(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】包装用フィルムおよび包装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 65/02 20060101AFI20240412BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240412BHJP
B65D 85/50 20060101ALI20240412BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240412BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
B65D65/02 E
B65D65/40 D
B65D85/50 120
B65D85/50 200
B32B27/32 E
B32B27/18 F
(21)【出願番号】P 2020044930
(22)【出願日】2020-03-16
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150072
【氏名又は名称】藤原 賢司
(74)【代理人】
【識別番号】100185719
【氏名又は名称】北原 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100104802
【氏名又は名称】清水 尚人
(72)【発明者】
【氏名】岩屋 良美
(72)【発明者】
【氏名】田中 唯純
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-130837(JP,A)
【文献】特開2015-199228(JP,A)
【文献】特開2003-291281(JP,A)
【文献】特開2008-133350(JP,A)
【文献】特開2018-118744(JP,A)
【文献】特開2007-253349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/00-65/46
B65D 85/50
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カットキャベツを包装するための包装用フィルムであって、
シール層および基材層を含む二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムであ
り、
シール層がプロピレン系ランダム共重合体およびガス透過性樹脂から主としてなり、
基材層がポリプロピレン系樹脂から主としてな
るとともに、基材層はビニル芳香族炭化水素系樹脂を含み、
当該包装用フィルムは、カットキャベツを包装した場合、当該カットキャベツの包装後1日目と7日目との色差の値が3以下であり、かつ
シール層および基材層を貫く貫通孔を有しないことを特徴とする、包装用フィルム。
【請求項2】
ガス透過性樹脂が、ポリエチレン系樹脂またはビニル芳香族炭化水素系樹脂である、請求項1に記載の包装用フィルム。
【請求項3】
さらに、消臭剤、抗菌剤、またはその両者を含む、請求項1または2に記載の包装用フィルム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の包装用フィルムから成形される、包装袋。
【請求項5】
請求項4に記載の包装袋にカット
キャベツが封入された、包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムの技術分野に属する。本発明は、かかる樹脂フィルムからなる包装用フィルムまたは包装袋に関するものである。また、かかる包装袋に青果物(カット野菜)、特にカットキャベツが封入された包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
簡便に食することができるよう、また共働きが増え、食事の準備を短くすることができるよう、事前に洗浄されカットされたカット野菜と呼ばれる生鮮食品を食卓に用いる家庭が増えている。そして、廃棄ロス削減の取り組みにより、鮮度を長く保つフィルムの需要が高まっている。
カット野菜の鮮度は、菌数評価や各カット野菜メーカーの独自評価(臭気、色、味等)によって行われている。鮮度に問題があれば廃棄されている。対策として、包装袋内の雰囲気を調整して鮮度を延ばすことができるガス調整フィルムが考えられる。
【0003】
ガス調整フィルムからなる包装体として、例えば、酸素透過速度が120~400cc/100g・day・atm、二酸化炭素透過速度が120~600cc/100g・day・atm、包装体の有効表面積の水蒸気透過速度が50g/m2・day・atm(at40℃・90%RH)以下であることを特徴とする20~50μmの合成樹脂フィルムからなる、カットキャベツの包装体が知られている(特許文献1)。
また、23℃、60%RHにおける酸素透過量が1500cc/m2・day・atm以上7000cc/m2・day・atm以下であり、23℃における弾性率が150MPa以上1600MPa以下である合成樹脂フィルムからなる、もやしまたは菌茸類用鮮度保持包装袋が知られている(特許文献2)。
