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特許7471129エチレン系共重合体組成物およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】エチレン系共重合体組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/16 20060101AFI20240412BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20240412BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240412BHJP
   C08F 210/02 20060101ALI20240412BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20240412BHJP
   C08L 57/02 20060101ALI20240412BHJP
   F16G 1/06 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C08L23/16
B32B27/12
B32B27/32 103
C08F210/02
C08K5/14
C08L57/02
F16G1/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020066906
(22)【出願日】2020-04-02
(65)【公開番号】P2021161343
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 啓介
(72)【発明者】
【氏名】末利 優樹
(72)【発明者】
【氏名】大久保 太一
(72)【発明者】
【氏名】市野 光太郎
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/122415(WO,A1)
【文献】特表2004-500997(JP,A)
【文献】特開2012-214576(JP,A)
【文献】特開2006-266378(JP,A)
【文献】国際公開第2008/023556(WO,A1)
【文献】特開2007-092880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/16
B32B 27/12
B32B 27/32
C08F 210/02
C08K 5/14
C08L 57/02
F16G 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(L)および(F)を含むエチレン系共重合体組成物。
(L)下記(1)~(4)の要件を満たす、エチレン[A]と、炭素数4~20のα-オレフィン[B]と、非共役ポリエン[C]とを含むエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体。
(F)C5系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9共重合体石油樹脂、ピュアモノマージレン、およびこれらを水素化した樹脂から選ばれる少なくとも1種である石油樹脂。
(1)エチレン[A]に由来する構造単位と、炭素数4~20のα-オレフィン[B]に由来する構造単位とのモル比〔[A]/[B]〕が、40/60~90/10であり、
(2)非共役ポリエン[C]に由来する構造単位の含有量が、[A]、[B]および[C]の構造単位の合計を100モル%として、0.1~6.0モル%であり、
(3)125℃におけるムーニー粘度ML(1+4)125℃が、5~100であり、
(4)下記式(i)で表されるB値が1.20以上である。
B値=([EX]+2[Y])/〔2×[E]×([X]+[Y])〕・・(i)
[ここで[E]、[X]および[Y]は、それぞれ、エチレン[A]、炭素数4~20のα-オレフィン[B]、および非共役ポリエン[C]のモル分率を示し、[EX]はエチレン[A]-炭素数4~20のα-オレフィン[B]のダイアッド連鎖分率を示す。]
【請求項2】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(L)を構成する炭素数4~20のα-オレフィン[B]が、1-ブテンである請求項1に記載のエチレン系共重合体組成物。
【請求項3】
エチレン系共重合体組成物が、さらに(B)架橋剤として有機過酸化物を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のエチレン系共重合体組成物。
【請求項4】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(L)100質量部当たり、石油樹脂(F)を0.1~20質量部含む、請求項1~3のいずれかに記載のエチレン系共重合体組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のエチレン系共重合体組成物からなる層[I]と、繊維材料を含む層[II]とが接していることを特徴とする積層体。
【請求項6】
エチレン系共重合体組成物が架橋してなる、請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
上記層[II]の繊維材料がRFL処理された繊維を含む、請求項5または6に記載の積層体。
【請求項8】
上記層[II]の繊維材料が帆布である、請求項5~7のいずれかに記載の積層体。
【請求項9】
請求項5~8のいずれかに記載の積層体を有してなる工業用ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋可能なエチレン系共重合体組成物、当該組成物を用いた繊維材料を含む層との積層体、およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
EPDMなどのエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、一般に、耐候性、耐熱性、耐オゾン性に優れており、自動車用工業部品、工業用ゴム製品、電気絶縁材、土木建築用材、ゴム引き布などに用いられている。
【0003】
