(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】スリーブ印刷版およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B41N 1/22 20060101AFI20240412BHJP
B41C 1/04 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
B41N1/22
B41C1/04
(21)【出願番号】P 2019167167
(22)【出願日】2019-09-13
【審査請求日】2022-03-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】伊永 浩治
(72)【発明者】
【氏名】加川 卓
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-238637(JP,A)
【文献】特開2007-1030(JP,A)
【文献】特開2003-25749(JP,A)
【文献】特開2019-64199(JP,A)
【文献】特開2003-154628(JP,A)
【文献】特開平9-274310(JP,A)
【文献】特開昭53-29804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 1/00-3/08
B41C 1/00-3/08
B41F 21/00-30/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化樹脂により形成された円筒状のスリーブ本体の外周面に、支持樹脂層の表面に印刷樹脂層が塗布された樹脂シートが、上記印刷樹脂層を外周側に向けて両面接着テープにより貼り付けられており、
上記樹脂シートおよび上記両面接着テープの上記スリーブ本体の周方向における長さは、前記スリーブ本体の外周面の周長よりも短く、上記樹脂シートおよび上記両面接着テープは、上記スリーブ本体の周方向の端縁同士が周方向に間隔をあけているとともに、この間隔をあけた部分は、上記印刷樹脂層と同種の樹脂より継ぎ合わされた継ぎ合わせ部とされていることを特徴とするスリーブ印刷版。
【請求項2】
上記支持樹脂層は、ポリエチレンテレフタレートにより形成されていることを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載のスリーブ印刷版。
【請求項3】
前記印刷樹脂層は、脂肪族炭化水素油、液状ポリブタジェン、液状ポリイソプレン、ポリテルペン樹脂から選択される可塑剤を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスリーブ印刷版。
【請求項4】
支持樹脂層の表面に印刷樹脂層を塗布して樹脂シートを形成し、
この樹脂シートを、繊維強化樹脂により形成された円筒状のスリーブ本体の外周面に、上記印刷樹脂層が外周側を向くように両面接着テープにより貼り付ける構成とされ、
上記樹脂シートおよび上記両面接着テープの上記スリーブ本体の周方向における長さは、前記スリーブ本体の外周面の周長よりも短く、
上記樹脂シートおよび上記両面接着テープを、上記スリーブ本体の周方向の端縁同士が周方向に間隔をあけるように貼り付けるとともに、
この間隔をあけた部分を、上記印刷樹脂層と同種の樹脂より継ぎ合わせることを特徴とするスリーブ印刷版の製造方法。
【請求項5】
上記支持樹脂層を、ポリエチレンテレフタレートにより形成することを特徴とする請求項4に記載のスリーブ印刷版の製造方法。
【請求項6】
前記印刷樹脂層は、脂肪族炭化水素油、液状ポリブタジェン、液状ポリイソプレン、ポリテルペン樹脂から選択される可塑剤を有していることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のスリーブ印刷版の製造方法。
【請求項7】
請求項4から請求項6のうちいずれか一項に記載のスリーブ印刷版の製造方法により製造されたスリーブ印刷版によって印刷を行った使用済みのスリーブ印刷版の上記スリーブ本体から上記樹脂シートと上記両面接着テープとを剥離し、
この樹脂シートと両面接着テープとが剥離された上記スリーブ本体の外周面に、新しい上記樹脂シートを両面接着テープにより貼り付けることを特徴とするスリーブ印刷版の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状のスリーブ本体の外周面に印刷樹脂層が設けられたスリーブ印刷版およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このようなスリーブ印刷版として、例えば特許文献1には、少なくとも、スリーブコア層、クッション層、剛性層および継ぎ目のない印刷レリーフ層がこの順番に配置され、かつ、スリーブコア層、クッション層、及び剛性層が、いずれも均一な表面形状を有するものが記載されている。