特許文献1および2の合成樹脂フィルムないしそれからなる包装袋は、基本的に当該フィルムに物理的に穴を開けてガス透過性を上げているので、微生物等が進入するおそれがある。
【0004】
また、青果物などの鮮度保持包装フィルムとして、ポリプロピレン(A)、エチレン-1-オクテンランダム共重合体(B)およびスチレン・エチレン/ブチレン・スチレンブロック共重合体(C)を含み、(A)の含有量が55~95重量%であり、(B)および(C)の合計の含有量が5~45重量%であり、かつ、(B)と(C)の重量比が80/20~20/80の範囲内にある層を含有することを特徴とするガス透過制御フィルムが知られている(特許文献3)。このものは、特許文献3によると、酸素透過度および二酸化炭素透過度が大きく、かつ、低ヘイズであるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-242504号公報
【文献】特開2018-076081号公報
【文献】特開2008-133350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カット野菜の鮮度は、前記の通り、菌数評価や各カット野菜メーカーの独自評価(臭気、色、味等)によって行われている。しかし、消費者の鮮度評価は、主として内容物の外観の色であり、同種の内容物と色を比較して良し悪しを判断することが少なからずある。
本発明は、鮮度を保つため青果物やカット野菜を包装しても、鮮度が評価される色の変化の少ない新たな包装用フィルムないし当該フィルムから成形される包装袋などを提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、上記課題を解決しうる包装用フィルムを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
本発明としては、例えば、下記のものを挙げることができる。
[1]シール層および基材層を含む二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムであって、シール層がプロピレン系ランダム共重合体およびガス透過性樹脂から主としてなり、基材層がポリプロピレン系樹脂から主としてなり、包装後1日目と7日目との色差の値が3以下であり、かつシール層および基材層を貫く貫通孔を有しないことを特徴とする、包装用フィルム。
[2]ガス透過性樹脂が、ポリエチレン系樹脂またはビニル芳香族炭化水素系樹脂である、上記[1]に記載の包装用フィルム。
[3]さらに、消臭剤、抗菌剤、またはその両者を含む、上記[1]または[2]に記載の包装用フィルム。
【0009】
[4]上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の包装用フィルムから成形される、包装袋。
[5]上記[4]に記載の包装袋にカット野菜が封入された、包装体。
【発明の効果】
【0010】
本発明の包装用フィルムないし当該フィルムから成形される包装袋を用いれば、青果物、主にカット野菜(特にカットキャベツ)の色の変化を少なくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の包装用フィルム(以下、「本発明フィルム」という。)は、シール層および基材層を含む二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムであって、シール層がプロピレン系ランダム共重合体およびガス透過性樹脂から主としてなり、基材層がポリプロピレン系樹脂から主としてなり、包装後1日目と7日目との色差の値が3以下であり、シール層および基材層を貫く貫通孔を有しないことを特徴とする。
上記「貫通孔を有しない」とは、浸透液を用いた試験において、浸透液が上記包装用フィルムの一方側から他方側へ浸透していかないことを意味し、大きさや形状には、特に限定はない。
【0012】
ここで「主としてなる」とは、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を含むことを許容することを意味し、成分の含有率を制限するものではないが、通常、層成分全体に対する当該必須成分の含有率が50重量%以上を占めていることをいう。好ましくは当該含有率が70重量%以上を占めること、より好ましくは80重量%以上ないし90重量%以上を占めていることをいう。当該含有率が100重量%であってもよい。
以下、本発明について詳述する。
【0013】
1 本発明フィルムについて
本発明フィルムは、シール層および基材層を含む。
本発明フィルムに係る「シール層」は、本発明フィルムを筒状にするに際して、内容物と接触する筒の内側になる層(最内層)であり、熱を加えるとシール層同士が互いに接着される。本発明フィルムに係る「基材層」は、シール層と直接または中間層を挟んで対向し、本発明フィルムを筒状にするに際して、筒の外側になる層であり、外界に接する層(最外層)である。
【0014】
1.1 シール層
シール層は、プロピレン系ランダム共重合体およびガス透過性樹脂から主としてなる。
当該プロピレン系ランダム共重合体は、プロピレンとそれ以外のα-オレフィンとの共重合体であって、それを加工してフィルム層となし、その層に熱を加えると、フィルム層同士が接着されるシール性を有するものであれば特に制限されない。
