(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 19/04 20060101AFI20240412BHJP
F28F 3/12 20060101ALI20240412BHJP
F28F 13/18 20060101ALI20240412BHJP
H01L 23/473 20060101ALI20240412BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
F28F19/04 Z
F28F3/12 Z
F28F13/18 B
H01L23/46 Z
H05K7/20 N
(21)【出願番号】P 2019234831
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・パッケージング
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】南谷 広治
(72)【発明者】
【氏名】長岡 孝司
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-001553(JP,A)
【文献】特開2012-073014(JP,A)
【文献】特開平11-083365(JP,A)
【文献】特開2016-138698(JP,A)
【文献】特開2018-138834(JP,A)
【文献】特開2014-082283(JP,A)
【文献】特開2013-096631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/00-99/00
F28D 1/00-15/06
H01L 23/34-23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器または電池を冷却する熱交換器において、
入口および出口が設けられた外包体と、前記外包体内に設けられ、かつ凹凸部を有するインナーフィンとを備え、前記入口から流入した熱交換媒体が前記外包体内のインナーフィン設置部を通って前記出口から流出するように
構成され、
前記外包体が、金属製の伝熱層の内面側に接着剤を介して樹脂製の熱融着層が設けられ、かつ前記伝熱層の外面側に接着剤を介して耐熱性樹脂製の保護層が設けられた外包ラミネート材によって構成され、
前記外包体は、2枚の前記外包ラミネート
材が重ね合わされて、互いの外周縁部の熱融着層同士が熱接着によって接合一体化されて形成され、
前記外包ラミネート材の外面に、親水性を有する層が設けられていることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
電子機器または電池を冷却する熱交換器であって、
熱交換媒体が流通する中空状の熱交換流路が設けられ、かつ厚さ方向のスペーサとしての機能を有する流路形成シートと、
被覆シートと、
前記熱交換流路に対し熱交換媒体を流出入させるための出入口とを備え、
前記流路形成シートの両面が熱融着性樹脂によって構成され、
前記被覆シートが、金属製の伝熱層の内面側に接着剤を介して樹脂製の熱融着層が設けられ、かつ外面側に接着剤を介して耐熱性樹脂製の保護層が設けられた外包ラミネート材によって構成され、
前記被覆シートの熱融着層と、前記流路形成シートの両面を構成する熱融着性樹脂が同種の樹脂によって構成され、
2枚の前記被覆シートの各内面側の熱融着層が、前記流路形成シートの両面に積層された状態で、熱融着によって、前記熱融着層と、前記流路形成シートの両面を構成する樹脂とが接合一体化され、
前記外包ラミネート材の外面に、親水性を有する層が設けられていることを特徴とする熱交換器。
【請求項3】
親水性を有する層は、純水に対する接触角が40°以下である請求項1または2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記外包ラミネート材の親水性を有する層は、前記保護層上に設けられた親水層によって構成されている請求項1~3のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記親水層は、親水基を主鎖あるいは側鎖の末端基に持つ有機ポリマーが含有されている請求項4に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記外包ラミネート材の親水性を有する層は、親水性微粒子が含有された前記保護層によって構成されている請求項1~3のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記外包ラミネート材の親水性を有する層は、親水性添加剤が含有された前記保護層によって構成されている請求項1~3のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記外包体は、中間領域に凹陥部が設けられ、かつその凹陥部に前記インナーフィンが収容されるトレイ部材と、そのトレイ部材における前記凹陥部の開口部を閉塞するカバー部材とを備えている請求項1に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属製の伝熱層に樹脂製の熱融着層が積層されたラミネートシート等のラミネート材を用いて製作される熱交換器およびその外包ラミネート材に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやパーソナルコンピュータ等の電子機器における小型高性能化に伴い、電子機器のCPU回りの発熱対策も重要となり、機種によっては水冷式冷却器やヒートパイプを組み込んで、CPU等の電子部品に対する熱負荷を軽減するとともに、筐体内に熱をこもらせないようにして、熱による悪影響を回避する技術が従来より提案されている。
【0003】
また電気自動車やハイブリッド車に搭載される電池モジュールは、充電と放電とを繰り返し行うために電池パックの発熱が大きくなる。このため電池モジュールにおいても上記の電子機器と同様に、水冷式冷却器やヒートパイプを組み込んで、熱による悪影響を回避する技術が提案されている。
【0004】
さらにシリコンカーバイト(SiC)製等のパワーモジュールも発熱対策として冷却板やヒートシンクを組み付ける等の対策が提案されている。
【0005】
ところで、上記のスマートフォンやパーソナルコンピュータのような電子機器では筐体が薄く、その薄い筐体内における限られたスペースに多数の電子部品や冷却器が組み込まれるため、冷却器自体も薄型のものが用いられることになる。
【0006】
従来において、小型の電子機器に組み込まれるヒートパイプ等の薄型の冷却器は一般的に、アルミニウム等の伝熱性が高い金属を加工して得られた複数の金属加工部品をろう付けや拡散接合等で接合することにより製作するようにしている(特許文献1~3等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-59693号公報
【文献】特開2015-141002号公報
【文献】特開2016-189415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の小型電子機器用冷却器は、各構成部品が、鋳造や鍛造等の塑性加工や、切削等の除去加工等の金属加工(機械加工)によって製作されているが、このような金属加工は、面倒で制約も厳しいため、薄型化に限界があり、現行以上に薄型化を図ることが困難であるという課題があった。
【0009】
また従来の小型電子機器用冷却器は、各構成部品を接合する際に難易度の高いろう付けや拡散接合等の金属加工(金属間接合)を用いて製作する必要があり、製作が困難であるばかりか、生産効率が低下してコストも増大するという課題があった。
【0010】
その上さらに、従来の冷却器は、制約のある金属加工を用いて製作するため、形状や大きさを簡単に変更することができず、設計の自由度に乏しく、汎用性に欠けるという課題も抱えている。
