(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】炭酸感に寄与する刺激が増強された発泡性飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/54 20060101AFI20240412BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20240412BHJP
C12G 3/06 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
A23L2/54
A23L2/00 T
A23L2/00 B
C12G3/06
(21)【出願番号】P 2019227221
(22)【出願日】2019-12-17
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】石川 良
(72)【発明者】
【氏名】永井 真希
(72)【発明者】
【氏名】野畑 順子
(72)【発明者】
【氏名】千葉 直也
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-183126(JP,A)
【文献】国際公開第2009/078360(WO,A1)
【文献】特開2015-047148(JP,A)
【文献】特開2010-063431(JP,A)
【文献】特開2009-189365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/
C12G
C12C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラネオール、乳酸メンチルおよび4-テルピネオールからなる群から選択される少なくとも2種の物質を含んでなる発泡性飲料
であって、
フラネオールの濃度が0.2~50ppmであり、かつ、
乳酸メンチルの濃度が0.2~5ppmであり、および/または4-テルピネオールの濃度が0.1~5ppmである、発泡性飲料。
【請求項2】
アルコール飲料または非アルコール飲料である、請求項1に記載の発泡性飲料。
【請求項3】
混成酒である、請求項1に記載の発泡性飲料。
【請求項4】
フラネオールの濃度を0.2~50ppmに調整することを含んでな
り、
乳酸メンチルの濃度を0.2~5ppmに調整すること、および/または4-テルピネオールの濃度を0.1~5ppmに調整することをさらに含んでなる、発泡性飲料を製造する方法。
【請求項5】
発泡性飲料の炭酸感を増強する方法であって、
フラネオールの濃度を0.2~50ppmに調整することを含んでな
り、
乳酸メンチルの濃度を0.2~5ppmに調整すること、および/または4-テルピネオールの濃度を0.1~5ppmに調整することをさらに含んでなる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸感に寄与する刺激が増強された発泡性飲料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡性のアルコール飲料や清涼飲料において、炭酸ガス圧は上げずに、自然な炭酸様刺激(炭酸感)を増強することへのニーズが存在する。そのための研究開発もなされており、例えば、容器詰め炭酸飲料の炭酸ガス圧を上げずに炭酸感を増強する方法として、カプサイシン、スピラントール、サンショオールのような香辛料成分や、メントールのような冷涼感成分を添加する方法が知られている(特許文献1)。
【0003】
しかし、従来の方法では、刺激自体は増強される一方で、その刺激は痛み、辛味、冷涼感などのような刺激であり、実際の炭酸ガスによる刺激とは異なる刺激であった。また、有効成分自体の独特な香味が目立ち、飲料全体の印象が変わってしまうことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本発明者らは、3種類の物質のうちの2種以上を組み合わせて添加したところ、発泡性飲料の自然な炭酸感が増強されることを見出した。さらに、本発明者らは、3種類の物質を所定の濃度で添加したところ、それぞれ単独で添加した場合でも発泡性飲料の自然な炭酸感の増強に寄与する一定の効果が見られ、組み合わせて添加した場合にはより明確に発泡性飲料の自然な炭酸感が増強されることを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0006】
