定温度165℃でTD方向に10倍延伸した。
【0102】
次いで、設定温度165℃でアニールし、テンターを出た後、表面層側を6.6×102J/m2で、シール層側を4.8×102J/m2でコロナ放電処理を施した。これを巻き取り機で巻き取って、本発明のフィルムを得た。得られたフィルムの総厚みは25μmであり、各層の厚みは表面層/基材層/シール層=2μm/19μm/4μmであった。
【0103】
(実施例2)
フィルムの総厚みを20μmとし、各層の厚みを、表面層/基材層/シール層=2μm/15μm/3μmとしたこと以外は実施例1と同様にして、本発明のフィルムを得た。
【0104】
(比較例1)
シール層を構成する樹脂としてPP-3を100重量%とする以外は実施例1と同様にして、フィルムを得た。
【0105】
フィルムを用いて袋状に加工する方法
自動包装する包装機として縦ピロー機を用いて、前記得られたフィルムを袋状に加工し、生野菜等の青果物を包装した。縦ピロー機を用いて、先ず、(樹脂)フィルムを筒状にし、次に袋の底をシールし、次に袋上方より内容物を投入し、スポンジで袋と内容物を挟み袋内の空気を押し出して脱気する。最後に袋上部をシールすることにより、内容物を袋状の(樹脂)フィルムで包装した。
【0106】
(4)包装袋の評価試験
ヒートシール強度の測定
2枚のフィルムを、シール層面が向かい合うように重ねた後、ヒートシールテスター(東洋精機製作所製 HG-100)にて、温度140℃、圧力0.2MPa、シール時間1.0秒の条件でヒートシールした。
【0107】
得られたサンプルを長さ200mm×幅15mmにカットし、剥離試験機(新東科学株式会社製 Peeling TESTER HEIDON-17)を用いて引張速度200mm/minで、T字剥離試験にてヒートシール強度測定した。測定を5回行い、その平均値をとった。
【0108】
6N/15mm以上のシール強度を有するものを、「良好」と判断した。
【0109】
脱気戻り確認試験
実包評価を行った。青果物の入った製袋品に対して、空気の侵入が発生した割合を調査した。脱気戻りの調査は、目視で袋に空気が入っているかと、触感により袋内のもやしがずれるかで判断した。確認事項として、袋が膨らんでいることや、もやしが動くことで、脱気戻りが有ると判断した。
【0110】
【0111】
本発明のフィルムを用いることで、安定したシールを実現することでき、脱気戻りを低減することができる。本発明のフィルムを用いることで、シール部分に不良部分が無く、袋に製袋した時のシール部分からガスの出入りが起こらない。