【0011】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、十分な薄型化を図ることができるとともに、設計の自由度が高く汎用性に優れる上さらに、効率良く簡単に製作できてコストも削減することができる熱交換器およびその外包ラミネート材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0013】
[1]入口および出口が設けられた外包体と、前記外包体内に設けられ、かつ凹凸部を有するインナーフィンとを備え、前記入口から流入した熱交換媒体が前記外包体内のインナーフィン設置部を通って前記出口から流出するようにした熱交換器であって、
前記外包体が、金属製の伝熱層の内面側に樹脂製の熱融着層が設けられ、かつ前記伝熱層の外面側に樹脂製の保護層が設けられた外包ラミネート材によって構成され、
前記外包ラミネート材の外面に、親水性を有する層が設けられていることを特徴とする熱交換器。
【0014】
[2]熱交換媒体が流通する中空状の熱交換流路が設けられ、かつ厚さ方向のスペーサとしての機能を有する流路形成シートと、
流路形成シートの両面にそれぞれ接合一体化された両側の被覆シートと、
前記熱交換流路に対し熱交換媒体を流出入させるための出入口とを備え、
前記被覆シートが、金属製の伝熱層の内面側に樹脂製の熱融着層が設けられ、かつ外面側に樹脂製の保護層が設けられた外包ラミネート材によって構成され、
前記外包ラミネート材の外面に、親水性を有する層が設けられていることを特徴とする熱交換器。
【0015】
[3]親水性を有する層は、純水に対する接触角が40°以下である前項1または2に記載の熱交換器。
【0016】
[4]前記外包ラミネート材の親水性を有する層は、前記保護層上に設けられた親水層によって構成されている前項1~3のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0017】
[5]前記親水層は、親水基を主鎖あるいは側鎖の末端基に持つ有機ポリマーが含有されている前項4に記載の熱交換器。
【0018】
[6]前記外包ラミネート材の親水性を有する層は、親水性微粒子が含有された前記保護層によって構成されている前項1~3のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0019】
[7]前記外包ラミネート材の親水性を有する層は、親水性添加剤が含有された前記保護層によって構成されている前項1~3のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0020】
[8]前記外包体は、前記インナーフィンを介して重ね合わされた2枚の前記外包ラミネート材の外周縁部同士が接合一体化されて形成されている前項1に記載の熱交換器。
【0021】
[9]前記外包体は、中間領域に設けられ凹陥部に前記インナーフィンが収容されるトレイ部材と、そのトレイ部材における前記凹陥部の開口部を閉塞するカバー部材とを備えている前項1に記載の熱交換器。
【0022】
[10]入口および出口が設けられた外包体と、前記外包体内に設けられ、かつ凹凸部を有するインナーフィンとを備え、前記入口から流入した熱交換媒体が前記外包体内のインナーフィン設置部を通って前記出口から流出するようにした熱交換器における前記外包体を形成するための外包ラミネート材であって、
金属製の伝熱層と、
前記伝熱層の内面側に設けられた樹脂製の熱融着層と、
前記伝熱層の外面側に設けられた樹脂製の保護層とを備え、
前記外包ラミネート材の外面に、親水性を有する層が設けられていることを特徴とする熱交換器の外包ラミネート材。
【0023】
[11]熱交換媒体が流通する中空状の熱交換流路が設けられ、かつ厚さ方向のスペーサとしての機能を有する流路形成シートと、流路形成シートの両面にそれぞれ接合一体化された両側の被覆シートと、前記熱交換流路に対し熱交換媒体を流出入させるための出入口とを備えた熱交換器における前記被覆シートを形成するための外包ラミネート材であって、
金属製の伝熱層と、
前記伝熱層の内面側に設けられた樹脂製の熱融着層と、
前記伝熱層の外面側に設けられた樹脂製の保護層とを備え、
前記外包ラミネート材の外面に、親水性を有する層が設けられていることを特徴とする熱交換器の外包ラミネート材。
【発明の効果】
【0024】
発明[1]~[3]の熱交換器によれば、外包ラミネート材の外表面に、親水性を有する層が設けられているため、電池等の熱交換対象部材の冷却器として使用する場合、外表面に結露による水滴の発生を抑制し、水滴による液だれが要因となる悪影響を抑制することができ、長期的に安定した冷却性能を得ることができる。また本発明の熱交換器においては、ラミネート材等を熱融着して製作するものであるため、面倒な金属加工を用いる必要がなく、効率良く簡単に製作できてコストを削減できるとともに、十分な薄型化を図ることができる。さらに本発明の熱交換器において、ラミネート材等はその形状や大きさを簡単に変更できるため、設計の自由度が増して、汎用性を向上させることができる。
【0025】
発明[4]~[9]の熱交換器によれば、上記の効果をより一層確実に得ることができる。
【0026】
発明[10][11]の熱交換器の外包ラミネート材によれば、外表面に親水性を有する層が設けられているため、この外包ラミネート材を用いて熱交換器を製作することによって、上記発明の熱交換器と同様の効果を奏する熱交換器を確実に製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1はこの発明の第1実施形態である熱交換器を示す図であって、図(a)は平面図、図(b)は図(a)のB-B線断面に相当する側面断面図、図(c)は図(a)のC-C線断面に相当する正面断面図である。
【
図2A】
図2Aは第1実施形態の熱交換器に採用された外包体用の外包ラミネート材の一例を説明するための断面図である。
【
図2B】
図2Bは第1実施形態の熱交換器に採用された外包体用の外包ラミネート材の他の例を説明するための断面図である。
【
図2C】
図2Cこの発明の第1実施形態の熱交換器に採用されたインナーフィン用の内芯ラミネート材を説明するための断面図である。
【
図3】
図3はこの発明の第2実施形態である熱交換器を示す斜視図である。
【
図4】
図4は第2実施形態の熱交換器を示す図であって、図(a)は平面図、図(b)は図(a)のB-B線断面に相当する側面断面図である。
【
図5】
図5は第2実施形態の熱交換器を分解して示す斜視図である。
【
図6】
図6はこの発明の第3実施形態である熱交換器としての熱交換パネルを示す斜視図である。
【
図7】
図7は第3実施形態の熱交換パネルを分解して示す斜視図である。
【
図9】
図9は第3実施形態の熱交換パネルにおいてジョイントパイプが取り付けられた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1実施形態>
図1はこの発明の第1実施形態である熱交換器を示す図である。以下の説明においては発明の理解を容易にするため、
図1(a)の上下方向を「前後方向」として説明し、さらに
図1(c)の上下方向を「上下方向(厚さ方向)」として説明する。
【0029】
図1に示すように、本第1実施形態の熱交換器は、伝熱パネルや伝熱チューブ等として用いられるものであり、ケーシング(容器)としての袋状の外包体1と、外包体1の内部に収容されるインナーフィン(内芯材)2とを備え、外包体1の前端および後端に、出入口16,16が設けられている。
【0030】
外包体1は、柔軟性および可撓性を有するラミネートシートである外包ラミネート材L1によって構成されている。
【0031】
