(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】空調家具
(51)【国際特許分類】
A47C 7/74 20060101AFI20240412BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20240412BHJP
F24F 13/065 20060101ALI20240412BHJP
F24F 13/068 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
A47C7/74 C
F24F5/00 K
F24F13/065
F24F13/068 C
(21)【出願番号】P 2020034623
(22)【出願日】2020-03-02
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米田 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】田中 規敏
(72)【発明者】
【氏名】和田 一樹
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-048772(JP,A)
【文献】特開2017-149271(JP,A)
【文献】特開2011-085292(JP,A)
【文献】特開平11-123925(JP,A)
【文献】特開2004-098742(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0186560(US,A1)
【文献】特開平02-063408(JP,A)
【文献】米田 拓朗, 田中 規敏, 和田 一樹,多様化するワークスタイルに対応した温熱環境の制御手法に関する研究(第2報)空調家具モックアップの概要・特性把握及びサーマルマネキン評価,令和元年度大会(札幌)学術講演論文集,公益社団法人 空気調和・衛生工学会,2019年09月18日,第3巻 空調システム 編,pp.409-412,https://doi.org/10.18948/shasetaikai.2019.3.0_409
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/00-7/74
F24F 13/00-13/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座可能な座面が形成された家具本体と、
前記家具本体に設けられた空気室と、
前記空気室から前記座面を介して建物の室内空間へ空気を吹き出し可能な吹出口と、
前記空気室の内部に設けられ、前記建物の空調空気経路から前記空気室へ空調空気を供給可能な第一供給経路と、
前記空気室の内部に設けられ、前記室内空間から前記空気室へ室内空気を供給可能な第二供給経路と、
前記空気室へ供給される空気の経路を、前記第一供給経路及び前記第二供給経路の間で変更可能な送風切替機構と、
を備えた空調家具。
【請求項2】
着座可能な座面が形成された家具本体と、
前記家具本体に設けられた空気室と、
前記空気室から前記座面を介して建物の室内空間へ空気を吹き出し可能な吹出口と、
前記建物の空調空気経路から前記空気室へ空調空気を供給可能な第一供給経路と、
前記室内空間から前記空気室へ室内空気を供給可能な第二供給経路と、
前記空気室へ供給される空気の経路を、前記第一供給経路及び前記第二供給経路の間で変更可能な送風切替機構と、
前記室内空間と前記空調空気経路との圧力差、及び、空調空気の温度の双方に基づき前記送風切替機構を制御する制御装置と、
を備えた空調家具。
【請求項3】
前記送風切替機構は、
筒状のハウジングと、
前記ハウジングの内部に配置されて、前記ハウジングの軸方向に沿って空気を流動させる送風ファンと、
前記ハウジングを、前記ハウジングが前記第一供給経路と連通する位置と、前記第二供給経路と連通する位置と、の間で軸回転可能に保持する保持部と、
を備え、
前記制御装置は、前記ハウジングを回転させることにより、前記空気室へ空調空気のみを取り込む第一モードと、室内空気のみを取り込む第二モードと、空調空気及び室内空気を取り込む第三モードと、に切替え、かつ、前記送風ファンの単位時間あたりの回転数を切替え可能である、
請求項2に記載の空調家具。
【請求項4】
前記制御装置は、前記圧力差及び前記温度の組み合わせに対応した運転テーブルを選択し、かつ、入力装置を介して入力されたモードが前記第一モード、前記第二モード、前記第三モードの何れであるかに応じて、前記ハウジングの位置及び前記送風ファンの前記回転数を制御する、
請求項3に記載の空調家具。
【請求項5】
前記運転テーブルは、前記圧力差が所定の閾値
未満の場合に、前記閾値
以上の場合よりも前記回転数を多くし、かつ、前記温度が所定の閾値以上の場合に、前記閾値未満の場合よりも前記回転数を多くするように設定されている、
請求項4に記載の空調家具。
【請求項6】
前記送風切替機構は、
前記空気室から前記第二供給経路へ送風可能とされている、
請求項1~5の何れか1項に記載の空調家具。
【請求項7】
前記家具本体には背もたれが形成され、
前記空気室は、前記背もたれを介して前記室内空間へ空気を吹出し可能な吹出口を有する背部空気室をさらに備え、
前記第一供給経路、前記第二供給経路及び前記送風切替機構は、前記背部空気室にも設けられている、
