(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】プローブ針及びプローブユニット
(51)【国際特許分類】
G01R 1/067 20060101AFI20240412BHJP
【FI】
G01R1/067 H
(21)【出願番号】P 2020095573
(22)【出願日】2020-06-01
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】323004813
【氏名又は名称】株式会社TOTOKU
(74)【代理人】
【識別番号】110003904
【氏名又は名称】弁理士法人MTI特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100117226
【氏名又は名称】吉村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】深澤 雅章
(72)【発明者】
【氏名】岡田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】小澤 卓弥
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-025697(JP,A)
【文献】特開2007-322369(JP,A)
【文献】特開2019-152542(JP,A)
【文献】特開2008-196905(JP,A)
【文献】特開2017-215221(JP,A)
【文献】特開2009-074963(JP,A)
【文献】特開2021-189067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/06-1/073
G01R 31/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピン形状の金属導体の外周に絶縁被膜を有する胴体部と、前記金属導体の両端に該絶縁被膜を有しない端部とを有するプローブ針において、
前記金属導体は、先端形状が曲面であり、該曲面の曲率半径をR1とし、該金属導体の外径をD1とし、前記端部の長さをL1とし、前記絶縁被膜は、長手方向の端部形状が曲面であり、該曲面の曲率半径をR2とし、前記胴体部の外径をD2とし、前記
絶縁被膜の長手方向の端部形状が曲面になっている長手方向の長さをL2とし、
前記絶縁被膜の厚さをT1とすると、
前記金属導体は、R1<(D1/2)<L1であり、前記絶縁被膜は、R1<R2<(D2/2)及びL2>T1である、ことを特徴とするプローブ針。
【請求項2】
前記金属導体の外径が、8μm以上180μm以下の範囲内であり、前記胴体部の外径が10μm以上200μm以下の範囲内である、請求項1に記載のプローブ針。
【請求項3】
前記絶縁被膜の厚さが、1μm以上10μm以下の範囲内である、請求項1又は2に記載のプローブ針。
【請求項4】
被測定体側に配置された支持板と、検査装置側に配置された支持板と、それら少なくとも2つの支持板それぞれが備える案内穴に装着されるプローブ針とを有し、前記いずれかの支持板の案内穴の内面に前記プローブ針が接触するとともに、前記被測定体の電極に前記プローブ針を構成する金属導体の先端を接触させて行う検査に用いるプローブユニットであって、
前記プローブ針は、ピン形状の金属導体の外周に絶縁被膜を有する胴体部と、前記金属導体の両端に該絶縁被膜を有しない端部とを有するプローブ針において、
前記金属導体は、先端形状が曲面であり、該曲面の曲率半径をR1とし、該金属導体の外径をD1とし、前記端部の長さをL1とし、
前記絶縁被膜は、長手方向の端部形状が曲面であり、該曲面の曲率半径をR2とし、前記胴体部の外径をD2とし、前記
絶縁被膜の長手方向の端部形状が曲面になっている長手方向の長さをL2とし、
