(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】レンジフード
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20240412BHJP
【FI】
F24F7/06 101A
(21)【出願番号】P 2020093070
(22)【出願日】2020-05-28
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】301071893
【氏名又は名称】株式会社ハーマン
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安平 幸司
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-036880(JP,A)
【文献】中国実用新案第203257804(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油溜まり部を有するオイルトレーと、
前記オイルトレーを磁力にて固定する固定部と、前記固定部の周囲に配置された周囲部と、前記固定部と前記周囲部との間に配置された段差とを有する固定具と、を備え、
前記段差は、前記固定部に対して前記オイルトレーが取り付けられる取付側に前記固定部の端部から突き出して
おり、
前記固定具の円形状の開口内に前記油溜まり部が配置されかつ前記オイルトレーが磁力にて前記固定部に固定された状態で、前記オイルトレーが前記油溜まり部の環形状の中心を回転中心として前記固定部に対して回転することにより前記段差に乗り上げるよう構成されている、レンジフード。
【請求項2】
前記固定具は、前記周囲部において前記取付側に突き出した凸部を有する、請求項1に記載のレンジフード。
【請求項3】
前記凸部は線状に延びている、請求項2に記載のレンジフード。
【請求項4】
前記オイルトレーは、環形状を有する前記油溜まり部の外周へ延びるフランジ部を有し、
前記凸部は、前記オイルトレーの環形状を中心とした前記フランジ部の円周方向に位置している、請求項2または請求項3に記載のレンジフード。
【請求項5】
前記オイルトレーに取り付けられた永久磁石をさらに備える、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のレンジフード。
【請求項6】
前記オイルトレーに取り付けられた電磁石をさらに備える、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のレンジフード。
【請求項7】
前記電磁石への通電と非通電とを切り替える操作部をさらに備える、請求項6に記載のレンジフード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンジフードに関する。
【背景技術】
【0002】
オイルトレーを有するレンジフードがたとえば特開2016-176652号公報(特許文献1)に開示されている。オイルトレーは、排気に含まれる油分を捕集して回収する。
【0003】
この特許文献1においてオイルトレーは、外周壁に係合凹部を有し、その係合凹部に化粧板の係合金具が係合することにより化粧板に係合支持される。具体的にはオイルトレーが化粧板の開口部に下方から挿入される。これにより、係合金具の係合突起が係合凹部の縦溝に導入される。この後、オイルトレーが化粧板に対して水平回動される。これにより、係合金具の係合突起が係合凹部の横溝に導かれる。これによりオイルトレーが化粧板に落下不能に係合支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし特許文献1においてオイルトレーを化粧板に係合支持する際には、オイルトレーを化粧板の下方から挿入し、かつ水平回動させる必要がある。このためオイルトレーを化粧板に係合支持する際の作業工程が多い。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、オイルトレーが落下しにくく、オイルトレーの着脱操作が容易なレンジフードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のレンジフードは、オイルトレーと、固定具とを備える。オイルトレーは、油溜まり部を有する。固定具は、オイルトレーを磁力にて固定する固定部と、固定部の周囲に配置された周囲部と、固定部と周囲部との間に配置された段差とを有する。段差は、固定部に対してオイルトレーが取り付けられる取付側に固定部の端部から突き出している。
