(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】積層体の製造方法、及び管理方法
(51)【国際特許分類】
B05D 1/28 20060101AFI20240412BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240412BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20240412BHJP
B05C 1/08 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
B05D1/28
B05D3/00 F
B05D3/00 D
B05D7/00 A
B05C1/08
(21)【出願番号】P 2020041257
(22)【出願日】2020-03-10
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100176658
【氏名又は名称】和田 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】川上 武志
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-080736(JP,A)
【文献】特開2011-165663(JP,A)
【文献】特開平03-038279(JP,A)
【文献】特開昭56-144776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00-7/26
B05C1/00-3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されている基材上に塗工ロールによって塗工剤を塗工し、前記基材上に塗工層を形成する塗工工程であって、前記塗工ロールの回転速度と前記基材の搬送速度の比である塗工ドロー比に基づいて前記基材上に前記塗工剤を塗工する、前記塗工工程と、
前記塗工層の厚さを取得する厚さ取得工程と、
前記塗工層の厚さと所定の厚さとの差を算出する算出工程と、
前記塗工層の厚さと前記所定の厚さとの差に基づき、前記塗工工程における前記塗工ドロー比を変更する変更工程と、
を含み、
前記塗工工程、前記厚さ取得工程、前記算出工程および前記変更工程を自動的に実施しながら、前記塗工工程、前記厚さ取得工程、前記算出工程および前記変更工程を繰り返
し、
前記厚さ取得工程を指定間隔で実施し、
前記算出工程を、前記厚さ取得工程を実施する毎に実施し、
前記塗工工程、前記厚さ取得工程、前記算出工程および前記変更工程を、前記指定間隔より長い周期で繰り返し、
各周期における前記変更工程は、前記周期内で実施される複数の前記算出工程のうち最後の算出工程において算出された前記塗工層の厚さと前記所定の厚さとの差に基づき、前記塗工工程における前記塗工ドロー比を変更し、
前記変更工程では、前記塗工層の厚さと前記所定の厚さとの差に、指定された調整割合を乗算することによってドロー比調整値を算出し、
第1回目の前記塗工工程における塗工ドロー比を初期塗工ドロー比としたとき、第N回目(Nは2以上の整数)の前記変更工程では、第(N-1)回目までの前記変更工程で算出した(N-1)個の前記ドロー比調整値と、N回目の前記変更工程で算出した前記ドロー比調整値と、前記初期塗工ドロー比との和として、新しい塗工ドロー比を設定する、
前記塗工層を有する積層体の製造方法。
【請求項2】
搬送されている基材上に塗工ロールによって塗工剤を塗工し、前記基材上に塗工層を形成する塗工工程であって、前記塗工ロールの回転速度と前記基材の搬送速度の比である塗工ドロー比に基づいて前記基材上に前記塗工剤を塗工する、前記塗工工程と、
前記塗工層の厚さを取得する厚さ取得工程と、
前記塗工層の厚さと所定の厚さとの差を算出する算出工程と、
前記塗工層の厚さと前記所定の厚さとの差に基づき、前記塗工工程における前記塗工ドロー比を変更する変更工程と、
を含み、
前記塗工工程、前記厚さ取得工程、前記算出工程および前記変更工程を自動的に実施しながら、前記塗工工程、前記厚さ取得工程、前記算出工程および前記変更工程を繰り返
し、
前記厚さ取得工程を指定間隔で実施し、
前記算出工程を、前記厚さ取得工程を実施する毎に実施し、
前記塗工工程、前記厚さ取得工程、前記算出工程および前記変更工程を、前記指定間隔より長い周期で繰り返し、
各周期における前記変更工程は、前記周期内で実施される複数の前記算出工程のうち最後の算出工程において算出された前記塗工層の厚さと前記所定の厚さとの差に基づき、前記塗工工程における前記塗工ドロー比を変更し、
前記変更工程における変更前の前記塗工ドロー比を第1塗工ドロー比とし、前記変更工程において変更された前記塗工ドロー比を第2塗工ドロー比としたとき、前記変更工程では、前記第2塗工ドロー比を、前記塗工層の厚さと前記所定の厚さとの差に、指定された調整割合を乗算することによって得られるドロー比調整値と前記第1塗工ドロー比の和として設定する、