従来のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、ニトリルゴム、クロロプレンゴムおよびクロロスルホン化ポリエチレンなどの極性ゴムに比べて、合成繊維との接着性が劣るという欠点がある。この欠点を解決する方法として、クロロスルホン化コポリマーの接着溶液を用いることで、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体と合成繊維の接着性改良が開示されている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら今日、ノンハロゲン化などの環境問題が問われるなかにあっては、このようなハロゲン化による極性を利用した接着技術は最適とは言い難い。また従来の接着方法としては、合成繊維をレゾルシンホルムアルデヒドラテックス処理(RFL処理)した後、ゴムに埋め込み架橋して接着させる方法が知られている。さらに詳しくはRFL処理に際し、イソシアネートやイソシアヌール酸誘導体を用いる方法が知られている。しかしながら、これらの方法をゴムとしてエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を用いる場合に応用しても十分な接着を得るのは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公昭42-23632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、繊維材料を含む層との粘着性を向上させることで生産性を向上させ得ると共に、繊維材料を含む層との接着性に優れ、しかも得られる積層体の機械物性を維持し得るエチレン系共重合体組成物を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記(L)および(F)を含むエチレン系共重合体組成物およびその用途に係る。
(L)下記(1)~(4)の要件を満たす、エチレン[A]と、炭素数4~20のα-オレフィン[B]と、非共役ポリエン[C]とを含むエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体。
(F)石油樹脂。
(1)エチレン[A]に由来する構造単位と、炭素数4~20のα-オレフィン[B]に由来する構造単位とのモル比〔[A]/[B]〕が、40/60~90/10であり、
(2)非共役ポリエン[C]に由来する構造単位の含有量が、[A]、[B]および[C]の構造単位の合計を100モル%として、0.1~6.0モル%であり、
(3)125℃におけるムーニー粘度ML(1+4)125℃が、5~100であり、
(4)下記式(i)で表されるB値が1.20以上である。
B値=([EX]+2[Y])/〔2×[E]×([X]+[Y])〕・・(i)
[ここで[E]、[X]および[Y]は、それぞれ、エチレン[A]、炭素数4~20のα-オレフィン[B]、および非共役ポリエン[C]のモル分率を示し、[EX]はエチレン[A]-炭素数4~20のα-オレフィン[B]のダイアッド連鎖分率を示す。]
【発明の効果】
【0008】
本発明のエチレン系共重合体組成物は、繊維材料を含む層との積層体を製造する際に、当該層との粘着性が向上しているので、製造速度を速めることができ、且つ架橋して得られる積層体は接着強度に優れるので、ホース、ベルトなどを含め多用途に用い得る。
【発明を実施するための形態】
【0009】
《エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(L)》
本発明のエチレン系共重合体組成物および本発明の積層体の層[I]を形成するエチレン系共重合体組成物を構成する成分の一つであるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(L)は、エチレン[A]に由来する構造単位、炭素数4~20のα-オレフィン[B]に由来する構造単位、および非共役ポリエン[C]に由来する構造単位を含み、下記(1)~(4)の要件を満たすエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体である。なお、このような特定のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を「エチレン系共重合体(L)」ともいい、「エチレン系共重合体(L)」と略記する場合がある。
【0010】
なお、炭素数4~20のα-オレフィン[B]および非共役ポリエン[C]としてはそれぞれを、1種のみ用いても、2種以上用いてもよい。すなわち、本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(L)は、エチレン[A]に由来する構造単位、少なくとも1種類の炭素数4~20のα-オレフィン[B]に由来する構造単位、および少なくとも1種類の非共役ポリエン[C]に由来する構造単位を含む。
【0011】
(1)エチレン[A]に由来する構造単位と、α-オレフィン[B]に由来する構造単位とのモル比〔[A]/[B]〕が、40/60~90/10であり、
(2)非共役ポリエン[C]に由来する構造単位の含有量が、[A]、[B]および[C]の構造単位の合計を100モル%として、0.1~6.0モル%であり、
(3)125℃におけるムーニー粘度ML(1+4)125℃が、5~100であり、
(4)下記式(i)で表されるB値が1.20以上である
B値=([EX]+2[Y])/〔2×[E]×([X]+[Y])〕・・(i)
[ここで[E]、[X]および[Y]は、それぞれ、エチレン[A]、炭素数4~20のα-オレフィン[B]、および非共役ポリエン[C]のモル分率を示し、[EX]はエチレン[A]-炭素数4~20のα-オレフィン[B]ダイアッド連鎖分率を示す。]
【0012】
炭素数4~20のα-オレフィン[B]としては、側鎖の無い直鎖の構造を有する、炭素数4の1-ブテンからはじまり、炭素数9の1-ノネンや炭素数10の1-デセンを経て、炭素数19の1-ノナデセン、炭素数20の1-エイコセン、並びに側鎖を有する4-メチル-1-ペンテン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセンなどが挙げられる。
【0013】
