(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20240412BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20240412BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240412BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20240412BHJP
A61K 8/33 20060101ALI20240412BHJP
A61K 8/90 20060101ALI20240412BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240412BHJP
A61Q 1/14 20060101ALI20240412BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20240412BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20240412BHJP
A61K 31/195 20060101ALI20240412BHJP
A61K 31/7032 20060101ALI20240412BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240412BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240412BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240412BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/60
A61K8/37
A61K8/55
A61K8/33
A61K8/90
A61Q19/00
A61Q1/14
A61Q19/10
A61Q1/00
A61K31/195
A61K31/7032
A61K47/14
A61K47/24
A61K47/10
A61P17/00
(21)【出願番号】P 2020016095
(22)【出願日】2020-02-03
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】小浦 汐織
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-087148(JP,A)
【文献】特開2016-027037(JP,A)
【文献】特開2016-132624(JP,A)
【文献】特開2020-007229(JP,A)
【文献】国際公開第2015/152103(WO,A1)
【文献】特開2020-015665(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0014162(US,A1)
【文献】Clear-Up Lotion, MINTEL GNPD [ONLINE], 2018.07,[検索日 2023.11.27],インターネット:<URL:https://www.gnpd.com/sinatra>(Database accession no.5820659)
【文献】Whitening Lotion EX, MINTEL GNPD [ONLINE], 2018.03,[検索日 2023.11.27],インターネット:<URL:https://www.gnpd.com/sinatra>(Database accession no.5520265)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 31/195
A61K 31/7032
A61K 47/14
A61K 47/24
A61K 47/10
A61P 17/00
Mintel GNPD
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(C)を含有する皮膚外用剤
((エイコ酸二酸/テトラデカン二酸)ポリグリセリル-10を含有するローションを除く)。
(A)トラネキサム酸又はその塩
(B)グリセリルグルコシド
(C
)ホスホリルコリン基含有重合体 、トリメチルグリシン、並びに下記式(2)
Z-{O(AO)l (EO)m -(BO)n H}a …式(2)
(式中、
Zは3~9個の水酸基を有する化合物の水酸基を除いた残基を表し;
AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基を表し;
EOはオキシエチレン基を表し;BOは炭素数4のオキシアルキレン基を表し;
