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特許7471128ポリオレフィンワックス微粒子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】ポリオレフィンワックス微粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20240412BHJP
   C08F 210/06 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C08J3/12 A CES
C08F210/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020065227
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021161287
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】505130112
【氏名又は名称】株式会社プライムポリマー
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣田 成克
(72)【発明者】
【氏名】平野 一之介
(72)【発明者】
【氏名】田中 幸昌
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-201436(JP,A)
【文献】特開2006-342163(JP,A)
【文献】特開平11-071545(JP,A)
【文献】特開平03-084009(JP,A)
【文献】特開平06-102698(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0009542(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107402500(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C19/00-19/44
C08F6/00-246/00
301/00
C08J3/00-3/28
99/00
C10M101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径(D50)が3~50μmのプロピレン・α-オレフィン共重合体からなるポリオレフィンワックス微粒子の製造方法であって、
平均粒径(D50)が100~500μmであり、プロピレンに起因する構造単位の割合が90~99mol%であるプロピレン・α-オレフィン共重合体からなるポリオレフィンワックス粒子を、ジェットミルを用い、分級回転速度が2000~11500rpmである条件で粉砕することを特徴とするポリオレフィンワックス微粒子の製造方法。
【請求項2】
平均粒径(D50)が100~500μmのプロピレン・α-オレフィン共重合体からなるポリオレフィンワックス粒子が、プロピレン・エチレン共重合体を含む請求項1に記載のポリオレフィンワックス微粒子の製造方法。
【請求項3】
平均粒径(D50)が100~500μmのプロピレン・α-オレフィン共重合体からなるポリオレフィンワックス粒子を構成するポリオレフィンワックスのGPCで測定した数平均分子量(Mn)が、100013000である請求項1又は2に記載のポリオレフィンワックス微粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉砕機を用いてポリオレフィンワックス微粒子を効率的に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス等の微粒子状のポリオレフィンワックスは、例えば、樹脂添加剤、成形助剤、顔料分散剤、滑剤等の広範な用途に使用されている。また、ポリオレフィンワックスを構成する低分子量ポリオレフィンを合成する為の方法として、様々な方法も提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
ポリオレフィンワックス微粒子の製造方法は、原材料を機械的に微細化するブレークダウン法と、化学反応(化学合成等)により微粒子を生成するビルドアップ法とに大別される。ビルドアップ法は、製造コストが比較的高い。一方、ブレークダウン法はビルドアップ法よりも製造コストが低い方法として一般的に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-174571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、粉砕機を用いて原材料を微細化することによりポリオレフィンワックス微粒子を製造する場合、その製造効率についてさらなる改善の余地があると考えた。すなわち本発明の目的は、粉砕機を用いてポリオレフィンワックス微粒子を効率的に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の粒径を有し且つ特定の種類のオレフィン系重合体からなるポリオレフィンワックスを粉砕機により粉砕することが非常に有効であることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
【0007】
[1]平均粒径(D50)が3~50μmのプロピレン・α-オレフィン共重合体からなるポリオレフィンワックス微粒子の製造方法であって、
平均粒径(D50)が100~500μmのプロピレン・α-オレフィン共重合体からなるポリオレフィンワックス粒子を粉砕機により粉砕することを特徴とするポリオレフィンワックス微粒子の製造方法。
【0008】
[2]平均粒径(D50)が100~500μmのプロピレン・α-オレフィン共重合体からなるポリオレフィンワックス粒子が、プロピレン・エチレン共重合体を含む請求項1に記載のポリオレフィンワックス微粒子の製造方法。
【0009】
