(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】建設作業支援システムおよび建設作業支援方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/02 20060101AFI20240412BHJP
E04G 15/06 20060101ALI20240412BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20240412BHJP
【FI】
E04G21/02 103Z
E04G15/06 A ESW
G06Q50/08
(21)【出願番号】P 2020057535
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】久保田 善経
(72)【発明者】
【氏名】篠田 二郎
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/066614(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/051080(WO,A1)
【文献】特開2019-200452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G15/06
21/00-21/10
G06F30/00-30/398
111/00-119/22
G06Q10/00-10/10
30/00-30/08
50/00-50/20
50/26-99/00
G16Z99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設現場における作業進捗を管理する建設作業支援システムであって、
前記建設現場の3次元点群データを取得する点群データ取得部と、
前記建設現場のコンクリート打設面におけるスリーブの形成位置情報、およびそれぞれの前記スリーブの形成に用いられるスリーブ材の寸法情報を少なくとも含むスリーブ情報を取得するスリーブ情報取得部と、
前記3次元点群データと前記形成位置情報とに基づいて、コンクリート打設前の前記スリーブの形成位置に、前記スリーブ材が配置されているか否かを判断するとともに、前記3次元点群データと前記寸法情報とに基づいて、前記スリーブ材の寸法が適合しているか否かを判断する判断部と、
前記判断部の判断結果を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする建設作業支援システム。
【請求項2】
前記判断部は、前記スリーブが形成されるコンクリート打設面に、コンクリート打設用の型枠の一方の側板と前記スリーブ材とが配置されている状態における前記3次元点群データに基づいて前記スリーブ材が配置されているか否かを判断する、
ことを特徴とする請求項1記載の建設作業支援システム。
【請求項3】
前記スリーブ情報取得部は、前記建設現場の建設対象物の3次元設計データから前記スリーブ情報を抽出する、
ことを特徴とする請求項1または2記載の建設作業支援システム。
【請求項4】
レーザスキャナを搭載し、前記建設現場を自動巡回する自動巡回移動体をさらに備えることを特徴とする請求項1~3
のいずれか1項記載の建設作業支援システム。
【請求項5】
建設現場における作業進捗を管理する建設作業支援方法であって、
前記建設現場の3次元点群データを取得する点群データ取得工程と、
前記建設現場のコンクリート打設面におけるスリーブの形成位置情報、およびそれぞれの前記スリーブの形成に用いられるスリーブ材の寸法情報を少なくとも含むスリーブ情報を取得するスリーブ情報取得工程と、
前記3次元点群データと前記形成位置情報とに基づいて、コンクリート打設前の前記スリーブの形成位置に、前記スリーブ材が配置されているか否かを判断するとともに、前記3次元点群データと前記寸法情報とに基づいて、前記スリーブ材の寸法が適合しているか否かを判断する判断工程と、
前記判断工程での判断結果を出力する出力工程と、
を含んだことを特徴とする建設作業支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設現場における作業を支援する建設作業支援システムおよび建設作業支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、打設造形されるコンクリート壁に配管等に用いる貫通孔を形成する場合には、スリーブ材(空洞管)と呼ばれる円筒部材を配置した状態で、当該スリーブ材の外周囲にコンクリートを打設し、コンクリートが硬まって造形されるコンクリート壁からスリーブ材を除去することで貫通孔を形成している。
