(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】切削加工機
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/02 20060101AFI20240412BHJP
B28D 1/14 20060101ALI20240412BHJP
B23Q 3/04 20060101ALI20240412BHJP
B23Q 3/06 20060101ALI20240412BHJP
A61C 13/38 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
B23Q3/02 A
B28D1/14
B23Q3/04
B23Q3/06 304C
A61C13/38
(21)【出願番号】P 2020024197
(22)【出願日】2020-02-17
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】317009525
【氏名又は名称】DGSHAPE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】中林 昌基
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/085077(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/135687(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1334524(KR,B1)
【文献】特開2018-042894(JP,A)
【文献】特開2010-131395(JP,A)
【文献】米国特許第05468102(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/02- 3/10
A61C 5/77
A61C13/00-13/38
A61C19/00-19/10
B28D 1/00- 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を切削加工するための加工ツールを把持し、かつ、第1方向に延びるスピンドルと、
前記スピンドルより下方に位置し、かつ、複数の前記被加工物を保持可能なホルダーと、
前記第1方向と交差する第2方向に延びる回転軸と、
前記回転軸に接続され、前記ホルダーを回転可能に支持する回転支持部材と、を備え、
前記被加工物は、第1固定用ピンが取り付けられた第1被加工物と、第2固定用ピンが取り付けられた第2被加工物と、を含み、
前記ホルダーは、
前記第1固定用ピンを固定する第1固定部を少なくとも一つ有し、前記回転支持部材に固定された第1ホルダーと、
前記第1固定部と対向する位置に配置されかつ前記
第2固定用ピンを固定する第2固定部を少なくとも一つ有し、前記第1ホルダーに着脱自在に設けられた第2ホルダーと、を有し、
前記第1固定部に固定された前記第1固定用ピンおよび前記第2固定部に固定された前記第2固定用ピンは、
それぞれ前記第2方向に延び、
前記第2方向に関して、前記第1固定部に固定された前記
第1被加工物と前記第2固定部に固定された前記
第2被加工物との距離は、前記
第1固定用ピン
および前記第2固定用ピンの
それぞれの長さより短い、切削加工機。
【請求項2】
前記第2ホルダーは、前記第2方向に関して前記第1ホルダーに着脱自在に設けられている、請求項1に記載の切削加工機。
【請求項3】
前記第1ホルダーおよび前記第2ホルダーのいずれか一方には、締結ねじが挿通されるねじ孔が形成された第1連結部が設けられ、
前記第1ホルダーおよび前記第2ホルダーのいずれか他方には、前記締結ねじが係止する係止凹部が形成された第2連結部が設けられている、請求項2に記載の切削加工機。
【請求項4】
前記締結ねじの軸線方向の先端部には、先端に向かうほど内側に傾斜した第1傾斜面と、前記第1傾斜面の先端に接続された平面と、が形成され、
前記係止凹部には、前記締結ねじの前記第1傾斜面と接触しかつ上方に行くほど外側に傾斜する第2傾斜面が形成され、
前記第2ホルダーが前記第1ホルダーに取り付けられているとき、前記締結ねじの前記軸線と、前記係止凹部の中心軸とは前記第2方向に関してずれている、請求項3に記載の切削加工機。
【請求項5】
前記第1連結部は、前記ねじ孔が形成されかつ前記第2連結部の上面と対向する第1部分と、前記第1部分と対向する位置に配置されかつ前記第2連結部の下面と接触する第2部分と、前記第1部分および前記第2部分を連結しかつ前記第2連結部の側面と接触する第3部分とを有し、
前記第2ホルダーが前記第1ホルダーに取り付けられているとき、前記第2方向に関して、前記締結ねじの前記軸線、前記係止凹部の前記中心軸および前記回転支持部材の順に配置されている、請求項4に記載の切削加工機。
【請求項6】
前記距離は、前記加工ツールの直径より長い、請求項1から5のいずれか一項に記載の切削加工機。
【請求項7】
前記加工ツールを収容可能なツールマガジンを備え、
前記ホルダーの前端は前記ツールマガジンの前端より後方に位置し、かつ、前記ホルダーの後端は前記ツールマガジンの後端より前方に位置する、請求項1から6のいずれか一項に記載の切削加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、セラミックス材料や樹脂材料から構成された被加工物を所望の形状に切削加工する切削加工機が知られている。切削加工機は、例えば、内部に加工空間を有するケース本体と、上記加工空間に配置され、被加工物を保持する保持部材と、上記加工空間に配置され、上記被加工物に対して切削や研磨等の加工を施す加工ツールを把持する把持部と、を備えている。