前記絶縁被膜の厚さをT1とすると、前記金属導体は、R1<(D1/2)<L1であり、前記絶縁被膜は、R1<R2<(D2/2)及びL2>T1である、ことを特徴とするプローブユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に電子部品及び基板等の導通検査に用いる検査用のプローブ針及びプローブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等に使用される高密度実装基板、又は、パソコン等に組み込まれるBGA(Ball Grid Array)やCSP(Chip Size Package)等のICパッケージ基板等、様々な回路基板が多く用いられている。このような回路基板は、実装の前後の工程において、例えば直流抵抗値の測定や導通検査等が行われ、その電気特性の良否が検査されている。電気特性の良否の検査は、電気特性を測定する検査装置に接続された検査装置用治具(以下、「プローブユニット」という。)を用いて行われ、例えば、プローブユニットに装着されたピン形状のプローブ針の先端を、その回路基板(以下「被測定体」ともいう。)の電極に接触させることにより行われている。プローブ針は、金属導体と、金属導体の少なくとも両端以外の領域に設けられた絶縁被膜とで構成されている。
【0003】
特許文献1には、そうしたプローブ針を効率よく製造することができる形状及びその製造方法が提案されている。そのプローブ針の形状及びその製造方法は、ピン形状の金属導体の外周に絶縁被膜を有するコンタクトプローブにおいて、(1)プローブの片端部又は両端部の形状が、金属導体の加工端面と絶縁被膜の加工端面とからなるものであり、その端部の形状が、半球形状、円錐形状、先端に半球形状を有する円錐形状、及び、先端に平坦形状を有する円錐形状から選ばれるいずれかであること、及び/又は、(2)プローブの片端部又は両端部が、研削加工により先端部が露出した金属導体の加工端面と、その金属導体の加工端面と同時に研削加工され、その金属導体の加工端面の形状に沿った形状からなる絶縁被膜の加工端面とで形成されるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、プローブ針の先端形状として種々の形状が提案されている。しかし、特許文献1の
図3に示すように、絶縁被膜の端部形状が金属導体加工端面形状を延長したテーパー形状となっている場合は、金属導体の露出部分が小さくなり、金属導体の先端と検査装置側の電極部との接触不具合が生じる可能性がある。
【0006】
また、絶縁被膜の端部の形状を長手方向に対してほぼ直角に加工した場合は、検査装置側のガイド板の案内穴にプローブ針を挿入する際、絶縁被膜の端部周縁が引っかかり易くなるという問題が生じるおそれがある。
【0007】
また、プローブユニットにおいて、プローブ針の撓み方向を一定方向にするために、プローブ針を例えば0.5~5°程度傾斜させ、検査装置側の電極に対してプローブ針の先端が斜めに接触することがある。この場合、絶縁被膜の端部周縁が案内穴の内面に当たり、検査時の繰り返し摺動により、プローブ針から絶縁被膜が剥離したり、絶縁被膜の端部周縁が案内穴の内面に傷をつけたりする等の問題が生じるおそれがある。また、特許文献1の
図3のように、露出した金属導体の先端の長さが短いと、電極部との接触不具合が生じるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、主に電子部品及び基板等の導通検査に用いる検査用プローブ針の検査装置側の端部形状において、絶縁被膜の端部周縁がガイド板(以下、本願では「支持板」という。)の案内穴の内面に引っかかり難く、且つ検査装置側の電極部との接触を確実に行うことができる製造容易なプローブ針及びプローブユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係るプローブ針は、ピン形状の金属導体の外周に絶縁被膜を有する胴体部と、前記金属導体の両端に該絶縁被膜を有しない端部とを有するプローブ針において、前記金属導体は、先端形状が曲面であり、該曲面の曲率半径をR1とし、該金属導体の外径をD1とし、前記端部の長さをL1とし、前記絶縁被膜は、長手方向の端部形状が曲面であり、該曲面の曲率半径をR2とし、前記胴体部の外径をD2とし、前記曲面になっている長手方向の長さをL2とし、厚さをT1とすると、前記金属導体は、R1<(D1/2)<L1であり、前記絶縁被膜は、R1<R2<(D2/2)及びL2>T1である、ことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、(ア)金属導体の先端の曲率半径R1は、金属導体の半径(D1/2)よりも小さく、且つ露出した金属導体の端部の長手方向の長さL1は、金属導体の半径(D1/2)よりも大きいので、金属導体の露出先端が長くなって、プローブ針の先端と検査装置側の電極部との接触が良好になる。