請求項1~6の何れか1項に記載の空調家具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調家具に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、建物の床から吹出した空調空気を椅子内部の空気流通部に取り込み、着座面及び背もたれ面から外部に向けて吹出す空調用椅子が記載されている。これにより着座者は気流感を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の空調家具では、空調空気が着座面及び背もたれ面から吹出される。これにより例えば冷房時などにおいては、室内空気より低い温度の空気のみが着座者に対して送風される。このため、送風温度の調節が難しく着座者の個人の指向や体調に合わせることが難しい。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、送風温度を調整し易い空調家具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の空調家具は、着座可能な座面が形成された家具本体と、前記家具本体に設けられた空気室と、前記空気室から前記座面を介して建物の室内空間へ空気を吹き出し可能な吹出口と、前記空気室の内部に設けられ、前記建物の空調空気経路から前記空気室へ空調空気を供給可能な第一供給経路と、前記空気室の内部に設けられ、前記室内空間から前記空気室へ室内空気を供給可能な第二供給経路と、前記空気室へ供給される空気の経路を、前記第一供給経路及び前記第二供給経路の間で変更可能な送風切替機構と、を備えている。
【0007】
請求項1の空調家具では、空気室から座面を介して建物の室内空間へ空気が吹出される。この空気室には、第一供給経路から空調空気が供給され、第二供給経路から室内空気が供給される。空気室への第一供給経路からの空気供給及び第二供給経路からの空気供給は、送風切替機構によって変更される。これにより、着座者には、空調空気だけでなく、室内空気、又は、空調空気及び室内空気の混合空気を吹出口から送風することができる。したがって、空調空気のみを送風する場合と比較して、送風温度を調整し易い。
請求項2の空調家具は、着座可能な座面が形成された家具本体と、前記家具本体に設けられた空気室と、前記空気室から前記座面を介して建物の室内空間へ空気を吹き出し可能な吹出口と、前記建物の空調空気経路から前記空気室へ空調空気を供給可能な第一供給経路と、前記室内空間から前記空気室へ室内空気を供給可能な第二供給経路と、前記空気室へ供給される空気の経路を、前記第一供給経路及び前記第二供給経路の間で変更可能な送風切替機構と、前記室内空間と前記空調空気経路との圧力差、及び、空調空気の温度の双方に基づき前記送風切替機構を制御する制御装置と、を備えている。
【0008】
請求項3の空調家具は、請求項2に記載の空調家具において、前記送風切替機構は、筒状のハウジングと、前記ハウジングの内部に配置されて、前記ハウジングの軸方向に沿って空気を流動させる送風ファンと、前記ハウジングを、前記ハウジングが前記第一供給経路と連通する位置と、前記第二供給経路と連通する位置と、の間で軸回転可能に保持する保持部と、を備え、前記制御装置は、前記ハウジングを回転させることにより、前記空気室へ空調空気のみを取り込む第一モードと、室内空気のみを取り込む第二モードと、空調空気及び室内空気を取り込む第三モードと、に切替え、かつ、前記送風ファンの単位時間あたりの回転数を切替え可能である。
【0009】
請求項3の空調家具では、ハウジングが軸回転することにより、第一供給経路からの送風及び第二供給経路からの送風が切り替えられる。このため、一台の送風ファンにより送風が切替えられる。したがって第一供給経路及び第二供給経路のそれぞれに送風ファンを設ける場合と比較して設備を軽微にできる。
請求項4の空調家具は、請求項3に記載の空調家具において、前記制御装置は、前記圧力差及び前記温度の組み合わせに対応した運転テーブルを選択し、かつ、入力装置を介して入力されたモードが前記第一モード、前記第二モード、前記第三モードの何れであるかに応じて、前記ハウジングの位置及び前記送風ファンの前記回転数を制御する。
請求項5の空調家具は、請求項4に記載の空調家具において、前記運転テーブルは、前記圧力差が所定の閾値未満の場合に、前記閾値以上の場合よりも前記回転数を多くし、かつ、前記温度が所定の閾値以上の場合に、前記閾値未満の場合よりも前記回転数を多くするように設定されている。
【0010】
請求項6の空調家具は、請求項1~5の何れか1項に記載の空調家具において、前記送風切替機構は、前記空気室から前記第二供給経路へ送風可能とされている。
【0011】
請求項6の空調家具では、空気室から第二供給経路へ送風される。このとき、座面から空気室へ空気が吸い込まれる。これにより例えば座部と着座者の間に熱が籠ることを抑制することができる。
【0012】
請求項7の空調家具は、請求項1~6の何れか1項に記載の空調家具において、前記家具本体には背もたれが形成され、前記空気室は、前記背もたれを介して前記室内空間へ空気を吹出し可能な吹出口を有する背部空気室をさらに備え、前記第一供給経路、前記第二供給経路及び前記送風切替機構は、前記背部空気室にも設けられている。
【0013】
請求項7の空調家具では、座面の他、背もたれから空調空気及び室内空気を吹き出すことができる。また、第一供給経路、第二供給経路及び送風切替機構が空気室及び背部空気室のそれぞれに設けられているため、背もたれから吹き出す空気についても、温度を調整できる。これにより、着座者の好みや体調に応じた温度管理がし易い。
【発明の効果】
【0014】
本発明の空調家具によると、送風温度を調整し易い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る空調家具、空調家具が設置された室内空間及び室内空間の下方の床下空間を示す立断面図である。
【
図2A】本発明の実施形態に係る空調家具において、送風切替機構のハウジングが「空調空気供給位置」にある状態を示す立断面図である。
【
図2B】本発明の実施形態に係る空調家具において、送風切替機構のハウジングが「室内空気供給位置」にある状態を示す立断面図である。
【
図2C】本発明の実施形態に係る空調家具において、送風切替機構のハウジングが「室内空気供給位置」にある状態において送風ファンを逆回転させた様子を示す立断面図である。