図2Aに示すように外包ラミネート材L1は、金属(金属箔)製の伝熱層51と、その伝熱層51の一面(内面)に接着剤を介して積層された熱融着性の樹脂フィルムないし熱融着性の樹脂シート製の熱融着層52と、伝熱層51の他面(外面)に接着剤を介して積層された耐熱性の樹脂フィルムないし耐熱性の樹脂シート製の保護層(耐熱層)53と、保護層53の外面に積層された親水層54とを備えている。
【0032】
また本実施形態において、「箔」という用語は、フィルム、薄板、シートも含む意味で用いられている。
【0033】
本実施形態の外包体1は、後述するように矩形状に形成された2枚の外包ラミネート材L1、L1が上下に重ね合わされて、外周縁部の熱融着層52同士が熱接着(熱融着)によって接合一体化されることにより、袋状に形成されている。
【0034】
また外包体1における出入口16,16にはジョイントパイプ33,33が設けられる。本実施形態においてジョイントパイプ33,33は例えば、合成樹脂の一体成形品によって構成されており、その少なくとも表面の樹脂が熱融着層として構成されるものである。
【0035】
このジョイントパイプ33,33は、外包体1を構成する2枚の外包ラミネート材L1の前端部間および後端部間に挟み込まれるように配置されて、各ジョイントパイプ33,33の外周面(熱融着層)が、それに対応する外包ラミネート材L1の熱融着層52に熱融着によって接合一体化されている。これによりジョイントパイプ33,33が外包体1の出入口16,16の位置において外包体1の前端部および後端部を貫通した状態で外包体1に固定されている。この状態では、ジョイントパイプ33,33の外周面全域と外包ラミネート材L1の熱融着層52との間は熱融着によって封止されている。さらに各ジョイントパイプ33,33の一端側は外包体1の外部に配置されるとともに、他端側は外包体1の内部に配置されており、冷媒等の熱交換媒体を一方のジョイントパイプ33を介して外包体1の内部に導入できるとともに、外包体1の内部の熱交換媒体を他方のジョイントパイプ33を介して外部に導出できるようになっている。
【0036】
ここで本実施形態においては、一対の出入口16,16のうち、一方の出入口16が入口として構成され、他方の出入口16が出口として構成されている。
【0037】
外包ラミネート材L1における伝熱層51としては、銅箔、アルミニウム箔、ステンレス箔、ニッケル箔、ニッケルメッキ加工した銅箔、ニッケルと銅箔からなるクラッドメタル等を好適に用いることができる。なお本実施形態において、「銅」「アルミニウム」「ニッケル」「チタン」という用語は、それらの合金も含む意味で用いられている。
【0038】
伝熱層51は、集熱層とも称されるものであり、厚みが8μm~300μmのものを用いるのが良く、より好ましくは100μm以下のものを用いるのが良い。
【0039】
また伝熱層51は、化成処理等の表面処理を施しておくことにより、伝熱層51の腐食防止や、樹脂との接着性の向上など、より一層耐久性を向上させることができる。
【0040】
化成処理は、例えば次のような処理を施す。即ち、脱脂処理を行った金属箔の表面に、下記の1)~3)のうちのいずれかの水溶液を塗工した後、乾燥することにより、化成処理を施す。
【0041】
1)リン酸と、クロム酸と、フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液。
【0042】
2)リン酸と、アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液。
【0043】
3)リン酸と、アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液。
【0044】
上記化成皮膜は、クロム付着量(片面当たり)として0.1mg/m2~50mg/m2に設定するのが好ましく、特に2mg/m2~20mg/m2に設定するのがより一層好ましい。
【0045】
熱融着層52としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂またはそれらの変性樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル樹脂等によって構成されるフィルムないしシートを好適に用いることができる。中でも特に、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)によって構成されるフィルムないしシートを用いるのが好ましい。
【0046】
なお、熱融着層52としては、厚みが20μm~5000μmのものを用いるのが良く、より好ましくは20μm~1000μmのものを用いるのが良い。
【0047】
また保護層53としては、耐熱性樹脂であるポリエステル樹脂(PET)、ポリアミド樹脂(ONY)等によって構成されるフィルムないしシートを好適に用いることができる。
【0048】
さらに保護層53としては、厚みが6μm~100μmのものを用いるのが良く、より好ましくは6μm~80μmのものを用いるのが良い。
【0049】
また外包ラミネート材L1を構成する伝熱層51、熱融着層52および保護層53の各間を接着するための接着剤としては、2液硬化型ウレタン系接着剤、オレフィン系接着剤等を好適に用いることができる。接着剤の厚みは1μm~10μmに設定するのが良く、より好ましくは2μm~7μmに設定するのが良い。
【0050】
親水層54は例えば、保護層53に親水性コート剤を塗布して形成する。親水性コート剤は、コート層の最表面に親水基(水酸基、カルボキシル基、アミノ基、スルホン酸基等)が配向するので、水との親和性が増大し、薄い水膜を均一に形成することができる。
【0051】
親水性コート剤は、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、スルホン酸基の少なくとも1つの親水基を主鎖あるいは側鎖の末端基に持つ有機ポリマーを含み、その有機ポリマーと、そのポリマーと組み合わせ可能な成分とが混合された以下の混合物等が含まれている。
【0052】
・上記親水性有機ポリマーと低分子有機化合物の混合物
・上記親水性有機ポリマーと低分子有機化合物とアルカリケイ酸塩の混合物
・上記親水性有機ポリマーと低分子有機化合物と有機ケイ素化合物の混合物
上記の親水性コート剤は、200℃以下の温度で、数秒~数十秒の短時間で乾燥させるのが好ましい。
【0053】
以下の(1)~(3)に親水性コート剤による親水層54の事例を示す。
【0054】
(1)アルカリケイ酸塩と有機化合物によるコート剤
SiO2/M2O(M:リチウム、ナトリウム、カリウム等)=2~5のアルカリケイ酸塩、アクリルアミド含有率40%~80%のアクリル酸-アクリルアミド共重合体、カルボニル基を有する低分子有機化合物(アルデヒド類等)、シランカップリング剤からなる親水性コート剤。
【0055】
上記コート剤を、グラビアコートにて樹脂表面に塗布・乾燥(150℃~180℃×30秒~60秒、塗布量0.5g/m2~3.0g/m2)することで良好な親水性の親水層54が得られる。
【0056】
(2)親水性ポリマーとカルボニル基を有する低分子有機化合物によるコート剤
親水性ポリマー(アクリル酸―アクリルアミド共重合体等):カルボニル基を有する低分子有機化合物よりなる架橋剤=1:0.5~2(重量比)の割合で配合した親水性コート剤。
【0057】
上記コート剤を、グラビアコートにて樹脂表面に塗布・乾燥(150℃~180℃×30秒~60秒、塗布量0.5g/m2~3.0g/m2)することで良好な親水性の親水層54が得られる。
【0058】
(3)親水性ポリマーへコロイダルシリカを添加したコート剤
親水性ポリマー(アクリル酸―アクリルアミド共重合体)と、架橋剤(カルボニル基を有する低分子有機化合物)を1:0.6の割合で配合し、上記配合液に、有機溶媒にナノレベルのコロイダルシリカを安定的に分散させたコロイド溶液(商品名「オルガノシリカゾル」)を添加したコート剤。
【0059】
本コート剤を用いて、樹脂表面に、塗布・乾燥することで、親水層54が得られる。
【0060】
