(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】コンクリート用水性離型剤
(51)【国際特許分類】
B28B 7/38 20060101AFI20240412BHJP
B28B 1/14 20060101ALI20240412BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
B28B7/38
B28B1/14 E
C09K3/00 R
(21)【出願番号】P 2020074081
(22)【出願日】2020-04-17
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000221797
【氏名又は名称】東邦化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 朋久
(72)【発明者】
【氏名】高橋 拳
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-027082(JP,A)
【文献】特開平05-293812(JP,A)
【文献】特開2019-025660(JP,A)
【文献】特開昭52-020986(JP,A)
【文献】特開昭61-091216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 7/00-7/46
B28B 1/14-1/16
C09K 3/00-3/32
B29C 33/60-33/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)乃至(c)成分を含有するコンクリート用水性離型剤
(但し、水を分散媒とし、脂肪酸部の炭素数が5~30の脂肪酸エステルを1~50質量%、ラノリン類物質を0.1~20質量%、ラノリン脂肪酸アミノアルコール塩を0.2~20質量%の割合で含有させてなる水溶性コンクリート離型剤を除く):
(a)炭素原子数8乃至26のヒドロキシ脂肪酸の重縮合物、及び、炭素原子数8乃至26のヒドロキシ脂肪酸の重縮合物と脂肪酸との脱水縮合物からなる群から選択される少なくとも一種、
(b)脂肪族カルボン酸類、及び
(c)アミン類。
【請求項2】
(b)成分として(b1)脂肪族ジカルボン酸を含有する、請求項1に記載の離型剤。
【請求項3】
(b1)が炭素原子数10~16の飽和脂肪酸ジカルボン酸である、請求項2に記載の離型剤。
【請求項4】
(c)成分として、(c1)(ポリ)アルキレンポリアミンを含有する、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の離型剤。
【請求項5】
(c1)が(ポリ)エチレンポリアミンである、請求項4に記載の離型剤。
【請求項6】
(b)成分として、(b2)直鎖不飽和脂肪酸及び(b3)分岐脂肪酸からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含む、請求項1乃至請求項5のうち何れか一項に記載の離型剤。
【請求項7】
(c)成分として、(c2)アルカノールアミン及び(c3)第2級アミンからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含む、請求項1乃至請求項6のうち何れか一項に記
載の離型剤。
【請求項8】
下記(a)乃至(c)成分を含有するコンクリート用水性離型剤であって、該離型剤の全量(100質量%)に対して下記(a)成分を3~25質量%にて含む、コンクリート用水性離型剤:
(a)炭素原子数8乃至26のヒドロキシ脂肪酸の重縮合物、及び、炭素原子数8乃至26のヒドロキシ脂肪酸の重縮合物と脂肪酸との脱水縮合物からなる群から選択される少なくとも一種、
(b)脂肪族カルボン酸類、及び
(c)アミン類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート用水性離型剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートの型枠に塗布する離型剤(剥離剤ともいう)は、鉱物油や動植物油等の液状撥水性物質に離型性等の各種効果を付与する種々の添加剤が配合されてなり、油性と水性の2種類がある。一般に、表面気泡の低減に効果のある離型剤は水性の離型剤であるとされている。