前記塗工層を有する積層体の製造方法。
【請求項3】
前記塗工層の厚さは、前記基材の搬送方向に沿った指定範囲における前記塗工層の平均厚さである、
請求項1
又は2記載の製造方法。
【請求項4】
搬送されている基材上に塗工ロールによって塗工剤を塗工し、前記基材上に塗工層を形成する塗工工程で使用する、前記塗工ロールの回転速度と前記基材の搬送速度の比である塗工ドロー比を管理する方法であって、
前記塗工工程によって形成された塗工層の厚さを取得する厚さ取得工程と、
前記塗工層の厚さと所定の厚さとの差を算出する算出工程と、
前記塗工層の厚さと前記所定の厚さとの差に基づき、前記塗工工程における前記塗工ドロー比を変更する変更工程と、
を含み、
前記厚さ取得工程、前記算出工程および前記変更工程を自動的に実施
しながら、前記塗工工程、前記厚さ取得工程、前記算出工程および前記変更工程を繰り返し、
前記厚さ取得工程を指定間隔で実施し、
前記算出工程を、前記厚さ取得工程を実施する毎に実施し、
前記塗工工程、前記厚さ取得工程、前記算出工程および前記変更工程を、前記指定間隔より長い周期で繰り返し、
各周期における前記変更工程は、前記周期内で実施される複数の前記算出工程のうち最後の算出工程において算出された前記塗工層の厚さと前記所定の厚さとの差に基づき、前記塗工工程における前記塗工ドロー比を変更し、
前記変更工程では、前記塗工層の厚さと前記所定の厚さとの差に、指定された調整割合を乗算することによってドロー比調整値を算出し、
第1回目の前記塗工工程における塗工ドロー比を初期塗工ドロー比としたとき、第N回目(Nは2以上の整数)の前記変更工程では、第(N-1)回目までの前記変更工程で算出した(N-1)個の前記ドロー比調整値と、N回目の前記変更工程で算出した前記ドロー比調整値と、前記初期塗工ドロー比との和として、新しい塗工ドロー比を設定する、
管理方法。
【請求項5】
搬送されている基材上に塗工ロールによって塗工剤を塗工し、前記基材上に塗工層を形成する塗工工程で使用する、前記塗工ロールの回転速度と前記基材の搬送速度の比である塗工ドロー比を管理する方法であって、
前記塗工工程によって形成された塗工層の厚さを取得する厚さ取得工程と、
前記塗工層の厚さと所定の厚さとの差を算出する算出工程と、
前記塗工層の厚さと前記所定の厚さとの差に基づき、前記塗工工程における前記塗工ドロー比を変更する変更工程と、
を含み、
前記厚さ取得工程、前記算出工程および前記変更工程を自動的に実施
しながら、前記塗工工程、前記厚さ取得工程、前記算出工程および前記変更工程を繰り返し、
前記厚さ取得工程を指定間隔で実施し、
前記算出工程を、前記厚さ取得工程を実施する毎に実施し、
前記塗工工程、前記厚さ取得工程、前記算出工程および前記変更工程を、前記指定間隔より長い周期で繰り返し、
各周期における前記変更工程は、前記周期内で実施される複数の前記算出工程のうち最後の算出工程において算出された前記塗工層の厚さと前記所定の厚さとの差に基づき、前記塗工工程における前記塗工ドロー比を変更し、
前記変更工程における変更前の前記塗工ドロー比を第1塗工ドロー比とし、前記変更工程において変更された前記塗工ドロー比を第2塗工ドロー比としたとき、前記変更工程では、前記第2塗工ドロー比を、前記塗工層の厚さと前記所定の厚さとの差に、指定された調整割合を乗算することによって得られるドロー比調整値と前記第1塗工ドロー比の和として設定する、
管理方法。
【請求項6】
前記塗工層の厚さは、前記基材の搬送方向に沿った指定範囲における前記塗工層の平均厚さである、
請求項
4又は5記載の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体の製造方法、及び管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シート状物(基材)を搬送しながらシート状物上に回転ロール(塗工ロール)で塗工液(塗工剤)を塗工する技術が開示されている。これにより、基材と塗工層とを有する積層体が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基材と塗工層とを有する積層体において、塗工層が接着剤から形成された接着層である場合、積層体は、たとえば、積層体を含む製品を製造するために別の部材に貼合される。この場合、塗工層の厚さが所望の厚さからズレている(或いは不均一である)と、製品にも同様の不具合が生じる結果、製品が所望の性能を発揮できないおそれがある。或いは、塗工層の材料によっては、積層体自体が製品として販売される場合もある。この場合、塗工層の厚さが所望の厚さからズレている(或いは不均一である)と、製品の外観を損ねる場合がある。したがって、塗工層の厚さを所望の厚さになるように塗工剤の塗工状態を管理する必要がある。塗工層の厚さは、塗工ロールの回転速度と基材の搬送速度の比(以下、「塗工ドロー比」と称す)で決定される。
