(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】医用情報処理装置及び医用情報処理システム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/60 20180101AFI20240412BHJP
【FI】
G16H20/60
(21)【出願番号】P 2020004727
(22)【出願日】2020-01-15
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 康仁
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌史
【審査官】今井 悠太
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-040981(JP,A)
【文献】特開2018-190102(JP,A)
【文献】特開2017-194887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生活習慣改善の対象である患者について設定された長期期間としての第1の期間に対応する第1の目標値に基づいて、前記第1の期間に含まれる複数の短期期間としての複数の第2の期間のそれぞれについて、第2の目標値を計算する計算部と、
前記第1の目標値を達成するために、将来の前記第2の期間の少なくとも一つについての前記第2の目標値を変更する
場合に
、前記患者が取るべき行動に関する変更情報を生成する生成部と、
前記第2の目標値と、前記患者の行動による実績値とが複数の前記第2の期間について示されたスケジュールにおいて、前記変更情報
が示す行動を行った場合の変更後の前記第2の目標値を示す画像により前記患者
へ通知する制御部と、
を備えた医用情報処理装置。
【請求項2】
前記生成部は、前記患者の過去の行動に関する第1の情報、前記患者の現在及び未来少なくとも一方の行動に関する第2の情報、前記患者の現在及び未来少なくとも一方の環境に関する第3の情報を少なくとも用いて、前記変更情報を生成する請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記スケジュールにおいて、前記変更情報が示す行動を行った場合の変更前後の前記第2の目標値を示すグラフ画像により通知する請求項1又は2に記載の医用情報処理装置。
【請求項4】
前記生成部は、一週間又は一日を単位として前記変更情報を生成する請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の医用情報処理装置。
【請求項5】
前記計算部は、前記第1の情報が更新された場合には、更新された前記第1の情報に基づいて、将来の前記第2の期間の少なくとも一つについての前記第2の目標値を更新し、
前記生成部は、更新された前記第1の情報、更新された前記第2の情報を用いて、更新された前記第2の目標値を変更するための新たな前記変更情報を生成する、
請求項2に記載の医用情報処理装置。
【請求項6】
前記生成部は、前記患者と同じ生活習慣改善を実行する関係者に関する情報を含む前記変更情報を生成する請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の医用情報処理装置。
【請求項7】
前記生成部は、食事による摂取カロリー値及び運動による消費カロリー値の少なくとも一方を含む前記変更情報を生成する請求項1乃至6のうちいずれか一項に記載の医用情報処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第2の情報及び前記第3の情報の少なくとも一方に従って、前記変更情報の前記患者
へ通知する請求項2に記載の医用情報処理装置。
【請求項9】
生活習慣改善の対象である患者について設定された長期期間としての第1の期間に対応する第1の目標値に基づいて、前記第1の期間に含まれる複数の短期期間としての複数の第2の期間のそれぞれについて、第2の目標値を計算する計算部と、
前記第1の目標値を達成するために、将来の前記第2の期間の少なくとも一つについての前記第2の目標値を変更する
場合に
、前記患者が取るべき行動に関する変更情報を生成する生成部と、
前記第2の目標値と、前記患者の行動による実績値とが複数の前記第2の期間について示されたスケジュールにおいて、前記変更情報
が示す行動を行った場合の変更後の前記第2の目標値を示す画像により前記患者
へ通知する制御部と、
を備えた医用情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書等に開示の実施形態は、医用情報処理装置及び医用情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、生活習慣病(例えば、糖尿病、肥満症、高血圧症等)の治療においては、患者本人の生活習慣の改善が欠かせない。しかし、現実には患者本人の努力だけでは目標達成が難しく、医療機関等の介入が望まれる。
【0003】
一方で、医療機関は、すべての患者の生活習慣に介入する余裕がないことが多い。また、生活習慣を改善するための支援装置や健康アプリも開発されているが、十分な支援には至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書等に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、生活習慣を改善するために有益な支援情報を患者に提供し、生活習慣病等の治療を従来に比して効率化することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る医用情報処理装置は、計算部と、生成部と、制御部とを備える。計算部は、生活習慣改善の対象である患者について設定された長期期間としての第1の期間に対応する第1の目標値に基づいて、前記第1の期間に含まれる複数の短期期間としての複数の第2の期間のそれぞれについて、第2の目標値を計算する。生成部は、前記第1の目標値を達成するために、将来の前記第2の期間の少なくとも一つについての前記第2の目標値を変更する場合に、前記患者が取るべき行動に関する変更情報を生成する。制御部は、前記第2の目標値と、前記患者の行動による実績値とが複数の前記第2の期間について示されたスケジュールにおいて、前記変更情報が示す行動を行った場合の変更後の前記第2の目標値を示す画像により前記患者へ通知する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る医用情報処理装置としてのサーバ装置、患者が有するクライアント装置としてのユーザ端末からなる医用情報処理システムを示した図である。