【0008】
本発明のレンジフードによれば、磁力によりオイルトレーが固定具に取り付けられる。このため固定具へのオイルトレーの着脱操作が容易となる。また段差は、固定部の端部から突き出している。このためオイルトレーが固定部にずれて配置された場合、オイルトレーが段差に乗り上げる。これによりオイルトレーと固定部とを固定しようとする磁力が弱まって、オイルトレーを固定具に取り付けることが困難となる。したがってオイルトレーが固定部にずれた状態で取り付けられることがなくなる。よってオイルトレーは位置ずれのない状態でのみ固定部に取り付けられることとなるため、レンジフード使用時の振動などで外れにくくなる。したがってオイルトレーが固定部から落下しにくくなる。
【0009】
上記レンジフードにおいて、固定具は、周囲部において取付側に突き出した凸部を有する。
【0010】
これによりオイルトレーが固定部にずれて配置された場合、オイルトレーが段差だけでなく凸部にも乗り上げる。これによりオイルトレーを固定部に吸着しようとする磁力がさらに弱まって、オイルトレーを固定具に取り付けることがさらに困難となる。したがってオイルトレーが固定部にずれて配置されることが防止できる。
【0011】
上記レンジフードにおいて、凸部は線状に延びている。
【0012】
このように凸部が線状に延びているため、オイルトレーが固定部からずれたときに凸部と線接触する。このためオイルトレーと凸部との接触時における接触抵抗が点接触の場合と比較して小さくなる。よってオイルトレーと凸部とが接触することによる傷の発生を抑制することができる。
【0013】
上記レンジフードにおいて、オイルトレーは、環形状を有する油溜まり部の外周へ延びるフランジ部を有する。凸部は、オイルトレーの環形状を中心としたフランジ部の円周方向に位置している。
【0014】
これにより環形状の油溜まり部を中心にフランジ部が固定部に対して円周方向にずれた場合に、フランジ部が凸部上に乗り上げる。このためオイルトレーと固定部とを吸着しようとする磁力が弱まって、オイルトレーを固定具に取り付けることが困難となる。
【0015】
上記レンジフードは、オイルトレーに取り付けられた永久磁石をさらに備える。
【0016】
これにより電流を流すことなく磁力を発生させることができる。このため省電力化を図ることができる。
【0017】
上記レンジフードは、オイルトレーに取り付けられた電磁石をさらに備える。
【0018】
これにより電磁石への通電と非通電とを切り替えることによりオイルトレーの固定具への着脱が可能となる。
【0019】
上記レンジフードは、電磁石への通電と非通電とを切り替える操作部をさらに備える。
【0020】
これにより操作部を操作することで電磁石への通電と非通電とを切り替えることが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、オイルトレーが落下しにくく、オイルトレーの着脱操作が容易なレンジフードを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施の形態におけるレンジフードを下斜め方向から見た斜視図である。
【
図2】
図1に示すレンジフードの構成を示す分解斜視図である。
【
図3】
図1に示すレンジフードの構成を示す断面図である。
【
図4】
図1に示すレンジフードの化粧板、オイルトレーおよび磁石を上斜め方向から見た分解斜視図である。
【
図5】
図1に示すレンジフードの化粧板、オイルトレーおよび磁石の構成を示す断面斜視図である。
【
図6】
図1に示すオイルトレーが収納位置(A)とずれた位置(B)とにある状態を下方から見た下面図である。
【
図7】
図6(A)のVIIA-VIIA線に沿う断面図(A)、および
図6(B)のVIIB-VIIB線に沿う断面図(B)である。
【
図8】オイルトレーを化粧板に取り付ける様子を示す斜視図である。