【0003】
特許文献1には、直方体形状の被加工物を保持する保持部材を備えた切削加工機が開示されている。保持部材には被加工物の一つの面に配設されたピンが接続され、被加工物は保持部材によって回転可能に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-164201号公報
【文献】米国特許出願公開第2009/0274994号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の切削加工機では、保持部材によって1つの被加工物しか保持することができないため、より多くの被加工物を保持することができる切削加工機が望まれていた。例えば、特許文献2には、複数の被加工物を保持する保持部材を備えた切削加工機が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献2の保持部材によると、被加工物を保持部材に固定するときに被加工物に設けられたピンを固定孔に差し込む必要がある。このため、被加工物が他の部材と干渉しないようにピンを抜き差しできる空間を余分に設ける必要がある。この結果、保持部材が大型化してしまい切削加工機の全体が大型化してしまうという問題がある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、保持部材の大型化を抑制しつつ、より多くの被加工物を保持することができる保持部材を備えた切削加工機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る切削加工機は、被加工物を切削加工するための加工ツールを把持し、かつ、第1方向に延びるスピンドルと、前記スピンドルより下方に位置し、かつ、複数の前記被加工物を保持可能なホルダーと、前記第1方向と交差する第2方向に延びる回転軸と、前記回転軸に接続され、前記ホルダーを回転可能に支持する回転支持部材と、を備えている。前記ホルダーは、前記被加工物に取り付けられた固定用ピンを固定する第1固定部を少なくとも一つ有し、前記回転支持部材に固定された第1ホルダーと、前記第1固定部と対向する位置に配置されかつ前記固定用ピンを固定する第2固定部を少なくとも一つ有し、前記第1ホルダーに着脱自在に設けられた第2ホルダーと、を有している。前記固定用ピンは、前記第2方向に延びるように前記第1固定部および前記第2固定部に固定されるように構成されている。前記第2方向に関して、前記第1固定部に固定された前記被加工物と前記第2固定部に固定された前記被加工物との距離は、前記固定用ピンの長さより短い。
【0009】
本発明の切削加工機によると、第2ホルダーは第1ホルダーに着脱自在に設けられているため、第1ホルダーの第1固定部に被加工物を固定することと、第2ホルダーの第2固定部に被加工物を固定することとを、それぞれ独立して行うことができる。即ち、第1固定部に被加工物を固定するときには、第2固定部に固定された被加工物との干渉を考慮する必要がなく、同様に、第2固定部に被加工物を固定するときには、第1固定部に固定された被加工物との干渉を考慮する必要がない。その後、被加工物が固定された第2ホルダーを被加工物が固定された第1ホルダーに取り付ければよいため、第2方向に関して第1固定部に固定された被加工物と第2固定部に固定された被加工物との距離を固定用ピンの長さより短くすることができる。即ち、被加工物を取り付けるための余分な空間を設ける必要がないため、ホルダー全体の大型化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、保持部材の大型化を抑制しつつ、より多くの被加工物を保持することができる保持部材を備えた切削加工機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る切削加工機の斜視図である。
【
図2】
図1の切削加工機のフロント上カバーを開いた状態の正面図である。
【
図3】
図1の切削加工機のフロント上カバーを閉じた状態の断面図である。
【
図4】一実施形態に係る固定用ピンに取り付けられた被加工物の斜視図である。
【
図5】一実施形態に係るツールマガジン、アダプターおよびホルダーの斜視図である。
【
図6】一実施形態に係るツールマガジン、アダプターおよびホルダーの正面図である。
【
図8】一実施形態に係るホルダーの分解斜視図である。
【
図9】一実施形態に係る第2ホルダーの斜視図である。
【
図11】他の一実施形態に係るホルダーの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る切削加工機について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0013】
図1は、切削加工機10の斜視図である。
図2は、切削加工機10のフロント上カバー20を開いた状態の正面図である。
図3は、切削加工機10のフロント上カバー20を閉じた状態の断面図である。以下の説明では、切削加工機10を正面から見たときに、切削加工機10から遠ざかる方を前方、切削加工機10に近づく方を後方とする。左、右、上、下とは、切削加工機10を正面から見たときの左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味するものとする。
【0014】
切削加工機10は、XYZ直交座標系に配置されている。ここでは、X軸は前後方向に延びる軸である。
図3に示すように、本実施形態では、X軸が水平方向からθだけ傾いている。ただし、X軸は、水平方向と同じ方向に延びていてもよい。Y軸は左右方向に延びる軸である。Z軸は上下方向に延びる軸である。