【
図2】
図2は、医用情報処理装置の構成を示した図である。
【
図3】
図3は、記憶回路に格納される各種情報の例を示した図である。
【
図4】
図4は、通知制御機能によって表示回路に表示される、短期目標変更情報を通知するGUIの一例を示した図である。
【
図5】
図5は、通知制御機能によって表示回路に表示される、短期目標変更情報を通知するGUIの他の例を示した図である。
【
図6】
図6は、通知制御機能によって表示回路に表示される、短期目標変更情報を通知するGUIの他の例を示した図である。
【
図7】
図7は、通知制御機能によって表示回路に表示される、短期目標変更情報を通知するGUIの他の例を示した図である。
【
図8】
図8は、通知制御機能によって表示回路に表示される、短期目標変更情報を通知するGUIの他の例を示した図である。
【
図9】
図9は、通知制御機能によって表示回路に表示される、短期目標変更情報を通知するGUIの他の例を示した図である。
【
図10】
図10は、短期目標変更情報の生成処理及び通知処理の流れを示したフローチャートである。
【
図11】
図11は、実施形態に係る用情報処理システムの変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係る医用情報処理装置及び医用情報処理システムについて説明する。
【0009】
まず、実施形態に係る医用情報処理装置及び医用情報処理システムが使用される状況について説明する。生活習慣病治療(例えば糖尿病)においては、その原因の一つである生活習慣病患者(以下、単に「患者」と呼ぶ。)の肥満を解消するため、「一年で6キロ痩せる。」といった、比較的長期の期間とその期間内に達成すべき数値を含む目標(以下、「長期目標」と呼ぶ。)が設定され、この長期目標を達成するための生活習慣の改善が必要とされる。
【0010】
また、例えば「6か月で6キロ痩せる。」といった長期目標を設定した場合、この長期目標を達成するために、例えば一週間や一日の目標とすべき運動量、摂取カロリー値といった、長期目標としての期間に含まれる少なくとも一つの短期期間と、その少なくとも一つの短期期間内に達成すべき数値を含む目標(以下、「短期目標」と呼ぶ。)を設定することができる。ここで、複数の短期目標は、長期目標の達成を前提とした場合、相関する関係にあると言える。例えば、「今日の夕食の摂取カロリーの上限はαカロリーとする」という短期目標が設定されている場合を想定する。この短期目標は、例えば「今日これから2時間のウォーキングをしてβカロリーを消費すれば、今日の夕食の摂取カロリーの上限値をαカロリーからγカロリーに増やすことができる。」といった具合に、長期目標を踏まえた上で、現在又は将来の患者の行動により変更することができる。言い換えれば、ある短期目標は、当該短期目標よりも時間的に若い別の短期目標が前提となっている。このため、この時間的に若い別の短期目標を患者の行動が上回る場合には、その患者の行動を新たな前提として、将来の短期目標を変更することができる。
【0011】
なお、本実施形態では、長期目標の達成を担保しつつ短期目標を変更するために、患者に推奨する現在又は将来の行動に関する情報を「短期目標変更情報」と呼ぶ。
【0012】
実施形態に係る医用情報処理装置及び医用情報システムは、生活習慣を改善するために有益な支援情報としての短期目標変更情報を、各患者が有するユーザ端末に、適切なタイミングで通知するものである。
【0013】
次に、実施形態に係る医用情報処理装置及び医用情報システムが設置される環境について説明する。
図1は、実施形態に係る医用情報処理装置としてのサーバ装置1(以下、「医用情報処理装置1」と呼ぶ。)、複数の生活習慣病患者が有するクライアント装置としてのユーザ端末2-1~2-nからなる医用情報処理システムSを示した図である。なお、サーバ装置1とユーザ端末2-1~2-nは、ネットワークNを介して互いに通信可能である。
【0014】
医用情報処理装置1は、専用又は汎用コンピュータである。サーバ装置1は、各患者が有するユーザ端末2-1~2-nから、種々の情報を受信する。サーバ装置1は、ユーザ端末2-1~2-nから受信した種々の情報に基づいて、各患者につき短期目標変更情報を生成し、ユーザ端末2-1~2-nに送信する。
【0015】
本実施形態においては、説明を具体的にするため、生活習慣病は糖尿病であるとし、ユーザ端末2-1~2-nに対応する各患者は、全て糖尿病患者である場合を例とする。また、医用情報処理装置1がユーザ端末2-1に対応する患者を対象として短期目標変更情報を生成する場合を例とする。本実施形態では、ユーザ端末2-1に対応する患者を「当該患者」とも呼ぶ。なお、当然ながら、糖尿病はあくまでも一例であり、本実施形態に係る医用情報処理装置1は、他の生活習慣病についても適用可能である。
【0016】
ユーザ端末2-1~2-nは、対応する各患者に関する種々の情報を医用情報処理装置1に送信する。また、ユーザ端末2-1~2-nは、医用情報処理装置1から受信した短期目標変更情報を、状況に応じたタイミングで通知する。
【0017】
次に、医用情報処理装置1の具体的な構成について説明する。
図2は、医用情報処理装置1の構成を示した図である。
【0018】
医用情報処理装置1は、記憶回路10、処理回路11、入力回路12、通信I/F部13、表示回路14を備える。
