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特許7471084幹細胞由来星状細胞、作製方法および使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】幹細胞由来星状細胞、作製方法および使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0797 20100101AFI20240412BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20240412BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALI20240412BHJP
   C12N 5/0793 20100101ALI20240412BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240412BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C12N5/0797
C07K14/47
C12N5/0735
C12N5/0793
C12N5/10
C12N15/12
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019551936
(86)(22)【出願日】2018-03-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 US2018023551
(87)【国際公開番号】W WO2018175574
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-03-19
(31)【優先権主張番号】62/474,596
(32)【優先日】2017-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/474,429
(32)【優先日】2017-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500213834
【氏名又は名称】メモリアル スローン ケタリング キャンサー センター
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ステューダー, ローレンツ
(72)【発明者】
【氏名】チエウ, ジェイソン
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-535248(JP,A)
【文献】特表2003-533224(JP,A)
【文献】特表2009-513269(JP,A)
【文献】米国特許第06001654(US,A)
【文献】国際公開第2017/057523(WO,A1)
【文献】Benjamin Deneen et al.,The Transcription Factor NFIA Controls the Onset of Gliogenesis in the Developing Spinal Cord,Neuron,2006年,Vol.52,pp.953-968
【文献】Peng Kang et al.,Sox9 and NFIA Coordinate a Transcriptional Regulatory Cascade during the Initiation of Gliogenesis,Neuron,2012年,Vol.74,pp.79-94
【文献】Ho, Chi Kent,Who Am I: Blurring the Lines of Cellular Identity,UCLA Electronic Theses and Dissertations [online],2013年,インターネット<https://escholarship.org/uc/item/5k61n96j>[検索日2022年3月31日]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの神経幹細胞マーカーを発現する神経幹細胞(NSC)の集団を分化させるためのインビトロ方法であって、
工程a)少なくとも1つの神経幹細胞マーカーを発現する前記NSCの集団におけるNFIAシグナリングを促進して、少なくとも1つのグリアコンピテント細胞マーカーを発現する少なくとも10%の分化したグリアコンピテント細胞を含む細胞集団を得る工程であって、検出可能レベルの前記少なくとも1つのグリアコンピテント細胞マーカーが、前記細胞におけるNFIAシグナリングの最初の促進から少なくとも5日間存在する工程;および
工程b)工程a)における、少なくとも1つのグリアコンピテント細胞マーカーを発現する少なくとも10%の分化したグリアコンピテント細胞を含む前記細胞集団において、NFIAシグナリングの促進を減少させて、前記グリアコンピテント細胞の、少なくとも1つの星状細胞マーカーを発現する細胞への分化を促進する工程、
を包含する、インビトロ方法。
【請求項2】
NFIAシグナリングを前記促進することが、
i)前記細胞をNFIAの少なくとも1つのアクチベーターに曝露すること、または
ii)NFIAの発現を増加させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
NFIAの前記少なくとも1つのアクチベーターが、a)前記幹細胞に外因的に曝露されたNFIAタンパク質、b)前記幹細胞に発現された組換えNFIAタンパク質、またはc)NFIAの上流アクチベーターを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
NFIAの前記上流アクチベーターがTGFβ1である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
NFIAの発現を前記増加することが、NFIAの過剰発現を誘導するように前記NSCを改変することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
過剰発現した前記NFIAが、NFIA核酸により発現される組換えNFIAタンパク質である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記NFIA核酸が、誘導性プロモーターに作動可能に連結されている、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記神経幹細胞マーカーが、PAX6、ネスチン、SOX1、SOX2、PLZF、ZO-1およびBRN2からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
a)前記少なくとも1つのグリアコンピテント細胞マーカーが、CD44、およびAQP4から選択される;および/または
b)少なくと1つのグリアコンピテント細胞マーカーを発現する前記細胞が、皮質グリアコピンテント細胞または脊髄グリアコンピテント細胞である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程b)が、工程a)における少なくとも1つのグリアコンピテント細胞マーカーを発現する少なくとも10%の分化したグリアコンピテント細胞を含む前記細胞集団を、少なくとも1つの星状細胞マーカーを発現する細胞への前記グリアコンピテント細胞の分化をさらに促進するために適切な条件に供することをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
(a)前記条件が、前記細胞集団を白血病抑制因子(LIF)および/または少なくとも1つのそのアクチベーターに曝露することを含む;および/または(b)前記少なくとも1つの星状細胞マーカーが、GFAP、AQP4、CD44、S100b、SOX9、NFIA、GLT-1およびCSRP1から選択される;および/または(c)少なくとも1つの星状細胞マーカーを発現する細胞が皮質星状細胞または脊髄星状細胞である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記NSCが
a)ヒト幹細胞;および/または
b)胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、ヒト単為生殖幹細胞、始原生殖細胞様多能性幹細胞、胚盤葉上層幹細胞、Fクラス多能性幹細胞およびそれらの組み合わせ
から分化したものである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年3月21日に出願された米国仮出願第62/474,429号、および2017年3月21日に出願された米国仮出願第62/474,596号の優先権を主張し、これらの内容はそれぞれ、その全体が参照により組み込まれ、これらのそれぞれの優先権が主張される。
1.イントロダクション
【0002】
本開示の主題は、グリアコンピテント細胞(例えば、星状細胞前駆体)および幹細胞(例えば、ヒト幹細胞)由来星状細胞ならびに細胞ベースの神経障害処置のためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
2.発明の背景
星状細胞は、脳内のアミノ酸、栄養素およびイオン代謝を調節し、神経活動および脳血流をつなぎ、興奮性シナプス伝達をモジュレートするように機能するグリア細胞である。プリオン病、アルツハイマー病およびパーキンソン病を有する患者の脳では、星状細胞は封入体を有すると報告されており、死後脳において疾患の重症度と相関する。加えて、Mecp2を星状細胞からノックアウトすると、細胞は野生型ニューロンの正常な樹状形態を支持することができず、さらに、ミトコンドリアを放出し、脳卒中後にこれがニューロンに入ることが観察されている。したがって、星状細胞は、いくつかの神経疾患の病因において役割を果たし、傷害による神経損傷の重症度をモジュレートする可能性がある。このため、安定な星状細胞系を生成するインビトロ方法は、このような状態の研究に有用であろう。さらに、インビトロ分化の方法により調製された星状細胞は、神経障害を有する患者に治療的に投与され得るか、または神経損傷を患っている患者における損傷の重症度を軽減するために投与され得る。しかしながら、ヒト多能性幹細胞(hPSC)由来星状細胞は、75~200日間の培養後にインビトロで確立されているのみであるので、hPSCから星状細胞を誘導するためのロバストな方法はない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
3.発明の概要
本開示の主題は、例えばインビトロ分化による幹細胞由来の星状細胞およびグリアコンピテント細胞(例えば、星状細胞前駆体)に関する。
【0005】
本開示の主題は、少なくとも部分的には、(i)神経幹細胞(NSC)における核因子I-A(NFIA)シグナリングの促進(例えば、NFIAの発現の増加)がグリアコンピテンシープログラムを開始するという発見に基づく。ヒト胚性幹細胞由来NSC集団としては、限定されないが、二重SMAD阻害から誘導されるものおよびLTNSC(「LT-hESCNSC」としても公知。長期自己再生ロゼット型ヒト胚性幹細胞(ESC)由来神経幹細胞)が挙げられる。本開示の主題はまた、少なくとも部分的には、(ii)グリアコンピテンシーの達成後、NFIAシグナリングの低減(例えば、NFIAの発現の減少)が、星状細胞へのグリアコンピテント細胞の分化を促進するという発見に基づく。さらに、白血病抑制因子(LIF)(または、1つもしくはそれを超えるその誘導体、類似体もしくはアクチベーター)へのグリアコンピテント細胞の曝露は、星状細胞へのグリアコンピテント細胞の分化を促進する。
【0006】
本開示の主題はまた、少なくとも部分的には、(iii)(例えば、FGF2の非存在下における)ウシ胎仔血清(FBS)へのNSC(例えば、ロゼット型NSC、例えばLT-hESCNSC)の曝露が、星状細胞へのNSCの分化を誘導するという発見に基づく。
【0007】
本開示は、少なくとも1つのグリアコンピテント細胞マーカーを発現する少なくとも約10%の分化細胞を含む細胞集団への、1つまたはそれを超える神経幹細胞(NSC)マーカー(例えば、NSC、例えばロゼット型NSC、例えばLT-hESCNSC)を発現する細胞の分化を誘導するためのインビトロ方法を提供する。特定の実施形態では、前記方法は、1つまたはそれを超える神経幹細胞(NSC)マーカーを発現する細胞の集団におけるNFIAシグナリングを有効な期間促進して、1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーを発現する少なくとも約10%の分化細胞を含む細胞集団を得ることを含む。
【0008】
特定の実施形態では、前記方法は、1つまたはそれを超える神経幹細胞マーカーを発現する細胞の集団の細胞周期のG1期を延長して、1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーを発現する少なくとも約10%の分化細胞を含む細胞集団を得ることを含む。
【0009】
特定の実施形態では、1つまたはそれを超えるグリアコンピテント神経幹細胞マーカーは、PAX6、ネスチン、SOX1、SOX2、PLZF、ZO-1およびBRN2からなる群より選択される。特定の実施形態では、1つまたはそれを超えるグリアコンピテント神経幹細胞マーカーは、PAX6、SOX1、PLZFおよびZO-1からなる群より選択される。
【0010】
本開示はまた、幹細胞(例えば、ヒト幹細胞、例えば多能性幹細胞)を、1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーを発現する少なくとも約10%の分化細胞を含む細胞集団に分化させるためのインビトロ方法を提供する。特定の実施形態では、該方法は、幹細胞の集団をSMADシグナリングの有効量の1つまたはそれを超えるインヒビター(「SMADインヒビター」と称される)に曝露すること、および細胞におけるNFIAシグナリングを促進して、1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーを発現する少なくとも約10%の分化細胞を含む細胞集団を得ることを含む。特定の実施形態では、NFIAシグナリングの促進は、1つまたはそれを超えるSMADインヒビターへの細胞の曝露後であるかまたはそれと同時である。特定の実施形態では、NFIAシグナリングの初期促進は、1つまたはそれを超えるSMADインヒビターへの細胞の初期曝露から約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12日間である。
【0011】
特定の実施形態では、該方法は、幹細胞の集団をSMADシグナリングの有効量の1つまたはそれを超えるインヒビターに曝露すること、および細胞の細胞周期のG1期を延長して、1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーを発現する少なくとも約10%の分化細胞を含む細胞集団を得ることを含む。特定の実施形態では、G1期の初期延長は、SMADシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビターへの細胞の初期曝露から少なくとも約8日間である。
【0012】
特定の実施形態では、分化細胞はグリアコンピテント細胞である。特定の実施形態では、グリアコンピテント細胞は星状細胞前駆細胞である。
【0013】
特定の実施形態では、細胞におけるNFIAシグナリングの前記促進は、細胞におけるNFIAの発現を増加させることを含む。
【0014】
特定の実施形態では、NFIAの発現の増加は、NFIAの過剰発現を誘導するように細胞を改変することを含む。特定の実施形態では、改変細胞は、組換えNFIAタンパク質、例えばNFIA核酸を発現し、前記NFIA核酸の発現は、誘導性プロモーターに作動可能に連結されている。
【0015】
特定の実施形態では、細胞におけるNFIAシグナリングの前記促進は、細胞をNFIAの1つまたはそれを超えるアクチベーター(「NFIAアクチベーター」と称される)に曝露することを含む。特定の実施形態では、NFIAの1つまたはそれを超えるアクチベーターは、NFIA遺伝子の上流アクチベーターを含む。特定の実施形態では、NFIA遺伝子の上流アクチベーターはTGFβ1である。特定の実施形態では、1つまたはそれを超えるNFIAアクチベーターは、細胞に外因的に曝露されたNFIAタンパク質を含む。
【0016】
有効な期間は、少なくとも1つのグリアコンピテント細胞マーカーの検出可能レベルが達成され、および/または少なくとも1つのグリアコンピテント細胞マーカーの発現レベルが少なくとも約10%増加した期間である。
【0017】
特定の実施形態では、該方法は、細胞におけるNFIAシグナリングを少なくとも約2日間、少なくとも約3日間、少なくとも約4日間、少なくとも約5日間、少なくとも約6日間、少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間、少なくとも約11日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、少なくとも約14日間、少なくとも約15日間、少なくとも約16日間、少なくとも約17日間、少なくとも約18日間、少なくとも約19日間、少なくとも約20日間もしくはそれを超えて;または最大約2日間、最大約3日間、最大約4日間、最大約5日間、最大約6日間、最大約7日間、最大約8日間、最大約9日間、最大約10日間、最大約11日間、最大約12日間、最大約13日間、最大約14日間、最大約15日間、最大約16日間、最大約17日間、最大約18日間、最大約19日間、最大約20日間もしくはそれを超えて促進することを含む。特定の実施形態では、該方法は、細胞におけるNFIAシグナリングを約5日間促進することを含む。特定の実施形態では、該方法は、細胞におけるNFIAシグナリングを約5日間~約15日間促進することを含む。特定の実施形態では、該方法は、細胞におけるNFIAシグナリングを約8日間促進することを含む。特定の実施形態では、該方法は、細胞におけるNFIAシグナリングを約10日間~約20日間促進することを含む。特定の実施形態では、該方法は、細胞におけるNFIAシグナリングを約15日間促進することを含む。
【0018】
特定の実施形態では、NFIAシグナリングの初期促進は、SMADシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビターへの幹細胞の初期曝露から少なくとも約8日間である。特定の実施形態では、検出可能レベルの1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーは、細胞におけるNFIAシグナリングの初期促進から少なくとも約5日間存在する。
【0019】
特定の実施形態では、グリアコンピテント細胞マーカーは、CD44、AQP4、SOX2およびネスチンからなる群より選択される。特定の実施形態では、グリアコンピテント細胞マーカーは、CD44およびAQP4からなる群より選択される。
【0020】
特定の実施形態では、細胞集団は、1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーを発現する少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約99%またはそれを超える分化細胞を含む。特定の実施形態では、少なくとも約99%またはそれを超える分化細胞は検出可能レベルのCD44を発現し、少なくとも約10%の分化細胞は検出可能レベルのAQP4を発現する。
【0021】
特定の実施形態では、該方法は、細胞をEGFおよび/またはFGF2シグナリングの有効量の1つまたはそれを超えるアクチベーターに曝露することをさらに含む。特定の実施形態では、EGFおよび/またはFGF2シグナリングの1つまたはそれを超えるアクチベーターへの曝露は、NFIAシグナリングの促進と同時である。
【0022】
特定の実施形態では、細胞集団は、検出可能レベルの1つまたはそれを超えるニューロンマーカーを発現する約15%未満の細胞を含む。特定の実施形態では、1つまたはそれを超えるニューロンマーカーは、Tuj1、MAP2およびDCXからなる群より選択される。
【0023】
特定の実施形態では、細胞におけるNFIAシグナリングの促進は、(例えば、NFIAインヒビターへの細胞の曝露により)約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20日後またはそれよりも後に中断、減少または他の方法で阻害される。特定の実施形態では、細胞におけるNFIAシグナリングの促進は、約5日間または約8日間の曝露期間後に中断される。特定の実施形態では、機能的NFIAの発現レベルは、細胞に初期曝露された機能的NFIAの発現レベルと比較して少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、約99%または約100%減少する。特定の実施形態では、機能的NFIAの発現レベルは、細胞に初期曝露された機能的NFIAの発現レベルと比較して少なくとも約10%減少する。特定の実施形態では、機能的NFIAの発現レベルは、細胞に初期曝露された機能的NFIAの発現レベルと比較して少なくとも約90%減少する。
【0024】
特定の実施形態では、細胞におけるNFIAシグナリングの促進は、複数の細胞における1つまたはそれを超える星状細胞マーカーの検出可能な発現レベルを増加させるために有効な期間にわたって中断される。特定の実施形態では、細胞の少なくとも10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約99%またはそれより多くは、検出可能レベルの1つまたはそれを超える星状細胞マーカーを発現する。特定の実施形態では、細胞の少なくとも約50%またはそれより多くは、検出可能レベルの1つまたはそれを超える星状細胞マーカーを発現する。特定の実施形態では、1つまたはそれを超える星状細胞マーカーは、GFAP(グリア線維性酸性タンパク質)、AQP4(アクアポリン4)、CD44、S100b(カルシウム結合タンパク質B)、SOX9(SRY-Box9)、NFIA、GLT-1およびCSRP1からなる群より選択される。特定の実施形態では、NFIAシグナリングの促進は、複数の細胞におけるSOX2、ネスチンまたはその両方の検出可能な発現レベルを減少させるために有効な期間にわたって中断されるかまたは減少する。特定の実施形態では、細胞の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%またはそれより多くは、検出可能レベルのSOX2、ネスチンまたはその両方を発現しない。特定の実施形態では、細胞の少なくとも約50%またはそれより多くは、検出可能レベルのSOX2、ネスチンまたはその両方を発現しない。
【0025】
特定の実施形態では、前記有効な期間は、少なくとも約1日間、少なくとも約2日間、少なくとも約3日間、少なくとも約4日間、少なくとも約5日間、少なくとも約6日間、少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間もしくはそれを超えるか;または最大約1日間、最大約2日間、最大約3日間、最大約4日間、最大約5日間、最大約6日間、最大約7日間、最大約8日間、最大約9日間もしくは最大約10日間もしくはそれを超える。特定の実施形態では、有効な期間は約5日間である。
【0026】
特定の実施形態では、検出可能レベルの1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーは、G1期の初期延長から少なくとも約10日間存在する。特定の実施形態では、G1期の前記延長は、細胞周期のG1期を延長することができる1つまたはそれを超える化合物(「G1期を延長する化合物」と称される)に細胞を曝露することを含む。特定の実施形態では、1つまたはそれを超えるG1延長化合物は小分子化合物を含む。特定の実施形態では、小分子化合物は、オロモウシン(Olo)を含む。特定の実施形態では、該方法は、細胞を1つまたはそれを超えるG1延長化合物に約2日間以下曝露することを含む。
【0027】
特定の実施形態では、G1期の前記延長は、細胞におけるFZR1の発現を増加させることを含む。
【0028】
特定の実施形態では、1つまたはそれを超えるグリアコンピテントマーカーを発現する細胞は、皮質グリアコンピテント細胞または脊髄グリアコンピテント細胞である。
【0029】
特定の実施形態では、細胞を1つまたはそれを超えるSMADインヒビターに約10、11または12日間曝露する。
【0030】
特定の実施形態では、該方法は、1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーを発現する少なくとも約10%の細胞を含む細胞集団を、1つまたはそれを超える星状細胞マーカーを発現する少なくとも約10%の細胞を含む細胞集団への細胞の分化を促進するために適切な条件に供することをさらに含む。特定の実施形態では、条件は、細胞を有効量のLIF(または1つもしくはそれを超えるその誘導体、類似体および/またはアクチベーター)に曝露して、1つまたはそれを超える星状細胞マーカーの検出可能レベルを増加させることを含む。特定の実施形態では、細胞を有効量のLIFに少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15日間もしくはそれを超えて;または最大約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15日間もしくはそれを超えて接触させる。
【0031】
特定の実施形態では、細胞を有効量のLIFに約7、8、9または10日間曝露する。特定の実施形態では、LIF、1つもしくはそれを超えるその誘導体、1つもしくはそれを超えるその類似体および/または1つもしくはそれを超えるそのアクチベーターへの細胞の初期曝露は、SMADシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビターへの幹細胞の初期曝露から少なくとも約10日間である。特定の実施形態では、NFIAシグナリングの促進後にまたはそれと同時に、細胞をLIF、1つもしくはそれを超えるその誘導体、1つもしくはそれを超えるその類似体および/または1つもしくはそれを超えるそのアクチベーターに曝露する。特定の実施形態では、LIF、1つもしくはそれを超えるその誘導体、1つもしくはそれを超えるその類似体および/または1つもしくはそれを超えるそのアクチベーターへの細胞の初期曝露は、NFIAシグナリングの初期促進から約1、2、3、4または5日間である。特定の実施形態では、LIF、1つもしくはそれを超えるその誘導体、類似体および/またはアクチベーターへの細胞の初期曝露は、細胞におけるNFIAシグナリングの初期促進から少なくとも約2日間または少なくとも約5日間である。
【0032】
特定の実施形態では、1つまたはそれを超える星状細胞マーカーを発現する細胞は、皮質星状細胞または脊髄星状細胞である。
【0033】
さらに、本開示は、1つまたはそれを超える星状細胞マーカーを発現する少なくとも約10%の分化細胞を含む細胞集団に幹細胞を分化させるためのインビトロ方法を提供する。特定の実施形態では、該方法は、幹細胞の集団をSMADシグナリングの有効量の1つまたはそれを超えるインヒビターに曝露すること、および細胞を有効量のウシ胎仔血清(「FBS」)に曝露して、1つまたはそれを超える星状細胞マーカーを発現する少なくとも約10%の分化細胞を含む細胞集団を得ることを含む。特定の実施形態では、FBSへの細胞の初期曝露から少なくとも約30日間に幹細胞を前記細胞集団に分化させる。
【0034】
特定の実施形態では、1つまたはそれを超えるSMADインヒビターは、TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナリングインヒビターおよび/または骨形成タンパク質(BMP)シグナリングのインヒビター(「BMPインヒビター」と称される)を含む。特定の実施形態では、TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビターは、SB431542、その誘導体およびその混合物からなる群より選択される化合物を含む。特定の実施形態では、TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビターはSB431542を含む。特定の実施形態では、1つまたはそれを超えるBMPインヒビターは、LDN193189、その誘導体およびその混合物からなる群より選択される化合物を含む。特定の実施形態では、1つまたはそれを超えるBMPインヒビターはLDN193189を含む。
【0035】
本開示の主題はまた、1つまたはそれを超える脊髄前駆体マーカーを発現する少なくとも約10%の分化細胞を含む細胞集団に幹細胞を分化させるためのインビトロ方法を提供する。特定の実施形態では、該方法は、幹細胞の集団を有効量の1つまたはそれを超えるSMADインヒビターに曝露すること、ならびに細胞をレチノイン酸(RA)シグナリングの有効量の1つまたはそれを超えるアクチベーター(「RAアクチベーター」と称される)およびソニックヘッジホッグ(SHH)シグナリングの有効量の1つまたはそれを超えるアクチベーター(「SHHアクチベーター」と称される)に曝露して、1つまたはそれを超える脊髄前駆体マーカーを発現する少なくとも約10%の分化細胞を含む細胞集団を得ることを含む。
【0036】
特定の実施形態では、1つまたはそれを超えるRAアクチベーターおよび1つまたはそれを超えるSHHアクチベーターへの細胞の初期曝露は、1つまたはそれを超えるSMADインヒビターへの細胞の初期曝露から少なくとも約1日間である。
【0037】
特定の実施形態では、検出可能レベルの1つまたはそれを超える脊髄前駆体マーカーは、1つまたはそれを超えるRAアクチベーターおよび1つまたはそれを超えるSHHアクチベーターへの細胞の初期曝露から少なくとも約12日間存在する。特定の実施形態では、1つまたはそれを超える脊髄前駆体マーカーは、HOXB4、ISL1およびNKX6.1からなる群より選択される。
【0038】