図3に示すように、本実施形態では、Z軸が鉛直方向からθだけ傾いている。ただし、Z軸は、鉛直方向と同じ方向に延びていてもよい。また、符号θ
X、θ
Y、θ
Zは、それぞれX軸周り、Y軸周り、Z軸周りの回転方向を示している。なお、これらの方向は、説明の便宜上定めた方向に過ぎず、切削加工機10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものではない。
【0015】
切削加工機10は、被加工物5(
図4参照)を切削および研磨する装置である。切削加工機10は、被加工物5を加工して、歯科用の成形品、例えば、クラウン、インレー、アンレー、ベニア等の歯冠補綴物や、人工歯、義歯床、人工歯を支持する支持台(インプラント用のアバットメント)等を作製する装置である。被加工物5は、ここではブロック状(例えば立方体状や直方体状)である。ただし、被加工物5は、他の形状、例えば円板状等であってもよい。被加工物5は、例えば、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン樹脂)、ハイブリッドレジン等のレジン(樹脂材料)や、ガラスセラミックス、ジルコニア等のセラミックス材料、チタン、チタン合金等の金属材料、ワックス、石膏等で構成されている。ジルコニアを用いるときには、例えば、半焼結したジルコニアが用いられる。ただし、被加工物5の形状や材料は特に限定されない。
【0016】
図4に示すように、本実施形態では、被加工物5には固定用ピン8が取り付けられている。被加工物5は、固定用ピン8に保持された状態で、切削加工機10に収容される。被加工物5は、固定用ピン8に保持された状態で切削加工される。固定用ピン8は、板状部材8Aと棒状部材8Bとを備えている。板状部材8Aは、被加工物5に取り付けられている。棒状部材8Bは、板状部材8Aから突出している。棒状部材8Bは、後述するホルダー50(
図5参照)のピン挿入孔61Hおよびピン挿入孔71H(
図8参照)に挿入される。
【0017】
切削加工機10は、切削加工時にクーラント液が使用可能なように構成されている、所謂、ウェット方式の切削加工機である。なお、「クーラント液」は、水溶性であってもよいし、不水溶性であってもよい。「クーラント液」は、水そのものであってもよいし、水に、冷却効果を高めるための添加剤等が添加されたものであってもよい。例えば、水を主体(質量割合で最も多くを占める成分。)として、鉱油や油脂類等の不水溶性成分と、界面活性剤と、を含んでいてもよい。
【0018】
図1~
図3に示すように、切削加工機10は、箱状に形成されている。切削加工機10は、ケース本体12と、フロント上カバー20と、フロント下カバー25と、を備えている。ケース本体12は、切削加工機10の筐体である。ケース本体12は中空状である。ケース本体12は、底壁13と、左壁14と、右壁15と、後壁16と、上壁17と、前壁18(
図2参照)と、第1区画底壁13S(
図2参照)と、区画右壁15S(
図2参照)と、第1区画後壁16S(
図3参照)と、区画上壁17S(
図3参照)と、第2区画底壁27(
図3参照)と、第2区画後壁28(
図3参照)と、を有している。左壁14は、底壁13の左端から上方に向かって延びている。右壁15は、底壁13の右端から上方に向かって延びている。後壁16は、底壁13の後端から上方に向かって延びている。後壁16の左端は左壁14の後端に接続され、後壁16の右端は右壁15の後端に接続されている。前壁18は、第1区画底壁13Sの前端から上方に向かって延びている。前壁18の左端は左壁14の前端に接続され、前壁18の右端は右壁15の前端に接続されている。前壁18の上端は、上壁17の前端に接続されている。上壁17は、左壁14、右壁15、後壁16、前壁18のそれぞれの上端に接続されている。
【0019】
図3に示すように、第1区画底壁13Sは、底壁13よりも上方に配置されている。第1区画底壁13Sは、前方から後方に向かって漸次下方に傾斜している。第1区画底壁13Sの後方には、蓋体13Lが配置されている。蓋体13Lは、クーラント液が上下方向に通過可能なように、メッシュ状に構成されている。区画右壁15Sは、左壁14より右方かつ右壁15より左方に配置されている。区画右壁15Sは、第1区画底壁13Sから上方に延びている。第1区画後壁16Sは、後壁16より前方かつ前壁18より後方に配置されている。第1区画後壁16Sは、第1区画底壁13Sと左壁14と区画右壁15Sと区画上壁17Sとに接続されている。区画上壁17Sは、第1区画底壁13Sよりも上方かつ上壁17よりも下方に配置されている。
【0020】
図3に示すように、第2区画底壁27は、第1区画底壁13Sよりも下方かつ底壁13よりも上方に配置されている。第2区画底壁27は、底壁13と平行に延びている。第2区画底壁27には、上下方向に貫通した排液口27Hが形成されている。排液口27Hは常時開放されている。排液口27Hには、例えば開放と閉鎖とを切り替え可能な弁体等は配置されていない。第2区画後壁28は、後壁16よりも前方かつ前壁18より後方に配置されている。第2区画後壁28は、第1区画後壁16Sよりも下方に配置されている。第2区画後壁28は、後壁16と平行に延びている。第2区画後壁28は、底壁13から上方に向かって延びている。第2区画後壁28の上端は第2区画底壁27に接続されている。
【0021】