【0005】
従来では、たとえば、次のように塗工層の厚さが管理されていた。塗工ロールで基材上に塗工剤を塗工して得られる塗工層の厚さを測定する。その測定結果を用いて、ユーザ(積層体の製造者)が経験に基づいて、新たな塗工ドロー比を決定することによって、塗工層の厚さを管理する。
【0006】
しかしながら、変更すべき塗工ドロー比をユーザが経験的に決定するため、所望の厚さを安定的に実現できない場合があった。
【0007】
本発明の一側面の目的は、所望の厚さを有する塗工層を含む積層体を安定して製造可能な積層体の製造方法を提供することである。本発明の他の側面の目的は、所望の厚さを有する塗工層を安定して形成するように塗工ドロー比を管理する管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る積層体の製造方法は、搬送されている基材上に塗工ロールによって塗工剤を塗工し、上記基材上に塗工層を形成する塗工工程であって、上記塗工ロールの回転速度と上記基材の搬送速度の比である塗工ドロー比に基づいて上記基材上に上記塗工剤を塗工する、上記塗工工程と、上記塗工層の厚さを取得する厚さ取得工程と、上記塗工層の厚さと所定の厚さとの差を算出する算出工程と、上記塗工層の厚さと上記所定の厚さとの差に基づき、上記塗工工程における上記塗工ドロー比を変更する変更工程と、を含み、上記塗工工程、上記厚さ取得工程、上記算出工程および上記変更工程を自動的に実施しながら、上記塗工工程、上記厚さ取得工程、上記算出工程および上記変更工程を繰り返す。
【0009】
上記製造方法では、上記塗工層の厚さと上記所定の厚さとの差に基づき、上記塗工工程における上記塗工ドロー比を変更する。更に、上記塗工工程、上記厚さ取得工程、上記算出工程および上記変更工程を自動的に実施する。そのため、所望の厚さを有する塗工層を含む積層体を安定して製造できる。
【0010】
上記塗工層の厚さは、上記基材の搬送方向に沿った指定範囲における上記塗工層の平均厚さであってもよい。同じ塗工ドロー比で塗工された塗工層でも現実的には塗工層の厚さに若干のバラツキがある。上記平均厚さを用いることによって、上記バラツキの影響を低減して塗工ドロー比を変更できる。
【0011】
上記厚さ取得工程を指定間隔で実施し、上記算出工程を、上記厚さ取得工程を実施する毎に実施し、上記塗工工程、上記厚さ取得工程、上記算出工程および上記変更工程を、上記指定間隔より長い周期で繰り返し、各周期における上記変更工程は、上記周期内で実施される複数の上記算出工程のうち最後の算出工程において算出された上記塗工層の厚さと上記所定の厚さとの差に基づき、上記塗工工程における上記塗工ドロー比を変更してもよい。
【0012】
上記方法では、変更工程を指定間隔より長い周期で実施するため、塗工ドロー比を変更した後、安定した状態における塗工層の厚さに基づいて次の塗工ドロー比を算出できる。
【0013】
上記変更工程では、上記塗工層の厚さと上記所定の厚さとの差に、指定された調整割合を乗算することによってドロー比調整値を算出し、第1回目の上記塗工工程における塗工ドロー比を初期塗工ドロー比としたとき、第N回目(Nは2以上の整数)の上記変更工程では、第(N-1)回目までの上記変更工程で算出した(N-1)個の上記ドロー比調整値と、N回目の上記変更工程で算出した上記ドロー比調整値と、上記初期塗工ドロー比との和として、新しい塗工ドロー比を設定してもよい。
【0014】
上記変更工程における変更前の上記塗工ドロー比を第1塗工ドロー比とし、上記変更工程において変更された上記塗工ドロー比を第2塗工ドロー比としたとき、上記変更工程では、上記第2塗工ドロー比を、上記塗工層の厚さと上記所定の厚さとの差に、指定された調整割合を乗算することによって得られるドロー比調整値と上記第1塗工ドロー比の和として設定してもよい。
【0015】
本発明の他の側面に係る管理方法は、搬送されている基材上に塗工ロールによって塗工剤を塗工し、上記基材上に塗工層を形成する塗工工程で使用する、上記塗工ロールの回転速度と上記基材の搬送速度の比である塗工ドロー比を管理する方法であって、上記塗工工程によって形成された塗工層の厚さを取得する厚さ取得工程と、上記塗工層の厚さと所定の厚さとの差を算出する算出工程と、上記塗工層の厚さと上記所定の厚さとの差に基づき、上記塗工工程における上記塗工ドロー比を変更する変更工程と、を含み、上記厚さ取得工程、上記算出工程および上記変更工程を自動的に実施する。
【0016】
上記管理方法では、上記塗工層の厚さと上記所定の厚さとの差に基づき、上記塗工工程における上記塗工ドロー比を変更する。更に、上記厚さ取得工程、上記算出工程および上記変更工程を自動的に実施する。そのため、所望の厚さを有する塗工層を安定して形成するように塗工ドロー比を管理できる。