aは3~9を表し;
l、m及びnは、それぞれ、AO、EO及びBOの平均付加モル数であって、1≦l≦5
0、1≦m≦50及び0.5≦n≦5であり;
AOとEOとの重量比(AO/EO)は1/5~5/1であり;
AO及びEOはランダム状又はブロック状に付加されてもよい。 )
で表される少なくとも1つのアルキレンオキシド誘導体から選択される1種又は2種以上
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
トラネキサム酸は保湿作用、美白作用等の作用を有することから化粧品の有効成分として用いられている(特許文献1)。また、グリセリルグルコシドは高い保湿効果を有し、皮膚外用剤に配合されることがよく知られている(特許文献2)。しかしながら、グリセリルグルコシドを保湿有効成分量配合すると、使用感上べたつくという課題があった。そこで種々の成分との併用が検討されているが、その保湿効果は限定的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-109972号公報
【文献】特開平11-222496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、トラネキサム酸又はその塩、グリセリルグルコシド及び特定の保湿剤から選択される1種又は2種以上を併用することにより、保湿効果が相乗的に向上する皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記(A)~(C)を含有する皮膚外用剤
(A)トラネキサム酸又はその塩
(B)グリセリルグルコシド
(C)二価カルボン酸及び平均重合度2以上15以下のポリグリセリンから構成されるオリゴマーエステル、ホスホリルコリン基含有重合体、トリメチルグリシン、並びに下記式(2)
Z-{O(AO)l(EO)m-(BO)nH}a …式(2)
(式中、
Zは3~9個の水酸基を有する化合物の水酸基を除いた残基を表し;
AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基を表し;
EOはオキシエチレン基を表し;BOは炭素数4のオキシアルキレン基を表し;
aは3~9を表し;
l、m及びnは、それぞれ、AO、EO及びBOの平均付加モル数であって、1≦l≦50、1≦m≦50及び0.5≦n≦5であり;
AOとEOとの重量比(AO/EO)は1/5~5/1であり;
AO及びEOはランダム状又はブロック状に付加されてもよい。)
で表される少なくとも1つのアルキレンオキシド誘導体から選択される1種又は2種以上
を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の皮膚外用剤は、トラネキサム酸又はその塩、グリセリルグルコシド及び特定の保湿剤から選択される1種又は2種以上を併用することにより、保湿効果が相乗的に向上する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
【0008】
本発明の皮膚外用剤は、化粧品、医薬部外品、医薬品等のいずれの用途にも用いられ得る。
【0009】
トラネキサム酸又はその塩は、一般的に化粧料等に用いられているものであればよい。市販品としては、トラネキサム酸(日本精化株式会社)等が挙げられる。本発明の皮膚外用剤への配合量としては、皮膚外用剤全量に対し0.01~5質量%が好ましく、1~2.5質量%がより好ましく、1~2質量%が最も好ましい。
【0010】
グリセリルグルコシドは、一般的に化粧料等に配合し得るものであれば製造方法は、合成、微生物による発酵等方法を問わない。具体的には、α体、β体、或いはこれらの混合物のいずれも用いることができる。市販品としては、αGG(登録商標)-L(辰馬本家酒造株式会社)、COSARTE-2G(登録商標)(東洋精糖株式会社)等が挙げられる。
【0011】
本発明の皮膚外用剤へのグリセリルグルコシドの配合量は、皮膚外用剤全量に対し0.001~5質量%が好ましく、0.001~3質量%がさらに好ましい。グリセリルグルコシドの配合量が0.001質量%未満では、十分な保湿効果が得られない場合がある。グリセリルグルコシドの配合量が5質量%を超えると、べたつきの原因となる場合がある。
【0012】
本発明において特定の保湿剤とは、二価カルボン酸及び平均重合度2以上15以下のポリグリセリンから構成されるオリゴマーエステル、ホスホリルコリン基含有重合体、トリメチルグリシン、並びに下記式(2)
Z-{O(AO)l(EO)m-(BO)nH}a …式(2)
(式中、
Zは3~9個の水酸基を有する化合物の水酸基を除いた残基を表し;
AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基を表し;