これらのα-オレフィン[B]は単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中では、炭素数4~10のα-オレフィンが好ましく、特に1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどが好ましく、特に1-ブテンが好適である。
【0014】
非共役ポリエン[C]としては、具体的には、1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン等の鎖状非共役ジエン;シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン等の環状非共役ジエン;2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,5-ノルボルナジエン、1,3,7-オクタトリエン、1,4,9-デカトリエン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン等のトリエンが挙げられる。
【0015】
これらの非共役ポリエン[C]は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、1,4-ヘキサジエンなどの鎖状非共役ジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネンなどの環状非共役ジエンが好ましく、中でも環状非共役ジエンが好ましく、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネンが特に好ましい。
【0016】
エチレン系共重合体(L)としては、以下を挙げることができる。エチレン・1-ブテン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-ペンテン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-ヘキセン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-へプテン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-オクテン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-ノネン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-デセン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-ブテン・1-オクテン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-ブテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ペンテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ヘキセン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-へプテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-オクテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ノネン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-デセン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ブテン・1-オクテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ブテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ペンテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ヘキセン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-へプテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-オクテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ノネン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-デセン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ブテン・1-オクテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体。
【0017】
エチレン系共重合体(L)は、必要に応じて1種類、または2種類以上が用いられる。
本発明に係るエチレン系共重合体(L)は、下記(1)~(4)の要件を満たす。
【0018】
《要件(1)》
エチレン系共重合体(L)は、エチレン[]に由来する構造単位と、炭素数4~20のα-オレフィン[]に由来する構造単位とのモル比〔[]/[]〕が、40/60~90/10である。モル比が前記範囲にあるエチレン系共重合体(L)は、低温でのゴム弾性と常温での引張強度とのバランスに優れる。
]/[]の下限は、好ましくは45/55、より好ましくは50/50、特に好ましくは55/45である。また、[]/[]の上限は、好ましくは80/20、より好ましくは75/25、さらに好ましくは70/30である。
【0019】
《要件(2)》
エチレン系共重合体(L)は、非共役ポリエン[]に由来する構造単位の含有割合が、前記[]に由来する構造単位、前記[]に由来する構造単位および前記[]に由来する構造単位の合計を100モル%として、0.1~6.0モル%である。この含有割合が前記範囲にあるエチレン系共重合体(L)は、充分な架橋性および柔軟性を有する。
前記[]に由来する構造単位の含有割合の下限は、好ましくは0.5モル%である。前記[]に由来する構造単位の含有割合の上限は、好ましくは4.0モル%、より好ましくは3.5モル%、さらに好ましくは3.0モル%である。