【0017】
上記塗工層の厚さは、上記基材の搬送方向に沿った指定範囲における上記塗工層の平均厚さであってもよい。同じ塗工ドロー比で塗工された塗工層でも現実的には塗工層の厚さに若干のバラツキがある。上記平均厚さを用いることによって、上記バラツキの影響を低減して塗工ドロー比を変更できる。
【0018】
上記塗工工程、上記厚さ取得工程、上記算出工程および上記変更工程を繰り返す場合、 上記厚さ取得工程を指定間隔で実施し、上記算出工程を、上記厚さ取得工程を実施する毎に実施し、上記塗工工程、上記厚さ取得工程、上記算出工程および上記変更工程を、上記指定間隔より長い周期で繰り返し、各周期における上記変更工程は、上記周期内で実施される複数の上記算出工程のうち最後の算出工程において算出された上記塗工層の厚さと上記所定の厚さとの差に基づき、上記塗工工程における上記塗工ドロー比を変更してもよい。
【0019】
上記方法では、変更工程を指定間隔より長い周期で実施するため、塗工ドロー比を変更した後、安定した状態における塗工層の厚さに基づいて次の塗工ドロー比を算出できる。
【0020】
上記変更工程では、上記塗工層の厚さと上記所定の厚さとの差に、指定された調整割合を乗算することによってドロー比調整値を算出し、上記塗工工程、上記厚さ取得工程、上記算出工程および上記変更工程を繰り返す場合、第1回目の上記塗工工程における塗工ドロー比を初期塗工ドロー比としたとき、第N回目(Nは2以上の整数)の上記変更工程では、第(N-1)回目までの上記変更工程で算出した(N-1)個の上記ドロー比調整値と、N回目の上記変更工程で算出した上記ドロー比調整値と、上記初期塗工ドロー比との和として、新しい塗工ドロー比を設定してもよい。
【0021】
上記変更工程における変更前の上記塗工ドロー比を第1塗工ドロー比とし、上記変更工程において変更された上記塗工ドロー比を第2塗工ドロー比としたとき、上記変更工程では、上記第2塗工ドロー比を、上記塗工層の厚さと上記所定の厚さとの差に、指定された調整割合を乗算することによって得られるドロー比調整値と上記第1塗工ドロー比の和として設定してもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一側面によれば、所望の厚さを有する塗工層を含む積層体を安定して製造可能な積層体の製造方法を提供できる。本発明の他の側面によれば、所望の厚さを有する塗工層を安定して形成するように塗工ドロー比を管理する管理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る積層体の製造方法の一例を説明するための概念図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る積層体の製造方法の一例のフローチャートである。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る積層体の製造方法において、塗工ドロー比を変更するためのデータの一例を示す図表である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る積層体の製造方法において、塗工ドロー比を変更するためのデータの一例を示す図表である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る積層体の製造方法において、塗工ドロー比を変更するためのデータの一例を示す図表である。
【
図6】
図6は、
図3~
図5における塗工層の厚さtaveおよびドロー比調整値の変化を示したグラフである。
【
図7】
図7は、
図3~
図5における塗工ドロー比および塗工層の厚さt1の変化を示したグラフである。
【
図8】
図8は、検証実験の結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0025】
図1は、一実施形態に係る積層体の製造方法を説明するための概念図である。
図1に示した積層体10の製造方法では、長尺の基材11を搬送装置(不図示)で搬送しながら、基材11上に塗工剤12aを塗工する。これにより、基材11と、塗工剤12aから形成された塗工層12とを備える積層体10が得られる。
【0026】
基材11は、たとえば樹脂フィルムである。この場合、たとえば押出成形によって形成された基材11を連続的に搬送してもよい。基材11のロール体から繰り出された基材11を連続的に搬送してもよい。基材11は、フレキシブル性を有するものであってよく、単層の樹脂フィルムであってもよいし、樹脂フィルムの積層体であってもよい。基材11の例は、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリシクロオレフィン(COP)を含む。基材11は、偏光板、位相差板、位相差板と偏光板とが接着層で接合された円偏光板(楕円偏光板を含む)、偏光板または位相差板に保護フィルム等を積層させた積層体等といった光学積層体でもよい。上記偏光板は、たとえば、偏光フィルム(偏光子層)と保護フィルムとが積層された積層体でもよい。同様に、上記位相差板は、たとえば、位相差フィルム(位相差子層)と保護フィルムとが積層された積層体でもよい。基材11の厚さの例は、10μm~200μmである。