特定の実施形態では、幹細胞はヒト幹細胞である。特定の実施形態では、幹細胞は多能性幹細胞である。特定の実施形態では、多能性幹細胞は、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。特定の実施形態では、前記ヒト幹細胞は、ヒト胚性幹細胞、ヒト人工多能性幹細胞、ヒト単為生殖幹細胞、始原生殖細胞様多能性幹細胞、胚盤葉上層幹細胞およびFクラス多能性幹細胞およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。特定の実施形態では、幹細胞はNSCである。特定の実施形態では、幹細胞はロゼット型NSCである。特定の実施形態では、幹細胞はLT-NSCである。
【0039】
本開示の主題はさらに、少なくとも約10%の1つもしくはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーおよび/または1つもしくはそれを超える星状細胞マーカーを発現するインビトロ分化細胞の集団であって、本明細書に開示される方法により得られる集団を提供する。本開示の主題はさらに、前記細胞集団を含む組成物を提供する。特定の実施形態では、組成物は医薬組成物である。
【0040】
さらに、本開示の主題は、幹細胞の分化を誘導するためのキットを提供する。特定の実施形態では、キットは、以下:(a)TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビター、(b)1つまたはそれを超えるBMPインヒビター;(c)1つまたはそれを超えるNFIAアクチベーター;(d)LIF、1つもしくはそれを超えるその誘導体、類似体および/またはアクチベーター;(e)FBS、ならびに(f)1つもしくはそれを超える星状細胞マーカーおよび/または1つもしくはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーを発現する分化細胞の集団への幹細胞の分化を誘導するための指示の1つまたはそれよりも多くを含む。
【0041】
本開示の主題はさらに、インビトロ分化細胞の集団を含む組成物であって、細胞の集団の少なくとも約50%が1つまたはそれを超えるNSCマーカーを発現し、細胞の集団の約25%未満が1つまたはそれを超える幹細胞マーカーを発現する組成物を提供する。本開示の主題はまた、インビトロ分化細胞の集団を含む組成物であって、細胞の集団の少なくとも約50%が1つもしくはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーまたはグリアコンピテント細胞マーカーを発現し、細胞の集団の約25%未満が、幹細胞マーカー、NSCマーカーおよびニューロンマーカーからなる群より選択される1つまたはそれを超えるマーカーを発現する組成物を提供する。本開示の主題はまた、インビトロ分化細胞の集団を含む組成物であって、細胞の集団の少なくとも約50%が1つまたはそれを超える星状細胞マーカーを発現し、細胞の集団の約25%未満が、幹細胞マーカー、NSCマーカー、ニューロンマーカーおよびグリアコンピテントNSCマーカー/グリアコンピテント細胞マーカーからなる群より選択される1つまたはそれを超えるマーカーを発現する組成物を提供する。
【0042】
特定の実施形態では、1つまたはそれを超える幹細胞マーカーは、OCT4、NANOG、SOX2、LIN28、SSEA4およびSSEA3からなる群より選択される。特定の実施形態では、1つまたはそれを超える神経幹細胞(NSC)マーカーは、PAX6、ネスチン、SOX1、SOX2、PLZF、ZO-1およびBRN2からなる群より選択される。特定の実施形態では、1つまたはそれを超える神経幹細胞マーカーは、PAX6、SOX1、PLZFおよびZO-1からなる群より選択される。特定の実施形態では、1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーは、CD44、AQP4、SOX2およびネクチンからなる群より選択される。特定の実施形態では、1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーは、CD44およびAQP4からなる群より選択される。特定の実施形態では、1つまたはそれを超える星状細胞マーカーは、GFAP、AQP4、CD44、S100b、SOX9、NFIA、GLT-1およびCSRP1からなる群より選択される。特定の実施形態では、1つまたはそれを超えるニューロンマーカーは、Tuj1、MAP2およびDCXからなる群より選択される。
【0043】
本開示の主題はさらに、被験体における神経変性障害を処置するかまたは神経傷害による損傷、例えば被験体における虚血または脳卒中を軽減する方法を提供する。特定の実施形態では、該方法は、本明細書に記載される分化細胞集団または本明細書に記載される組成物を被験体に投与することを含む。特定の実施形態では、被験体は神経変性障害を患っており、および/または神経傷害を経験している。
【0044】
本開示の主題はさらに、神経変性障害の処置を必要とする被験体における神経変性障害を処置するための、または神経傷害による損傷を軽減するための、本明細書に記載される分化細胞集団またはそれを含む組成物を提供する。特定の実施形態では、被験体は、神経変性障害と診断されているかまたはそれを有するリスクがある。
【0045】
本開示の主題はさらに、神経変性障害を処置するための、神経傷害による損傷を軽減するための、または神経傷害による損傷、例えば脳卒中の重症度を軽減するための医薬の製造における、本明細書に記載される分化細胞集団または本明細書に記載される組成物の使用を提供する。
【0046】
特定の実施形態では、神経変性障害は、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)またはレット症候群である。
【0047】
A1.特定の非限定的な実施形態では、本開示の主題は、幹細胞を分化させるためのインビトロ方法であって、幹細胞の集団をSMADシグナリングの有効量の1つまたはそれを超えるインヒビターおよびNFIAの1つまたはそれを超えるアクチベーターに曝露して、1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーを発現する少なくとも約10%の分化細胞を含む細胞集団を得ることを含むインビトロ方法を提供する。
【0048】
A2.SMADシグナリングの該1つまたはそれを超えるインヒビターへの幹細胞の初期曝露から少なくとも約8日間、該幹細胞の該集団をNFIAの1つまたはそれを超えるアクチベーターに初期曝露する、A1に記載の方法。
【0049】
A3.検出可能レベルの該1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーが、NFIAの該1つまたはそれを超えるアクチベーターへの該細胞の該初期曝露から少なくとも約5日間存在し、必要に応じて、該1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーが、CD44、AQP4、SOX2およびネスチンからなる群より選択される、A2に記載の方法。
【0050】
A4.検出可能レベルの該1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーの存在後、複数の細胞において、機能的NFIA活性の発現レベルが減少し、その後、1つまたはそれを超える星状細胞マーカーを発現する細胞への該細胞の分化を促進するための条件下で該細胞を培養する、A3に記載の方法。
【0051】
A5.該1つまたはそれを超える星状細胞マーカーが、GFAP、AQP4、CD44、S100b、SOX9、NFIA、GLT-1およびCSRP1からなる群より選択される、A4に記載の方法。
【0052】
A6.該1つまたはそれを超える星状細胞マーカーがGFAPを含む、A5に記載の方法。
【0053】
A7.機能的NFIA活性の該発現レベルが少なくとも約90%減少する、A4に記載の方法。
【0054】
A8.NFIAの該1つまたはそれを超えるアクチベーターに曝露された該細胞が検出可能レベルの1つまたはそれを超えるニューロンマーカーを発現せず、必要に応じて、該1つまたはそれを超えるニューロンマーカーが、Tuj1、MAP2およびDCXからなる群より選択される、A1に記載の方法。
【0055】
A9.該細胞を白血病抑制因子(LIF)、1つもしくはそれを超えるその誘導体、1つもしくはそれを超えるその類似体および/または1つもしくはそれを超えるそのアクチベーターに曝露することをさらに含む、A1に記載の方法。
【0056】
A10.LIF、1つもしくはそれを超えるその誘導体、1つもしくはそれを超えるその類似体および/または1つもしくはそれを超えるそのアクチベーターへの該細胞の該初期曝露が、SMADシグナリングの該1つまたはそれを超えるインヒビターへの該細胞の該初期曝露から少なくとも約10日間である、A9に記載の方法。
【0057】
A11.SMADシグナリングの該1つまたはそれを超えるインヒビターが、形質転換成長因子ベータ(TGFβ)/アクチビン-ノーダルシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビターおよび骨形成タンパク質(BMP)シグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビターを含む、A1に記載の方法。
【0058】
A12.TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナリングの該1つまたはそれを超えるインヒビターが、SB431542、その誘導体およびその混合物からなる群より選択される化合物を含む、A11に記載の方法。
【0059】
A13.骨形成タンパク質(BMP)シグナリングの該1つまたはそれを超えるインヒビターが、LDN193189、その誘導体およびその混合物からなる群より選択される化合物を含む、A11に記載の方法。
【0060】
A14.NFIAの該1つまたはそれを超えるアクチベーターが、該幹細胞に外因的に曝露されたNFIAタンパク質を含む、A1に記載の方法。
【0061】
A15.NFIAの該1つまたはそれを超えるアクチベーターが、該幹細胞により発現される組換えNFIAタンパク質を含む、A1に記載の方法。
【0062】
A16.特定の非限定的な実施形態では、本開示の主題は、幹細胞を分化させるためのインビトロ方法であって、幹細胞の集団をSMADシグナリングの有効量の1つまたはそれを超えるインヒビターおよびウシ胎仔血清に曝露して、1つまたはそれを超える星状細胞マーカーを発現する少なくとも約10%の分化細胞を含む細胞集団を得ることを含むインビトロ方法を提供する。
【0063】
A17.該ウシ胎仔血清への該細胞の該初期曝露から少なくとも約30に、該幹細胞を前記細胞集団に分化させる、A16に記載の方法。
【0064】
A18.該幹細胞がヒト幹細胞である、上記方法のいずれかに記載の方法。
【0065】
A19.該幹細胞が多能性幹細胞である、上記方法のいずれかに記載の方法。
【0066】
A20.該幹細胞が、ヒト胚性幹細胞、ヒト人工多能性幹細胞、ヒト単為生殖幹細胞、始原生殖細胞様多能性幹細胞、胚盤葉上層幹細胞およびFクラス多能性幹細胞からなる群より選択される、上記方法のいずれかに記載の方法。
【0067】
A21.特定の非限定的な実施形態では、本開示の主題は、多能性幹細胞を分化させるためのインビトロ方法であって、1つまたはそれを超えるグリアコンピテント神経幹細胞マーカーを発現する細胞の集団をNFIAの有効量の1つまたはそれを超えるアクチベーターに曝露して、1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーを発現する少なくとも約10%の分化細胞を含む細胞集団を得ることを含むインビトロ方法を提供する。
【0068】
A22.検出可能レベルの該1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーが、NFIAの該1つまたはそれを超えるアクチベーターへの該細胞の該初期曝露から少なくとも約5日間存在し、必要に応じて、該1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーが、CD44、AQP4、SOX2およびネスチンからなる群より選択される、A21に記載の方法。
【0069】
A23.検出可能レベルの該1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーが複数の細胞により発現された後、該複数の細胞において、機能的NFIA活性の発現レベルが減少し、その後、1つまたはそれを超える星状細胞マーカーを発現する細胞への該細胞の分化を促進するための条件下で該細胞を培養する、A22に記載の方法。
【0070】
A24.該1つまたはそれを超える星状細胞マーカーが、GFAP、AQP4、CD44、S100b、SOX9、NFIA、GLT-1およびCSRP1からなる群より選択される、A23に記載の方法。
【0071】
A25.特定の非限定的な実施形態では、本開示の主題は、1つもしくはそれを超える星状細胞マーカーおよび/または1つもしくはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーを発現する少なくとも約10%のインビトロ分化細胞を含む細胞集団であって、必要に応じて、A1~24のいずれか一項に記載の方法により得られる細胞集団を提供する。
【0072】
A26.特定の非限定的な実施形態では、本開示の主題は、A25に記載の細胞集団を含む組成物であって、必要に応じて、医薬組成物である組成物を提供する。
【0073】
A27.特定の非限定的な実施形態では、本開示の主題は、被験体における神経変性障害を処置するかまたは神経傷害による損傷を軽減する方法であって、有効量のA25に記載のインビトロ分化細胞の集団またはA26に記載の組成物を、それを必要とする被験体に投与することを含む方法を提供する。
【0074】
A28.該被験体が、神経変性障害と診断されているかまたはそれを有するリスクがある、A27に記載の方法。
【0075】
A29.該神経変性障害が、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)およびレット症候群からなる群より選択される、A28に記載の方法。
【0076】
A30.特定の非限定的な実施形態では、本開示の主題は、神経変性障害を処置するためのまたは神経傷害による損傷を軽減するための医薬の製造における、A25に記載のインビトロ分化細胞の集団またはA26に記載の組成物の使用を提供する。
【0077】
A31.特定の非限定的な実施形態では、本開示の主題は、幹細胞の分化を誘導するためのキットであって、
(a)形質転換成長因子ベータ(TGFβ)/アクチビン-ノーダルシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビター、
(b)BMPシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビター;
(c)NFIAの1つまたはそれを超えるアクチベーター;
(d)LIF、その誘導体、その類似体および/またはそのアクチベーター;ならびに
(e)1つもしくはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーおよび/または1つもしくはそれを超える星状細胞マーカーを発現する少なくとも約10%の分化細胞を含む細胞集団への該幹細胞の分化を誘導するための指示
の1つまたはそれよりも多くを含むキットを提供する。
【0078】
A32.特定の非限定的な実施形態では、本開示の主題は、A25に記載の細胞集団を含むキットを提供する。
4.図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0079】
図1-1】図1A~1Hは、二重SMAD阻害が、長期自己再生ロゼット型ヒト胚性幹細胞(ESC)由来神経幹細胞(LTNSC)の非常に均一な神経幹細胞集団を生成したことを示す。(A)LTNSCを生成するための分化戦略の概略図。hESCをLTNSCに分化させるために使用した二重SMAD培養プロトコールの説明であり、hESCを神経幹細胞(NSC)に分化させ、続いて、FGF2/EGFで培養した。(B)LTNSCの形態は、非常に初期の神経外胚葉に似ている。(C)グリアコンピテントNSC(NSCEGF/FGF)と比較したLTNSC(p20)におけるSOX2、ネスチン、SOX1、ZO-1およびPLZFの免疫蛍光。LTNSCは、神経幹細胞(NSC)マーカーSOX2、ネスチンおよびSOX1を発現し、PLZFおよび限局性発現のZO-1(ロゼットまたは初期NSC発生のマーカー)も発現する。(D)局所マーカーFOXG1およびOTX2について、LTNSC(p3およびp20)およびNSCEGF/FGFの免疫蛍光染色。LTNSCの持続培養は、前脳マーカーOTX2およびFOXG1、続いて(E)より尾側および腹側のマーカー、例えばそれぞれGBX2およびNKX2.1の発現の増加をもたらした。(E)LTNSC(p20)におけるさらなる局所マーカーの定量的PCR分析の棒グラフ。(F)LTNSCおよびグリアコンピテントNSCの分化中のβIII-チューブリンおよびGFAPの免疫蛍光。LTNSCの持続培養は、ニューロンマーカーTUJ1を発現するニューロンへの分化をもたらした。(G)LTNSC(p30)におけるSOX2、NES、ZO-1、β-チューブリンおよびPLZFの免疫蛍光。(H)CD44、NFIA、GFAP、AQO4、SOX2、ネスチンおよびTUJ1の免疫蛍光は、LTNSCが非常に均一な集団であることを示す。
図1-2】同上
図1-3】同上
図1-4】同上
【0080】
図2図2A~Bは、(A)LTNSCは幹細胞マーカーSOX2およびネスチンを発現するが、グリアコンピテンシーマーカー(すなわち、星状細胞前駆体マーカー)CD44、GFAPおよびAQP4または神経マーカー(neural marker)TUJ1を発現しないことを示す。(B)LTNSCを異なる因子で14日間処理するときの、βIII-チューブリンおよびGFAPの免疫蛍光。グリア形成分子LIF、BMP4またはFBSを含有する培地におけるLTNSCの培養は、星状細胞マーカーGFAPではなくニューロンマーカーTUJ1の発現を増加させた。
【0081】
図3-1】図3A~3B。血清因子は、ヒトNSCからのグリア形成の開始を加速する。(A)NSC分化の分化戦略および時間経過分析を示す図。(B)1%FBSで30日間処理した後のGFAP、MAP2およびAQP4::H2B GFPの免疫蛍光分析。スケールバーは50μmである。
図3-2】図3C~3E。(C)NSC分化の分化戦略および時間経過分析を示す図。(D)は、FBSで神経ロゼットまたはLTNSCを長期約30日間培養することにより、成長因子、Notchインヒビター、LIFまたはBMP4なしの培養と比較して、グリアコンピテンシーマーカーAQP4およびGFAPの発現が増加したことを示す。(E)加えて、FBS処理細胞はまた、他の処理と比較して、より高いレベルのグリア形成因子SOX9およびNFIAを発現した。
【0082】
図4図4A~Cは、(A)NFIA cDNAを含むドキシサイクリン誘導性ベクターによるLTNSCのウイルス感染により、NFIAの過剰発現が達成されたことを示す。(B)7日間のドキシサイクリン処理後、NFIA誘導細胞がCD44を発現した細胞集団では、大きな形態学的変化があった。FBSで細胞を培養した場合、星状細胞マーカーGFAPの発現が観察された。(C)NFIAの誘導発現を中断した後、LIF、BMP4およびFBSで細胞を培養することにより、特にFGF2の非存在下で、GFAPの発現が増強された。
【0083】
図5図5は、NFIAがグリアコンピテンシーの獲得を可能にしたが、グリア分化に対して阻害的であったことを示す。FBSの非存在下におけるNFIA発現の増加は、星状細胞マーカーGFAPの発現を増加させなかった。しかしながら、その後のNFIA発現の減少およびLIFによる培養は、GFAPの発現を増加させた。
【0084】
図6-1】図6A~6Iは、NFIAがグリアコンピテンシーの獲得を可能にしたが、グリアコンピテンシー状態を維持することができないことを示す。(A)継続的なドキシサイクリンまたはドキシサイクリン除去で処理したCD44発現細胞のFACSプロットは、ドキシサイクリン除去後にCD44発現が喪失することを実証する。(B)NSC、NFIA誘導NSC、およびドキシサイクリン除去を伴うNFIA誘導NSCにおけるNFIA、GFAPおよびTUBB3の免疫蛍光染色。(C)NFIAで誘導し、グリアコンピテンシーを獲得し、次いで、ドキシサイクリンの中止によりグリア非コンピテンシーに戻る細胞の概略図。(D)Cに表されている時間経過に沿ったNFIA発現の定量的PCRデータ。(E)Cに関連する異なる時点におけるNSCのRNA発現のサンプル距離プロット。(F)グリアコンピテントNSC(gcNSC)およびhPSC由来星状細胞(200日間のインビトロ培養)と比較したクロマチンアクセシビリティのサンプル距離プロット。(G)いくつかのNSCサンプルにおけるクロマチンアクセシビリティの欠如を示すGFAP遺伝子座のATAC-seq追跡の例。(H)GFAPプロモーターのプロモーター領域のバイサルファイトシーケンシングは、NFIAの過剰発現から生じるCD44陽性細胞が、GFAPプロモーター上の特定のCpGの脱メチル化をもたらすことを示唆する。エラーバーはS.E.M.により計算される。(I)ニューロン形成状態では、GFAPプロモーターがメチル化されることを示す概略図
図6-2】同上
図6-3】同上
図6-4】同上
図6-5】図6J~6K。(J)NFIA発現の増加は、CD44発現(グリアコンピテント細胞のマーカー)の対応する増加を誘導した。(K)ニューロン形成細胞におけるGFAP発現は、STAT3 CpG部位のメチル化により遮断されるが(矢印)、グリア細胞ではこの部位は脱メチル化され(矢頭)、ここで、GFAPが発現される。NFIAにより誘導したCD44+細胞では、STAT3 CpG部位は脱メチル化される(矢頭)。
図6-6】図6L~6Q。(L)明視野は、継続的なドキシサイクリンまたはドキシサイクリン除去で処理した細胞の形態を示す。(M)NSC、NFIA誘導NSC、およびドキシサイクリン除去を伴うNFIA誘導NSCにおけるDAPI、GFAPおよびNFIAの免疫蛍光染色。(N)継続的なドキシサイクリンまたはドキシサイクリン除去で処理したCD44発現細胞のFACSプロットは、ドキシサイクリン除去後にCD44発現が喪失することを実証する。(O)NSC、NFIA誘導NSC、およびドキシサイクリン除去を伴うNFIA誘導NSCにおけるDAPI、GFAP、NFIA、AQP4およびCD44の免疫蛍光染色。(P)LTNSC、ドキシサイクリン除去を伴うNFIA誘導NSC、およびドキシサイクリンが継続的に存在するNFIA誘導NSCにおけるDAPI、NFIAおよびTUJ1の免疫蛍光染色。LTNSCは、継続的なNFIA活性化後に神経形成能を再獲得する。(Q)(F)に関連するNFIA過剰発現トップモチーフおよび星状細胞トップモチーフ。
図6-7】同上
図6-8】同上
【0085】
図7図7は、ドキシサイクリンの制御下で組換えNFIA誘導性hESC系を星状細胞に培養するための戦略を示しており、ここで、二重SMAD阻害で細胞を培養して神経幹細胞を生成し、続いて、NFIA発現が増加し、CD44およびGFAPを発現するグリアコンピテント細胞の分化が誘導され、続いて、NFIA発現がダウンレギュレートされ、LIFで培養し、GFAP、CD44およびAQP4を発現する星状細胞への細胞の分化が誘導される。
【0086】
図8-1】図8A~8B。NFIA誘導星状細胞の生成のためのプロトコールの非制限的な例。(A)一過性NFIA発現を使用してNSCから星状細胞を誘導するためのプロトコールと、(B)hPSCからの現在の長期グリア分化戦略の概要とを比較した概略図。
図8-2】図8C~8Eは、(C)FBSで細胞を培養することにより幹細胞(LTNSC)を星状細胞に分化させるか、または(D)LIFによる培養と組み合わせてNFIAの発現をモジュレートするためのプロトコールの非限定的な例を示す。(E)NFIA誘導星状細胞の生成のためのプロトコールの非制限的な例。
図8-3】同上
【0087】
図9図9A~9Cは、(B)野生型星状細胞とのoMNの培養は、SOD1A4V星状細胞との培養と比較して、運動ニューロンの生存を増加させたが、野生型星状細胞は、SOD1A4V星状細胞と比較してsMNの細胞死を減少させたことを示す。(A)培養プロトコールの概略図。(C)VACHT+細胞の免疫蛍光染色。
【0088】
図10-1】図10A~10L。神経上皮幹細胞におけるNFIAの一過性発現は、グリアコンピテンシーを与える。(A)血清条件で30日間処理したグリアコンピテンシーに関連する候補遺伝子の定量的PCR(n=3)、p値<0.01(NFIA)およびp値<0.015(LIN28B)を、血清およびN2を比較する対応のあるt検定を使用して計算した。(B)NFIAの過剰発現は、黄色矢頭によりマークされた5日間のドキシサイクリン処理内に顕著な形態学的変化をもたらす。(C)ドキシサイクリンで5日間処理したNSCにおけるNFIA(赤色)、GFAP(緑色)およびCD44(遠赤色)の免疫蛍光染色。(D)ドキシサイクリンで5日間処理したNSCにおけるAQP4-H2B-GFPレポーターおよびSOX2の免疫蛍光染色。(E)ドキシサイクリンで5日間処理し、続いてさらに3日間および5日間除去したか、または継続的に処理(+dox)したNSCにおけるGFAPおよびNFIA発現の定量的PCR分析(n=2)。(F)NFIAで一過性誘導し、続いてFGF2またはLIF含有培地中で維持したNSCにおけるGFAPの免疫蛍光染色。G、代表的な星状細胞の明視野画像(CD44選別の60日後)。(H)60日目の(d60)星状細胞培養物におけるGFAPおよびSLC1A2の免疫蛍光染色。(I)NSC、ニューロン、星状細胞およびNFIA誘導星状細胞由来の希突起膠細胞に関連する遺伝子の定量的PCR分析(n=2)。(J)初代ヒト星状細胞を用いて複数回誘導および継代したNFIA誘導星状細胞における、胎児および成体星状細胞に関連する遺伝子の定量的PCR分析(n=2)。スケールバーは50μmである。エラーバーはS.E.M.により計算される。(K)ドキシサイクリンで4日間処理したNSCにおけるNFIA(赤色)、GFAP(緑色)およびCD44(遠赤色)の免疫蛍光染色。(L)ドキシサイクリンで5日間処理したNSCにおけるAQP4-H2B-GFPレポーター、SOX、NIFAおよびGFAPの免疫蛍光染色。
図10-2】同上
図10-3】同上
図10-4】同上
【0089】
図11-1】図11A~11K。NFIA誘導星状細胞は機能的である。(A)単独で培養した、またはNFIA誘導星状細胞と共培養したニューロンの免疫蛍光染色。(B)星状細胞ありまたはなしで培養したニューロンにおける成熟度のマーカー(MUNC13.1およびシナプシンI)のウエスタンブロット分析。(C)Bと同様の培養物におけるグルタミン酸興奮毒性アッセイ後の細胞生存を表す棒グラフ。t検定(n=3)で計算したP値(p値<0.0001)およびエラーバーは、S.E.M.により計算される。(D)IL1α、TNFおよびC1qで24時間処理したNFIA誘導または初代星状細胞から放出された補体(C3)の量を表す棒グラフ(n=2)。(E)Fura-2カルシウム色素と共にインキュベートし、ATP、KClおよびグルタメートで刺激した精製NFIA誘導星状細胞(60日間)のレシオメトリックプロット。すべてのデータポイントは、下のヒートマップとしてプロットされている。(F)星状細胞のみの培養物(赤色)およびニューロンと共培養した星状細胞(青色)におけるAQP4-H2B-GFP強度のFACSヒストグラム(GFP陰性画分は、下のヒストグラムにプロットされている)。(G)Fura-2カルシウム色素と共にインキュベートし、ATP、KClおよびグルタメートで刺激したニューロンと共培養したNFIA誘導星状細胞のレシオメトリックプロット。GFP陽性核において比を計算した。すべてのデータポイントは、下のヒートマップとしてプロットされている。(H)(E)Fに示されているデータおよび拡張データ図7からの、ATP、KClまたはグルタメートに反応する星状細胞の数の定量。(I)マウス皮質に移植したNFIA誘導グリア前駆体の免疫蛍光は、脳梁を介した移動を示す。スケールバー50μm(J)NFIA誘導星状細胞の免疫蛍光は、AQP4-H2B-GFP、GFAPおよびヒト特異的マーカーSC-121の共発現を実証する。スケールバー10μm。(K)長いヒト星状細胞突起の免疫蛍光画像。スケールバー5μm。
図11-2】同上
図11-3】同上
【0090】
図12-1】図12A~12N。NFIAは、より遅いG1細胞周期相を誘導して、グリアコンピテンシーを誘導する。(A)時間経過中の遺伝子の不偏階層的クラスタリングであり、3つの主要なクラスタが強調されている。(B)Aに表されている各クラスタからの重要な生物学的プロセスの遺伝子オントロジー分析。(C)すべての遺伝子および細胞周期オントロジーに特異的な遺伝子のグローバル分析。超幾何分布を使用して計算したP値。(D)時間経過中のすべての細胞分裂周期(CDC)遺伝子の発現動力学のグラフ。(E)7日間のdoxありまたはなしでのNSCにおけるFACSによる細胞周期分析。(F)7日間のdoxありまたはなしでのLTNSCにおけるCCNA1およびCDKN1Aのウエスタンブロット分析。(G)NFIA過剰発現の存在下におけるshFZR1のノックダウン効率を評価する定量的PCR(n=3)。(H)FZR1に対するshRNAありまたはなしでの細胞周期相の分析。(I)shFZR1ありまたはなしでのNFIA誘導細胞におけるCD44発現の定量的PCR分析(n=3)。(J)LIFでさらに誘導した以外はIと同様のNFIA誘導細胞におけるGFAP発現の定量的PCR分析(n=2)。(K)様々なレベルのTGFβ1で7日間誘導した場合のNFIAのウエスタンブロット分析。(L)TGFβ1ありまたはなしで48時間処理したNSCにおけるFACSによる細胞周期分析。(M)TGFβ1ありまたはなしで14日間処理した培養物におけるNFIAおよびGFAPの免疫蛍光染色。(N)NFIA誘導グリアコンピテンシーのモデル。スケールバーは50μmである。
図12-2】同上
図12-3】同上
図12-4】同上