例えば、下記特許文献1は、コンクリート壁からの取り外し作業の簡単化を図ることができるスリーブ材(スリーブ管)に関する発明である。このスリーブ管は、打設造形されるコンクリート壁に貫通孔を形成する際に用いられる合成樹脂製のスリーブ管本体を備える。スリーブ管本体のスリットを、スリーブ管本体の軸線方向全域に亘る鋼製のフラットバーの半径方向外方側端部がスリーブ管本体を拡径させるように圧入された状態で閉止する。スリーブ管本体の周壁内部に、その軸線方向の両端部において先端がスリットに向かうように起立した状態で倒伏可能に設置された支持脚を設ける。そして、スリットを閉止した状態のフラットバーを、各支持脚の先端に凹設した凹部に半径方向内方側端部を挿通した状態で保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンクリートの打設作業後に必要箇所にスリーブが形成されていなかったことが分かった場合、コンクリート内部には既に鉄筋が通っているため、事後的にスリーブを空けることは構造上不安定になり現実的ではない。そのため、スリーブ形成の事前確認作業は非常に重要であり、支援する仕組みが求められる。
特に、建設現場における建設対象物が大型である場合などは、建設対象物全体で多くのスリーブを形成する必要があり、確実に作業を行う必要がある。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、設計通りの位置にスリーブが形成されるかを、コンクリート打設前に確実に確認することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明にかかる建設作業支援システムは、建設現場における作業進捗を管理する建設作業支援システムであって、前記建設現場の3次元点群データを取得する点群データ取得部と、前記建設現場のコンクリート打設面におけるスリーブの形成位置情報を少なくとも含むスリーブ情報を取得するスリーブ情報取得部と、前記3次元点群データと前記形成位置情報とに基づいて、コンクリート打設前の前記スリーブの形成位置に、当該スリーブを形成するためのスリーブ材が配置されているか否かを判断する判断部と、前記判断部の判断結果を出力する出力部と、を備えることを特徴とする。
また、本発明にかかる建設作業支援方法は、建設現場における作業進捗を管理する建設作業支援方法であって、前記建設現場の3次元点群データを取得する点群データ取得工程と、前記建設現場のコンクリート打設面におけるスリーブの形成位置情報を少なくとも含むスリーブ情報を取得するスリーブ情報取得工程と、前記3次元点群データと前記形成位置情報とに基づいて、コンクリート打設前の前記スリーブの形成位置に、当該スリーブを形成するためのスリーブ材が配置されているか否かを判断する判断工程と、前記判断工程での判断結果を出力する出力工程と、を含んだことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、設計通りの位置にスリーブが形成されるかを、コンクリート打設前に確実に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態にかかる建設作業支援システムの概要構成を示す図である。
【
図2】建設作業支援システムの機能的構成を示すブロック図である。
【
図3】建設作業支援システムにおける作業支援のフローを示す図である。
【
図4】スリーブが形成されたコンクリート壁を模式的に示す図である。
【
図5】コンクリート壁へのスリーブの形成方法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる建設作業支援システムおよび建設作業支援方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
まず、本発明にかかる建設作業支援システムおよび建設作業支援方法における支援対象となるスリーブの形成作業について説明する。
図4は、スリーブが形成されたコンクリート壁を模式的に示す図である。
図4に示すコンクリート壁40は、床面(または地面)から垂直に立設する。コンクリート壁40には、その前面402から後面404を貫通するスリーブ410が設けられている。スリーブ410の断面形状(前面402または後面404に露出する形状)は正円形であり、その直径は前面402から後面404にかけて変化しない。
なお、
図4に示すスリーブ410の形状は一例であり、例えば断面形状が正円形以外であったり、壁の厚さ方向で直径(断面積)が変化する形状であってもよい。
【0009】
図5は、コンクリート壁へのスリーブの形成方法を模式的に示す図である。
まず、
図5Aに示すように、コンクリート壁40の形成予定箇所に鉄筋(横筋504、縦筋506)を配置する。一般に、コンクリート打設時には、床面から垂直に立設する縦筋506と、縦筋506に対して垂直に交差する横筋504がそれぞれ複数配置される。これらの鉄筋は、スリーブ410の形成位置(後述するスリーブ材510の配置位置)を避けて設置される。
また、コンクリート壁40の一方の面(本図の例では後面404)の形成予定箇所に沿って、型枠用の板材502を配置する。
また、スリーブ410の形成位置には、スリーブ410の形状に合わせたスリーブ材510が、鉄筋で支持され配置される。スリーブ材510は、合成樹脂等で形成された円筒状の部材である。スリーブ材510は、その外径がスリーブ410の内径と一致するものが選択され、またコンクリート壁の厚さに合わせて長さが調整される。