【0019】
記憶回路10は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(flash memory)等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等によって構成される。記憶回路10は、USB(Universal Serial Bus)メモリ及びDVD(Digital Video Disk)などの可搬型メディアによって構成されてもよい。
【0020】
記憶回路10は、処理回路11において用いられる各種処理プログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(Operating System)等も含まれる)や、プログラムの実行に必要なデータや、ボリュームデータ及び医用画像を記憶する。また、OSに、操作者に対する表示回路14への情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力回路12によって行なうことができるGUI(Graphical User Interface)を含めることもできる。
【0021】
また、記憶回路10は、基準情報を患者毎に蓄積(格納)する。ここで、「基準情報」とは、短期目標変更情報を生成する際に基準とされる情報である。基準情報は、患者の過去の行動に関する第1の情報、患者の現在及び未来少なくとも一方の行動に関する第2の情報、患者の現在及び未来少なくとも一方の環境に関する第3の情報、それ以外の第4の情報に分類することができる。
【0022】
図3は、記憶回路10に格納される各種情報の例を示した図である。
図3に示す様に、各種基準情報の例としては、例えば患者情報、目標情報、生体情報、患者位置情報、生活習慣情報、関係者位置情報、天候情報、所持品情報、周辺環境情報、天気予報情報、嗜好情報、家族構成情報、行動予定情報、指導内容情報、行動実績情報、自己管理達成度情報、治療効果評価値情報等を挙げることができる。以下、各情報の内容について説明する。
【0023】
患者情報とは、各患者を特定するための患者ID、年齢、性別、身長、体重、住所、職業、勤務形態、病歴、現在の疾患、症状等の情報である。
【0024】
目標情報とは、糖尿病治療を目的として生活習慣改善のために設定される目標に関する情報である。具体的には、目標情報は、長期目標及び短期目標に関する情報である。
【0025】
なお、患者情報及び目標情報は、例えばユーザ端末にインストールされたアプリケーションを用いて患者に必要な情報を入力させることで取得できる。また、処理回路11の情報取得機能111が、必要に応じて、セキュアな環境にてHIS(Hospital Information System)にアクセスして取得するようにしてもよい。
【0026】
生体情報とは、当該患者の体温、血圧、心拍数(脈拍数)、呼吸数である。生体情報は、例えば患者が身に着けるウェアラブルデバイス、或いはユーザ端末2-1~2-nから取得される。
【0027】
患者位置情報とは、当該患者の現在の位置情報である。この位置情報は、例えばユーザ端末2-1~2-nのGPS機能によって取得することができる。
【0028】
生活習慣情報とは、職場までの通勤手段(電車通勤、徒歩、自動車通勤等)、職場の環境(建屋の何階か等)、日常的な運動習慣(定期的な運動をするか、定期的な運動をする場合どのような運動か、日常的に階段を使用するか等)、睡眠時間、食生活習慣等に関する情報である。生活習慣情報は、例えばユーザ端末にインストールされたアプリケーションを用いて患者に必要な情報を入力させることで取得できる。
【0029】
関係者位置情報とは、当該患者の治療に関わる人物の現在の位置情報である。ここで、当該患者の治療に関わる人物とは、典型的には、同じ治療法を選択した他の糖尿病患者である。この関係者位置情報は、例えば登録された関係者が有するユーザ端末2-2~2-nのGPS機能によって取得することができる。
【0030】
天候情報とは、患者が現在位置する場所での天候に関する情報である。天候情報は、処理回路11の情報取得機能111が、ネットワークを介して天候情報を提供するサーバにアクセスし、患者位置情報に基づいて対応する情報を受信することで取得される。
【0031】
所持品情報とは、当該患者がどんなものを所持するかに関する情報である。所持品情報は、処理回路11の情報取得機能111が、例えば当該患者の電子決済の履歴情報にアクセスすることで取得される。
【0032】
周辺環境情報とは、患者の現在位置の周辺環境、スケジュールに従う患者の将来の位置の周辺環境、患者の居所の周辺環境に関する情報等である。この情報は、処理回路11の情報取得機能111が、地図に関するデータベースにアクセスし、患者位置情報に基づいて対応する情報を受信することで取得される。
【0033】
天気予報情報とは、患者が将来位置する場所での現在の天候に関する情報である。天気予報情報は、処理回路11の情報取得機能111が、ネットワークを介して天気予報情報を提供するサーバにアクセスし、患者位置情報に基づいて対応する情報を受信することで取得される。
【0034】
嗜好情報とは、当該患者の飲酒に関する情報(飲酒習慣の有無、一日の飲酒量)、喫煙に関する情報(喫煙習慣の有無、一日の喫煙量)等である。嗜好情報は、例えばユーザ端末にインストールされたアプリケーションを用いて患者に必要な情報を入力させることで取得できる。
【0035】
家族構成情報とは、当該患者の家族構成に関する情報(配偶者の有無、子供の有無、同居者の人数と構成等)である。家族構成情報は、例えばユーザ端末にインストールされたアプリケーションを用いて患者に必要な情報を入力させることで取得できる。
【0036】
行動予定情報とは、当該患者の将来の行動予定に関する情報であり、例えばユーザ端末2-1~2-nのスケジュールアプリ等から取得される。
【0037】