水性(水溶性)の離型剤は、水で希釈して乳化させ或いは既に乳化状態にしたもので、これらの乳化安定性を高めるため、水との親和性(親水性)を高めた処方となっている。しかし、高い親水性を有する離型剤は、打設時のコンクリートとのなじみも良いものとなり、コンクリートに対する接触角が大きくなる。結果、型枠に塗布した離型剤の付着力が弱くなり、離型剤がコンクリート中に移動することとなる。これにより、コンクリートの離型性の低下を招き、剥離が困難になり、脱型性が悪化するとともに、型枠にコンクリートが付着して、コンクリート表面の平滑性が損なわれ、コンクリート内部の気泡や空隙が表面に現れ、逆に美観性が低下する場合がある。
【0003】
例えば、コンクリート表面に発生する気泡低減を図った表面美観改善型のコンクリート用型枠剥離剤として、ヒドロキシ基を有する不飽和脂肪酸又はその有機塩と、非イオン性界面活性剤を用いた離型剤の提案がある(特許文献1)。
また、剥離性向上を図ったコンクリート用型枠剥離剤として、アルキルアミン又はアルキルポリアミンを用いた離型剤の提案がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2951796号
【文献】特許第3195847号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまで、表面美観や離型性(脱型性)を図ったコンクリート用型枠離型剤の提案はあるものの、水希釈時の安定性とコンクリートの離型性(脱型性)は相容れない関係にあるとされる。特に実際の現場では、離型剤を希釈状態で、しかも外部倉庫など温度変化の大きい場所で長期間保管されることがあり、こうした条件下での希釈安定性も求められる。そしてこれらの性能を両立させ、さらには表面美観性も含めた全ての性能をより満足させることができる、新たな離型剤の提案が求められている。
【0006】
本発明は、水希釈時の安定性に優れ、脱型時の硬化体の表面美観に優れるだけでなく、離型性(型枠からの剥離性)にも優れる、コンクリート用の離型剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記[1]~[7]を対象とするものである。
[1]下記(a)乃至(c)成分を含有するコンクリート用水性離型剤:
(a)炭素原子数8乃至26のヒドロキシ脂肪酸の重縮合物、及び、炭素原子数8乃至26のヒドロキシ脂肪酸の重縮合物と脂肪酸との脱水縮合物からなる群から選択される少なくとも一種、
(b)脂肪族カルボン酸類、及び
(c)アミン類。
[2](b)成分として(b1)脂肪族ジカルボン酸を含有する、[1]に記載の離型剤。
[3](b1)が炭素原子数10~16の飽和脂肪酸ジカルボン酸である、[2]に記載の離型剤。
[4](c)成分として(c1)(ポリ)アルキレンポリアミンを含有する、[1]乃至[3]のうちいずれか一考に記載の離型剤。
[5](c1)が(ポリ)エチレンポリアミンである、[3]に記載の離型剤。
[6](b)成分として、(b2)直鎖不飽和脂肪酸及び(b3)分岐脂肪酸からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含む、[1]乃至[5]のうち何れか一項に記載の離型剤。
[7](c)成分として、(c2)アルカノールアミン及び(c3)第2級アミンからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含む、[1]乃至[6]のうち何れか一項に記載の離型剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明のコンクリート用の離型剤は、水希釈時の安定性、特に希釈状態にて長期間保管される現場においても安定性に優れるとともに、コンクリート用型枠に適用した際、脱型時の硬化体において気泡やすじ、色ムラ等が少ない表面美観を得ることができ、離型性(型枠からの剥離性)にも優れたものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のコンクリート用離型剤は、(a)炭素原子数8乃至26のヒドロキシ脂肪酸の重縮合物、及び、炭素原子数8乃至26のヒドロキシ脂肪酸の重縮合物と脂肪酸との脱水縮合物からなる群から選択される少なくとも一種、(b)脂肪族カルボン酸類、及び(c)アミン類を含有し、さらにその他添加剤等を含有し得るものである。
【0010】
(a)炭素原子数8乃至26のヒドロキシ脂肪酸の重縮合物、及び、炭素原子数8乃至26のヒドロキシ脂肪酸の重縮合物と脂肪酸との脱水縮合物からなる群から選択される少なくとも一種:
本発明の(a)成分は、前記ヒドロキシ脂肪酸の重縮合物、又は、前記ヒドロキシ脂肪酸の重縮合物と脂肪酸との脱水縮合物のうち少なくとも一方を含む。
【0011】
前記重縮合物を構成する炭素原子数8乃至26のヒドロキシ脂肪酸としては、例えば、飽和ヒドロキシ脂肪酸[一例として、ヒドロキシデカン酸(ヒドロキシ基位置:10-(以下同様))、ヒドロキシラウリン酸(2-、3-、10-、12-)、ヒドロキシペンタデカン酸(2-、15-)、ヒドロキシミリスチン酸(2-、3-)、ヒドロキシパルミチン酸(2-、3-、16-、)、ヒドロキシマルガリン酸(2-)、ヒドロキシステアリン酸(12-)、ヒドロキシノナデカン酸(2-)、ヒドロキシアラキジン酸(2-)、ヒドロキシベヘン酸(2-)、ヒドロキシテトラコサン酸等]、不飽和ヒドロキシ脂肪酸[一例として、4-ヒドロキシ-13-テトラデセン酸(C14)、16-ヒドロキシ-7-ヘキサデセン酸(アンブレットル酸)(C16)、16-ヒドロキシ-6-ヘキサデセン酸(イソアンブレットル酸)(C16)、9-ヒドロキシ-12-オクタデセン酸(C18)、リシノール酸(C18)、リシノエライジン酸(C18)、4-ヒドロキシ-ヘンエイコセン酸(C21)、2-ヒドロキシ-15-テトラコセン酸(オキシナーボン酸)(C24)、18-ヒドロキシ-9,11,13-オクタデカトリエン酸(カモレン酸)(C18)、9,14-ジヒドロキシ-10,12-オクタデカジエン酸(C18)等]、オキシ酸型油脂脂肪酸[ひまし油脂肪酸等の植物油全般、ハッカク油等]、並びに、脱水ひまし油脂肪酸などが挙げられる。
【0012】
前記脱水縮合物を構成する脂肪酸としては、例えば炭素原子数6乃至30の飽和脂肪酸や、炭素原子数4乃至30の不飽和脂肪酸を挙げることができる。
前記飽和脂肪酸の具体例として、例えば直鎖飽和脂肪酸[一例として、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸(ドデカン酸)、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸(ヘプタデカン酸)、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、モンタン酸、メリシン酸等]、分岐飽和脂肪酸[一例として、トリメチルヘキサン酸、2-メチルテトラデカン酸、2-エチルトリデカン酸、2-プロピルドデカン酸、2-メチルペンタデカン酸、2-エチルテトラデカン酸、2-メチルヘプタデカン酸、イソステアリン酸、2-メチルオクタデカン酸等]などを挙げることができる。
前記不飽和脂肪酸の具体例として、例えば、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸等のモノ不飽和脂肪酸、リノール酸等のジ不飽和脂肪酸、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸等のトリ不飽和脂肪酸、ステアリドン酸、アラキドン酸等のテトラ不飽和脂肪酸、エイコサアペンタエン酸、イワシ酸等のペンタ不飽和脂肪酸、ドコサヘキサエン酸等のヘキサ不飽和脂肪酸などを挙げることができる。
【0013】
前記(a)成分のうち、中でも、ひまし油脂肪酸重縮合物(例えば2~10量体(2モル~10モル縮合物))、ひまし油脂肪酸重縮合物(例えば2~10量体(2モル~10モル縮合物))と脱水ひまし油脂肪酸との縮合物、リシノール酸重縮合物(例えば2~10量体(2モル~10モル縮合物))、12-ヒドロキシステアリン酸重縮合物(例えば2~10量体(2モル~10モル縮合物))等を挙げることができる。
【0014】
また、炭素原子数8乃至26のヒドロキシ脂肪酸の重縮合物の酸価は、コンクリート用離型剤の水希釈時の安定性や、離型性の観点から、好ましくは20~200mgKOH/g、より好ましくは30~120mgKOH/g、さらに好ましくは40~90mgKOH/gである。酸価は、JIS K 2501に準じて測定することができる。
【0015】
前記(a)成分は、コンクリート用離型剤の全量(100質量%)に対して、例えば1~30質量%の割合にて、あるいは3~25質量%の割合にて配合できる。
【0016】
(b)脂肪族カルボン酸類
本発明では、(b)成分として脂肪族カルボン酸類を含み、好ましくは(b1)脂肪族ジカルボン酸を含む。さらに(b)成分として(b2)直鎖不飽和脂肪酸、(b3)分岐脂肪酸を含み得る。