【0010】
図5Aに示す状態では、スリーブ410の形成位置にスリーブ材510が適切に配置されているかを確認することができる。以下、
図5Aのように、スリーブ410が形成されるコンクリート打設面に、コンクリート打設用の型枠の一方の側板(板材502)とスリーブ材510とが配置されている状態を、「スリーブ材配置完了状態」という。
【0011】
次に、コンクリート壁40の他方の面(本図の例では前面402)の形成予定箇所に沿って、更に型枠用の板材512を配置する。また、図示は省略するが、前面402と後面404を接続するコンクリート壁40の側面406(
図4参照)方向にも板材を配置する。
そして、板材502と512との間に形成された空間520に生コンクリートを流し込み、所定時間放置して硬化させる。コンクリートが十分硬化した後、板材502,512およびスリーブ材510を除去して、コンクリート壁40が完成する。
【0012】
つづいて、建設作業支援システム10について説明する。
図1は、実施の形態にかかる建設作業支援システムの概要構成を示す図である。
建設作業支援システム10は、建設現場における作業進捗を管理する。建設現場とは、ビルやマンション、倉庫などの建築建設現場であってもよいし、ダムや橋、トンネルなどの土木建設現場であってもよいが、少なくとも1か所はスリーブが形成されたコンクリート打設面が含まれているものとする。
建設作業支援システム10は、作業支援装置12、レーザスキャナ14、設計データ作成装置16を備える。
【0013】
作業支援装置12は、CPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成されるコンピュータである。
作業支援装置12は、例えば建設現場の管理棟など建設現場の近傍に設置されており、建設現場の作業員や作業支援者等に利用される。
図1では、作業支援装置12をノート型パソコンとして図示しているが、デスクトップ型パソコンやタブレット端末等であってもよい。
また、作業支援装置12は、建設現場における建設作業を行う事業者の社屋など、建設現場から離れた場所に配置されていてもよい。この場合、上記事業者の従業員等が建設現場における作業進捗を遠隔地から確認することができる。
【0014】
レーザスキャナ14(3次元レーザースキャナ)は、計測対象物にレーザを放射状に照射し、レーザの反射時間から求められる計測対象までの距離と照射角度に基づいて計測対象物の表面形状の3次元座標を取得する。レーザスキャナ14の性能にもよるが、毎秒数万点程度の速度で非接触により計測し、高密度で面的な点群データを得ることができる。
また、レーザスキャナ14に内蔵されたカメラによって計測箇所で画像を撮影し、画像の色やレーザの反射強度(計測対象の材質や色によって変化するレーザの反射具合)に応じて点群データを着色することもできる。
また、1か所からでは計測ができない計測対象の裏側や広範囲なエリアでも、複数のスキャンデータ間でターゲットを共通点にして合成したり、座標付けをしたりすることができる。
【0015】
なお、本実施の形態では、レーザスキャナ14によるスキャンによって3次元点群データを取得するものとするが、これに限らず、例えば被写体をさまざまなアングルから被写体を撮影した画像から3次元モデルを作成するフォトグラメトリ技術を用いて3次元点群データを得てもよい。
【0016】
本実施の形態では、例えば建設現場の作業員がレーザスキャナ14を所持して建設現場内を巡回し、所定の地点でスキャン作業を行い、建設現場各部の点群データを取得する。なお、
図1ではレーザスキャナ14を三脚Tに載置した状態を図示している。
このように作業員により巡回を行うのは、本実施の形態では、必要な3次元点群データを得られるタイミングが限定されているためである。すなわち、
図5Aに示すようなスリーブ材配置完了状態まで作業が進捗し、かつ他方の側板が設置される前(
図5Bのような状態となる前)に、レーザスキャナ14により3次元点群データを取得することが求められる。
【0017】
また、例えばレーザスキャナ14を搭載した自動巡回移動体18(18A,18B)により建設現場を巡回し、指定された箇所の点群データを取得するようにしてもよい。自動巡回移動体18は、例えば作業員からの指示により、建設現場内に設置されたビーコンやGPSなどにより現在位置を確認しながら、所定のスキャン地点においてレーザスキャナ14で周囲をスキャンし、建設現場内の点群データを取得する。
【0018】
図1では、自動巡回移動体18の一例としてドローン18Aと台車ロボット18Bとを図示しているが、自律的に移動できる機器であれば従来公知の様々な機器を自動巡回移動体18として利用することができる。例えばスリーブが高い位置に形成される場合にはドローン18Aを用い、その他の現場では台車ロボット18Bを用いる、など使い分けをしてもよい。
【0019】
設計データ作成装置16は、作業支援装置12と同様に、CPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成されるコンピュータである。