プロピレン以外のα-オレフィンとしては、例えば、炭素数2~20のプロピレン以外のα-オレフィンを挙げることができ、具体的には、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、3-メチル-1-ブテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-エチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-エチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン等が挙げられる。この中、炭素数2~4の、例えば、エチレン、ブテンが好ましく、エチレンがより好ましい。これらプロピレン以外のα-オレフィンは、1種であっても、2種以上の併用であってもよい。
【0015】
当該プロピレン系ランダム共重合体中のプロピレン以外のα-オレフィンの含有割合は、14重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。
【0016】
当該プロピレン系ランダム共重合体としては、具体的には、例えば、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体等を挙げることができる。この中、プロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体が好ましい。
【0017】
当該プロピレン系ランダム共重合体の中、ISO1133(1997)に準拠して230℃、21.18N(2.16Kg)荷重の条件で測定された場合のメルトフローレート(MFR)値が0.5~20g/10分の範囲内であるものが好ましい。また当該メルトフローレート値が、4~8g/10分の範囲内であるプロピレン系ランダム共重合体がより好ましい。なお、重合体のメルトフローレート(MFR)値は、プロピレン以外のα-オレフィンの種類や含有量、重合体の分子量や重合度によって適宜調整することができる。
更に当該プロピレン系ランダム共重合体の中、ISO1183(1987)に準拠して測定した場合の密度が850~950kg/m3の範囲内であるものが好ましく、860~920kg/m3の範囲内であるプロピレン系ランダム共重合体がより好ましい。
【0018】
シール層にはガス透過性樹脂が含まれる。ここで「ガス透過性樹脂」とは、それを原料に加えてフィルム層を形成すれば、それを原料に加えない場合に比べて、酸素や二酸化炭素、臭気といったガスの透過を高めることができるフィルム層を形成できる樹脂をいう。シール層におけるガス透過性樹脂としては、具体的には、例えば、ポリエチレン系樹脂、ビニル芳香族炭化水素系樹脂、シリコーンゴム、天然ゴム、ポリウレタン、ポリブタジエン、ブタジエンゴムを挙げることができる。この中、ポリエチレン系樹脂が、ガス透過性とヒートシール性との観点から好ましい。
【0019】
当該ポリエチレン系樹脂は、エチレンとそれ以外のα-オレフィンとの共重合体である。かかるエチレン以外のα-オレフィンとしては、例えば、炭素数3~20のα-オレフィンを挙げることができ、具体的には、例えば、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。この中、炭素数3~8の、例えば、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンが好ましい。これらエチレン以外のα-オレフィンは1種であっても、また2種以上の併用であってもよい。
【0020】
当該ポリエチレン系樹脂中のエチレンとそれ以外のα-オレフィンとの含有割合としては、通常エチレンが65~100重量%、それ以外のα-オレフィンが0~35重量%であり、好ましくはエチレンが70~99.9重量%、それ以外のα-オレフィンが0.1~30重量%であり、より好ましくはエチレンが72~99.5重量%、それ以外のα-オレフィンが0.5~27重量%であり、更に好ましくはエチレンが75~99重量%、それ以外のα-オレフィンが1~25重量%である。
【0021】
当該ポリエチレン系樹脂の中、ISO1133(1997)に準拠して190℃、21.18N(2.16kg)荷重の条件で測定されたメルトフローレート(MFR)値が0.5~20g/10分の範囲内であるものが好ましい。また、当該メルトフローレート値が、2~4g/10分の範囲内であるポリエチレン系樹脂がより好ましい。
更に当該ポリエチレン系樹脂の中、ISO1183(1987)に準拠して測定した場合の密度が850~900kg/m3の範囲内であるポリエチレン系樹脂が好ましく、860~890kg/m3の範囲内であるポリエチレン系樹脂がより好ましい。
【0022】
当該ビニル芳香族炭化水素系樹脂としては、例えば、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン炭化水素との共重合体の水素添加物、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン炭化水素との共重合体、ビニル芳香族炭化水素と脂肪族不飽和カルボン酸エステルとの共重合体を挙げることができる。この中、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン炭化水素との共重合体(例、ポリスチレン系樹脂)やその水素添加物が好ましい。
ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン炭化水素との共重合体の水素添加物としては、例えば、スチレン系単量体とジエン系単量体とのランダム共重合体の水素添加物、スチレン系単量体とジエン系単量体とのブロック共重合体の水素添加物を挙げることができる。ここで、これらを「水添スチレン系エラストマー」、「水添ランダム共重合体」ないし「水添ブロック共重合体」とも呼ぶ。
【0023】
水添ランダム共重合体は、具体的には、例えば、式:-CH(C6H5)CH2-で示されるスチレン系単量体単位と、式:-CH2CH2CH2CH2-で示されるエチレン単位と、式:-CH(C2H5)CH2-で示されるブチレン単位とがランダムに結合している。
水添ブロック共重合体としては、該共重合体の一端または両末端にビニル芳香族炭化水素由来のブロックセグメントを有し、更に共役ジエン炭化水素由来のブロックセグメントを有するもの、あるいはこれらをブレンドしたものの水素添加物等が挙げられる。水添ブロック共重合体は、具体的には、例えば、該共重合体の一端に、式:-CH(C6H5)CH2-で示されるスチレン系単量体由来のブロックセグメントを有し、その中程に、式:-CH2CH2CH2CH2-で示されるエチレン単位、および/または、式:-CH(C2H5)CH2-で示されるブチレン単位を含むブロックセグメントを有する。あるいは、該共重合体の他端に、式:-CH2CH2CH2CH2-で示されるエチレン単位を含むセグメントを有する。
【0024】
当該ビニル芳香族炭化水素系樹脂の中、水添ブロック共重合体(水添スチレン系エラストマー)として、スチレン-エチレン-ブチレン-オレフィン結晶のブロックコポリマー(SEBC)やスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンのブロック共重合体(SEBS)が特に好ましい。
当該ビニル芳香族炭化水素系樹脂(SEBS等)の密度としては、ISO 1183-1:2004に準拠して、850kg/m3~1,100kg/m3の範囲内が好ましく、880kg/m3~1,050kg/m3の範囲内がより好ましい。
当該ビニル芳香族炭化水素系樹脂(SEBS等)のISO 1133に準拠した温度230℃、荷重21.18Nで測定したMFR(メルトフローレート)値としては、1g/10分~20g/10分の範囲内が好ましく、3g/10分~15g/10分の範囲内がより好ましい。
水添スチレン系エラストマーの100重量%中のスチレン含有量としては5~70重量%の範囲内が好ましく、9~67重量%の範囲内がより好ましい
【0025】
シール層の樹脂中におけるプロピレン系ランダム共重合体の含有量としては、その具体的樹脂の種類などによって異なるが、例えば、65~97重量%の範囲内を挙げることができ、好ましくは70~95重量%の範囲内であり、より好ましくは72~93重量%の範囲内である。
シール層の樹脂中におけるプロピレン系ランダム共重合体とガス透過性樹脂(ポリエチレン系樹脂)との配合割合としては、それらの具体的な樹脂の種類などによって異なるが、重量比で1.5~20(プロピレン系ランダム共重合体/ガス透過性樹脂)の範囲内が適当であり、2~15の範囲内が好ましく、2.5~14の範囲内がより好ましい。
【0026】
シール層には、さらに、後述する消臭剤の1種または2種以上を適当量配合することができ、これを配合することが好ましい。また、後述する抗菌剤の1種または2種以上を適当量配合することができ、これを配合することが好ましい。消臭剤や抗菌剤の配合は、異臭の抑制にさらに有効である。
当該消臭剤は、シール層に、層を構成する樹脂100重量部に対して、例えば、1~6重量部の範囲内で配合することができる。当該抗菌剤は、シール層に、層を構成する樹脂100重量部に対して、例えば、0.1~1重量部の範囲内で配合することができる。
【0027】
また、シール層には、樹脂フィルムの表面が平滑になり、樹脂フィルム同士が密着することを防ぐ目的で、本発明の効果を損なわない範囲で、アンチブロッキング剤または滑剤を含んでいてもよい。かかるアンチブロッキング剤としては、一般的に用いられている無機系のシリカやカオリン、ゼオライト等、または有機系の架橋アクリルビーズ等が挙げられる。また、滑剤としては、ステアリン酸カルシウム等が挙げられる。アンチブロッキング剤および滑剤は、いずれも1種のみでもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記アンチブロッキング剤または滑剤の添加量は、樹脂の種類等により適宜調整することができるが、層を構成する樹脂100重量部に対して、0.05~30重量部が適当であり、好ましくは0.5~20重量部である。
【0029】
1.2 基材層
基材層は、ポリプロピレン系樹脂から主としてなる。
当該ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン単独重合体、結晶性ポリプロピレン系樹脂を挙げることができる。この中、結晶性ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