その結果、両者の接触不具合をなくすことができる。また、(イ)絶縁被膜の端部を直角とはせずに曲面としたので、案内穴にプローブ針を挿入する際、絶縁被膜の端部に角がなく、絶縁被膜の端部周縁が引っかかり難くなる。また、(ウ)絶縁被膜2の端部の曲率半径R2を金属導体の先端の曲率半径R1よりも大きくし、胴体部の半径(D2/2)よりも小さくし、且つ絶縁被膜の端部の長手方向の長さL2を絶縁被膜の厚さT1よりも大きくしているので、検査装置側の支持板の案内穴に挿入されたプローブ針が傾斜しても、案内穴の内面にはそうした絶縁被膜の端部が接触する。その結果、検査を繰り返して案内穴の内面とプローブ針の絶縁被膜の端部周縁とが摺動接触した場合にも、絶縁被膜の剥がれを防止でき、案内穴の内面への傷つけ等の不具合を防止できる。
【0011】
本発明に係るプローブ針において、前記金属導体の外径が、8μm以上180μm以下の範囲内であり、前記胴体部の外径が10μm以上200μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0012】
本発明に係るプローブ針において、前記絶縁被膜の厚さが、1μm以上10μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0013】
(2)本発明に係るプローブユニットは、被測定体側に配置された支持板と、検査装置側に配置された支持板と、それら少なくとも2つの支持板それぞれが備える案内穴に装着されるプローブ針とを有し、前記いずれかの支持板の案内穴の内面に前記プローブ針が接触するとともに、前記被測定体の電極に前記プローブ針を構成する金属導体の先端を接触させて行う検査に用いるプローブユニットであって、
前記プローブ針は、ピン形状の金属導体の外周に絶縁被膜を有する胴体部と、前記金属導体の両端に該絶縁被膜を有しない端部とを有するプローブ針において、前記金属導体は、先端形状が曲面であり、該曲面の曲率半径をR1とし、該金属導体の外径をD1とし、前記端部の長さをL1とし、前記絶縁被膜は、長手方向の端部形状が曲面であり、該曲面の曲率半径をR2とし、前記胴体部の外径をD2とし、前記曲面になっている長手方向の長さをL2とし、厚さをT1とすると、前記金属導体は、R1<(D1/2)<L1であり、前記絶縁被膜は、R1<R2<(D2/2)及びL2>T1である、ことを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、上記本発明に係るプローブ針を有するので、金属導体の露出先端が長くなって、プローブ針の先端と検査装置側の電極部との接触が良好になる。その結果、両者の接触不具合をなくすことができる。また、案内穴にプローブ針を挿入する際、絶縁被膜の端部に角がなく、絶縁被膜の端部周縁が引っかかり難くなる。また、検査装置側の支持板の案内穴に挿入されたプローブ針が傾斜しても、案内穴の内面にはそうした絶縁被膜の端部が接触するので、検査を繰り返して案内穴の内面とプローブ針の絶縁被膜の端部周縁とが摺動接触した場合にも、絶縁被膜の剥がれを防止でき、案内穴の内面への傷つけ等の不具合を防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、主に電子部品及び基板等の導通検査に用いる検査用プローブ針の検査装置側の端部形状において、絶縁被膜の端部周縁が支持板の案内穴の内面に引っかかり難く、且つ検査装置側の電極部との接触を確実に行うことができる製造容易なプローブ針及びプローブユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係るプローブ針の一例を示す説明図である。
【
図2】本発明に係るプローブユニットの一例を示す説明図ある。
【
図3】本発明に係るプローブ針の寸法形状を説明するための断面図である。
【
図4】案内穴に傾斜したプローブ針の絶縁被膜が接触する場合の形態図である。
【
