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特許7471103硫酸露点腐食試験装置および硫酸露点腐食試験方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】硫酸露点腐食試験装置および硫酸露点腐食試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20240412BHJP
【FI】
G01N17/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020027766
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2021131340
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000156581
【氏名又は名称】日鉄環境株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】長澤 慎
(72)【発明者】
【氏名】菰田 一平
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-169837(JP,A)
【文献】実開昭57-019450(JP,U)
【文献】特開2015-078885(JP,A)
【文献】特開2012-117812(JP,A)
【文献】特開2005-156057(JP,A)
【文献】特開平11-183360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験片に対して硫酸露点腐食試験を行う試験装置であって、
を供給するO供給源と、
SOを供給するSO供給源と、
前記O供給源から供給されたO、および前記SO供給源から供給されたSOを、触媒を介して反応させることでSOを生成するSO生成部と、
水蒸気を供給する水蒸気供給源と、
前記SO生成部で生成されたSOと前記水蒸気供給源から供給された水蒸気とを含む混合ガスが充填され、かつ、前記試験片を収容する試験槽と、
前記試験槽内に設置可能であり、硫酸を含む活性炭を前記試験片に付着させた状態で前記試験片を保持する試験片保持部と、を備え、
前記試験槽内においてSOと水蒸気を混合させる、
硫酸露点腐食試験装置。
【請求項2】
試験片に対して硫酸露点腐食試験を行う試験装置であって、
を供給するO供給源と、
SOを供給するSO供給源と、
前記O供給源から供給されたO、および前記SO供給源から供給されたSOを、触媒を介して反応させることでSOを生成するSO生成部と、
水蒸気を供給する水蒸気供給源と、
前記SO生成部で生成されたSOと前記水蒸気供給源から供給された水蒸気とを含む混合ガスが充填され、かつ、前記試験片を収容する試験槽と、
前記試験槽内に設置可能であり、硫酸を含む活性炭を前記試験片に付着させた状態で前記試験片を保持する試験片保持部と、を備える、
硫酸露点腐食試験装置。
【請求項3】
前記SO生成部は、前記触媒として五酸化二バナジウムまたは白金を含む、
請求項1または2に記載の硫酸露点腐食試験装置。
【請求項4】
前記SO生成部は、管状炉と、前記管状炉に挿入された燃焼管と、前記燃焼管内に設けられた前記触媒とを有する、
請求項1からのいずれかに記載の硫酸露点腐食試験装置。
【請求項5】
前記触媒は、多孔質体に付着した状態で前記燃焼管内に設けられている、
請求項に記載の硫酸露点腐食試験装置。
【請求項6】
前記試験槽は、前記試験片が前記混合ガスと接触するように前記試験片を収容する、
請求項1からのいずれかに記載の硫酸露点腐食試験装置。
【請求項7】
請求項1からのいずれかに記載の硫酸露点腐食試験装置を用いて、前記試験片の耐硫酸露点腐食性を評価する、
硫酸露点腐食試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫酸露点腐食試験装置および硫酸露点腐食試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所の火炉および廃棄物焼却施設の焼却炉では、水蒸気、SO、SOなどを含む排ガスが発生する。この排ガスは、排ガス煙道などにおいて冷却されると、水蒸気とSOが凝縮して硫酸となり、硫酸露点腐食として知られるように、排ガス煙道を構成する材料(例えば、鋼材)に対し、著しい腐食を引き起こす。このような排ガス煙道に使用される材料の開発には、耐硫酸露点腐食性の評価が必須である。