【
図9】操作部の操作により通電を制御される電磁石を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
なお、明細書および図面において、同一の構成要素または対応する構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を繰り返さない。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。また各実施の形態と各変形例との少なくとも一部は、互いに任意に組み合わされてもよい。
【0025】
<レンジフードの構成>
まず本発明の一実施の形態に係るレンジフードの構成について
図1~
図5、
図6(A)および
図7(A)を用いて説明する。
【0026】
図1に示されるように、本実施の形態におけるレンジフード10は、台所などに設置され、たとえばコンロなどの加熱調理器具の上方に配置される。レンジフード10は排気用ファン6を有している。レンジフード10は、排気用ファン6を回転させることにより、加熱調理器において調理中に発生する煙、湯気などの排気を吸い込み、屋外へ排出する。
【0027】
図2に示されるように、レンジフード10は、複数の磁石1と、化粧板2(固定具)と、オイルトレー3と、内側フード4と、整流板5と、外側フード7と、取付アダプタ8と、モータ9(
図3)と、ファンケース11と、本体ケース12とをさらに有している。
【0028】
図3に示されるように、本体ケース12は、箱形の形状を有している。本体ケース12の内部には、ファンケース11が配置されている。ファンケース11の内部には、排気用ファン6と、取付アダプタ8と、モータ9とが配置されている。
【0029】
ファンケース11は、下面に吸込口11aを有している。この吸込口11aの真上に排気用ファン6が配置されている。排気用ファン6は、たとえばシロッコファンである。この排気用ファン6は、上部支持板6aと、下部支持板6bと、複数のファンブレード6cとを有している。
【0030】
複数のファンブレード6cは、周方向に一定のピッチで配置されている。上部支持板6aは、複数のファンブレード6cの各々の上端を支持している。下部支持板6bは、複数のファンブレード6cの各々の下端を支持している。上部支持板6aおよび下部支持板6bの各々は、円環形状を有している。
【0031】
モータ9は、たとえばAC(Alternating Current)モータである。モータ9は、排気用ファン6を回転させる回転駆動力を発生する。モータ9は、本体部9aと、回転軸9bとを有している。本体部9aは回転駆動力を発生する。回転軸9bは、本体部9aの回転駆動力により回転する。
【0032】
取付アダプタ8は、排気用ファン6をモータ9に着脱自在に取り付けるための部材である。取付アダプタ8は、回転軸9bに着脱自在に取り付け可能である。排気用ファン6の上部支持板6aに回転軸9bが挿通された状態で、回転軸9bに取付アダプタ8が取り付けられることにより、排気用ファン6はモータ9に取り付けられる。
【0033】
図2に示されるように、本体ケース12の下端には外側フード7が取り付けられている。外側フード7は、上板7aと、枠体部7bとを有している。上板7aは本体ケース12の下端に取り付けられている。上板7aは、本体ケース12の外周側へ張り出している。上板7aは、開口7aaを有している。開口7aaは、ファンケース11の一部および排気用ファン6の各々の真下に位置している。
【0034】
枠体部7bは、上板7aの外周端縁の全周から下方に延びている。枠体部7bは、たとえば四角形の枠形状を有している。枠体部7bに囲まれた内周領域には、化粧板2と、オイルトレー3と、内側フード4と、整流板5とが配置されている。
【0035】
化粧板2は、外側フード7における上板7aの下面にたとえばボルトなどにより取り付けられている。化粧板2は、開口2fを有している。開口2fは、排気用ファン6の下(たとえば真下)に位置している。開口2fは、下面視においてたとえば円形状を有している。開口2fは、下面視において真円形状を有していてもよいが、真円形状以外の形状であってもよい。
【0036】