図5】案内穴に傾斜したプローブ針の絶縁被膜が接触する場合の従来の形態図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るプローブ針及びプローブユニットについて図面を参照しつつ説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の技術的思想の一例であり、本発明の技術的範囲は、以下の記載や図面だけに限定されるものではなく、同様の技術的思想の発明を含んでいる。
【0018】
[プローブ針]
本発明に係るプローブ針10は、
図1~
図3に示すように、ピン形状の金属導体1の外周に絶縁被膜2を有する胴体部6と、その金属導体1の両端に絶縁被膜2を有しない端部3とを有するものである。その特徴は、支持板30の案内穴31の内面32に接触するプローブ針10において、金属導体1は、先端1bの形状が曲面であり、その曲面の曲率半径をR1とし、金属導体1の外径をD1とし、端部3の長さをL1とし、他方、絶縁被膜2は、長手方向Yの端部7bの形状が曲面であり、その曲面の曲率半径をR2とし、胴体部6の外径をD2とし、曲面になっている長手方向Yの長さをL2とし、厚さをT1とすると、金属導体1は、R1<(D1/2)<L1であり、絶縁被膜2は、R1<R2<(D2/2)及びL2>T1である。
【0019】
このプローブ針10において、(ア)金属導体1の先端1bの曲率半径R1は、金属導体1の半径(D1/2)よりも小さく、且つ露出した金属導体1の端部3の長手方向Yの長さL1は、金属導体1の半径(D1/2)よりも大きいので、金属導体1の露出先端が長くなって、プローブ針10の先端1bと検査装置側の電極51との接触が良好になる。その結果、両者の接触不具合をなくすことができる。
【0020】
また、(イ)絶縁被膜の端部を直角とはせずに曲面としたので、案内穴にプローブ針を挿入する際、絶縁被膜の端部に角がなく、絶縁被膜の端部周縁が引っかかり難くなる。
【0021】
また、(ウ)絶縁被膜2の端部の曲率半径R2を金属導体の先端の曲率半径R1よりも大きくし、胴体部の半径(D2/2)よりも小さくし、且つ絶縁被膜の端部の長手方向の長さL2を絶縁被膜の厚さT1よりも大きくしているので、検査装置側の支持板の案内穴に挿入されたプローブ針が傾斜しても、案内穴の内面にはそうした絶縁被膜の端部が接触する。その結果、検査を繰り返して案内穴の内面とプローブ針の絶縁被膜の端部周縁とが摺動接触した場合にも、絶縁被膜の剥がれを防止でき、案内穴の内面への傷つけ等の不具合を防止できる。
【0022】
各構成要素について詳しく説明する。
【0023】
プローブ針10は、
図1~
図3に示すように、プローブユニット60を構成する検査装置側の第2支持板30の案内穴31の内面32に先端1bが接触するプローブ針である。なお、プローブユニット60の被測定体側の形態は特に限定されないが、以下の説明では、第1支持板20の案内穴周縁に絶縁被膜2の端部7aが当たるとともに、被測定体11の電極12に金属導体1の先端1aが接触するものを例示することができる。
【0024】
なお、先端1bとは、プローブユニットを構成する支持板の案内穴の内面に、プローブ針の絶縁被膜の端部が接触する側のプローブ針の先端のことであり、
図2の例では、プローブユニット60を構成する第2支持板30の案内穴31の内面32に、プローブ針10の絶縁被膜2の端部7bが接触する場合におけるプローブ針10の検査装置側の先端のことである。一方、先端1aとは、プローブユニットを構成する支持板の案内穴の周縁端部に、プローブ針の絶縁被膜の端部が当たる側のプローブ針の先端のことであり、
図2の例では、プローブユニット60を構成する第1支持板20の案内穴21の周縁に、プローブ針10の絶縁被膜2の端部7aが当たる場合におけるプローブ針10の被測定体側の先端のことである。
【0025】
(金属導体)
金属導体1は、所定の長さに加工されてなるピン形状の導体であり、高い導電性と高い弾性率を有する金属線(「金属ばね線」ともいう。)を切断加工されている。金属導体1に用いられる金属としては、広い弾性域を持つ金属を挙げることができ、例えば銀銅合金、錫銅合金、ベリリウム銅合金等の銅合金、パラジウム合金、タングステン、レニウムタングステン、鋼(例えば高速度鋼:SKH)等を好ましく用いることができる。特に、後述の実施例に示すように、高強度特性を備え且つ細径化も実現できるタングステン、レニウムタングステン等が好ましい。
【0026】