従って、本発明は、自然な炭酸感の増強に寄与するシュワシュワ様刺激が増強された発泡性飲料およびその製造方法を提供する。
【0007】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)フラネオール、乳酸メンチルおよび4-テルピネオールからなる群から選択される少なくとも2種の物質を含んでなる、発泡性飲料。
(2)フラネオールの濃度が0.2~50ppmである、発泡性飲料。
(3)乳酸メンチルの濃度が0.2~5ppmであり、および/または4-テルピネオールの濃度が0.1~5ppmである、前記(2)に記載の発泡性飲料。
(4)アルコール飲料または非アルコール飲料である、前記(1)~(3)のいずれかに記載の発泡性飲料。
(5)混成酒である、前記(1)~(3)のいずれかに記載の発泡性飲料。
(6)フラネオール、乳酸メンチルおよび4-テルピネオールからなる群から選択される少なくとも2種の物質を含有させることを含んでなる、発泡性飲料を製造する方法。
(7)フラネオールの濃度を0.2~50ppmに調整することを含んでなる、発泡性飲料を製造する方法。
(8)乳酸メンチルの濃度を0.2~5ppmに調整すること、および/または4-テルピネオールの濃度を0.1~5ppmに調整することをさらに含んでなる、前記(7)に記載の方法。
(9)発泡性飲料の炭酸感を増強する方法であって、フラネオール、乳酸メンチルおよび4-テルピネオールからなる群から選択される少なくとも2種の物質を含有させることを含んでなる、方法。
(10)発泡性飲料のシュワシュワ様刺激を増強する方法であって、フラネオールの濃度を0.2~50ppmに調整することを含んでなる、方法。
(11)乳酸メンチルの濃度を0.2~5ppmに調整すること、および/または4-テルピネオールの濃度を0.1~5ppmに調整することをさらに含んでなる、前記(10)に記載の方法。
【0008】
本発明によれば、発泡性飲料のシュワシュワ様刺激を増強することが可能となり、さらには、複数成分の組み合わせにより発泡性飲料の炭酸感を増強することも可能となる。特に、本発明は、発泡性飲料において、炭酸ガス圧を上げた際に感じる刺激のような、違和感のない自然な炭酸様刺激の増強を実現することができる点で有利である。また、本発明によれば、有効成分自体の独特な香味を目立たせず、飲料全体の印象はそのままに、炭酸様刺激を向上させることも可能である。本発明のこのような効果は、アルコール飲料および非アルコール飲料のいずれにおいても見られる。
【発明の具体的説明】
【0009】
本発明において「アルコール飲料」とは、酒税法上アルコール飲料とみなされる、アルコール度数1度以上の飲料を意味する。
【0010】
本発明において「非アルコール飲料」とは、酒税法上アルコール飲料とみなされない、アルコール度数1度未満の飲料を意味する。「非アルコール飲料」のうち、アルコールが全く含まれない、すなわち、アルコール含量が0v/v%である飲料については特に「完全無アルコール飲料」と表現することができる。本発明における非アルコール飲料には、例えば、チューハイ様飲料、カクテル様飲料、ワイン様飲料や、その他アルコール飲料との代替性がある飲料も含まれる。
【0011】
本発明において「混成酒」とは、酒類の内、醸造酒と蒸留酒に該当しない酒類全て(チューハイ、RTD、RTS、浸漬酒など)を意味し、例えば、醸造酒や蒸留酒に、植物の一部、例えば植物の果実(果肉、果皮、果汁など)や皮、香料、甘味料、酸味料などの副原料を加えて造られる酒などが挙げられる。
【0012】
本明細書において「炭酸感」とは、飲料に溶解した炭酸ガスによる刺激と同じ刺激をいう。「シュワシュワ様刺激」、「ピリピリ様刺激」および「喉への刺激」は、炭酸感の下位概念に位置づけられるものであり、それぞれが炭酸感の構成要素である。具体的には、「シュワシュワ様刺激」は、口の中で無数の泡が生じるようなやわらかな刺激を意味する。「ピリピリ様刺激」は、舌の上で泡が弾けるようなシャープな刺激を意味する。「喉への刺激」は、液を嚥下する際に喉で感じる刺激を意味する。