【0027】
塗工層12は、基材11上に形成される。塗工層12の厚さの例は、0.1μm~10μm、好ましくは0.5μm~5μm、更に好ましくは1μm~3μmである。塗工層12の材料である塗工剤12aの例は、接着剤または粘着剤である。接着剤または粘着剤は、本開示に関する技術分野において公知の材料でよい。接着剤の例は、紫外線(UV)硬化樹脂等の活性エネルギー線硬化型接着剤、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液等の水系接着剤を含む。粘着剤の例は、(メタ)アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等を主成分とする粘着剤組成物を含む。
【0028】
図2は、積層体10の製造方法の一例のフローチャートである。積層体10の製造方法は、塗工工程S01と、厚さ取得工程S02と、算出工程S03と、変更工程S04とを有する。厚さ取得工程S02、算出工程S03および変更工程S04は、一実施形態に係る塗工層12の厚さの管理方法を構成する。塗工工程S01と、厚さ取得工程S02と、算出工程S03と、変更工程S04を基本サイクル(基本周期)として、上記基本サイクルを繰り返すことによって、積層体10を製造する。
図2では、上記基本サイクルに含まれる工程を示している。各工程を説明する。
【0029】
[塗工工程]
塗工工程S01では、
図1に示したように、搬送されている基材11に、塗工装置20によって塗工剤12aを塗工する。具体的には、塗工装置20が有する塗工剤供給部21内の塗工剤12aを塗工ロール22によって基材11に塗工する。塗工装置20の例は、公知のグラビア塗工装置である。この場合、塗工ロール22は、グラビアロールである。塗工ロール22は、
図1に示したように、たとえば、基材11の搬送方向と反対方向に回転される。
【0030】
塗工工程S01では、制御装置30内で設定されている(或いは保存されている)塗工ドロー比(%)に基づいて塗工剤12aを基材11に塗工する。塗工ドロー比は、塗工ロール22の回転速度V1および基材11の搬送速度V2の比(V1/V2)である。たとえば、回転速度V1が60m/分であり、搬送速度V2が30m/分である場合、塗工ドロー比は200%である。本実施形態では、制御装置30が塗工ロール22の回転速度V1を制御することによって、塗工ドロー比を調整する。後述するように、変更工程S04によって塗工ドロー比は、適宜変更される。積層体10の製造開始時の初期塗工ドロー比は、予めユーザによって制御装置30に入力されていればよい。
【0031】
[厚さ取得工程]
厚さ取得工程S02では、塗工層12の厚さtaveを取得する。本実施形態の厚さ取得工程S02で取得する塗工層12の厚さtaveは、基材11の指定範囲における塗工層12の平均厚さである。指定範囲は、基材11の搬送方向に沿った一定の長さを有する領域(或いは、測定器M1または測定器M2の下を通過する一定の長さ領域)として設定される。
【0032】
厚さ取得工程S02では、
図1に示したように、基材11の搬送方向において、塗工装置20の上流および下流に配置された測定器M1および測定器M2の測定結果を利用して制御装置30が塗工層12の厚さt
aveを取得する。測定器M1および測定器M2を説明する。
【0033】
測定器M1は、基材11の厚さt0を測定する。測定器M2は、塗工層12を含む積層体10の厚さt2を測定する。したがって、一実施形態に係る積層体10の製造方法は、塗工工程S01より前に基材11の厚さを取得する工程を有し、塗工工程S01後に積層体10の厚さを測定する工程を有してもよい。
【0034】
測定器M1および測定器M2は、測定対象(基材11および積層体10)の厚さを測定できれば限定されない。測定器M1および測定器M2の例は、分光干渉レーザ変位計(たとえば、キーエンス製 SI-Tシリーズ)である。測定器M1および測定器M2は制御装置30に測定結果(厚さt0,厚さt2)を入力する。入力方法は、限定されない。たとえば、測定結果は、有線または無線を利用して測定結果が制御装置30に入力され得る。
【0035】
本実施形態では、制御装置30が測定器M1および測定器M2を制御する。具体的には、制御装置30は、測定器M1および測定器M2それぞれが所定間隔で測定を実施するように、測定器M1および測定器M2を制御する。これにより、上記所定間隔で、測定器M1および測定器M2の測定結果が順次制御装置30に入力される。上記所定間隔は、後述する差Δd1を指定間隔で算出可能なように、指定間隔と同じでもよいし、指定間隔より小さい間隔でもよい。所定間隔は、ユーザによって予め制御装置30に入力された間隔である。