【0003】
従来、材料の腐食性を評価する種々の方法が提案されている。例えば、特許文献1では、腐食性液体を5℃から90℃の範囲で、加熱および冷却を繰り返すことにより、試料表面に腐食性液体を凝縮させ、試料の耐腐食性を評価する試験方法が開示されている。また、腐食性液体として、塩酸、硫酸および苛性ソーダが使用できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-128763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、水蒸気とSOとを試料表面で凝縮させることは困難であり、材料の耐硫酸露点腐食性を評価できない。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決し、材料の耐硫酸露点腐食性を評価するための試験装置および試験方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、下記の硫酸露点腐食試験装置および硫酸露点腐食試験方法を要旨とする。
【0008】
(1)試験片に対して硫酸露点腐食試験を行う試験装置であって、
を供給するO供給源と、
SOを供給するSO供給源と、
前記O供給源から供給されたO、および前記SO供給源から供給されたSOを、触媒を介して反応させることでSOを生成するSO生成部と、
水蒸気を供給する水蒸気供給源と、
前記SO生成部で生成されたSOと前記水蒸気供給源から供給された水蒸気とを含む混合ガスが充填され、かつ、前記試験片を収容する試験槽と、を備える、
硫酸露点腐食試験装置。
【0009】
(2)前記SO生成部は、前記触媒として五酸化二バナジウムまたは白金を含む、
上記(1)に記載の硫酸露点腐食試験装置。
【0010】
(3)前記SO生成部は、管状炉と、前記管状炉に挿入された燃焼管と、前記燃焼管内に設けられた前記触媒とを有する、
上記(1)または(2)に記載の硫酸露点腐食試験装置。
【0011】
(4)前記触媒は、多孔質体に付着した状態で前記燃焼管内に設けられている、
上記(3)に記載の硫酸露点腐食試験装置。
【0012】
(5)前記試験槽は、前記試験片が前記混合ガスと接触するように前記試験片を収容する、
上記(1)から(4)のいずれかに記載の硫酸露点腐食試験装置。
【0013】
(6)前記試験槽内に設置可能であり、硫酸を含む活性炭を前記試験片に付着させた状態で前記試験片を保持する試験片保持部をさらに備える、
上記(1)から(4)のいずれかに記載の硫酸露点腐食試験装置。
【0014】
(7)上記(1)から(6)のいずれかに記載の硫酸露点腐食試験装置を用いて、前記試験片の耐硫酸露点腐食性を評価する、
硫酸露点腐食試験方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、材料の耐硫酸露点腐食性を評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る硫酸露点腐食試験装置を示す模式図である。
図2】SO生成部の構成の一例を示す模式図である。
図3】試験片保持部の構成の一例を示す模式図である。
図4】実施例における硫酸露点腐食試験結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明における硫酸露点腐食とは、硫酸浸漬試験または硫酸全面腐食試験などにより評価される硫酸腐食ではなく、上記のとおり、SOを含むガスと水蒸気が冷却され、材料表面で硫酸となることで生じる硫酸露点腐食を対象とする。
【0018】
本発明の実施形態に係る硫酸露点腐食試験装置の各構成要素について、以下に詳細を示す。ただし、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
(1)硫酸露点腐食試験装置の構成
図1は、本発明の一実施形態に係る硫酸露点腐食試験装置1を示す模式図である。硫酸露点腐食試験装置1は、O供給源2、SO供給源3、SO生成部4、水蒸気供給源5、試験槽6、温度調整部7、および排気部8を含む。
【0020】
供給源2は、SO生成部4にOを供給し、SO供給源3は、SO生成部4にSOを供給する。O供給源2としては、Oボンベ、Oおよび不活性ガスを含むボンベ、または空気ボンベを使用することができる。SO供給源3としては、SOボンベ、またはSOおよび不活性ガスを含むボンベを使用することができる。本実施形態では、OおよびSOの供給量は、例えば、図示しない流量計によって測定される。