【
図2D】本発明の実施形態に係る空調家具において、送風切替機構のハウジングが「混合空気供給位置」にある状態を示す立断面図である。
【
図3A】本発明の実施形態に係る空調家具における送風切替機構を示す正面図である。
【
図3B】本発明の実施形態に係る空調家具における送風切替機構のハウジングが「室内空気供給位置」にある状態を示す立面図である。
【
図3C】本発明の実施形態に係る空調家具における送風切替機構のハウジングが「空調空気供給位置」にある状態を示す立面図である。
【
図3D】本発明の実施形態に係る空調家具における送風切替機構のハウジングが「混合空気供給位置」にある状態を示す立断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る空調家具における入力装置を示した模式図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る空調家具の電気的な接続関係を示したブロック図である。
【
図6】(A)は本発明の実施形態に係る空調装置の運転テーブルをテーブルAに設定した場合における送風切替機構の設定値を示した表であり、(B)はテーブルBに設定した場合における送風切替機構の設定値を示した表であり、(C)はテーブルCに設定した場合における送風切替機構の設定値を示した表であり、(D)はテーブルDに設定した場合における送風切替機構の設定値を示した表である。
【
図7】本発明の実施形態に係る空調家具において、送風切替機構を2台設けた変形例を示す立断面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る空調家具において、家具本体にキャスターを設けた変形例を示す立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る空調家具について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。本明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0017】
<空調家具>
本発明の実施形態に係る空調家具10は、
図1に示すように、家具本体12と、家具本体12と一体的に形成された空調装置30と、入力装置50と、制御装置60と、を備えている。空調家具10は、オフィス等の室内空間V1に設置され、当該室内空間V1に滞在する利用者が、執務、会議、談話等の際に座って利用できる椅子状の家具である。
【0018】
室内空間V1の下には床材Fによって仕切られた床下空間V2が形成されている。床下空間V2は建物の空調空気経路とされ、床下空間V2には空調機70によって調温された空調空気が流れている。空調空気は、
図1に矢印Wで示すように、床下空間V2から、床材Fに形成された吹出し口FWを通って、室内空間V1へ吹出される。床下空間V2は、空調機70の作動時、室内空間V1に対して正圧(室内空間V1より高圧)とされている。
【0019】
<家具本体>
家具本体12は、座部14と、背部16と、を備えている。座部14には、着座可能な座面14Aが形成されている。座面14Aは、略水平面とされているが、適宜傾斜をつけることができる。背部16には、背もたれ16Aが形成されている。背もたれ16Aは、略鉛直面とされているが、適宜傾斜をつけることができる。
【0020】
図2Aに示すように、座面14A及び背もたれ16Aの裏側には、クッション材18が配置されている。クッション材18は、2種類の弾性材料18A、18Bによって形成されている。クッション材18において表面側の弾性材料18Aは、繊維方向が表側から裏側に向かう方向に沿う不織布によって形成されている。このため、繊維方向が例えば座面14A及び背もたれ16Aに沿う不織布を用いる場合と比較して、反発力を得易く、また厚みを大きくし易く、さらに通気性を確保し易い。
【0021】
一方、弾性材料18Bは、有機繊維が三次元状に絡み合うように形成され、有機繊維間に隙間が形成されたシート材である。弾性材料18Bは、有機繊維の弾性力によりクッション性を備え、また、有機繊維間の隙間により、弾性材料18Aより通気性が高い。
【0022】
クッション材18の表面には、表皮材20が配置されている。表皮材20は繊維を編み込んで形成され、通気性を備えている。表皮材20は、座面14A及び背もたれ16Aに亘って連続して配置されている。
【0023】
<空調装置>
空調装置30は、家具本体12に組み込まれ、着座者周辺の空気環境を調整するための設備機器である。空調装置30は、空気室32と、吹出口34と、供給経路36(第一供給経路36A、第二供給経路36B)と、送風切替機構40と、を備えている。
【0024】
(空気室、吹出口)
空気室32は、家具本体12において、座面14A及び背もたれ16Aの裏側に形成された空間である。換言すると、空気室32は、座面14A及び背もたれ16Aを備えた家具本体12を筐体として形成されたチャンバーである。吹出口34は、空気室32に2箇所形成され、空気室32から、座面14A及び背もたれ16Aを介して家具本体12の外部(換言すると室内空間V1)へ向って空気を吹出す送風用の開口部である。
【0025】
吹出口34から吹出した空気は、座面14A及び背もたれ16Aの背面に位置するクッション材18並びに座面14A及び背もたれ16Aの表面に位置する表皮材20を通って家具本体12の外部へ吹出される。すなわち吹出口34は、着座者と接する位置又は近接する位置から、着座者(主に背中や臀部)へ向って空気を吹出す吹出口である。
【0026】
なお、
図2Aに示した吹出口34の大きさは一例であり、それぞれ小さな開口部の集合体とすることができる。吹出口34は、例えばパンチングメタルやグレーチング状の有孔材料を用いて形成してもよい。
【0027】
(供給経路)