EOはオキシエチレン基を表し;BOは炭素数4のオキシアルキレン基を表し;
aは3~9を表し;
l、m及びnは、それぞれ、AO、EO及びBOの平均付加モル数であって、1≦l≦50、1≦m≦50及び0.5≦n≦5であり;
AOとEOとの重量比(AO/EO)は1/5~5/1であり;
AO及びEOはランダム状又はブロック状に付加されてもよい。)
で表される少なくとも1つのアルキレンオキシド誘導体から選択される1種又は2種以上である。
【0013】
二価カルボン酸及び平均重合度2以上15以下のポリグリセリンから構成されるオリゴマーエステルの二価カルボン酸としては、直鎖、分岐鎖、或いは環状構造の何れかを含む二価カルボン酸であれば特に限定されないが、合成のしやすさ、保湿効果を向上させる観点から、二価カルボン酸の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは12以上、更に好ましくは14以上であって、好ましくは26以下、より好ましくは24以下、更に好ましくは22以下、更に好ましくは20以下である。また、同様の観点から、脂肪族二価カルボン酸が好ましい。具体的な炭素数2以上26以下の二価カルボン酸としては、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、2,4-ジエチルペンタン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、8-エチルオクタデカン二酸、エイコサン二酸、ジメチルエイコサン二酸、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。これら二価カルボン酸は、いずれか1種を単独で、又は2種以上を適宜組合せて用いることができる。
【0014】
これらの二価カルボン酸のうち、油剤として軽い感触の使用感が得られる観点から、炭
素数14以上22以下の直鎖又は分岐鎖の二価カルボン酸が好ましく、炭素数14以上20以下の直鎖の二価カルボン酸がより好ましい。具体的には、前記の観点から、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、8-エチルオクタデカン二酸、エイコサン二酸及びジメチルエイコサン二酸から選択される1種又は2種以上が好ましく、テトラデカン二酸及びエイコサン二酸から選択される1種又は2種がより好ましい。
【0015】
また、二価カルボン酸とエステル体を形成するポリグリセリンとしては、水酸基価から
算出した平均重合度2以上15以下のポリグリセリンが用いられる。ポリグリセリンの平均重合度は、水性成分との溶解性の良さの点から、好ましくは8以上、より好ましくは9以上であり、また、好ましくは15以下、より好ましくは12以下である。中でも、平均重合度10のポリグリセリンを含むものが好ましい。
【0016】
二価カルボン酸とポリグリセリンとのオリゴマーエステルの製造方法は、特開2007-137847号公報に記載の方法が挙げられる。本発明のオリゴマーエステルの重合度は、二価カルボン酸とポリグリセリンの仕込み比により調整することができる。オリゴマーエステルの粘度が高すぎず、べたつきを抑制する観点から、ポリグリセリン1モル当量に対する二価カルボン酸の量は、好ましくは0.3モル当量以上、より好ましくは0.7モル当量以上であり、また、好ましくは1.5モル当量以下、より好ましくは1.2モル当量以下である。
【0017】
これらオリゴマーエステルの好適な例としては、テトラデカン二酸及び/又はエイコサン二酸と、平均重合度10のポリグリセリンとから構成されるオリゴマーエステルである、(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ポリグリセリル-10が挙げられる。このオリゴマーエステルは、Neosolue(登録商標)-Aqua、Neosolue(登録商標)-AquaS(いずれも日本精化株式会社)として市販されているものである。
【0018】
本発明の皮膚外用剤にオリゴマーエステルを配合する場合の配合量は、0.008質量%以上であって、0.02質量%以上が更に好ましい。また、高温及び低温安定性、肌馴染みの良さを向上させる観点から、6質量%以下であって、4質量%以下が好ましい。具体的には、0.008~6質量%であって、0.02~4質量%がより好ましい。
【0019】
ホスホリルコリン基含有重合体(以下、PC重合体と略記することもある。)は、ホスホリルコリン基含有単量体(以下、PC単量体と略記することもある。)、好ましくは式(1)で表される2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(以下、MPC単量体と略記することもある。)を含む単量体組成物を、ラジカル重合してなる重合体(以下、MPC重合体と略記することもある。)等が挙げられる。MPC重合体は、反応性基及びフルオロアルキル基を含まない重合体であることが好ましい。