非共役ポリエン[C]に由来する構造単位の含有量が上記範囲にあると、充分な架橋性および柔軟性を有するエチレン系共重合体(L)が得られる。
【0020】
《要件(3)》
125℃におけるムーニー粘度ML(1+4)125℃が5~100、好ましくは20~95、特に好ましくは50~90の範囲にある。
ムーニー粘度が上記範囲にあると、エチレン系共重合体(L)は、加工性および流動性が良好であり、また良好な後処理品質(リボンハンドリング性)を示すと共に優れた物性を有するエチレン系共重合体(L)が得られる。
【0021】
《要件(4)》
B値が1.20以上、好ましくは1.20~1.80、特に好ましくは1.22~1.40の範囲にある。
B値が1.20未満のエチレン系共重合体は、低温での圧縮永久ひずみが大きくなり、低温でのゴム弾性と常温での引張強度とのバランスに優れたエチレン系共重合体が得られない虞がある。
【0022】
〈エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(L)の製造方法〉
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(L)は、種々公知の製造方法、たとえば、メタロセン触媒を用いた従来公知の製造方法で得ることができる。メタロセン触媒および当該触媒を用いた製造方法としては、例えば、国際公開第2015/122415号パンフレット、特に当該公報の段落[0249]~[0320]に記載の例を採用することができる。
【0023】
《石油樹脂(F)》
本発明のエチレン系共重合体組成物および本発明の積層体の層[I]を形成するエチレン系共重合体組成物を構成する成分の一つである石油樹脂(F)は、石油化学工業で用いられるナフサ分解の副生油の一部(C5留分やC9留分など)の重合により生成した樹脂を指し、C5の鎖状オレフィン混合物をカチオン重合したC5系石油樹脂、ジシクロペンタジエン留分を熱重合したジシクロペンタジエン系石油樹脂、C9芳香族オレフィン類混合物をカチオン重合したC9系石油樹脂、C5C9共重合石油樹脂、C9留分に含有されるアルファメチルスチレンを抜き取り、純アルファメチルスチレンで製造したピュアモノマーレジンと呼ばれる石油樹脂、およびこれらを水素添加した樹脂などが挙げられる。なかでも、層「II」との良好な粘着性および接着強度が得られる点から、C9系石油樹脂、C5C9共重合石油樹脂が好ましい。
【0024】
また、本発明に係る石油樹脂(F)は、主鎖に不飽和結合を持たない構造を基本骨格とする化合物(重合体)が好適である。
本発明に係る石油樹脂(F)は、重量平均分子量(Mw)が、500以上が好ましく、800以上がより好ましい。また、該Mwは、50000以下が好ましく、10000以下がより好ましく、5000以下が更に好ましい。重量平均分子量(Mw)を上記範囲内に調整することで、層「II」との良好な粘着性および接着強度が得られる。
【0025】
本発明に係る石油樹脂(F)は、軟化点が、70℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。また、該軟化点は、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましい。
本発明に係る石油樹脂(F)の軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0026】
本発明に係る石油樹脂(F)は、市販品を使用でき、東ソー(株)から、ペトコール(C9系石油樹脂)、ペトロタック90およびペトロタック90HS(C5C9系共重合石油樹脂)の商品名で製造、販売されている。
【0027】
<エチレン系共重合体組成物>
本発明のエチレン系共重合体組成物および本発明の積層体の層[I]を形成するエチレン系共重合体組成物は、上記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(L)と上記石油樹脂(F)を含む組成物であり、好ましくはエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(L)100質量部当たり、石油樹脂(F)を0.1~20質量部、より好ましくは0.5~10質量部の範囲で含む。
【0028】
本発明のエチレン系共重合体組成物は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(L)に加え、石油樹脂(F)を含むので、他材料、例えば工業用ベルトのような繊維材料を含む層との粘着性が良好で、且つ架橋してなる積層体は繊維材料を含む層との接着強度に優れる。
【0029】
本発明のエチレン系共重合体組成物は、上記エチレン系共重合体(L)および石油樹脂(F)に加え、所望の目的に応じて他の成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。他の成分としては、例えば、架橋剤、架橋助剤、加硫促進剤、加硫助剤、フィラー、軟化剤、老化防止剤、加工助剤、活性剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤および増粘剤などから選ばれる少なくとも1種を含有してもよい。また。それぞれの添加剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
〈架橋剤、架橋助剤、加硫促進剤および加硫助剤〉
架橋剤としては、有機過酸化物、フェノール樹脂、硫黄系化合物、ヒドロシリコーン系化合物、アミノ樹脂、キノンまたはその誘導体、アミン系化合物、アゾ系化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物等の、ゴムを架橋する際に一般に使用される架橋剤が挙げられる。これらのうちでは、有機過酸化物、硫黄系化合物(以下「加硫剤」ともいう)が好適である。
【0031】
有機過酸化物としては、例えば、ジクミルペルオキシド(DCP)、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシドが挙げられる。
【0032】
架橋剤として、有機過酸化物を用いる場合、共重合体組成物中のその配合量は、エチレン系共重合体(L)100質量部に対して、一般に0.1~20質量部、好ましくは0.2~15質量部である、さらに好ましくは0.5~10質量部である。有機過酸化物の配合量が上記範囲内であると、得られる成形体表面へのブルームなく、エチレン系共重合体組成物が優れた架橋特性を示すので好適である。