供給経路36は、家具本体12に固定された、空気室32へ向って空気を供給する送風用の配管である。供給経路36は、空気室32の内部に設けられている。供給経路36のうち、第一供給経路36Aは、建物の床下空間V2へ開放されている。すなわち、床下空間V2の吹出し口FWと対応する位置に、第一供給経路36Aが配置される。上述したように、床下空間V2は室内空間に対して正圧とされている。このため、第一供給経路36Aから空気室32へ、調温された空気が連続的に供給可能とされている。
【0028】
供給経路36のうち、第二供給経路36Bは、建物の室内空間V1へ開放されている。室内空間V1は、空気室32と等圧以下とされている。このため、第二供給経路36Bから空気室32へ空気を供給するためには、機械的な動力(後述する送風切替機構40)を必要とする。なお、第二供給経路36Bにおける室内空間V1側の開口部には、図示しないガラリ等が設けられる。
【0029】
(送風切替機構)
送風切替機構40は、空気室32へ供給される空気の「経路」を、第一供給経路36A及び第二供給経路36Bの間で変更可能な経路切替機構である。また、送風切替機構40は、空気室32へ供給される「空気量」を調整可能な空気量調整機構である。
【0030】
図3Aに示すように、送風切替機構40は、筒状のハウジング42と、送風ファン44と、保持部46と、を備えている。
【0031】
(送風切替機構-ハウジング)
ハウジング42は、
図3Bに示す軸CL1を中心軸とする筒状に形成されている(以下、軸CL1を中心軸CL1と称す)。また、ハウジング42は、中心軸CL1に沿う両端部が欠損した中空の球体とされている。
【0032】
(送風切替機構-送風ファン)
図3Aに示す送風ファン44は、ハウジング42の内部に配置されて空気を流動させる回転羽根である。送風ファン44は、制御装置60(
図1参照)の制御に応じて図示しないモータが作動することにより、正回転及び逆回転する。
送風ファン44が「正回転」した状態において、空気は
図3Bに矢印W1で示す方向に流れる。また、送風ファン44が「逆回転」した状態において、空気は矢印W1に示す方向と逆方向に流れるものとする。なお、矢印W1は中心軸CL1に沿う方向である。
【0033】
(送風切替機構-保持部)
図3Aに示すように、保持部46は、ハウジング42に固定された軸部46Aと、支持脚46Bと、を備えている。
【0034】
軸部46Aは、ハウジング42の両側(中心軸CL1に対して両側)の外面に固定された一対の回転軸である。軸部46Aは、中心軸CL2に沿って配置されている。中心軸CL2は、ハウジング42の中心軸CL1と交差し、かつ、中心軸CL1と略直交する方向に沿う軸である。
【0035】
支持脚46Bは、軸部46A及び軸部46Aと一体化されたハウジング42を回転可能に保持する脚部であり、床材Fに載置又は固定されている。支持脚46Bには、軸部46Aを挿通可能な貫通孔が形成されている。この貫通孔に軸部46Aを挿通することにより、ハウジング42は支持脚46Bによって回転可能に保持される。
【0036】
(送風切替機構-ハウジングの回転)
ハウジング42は、制御装置60(
図1参照)の制御に応じて図示しないモータが作動することにより回転する。
【0037】
ハウジング42の回転方法の一例として、
図3Bに示した状態から制御装置60がモータを作動させると、軸部46Aが矢印M1で示す方向に約90度回転する。この際、ハウジング42は軸部46Aの回転に伴って回転する。この結果、
図3Cに示すように、送風ファン44における送風方向(矢印W1)が上下方向に沿う。
【0038】
なお、
図3Cに示した状態においては、ハウジング42は、第一供給経路36Aと連通している。これにより、第一供給経路36Aから取り込まれた「空調空気」が、ハウジング42の内部を通って、空気室32へ取り込まれる。
【0039】
また、
図3Cに示した状態においては、ハウジング42は、第二供給経路36Bを閉塞している。これにより、「室内空気」が第二供給経路36Bからハウジング42の内部を通って空気室32へ取り込まれることが抑制される。
【0040】
なお、「閉塞」とは第二供給経路36Bから空気室32への空気の流動が完全に遮断される状態だけでなく、多少の流動がある状態を含む。すなわち、第二供給経路36Bにおける空気室32側の開口部は完全に密閉されている必要はなく、第二供給経路36Bとハウジング42との間には、多少の隙間があってもよい。
【0041】
以下の説明においては、
図3Cに示したように、空気室32へ空調空気を取り込み、かつ、室内空気を取り込まないように配置されたハウジング42の位置を「空調空気供給位置」と称す。
【0042】
なお、
図2Aには、ハウジング42が空調空気供給位置にあるときの状態が示されている。以下の説明においては、この状態で送風ファン44を「正回転」で駆動させる運転モードを「空調モード」と称す。
【0043】
ハウジング42の回転方法の別の一例として、
図3Cに示した状態から制御装置60がモータを作動させると、軸部46Aが矢印M2で示す方向(矢印M1で示す方向と逆方向)に約90度回転する。この際、ハウジング42は、軸部46Aの回転に伴って回転する。この結果、
図3Bに示すように、送風ファン44における送風方向(矢印W1)が横方向に沿う。
【0044】
なお、
図3Bに示した状態においては、ハウジング42は、第二供給経路36Bと連通している。これにより、第二供給経路36Bから取り込まれた「室内空気」が、ハウジング42の内部を通って、空気室32へ取り込まれる。
【0045】
また、
図3Bに示した状態においては、ハウジング42は、第一供給経路36Aを閉塞している。これにより、「空調空気」が第一供給経路36Aからハウジング42の内部を通って空気室32へ取り込まれることが抑制される。
【0046】
以下の説明においては、
図3Bに示したように、空気室32へ室内空気を取り込み、かつ、空調空気を取り込まないように配置されたハウジング42の位置を「室内空気供給位置」と称す。