図12-5】同上
【0091】
図13-1】図13A~13I。アクアポリン-4ノックインhESCレポーター系の生成および特性評価。(A)H2B-GFPレポーター系をAQP4遺伝子座に組み込むためのノックイン戦略の概略図。(B)ヘテロ接合性ノックインのゲノムPCR確認。(D)AQP4-H2B-GFP hESCにおけるOCT4およびSOX2の免疫蛍光。(C)AQP4-H2B-GFP系としてのPLZFおよびPAX6の免疫蛍光は、神経外胚葉に向けて分化する。(E)長期培養では、AQP4-H2B-GFP系としてのAQP4およびGFPの免疫蛍光は、星状細胞に向けて分化する。(F)GFPおよびβIII-チューブリンの免疫蛍光以外は(E)と同じ。GFPおよびGFAPの免疫蛍光以外は(E)と同じ。(H)GFPおよびSOX2の免疫蛍光の(E)と同様。スケールバーは50μmである。(I)100日間を超える培養では、AQP4-H2B-GFP系としてのAQP4およびGFPの明視野および免疫蛍光は、星状細胞に向けて分化する。
図13-2】同上
【0092】
図14図14A~14D。LIFは、星状細胞への効率的な分化を促進する。(A)BMP4および1%FBSでNFIA誘導細胞を処理した後のGFAP発現の免疫蛍光分析。(B、C)NFIA誘導後にFGF2/EGF、FGF2、HB-EGF、BMP4、1%FBSおよびLIFで処理した際のNFIA発現およびAQP4-H2B-GFPレポーターシグナルの免疫蛍光染色。スケールバーは100μmである。(D)LTNSC段階では、NFIAおよび他のグリア関連タンパク質は存在しない。
【0093】
図15-1】図15A~15D。NFIA誘導は、前脳および脊髄パターン形成NSCに適用可能である。(A、C)神経外胚葉へのいくつかのhPSCの分化後(多能性から10日目)の前部マーカーOTX2、FOXG1、PAX6ならびに後部マーカーHOXB4、FOXA2およびNKX6.1の定量的PCR測定。(B)NFIAのNFIA一過性発現後(多能性から18日目)のOTX2、NFIAおよびGFAPの免疫蛍光。エラーバーはS.E.M.により計算される(D)異なる局所パターン形成前駆体から星状細胞を誘導するためのプロトコールの非限定的な例。
図15-2】同上
図15-3】同上
【0094】
図16図16A~16F。初代星状細胞、hPSC由来前駆体および星状細胞のカルシウムイメージング。(A)AQP4-H2B-GFPレポーター系に由来する後期NSC集団の明視野およびGFP画像。(B)KCl、グルタメートおよびATPで処理したhPSC由来NSCのカルシウムイメージングの時間経過であり、各灰色線は個々の細胞トレースを表す。黒色線は平均シグナルを表す。(C)AQP4::H2B-GFP選別星状細胞の明視野およびGFP画像。(D)hPSC由来星状細胞を用いた以外は(B)と同様(120日目)。(E)特定の刺激に反応する細胞の数の定量。(F)市販の初代星状細胞を用いた以外は(B)と同様。各線は細胞を表す(上)。ヒートマップ形式で分析したすべての細胞のヒートマップ(下)。
【0095】
図17-1】図17A~17C。ATAC-seqモチーフ分析は、NFIモチーフの富化を示す。(A)継続的なドキシサイクリン(dox)処理の(左)またはdoxを除去した後の(右)LTNSCにおけるNFIAおよびGFAPの免疫蛍光染色。スケールバーは50μmである。B.ATAC-seqは、オープンクロマチンを示すSOX2遺伝子座を追跡する。C.4つの条件におけるATAC-seqピークのモチーフ分析;X軸の値は-log10p値を表す。バイサルファイトシーケンシングのためのFACS分析ならびにCD44陽性および陰性画分の選別。スケールバーは50μmである。
図17-2】同上
【0096】
図18図18A~18B。一過性NFIA活性化中のグループIおよびIIクラスタの分析。(A)グループIは、胎児星状細胞のマーカーに関連する遺伝子発現の変化を強調する。(B)成長因子関連遺伝子の誘導に関連する遺伝子発現の変化を強調するグループII。
【0097】
図19図19A~19B。サイクリン関連遺伝子の遺伝子発現の変化。(A)一過性NFIA活性化中のサイクリン遺伝子の発現パターンを示す棒グラフ。(B)NFIA過剰発現によるCCNA1アップレギュレーションの定量的PCR検証(n=3)。
【0098】
図20図20A~20E。NFIAの滴定による星状細胞分化能の変化。(A)分化の時間経過にわたるNFIA発現の定量的PCR(n=2)。(B)FUCCI-Oレポーター構築物を使用した、LTNSCおよびNFIAで誘導したLTNSCのG1タイミング分析。(C)5日間のdox滴定中の細胞周期プロファイルの棒グラフ。(D)NFIA発現の滴定中のNFIA、CD44およびGFAPの発現の定量的PCR(n=3)。(E)10日後に様々な濃度のdoxで処理したLTNSCにおけるGFAPおよびNFIA発現の免疫蛍光。スケールバーは50μmである。エラーバーはS.E.M.により計算される
【0099】
図21図21A~21F。オロモウシンにより化学的に誘導したG1延長は、グリアコンピテント遺伝子発現をアップレギュレートすることができる。(A)オロモウシンで処理したG1期の細胞の割合のFACS分析。(B)48時間後にオロモウシンで処理した後のNFIA、CD44およびS100βの定量的PCR分析(n=2)。(C)オロモウシンありまたはなしでLTNSCを12日間処理した後のNFIA、CD44およびS100β発現の定量的PCR分析(n=3)。(D)12日後にLIFおよびオロモウシンで処理した細胞におけるGFAPの免疫蛍光染色。(E)1%FBSで処理したLTNSCのFACS分析は、G1停止を実証する。(F)オロモウシンありまたはなしでFBS処理したLTNSCにおけるNFIAおよびCD44の免疫蛍光染色。スケールバーは50μmである。エラーバーはS.E.M.5により計算される。
【発明を実施するための形態】
【0100】
詳細な説明
本明細書に記載される本開示の主題は、グリアコンピテント細胞(例えば、「星状細胞前駆体」)および/または幹細胞由来星状細胞を調製する方法、ならびにこのような細胞を産生するための方法に関する。神経変性障害を処置するためのこのような細胞の使用も提供される。
【0101】
本開示を、制限することなく明らかにする目的で、詳細な説明を、以下の小区分に分ける。
5.1 定義
5.2 幹細胞を分化させる方法
5.3 局所星状細胞への幹細胞のインビトロ分化
5.4 分化細胞集団を含む組成物
5.5 神経変性障害を予防および/または処置する方法 および
5.6 キット
5.1 定義
【0102】
本明細書で使用される用語は、一般に、それぞれの用語が使用される本発明の文脈内および特定の文脈において、当技術分野におけるそれらの通常の意味を有する。本発明の組成物および方法、ならびにそれらをどのように作製し使用するかについての説明により、実務者に追加の指針を提供するための特定の用語を、以下または本明細書の他所で論じる。
【0103】
「約」または「およそ」という用語は、当業者により決定される特定の値について許容され得る誤差範囲内であることを意味し、この範囲は、部分的に、値がどのように測定または決定されるか、すなわち測定系の限界に応じて決まる。例えば、「約」は、当技術分野の実施にしたがって、標準偏差の3倍以内または3倍超を意味し得る。あるいは、「約」は、所定の値の20%まで、例えば10%まで、5%まで、または1%までの範囲を意味し得る。あるいは、特に生物系またはプロセスに関して、この用語は、値のある桁以内、例えば5倍以内または2倍以内であることを意味し得る。
【0104】
本明細書で使用される場合、「神経幹細胞」または「NSC」という用語は、ニューロン形成性であり、グリア形成スイッチを受けていない幹細胞を指す。特定の実施形態では、NSCはロゼット期神経幹細胞である。特定の実施形態では、NSCは長期NSC(LTNSC)である。特定の実施形態では、NSCは1つまたはそれを超える神経幹細胞マーカーを発現する。神経幹細胞マーカーの非限定的な例としては、PAX6、ネスチン、SOX1、SOX2、PLZF、ZO-1およびBRN2が挙げられる。特定の実施形態では、神経幹細胞マーカーは、PAX6、SOX1、PLZF、ZO-1およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0105】
本明細書で使用される場合、「LTNSC」または「LT-hESCNSC」という用語は、長期自己再生ロゼット型ヒト胚性幹細胞(ESC)由来神経幹細胞を指す)。LTNSCの形態は、非常に初期の神経外胚葉に似ている。LTNSCは、いくつかの神経幹細胞(NSC)マーカー、例えばSOX2、ネスチンおよびSOX1を発現するが、PLZFも発現し、ZO-1の限局性発現を示すが、これは、ロゼットまたは初期NSC性質を示す。
【0106】
本明細書で使用される場合、「グリアコンピテンス」という用語は、グリア分化に方向付けられたNSCのコンピテンスを指す。
【0107】
本明細書で使用される場合、「グリアコンピテント細胞」という用語は、グリア形成スイッチを受けており、グリアコンピテンスを有している細胞を指す。特定の実施形態では、グリアコンピテント細胞は、1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーを発現する。グリアコンピテント細胞マーカーの非限定的な例としては、CD44、AQP4、SOX2およびネクチンが挙げられる。特定の実施形態では、グリアコンピテント細胞マーカーは、CD44、AQP4およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。特定の実施形態では、グリアコンピテント細胞は星状細胞前駆体である。
【0108】
本明細書で使用される場合、「シグナル伝達タンパク質」に関する「シグナリング」という用語は、膜受容体タンパク質とのリガンドの結合またはいくらかの他の刺激により活性化されるか、または他の方式で影響を受けるタンパク質を指す。シグナル伝達タンパク質の例としては、限定されないが、SMAD、形質転換成長因子ベータ(TGFβ)、アクチビン、ノーダル、骨形成(BMP)およびNFIAタンパク質が挙げられる。多くの細胞表面受容体または内部受容体タンパク質については、リガンドと受容体の相互反応は、細胞の応答に直接関係しない。リガンドにより活性化された受容体は、最初に、細胞内部の他のタンパク質と相互反応することができ、その後、細胞の挙動に対するリガンドの最終的な生理的効果が生じる。しばしば、相互反応する一連のいくつかの細胞タンパク質の挙動が、受容体の活性化または阻害後に変わる。受容体の活性化により誘導された一連の細胞変化の全体は、シグナル伝達機構またはシグナリング経路と称される。
【0109】
本明細書で使用される場合、「シグナル」という用語は、細胞の構造および機能の変化を制御する、内部および外部の因子を指す。それらは、化学的または物理的性質であり得る。
【0110】
本明細書で使用される場合、「リガンド」という用語は、受容体に結合する分子およびタンパク質、例えば、形質転換成長因子-ベータ(TFGβ)、アクチビン、ノーダル、骨形成タンパク質(BMP)などを指す。
【0111】
本明細書で使用される場合、「インヒビター」は、分子または経路のシグナリング機能を妨害する(例えば、低減、低下、抑制、排除、または遮断する)、化合物または分子(例えば、小分子、ペプチド、ペプチド模倣物、天然化合物、siRNA、アンチセンス核酸、アプタマー、または抗体)を指す。インヒビターは、命名されたタンパク質(シグナリング分子、命名されたシグナリング分子に関与する任意の分子または命名された関連分子)(例えば、限定されないが、本明細書に記載されるシグナリング分子を含む)の任意の活性を変化させる、任意の化合物または分子であり得る。一例として、SMADシグナリングのインヒビターは、例えば、SMADと直接接触し、SMAD mRNAと接触し、SMADのコンフォメーション変化を引き起こし、SMADタンパク質レベルを低下させ、またはシグナリングパートナーとのSMADとの相互反応を妨害し、SMAD標的遺伝子の発現に影響を及ぼすことにより機能し得る。またインヒビターには、上流シグナリング分子(例えば、細胞外ドメイン内)を遮断することによりSMAD生物活性を間接的に調節する分子が含まれる。SMADシグナリングインヒビター分子および効果の例としては、骨形成タンパク質を隔離し、ALK受容体1、2、3および6の活性化を阻害し、したがって下流SMAD活性化を防止するノギンが挙げられる。同じく、コーディン、ケルベロス、フォリスタチンも同様に、SMADシグナリングの細胞外アクチベーターを隔離する。膜貫通タンパク質であるBambiも、細胞外TGFβシグナリング分子を隔離する疑似受容体として作用する。アクチビン、ノーダル、TGFβ、およびBMPを遮断する抗体は、SMADシグナリングなどの細胞外アクチベーターを中和するための使用を企図される。先の例は、SMADシグナリング阻害に関するが、他のシグナリング分子を阻害するために、同様または類似の機構を使用することができる。インヒビターの例としては、限定されないが、SMADシグナリング阻害のためのLDN193189(LDN)およびSB431542(SB)(LSB)が挙げられる。
【0112】
インヒビターは、命名された分子の阻害もまた引き起こす命名されたシグナリング分子から上流にある分子に結合し、影響を及ぼすことにより誘導される阻害に加えて、競合的阻害(別の公知の結合化合物の結合を排除または低減するような方式で、活性部位に結合する)およびアロステリック阻害(タンパク質の活性部位への化合物の結合を妨害するような方式で、タンパク質コンフォメーションを変化させる方式でタンパク質に結合する)に関して説明される。インヒビターは、実際にシグナリング標的と接触することにより、シグナリング標的またはシグナリング標的経路を阻害する「直接的インヒビター」であり得る。
【0113】
本明細書で使用される場合、「アクチベーター」は、タンパク質もしくは分子の活性化、またはタンパク質、分子もしくは経路のシグナリング機能、例えば、NFIA転写因子活性の活性化を増大し、誘導し、刺激し、活性化し、容易にし、または増強する化合物を指す。
【0114】
本明細書で使用される場合、「誘導体」という用語は、類似のコア構造を有する化合物を指す。
【0115】
本明細書で使用される場合、「細胞の集団」または「細胞集団」という用語は、少なくとも2個の細胞の群を指す。非限定的な例では、細胞集団は、少なくとも約10個、少なくとも約100個、少なくとも約200個、少なくとも約300個、少なくとも約400個、少なくとも約500個、少なくとも約600個、少なくとも約700個、少なくとも約800個、少なくとも約900個、少なくとも約1000個の細胞、少なくとも約5,000個の細胞または少なくとも約10,000個の細胞または少なくとも約100,000個の細胞または少なくとも約1,000,000個の細胞を含み得る。集団は、1種の細胞型を含む純粋な集団、例えばグリアコンピテント細胞(例えば、星状細胞前駆体)の集団、または未分化幹細胞の集団であり得る。あるいは、集団は、1種を超える細胞型、例えば混合細胞集団を含み得る。
【0116】
本明細書で使用される場合、「幹細胞」という用語は、培養で無期限に分裂し、専門化した細胞を生じる能力を有する細胞を指す。ヒト幹細胞は、ヒト由来の幹細胞を指す。
【0117】
本明細書で使用される場合、「胚性幹細胞」という用語は、培養による長期間にわたる分化なしに分裂することができ、3つの一次胚葉の細胞および組織へと発生することが公知の、着床前段階の胚から誘導される初期(primitive)(未分化)細胞を指す。ヒト胚性幹細胞は、ヒト由来の胚性幹細胞を指す。本明細書で使用される場合、「ヒト胚性幹細胞」または「hESC」という用語は、培養による長期間にわたる分化なしに分裂することができ、3つの一次胚葉の細胞および組織へと発生することが公知の、胚盤胞段階までを含む初期段階のヒト胚から誘導されるタイプの多能性幹細胞を指す。
【0118】
本明細書で使用される場合、「胚性幹細胞系」という用語は、数日間、数カ月間から数年間まで、分化なしに増殖を可能にするインビトロ条件下で培養された、胚性幹細胞集団を指す。例えば、「胚性幹細胞」は、培養による長期間にわたる分化なしに分裂することができ、3つの一次胚葉の細胞および組織へと発生することが公知の、着床前段階の胚から誘導される初期(未分化)細胞を指し得る。ヒト胚性幹細胞は、ヒト由来の胚性幹細胞を指す。本明細書で使用される場合、「ヒト胚性幹細胞」または「hESC」という用語は、培養による長期間にわたる分化なしに分裂することができ、3つの一次胚葉の細胞および組織へと発生することが公知の、胚盤胞段階までを含む初期段階のヒト胚から誘導されるタイプの多能性幹細胞を指す。
【0119】
本明細書で使用される場合、「多能性」という用語は、内胚葉、中胚葉、および外胚葉を含む、生物の3種の発生上の胚葉へと発生する能力を指す。
【0120】
本明細書で使用される場合、「人工多能性幹細胞」または「iPSC」という用語は、特定の胚性遺伝子(例えば、OCT4、SOX2、およびKLF4導入遺伝子)が、体細胞、例えばCI 4、C72などに導入されることにより形成された、胚性幹細胞に類似したタイプの多能性幹細胞を指す(例えば、Takahashi and Yamanaka Cell 126,663-676(2006)(これは、参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。
【0121】
本明細書で使用される場合、「体細胞」という用語は、配偶子(卵または精子)以外の体内の任意の細胞を指し、時に「成体」細胞と称される。
【0122】
本明細書で使用される場合、「体性(成体)幹細胞」という用語は、自己再生(実験室中)および分化の両方について能力が制限されている、多くの臓器および分化した組織に見出される相対的に稀な未分化細胞を指す。このような細胞は、それらの分化能が異なっているが、通常は起源臓器の細胞型に限定される。
【0123】
本明細書で使用される場合、「ニューロン」という用語は、神経系の主要な機能単位である神経細胞を指す。ニューロンは、細胞体、ならびにその突起である軸索および1つまたはそれを超える樹状突起からなる。ニューロンは、シナプスで神経伝達物質を放出することにより、他のニューロンまたは細胞に情報を伝達する。
【0124】
本明細書で使用される場合、「増殖」という用語は、細胞数の増加を指す。
【0125】
本明細書で使用される場合、「未分化」という用語は、専門化した細胞型にまだ発生していない細胞を指す。
【0126】
本明細書で使用される場合、「分化」という用語は、専門化していない胚性細胞が、心臓、肝臓または筋細胞などの専門化した細胞の特質を獲得するプロセスを指す。分化は、通常は細胞表面に埋め込まれたタンパク質を伴うシグナリング経路を介して、細胞遺伝子と細胞外側の物理的および化学的条件との相互反応により制御される。
【0127】
本明細書で使用される場合、「定方向性分化」という用語は、星状細胞およびその前駆体などの特定の(例えば、所望の)細胞型への分化を誘導するための、幹細胞の培養条件の操作を指す。特定の実施形態では、幹細胞に関する「定方向性分化」という用語は、多能性状態から、より成熟したまたは専門化した細胞の運命(例えば、星状細胞など)への幹細胞の移行を促進するための、小分子、成長因子タンパク質、および他の成長条件の使用を指す。
【0128】
細胞に関して本明細書で使用される場合、「分化を誘導する」という用語は、デフォルト細胞型(遺伝子型および/または表現型)から非デフォルト細胞型(遺伝子型および/または表現型)への変化を指す。したがって、「幹細胞の分化を誘導する」は、幹細胞(例えば、ヒト幹細胞)を、幹細胞とは異なる特徴、例えば遺伝子型(例えば、遺伝子分析、例えばマイクロアレイにより決定される遺伝子発現の変化)および/または表現型(例えば、タンパク質、例えばGFAP、AQP4、CD44、S100b、SOX9、GLT-1、CSRP1および/またはNFIAの発現の変化)を有する後代細胞に分裂するように誘導することを指す。
【0129】
本明細書で使用される場合、「培養培地」という用語は、培養容器、例えばペトリプレート、マルチウェルプレートなどの細胞をカバーし、細胞に栄養を与え、細胞を補助するための栄養分を含有する液体を指す。また培養培地は、細胞における所望の変化をもたらすために添加される成長因子を含み得る。
【0130】
本明細書で使用される場合、細胞を化合物(例えば、1つまたはそれを超えるインヒビター、アクチベーター、および/または誘導因子)と「接触させる」という用語は、細胞を化合物に曝露すること、例えば化合物を、細胞に触れさせる位置に置くことを指す。接触は、任意の適切な方法を使用して達成され得る。例えば接触は、化合物を、細胞のチューブに添加することにより達成され得る。また接触は、化合物を、細胞を含む培養培地に添加することにより達成され得る。化合物のそれぞれ(例えば、インヒビター、アクチベーターおよび/またはインデューサー)は、細胞を含む培養培地に、溶液(例えば、濃縮溶液)として添加され得る。あるいはまたはさらには、化合物(例えば、本明細書に開示されるインヒビター、アクチベーター、およびインデューサー)ならびに細胞は、調合された細胞培養培地中に存在し得る。
【0131】
有効量は、所望の効果をもたらす量である。
【0132】
本明細書で使用される場合、「インビトロ」という用語は、人工環境、および人工環境内で生じるプロセスまたは反応を指す。インビトロ環境は、限定されないが、試験管および細胞培養物により例示される。
【0133】
本明細書で使用される場合、「インビボ」という用語は、自然環境(例えば、動物または細胞)、および自然環境内で生じるプロセスまたは反応、例えば胚発生、細胞分化、神経管形成などを指す。
【0134】
遺伝子またはタンパク質に関して本明細書で使用される場合、「発現する」という用語は、マイクロアレイアッセイ、抗体染色アッセイなどのアッセイを使用して観察され得るmRNAまたはタンパク質を作製すること指す。
【0135】
本明細書で使用される場合、「マーカー」または「細胞マーカー」という用語は、特定の細胞または細胞型、例えば星状細胞またはグリアコンピテント細胞(例えば、星状細胞前駆体)を特定する遺伝子またはタンパク質を指す。細胞のためのマーカーは、1種のマーカーに限定することができず、複数のマーカーは、マーカーの指定の群により、ある細胞または細胞型を別の細胞または細胞型から同定することができるように、マーカーの「パターン」を指し得る。
【0136】
本明細書で使用される場合、「から誘導された」または「から確立された」または「から分化した」という用語は、本明細書に開示される任意の細胞に関する場合、細胞系、組織中の親細胞(例えば、解離された胚、または体液)から、任意の操作、例えば限定されないが、単一細胞単離、インビトロ培養、例えばタンパク質、化学物質、放射線、ウイルスによる感染を使用する処置および/または変異誘発、DNA配列、例えばモルフォゲンなどを用いるトランスフェクション、培養した親細胞に含有されている任意の細胞の選択(例えば連続培養による)を使用して得られた(例えば、単離された、精製されたなど)細胞を指す。誘導された細胞は、成長因子、サイトカイン、サイトカイン処置の選択された進行、接着性、接着性の欠如、ソーティング手順などに対する応答に関して、混合集団から選択され得る。
【0137】
本明細書の「個体」または「被験体」は、ヒトまたは非ヒト動物、例えば哺乳動物などの脊椎動物である。哺乳動物としては、限定されないが、ヒト、霊長類、家畜動物、スポーツ用動物、齧歯類およびペットが挙げられる。非ヒト動物被験体の非限定的な例としては、マウス、ラット、ハムスターおよびモルモットなどの齧歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ、ウマ、ならびに非ヒト霊長類、例えば類人猿およびサルが挙げられる。
【0138】
本明細書で使用される場合、「疾患」という用語は、細胞、組織または臓器の正常な機能を損なうまたは妨害する任意の状態または障害を指す。
【0139】
本明細書で使用される場合、「処置する」または「処置」という用語は、処置を受ける個体または細胞の疾患過程を変えるための臨床的な介入を指し、この処置は、予防のために、または臨床病理の過程中のいずれかに実施され得る。処置の治療効果としては、限定されないが、疾患の発生または再発の予防、症候の軽減、疾患の任意の直接的または間接的な病理学的結果の縮小、転移の予防、疾患進行速度の低下、病状の回復または緩和、および寛解または予後の改善が挙げられる。疾患または障害の進行を予防することにより、処置は、影響を受けているもしくは診断を受けた被験体、または障害を有することが疑われる被験体の障害に起因する悪化を予防することができ、障害の危険性がある、または障害を有すると疑われる被験体の障害または障害の症候の発症を予防することもできる。
【0140】
本明細書で使用される場合、「分化日(differentiation day)」という用語は、幹細胞培養物を分化分子と接触させた後の、24時間間隔を有するタイムライン(すなわち、日数)を指す。例えば、このような分子としては、限定されないが、SMADインヒビター分子およびNFIAアクチベーターが挙げられ得る。培養物を分子と接触させる日は、分化1日目と称される。例えば、分化2日目は、幹細胞培養物を分化分子と接触させた後の24時間~48時間の任意時点を表す。
5.2幹細胞の分化方法
【0141】
本開示の主題は、幹細胞の分化を誘導するためのインビトロ方法を提供する。特定の実施形態では、幹細胞はヒト幹細胞である。ヒト幹細胞の非限定的な例としては、ヒト胚性幹細胞(hESC)、ヒト多能性幹細胞(hPSC)、ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)、ヒト単為生殖幹細胞、始原生殖細胞様の多能性幹細胞、胚盤葉上層幹細胞、Fクラス多能性幹細胞、体性幹細胞、がん幹細胞、または系統特異的に分化することができる任意の他の細胞が挙げられる。特定の実施形態では、ヒト幹細胞は、ヒト胚性幹細胞(hESC)である。特定の実施形態では、ヒト幹細胞は、ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)である。特定の実施形態では、幹細胞は、非ヒト幹細胞である。非ヒト幹細胞の非限定的な例、非ヒト霊長類幹細胞、齧歯類幹細胞、イヌ幹細胞、ネコ幹細胞。特定の実施形態では、幹細胞は、多能性幹細胞である。特定の実施形態では、幹細胞は、胚性幹細胞である。特定の実施形態では、幹細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)である。特定の実施形態では、幹細胞は、限定されないが、哺乳動物幹細胞、霊長類幹細胞、または齧歯類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジなど由来の幹細胞を含む非ヒト幹細胞である。
【0142】
本開示の主題は、幹細胞由来グリアコンピテント細胞(例えば、星状細胞前駆体)および星状細胞を提供する。特定の実施形態では、星状細胞への幹細胞の分化は、3つの段階:(a)NSCへの幹細胞のインビトロ分化、(b)グリアコンピテント細胞(例えば、星状細胞前駆体)へのNSCのインビトロ分化、および(c)星状細胞へのグリアコンピテント細胞のインビトロ分化を含む。特定の実施形態では、幹細胞の集団をNSCの集団にインビトロで分化させ、これをグリアコンピテント細胞の集団(例えば、星状細胞前駆体)にインビトロで分化させ、これを星状細胞の集団にインビトロでさらに分化させる。特定の実施形態では、SMAD阻害により、幹細胞からNSCをインビトロで分化させる。特定の実施形態では、該方法は、幹細胞(例えば、ヒト幹細胞)の集団をSMADシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビター(例えば、TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナリングの1つもしくはそれを超えるインヒビターおよび/または1つもしくはそれを超えるBMPインヒビター)と接触させることを含む。特定の実施形態では、グリアコンピテント細胞は星状細胞前駆体である。
【0143】
特定の実施形態では、グリアコンピテンシーを誘導することにより、NSCからグリアコンピテント細胞をインビトロで分化させる。特定の実施形態では、グリアコンピテンシーの誘導は、細胞(例えば、SMADシグナリングの阻害により幹細胞から誘導されるNSC)におけるNFIAシグナリングを促進することにより達成される。特定の実施形態では、グリアコンピテンシーの誘導は、細胞(例えば、SMADシグナリングの阻害により幹細胞から誘導されるNSC)における細胞周期のG1期を延長することにより達成される。
【0144】
特定の実施形態では、星状細胞分化を加速することにより、グリアコンピテント細胞から星状細胞をインビトロで分化させる。特定の実施形態では、星状細胞分化は、細胞(例えば、NSCから誘導されるグリアコンピテント細胞)におけるNFIAの発現を減少させることにより(例えば、細胞をNFIAシグナリングのインヒビターに曝露することにより)達成される。特定の実施形態では、星状細胞分化は、細胞(例えば、NSCから誘導されるグリアコンピテント細胞)をLIF、1つもしくはそれを超えるその誘導体、1つもしくはそれを超えるその類似体および/または1つもしくはそれを超えるそのアクチベーターに曝露することにより達成される。
【0145】
特定の実施形態では、星状細胞への幹細胞の分化は、2つの段階:(a)NSCへの幹細胞のインビトロ分化、および(b)星状細胞へのNSCのインビトロ分化を含む。特定の実施形態では、幹細胞の集団をNSCの集団にインビトロで分化させ、これを星状細胞の集団にインビトロで分化させる。特定の実施形態では、星状細胞分化を誘導することにより、NSCから星状細胞をインビトロで分化させる。特定の実施形態では、星状細胞分化の誘導は、NSC(例えば、SMADシグナリングの阻害により幹細胞から誘導されるNSC)の集団をウシ胎仔血清(FBS)に曝露することにより達成される。
【0146】