【0033】
架橋剤として、有機過酸化物を用いる場合、架橋助剤を併用することが好ましい。架橋助剤としては、例えば、イオウ;p-キノンジオキシム等のキノンジオキシム系架橋助剤;エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のアクリル系架橋助剤;ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル系架橋助剤;マレイミド系架橋助剤;ジビニルベンゼン;酸化亜鉛(例えば、ZnO#1・酸化亜鉛2種(JIS規格(K-1410))、ハクスイテック(株)製)、酸化マグネシウム、活性亜鉛華(例えば、「META-Z102」(商品名;井上石灰工業(株)製)などの酸化亜鉛)等の金属酸化物が挙げられる。
【0034】
架橋助剤を用いる場合、エチレン系共重合体組成物中の架橋助剤の配合量は、有機過酸化物1モルに対して、通常0.5~10モル、好ましくは0.5~7モル、より好ましくは1~6モルである。
【0035】
硫黄系化合物(加硫剤)としては、例えば、硫黄、塩化硫黄、二塩化硫黄、モルフォリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジチオカルバミン酸セレンが挙げられる。
【0036】
架橋剤として硫黄系化合物を用いる場合、共重合体組成物中のその配合量は、エチレン系共重合体(L)100質量部に対して、通常は0.1~10質量部、好ましくは0.2~7.0質量部、さらに好ましくは0.3~5.0質量部である。硫黄系化合物の配合量が上記範囲内であると、得られる成形体の表面へのブルームがなく、エチレン系共重合体組成物が優れた架橋特性を示す。
【0037】
架橋剤として硫黄系化合物を用いる場合、加硫促進剤を併用することが好ましい。
加硫促進剤としては、例えば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N'-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2-メルカプトベンゾチアゾール(例えば、サンセラーM(商品名;三新化学工業社製))、2-(4-モルホリノジチオ)ペンゾチアゾール(例えば、ノクセラーMDB-P(商品名;大内新興化学工業社製))、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,6-ジエチル-4-モルフォリノチオ)ベンゾチアゾールおよびジベンゾチアジルジスルフィド(例えば、サンセラーDM(商品名;三新化学工業社製))などのチアゾール系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジンおよびジオルソトリルグアニジンなどのグアニジン系加硫促進剤;アセトアルデヒド・アニリン縮合物およびブチルアルデヒド・アニリン縮合物などのアルデヒドアミン系加硫促進剤;2-メルカプトイミダゾリンなどのイミダゾリン系加硫促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド(例えば、サンセラーTS(商品名;三新化学工業社製))、テトラメチルチウラムジスルフィド(例えば、サンセラーTT(商品名;三新化学工業社製))、テトラエチルチウラムジスルフィド(例えば、サンセラーTET(商品名;三新化学工業社製))、テトラブチルチウラムジスルフィド(例えば、サンセラーTBT(商品名;三新化学工業社製))およびジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(例えば、サンセラーTRA(商品名;三新化学工業社製))などのチウラム系加硫促進剤;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(例えば、サンセラーPZ、サンセラーBZおよびサンセラーEZ(商品名;三新化学工業社製))およびジエチルジチオカルバミン酸テルルなどのジチオ酸塩系加硫促進剤;エチレンチオ尿素(例えば、サンセラーBUR(商品名;三新化学工業社製)、サンセラー22-C(商品名;三新化学工業社製))、N,N'-ジエチルチオ尿素およびN,N'-ジブチルチオ尿素などのチオウレア系加硫促進剤;ジブチルキサトゲン酸亜鉛などのザンテート系加硫促進剤が挙げられる。
【0038】
加硫促進剤を用いる場合、共重合体組成物中のこれらの加硫促進剤の配合量は、エチレン系エチレン系共重合体(L)100質量部に対して、一般に0.1~20質量部、好ましくは0.2~15質量部、さらに好ましくは0.5~10質量部である。加硫促進剤の配合量が上記範囲内であると、得られる成形体の表面へのブルームなく、共重合体組成物が優れた架橋特性を示す。架橋剤として硫黄系化合物を用いる場合、加硫助剤を併用することができる。
【0039】
加硫助剤としては、例えば、酸化亜鉛(例えば、ZnO#1・酸化亜鉛2種、ハクスイテック(株)製)、酸化マグネシウム、活性亜鉛華(例えば、「META-Z102」(商品名;井上石灰工業(株)製)などの酸化亜鉛)が挙げられる。
【0040】
加硫助剤を用いる場合、エチレン系共重合体組成物中の加硫助剤の配合量は、エチレン系共重合体(L)100質量部に対して、通常1~20質量部である。
【0041】
〈フィラー〉
本発明のエチレン系共重合体組成物を構成するフィラーは、ゴム組成物に配合される公知のゴム補強剤であり、通常、カーボンブラック、無機補強剤と呼称されている無機物である。
【0042】
本発明に係わるフィラーとしては、具体的には、旭#55G、旭#60UG(以上、旭カーボン(株)製)、シースト(V、SO、116、3、6、9、SP、TA等)のカーボンブラック(東海カーボン(株)製)、これらカーボンブラックをシランカップリング剤等で表面処理したのもの、および、シリカ、活性化炭酸カルシウム、微粉タルク、微粉ケイ酸、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー等が挙げられる。
【0043】
これらフィラーは、単独でも、二種以上の混合物であってもよい。