図1では、設計データ作成装置16をデスクトップ型パソコンとして図示しているが、ノート型パソコン等であってもよい。
【0020】
設計データ作成装置16は、例えば建設工事を請け負う事業者等に設置されており、建設現場における建設対象物の設計データの作成に利用される。より詳細には、設計データ作成装置16には設計用アプリケーション160がインストールされており、設計者の操作により建築対象物の設計図または施工図としての3次元設計データを作成する。
【0021】
本実施の形態では、3次元設計データとして、BIM(Building Information Modeling)モデルを用いる。
BIMでは、コンピュータ上に作成した3次元の建物のデジタルモデルに、コストや仕上げ、管理情報などの属性データを追加した建築物のデータベースを建設作業の各フェーズで活用する。BIMモデルは、建設対象物を構成する各部材(パーツ)の部材モデルを含んでいる。部材モデルには、部材の寸法(幅や奥行き、高さ等)に加え、素材や組み立てる工程(時間)なども含めることができる。
なお、3次元設計データはBIMモデルに限らず、同等の機能を実現できればどのような形式のデータであってもよい。
【0022】
本実施の形態では、3次元設計データ中に、建設現場のコンクリート打設面におけるスリーブの形成位置を示す位置情報やそれぞれのスリーブの形成に用いられるスリーブ材の寸法情報(以下「スリーブ情報」という)が含まれている。
より詳細には、設計者が建築対象物のBIMモデルを作成する際、スリーブの形成位置やスリーブの寸法(直径等)、当該スリーブを形成するためのスリーブ材の寸法(直径や厚さ、長さ等)を含めるようにする。
なお、この他例えばスリーブを形成するコンクリート打設面内に埋め込む鉄筋の位置や本数、寸法(太さ)、コンクリート打設時に使用する型枠の寸法などをBIMモデルに含めるようにしてもよい。
【0023】
図2は、建設作業支援システムの機能的構成を示すブロック図である。
作業支援装置12は、上記CPUが上記制御プログラムを実行することにより、点群データ取得部122、スリーブ情報取得部124、判断部126、出力部128として機能する。
また、作業支援装置12の記憶領域(ストレージ)であるEEPROMには、スリーブ情報を含むBIMモデルが記憶されている。すなわち、作業支援装置12の記憶領域は、BIMモデル記憶部120およびスリーブ情報記憶部120Aとして機能する。
なお、BIMモデルおよびスリーブ情報の記憶場所は、作業支援装置12内に限らず、作業支援装置12がアクセス可能な外部ストレージ(例えば設計データ作成装置16内のストレージ)等であってもよい。
【0024】
BIMモデル記憶部120は、建設現場における建設対象物の3次元設計データであるBIMモデルを記憶する。上述のように、コンクリート打設面におけるスリーブの形成位置情報やそれぞれの前記スリーブの形成に用いられるスリーブ材の寸法情報を含んだスリーブ情報を含んでいる。よって、BIMモデル記憶部120は、スリーブ情報記憶部120Aを兼ねている。
【0025】
点群データ取得部122は、レーザスキャナ14により取得された建設現場の3次元点群データを取得する。本実施の形態では、点群データ取得部122は、作業員の巡回中(または自動巡回移動体18の巡回中)にレーザスキャナ14が取得した3次元点群データを、レーザスキャナ14のメモリから読み出す、またはレーザスキャナ14から送信させることにより、建設現場の3次元点群データを取得する。取得した3次元点群データは、作業支援装置12の記憶領域に記憶され、以下に説明する各種処理に利用される。
【0026】
スリーブ情報取得部124は、上述したスリーブ情報を取得する。本実施の形態では、スリーブ情報取得部124は、建設現場の建設対象物の3次元設計データであるBIMモデルからスリーブ情報を抽出する。すなわち、スリーブ情報取得部124は、スリーブ情報記憶部120Aからスリーブ情報を読み出す。なお、スリーブ情報が外部ストレージに記憶されている場合、スリーブ情報取得部124は、外部ストレージからスリーブ情報を読み出す。
【0027】
判断部126は、3次元点群データとスリーブ情報に含まれるスリーブの形成位置情報とに基づいて、コンクリート打設前のスリーブの形成位置に、当該スリーブを形成するためのスリーブ材が配置されているか否かを判断する。この時、判断部126は、スリーブ材の設置位置の他、スリーブ材の寸法が適合しているかを判断してもよい。
【0028】
判断部126は、スリーブが形成されるコンクリート打設面に、コンクリート打設用の型枠の一方の側板とスリーブ材とが配置されている状態、すなわち
図5Aに示すスリーブ材配置完了状態における3次元点群データに基づいてスリーブ材が配置されているか否かを判断する。これは上述したように、型枠の両方の側板が配置されてしまうと、スリーブ材が隠れて正しく配置されているか判断できなくなるためである(
図5B参照)。
【0029】