指導内容情報とは、生活習慣改善のために当該患者が過去に受けた指導(医療機関から以外の指導も含む。)の内容に関する情報(例えば、一日30分のウォーキング指導、献立の指導等)である。指導内容情報は、例えばユーザ端末にインストールされたアプリケーションを用いて患者に必要な情報を入力させることで取得できる。また、処理回路11の情報取得機能111が、必要に応じて、セキュアな環境にてHIS等のデータベースにアクセスして取得するようにしてもよい。さらに、記憶回路10に蓄積された過去の短期目標変更情報からも取得することができる。
【0038】
行動実績情報とは、処理回路10の計算機能110によって計算された行動実績の蓄積情報である。
【0039】
自己管理達成度情報とは、処理回路10の計算機能110によって計算された自己管理達成度の蓄積情報である。
【0040】
治療効果評価値情報とは、処理回路10の計算機能110によって計算された治療効果評価値の蓄積情報である。
【0041】
処理回路11は、プログラムを記憶回路10から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。処理回路11は、例えば、計算機能110、情報取得機能111、情報生成機能112、通知制御機能113、表示制御機能114を有する。処理回路11は、記憶回路10に格納されている各種制御プログラムを読み出して計算機能110、情報取得機能111、情報生成機能112、通知制御機能113、表示制御機能114を実現すると共に、記憶回路10、入力回路12、通信I/F部13、表示回路14における処理動作を統括的に制御する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路11は、
図2の処理回路11内に示された各機能を有することとなる。
【0042】
計算機能110は、当該患者について設定された第1の期間に対応する第1の目標値に基づいて、第1の期間に含まれる第2の期間に対応し第1の目標値を達成するための第2の目標値を計算する。生活習慣改善の対象である当該患者について設定された長期期間としての第1の期間に対応する第1の目標値に基づいて、第1の期間に含まれる複数の短期期間としての複数の第2の期間のそれぞれについて、第2の目標値を計算する。ここで、第1の目標値とは、長期期間としての第1の期間内に達成すべき長期目標である。また、第2の目標値とは、第1の期間に含まれる複数の短期期間(例えば、一週間や一日)としての複数の第2の期間のそれぞれについて、その期間内に達成すべき短期目標である。なお、複数の第2の期間は、重複する期間とある場合もある。また、第1の期間や第1の目標値によっては、第2の期間は複数でなく一つの期間として設定される場合もある。
【0043】
すなわち、計算機能110は、基準情報に含まれる目標情報に基づいて、例えば「6か月で6キロ痩せる。」といった長期目標が設定された場合、当該長期目標から逆算して、短期目標として、一週間や一日に運動量によって消費すべきカロリー値、食事によって摂取するカロリーの上限値を計算する。また、計算機能110は、短期目標変更情報に基づく行動により患者の行動実績情報が変化した場合には、変化した行動実績情報に基づいて、長期目標から逆算して、短期目標を計算し逐次的に更新する。
【0044】
計算機能110は、患者の生体情報、患者位置情報、生活習慣情報に基づいて、当該患者の行動実績情報、(例えば運動により消費したカロリー値、食事により摂取したカロリー値、ユーザ端末の加速度に基づく移動手段と移動実績等)を算出する。また、計算機能110は、患者の生体情報に基づいて当該患者の感情を計算する。また、計算機能110は、当該患者の行動実績情報に基づいて、自己管理達成度、治療効果評価値を計算する。
なお、行動実績情報、感情、自己管理達成度、治療効果評価値の各計算については、既存のアプリケーションを利用することも可能である。
【0045】
情報取得機能111は、通信I/F回路14を介して、ユーザ端末2-1~2-nから定期的に又は逐次的に基準情報を取得する。また、情報取得機能111は、ネットワークを介して対象とする情報を提供するサーバにアクセスし基本情報を取得する。
【0046】
情報生成機能112は、基準情報に基づいて、将来の短期期間(第2の期間)の少なくとも一つについての目標値(第2の目標値)を変更するために患者が取るべき行動に関する変更情報(短期目標変更情報)を生成する。このとき、情報生成機能112は、計算機能110によって計算された、患者の過去の行動に関する第1の情報(例えば行動実績情報等)、患者の現在及び未来少なくとも一方の行動に関する第2の情報(例えば、基準情報に含まれた患者位置情報、行動予定情報等)、患者の現在及び未来少なくとも一方の環境に関する第3の情報(例えば、基準情報に含まれた周辺店舗情報、リアルタイム天候情報、天気予報情報等)を少なくとも用いる。
【0047】
具体的には、情報生成機能112は、基準情報を入力とし、短期目標変更情報を出力とするAIモデルである。情報生成機能112は、例えば知識推論モデル、スコアリングされた学習モデル等によって実現することができる。
【0048】
また、情報生成機能112は、当該患者の行動実績情報、自己管理達成度、治療効果評価値を用いて、患者に提供すべき短期目標変更情報を学習する。
【0049】
以下、情報生成機能112が、どのような基準情報を入力してどのような短期目標変更情報を出力するかの具体例を幾つか示す。なお、情報生成機能112による短期目標変更情報の出力(生成)は、典型的には、患者がクライアント装置のスケジュールアプリで予定を立案した時、短期目標を通知すべき日の前日、短期目標変更情報に従って取るべき行動の直前等のタイミングにおいて実行される。
【0050】