【0036】
制御装置30による厚さtaveの算出方法の一例を説明する。
【0037】
制御装置30は、測定器M2の測定結果と測定器M1の測定結果の差Δd1を算出する。差Δd1は、基材11における同じ箇所(説明の便宜のため、「測定位置x」と称す)の測定器M2の測定結果と測定器M1の測定結果の差である。差Δd1は、測定器M1および測定器M2それぞれの測定結果のうち、測定器M1と測定器M2の設置距離と、基材11の搬送速度に基づいて、測定位置xにおける測定結果を用いて算出されればよい。差Δd1は、基材11の測定位置xでの塗工層12の厚さt1である。制御装置30は指定間隔毎に差Δd1を算出する。指定間隔はユーザによって予め制御装置30に入力された間隔である。制御装置30は、積層体10の製造開始から順に算出された差Δd1のうち、指定範囲に含まれる複数の差Δd1を平均することによって、厚さtaveを得る。本実施形態において、上記指定範囲は、ユーザによって予め制御装置30に入力された一定の長さ(基材11の搬送方向に沿った長さ)を有する領域である。平均に使用する差Δd1の数は、指定範囲の長さおよび差Δd1の更新回数(本実施形態では指定間隔に相当)によって決定される。
【0038】
[算出工程]
算出工程S02では、制御装置30が、厚さtaveと目標厚さ(所定の厚さ)との差Δd2を算出する。算出工程S02は、たとえば、厚さ取得工程S02の実施毎に実施される。
【0039】
[変更工程]
変更工程S04では、制御装置30が、差Δd2に基づき、厚さtaveが目標厚さに一致するように、塗工工程S01における塗工ドロー比を変更する。本実施形態では、制御装置30は、差Δd1を算出する指定間隔より大きい周期(以下、「補正周期」と称す)で変更工程S04を実施する。たとえば、上記補正周期は、上記指定間隔の2以上の自然数倍(たとえば、3倍、4倍など)でもよい。上記補正周期は、ユーザによって予め制御装置30に入力されていればよい。変更工程S04は、たとえば算出工程S03が実施される毎に実施されてもよい。
【0040】
たとえば、制御装置30は、差Δd2に、予め設定された補正ゲイン(調整割合)を乗算することによって得られるドロー比調整値に基づいて、厚さtaveが目標厚さに一致するように、塗工工程S01における塗工ドロー比を変更してもよい。上記補正ゲインは、ユーザによって予め制御装置30に入力されていればよい。上記補正ゲインは、積層体10の製造中に製造状況に応じてユーザによって変更されてもよい。補正ゲインは1倍でもよいが、好ましくは、10~70倍、更に好ましくは20~50倍、更に好ましく30~40倍である。
【0041】
上記ドロー比調整値を用いた塗工ドロー比の変更方法の一例を説明する。この例では、第N回目(Nは2以上の整数)の変更工程S04では、第(N-1)回目までの変更工程S04で算出した(N-1)個のドロー比調整値およびN回目の変更工程で算出したドロー比調整値の和を補正値として更に算出し、上記補正値と、初期塗工ドロー比(第1回目の塗工工程S01を実施のために設定された塗工ドロー比)との和として、新しい塗工ドロー比を設定する。
【0042】
上記ドロー比調整値を用いた塗工ドロー比の変更方法の他の例を説明する。説明の便宜のため、変更前の塗工ドロー比を、第1塗工ドロー比と称し、変更後の塗工ドロー比を第2塗工ドロー比と称する。この例では、制御装置30は、ドロー比調整値と、第1塗工ドロー比との和を、第2塗工ドロー比として設定する。
【0043】
上記のように製造された積層体10は、たとえば、他の部材に貼合されてもよいし、或いは、塗工層12を更に硬化させることによって、製品として販売されてもよい。
【0044】
上記制御装置30は、塗工工程S01から変更工程S04で説明した制御装置30の各機能を実現可能に構成されていればよい。制御装置30は、測定器M1および測定器M2からの測定結果およびユーザによる各種データ等の入力を受け付ける機能、各種データ(厚さtave、差Δd2、ドロー比調整値など)を表示する機能などを有し得る。ユーザによって入力されるデータの例は、目標厚さ、および、上述した各種パラメータ(たとえば、指定間隔、補正周期、補正ゲインなど)である。制御装置30は、積層体製造用の専用装置であり得る。或いは、パーソナルコンピュータにおいて、上述した各種機能を実現するためのプログラムを実行することで、上記パーソナルコンピュータを制御装置30として機能させてもよい。
【0045】
図3~
図5を利用して制御装置30における塗工ドロー比の変更方法を更に具体的に説明する。
図3は、一実施形態に係る積層体10の製造方法において、塗工ドロー比を変更するためのデータの一例を示す図表である。