金属導体1は、通常、上記の金属が所定の径の線状導体となるまで冷間又は熱間伸線等の塑性加工が施される。金属導体1の外径D1は、近年の狭ピッチ化の要請から、細径化が求められており、プローブユニット60において隣り合う各プローブ針10の隙間に応じて、8μm以上、120μm以下の範囲内、好ましくは10~110μmの範囲内から任意に選択することができる。
【0027】
金属導体1の端部3(絶縁被膜2が設けられていない部分)においては、金属導体1と、電極12又は検査装置のリード線50との接触抵抗値の上昇を抑制するために、めっき層が必要に応じて端部3に設けられていてもよい。めっき層を形成する金属としては、ニッケル、金、ロジウム等の金属や金合金等の合金を挙げることができる。めっき層は、単層であってもよいし複層であってもよい。複層のめっき層としては、ニッケルめっき層上に金めっき層が形成されたものを好ましく挙げることができる。めっき層は、通常、絶縁被膜2を形成した金属導体1を切断した後、絶縁被膜2の剥離加工と金属導体1の端部加工を行った後に形成される。こうしためっき層は、端部3だけに設けられていてもよいが、絶縁被膜2を設ける前に金属導体1の全体に設けられていてもよい。
【0028】
なお、プローブ針10をプローブユニット60に装着し易くし、且つ、プローブユニット60の使用時においてプローブ針10の先端1aが第1支持板20の案内穴21の周縁に引っかかることによりプローブ針10の動きが妨げられるのを防止する観点からは、金属導体1の真直度が高いことが好ましく、具体的には真直度が曲率半径Rで1000mm以上であることが好ましい。
【0029】
(端部の形状)
金属導体1の被測定体側の先端1aの形状は特に限定されないが、半球形状、円錐形状、先端に半球形状を有する円錐形状、先端に平坦形状を有する円錐形状、等から選ばれるいずれかとすることができる。ここでいう「半球形状」、「円錐形状」は、正確な半球や円錐を含むが、略円錐や略半球も含む。
【0030】
一方、金属導体1の検査装置側の先端1bの形状は、
図3に示すように、曲面である。その曲面は、所定の曲率半径R1を有するものであればよく、その曲率半径R1は、金属導体1の半径(D1/2)よりも小さく、且つ露出した金属導体1の端部3の長手方向Yの長さL1は、金属導体1の半径(D1/2)よりも大きい。すなわち、R1<(D1/2)<L1、の関係になっている。こうすることにより、金属導体1の露出先端が長くなって、プローブ針10の先端1bと検査装置側の電極51との接触が良好になる。その結果、両者の接触不具合をなくすことができる。
【0031】
金属導体1の直径D1は上記のように8μm以上120μm以下の範囲内であるので、曲率半径R1は実際の金属導体1の半径未満である。その曲率半径R1の下限は特に限定されないが、半径の50%を下限とすることができる。また、露出した金属導体1の端部3の長手方向Yの長さL1の上限も特に限定されないが、金属導体1の半径の10倍を上限とすることができる。
【0032】
先端1bの曲率半径R1は、砥石等による研削や研磨により、任意の曲率半径R1に加工することができる。また、長さL1は、絶縁被膜2を例えばレーザー剥離する長さを制御することで、所定の長さとすることができる。
【0033】
(絶縁被膜)
絶縁被膜2は、
図1及び
図2に示すように、金属導体1の少なくとも両側の端部3,3以外の領域の外周に設けられている。絶縁被膜2を有する部分は胴体部6といい、絶縁被膜2が設けられていない部分は端部3といい、被測定体側を先端1aで表し、検査装置側を先端1bで表す。
【0034】
絶縁被膜2の構成材料は特に限定されないが、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド及びフッ素樹脂から選ばれる1種又は2種以上の樹脂材料で構成されていることが好ましい。そして、上記1種又は2種以上の樹脂材料により、単層又は2層以上で形成されている。これら絶縁被膜2の形成は、通常、長尺の金属導体1上に連続エナメル焼き付け方法によって行うことが好ましいが、電着塗装等の公知の他の方法で形成したものであってもよい。
【0035】