情報生成機能112は、例えば患者情報、目標情報、行動実績情報、行動予定情報、周辺環境情報等を入力として、「明日の出張で歩きそうであれば、今日の運動量を減らすことも可能。」、「飲み会の予定があったら、その前にはカロリーを控えさせる。運動の強度を上げる。」、「(出張又は旅行は食事が不定期になる、移動が増える等の予定に鑑み)出張、旅行中は、駅から遠い名所に案内して運動量を増やす。」、「(出張又は旅行は食事が不定期になる、移動が増える等の予定に鑑み)カロリーの低い名物料理を提案し、摂取カロリーを減らす」、「一日の運動量が短期目標よりも多い場合、その日の摂取カロリーの上限を上げて運動のインセンティブとする。」、「糖尿病では1日のカロリーコントロールが大事であるが、他の生活習慣病全般としてなら、運動量や摂取カロリーを調整することも可能」。等のスケジュールを踏まえた短期目標変更情報を出力する。
【0051】
また、情報生成機能112は、例えば患者情報、目標情報、行動実績情報、行動予定情報、周辺環境情報、患者位置情報等を入力として、「駅、デパートに来たら(居たら)階段を提案する。」、「待ち合わせ予定時刻まで1時間以上あるので、一駅手間で下車し目的地まで歩くことを提案する。」等の短期目標変更情報を出力する。
【0052】
また、情報生成機能112は、例えば患者情報、目標情報、行動実績情報、行動予定情報、周辺環境情報、生活習慣情報等を入力として、「電車通勤なら一駅歩かせる提案をする(車通勤の場合は提案しない)。」、「職場が建屋の2階以上なら、階段使用を提案する(職場が1階なら階段使用を促さない)。」等の生活スタイルに関する短期目標変更情報を出力する。
【0053】
また、情報生成機能112は、例えば患者情報、目標情報、行動実績情報、行動予定情報、周辺環境情報、天候情報、天気予報情報等を入力として、「暑い(又は寒い)から運動は危険である。」、「当該患者は花粉アレルギーがあるため、花粉が飛んでるから室内運動が良い。」、「最近インフルエンザ流行しているから、屋外での運動は人の少ない時間帯が良い。」等の天候を踏まえた短期目標変更情報を出力する。
【0054】
また、情報生成機能112は、例えば患者情報、目標情報、行動実績情報、行動予定情報、計算機能110によって計算される感情情報等を入力として、「ストレスがたまっているから、ストレス発散になる運動(バッティングセンター、もぐらたたき等)を提案する。」等の感情を踏まえた短期目標変更情報を出力する。
【0055】
また、情報生成機能112は、例えば患者情報、目標情報、行動実績情報、行動予定情報、計算機能110によって計算される感情情報、天候情報、天気予報情報等を入力として、「心が沈んでるようだが、晴れて気持ちよい気候なので外出を提案する。」、「少し気温が低いが、久しぶりに気分が良さそうなので外出を提案する。」等の天候と感情を踏まえた短期目標変更情報を出力する。
【0056】
また、情報生成機能112は、例えば患者情報、目標情報、行動実績情報、行動予定情報、生活習慣情報、患者位置情報、計算機能110によって計算される自己管理達成度情報、治療効果評価値情報等を入力として、「自己管理達成度、治療効果評価値の低い状態が続く場合は、予定より早めの医療機関の受診を勧める。」、「受診を進めるタイミングは、患者の生活習慣を考慮し、患者が忙しくない時間帯とする。」、「医療機関の近くに外出する予定があるときは、受診を勧める。」等の目標達成に関わる短期目標変更情報を出力する。
【0057】
また、情報生成機能112は、例えば患者情報、目標情報、行動実績情報、行動予定情報、生活習慣情報、患者位置情報、計算機能110によって計算される感情情報等を入力として、「短期目標変更情報をリアルタイムで出さない(例えば、良いことはすぐ、悪いことは感情等によりタイミングをみて)」、「食事を始めた段階で注意しても残すことになる。気分を害する可能性もあるので食事中の短期目標変更情報の通知は避ける。」、「調味料を入れすぎる傾向があるが、リアルタイムな通知は無視されてしまうので、食前に短期目標変更情報を通知する。」、「食後、血糖値の計測時や、体重の計測時等の自身の行動や管理すべき数値を客観的に受け止めることができるタイミングで、過去の運動量や過去の摂取カロリーの反省を促す情報を通知する(食事療法)」、「反省を促す情報を通知した後は、忘れないようにリアルタイム通知をしばらく復活させる(通知は一定期間たったら出すのを止めてみる。習慣として定着しているようなら、出すのをそのまま止める。)」等の通知タイミングに関わる短期目標変更情報を出力する。
【0058】
また、情報生成機能112は、例えば患者情報、目標情報、行動実績情報、行動予定情報、嗜好情報等を入力とし、「球技が好きだからテニスによる運動を提案する。」、「チーム競技が好きだからサッカーによる運動を提案する。」、「1人が好きだからランニングによる運動を提案する。」、「インドア派だから屋内運動を提案する。」、「アウトドア派だから屋外運動を提案する。」等の好みに関わる短期目標変更情報を出力する。なお、この様な好みに関わる短期目標変更情報は、事前に好き嫌いのアンケートをとり、履歴を元に適宜アップデートすることも可能である。
【0059】
また、情報生成機能112は、例えば患者情報、目標情報、行動実績情報、行動予定情報、生活習慣情報、患者位置情報、指導内容情報、計算機能110によって計算される自己管理達成度情報、治療効果評価値情報等を入力とし、繰り返し提案しても効果のない指導内容や短期目標変更情報については、提案しないようにするか、「運動量を増やす手段として散歩の代わりに階段使用とする」といった代替案に関わる短期目標変更情報を出力する。
【0060】
また、情報生成機能112は、例えば患者情報、目標情報、行動実績情報、所持品情報等を入力とし、「家にダンベル等の運動補助器具があるかどうかで、推奨する運動の内容を変更する。」、「冷蔵庫の中身と摂取カロリーの条件値とを考慮して、その日のお勧め献立を提示する。」等の所持品に関わる短期目標変更情報を出力する。
【0061】
また、情報生成機能112は、例えば患者情報、目標情報、行動実績情報、家族構成情報、指導内容情報等を入力とし、「小さい子共のいる患者には、運動として子供と外で遊ぶことを提案する。」、「食事指導の内容を、患者本人とその配偶者で共有する。」等の家族構成を踏まえた短期目標変更情報を出力する。
【0062】