図2に示すように、ケース本体12は、側面(ここでは前壁18)に開口18Oを有している。開口18Oは、左壁14、第1区画底壁13S、区画右壁15S、区画上壁17Sによって形成されている。ケース本体12の内部は、区画右壁15Sで左右に区画されている。ケース本体12の左方には、左壁14、第1区画底壁13S、区画右壁15S、区画上壁17S、第1区画後壁16S、フロント上カバー20によって囲まれた加工空間19が形成されている。加工空間19は、被加工物5の切削加工が行われる空間である。ケース本体12の右方には、区画右壁15S、第1区画底壁13S、右壁15、区画上壁17S、第1区画後壁16S、前壁18によって囲まれた第1収容空間A1が形成されている。また、加工空間19の下方には、左壁14、底壁13、右壁15、第2区画底壁27、第2区画後壁28、フロント下カバー25によって囲まれた第2収容空間A2が形成されている。第2収容空間A2は、第2区画底壁27に形成された排液口27Hを通じて、加工空間19と常時連通されている。
【0022】
図3に示すように、フロント上カバー20は、支持アーム22に支持されている。支持アーム22の一端は、ケース本体12に取り付けられている。フロント上カバー20は、支持アーム22の支軸(図示せず)を中心として上下方向に移動することで、開口18O(
図2参照)を開閉自在に覆う。これにより、ケース本体12の開口18Oは開かれた状態と閉じられた状態とに切り換えられる。切削加工機10への被加工物5の収容や取り出し、切削加工機10の保守等を行う際、ユーザは、フロント上カバー20を上方に移動させて、開口18Oを開く。これにより、加工空間19が外部と連通する。一方、切削加工を行う際、ユーザは、フロント上カバー20を下方に移動させて、開口18Oを閉じる。これにより、加工空間19が外部から隔離される。
【0023】
図2に示すように、フロント上カバー20には、窓21が設けられている。窓21は、正面視において、ケース本体12の開口18Oよりも小さい。窓21は、例えば、透明のアクリル板やガラス板等によって形成されている。ユーザは、フロント上カバー20が閉じられた状態、例えば切削加工時においても、窓21を通じて加工空間19を視認することができる。
【0024】
フロント下カバー25は、左壁14および右壁15に取り付けられた支持部材(図示せず)に沿って前後方向にスライド自在に設けられている。フロント下カバー25が前後方向に移動することで、第2収容空間A2が開かれた状態と閉じられた状態とに切り換えられる。クーラント液の入った貯留タンク90(
図2参照)を着脱する際、ユーザは、フロント下カバー25を前方に移動させる。一方、切削加工を行う際、ユーザは、フロント下カバー25を後方にスライドさせる。これにより、第2収容空間A2が閉じられる。切削加工時に第2収容空間A2を閉じておくことで、ユーザが切削加工の途中で誤って貯留タンク90を取り外してしまうことが抑制される。
【0025】
図2に示すように、切削加工機10は、スピンドル30と、液体吐出ノズル36と、キャリッジ38と、ツールマガジン40と、アダプター45と、ホルダー50と、移動機構48と、貯留タンク90と、制御部100(
図3参照)と、を備えている。アダプター45は、回転支持部材の一例である。キャリッジ38は、加工空間19よりも上方に配置されている。キャリッジ38には、スピンドル30と、液体吐出ノズル36と、が搭載されている。スピンドル30は、区画上壁17Sを貫通している。ツールマガジン40、アダプター45およびホルダー50は、加工空間19に配置されている。移動機構48は、第1収容空間A1に配置されている。貯留タンク90は、第2収容空間A2に着脱可能に配置されている。
【0026】
図2に示すように、キャリッジ38は、Z軸方向およびY軸方向に移動自在に設けられている。キャリッジ38は、第1キャリッジ38Aと第2キャリッジ38Bとを備えている。第1キャリッジ38Aは、Y軸方向に延びる一対の第1ガイドシャフト39Aに支持されている。第1キャリッジ38Aは、第1駆動機構(図示せず)によって、第1ガイドシャフト39Aに沿ってY軸方向に移動可能なように構成されている。第1ガイドシャフト39Aの左端は、左壁14に接続されている。第1ガイドシャフト39Aの右端は、区画右壁15Sを貫通して右壁15に接続されている。第2キャリッジ38Bは、Z軸方向に延びる一対の第2ガイドシャフト39Bに支持されている。第2キャリッジ38Bは、第2駆動機構(図示せず)によって、第2ガイドシャフト39Bに沿ってZ軸方向に移動可能なように構成されている。第2ガイドシャフト39Bは、第1キャリッジ38Aに設けられている。このため、第1キャリッジ38AがY軸方向に移動すると、第2キャリッジ38Bも同様にY軸方向に移動する。第1駆動機構および第2駆動機構は、制御部100に電気的に接続されており、制御部100によって制御される。
【0027】
図2に示すように、スピンドル30は、第2キャリッジ38Bに設けられている。スピンドル30は、キャリッジ38の移動に伴ってXYZ直交座標系において移動する。より詳細には、スピンドル30は、第2キャリッジ38Bの移動に伴ってZ軸方向に移動し、第1キャリッジ38Aの移動に伴ってY軸方向に移動する。スピンドル30は、Z軸方向に延びる。Z軸方向は、第1方向の一例である。スピンドル30は、加工ツール6(ミリングバーともいう)を回転可能に支持(把持)する。スピンドル30は、加工ツール6を回転させて被加工物5を切削加工する。スピンドル30は、把持部32(例えばコレットチャック)と、回転部34と、シール部35と、を備えている。シール部35は、円柱状に形成されている。シール部35は、上下方向に延びている。シール部35の下端には、回転部34が設けられている。回転部34は、シール部35に対して相対的に回転する。
【0028】
図2に示すように、回転部34の下端には、把持部32が設けられている。把持部32は、回転部34と共に回転する。把持部32は、加工ツール6の上端部を支持(把持)するものである。回転部34は、把持部32に支持された加工ツール6を回転させるものである。回転部34には、第1モータ(図示せず)が接続されている。第1モータは、制御部100に電気的に接続されており、制御部100によって制御される。第1モータが駆動することで、回転部34はZ軸周りθ