[3]平均粒径(D50)が100~500μmのプロピレン・α-オレフィン共重合体からなるポリオレフィンワックス粒子を構成するポリオレフィンワックスのGPCで測定した数平均分子量(Mn)が、1000~13000、好ましくは1000~10000、より好ましくは2000~10000である[1]又は[2]に記載のポリオレフィンワックス微粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、平均粒径(D50)が100~500μmのプロピレン・α-オレフィン共重合体からなるポリオレフィンワックス粒子を粉砕機により粉砕することにより、驚くべきことに、単位時間当たりの処理能力が格段に向上する。すなわち本発明によれば、粉砕機を用いてポリオレフィンワックス微粒子を効率的に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<原材料としてのポリオレフィンワックス粒子>
本発明においては、原材料としての粉砕前のポリオレフィンワックス粒子、すなわち粉砕機により粉砕する前のポリオレフィンワックス粒子として、平均粒径(D50)が100~500μmのプロピレン・α-オレフィン共重合体からなるポリオレフィンワックス粒子を用いる。
【0012】
なお、本発明において「プロピレン・α-オレフィン共重合体からなる」とは、プロピレン・α-オレフィン共重合体を主成分とすることを意味する。したがって、ポリオレフィンワックス粒子は、従来のポリオレフィンワックス粒子に添加可能なことが知られている公知の添加剤を含んでいても構わない。また、本発明の効果を阻害しない範囲内において、少量の他の樹脂成分を含んでいても構わない。
【0013】
プロピレン・α-オレフィン共重合体は、プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体である。プロピレン・α-オレフィン共重合体は、ブロック共重合体でもあっても良いし、ランダム共重合体であっても良い。特に、ランダム共重合体が好ましい。プロピレン・α-オレフィン共重合体に用いるα-オレフィンは、好ましくはエチレン及び炭素原子数4~8のα-オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンであり、より好ましくはエチレン、1-ブテン、1-へキセン及び1-オクテンからなる群より選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンであり、特に好ましくはエチレンである。すなわち、ポリオレフィンワックス粒子は、プロピレン・エチレン共重合体を含むことが特に好ましい。プロピレン・α-オレフィン共重合体におけるプロピレンに起因する構造単位の割合は、好ましくは90~99mol、より好ましくは95~98molである。なお、プロピレン・α-オレフィン共重合体は、極性基を含まないことが好ましい。
【0014】
ポリオレフィンワックスのGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定した数平均分子量(Mn)は、好ましくは1000~13000、より好ましくは1000~10000、さらに好ましくは2000~10000、特に好ましくは1500~5000である。
【0015】
原材料としてのポリオレフィンワックス粒子の平均粒径(D50)は100~500μmであり、好ましくは150~300μmである。この平均粒径(D50)は、レーザー回析法により得た粒度分布曲線における体積累計50%のメディアン径である。
【0016】
<ポリオレフィンワックス微粒子の製造方法>
本発明においては、以上説明した平均粒径(D50)が100~500μmポリオレフィンワックス粒子を粉砕機により粉砕する。このような微細化工程により、平均粒径(D50)が3~50μmのプロピレン・α-オレフィン共重合体からなるポリオレフィンワックス微粒子を効率良く製造できる。具体的には、後述する実施例に記載のとおり、粉砕処理能力が著しく向上する。
【0017】
本発明に用いる粉砕機の種類は特に限定されず、ワックス粒子を粉砕可能なことが知られている公知の粉砕機を使用できる。粉砕機の具体例としては、ジェットミル、ハンマーミル、ピンミルが挙げられる。中でも、ジェットミルが好ましい。
【0018】
粉砕機としてジェットミルを用いる場合は、例えば分級ロータの回転速度(分級回転速度)によって、得られるポリオレフィンワックス微粒子の平均粒径(D50)を調整できる。この分級回転速度は、通常2000~11500rpmである。ジェットミルのノズル径及び本数は特に制限されないが、ノズル径は通常3~5mm、ノズル本数は通常3~4本である。
【0019】
以上説明した本発明の製造方法により得られるポリオレフィンワックス微粒子の平均粒径(D50)は3~50μmである。このポリオレフィンワックス微粒子は、先に説明した原材料としてのポリオレフィンワックス粒子と同じ樹脂、すなわちプロピレン・α-オレフィン共重合体からなる。
【実施例
【0020】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0021】
実施例及び比較例において用いたポリオレフィンワックス粒子の物性は、以下の方法により測定した。
【0022】
(1)数平均分子量(Mn)
ゲル浸透クロマトグラフHLC-8321 GPC/HT型(東ソー社製)を使用し、カラムにはTSKgelカラム(東ソー社製)×2(それぞれ7.5mmI.D.×30cm,東ソー社)を使用し、移動相にはo-ジクロロベンゼン(和光純薬 特級試薬)を使用し、カラム温度140℃、移動相流速1.0mL/minの条件下で測定を実施し、検出には示差屈折計を用い、分子量校正にはポリスチレンを用いて、数平均分子量(Mn)を測定した。
【0023】
(2)平均粒径(D50)
レーザー回析法を用い、循環速度60%、装置内蔵超音波ホモジナイザー1分、出力40Wの条件で、平均粒径(D50)を測定した。
【0024】
<実施例1>
まず、平均粒径(D50)が187μmのプロピレン・エチレン共重合体からなるポリオレフィンワックス粒子(三井化学社製、商品名ハイワックスNP055)を用意した。このポリオレフィンワックス粒子(NP055)の詳細は以下の通りである。
[ポリオレフィンワックス粒子(NP055)]
プロピレン・エチレン共重合体
平均粒径(D50):187μm