本明細書において下面視とは、化粧板2における周囲部2aの下面に対して直交する方向であって周囲部2aの下側から見た視点を意味する。
【0037】
化粧板2は、周囲部2aと、固定部2bと、段差2c、2eと、取付部2dと、複数の凸部2gとを有している。固定部2bは、後述するオイルトレー3を磁力により固定するための部分である。固定部2bは、開口2fの外周に配置されている。固定部2bおよび開口2fの周囲には周囲部2aが配置されている。
【0038】
固定部2bと周囲部2aとの間には段差2cが配置されている。段差2cは、固定部2bに対してオイルトレー3が取り付けられる取付側(下側)に固定部2bの端部から突き出している。段差2cは、固定部2bに対して、たとえば略垂直に突き出している。また段差2cは、固定部2bから周囲部2aに向かうにしたがって下り勾配の傾斜を有するように固定部2bから突き出していてもよい。これにより周囲部2aは固定部2bよりも下方に位置している。周囲部2aは、固定部2bに対して略平行である。
【0039】
固定部2bは、開口2fの円周の一部に位置している。開口2fの円周の他の部分(固定部2bが位置していない部分)には周囲部2aおよび段差2cが位置している。つまり開口2fの一部は固定部2bにより構成されており、開口2fの他の部分は周囲部2aおよび段差2cにより構成されている。
【0040】
図6(A)に示されるように、化粧板2は、複数(たとえば2つ)の固定部2bを有している。2つの固定部2bは、開口2fを挟んで互いに対向している。2つの固定部2bは、下面視において開口2fの中心Cを通る仮想の直線に対して互いに線対称の形状を有している。また2つの固定部2bは、下面視において開口2fの中心Cに対して互いに点対称の形状を有している。
【0041】
1つの固定部2bは、下面視において、2つの辺2b1と、1つの辺2b2とを有している。2つの辺2b1および1つの辺2b2の各々は、下面視における固定部2bの外形を規定しており、固定部2bと段差2cとの境界に位置している。
【0042】
2つの辺2b1の各々は、下面視において開口2fから直線状に延びている。2つの辺2b1は、たとえば互いに平行である。辺2b2は、下面視において2つの辺2b1を繋ぐように直線状に延びている。辺2b2は、下面視において2つの辺2b1の双方に対してたとえば垂直に延びている。なお辺2b1と辺2b2との接続部は、下面視においてたとえばラウンド形状を有している。
【0043】
図2に示されるように、取付部2dは、周囲部2aの周囲を取り囲んでいる。取付部2dは、外側フード7の下面にたとえばボルトなどにより取り付けられる部分である。取付部2dは、周囲部2aに対して上方に位置している。取付部2dと周囲部2aとの間には段差2eが配置されている。段差2eは、周囲部2aの縁部から上方へ突き出している。段差2eは、周囲部2aから取付部2dに向かうにしたがって上り勾配の傾斜を有していてもよい。
【0044】
固定部2bと周囲部2aとは段差2cを介在して一体化されている。つまり1枚の板を折り曲げることにより、固定部2bと周囲部2aと段差2cとが構成されている。また取付部2dと周囲部2aとは段差2eを介在して一体化されている。つまり1枚の板を折り曲げることにより、取付部2dと周囲部2aと段差2eとが構成されている。
【0045】
図7(A)に示されるように、複数の凸部2gの各々は、周囲部2aから下側(固定部2bに対してオイルトレー3が取り付けられる取付側)に突き出している。凸部2gの周囲部2aからの突き出し寸法(高さ)L2は、たとえば2mm以上である。凸部2gの突き出し寸法L2は、凸部2gの加工の制約を受けるが大きいほどよく、5mm以上であることがより好ましい。
【0046】
図6(A)に示されるように、複数の凸部2gの各々は、下面視において線状(たとえば直線状)に延びている。凸部2gの下面視における形状は、線状に限定されず、円形状(真円、楕円を含む)、多角形状であってもよい。
【0047】
凸部2gは、下面視において固定部2bの辺2b1に対してたとえば平行に延びていてもよく、またたとえば垂直に延びていてもよい。また凸部2gは、下面視において固定部2bの辺2b2に対してたとえば平行に延びていてもよく、またたとえば垂直に延びていてもよい。
【0048】