【0020】
【0021】
PC重合体を合成するための単量体組成物としては、例えば、上記PC単量体、特にMPC単量体単独、もしくはPC単量体、特にMPC単量体と、該PC単量体と共重合可能な、反応性基及びフルオロアルキル基を含まないラジカル重合性単量体との混合物が挙げられる。
【0022】
前記ラジカル重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸及びその塩類、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単量体のうち、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートが、入手性及び単量体の生物学的安全性の点からより好ましい。これらの単量体は、MPC重合体の製造にあたって単独でも2種以上の混合物としても用いることができる。
【0023】
前記PC重合体、特に、MPC重合体としては、PC単量体、特にMPC単量体を含む単量体組成物を、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等、公知の方法に従って重合することによって得ることができる。例えば、溶液重合の場合、単量体組成物を低級アルコール等の有機溶媒中に溶解し、窒素、アルゴン等不活性ガスの雰囲気下、アゾ化合物や過酸化物等のラジカル重合開始剤を添加して加熱、攪拌することにより得ることができる。また、MPC重合体は市販品を用いることもできる。Lipidure(登録商標)(日油株式会社)等が挙げられる。MPC重合体を含むMPC重合体の形態としては、粉状、溶液状又は均一分散液体状のいずれでもよい。
【0024】
前記PC重合体は、好ましくはMPC単量体に由来する共重合組成比が10~100モル%の範囲のMPC重合体を適宜選定することができるが、MPC単量体に由来する共重合組成比が30~100モル%の範囲がより好ましい。
【0025】
前記MPC重合体を含む前記PC重合体の重量平均分子量は、10000~10000000の範囲が好ましく、50000~3000000の範囲がより好ましい。
【0026】
本発明の皮膚外用剤において、MPC重合体を含むPC重合体を配合する場合の配合量は、0.001~5質量%が好ましく、0.001~4質量%がより好ましい。
【0027】
トリメチルグリシンは、特に限定されず市販品を用いることができる。市販品としては、GENENCARE(登録商標) OSMS BA(Finnfeeds Finland Ltd)、アクアデュウ(登録商標) AN-100(味の素株式会社)、アミノコート(登録商標)(旭化成ファインケム株式会社)等が挙げられる。
【0028】
本発明の皮膚外用剤へのトリメチルグリシンの配合量は、特に限定されないが、種類や目的等によって調整することができる。トリメチルグリシンを配合する場合、効果や安定性等の点から、皮膚外用剤全量に対して、好ましくは0.01~20質量%であり、より好ましくは0.1~20質量%であり、さらに好ましくは0.1~10質量%である。
【0029】
アルキレンオキシド誘導体は、下記式(2):
Z-{O(AO)l(EO)m-(BO)nH}a …式(2)
(式中、
Zは3~9個の水酸基を有する化合物の水酸基を除いた残基を表し;
AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基を表し;
EOはオキシエチレン基を表し;BOは炭素数4のオキシアルキレン基を表し;
aは3~9を表し;
l、m及びnは、それぞれ、AO、EO及びBOの平均付加モル数であって、1≦l≦50、1≦m≦50及び0.5≦n≦5であり;
AOとEOとの重量比(AO/EO)は1/5~5/1であり;
AO及びEOはランダム状又はブロック状に付加されてもよい。)
で表される。上記のアルキレンオキシド誘導体は単一種類であってもよく、若しくは、複数種類の混合物であってもよい。
【0030】
式(2)で示されるアルキレンオキシド誘導体において、Zは3~9個の水酸基を有する化合物の水酸基を除いた残基であり、aはZの化合物の水酸基の数であり3~9である。3~9個の水酸基を有する化合物として、例えば、a=3であればグリセリン、トリメチロールプロパン、a=4であれば、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ソルビタン、アルキルグリコシド、ジグリセリン、a=5であればキシリトール、a=6であればジペンタエリスリトール、ソルビトール、イノシトール、a=8であればショ糖、トレハロース、a=9であればマルチトール、及び、これらの混合物等が挙げられる。好ましくは、Zは3~6個の水酸基を有する化合物の水酸基を除いた残基であり、3≦a≦6を満たす。3~9個の水酸基を有する化合物としてはグリセリン、トリメチロールプロパンが好ましく、グリセリンが特に好ましい。なお、a≦2では、油脂などの油性成分との相溶性に劣り油性製剤への配合安定性が悪化する傾向がある。10≦aではべたつき感が生じる。