【0047】
なお、
図2B、
図2Cには、ハウジング42が室内空気供給位置にあるときの状態が示されている。以下の説明においては、
図2Bに示すように、送風ファン44を「正回転」で駆動させる運転モードを「送風モード」と称す。一方、
図2Cに示すように、送風ファン44を「逆回転」で駆動させる運転モードを「吸込モード」と称す。
【0048】
さらに、ハウジング42の回転方法の別の一例として、制御装置60は、
図3Bに示した状態からモータを作動させて、軸部46Aを矢印M1で示す方向に約45度回転させることができる。又は、制御装置60は、
図3Cに示した状態からモータを作動させて、軸部46Aを矢印M2で示す方向に約45度回転させることができる。この結果、
図3Dに示すように、送風ファン44における送風方向(矢印W1)が斜め方向に沿う。
【0049】
なお、
図3Dに示した状態においては、ハウジング42は、第一供給経路36Aと連通している。これにより、第一供給経路36Aから取り込まれた「空調空気」が、ハウジング42の内部を通って、空気室32へ取り込まれる。
【0050】
また、
図3Dに示した状態においては、ハウジング42は、第二供給経路36Bとも連通している。これにより、第二供給経路36Bから取り込まれた「室内空気」も、ハウジング42の内部を通って、空気室32へ取り込まれる。
【0051】
以下の説明においては、
図3Dに示したように、空気室32へ空調空気を取り込み、かつ、室内空気も取り込むように配置されたハウジング42の位置を「混合空気供給位置」と称す。
【0052】
なお、
図2Dには、ハウジング42が混合空気供給位置にあるときの状態が示されている。以下の説明においては、この状態で送風ファン44を「正回転」で駆動させる運転モードを「マイルドモード」と称す。
【0053】
<入力装置>
図1に示す入力装置50は、空調装置30の運転モードを設定する電子機器である。入力装置50は、空調家具10の利用者が携行する携帯端末に備えられている。利用者は携帯端末を操作することで、当該携帯端末を入力装置50として使用することができる。
【0054】
利用者は、携帯端末を入力装置50として使用する際、
図4に示すように表示画面に表示された表示メニューを選択することで、制御装置60へ電気信号を送信することができる。なお、入力装置50は空調家具10に備え付けられていてもよい。
【0055】
表示画面に表示される表示メニューとしては、一例として、座席選択ボタン52、電源ボタン54、モード選択ボタン56がある。
【0056】
座席選択ボタン52は、制御対象とする空調家具10を選択するためのボタンである。座席選択ボタン52は、室内空間V1に空調家具10が複数台設置されている場合に設けられる。
【0057】
電源ボタン54は、座席選択ボタン52によって選択された空調家具10における空調装置30の運転開始及び運転停止を選択するためのボタンである。電源ボタン54によって空調装置30の運転停止が選択された場合、送風切替機構40のハウジング42は、
図2(B)に示す「室内空気供給位置」に配置され、かつ、送風ファン44は回転が停止される。
【0058】
モード選択ボタン56は、空調装置30の運転モードを設定するためのボタンである。本実施形態においては、空調家具10の着座者は、上述した「空調モード」、「マイルドモード」、「送風モード」及び「吸込モード」の4モードのなかから任意の運転モードを選択することができる。
【0059】
入力装置50の表示画面には、「空調モード」、「マイルドモード」、「送風モード」及び「吸込モード」はそれぞれ「空調」、「マイルド」、「送風」及び「吸込」と表示されている。なお、これらはそれぞれ「強」、「中」、「弱」及び「逆風」等と表示してもよい。
【0060】
<制御装置>
図1に破線で示すように、制御装置60は、空調装置30、入力装置50、室内空間V1と床下空間V2との差圧を測定する差圧計62、室内空間V1の温度を測定する温度計64及び空調空気の温度を測定する温度計66と、電気的に繋がれている。
【0061】
制御装置60と空調装置30との接続についてさらに詳述すると、
図5に示すように、制御装置60は、送風切替機構40におけるハウジング42及び送風ファン44を回転させるモータと、有線又は無線で電気的に接続されている。なお、以下の説明においては、制御装置60による各モータの制御を、ハウジング42及び送風ファン44の制御と記載する。
【0062】
制御装置60は、差圧計62によって測定される室内空間V1と空調空気経路(床下空間V2)との圧力差、及び、温度計66によって測定される空調空気の温度の「双方」に基づき、ハウジング42及び送風ファン44を制御する。また、制御装置60は、入力装置50の設定値に基づき、ハウジング42及び送風ファン44を制御する。
【0063】
<制御方法>
制御装置60によるハウジング42及び送風ファン44の制御方法について説明する。制御装置60は、差圧計62及び温度計66から断続的に情報を取得する。具体的には、差圧計62が室内空間V1と空調空気経路(床下空間V2)との圧力差(「圧力差情報」)を断続的に測定(取得)して、この圧力差情報を、制御装置60へ送信する。また、温度計66が空調機70から供給される空調空気の温度(「温度情報」)を断続的に測定(取得)して、この温度情報を、制御装置60へ送信する。
【0064】
制御装置60は、取得した「圧力差情報」及び「温度情報」に基づき、空調装置30の「運転テーブル」を選択する。また、選択された運転テーブルに基づいて、ハウジング42及び送風ファン44を制御する。運転テーブルは、一例として、
図6(A)~(D)に示したテーブルA、テーブルB、テーブルC、テーブルDに分類される。テーブルA~Dの分類は、以下の条件によって決定される。なお、テーブルA~Dは、冷房時の分類である。
【0065】
テーブルA:圧力差が0Pa以上15Pa未満、かつ、温度が18℃以上20℃未満