図2に示されるように、オイルトレー3は、排気用ファン6によって排出される排気中の油分を捕集するためのものである。オイルトレー3は、油溜まり部3aと、フランジ部3bと、把手部3cとを有している。
【0049】
油溜まり部3aは、排気から分離されて流下する油分を貯留する部分である。油溜まり部3aは、貫通孔3eを有している。油溜まり部3aは、下面視においてたとえば環形状を有し、貫通孔3eを取り囲む形状を有している。油溜まり部3aは、下面視において円環形状を有していてもよいが、円環形状以外の形状であってもよい。
【0050】
図3に示されるように、油溜まり部3aは、底壁部3aaと、内周壁部3abと、外周壁部3acとを有している。底壁部3aa、内周壁部3abおよび外周壁部3acの各々は、下面視において環形状を有し、たとえば円環形状を有している。内周壁部3abおよび外周壁部3acの各々は筒形状(たとえば円筒形状)を有している。
【0051】
内周壁部3abは、底壁部3aaの内周端の全周から上方に立ち上がっている。外周壁部3acは、内周壁部3abの外周側に位置し、かつ底壁部3aaの外周端の全周から上方に立ち上がっている。
【0052】
内周壁部3abの上端と外周壁部3acの上端との間は互いに離れており、開口が構成されている。排気から分離されて流下する油分は、内周壁部3abの上端と外周壁部3acの上端との間の開口から底壁部3aa上に貯留される。
【0053】
図6(A)に示されるように、油溜まり部3aは、化粧板2の開口2f内に配置されている。油溜まり部3aは、化粧板2の開口2f内に配置された状態で、油溜まり部3aの環形状の中心Cを回転中心として回転可能な形状を有している。油溜まり部3aは、化粧板2の開口2fの内周に沿う環形状を有している。油溜まり部3aの外周壁部3acは、下面視においてたとえば円形状を有し、たとえば真円形状を有している。
【0054】
図2に示されるように、フランジ部3bは、油溜まり部3aの外周に取り付けられている。フランジ部3bは、油溜まり部3aの外周端から外周側へ延びている。フランジ部3bは、化粧板2の下方に位置して化粧板2の下面と対向している。
【0055】
図6(A)に示されるように、オイルトレー3は、複数(たとえば2つ)のフランジ部3bを有している。2つのフランジ部3bは、油溜まり部3aを挟んで互いに対向している。2つのフランジ部3bは、油溜まり部3aの円周方向に互いに離れて配置されている。2つのフランジ部3bは、下面視において油溜まり部3aの中心Cを通る仮想の直線に対して互いに線対称の形状を有している。また2つのフランジ部3bは、下面視において油溜まり部3aの中心Cに対して互いに点対称の形状を有している。
【0056】
図2に示されるように、把手部3cは、フランジ部3bに接続されている。把手部3cは、たとえばフランジ部3bの外周端を下方に切り起こすことにより構成されている。把手部3cの下端部は、フランジ部3bよりも下方に位置している。
【0057】
なお把手部3cは、フランジ部3bを切り起こした構成に限定されない。把手部3cは、フランジ部3bと別体で準備された部材をフランジ部3bに取り付けることにより構成されてもよい。
【0058】
把手部3cがフランジ部3bを切り起こすことにより形成されているため、把手部3cが切り起こされたフランジ部3bの部分には切欠き部3dが設けられている。把手部3cは、切欠き部3dの真下に位置している。
【0059】
図6(A)に示されるように、複数の凸部2gの各々は、オイルトレー3の環形状を中心としたフランジ部3bの円周方向(矢印AR方向)に位置している。具体的には油溜まり部3aが開口2f内に配置された状態で中心Cを回転中心として回転したときに、複数の凸部2gの各々は、フランジ部3bの下面視における回転軌跡(図中ハッチング領域)内に位置している。凸部2gの全体がフランジ部3bの下面視における回転軌跡(図中ハッチング領域)内に位置していてもよく、また凸部2gの一部のみがフランジ部3bの下面視における回転軌跡(図中ハッチング領域)内に位置していてもよい。
【0060】
図2に示されるように、内側フード4は、外側フード7の上板7aにたとえば爪部、ボルトなどにより取り付けられている。内側フード4は、上板7aの下方に位置している。内側フード4は、貫通孔4dを有している。貫通孔4dには、化粧板2が嵌められている。
