(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】競技場
(51)【国際特許分類】
E04H 3/14 20060101AFI20240412BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
E04H3/14 C
A01G7/00 601A
(21)【出願番号】P 2020076607
(22)【出願日】2020-04-23
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩出 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】山田 達也
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-140021(JP,A)
【文献】特開2000-282698(JP,A)
【文献】特開平05-111328(JP,A)
【文献】特開平05-317483(JP,A)
【文献】特開平07-048940(JP,A)
【文献】特開平09-117222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 3/14
A01G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然芝を有するグランドと、
前記グランドの周囲に設けられるスタンドと、
前記スタンドの下に収納され、前記スタンドの下から前記グランド上に引き出された状態で前記天然芝を育成する芝育成装置と、
を備え
、
前記芝育成装置は、前記グランド上に引き出された状態で、前記グランドを覆うとともに多目的スペースを形成する床を有する、
競技場。
【請求項2】
前記芝育成装置は
、前記床の下に設けられ、前記天然芝を照らす光
源を有する、
請求項1に記載の競技場。
【請求項3】
前記芝育成装置は、分割された状態で前記スタンドの下に収納される複数の分割ユニットを有する、
請求項1又は請求項2に記載の競技場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、競技場に関する。
【背景技術】
【0002】
内部に天然芝グランドを有する競技場が知られている(例えば特許文献1,2参照)。特許文献1に開示された競技場では、分割された天然芝グランドが、競技場の内外を移動可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-048940号公報
【文献】特開平9-117222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された競技場では、競技場の外において、自然光により天然芝が育成することができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された競技場では、競技場の外に天然芝の育成スペースを形成するため、必要敷地面積が大きくなる。
【0006】
本発明は、上記の事実を考慮し、必要敷地面積を小さくしつつ、天然芝を育成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様に係る競技場は、天然芝を有するグランドと、前記グランドの周囲に設けられるスタンドと、前記スタンドの下に収納され、前記スタンドの下から前記グランド上に引き出された状態で前記天然芝を育成する芝育成装置と、を備える。
【0008】
第1態様に係る競技場によれば、グランドは、天然芝を有する。また、グランドの周囲には、スタンドが設けられる。スタンド(観客席)の下には、芝育成装置が収納される。この芝育成装置は、スタンドの下からグランド上に引き出される。この状態で、芝育成装置によって天然芝が育成される。
【0009】
ここで、芝育成装置は、前述したように、スタンドの下に収納される。そのため、本発明では、競技場の外に天然芝の育成スペースを形成する場合と比較して、必要敷地面積を小さくすることができる。
【0010】
このように本発明では、必要敷地面積を小さくしつつ、天然芝を育成することができる。
【0011】
第2態様に係る競技場は、第1態様に係る競技場において、前記芝育成装置は、前記グランド上に引き出された状態で、前記グランドを覆う床と、前記床の下に設けられ、前記天然芝を照らす光源と、を有する。
【0012】
第2態様に係る競技場によれば、芝育成装置は、床と、光源とを有する。床は、グランド上に引き出された状態でグランドを覆う。また、床の下に、光源が設けられる。この光源によって天然芝を照らすことにより、天然芝が育成される。
【0013】
ここで、グランド上に引き出された床は、例えば、コンサート等の各種イベント、又はバスケットボール等の屋内競技を行う多目的スペースとして利用することができる。
【0014】
このように本発明では、例えば、サッカー等を行う天然芝のグランドと、コンサート等を行う多目的スペースとを両立することができる。
【0015】
第3態様に係る競技場は、第1態様又は第2態様に係る競技場において、前記芝育成装置は、分割された状態で前記スタンドの下に収納される複数の分割ユニットを有する。
【0016】
第3態様に係る競技場によれば、芝育成装置は、分割された状態でスタンドの下に収納される複数の分割ユニットを有する。このように芝育成装置を複数の分割ユニットに分割することにより、各分割ユニットの重量が小さくなる。したがって、分割ユニットの収納、及び引き出しを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、必要敷地面積を小さくしつつ、天然芝を育成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施形態に係る競技場を示す平面図である。
【
図3】グランド上に移動式レールを敷設した状態を示す
図2に対応する断面図である。
【
図4】グランド上に芝育成装置の分割ユニットを引き出した状態を示す
図2に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、一実施形態について説明する。