絶縁被膜2の厚さT1は、1μm以上20μm以下の範囲内である。絶縁被膜2は、単層でも2層以上の積層(3層でも4層でもよい)でもよく、特に限定されないが、顔料や染料を含有させて他のプローブ針10と識別可能にすることが便利である。顔料と染料はいずれでもよいが、絶縁被膜2の強度を低下させないという観点からは、顔料を用いることが好ましい。顔料としては、一般的にエナメル線の識別に採用されている各種顔料を採用することができる。そうした顔料を樹脂に含有させたエナメル塗料とし、エナメル焼き付けして、着色した絶縁被膜2を形成することができる。
【0036】
絶縁被膜2が設けられた胴体部6の外径D2は、上記した金属導体1の場合と同様、被測定体11の電極12の狭ピッチ化の要請から、細径化が求められており、10μm以上、200μm以下の範囲内、好ましくは13μm以上、180μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0037】
(絶縁被膜の端部形状)
絶縁被膜2は、長手方向Yの検査装置側Y2の端部7bの形状が曲面である。絶縁被膜2の端部7bを直角とはせずに曲面としたので、いずれかの案内穴(21,31)からプローブ針10を挿入する場合であっても、絶縁被膜2の端部7bに角がなく、絶縁被膜2の端部周縁が引っかかり難くなる。
【0038】
また、端部7bの曲率半径R2と、胴体部6の外径D2と、曲面になっている長手方向Yの長さL2と、厚さT1との関係は、R1<R2<(D2/2)、及び、L2>T1、になっている。なお、長さL2は、絶縁被膜2の厚さT1が一定厚さから減少し始める箇所を基点とし、その基点から端部7bの先端までの長さとして求める。こうすることにより、
図4に示すように、検査装置側の第2支持板30の案内穴31に挿入されたプローブ針10が仮に傾斜した場合であっても、案内穴31の内面32にはそうした絶縁被膜2の端部7bが接触する。その結果、検査を繰り返して案内穴31の内面32とプローブ針10の絶縁被膜2の端部周縁とが摺動接触した場合にも、絶縁被膜2の剥がれを防止でき、案内穴31の内面32への傷つけ等の不具合を防止できる。
【0039】
なお、絶縁被膜2の端部7bの曲率半径R2が金属導体1の先端1bの曲率半径R1よりも小さい場合は、絶縁被膜2の端部周縁が案内穴31に当たる面積が小さくなるので、当たった部分の圧力が大きくなり、案内穴31の内面32を傷つけ易くなる。絶縁被膜2の端部7bの曲面形状は、幾何的な円の曲面形状でなくてもよく、楕円のような潰れた曲面形状でもよい
【0040】
絶縁被膜2の厚さT1は上記のように1μm以上20μm以下の範囲内であるので、その厚さT1よりも大きい長さL2の上限は特に限定されないが、厚さT1の5倍を上限とすることができる。絶縁被膜2の曲率半径R2と端部7bの長さL2は、砥石等による研削や研磨により、任意の曲率半径R2と長さL2に加工することができる。
【0041】
(プローブユニット)
本発明に係るプローブユニット60は、
図2に示すように、被測定体側に配置された支持板20と、検査装置側に配置された支持板30と、それら少なくとも2つの支持板20,30それぞれが備える案内穴21,31に装着されるプローブ針10とを有し、前記いずれかの支持板の案内穴の内面にプローブ針10が接触するとともに、被測定体11の電極12にプローブ針10を構成する金属導体1の先端1aを接触させて行う検査に用いるプローブユニットである。そして、プローブ針10は、ピン形状の金属導体1の外周に絶縁被膜2を有する胴体部6と、金属導体1の両端に絶縁被膜2を有しない端部3とを有するものである。そして、その特徴は、支持板30の案内穴31の内面32に接触するプローブ針10において、金属導体1は、先端1bの形状が曲面であり、その曲面の曲率半径をR1とし、金属導体1の外径をD1とし、端部3の長さをL1とし、他方、絶縁被膜2は、長手方向Yの端部7bの形状が曲面であり、その曲面の曲率半径をR2とし、胴体部6の外径をD2とし、曲面になっている長手方向Yの長さをL2とし、厚さをT1とすると、金属導体1は、R1<(D1/2)<L1であり、絶縁被膜2は、R1<R2<(D2/2)及びL2>T1である。
【0042】