【0061】
具体的には化粧板2の周囲部2aが貫通孔4d内に位置している。この状態で化粧板2の取付部2dは、貫通孔4dの外側に延在し、かつ内側フード4の上側に位置している。
【0062】
整流板5は、排気用ファン6により吸い込まれる気流を整流するためのものである。整流板5は、内側フード4と隙間を空けるように内側フード4に取り付けられている。
【0063】
図1に示されるように、整流板5は、排気用ファン6の真下に配置されている。また整流板5は、オイルトレー3および化粧板2の真下に位置している。
【0064】
図3に示されるように、整流板5と内側フード4との間に排気流路が構成されている。この排気流路は、オイルトレー3の内周領域および排気用ファン6の内周領域に介在して排気用ファン6の外周領域に通じている。矢印AR2で示すように、排気用ファン6の回転に伴って発生した負圧により、整流板5と内側フード4との間に導かれた排気は、オイルトレー3の貫通孔3eと排気用ファン6の内周領域とを通じて排気用ファン6の外周領域に抜けて排気される。
【0065】
この排気経路において、排気に含まれる油分が排気から分離されて流下して、オイルトレー3の油溜まり部3aに貯留される。
【0066】
ここで、ファンケース11の底面11bは、吸込口11aに向けて下り勾配の傾斜を有している。これによりファンケース11の壁面に付着した油分はファンケース11の底面11bの傾斜に沿って油溜まり部3aに流下しやすくなっている。
【0067】
なおファンケース11などの排気が触れる各部材の表面には、オイルガード塗装が施されて撥油性が付与されている。これによりファンケース11に付着した油の流動が円滑に行われると共に、付着した油の拭取りを容易に行うことができるようになっている。また、オイルトレー3には親水性塗装が施されている。これによりオイルトレー3を水に浸すことで、オイルトレー3に付着している油が浮き上がって除去されやすくなっている。
【0068】
本実施の形態においては、オイルトレー3は化粧板2の固定部2bに磁力にて固定される。具体的には、化粧板2およびオイルトレー3のいずれか一方の部材は磁石1を有している。また化粧板2およびオイルトレー3のいずれか他方の部材は磁石1に吸着される材質よりなっている。
【0069】
図4に示されるように、複数(たとえば4つ)の磁石1の各々は、たとえば化粧板2の固定部2bに取り付けられている。具体的には、複数の磁石1の各々は、固定部2bの上面であって、固定部2bの磁石配置部2baに取り付けられている。磁石配置部2baの周囲は、たとえば板材の折り曲げ部により取り囲まれている。これにより下面視において磁石配置部2baが目視で確認しやすくなり、磁石1の磁石配置部2baへの位置合わせが容易となる。
【0070】
オイルトレー3の少なくともフランジ部3bは、磁石1に吸着される材質よりなっている。フランジ部3bは、たとえば強磁性体(鉄、コバルト、ニッケルなど)よりなっている。フランジ部3bが磁石1に磁力で吸着されることによりオイルトレー3が化粧板2に固定される。なおオイルトレー3の全体が、磁石1に吸着される材質よりなっていてもよい。
【0071】
図5に示されるように、オイルトレー3が化粧板2に取り付けられた状態において、オイルトレー3におけるフランジ部3bの全体は、化粧板2の固定部2bに対向している。フランジ部3bの全体は、固定部2b内に受け入れられている。つまりフランジ部3bの全体は、固定部2bによって周囲部2aに対して上方に窪んだ空間内に配置されている。この状態で、フランジ部3bの上面の全体は固定部2bの下面に接している。この状態で、磁石1とフランジ部3bの上下方向の間隔は、固定部2bの厚さに略等しい。
【0072】
<オイルトレーの化粧板への取り付け方法>
次に、本実施の形態における化粧板2に対するオイルトレー3の取り付け方法について
図4、
図6~
図8を用いて説明する。
【0073】
図8に示されるように、化粧板2にオイルトレー3を取り付ける際には、作業者がオイルトレー3の把手部3cを把持する。この状態で、オイルトレー3のフランジ部3bが、化粧板2の固定部2bに位置合わせされる。つまりフランジ部3bの全体が固定部2bと対向する状態となるようにオイルトレー3が化粧板2に対して位置合わせされる。この状態で、オイルトレー3が化粧板2に近付けられる。