【0031】
AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基であり、例として、オキシプロピレン基、オキシブチレン基(オキシn-ブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシt-ブチレン基)、オキシトリメチレン基、オキシテトラメチレン基等が挙げられる。好ましくは、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、さらに好ましくはオキシプロピレン基である。
【0032】
lはAOの平均付加モル数であり、1≦l≦50、好ましくは2≦l≦20である。mはEOの平均付加モル数であり、1≦m≦50、好ましくは2≦m≦20である。lが0であるとべたつき感を生じてしまい、50を超えると保湿効果が低下してしまうので好ましくない。また、mが0であると保湿効果が低下してしまい、50を超えるとべたつき感が生じてしまうので好ましくない。
【0033】
AOとEOとの重量比(AO/EO)は1/5~5/1であり、好ましくは1/4~4/1である。1/5より小さいとべたつき感を生じてしまい、5/1より大きいと保湿感が低下してしまうので好ましくない。AOとEOの付加する順序は特に指定はなく、ブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよい。好ましくはランダム状に付加されているものである。
【0034】
BOは炭素数4のオキシアルキレン基であり、例としてはオキシブチレン基(オキシn-ブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシt-ブチレン基)、オキシテトラメチレン基等が挙げられる。好ましくはオキシブチレン基である。
【0035】
nはBOの平均付加モル数であり、0.5<n≦5であり、好ましくは0.8≦n≦3であり、より好ましくは1≦n≦3である。0.5以下であるとべたつき感が生じてしまい、5を超えると保湿感が低下してしまうので好ましくない。なお、式(2)において、(BO)nは末端水素原子に結合していることが必要である。
【0036】
式(2)で示されるアルキレンオキシド誘導体は、公知の方法で製造することができる。例えば、3~9個の水酸基を有している化合物にエチレンオキシドおよび炭素数3~4のアルキレンオキシドを付加重合した後に、炭素数4のアルキレンオキシドを反応させることによって得られる。なお、3~9個の水酸基を有している化合物にエチレンオキシドおよび炭素数3~4のアルキレンオキシドを付加重合する段階においては、エチレンオキシドとアルキレンオキシドとをランダム重合してもよく、又は、ブロック重合してもよい。
【0037】
式(2)で示されるアルキレンオキシド誘導体のうち、好ましい前記アルキレンオキシド誘導体としては、例えば、下記式(2-1):
Gly-[O(PO)s(EO)t-(BO)uH]3 …式(2-1)
(式中、
Glyはグリセリンから水酸基を除いた残基を表し;
POはオキシプロピレン基を表し;
EOはオキシエチレン基を表し;
sおよびtはそれぞれPOおよびEOの平均付加モル数であって、1~50の値であり、
POとEOとの質量比(PO/EO)は1/5~5/1であって、
BOは炭素数4のオキシアルキレン基を表し;
uはBOの平均付加モル数であって、0.5~5の値である。)
のアルキレンオキシド誘導体(ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセロール)が挙げられる。
【0038】
式(2-1)のアルキレンオキシド誘導体は、グリセリンにプロピレンオキシドおよびエチレンオキシドをそれぞれグリセリンに対して3~150モル当量の割合で付加させた後に、炭素数4のアルキレンオキシドをグリセリンに対して1.5~15モル当量の割合で付加させて得られる。
【0039】
グリセリンにこれらのアルキレンオキシドを付加させる場合、アルカリ触媒、相関移動触媒、ルイス酸触媒などを用いて付加反応を行う。一般的には、水酸化カリウムなどのアルカリ触媒を用いることが好ましい。
【0040】
式(2)で示されるアルキレンオキシド誘導体のうち、更に好ましいものは、グリセリンに6~10モルのエチレンオキシド及び3~7モルのプロピレンオキシドを付加させた後に、2~4モルのブチレンオキシドを付加させたものである。