一方、本実施形態においては、伝熱層51の外面に接着剤を介して、保護層と親水層とを兼用する親水性保護層55を形成することもできる。すなわち
図2Bに示すように、伝熱層51の外面に、保護層を構成する樹脂に、親水性を有する微粒子や添加剤を添加する等の方法によって、親水性保護層55を形成するようにしても良い。
【0061】
親水化処理の対象となる親水性微粒子としては、酸化物系(酸化ベリリウム、ケイ酸カルシウム、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、タルク、マイカ等)、窒化物系(窒化ホウ素、窒化アルミニウム等)、炭化物系(炭化ケイ素等)、水酸化物系(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等)の微粒子が使用可能である。
【0062】
保護層用樹脂へ添加する微粒子としては、親水化処理が可能であり、熱伝導率が良好であることが好ましく、このような微粒子としては、有機系微粒子よりも、無機系微粒子の方が好ましい。
【0063】
さらに平均粒子径、樹脂フィルムのアンチブロッキング剤としての実績を考慮すると、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等を親水化処理して用いるのが好ましい。
【0064】
保護層用樹脂に親水性微粒子を添加する場合、親水性微粒子は、保護層用樹脂の熱伝導率(PET:0.16W/m・k、ONY:0.4W/m・k)よりも、大きい熱伝導率(0.5W/m・k以上)を有するものを用いるのが好ましい。
【0065】
親水性微粒子としてのAl2O3は熱伝導率が30W/m・k、SiO2は10W/m・k、タルクは1~2W/m・k、CaCO3は0.5~1W/m・kである。
【0066】
保護層用樹脂に添加する親水性微粒子は、保護層55の厚さよりも平均粒子径が小さいものを添加できるが、親水性保護層55として、樹脂フィルムを採用する場合には、添加する親水性微粒子は、平均粒子径10μm以下のものが好ましい。
【0067】
Al2O3は平均粒子径が1μm~5μm、SiO2は1μm~5μm、タルクは3μm~5μm、CaCO3は1μm~5μmである。
【0068】
保護層用の樹脂への親水性微粒子の添加量は、0.05wt%~5wt%に設定するのが良く、より好ましくは0.1wt%~3wt%に設定するのが良い。すなわち微粒子添加量が多過ぎる場合には、フィッシュアイが発生しやすくなり、保護層の外観に悪影響を与えることがある。少な過ぎる場合には、十分な親水性を得ることが困難になるおそれがある。
【0069】
親水性微粒子(無機微粒子)の親水化処理には、シランカップリング剤やチタンカップリング剤を用いた表面処理を適用でき、湿式処理法と乾式処理法のどちらでも適用可能である。
【0070】
本実施形態では、均一処理の点で有利である湿式処理を用いた、無機微粒子の親水化処理の例を以下の(1)(2)に示す。
【0071】
(1)チタンカップリング剤(商品名「オルガチックスTC-510」)の50wt%水溶液に、アルミナ(平均粒子径1μm~5μm)を加え、撹拌機に投入し、攪拌した。この溶液から、遠心分離機により、アルミナを回収し、100℃乾燥後に、親水性アルミナを作製した。
【0072】
(2)シリカ(平均粒子径1μm~5μm)にエタノールを加え、撹拌機に投入し、攪拌した。さらに、メトキシシラン(商品名「KP-913」)を2wt%添加して、攪拌した。この溶液から、ろ過により、シリカを回収し、100℃乾燥後に、親水性シリカを作製した。
【0073】
次に親水化処理した微粒子の、保護層用の樹脂への添加・分散方法を以下に示す。
【0074】
親水化微粒子は、まず、ポリマーであるプラスチックや樹脂に混合し、樹脂と微粒子を練り込んだペレットを作製し、その後、このペレットを用いて樹脂フィルムを成膜した方が、微粒子の分散状態が良いフィルムが得られる。
【0075】
ペレットを作製する加工は、一般的に混練またはコンパウンディングと称されており、この混練り方法として、以下の3つの方法(1)~(3)が多く用いられている。
【0076】
(1)ロールを使う方法
ゴムで多用される方法の一つであり、二つの回転させているロールの間にゴムをシート状にして押しつぶしながら、添加剤を投入して練りこんでいく方法である。
【0077】
(2)ニーダーを使う方法
ゴムで使用される他、樹脂でもPPやPVCで使用されており、加圧ニーダーを使って、添加剤と母材となる材料を混練し、飴状に溶けたものを取り出し、これを押し出し機でペレット状態にする方法である。こうして形成されたペレットはその中で添加剤と樹脂が混ざり合っている。
【0078】
(3)押し出し機を使う方法
専用の連続混練機を使うもので、ホッパーから樹脂材料と添加剤をまぜて投入し、機械の中で混ぜ合わされ先端から出てきた細長い飴状のものをカットしてペレット状態にする方法である。投入口となるホッパーは、添加剤側と、樹脂側とで別々になっている場合もある。大量生産が前提となる場面で良く使用されている。
【0079】
また本実施形態においては、保護層用の樹脂に親水性添加剤を添加して、親水性保護層55を形成することも可能である。
【0080】
保護層用樹脂へ添加する親水性添加剤としては、非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等があり、これら界面活性剤を樹脂へ練り込み、成膜すると、界面活性剤の親水基は空気中に向けて外側に、親油基は内側に向けて配向し連続皮膜を形成して存在する。この外側に位置する親水基が空気中の水分を吸収し、親水性、帯電防止効果を発現させる。
【0081】
また、親水性、帯電防止性の効果は、カチオン>両性>アニオン>非イオン性の順になり、カチオン系界面活性剤を用いるのが、樹脂表面の親水化に好ましい。
【0082】
但し、界面活性剤を利用した樹脂フィルム(保護層)への親水性付与は、安価で簡易である利点から、広く用いられているが、フィルム表面にブリードアウトした界面活性剤が、反復摩擦や水洗い等により、付与した親水性、帯電防止効果が消失することがある。
【0083】
上記の欠点に対処するためには、高分子型界面活性剤を用いるのが好ましい。高分子型界面活性剤としては、ポリエチレンオキサイド鎖を有する非イオン界面活性剤(ポリエーテルエステルアミド型、エチレンオキシド-エピクロルヒドリン型、ポリエーテルエステル型)、ポリスチレンスルホン酸型アニオン界面活性剤、第4級アンモニウム塩基含有アクリレート重合体型カチオン界面活性剤等を例示することができる。この高分子型界面活性剤を用いて、保護層用の樹脂へ練り込み、成膜することで、樹脂表面の親水性を長期間持続させることができる。
【0084】
高分子型界面活性剤の保護層用樹脂への添加量は、0.1wt%~10wt%に設定するのが好ましく、より好ましくは0.5wt%~5wt%に設定するのが良い。
【0085】
以上のように構成された本実施形態の外包体外表面の親水層54や親水性保護層55は、JIS R 3257(1999)に基づく、静滴法によって得られた純水に対する接触角(濡れ性)で40°以下の性能を有するものを採用するのが好ましい。
【0086】
なお本実施形態においては、親水層54(
図2A参照)または親水性保護層55(
図2B参照)が親水性を有する層として構成されるものである。
【0087】
一方、
図1に示すように外包体1の内部に収容されるインナーフィン2は、柔軟性ないし可撓性を有するラミネートシートである内芯ラミネート材L2によって構成されている。
【0088】
内芯ラミネート材L2は、
図2Cに示すように金属箔製の伝熱層61と、伝熱層61の両面に接着剤を介してそれぞれ積層された樹脂フィルムないし樹脂シート製の熱融着層62,62とを備えている。
【0089】
内芯ラミネート材L2における伝熱層61および熱融着層62としては、上記外包ラミネート材L1における伝熱層51および熱融着層52と同様の構成のものを好適に採用することができる。