Zに回転する。そして、回転部34の回転に伴い、把持部32に把持された加工ツール6が、Z軸周りθ
Zに回転する。
【0029】
図2に示すように、液体吐出ノズル36は、スピンドル30に設けられている。液体吐出ノズル36は、スピンドル30の回転部34の側方に配置されている。液体吐出ノズル36は、スピンドル30と同様に、キャリッジ38の移動に伴ってXYZ直交座標系において移動する。本実施形態において、液体吐出ノズル36は、回転部34の前後左右に合計4つ配置されている。ただし、液体吐出ノズル36の配置位置や個数は特に限定されない。液体吐出ノズル36の吐出口は、ホルダー50および加工ツール6よりも上方に配置されている。
図2等に矢印で示すように、液体吐出ノズル36は、加工ツール6によって被加工物5が加工されているときに、加工空間19にクーラント液を吐出する。液体吐出ノズル36は、典型的には、加工ツール6および/または被加工物5に向かってクーラント液を吐出する。
図3に示すように、液体吐出ノズル36は、液体供給路36Sを介して、貯留タンク90の供給口90Sに接続されている。なお、液体供給路36Sの構成は特に限定されないが、例えば、樹脂製の変形容易なチューブである。また、液体供給路36Sの途中には、送液ポンプ37が配置されている。送液ポンプ37は、貯留タンク90内のクーラント液を液体吐出ノズル36に供給する。送液ポンプ37は、制御部100によって制御される。液体供給路36Sは、液体吐出ノズル36と送液ポンプ37とを接続する第1供給路36SAと、送液ポンプ37と供給口90Sとを接続する第2供給路36SBとを含む。第1供給路36SAは、第1区画後壁16Sを貫通し、スピンドル30を介して液体吐出ノズル36に接続されている。第2供給路36SBは、第2区画後壁28を貫通する。第2供給路36SBは、供給口90Sと接続可能に構成されている。
【0030】
貯留タンク90は、液体吐出ノズル36から吐出されたクーラント液を回収する。ここで、液体吐出ノズル36から吐出されたクーラント液は加工空間19から排液口27Hを通過して第2収容空間A2に流れ込む。即ち、貯留タンク90は、排液口27Hを介してクーラント液を回収する。
図3に示すように、貯留タンク90は、第2収容空間A2の所定の位置に着脱可能に配置されている。貯留タンク90は、排液口27Hの下方に配置されている。貯留タンク90は、供給口90Sと、蓋93と、フィルタ94とを備えている。供給口90Sは、貯留タンク90の後部に設けられている。供給口90Sは、貯留タンク90内のクーラント液を液体吐出ノズル36に供給する。蓋93は、貯留タンク90の開口部90Hに載せ置かれている。蓋93は、フィルタ94と干渉しないように配置されている。蓋93は、断面視において、前方から後方に向かって傾斜している前方部93Fと、後方から前方に向かって傾斜している後方部93Rと、を有している。蓋93の前後方向の中央部分には、上方に開口した回収口93Sが形成されている。液体吐出ノズル36から吐出されたクーラント液は、排液口27Hおよび蓋93の回収口93Sを介して貯留タンク90内に流れ込む。フィルタ94は、貯留タンク90内のクーラント液を濾過する。フィルタ94は、クーラント液のなかから切削粉等を取り除く。フィルタ94は、例えば、円筒形状に形成されている。フィルタ94は、例えば、セルロース繊維から形成されている。
【0031】
移動機構48は、ツールマガジン40をX軸方向に移動させる機構である。
図2に示すように、移動機構48は、ツールマガジン40の右方に配置されている。移動機構48は、Y軸方向に延びる軸48Aを備えている。軸48Aは、区画右壁15Sを貫通している。軸48Aの一部(右側部分)は、第2収容空間A2に配置され、軸48Aの他の一部(左側部分)は、加工空間19に配置されている。軸48Aの左端部分には、アダプター45とツールマガジン40とが設けられている。移動機構48は、第3駆動機構(図示せず)によって、X軸方向に移動可能に構成されている。第3駆動機構は、制御部100に電気的に接続されており、制御部100によって制御される。
【0032】
図5は、ツールマガジン40、アダプター45およびホルダー50の斜視図である。
図6は、ツールマガジン40、アダプター45およびホルダー50の正面図である。ツールマガジン40は、複数の加工ツール6を収容することが可能なものである。ツールマガジン40は、アダプター45と移動機構48との間に設けられている。ツールマガジン40は、軸48Aの表面に回転不能に設けられている。ツールマガジン40は、移動機構48がX軸方向に移動することによって、X軸方向に移動する。ツールマガジン40は、加工ツール6を収容する第1部分40Aと、第1部分40Aより後方に配置され、軸48Aに接続された第2部分40Bと、第2部分40Bより後方に配置された第3部分40Cとを備えている。ツールマガジン40の第1部分40Aには、加工ツール6を収容する複数(ここでは6個)の孔部42が形成されている。加工ツール6は、その上部が露出された状態で孔部42に挿入される。加工ツール6を交換する際には、スピンドル30の把持部32によって把持されている加工ツール6を孔部42に戻す。そして、次に使用する加工ツール6の上方の位置までスピンドル30を移動させ、把持部32よりも下方に位置する加工ツール6の上端を把持部32が支持する。
【0033】