【0017】
(b1)脂肪族ジカルボン酸としては、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、炭素原子数1乃至20の脂肪族炭化水素(アルキル基、アルケニル基等)を有するコハク酸(ドデシルコハク酸、ラウリルコハク酸、n-ステアリルコハク酸、イソステアリルコハク酸等)等が挙げられる。中でも炭素原子数10以上16以下のジカルボン酸が好ましい。
これらは1種単独で、また2種以上を併用してもよい。
【0018】
前記(b1)脂肪族ジカルボン酸は、コンクリート用離型剤の全量(100質量%)に対して、例えば0.1~10質量%の割合にて、あるいは0.5~5質量%の割合にて配合できる。
【0019】
(b2)直鎖不飽和脂肪酸としては、例えば炭素原子数4乃至30の不飽和脂肪酸を挙
げることができ、一例として、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ステアリドン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、アラキドン酸、エイコサアペンタエン酸エルカ酸、イワシ酸、ドコサヘキサエン酸等が挙げられるがこれらに限定されない。これらは1種単独で、また2種以上を併用してもよい。
本発明の離型剤において前記(b2)直鎖不飽和脂肪酸が配合される場合、その添加量は、コンクリート用離型剤の全量(100質量%)に対して、例えば0.1~15質量%の割合にて、あるいは0.5~10質量%の割合とすることができる。
【0020】
(b3)分岐脂肪酸としては、例えば炭素原子数6乃至30の分岐脂肪酸を挙げることができる。一例としてトリメチルヘキサン酸、2-メチルテトラデカン酸、2-エチルトリデカン酸、2-プロピルドデカン酸、2-メチルペンタデカン酸、2-エチルテトラデカン酸、2-メチルヘプタデカン酸、イソステアリン酸、2-メチルオクタデカン酸等が挙げられるがこれらに限定されない。これらは1種単独で、また2種以上を併用してもよい。
本発明の離型剤において前記(b3)分岐脂肪酸が配合される場合、その添加量は、コンクリート用離型剤の全量(100質量%)に対して、例えば0.1~15質量%の割合にて、あるいは1~10質量%の割合とすることができる。
【0021】
本発明のコンクリート用離型剤には、上記(b1)~(b3)の他、(b)脂肪族カルボン酸類として、前述の(a)成分の重縮合物や脱水縮合物を構成する脂肪酸として挙げた直鎖飽和脂肪酸[例えば炭素原子数6乃至30の脂肪酸、一例として、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリル酸(ドデカン酸)、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸(ヘプタデカン酸)、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、モンタン酸、メリシン酸等]や、ヒドロキシ脂肪酸[例えば炭素原子数8乃至26程度の飽和ヒドロキシ脂肪酸(ヒドロキシデカン酸、ヒドロキシラウリン酸、ヒドロキシペンタデカン酸、ヒドロキシミリスチン酸、ヒドロキシパルミチン酸、ヒドロキシマルガリン酸、ヒドロキシステアリン酸、ヒドロキシノナデカン酸、ヒドロキシアラキジン酸、ヒドロキシベヘン酸等)、不飽和ヒドロキシ脂肪酸(4-ヒドロキシ-13-テトラデセン酸、16-ヒドロキシ-7-ヘキサデセン酸(アンブレットル酸)、16-ヒドロキシ-6-ヘキサデセン酸(イソアンブレットル酸)、9-ヒドロキシ-12-オクタデセン酸、リシノール酸、リシノエライジン酸、4-ヒドロキシ-ヘンエイコセン酸、2-ヒドロキシ-15-テトラコセン酸(オキシナーボン酸)、18-ヒドロキシ-9,11,13-オクタデカトリエン酸(カモレン酸)、9,14-ジヒドロキシ-10,12-オクタデカジエン酸等)、オキシ酸型油脂脂肪酸(ひまし油脂肪酸などの植物油、ハッカク油等)、脱水ひまし油脂肪酸等)などの、その他の脂肪族カルボン酸類を含んでいてもよい。
【0022】
(c)アミン類
本発明では、(c)成分としてアミン類を含み、好ましくは(c1)(ポリ)アルキレンポリアミンを含む。さらに(c)成分として、(c2)アルカノールアミン、(c3)第2級アミンを含み得る。
【0023】