【0090】
さらに内芯ラミネート材L2を構成する伝熱層61および両側の熱融着層62の各間を接着するための接着剤としても、上記外包ラミネート材L1の各層51~53間に設けられる接着剤と同様の構成のものを好適に採用することができる。
【0091】
またインナーフィン2の加工方法は、切削加工、射出成型、シート成形(真空成形、圧空成形等)の他、コルゲート加工やエンボス加工を用いることができる。なお言うまでもなく、インナーフィン2の加工方法は限定されるものではない。
【0092】
インナーフィン2は、円弧状の凹部25および凸部26が交互に連続して形成された一般的な波形状(正弦波形状)、いわゆるアナログ信号波形に形成されている。
【0093】
また本実施形態において、インナーフィン2のフィン高さを0.1mm~50mmに設定するのが好ましい。
【0094】
ジョイントパイプ33は、外包ラミネート材L1や内芯ラミネート材L2の熱融着層52,62と同種の樹脂、すなわちポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、またはそれらの変性樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル樹脂等によって構成されている。本実施形態においてジョイントパイプ33は例えば、射出成型等によって形成することができる。
【0095】
この第1実施形態の熱交換器の製造手順は特に限定されるものではないが例えば、一方(下側)の外包ラミネート材L1の中間領域に、インナーフィン2を設置し、さらに外包ラミネート材L1の外周縁部における前端縁部および後端縁部にジョイントパイプ33,33を設置する。
【0096】
続いて他方(上側)の外包ラミネート材L1を、インナーフィン2およびジョイントパイプ33,33を覆うようにして、下側の外包ラミネート材L1上に配置する。こうして上下の外包ラミネート材L1の外周縁部における互いの熱融着層52同士を重ね合わせて、その重ね合わせ部を一対の加熱シール型によって挟み込みながら加熱して、当該重ね合わせ部の熱融着層52同士を熱融着して接合一体化する(外包体融着工程)。なおジョイントパイプ33,33の部分は、ジョイントパイプ33,33の外周面を上下の外包ラミネート材L1の外周縁部における熱融着層52に熱融着して接合一体化する。
【0097】
さらに外包体1の一対の外包ラミネート材L1,L1の中間領域(フィン設置位置)を上下一対の加熱板によって挟み込みながら加熱する。これによりインナーフィン2の山頂部および谷底部の熱融着層62を、一対のラミネート材L1の熱融着層52に熱融着により接合一体化する(フィン融着工程)。
【0098】
こうして本実施形態の熱交換器が製造される。なお本実施形態において外包体融着工程と、フィン融着工程とを別々に行っても良いし、同時に行っても良い。
【0099】
融着工程(溶着工程)において、溶着温度は、140℃~250℃に設定するのが良く、より好ましくは、160℃~200℃に設定するのが良い。さらに溶着圧力は、0.1MPa~0.5MPaに設定するのが良く、より好ましくは0.15MPa~0.4MPaに設定するのが良い。さらに溶着時間は、2秒~10秒に設定するのが良く、より好ましくは、3秒~7秒に設定するのが良い。
【0100】
この実施形態の熱交換器においては、一方のジョイントパイプ33から冷却液等の熱交換媒体を外包体1内に流入させて、他方のジョイントパイプ33から流出させることにより、冷却液を外包体1内に循環させるとともに、循環する冷却液と、外包体1の外表面に接触させた熱交換対象部材との間で熱交換させて、熱交換対象部材を冷却するものである。
【0101】
本実施形態の熱交換器は、その使用形態は特に限定されるものではなく、1つだけで使用することもできるし、2つ以上で使用することもできる。1つでの使用は、既述した通り、熱交換器の上下面に熱交換対象部材を接触させて使用するものである。2つで使用する場合には、例えば2つの熱交換器によって熱交換対象部材を挟み込むように配置して使用することができる。さらに2つ以上で使用する場合、熱交換器と熱交換対象部材とを交互に重ね合わせるように配置して使用することもできる。
【0102】
なおインナーフィン2は、その山筋方向および谷筋方向がトレイ部材10の前後方向に一致するように配置される。これにより、インナーフィン2の山筋部および谷筋部によって形成されるトンネル部および溝部が、熱交換流路として構成されている。この熱交換流路は、外包体1の前後方向に沿うように配置され、かつ幅方向(左右方向)に並列に複数配置されており、熱交換媒体(熱媒体)が各熱交換流路を通って均等に分散しながら外包体1の前後方向一端側から他端側に向けてスムーズに流通できるように構成されている。
【0103】
以上のように本第1実施形態の熱交換器によれば、外包体1の外表面に、親水性を有する親水層54または親水性保護層55が設けられているため、電池等の熱交換対象部材の冷却器として使用する場合、外包体1の外表面に結露による水滴の発生を抑制し、水滴による液だれが要因となる悪影響を抑制することができる。例えば電池等の端子部における、結露水の液だれによる短絡を防止でき、電池の損傷を防止しつつ、長期的に安定した冷却性能を得ることができる。
【0104】
また本実施形態の熱交換器によれば、構成部材としての外包体1、インナーフィン2およびヘッダー3が合成樹脂を基に製作されているため、各構成部材を適宜熱融着するだけで簡単に製作することができる。このため本実施形態の熱交換器は、ろう付け接合等の難易度が高くて面倒な接合加工によって製作する従来の金属製の熱交換器に比べて、コストの削減および生産性の向上を図ることができる。
【0105】
さらに本実施形態の熱交換器は、金属の塑性加工や切削加工等の面倒かつ制約のある金属加工を用いる場合と異なり、より一層生産効率の向上およびコストの削減を図ることができる。
【0106】
また本実施形態の熱交換器は、薄型のラミネート材L1を貼り合わせて形成するものであるため、十分な薄肉化および軽量化を確実に図ることができる。
【0107】
また本実施形態の熱交換器によれば、外包体1の内部にインナーフィン2を配置して、外包体1の内部に冷媒流通用空間(熱交換流路)を確保するものであるため、内圧および外圧のいずれの圧力に対しても高い強度を確保でき、動作信頼性を向上させることができる。
【0108】
さらに本実施形態の熱交換器は、外包体1がラミネート材L1であるため、熱交換器自体の形状や大きさを簡単に変更できるとともに、既述した通り、厚みや強度、熱交換性能等も簡単に変更できるので、熱交換器取付位置等に合わせて適切な構成に簡単に仕上げることができ、設計の自由度が増し、汎用性も向上させることができる。
【0109】
<第2実施形態>
図3~
図5はこの発明の第2実施形態である熱交換器を示す図である。これらの図に示すように、本第2実施形態の熱交換器は、ケーシング(容器)としての外包体1と、外包体1の内部に収容されるインナーフィン(内芯材)2と、外包体1の両端部内に収容される一対(両側)のヘッダー(ジョイント部材)3,3とを備えている。
【0110】
外包体1は、平面視矩形状のトレイ部材10と、平面視矩形状のカバー部材15とによって構成されている。
【0111】
トレイ部材10は、外包ラミネート材L1の成形品によって構成されており、外周縁部を除く中間領域全域が下方に深絞り成形や、押出成型等の冷間成形の手法を用いて凹陥形成されて、平面視矩形状の凹陥部11が形成されるとともに、凹陥部11の開口縁部外周に外方に突出するフランジ部12が一体に形成されている。
【0112】
またカバー部材15は、トレイ部材10における凹陥部11の前後両端部に対応して一対の出入口16,16が形成されている。言うまでもなく本実施形態においては、一対の出入口16のうち、一方の出入口16が入口として構成され、他方の出入口16が出口として構成されている。
【0113】