本開示の主題はまた、幹細胞由来局所グリアコンピテント細胞および局所星状細胞を対象とする。特定の実施形態では、局所星状細胞への幹細胞の分化は、3つの段階:(a)局所パターン形成前駆体への幹細胞のインビトロ分化、(b)局所グリアコンピテント細胞への局所パターン形成前駆体のインビトロ分化、および(c)局所星状細胞への局所グリアコンピテント細胞のインビトロ分化または成熟を含む。特定の実施形態では、幹細胞の集団を局所パターン形成前駆体の集団にインビトロで分化させ、これを局所グリアコンピテント細胞の集団にインビトロで分化させ、これを局所星状細胞の集団にインビトロで分化させる。
【0147】
特定の実施形態では、局所パターン形成前駆体は皮質前駆体であり、局所グリアコンピテント細胞は皮質グリアコンピテント細胞であり、局所星状細胞は皮質星状細胞である。
【0148】
特定の実施形態では、局所パターン形成前駆体は脊髄前駆体であり、局所グリアコンピテント細胞は脊髄グリアコンピテント細胞であり、局所星状細胞は脊髄星状細胞である。
【0149】
特定の実施形態では、Wntシグナリングの阻害(「Wntインヒビター」と称される)により、幹細胞から皮質前駆体をインビトロで分化させる。特定の実施形態では、該方法は、幹細胞(例えば、ヒト幹細胞)の集団を1つまたはそれを超えるWntインヒビターに曝露することを含む。
【0150】
特定の実施形態では、グリアコンピテンシーを誘導することにより、幹細胞から脊髄前駆体をインビトロで分化させる。特定の実施形態では、グリアコンピテンシーの誘導は、幹細胞(例えば、ヒト幹細胞)の集団を1つもしくはそれを超えるRAアクチベーターおよび/または1つもしくはそれを超えるSHHアクチベーターに曝露することにより達成される。
【0151】
特定の実施形態では、皮質前駆体におけるNFIAシグナリングを促進することにより、皮質前駆体から皮質グリアコンピテント細胞をインビトロで分化させる。特定の実施形態では、皮質前駆体における細胞周期のG1期を延長することにより、皮質前駆体から皮質グリアコンピテント細胞をインビトロで分化させる。
【0152】
特定の実施形態では、星状細胞分化を加速することにより、皮質グリアコンピテント細胞から皮質星状細胞をインビトロで分化させる。特定の実施形態では、星状細胞分化は、皮質グリアコンピテント細胞におけるNFIAの発現を減少させる(または、細胞を1つもしくはそれを超えるNFIAインヒビターに曝露する)ことにより達成される。特定の実施形態では、星状細胞分化は、皮質グリアコンピテント細胞の集団をLIF、1つもしくはそれを超えるその誘導体、1つもしくはそれを超えるその類似体および/または1つもしくはそれを超えるそのアクチベーターに曝露することにより達成される。
【0153】
特定の実施形態では、グリアコンピテンシーを誘導することにより、脊髄前駆体から脊髄グリアコンピテント細胞をインビトロで分化させる。特定の実施形態では、グリアコンピテンシーの誘導は、脊髄前駆体におけるNFIAシグナリングを促進することにより達成される。特定の実施形態では、グリアコンピテンシーの誘導は、脊髄前駆体における細胞周期のG1期を延長することにより達成される。
【0154】
特定の実施形態では、星状細胞分化を加速することにより、脊髄グリアコンピテント細胞から脊髄星状細胞をインビトロで分化させる。特定の実施形態では、星状細胞分化の加速は、脊髄グリアコンピテント細胞におけるNFIAの発現を減少させる(または、NFIAインヒビターを接触させる)ことにより達成される。特定の実施形態では、星状細胞分化の加速は、脊髄グリアコンピテント細胞をLIF、1つもしくはそれを超えるその誘導体、1つもしくはそれを超えるその類似体および/または1つもしくはそれを超えるそのアクチベーターに曝露することにより達成される。
5.2.1.星状細胞への幹細胞のインビトロ3段階分化
【0155】
特定の実施形態では、星状細胞への幹細胞の分化は、3つの段階:(a)NSCへの幹細胞のインビトロ分化、(b)グリアコンピテント細胞へのNSCのインビトロ分化、および(c)星状細胞へのグリアコンピテント細胞のインビトロ分化または成熟を含む。例えば、幹細胞を、1つまたはそれを超えるNSCマーカー(限定されないが、PAX6、ネスチン、SOX1、SOX2、PLZF、ZO-1、BRN2を含む)を発現する細胞(例えば、NSC)にインビトロで分化させ、これを、1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーを発現する細胞(例えば、グリアコンピテント細胞、例えば星状細胞前駆体)にインビトロで分化させ、これを、1つまたはそれを超える星状細胞マーカーを発現する細胞(例えば、星状細胞)へさらにインビトロで誘導する。
5.2.1.1.NSCへの幹細胞のインビトロ分化
【0156】
特定の実施形態では、NSC(例えば、ロゼット期神経幹細胞、例えばLT-NSC)への幹細胞の分化をインビトロで誘導する方法は、幹細胞の集団を1つまたはそれを超えるSMADインヒビターと接触させることを含む。SMADインヒビターの非限定的な例としては、TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナリングのインヒビターおよびBMPインヒビターが挙げられる。
【0157】
特定の実施形態では、本開示の分化方法は、幹細胞の集団を形質転換成長因子ベータ(TGFβ)/アクチビン-ノーダルシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビターで曝露し、それにより、SMADシグナリングを阻害することを含む。特定の実施形態では、TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナリングのインヒビターは、TGFβ、BMP、ノーダルおよびアクチビンを含むリガンドを中和するか、または受容体および下流エフェクターの遮断を介してそれらのシグナル経路を遮断する。TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナリングのインヒビターの非限定的な例は、国際公開第2010/096496号、国際公開第2011/149762号、国際公開第2013/067362号、国際公開第2014/176606号、国際公開第2015/077648号、Chambersら、Nature Biotechnology 27,275-280(2009)およびChambersら、Nature biotechnology 30,715-720(2012)(これらは、すべての目的のためにその全体が参照により組み込まれる)に開示されている。特定の実施形態では、TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビターは、SB431542、その誘導体およびその混合物からなる群より選択される小分子である。特定の実施形態では、TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビターはSB431542を含む。
【0158】
「SB431542」は、CAS番号301836-41-9、C22H18N4O3の分子式、および4-[4-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-5-(2-ピリジニル)-1H-イミダゾール-2-イル]-ベンズアミドの名称を有する分子を指し、例えば、以下の構造:
【化1】
を参照のこと。
【0159】
特定の実施形態では、NSC(例えば、ロゼット期神経幹細胞、例えばLTNSC)への幹細胞の分化をインビトロで誘導する方法は、幹細胞を1つまたはそれを超えるBMPインヒビターと接触させ、それにより、SMADシグナリングを阻害することをさらに含む。BMPインヒビターの非限定的な例は、国際公開第2010/096496号、国際公開第2011/149762号、国際公開第2013/067362号、国際公開第2014/176606号、国際公開第2015/077648号、Chambersら、Nature Biotechnology 27,275-280(2009)およびChambersら、Nature biotechnology 30,715-720(2012)(これらは、すべての目的のためにその全体が参照により組み込まれる)に開示されている。特定の実施形態では、1つまたはそれを超えるBMPインヒビターは、LDN193189、その誘導体およびその混合物からなる群より選択される小分子である。特定の実施形態では、1つまたはそれを超えるBMPインヒビターはLDN193189を含む。
【0160】
「LDN193189」は、C2522の化学式を有し、以下の式:
【化2】
を有する4-(6-(4-(ピペラジン-1-イル)フェニル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)キノリンのIUPAC名である小分子DM-3189を指す。
【0161】
LDN193189は、SMADシグナリングインヒビターとして機能することができる。LDN193189はまた、タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)であるALK2、ALK3およびALK6の非常に強力な小分子インヒビターであり、I型TGFβ受容体のALK1およびALK3ファミリーのメンバーのシグナリングを阻害し、骨形成タンパク質(BMP)BMP2、BMP4、BMP6、BMP7およびアクチビンサイトカインシグナルを含む複数の生物学的シグナルの伝達の阻害、続いてSmad1、Smad5およびSmad8のSMADリン酸化をもたらす(Yuら、(2008)Nat Med 14:1363-1369;Cunyら、(2008)Bioorg.Med.Chem.Lett.18:4388-4392(これらは、参照により本明細書に組み込まれる))。
【0162】
NSCへの幹細胞のインビトロ分化のために、幹細胞をTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビターと少なくとも約5日間、少なくとも約6日間、少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間、少なくとも約11日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、少なくとも約14日間または少なくとも約15日間接触させ得る。特定の実施形態では、幹細胞をTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビターと最大約5日間、最大約6日間、最大約7日間、最大約8日間、最大約9日間、最大約10日間、最大約11日間、最大約12日間、最大約13日間、最大約14日間または最大約15日間接触させる。特定の実施形態では、幹細胞をTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビターと約5日間~約15日間、約5日間~約10日間または約10日間~約15日間接触させる。特定の実施形態では、幹細胞をTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビターと約10日間~約15日間接触させる。特定の実施形態では、幹細胞をTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビターと約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、約13日間、約14日間または約15日間接触させる。特定の実施形態では、幹細胞をTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビターと約8日間接触させる。特定の実施形態では、幹細胞をTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビターと約10日間接触させる。特定の実施形態では、幹細胞をTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビターと約11日間接触させる。特定の実施形態では、幹細胞をTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビターと約12日間接触させる。
【0163】
NSCへの幹細胞のインビトロ分化のために、幹細胞を1つまたはそれを超えるBMPインヒビターと少なくとも約5日間、少なくとも約6日間、少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間、少なくとも約11日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、少なくとも約14日間または少なくとも約15日間接触させ得る。特定の実施形態では、幹細胞を1つまたはそれを超えるBMPインヒビターと最大約5日間、最大約6日間、最大約7日間、最大約8日間、最大約9日間、最大約10日間、最大約11日間、最大約12日間、最大約13日間、最大約14日間または最大約15日間接触させる。特定の実施形態では、幹細胞を1つまたはそれを超えるBMPインヒビターと約5日間~約15日間、約5日間~約10日間または約10日間~約15日間接触させる。特定の実施形態では、幹細胞を1つまたはそれを超えるBMPインヒビターと約10日間~約15日間接触させる。特定の実施形態では、幹細胞を1つまたはそれを超えるBMPインヒビターと約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、約13日間、約14日間または約15日間接触させる。特定の実施形態では、幹細胞を1つまたはそれを超えるBMPインヒビターと約8日間接触させる。特定の実施形態では、幹細胞を1つまたはそれを超えるBMPインヒビターと約10日間接触させる。特定の実施形態では、幹細胞を1つまたはそれを超えるBMPインヒビターと約11日間接触させる。特定の実施形態では、幹細胞を1つまたはそれを超えるBMPインヒビターと約12日間接触させる。
【0164】
特定の実施形態では、幹細胞を、約1μM~約100μM、約1μM~約20μM、約1μM~約15μM、約1μM~約10μM、約1μM~約5μM、約5μM~約10μM、約5μM~約15μM、約15μM~約20μM、約20μM~約30μM、約30μM~約40μM、約40μM~約50μM、約50μM~約60μM、約60μM~約70μM、約70μM~約80μM、約80μM~約90μMまたは約90μM~約100μMの濃度のTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビターと接触させる。特定の実施形態では、幹細胞を、約5μM~約15μMの濃度のTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビターと接触させる。特定の実施形態では、幹細胞を、約10μMの濃度のTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビターと接触させる。特定の実施形態では、幹細胞を、上記濃度のいずれか1つのTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビターと毎日、一日おきまたは2日ごとに接触させる。特定の実施形態では、幹細胞を、約10μMの濃度のTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビターと毎日接触させる。
【0165】
特定の実施形態では、幹細胞を、約1nM~約300nM、約5nM~約250nM、約10nM~約200nM、約10nM~約50nM、約50nM~約150nM、約80nM~約120nM、約90nM~約110nM、約50nM~約100nM、約100nM~約150nM、約150nM~約200nM、約200nM~約250nMまたは約250nM~約300nMの濃度の1つまたはそれを超えるBMPインヒビターと接触させる。特定の実施形態では、幹細胞を、約80nM~約120nMの濃度の1つまたはそれを超えるBMPインヒビターと接触させる。特定の実施形態では、幹細胞を、約100nMの濃度の1つまたはそれを超えるBMPインヒビターと接触させる。特定の実施形態では、幹細胞を、上記濃度のいずれか1つの1つまたはそれを超えるBMPインヒビターと毎日、一日おきまたは2日ごとに接触させる。特定の実施形態では、幹細胞を、約100nMの濃度の1つまたはそれを超えるBMPインヒビターと毎日接触させる。
【0166】
特定の実施形態では、幹細胞(例えば、ヒト幹細胞)を、1つまたはそれを超える神経幹細胞(NSC)マーカーを発現する少なくとも約10%の(例えば、少なくとも約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約99%またはそれを超える)細胞を含む細胞集団を産生するための有効量のTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビターおよび/または1つまたはそれを超えるBMPインヒビターと接触させる。NSCマーカーの非限定的な例としては、PAX6、ネスチン、SOX1、SOX2、PLZF、ZO-1およびBRN2が挙げられる。特定の実施形態では、1つまたはそれを超えるNSCマーカーは、PAX6、SOX1、PLZFおよびZO-1からなる群より選択される。
5.2.1.2.グリアコンピテント細胞へのNSCのインビトロ分化
【0167】
特定の実施形態では、グリアコンピテント細胞へのNSCの分化を誘導する方法は、NSC(例えば、1つまたはそれを超えるNSCマーカーを発現する細胞、例えば、セクション5.2.1.1に記載されている方法により得られる分化細胞)におけるNFIAシグナリングを促進して、1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーを発現する少なくとも約10%の分化細胞を含む細胞集団を産生することを含む。
【0168】
特定の実施形態では、グリアコンピテント細胞へのNSCの分化を誘導する方法は、NSC(例えば、1つまたはそれを超えるNSCマーカーを発現する細胞、例えば、セクション5.2.1.1に記載されている方法により得られる分化細胞)の細胞周期のG1期を延長して、1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーを発現する少なくとも約10%の分化細胞を含む細胞集団を産生することを含む。
【0169】
特定の実施形態では、NSCの細胞周期のG1期の延長は、NSCを1つまたはそれを超えるG1期を延長する化合物(例えば、オロモウシン)に曝露することを含む。特定の実施形態では、NSCの細胞周期のG1期の延長は、FZR1(APCCDH1としても公知)の発現を増加させることを含む。
【0170】
特定の実施形態では、グリアコンピテント細胞は星状細胞前駆体である。
【0171】
特定の実施形態では、該方法は、細胞をFGFシグナリングの1つもしくはそれを超えるアクチベーター(「FGFアクチベーター」)および/または1つもしくはそれを超えるEGFファミリータンパク質と接触させることをさらに含む。
【0172】
FGFアクチベーターの非限定的な例としては、FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF7、FGF8、FGF10、FGF18、それらの誘導体および混合物が挙げられる。特定の実施形態では、1つまたはそれを超えるFGFアクチベーターはFGF2である。
【0173】
EGFファミリータンパク質の非限定的な例としては、EGF、ヘパリン結合EGF様成長因子(HB-EGF)、エピレグリン(EPR)、エピゲン(Epigen)、ベータセルリン(BTC)、ニューレグリン-1(NRG1)、ニューレグリン-2(NRG2)、ニューレグリン-3(NRG3)、ニューレグリン-4(NRG4)およびそれらの混合物が挙げられる。特定の実施形態では、1つまたはそれを超えるEGFファミリータンパク質はEGFである。
5.2.1.2.1.NFIAシグナリングの促進
【0174】
特定の実施形態では、NSCにおけるNFIAシグナリングの促進は、NSCを1つまたはそれを超えるNFIAアクチベーターに曝露することを含む。特定の実施形態では、NSCにおけるNFIAシグナリングの促進は、NFIAの発現を増加させることを含む。
【0175】
特定の実施形態では、NFIAアクチベーターはNFIAの上流アクチベーターである。特定の実施形態では、NFIAの上流アクチベーターはTGFβ1である。
【0176】
特定の実施形態では、NFIAの発現の増加は、NFIAの過剰発現を誘導するようにNSCを改変することを含む。特定の実施形態では、改変細胞は、組換えNFIAタンパク質、例えばNFIA核酸(例えば、NFIA cDNA)を発現する。特定の実施形態では、NFIA核酸の発現は、誘導性プロモーターに作動可能に連結されている。
【0177】
特定の実施形態では、NFIA核酸は、レトロウイルスベクター、例えばガンマレトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターを使用して細胞に送達される。ヒト細胞を感染させるためにカプシドタンパク質が機能し得るレトロウイルスベクターおよび適切なパッケージング系の組み合わせが適切である。両種指向性ウイルス産生細胞系の非限定的な例としては、PA12(Millerら、(1985)Mol.Cell.Biol.5:431-437);PA317(Millerら、(1986)Mol.Cell.Biol.6:2895-2902);およびCRIP(Danosら、(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:6460-6464)が挙げられる。非両種指向性粒子も使用され得る。非両種指向性粒子の非限定的な例としては、VSVG、RD114またはGALVエンベロープでシュードタイプ化された粒子および当技術分野で公知の任意の他のものが挙げられる。
【0178】
形質導入方法の非限定的な例としては、産生細胞を用いた細胞培養(例えば、Bregniら、(1992)Blood 80:1418-1422の方法による)、適切な成長因子およびポリカチオンの有りまたは無しでの、ウイルス上清のみまたは濃縮ベクターストックを用いた細胞培養(例えば、Xuら、(1994)Exp.Hemat.22:223-230;およびHughesら、(1992)J.Clin.Invest.89:1817の方法による)が挙げられる。あるいはまたは加えて、形質導入ウイルスベクターを使用して、NFIA核酸を細胞に送達し得る。特定の実施形態では、ベクターは、高い感染効率ならびに安定な組み込みおよび発現を示す。ウイルスベクターの非限定的な例としては、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクターおよびアデノ関連ウイルスベクター(adena-associated viral vector)、ワクシニアウイルス、ウシパピローマウイルスまたはヘルペスウイルス(例えば、エプスタインバーウイルス)が挙げられる。
【0179】
NFIA核酸を細胞に送達するために、非ウイルス的アプローチも用いられ得る。例えば、核酸分子は、リポフェクション、アシアロオロソムコイド-ポリリジンコンジュゲーションの存在下で核酸を投与することにより、または外科的条件下におけるマイクロインジェクションにより、NSCに導入され得る。遺伝子移入のための他の非ウイルス的手段としては、リン酸カルシウム、DEAEデキストラン、エレクトロポレーションおよびプロトプラスト融合を使用したインビトロトランスフェクションが挙げられる。リポソームもまた、細胞への核酸分子の送達に潜在的に有益であり得る。被験体の罹患組織への正常遺伝子の移植は、正常核酸をエクスビボで培養可能細胞型(例えば、自己または異種の初代細胞またはその後代(progeny))に移入することにより達成され得、その後、細胞(またはその子孫(descendant))は標的組織に注射されるか、または全身注射される。
【0180】
特定の実施形態では、NFIAシグナリングの促進は、1つもしくはそれを超えるFGFアクチベーターおよび/または1つもしくはそれを超えるEGFファミリータンパク質への細胞の曝露と同時である。特定の実施形態では、1つもしくはそれを超えるFGFアクチベーターおよび/または1つもしくはそれを超えるEGFファミリータンパク質は両方とも、NFIAシグナリングが促進されたかまたは促進されている細胞を含む細胞培養培地中に存在する。特定の実施形態では、NFIAシグナリングの促進は、細胞を1つまたはそれを超えるNFIAアクチベーター(例えば、TGFβ1)に曝露することである。特定の実施形態では、1つまたはそれを超えるNFIAアクチベーター、1つまたはそれを超えるFGFアクチベーターおよび1つまたはそれを超えるEGFファミリータンパク質を、NSCを含む細胞培養培地に一緒に毎日(または一日おきまたは2日ごとに)添加する。
【0181】
特定の実施形態では、NSCにおいて、NFIAシグナリングを少なくとも約2日間、少なくとも約3日間、少なくとも約4日間、少なくとも約5日間、少なくとも約6日間、少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間、少なくとも約11日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、少なくとも約14日間、少なくとも約15日間、少なくとも約16日間、少なくとも約17日間、少なくとも約18日間、少なくとも約19日間、少なくとも約20日間もしくはそれを超えて;または最大約2日間、最大約3日間、最大約4日間、最大約5日間、最大約6日間、最大約7日間、最大約8日間、最大約9日間、最大約10日間、最大約11日間、最大約12日間、最大約13日間、最大約14日間、最大約15日間、最大約16日間、最大約17日間、最大約18日間、最大約19日間、最大約20日間促進して(および必要に応じて、NSCを有効量の1つもしくはそれを超えるFGFアクチベーターおよび/または有効量の1つもしくはそれを超えるEGFファミリータンパク質に曝露して)、グリアコンピテント細胞を産生する。特定の実施形態では、NSCにおいて、NFIAシグナリングを促進し、必要に応じて、NSCを有効量の1つもしくはそれを超えるFGFアクチベーターおよび/または有効量の1つもしくはそれを超えるEGFファミリータンパク質と約2、3、4、5、6、7、8、9または10日間接触させる。特定の実施形態では、NSCにおいて、NFIAシグナリングを促進し、必要に応じて、NSCを有効量の1つもしくはそれを超えるFGFアクチベーターおよび/または有効量の1つもしくはそれを超えるEGFファミリータンパク質と約5日間接触させる。
【0182】
特定の実施形態では、NFIAシグナリングの促進は、細胞を1つまたはそれを超えるNFIAアクチベーターに曝露することである。特定の実施形態では、NFIAアクチベーターはNFIAの上流アクチベーターである。特定の実施形態では、NFIAの上流アクチベーターはTGFβ1である。
【0183】
特定の実施形態では、NSCを、約1ng/ml~100ng/ml、約1ng/ml~20ng/ml、約1ng/ml~15ng/ml、約1ng/ml~10ng/ml、約1ng/ml~5ng/ml、約5ng/ml~10ng/ml、約5ng/ml~15ng/ml、約15ng/ml~25ng/ml、約15ng/ml~20ng/ml、約20ng/ml~30ng/ml、約30ng/ml~40ng/ml、約40ng/ml~50ng/ml、約50ng/ml~60ng/ml、約60ng/ml~70ng/ml、約70ng/ml~80ng/ml、約80ng/ml~90ng/mlまたは約90ng/ml~100ng/mlの濃度の1つまたはそれを超えるNFIAアクチベーターと接触させて、グリアコンピテントNSCを産生する。特定の実施形態では、細胞(例えば、NSC)を、約5ng/ml~15ng/mlの濃度の1つまたはそれを超えるNFIAアクチベーター(例えば、TGFβ1)と接触させて、グリアコンピテントNSCを産生する。特定の実施形態では、細胞(例えば、NSC)を、約10ng/mlの濃度の1つまたはそれを超えるTGFβ1と接触させて、グリアコンピテントNSCを産生する。特定の実施形態では、細胞(例えば、NSC)を、上記濃度のいずれか1つの1つまたはそれを超えるTGFβ1と毎日、一日おきまたは2日ごとに接触させて、グリアコンピテントNSCを産生する。特定の実施形態では、細胞(例えば、NSC)を、約10ng/mlの濃度の1つまたはそれを超えるNFIAアクチベーター(例えば、TGFβ1)と毎日接触させて、グリアコンピテントNSCを産生する。特定の実施形態では、細胞(例えば、NSC)を、約10ng/mlの濃度の1つまたはそれを超えるNFIAアクチベーター(例えば、TGFβ1)と毎日接触させて、グリアコンピテントNSCを産生する。
【0184】
特定の実施形態では、NSCを1つまたはそれを超えるNFIAアクチベーター(例えば、TGFβ1)と少なくとも約5日間、少なくとも約6日間、少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間、少なくとも約11日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、少なくとも約14日間、少なくとも約15日間、少なくとも約16日間、少なくとも約17日間、少なくとも約18日間、少なくとも約19日間、少なくとも約20日間もしくはそれを超えて;および/または最大約5日間、最大約6日間、最大約7日間、最大約8日間、最大約9日間、最大約10日間、最大約11日間、最大約12日間、最大約13日間、最大約14日間、最大約15日間、最大約16日間、最大約17日間、最大約18日間、最大約19日間、最大約20日間、最大約21日間、最大約22日間、最大約23日間、最大約24日間、最大約25日間、最大約26日間、最大約27日間、最大約28日間、最大約29日間もしくは最大約30日間接触させて、グリアコンピテント細胞を産生する。特定の実施形態では、NSCを有効量の1つまたはそれを超えるNFIAアクチベーター(例えば、TGFβ1)と約5日間~約15日間、または約10日間~約20日間接触させて、グリアコンピテント細胞を産生する。特定の実施形態では、NSCを有効量の1つまたはそれを超えるNFIAアクチベーター(例えば、TGFβ1)と約5日間(例えば、約7日間)接触させて、グリアコンピテントNSCを産生する。特定の実施形態では、NSCを有効量の1つまたはそれを超えるTGFβ1と約15(例えば、約14)日間接触させて、グリアコンピテントNSCを産生する。