【0020】
(競技場)
図1には、本実施形態に係る競技場10が示されている。競技場10は、例えば、平面視にて、円形状又は楕円形状に形成されたアリーナとされる。この競技場10は、グランド20と、グランド20を囲む複数のスタンド30と、スタンド30を覆う屋根40と、スタンド30の下に収納される芝育成装置70とを有している。
【0021】
(グランド)
グランド20は、平面視にて矩形状に形成されており、競技場10の中央に配置されている。また、グランド20には、全面に亘って天然芝22が敷設されている。このグランド20では、例えば、サッカー又はラグビー等が行われる。
【0022】
なお、グランド20の形状や大きさは、適宜変更可能である。また、天然芝22は、グランド20の全面に限らず、グランド20の少なくとも一部に敷設することができる。
【0023】
(スタンド)
複数のスタンド(観客席)30は、グランド20を囲むように、グランド20の外周に配置されている。
図2に示されるように、各スタンド30は、競技場10の外周に向かうに従って高くなる階段状に形成されている。また、各スタンド30は、スタンドフレーム32と、段床36とを有している。
【0024】
スタンドフレーム32は、複数の柱34と、隣り合う柱34に架設される複数の梁35とを有している。このスタンドフレーム32上に段床36が設けられている。また、スタンド30の下部には、後述する芝育成装置70を収納する収納部38が形成されている。
【0025】
(屋根)
スタンド30は、屋根40によって覆われている。屋根40の中央には、開口42が形成されている。開口42は、例えば、矩形状に形成されている。この開口42から、競技場10内に日射及び風が導入される。なお、屋根40及び開口42の形状は、適宜変更可能である。また、開口42は、必要に応じて設ければ良く、省略可能である。
【0026】
(芝育成装置)
図1に示されるように、芝育成装置70は、天然芝22の育成を促進又は補助する装置とされる。この芝育成装置70は、平面視にて、分割された複数の分割ユニット70Uを有している。
【0027】
分割ユニット70Uの大きさ(平面積)は、例えば、スタンド30の柱34割に応じて、適宜設定される。そして、各分割ユニット70Uは、スタンド30の下部の収納部38に柱34を避けてそれぞれ収納される。一方、複数の分割ユニット70Uは、収納部38から引き出された状態で、グランド20の全面を覆うように配列され、又は組み合わせられる。この状態で、各分割ユニット70Uによって、グランド20の天然芝22が育成される。
【0028】
具体的には、
図3及び
図4に示されるように、分割ユニット70Uは、収納部38とグランド20とに亘って敷設される固定式レール50、又は移動式レール60に沿って移動可能とされる。固定式レール50は、収納部38に対を成して略平行して敷設されている。また、固定式レール50は、収納部38の床38Aに固定されている。
【0029】
移動式レール60は、収納部38から芝育成装置70を引き出す際に、グランド20上に撤去可能に敷設される。この際、移動式レール60は、グランド20上に対を成して略平行に敷設されるとともに、固定式レール50と連続して敷設される。一方、グランド20を使用する際には、芝育成装置70を収納部38に収納した後、グランド20から移動式レール60が撤去される。
【0030】
図5に示されるように、移動式レール60は、土台部62及びガイド部64を有している。土台部62は、H形鋼によって形成されている。また、土台部62の上には、ガイド部64が設けられている。ガイド部64は、移動式レール60の幅方向に互いに対向する一対のガイド片64Sを有している。この一対のガイド片64Sの間に、芝育成装置70の車輪80が配置される。
【0031】
なお、図示を省略するが、固定式レール50も、移動式レール60と同様の構成とされている。
【0032】
各分割ユニット70Uは、移動架台72と、複数の光源82と、複数の送風機84と、床90とを有している。移動架台72は、架台本体74と、複数の車輪80とを有している。架台本体74は、例えば、水平二方向に配列された複数の柱76と、隣り合う柱76に架設される複数の上側梁78U及び下側梁78Lとを有し、固定式レール50、又は移動式レール60上に配置される。
【0033】
下側梁78Lの下面には、複数の車輪80が取り付けられている。複数の車輪80は、固定式レール50、又は移動式レール60のガイド部64に載置されている。また、複数の車輪80は、一対のガイド片64Sの間に配置されている。これにより、複数の車輪80が、固定式レール50、又は移動式レール60から脱輪することが抑制されている。
【0034】
架台本体74には、複数の光源82及び複数の送風機84が取り付けられている。光源82は、例えば、白熱電灯(グローライト)、又はLED(Light Emitting Diode)とされる。これらの光源82は、例えば、架台本体74の上側梁78Uに取り付けられ、上方からグランド20の天然芝22を照らす。これにより、天然芝22の育成が促進又は補助される。
【0035】
なお、光源82の数及び配置は、適宜変更可能である。
【0036】
複数の送風機84は、架台本体74の内部に設けられ、架台本体74内を換気する。各送風機84は、例えば、架台本体74の下側梁78L上に設置される。これらの送風機84によって、気温及び湿度等の天然芝22の育成環境が調整される。
【0037】
なお、架台本体74には、天然芝22用の散水機等が設けられても良い。また、送風機84は、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。
【0038】
架台本体74の上部には、床90が設けられている。床90は、例えば、鉄筋コンクリート造のスラブとされ、上側梁78Uの上に設けられる。また、床90の下には、前述した複数の光源82及び送風機84が設けられる。
【0039】
なお、床90の構造は、鉄筋コンクリート造に限らず、適宜変更可能である。
【0040】
ここで、
図4に示されるように、複数の分割ユニット70Uがグランド20上に引き出されると、複数の分割ユニット70Uの床90によって、グランド20上に多目的スペースが形成される。この多目的スペースでは、例えば、コンサート等の各種イベント、又はバスケットボールやバレーボール等の屋内競技が行われる。