トレイ部材10およびカバー部材15は、上記第1実施形態と同様の外包ラミネート材L1によって構成されている。
【0114】
さらに第2実施形態において、外包体1の中空部(凹陥部)11内に収容されるインナーフィン2は、上記第1実施形態と同様の内芯ラミネート材L2によって構成されており、同様の形状を有している。
【0115】
このインナーフィン2が、トレイ部材10の凹陥部11内に収容される。この場合、インナーフィン2は、トレイ部材10の凹陥部11における前後両端部を除いた中間部に収容される。さらにインナーフィン2は、その山筋方向および谷筋方向がトレイ部材10の前後方向(
図5の左右方向)に一致するように配置される。これにより、インナーフィン2の山筋部および谷筋部によって形成されるトンネル部および溝部が、熱交換流路として構成されている。この熱交換流路は、トレイ部材10の前後方向に沿うように配置され、かつ幅方向(左右方向)に並列に複数配置されており、熱交換媒体(熱媒体)が各熱交換流路を通って均等に分散しながら外包体1の前後方向一端側から他端側に向けてスムーズに流通できるように構成されている。
【0116】
一方
図4および
図5に示すように、外包体1の両端部に配置される一対のヘッダー3,3は、合成樹脂の成形品によって構成されている。
【0117】
ヘッダー3を構成する樹脂としては、上記第1実施形態のジョイントパイプ33を構成する樹脂と同種の樹脂が用いられている。
【0118】
ヘッダー3は、一側面に開口部32を有する箱状の取付箱部31と、取付箱部31の上壁に設けられたパイプ部33とを備えている。パイプ部33は取付箱部31内に連通しており、パイプ部33の内部と取付箱部31の内部との間で熱交換媒体が往来できるように構成されている。
【0119】
このヘッダー3の取付箱部31がトレイ部材10の凹陥部11におけるインナーフィン2の両側に配置される。さらにヘッダー3のパイプ部33が上向き配置されるとともに、取付箱部31の開口部32が内側に向けて、つまりインナーフィン2に対向して配置される。
【0120】
こうしてヘッダー3,3をトレイ部材10内に収容して、カバー部材15をトレイ部材10にその開口部を閉塞するように配置する。この場合、カバー部材15の出入口16内に、ヘッダー3,3の上向きのパイプ部33,33を挿通配置する。
【0121】
こうして仮組された熱交換器を上記実施形態と同様に加熱することによって、接触し合う部材同士を熱融着して接合一体化する。
【0122】
すなわち、外包体1におけるトレイ部材10のフランジ部12と、カバー部材15の外周縁部との重ね合わせ部分を、上下一対の加熱シール型によって挟み込みながら加熱する(外包体融着工程)。これにより、トレイ部材10のフランジ部12と、カバー部材15の外周縁部との熱融着層52同士を熱融着(熱接着)して、外包体1の中空部を気密ないし液密状態に封止する。
【0123】
続いて、外周縁部を熱溶着した外包体1の中間領域(下壁111および上壁151)を上下一対の加熱板によって挟み込みながら加熱する。これにより、インナーフィン2の山頂部および谷底部の熱融着層62と、トレイ部材10の底壁111およびカバー部材15の中間領域(上壁)151の熱融着層52とを熱接着(熱融着)により接合一体化して、液密ないし気密状態に封止する(フィン融着工程)。さらにこのフィン融着工程においては、ヘッダー3,3の取付箱部31,31の外周面と、それに対応するトレイ部材10およびカバー部材15の熱融着層52とを熱融着(熱接着)により接合一体化して、液密ないし気密状態に封止する。
【0124】
なお本実施形態においても外包体融着工程と、フィン融着工程とを別々に行っても良いし、同時に行っても良い。
【0125】
こうして組み付けられた熱交換器は、外包体1における両端部の上壁(カバー部材15)からヘッダー3,3のパイプ部33,33が上方に突出するように配置されている。
【0126】
この第2実施形態の熱交換器においても、外包体1を構成する外包ラミネート材L1として、上記第1実施形態と同様の外包ラミネート材L1が使用されており、外包ラミネート材L1における伝熱層51の外面側に、親水層53(
図2A参照)または親水性保護層(
図2B参照)が設けられている。
【0127】
この第2実施形態の熱交換器においては、一方のヘッダー3のパイプ部33から冷却液等の熱交換媒体を外包体1内に流入させて、インナーフィン2の部分を通過させた後、他方のヘッダー3のパイプ部33から流入させることにより、冷却液を外包体1内に循環させるとともに、その循環する冷却液と、外包体1の外表面に接触させた熱交換対象部材との間で熱交換させて、熱交換対象部材を冷却するものである。
【0128】
この第2実施形態の熱交換器において、他の構成は上記第1実施形態の熱交換器と実質的に同様であるため、同一または相当部分に同一符号を付して重複説明は省略する。
【0129】
以上の構成の第2実施形態の熱交換器においても、上記第1実施形態の熱交換器と同様の効果を得ることができる。
【0130】
<第3実施形態>
図6はこの発明の第3実施形態である熱交換器としての熱交換パネルPを示す斜視図、
図7は第3実施形態の熱交換パネルPを分解して示す斜視図、
図8は
図6のA-A線断面図である。なお本実施形態においては、発明の理解を容易にするため、
図6の奥行き方向を「縦方向」とし、
図6の左右方向を「横方向」とし、
図6の上下方向を「厚さ方向」として説明する。さらに
図6~
図8においては、発明の理解を容易にするため、厚さ方向の寸法を縦横方向の寸法と比較して誇張して示している。
【0131】
図6~
図8に示すように本実施形態の熱交換パネルPは、平面視矩形状の流路形成シート1bと、流路形成シート1bの表裏面に積層される表裏両側の被覆シート1aとを備えている。なお本実施形態においては、
図6の上側を表側とし、下側を裏側として説明する。もっとも本発明においては、表側および裏側は、特に区別されるものではなく、いずれを表側または裏側としても良い。例えば
図6および
図7の上側を表側、下側を裏側としても良いし、下側を表側、上側を裏側としても良い。
【0132】
流路形成シート1bは、レーザ加工等によって、表裏に貫通するようにU字状にくり抜かれて、中空状の熱交換流路20が形成されている。
【0133】
流路形成シート1bは、厚さ方向のスペーサとしての機能を備えており、熱交換パネルPにおける厚さ方向への収縮変形や膨張変形等を防止して、所定の厚みを確保できるようになっている。
【0134】
流路形成シート1bは、その少なくとも表裏面が熱融着性の樹脂によって構成されている。
【0135】
流路形成シート1bとしては例えば、合成樹脂シート、金属ラミネート材、樹脂コート金属材等を用いることができる。金属ラミネート材とは、金属シートないし金属フィルムの両面に合成樹脂シートないし合成樹脂フィルムを接着積層したものである。樹脂コート金属材とは、金属ラミネート材、金属シートないし金属フィルムの両面に合成樹脂をコートしたものである。合成樹脂シートとしては、上記第1実施形態の外包ラミネート材L1の熱融着層52を構成する樹脂と同種の樹脂を好適に用いることができる。金属ラミネート材としては、アルミニウムシートないしアルミニウムフィルムの両面に、上記第1実施形態の外包ラミネート材L1の熱融着層52を構成する樹脂と同種の樹脂例えば、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)フィルムないしシートが接着剤によって貼り付けられたものを例示することができる。樹脂コート金属材としては、アルミニウムシートないしアルミニウムフィルムの両面に、上記第1実施形態の外包ラミネート材L1の熱融着層52を構成する樹脂と同種の樹脂、例えばポリエチレン樹脂がコーティングされたもの等を例示することができる。
【0136】
流路形成シート1bとしては、厚さが0.1mm~5mmのもの、好ましくは0.1mm~2mmのものを好適に用いることができる。