図6に示すように、軸48Aの内部には、アダプター45を回転可能に支持する回転軸44が設けられている。回転軸44はY軸方向に延びており、アダプター45および移動機構48に接続している。Y軸方向は、第2方向の一例である。回転軸44には、第2モータ(図示せず)が設けられている。第2モータは、制御部100に電気的に接続されており、制御部100によって制御される。回転軸44は、第2モータによって、Y軸回りθ
Yに回転可能に構成されている。回転軸44がY軸回りθ
Yに回転することによって、アダプター45およびホルダー50はY軸回りθ
Yに回転する。回転軸44は、軸48Aに対して独立して回転可能に構成されている。すなわち、回転軸44がY軸回りθ
Yに回転しても、軸48AはY軸回りθ
Yに回転しない。
【0034】
図5に示すように、アダプター45は、ホルダー50を回転可能に支持する部材である。より詳細には、アダプター45は、ホルダー50の後述する第1ホルダー60を回転可能に支持する。アダプター45は、第1ホルダー60を介して後述する第2ホルダー70を着脱自在に保持する。アダプター45は、ツールマガジン40と共に移動可能に構成されている。ツールマガジン40およびアダプター45は、移動機構48によってX軸方向に移動可能に構成されている。なお、アダプター45がY軸回りθ
Yに回転しても、ツールマガジン40はY軸回りθ
Yに回転しない。
【0035】
ホルダー50は、被加工物5を着脱可能に保持する部材である。
図7に示すように、ホルダー50は、複数の被加工物5を同時に保持することができる。ホルダー50は、固定用ピン8(
図4も参照)を介して被加工物5を保持する。本実施形態では、ホルダー50が固定用ピン8を介して被加工物5を保持した状態で、被加工物5に対して切削加工が行われる。
図2に示すように、ホルダー50は、スピンドル30より下方に位置する。
図5に示すように、ホルダー50の前端50Fはツールマガジン40の前端40Fより後方に位置する。ホルダー50の後端50Rはツールマガジン40の後端40Rより前方に位置する。
図8に示すように、ホルダー50は、第1ホルダー60と、第1ホルダー60に着脱自在に設けられた第2ホルダー70とを有する。
【0036】
図8に示すように、第1ホルダー60は、アダプター45に固定されている。第1ホルダー60は、前後方向(即ちX軸方向)に延びる本体部61と、本体部61の前端から前方に延びる前側被連結部63と、本体部61の後端から後方に延びる後側被連結部65と、を含む。前側被連結部63および後側被連結部65は、第2連結部の一例である。なお、
図8および
図9に示す例では、ホルダー50は被加工物5を保持していない。
【0037】
図8に示すように、本体部61の側面には、前後方向(即ちX軸方向)に並ぶ複数のピン挿入孔61Hが形成されている。本実施形態では、3つのピン挿入孔61Hが本体部61に形成されているが、その数は特に限定されない。ピン挿入孔61Hは、等間隔に配置されている。ピン挿入孔61Hは、Y軸方向に延びる。ピン挿入孔61Hには、固定用ピン8の棒状部材8B(
図4参照)が挿入される。即ち、固定用ピン8はY軸方向に延びるようにピン挿入孔61Hに挿入される。ここでは、ピン挿入孔61Hに挿入された棒状部材8Bの一部は、本体部61を貫通しアダプター45の図示しない凹部に係止する(
図7参照)。本体部61の上面には、前後方向に並ぶ複数のねじ挿入孔61Sが形成されている。ねじ挿入孔61Sは、それぞれピン挿入孔61Hと連通している。ねじ挿入孔61Sは、等間隔に配置されている。ねじ挿入孔61Sには、固定用ねじ88(
図7参照)が挿入される。固定用ねじ88は、固定用ピン8の棒状部材8Bに係止する。ねじ挿入孔61Sは、Z軸方向に延びる。ピン挿入孔61Hは、第1固定部の一例である。
【0038】
図8に示すように、前側被連結部63および後側被連結部65には、締結ねじ86(
図7参照)が係止する係止凹部67が形成されている。係止凹部67には、筒状の貫通孔67Aと、上方に行くほど外側に傾斜する傾斜面67Bとが形成されている。即ち、係止凹部67は上方に行くほど開口が大きくなる。傾斜面67Bは、第2傾斜面の一例である。
【0039】
図7に示すように、第2ホルダー70は、締結ねじ86によって第1ホルダー60に取り付けられる。第2ホルダー70は、平面視でU字形状に形成されている。第2ホルダー70は、Y軸方向に関して第1ホルダー60に着脱自在に設けられている。即ち、第2ホルダー70をY軸方向にスライド移動させることによって、第2ホルダー70を第1ホルダー60に取り付けたり、第1ホルダー60から取り外したりするように構成されている。第2ホルダー70は、前後方向(即ちX軸方向)に延びる本体部71と、本体部71の前端から右方に延びる前側連結部73と、本体部71の後端から右方に延びる後側連結部75と、を含む。前側連結部73および後側連結部75は、第1連結部の一例である。
【0040】
図9に示すように、本体部71の側面には、前後方向(即ちX軸方向)に並ぶ複数のピン挿入孔71Hが形成されている。本実施形態では、3つのピン挿入孔71Hが本体部71に形成されているが、その数は特に限定されない。ピン挿入孔71Hは、等間隔に配置されている。ピン挿入孔71Hは、Y軸方向に延びる。ピン挿入孔71Hには、固定用ピン8の棒状部材8B(
図4参照)が挿入される。即ち、固定用ピン8はY軸方向に延びるようにピン挿入孔71Hに挿入される。ここでは、ピン挿入孔71Hに挿入された棒状部材8Bの一部は、本体部71を貫通して外部に露出する(
図7参照)。本体部71の上面には、前後方向に並ぶ複数のねじ挿入孔71Sが形成されている。ねじ挿入孔71Sは、それぞれピン挿入孔71Hと連通している。ねじ挿入孔71Sは、等間隔に配置されている。ねじ挿入孔71Sには、固定用ねじ88(