【0041】
なお、隣り合う分割ユニット70Uの床90間の隙間は、例えば、図示しない床材等によって塞いでも良いし、床90を水平方向にスライドさせ、隣り合う床90を接触させることにより塞いでも良い。また、床90は、多目的スペースに限らず、コンサートのみを行う専用スペースを形成しても良い。
【0042】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0043】
図1に示されるように、本実施形態に係る競技場10によれば、グランド20は、天然芝22を有している。また、グランド20の周囲には、スタンド30が設けられている。
【0044】
図2に示されるように、スタンド30の下部に形成された収納部38には、芝育成装置70を構成する複数の分割ユニット70Uが引き出し可能に収納されている。これらの分割ユニット70Uは、例えば、
図4に示されるように、日射不足時や、後述するように競技場10内でコンサート等を行う際に、スタンド30(観客席)の下からグランド20上に引き出される。この状態で、芝育成装置70によって、グランド20の天然芝22が育成される。
【0045】
より具体的には、
図5に示されるように、芝育成装置70は、複数の光源82と、複数の送風機84とを有している。これらの光源82によって天然芝22を照らすことにより、天然芝22の育成が促進又は補助される。また、送風機84によって芝育成装置70内を換気することにより、気温及び湿度等の天然芝22の育成環境が調整される。これにより、グランド20の天然芝22が育成される。
【0046】
ここで、
図2に示されるように、芝育成装置70の各分割ユニット70Uは、前述したように、スタンド30の下に収納される。そのため、本実施形態では、競技場10の外に天然芝22の育成スペースを形成する場合と比較して、必要敷地面積を小さくすることができる。
【0047】
このように本実施形態では、必要敷地面積を小さくしつつ、グランド20の天然芝22を育成することができる。
【0048】
また、芝育成装置70の複数の分割ユニット70Uは、床90をそれぞれ有している。
図4に示されるように、複数の分割ユニット70Uの床90は、グランド20上に引き出された状態でグランド20を覆う。これらの床90によって、グランド20上に多目的スペースが形成される。これにより、グランド20上において、例えば、コンサート等の各種イベント、又はバスケットボール等の屋内競技を容易に行うことができる。
【0049】
このように本実施形態では、例えば、サッカー等を行う天然芝22のグランド20と、コンサート等を行う多目的スペースとを両立することができる。
【0050】
さらに、
図2に示されるように、芝育成装置70は、複数の分割ユニット70Uを有している。複数の分割ユニット70Uは、スタンド30の下にそれぞれ収納される。このように芝育成装置70を複数の分割ユニット70Uに分割することにより、各分割ユニット70Uの重量が小さくなる。したがって、分割ユニット70Uの収納、及び引き出しを容易に行うことができる。
【0051】
また、
図1に示されるように、芝育成装置70は、例えば、スタンド30の柱34割に応じて複数の分割ユニット70Uに分割される。これにより、スタンド30の柱34を避けて、収納部38に分割ユニット70Uを収納することができる。
【0052】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0053】
上記実施形態では、グランド20の天然芝22上に移動式レール60を撤去可能に敷設した。しかし、例えば、グランド20の天然芝22を部分的に剥がし、そこに移動式レール60を敷設しても良い。これにより、移動式レール60による天然芝22の倒れ等が抑制される。この場合、例えば、移動式レール60の撤去後に、グランド20上に天然芝22を敷設すれば良い。
【0054】
また、例えば、移動式レール60の両端側を支柱等で支持し、天然芝22に対する移動式レール60の接触面積を減らすことにより、移動式レール60による天然芝22の倒れ等を抑制しても良い。
【0055】
また、移動式レール60は、スタンド30の収納部38に引き出し可能に収納しても良い。さらに、移動式レール60及び固定式レール50は、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。なお、移動式レール60及び固定式レール50を省略した場合は、例えば、車輪等によって芝育成装置70をグランド20上で走行させることが考えられる。
【0056】
また、上記実施形態では、スタンド30の下に分割ユニット70Uの全体が収納されている。しかし、スタンド30の下には、分割ユニット70Uの少なくとも一部が収納されていれば良く、例えば、平面視にて、分割ユニット70Uの一部は競技場10の外に配置されても良い。
【0057】
また、上記実施形態では、複数の分割ユニット70Uに床90がそれぞれ設けられている。しかし、床90は、例えば、複数の分割ユニット70Uの少なくとも1つに設けることができる。また、床90は必要に応じて芝育成装置70(分割ユニット70U)に設ければ良く、適宜省略可能である。
【0058】
また、上記実施形態では、芝育成装置70が複数の分割ユニット70Uに分割されている。しかし、芝育成装置70は、必要に応じて分割すれば良く、必ずしも分割する必要はない。なお、芝育成装置70を分割しない場合は、スタンド30の下に芝育成装置70の一部のみが収納される。
【0059】
また、上記実施形態は、屋根40に開口42が形成された競技場10に適用されている。しかし、上記実施形態は、種々の競技場に適用可能であり、例えば、競技場の屋根は、開口なしであっても良いし、開閉式であっても良い。また、競技場は、屋根なしであっても良い。
【0060】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0061】
10 競技場
20 グランド
22 天然芝
30 スタンド
70 芝育成装置
70U 分割ユニット
82 光源
90 床