【0013】
本明細書において「香味の違和感」とは、発泡性飲料が有する本来の香味と比較したときの違和感をいう。
【0014】
本明細書において「ppb」および「ppm」は、それぞれ「μg/L」および「mg/L」と同義である。
【0015】
本発明の発泡性飲料は、フラネオール、乳酸メンチルおよび4-テルピネオールからなる群から選択される少なくとも2種、好ましくは3種の物質を含有する。このような発泡性飲料は、通常の発泡性飲料の製造方法の工程中、あるいは製造後に、上記の物質を含有させることによって製造することができる。これは、それぞれの物質の精製品を添加することによって行うことができ、あるいは、それぞれの物質を含有する原料の追加によって行うこともできる。
【0016】
さらに、本発明によれば、発泡性飲料の炭酸感を増強する方法が提供され、該方法は、フラネオール、乳酸メンチルおよび4-テルピネオールからなる群から選択される少なくとも2種(好ましくは3種)の物質を含有させることを含む。
【0017】
さらに、本発明によれば、フラネオール、乳酸メンチルおよび4-テルピネオールからなる群から選択される少なくとも2種(好ましくは3種)の物質を含んでなる、発泡性飲料の炭酸感を増強するための組成物が提供される。
【0018】
本明細書の実施例においては、フラネオール、乳酸メンチルおよび4-テルピネオールのそれぞれについて好ましい濃度範囲が調べられており、濃度調整により、これらの物質のそれぞれが単独でもある一定の効果を奏することが明らかとなっている。以下、各物質の濃度の条件を特定した本発明の態様(以下「第二の態様」という)について説明する。
【0019】
本発明の第二の態様の発泡性飲料は、0.2ppm以上の濃度でフラネオールを含有する。本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の第二の態様の発泡性飲料におけるフラネオールの濃度は、10ppm以上とされる。本発明の第二の態様の発泡性飲料におけるフラネオールの濃度の上限は特に制限されるものではないが、飲料の風味への影響を考慮して、例えば50ppmとすることができる。このような濃度でフラネオールを含有することにより、発泡性飲料におけるシュワシュワ様刺激が増強される。
【0020】
飲料中のフラネオールの濃度は、公知の方法によって測定することができる。このような方法としては出来るだけ精度の高い方法が好ましく、例えば、Food Research International, 2018, Vol. 107, pp. 613-618に記載の方法を用いることができる。さらに、正確な定量のためには、いくつかの既知濃度の参照サンプルを用いて作成した検量線や、内部標準物質を使用することができる。
【0021】
本発明の第二の態様の発泡性飲料は、乳酸メンチルをさらに含んでいてもよく、乳酸メンチルの濃度は、好ましくは0.2ppm、より好ましくは2ppmとされる。本発明の第二の態様の発泡性飲料における乳酸メンチルの濃度の上限は特に制限されるものではないが、飲料の風味への影響を考慮して、例えば5ppmとすることができる。
【0022】
飲料中の乳酸メンチルの濃度は、公知の方法によって測定することができる。このような方法としては出来るだけ精度の高い方法が好ましく、例えば、FLAVOUR AND FRAGRANCE JOURNAL, 2006, Vol. 21, pp. 725-730に記載の方法を用いることができる。さらに、正確な定量のためには、いくつかの既知濃度の参照サンプルを用いて作成した検量線や、内部標準物質を使用することができる。
【0023】
本発明の第二の態様の発泡性飲料は、4-テルピネオールをさらに含んでいてもよく、4-テルピネオールの濃度は、好ましくは0.1ppm、より好ましくは2ppmとされる。本発明の第二の態様の発泡性飲料における4-テルピネオールの濃度の上限は特に制限されるものではないが、飲料の風味への影響を考慮して、例えば5ppmとすることができる。
【0024】