当該結晶性ポリプロピレン系樹脂は、融点が155℃~165℃のものが好ましい。更に、融点が155℃~165℃の当該結晶性ポリプロピレン系樹脂の中、13C核磁気共鳴スペクトルによるアイソタクチックペンタッド分率(IP)が89.0%~96.0%であるものがより好ましい。
【0030】
結晶性ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンとそれ以外のα-オレフィンとの共重合体である。プロピレン以外のα-オレフィンとしては、例えば、炭素数2~10のプロピレン以外のα-オレフィンを挙げることができ、具体的には、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン等のα-オレフィンを挙げることができる。この中、炭素数2~4の、例えば、エチレン、1-ブテンが好ましく、エチレンがより好ましい。これらプロピレン以外のα-オレフィンは、1種であっても、2種以上の併用であっても良い。プロピレン以外のα-オレフィンの含有割合は、1.3重量%以下が適当であり、0.5重量%以下が好ましい。
【0031】
当該ポリプロピレン系樹脂の中、ISO1133(1997)に準拠して230℃、21.18N(2.16Kg)荷重の条件で測定された場合のメルトフローレート(MFR)値が0.5~20g/10分の範囲内にあることが好ましい。また、当該メルトフローレート値が、2~4g/10分の範囲内であるポリプロピレン系樹脂がより好ましい。
更に当該ポリプロピレン系樹脂の中、ISO1183(1987)に準拠して測定した場合の密度が850~950kg/m3の範囲内であるものが好ましく、860~920kg/m3の範囲内であるポリプロピレン系樹脂がより好ましい。
【0032】
基材層にもガス透過性樹脂を適当量含むことができる。当該ガス透過性樹脂は、シール層におけるものと同義であるが、基材層におけるガス透過性樹脂としては、ビニル芳香族炭化水素系樹脂が好ましく、スチレン系樹脂ないし水添スチレン系エラストマーがより好ましい。特に、フィルムにした際の透明性(ヘイズ)の観点から、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンのブロック共重合体(SEBS)が好ましい。
【0033】
基材層の樹脂中におけるポリプロピレン系樹脂の含有量としては、その具体的樹脂の種類などによって異なるが、例えば、70~98重量%の範囲内を挙げることができ、好ましくは75~95重量%の範囲内であり、より好ましくは78~92重量%の範囲内である。
基材層の樹脂中におけるポリプロピレン系樹脂(結晶性ポリプロピレン系樹脂)とガス透過性樹脂(ビニル芳香族炭化水素系樹脂ないし水添スチレン系エラストマー)との配合割合としては、これらの具体的な樹脂の種類などによって異なるが、重量比で1.5~20(ポリプロピレン系樹脂/ガス透過性樹脂)の範囲内が適当であり、2.5~15の範囲内が好ましく、3~12の範囲内がより好ましい。
【0034】
基材層には、さらに、後述する消臭剤の1種または2種以上を適当量配合することができる。また、必要に応じて後述する抗菌剤も1種または2種以上を適当量配合することができる。
当該消臭剤は、シール層に、層を構成する樹脂100重量部に対して、例えば、1~6重量部の範囲内で配合することができる。当該抗菌剤は、シール層に、層を構成する樹脂100重量部に対して、例えば、0.1~1重量部の範囲内で配合することができる。
【0035】
基材層には、さらに、フィルムに防曇性能を付与する目的で防曇剤を含有することができる。かかる防曇剤としては、その目的に適うものであれば特に制限されず、従来、防曇性フィルムに用いられている防曇剤をそのまま使用することができる。具体的には、例えば、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルの3系が挙げられる。
【0036】
アルキルジエタノールアミンにおけるアルキル基は、通常、炭素数8~22、好ましくは炭素数12~18のものである。具体的なアルキルジエタノールアミンとしては、ラウリルジエタノールアミン、ミリスチルジエタノールアミン、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、オレイルジエタノールアミン等を挙げることができる。
【0037】
アルキルジエタノールアミン脂肪酸エステルにおける脂肪酸エステル基は、通常、炭素数8~22、好ましくは炭素数12~22の飽和または不飽和の脂肪酸エステルであり、好ましくは後者の不飽和の脂肪酸エステルである。具体的なアルキルジエタノールアミン脂肪酸エステルとしては、ラウリルジエタノールアミンモノステアリン酸エステル、ミリスチルジエタノールアミンモノオレイン酸エステル、ラウリルジエタノールアミンモノステアリン酸エステル、パルミチルジエタノールアミンモノステアリン酸エステル、ステアリルジエタノールアミンモノパルミチル酸エステル、ステアリルジエタノールアミンモノステアリン酸エステル、オレイルジエタノールアミンモノステアリン酸エステル等を挙げることができる。