【0185】
特定の実施形態では、細胞(例えば、NSC)を、約1ng/ml~100ng/ml、約1ng/ml~20ng/ml、約1ng/ml~15ng/ml、約1ng/ml~10ng/ml、約1ng/ml~5ng/ml、約5ng/ml~10ng/ml、約5ng/ml~15ng/ml、約15ng/ml~25ng/ml、約15ng/ml~20ng/ml、約20ng/ml~30ng/ml、約30ng/ml~40ng/ml、約40ng/ml~50ng/ml、約50ng/ml~60ng/ml、約60ng/ml~70ng/ml、約70ng/ml~80ng/ml、約80ng/ml~90ng/mlまたは約90ng/ml~100ng/mlの濃度の1つまたはそれを超えるFGFアクチベーターと接触させて、グリアコンピテント細胞を産生する。特定の実施形態では、細胞(例えば、NSC)を、約5ng/ml~15ng/mlの濃度の1つまたはそれを超えるFGFアクチベーターと接触させて、グリアコンピテント細胞を産生する。特定の実施形態では、細胞(例えば、NSC)を、約10ng/mlの濃度の1つまたはそれを超えるFGFアクチベーターと接触させて、グリアコンピテント細胞を産生する。特定の実施形態では、細胞(例えば、NSC)を、上記濃度のいずれか1つの1つまたはそれを超えるFGFアクチベーターと毎日、一日おきまたは2日ごとに接触させて、グリアコンピテント細胞を産生する。特定の実施形態では、細胞(例えば、NSC)を、約10ng/mlの濃度の1つまたはそれを超えるFGFアクチベーターと毎日接触させて、グリアコンピテント細胞を産生する。特定の実施形態では、細胞(例えば、NSC)を、約10ng/mlの濃度の1つまたはそれを超えるFGFアクチベーターと毎日接触させて、グリアコンピテント細胞を産生する。
【0186】
特定の実施形態では、細胞(例えば、NSC)を、約1ng/ml~100ng/ml、約1ng/ml~20ng/ml、約1ng/ml~15ng/ml、約1ng/ml~10ng/ml、約1ng/ml~5ng/ml、約5ng/ml~10ng/ml、約5ng/ml~15ng/ml、約15ng/ml~25ng/ml、約15ng/ml~20ng/ml、約20ng/ml~30ng/ml、約30ng/ml~40ng/ml、約40ng/ml~50ng/ml、約50ng/ml~60ng/ml、約60ng/ml~70ng/ml、約70ng/ml~80ng/ml、約80ng/ml~90ng/mlまたは約90ng/ml~100ng/mlの濃度の1つまたはそれを超えるEGFファミリータンパク質と接触させて、グリアコンピテント細胞を産生する。特定の実施形態では、細胞(例えば、NSC)を、約5ng/ml~15ng/mlの濃度の1つまたはそれを超えるEGFファミリータンパク質と接触させて、グリアコンピテント細胞を産生する。特定の実施形態では、細胞(例えば、NSC)を、約10ng/mlの濃度の1つまたはそれを超えるEGFファミリータンパク質と接触させて、グリアコンピテント細胞を産生する。特定の実施形態では、細胞(例えば、NSC)を、上記濃度のいずれか1つの1つまたはそれを超えるEGFファミリータンパク質と毎日、一日おきまたは2日ごとに接触させて、グリアコンピテント細胞を産生する。特定の実施形態では、細胞(例えば、NSC)を、約10ng/mlの濃度の1つまたはそれを超えるEGFファミリータンパク質と毎日接触させて、グリアコンピテント細胞を産生する。特定の実施形態では、細胞(例えば、NSC)を、約10ng/mlの濃度の1つまたはそれを超えるEGFファミリータンパク質と毎日接触させて、グリアコンピテント細胞を産生する。
【0187】
特定の実施形態では、少なくとも約10%(例えば、約50%)のNSC(例えば、1つまたはそれを超えるNSCマーカーを発現する細胞)を含む細胞集団は、細胞におけるNFIAシグナリングを促進し、細胞を1つのFGFアクチベーター(例えば、FGF2、例えば10ng/mL FGF2)および1つのEGFファミリータンパク質(例えば、EGF、例えば10ng/mL EGF)に曝露することにより、1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーを発現する少なくとも約10%の細胞を含む細胞集団に分化する。特定の実施形態では、細胞を1つまたはそれを超えるNFIAアクチベーター(例えば、TFGβ1、例えば10ng/mL TFGβ1)に約5~約20日間、1つのFGFアクチベーター(例えば、FGF2、例えば10ng/mL FGF2)および1つのEGFファミリータンパク質(例えば、EGF、例えば10ng/mL EGF)に曝露することにより、少なくとも約10%(例えば、約50%)のNSC(例えば、1つまたはそれを超えるNSCマーカーを発現する細胞)を含む細胞集団を、1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーを発現する少なくとも約10%の細胞を含む細胞集団に分化させる。
【0188】
特定の実施形態では、NFIAシグナリングの促進は、複数の細胞における1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカー(限定されないが、CD44、AQP4、SOX2および/またはネクチンを含む)の検出可能レベルの増加をもたらす。特定の実施形態では、細胞の少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約99%またはそれより多くは、検出可能レベルのCD44、AQP4、SOX2および/またはネクチンを発現する。特定の実施形態では、細胞の少なくとも約99%またはそれより多くは検出可能レベルのCD44を発現し、少なくとも約10%は検出可能レベルのAQP4を発現する。
【0189】
特定の実施形態では、1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーを発現する分化細胞は、検出可能レベルの1つまたはそれを超えるニューロンマーカー(例えば、Tuj1、MAP2およびDCX)を発現しない。
【0190】
特定の実施形態では、1つまたはそれを超えるNFIAアクチベーターへのNSCの曝露は、複数の細胞における1つまたはそれを超える星状細胞マーカー(限定されないが、GFAP、AQP4、CD44、S100b、SOX9、GLT-1、CSRP1およびNFIAを含む)の検出可能な発現レベルを増加させるために有効な期間にわたって中断されるかまたは減少する。特定の実施形態では、細胞の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%またはそれより多くは、検出可能レベルの1つまたはそれを超える星状細胞マーカーを発現する。特定の実施形態では、細胞の少なくとも約50%またはそれより多くは、検出可能レベルの1つまたはそれを超える星状細胞マーカーを発現する。特定の実施形態では、1つまたはそれを超えるNFIAアクチベーターへのNSCの曝露は、複数の細胞におけるSOX2、ネスチンまたはその両方の検出可能な発現レベルを減少させるために有効な期間にわたって中断されるかまたは減少する。特定の実施形態では、細胞の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%またはそれより多くは、検出可能レベルのSOX2、ネスチンまたはその両方を発現しない。特定の実施形態では、細胞の少なくとも約50%またはそれより多くは、検出可能レベルのSOX2、ネスチンまたはその両方を発現しない。
【0191】
特定の実施形態では、前記有効な期間は、少なくとも約1日間、少なくとも約2日間、少なくとも約3日間、少なくとも約4日間、少なくとも約5日間、少なくとも約6日間、少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間;または最大約1日間、最大約2日間、最大約3日間、最大約4日間、最大約5日間、最大約6日間、最大約7日間、最大約8日間、最大約9日間もしくは最大約10日間である。特定の実施形態では、有効な期間は約5日間である。
【0192】
特定の実施形態では、細胞を1つまたはそれを超えるNFIAアクチベーターと少なくともまたは最大約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20日間またはそれを超えて接触させた後、NFIAの発現レベル(または機能活性)は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%または100%減少する。
5.2.1.2.2.細胞周期のG1期の延長
【0193】
特定の実施形態では、グリアコンピテント細胞へのNSCの分化を誘導するための方法は、NSCの細胞周期のG1期を延長することを含む。特定の実施形態では、NSCの細胞周期のG1期の延長は、NSCを1つまたはそれを超えるG1期を延長する化合物に曝露することを含む。特定の実施形態では、1つまたはそれを超えるG1期を延長する化合物は小分子化合物である。特定の実施形態では、小分子化合物は、インビトロでG1タイミングを延長することが公知のオロモウシン(Olo)である36
【0194】
特定の実施形態では、NSCの細胞周期のG1期の延長は、FZR1(APCCDH1としても公知)の発現を増加させることを含む。特定の実施形態では、FZR1の発現の増加は、FZR1の過剰発現を誘導するようにNSCを改変することを含む。特定の実施形態では、改変細胞は、組換えFZR1タンパク質、例えばFZR1核酸(例えば、FZR1 cDNA)を発現し、ここで、前記FZR1核酸の発現は、誘導性プロモーターに作動可能に連結されている。FZR1核酸は、当技術分野で公知の任意の方法およびセクション5.2.1.2.1に開示されている方法を使用して、NSCに送達され得る。
【0195】
特定の実施形態では、1つもしくはそれを超えるG1期を延長する化合物、1つもしくはそれを超えるFGFアクチベーターおよび/または1つもしくはそれを超えるEGFファミリータンパク質はすべて、NSCを含む細胞培養培地中に存在する。特定の実施形態では、1つまたはそれを超えるG1期を延長する化合物、1つまたはそれを超えるFGFアクチベーターおよび1つまたはそれを超えるEGFファミリータンパク質を、NSC(例えば、1つまたはそれを超えるNSCマーカーを発現する細胞、例えば、幹細胞の集団を1つまたはそれを超えるTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナリングおよび必要に応じて1つまたはそれを超えるSMADインヒビターと接触させた後の分化細胞)を含む細胞培養培地に一緒に毎日(または一日おきもしくは2日ごとに)添加する。
【0196】
特定の実施形態では、NSCを1つもしくはそれを超えるFGFアクチベーターおよび/または1つもしくはそれを超えるEGFファミリータンパク質とさらに接触させる。特定の実施形態では、NSCを1つもしくはそれを超えるFGFアクチベーターおよび/または1つもしくはそれを超えるEGFファミリータンパク質と少なくとも約10日間、少なくとも約11日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、少なくとも約14日間、少なくとも約15日間、少なくとも約16日間、少なくとも約17日間、少なくとも約18日間、少なくとも約19日間、少なくとも約20日間もしくはそれを超えて;または最大約12日間、最大約13日間、最大約14日間、最大約15日間、最大約16日間、最大約17日間、最大約18日間、最大約19日間、最大約20日間もしくはそれを超えて接触させて、グリアコンピテント細胞を産生する。特定の実施形態では、NSCを1つもしくはそれを超えるFGFアクチベーターおよび/または1つもしくはそれを超えるEGFファミリータンパク質と約12、13、14、15、16、17、18、19または20日間接触させる。特定の実施形態では、NSCを1つもしくはそれを超えるFGFアクチベーターおよび/または1つもしくはそれを超えるEGFファミリータンパク質と約10日間~約20日間、例えば約10日間~約15日間接触させる。特定の実施形態では、NSCを1つもしくはそれを超えるFGFアクチベーターおよび/または1つもしくはそれを超えるEGFファミリータンパク質と約12日間接触させる。特定の実施形態では、NSCを1つもしくはそれを超えるFGFアクチベーターおよび/または1つもしくはそれを超えるEGFファミリータンパク質と約15日間接触させる。特定の実施形態では、細胞(例えば、NSC)を、約10uM~約500μM、約10μM~約400μM、約10μM~約300μM、約10μM~約200μM、約20μM~約500μM、約20μM~約400μM、約20μM~約300μM、約20μM~約200μM、約30μM~約500μM、約30μM~約400μM、約30μM~約300μM、約30μM~約200μM、約40μM~約500μM、約40μM~約400μM、約40μM~約300μM、約40μM~約200μM、約50μM~約500μM、約50μM~約400μM、約50μM~約300μM、約50μM~約200μMの濃度の有効量の1つまたはそれを超えるG1期を延長する化合物(例えば、Olo)と接触させて、グリアコンピテント細胞を産生する。特定の実施形態では、細胞(例えば、NSC)を、約110μM~約150μMの濃度の有効量の1つまたはそれを超えるG1期を延長する化合物(例えば、Olo)と接触させて、グリアコンピテントNSCを産生する。特定の実施形態では、細胞(例えば、NSC)を、約100μMの濃度の有効量の1つまたはそれを超えるG1期を延長する化合物(例えば、Olo)と接触させて、グリアコンピテント細胞を産生する。特定の実施形態では、1つまたはそれを超えるG1期を延長する化合物はオロモウシンである。
【0197】
特定の実施形態では、細胞(例えば、NSC)を有効量の1つまたはそれを超えるG1期を延長する化合物(例えば、Olo)と約2日間または48日間以下、例えば約18時間以下、約24時間以下、約36時間以下接触させて、グリアコンピテント細胞を産生する。特定の実施形態では、細胞(例えば、NSC)を、上記濃度のいずれか1つの有効量の1つまたはそれを超えるG1期を延長する化合物と毎日、一日おきまたは2日ごとに接触させて、グリアコンピテント細胞を産生する。特定の実施形態では、細胞(例えば、NSC)を、約100μMの濃度の有効量の1つまたはそれを超えるG1期を延長する化合物と毎日接触させて、グリアコンピテント細胞を産生する。
【0198】
セクション5.2.1.2.1に開示されているFGFアクチベーターおよびEGFファミリータンパク質はいずれも、本明細書で使用され得る。
【0199】
特定の実施形態では、NSCの細胞周期のG1期を延長し、細胞を1つのFGFアクチベーター(例えば、FGF2、例えば10nM FGF2)および1つのEGFファミリータンパク質(例えば、EGF、例えば10nM EGF)に約12日間曝露することにより、少なくとも約10%(例えば、約50%)のNSC(例えば、1つまたはそれを超えるNSCマーカーを発現する細胞)を含む細胞集団を、1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーを発現する少なくとも約10%(例えば、約50%)の細胞を含む細胞集団に分化させる。特定の実施形態では、細胞を1つまたはそれを超えるG1期延長分子(例えば、オロモウシン、例えば100μMオロモウシン)に約2日間以下曝露し、細胞を1つのFGFアクチベーター(例えば、FGF2、例えば10nM FGF2)および1つのEGFファミリータンパク質(例えば、EGF、例えば10nM EGF)に約12日間曝露することにより、少なくとも約10%(例えば、約50%)のNSC(例えば、1つまたはそれを超えるNSCマーカーを発現する細胞)を含む細胞集団を、1つのグリアコンピテント細胞マーカーを発現する少なくとも約10%(例えば、約50%)の細胞を含む細胞集団に分化させる。
5.2.1.3.星状細胞へのグリアコンピテントNSCのインビトロ分化
【0200】
グリアコンピテント細胞を星状細胞にインビトロでさらに分化させ得る。グリアコンピテントグリアコンピテント細胞を、星状細胞へのグリアコンピテント細胞の分化に有利に働く条件に供し得る。
【0201】
特定の実施形態では、該方法は、細胞を1つまたはそれを超えるNFIAアクチベーターに約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20日間またはそれを超えて曝露した後、(例えば、NFIAインヒビターとの接触またはNFIA発現レベルの減少により)1つまたはそれを超えるNIFAアクチベーターへの細胞の曝露を中断し、中止し、阻害しおよび/または減少させることを含む。特定の実施形態では、約5日間または約8日間の曝露期間後、1つまたはそれを超えるNFIAアクチベーターとの接触を中断しまたは減少させる。
【0202】
特定の実施形態では、星状細胞へのグリアコンピテント細胞の分化に有利に働く条件は、細胞を有効量のLIF(1つまたはそれを超えるその誘導体、類似体および/またはアクチベーター)に曝露して、1つまたはそれを超える星状細胞マーカーの検出可能レベルを増加させることを含む。特定の実施形態では、細胞をLIFに少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15日間もしくはそれを超えて;または最大約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15日間もしくはそれを超えて接触させる。特定の実施形態では、細胞をLIFに約7、8、9または10日間曝露する。
【0203】
特定の実施形態では、1つまたはそれを超えるNFIAアクチベーターへの細胞の曝露の後、またはそれと同時に、細胞をLIFに曝露する。特定の実施形態では、LIFへの細胞の初期曝露は、1つまたはそれを超えるNFIAアクチベーターへの細胞の初期曝露から約1、2、3、4または5日間である。
【0204】
特定の実施形態では、星状細胞およびその前駆体への幹細胞の分化を誘導するためのインビトロ方法は、幹細胞の集団を有効量の(i)形質転換成長因子ベータ(TGFβ)/アクチビン-ノーダルシグナリングの1つもしくはそれを超えるインヒビターおよび/または骨形成タンパク質(BMP)シグナリングの1つもしくはそれを超えるインヒビター、(ii)1つまたはそれを超えるNFIAアクチベーター、ならびに(iii)LIF(1つまたはそれを超えるその誘導体、類似体および/またはアクチベーター)に曝露することを含む。特定の実施形態では、1つまたはそれを超えるNFIAアクチベーターへの細胞の初期曝露は、TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナリングの1つもしくはそれを超えるインヒビターおよび/またはBMPシグナリングの1つもしくはそれを超えるインヒビターへの細胞の初期曝露から少なくとも約8日間である。特定の実施形態では、細胞を1つまたはそれを超えるNFIAアクチベーターに最大約8日間曝露する。特定の実施形態では、LIF(1つまたはそれを超えるその誘導体、類似体および/またはアクチベーター)への細胞の初期曝露は、1つまたはそれを超えるNFIAアクチベーターへの細胞の初期曝露から少なくとも約2日間または少なくとも約5日間である。
【0205】
特定の実施形態では、幹細胞をTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナリングの1つもしくはそれを超えるインヒビターおよび/またはBMPシグナリングの1つもしくはそれを超えるインヒビターと接触させる日は0日目に対応する。
【0206】
特定の実施形態では、該方法は、分化細胞の前記集団を、星状細胞の集団への前記細胞の成熟を促す条件に供することをさらに含む。特定の実施形態では、成熟を促す条件は、適切な細胞培養培地中で細胞を培養することを含む。特定の実施形態では、適切な細胞培養培地は、ニューロベーサル(NB)培地またはN2培地を含む。特定の実施形態では、適切な細胞培養培地は、L-グルタミンおよびB27(例えば、Life Technologies製)が補充されたNB培地である。
【0207】
N2サプリメントは、培養液中の未分化神経幹細胞および前駆細胞の拡大に使用される化学的に定義された動物質を含まない(animal-free)サプリメントである。N2サプリメントは、DMEM/F12培地と共に使用するためのものである。N2培地の成分は、国際公開第2011/149762号に開示されている。特定の実施形態では、N2培地は、グルコース、重炭酸ナトリウム、プトレシン、プロゲステロン、亜セレン酸ナトリウム、トランスフェリンおよびインスリンが補充されたDMEM/F12培地を含む。特定の実施形態では、1リットルのN2培地は、DMEM/F12粉末、1.55gのグルコース、2.00gの重炭酸ナトリウム、プトレシン(1.61gを100mLの蒸留水に溶解させたものの100uLアリコート)、プロゲステロン(0.032gを100mLの100%エタノールに溶解させたものの20uLアリコート)、亜セレン酸ナトリウム(蒸留水中0.5mM溶液の60uLアリコート)、100mgのトランスフェリン、および10mLの5mM NaOH中25mgのインスリンを含む985mlの蒸留水(dist.HO)を含む。
5.2.2 FBSを使用した星状細胞への幹細胞のインビトロ分化の方法
【0208】
特定の実施形態では、星状細胞への幹細胞の分化は、2つの段階:(a)NSCへの幹細胞のインビトロ分化、および(b)星状細胞へのNSCのインビトロ分化を含む。特定の実施形態では、幹細胞の集団をNSCの集団にインビトロで分化させ、これを星状細胞の集団にインビトロで分化させる。特定の実施形態では、星状細胞分化を誘導することにより、NSCから星状細胞をインビトロで分化させる。特定の実施形態では、星状細胞分化の誘導は、NSC(例えば、SMADシグナリングの阻害により幹細胞から誘導されるNSC)の集団をウシ胎仔血清(FBS)に曝露することにより達成される。
【0209】
特定の実施形態では、本明細書のセクション5.2.1.1に開示されている方法を使用して、幹細胞をNSCに分化させる。
【0210】
特定の実施形態では、星状細胞へのNSCの分化を誘導するための方法は、細胞を有効量のウシ胎仔血清(FBS)に曝露することを含む。特定の実施形態では、FBSは、少なくとも約0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%FBSの濃度で細胞に曝露される組成物中にある。特定の実施形態では、複数の細胞における1つまたはそれを超える星状細胞マーカーの検出可能な発現レベルを増加させるために十分な期間にわたって、細胞をFBSに曝露させる。星状細胞マーカーの非限定的な例としては、GFAP、AQP4、CD44、S100b、SOX9、NFIA、GLT-1およびCSRP1が挙げられる。特定の実施形態では、細胞の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%またはそれより多くは、検出可能レベルの1つまたはそれを超える星状細胞マーカー(例えば、GFAP、AQP4、CD44、S100b、SOX9 GLT-1、CSRP1および/またはNFIA)を発現する。特定の実施形態では、複数の細胞におけるSOX2、ネスチンまたはその両方の検出可能な発現レベルを減少させるために十分な期間にわたって、細胞をFBSに曝露する。特定の実施形態では、細胞の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%またはそれより多くは、検出可能レベルのSOX2、ネスチンまたはその両方を発現しない。特定の実施形態では、細胞の少なくとも約50%またはそれより多くは、検出可能レベルのSOX2、ネスチンまたはその両方を発現しない。
【0211】
特定の実施形態では、細胞を、FBSを含む組成物であって、EGFおよび/またはFGF2を含まない組成物に曝露する。
【0212】
特定の実施形態では、前記十分な/有効な期間は、少なくともまたは最大約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30日間であるかまたはそれを超える。
5.3 局所星状細胞への幹細胞のインビトロ分化
【0213】
本開示の主題はまた、幹細胞を局所星状細胞に分化させるための方法を提供する。特定の実施形態では、局所星状細胞への幹細胞の分化は、3つの段階:(a)局所パターン形成前駆体への幹細胞のインビトロ分化、(b)局所グリアコンピテント細胞への局所パターン形成前駆体のインビトロ分化、および(c)局所星状細胞への局所グリアコンピテント細胞のインビトロ分化または成熟を含む。特定の実施形態では、幹細胞を局所パターン形成前駆体にインビトロで分化させ、これを局所グリアコンピテント細胞にインビトロで分化させ、これを局所星状細胞にさらにインビトロで分化させる。特定の実施形態では、局所パターン形成前駆体は皮質前駆体であり、局所グリアコンピテント細胞は皮質グリアコンピテント細胞であり、局所星状細胞は皮質星状細胞である。特定の実施形態では、局所パターン形成前駆体は脊髄前駆体であり、局所グリアコンピテント細胞は脊髄グリアコンピテント細胞であり、局所星状細胞は脊髄星状細胞である。
5.3.1.皮質星状細胞への幹細胞のインビトロ分化
【0214】
特定の実施形態では、皮質前駆体への幹細胞のインビトロ分化の方法は、幹細胞を1つまたはそれを超えるSMADインヒビター(例えば、形質転換成長因子ベータ(TGFβ)/アクチビン-ノーダルシグナリングの1つもしくはそれを超えるインヒビターおよび/または1つもしくはそれを超えるBMPインヒビター)と接触させること、および細胞をWntシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビター(「Wntインヒビター」と称される)と接触させて、1つまたはそれを超える皮質前駆体マーカーを発現する少なくとも約10%の細胞を含む細胞集団を得ることを含む。皮質前駆体マーカーの非限定的な例としては、FOXG1、SOX2、ネスチンおよびTBR2が挙げられる。
【0215】
セクション5.2.1.1に開示されているSMADインヒビターはいずれも、これらの方法において使用され得る。
【0216】
Wntインヒビターの非限定的な例としては、XAV939、タンキラーゼインヒビター(例えば、Huangら、Nature 461,614-620(2009)に開示されているもの)、Dickkopf(Dkk)タンパク質、分泌Frizzled関連タンパク質(sFRP)、IWR(例えば、Chenら、Nature Chemical Biology 5(2):100-107(2009);およびKulakら、Molecular and Cellular Biology,4;35(14):2425-35(2015)に開示されているもの)、2,4-ジアミノ-キナゾリン(例えば、Chenら、Bioorganic&medicinal chemistry letters,1;19(17):4980-3(2009)に開示されている)、IWP(例えば、Chenら、Nat Chem Biol.2009 Feb;5(2):100-7に開示されている)、LGK974、C59(例えば、Proffittら、Cancer Res.2013 Jan 15;73(2):502-7に開示されている)、Ant1.4Br/Ant 1.4Cl(例えば、Morrellら、PLoS One.2008 Aug 13;3(8):e2930に開示されている)、ニクロサミド(例えば、Chenら、Biochemistry.2009 Nov 3;48(43):10267-74に開示されている)、アピクラレンおよびバフィロマイシン(例えば、Cruciatら、Science.2010 Jan 22;327(5964):459-63に開示されている)、G007-LKおよびG244-LM(例えば、Lauら、Cancer Res.2013 May 15;73(10):3132-44に開示されている)、ピルビニウム(例えば、Thorneら、Nat Chem Biol.2010 Nov;6(11):829-36に開示されている)、NSC668036(例えば、Shanら、Biochemistry.2005 Nov 29;44(47):15495-503に開示されている)、Quercetin(例えば、Parkら、Biochem Biophys Res Commun.2005 Mar 4;328(1):227-34に開示されている)、ICG-001(例えば、Emamiら、Proc Natl Acad Sci U S A.2004 Aug 24;101(34):12682-7に開示されている)、PKF115-584(例えば、Lepourceletら、Cancer Cell.2004 Jan;5(1):91-102に開示されている)、BC2059(例えば、Fiskusら、Leukemia.2015 Jun;29(6):1267-78に開示されている)、Shizokaol D(例えば、Tangら、PLoS One.2016 Mar 24;11(3):e0152012に開示されている)、2017年1月27日に出願された国際公開第2017/132596号に記載されているWntシグナリングインヒビター、2014年4月28日に出願された国際公開第2014/176606号に記載されているWntインヒビター(これらは、すべての目的のためにその全体が参照により組み込まれる)、それらの誘導体およびそれらの混合物が挙げられる。特定の実施形態では、1つまたはそれを超えるWntインヒビターはXAV939を含む。
【0217】
特定の実施形態では、XAV939は、化学式C14H11F3N2OSを有する3,5,7,8-テトラヒドロ-2-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]-4H-チオピラノ[4,3-d]ピリミジン-4-オンである。特定の実施形態では、XAV939は、以下の構造:
【化3】
を有する。
【0218】
幹細胞を皮質前駆体に分化させる方法は、国際公開第2017/132596号(これは、その全体が参照により組み込まれる)に開示されている任意の方法であり得る。
【0219】