図7参照)が挿入される。固定用ねじ88は、固定用ピン8の棒状部材8Bに係止する。ねじ挿入孔71Sは、Z軸方向に延びる。本実施形態では、第2ホルダー70が第1ホルダー60に取り付けられた状態において、第2ホルダー70のピン挿入孔71Hは、第1ホルダー60のピン挿入孔61Hと対向する位置に形成されている。ここで、ピン挿入孔71Hがピン挿入孔61Hに対向するとは、X軸方向に関してピン挿入孔71Hとピン挿入孔61Hとが完全に揃って配置されている場合(即ちピン挿入孔71Hの真正面にピン挿入孔61Hが位置する場合)と、ピン挿入孔71Hの一部とピン挿入孔61Hの一部とが揃って配置されている場合とを含む。ピン挿入孔71Hの形状は、ピン挿入孔61Hの形状と同じである。ねじ挿入孔71Sの形状は、ねじ挿入孔61Sの形状と同じである。ピン挿入孔71Hは、第2固定部の一例である。
【0041】
図8に示すように、前側連結部73および後側連結部75には、締結ねじ86(
図7参照)が挿通されるねじ孔77が形成されている。ねじ孔77は、Z軸方向に延びる。ねじ孔77は、後述する第1部分73A、75Aに形成されている。
図10に示すように、前側連結部73は、第2ホルダー70が第1ホルダー60に取り付けられた状態で、前側被連結部63の上面63Uと対向する第1部分73Aと、第1部分73Aと対向する位置に配置された第2部分73Bと、第1部分73Aと、第2部分73Bとを連結する第3部分73Cとを有する。第2部分73Bは、前側被連結部63の下面63Vと接触する。第3部分73Cは、前側被連結部63の側面63Wと接触する。また、
図8に示すように、後側連結部75は、第2ホルダー70が第1ホルダー60に取り付けられた状態で、後側被連結部65の上面65Uと対向する第1部分75Aと、第1部分75Aと対向する位置に配置された第2部分75Bと、第1部分75Aと、第2部分75Bとを連結する第3部分75Cとを有する。第2部分75Bは、後側被連結部65の下面65Vと接触する。第3部分75Cは、後側被連結部65の側面65Wと接触する。
【0042】
図10に示すように、締結ねじ86の軸線86L方向の先端部(ここでは下端部)には、先端に向かうほど内側に傾斜した傾斜面86Bと、傾斜面86Bの先端に接続された底面86Aと、が形成されている。傾斜面86Bは、係止凹部67の傾斜面67Bと接触する。底面86Aは、係止凹部67の貫通孔67Aと対向する。底面86Aは、平面の一例である。傾斜面86Bは、第1傾斜面の一例である。
【0043】
ホルダー50に被加工物5を取り付けるときには、まず、第1ホルダー60から第2ホルダー70を取り外す。そして、第1ホルダー60および第2ホルダー70のそれぞれに、被加工物5を取り付ける。その後、被加工物5が取り付けられた第2ホルダー70を、被加工物5が取り付けられた第1ホルダー60に取り付ける。ここで、
図7に示すように、Y軸方向に関して、第1ホルダー60のピン挿入孔61Hに固定された被加工物5と第2ホルダー70のピン挿入孔71Hに固定された被加工物5との距離TLは、固定用ピン8の長さPLより短い。距離TLは、例えば、固定用ピン8の棒状部材8Bの長さSLより短い。距離TLは、例えば、加工ツール6の直径DM(
図6参照)より長い。なお、距離TLは、直径DMより短くてもよい。
【0044】
ここで、第2ホルダー70をY軸方向に移動させて、第2ホルダー70のねじ孔77と第1ホルダー60の係止凹部67とが重なった状態において、ねじ孔77に挿通された締結ねじ86の軸線86Lと係止凹部67の中心軸67LとはY軸方向に関してずれている。そして、締結ねじ86を締めていくことにより、締結ねじ86の傾斜面86Bが係止凹部67の傾斜面67Bと接触する。さらに締結ねじ86を締めると、第2ホルダー70はアダプター45側に引き込まれ、前側被連結部63の側面63Wと前側連結部73の第3部分73Cとが接触し、かつ、後側被連結部65の側面65Wと後側連結部75の第3部分75Cとが接触する。このとき、前側被連結部63の下面63Vと前側連結部73の第2部分73Bとが接触し、かつ、後側被連結部65の下面65Vと後側連結部75の第2部分75Bとが接触する。即ち、傾斜面86Bおよび傾斜面67B、かつ、側面63Wおよび第3部分73C(側面65Wおよび第3部分75C)、かつ、下面63Vおよび第2部分73B(下面65Vおよび第2部分75B)の3か所で第1ホルダー60と第2ホルダー70とが固定される。これにより、第1ホルダー60と第2ホルダー70との位置関係が毎回同じになる。また、上記3か所における締結力の方向が相互に異なるため、第1ホルダー60と第2ホルダー70との全体の締結力が高くなる。第2ホルダー70が第1ホルダー60に取り付けられているとき、締結ねじ86の軸線86Lと、係止凹部67の中心軸67LとはY軸方向に関してずれている。本実施形態では、軸線86Lは、中心軸67Lより左方に位置する。即ち、Y軸方向に関して軸線86L、中心軸67Lおよびアダプター45の順で左方から右方に並ぶ。
【0045】
制御部100は、例えばコンピュータである。制御部100は、例えば、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラム等を格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、各種データ等を格納するメモリ等の記録媒体と、を備えていてもよい。制御部100は、例えばROM内に保存されたプログラムを使用して、切削加工に関する制御行うように構成されていてもよい。制御部100は、ここではケース本体12の後方に配置されている。ただし、制御部100の一部または全部は、ケース本体12の外部に設けられていてもよい。
【0046】