飲料中の4-テルピネオールの濃度は、公知の方法によって測定することができる。このような方法としては出来るだけ精度の高い方法が好ましく、例えば、Industrial Crops & Products, 2019, Vol. 130, pp. 137-145に記載の方法を用いることができる。さらに、正確な定量のためには、いくつかの既知濃度の参照サンプルを用いて作成した検量線や、内部標準物質を使用することができる。
【0025】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の第二の態様の発泡性飲料は、上述の濃度でフラネオールおよび乳酸メンチルを含むものとされる。上述の濃度でフラネオールおよび乳酸メンチルを含有することにより、発泡性飲料における炭酸感が増強され、特に、シュワシュワ様刺激およびピリピリ様刺激が増強される。
【0026】
本発明の他の好ましい実施態様によれば、本発明の第二の態様の発泡性飲料は、上述の濃度でフラネオールおよび4-テルピネオールを含むものとされる。上述の濃度でフラネオールおよび4-テルピネオールを含有することにより、発泡性飲料における炭酸感が増強され、特に、シュワシュワ様刺激および喉への刺激が増強される。
【0027】
本発明の最も好ましい実施態様によれば、本発明の第二の態様の発泡性飲料は、上述の濃度でフラネオール、乳酸メンチルおよび4-テルピネオールを含むものとされる。上述の濃度でフラネオール、乳酸メンチルおよび4-テルピネオールを含有することにより、発泡性飲料における炭酸感が増強され、特に、シュワシュワ様刺激、ピリピリ様刺激および喉への刺激が増強される。
【0028】
本発明の発泡性飲料は、アルコール飲料であっても、非アルコール飲料であってもよい。発泡性飲料のアルコール濃度は、特に制限されるものではないが、好ましくは0.0~20.0v/v%、より好ましくは0.0~10.0v/v%とすることができる。一つの実施態様によれば、飲料のアルコール濃度は5.0v/v%以上とされ、好ましくは5.0~20.0v/v%、より好ましくは5.0~10.0v/v%とされる。
【0029】
本発明の発泡性飲料は、炭酸飲料であり、二酸化炭素を圧入したものであってもよく、また、窒素を圧入したものでもよい。本発明の発泡性飲料を容器に詰めたときのガス圧は、好ましくは0.10~0.50MPa、より好ましくは0.10~0.40MPa、さらに好ましくは0.15~0.30MPaとされる。
【0030】
本発明の発泡性飲料のpHは、特に制限されるものではないが、好ましくは2.5~5.0に調整することができる。飲料のpHは市販のpHメーターを使用して容易に測定することができる。
【0031】
本発明の発泡性飲料は、飲料の製造に用いられる他の成分を含んでもよい。このような他の成分としては、例えば、甘味料(例えば、砂糖、ブドウ糖、果糖、オリゴ糖、異性化液糖、糖アルコール、高甘味度甘味料など)、酸味料(例えば、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、リン酸、フィチン酸、イタコン酸、フマル酸、グルコン酸、アジピン酸、酢酸、またはそれらの塩類など)、色素、食品添加剤(例えば、起泡・泡持ち向上剤、苦味料、保存料、酸化防止剤、増粘安定剤、乳化剤、食物繊維、pH調整剤など)などを適宜添加することができる。
【0032】
本発明の発泡性飲料は、好ましくは容器詰飲料として提供される。使用される容器は、飲料の充填に通常使用される容器であればよく、例えば、金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル、カップ)、紙容器、瓶、パウチ容器などが挙げられるが、好ましくは金属缶・樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル)、または瓶とされる。
【0033】
一つの実施態様では、ビールテイスト飲料および/または果汁を含む炭酸飲料は、本発明の発泡性飲料から除かれる。
【0034】
本発明の発泡性飲料は、通常の発泡性飲料の製造方法の工程中、あるいは製造後に、上述の成分の濃度を調整することにより製造することができる。このような濃度調整は、それぞれの成分の精製品を添加することによって行うことができ、あるいは、それぞれの成分を含有する原料の追加または該原料の使用量の増減によって行うこともできる。