特定の実施形態では、細胞を1つまたはそれを超えるSMADインヒビター(例えば、TGFβ)/アクチビン-ノーダルインヒビターおよびBMPインヒビター)および1つまたはそれを超えるWntインヒビターと少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、少なくとも約20日間またはそれを超えて接触させて、1つまたはそれを超える皮質前駆体マーカーを発現する少なくとも約10%の細胞を含む細胞集団を得る。特定の実施形態では、細胞を1つまたはそれを超えるSMADインヒビター(例えば、TGFβ)/アクチビン-ノーダルインヒビターおよびBMPインヒビター)および1つまたはそれを超えるWntインヒビターと約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20日間もしくはそれを超えておよび/または最大約4、最大約5、最大約6、最大約7、最大約8、最大約9、最大約10、最大約11、最大約12、最大約13、最大約14、最大約15、最大約16、最大約17、最大約18、最大約19、最大約20日間もしくはそれを超えて接触させて、1つまたはそれを超える皮質前駆体マーカーを発現する少なくとも約10%の細胞を含む細胞集団を得る。特定の実施形態では、細胞を1つまたはそれを超えるSMADインヒビター(例えば、TGFβ)/アクチビン-ノーダルインヒビターおよびBMPインヒビター)および1つまたはそれを超えるWntインヒビターと約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20日間またはそれを超えて接触させて、1つまたはそれを超える皮質前駆体マーカーを発現する少なくとも約10%の細胞を含む細胞集団を得る。
【0220】
特定の実施形態では、細胞を1つまたはそれを超えるSMADインヒビターと接触させる日は0日目に対応し、0~5日目、0~6日日目または0~7日目に、細胞をインヒビター(すなわち、1つまたはそれを超えるSMADインヒビターおよび1つまたはそれを超えるWntインヒビター)と接触させる。
【0221】
特定の実施形態では、細胞を、約1~20μM、約2~18μM、約4~16μM、約6~14μM、約8~12μMまたは約10μMの濃度の1つまたはそれを超えるTGFβ/アクチビン-ノーダルインヒビターと接触させる。特定の実施形態では、細胞を、約1~18μM、約1~16μM、約1~14μM、約1~12μM、約1~10μM、約1~8μM、約1~6μM、約1~4μMまたは約1~2μMの濃度の1つまたはそれを超えるTGFβ/アクチビン-ノーダルインヒビターと接触させる。特定の実施形態では、細胞を、約2~20μM、約4~20μM、約6~20μM、約8~20μM、約10~20μM、約12~20μM、約14~20μM、約16~20μMまたは約18~20μMの濃度の1つまたはそれを超えるTGFβ/アクチビン-ノーダルインヒビターと接触させる。
【0222】
特定の実施形態では、細胞を、約10~500nM、約25~475nM、約50~450nM、約100~400nM、約150~350nM、約200~300nMまたは約250nMまたは約100nMまたは約50nMの濃度の1つまたはそれを超えるBMPインヒビターと接触させる。特定の実施形態では、細胞を、約10~475nM、約10~450nM、約10~400nM、約10~350nM、約10~300nM、約10~250nM、約10~200nM、約10~150nM、約10~100nMまたは約10~50nMの濃度の1つまたはそれを超えるBMPインヒビターと接触させる。特定の実施形態では、細胞を、約25~500nM、約50~500nM、約100~500nM、約150~500nM、約200~500nM、約250~500nM、約300~500nM、約350~500nM、約400~500nMまたは約450~500nMの濃度の1つまたはそれを超えるBMPインヒビターと接触させる。
【0223】
特定の実施形態では、細胞を、約0.1~10μM、約0.5~8μM、約1~6μM、約2~5.5μMまたは約5μMまたは約2μM.または約1μMの濃度の1つまたはそれを超えるWntインヒビターと接触させる。特定の実施形態では、細胞を、約0.1~8μM、約0.1~6μM、約0.1~4μM、約0.1~2μM、約0.1~1μMまたは約0.1~0.5μMの濃度の1つまたはそれを超えるWntインヒビターと接触させる。特定の実施形態では、細胞を、約0.5~10μM、約1~10μM、約2~0μM、約4~10μM、約6~10μMまたは約8~10μMの濃度の1つまたはそれを超えるWntインヒビターと接触させる。
【0224】
特定の実施形態では、1つまたはそれを超えるSMADインヒビターと同時に、細胞を1つまたはそれを超えるWntインヒビターに曝露する。特定の実施形態では、細胞を1つまたはそれを超えるWntインヒビターに少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9または10日間またはそれを超えて曝露する。
【0225】
例えばセクション5.2.1.2に開示されている方法により、皮質前駆体を皮質グリアコンピテント細胞にさらに分化させ得る。例えばセクション5.2.1.3に開示されている方法により、皮質グリアコンピテント細胞を皮質星状細胞にさらに分化させ得る。
5.3.2.脊髄星状細胞への幹細胞のインビトロ分化
【0226】
特定の実施形態では、脊髄前駆体への幹細胞のインビトロ分化の方法は、幹細胞(例えば、ヒト幹細胞)を1つまたはそれを超えるSMADインヒビター(例えば、1つもしくはそれを超えるTGFβ/アクチビン-ノーダルインヒビターおよび/または1つもしくはそれを超えるBMPインヒビター)、レチノイン酸(「RA」)シグナリングの1つまたはそれを超えるアクチベーター(「RAアクチベーター」と称される)およびソニックヘッジホッグシグナリングの1つまたはそれを超えるアクチベーター(「SHHアクチベーター」と称される)と接触させて、1つまたはそれを超える脊髄前駆体マーカーを発現する少なくとも約10%の細胞を含む細胞集団を得ることを含む。RAアクチベーターの非限定的な例としては、RA、レチノール、レチナール、トレチノイン、イソトレチノイン、アリトレチノイン、エトレチナート、アシトレチン、タザロテン、ベキサロテン、アダパレン、2016年12月22日に出願された国際公開第2017/112901号に開示されているものが挙げられる)。
【0227】
本明細書で使用される場合、「ソニックヘッジホッグ(SHHまたはShh)」という用語(teen)は、ヘッジホッグと称される哺乳動物シグナル伝達経路ファミリーの少なくとも3つのタンパク質の1つであるタンパク質を指し、別のものはデザートヘッジホッグ(DHH)であり、第3のものはインディアンヘッジホッグ(IHH)である。SHHは、膜貫通分子Patched(PTC)およびSmoothened(SMO)と相互作用することにより、少なくとも2つの膜貫通タンパク質と相互作用する。典型的には、SHHはPTCに結合し、次いで、これがシグナルトランスデューサーとしてのSMOの活性化を可能にする。SHHの非存在下では、典型的には、PTCはSMOを阻害し、次にこれが転写リプレッサーを活性化するので、特定の遺伝子の転写は起こらない。SHHが存在し、PTCに結合する場合、PTCはSMOの機能に干渉し得ない。SMOが阻害されない場合、特定のタンパク質が核に入り、転写因子として作用して、特定の遺伝子の活性化を可能にする(Gilbert,2000 Developmental Biology(Sunderland,Mass.:Sinauer Associates,Inc.,Publishersを参照のこと)。
【0228】
SHHアクチベーターの非限定的な例としては、PTCに結合する分子、SMOに結合する分子が挙げられる。PTCに結合する分子の非限定的な例としては、SHH、組換えSHH(例えば、N末端SHH、例えばSHH C25II、SHH C24II)が挙げられる。SMOに結合する分子の非限定的な例としては、SMOアゴニスト(例えば、プルモルファミン)が挙げられる。本明細書で使用される場合、「ソニックヘッジホッグ(SHH)C25II」という用語は、SHHを活性化するためにSHH受容体に結合することができる完全長マウスソニックヘッジホッグタンパク質の組換えN末端断片を指し、一例は、R and D Systems catalog number:464-5H-025/CFである。
【0229】
本明細書で使用される場合、「プルモルファミン」という用語は、Smoothenedの標的化を含むヘッジホッグ経路を活性化するプリン誘導体、例えばCAS番号:483367-10-8を指す。一例については、以下の構造を参照のこと。
【化4】
【0230】
特定の実施形態では、プルモルファミンは、Stemolecule(商標)プルモルファミン,Stemgent,Inc.Cambridge,Mass.,United Statesである。2012年11月2日に出願された国際公開2013/067362号に開示されている任意のSHHアクチベーターが本明細書に記載される方法において使用され得る。
【0231】
脊髄前駆体マーカーの非限定的な例、FOXG1、SOX2、ネスチンおよびTBR2。
【0232】
特定の実施形態では、細胞を1つまたはそれを超えるSMADインヒビター(例えば、1つもしくはそれを超えるTGFβ/アクチビン-ノーダルインヒビターおよび/または1つもしくはそれを超えるBMPインヒビター)、1つまたはそれを超えるRAアクチベーターおよび1つまたはそれを超えるSHHアクチベーターと少なくとも約1、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、少なくとも約20日間もしくはそれを超えて、および/または最大約1、最大約2、最大約3、最大約4、最大約5、最大約6、最大約7、最大約8、最大約9、最大約10、最大約11、最大約12、最大約13、最大約14、最大約15、最大約16、最大約17、最大約18、最大約19、最大約20日間もしくはそれを超えて接触させて、1つまたはそれを超える脊髄前駆体マーカーを発現する少なくとも10%の細胞を含む細胞集団を得る。特定の実施形態では、細胞を1つまたはそれを超えるSMADインヒビター、1つまたはそれを超えるRAアクチベーターおよび1つまたはそれを超えるSHHアクチベーターと約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20日間またはそれを超えて接触させる。
【0233】
特定の実施形態では、細胞を1つまたはそれを超えるSMADインヒビターと接触させる日は0日目に対応し、1~12日目に、細胞を1つまたはそれを超えるSMADインヒビター、1つまたはそれを超えるRAアクチベーターおよび1つまたはそれを超えるSHHアクチベーターと接触させる。
【0234】
特定の実施形態では、1つまたはそれを超えるSMADインヒビターと同時に、細胞を1つまたはそれを超えるRAアクチベーターおよび1つまたはそれを超えるSHHアクチベーターに曝露する。特定の実施形態では、1つまたはそれを超えるRAアクチベーターおよび1つまたはそれを超えるSHHアクチベーターへの細胞の初期曝露は、1つまたはそれを超えるSMADインヒビターへの細胞の初期曝露から約1、2、3、4、5日間であるかまたはそれを超える。
【0235】
特定の実施形態では、細胞を1つまたはそれを超えるRAアクチベーターおよび1つまたはそれを超えるSHHアクチベーターに少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15日間またはそれを超えて曝露する。
【0236】
特定の実施形態では、細胞を、約1~20μM、約2~18μM、約4~16μM、約6~14μM、約8~12μMまたは約10μMの濃度の1つまたはそれを超えるTGFβ/アクチビン-ノーダルインヒビターと接触させる。特定の実施形態では、細胞を、約1~18μM、約1~16μM、約1~14μM、約1~12μM、約1~10μM、約1~8μM、約1~6μM、約1~4μMまたは約1~2μMの濃度の1つまたはそれを超えるTGFβ/アクチビン-ノーダルインヒビターと接触させる。特定の実施形態では、細胞を、約2~20μM、約4~20μM、約6~20μM、約8~20μM、約10~20μM、約12~20μM、約14~20μM、約16~20μMまたは約18~20μMの濃度の1つまたはそれを超えるTGFβ/アクチビン-ノーダルインヒビターと接触させる。
【0237】
特定の実施形態では、細胞を、約10~500nM、約25~475nM、約50~450nM、約100~400nM、約150~350nM、約200~300nMまたは約250nMまたは約100nMまたは約50nMの濃度の1つまたはそれを超えるBMPインヒビターと接触させる。特定の実施形態では、細胞を、約10~475nM、約10~450nM、約10~400nM、約10~350nM、約10~300nM、約10~250nM、約10~200nM、約10~150nM、約10~100nMまたは約10~50nMの濃度の1つまたはそれを超えるBMPインヒビターと接触させる。特定の実施形態では、細胞を、約25~500nM、約50~500nM、約100~500nM、約150~500nM、約200~500nM、約250~500nM、約300~500nM、約350~500nM、約400~500nMまたは約450~500nMの濃度の1つまたはそれを超えるBMPインヒビターと接触させる。
【0238】
特定の実施形態では、細胞を、約0.1~10μg/ml、約0.1~5μg/ml、約0.1~4μg/ml、約0.1~3μg/ml、約0.1~2μg/ml、約0.1~1μg/mlの濃度の1つまたはそれを超えるRAアクチベーター(例えば、RA)と接触させる。特定の実施形態では、細胞を、約1μg/mlの濃度の1つまたはそれを超えるRAアクチベーター(例えば、RA)と接触させて、脊髄前駆体を産生する。
【0239】
例えばセクション5.2.1.2に開示されている方法により、脊髄前駆体を脊髄グリアコンピテント細胞にさらに分化させ得る。例えばセクション5.2.1.3に開示されている方法により、脊髄グリアコンピテント細胞を脊髄星状細胞にさらに分化させ得る。
【0240】
分化星状細胞またはその前駆体は、例えば細胞培養培地における分化後に精製され得る。本明細書で使用される場合、「精製された」、「精製する」、「精製」、「単離された」、「単離する」および「単離」という用語は、サンプルからの少なくとも1つの夾雑物の量の減少を指す。例えば、所望の細胞型は、少なくとも10%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも99.5%または少なくとも99.9%またはそれを超えて精製され、望ましくない細胞型の量の対応する減少が起こる。「精製する」という用語は、サンプルからの特定の細胞(例えば、望ましくない細胞)の除去を指し得る。非星状細胞またはその前駆体の除去または選択は、サンプル中の所望の細胞の割合の増加をもたらす。特定の実施形態では、細胞は、混合細胞集団を、少なくとも1つの星状細胞マーカーを発現する細胞に選別することにより精製される。特定の実施形態では、細胞は、混合細胞集団を、少なくとも1つの星状細胞マーカー、例えばGFAP、AQP4、CD44、S100b、SOX9、GLT-1、CSRP1および/またはNFIAまたはそれらの組み合わせを発現する細胞に選別することにより精製される。
5.4.分化細胞集団を含む組成物
【0241】
本開示の主題はさらに、本明細書に記載されるインビトロ分化方法により産生される分化NSCの集団を含む組成物を提供する。さらに、本開示の主題は、本明細書に記載される方法によりインビトロ分化NSCから分化されたグリアコンピテント細胞の集団を含む組成物を提供する。加えて、本開示の主題は、本明細書に記載される方法によりインビトロ分化グリアコンピテント細胞から分化または成熟された星状細胞の集団を含む組成物を提供する。特定の実施形態では、グリアコンピテント細胞は星状細胞前駆細胞である。
【0242】
特定の実施形態では、本開示の主題は、インビトロ分化細胞の集団を含む組成物であって、細胞の集団の少なくとも約50%(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%)が1つまたはそれを超えるNSCマーカーを発現し、細胞の集団の約25%未満(例えば、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満または約0.1%未満)が1つまたはそれを超える幹細胞マーカーを発現する組成物を提供する。
【0243】
さらに、本開示の主題は、インビトロ分化細胞の集団を含む組成物であって、細胞の集団の少なくとも約50%(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%)が1つまたはそれを超えるグリアコンピテントNSCマーカーまたはグリアコンピテント細胞マーカーを発現し、細胞の集団の約25%未満(例えば、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満または約0.1%未満)が、幹細胞マーカー、NSCマーカーおよびニューロンマーカーからなる群より選択される1つまたはそれを超えるマーカーを発現する組成物を提供する。
【0244】
さらに、本開示の主題は、インビトロ分化細胞の集団を含む組成物であって、細胞の集団の少なくとも約50%(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%)が1つまたはそれを超える星状細胞マーカーを発現し、細胞の集団の約25%未満(例えば、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満または約0.1%未満)が、幹細胞マーカー、NSCマーカー、ニューロンマーカーおよびグリアコンピテント細胞マーカーからなる群より選択される1つまたはそれを超えるマーカーを発現する組成物を提供する。
【0245】
幹細胞マーカーの非限定的な例としては、OCT4、NANOG、SOX2、LIN28、SSEA4およびSSEA3が挙げられる。
【0246】
神経幹細胞マーカーの非限定的な例としては、PAX6、ネスチン、SOX1、SOX2、PLZF、ZO-1およびBRN2が挙げられる。特定の実施形態では、神経幹細胞マーカーは、PAX6、SOX1、PLZFおよびZO-1からなる群より選択される。
【0247】
グリアコンピテント細胞マーカーの非限定的な例としては、CD44、AQP4、SOX2およびネスチンが挙げられる。特定の実施形態では、グリアコンピテント細胞マーカーは、CD44およびAQP4からなる群より選択される。
【0248】
ニューロンマーカーの非限定的な例としては、Tuj1、MAP2およびDCXが挙げられる。
【0249】
星状細胞マーカーの非限定的な例としては、GFAP、AQP4、CD44、S100b、SOX9、NFIA、GLT-1およびCSRP1が挙げられる。
【0250】
特定の実施形態では、分化細胞集団は、ヒト幹細胞の集団に由来する。本開示の主題はさらに、このような分化細胞集団を含む組成物を提供する。
【0251】
特定の実施形態では、組成物は、約1×10個~約1×1010個、約1×10個~約1×10個、約1×10個~約1×10個、約1×10個~約1×10個、約1×10個~約1×10個、約1×10個~約1×10個、約1×10個~約1×10個、約1×10個~約1×10個、約1×10個~約1×10個、約1×10個~約1×1010個または約1×10個~約1×1010個の本開示の幹細胞由来グリアコンピテント細胞または星状細胞の集団を被験体に投与することを含む。特定の実施形態では、組成物は、約1×10個~約1×10個の本開示のグリアコンピテント細胞または星状細胞の集団を含む。特定の実施形態では、グリアコンピテント細胞は星状細胞前駆細胞である。
【0252】
特定の実施形態では、前記組成物は凍結されている。特定の実施形態では、前記組成物は、1つまたはそれを超える凍結防止剤、例えば限定されないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、ポリエチレングリコール、スクロース、トレハロース、デキストロースまたはそれらの組み合わせをさらに含み得る。
【0253】
特定の非限定的な実施形態では、組成物は、生体適合性のある足場またはマトリックス、例えば、細胞が被験体に埋め込まれる(implanted)または移植される(grafted)と組織再生を容易にする、生体適合性のある三次元足場をさらに含む。特定の非限定的な実施形態では、生体適合性のある足場は、細胞外マトリックス材料、合成ポリマー、サイトカイン、コラーゲン、ポリペプチドもしくはタンパク質、フィブロネクチン、ラミニン、ケラチン、フィブリン、フィブリノゲン、ヒアルロン酸、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、アガロースもしくはゼラチンを含む多糖、および/またはヒドロゲルを含む。(例えば、米国特許出願公開第2015/0159135号、米国特許出願公開第2011/0296542号、米国特許出願公開第2009/0123433号および米国特許出願公開第2008/0268019号(これらの内容はそれぞれ、その全体が参照により組み込まれる)を参照のこと)。
【0254】
特定の実施形態では、組成物は、薬学的に許容され得る担体、賦形剤、希釈剤またはそれらの組み合わせを含む医薬組成物である。組成物は、本明細書に記載される神経変性障害を予防および/または処置するために使用され得る。
【0255】
本開示の主題はまた、本明細書に開示される分化細胞またはそれを含む組成物を含むデバイスを提供する。デバイスの非限定的な例としては、シリンジ、微細ガラスチューブ、定位針およびカニューレが挙げられる。
5.5 神経変性障害を予防および/または処置する方法
【0256】
1つまたはそれを超える星状細胞マーカーを発現するインビトロ分化細胞(「幹細胞由来星状細胞」とも称される)またはその前駆体は、神経変性障害を予防および/または処置するために使用され得る。本開示の主題は、神経変性障害を予防および/または処置する方法であって、有効量の本開示の幹細胞由来星状細胞および/もしくはその前駆体またはそれを含む組成物を、神経変性障害を患っている被験体に投与することを含む方法を提供する。神経変性障害の非限定的な例としては、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)およびレット症候群が挙げられる。本開示の主題はまた、神経傷害による損傷、例えば虚血または脳卒中の重症度を軽減する方法であって、有効量の本開示の幹細胞由来星状細胞および/もしくはその前駆体またはそれを含む組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0257】
神経変性障害を処置もしくは予防するかまたは神経傷害による損傷を軽減するために、本開示の幹細胞由来星状細胞およびその前駆体またはそれを含む組成物は、被験体に全身的または直接的に投与または提供され得る。特定の実施形態では、本開示の幹細胞由来星状細胞およびその前駆体またはそれを含む組成物は、目的の器官(例えば、中枢神経系(CNS))に直接的に注射される。
【0258】
本開示の幹細胞由来星状細胞およびその前駆体またはそれらを含む組成物は、任意の生理的に許容され得るビヒクルにより投与され得る。本開示の幹細胞由来の細胞および薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物も提供される。本開示の幹細胞由来星状細胞およびその前駆体、ならびにそれらを含む医薬組成物は、局所注射、同所性(OT)注射、全身注射、静脈内注射、または非経口投与を介して投与され得る。特定の実施形態では、本開示の幹細胞由来星状細胞およびその前駆体は、神経変性障害を患っている被験体に、同所性(OT)注射を介して投与される。
【0259】
本開示の幹細胞由来星状細胞およびその前駆体、ならびにそれらを含む医薬組成物は、好都合には、無菌液体調製物、例えば等張水溶液、懸濁液、乳濁液、分散液、または粘性組成物として提供することができ、これらは、選択されたpHに緩衝され得る。液体調製物は、普通は、ゲル、他の粘性組成物、および固体組成物よりも容易に調製される。さらに、液体組成物は、特に注射により投与するために、いくらかより好都合である。他方では、粘性組成物は、特定の組織とより長期間接触させるために適切な粘度範囲内で製剤化され得る。液体または粘性組成物は、担体を含むことができ、この担体は、例えば、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)および適切なそれらの混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。注射可能な滅菌液剤は、本開示の主題の組成物、例えば本開示の幹細胞由来の前駆体を含む組成物を、所望に応じて様々な量の他の成分と共に、必要量の適切な溶媒に組み込むことにより調製され得る。このような組成物は、例えば滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどの、適切な担体、希釈剤、または賦形剤の混合物で存在し得る。また組成物は、凍結乾燥させることができる。組成物は、所望の投与経路および調製物に応じて、湿潤剤、分散化剤、または乳化剤(例えば、メチルセルロース)、pH緩衝剤、ゲル化添加物または増粘添加物、保存剤、香味剤、着色剤などの補助物質を含有し得る。過度の実験なしに適切な調製物を調製するために、“REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCE”,17th edition,1985(これは、参照により本明細書に組み込まれる)などの標準書を参考にし得る。
【0260】
抗菌性保存剤、抗酸化剤、キレート剤、および緩衝剤を含む組成物の安定性および無菌性を増強する様々な添加物を添加し得る。微生物作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などにより確保され得る。注射可能な医薬形態の持続的吸収は、吸収遅延剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム(alum inurn monostearate)およびゼラチンを使用することによりもたらされ得る。しかしながら、本開示の主題によれば、使用される任意のビヒクル、希釈剤、または添加物は、本開示の幹細胞由来星状細胞およびその前駆体と適合しなければならない。
【0261】
組成物の粘度は、所望に応じて薬学的に許容され得る増粘剤を使用して、選択されたレベルに維持され得る。メチルセルロースは、容易に、経済的に利用可能であり、取り扱いが容易であるため使用され得る。他の適切な増粘剤には、例えば、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマーなどが含まれる。増粘剤の濃度は、選択される薬剤に応じて決まり得る。重要な点は、選択された粘度を達成する量を使用することである。明らかに、適切な担体および他の添加物の選択は、正確な投与経路、および特定の剤形、例えば液体剤形の性質(例えば、組成物を、液剤、懸濁剤、ゲル剤または別の液体形態、例えば持続放出形態または液体充填形態のいずれに製剤化すべきか)に応じて決まる。
【0262】
当業者は、組成物の構成成分が、化学的に不活性であるように選択されるべきであり、本開示の幹細胞由来星状細胞およびその前駆体の生存率または有効性に影響を及ぼさないことを認識されよう。このことは、当業者にとって、化学的および薬学的原理の問題にならず、または問題は、標準書を参照することによりもしくは簡単な実験により(過度の実験を伴わない)、本開示および本明細書に引用される文献から容易に回避され得る。
【0263】
本開示の幹細胞由来星状細胞およびその前駆体の治療上の使用に関する1つの考察は、最適な効果を達成するために必要な細胞の量である。最適な効果としては、限定されないが、神経変性障害を患っている被験体の中枢神経系(CNS)もしくは末梢神経系(PNS)領域への再配置(repopulation)、ならびに/または被験体のCNSおよび/もしくはPNS機能の改善が挙げられる。
【0264】
「有効量」(または「治療有効量」)は、処置した際の有益なまたは所望の臨床的な結果に影響を及ぼすのに十分な量である。有効量は、1つまたはそれを超える用量で被験体に投与され得る。処置に関して、有効量とは、神経変性障害の進行を緩和し、回復させ、安定化し、逆行させ、もしくは緩徐するか、または神経変性障害の病理学的結果を他の方法で軽減するか、または神経傷害による損傷の重症度を軽減するために十分な量である。有効量は、一般に、個々の場合に応じて医師により決定され、当業者の知識の範囲内である。典型的に、有効量を達成するために適切な投与量を決定する場合には、複数の因子が考慮される。これらの因子には、被験体の年齢、性別および体重、処置を受ける状態、状態の重症度、ならびに投与される細胞の形態および有効濃度が含まれる。
【0265】
特定の実施形態では、本開示の幹細胞由来星状細胞およびその前駆体の有効量は、神経変性障害を患っている被験体のCNSまたはPNS領域に再配置させるために十分な量である。
【0266】
特定の実施形態では、本開示の幹細胞由来星状細胞およびその前駆体の有効量は、神経変性障害を患っているかまたは神経傷害を経験した被験体のCNSおよび/またはPNSの機能を改善するために十分な量であり、例えば、改善された機能は、正常者のCNSおよび/またはPNSの機能の約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約98%、約99%または約100%であり得る。
【0267】
投与される細胞の量は、処置を受ける被験体ごとに変わる。特定の実施形態では、約1×10~約1×1010個、約1×10~約1×10個、約1×10~約1×10個、約1×10~約1×10個、約1×10~約1×10個、約1×10~約1×10個、約1×10~約1×10個、約1×10~約1×10個、約1×10~約1×10個、約1×10~約1×1010個または約1×10~約1×1010個の本開示の幹細胞由来細胞が投与される。
5.6 キット
【0268】