本発明に係わるフィラーとしては、好ましくは、カーボンブラック、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー等が用いられる。
【0044】
本発明の共重合体組成物がフィラーを含む場合は、エチレン系共重合体(L)100質量部に対し、通常、50~300質量部、好ましくは、80~250質量部の範囲で配合すればよい。
【0045】
〈軟化剤〉
軟化剤としては、例えば、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン油、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;コールタール等のコールタール系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤;蜜ロウ、カルナウバロウ等のロウ類;ナフテン酸、パイン油、ロジンまたはその誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂、クマロンインデン樹脂等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート等のエステル系軟化剤;その他、マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、炭化水素系合成潤滑油、トール油、サブ(ファクチス)が挙げられ、これらのうちでは、石油系軟化剤が好ましく、プロセスオイルが特に好ましい。
【0046】
エチレン系共重合体組成物が軟化剤を含有する場合には、軟化剤の配合量は、エチレン系共重合体(L)100質量部に対して、一般に2~100質量部、好ましくは10~100質量部である。
【0047】
〈老化防止剤(安定剤)〉
本発明のエチレン系共重合体組成物に、老化防止剤(安定剤)を配合することにより、これから形成されるシールパッキンの寿命を長くすることができる。このような老化防止剤として、従来公知の老化防止剤、例えば、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、イオウ系老化防止剤などがある。
【0048】
老化防止剤としては、例えば、フェニルブチルアミン、N,N-ジ-2-ナフチル-p―フェニレンジアミン等の芳香族第2アミン系老化防止剤;ジブチルヒドロキシトルエン、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン等のフェノール系老化防止剤;ビス[2-メチル-4-(3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル]スルフィド等のチオエーテル系老化防止剤;ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のジチオカルバミン酸塩系老化防止剤;2-メルカプトベンゾイルイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等のイオウ系老化防止剤等がある。
【0049】
エチレン系共重合体組成物が老化防止剤を含有する場合には、老化防止剤の配合量は、エチレン系共重合体(L)100質量部に対して、通常は0.3~10質量部、好ましくは0.5~7.0質量部である。老化防止剤の配合量が上記範囲内であると、得られる成形体の表面のブルームがなく、さらに加硫阻害の発生を抑制することができる。
【0050】
〈加工助剤〉
加工助剤としては、一般に加工助剤としてゴムに配合されるものを広く使用することができる。具体的には、リシノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛またはエステル類等が挙げられる。これらのうち、ステアリン酸が好ましい。
【0051】
共重合体組成物が加工助剤を含有する場合は、エチレン系共重合体(L)100質量部に対して、通常1~3質量部の量で適宜配合することができる。加工助剤の配合量が前記範囲内であると、混練加工性、押出加工性、射出成形性等の加工性に優れるので好適である。
前記加工助剤は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0052】
〈活性剤〉
活性剤としては、例えば、ジ-n-ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエラノールアミン等のアミン類;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、レシチン、トリアリルートメリレート、脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸の亜鉛化合物等の活性剤;過酸化亜鉛調整物;クタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、合成ハイドロタルサイト、特殊四級アンモニウム化合物が挙げられる。
共重合体組成物が活性剤を含有する場合には、活性剤の配合量は、エチレン系共重合体(L)100質量部に対して、通常は0.2~10質量部、好ましくは0.3~5質量部である。
【0053】
<積層体>
本発明の積層体は、本発明のエチレン系共重合体組成物からなる層[I]と、繊維材料を含む層[II]とが接している積層体である。
【0054】
《エチレン系共重合体組成物からなる層[I]》
本発明の積層体を構成するエチレン系共重合体組成物からなる層[I]は、上記エチレン系共重合体組成物を架橋してなる層である。
【0055】
《繊維材料を含む層[II]》
本発明の積層体を構成する繊維材料を含む層[II]は、層の少なくとも一部に繊維材料を含む。
【0056】
〈繊維材料〉
本発明に係る層[II]を形成する繊維材料は、種々公知の繊維材料、例えば、綿、木材セルロース繊維等の天然繊維;ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、レーヨン、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、フッ素系ポリマー等の合成樹脂からなる繊維の有機質繊維材料、ガラス繊維、PAN系カーボン繊維、ピッチ系カーボン繊維、アルミナ繊維、シリコンカーバイド繊維、ホウ酸アルミ繊維、チタン酸カリウム・ウィスカなどの無機質繊維材料等が例示される。