こうしたプローブユニット60においても、本発明に係るプローブ針10を有するので、金属導体1の露出先端が長くなって、プローブ針10の先端1bと検査装置側の電極部51との接触が良好になる。その結果、両者の接触不具合をなくすことができる。また、先端1b側から案内穴にプローブ針10を挿入する際、絶縁被膜2の端部7bに角がなく、絶縁被膜2の端部周縁が引っかかり難くなる。また、検査装置側の第2支持板30の案内穴31に挿入されたプローブ針10が傾斜しても、案内穴31の内面32にはそうした絶縁被膜2の端部7bが接触するので、検査を繰り返して案内穴31の内面32とプローブ針10の絶縁被膜2の端部周縁とが摺動接触した場合にも、絶縁被膜2の剥がれを防止でき、案内穴31の内面32への傷つけ等の不具合を防止できる。
【0043】
なお、検査装置側の第2支持板30は、胴体部6の外径D2よりも若干大きい内径D3の案内穴31を有している。一方、被測定体側の第1支持板20は、金属導体1の外径D1よりも若干大きい内径の案内穴21を有している。若干大きいとは、僅かなクリアランス(例えば1~3μm)だけ大きいことを意味している。案内穴21は、胴体部6の外径D2よりも小さいので、その案内穴21をプローブ針10がすり抜けることはなく、絶縁被膜2の端部7aが案内穴周縁のエッジに当接する。案内穴21は、一本一本のプローブ針10をガイドし、被測定体11の電極12に金属導体1の被測定体側先端1aを正確に接触させるようにガイドする。
【0044】
プローブユニット60は、
図2の例では、被測定体11の電気特性を検査する際、プローブ針10と被測定体11とが対応するように位置制御される。電気特性の検査は、プローブユニット60を上下にストロークさせ、プローブ針10の弾性力を利用して被測定体11の電極12にプローブ針10の被測定体側先端1aを所定の圧力で押し当てることにより行われる。このとき、プローブ針10の検査装置側先端1bはリード線50の電極部51に接触し、被測定体11からの電気信号がそのリード線50を通って検査装置(図示しない。)に送られる。
【実施例】
【0045】
実施例と比較例により具体的に説明する。
【0046】
[実施例1]
金属導体1として、長尺のレニウムタングステン線(外径D1:30μm)を用いた。絶縁被膜2は単層構造とし、ポリエステル系エナメル塗料を用い、厚さT1を4μmで形成した。絶縁被膜2が形成された長尺のプローブ針を定尺切断機で切断して長さ10mmの絶縁被膜付きプローブ針を切り出し、その絶縁被膜付きプローブ針の両端部の所定長さをレーザー剥離し、実施例1のプローブ針10を作製した。胴体部6の外径D2は38μmであった。
【0047】
このプローブ針10において、先端1bの曲率半径R1は、砥石研磨により14μmの曲率半径R1に加工し、長さL1は、端部3の絶縁被膜2をエキシマレーザーで剥離して20μmにした。絶縁被膜2の端部7bの曲率半径R2と長さL2は、出力を下げたエキシマレーザーを照射して徐々に削って、18μmの曲率半径R2と13μmの長さL2に加工した。これらの寸法を表1に示した。
【0048】
[実施例2~8、比較例1~3]
実施例2~8及び比較例1~3では、表1に示す各寸法となるように加工してそれぞれのプローブ針10を作製した。なお、金属導体1と絶縁被膜2の材質等については実施例1と同じにした。
【0049】
[評価]
評価は、
図4及び
図5に示すように、検査装置側の第2支持板30の案内穴31にプローブ針10を挿入し、絶縁被膜2の端部7bが案内穴31の内面32に摺動接触するように傾けた状態で350000回繰り返しストローク(ストローク長:0.2mm)させた。評価は、案内穴31の内面が削れない、絶縁被膜2が剥がれない、プローブ針10の先端1bと検査装置側の電極部51との接触不具合がない、の全て満たすものを「○」とし、削れが確認されたものを「×」とした。
【0050】
【符号の説明】
【0051】
1 金属導体
1a 被測定体側の先端
1b 検査装置側の先端
2 絶縁被膜
3 端部
4 めっき層
6 胴体部
7 案内穴の周縁に当接する絶縁被膜端部
7a 絶縁被膜端部
7b 絶縁被膜端部
10 プローブ針
11 被測定体
12 電極
20 第1支持板
21 案内穴
30 第2支持板
31 案内穴
32 内面
40 リード線用の保持板
50 リード線
51 電極部
60 プローブユニット
D1 金属導体の外径
D2 胴体部の外径
D3 案内穴の内径
R1 金属導体の先端の曲率半径
R2 絶縁被膜の端部の曲率半径
L1 端部の長手方向の長さ
L2 絶縁被膜の端部の長手方向の長さ
T1 絶縁被膜の厚さ