【0021】
SO生成部4は、O供給源2から供給されたO、およびSO供給源3から供給されたSOを反応させることによってSOを生成する。SO生成部4において生成されたSOは、SO流路91を介して試験槽6に供給される。
【0022】
図2は、SO生成部4の構成の一例を示す模式図である。本実施形態では、SO生成部4は、管状炉41と、管状炉41に挿入された燃焼管42と、燃焼管42内に設けられた触媒部43と、燃焼管42内において触媒部43を挟むように設けられた一対の固定部材44とを有する。
【0023】
管状炉41は、燃焼管42内に設けられた触媒部43および固定部材44を加熱できるように構成されている。管状炉41としては、公知の種々の管状炉を利用できるので、管状炉41の詳細な説明は省略する。燃焼管42は、SOを生成させるための加熱温度に耐える材質によって構成されていればよい。本実施形態においては、燃焼管42として、例えば、セラミックスチューブを使用することができる。
【0024】
供給源2から供給されたOおよびSO供給源3から供給されたSOは、燃焼管42に流入する。触媒部43は、燃焼管42に流入したOおよびSOを、触媒を介して反応させることでSOを生成する。本実施形態では、触媒部43は、触媒(図示せず)としての五酸化二バナジウム(以下、Vと示す。)と、該V(触媒)が付着した複数の多孔質体43aとを備える。すなわち、本実施形態では、該V(触媒)は、複数の多孔質体43aに付着した状態で燃焼管42内に設けられる。多孔質体としては、例えば、沸石を用いることができる。
【0025】
触媒部43は、例えば、以下のようにして作製することができる。まず、Vを約750℃に加熱して溶融し、複数の多孔質体(沸石)を混合する。以下、このようにして得られた混合物を、混合物Aとする。次に、粉状のVに常温の水を加え、複数の多孔質体(沸石)を混合する。以下、このようにして得られた混合物を、混合物Bとする。そして、混合物Aと混合物Bとを9:1の割合で混合したものを、燃焼管42に詰めることで、触媒部43が形成される。多孔質体(沸石)に触媒を付着させることにより、触媒部43における触媒の付着面積を大きくすることができ、効率的にSOを生成させることができる。
【0026】
一対の固定部材44は、燃焼管42内において、触媒部43を挟むように設けられる。これにより、燃焼管42内において触媒部43の位置を固定することができ、OおよびSOのガス圧力によって触媒部43(より具体的には、触媒が付着した多孔質体43a)が移動することを防止できる。
【0027】
本実施形態では、固定部材44は、触媒が付着した状態で燃焼管42内に詰められている。本実施形態では、固定部材44として石英ウールが用いられる。また、石英ウールに付着させる触媒としては、触媒部43において用いられる触媒と同様の触媒を用いることができる。本実施形態では、例えば、粉状のV(触媒)に常温の水を加え、石英ウール(固定部材44)を混合することで、石英ウール(固定部材44)にV(触媒)を付着させる。このようにして触媒が付着された固定部材44が、燃焼管42内に詰められる。この場合、固定部材44に付着したV(触媒)においてもSOを生成することができるので、SO生成部4において効率よくSOを生成することができる。
【0028】
水蒸気供給源5は、水蒸気流路92を介して試験槽6に水蒸気を供給する。水蒸気供給源5は、水を加熱することで水蒸気を発生させることができる。さらに、水の中にガスを送り込み、効率的に水蒸気を発生させるようにしてもよい。ここで使用するガスは、例えば空気ガスのような、水および混合ガスと反応しないものを用いればよい。本実施形態では、水蒸気の供給量は、例えば、水の加熱温度、または上記ガスの流量により調整される。上記ガスの流量は、例えば、図示しない流量計によって測定される。
【0029】
試験槽6は、評価対象となる材料から作製された試験片11を収容する。本実施形態では、試験槽6は、複数の試験片11を収容することができる。また、上記のように、試験槽6には、SO生成部4で生成されたSOが供給されるとともに、水蒸気供給源5から水蒸気が供給される。これにより、試験槽内には、SOおよび水蒸気を含む混合ガスが充填される。
【0030】
本実施形態では、試験槽6は、複数の試験片11の表面が上記混合ガスに接触するように、複数の試験片11を収容する。試験槽6の材質については特に制限は設けないが、例えば、テフロン(登録商標)等の、水蒸気、混合ガスおよび硫酸と反応が生じない材質のものを選択することが好ましい。