テーブルB:圧力差が15Pa以上36Pa未満、かつ、温度が18℃以上20℃未満
テーブルC:圧力差が0Pa以上15Pa未満、かつ、温度が20℃以上
テーブルD:圧力差情報が15Pa以上36Pa未満、かつ、温度が20℃以上
【0066】
運転テーブルの分類は任意の方法を採用することができるが、本実施形態においては、空調空気の設定温度が20℃未満の場合において、テーブルA、Bが設定される。一方、空調空気の設定温度が20℃以上の場合において、テーブルC、Dが設定される。テーブルA、Bが設定される場合は、テーブルC、Dが設定される場合と比較して空調空気の設定温度が低い。このため、テーブルA、Bは、「空調空気の温度に依る冷房能力」が相対的に高い場合に設定されるテーブルである。
【0067】
また、室内空間V1と床下空間V2との圧力差が15Pa未満の場合において、テーブルA、Cが設定される。一方、室内空間V1と床下空間V2との圧力差が15Pa以上の場合において、テーブルB、Dが設定される。テーブルB、Dが設定される場合は、テーブルA、Cが設定される場合と比較して、室内空間V1と床下空間V2との圧力差が大きく、空調空気は床下空間V2から室内空間V1へ吹き上げ易い。このため、テーブルB、Dは、「室内空間V1と床下空間V2との圧力差に依る冷房能力」が相対的に高い場合に設定されるテーブルである。
【0068】
なお、空調機70から供給される空調空気の温度は、温度計64(
図1参照)によって測定された室内空間V1の温度に応じて、制御装置60又は別の機器に組み込まれた温度設定プログラム、室内空間V1の利用者若しくは建物の管理センターなどによって設定される。
【0069】
制御装置60は、差圧計62及び温度計66によって測定された情報に加え、利用者によって入力装置50に入力された情報を随時取得する。具体的には、
図5に示す入力装置50の座席選択ボタン52に入力された情報によって、制御対象とする空調家具10を特定する情報(「制御対象情報」)を取得する。また、電源ボタン54に入力された情報によって、制御対象とされた空調家具10における空調装置30の運転を開始するか停止するかを特定する情報(「電源情報」)を取得する。さらに、モード選択ボタン56に入力された情報によって、空調装置30を「空調モード」、「マイルドモード」、「送風モード」及び「吸込モード」の何れの運転モードに設定するかを特定する情報(「運転モード情報」)を取得する。
【0070】
制御装置60は、取得した「制御対象情報」、「電源情報」及び「運転モード情報」に基づき、制御対象とされた空調家具10における空調装置30の運転を開始し、「運転モード」を設定する。又は、制御装置60は、運転中の空調装置30の「運転モード」を設定する。あるいは、運転中の空調装置30の運転を停止する。
【0071】
運転モード「空調モード」、「マイルドモード」、「送風モード」及び「吸込モード」におけるハウジング42及び送風ファン44の駆動条件は、
図6(A)~(D)に示したテーブルA、テーブルB、テーブルC、テーブルD毎に決められている。
【0072】
なお、
図6(A)~(D)における「CLOSE」との記載は、ハウジング42によって第一供給経路36Aまたは第二供給経路36Bが閉塞されていることを示している。また、これらの図における「OPEN」との記載は、第一供給経路36Aまたは第二供給経路36Bがハウジング42と連通していることを示す。さらに、これらの各図における「微」との記載は、送風ファン44が微強度で運転していることを示している。同様に、これらの各図における「弱」、「中」及び「強」との記載は、送風ファン44が弱強度、中強度及び強強度で運転していることを示している。
【0073】
「微強度」、「弱強度」、「中強度」及び「強強度」とは、それぞれファン48の単位時間あたりの回転数によって規定され、「微強度」と比較して「弱強度」におけるファン48の回転数が多く、「弱強度」と比較して「中強度」におけるファン48の回転数が多く、「中強度」と比較して「強強度」におけるファン48の回転数が多い。
【0074】
例えば
図6(A)に示したテーブルAにおいては、運転モードが「空調モード」の場合、ハウジング42は空調空気供給位置(
図2A参照)に配置される。空調空気供給位置では、第一供給経路36Aがハウジング42と連通し(OPEN)、第二供給経路36Bが閉塞されている(CLOSE)。また、送風ファン44は「中強度」で「正回転」により運転される。
【0075】
また、テーブルAにおいて、運転モードが「マイルドモード」の場合、ハウジング42は混合空気供給位置(
図2D参照)に配置される。混合空気供給位置では、第一供給経路36A及び第二供給経路36Bがハウジング42と連通している(OPEN)。また、送風ファン44は「中強度」で「正回転」により運転される。
【0076】
さらに、テーブルAにおいては、運転モードが「送風モード」の場合、ハウジング42は室内空気供給位置(
図2B参照)に配置される。室内空気供給位置では、第二供給経路36Bがハウジング42と連通し(OPEN)、第一供給経路36Aが閉塞されている(CLOSE)。また、送風ファン44は「中強度」で「正回転」により運転される。
【0077】
またさらに、テーブルAにおいては、運転モードが「吸込モード」の場合、ハウジング42は室内空気供給位置(
図2C参照)に配置される。室内空気供給位置では、第二供給経路36Bがハウジング42と連通し(OPEN)、第一供給経路36Aが閉塞されている(CLOSE)。また、送風ファン44は「弱強度」で「逆回転」により運転される。
【0078】
テーブルB、C、Dにおける各運転モードにおける送風ファン44及びハウジング42の制御については、それぞれ
図6(B)、(C)、(D)に示した通りであり説明は省略する。
【0079】
<作用・効果>
本発明の実施形態に係る空調家具10では、