【0038】
グリセリン脂肪酸エステルにおける脂肪酸エステル基は、上記のアルキルジエタノールアミン脂肪酸エステルにおける脂肪酸エステル基と同様のものを挙げることができる。また、グリセリンの-OHに結合する脂肪酸エステル基数は1または2個が好ましく、より好ましいのは1個の脂肪酸エステルモノグリセライドである。
【0039】
以上の各防曇剤は、上記同系の中で1種または2~3種の混合で、異系の中で2~3種の混合の形で使用されるが、中でも異系の中での3種混合の形での使用、つまりアルキルジエタノールアミンとアルキルジエタノールアミン脂肪酸エステルおよび脂肪酸エステルモノグリセライドの3成分混合で、且つアルキルジエタノールアミン脂肪酸エステルを主成分として組成するのがより好ましい。
【0040】
防曇剤の添加量としては、防曇剤の種類等により適宜調整すればよいが、5,000~15,000ppmが適当であり、4,000~10,000ppmが好ましい。防曇剤の添加量が5,000ppm未満であると充分な防曇効果が得られない場合があり、15,000ppmを超えると必要以上に表面へのブリードアウトが起こり、透明性が劣化する場合がある。
【0041】
1.3 消臭剤、抗菌剤
本発明フィルムは、消臭剤および/または抗菌剤を適当量含むことができる。消臭剤は、発生した異臭を消却することができ、抗菌剤は、異臭の発生を抑制することができる。
【0042】
消臭剤として、例えば、無機系消臭剤を挙げることができる。無機系消臭剤としては、例えば、リン酸ジルコニウム;アルミノ珪酸塩(ゼオライト)、アルミノ珪酸亜鉛;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩;酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化鉄、酸化チタン、ミョウバン等の金属酸化物を挙げることができる。また、これらの化合物の複合物や、これらの化合物に、銅、銀、亜鉛、チタンなどの金属が担持されたものも挙げられる。中でも、二酸化珪素/酸化亜鉛複合物(複合物)、アルミノ珪酸亜鉛、銀イオン含有アルミノ珪酸塩が好ましい。特に好ましくは、二酸化珪素/酸化亜鉛複合物(複合物)である。このような消臭剤の市販品としては、富士ケミカル株式会社のスメルクリンPC-504ZB(G)、PC-504ZB(GF)、PC-504ZB(GFD)、PC-504ZB(GFAD)、PC-504ZB(GUD)、花王株式会社のライオナイトSF(アルミノ珪酸亜鉛)、株式会社シナンゼオミックのゼオミックHW10N(銀イオン含有アルミノ珪酸塩)、東亜合成株式会社のケスモンNS-10N(リン酸ジルコニウム)、協和化学工業株式会社のキョーワード500や1000などが挙げられる。
【0043】
抗菌剤として、例えば、無機系抗菌剤、有機系抗菌物質を挙げることができる。
無機系抗菌剤としては、例えば、金属イオンを含む金属化合物を挙げることができ、具体的には、例えば、銀イオン、銅イオン、または亜鉛イオンを含む金属化合物が挙げられる。この中、銀イオンと亜鉛イオンとを含む金属化合物が好ましい。かかる金属化合物として、具体的には、例えば、銀-亜鉛ゼオライトを挙げることができる。市販品としては、富士ケミカル株式会社のバクテキラー、株式会社シナネンゼオミックのゼオミック(登録商標)、東亜合成株式会社のノバロン(登録商標)などが挙げられる。
【0044】
金属イオンを含む金属化合物の平均粒子径としては、特に制限されないが、例えば、0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上8μm以下であることがより好ましい。平均粒子径が0.5μm以上であることで、樹脂中での分散状態が良好となり、平均粒子径が10μm以下であることで、フィルムの製膜安定性に優れる。ここで「平均粒子径」とは、透過型電子顕微鏡を用いて、抗菌剤の粒子画像の最大長(Dmax:粒子画像の輪郭上の2点における最大長さ)と、最大長垂直長(DV-max:最大長に平行な2本の直線で粒子画像を挟んだときの、この2本の直線間の最短長さ)を測長し、その相乗平均値(Dmax×DV-max)1/2を1個の抗菌剤の粒子径として、この方法で例えば任意の100個の抗菌剤について当該粒子径を測定し、その算術平均した粒子径をいう。
【0045】
有機系抗菌物質としては、安全性の観点から当業者が適宜選択することができ、具体的には、例えば、イソチオシアン酸アリル、ヒノキチオールなどのテルペン類が挙げられる。
【0046】
1.4 その他
本発明フィルムは、前記のシール層および基材層の少なくとも2層を有する。また、本発明フィルムは、シール層と基材層との間に中間層を有することができる。
【0047】
本発明フィルムにおける各層の厚さは次のとおりである。
該フィルムの総厚みを10~50μmの範囲内、好ましくは20~45μmの範囲内としたとき、シール層は1~8μmの範囲内、好ましくは1.5~6μmの範囲内であり、基材層は2~49μmの範囲内、好ましくは14~43.5μmの範囲内である。
【0048】
本発明フィルム中には、種々の添加剤を適量更に配合することができる。かかる添加剤としては、造核剤、酸化防止剤、難燃剤、静電気防止剤、充填剤、顔料等を挙げることができる。