【0057】
これら繊維材料は長繊維(フィラメント)であっても短繊維(ステープル)であってもよい。また、繊維材料は、コード糸、紡績糸、織布、編み物、不織布などであってもよい。
【0058】
上記ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10のような脂肪族ポリアミド;ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(6T)、或いはこれらの単位を含む共重合ポリアミドのような半芳香族ポリアミド;ポリベンズアミド、ポリpフェニレンテレフタラミド、ポリmフェニレンイソフタラミドのような全芳香族ポリアミドが挙げられる。
【0059】
また、これら繊維材料は繊維材料同士、あるいは上記エチレン系共重合体組成物からなる層[I]との接着性等を改良するために、RFL処理などの公知の方法で表面処理していてもよい。
【0060】
〈RFL処理〉
RFL処理は、繊維材料のレゾルシン・ホルマリン・ラテックスを含有する処理液(RFL液)を用いて繊維材料を接着処理するものであるが、このRFL液は、レゾルシンとホルマリンの初期縮合物とゴムラテックスとを混合したものである。ゴムラテックスとしては、スチレン・ブタジエン・ビニルピリジン三元共重合体(VP)、スチレン・ブタジエン共重合体(SBR)、クロロプレン(CR)、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(NBR)、水素添加NBR(H-NBR)、クロロスルホン化エチレン(CSM)、天然ゴムなどを用いることができ、これらは一種を単独で用いる他に、二種以上をブレンドして用いることもできる。
【0061】
<積層体の製造方法>
本発明の積層体を製造するには、種々公知の積層体の製造方法を採用し得る。例えば、予め、公知の方法で製造(成形)した未架橋のエチレン系共重合体組成物からなる層[I]と繊維材料を含む層[II]とを貼り合わせた後、エチレン系共重合体組成物からなる層[I]を架橋する方法、架橋したエチレン系共重合体組成物からなる層[I]と繊維材料を含む層[II]とを貼り合わせる方法、あるいは、繊維材料を含む層[II]上にエチレン系共重合体組成物からなる層[I]を押出被覆した後、エチレン系共重合体組成物からなる層[I]を架橋する方法など。
上記エチレン系共重合体組成物からなる層[I]は、種々公知の製造方法を採用し得る。
【0062】
上記エチレン系共重合体組成物は、種々公知の混練、混合装置、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスのようなインターナルミキサー(密閉式混合機)、ロールなどを用い、上記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(L)および上記石油樹脂(F)、さらに架橋剤、および必要に応じてフィラー、軟化剤、老化防止剤、加工助剤などの添加剤とを混練することにより得られる。
【0063】
混練して得られた未架橋のエチレン系共重合体組成物は、押出成形機、カレンダーロール、プレス、インジェクション成形機、トランスファー成形機など種々の成形法より、意図する形状に成形した後に架橋してエチレン系共重合体組成物からなる層[I]を形成して繊維材料を含む層[II]と積層(貼り合わせ)してもよいし、未架橋のエチレン系共重合体組成物を上記方法で意図する形状に成形した後に維材料を含む層[II]と積層(貼り合わせ)して架橋してもよい。
【0064】
エチレン系共重合体組成物からなる層[I]を架橋する方法としては、架橋剤を使用して加熱する方法、または光、γ線、電子線照射による方法のどちらを採用してもよい。
また、架橋する際には、金型を用いてもよいし、また金型を用いないで架橋を実施してもよい。金型を用いない場合は成形、架橋の工程は通常連続的に実施される。架橋槽における加熱方法としては、熱空気、ガラスビーズ流動床、UHF(極超短波電磁波)、スチームなどの加熱槽を用いることができる。
【0065】
《積層体の用途》
本発明のエチレン系共重合体組成物からなる層[I]と、繊維材料を含む層[II]とが接している積層体は、自動車用ホース、送水用ホース、ガス用ホース;伝動ベルト、搬送用ベルト;エスカレーター手すりに好適に用いられる。
【0066】
上記自動車用ホースとしては、たとえばブレーキホース、ラジエターホース、ヒーターホース、エアークリーナーホースなどが挙げられる。
上記伝動ベルトとしては、たとえばVベルト、平ベルト、歯付きベルトなどが挙げられる。上記搬送用ベルトとしては、たとえば軽搬送用ベルト、円筒形ベルト、ラフトップベルト、フランジ付き搬送用ベルト、U型ガイド付き搬送用ベルト、Vガイド付き搬送用ベルトなどが挙げられる。
【実施例
【0067】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
本発明の実施例で用いたエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(L)を以下に示す。
【0068】
[エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体]
国際公開第2015/122415号の[合成例C1]の記載に準じて、下記の物性を有するエチレン・1-ブテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)共重合体を得た。以下、これを「エチレン系共重合体(L-1)」と記載する。
エチレン系共重合体(L-1)の構成および物性は、以下のとおりである。
エチレンに由来する構造単位:67.7モル%
1-ブテンに由来する構造単位:30.0モル%
ENBに由来する構造単位:2.3モル%
ムーニー粘度ML(1+4)100℃:30
ムーニー粘度ML(1+4)125℃:22
B値:1.3
【0069】
[エチレン系共重合体(L-1)の物性]
〈エチレンに由来する構造単位、α-オレフィンに由来する構造単位、および非共役ポリエンに由来する構造単位のモル量〉
前記モル量は、1H-NMRスペクトルメーターによる強度測定によって求めた。測定条件の詳細は、国際公開第2015/122415号に記載されている。
【0070】
〈ムーニー粘度〉