数平均分子量(Mn):3880
プロピレンから導かれる構成単位の含量:97mol%、
エチレンから導かれる構成単位の含量:3mol%
【0025】
そして、粉砕機としてジェットミルを用い、ノズル径φ4mm、ノズル本数3、分級回転速度9200rpmの条件で、ポリオレフィンワックス粒子(NP055)を粉砕した(目標粒径5μm)。
【0026】
その結果、平均粒径(D50)が7.7μmのプロピレン・エチレン共重合体からなるポリオレフィンワックス微粒子が得られた。処理能力は6.6kg/hであった。
【0027】
<実施例2>
分級回転速度を4200rpmに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィンワックス粒子(NP055)を粉砕した(目標粒径10μm)。その結果、平均粒径(D50)が12.9μmのポリオレフィンワックス微粒子が得られた。処理能力は16.4kg/hであった。
【0028】
<実施例3>
分級回転速度を2000rpmに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィンワックス粒子(NP055)を粉砕した(目標粒径30μm)。その結果、平均粒径(D50)が22.2μmのポリオレフィンワックス微粒子が得られた。処理能力は47.5kg/hであった。
【0029】
以上の実施例1~3の結果をまとめて表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
<比較例1>
まず、平均粒径(D50)が267μmのホモポリプロピレンからなるポリオレフィンワックス粒子(三井化学社製、商品名ハイワックスNP500)を用意した。このポリオレフィンワックス粒子(NP500)の詳細は以下の通りである。
[ポリオレフィンワックス粒子(NP500)]
ホモポリプロピレン
平均粒径(D50):267μm
数平均分子量(Mn):10800
【0032】
そして、粉砕機として実施例1と同じジェットミルを用い、ノズル径φ4mm、ノズル本数3、分級回転速度11500rpmの条件で、ポリオレフィンワックス粒子(NP500)を粉砕した(目標粒径5μm)。
【0033】
その結果、平均粒径(D50)が5.4μmのポリプロピレンからなるポリオレフィンワックス微粒子が得られた。処理能力は1.3kg/hであった。
【0034】
<比較例2>
分級回転速度を6000rpmに変更したこと以外は、比較例1と同様にしてポリオレフィンワックス粒子(NP500)を粉砕した(目標粒径10μm)。その結果、平均粒径(D50)が10.4μmのポリオレフィンワックス微粒子が得られた。処理能力は3.1kg/hであった。
【0035】
<比較例3>
分級回転速度を2000rpmに変更したこと以外は、比較例1と同様にしてポリオレフィンワックス粒子(NP500)を粉砕した(目標粒径30μm)。その結果、平均粒径(D50)が36.7μmのポリオレフィンワックス微粒子が得られた。処理能力は19kg/hであった。
【0036】
以上の比較例1~3の結果をまとめて表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
<比較例4>
まず、平均粒径(D50)が224μmの低密度ポリエチレンからなるポリオレフィンワックス粒子(三井化学社製、商品名ハイワックスNL200)を用意した。このポリオレフィンワックス粒子(NL200)の詳細は以下の通りである。
[ポリオレフィンワックス粒子(NL200)]
低密度ポリエチレン
平均粒径(D50):224μm
数平均分子量(Mn):3530
【0039】
そして、粉砕機として実施例1と同じジェットミルを用い、ノズル径φ4mm、ノズル本数3、分級回転速度11500rpmの条件で、ポリオレフィンワックス粒子(NL200)を粉砕した(目標粒径5μm)。
【0040】
その結果、一時的に平均粒径(D50)が5.8μmの低密度ポリエチレンからなるポリオレフィンワックス微粒子が得られたが、粉砕しづらく連続生産(連続運転)はできなかった。
【0041】
<比較例5>
分級回転速度を7000rpmに変更したこと以外は、比較例4と同様にしてポリオレフィンワックス粒子(NL200)を粉砕した(目標粒径10μm)。その結果、一時的に平均粒径(D50)が15.6μmのポリオレフィンワックス微粒子が得られたが、粉砕しづらく連続生産(連続運転)はできなかった。
【0042】
<比較例6>
分級回転速度を2000rpmに変更したこと以外は、比較例4と同様にしてポリオレフィンワックス粒子(NL200)を粉砕した(目標粒径30μm)。その結果、平均粒径(D50)が40.6μmのポリオレフィンワックス微粒子が得られた。処理能力は1.3kg/hであった。
【0043】
以上の比較例4~6の結果をまとめて表3に示す。
【0044】
【表3】
【0045】
<評価>
表1に示す通り、実施例1~3の方法においては、原材料としてプロピレン・エチレン共重合体からなるポリオレフィンワックス粒子(NP055)を使用した。その結果、粉砕処理能力が優れていた。
【0046】
表2に示す通り、比較例1~3の方法においては、原材料としてホモポリプロピレンからなるポリオレフィンワックス粒子(NP500)を使用した。目標粒径が5μmである比較例1は、目標粒径が同じ実施例1に比べて粉砕処理能力が劣っていた。目標粒径が10μmである比較例2は、目標粒径が同じ実施例2に比べて粉砕処理能力が劣っていた。目標粒径が30μmである比較例3は、目標粒径が同じ実施例3に比べて粉砕処理能力が劣っていた。
【0047】
表3に示す通り、比較例4~6の方法においては、原材料として低密度ポリエチレンからなるポリオレフィンワックス粒子(NL200)を使用した。その結果、比較例4及び5では連続生産ができなかった。目標粒径が30μmである比較例6は、目標粒径が同じ実施例3に比べて粉砕処理能力が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、平均粒径(D50)が3~50μmのポリオレフィンワックス微粒子を効率的に製造できる。したがって、本発明は製造コストの低減が望まれているオレフィンワックス微粒子を使用する分野に有用である。