【0003】
また、特許文献2にも、少なくとも、コアスリーブ層、クッション層、剛性層およびつなぎ目のない印刷レリーフ層がこの順番に積層されたフレキソ印刷用シームレススリーブ構成体であって、その剛性層が切れ目なく連続しており、少なくとも1枚以上のプラスチックフィルムまたはシートからなり、当該フィルムまたはシートが当該印刷スリーブの幅方向に並行に重ね貼合され、クッション層全面を隙間なく構成しているものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-025749号公報
【文献】特開2006-341468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1には、このようなスリーブ印刷版の製造方法として、例えばガラス繊維強化プラスチックスリーブよりなるスリーブコア層の表面に、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、エチレン・プロピレンゴムなどの連続及び/又は単独の微細な気泡を有する弾性発泡体からなるクッション層を接着剤などを介して均一な厚みで貼り付け、次いで片面に粘着剤が薄く塗られた、所定の幅、厚みを有するシート状剛性材(例えば、短冊状二軸延伸ポリエステルフィルム)をクッション層表面にらせん状に巻き付けて剛性層とすることが記載されている。
【0006】
しかる後、この剛性層の表面に接着剤を塗布し、加熱オーブン等で乾燥・硬化させ、この後、シーメックス(Seamex)プロセスに代表されるように、例えば、常温で固体状を呈する感光性樹脂組成物からなるシート状フレキソ印刷版として公知のシート状感光性樹脂版を剛性層に巻き付け、このシート状感光性樹脂版の継ぎ目部分となるシートの端部同士を、使用される感光性樹脂の軟化温度以上、例えば120℃の加熱オーブン中で数十分加熱することで融着接着する。
【0007】
しかしながら、このような製造方法によって製造されるスリーブ印刷版では、スリーブコア層、クッション層、剛性層、および印刷レリーフ層が、この順番にそれぞれ接着剤や粘着剤による接着や融着接着により接合されている。このため、クッション層、剛性層、および印刷レリーフ層を繊維強化樹脂よりなるスリーブコア層(スリーブ本体)から剥離させるのが困難となり、使用済みとなったスリーブ印刷版はスリーブ本体ごと廃棄せざるを得なかった。
【0008】
本発明は、このような背景の下になされたもので、使用済みのスリーブ印刷版であっても繊維強化樹脂により形成されたスリーブ本体を容易に再利用することが可能なスリーブ印刷版、およびそのようなスリーブ印刷版を製造するスリーブ印刷版の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のスリーブ印刷版は、繊維強化樹脂により形成された円筒状のスリーブ本体の外周面に、支持樹脂層の表面に印刷樹脂層が塗布された樹脂シートが、上記印刷樹脂層を外周側に向けて両面接着テープにより貼り付けられており、上記樹脂シートおよび上記両面接着テープの上記スリーブ本体の周方向における長さは、前記スリーブ本体の外周面の周長よりも短く、上記樹脂シートおよび上記両面接着テープは、上記スリーブ本体の周方向の端縁同士が周方向に間隔をあけているとともに、この間隔をあけた部分は、上記印刷樹脂層と同種の樹脂より継ぎ合わされた継ぎ合わせ部とされていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のスリーブ印刷版の製造方法は、支持樹脂層の表面に印刷樹脂層を塗布して樹脂シートを形成し、この樹脂シートを、繊維強化樹脂により形成された円筒状のスリーブ本体の外周面に、上記印刷樹脂層が外周側を向くように両面接着テープにより貼り付ける構成とされ、上記樹脂シートおよび上記両面接着テープの上記スリーブ本体の周方向における長さは、前記スリーブ本体の外周面の周長よりも短く、上記樹脂シートおよび上記両面接着テープを、上記スリーブ本体の周方向の端縁同士が周方向に間隔をあけるように貼り付けるとともに、この間隔をあけた部分を、上記印刷樹脂層と同種の樹脂より継ぎ合わせることを特徴とする。
【0011】