(c1)(ポリ)アルキレンポリアミンは、〔CmH2mNH〕n(mは例えば1から4までの整数を、nは例えば1から10までの正数を表す)によって表される基を有する化合物を指し、例えば(ポリ)エチレンポリアミン類(ジエチレントリアミン、ピペラジン類等)、(ポリ)プロピレンポリアミン類(ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン等)、(ポリ)ブチレンポリアミン類(ジブチレントリアミン、トリブチレンテトラミン等)、ピペラジン類等を挙げることができる。
これらの中でも、(ポリ)エチレンポリアミン類が好ましく、その具体例として、エチ
レンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、ピペラジン、N-(2-アミノエチル)ピペラジン、N,N’-ビス(アミノエチル)ピペラジン、N-2(2’-アミノエチル)アミノエチルピペラジン、N-2(2’(2”-アミノエチル)アミノエチル)アミノエチルピペラジン、N-2(2’-アミノエチル)アミノエチル-N’-アミノエチルピペラジン、N”,N”-ビス(2-アミノエチル)-N-(2-アミノエチル)ピペラジン、N,N-ビス(2-アミノエチル)ジエチレントリアミン等を挙げることができる。これらは1種単独で、また2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記(c1)(ポリ)アルキレンポリアミンは、コンクリート用離型剤の全量(100質量%)に対して、例えば0.01~5質量%の割合にて、0.05~5質量%の割合にて配合できる。
【0025】
(c2)アルカノールアミンは、アルカン骨格にヒドロキシ基とアミノ基を持つ化合物であり、本発明では第1級アルカノールアミン、第2級アルカノールアミン、第3級アルカノールアミンを使用することができる。
第1級アルカノールアミンとしては、例えば、ブタノールアミン、ヘキサノールアミン、オクタノールアミン、ドデカノールアミン、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、メタキシレンジアミン、シクロヘキシルアミンなどが挙げられる。
第2級アルカノールアミンとしては、例えば、ジイソプロパノールアミン、モノブチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルエタノールアミン、エチルエタノールアミン等が挙げられる。
第3級アルカノールアミンとしては、例えば、モノメチルジエタノールアミン、モノエチルジイソプロパノールアミン、モノ-n-ブチルジエタノールアミン、モノ-n-ブチルジイソプロパノールアミン、シクロヘキシルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルモノイソプロパノールアミン、N,N-ジ-n-プロピルアミノイソプロパノール、ジブチルエタノールアミン、ジブチルモノイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N,N-エチレンジアミン(ジイソプロパノール)、N,N-エチレンジアミン(ジエタノール)などが挙げられる。
これらアルカノールアミンは1種単独で、また2種以上を併用して使用することができる。
本発明の離型剤において前記(c2)アルカノールアミンが配合される場合、その添加量は、コンクリート用離型剤の全量(100質量%)に対して、例えば1~60質量%の割合とすることができる。
【0026】
(c3)第2級アミンとしては、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、ジラウリルアミン、ラウリルジメチルアミン、ジステアリルアミン、ステアリルジメチルアミン、ジオレイルアミン、オレイルジメチルアミン、モルホリン、モルホリン誘導体等が挙げられる。なお本明細書においては、上記(c2)における第2級アルカノールアミンは、(c3)からは除外されるものとする。
本発明の離型剤において前記(c3)第2級アミンが配合される場合、その添加量は、コンクリート用離型剤の全量(100質量%)に対して、例えば1~10質量%の割合とすることができる。
【0027】
本発明のコンクリート用離型剤には、上記(c1)~(c3)の他、(c)アミン成分として、その他のアミン、例えば、アミノメタン、シクロヘキシルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン等の第1級モノアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、メタキシレンジアミン、シクロヘキシルメチレンジアミン、シクロヘ