【0074】
図4に示されるように、オイルトレー3が化粧板2に近付くと、磁石1の磁力によりオイルトレー3のフランジ部3bが磁石1に吸着される。これによりオイルトレー3が化粧板2に取り付けられる。
【0075】
図6(A)に示されるように、オイルトレー3が化粧板2に取り付けられた状態において、オイルトレー3のフランジ部3bの全体が、化粧板2の固定部2bと下面視において重畳している。
【0076】
図7(A)に示されるように、オイルトレー3が化粧板2に取り付けられた状態において、オイルトレー3におけるフランジ部3bの全体は、固定部2bによって周囲部2aに対して上方に窪んだ空間内に配置されている。つまりオイルトレー3は、フランジ部3bの全体が固定部2bにより窪んだ空間内に収納された収納位置に位置している。
【0077】
この収納位置で、フランジ部3bの上面の全体は固定部2bの下面に接している。また収納位置で、磁石1とフランジ部3bの上下方向の間隔は、固定部2bの厚さに略等しい。このようにフランジ部3bと磁石1との間の距離が小さいため、フランジ部3bは磁石1に強力に吸着される。これによりオイルトレー3が化粧板2に取り付けられた状態が保持される。
【0078】
図6(B)に示されるように、オイルトレー3のフランジ部3bが固定部2bに対してずれた場合、下面視において、フランジ部3bは固定部2bからはみ出す。これによりフランジ部3bは、下面視において段差2cの一部と重畳する。
【0079】
図7(B)に示されるように、この状態ではフランジ部3bと固定部2bとの間には、少なくとも段差2cの高さL1の隙間が空いている。この隙間により、磁石1がフランジ部3bを吸着する磁力が、
図7(A)に示される状態よりも弱くなる。これにより磁石1がフランジ部3bを吸着する磁力はオイルトレー3の自重より小さくなる。このためオイルトレー3を化粧板2に取り付けることができなくなる。
【0080】
また凸部2gが周囲部2aに配置されている場合、オイルトレー3のフランジ部3bが固定部2bに対してずれると、フランジ部3bは凸部2gに乗り上げる。これによりフランジ部3bと固定部2bとの間には、段差2cの高さL1と凸部2gの高さL2との合計の高さL3(=L1+L2)の隙間が空いている。この隙間により、磁石1がフランジ部3bを吸着する磁力がさらに弱くなる。このため化粧板2へのオイルトレー3の取り付けを確実に防止することができる。
【0081】
<変形例>
次に、本実施の形態のレンジフードの変形例について
図9を用いて説明する。
【0082】
上記実施の形態においては、オイルトレー3を固定部2bに固定する磁力を生じる部材として永久磁石1について説明した。しかしオイルトレー3を固定部2bに固定する磁力を生じる部材は電磁石であってもよい。
【0083】
図9に示されるように、電磁石101は、磁性材料よりなる芯101aと、芯101aの周りに巻き付けられたコイル101bとを有している。コイル101bには、操作部101cと電源101dとが接続されている。
【0084】
操作部101cは、たとえばスイッチであり、電磁石101への通電と非通電とを切り替える。操作部101cがON状態とされると、電源101dによりコイル101bが通電状態とされる。また操作部101cがOFF状態とされると、電源101dによりコイル101bが非通電状態とされる。
【0085】
また上記実施の形態においては、オイルトレー3がたとえば2つの互いに分離したフランジ部3bを有する場合について説明した。しかし、フランジ部3bは油溜まり部3aの外周全周に設けられていてもよい。
【0086】
また上記実施の形態においては、磁石1が化粧板2に取り付けられた構成について説明した。しかし磁石1はオイルトレー3に取り付けられており、化粧板2が磁石1に吸着される材質よりなっていてもよい。この場合、磁石1はオイルトレー3のフランジ部3bに取り付けられ、化粧板2の固定部2bが磁石1に吸着される材質よりなっていてもよい。
【0087】
<本実施の形態の効果>
本実施の形態によれば、