このような製造方法によって製造される上記構成のスリーブ印刷版においては、支持樹脂層の表面に印刷樹脂層が塗布されて形成された樹脂シートが、繊維強化樹脂により形成された円筒状のスリーブ本体の外周面に、両面接着テープによって貼り付けられているので、樹脂シートをスリーブ本体の外周面から剥離し易い。
【0012】
このため、上述のようなスリーブ印刷版の製造方法により製造されたスリーブ印刷版によって印刷を行った使用済みのスリーブ印刷版の上記スリーブ本体から上記樹脂シートと上記両面接着テープとを剥離し、この樹脂シートと両面接着テープとが剥離された上記スリーブ本体の外周面に、新しい上記樹脂シートを両面接着テープによって貼り付けることにより、使用済みのスリーブ印刷版であっても、スリーブ本体ごと廃棄することなくスリーブ本体の再利用を図ることが容易に可能となり、効率的かつ経済的である。
【0013】
ここで、スリーブ本体からの剥離を一層容易とするとともに、印刷樹脂層を確実に支持するためには、樹脂シートの上記支持樹脂層は、ポリエチレンテレフタレートにより形成されていることが望ましい。
【0014】
また、特許文献1に記載されたスリーブ印刷版のように、シート状剛性材をクッション層表面にらせん状に巻き付けて剛性層としたり、この剛性層にシート状感光性樹脂版を巻き付けて、継ぎ目部分となるシートの端部同士を加熱して融着接着したりすると、シート状剛性材のらせん状に重なった部分やシート状感光性樹脂版の継ぎ目部分において、剛性層や印刷レリーフ層が厚くなるおそれがある。
【0015】
このため、スリーブ印刷版において、上記樹脂シートおよび上記両面接着テープは、上記スリーブ本体の周方向の端縁同士が周方向に間隔をあけているとともに、この間隔をあけた部分は、上記印刷樹脂層と同種の樹脂より継ぎ合わされた継ぎ合わせ部とすることにより、またスリーブ印刷版の製造方法においては、上記樹脂シートおよび上記両面接着テープを、上記スリーブ本体の周方向の端縁同士が周方向に間隔をあけるように貼り付けるとともに、この間隔をあけた部分を、上記印刷樹脂層と同種の樹脂より継ぎ合わせることにより、印刷樹脂層の厚さを均一にする。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、樹脂シートをスリーブ本体の外周面から剥離し易くすることができ、使用済みのスリーブ印刷版において、スリーブ本体ごと廃棄する必要がなくなってスリーブ本体の再利用を図ることが容易に可能となるので、効率的かつ経済的にスリーブ印刷版を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のスリーブ印刷版の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す実施形態において、樹脂シートの継ぎ合わせ部周辺の拡大断面図である。
【
図3】本発明のスリーブ印刷版の製造方法の一実施形態における第1の工程を示すフロー図である。
【
図4】本発明のスリーブ印刷版の製造方法の一実施形態における第2の工程を示すフロー図である。
【
図5】本発明のスリーブ印刷版の製造方法の一実施形態における第3の工程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1および
図2は、本発明のスリーブ印刷版の一実施形態を示すものであり、
図3~
図5は、本発明のスリーブ印刷版の製造方法の一実施形態を説明するものである。本実施形態のスリーブ印刷版は、軸線Oを中心とした円筒状をなしており、最も内周側は繊維強化樹脂により形成された円筒状のスリーブ本体1とされ、このスリーブ本体1の外周面に、支持樹脂層2の表面に印刷樹脂層3が塗布された樹脂シート4が、印刷樹脂層3を外周側に向けて両面接着テープ5により貼り付けられている。
【0019】
本実施形態では、樹脂シート4の支持樹脂層2は、ポリエチレンテレフタレートによって形成されている。また、この支持樹脂層2の表面に塗布される印刷樹脂層3には、例えばバインダーポリマーと可塑剤、少なくとも一種類のエチレン性不飽和モノマーと光開始剤、熱重合安定剤からなる組成物が用いられる。さらに、必要に応じ増感剤や着色剤などの添加剤を含んでいても良い。
【0020】
このうち、バインダーポリマーとしては、例えばモノビニル置換芳香族炭化水素モノマーと共役ジェンモノマーを重合して得られる熱可塑性エラストマーが用いられる。モノビニル置換芳香族炭化水素モノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレンなどを用いることができ、共役ジェンモノマーとしてはブタジェン-スチレンブロック共重合体や、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体などを用いることができる。