【0035】
本発明の他の態様によれば、発泡性飲料のシュワシュワ様刺激を増強する方法が提供され、該方法は、フラネオールの濃度を上述の濃度に調整することを含んでなる。本発明の好ましい実施態様によれば、この方法は、乳酸メンチルの濃度を上述の濃度に調整すること、および/または4-テルピネオールの濃度を上述の濃度に調整することをさらに含み、これにより、発泡性飲料の炭酸感を増強することができる。また、本発明のこの態様に関連して、本発明によれば、フラネオールを含んでなる、発泡性飲料のシュワシュワ様刺激を増強するための組成物が提供される。本発明の好ましい実施態様によれば、この組成物は、乳酸メンチルおよび/または4-テルピネオールをさらに含む。この組成物は、本発明の発泡性飲料の製造、または上述の発泡性飲料のシュワシュワ様刺激を増強する方法において使用することができる。
【0036】
本発明の他の態様によれば、発泡性飲料のピリピリ様刺激を増強する方法が提供され、該方法は、乳酸メンチルの濃度を上述の濃度に調整することを含んでなる。また、本発明のこの態様に関連して、本発明によれば、乳酸メンチルを含んでなる、発泡性飲料のピリピリ様刺激を増強するための組成物が提供される。この組成物は、本発明の発泡性飲料の製造、または上述の発泡性飲料のピリピリ様刺激を増強する方法において使用することができる。
【0037】
本発明の他の態様によれば、発泡性飲料の喉への刺激を増強する方法が提供され、該方法は、4-テルピネオールの濃度を上述の濃度に調整することを含んでなる。また、本発明のこの態様に関連して、本発明によれば、4-テルピネオールを含んでなる、発泡性飲料の喉への刺激を増強するための組成物が提供される。この組成物は、本発明の発泡性飲料の製造、または上述の発泡性飲料の喉への刺激を増強する方法において使用することができる。
【実施例】
【0038】
以下の例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0039】
試飲サンプルの調製
試飲サンプルとしては、0.003(w/v)%のアセスルファムカリウム、0.25(w/v)%の無水クエン酸、0.10(w/v)%のクエン酸ナトリウム、必要に応じて所定量の原料用アルコール、ならびに必要に応じて所定量のフラネオール、乳酸メンチルおよび/または4-テルピネオールを溶解した炭酸水を、炭酸ガス圧が0.18MPaとなるようにアルミ缶に封入したものを用いた。対照サンプルとしては、フラネオール、乳酸メンチルおよび4-テルピネオールのいずれも含有しないこと以外は、各試験区の試飲サンプルと同じものを用いた。
【0040】
官能評価
評価項目は、「シュワシュワ様刺激」、「ピリピリ様刺激」、「喉への刺激」、「炭酸感」および「香味の違和感」の5つとした。
【0041】
「シュワシュワ様刺激」、「ピリピリ様刺激」、「喉への刺激」および「炭酸感」の評価は、各実施例における対照サンプルのスコアを「0」とし、次の基準による9点法によって行った:スコア4(対照サンプルと比較して極めて強く感じる)、スコア3(対照サンプルと比較してかなり強く感じる)、スコア2(対照サンプルと比較して強く感じる)、スコア1(対照サンプルと比較してやや強く感じる)、スコア0(対照サンプルと比較して違いがない)、スコア-1(対照サンプルと比較してやや弱く感じる)、スコア-2(対照サンプルと比較して弱く感じる)、スコア-3(対照サンプルと比較してかなり弱く感じる)、スコア-4(対照サンプルと比較して極めて弱く感じる)。
【0042】
「香味の違和感」の評価は、各実施例における対照サンプルのスコアを「0」とし、次の基準による4点法によって行った:スコア3(対照サンプルと比較してかなり強い香味の違和感を感じる)、スコア2(対照サンプルと比較して強い香味の違和感を感じる)、スコア1(対照サンプルと比較して香味の違和感を感じる)、スコア0(対照サンプルと比較して香味の違和感を感じない)。
【0043】