本開示の主題は、幹細胞の分化を誘導するためのキットを提供する。特定の実施形態では、キットは、以下:(a)形質転換成長因子ベータ(TGFβ)/アクチビン-ノーダルシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビター、(b)BMPシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビター、(c)1つまたはそれを超えるNFIAアクチベーター、(d)LIF、1つもしくはそれを超えるその誘導体、類似体および/またはアクチベーター、(e)FBS、ならびに(f)1つまたはそれを超える星状細胞マーカーを発現する分化細胞またはその前駆体細胞の集団への幹細胞の分化を誘導するための指示の1つまたはそれよりも多くを含む。
【0269】
本開示の主題はまた、1つまたはそれを超える星状細胞マーカーを発現する分化細胞またはその前駆体細胞の集団を含むキットであって、該細胞が、本明細書に記載される方法にしたがって調製されるキットを提供する。特定の実施形態では、細胞は、医薬組成物に含まれる。
【実施例
【0270】
6.実施例
本開示の主題は、本開示の主題の例として、限定のためではなく提供される、以下の実施例を参照することにより、より良く理解される。
6.1 実施例1:幹細胞の集団におけるNFIA発現レベルをモジュレートすることにより、幹細胞由来星状細胞を調製する方法
【0271】
二重SMAD阻害法(TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナリングのインヒビターであるSB431542、およびBMPシグナリングのインヒビターであるLDN193189)を使用して、ヒト多能性幹細胞からLTNSC(またはLT-hESCNSC)を誘導した(Chambersら、Nature Biotechnology 27,275-280(2009))。細胞を単層として12日間培養し、次いで、20ng/ml FGF2および20ng/ml EGFを含有するニューロスフェア培養物(非接着プレート)に入れた。次いで、スフェアを、ポリオルナチン、ラミニンおよびフィブロネクチンコーティングディッシュに載せて、成長を可能にした。LTNSCであると決定される前に、細胞を約10継代にわたって継続的に継代した(図1A)。LTNSCの形態は、非常に初期の神経外胚葉に似ていた(図1B)。LTNSCは、いくつかの重要な神経幹細胞(NSC)マーカー、例えばSOX2、ネスチンおよびSOX1を発現したが、PLZFも発現し、ZO-1の限局性発現を示したが、これは、ロゼットまたは初期NSC性質を示していた(図1C)。LTNSCは、前脳マーカーを発現し始めるにつれて局所同一性を喪失するが、それぞれGBX2およびNKX2.1発現により表されるように、より長い培養時間では、より尾側および腹側になる(図1Dおよび1E)。分化誘導培地にもかかわらず、FBS条件下であっても、細胞のこの集団は迅速にニューロンになった(図1F)。
【0272】
LTNSC集団は、グリアコンピテンシーを示唆するマーカー(すなわち、グリアコンピテント細胞のマーカー)、例えばCD44、GFAPおよびAQP4を発現しなかった。これらの細胞はまたTUJ1陰性であったが、これは、ほぼ100%の神経幹細胞であるという同種性を示している(図2A)。グリア形成分子(すなわち、LIFおよびBMP4)を含有する培地中でLTNSCを培養すると、短期では、これらの細胞はGFAP+星状細胞ではなくニューロンになった(図2B)。しかしながら、LIF/CNTF、BMP4またはFBSを含む様々な条件で、神経ロゼットまたはLTNSCのいずれかをより長い培養時間(約30日間)培養すると、AQP4およびGFAPの発現により同定されるように、FBS条件では、一部の細胞はグリアコンピテンシーを獲得した。FBS条件では、グリア形成因子の発現が評価され、FBSで培養すると、他の処理と比較して、SOX9およびNFIAの発現がより強化された(図3)。
【0273】
星状細胞への幹細胞の分化に対するNFIA発現の効果を調べた。NFIA cDNAをドキシサイクリン誘導性ベクターにクローニングすることにより、NFIAの過剰発現を達成した。細胞を構築物によるウイルス感染に供し、NFIAの発現について評価した(図4A)。7日間のドキシサイクリン処理後、NFIA誘導細胞がCD44(細胞表面マーカー)を発現した細胞集団では、大きな形態学的変化があった。FBSで細胞を培養すると、GFAPの発現が観察された(図4B)。NFIAの発現を除去した後、グリアコンピテント因子が星状細胞へのNFIA曝露細胞の分化を促進することができるかを決定した。特にFGF2の非存在下では、LIF、BMP4およびFBSはGFAPの発現を増強した(図4C)。
【0274】
NFIAはグリアコンピテンシーの獲得を可能にするが、グリア分化に対して阻害的である。NFIAで誘導した細胞は、GFAPをアップレギュレートすることができない(図5)。しかしながら、その後のNFIA発現の減少およびLIFによる培養は、GFAPの発現を増加させた。NFIA発現の増加は、グリアコンピテント細胞のマーカーであるCD44発現の対応する増加を誘導した。ニューロン形成細胞におけるGFAP発現は、STAT3 CpG部位におけるメチル化により遮断されるが、GFAPが発現されるグリア細胞では、この部位は脱メチル化される。NFIAにより誘導したCD44+細胞では、STAT3 CpG部位は脱メチル化された(図6)。
【0275】
ドキシサイクリンの制御下で、組換えNFIA誘導性hESC系も作り出した。二重SMAD阻害を使用して、グリアコンピテントNSCおよび星状細胞を約20日間の培養で生成したところ(図7)、EGF/FGF2による培養などの他のプロトコールと比較して分化が3.5~10倍加速された。図8は、幹細胞を星状細胞に分化させるための細胞培養プロトコールおよびタイムラインの概要である。
【0276】
本実施例により記載されているように、幹細胞におけるNFIAの発現レベルを増加させることにより、グリアコンピテント細胞マーカーの発現が増加したが、星状細胞への分化は阻害された。グリアコンピテント細胞のNFIA発現を減少させることにより、星状細胞への細胞の分化が可能になった。
6.2 実施例2:野生型星状細胞は、脊髄運動ニューロン(sMN)および眼球運動ニューロン(oMN)の細胞死を減少させる。
【0277】
SOD1変異A4Vは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)ならびにその結果として起こるsMNおよびoMN細胞の細胞死の1つの原因である。SOD1A4V変異星状細胞の存在がsMNおよびoMN細胞の生存に影響を及ぼすかを調べるために、sMNおよびoMN細胞を、上記のように野生型または野生型SOD1A4V前駆体のいずれかから分化させた星状細胞と共に培養した。sMNおよびoMNを星状細胞と共に最大15日間培養し、VACHT+細胞を測定することにより、細胞生存を決定した。野生型星状細胞とのoMNの培養は、SOD1A4V星状細胞との培養と比較して、運動ニューロンの生存を増加させたが、野生型星状細胞は、SOD1A4V星状細胞と比較してsMNの細胞死を減少させた(図9)。
6.3 実施例3:NFIAは、G1細胞周期の長さをモジュレートすることにより、多能性幹細胞からの機能的ヒト星状細胞の迅速な誘導を可能にする
概要
【0278】
星状細胞は、ヒト脳における最も豊富なグリア細胞型であり、その機能不全は、神経発達障害および神経変性障害の両方の病因の駆動因子である。星状細胞は、後期神経幹細胞(NSC)に由来する。初期発生では、NSCはニューロンのみを産生するように運命制限されるが、より後期段階では、それらは、ニューロン形成コンピテンシーからグリア形成コンピテンシーへのスイッチを受けて、星状細胞および乏突起膠細胞が漸進的に産生される。グリア形成スイッチの分子的性質は依然として理解し難く、そのタイミングは、マウスにおける7日間からヒト発生における6~9カ月間まで種間で劇的に変動する。これらの種特異的タイミング差は、ヒト多能性幹細胞(hPSC)に由来するNSCにも同様に適用される。hPSCにおいてグリアコンピテンシーを獲得するタイミングが非常に長期であることは、基本的およびトランスレーショナルな用途のためにヒト星状細胞の誘導を探求する上で大きな障壁となる。
【0279】
ここでは、核因子IA(NFIA)は、ヒトグリアコンピテンシーを誘導するための分子スイッチであることが同定された。グリア促進因子の存在下における5日間のNFIAの一過性発現は、現在のプロトコールを使用した3~6カ月間の分化と比較して、hPSC由来星状細胞を生成するために十分であった。NFIA誘導星状細胞はシナプス形成を促進し、神経保護特性を示し、適切な刺激に応答してカルシウムトランジェントを示し、成体脳に生着した。最後に、活性化星状細胞の特徴を発現するようにNFIA誘導星状細胞を誘導した。NFIA誘導グリアコンピテンシーの根底にある機構は、迅速だが可逆的なクロマチンリモデリング、GFAPプロモーターの脱メチル化、および細胞周期のG1期の顕著な延長を伴う。G1の長さの遺伝的または薬理学的な操作は、グリアコンピテンシーにおけるNFIA機能を部分的に模倣した。この研究は、グリア形成スイッチの重要な機構的特徴を定義することにより、ならびに疾患モデリングおよび再生医療のためにヒト星状細胞の迅速な産生を可能にすることにより、hPSCおよびグリア生物学の大きな障壁に対処した。
方法および材料
細胞培養
【0280】
10ng/ml FGF2(R&D Systems,233-FB-001MG/CF)を含有する以前に記載されている幹細胞維持培地(Chambersら)中、放射線照射マウス胚線維芽細胞(Global Stem)上で、ヒト多能性幹細胞を維持した。細胞を2~3カ月ごとにマイコプラズマ試験に供した。10ng/ml FGF2、10ng/ml EGFおよび1:1000 B27サプリメントを含むN2培地からなるNSC培地中、ポリオルニチン(PO)、ラミニン(Lam)およびフィブロネクチン(FN)コーティングディッシュ上で、神経幹細胞およびグリア前駆体を維持した。10ngのHB-EGF(R&D Systems,259-HE)を含むN2培地からなる星状細胞培地中、PO/Lam/FNコーティングディッシュ上で、星状細胞を維持した。
hPSCからの前部前脳神経外胚葉の誘導
【0281】
ヒト多能性幹細胞(細胞2.5~3.0×10個/cm)を単一細胞に解離し、10uM ROCKインヒビター(Y-27632)を含有する幹細胞維持培地中、マトリゲル(BD Biosciences)コーティングディッシュ上にプレーティングした。翌日、培地を神経誘導培地(15%KSR、L-グルタミン、NEAA、100nM LDN193189(LDN,Stemgent)および10μM SB431542(SB,Tocris)を含むノックアウトDMEM)に変更した(これが分化0日目に相当する)。以前に記載されているように、4~10日目に、KSR成分を徐々に減少させ、漸増量のN2培地で置き換える49。前部前脳の運命を促進するために、0~5日目に、2μM XAV939(Stemgent)を神経誘導培地に添加する50。分化10~12日目に、細胞を使用して、a.)ロゼット期NSCまたはb.)LTNSCのいずれかを生成した。
【0282】
a.)ロゼット期NSCの生成。Accutaseで分化細胞を30分間解離し、細胞を0.45ミクロンセルストレーナーに通し、ペレット化した。次いで、細胞を、10ng/ml脳由来神経栄養因子(BDNF)、10mMアスコルビン酸(AA)および1ng/mlソニックヘッジホッグ(SHH)を含有するN2培地に細胞4×10個/μlの濃度で再懸濁した。20μlの液滴を乾燥PO/Lam/FNプレート上に作る。細胞が沈降した後、BDNF、AAおよびSHHを含有するN2培地を残りのディッシュに充填する。3~5日間の培養までに、神経ロゼット形成が現れるはずである。
【0283】
b.)LTNSCの生成。10%Dispaseを使用して、分化細胞を10分間解離した。次いで、細胞を塊として分離し、20ng/ml FGF2を含有するN2培地に再懸濁し、滅菌非TC処理ディッシュで培養した。細胞は多数のニューロスフェアを形成し、3~5日までに、スフェア内の神経ロゼット形成が現れるはずである。ニューロスフェア培養物が純粋になると、それらをPO/Lam/FNプレートに載せ、10ng/ml FGF2、10ng/ml EGFおよび1:1000 B27サプリメントを含むN2(NSC培地)で培養する。コンフルエンシーまでロゼット期NSCの成長が観察され、次いで、高密度(およそ1:3継代)で2~3カ月間かけて継代する。10継代まで神経上皮形態を維持する細胞をNSC培地で維持し、初期NSCマーカーおよび分化能について分析した。
脊髄運動ニューロン(SMN)誘導プロトコール
【0284】
以前に記載されているように、ヒト多能性幹細胞を脊髄運命に分化させた23。簡潔に言えば、人工多能性細胞をマトリゲルコーティングディッシュに播種し、LDN、SBおよびレチノイン酸(1μg/ml)で10~12日間分化させた。細胞を解離し、BDNF、AAおよびグリア由来神経栄養因子(GDNF)を含むN2培地で14日間培養した。
星状細胞誘導プロトコール
【0285】
典型的には、FUW-NFIAおよびFUW-M2-rtTAを含有するレンチウイルス粒子を局所パターン形成神経幹細胞に感染させ、感染の翌日にドキシサイクリン(dox)で誘導する。dox培地で細胞を最低5日間維持し、次いで、doxを含まない星状細胞誘導培地(10ng/ml HB-EGF(R&DSystems)および10ng/ml白血病抑制因子(Peprotech)を含むN2培地)に最低5日間交換する。CD44を使用して、グリア前駆体および星状細胞を単離し得る。
免疫組織化学およびCD44のFACS分析
【0286】
免疫組織化学では、4%パラホルムアルデヒド(EMS)を含有するPBSで細胞を10分間固定し、0.5%Triton-Xを含むPBSを使用して5分間透過処理し、0.2%Tween-20を含むPBSで保存した。ブロッキング溶液は、0.2%Tween-20を含むPBS中5%ロバ血清を含有していた。ブロッキング溶液で一次抗体を希釈し、典型的には4℃で一晩インキュベートした。Alexa488、Alexa555またはAlexa647(Thermo)にコンジュゲートした二次抗体を細胞に添加し、30分間インキュベートした。4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI、Thermo)で細胞を染色することにより、核を同定した。この研究で使用した抗体のリストは、表1に示されている。
【表1】
【0287】
FACSおよび分析では、0.05%トリプシンを使用して細胞を解離し、血清含有培地で不活性化した。次いで、細胞を選別バッファー(1mM EDTAおよび2%FBSを含む1倍PBS)に再懸濁し、CD44-Alexa647抗体(Biolegend)と共に氷上で30分間インキュベートした。次いで、細胞を、Flowjoソフトウェアを使用した選別または分析に供した。
NFIAおよびSOX9誘導性構築物の生成およびレンチウイルス産生
【0288】
hPSC由来アストログリア前駆体由来のcDNAから、NFIAおよびSOX9をクローニングした(90日目)。EcoRIでFUW-tetO-GFP(Addgene 30130)を消化してGFP断片を除去し、伝統的なライゲーションクローニングを使用してNFIAまたはSOX9を挿入した。NFIA、SOX9、FUCCI-OまたはM2-rtTA(Addgene 20342)を含有するプラスミド、psPAX2(Addgene 12260)パッケージングベクターおよびpMD2.G(Addgene 12259)エンベロープを、X-tremeGene HP(Sigma)を使用して293T細胞にそれぞれ1:2:1のモル比でトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後および72時間後にウイルスを回収し、AMICON Ultra-15 Centrifugal Filter Units(Millipore)を使用して濃縮した。
遺伝子発現およびATAC-Seq分析
【0289】
RNA配列決定:アダプターのために未加工FASTQファイルをトリミングし、STAR2.5.0を使用してENSEMBL GRCh38ゲノムビルドにアライメントした。HTSeq51を使用してアライメントしたファイルからマトリックスを生成し、標準パイプラインを使用したさらなる分析のためにDESeq252にインポートした。
【0290】
ATAC配列決定:Bowtie253を使用して未加工FASTQファイルをhg19ゲノムビルドにアライメントした。deepToolsソフトウェアパッケージ54を使用して、アライメントファイルの比較分析を実施した。HOMERソフトウェア55を使用してモチーフ分析およびピークアノテーションを実施し、IGVブラウザー56を使用して視覚化した。すべてのFASTQファイルおよび補足ファイルは、アクセッションGSE104232でNCBI GEOにアップロードされている。
細胞周期分析
【0291】
細胞を解離し、細胞周期分析のために核を単離した。ヨウ化プロピジウム(propidium iodine)(250ng/ml)を細胞に添加し、FACSにより分析した。1条件当たり最低10,000個の事象を分析した。取得したデータをインポートし、Flowjoソフトウェアにより分析した。
成体皮質へのNSC、グリア前駆体および星状細胞の移植
【0292】
すべての手術はNIHガイドラインにしたがって実施し、地方施設内動物管理使用委員会(IACUC)、施設内生物安全委員会(IBC)および胚性幹細胞研究委員会(ESCRO)により承認された。合計8(または20)匹の[CF1] NOD-SCID IL2-Rgcヌルマウス(20~35g;Jackson Laboratory)が細胞移植を受けた。イソフルラン5%でマウスを麻酔し、2~3%の維持流量を維持した(kipping)。定位マイクロマニピュレーターに取り付けた注入ポンプにより、1μl/分の速度で5μlハミルトンシリンジを介して、合計7×10個のNFIA誘導星状細胞を2μlで脳梁膝に移植した(座標:ブレグマからAP+0.740、ML-1.00、DV-2.30)。2μl当たり合計2×10個のLTNSCを皮質下灰白質、線条体(座標 ブレグマからAP+0.500、ML-1.900、DV-3.200)に移植した。2μlで合計7.5×10個のH1由来星状細胞GFPを脳梁膝に移植した(座標:ブレグマからAP+0.740、ML-1.00、DV-2.30)。IHC分析のために、移植の1、6および12週間後にマウスを屠殺した。
組織処理
【0293】
ペントバルビタールの腹腔内過剰投与でマウスを安楽死させ、リン酸緩衝食塩水、次いでパラホルムアルデヒド(PFA)4%を経心臓的に灌流させた。慎重な解剖の後に脳を摘出し、4%PFAで一晩維持し、次いで、30%スクロースに2~3日間浸漬した。O.C.T(Sakura Finetek)で脳を包埋した後、クリオスタットにより、厚さ30μmの脳冠状切開を-20℃で実施した。
カルシウムイメージング
【0294】
hPSC由来神経幹細胞または星状細胞および初代星状細胞(Sciencell)をPO/ラミニン/フィブロネクチンコーティング0.5mmブラックΔTディッシュ(Bioptechs)上にプレーティングし、hPSCから60~120日目に以前に記載されているように57カルシウムイメージングに使用した。培養物を5uMのFura-2(Thermo)と共に37℃で30分間インキュベートし、ディッシュをΔT Heated Lid w/Perfusion system(Bioptechs)にマウントした。125mM NaCl、5mM KCl、25mMグルコース、25mM HEPES、1mM MgCl、2mM CaClおよび0.1%(w/v)ウシ血清アルブミンを含有する通常タイロード液(pH7.4)で培養物を灌流した。グルタメート(100μM)、ATP(30μM)またはKCl(65mM)を培養物に1分間補充し、た。最低7つの位置において340および380nmで30秒ごとにイメージングした。FIJI(ImageJ)を使用して、380/340nmのシグナル比を計算することにより、タイムラプス画像を分析した。
グルタミン酸興奮毒性アッセイ
【0295】
hPSCを神経外胚葉運命に向けて分化させることにより、皮質ニューロンを誘導した(上記を参照のこと)。次いで、神経外胚葉細胞を解離し、再プレーティングして神経ロゼットを生成し、DAPTによる処理によりニューロンにさらに分化させた。次いで、ニューロンを再プレーティングし、星状細胞ありまたはなしでの成熟度のマーカーまたはグルタミン酸興奮毒性58についてアッセイした。グルタミン酸興奮毒性研究では、1cm当たり100,000個のニューロンを、BDNF、AAおよびGDNFを含むN2培地中のPO/ラミニン/フィブロネクチンディッシュ上にプレーティングした。NFIA誘導星状細胞を細胞150,000個/cmで添加し、さらに5日間共培養した。次いで、HBSS中、100または500μm(最終)L-グルタメートで細胞を1時間処理し、BDNF、AAおよびGDNFを含むN2培地で回収した。グルタメート処理の48時間後に、レサズリンを添加して、細胞生存率を決定した。
バイサルファイト変換および配列決定
【0296】
NFIAを感染させたLTNSCをdoxで5日間処理し、CD44について選別した。細胞を単離し、製造業者により記載されているようにEZ DNA Methylation-Direct(商標)Kit(Zymo)を使用して、バイサルファイト変換を実施した。DNMT1 STAT3結合部位の領域に対するプライマーは以前に記載されていた59。ZymoTaq Premix(Zymo)を使用してDNMT1プロモーター領域を増幅し、TOPO Zero Bluntベクター(Invitrogen)にクローニングした。1条件当たり最低10個のコロニーを配列決定のために送った。
結果
【0297】
これまで、ヒト星状細胞生物学の研究は、その限定的なアベイラビリティおよび局所的な異質性のために困難であった。現在のところ、発生および疾患における役割を調べるためのロバストなインビトロ系がないので、ヒトの星状細胞生物学における初期発生事象を理解することは特に困難である。ヒトPSCは、初期ヒト発生に関する洞察を獲得するための、および人体の規定の細胞型へのアクセスを提供するための理想的なモデル系を表わす。定方向性hPSC分化のユニークな特徴は、細胞が胚発生プログラムを最初に開始してから、最終的に後期成体様細胞の産生に移行することである。NSCへのhPSCの定方向性分化は、長いニューロン形成期とそれに続く遅いグリア形成スイッチをもたらし、ヒト発生のタイムラインを模倣する。以前の研究では、分化により機能的星状細胞の大集団を得る前に、hPSC由来NSCを最大24週間培養する必要性が報告されている6,7。このような拡大培養の後、グリア形成スイッチが自発的に起こるが、スイッチの基礎となる分子機構は依然として不明である
【0298】
hPSC分化中に星状細胞が発生する時期を正確にモニタリングするために、核緑色蛍光タンパク質(H2B-GFP)を有するアクアポリン-4(AQP4)遺伝子座をターゲティングするノックインレポーター系を生成した(図13A~13H)。hPSCから星状細胞を生成する以前の戦略は、LIF、CNTF、BMPまたは血清などの因子をNSCに曝露して、グリア分化をトリガーすることを含む13,14。血清で処理したNSCでは、グリア分化の開始は中程度に加速され(図3A~3B)、NFIAおよびLIN28B(グリア運命獲得に以前に関与していた因子)15,16,17,18,19の発現の有意な変化と相関していた(図10A)。いずれかの遺伝子がグリアコンピテンシーまたは分化に影響を与えるかを直接試験するために、長期培養によりグリア形成スイッチを自然発生的に受けないlt-hESNSC21(LTNSC)と称される均一かつ安定なニューロン形成NSC集団を使用した(図1A~1H)。LIN28Bのノックダウンはいかなる明白な効果も示さなかったが、NFIAの過剰発現はLTNSC形態を顕著に変化させ(図10B)、NFIAタンパク質およびCD4422(グリアコンピテンシーのマーカー)の発現と相関していたが、GFAP陽性細胞をもたらさなかった(図10C)。興味深いことに、NFIA発現細胞の一部は、AQP4-H2B-GFPレポーターを活性化した(図10D)。これらの結果に基づいて、NFIAの過剰発現はグリアコンピテンシーをトリガーするが、グリア分化を遮断すると仮説を立てた。時間経過研究を実施し、強制的なNFIA発現の存在下(dox+)または非存在下(dox-)で、LTNSCを培養した。5日後、グリア促進条件(+LIF)またはNSC維持培地(+EGF/FGF2)のいずれかで、細胞を(dox-)に変更した。両条件について、ドキシサイクリンの除去はNFIA発現の段階的な低下をもたらしたが、(+LIF)群のみにおいて、NFIAが十分にダウンレギュレートされた後にのみ、GFAP発現が強く誘導された(図10E)。興味深いことに、LIFの存在下であっても、NFIAの継続的な発現(dox+)は、LTNSCによるGFAPの発現を妨げた(図10E(dox+))。まとめると、現在のプロトコールを使用した90~180日間と比較して、NFIAの一過性発現により、グリアコンピテンシーを5日間で達成することができる(図8A~8B)。
【0299】
次に、doxの除去後に、BMP4またはFBSなどの他のグリア分化因子が、LIFよりも効率的にLTNSCの星状細胞分化を促進するかを分析した。しかしながら、GFAP+細胞の生成およびAQP4-H2B-GFPレポーターの活性化において、LIFが最も効率的であった(図1F図5)。さらに培養したところ、NFIA誘導NSC由来の細胞は、複雑な形態を有する星状細胞に似ており(図1G)、GFAPおよびSLC1A2(図10H)、ならびに星状細胞同一性に特異的に関連する一連の遺伝子(図10I)を発現した。次いで、初代ヒト星状細胞と比較して、NFIA誘導星状細胞の発生段階を調べた。長期培養により、NFIA誘導NSCは、CREB5、SPARCL1、ATP1B2およびCST3の発現を特徴とする胎児様星状細胞プログラムを介して、CSRP1およびSOX9の発現を特徴とする成体様パターンに向けて移動する(図10J)。最後に、異なる局所同一性のNSCを確立するためにパターン形成戦略をNFIA発現と組み合わせて20,23、前脳または脊髄同一性の局所特異的星状細胞を生成した(図15A~15B)。次いで、NFIA誘導星状細胞の機能を調べた。CNS発生中、星状細胞は、とりわけニューロン成熟24、代謝恒常性の維持、および神経系における炎症の調節を含む重要な役割を果たす25。NFIA誘導星状細胞の存在下で共培養した未成熟ニューロンは、SYN1(シナプシン-I)の点状発現(図11A)ならびにSYN1および活性帯マーカーMUNC13.126の発現増加により、加速された成熟の証拠を示すことが観察された(図11B)。グルタミン酸興奮毒性に供すると、NFIA誘導星状細胞はニューロン生存も促進した(図11C27。重要なことに、サイトカイン処理により、NFIA誘導星状細胞では、補体(C3)分泌などの反応特性が容易にトリガーされた1,11図11D)。また、特異的刺激に反応してカルシウムトランジェントを誘発するように星状細胞を刺激することができる28。ヒト胎児脳(19-23pcw)から単離された市販の初代星状細胞は、NFIA誘導星状細胞に類似の形態を示した;しかしながら、刺激に反応した細胞は非常に少なかった(図16F)。対照的に、NFIA誘導星状細胞は、KClおよびATPにロバストに反応した(図11E)。hPSC由来ニューロンと共培養すると、NFIA誘導星状細胞はAQP4-H2B-GFPシグナルの増加を示し(図11F)、ATPに対する反応レベルは2倍増加した(図11G~11H)。加えて、グルタミン酸反応の規模が増強されたが、これは、グリア成熟およびニューロン成熟の両方の駆動における2つの細胞型間の相乗的相互作用を示唆している。
【0300】
最後に、NFIA誘導グリアコンピテントNSCおよび星状細胞を成体マウス皮質および脳梁に移植した。移植の2週間後に、白質路に沿って、移植片コアからのグリア前駆体の広範な移動が観察された(図11I)。移植細胞はAQP4-H2B-GFPおよびGFAPの発現を維持し、移植後6週間まで、ヒト星状細胞に特有の形態学的特徴、例えば複数の皮質領域に及ぶ長い複雑な形態29を示した(図11J)。上記インビトロおよびインビボデータは、一過性NFIA発現が、オンデマンドかつ異例の速度および効率で、機能的な領域特異的ヒト星状細胞を生成する強力な戦略であることを実証している。さらに、この結果は、NFIAが、ヒトグリアコンピテンシーをトリガーするための以前は理解し難い分子スイッチであることを強く示唆している。NFIA作用機序を調査する第1段階として、一過性NFIA発現はグリアコンピテンシーをトリガーしたが、内因性NFIA発現を誘導しなかったという最初の観察結果に戻った(図10Eを参照のこと)。ドキシサイクリンを除去すると、細胞はグリアコンピテンシー(CD44発現を含む)を徐々に喪失し(図6A)、ニューロン形成状態に戻った(図6B)。異所性NFIA発現の時間経過分析を実施し、続いて、CD44陽性細胞を選別し、doxの非存在下(dox-)で再プレーティングした(図6C)。ドキシサイクリンなしで3日間培養した後、NFIA発現が喪失したことが確認された(9日目)(図6D)。時間経過を通じて、サンプル間で3つの主要クラスタも観察された(図6E)。これらのうち、神経上皮期NSC、LTNSC(0日目)およびサンプルは共にdox-クラスタに戻ったが、これは、NFIAを中止すると、NFIAパルスがグリアコンピテンシーを維持することができないという考えを裏付けている。重要なことに、6日間のNFIA発現は、hPSC由来星状細胞(200日目)またはグリアコンピテントNSC(80日目)のそれに類似のクロマチンアクセシビリティランドスケープを誘導した(図6F)。転写因子結合モチーフの富化の明確な変化があり、0日目(dox-)および12日目(リバース)条件ではSOXおよびZNF354Cモチーフが富化され、6日目(dox+)および星状細胞条件ではAP-1、NFIXおよびNFIハーフサイトモチーフが高度に富化された(図17A~17C)。驚くべきことに、GFAPプロモーターは差次的アクセシビリティ(differential accessibility)を示さなかったが(図6G、下)、以前の実験は、NFIAの短いパルスのみの後、LIFの存在下においてGFAPのロバストな誘導を示したが、LIF処理のみではそうではなかった。しかしながら、バイサルファイトシーケンシングでは、GFAPプロモーター中の1つのCpGは、NFIA誘導CD44+細胞におけるメチル化の喪失を一貫して示し(図6H)、星状細胞においても同様にメチル化されなかったが、LTNSCでも他のロゼット期NSCでもそうではなかった。重要なことに、CpGは、メチル化されるとSTAT3結合を阻害すると予測されるSTAT3結合部位31とマッチする。これらのデータは、NFIAが、クロマチンアクセシビリティおよびDNA脱メチル化の調節を含む複数のグリアコンピテンシー誘導モードを発揮することを示唆している。次に、RNA配列決定およびDAVID機能アノテーション分析ソフトウェア32を使用して、LTNSCにおけるNFIA中止後にNFIA過剰発現により誘導される差次的な遺伝子発現プログラムに注目した。時間経過中のすべての差次的に発現される遺伝子の階層的クラスタリングは、異なる時間プロファイルを有する3つの主要クラスタを示した(図12A、I、IIおよびIIIと表示)。クラスタI(1,001個の遺伝子)は、グリア分化に関連する遺伝子、例えばCD44およびAQP4を含む。このクラスタでは、星状細胞同一性に関連するさらなる遺伝子-ALDH1L1、SLC4A4およびCLU-も検出された(図18A)。クラスタII(2,960個の遺伝子)は、NFIA発現により直接的な影響を受ける遺伝子であって、NFIA減少により迅速に喪失される遺伝子から構成される。これは、いくつかのWNT、TGFβおよびBMPファミリーのメンバー、ならびに栄養因子、例えばグリア由来神経栄養因子(GDNF)を含む(図18B)。クラスタIII(2,593個の遺伝子)は、NFIA発現によりダウンレギュレートされる遺伝子を包含する。注目すべきことに、細胞分裂、染色体分離、DNA修復および複製などの細胞周期関連プロセスについて、クラスタIII遺伝子は特異的に富化されていた(図12B)。興味深いことに、NFIAは、細胞周期特異的遺伝子の負の調節(これは、NFIA除去後に可逆的であった(図12D図19A))をトリガーした(図12C)。