【0046】
図3~
図5に示したデータは、次の条件で積層体10を製造する場合を想定した仮想事例のデータであり、
図3~
図5では、仮想事例における経過時間60秒までのデータを抜粋している。
目標厚さ:1.5μm
初期塗工ドロー比:200%
指定範囲の長さ:1.4m
指定間隔:1秒
搬送速度:21m/分(0.35m/秒)
補正周期:15秒(5.25mの長さに相当)
補正ゲイン:35
図3~
図5に示した厚さt1は、たとえば、
図1に示した測定器M1および測定器M2を使用して厚さt0および厚さt2を測定する場合において、厚さt2と厚さt1の差として算出される塗工層12の厚さである。
【0047】
指定範囲として1.4mを想定するとともに、搬送速度として21m/分を想定しているため、
図3に示したように、データNo.5までのデータが得られた時点で、データNo.1~No.5までの差Δd1の平均値として厚さt
aveが算出される。指定範囲の長さが1.4mであることから、
図3に示した例では、データNo.2~No.6に相当する基材11の領域を次の指定範囲として、厚さt
aveを算出している。その後、順に、指定範囲を0.35m(経過時間1秒に相当)ずつずらしながら、厚さt
aveを算出する。厚さt
aveを算出する毎に、差Δd2を算出するとともに、ドロー比調整値を算出する。
図6は、
図3~
図5における厚さt
aveおよびドロー比調整値の変化を示したグラフである。
図6の横軸は、基材11の搬送距離を示している。
図6の左側の縦軸は、厚さt
ave(μm)を示しており、右側の縦軸はドロー比調整値を示している。
【0048】
補正周期が15秒であることから、
図3に示したように、データNo.15のデータが得られた時点で、ドロー比調整値に基づいて新たな塗工ドロー比を設定する。具体的には、データNo.15のデータが得られた時点では第1回目の変更工程S04であるため、ドロー比調整値が補正値に相当する。そのため、データNo.15までの塗工ドロー比である200%に、補正値(ドロー比調整値に相当)である-22.4を加算することによって算出された177.6を、次の塗工ドロー比として設定する。その後、
図4に示したように、データNo.30のデータが得られた時点で、ドロー比調整値に基づいて新たな塗工ドロー比を設定する。具体的には、第2回目の変更工程S04を実施するデータNo.30が得られた時でのドロー比調整値は-7であることから、上記第1回目の変更工程S04で算出した補正値である-22.4に-7を加算した-29.4を補正値として算出する。初期塗工ドロー比である200%に-29.4を加算することによって算出された170.6を次の塗工ドロー比として設定する。以下、同様にして塗工ドロー比を設定する。
【0049】
図7は、
図3~
図5における塗工ドロー比および塗工層の厚さt1の変化を示したグラフである。
図7の左側の縦軸は、塗工ドロー比(%)を示しており、右側の縦軸は塗工層12の厚さt1を示している。
【0050】
図3~
図5及び
図7に示したように、塗工ドロー比は、搬送距離5.25m毎に変更される。これによって、塗工層12の厚さt1も変化し、厚さt1が目標厚さである1.5μmに収束する。
【0051】
図3~
図5に例示したデータに基づいた説明では、補正値を用いて塗工ドロー比を調整する形態を説明した。しかしながら、
図3~
図5に示した補正値を用いずに塗工ドロー比を調整してもよい。この場合の塗工ドロー比の調整方法を説明する。
【0052】
最初の変更工程S04を実施するデータNo.15が得られた時点でのドロー比調整値は-22.4であることから、初期塗工ドロー比である200%に-22.4を加算して算出された177.6を次の塗工ドロー比として設定する。第2回目の変更工程S04を実施するデータNo.30が得られた時でのドロー比調整値は-7であるため、177.6に-7を加算することによって算出され170.6を次の塗工ドロー比として設定する。以下、同様にして塗工ドロー比を設定する。
【0053】
上記積層体10の製造方法では、塗工層12の厚さを取得し、それと目標厚さとの差Δd2に基づいて、塗工ドロー比を変更する。上記積層体10の製造方法では、塗工工程S01、厚さ取得工程S02、算出工程S03および変更工程S04を繰り返しながら、塗工工程S01、厚さ取得工程S02、算出工程S03および変更工程S04を、制御装置30を用いて自動で行うことができる。つまり、塗工ドロー比の変更に必要なデータの取得、算出などを制御装置30が自動的に行うことができる。この場合、塗工層12の厚さ(実際の厚さ、または、平均厚さ)を自動的に監視でき、取得された塗工層12の厚さ(本実施形態では、厚さtave)に基づいて塗工ドロー比を自動的に変更できる。換言すれば、塗工層12の厚さt2が目標厚さに収束するように、塗工ドロー比が自動的に変更される。その結果、目標厚さを有する塗工層12を備える積層体10を安定して製造可能である。更に、自動的に塗工層12の厚さを目標厚さにするように塗工ドロー比が調整されるので、塗工層12の厚さバラツキも低減する。そのため、積層体10の品質を向上可能である。