キシルエチレンジアミン、シクロヘキシルプロピレンジアミン、シクロヘキシルブチレンジアミン等の脂環式基含有又は芳香環含有のポリアミン等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0028】
本発明のコンクリート用離型剤には、液状撥水性物質(例えばパラフィン系鉱物油、ナフテン系鉱物油)や、必要に応じて各種アルコール・グリコール類、界面活性剤、乳化剤、消泡剤(シリコーン系消泡剤、アルコール系消泡剤)、防腐剤、及びその他添加剤を適宜添加してもよい。
【0029】
本発明のコンクリート用離型剤は、通常、水で3~20倍程度に希釈して使用し、また原液での使用も可能である。
型枠への塗布方法は、スプレー塗布、ウエス塗布、スポンジモップ塗布、自動塗布、離型剤加温塗布、ローラー塗布等、何れの方法も可能であり、特に限定されない。
また、型枠の材質も特に限定されず、鋼製、アルミ製、コンパネ、セラミック塗装鋼板製、合成樹脂塗装品(エポキシ、ポリウレタン、ポリエステル)、合成樹脂型枠・シート、コンクリート製品表面等が適用可能である。
【0030】
また本発明のコンクリート用離型剤を使用するコンクリートは、型枠を使用するコンクリートが対象であり、土木、建築、二次製品等、様々な分野・製品において特に限定されずに使用できる。
また対象となるコンクリートの種類についても特に限定されず、従来慣用のコンクリート成分、すなわち、セメント(例えば普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、低熱・中庸熱ポルトランドセメント又は高炉セメント等)、骨材(細骨材及び粗骨材)、混和材(例えばシリカフューム、炭酸カルシウム粉末、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、膨張材)、化学混和剤(高性能AE減水剤、高性能減水剤、AE減水剤、減水剤(分散剤)、空気連行剤(AE剤)、起泡剤、消泡剤、養生剤、撥水剤、凝結促進剤、凝結遅延剤等)及び水等を含有するコンクリート成分からなるものとすることができる。また該コンクリートにおける水/セメント比も特に限定されず、水/セメント比(質量%)で60~15%の種々の強度を有するコンクリートに対して適用可能である。
【実施例】
【0031】
以下実施例により本発明を説明する。ただし本発明は、これらの実施例及び比較例によって何ら制限されるものではない。
【0032】
[実施例1~実施例8:型枠離型剤]
ビーカーに、表1に示す配合成分をすべて投入し、水浴(60℃)で加温してから、マグネチックスターラーで30分間撹拌した後、20℃まで放冷し、実施例1~実施例8の離型剤を調製した。なお、表1の各成分の配合量は全成分の合計量(100質量%)に対する質量%である。
【0033】
【0034】
[比較例1~比較例4]
(a)成分を含まない比較例の型枠離型剤として、下記を使用した。
・比較例1:水性離型剤(鉱物油系) レジナー#82(信越産業(株)製)
・比較例2:型枠離型剤 市販品B
・比較例3:実施例1の化合物組成で、(a)成分を用いずに調製した離型剤((a)成分の配合量分を水道水で調整した)
・比較例4:実施例4の化合物組成で、(a)成分を用いずに調製した離型剤((a)成分の配合量分を水道水で調整した)
【0035】
<水希釈安定性の評価>
実施例1~8及び比較例1の離型剤を、それぞれ原液のまま、又は水道水で3倍希釈若しくは10倍希釈し、これらをスクリュー管瓶((株)マルエム)に移して密封し、0℃、20℃、又は40℃の温度に設定(誤差範囲:±1℃)した恒温室に静置した。
静置前(希釈直後)、静置後1週間、1ヵ月、3ヵ月間保管したスクリュー管瓶内のサンプルを観察し析出物の有無を確認するとともに、サンプル全体の高さに対して析出物が占める高さの割合(%)を評価した。評価の基準は下記の通りである。なお下記評価基準において、評価A及び評価Bは離型剤として使用可能な基準を達しており、評価Aであることがより好ましい。得られた結果を表2に示す。
なお、以降の説明において、使用した離型剤の例番号を、当該離型剤を用いて実施した各種評価の例番号としても扱うものとする。
<水希釈安定性 評価基準>
A:サンプルに析出物が見られない。
B:サンプルに析出物が1%未満見られる。