【0031】
図1に示すように、本実施形態では、SO流路91の一端および水蒸気流路92の一端は、試験槽6内において開口している。SO流路91の一端から流出したSOおよび水蒸気流路92の一端から流出した水蒸気が試験片に直接接触すると、その試験片は他の試験片よりも早く腐食するおそれがある。そのため、試験槽6内に配置された複数の試験片11の腐食スピードが均一となるように、試験槽6内におけるSO流路91および水蒸気流路92の開口位置を調節することが望ましい。
【0032】
温度調整部7は、試験槽6内の混合ガスの温度を、目的の温度に調整することができる。本実施形態では、温度調整部7は、SO温度調整部71、水蒸気温度調整部72、および恒温槽73を含む。試験槽6の混合ガスの温度は、例えば、試験槽6内に熱電対(図示せず)を設けることによってモニターすることができる。
【0033】
SO温度調整部71は、SO生成部4と試験槽6との間に設けられ、SOを含むガスの温度を調整することができる。本実施形態では、例えば、SO温度調整部71としてリボンヒーターを採用し、SO流路91をリボンヒーターで覆うことにより、SOガスの温度を調整することができる。
【0034】
水蒸気温度調整部72は、水蒸気供給源5と試験槽6との間に設けられ、水蒸気の温度を調整することができる。本実施形態では、例えば、水蒸気温度調整部72としてリボンヒーターを採用し、水蒸気流路92をリボンヒーターで覆うことにより、水蒸気の温度を調整することができる。
【0035】
恒温槽73は、試験槽6を収容するように設けられ、試験槽6の周囲の雰囲気の温度を調整することができる。本実施形態では、例えば、恒温槽73としては、温度設定機能を備えたインキュベーターを用いることができる。
【0036】
排気部8は、混合ガスを無害化して排気することができる。SOおよびSOは有害であり、試験槽6で使用された混合ガスをそのまま排気すると環境を汚染する。また、試験終了後に、SO生成部4、SO流路91、および試験槽6に、SOを含むガスが残ったままにしておくと、腐食するおそれがある。そのため、硫酸露点腐食試験装置1には、排気部8が備えられていることが望ましい。
【0037】
排気部8としては、公知の無害化装置を用いることができるので詳細な説明は省略するが、例えば、H水溶液、NaOH水溶液、および活性炭を用いて排気部8を構成することができる。
【0038】
(2)硫酸露点腐食試験方法
試験槽6に試験片11を設置し、試験槽6内が目的の使用環境となるように、O、SOおよび水蒸気の供給量、ならびに混合ガスの温度を調節することにより、所望の条件で硫酸露点腐食試験を実施することができる。
【0039】
本実施形態において、SO生成部4にVを含む触媒を使用する場合には、管状炉41によって触媒部43および固定部材44を約550℃に加熱することが好ましい。
【0040】
試験片11の材質については特に制限はなく、例えば、鋼材、合金等が含まれる。また、試験片の形状、寸法についても特に制限はない。例えば、板材、円柱状、管状等の形状とすればよい。
【0041】
試験片11の耐硫酸露点腐食性の評価方法については特に制限は設けないが、例えば、試験前に試験片11の厚みを測定しておき、試験後、試験片11を試験槽6から取り出して、試験片11表面に堆積したFeSO等の腐食生成物を取り除き、試験片11の厚みを測定する。試験前後の試験片11の厚みの変化から、試験片11の耐硫酸露点腐食性を評価することができる。また、試験前後の試験片11の重量を測定することにより、試験片11の耐硫酸露点腐食性を評価してもよい。
【0042】
その他、回収した試験片11の耐硫酸露点腐食性を分析するために、公知の分析装置を用いてもよい。さらに、得られた試験片11の機械的性質を分析するために、強度、硬さ、応力腐食割れ性等を評価する試験を実施してもよい。
【0043】
試験終了後、SO供給源3の代わりに置換用空気ボンベを設け、SO流路91に空気を流し、SO生成部4、試験槽6内のSOを含むガスを排気部8へ流し、排気部8でSOおよびSOを含むガスを酸化・中和して、吸着させた後に排気する。
【0044】
(3)効果
本実施形態に係る硫酸露点腐食試験装置1によれば、試験槽6内にSOと水蒸気の混合ガスを供給することで、試験片上で硫酸を凝縮させることが可能となる。特に、本実施形態では、試験槽6内においてSOと水蒸気を混合させるため、効率良く試験片上に硫酸を凝縮させることができる。したがって、排ガス煙道を再現した環境において、試験片の耐硫酸露点腐食性を評価することができる。