【0054】
図8は、検証実験の結果を示したグラフである。
図8では、
図1および
図2を用いて説明した積層体10の製造方法で、積層体10を製造した場合の結果を実施例としてプロットしている。複数のプロット点は、本製造方法に従って行った積層体10の3つの製造例の結果である。具体的には、TAC上に塗工層12を設けた位相差板、PET上に塗工層12を設けた位相差板、及びCOPフィルム上に塗工層12を設けた積層体を作製した。各製造例において、塗工層12として、UV硬化樹脂(UV接着剤)で形成された層を設けた。各製造例では、同じ塗工ロールおよび同じUV接着剤を使用した。各製造例における塗工層12の目標厚さは全て1.5μmであった。
図8では、複数の積層体10それぞれの製造例において、
図1に示した測定器M1で測定される基材11の厚さt0の標準偏差に対して、塗工層12の厚さt1(測定器M2の測定結果と測定器M1の測定結果の差)の標準偏差をプロットしている。基材11の厚さt0に厚さ分布が生じていると、塗工層12の厚さt1の厚さ分布に影響すると考えられる。そのため、
図8では、上述したように、基材11の厚さt0の標準偏差に対して、塗工層12の厚さt1の標準偏差をプロットしている。
【0055】
図8には比較実験の結果を比較例として示している。比較実験では、実施例の積層体10を製造する場合と同じ製造装置を用いた。ただし、ユーザ(積層体10の製造担当者)が測定器M1および測定器M2の測定結果に基づいて経験的に塗工ドロー比を調整した。基材11、塗工層12の材料および目標厚さは実施例の積層体10を製造する場合と同じであった。
図8では、比較実験で製造した3種の積層体10の結果をプロットしている。各プロット点の意味は、実施例の場合と同様である。
【0056】
図8より、自動的に塗工ドロー比を調整する実施例の方が、塗工層12の厚さのバラツキが小さいことがわかる。すなわち、自動的に塗工ドロー比を調整することによって、より高い品質の積層体10を製造できることが理解できる。
【0057】
上記積層体10の製造方法では、経験的に塗工ドロー比を変化させる場合に比べて、塗工層12の厚さt1を目標厚さにより早く収束できるので、省力化を図れるとともに、材料を有効に活用できる。
【0058】
同じ塗工ドロー比の場合であっても現実的には塗工層12の厚さに若干のバラツキが生じる。そのため、塗工層12の厚さとして平均厚さである厚さtaveを使用することによって、上記バラツキの影響を低減しながら、塗工ドロー比を調整できる。厚さの測定間隔である指定間隔より長い周期で変更工程S04を実施することにより、新しい塗工ドロー比に変更した後、安定した状態における塗工層12の厚さに基づいて塗工ドロー比を調整可能である。更に、指定範囲の長さ、指定間隔、及び補正周期などは、上述した安定性および追従性などを考慮して、目標厚さの塗工層12が得られるように設定され得る。
【0059】
以上、本発明に係る実施形態を説明した。しかしながら、本発明は、例示した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される範囲が含まれるとともに、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0060】
たとえば、変更工程を実施する周期(補正周期)は、上記指定間隔と同じでもよいし、ドロー比調整値の算出に使用する塗工層の厚さは、実際の塗工層の厚さ(
図1の厚さt1)であってもよい。塗工層の材料は、接着剤および粘着剤に限定されない。
【0061】
上記実施形態では、説明の便宜のため、差Δd2、ドロー比調整値などを一度算出した後に、変更すべき塗工ドロー比を算出する形態を説明した。しかしながら、制御装置30は、測定器M1および測定器M2から入力された測定結果に基づいて、直接新しい塗工ドロー比を算出してもよい。この場合でも、新しい塗工ドロー比の算出は、差Δd2、ドロー比調整値などに基づいている。
【0062】
塗工層12の厚さを得るために、測定器M1および測定器M2を使用する形態を説明した。しかしながら、たとえば、一つの厚さ測定器で、塗工層の厚さを直接測定してもよい。或いは、予め設定してある基材の厚さと、測定器M2の測定結果を用いて塗工層12の厚さを算出してもよい。
【0063】
塗工ドロー比は、たとえば、基材の搬送速度を調整することによって変更されてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10…積層体、11…基材、12…塗工層、12a…塗工剤、22…塗工ロール、30…制御装置。