【0137】
被覆シート1aは、外包ラミネート材(ラミネートシート)L1によって構成されている。本実施形態においてこのラミネート材L1としては、上記第1実施形態の熱交換器における外包体1を構成する外包ラミネート材L1と同様の構成を備えており(
図2Aまたは
図2B参照)、外面側には親水層54または親水性保護層55が設けられている。
【0138】
以上の構成の2枚の被覆シート1aの各内面側の熱融着層52(
図2Aまたは
図2B参照)が、流路形成シート1bの表面および裏面に積層された状態で、熱融着によって、融着層52と、流路形成シート1bの表裏を構成する樹脂とが接合一体化されて、
図6に示すように熱交換パネルPが組み付けられる。この熱交換パネルPにおいては、流路形成シート1bにおける熱交換流路20の表裏両面側の開口面が、表裏両側の被覆シート1aによって閉塞されることによって、熱交換流路20が扁平チューブ状に形成される。
【0139】
なお表裏両側の被覆シート1aのうち、表側の被覆シート1aにおける熱交換流路20の両端部に対応する部分には、表裏方向に貫通する2つの円形の出入口16が形成されている。
【0140】
また本実施形態においては
図9に示すように、熱交換パネルPの一対の出入口16にそれぞれジョイントパイプ33を取り付けるようにしても良い。
【0141】
ジョイントパイプ33は、硬質合成樹脂の成形品によって構成されている。このジョイントパイプ33の端部が、熱交換パネルPの被覆シート1aの外面に熱融着等によって接着されることにより、ジョイントパイプ33が熱交換パネルPに取り付けられる。
【0142】
以上の構成の熱交換パネルPは、上記第1および第2実施形態の熱交換器と同様、電池等を冷却対象部材(熱交換対象部材)として冷却する冷却器として用いられる。すなわち一方の出入口16から流入管等を介して冷却液(冷却水、不凍液等)を流入して、その冷却液を熱交換パネルPの熱交換流路20に流通させて、他方の出入口16から流出管等を介して流出させる。これにより、熱交換パネルP内を循環する冷却液と電池との間で被覆シート1aを介して熱交換することにより、電池を冷却するものである。
【0143】
この第3実施形態の熱交換器において、他の構成は上記第1および第2実施形態の熱交換器と実質的に同様であるため、同一または相当部分に同一符号を付して重複説明は省略する。
【0144】
以上の構成の第3実施形態の熱交換器(熱交換パネルP)においても、上記第1実施形態の熱交換器と同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0145】
<実施例1>
外包ラミネート材:親水層/PET12/接着剤/AL120/接着剤/LLDPE40
内芯ラミネート材:LLDPE40/接着剤/AL120/接着剤/LLPPE40
外包ラミネート材L1として、厚さ120μmのAl箔からなる伝熱層51と、その伝熱層51の内面側に接着剤を介して積層され、かつ厚さ40μmのLLDPEフィルムからなる熱融着層52と、伝熱層51の外面側に接着剤を介して積層され、かつ厚さ12μmのPETフィルムからなる保護層53と、保護層53の外面側に積層された親水層(親水コート剤層)54とを備えたものを準備した。
【0146】
実施例1の親水層54は、アルカリケイ酸塩と有機化合物によるコート剤層である。すなわちSiO2/Na2O=3のアルカリケイ酸塩、アクリルアミド含有率60%のアクリル酸―アクリルアミド共重合体、カルボニル基を有する低分子有機化合物(グリオキザール)、シランカップリング剤(γ-アミノプロピルトリエトキシシラン)からなる親水性コート剤を用いた。
【0147】
上記コート剤を、グラビアコートにて、PETフィルム(保護層)表面に塗布し、180℃、30秒乾燥して、塗布量1.0g/m2の親水性コート層(親水層)54を作製した。この親水層54の純水の接触角は5°であった。
【0148】
内芯ラミネート材L2として、厚さ120μmのAl箔からなる伝熱層61と、その伝熱層61の両面側に接着剤を介して積層され、かつ厚さ40μmのLLDPEフィルムからなる熱融着層62とを備えたものを準備した。
【0149】
上記外包ラミネート材L1を用いて、
図3~
図5に示す第2実施形態に対応するトレイ部材10およびカバー部材15を作製した。すなわち上記実施例および比較例の各外包ラミネート材L1に対し深絞り成形を行って、深さ4mm×幅90mm×長さ140mmの凹陥部11を有し、凹陥部11の開口縁部全周に幅10mmのフランジ部12が形成されたトレイ部材10を作製した。
【0150】
上記各外包ラミネート材L1を長さ160mm×幅110mmにカットしてカバー部材15を作製した。
【0151】
さらに上記内芯ラミネート材L2を用いて、
図4および
図5に示す第2実施形態のインナーフィン2を作製した。すなわち内芯ラミネート材L2に対しコルゲート加工を行って、高さ4.2mm×幅90mm×長さ100mmの波形のインナーフィン2を作製した。
【0152】
さらに
図4および
図5に示すように長さ90mm×横20mm×高さ4mmの取付箱部31に、内径φ10mm、外径φ12mm、長さ3mmのパイプ部33が一体に形成されたヘッダー3を射出成型によって作製した。
【0153】
続いて、上記トレイ部材10の凹陥部11における両端部にヘッダー3,3を、各パイプ部33が上方に向くようにして収容した。さらに凹陥部11内におけるヘッダー3,3間にインナーフィン2を収容した。
【0154】
さらにトレイ部材10の凹陥部11を上から閉塞するようにカバー部材15を配置した。この際、カバー部材15の出入口16,16に、ヘッダー3,3のパイプ部33,33を挿通してカバー部材15の上方に突出させた。
【0155】
こうして非接合状態の熱交換器仮組品を作製し、その仮組品をヒートシール機によって、180℃×0.3MPa×7秒の熱融着条件で熱融着処理を行い、各部品間を熱接着(熱融着)することにより、実施例1の熱交換器を作製した。
【0156】
<実施例2>
外包ラミネート材:親水性アルミナ添加PET12/接着剤/AL120/接着剤/LLDPE40
外包ラミネート材として、厚さ120μmのAl箔からなる伝熱層51と、その伝熱層51の内面側に接着剤を介して積層され、かつ厚さ40μmのLLDPEフィルムからなる熱融着層52と、伝熱層51の外面側に接着剤を介して積層され、かつ厚さ12μmの親水性アルミナが添加されたPETフィルムからなる親水性保護層55とを備えたものを準備した。
【0157】
実施例2において、親水性アルミナの作製方法は以下の通りである。すなわちチタンカップリング剤(商品名「オルガチックスTC-510」)の50wt%水溶液に、アルミナ(平均粒子径1μm~5μm)を加え、撹拌機に投入し、攪拌した。この溶液から、遠心分離機により、アルミナを回収し、100℃乾燥後に親水性アルミナを作製した。
【0158】
この親水性アルミナを3wt%添加した、厚さ12μmのPETフィルムを成膜し、ドライラミネートにて、親水性アルミナが添加されたPETフィルム(親水性保護層55)が外面に積層された外包ラミネート材L1を作製した。この親水性保護層55の接触角は30°であった。
【0159】
この外包ラミネート材L1を用いた以外は、上記実施例1と同様に、熱交換器を作製した。
【0160】
<比較例1>
親水層54が設けられていない点を除いて上記実施例1と同様の外包ラミネート材(PET12/接着剤/AL120/接着剤/LLDPE40)L1を準備した。この外包ラミネート材L1における厚さ12μmのPETフィルム(保護層53)の純水の接触角は70°であった。
【0161】
この外包ラミネート材L1を用いた以外は、上記実施例1と同様に熱交換器を作製した。
【0162】
<実施例3>
外包ラミネート材:親水層/PET12/接着剤/AL120/接着剤/LLDPE40
流路形成シート材:LLDPE製の中空状流路形成シート(厚さ200μm)