C:サンプルに析出物が1%以上10%未満見られる。
【0036】
【0037】
表2に示すように、実施例1~実施例8及び比較例1の離型剤のいずれも、原液の場合には保管日数に関わらず析出物が見られず、良好な安定性を有していたが、希釈した場合、比較例1では1週間後には析出物がみられ、水希釈安定性に劣る結果となった。
前述したように、コンクリート用離型剤は、希釈した状態で撹拌混合されることなく1ヶ月以上もの長期間にわたって保管されたり、さらには外部倉庫にて保管され、外気温の変化により温度が種々変化した状態にて保管されたりすることがあり、こうした環境下においても良好な安定性を有することが望まれる。
そして本結果より、本発明の離型剤は、0~40℃の温度範囲で長期の保管後においても良好な水希釈安定性を示しており、離型剤を型枠に塗布する際の液分離が改善されるとみられる。
【0038】
<接触角(濡れ性)の評価>
実施例1、実施例3、実施例4、実施例6、比較例1の離型剤の濡れ性を接触角により評価した。接触角は、協和界面科学(株)製 DMs-401を使用し、離型剤原液、水道水で3倍希釈したもの、さらに参考例として水道水のそれぞれについて、液滴法にて測定した。金属製型枠を想定した鉄枠及びウレタンマットに対して、各離型剤(又は希釈物、水道水)を1μl着液させた後の接触角を測定し、各液滴を6回着液させ得られた測定値の平均値として評価した。接触角が小さいほど濡れ性・密着性が高く、離型剤として好ましいと評価できる。得られた結果を表3に示す。
【0039】
【0040】
表3に示すように、ウレタンマット、鉄枠ともに、いずれの離型剤も3倍希釈したものは原液と比べて濡れ性が下がる傾向にあった。
また実施例の離型剤は、市販品である比較例1の離型剤(原液)に比べほぼ同等以上の濡れ性を示し、3倍希釈した場合には全ての例において比較例の濡れ性を上回る(接触角が小さい)という結果となった。
【0041】
[モルタルの調製]
表4に示す配合に基づきモルタルを作製した。モルタルの練り混ぜは、JIS R 5201に規定されるモルタルミキサーを使用して行った。まずセメントと細骨材を混合したものに、水、分散剤(日本シーカ(株)製、シーカメント1100NT)及び消泡剤(東邦化学工業(株)製、プロナール753W)を混合した水溶液を加え、60rpmで60秒混練した後、さらに120rpmで60秒混錬し、モルタルを得た。
なお分散剤は、JIS R 5201に記載のフローコーン(上径70mm×下径100mm×高さ60mm)を使用して、モルタルフローが200±10mmとなるように添加量を調整した。
また消泡剤は、ステンレス製の容器(内径7.5cm、内高8.0cm、重さ10kg)にモルタルを充填し、巻き込み空気を抜いて重量法により測定した空気量が2.0%±1.0%となるように添加量を調整した。
【0042】
【0043】
[離型評価サンプルの作製(モルタル)]
円柱鋼製型枠(高さ10cm、内径4cm)に、実施例1~8又は比較例1~4の離型剤(離型剤原液、又は、水道水で3倍希釈(希釈直後))を4g/m2の量でそれぞれ塗布した。塗布後に、この型枠内に、テーブルバイブレータ((株)関西機器製作所製)を用いて、2500vpmの振動下で30秒間、前記手順にて調製したモルタルを充填し、硬化させ、24時間20℃での気中養生の後に脱型した。このモルタルの型枠への充填及び脱型は、各離型剤ごとに2個ずつ実施した。
【0044】
<表面美観及び離型性の評価(モルタル)>
前記手順にて得られた各モルタル硬化体について、硬化体表面(4cm×16cmの64cm2中)に観察される1mm以上の気泡の個数をカウントし、表面気泡数を平均値として算出とした(N=2)。
また、モルタル硬化体の表面状態を観察し、下記基準にて表面美観性を評価した。
さらに、脱型後の型枠面へのモルタルの付着状態を観察し、下記基準にて離型性(型枠の汚れのなさ)を評価した。
なお、表面美観の観点から、硬化体表面の気泡数が少なく、表面の色むらや筋が確認されないことが好ましい。得られた結果を表5に示す。
<表面美観性 評価基準>
A:硬化体表面に色むら、筋、変色なし
B:硬化体表面の面積50%未満にむら、筋、変色あり
C:硬化体表面の面積50%以上80%未満にむら、筋、変色あり
D:硬化体表面の面積80%以上にむら、筋、変色あり
<離型性 評価基準>
A:型枠面に付着なし
B:型枠面に対して部分的(面積90%未満)に薄く付着
C:型枠面に対してほぼ全面(面積90%~100%)に薄く付着