図2Aに示すように、空気室32から座面14Aを介して建物の室内空間V1へ空気が吹出される。この空気室32には、第一供給経路36Aから空調空気が供給され、
図2Bに示すように、第二供給経路36Bから室内空気が供給される。空気室32への第一供給経路36Aからの空気供給及び第二供給経路36Bからの空気供給は、送風切替機構40によって変更される。これにより、着座者には、空調空気だけでなく、室内空気、又は、空調空気及び室内空気の混合空気(
図2D参照)を吹出口34から送風することができる。したがって、空調空気のみを送風する場合と比較して、送風温度を調整し易い。
【0080】
また、本発明の実施形態に係る空調家具10では、
図3B~Dに示すように、ハウジング42が軸回転することにより、第一供給経路36Aからの送風及び第二供給経路36Bからの送風が切り替えられる。このため、一台の送風ファン44により送風が切替えられる。したがって第一供給経路36A及び第二供給経路36Bのそれぞれに送風ファンを設ける場合と比較して設備を軽微にできる。
【0081】
また、本発明の実施形態に係る空調家具10では、
図2Cに示すように、「吸込モード」において、空気室32から第二供給経路36Bへ送風される。このとき、座面14A及び背もたれ16Aから空気室32へ空気が吸い込まれる。これにより例えば座部14と着座者の間に熱が籠ることを抑制することができる。
【0082】
また、本発明の実施形態に係る空調家具10では、
図1に示す制御装置60が、差圧計62によって測定された「室内空間V1と床下空間V2との圧力差」及び温度計66によって測定された「空調空気の温度」に基づき、送風ファン44及びハウジング42を制御する。
【0083】
一例として、室内空間V1と床下空間V2との圧力差が小さい場合(圧力差が0以上15Pa未満の場合)は、圧力差が大きい場合(圧力差が15以上36Pa未満の場合)と比較して、床下空間V2から空気室32へ空調空気が供給され難くなる。このとき制御装置60は、送風ファン44による送風量を大きくする。
【0084】
具体的には、空調空気の温度が18℃以上20℃未満の状態において、室内空間V1と床下空間V2との圧力差が、15Pa以上の状態から15Pa未満に切り替わった場合、制御装置60は、空調装置30の運転テーブルを、
図6(B)に示すテーブルBから
図6(A)に示すテーブルAに切替える。
【0085】
このとき、例えば入力装置50によって入力された運転モードが「空調モード」とされている場合、送風ファン44の運転強度を「弱」から「中」にする。これにより、送風切替機構40による送風量が大きくなる。したがって、冷房能力を保つことができる。
【0086】
なお、入力装置50によって入力された運転モードが「マイルドモード」、「送風モード」、「吸込モード」とされている場合も、各テーブルA、Bにおける設定値に基づいて、送風ファン44による送風量が制御される。また、空調空気の温度が20℃以上の場合においては、各テーブルC、Dにおける設定値に基づいて、送風ファン44による送風量が制御される。
【0087】
別の一例として、空調空気の温度が高い場合(20℃以上の場合)は、低い場合(18以上20℃未満の場合)と比較して、同じ量の空調空気による冷房能力が低くなる。このとき制御装置60は、送風切替機構40による送風量を大きくして、空気室32へ供給される空気量を増やす。
【0088】
具体的には、室内空間V1と床下空間V2との圧力差が15Pa未満の状態において、空調空気の温度が20℃未満から20℃以上に切り替わった場合、制御装置60は、空調装置30の運転テーブルを、
図6(A)に示すテーブルAから
図6(C)に示すテーブルCに切替える。
【0089】
このとき、例えば入力装置50によって入力された運転モードが「空調モード」とされている場合、送風ファン44の運転強度を「中」から「強」にする。これにより、送風切替機構40による送風量が大きくなる。したがって、冷房能力を保つことができる。
【0090】
なお、入力装置50によって入力された運転モードが「マイルドモード」、「送風モード」、「吸込モード」とされている場合も、各テーブルA、Cにおける設定値に基づいて、送風ファン44による送風量が制御される。また、室内空間V1と床下空間V2との圧力差が15Pa以上の場合においては、各テーブルB、Dにおける設定値に基づいて、送風ファン44による送風量が制御される。
【0091】
このように、本発明の実施形態に係る空調家具10においては、室内空間V1と空調空気経路(床下空間V2)との圧力差や空調空気の温度に関わらず、空調能力を保つことができる。
【0092】
また、本発明の実施形態に係る空調家具10では、
図1、4、5に示す入力装置50によって空調装置30の運転モードを設定することができる。具体的には、空調家具10の利用者が
図4に示すモード選択ボタン56を操作することで、テーブルA、B、C、D毎に運転モードを切替えることができる。
【0093】
例えば、空調装置30の運転テーブルがテーブルAに設定されている状態において、利用者はモード選択ボタン56を操作することで、任意の運転モード(テーブルAにおける任意の運転モード、
図6(A)参照)に切替えることができる。運転モードを切替えることで、ハウジング42の位置、送風ファン44の運転強度及び回転方向が適宜切り替わる。これにより空調家具10の利用者は、任意の運転モードによる温熱環境を得ることができる。
【0094】
なお、本発明の実施形態に係る空調家具10では、室内空間V1と空調空気経路(床下空間V2)との圧力差を、「0Pa以上15Pa未満」及び「15Pa以上36Pa未満」の2ケースに分類している。また、空調機70から供給される空調空気の温度を「18℃以上20℃未満」及び「20℃以上」の2ケースに分類している。さらに、これらの場合分けにより制御装置60の制御方法としてテーブルA、B、C、Dの4つの運転テーブルを設けている。しかし、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0095】