【0041】
式(2)で示されるアルキレンオキシド誘導体のうち、更により好ましいものは、グリセリンに8モルのエチレンオキシド及び5モルのプロピレンオキシドを付加させた後に、3モルのブチレンオキシドを付加させた、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセロールであり、PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリンと称される。このアルキレンオキシド誘導体は、WILBRIDE(登録商標) S-753、WILBRIDE(登録商標) S-753D(いずれも日油株式会社)として市販されているものである。
【0042】
本発明の皮膚外用剤へのアルキレンオキシド誘導体の配合量は、特に限定されず、種類や目的等によって調整することができる。アルキレンオキシド誘導体を配合する場合、効果や安定性等の点から皮膚外用剤全量に対して、0.01質量%以上が好ましく、また、20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下である。具体的には、好ましくは0.01~20質量%であり、より好ましくは0.01~10質量%であり、さらに好ましくは0.1~10質量%である。20質量%を超えて配合すると、使用感上べたつきが問題となる場合がある。
【0043】
本発明の皮膚外用剤には上述の必須成分の他に、必要に応じて通常皮膚外用剤に配合される、水性成分、油性成分、保湿剤、色素、界面活性剤、紫外線吸収剤、増粘剤、美容成分、香料、高分子物質、防菌防黴剤、アルコール類、粉体、スクラブ剤、生体由来成分等を適宜配合することができる。
【0044】
本発明の皮膚外用剤は、例えば、ローション剤、乳剤、軟膏の剤型で用いることができる。また、本発明の皮膚外用剤は、製造方法を問わない。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。なお、配合量は特に断りのない限り質量%である。
【0046】
[保湿効果試験方法]
表1及び表2に示した試料を調製し、皮表角層水分量の測定を行った。
【0047】
[測定方法]
(1)馴化
被験者は左右前腕内側部を洗浄後、水分をふき取り、温度21±0.5℃、湿度50±5%に調整された室内で15分間安静にし、馴化を行った。
(2)塗布
左右前腕内側部に3cm×3cmの領域を記し、ピペットを用いて9μLを滴下し、指サックをした指で均一に塗布した。
(3)測定
塗布前及び塗布後60分後の皮表角層水分量をSKICON-200EXを用いて測定した。皮表角層水分量は塗布前の水分量を100とした場合の相対値を算出し、表1及び表2に示した。皮表角層水分量は、測定当日の気温、湿度等の影響を受けやすいため、一群の試料は同日に評価し、塗布前の測定も試料を塗布した部位での測定値を相対値の基準とした。
【0048】
[保湿効果試験方法]
表3及び表4に示した試料を調製し、経表皮水分蒸散量の測定を行った。
【0049】
[測定方法]
(1)馴化
被験者は左右前腕内側部を洗浄後、水分をふき取り、温度20±0.5℃、湿度50±5%に調整された室内で15分間安静にし、馴化を行った。
(2)塗布
左右前腕内側部に3cm×3cmの領域を記し、ピペットを用いて9μLを滴下し、指サックをした指で均一に塗布した。
(3)測定
塗布前及び塗布後60分後の経表皮水分蒸散量をVapometerを用いて測定した。経表皮水分蒸散量は塗布前の経表皮水分蒸散量を100とした場合の相対値を算出し、表3及び表4に示した。経表皮水分蒸散量は、測定当日の気温、湿度等の影響を受けやすいため、一群の試料は同日に評価し、塗布前の測定も試料を塗布した部位での測定値を相対値の基準とした。
【0050】
【0051】
表1に示した通り、実施例1は、グリセリルグルコシドを実施例1と比較して倍量含有する比較例1及び、(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ポリグリセリル-10を実施例1と比較して倍量含有する比較例2、と比較して皮表角層水分量が相乗的に向上していた。
【0052】
【0053】
表2に示した通り、実施例2は、グリセリルグルコシドを実施例2と比較して倍量含有する比較例1及び、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体液を実施例2と比較して倍量含有する比較例3、と比較して皮表角層水分量が相乗的に向上していた。
【0054】
【0055】
表3に示した通り、実施例3は、グリセリルグルコシドを実施例3と比較して倍量含有する比較例4及び、トリメチルグリシンを実施例3と比較して倍量含有する比較例5、と比較して経表皮水分蒸散量が相乗的に低下していた。