【0021】
可塑剤は、バインダーポリマーに可塑性、すなわち軟粘性を与えて他の配合剤の分散性を改善するととともに、成型時の流動性や皮膜形成特性を調節するのに用いられる。好適な可塑剤としては、脂肪族炭化水素油(例えばナフテン酸及びパラフィン油)、液状ポリブタジェン、同ポリイソプレン、ポリテルペン樹脂などを用いることができる。
【0022】
少なくとも一種のエチレン性不飽和モノマーとしては、バインダーポリマーと相溶性のあるもので、例えばt-ブチルアルコールやラウリルアルコールとアクリル酸、メタクリル酸とのエステル、或いはラウリルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、ベンジルマレイミドなどのマレイミド誘導体、又はジオクチルフマレートなどのアルコールとフマール酸のエステル、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどの多価アルコールとアクリル酸、メタアクリル酸とのエステルなどを用いることができる。
【0023】
光開始剤としては、ベンゾフェノンのような芳香族ケトン類やベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α-メチロールベンゾインメチルエーテル、α-メトキシベンゾインメチルエーテル、2,2-ジエトキシフェニルアセトフェノンなどのベンゾインエーテル類などの公知の光開始剤の中から選択、または組み合わせて用いることができる。
【0024】
このような一実施形態のスリーブ印刷版を製造するには、まず第1の工程として、
図3(a)に示すように、繊維強化樹脂によってスリーブ本体1よりも軸線O方向に長尺な円筒状のスリーブ本体素材11を製造する。次いで、
図3(b)に示すように、このスリーブ本体素材11を軸線O回りに回転させるとともに、外周面に砥粒層が形成された円柱状または円筒状の研磨砥石12を軸線Oと平行な回転軸回りに回転させ、この研磨砥石12の砥粒層をスリーブ本体素材11の外周面に接触させつつ、研磨砥石12をスリーブ本体素材11に対して相対的に軸線O方向に送り出し、スリーブ本体素材11の外周面を所定の外径となるように研磨する。さらに、こうして外周面が研磨されたスリーブ本体素材11は、
図3(c)に示すように軸線O方向に切断されて、所定の長さのスリーブ本体1が製造される。
【0025】
一方、第2の工程として、
図4(a)に示すようにポリエチレンテレフタレートにより形成された一定の厚さのシート状の支持樹脂層2を水平に支持し、この支持樹脂層2の表面(上面)に印刷樹脂層3を塗布する。印刷樹脂層3の塗布においては、
図4(a)に示すようにシート状の支持樹脂層2の長手方向の一端から他端に向けて支持樹脂層2に対して相対的に滴下装置13を移動方向Fに移動させつつ、この滴下装置13から印刷樹脂層3を形成する上記組成物を滴下して支持樹脂層2の表面に流し込む。
【0026】
また、この滴下装置13には、支持樹脂層2への相対的な移動方向Fとは反対側に、下端縁が支持樹脂層2の表面から所定の間隔をあけた支持樹脂層2に垂直な厚み調整ブレード13aが備えられており、この厚み調整ブレード13aが滴下装置13と一体に上記移動方向Fに相対的に移動して下端縁によってならされることにより、印刷樹脂層3は支持樹脂層2の表面に所定の一定厚さで塗布される。
【0027】
こうして印刷樹脂層3が表面に塗布された支持樹脂層2は、
図4(b)に示すように印刷樹脂層3が上向きのまま露光装置14の下方に配置され、この露光装置14からの露光によって印刷樹脂層3が硬化させられることにより、本実施形態における樹脂シート4が製造される。
【0028】
このように製造された樹脂シート4は、第3の工程として、上記スリーブ本体1の外周面に両面接着テープ5により貼り付けられる。この第3の工程では、まず
図5(a)に示すようにスリーブ本体1を軸線O回りにゆっくり回転しつつ、両面に接着剤が塗布された両面接着テープ5をスリーブ本体1の外周面の接線方向に降下させ、スリーブ本体1の外周面側を向く両面接着テープ5の一方の片面をスリーブ本体1の外周面に接着させ、両面接着テープ5をスリーブ本体1の外周面に巻き付けるように貼り付ける。
【0029】
次いで、
図5(b)に示すように樹脂シート4も、支持樹脂層2をスリーブ本体1の外周面側に向けてこの外周面の接線方向に降下させ、スリーブ本体1の外周側を向く両面接着テープ5の他方の片面に接着させてスリーブ本体1の外周面に巻き付けるように貼り付ける。
【0030】