また、本発明フィルムは、前記層のほかに、開口性付与層、ガスバリア性付与層等その他の層を有していてもよい。
【0049】
2 本発明フィルムの製造方法について
本発明フィルムは、公知の製造方法より製造することができるが、生産性や出来上がったフィルムの物性等を考慮すると、フラット状シートを押出成形により製膜し、次いで逐次二軸延伸して本発明フィルムを製造するのが好ましい。
【0050】
より具体的には、適正な温度に設定されたそれぞれの押出機に、シール層を構成する樹脂および基材層を構成する樹脂をそれぞれ投入し、押出機内で樹脂を溶融・混練した後、210℃~250℃のTダイスよりシート状に押出す。この場合、2層ないし3層の多層構成を形成するのに、フィードブロック方式を用いても、マルチマニホールド方式を用いてもよい。押出されたシートは25℃の冷却ロールにて冷却固化され、縦延伸工程へと送られる。縦延伸は130℃~140℃に設定された加熱ロールにより構成されており、ロール間の速度差によって縦方向(以下、MD方向という。)に延伸される。この加熱ロールの本数には特に制限はないが、少なくとも低速側と高速側の2本は必要である。縦延伸の延伸倍率は4~6倍、好ましくは4.5~5.5倍である。次にテンターによる横延伸工程に送られ、横方向(以下、TD方向という。)に延伸される。テンター内は予熱、延伸、アニールゾーンに分かれており、予熱ゾーンは165℃~170℃に、延伸ゾーンは165℃~170℃に、そしてアニールゾーンは165℃~170℃に設定されている。延伸ゾーンでの延伸倍率は6~10倍程度が好ましい。延伸されたのち、アニールゾーンで冷却、固定されたのち、巻き取り機にて巻き取ってフィルムロールとなる。
【0051】
本発明フィルムの製造においては、テンターのアニールゾーンを出た後、巻き取り機で巻き取る前に、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線照射処理等公知の表面処理を施すことが好ましく、簡便性の点から特に、コロナ放電処理を行うことが好ましい。当該表面処理を施すことにより、フィルムの表面にぬれ張力を持たせ、防曇効果を高めることができるだけでなく、フィルム表面に印刷をする場合の印刷インキとの密着性を高めることもできる。このコロナ放電処理は表層面、基材層面の両面を処理してもよいし、表層面または基材層面のどちらか一方の面を処理してもよい。コロナ放電処理の強度としては、1.8×102~9.0×102J/m2の範囲内にあるのが好ましく、両面処理する場合に、両面とも同じ強度であっても、異なっていてもよい。
【0052】
こうして得られた二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルム(本発明フィルム)の表面のぬれ張力は、38~44mN/mが好ましい。ぬれ張力が38mN/m未満であると、防曇性の発現が充分でなく、また印刷する場合には印刷インキの密着性に劣り好ましくない。ぬれ張力が44mN/mを超えると、防曇剤の表面へのブリードアウトが激しく白化やブロッキングの原因となるほか、溶断シール強度の低下の原因となり好ましくない。
【0053】
3 本発明フィルムから成形される包装袋、および包装体
次に、本発明フィルムから成形される包装袋(以下、「本発明袋」という。)および包装体について詳述する。
【0054】
本発明袋は、本発明フィルムを用いて、自動包装機等により製造することができる。
本発明フィルムは、縦ピロー包装機のみならず、横ピロー包装機等その他包装機で成形する際にも用いることができる。
具体的には、本発明袋は、例えば、縦ピロー包装機のフォーマーにて、シール層を内面とした筒状のフィルムとし、フィルムの端部を流れ方向(MD方向)に沿ってヒートシールし、続いてその筒状フィルムの下端部を流れ方向に対し直交する方向(TD方向)にヒートシールすることにより製造することができる。
次いで、一定量に計量された内容物を本発明袋内に投入し、フィルムの流れ方向(MD方向)に対し直交する方向(TD方向)にヒートシールすることにより、内容物が封入された包装体を製造することができる。以下、本発明袋に内容物が封入されている包装体を「本発明包装体」という。
【0055】
本発明袋に封入される内容物としては、例えば、青果物(例:生野菜、果物、芋、キノコ)等の農産物を挙げることができ、青果物が好ましい。かかる青果物としては、例えば、ネギ、もやし、ホウレン草、ブロッコリー、ピーマン等の野菜類;またはキャベツ、レタス、ニンジン等のカット野菜類を挙げることができる。中でも、本発明袋は、カットキャベツ等のカット野菜類に好適に用いることができ、カットキャベツに特に好適に用いることができる。
【実施例】
【0056】
以下に実施例や比較例などを掲げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0057】
二軸延伸ポリプロピレン系フィルムの製造
使用した原料は、次のとおりである。
PP-1:プロピレン-エチレン-ブテン共重合体(MFR:5.0g/10分、融点:125℃、密度:0.9g/cm3)
PP-2:結晶性ポリプロピレン系樹脂(MFR:2.5g/10分、融点:160℃、密度:0.9g/cm3)
PE:エチレン・1-オクテン共重合体(MFR:3.0g/10分、融点:68℃、密度:0.875g/cm3)