【0056】
【0057】
表4に示した通り、実施例4は、グリセリルグルコシドを実施例4と比較して倍量含有する比較例4及び、PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリンを実施例4と比較して倍量含有する比較例6、と比較して経表皮水分蒸散量が相乗的に低下していた。
【0058】
[実施例5]クリーム
(1)スクワラン 10.0(質量%)
(2)ステアリン酸 2.0
(3)水素添加パーム核油 0.5
(4)水素添加大豆リン脂質 0.1
(5)セタノール 3.6
(6)親油型モノステアリン酸グリセリン 2.0
(7)グリセリン 10.0
(8)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(9)アルギニン(20質量%水溶液) 15.0
(10)精製水 全量を100とする量
(11)カルボキシビニルポリマー(1質量%水溶液) 15.0
(12)トラネキサム酸 2.0
(13)グリセリルグルコシド(注1) 0.5
(14)(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)
ポリグリセリル-10(注2) 0.5
【0059】
[実施例6]乳液
(1)スクワラン 10.0(質量%)
(2)メチルフェニルポリシロキサン 4.0
(3)水素添加パーム核油 0.5
(4)水素添加大豆リン脂質 0.1
(5)モノステアリン酸ポリオキシエチレン
ソルビタン(20E.O.) 1.3
(6)モノステアリン酸ソルビタン 1.0
(7)グリセリン 4.0
(8)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(9)カルボキシビニルポリマー 0.15
(10)精製水 全量を100とする量
(11)アルギニン(1質量%水溶液) 20.0
(12)トラネキサム酸 1.0
(13)グリセリルグルコシド(注1) 0.5
(14)2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン
・メタクリル酸ブチル共重合体液(注3) 0.3
【0060】
[実施例7]化粧水
(1)エタノール 15.0(質量%)
(2)ポリオキシエチレン(40E.O.)硬化ヒマシ油 0.3
(3)香料 0.1
(4)精製水 全量を100とする量
(5)クエン酸 0.02
(6)クエン酸ナトリウム 0.1
(7)グリセリン 1.0
(8)ヒドロキシエチルセルロース 0.1
(9)トラネキサム酸 2.0
(10)グリセリルグルコシド(注1) 0.3
(11)PEG/PPG/ポリブチレングリコール
-8/5/3グリセリン(注5) 0.5
【0061】
[実施例8]美容液
(1)精製水 全量を100とする量(質量%)
(2)グリセリン 10.0
(3)ショ糖脂肪酸エステル 1.3
(4)カルボキシビニルポリマー(1質量%水溶液) 17.5
(5)アルギン酸ナトリウム(1質量%水溶液) 15.0
(6)モノラウリン酸ポリグリセリル 1.0
(7)マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル 3.0
(8)N-ラウロイル―L-グルタミン酸
ジ(フィトステリル-2-オクチルドデシル) 2.0
(9)硬化パーム油 2.0
(10)スクワラン(オリーブ由来) 1.0
(11)ベヘニルアルコール 0.75
(12)ミツロウ 1.0
(13)ホホバ油 1.0
(14)1,3-ブチレングリコール 10.0
(15)L-アルギニン(10質量%水溶液) 2.0
(16)トラネキサム酸 2.0
(17)グリセリルグルコシド(注1) 0.2
(18)(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)
ポリグリセリル-10(注2) 0.2
(19)2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン
・メタクリル酸ブチル共重合体液(注3) 0.02
【0062】
[実施例9]水性ジェル
(1)カルボキシビニルポリマー 0.5(質量%)
(2)精製水 全量を100とする量
(3)水酸化ナトリウム(10質量%水溶液) 0.5
(4)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(5)トラネキサム酸 2.0
(6)グリセリルグルコシド(注1) 0.3
(7)トリメチルグリシン(注4) 0.2
(8)香料 0.1
(9)ポリオキシエチレン(60E.O.)硬化ヒマシ油 0.1
【0063】
[実施例10]クレンジング料
(1)スクワラン 81.0(質量%)