また、情報生成機能112は、例えば患者情報、目標情報、行動実績情報、計算機能110によって計算される自己管理達成度情報、治療効果評価値情報等を入力とし、「散歩を実施できていたが、もう少しペースが速いと効果が高いと提案する。」、「散歩の時に、もう少し大股で歩行すると効果が高いと提案する。」、「散歩をしたことで、気分が良くなったみたいですね。」等の運動内容のフィードバックに関わる短期目標変更情報を出力する。
【0063】
また、情報生成機能112は、例えば患者情報、目標情報、嗜好情報、行動実績情報、行動予定情報、関係者位置情報等を入力とし、「知り合いを登録しておいて、その人と予定があったら一緒に運動させる。」、「知らない人ともつながりたいと登録してある人には、全然知らない人を紹介する。」、「好み、予定、地理情報から紹介する。」、「物理的に一緒に運動せずとも、テレビ電話等でコミュニケーションをとりながら運動する。」、「運動の結果を共有して、競い合うことを提案する。」、「当該患者の運動中に、運動中の他の患者の血糖値が下がった通知を出すことでインセンティブとする。」等の他の糖尿病患者とのコミュニケーションに関わる短期目標変更情報を出力する。
【0064】
通知制御機能113は、例えば患者位置情報、行動予定情報等に基づいて、ユーザ端末2-1~2-nを介して短期目標変更情報を各患者に通知するタイミングを制御する。なお、当該通知制御機能113は、ユーザ端末2-1~2-n側に設けられる構成であってもよい。
【0065】
なお、
図2においては単一のプロセッサである処理回路11にて計算機能110、情報取得機能111、情報生成機能112、通知制御機能113、表示制御機能114にて行われる処理機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、
図2においては単一の記憶回路10が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数の記憶回路10を分散して配置して、処理回路11は個別の記憶回路10から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。
【0066】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical processing unit)或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD),及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路10に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路10にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0067】
入力回路12は、操作者によって操作が可能なポインティングデバイス(マウス等)やキーボード等の入力デバイスからの信号を入力する回路であり、ここでは、入力デバイス自体も入力回路12に含まれるものとする。操作者により入力デバイスが操作されると、入力回路12はその操作に応じた入力信号を生成して処理回路11に出力する。なお、医用情報処理装置1は、入力デバイスが表示回路14と一体に構成されたタッチパネルを備えてもよい。
【0068】
入力回路12は、は、関心領域(ROI)の設定などを行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路及び表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチパネルディスプレイ等によって実現される。
【0069】
なお、入力回路12は、はマウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力回路12の例に含まれる。
【0070】
表示回路14は、画像を表示するディスプレイであり、LCD(Liquid Crystal Display等によって構成される。表示回路14は、処理回路11からの指示に応じてLCD上に、各種操作画面や、画像データ等の各種表示情報を表示させる。
【0071】
通信I/F(interface)回路14は、所定の通信規格にしたがって、外部装置との通信動作を行う。サーバ装置1がネットワーク上に設けられる場合、通信I/F回路14は、ネットワーク上の外部装置と情報の送受信を行なう。例えば、通信I/F回路14は、撮像で得られたデータをMRI装置等の医用画像診断装置や医用画像管理装置から受信する。
【0072】
次に、短期目標変更情報を通知するためのGUIについて説明する。
【0073】
図4は、通知制御機能113によって表示回路14に表示される、短期目標変更情報を通知するGUIの一例を示した図である。このGUIは、例えばユーザ端末2-1、又はユーザ端末2-1に対応する患者が有するパーソナルコンピュータ等に表示される。
【0074】
図4に示したように、当該GUIには、短期目標として、食事による摂取カロリーの目標値(すなわち、摂取可能なカロリー値の上限)と実績値(実際に摂取されたカロリー値)、運動による消費カロリーの目標値(すなわち、運動により消費すべきカロリー値)と実績値(実際の運動によって消費されたカロリー値)、行動予定情報に従うスケジュールが一週間単位で表示される。なお、各曜日の横軸は一日の24時間に対応し、水曜日の列にある縦の実線は、横軸上の現在の日時に対応した位置を表している。
【0075】
当該患者の食事による摂取カロリーを見ると、月曜日及び火曜日は実績値が目標値を上回っており、カロリーオーバーの状態となっている。そのため、木曜日と金曜日の食事による摂取カロリー目標値は、月曜日~水曜日の食事による摂取カロリー目標値に比して低く設定されている。
【0076】
このような状況において、通知制御機能113は、
図4に示したGUIを介して、吹き出し20により「当日のお勧め昼食とルートはこちら。」との情報を表示し、カロリーの低い食事とその食事を提供する店舗までの運動を促すための短期目標変更情報を通知する。また、通知制御機能113は、