スリーブ材配置完了状態における3次元点群データを取得するには、例えば所定のコンクリート打設面での作業がスリーブ材配置完了状態まで進捗した際に、コンクリート打設準備を行う作業員(または当該作業員から連絡を受けたスキャン担当者)がレーザスキャナ14を用いて当該コンクリート打設面のスキャンを行う、または自動巡回移動体18を当該コンクリート打設面に向かわせスキャンを行わせる、などが考えられる。
【0030】
出力部128は、判断部126の判断結果を、建設現場での作業に従事する作業員や作業支援者に提示する。判断部126の判断結果とは、例えば「全てのスリーブ材が設計通りに配置されている」、「必要な箇所にスリーブ材が配置されていない」、「スリーブ材の寸法が間違っている」などである。
出力部128は、例えば作業支援装置12のディスプレイ12A(
図1参照)上に判断部126の判断結果を表示出力する。また、例えば個々の作業員が携帯する携帯情報端末に判断結果を送信するなど、出力部128による判断結果の出力は、従来公知の様々な方法を採ることができる。
特に設計通りにスリーブ材が配置されていない場合、出力部128は、作業者等が迅速に対応できるように、例えばディスプレイ12Aに3次元点群データまたはBIMモデルを表示し、問題がある箇所にマーク等を表示してもよい。
出力部128により出力された判断結果を確認した作業員は、必要があればスリーブ材の移動や交換、追加等の作業を行った上で、次の作業ステップ(他方の板材の設置や生コンクリートの流し込み等)を行う。
【0031】
図3は、建設作業支援システムにおける作業支援のフローを示す図である。
設計者は、設計データ作成装置16を用いて、スリーブ情報を含んだ今回の建設対象物のBIMモデル(3次元設計データ)を作成する(ステップS300)。スリーブ情報は、コンクリート打設面におけるスリーブ形成位置や寸法、使用するスリーブ材の寸法等を含んでいる。
作成されたBIMモデルは、建設対象物の建設現場に設置される作業支援装置12に記憶される(ステップS302)。スリーブ情報取得部124は、スリーブの設置位置や寸法、スリーブの形成に用いるスリーブ材の寸法などを含むスリーブ情報をBIMモデルから適宜抽出する(スリーブ情報取得工程)。
【0032】
建設作業が始まり、所定のコンクリート打設面でスリーブ材配置完了状態まで作業が進捗すると、作業員等がレーザスキャナ14で当該コンクリート打設面をスキャンし、3次元点群データを取得する(ステップS304)。上述のように、作業員がコンクリート打設面に向かうのではなく、レーザスキャナ14を搭載した自動巡回移動体18が向かってもよい。
【0033】
つぎに、作業支援装置12(作業支援装置)の点群データ取得部122により、レーザスキャナ14で取得した点群データを読み込み、今回スキャン時の点群データ(以下「今回スキャンデータ」という)や画像データを取得する(ステップS306)。ステップS304およびS306が点群データ取得工程に対応する。
【0034】
取得された今回スキャンデータは、必要に応じてノイズ除去や座標軸の統一などの前処理が行われる(ステップS308)。すなわち、この後BIMモデルと比較するため、点群データから仮設の手すりや足場、仮置き資材など不要な部分を削除し、両者の座標系(原点、スケール、方向)を一致させる。この工程は、作業員が手動で行ってもよいし、作業支援装置12のアプリケーションで自動的に行ってもよい。
【0035】
判断部126は、今回スキャンデータから、コンクリート打設面におけるスリーブ材の設置位置や形状を検出する(ステップS310)。そして、スリーブ情報取得部124によりBIMモデルから抽出されたスリーブ情報と比較し、スリーブ材が適切に配置されているか否かを判断する(ステップS312:判断工程)。
そして、出力部128により、判断部126による判断結果を出力して(ステップS314:出力工程)、本フローチャートの処理を終了する。
【0036】
以上説明したように、実施の形態にかかる建設作業支援システム10は、レーザスキャナ14により建設現場の3次元点群データを取得し、コンクリート打設面におけるスリーブの形成位置情報を含むスリーブ情報と比較して、コンクリート打設前のスリーブの形成位置に、当該スリーブを形成するためのスリーブ材が配置されているか否かを判断し、その結果を出力する。これにより、作業員が目視等で確認するよりも確実にスリーブ材が適切に設置されているかを確認することができ、スリーブ材の設置忘れや寸法間違い、設置位置の間違いを防止し、建設現場における作業効率を向上させることができる。
また、実施の形態にかかる建設作業支援システム10は、3次元点群データの取得を、スリーブが形成されるコンクリート打設面に、コンクリート打設用の型枠の一方の側板とスリーブ材とが配置されている状態で行うので、適切なスリーブ材が適切な位置に配置されているかを確実に確認する上で有利となる。
【符号の説明】
【0037】
10 建設作業支援システム
12 作業支援装置
120 モデル記憶部
120A スリーブ情報記憶部
122 点群データ取得部
124 スリーブ情報取得部
126 判断部
128 出力部
14 レーザスキャナ
16 設計データ作成装置
18 自動巡回移動体