(2)イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 15.0
(3)精製水 全量を100とする量
(4)トラネキサム酸 1.0
(5)グリセリルグルコシド(注1) 0.2
(6)2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン
・メタクリル酸ブチル共重合体液(注3) 0.5
【0064】
[実施例11]洗顔フォーム
(1)ステアリン酸 16.0(質量%)
(2)ミリスチン酸 16.0
(3)親油型モノステアリン酸グリセリン 2.0
(4)グリセリン 20.0
(5)水酸化ナトリウム 7.5
(6)ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 1.0
(7)精製水 全量を100とする量
(8)トラネキサム酸 2.0
(9)グリセリルグルコシド(注1) 0.4
(10)(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)
ポリグリセリル-10(注2) 0.04
【0065】
[実施例12]メイクアップベースクリーム
(1)スクワラン 10.0(質量%)
(2)セタノール 2.0
(3)グリセリントリ-2-エチルヘキサン酸エステル 2.5
(4)親油型モノステアリン酸グリセリル 1.0
(5)プロピレングリコール 11.0
(6)ショ糖脂肪酸エステル 1.3
(7)精製水 全量を100とする量
(8)酸化チタン 1.0
(9)ベンガラ 0.1
(10)黄酸化鉄 0.4
(11)香料 0.1
(12)トラネキサム酸 1.0
(13)グリセリルグルコシド(注1) 0.2
(14)2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン
・メタクリル酸ブチル共重合体液(注3) 0.01
【0066】
[実施例13]乳液状ファンデーション
(1)メチルポリシロキサン 2.0(質量%)
(2)スクワラン 5.0
(3)ミリスチン酸オクチルドデシル 5.0
(4)セタノール 1.0
(5)ポリオキシエチレン(20E.O.)
ソルビタンモノステアリン酸エステル 1.3
(6)モノステアリン酸ソルビタン 0.7
(7)1,3-ブチレングリコール 8.0
(8)キサンタンガム 0.1
(9)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(10)精製水 全量を100とする量
(11)酸化チタン 9.0
(12)タルク 7.4
(13)ベンガラ 0.5
(14)黄酸化鉄 1.1
(15)黒酸化鉄 0.1
(16)香料 0.1
(17)トラネキサム酸 1.0
(18)グリセリルグルコシド(注1) 0.2
(19)(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)
ポリグリセリル-10(注2) 0.02
【0067】
[実施例14]油中水型エモリエントクリーム
(1)流動パラフィン 30.0(質量%)
(2)マイクロクリスタリンワックス 2.0
(3)ワセリン 5.0
(4)ジグリセリンオレイン酸エステル 5.0
(5)塩化ナトリウム 1.3
(6)塩化カリウム 0.1
(7)プロピレングリコール 3.0
(8)1,3-ブチレングリコール 5.0
(9)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(10)トラネキサム酸 2.0
(11)グリセリルグルコシド(注1) 0.2
(12)(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)
ポリグリセリル-10(注2) 0.02
(13)精製水 全量を100とする量
(14)香料 0.1
【0068】
[実施例15]パック
(1)精製水 全量を100とする量(質量%)
(2)ポリビニルアルコール 12.0
(3)エタノール 17.0
(4)グリセリン 5.0
(5)ポリエチレングリコール(平均分子量1000) 2.0
(6)トラネキサム酸 1.0
(7)グリセリルグルコシド(注1) 0.2
(8)PEG/PPG/ポリブチレングリコール
-8/5/3グリセリン(注5) 0.2
(9)香料 0.1
【0069】
[実施例16]シート状パック
(1)香料 0.1(質量%)
(2)1,3-ブチレングリコール 5.0
(3)グリセリン 5.0
(4)エタノール 3.0
(5)トラネキサム酸 1.0
(6)グリセリルグルコシド(注1) 0.2
(7)トリメチルグリシン(注4) 0.1
(8)PEG/PPG/ポリブチレングリコール
-8/5/3グリセリン(注5) 0.1
(9)精製水 全量を100とする量