SEBS-1:スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(MFR:4.5g/10分、スチレン含有量:12wt%、密度:0.89g/cm3)
【0058】
下記表1に示す樹脂ならびに消臭剤および抗菌剤の配合で、シール層および基材層からなる二軸延伸ポリプロピレン系フィルムを以下の手順で製造した。
これら各層を構成する樹脂をそれぞれの押出機に投入し、基材層/シール層の順に積層されるようにして、温度230℃の多層Tダイスから共押出し、25℃の冷却ロールで冷却、固化して原反シートを得た。次いで当該シートを130℃に加熱し、MD方向に4.6倍ロール延伸した後、テンターにて設定温度165℃で予熱し、設定温度165℃でTD方向に10倍延伸した後、設定温度165℃でアニールし、テンターを出た後、基材層側を6.6×102J/m2で、表層側を4.8×102J/m2でコロナ放電処理を施した後、巻き取り機で巻き取って、フィルムの総厚みが30μm(シール層:2μm、基材層28μm)の二軸延伸ポリプロピレン系フィルム(本発明フィルム等)を得た。
なお、製造された当該フィルムは、シール層および基材層を貫く貫通孔を有しなかった。
【0059】
[実施例1および2、比較例1] 包装体の製造
上記で得られた本発明フィルム等を用いて、本発明包装体(実施例1、2)および比較包装体(比較例1)を以下の手順で製造した。
縦ピロー包装機(大生機械社製)にセットし製袋を行った。まず、フォーマーにて、シール層を内面とした筒状(幅200mm)のフィルムにし、フィルムの端部を流れ方向(MD方向)に沿って130℃の温度でヒートシールし、続いてそのヒートシールされた筒状フィルムの下端部を流れ方向に対し直交する方向(TD方向)に210℃の温度でヒートシールし、底の部分と背の部分がヒートシールされた上部分が開いている筒状フィルム(袋)を形成した。
次いで、一定量に計量された内容物(カットキャベツ、130g)を上記で得られた筒状のフィルム(袋)内に投入した。その後、フィルムの流れ方向(MD方向)に対し直交する方向(TD方向)にピッチ250mmの間隔で、210℃の温度でヒートシールをし、そしてヒートシール部分の中央部分を横方向にカットした。
【0060】
以上の工程により内容物が充填された袋は、上側のシール、および底部のシールがされ、本発明包装体および比較包装体(本発明包装体等)を成形した。当該製造におけるヒートシールのシール幅は10mmである。製造された包装体の袋サイズは、流れ方向(MD方向)に250mm×幅方向(TD方向)に200mmである。
なお、比較例1については、1袋に対してφ60μmの貫通孔を1個施した。実施例1および2については、貫通孔を有しない。
【0061】
得られた本発明包装体等を用いて、色差測定を次の通り行った。
【0062】
<色差測定試験>
内容物としてカットキャベツを封入した本発明包装体等を、10℃に設定した冷蔵庫中で7日間保存し、サンプルとした。また、袋に包まないカットキャベツのサンプルも比較例2として用意した。標本数は、各サンプルにつき10個(N=10)である。なお、カットキャベツは市販されているもの(内容量130g)をランダムに購入し、製造日から2日目のものを開封して上記各包装体等に用いている。
上記各サンプルにつき、コピー用紙(規格:A4 寸法:210mm×297mm、坪量:64g/m2、紙厚:88μm、ISO白色度:82%、植林木パルプ配合ECF(無塩素漂白)、生産:日本(国産)、メーカー:富士ゼロックス、ブランド:V-Paper、品番:GAAA5009)を5枚重ねたものの上に直径90mmのシャーレを置き、そのシャーレが満杯になるように当該サンプルのカットキャベツを入れた。その量は、重量にして30g~40g程度である。その際、葉も芯もランダムに選択した。
色差測定には色差計(コニカミノルタジャパン株式会社:分光測色計CM-600d)を用い、測定ポイントをシャーレの中心部分のキャベツにあてて測定を行った。測定対象として包装後1日目(L*1、a*1、b*1)と7日目( L*7、a*7、b*7)のサンプルで測定を行い(N=10)、平均値を測定した。その平均値より、下記CIE1976L*a*b*色差式を用いて色差(ΔE*ab)を計算し、比較した。結果を表1に示す。
【0063】
【0064】
一般に、ΔE*abの値が3.0を大きく超えると、はっきりと目視で色の変化を識別することができる。この値を超えれば、色違いによるクレームにつながる可能性が高くなるといえる。
【0065】
【0066】
上記結果(表1)の通り、本発明包装体(実施例)は、比較包装体等(比較例)と比べて色差が小さく、内容物の色の悪化の抑制効果が優れている。また、定量的にも、いずれの実施例も色差の値は3以下であり、実用上十分な色鮮度保持効果を有している。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明フィルムないし本発明袋は、例えば、青果物、特にカットキャベツ等のカット野菜の色の悪化を抑制することができ、その色鮮度を長く保持することができる。したがって、それらまたは青果物が封入された本発明包装体は、例えば、青果物市場における流通販売において有用である。