【0045】
(4)他の実施形態
上述の実施形態では、O供給源2から供給されたO、およびSO供給源3から供給されたSOが、SO生成部4にて混合される場合について説明したが、O供給源2から供給されたO、およびSO供給源3から供給されたSOが、SO生成部4へ至る前に混合されてもよい。
【0046】
さらに、上述の実施形態では、O供給源2およびSO供給源3が別々の装置である場合について説明したが、一つの装置を、O供給源およびSO供給源として用いてもよい。具体的には、例えば、空気を含むSOボンベを、O供給源およびSO供給源として用いることができる。
【0047】
上述の実施形態では、SO生成部4の触媒部43として、混合物Aおよび混合物Bを9:1の割合で混合させたものを使用する場合について説明したが、混合物Aおよび混合物Bを混合する割合は、上述の例に限定されない。触媒部43として、混合物Aのみを使用してもよいし、混合物Bのみを使用してもよい。
【0048】
また、上述の実施形態では、SO生成部4の触媒部43にVが付着した沸石を用いる場合について説明したが、Vが付着した石英ウールを使用してもよい。
【0049】
上述の実施形態では、SO生成部の触媒部43の多孔質体として、沸石を用いる場合について説明した。しかし、触媒部43の多孔質体として、OおよびSOガスが通過可能であり、かつ、加熱温度に耐えるものを用いることができる。本実施形態として、例えば、SiOハニカム構造体を用いることができる。
【0050】
上述の実施形態では、SO生成部の固定部材44として、石英ウールを用いる場合について説明した。しかし、固定部材44として、OおよびSOガスが通過可能であり、加熱温度に耐え、かつ、触媒部43の多孔質体を燃焼管42内に固定できるものを用いることができる。本実施形態として、例えば、白金リングを用いることができる。
【0051】
上述の実施形態では、SO生成部4の触媒にVを使用する場合について説明したが、触媒として、白金等の他の公知の触媒を採用することができる。その場合であっても、触媒にVを使用する場合と同様に、採用した触媒を多孔質体に付着させたものを、燃焼管42に詰めることで、触媒部43を形成することができる。また、採用した触媒を固定部材に付着させたものが、燃焼管42内の触媒部43を挟むように詰められる。
【0052】
触媒として白金等の他の公知の触媒を採用する場合は、硫酸露点腐食試験において、採用した触媒が効率的にSOを生成することができるように、管状炉41の温度を適宜設定することが望ましい。
【0053】
上述の実施形態では、SO温度調整部71は、SO流路91の全領域に設けられている場合について説明したが、SO温度調整部71は、SO流路91の一部に設けられていてもよい。また、水蒸気温度調整部についても同様である。
【0054】
なお、SO温度調整部71および/または水蒸気温度調整部72により、試験槽6へ供給されるSOを含むガスおよび/または水蒸気の温度を調整し、試験槽6内を目的の温度に設定することが可能であれば、恒温槽73は設けなくてもよい。
【0055】
また、SO流路91および/または水蒸気流路92の長さを適宜調整することで、試験槽6内を目的の温度に設定してもよい。その場合は、SO温度調整部71、水蒸気温度調整部72、恒温槽73のいずれかまたは全てを設けなくてもよい。
【0056】
上述の実施形態では、SO生成部4で生成されたSOおよび水蒸気供給源5から供給された水蒸気が、試験槽6内で混合される場合について説明したが、SOと水蒸気とが試験槽6へ至る前に混合され、混合ガスとして試験槽6へ供給されてもよい。
【0057】
上述の実施形態では、SOと水蒸気とが試験槽6へ供給される場合について説明したが、実際の排ガスには塩化水素が含まれているため、実際の使用環境をより忠実に再現する場合には、SOおよび水蒸気に加えて塩化水素が試験槽6へ供給されてもよい。SOおよび水蒸気に加えて塩化水素を試験槽6へ供給する場合は、図示しない塩化水素供給源から、図示しない塩化水素流路を介して塩化水素が試験槽6へ供給される。なお、試験槽6内を目的の温度に設定するために、塩化水素流路に図示しない温度調整部を設けてもよい。SOおよび水蒸気に加えて塩化水素を試験槽6へ供給することにより、塩化水素が存在する環境における試験片の耐硫酸および耐塩酸露点腐食性を評価することが可能である。
【0058】