図2に示されるように、磁石1の磁力によりオイルトレー3が化粧板2に取り付けられる。このため化粧板2へのオイルトレー3の着脱が容易となる。
【0088】
また本実施の形態においては
図7(A)に示されるように、段差2cは、固定部2bの端部(辺2b1、2b2)から下側に突き出している。このため
図6(B)に示されるようにオイルトレー3が固定部2bにずれて配置された場合、オイルトレー3が段差2cに乗り上げる。これによりオイルトレー3を固定部2bに固定しようとする磁石1の磁力が弱まって、オイルトレー3を固定部2bに取り付けることが困難となる。したがって
図6(B)に示されるようにオイルトレー3が固定部2bにずれた状態で取り付けられることがなくなる。よってオイルトレー3は位置ずれのない状態でのみ固定部2bに取り付けられることとなるため、レンジフード使用時の振動などで外れにくくなる。したがってオイルトレー3が固定部2bから落下しにくくなる。
【0089】
また本実施の形態においては
図7(A)に示されるように、化粧板2は、周囲部2aにおいて下側に突き出した凸部2gを有する。これにより
図6(B)に示されるように、オイルトレー3が固定部2bにずれて配置された場合、オイルトレー3が段差2cだけでなく凸部2gにも乗り上げる。これによりオイルトレー3と固定部2bとを吸着しようとする磁力がさらに弱まって、ずれた状態ではオイルトレー3を固定部2bに取り付けることがさらに困難となる。したがってオイルトレー3が固定部2bにずれて配置されることがさらに確実に防止できる。
【0090】
また本実施の形態においては
図6(A)に示されるように、凸部2gは線状に延びている。このように凸部2gが線状に延びているため、オイルトレー3が固定部2bからずれたときに凸部2gと線接触する。このためオイルトレー3と凸部2gとの接触時における接触抵抗が点接触の場合と比較して小さくなる。よってオイルトレー3と凸部2gとが接触することによる傷の発生を抑制することができる。
【0091】
また本実施の形態においては
図6(A)に示されるように、凸部2gは、オイルトレー3の環形状を中心としたフランジ部3bの円周方向(図中ハッチング領域)に位置している。これにより環形状の油溜まり部3aの中心Cを回転中心としてフランジ部3bが固定部2bに対して円周方向にずれた場合に、フランジ部3bが凸部2g上に乗り上げる。このためオイルトレー3と固定部2bとを吸着しようとする磁力が弱まって、オイルトレー3を固定部2bに取り付けることが困難となる。
【0092】
また本実施の形態においては
図5に示されるように、オイルトレー3を固定部2bに取り付けるための磁力は永久磁石1により生じる。これにより電流を流すことなく磁力を発生させることができる。このため省電力化を図ることができる。
【0093】
また本実施の形態においては
図9に示されるように、オイルトレー3を固定部2bに取り付けるための磁力は電磁石101により生じる。これにより電磁石101への通電と非通電とを切り替えることによりオイルトレー3の固定部2bへの着脱が可能となる。
【0094】
また本実施の形態においては
図9に示されるように、レンジフード10は、電磁石101への通電と非通電とを切り替える操作部101cをさらに備える。これにより操作部101cを操作することで電磁石101への通電と非通電とを切り替えることが可能となる。
【0095】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0096】
1 磁石、2 化粧板、2a 周囲部、2b 固定部、2b1,2b2 辺、2ba 磁石配置部、2c,2e 段差、2d 取付部、2f,7aa 開口、2g 凸部、3 オイルトレー、3a 油溜まり部、3aa 底壁部、3ab 内周壁部、3ac 外周壁部、3b フランジ部、3c 把手部、3d 切欠き部、3e,4d 貫通孔、4 内側フード、5 整流板、6 排気用ファン、6a 上部支持板、6b 下部支持板、6c ファンブレード、7 外側フード、7a 上板、7b 枠体部、8 取付アダプタ、9 モータ、9a 本体部、9b 回転軸、10 レンジフード、11 ファンケース、11a 吸込口、11b 底面、12 本体ケース、101 電磁石、101a 芯、101b コイル、101c 操作部、101d 電源。