【0301】
次に、NFIAが、グリアコンピテンシーの獲得に重要であり得る細胞周期進行の機能的変化を引き起こすかを調査した。興味深いことに、LTNSCにおけるNFIA発現後、大部分の細胞がG1に留まることが観察された(図12E)。NFIAによりCCNA1の発現はアップレギュレートされた一方(図19B)、CCNA1タンパク質の顕著な減少およびCDKN1A(p21)の著しい増加(図12F)が観察されたが、これは、NFIAがNSCをG1期に維持しているさらなる証拠である。G1の漸進的な延長は、初期胚(ニューロン形成)期から後期胎児(グリア形成)期への発生中の齧歯類皮質に特有の特徴として以前に報告されており34、この移行中に、hPSC由来NSCはNFIAの漸進的な内因性発現を示す(図20A)。細胞周期延長を直接測定するために、FUCCI-Oベクターを使用して、細胞がG1に費やした時間を決定した35。タイムラプス分析により、(dox+)条件では、非誘導細胞と比較して、細胞の大部分がG1期の延長を示したことが実証された(図20B)。次に、継続的なNFIA過剰発現が星状細胞分化を遮断する理由は、細胞周期進行を防止する完全なG1停止によるものであるか、およびNFIAレベルの減少は、グリア運命獲得と適合するより適度なG1の長さをもたらすかを調査した。実際、dox濃度を変動させることによりNFIAレベルを滴定すると、doxレベルの減少と相関してG1の細胞の割合は徐々に減少し、LIFの存在下でより低いdox濃度においてのみ、GFAP発現が誘導された(図20D 20E)。
【0302】
NFIA発現の非存在下における細胞周期のみの薬理学的モジュレーションがグリア形成スイッチをトリガーするために十分であるかを調べるために、細胞をオロモウシン(Olo)(インビトロでG1タイミングを延長することが公知である小分子36)で処理した。OloによるLTNSCの処理は、G1の細胞の割合の増加をトリガーしたが(図21A)、グリアコンピテンシー遺伝子の発現を即時に増加させなかった(図21B)。しかしながら、Olo処理LTNSCをさらに12日間維持または誘導して分化させると、NFIA、CD44およびS100βの発現の増加が検出され、GFAP陽性細胞が顕著に検出された(図21C、21D)。反対に、FZR1(CDH1)(これは、以前の研究では、G1細胞周期相の短縮をもたらすことが示されている37,38)をノックダウンすることにより、グリアコンピテンシーのNFIA媒介性誘導中にG1を長くすることの必要性について試験した。FZR1をターゲティングするshRNA構築物は、転写産物の効率的なノックダウンを示し(図12G)、NFIA発現のレベルに影響を与えず、G1の細胞の割合を減少させた(図12H)。実際、FZR1のノックダウンは、CD44およびGFAP発現のNFIA媒介性誘導を部分的に防止した(図12I、12J)。最後に、NFIAの候補上流アクチベーターの同一性を探索した。形質転換成長因子ベータ(TGFβ)ファミリーシグナリングは、脊髄における細胞運命決定のタイミングに関与しており39、様々な増殖細胞系におけるG1停止をモジュレートすることが公知である40。ニューロン形成NSCのTGFβ1処理はNFIAの発現を誘導し(図12K)、細胞周期のG1期の細胞を増加させた(図12L)。TGFβありまたはなしでニューロン形成NSCを処理し、続いて、LIF含有培地で2週間培養すると、GFAP+細胞が現れた(図12M)。これらの結果は、NFIAのTGFβ1媒介性誘導および付随するG1延長が、早期グリア形成をトリガーするために十分であることを示している。しかしながら、その結果として生じるNFIA発現レベル、速度および効率は、異所性NFIA発現で得られた結果とマッチしなかったが、これは、強制的なNFIA発現を完全に代替するために、追加因子のさらなる調査が必要であり得ることを示唆している。hPSC由来ニューロンを用いて神経発達疾患または神経変性疾患をモデル化することは日常的になっているが41,42、このような研究におけるhPSC由来星状細胞の使用は依然として非常に限られている6,43。これは、少なくとも部分的には、インビトロで再現される齧歯類細胞と比較して、ヒトにおけるグリア形成スイッチが極めて長期に発現されることが原因であり、それにより、このような研究は非常に面倒で、費用がかかり、非効率的となる。この研究は、グリアコンピテンシーおよび星状細胞分化を駆動する単一因子の使用に基づく簡潔かつ有効な戦略を提示する(図12N)。NFIAの過剰発現をパターン形成中の初期NSCと組み合わせる開示される能力は、領域特異的星状細胞の迅速な誘導を可能にし、特定の脳領域に影響を及ぼす障害、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、RTT症候群、ALSまたは肝性脳症に対する星状細胞の寄与を研究する上で特に興味深いものである。このような領域特異的星状細胞は、別個の脳領域に由来する初代星状細胞について報告されているように44、別個の栄養支持体の研究にさらに利用され得る。
【0303】
NFIAを使用してヒト神経発生を劇的に早めることの潜在的な懸念は、得られる細胞型が真のインビボ由来星状細胞とマッチするか、または人工インビトロ細胞型に相当し得るかである。本発明者らは、ATP、KClまたはグルタメートなどの関連刺激物に対するカルシウム反応を含むNFIA誘導星状細胞(これは、市販の初代ヒト胎児星状細胞とマッチするだけではなくその性能を上回る)のロバストな機能的特徴を実証した。したがって、NFIAプロトコールは、ヒト分子研究、生理学研究および疾患関連研究に非常に適切な星状細胞集団をもたらす。星状細胞分化のコンピテンシーの促進におけるNFIA過剰発現の役割とは反対に、NFIAは、少なくとも高レベルで発現される場合には、ダウンレギュレートされない限り、星状細胞へのさらなる分化を防止する。この知見により、ニワトリ脊髄の過去の異所性発現研究において星状細胞誘導効率が低いこと16、および最適な結果を達成するためには、NFIAレベルを慎重に滴定し、または続いてNFIAを中止する必要があることを説明することが可能である。NFIAヌル変異マウスは、成体脳におけるGFAP発現のほぼ完全な喪失を示す45。NFIB変異マウスでは、同様の表現型が観察される46。NFIAおよびNFIBがインビボで冗長性である可能性は、単一変異マウスが、さらに一層厳密な初期発生グリア専門化した表現型を示さない理由を説明し得る。将来の研究は、グリアコンピテンシーをトリガーするhPSCの機能獲得研究において、NFIBがNFIAを機能的に代替することができるかについても対処し得る。別の興味深い知見は、NFIAの一過性過剰発現が、不可逆的な内因性グリアコンピテンシープログラムを活性化するために十分ではないことである。任意のSTATまたはBMPシグナルアクチベーターの非存在下でNFIA発現をその後に喪失するNFIA誘導NSCは、転写的およびエピジェネティック的に初期ニューロン形成状態に戻る。これらの知見は、インビボ発生中に、NFIAがSOX9などの他の因子と協調して作用して、グリア形成プログラムを安定化し得ることを示している。
【0304】
機構研究は、NFIAが、星状細胞のものと同様のクロマチン状態を迅速にトリガーし得ることを実証している。同様に、遺伝子発現データは、NFIAが、グリア専門化に関連する広範な一連の遺伝子の転写を誘導することを明らかにしている。NFIA過剰発現が解除されても、星状細胞同一性に関連するいくつかの遺伝子は依然として少なくとも3日間アップレギュレートされているが、これは、NFIAが、これらの特定の遺伝子においてクロマチンランドスケープを開放して、外部因子に応じた活性化をそれらに促すことを示唆している。核因子1B(NFIB)(NFIAのホモログ)は、クロマチンのアクセシビリティを増加させて、転移プログラムの活性化を可能にすることにより、小肺がんの転移を駆動することが示されている47。NFIBの役割と一致して、NFIA発現により、アクセス可能なクロマチンでは、NFI-モチーフが高度に富化されることが見出された。星状細胞分化またはグリアコンピテント状態の維持における潜在的な役割を調査するために、他の高度に富化されたモチーフ、例えばAP-1/JunBのさらなる研究が必要である。
【0305】
特に興味深い知見は、長期G1期をトリガーする負の細胞周期調節因子としてのNFIAの役割であった。G1期の薬理学的または遺伝的モジュレーションは、グリア前駆体マーカーの発現に影響を及ぼし得ることが実証された。未分化hPSC集団における細胞運命決定のモジュレートにおける細胞周期の役割は以前に記載されており48、hESCは、細胞周期の段階に応じて分化能を歪める。これらのデータは、G1期を延長することにより、NFIA発現が細胞周期進行を阻害すること、および高いNFIAレベルがG1停止をトリガーし得ることを実証している。NFIAの中止は、細胞が細胞周期に再び入ることを可能にし、それにより、グリア分化と適合性のG1細胞周期期間を作り出すであろう。インビボ発生中にグリアコンピテント状態を促進する細胞周期の協調的な漸進的モジュレーションを確立する上で、TGF、NFIAおよび他の因子間の相互作用のさらなる調査が特に興味深い。
【0306】
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【0307】
本開示の主題およびその利点を詳細に記載してきたが、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書では様々な変更、置換および修正が行われ得ることを理解すべきである。さらに、本出願の範囲は、本明細書に記載されるプロセス、機械、製造、ならびに物質の組成、手段、方法および工程の特定の実施形態に限定されることを意図されない。当業者は、本開示の主題、プロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法または工程の開示から容易に理解するとおり、本明細書に記載される対応する実施形態と実質的に同じ機能を果たすか、または実質的に同じ結果を達成する、既存のまたは今後に開発されるものは、本開示の主題にしたがって利用され得る。したがって、添付の特許請求の範囲は、それらの範囲内に、このようなプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法または工程を含むことが意図される。
【0308】
特許文書、特許出願、刊行物、生成物の説明およびプロトコールが、本出願を通して引用されており、それらの開示は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
多能性幹細胞を分化させるためのインビトロ方法であって、1つまたはそれを超える神経幹細胞マーカーを発現する細胞の集団におけるNFIAシグナリングを促進して、1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーを発現する少なくとも約10%の分化細胞を含む細胞集団を得ることを含む、インビトロ方法。
(項目2)
幹細胞を分化させるためのインビトロ方法であって、幹細胞の集団をSMADシグナリングの有効量の1つまたはそれを超えるインヒビターに曝露すること、および該細胞におけるNFIAシグナリングを促進して、1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーを発現する少なくとも約10%の分化細胞を含む細胞集団を得ることを含む、インビトロ方法。
(項目3)
NFIAシグナリングの初期促進が、SMADシグナリングの前記1つまたはそれを超えるインヒビターへの前記幹細胞の該初期曝露から少なくとも約8日間である、項目2に記載の方法。
(項目4)
検出可能レベルの前記1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーが、前記細胞におけるNFIAシグナリングの前記初期促進から少なくとも約5日間存在する、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
検出可能レベルの前記1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーの存在後、複数の細胞において、機能的NFIA活性の発現レベルが減少する、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
機能的NFIA活性の前記発現レベルが少なくとも約90%減少する、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記分化細胞が、検出可能レベルの1つまたはそれを超えるニューロンマーカーを発現しない、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記1つまたはそれを超えるニューロンマーカーが、Tuj1、MAP2およびDCXからなる群より選択される、項目7に記載の方法。
(項目9)
NFIAシグナリングを前記促進することが、前記細胞をNFIAの1つまたはそれを超えるアクチベーターに曝露することを含む、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
NFIAの前記1つまたはそれを超えるアクチベーターが、前記幹細胞に外因的に曝露されたNFIAタンパク質を含む、項目9に記載の方法。
(項目11)
NFIAの前記1つまたはそれを超えるアクチベーターが、前記幹細胞により発現される組換えNFIAタンパク質を含む、項目9に記載の方法。
(項目12)
NFIAの前記1つまたはそれを超えるアクチベーターが、NFIAの上流アクチベーターを含む、項目9に記載の方法。
(項目13)
NFIAの前記上流アクチベーターがTGFβ1である、項目12に記載の方法。
(項目14)
NFIAシグナリングを前記促進することが、NFIAの発現を増加させることを含む、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
NFIAの発現を前記増加することが、NFIAの過剰発現を誘導するようにNSCを改変することを含む、項目14に記載の方法。
(項目16)
過剰発現した前記NFIAが、NFIA核酸により発現される組換えNFIAタンパク質である、項目13に記載の方法。
(項目17)
前記NFIA核酸が、誘導性プロモーターに作動可能に連結されている、項目17に記載の方法。
(項目18)
幹細胞を分化させるためのインビトロ方法であって、幹細胞の集団をSMADシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビターに曝露すること、および該細胞をウシ胎仔血清に曝露して、1つまたはそれを超える星状細胞マーカーを発現する少なくとも約10%の分化細胞を含む細胞集団を得ることを含む、インビトロ方法。
(項目19)
前記ウシ胎仔血清への前記幹細胞の前記初期曝露から少なくとも約30日間に、該幹細胞を前記細胞集団に分化させる、項目18に記載の方法。
(項目20)
多能性幹細胞を分化させるためのインビトロ方法であって、1つまたはそれを超える神経幹細胞マーカーを発現する細胞の集団の細胞周期のG1期を延長して、1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーを発現する少なくとも約10%の分化細胞を含む細胞集団を得ることを含む、インビトロ方法。
(項目21)
前記神経幹細胞マーカーが、PAX6、ネスチン、SOX1、SOX2、PLZF、ZO-1およびBRN2からなる群より選択される、項目1または20に記載の方法。
(項目22)
前記神経幹細胞マーカーが、PAX6、SOX1、PLZFおよびZO-1からなる群より選択される、項目1~21に記載の方法。
(項目23)
幹細胞を分化させるためのインビトロ方法であって、幹細胞の集団をSMADシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビターに曝露すること、および該細胞の細胞周期のG1期を延長して、1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーを発現する少なくとも約10%の分化細胞を含む細胞集団を得ることを含む、インビトロ方法。
(項目24)
前記G1期の初期延長が、SMADシグナリングの該1つまたはそれを超えるインヒビターへの前記細胞の初期曝露から少なくとも約8日間である、項目23に記載の方法。
(項目25)
検出可能レベルの前記1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーが、前記G1期の前記初期延長から少なくとも約10日間存在する、項目20~24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記G1期の前記延長が、前記細胞を1つまたはそれを超えるG1期を延長させる化合物に曝露することを含む、項目20~25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記1つまたはそれを超えるG1を延長させる化合物が小分子化合物を含む、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記小分子化合物がオロモウシン(Olo)を含む、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記細胞の前記細胞周期の前記G1期を前記延長させることが、FZR1の発現を増加させることを含む、項目20~25のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーが、CD44、AQP4、SOX2およびネスチンからなる群より選択される、項目1~29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーを発現する前記細胞が、皮質グリアコンピテント細胞または脊髄グリアコンピテント細胞である、項目1~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーを発現する少なくとも約10%の細胞を含む前記細胞集団を、1つまたはそれを超える星状細胞マーカーを発現する細胞への該細胞の分化を促進するために適切な条件に供することをさらに含む、項目1~31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記条件が、前記細胞集団を白血病抑制因子(LIF)、1つもしくはそれを超えるその誘導体、1つもしくはそれを超えるその類似体および/または1つもしくはそれを超えるそのアクチベーターに曝露することを含む、項目32に記載の方法。
(項目34)
LIF、1つもしくはそれを超えるその誘導体、1つもしくはそれを超えるその類似体および/または1つもしくはそれを超えるそのアクチベーターへの前記幹細胞の初期曝露が、SMADシグナリングの前記1つまたはそれを超えるインヒビターへの該幹細胞の該初期曝露から少なくとも約10日間である、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記1つまたはそれを超える星状細胞マーカーが、GFAP、AQP4、CD44、S100b、SOX9、NFIA、GLT-1およびCSRP1からなる群より選択される、項目32~34のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記1つまたはそれを超える星状細胞マーカーがGFAPを含む、項目35に記載の方法。
(項目37)
1つまたはそれを超える星状細胞マーカーを発現する細胞が皮質星状細胞または脊髄星状細胞である、項目33~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
SMADシグナリングの前記1つまたはそれを超えるインヒビターが、形質転換成長因子ベータ(TGFβ)/アクチビン-ノーダルシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビターおよび骨形成タンパク質(BMP)シグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビターを含む、項目2~16および23~37のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナリングの前記1つまたはそれを超えるインヒビターが、SB431542、その誘導体およびその混合物からなる群より選択される化合物を含む、項目38に記載の方法。
(項目40)
骨形成タンパク質(BMP)シグナリングの前記1つまたはそれを超えるインヒビターが、LDN193189、その誘導体およびその混合物からなる群より選択される化合物を含む、項目38または39に記載の方法。
(項目41)
幹細胞を分化させるためのインビトロ方法であって、幹細胞の集団をSMADシグナリングの有効量の1つまたはそれを超えるインヒビターに曝露すること、ならびに該細胞をレチノイン酸(RA)シグナリングの有効量の1つまたはそれを超えるアクチベーター(「RAアクチベーター」)およびソニックヘッジホッグ(SHH)シグナリングの有効量の1つまたはそれを超えるアクチベーター(「SHHアクチベーター」)に曝露して、1つまたはそれを超える脊髄前駆体マーカーを発現する少なくとも約10%の分化細胞を含む細胞集団を得ることを含む、インビトロ方法。
(項目42)
SMADシグナリングの前記1つまたはそれを超えるインヒビターへの前記幹細胞の初期曝露から少なくとも1日間、該幹細胞の集団を1つまたはそれを超えるRAアクチベーターおよび1つまたはそれを超えるSHHアクチベーターに初期曝露する、項目41に記載の方法。
(項目43)
検出可能レベルの前記1つまたはそれを超える脊髄前駆体マーカーが、前記1つまたはそれを超えるRAアクチベーターおよび1つまたはそれを超えるSHHアクチベーターへの前記細胞の前記初期曝露から少なくとも約12日間存在する、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記1つまたはそれを超える脊髄前駆体マーカーが、HOXB4、ISL1およびNKX6.1からなる群より選択される、項目41~43のいずれか一項に記載の方法。
(項目45)
前記幹細胞がヒト幹細胞である、項目1~44のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
前記幹細胞が多能性幹細胞である、項目1~45のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
多能性幹細胞が、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目46に記載の方法。
(項目48)
前記幹細胞が、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、ヒト単為生殖幹細胞、始原生殖細胞様多能性幹細胞、胚盤葉上層幹細胞、Fクラス多能性幹細胞およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目1~47のいずれか一項に記載の方法。
(項目49)
少なくとも約10%の1つもしくはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーおよび/または1つもしくはそれを超える星状細胞マーカーを発現するインビトロ分化細胞の集団であって、項目1~40のいずれか一項に記載の方法により誘導される、集団。
(項目50)
項目49に記載の集団を含む、組成物。
(項目51)
医薬組成物である、項目50に記載の組成物。
(項目52)
被験体における神経変性障害を処置するかまたは神経傷害による損傷を軽減する方法であって、有効量の項目49に記載の集団または項目50もしくは51に記載の組成物を、それを必要とする被験体に投与することを含む、方法。
(項目53)
前記被験体が、神経変性障害と診断されているかまたはそれを有するリスクがある、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記神経変性障害が、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)およびレット症候群からなる群より選択される、項目52または53に記載の方法。
(項目55)
神経変性障害を処置するためのまたは神経傷害による損傷を軽減するための医薬の製造における、項目49に記載の集団または項目50もしくは51に記載の組成物の使用。
(項目56)
幹細胞の分化を誘導するためのキットであって、
(a)形質転換成長因子ベータ(TGFβ)/アクチビン-ノーダルシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビター、
(b)BMPシグナリングの1つまたはそれを超えるインヒビター;
(c)NFIAの1つまたはそれを超えるアクチベーター;
(d)LIF、1つもしくはそれを超えるその誘導体、1つもしくはそれを超えるその類似体および/または1つもしくはそれを超えるそのアクチベーター;ならびに
(e)1つもしくはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーおよび/または1つもしくはそれを超える星状細胞マーカーを発現する少なくとも約10%の分化細胞を含む細胞集団への該幹細胞の分化を誘導するための指示
の1つまたはそれよりも多くを含む、キット。
(項目57)
インビトロ分化細胞の集団を含む組成物であって、細胞の該集団の少なくとも約50%が1つまたはそれを超えるNSCマーカーを発現し、細胞の該集団の約25%未満が1つまたはそれを超える幹細胞マーカーを発現する、組成物。
(項目58)
インビトロ分化細胞の集団を含む組成物であって、細胞の該集団の少なくとも約50%が1つまたはそれを超えるグリアコンピテントNSCマーカーまたはグリアコンピテント細胞マーカーを発現し、細胞の該集団の約25%未満が、幹細胞マーカー、NSCマーカーおよびニューロンマーカーからなる群より選択される1つまたはそれを超えるマーカーを発現する、組成物。
(項目59)
インビトロ分化細胞の集団を含む組成物であって、細胞の該集団の少なくとも約50%が1つまたはそれを超える星状細胞マーカーを発現し、細胞の該集団の約25%未満が、幹細胞マーカー、NSCマーカー、ニューロンマーカーおよびグリアコンピテント細胞マーカー/グリアコンピテントNSCマーカーからなる群より選択される1つまたはそれを超えるマーカーを発現する、組成物。
(項目60)
前記1つまたはそれを超える幹細胞マーカーが、OCT4、NANOG、SOX2、LIN28、SSEA4およびSSEA3からなる群より選択される、項目57~60のいずれか一項に記載の組成物。
(項目61)
前記1つまたはそれを超えるニューロンマーカーが、Tuj1、MAP2およびDCXからなる群より選択される、項目58~60のいずれか一項に記載の組成物。
(項目62)
前記1つまたはそれを超えるNSCマーカーが、PAX6、ネスチン、SOX1、SOX2、PLZF、ZO-1およびBRN2からなる群より選択される、項目58~61のいずれか一項に記載の組成物。
(項目63)
前記1つまたはそれを超える神経幹細胞マーカーが、PAX6、SOX1、PLZFおよびZO-1からなる群より選択される、項目58~63のいずれか一項に記載の組成物。
(項目64)
前記1つまたはそれを超えるグリアコンピテント細胞マーカーが、CD44、AQP4、SOX2およびネクチンからなる群より選択される、項目58~64のいずれか一項に記載の組成物。
(項目65)
前記1つまたはそれを超える星状細胞マーカーが、GFAP、AQP4、CD44、S100b、SOX9、NFIA、GLT-1およびCSRP1からなる群より選択される、項目59~65のいずれか一項に記載の組成物。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6-1】
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