以上のように、本実施形態の切削加工機10によると、第2ホルダー70は第1ホルダー60に着脱自在に設けられているため、第1ホルダー60のピン挿入孔61Hに被加工物5を固定することと、第2ホルダー70のピン挿入孔71Hに被加工物5を固定することとを、それぞれ独立して行うことができる。即ち、ピン挿入孔61Hに被加工物5を固定するときには、ピン挿入孔71Hに固定された被加工物5との干渉を考慮する必要がなく、同様に、ピン挿入孔71Hに被加工物5を固定するときには、ピン挿入孔61Hに固定された被加工物5との干渉を考慮する必要がない。その後、被加工物5が固定された第2ホルダー70を被加工物5が固定された第1ホルダー60に取り付ければよいため、Y軸方向に関してピン挿入孔61Hに固定された被加工物5とピン挿入孔71Hに固定された被加工物5との距離TLを固定用ピン8の長さPLより短くすることができる。即ち、被加工物5を取り付けるための余分な空間を設ける必要がないため、ホルダー50全体の大型化を抑制することができる。
【0047】
本実施形態の切削加工機10では、第2ホルダー70は、Y軸方向に関して第1ホルダー60に着脱自在に設けられている。ホルダー50の上方にはスピンドル30が位置するが、第2ホルダー70は第1ホルダー60に対してY軸方向に着脱自在に設けられているため、第2ホルダー70の着脱時にスピンドル30と第2ホルダー70とが干渉することを抑制することができる。
【0048】
本実施形態の切削加工機10では、第2ホルダー70には締結ねじ86が挿通されるねじ孔77が形成された前側連結部73が設けられ、第1ホルダー60には締結ねじ86が係止する係止凹部67が形成された前側被連結部63が設けられている。このように、締結ねじ86を係止凹部67に係止させることで、第2ホルダー70を第1ホルダー60に確実に固定することができる。
【0049】
本実施形態の切削加工機10では、締結ねじ86の軸線86L方向の先端部には、先端に向かうほど内側に傾斜した傾斜面86Bと、傾斜面86Bの先端に接続された底面86Aと、が形成され、係止凹部67には、締結ねじ86の傾斜面86Bと接触しかつ上方に行くほど外側に傾斜する傾斜面67Bが形成されている。第2ホルダー70が第1ホルダー60に取り付けられているとき、締結ねじ86の軸線86Lと、係止凹部67の中心軸67LとはY軸方向に関してずれている。これにより、締結ねじ86を締結する際に締結ねじ86の軸線86Lと係止凹部67の中心軸67LとがY軸方向に近づく方向に移動して、所定の位置で第1ホルダー60と第2ホルダー70とが相互に固定されることになる。
【0050】
本実施形態の切削加工機10では、第2ホルダー70が第1ホルダー60に取り付けられているとき、Y軸方向に関して、締結ねじ86の軸線86L、係止凹部67の中心軸67Lおよびアダプター45の順に配置されている。これにより、締結ねじ86を締結する際に第2ホルダー70が第1ホルダー60側に引き込まれて、前側連結部73の第3部分73Cと前側被連結部63の側面63Wとがより確実に接触するので、第2ホルダー70をより正確に第1ホルダー60に取り付けることができる。即ち、第2ホルダー70の第1ホルダー60に対する位置決め精度が向上する。
【0051】
本実施形態の切削加工機10では、距離TLは、加工ツール6の直径DMより長い。これにより、ホルダー50の大型化を抑制しつつ、加工ツール6の側面を用いて被加工物5を切削加工することができる。
【0052】
本実施形態の切削加工機10では、ホルダー50の前端50Fはツールマガジン40の前端40Fより後方に位置し、かつ、ホルダー50の後端50Rはツールマガジン40の後端40Rより前方に位置する。これにより、加工空間19の大型化を抑制することができる。即ち、切削加工機10全体の大型化を抑止することができる。
【0053】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の各実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0054】
上述した実施形態では、第1ホルダー60に係止凹部67が設けられ、第2ホルダー70にねじ孔77が設けられていたが、これに限定されない。例えば、第1ホルダー60にねじ孔77が設けられ、第2ホルダー70に係止凹部67が設けられていてもよい。
【0055】
上述した実施形態では、第1ホルダー60に係止凹部67が設けられていたが、係止凹部67に代えて締結ねじ86が挿通されるねじ孔が形成されていてもよい。
【0056】
上述した実施形態では、第2ホルダー70をY軸方向にスライド移動させることによって、第1ホルダー60に対して第2ホルダー70を着脱していたが、これに限定されない。例えば、第2ホルダー70をZ軸方向にスライド移動させることによって、第1ホルダー60に対して第2ホルダー70を着脱してもよい。
【0057】
上述した実施形態では、ホルダー50は、本体部61、前側被連結部63および後側被連結部65を備えた第1ホルダー60と、本体部71、前側連結部73および後側連結部75を備えた第2ホルダー70とを有していたが、これに限定されない。例えば、
図11に示すように、ホルダー150は、本体部71、前側連結部73および後側連結部75を備えた第1ホルダー160と、本体部61、前側被連結部63および後側被連結部65を備えた第2ホルダー170と、を有していてもよい。このとき、第1ホルダー160の本体部71はアダプター45に固定される。
【符号の説明】
【0058】
5 被加工物
8 固定用ピン
10 切削加工機
30 スピンドル
44 回転軸
45 アダプター(回転支持部材)
50 ホルダー
60 第1ホルダー
61H ピン挿入孔(第1固定部)
70 第2ホルダー
71H ピン挿入孔(第2固定部)
86 締結ねじ