図4に示したGUIを介して、吹き出し21により「ひとつ前の駅から遠回りすれば、食事目標を元の水準に戻せます。お勧めのルートはこちら。」との情報を表示し、さらなる運動を促すための短期目標変更情報を通知する。
【0077】
上記吹き出し20、21による情報と併せて、通知制御機能113は、短期目標変更情報として、
図4に示したGUIを介して、吹き出し20、21による運動を行うことにより、木曜日の食事による摂取カロリー目標値(すなわち、将来の短期の目標値)を、破線30の棒グラフで示した水準にまで戻すことができることを通知する。また、通知制御機能113は、金曜日は都内出張で移動による運動が期待できることから、運動による消費カロリーを破線32の棒グラフで示した値まで高くすることで、金曜日の食事による摂取カロリー目標値(すなわち、将来の短期の目標値)を、破線31の棒グラフで示した水準にまで戻すことができることを通知する。
【0078】
なお、金曜日の食事による摂取カロリー目標値がこの様に提案されているのは、情報生成機能112が、行動予定情報に基づき金曜日が都内出張であり、例えば「(出張又は旅行は食事が不定期になる、移動が増える等の予定に鑑み)出張、旅行中は、駅から遠い名所に案内して運動量を増やす。」との判断をしたことに基づくものである。
【0079】
患者は、
図4のGUIを介して通知された短期目標変更情報により、一週間内の直近の短期目標として設定された食事による摂取カロリー目標値、運動による消費カロリーの目標値を変更するための具体的な行動を把握することができる。
【0080】
また、通知制御機能113は、短期目標変更情報として、吹き出し41により、土曜日の野球のメンバーが募集中であることを通知し、野球による運動を促す。さらに、通知制御機能113は、短期目標変更情報として、吹き出し42により、日曜日のダンスのメンバーが募集中であることを通知し、ダンスによる運動を促す。なお、土曜日の野球、日曜日のダンスのメンバーがこの様に提案されているのは、情報生成機能112が、「球技が好きだから野球による運動を提案する。」、「チーム競技が好きだから複数人でのダンスを提案する。」との判断をしたことに基づくものである。
【0081】
なお、短期目標変更情報として、吹き出し40によって通知される「結果のみ共有予定」との情報は、関係者位置情報を用いて、例えば登録された糖尿病患者同志の間で、食事による摂取カロリーと運動による消費カロリーの目標値と実績値とを共有することを示している。この様な患者間の情報共有により、生活習慣の改善についてのインセンティブや連帯意識を促すことができる。
【0082】
図5乃至
図8は、通知制御機能113によって表示回路14に表示される、短期目標変更情報を通知するGUIの他の例を示した図である。
図5乃至
図8に示すGUIによって、
図4に示した患者の金曜日の都内出張について、当日に短期目標変更情報が提供される。
【0083】
まず、
図5に示す様に、通知制御機能113は、出張当日の自宅出発時に吹き出し22によって「無事晴れましたね。絶好の散歩日和ですね!」との情報を表示し、散歩による運動を促すための短期目標変更情報を通知する。
【0084】
次に、
図6に示す様に、通知制御機能113は、例えば目的地の最寄駅の一駅前に到着する5分前に、吹き出し23によって「今日はここから歩いてみては?歩けば、昼食をこっちにできます。○○さんは3日前に歩いたみたいですね。」との情報を表示し、散歩による運動、散歩途中での低カロリーの昼食を促し、且つ治療仲間の情報を共有し実際に行動するためのインセンティブとなる短期目標変更情報を通知する。
【0085】
次に、
図7に示す様に、通知制御機能113は、例えば目的地の最寄駅に到着したタイミングで、吹き出し24によって「階段がありますね。階段を使えば、この後の散歩の効果が1.2倍になります。」との情報を表示し、階段歩行による運動を促す短期目標変更情報を通知する。
【0086】
次に、
図8に示す様に、通知制御機能113は、例えば昼食するタイミングにおいて、吹き出し25によって「今日お勧めの食事はこちら。それとも食べたいものがありますか?」との情報を表示し、低カロリーの昼食を促す短期目標変更情報を通知する。なお、「それとも食べたいものがありますか?」に対して希望の食事を入力した場合には、その食事を摂取した場合の将来の摂取カロリーの目標値、将来の消費カロリーの目標値がどのように変動するかをさらなる短期目標変更情報として通知することが好ましい。
【0087】
患者は、
図5乃至
図8のGUIを介して通知された短期目標変更情報により、出張日分の短期目標として設定された食事による摂取カロリー目標値、運動による消費カロリーの目標値を変更するための具体的な行動を把握することができる。
【0088】
図9は、通知制御機能113によって表示回路14に表示される、短期目標変更情報を通知するGUIの他の例を示した図である。
【0089】
図9に示したように、当該GUIには、短期目標として、食事による摂取カロリーの目標値と実績値、運動による消費カロリー及び身体機能維持の目標値と実績値、行動予定情報に従うスケジュールが一日単位で表示される。なお、中央付近にある縦の実線は、現在の時刻に対応した位置を表している。
【0090】
当該患者の食事による摂取カロリーを見ると、午前中の食事(朝食)は実績値と目標値は同等である一方、昼食については、実績値が目標値を下回っている。そのため、午後2~3時の時間帯において、間食による摂取カロリー目標値を示す棒グラフ33を表示すると共に、この間食により、夕食による摂取カロリー目標値を示す棒グラフ34の実線部分が朝食、昼食に比して低く設定されている。また、吹き出し27により「低血糖のリスクがあります。間食をしてはいかが?お勧めはこちら。」との情報を表示し、低血糖のリスクを知らせると共に、低血糖防止のための食事とその食事を提供する店舗までの運動を促すための短期目標変更情報を通知する。
【0091】