一例として、圧力差の閾値は15Pa、36Paに限定されない。地域、季節等に応じて適宜変更できる。同様に、温度の閾値も、18℃、20℃に限定されない。
【0096】
別の一例として、圧力差の分類は2ケースに限らない。例えば3ケース以上に分類してもよい。同様に、温度も3ケース以上に分類してもよい。例えば圧力差を3ケース、温度を3ケースに分類すると、運転テーブルは9テーブル設けることができる。分類を細分化することで、冷房能力の維持効果が高くなる。
【0097】
また別の一例として、室内空間V1と床下空間V2との圧力差は、必ずしも測定しなくてもよい。すなわち、空調機70から供給される空調空気の温度のみで運転テーブルを作成してもよい。同様に、空調機70から供給される空調空気の温度は、必ずしも測定しなくてもよい。この場合、室内空間V1と床下空間V2との圧力差のみで運転テーブルを作成する。
【0098】
すなわち、「室内空間V1と床下空間V2との圧力差」及び「空調機70から供給される空調空気の温度」の少なくとも一方に基づいて運転テーブルを設ければよい。いずれの場合でも、運転テーブルを設けない場合と比較して冷房能力の維持効果を得ることができる。
【0099】
また、本発明の実施形態に係る空調家具10では、入力装置50で入力された「運転モード」に加え「運転テーブル」に基づいて送風切替機構40の送風量を制御しているが本発明の実施形態はこれに限らない。例えば運転テーブルに基づく制御は行わなくてもよい。運転テーブルに基づく制御を行わなくても、運転モードに基づく制御により、冷房能力の維持効果を得ることができる。
【0100】
また、上記の実施形態においては、空調装置30を「冷房」運転する場合について説明したが、本発明の実施形態はこれに限らない。すなわち空調装置30は「暖房」運転することもできる。空調装置30を「暖房」運転する場合の運転テーブルでは、空調機70から供給される空調空気の温度が低い場合、高い場合と比較して送風切替機構40の送風量を大きくする。これにより、暖房能力の維持効果を得ることができる。
【0101】
また、上記の実施形態においては、
図2(A)に示す座面14A及び背もたれ16Aの裏側に形成された空気室32から吹出す空気を制御する場合について説明したが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば空気室32を、座面14Aの裏側だけ、または、背もたれ16Aの裏側だけに形成してもよい。このような構成によっても、送風温度を調整することができる。
【0102】
また、
図7に示すように、空気室32を、座面14Aの裏側の座部空気室32A、及び、背もたれ16Aの裏側の背部空気室32Bに分けて構成してもよい。この場合、送風切替機構40は座部空気室32A及び背部空気室32Bの少なくとも一方に設ければよいが、双方に設けることが好適である。
【0103】
この場合、第一供給経路36A、第二供給経路36B及び送風切替機構40が座部空気室32A及び背部空気室32Bのそれぞれに設けられているため、背もたれ16Aから吹き出す空気についても、温度を調整できる。これにより、着座者の好みや体調に応じた温度管理がし易い。
【0104】
また、上記の説明においては家具本体12の可動性について言及していないが、家具本体12は、床材Fに据え置く固定式の家具としてもよいし、床材Fの上部において持ち運べる可動式の家具としてもよい。家具本体12を可動式とする場合、
図8に示すように、家具本体12にはキャスター71を設けることが好適である。また、可動式の家具本体12には、空気室32から室内空間V1へ空気が漏れることを抑制するための可撓性のエプロン72を設けることが好適である。さらに、第一供給経路36Aの下端部には、送風ファン44による空調空気の吸引効率を高める可撓性のエプロン74を設けることが好適である。
【0105】
また、ハウジング42を保持する保持部46は、支持脚46Bを介して床材Fに固定されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば支持脚46Bを家具本体12に固定することで、家具本体12を容易に可動式とすることができる。
【0106】
また、本実施形態においては送風ファン44を「逆回転」させることにより「送風モード」と「吸込モード」とを切替えているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば送風ファン44を「正回転」のみで回転させる場合、ハウジングを180度回転させることで「送風モード」と「吸込モード」とを切替えてもよい。
【0107】
さらに、空調家具10においては必ずしも吸込モードを設ける必要はなく、「空調モード」、「マイルドモード」、「送風モード」のみを備えるものとしてもよい。
【0108】
また、運転モードは必ずしも入力装置50によって入力する必要はない。例えば着座者が手動でハウジング42を回転させることにより運転モードを切り替えてもよい。この場合、ハウジング42の回転角度は上述した90度、45度等に限定されない。
【0109】
また、上記の実施形態においては、空調空気経路が床下空間V2に形成されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば床下空間V2に配置したダクトを空調空気経路としてもよいし、建物の壁体内部や壁体内部に配置されたダクトを空調空気経路としてもよい。このように、本発明は様々な態様で実施できる。
【符号の説明】
【0110】
10 空調家具
12 家具本体
14A 座面
16A 背もたれ
32 空気室
32A 座部空気室(空気室)
32B 背部空気室
34 吹出口
36A 第一供給経路
36B 第二供給経路
40 送風切替機構
42 ハウジング
44 送風ファン
V1 室内空間
V2 床下空間(空調空気経路)