ここで、本実施形態では、スリーブ本体1の周方向における樹脂シート4および両面接着テープ5の長さは、スリーブ本体1の外周面の周方向の長さ(周長)よりも僅かに短くされている。従って、これにより樹脂シート4および両面接着テープ5は、
図5(c)に示すようにスリーブ本体1の周方向の端縁同士が周方向に間隔をあけた状態で、スリーブ本体1の外周面に貼り付けられることになる。
【0031】
そして、この間隔をあけた部分は、樹脂シート4および両面接着テープ5の貼り付け後に、
図5(c)に示すように滴下装置15から滴下される樹脂シート4の上記印刷樹脂層3と同種の樹脂より埋められた後に、
図2(b)に示した露光装置14による露光と同様に露光されることにより、硬化させられて継ぎ合わせ部6とされる。さらに、こうして形成された継ぎ合わせ部6の外周面は、研磨されることによって樹脂シート4の印刷樹脂層3の外周面と面一に仕上げられる。
【0032】
このように製造されたスリーブ印刷版は、印刷樹脂層3の外周面にレーザー彫刻によって印刷画像が形成され、スリーブ本体1の内周部が印刷装置のシリンダーに嵌め入れられて、例えば飲料缶の胴部外周面への印刷に使用される。なお、このシリンダーとの位置合わせのために、スリーブ印刷版の軸線O方向の端部には、外周側から見てU字状等のノッチ(切欠)が形成されていてもよい。
【0033】
そして、上記構成のスリーブ印刷版においては、支持樹脂層2の表面に印刷樹脂層3が塗布されて形成された樹脂シート4が、繊維強化樹脂により形成された円筒状のスリーブ本体1の外周面に、両面接着テープ5によって貼り付けられているので、この両面接着テープ5を剥離することによって樹脂シート4をスリーブ本体1の外周面から容易に剥離することができる。
【0034】
このため、上述のような製造方法により製造されたスリーブ印刷版によって印刷を行った後の使用済みのスリーブ印刷版のスリーブ本体1から樹脂シート4と両面接着テープ5とを剥離し、この樹脂シート4と両面接着テープ5とが剥離されたスリーブ本体1の外周面に、新しい樹脂シート4を両面接着テープ5によって貼り付けることにより、使用済みのスリーブ印刷版であっても、スリーブ本体1ごと廃棄することなくスリーブ本体1の再利用を図ることが容易に可能となる。このため、新しいスリーブ印刷版を効率的かつ経済的に製造することができる。
【0035】
また、本実施形態では、樹脂シート4の上記支持樹脂層2がポリエチレンテレフタレートにより形成されており、この支持樹脂層2を形成するポリエチレンテレフタレートは、スリーブ本体1を形成する繊維強化樹脂よりは剛性が低いものの、印刷樹脂層3や両面接着テープ5よりは高い剛性とすることができる。従って、印刷樹脂層3を確実に支持して印刷を行うことができるとともに、この支持樹脂層2を両面接着テープ5から引き剥がすことによって樹脂シート4を一層容易にスリーブ本体1の外周面から剥離することが可能となる。
【0036】
さらに、本実施形態では、スリーブ本体1の周方向における樹脂シート4および両面接着テープ5の長さが、スリーブ本体1の外周面の周方向の長さ(周長)よりも僅かに短くされており、これによって樹脂シート4および両面接着テープ5は、スリーブ本体1の周方向の端縁同士が周方向に間隔をあけた状態で、スリーブ本体1の外周面に貼り付けられる。
【0037】
そして、この間隔をあけた部分は、樹脂シート4の上記印刷樹脂層3と同種の樹脂よって継ぎ合わされて硬化させられた継ぎ合わせ部6とされており、例えば特許文献1に記載されたスリーブ印刷版のように、シート状剛性材をクッション層表面にらせん状に巻き付けて剛性層としたり、この剛性層にシート状感光性樹脂版を巻き付けて、継ぎ目部分となるシートの端部同士を加熱して融着接着したりした場合のように、シート状剛性材のらせん状に重なった部分やシート状感光性樹脂版の継ぎ目部分において、印刷樹脂層3が厚くなるのを防ぐことができる。
【0038】
特に、本実施形態では、この継ぎ合わせ部6の外周面は、硬化された後に研磨されることによって樹脂シート4の印刷樹脂層3の外周面と面一に仕上げられている。このため、印刷樹脂層3の外周面から継ぎ合わせ部6の外周面にかけて軸線Oを中心とした円筒面とすることができ、印刷樹脂層3と継ぎ合わせ部6との間に印刷の際のインクが溜まったりするのを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0039】
1 スリーブ本体
2 支持樹脂層
3 印刷樹脂層
4 樹脂シート
5 両面接着テープ
6 継ぎ合わせ部
11 スリーブ本体素材
12 研磨砥石
13、15 滴下装置
13a 厚み調整ブレード
14 露光装置
O スリーブ本体1の軸線
F 滴下装置13の相対的な移動方向