D:型枠面に対して部分的(面積90%未満)に厚く付着
【0045】
【0046】
表5に示すように、実施例1~実施例8の離型剤を用いた場合、比較例に比べてモルタル硬化体表面の気泡数は少なく、モルタル硬化体の離型性及び表面美観性のいずれも良好な結果となった。
特に離型剤の成分として(a)成分を不使用とした比較例3及び比較例4は、実施例1及び実施例4と比べて、いずれもモルタル硬化体の離型性及び表面美観性に劣り、(a)成分の配合によって離型性と表面美観性を両立できることが確認された。
【0047】
[コンクリートの調製]
表6に示す配合に基づきコンクリートを作製した。強制2軸型ミキサー((株)IHI製)に、粗骨材、約半量の細骨材、セメント、残部の細骨材の順に投入し、空練りを15秒間行った。次いで、分散剤(日本シーカ(株)製、シーカメント1100NT)及び消泡剤(東邦化学工業(株)製、プロナール753W)を予め加えて調製した練り混ぜ水を添加し、120秒間練り混ぜ、コンクリートを得た。
なお分散剤は、JIS A 1101に基づき、得られたコンクリートの流動性を測定し、コンクリートのスランプ値が21±1cmとなるように添加量を調整した。
また消泡剤は、JIS A 1128に基づき、得られたコンクリートの空気量を測定し、空気量が1.5±1.5%となるように、添加量を調整した。
【0048】
【0049】
[離型評価サンプルの作製(コンクリート)]
直方体の鋼製型枠(高さ50cm、幅20cm、奥行10cm)に、実施例1~8又は比較例1~4の離型剤(離型剤原液、又は、水道水で3倍希釈(希釈直後))を5g/m2の量でそれぞれ塗布した。塗布後に、この型枠内に、前記手順にて調製したコンクリートを充填し、充填後硬化させ、24時間20℃で気中養生した後に脱型した。このコンクリートの型枠への充填及び脱型は、各離型剤ごとに2個ずつ実施した。
【0050】
<表面美観及び離型性の評価(コンクリート)>
前記手順にて得られた各コンクリート硬化体について、前記モルタル硬化体と同様に、表面美観性、離型性の評価を行った。
コンクリート硬化体表面(10cm×20cmの200cm2中)に観察される1mm以上の気泡の個数をカウントし、表面気泡数を平均値として算出した(N=2)。
また、コンクリート硬化体の表面状態を観察し、下記基準にて表面美観性を評価した。
さらに、脱型後の型枠面へのコンクリートの付着状態を観察し、下記基準にて離型性(型枠の汚れのなさ)を評価した。
なお、表面美観の観点から、硬化体表面の気泡数が少なく、表面の色むらや筋が確認されずないことが好ましい。得られた結果を表7に示す。
<表面美観性 評価基準>
A:硬化体表面に色むら、筋、変色なし
B:硬化体表面の面積50%未満にむら、筋、変色あり
C:硬化体表面の面積50%以上80%未満にむら、筋、変色あり
D:硬化体表面の面積80%以上にむら、筋、変色あり
<離型性 評価基準>
A:型枠面に付着なし
B:型枠面に対して部分的(面積90%未満)に薄く付着
C:型枠面に対してほぼ全面(面積90%~100%)に薄く付着
D:型枠面に対して部分的(面積90%未満)に厚く付着
【0051】
【0052】
表7に示すように、実施例1~実施例8の離型剤を用いた場合、比較例に比べてコンクリート硬化体表面の気泡数は少なく、コンクリート硬化体の離型性及び表面美観性のいずれも良好な結果となった。
特に離型剤の成分として(a)成分を不使用とした比較例3及び比較例4は、実施例1及び実施例4と比べて、いずれもコンクリート硬化体の離型性及び表面美観性に劣り、(a)成分の配合によって離型性と表面美観性を両立できることが確認された。
【0053】
以上の結果より、本発明の離型剤である実施例1~実施例8の離型剤は、これを適用した型枠より得られた硬化体において、硬化体の表面状態が良好であり、接触角測定による濡れ性に優れ、水希釈比率を変化させた場合においてもその安定性は比較例に比べ改善されるという結果が確認された。
【0054】
本発明の離型剤において、上述の効果が得られるメカニズムの詳細は不明であるが、その理由の一つとして、(a)成分のヒドロキシ脂肪酸の重縮合物や該重縮合物と脂肪酸の脱水縮合物が金属製型枠やウレタンマットの表面に吸着し、潤滑剤のような機能を発揮するとともに、セメント組成物の保水性が増すことで本発明の離型剤が乳化し、セメント組成物の表面に水膜が形成され、セメントと金型との摩擦抵抗が低減され、表面美観や離型性の向上につながったものと考えられる。