外包ラミネート材L1として、厚さ120μmのAl箔からなる伝熱層51と、その伝熱層51の内面側に接着剤を介して積層され、かつ厚さ40μmのLLDPEフィルムからなる熱融着層52と、伝熱層51の外面側に接着剤を介して積層され、かつ厚さ12μmのPETフィルムからなる保護層53と、保護層53の外面側に積層された親水層(親水コート層)54とを備えたものを準備した。
【0163】
実施例3の親水層54は、親水性ポリマーとカルボニル基を有する低分子有機化合物によるコート剤である。すなわちアクリル酸-アクリルアミド共重合体:グリオキザール(架橋剤)=1:0.7(重量比)の割合で配合した親水性コート剤を作製した。
【0164】
上記コート剤を、グラビアコートにて、PETフィルム(保護層)表面に塗布し、160℃、30秒乾燥して、塗布量0.6g/m2の親水性コート層(親水層)54を作製した。この親水層54の純水の接触角は15°であった。
【0165】
この構成の外包ラミネート材L1を用いて、
図6および
図7に示す第3実施形態に対応する被覆シート1aを作製した。すなわち外包ラミネート材L1を、縦120mm×横90mmに切断して、表裏2枚の被覆シートを作製した。さらに一方に被覆シート(表側被覆シート)における縦方向の端部に、横方向に並設するように直径φ8mmの円形の孔を形成して、一対の出入口16を形成した。
【0166】
一方、流路形成シート用の材料(流路形成シート材)として、厚さ200μmのLLDPEシートを準備した。このLLDPEシート(縦120mm×横90mm)を3枚重ね合わせて、160℃×0.2MPa×10秒の溶着条件で接合し、その積層シートにファイバーレーザー機を用いて、U字状の熱交換流路20を表裏間で貫通するように形成し、流路形成シート1bを作製した(
図7等参照)。
【0167】
続いて、この流路形成シート1bの表面側および裏面側に、上記被覆シート1aをその内面側の熱融着層52を重ね合わせるように配置して、未接着の積層体を作製した。この際、一対の出入口3,3を有する表側被覆シート1aは、その出入口16を流路形成シート1bの熱交換流路20における両端部に対応して配置した。そして、この積層体を180℃×0.3MPa×10秒の条件でヒートシールして、
図6および
図7に示すような熱交換器(熱交換パネルP)を作製した。
【0168】
続けて、内径φ6mm、外径φ8mm、長さ10mmのポリエチレンチューブによって構成されるジョイントパイプ(フランジ部無し)33の一端側をバーナーで炙り、溶融したことを確認してから、その溶融側端部を表側被覆シート1aにおける一対の出入口16,16に押し付けて熱融着して、実施例3のジョイントパイプ付き熱交換パネルを作製した。
【0169】
<実施例4>
外包ラミネート材:親水性シリカ添加PET12/接着剤/AL120/接着剤/LLDPE40
外包ラミネート材L1として、厚さ120μmのAl箔からなる伝熱層51と、その伝熱層51の内面側に接着剤を介して積層され、かつ厚さ40μmのLLDPEフィルムからなる熱融着層52と、伝熱層51の外面側に接着剤を介して積層され、かつ厚さ12μmの親水性シリカが添加されたPETフィルムからなる親水性保護層55とを備えたものを準備した。
【0170】
実施例4の親水性シリカの製作方法は以下の通りである。すなわちシリカ(平均粒子径1μm~5μm)にメタノールを加え、撹拌機に投入し、攪拌した。さらに、メトキシシラン(商品名「KP-913」)を2wt%添加して、攪拌した。この溶液から、ろ過により、シリカを回収し、100℃乾燥後に、親水性シリカを作製した。
【0171】
上記の親水性シリカを3wt%添加した、厚さ12μmのPETフィルムを成膜し、ドライラミネートにて、親水性シリカが添加されたPETフィルム(親水性保護層55)が外面に積層された外包ラミネート材L1を作製した。この親水性保護層55の純水の接触角は30°であった。
【0172】
この外包ラミネート材L1を用いた以外は、上記実施例3と同様に、熱交換器を作製した。
【0173】
<実施例5>
外包ラミネート材:カチオン界面活性剤2wt%添加PET12/接着剤/AL120/接着剤/LLDPE40
第4級アンモニウム塩基含有アクリレート重合体型カチオン界面活性剤を、2wt%添加して、PETフィルムを成膜し、ドライラミネートにて、カチオン界面活性剤が添加されたPETフィルム(親水性保護層55)が外面に積層された外包ラミネート材L1を作製した。この親水性保護層55の純水の接触角は35°であった。
【0174】
この外包ラミネート材L1を用いた以外は、上記実施例3と同様に、熱交換器を作製した。
【0175】
<比較例2>
親水層54が設けられていない点を除いて上記実施例3と同様の外包ラミネート材(PET12/接着剤/AL120/接着剤/LLDPE40)L1を準備した。この外包ラミネート材L1における厚さ12μmのPETフィルム(保護層53)の純水の接触角は70°であった。
【0176】
この外包ラミネート材L1を用いた以外は、上記実施例3と同様に熱交換器(熱交換パネルP)を作製した。
【0177】
<熱交換性能および結露状態の評価>
恒温恒湿機内を、25℃×90%RH雰囲気に設定し、その中に実施例1~5および比較例1,2の各熱交換器を垂直に設置して、各熱交換器の長さ方向の中央部付近において、各熱交換器の最外面に、下記の模擬セルを接触させて設置できる試験装置を作製した。
【0178】
上記模擬セルとしてアルミブロック(縦100mm×横90mm厚さ20mm)を恒温槽で80℃に加熱した後、上記試験装置内の各熱交換器の中央部に設置した。
【0179】
続いて、各熱交換器に水温21℃の水道水を流量0.25L/minで循環させて、各熱交換器毎に、模擬セルにおける上面中央温度を所定の経過時間毎に測定した。その結果を表1および表2に示す。
【0180】
さらに水道水の通水(循環)が3分経過した後に、各熱交換器を試験装置から取り出して、各熱交換器の外面にろ紙を貼り付け、水(結露水)が転写した面積を測定した。この結果を表1および表2に併せて示す。
【0181】
なお表1において、純粋の接触角(°)は、親水層54また親水性保護層55の最表面の接触角度を測定した。さらに結露状態の評価においては、既述した通り、熱交換性能の評価試験後に各熱交換器外面の水滴をろ紙に転写させ、転写した水の面積の熱交換器表面に対する比率を測定した。この熱交換器の結露状態が、熱交換器表面の30%未満の場合には、良好「○」と評価し、30%以上~60%未満の場合には、やや不良「△」と評価し、60%以上の場合には、不良「×」として評価した。
【0182】
【0183】
【0184】
表1および表2から明らかなように、外表面に親水層、親水性保護層が設けられた実施例1~5の熱交換器は、冷却運転による結露が少なく結露状態が良好であり、模擬セルの温度低下も速く、良好な熱交換性能を備えているのが判る。これに対し、外表面に親水性が付与されていない比較例1,2の熱交換器は、冷却運転による結露が多く結露状態が不良であり、模擬セルの温度低下も遅く、実施例の熱交換器に比べて、熱交換性能がやや劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0185】
この発明の熱交換器は、スマートフォンやパーソナルコンピュータのCPU回り、電池回りの発熱対策、液晶テレビ、有機ELテレビ、プラズマテレビのディスプレイ回りの発熱対策、自動車のパワーモジュール回り、電池回りの発熱対策に用いられる冷却器(冷却装置)の他、床暖房、除雪に用いられる加熱器(加熱装置)として利用することができる。
【符号の説明】
【0186】
1:外包体
1a:被覆シート
1b:流路形成シート
10:トレイ部材
11:凹陥部
15:カバー部材
16:出入口(入口、出口)
2:インナーフィン
20:熱交換流路
25:凹部
26:凸部
51:伝熱層
52:熱融着層
53:保護層
54:親水層
55:親水性保護層
L1:外包ラミネート材