また、吹き出し26により「新発売のどら焼きがあるみたいです。歩いて行けば、運動目標値に到達します。参加者を募集する。お勧めのルート。」との情報を表示し、間食のための食事とその食事を提供する店舗までの運動を促すための短期目標変更情報を通知する。なお、「参加者を募集する。」に対して参加希望の入力した場合には、例えば登録された糖尿病患者同志の間で店舗までの運動についての情報が共有されることになる。
【0092】
また、吹き出し29により本日の運動による消費カロリーの目標値が示され、現在の時刻において一日の運動による消費カロリーの推定値が目標値に到達しないことから、吹き出し28により、「参加者募集中の運動が4件あります。」との情報を表示し、登録された糖尿病患者同志での運動を促すための短期目標変更情報を通知する。
【0093】
患者は、
図9のGUIを介して通知された短期目標変更情報により、一日分の短期目標として設定された食事による摂取カロリー目標値、運動による消費カロリーの目標値を変更するための具体的な行動を把握することができる。
【0094】
次に、短期目標変更情報の生成処理及び通知処理の流れについて説明する。
【0095】
図10は、短期目標変更情報の生成処理及び通知処理の流れを示したフローチャートである。
【0096】
図10に示す様に、処理回路11の情報取得機能111は、各種基準情報を取得する(ステップS1)。取得された各種基本情報は、患者毎に管理され、記憶回路10に蓄積される。
【0097】
次に、処理回路11の計算機能110は、取得した各種基準情報に基づいて、短期目標の計算・設定を行う(ステップS2)。計算され設定された短期目標は、患者毎に管理され、記憶回路10に蓄積される。
【0098】
次に、処理回路11の計算機能110は、取得した各種基準情報に基づいて、行動実績情報の計算・設定を行う(ステップS3)。計算され設定された行動情報は、患者毎に管理され、記憶回路10に蓄積される。
【0099】
次に、処理回路11の情報生成機能112は、取得した各種基準情報に基づいて、短期目標変更情報を生成する(ステップS4)。生成された短期目標変更情報は、患者毎に管理され、記憶回路10に蓄積される。
【0100】
次に、処理回路11の通知制御機能113は、患者位置情報、行動予定情報等に基づいて、生成された短期目標変更情報をユーザ端末2-1に送信する(ステップS5)。
【0101】
送信された短期目標変更情報は、ユーザ端末2-1において、例えば
図4乃至
図9に示したGUIによって当該患者に通知される。
【0102】
また、短期目標変更情報に基づくその後の行動等により、当該患者の行動実績情報に変化があった場合には、変化した行動実績情報に基づいて、逐次的に長期目標から逆算して、短期目標を計算して更新(変更・設定)する(ステップS2)。そして、更新された短期目標を用いて、再度ステップS3乃至S5の処理が繰り返し実行されることになる。
【0103】
以上説明した説明した様に、本実施形態に係る医用情報処理装置1又は医用情報処理システムSは、計算部としての計算機能110と、生成部としての情報生成機能111、制御部としての通知制御機能113を備える。計算機能110は、生活習慣改善の対象である患者について設定された長期期間としての第1の期間に対応する第1の目標値(長期目標)に基づいて、第1の期間に含まれる複数の短期期間としての複数の第2の期間のそれぞれについて、第2の目標値(短期目標)を計算する。情報生成機能111は、将来の前記第2の期間の少なくとも一つについての短期目標を変更するために患者が取るべき行動に関する短期目標変更情報を生成する。通知制御機能113は、短期目標変更情報の患者への通知を制御する。
【0104】
従って、生活習慣病患者は、医用情報処理装置1から通知された短期目標変更情報により、短期目標として設定された目標値、例えば直近の食事による摂取カロリーの上限値を高くするため、或いは運動による消費カロリーの推奨値を低くするための具体的な行動をリアルタイムで把握することができる。その結果、食事による摂取カロリーの上限値、運動による消費カロリーの推奨値を単に提供する従来の装置に比して、患者の生活習慣改善をより現実的に支援することができ、生活習慣病の治療効率を向上させることができる。
【0105】
特に、短期目標変更情報は、対象となる患者の現在又は将来の位置と、現在又は未来の行動に基づく環境を基準として生成されている。従って、患者はリアルタイムで受け取る情報に従って即座に行動することができるため、心理的なハードルを従来に比して低くすることができる。その結果、生活習慣改善をより迅速且つ効果的に改善することができる。
【0106】
(変形例1)
図11は、実施形態に係る用情報処理システムの変形例を示した図である。
図11に示す様に、各ユーザ端末2-1~2-nが通知制御機能113を備える構成であってもよい。係る構成の場合には、通知制御機能113は、スケジュールアプリに含まれる内容、当該ユーザ端末2-1~2-nのGPS機能等によって当該患者が現在いる環境を判断し、短期目標変更情報を通知するタイミングを制御することが好ましい。
【0107】
(変形例2)
上記実施形態おいては、生活習慣病患者の生活習慣を改善する場合に、医用情報処理装置1を利用する場合を例とした。これに対し、生活習慣病患者の生活習慣の改善のみならず、単なるダイエットを行う場合においても、本実施形態に係る医用情報処理装置1を利用することができる。
【0108】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、生活習慣を改善するために有益な支援情報を患者に提供し、生活習慣病等の治療を従来に比して効率化することができる。
【0109】
また、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0110】
1 医用情報処理装置
2-1~2-n ユーザ端末
10 記憶回路
11 処理装置
12 入力回路
13 通信I/F回路
14 表示回路
110 計算機能
111 情報取得機能
112 情報生成機能
113 情報通知機能
S 医用情報処理システム