ムーニー粘度(ML(1+4)100℃、125℃)は、ムーニー粘度計(島津製作所社製SMV202型)を用いて、JIS K6300(1994)に準じて測定した。
【0071】
〈B値〉
o-ジクロロベンゼン-d4/ベンゼン-d6(4/1[v/v])を測定溶媒とし、測定温度120℃にて、13C-NMRスペクトル(100MHz、日本電子製ECX400P)を測定し、下記式(i)に基づき算出した。
B値=([EX]+2[Y])/〔2×[E]×([X]+[Y])〕・・・(i)
[ここで[E]、[X]および[Y]は、それぞれ、エチレン[]、炭素数4~20のα-オレフィン[]、および非共役ポリエン[]に由来する構造単位のモル分率を示し、[EX]はエチレン[]-炭素数4~20のα-オレフィン[]ダイアッド連鎖分率を示す。]
【0072】
本発明の比較例で用いたエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を以下に示す。
[エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体]
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体として、下記のエチレン・プロピレン・ENB共重合体(共重合体―2)を用いた。
エチレン・プロピレン・ENB共重合体
商品名 三井EPT 4045M:ムーニー粘度ML(1+4)100℃=45、エチレン含量=45重量%、ジエン(ENB)含量=7.6重量%。
【0073】
《エチレン系共重合体組成物(架橋物)の物性》
〈デュロメーターA硬度〉
JIS K 6253に従い、シートの硬度(タイプAデュロメータ、HA)の測定は、平滑な表面をもっている2mmのシート状架橋物6枚を用いて、平らな部分を積み重ねて厚み約12mmとして行った。ただし、試験片に異物の混入したもの、気泡のあるもの、およびキズのあるものは用いなかった。また、試験片の測定面の寸法は、押針先端が試験片の端から12mm以上離れた位置で測定できる大きさとした。
【0074】
〈引張破断点応力、引張破断点伸び〉
シートの引張破断点応力、引張破断点伸びを以下の方法で測定した。
シートを打抜いてJIS K 6251(1993)に記載されている3号形ダンベル試験片を調製し、この試験片を用いてJIS K6251第3項に規定される方法に従い、測定温度25℃、引張速度500mm/分の条件で引張り試験を行ない、100%伸張時のモジュラス(M100)、引張破断点応力(TB)および引張破断点伸び(EB)を測定した。
【0075】
《未架橋のエチレン系共重合体組成物の物性》
〈粘着性〉
未架橋のエチレン系共重合体組成物からなる層[I]と繊維材料を含む層[II]と粘着性は、プローブタック試験により行った。
レスカ社製タッキング試験機(TAC-II)を用いて行った。直径5mmφのステンレス製円柱状プローブを試験体に接触させ、剥離するときに生じるタック(gf)を評価した。プローブの試験体への接触速度を120mm/分、加圧力を50gf、加圧時間を20秒、剥離速度を120mm/分、温度を50℃とした。
【0076】
《架橋したエチレン系共重合体組成物の物性》
(剥離強度)
架橋したエチレン系共重合体組成物からなる層[I]と繊維材料を含む層[II]との剥離強度(接着強度)は、以下の方法で行った。
厚さ3mmの未架橋シートを、RFL処理をしたナイロン繊維の織布[綾羽工業(株)製]の上に置いて、200トンプレス成形機を用いて170℃で15分間加圧し未架橋シートを架橋し積層体を得た。当該積層体から幅25mmの試験片を打ち抜き、200mm/分の引張速度でT剥離試験を行った。
【0077】
〔実施例1〕
エチレン系共重合体(L-1)を30秒素練りし、素練りしたエチレン系共重合体(L-1)100重量部に、架橋助剤として酸化亜鉛(ZnO#1)を5質量部、滑剤としてステアリン酸を1重量部、老化防止剤としてテトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン〔商品名 Irganox 1010 BASFFジャパン株式会社製〕を2質量部、2-メルカプトベンゾイミダゾール(商品名 サンダントMB 三新化学工業(株)社製)を4質量部、カーボンブラック〔旭カーボン(株)製、商品名 旭♯70〕を50重量部および軟化剤〔商品名 ダイアナプロセスオイルPW-380 出光興産(株)製〕10重量部を容量1.7リットルのバンバリーミキサー[(株)神戸製鋼所製]で2分間混練した。その後、ラムを上昇させ掃除を行ない、さらに、1分間混練を行ない、約150℃で排出し配合物を得た。この混練は充填率70%で行なった。
【0078】
次に、この配合物172重量部を、8インチロ-ル(前ロールの表面温度50℃、後ロールの表面温度50℃、前ロールの回転数16rpm、後ロールの回転数18rpm)に巻き付けて、架橋剤として、ジクミルパーオキサイド(化薬アクゾ(株)製、商品名 三井DCP-40C)を6.8重量部、石油樹脂(F-1)〔東ソー(株)社製 商品名:ペトロタック90(C5C9系共重合石油樹脂、融点:90℃)を5質量部加えて10分間混練した後、シート状に分出し、厚さ2mm、3mmの未架橋シートを調製した。
【0079】
得られた厚さ2mmの未架橋シートを用い、前記記載の方法で粘着性力(gf)を測定した。結果を表1に示す。
次に、得られた厚さ2mmの未架橋シートを、100トンプレス成形機を用いて170℃で15分間加圧し、架橋シートを作製した。得られた架橋シートの物性を上記記載の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0080】
〔実施例2〕
実施例1で用いた石油樹脂(F-1)に替えて、石油樹脂(F-2)〔東ソー(株)社製 商品名:ペトロタック90HS(C5C9系共重合石油樹脂)〕を用いる以外は実施例1と同様に行い、未架橋の共重合体組成物、架橋して共重合体組成物および積層体を得、上記記載の方法で物性等を評価した。
結果を表1に示す。
【0081】
〔比較例1〕
実施例1で用いた共重合体(L-1)に替えて、共重合体―2を用い、且つ配合剤(添加剤)の種類および配合量を表1に示す配合剤および配合量に変える以外は実施例1に記載の方法で、未架橋の共重合体組成物、架橋して共重合体組成物および積層体を得、上記記載の方法で物性等を評価した。
結果を表1に示す。
【0082】
【表1】