上述の実施形態では、試験槽6内に試験片11を直接収容する場合について説明したが、焼却炉において材料表面に未燃炭素が付着する状況を模擬したい場合には、以下に説明するように、試験片11に硫酸を含む活性炭を付着させた状態で保持し、試験槽6内に設置することが好ましい。
【0059】
実際の使用環境、特に、焼却炉近傍で排ガスが未だ高温である領域においては、材料表面に未燃炭素が付着している。ここで水蒸気およびSOが凝縮して硫酸が生成されると、未燃炭素が、硫酸の材料を腐食する反応の触媒として作用し、材料に対してより激しい腐食を引き起こすと考えられている。そこで、本発明者らは、硫酸を含有させた活性炭を試験片に付着させた状態で、試験槽内に設置することで、材料に未燃炭素が付着する場合を模擬した。
【0060】
図3は、材料表面に未燃炭素が付着する状況を模擬する場合に利用される試験片保持部の一例を示す模式図である。図3に示す試験片保持部10を用いることにより、硫酸を含む活性炭を付着させた状態で試験片11を保持することができる。
【0061】
本実施形態では、試験片保持部10は、椀形状を有している。試験片保持部10としては、例えば、るつぼを使用することができる。
【0062】
以下、試験片保持部10による試験片11の保持方法の一例を説明する。まず、試験片保持部10の中に、硫酸を含む活性炭101を加える。硫酸は、例えば、濃度が85質量%で、活性炭1gに対して3.3mLの割合で含有させる。活性炭に硫酸を含有させておくことで、活性炭のみの場合に比べて、混合ガスが活性炭に溶け込みやすくなるという効果がある。この硫酸を含む活性炭101の中に、試験片11を埋没させ、試験槽6内に設置する。
【0063】
試験片保持部10の材質は、特に制限は設けないが、例えば、陶器製等、水蒸気、混合ガスおよび硫酸と反応が生じない材質のものを選択することが好ましい。なお、試験片保持部10の形状は、上述の例に限定されず、硫酸を含む活性炭101を付着させた状態で試験片11を保持することが可能であればよい。例えば、試験片保持部10の形状は、有底筒状であってもよく、皿のような形状であっても構わない。
【0064】
試験片11は、硫酸を含む活性炭101が付着するように設置すればよいが、硫酸を含む活性炭101の中に埋没させることが好ましい。また、活性炭に含有させる硫酸の濃度は、80~90質量%であることが好ましく、80~85質量%であることがより好ましい。
【0065】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0066】
図1および図2に示す硫酸露点腐食装置1を用いて、硫酸露点腐食試験を行った。試験片11として、全面湿式研磨した、縦が20mm、横が10mm、厚さが3mmの市販の鋼材(SM490AおよびSUS304)を用いた。
【0067】
また、O供給源およびSO供給源として、空気を含むSOボンベを用いた。実験条件は、試験槽内温度:110℃、水蒸気量:1.2体積%であり、SOガス量:3体積%、SOガス流量:200mL/minに設定した。
【0068】
上記の実験条件で24時間経過後、試験片を取り出し、硫酸露点腐食試験前後の試験片の厚みを比較し、腐食速度を算出した。SM490Aに対するSUS304の腐食速度の割合を図4に示す。
【0069】
これまでに実施された硫酸浸漬試験において、SM490Aに比べてSUS304の腐食速度が速いことが分かっており、本発明の硫酸露点腐食試験においても、硫酸浸漬試験結果と同様の結果が得られた。このことから、本発明の硫酸露点腐食試験装置の試験槽内において、SOと水蒸気が凝縮する実際の排ガス煙道の環境を再現し、混合ガスが試験片上に凝縮して高濃度の硫酸が試験片を腐食したことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、排ガス煙道の環境を再現し、試験片の耐硫酸露点腐食性を適切に評価することが可能となる。したがって、本発明は、排ガス煙道等に使用される材料の開発に大きく貢献することができる。
【符号の説明】
【0071】
1.硫酸露点腐食試験装置
2.O供給源
3.SO供給源
4.SO生成部
41.管状炉
42.燃焼管
43.触媒部
43a.多孔質体
44.固定部材
5.水蒸気供給源
6.試験槽
7.温度調整部
71.SO温度調整部
72.水蒸気温度調整部
73.恒温槽
8.排気部
91.SO流路
92.水蒸気流路
10.試験片保持部
101.硫酸を含む活性炭
11.試験片

図1
図2
図3
図4