試飲サンプルは、評価の直前まで5℃程度で冷蔵保管しておいた。試飲の直前に、試飲サンプルのアルミ缶を開栓した。各試飲の直前に、少量の水を飲んだ。試飲は二口に分けて行った。一口目では、15ml程度のサンプルをカップに注いでから口に含み、5秒間飲み込まずに口内で保持し、その際に感じる「シュワシュワ様刺激」および「ピリピリ様刺激」を評価した。二口目では、15ml程度のサンプルをカップに注いでから口に含み、直後に嚥下し、その際に感じる「喉への刺激」を評価した。「炭酸感」および「香味の違和感」は、二口の試飲を踏まえて総合的に評価した。
【0044】
官能評価のスコアの基準を客観的に示すため、様々な炭酸ガス圧を有する炭酸水について6名のパネルにより評価を行った結果(平均値)を以下の表1に示す。
【0045】
【0046】
実施例1:フラネオール、乳酸メンチルおよび4-テルピネオールのそれぞれ単独での効果
(1)フラネオール
各種濃度のフラネオールを添加したアルコール濃度9.5v/v%の試飲サンプルについて、6名のパネルによる官能評価を行った。結果を以下の表2に示す。
【0047】
【0048】
表2の結果から、フラネオールは、0.2ppm以上の濃度で炭酸感を増強する効果を奏し、特に、シュワシュワ様刺激を増強することが分かった。また、80ppmの濃度では香味の違和感が感じられることから、香味の違和感を避けるためには、フラネオールの濃度を50ppm以下とすることが好ましいものと考えられた。
【0049】
(2)乳酸メンチル
各種濃度の乳酸メンチルを添加したアルコール濃度9.5v/v%の試飲サンプルについて、6名のパネルによる官能評価を行った。結果を以下の表3に示す。
【0050】
【0051】
表3の結果から、乳酸メンチルは、0.2ppm以上の濃度でピリピリ様刺激を増強することが分かった。また、20ppmの濃度では香味の違和感が感じられることから、香味の違和感を避けるためには、乳酸メンチルの濃度を5ppm以下とすることが好ましいものと考えられた。
【0052】
(3)4-テルピネオール
各種濃度の4-テルピネオールを添加したアルコール濃度9.5v/v%の試飲サンプルについて、6名のパネルによる官能評価を行った。結果を以下の表4に示す。
【0053】
【0054】
表4の結果から、4-テルピネオールは、0.1ppm以上の濃度で喉への刺激を増強することが分かった。また、20ppmの濃度では香味の違和感が感じられることから、香味の違和感を避けるためには、4-テルピネオールの濃度を5ppm以下とすることが好ましいものと考えられた。
【0055】
実施例2:フラネオール、乳酸メンチルおよび4-テルピネオールの様々な組み合わせによる効果
フラネオール(10ppm)、乳酸メンチル(2ppm)および4-テルピネオール(2ppm)の全ての組み合わせを添加したアルコール濃度9.5v/v%の試飲サンプルについて、6名のパネルによる官能評価を行った。結果を以下の表5に示す。
【0056】
【0057】
表5の結果から、フラネオール、乳酸メンチルおよび4-テルピネオールの3つの成分は、炭酸感の増強効果において相乗効果を示すことがわかった。
【0058】
実施例3:フラネオール、乳酸メンチルおよび4-テルピネオールの組み合わせによる効果に対する濃度の影響
様々な濃度のフラネオール、乳酸メンチルおよび4-テルピネオールの組み合わせを添加したアルコール濃度9.5v/v%の試飲サンプルについて、6名のパネルによる官能評価を行った。結果を以下の表6に示す。
【0059】
【0060】
表6の結果から、フラネオール、乳酸メンチルおよび4-テルピネオールの3つの成分の組み合わせは、実施例1において特定されたそれぞれの有効濃度範囲において、十分な炭酸感増強効果を示すことがわかった。
【0061】
実施例4:フラネオール、乳酸メンチルおよび4-テルピネオールの組み合わせによる効果に対するアルコール濃度の影響
フラネオール(10ppm)、乳酸メンチル(2ppm)および4-テルピネオール(2ppm)の組み合わせを添加した様々なアルコール濃度の試飲サンプルについて、6名のパネルによる官能評価を行った。結果を以下の表7に示す。
【0062】
【0063】
表7の結果から、フラネオール、乳酸メンチルおよび4-テルピネオールの3つの成分による炭酸感の増強効果は、低いアルコール濃度(1v/v%および5v/v%)や、非アルコール飲料(0v/v%)においても見られることがわかった。