(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】検体採取キット
(51)【国際特許分類】
G01N 1/10 20060101AFI20240412BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
G01N1/10 V
G01N33/48 S
G01N1/10 N
(21)【出願番号】P 2020137740
(22)【出願日】2020-08-18
【審査請求日】2023-05-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 検体採取キットの配布、令和2年6月13日(配布日) [刊行物等] 検体採取キットの配布、令和2年6月18日(配布日) [刊行物等] 検体採取キットについての説明会、令和2年7月3日(公開日) [刊行物等] 検体採取キットについての説明会、令和2年7月7日(公開日) [刊行物等] https://www.cuc-id.com/news/details/445/(掲載アドレス)令和2年7月7日(公開日) [刊行物等] 検体採取キットの配布、令和2年7月9日(配布日) [刊行物等] 検体採取キットの説明資料の配布、令和2年7月17日(配布日) [刊行物等] 検体採取キットの説明資料の配布、令和2年7月20日(配布日) [刊行物等] 検体採取キットについての説明会、令和2年7月21日(公開日) [刊行物等] 検体採取キットの説明資料の配布、令和2年7月25日(配布日) [刊行物等] 検体採取キットの説明資料の配布、令和2年7月28日(配布日) [刊行物等] 検体採取キットの説明資料の配布、令和2年7月29日(配布日) [刊行物等] 検体採取キットの説明資料の配布、令和2年7月31日(配布日) [刊行物等] 検体採取キットの説明資料の配布、令和2年7月31日(配布日) [刊行物等] 検体採取キットの説明資料の配布、令和2年8月1日(配布日) [刊行物等] 検体採取キットの説明資料の配布、令和2年8月14日(配布日) [刊行物等] 検体採取キットの説明資料の配布、令和2年8月16日(配布日) [刊行物等] 検体採取キットの説明資料の配布、令和2年8月18日(配布日)
(73)【特許権者】
【識別番号】520232161
【氏名又は名称】株式会社シーユーシー・アイデータ
(73)【特許権者】
【識別番号】591122956
【氏名又は名称】株式会社LSIメディエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 重人
(72)【発明者】
【氏名】三柴 雅昭
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/038382(WO,A1)
【文献】特開昭61-051568(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0116205(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0012701(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0023446(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-1/44
G01N 33/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
唾液を採取するための検体採取キットであって、
唾液採取用の綿棒と、前記綿棒を差し込まれて採取した唾液を保存する保存容器とを収容する個装袋と、
前記綿棒を差し込まれた前記保存容器
を収納するため
の収納部を有する収納体と、
前記保存容器を前記収納部に収納した前記収納体を包み込むための緩衝材と、
前記緩衝材で包まれた前記収納体を密封して収容するための収容袋と、を備え
、
前記個装袋は、1人の被検者に対して用意されており、
前記綿棒、前記綿棒を収容するパッケージ、または前記個装袋の少なくとも一つには、被検者の属性情報を文字印刷したラベルが被検者に提供される前に貼付されており、
前記保存容器には、被検者の識別情報をコード化したコード情報を印刷したラベルが被検者に提供される前に貼付されており、
前記保存容器には、被検者の属性情報を文字印刷したラベルが貼付されていない、
ことを特徴とする検体採取キット。
【請求項2】
前記収容袋を入れる配送用の箱容器をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の検体採取キット。
【請求項3】
前記保存容器を前記収納部に収納した前記収納体は、折りたたまれた状態で前記緩衝材により包み込まれる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の検体採取キット。
【請求項4】
前記収納体は、吸水性材料で形成される、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の検体採取キット。
【請求項5】
前記個装袋は、透明または半透明の材料により形成され、
前記収納体は、不透明材料で形成されている、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の検体採取キット。
【請求項6】
被検者が自分で検体を採取するための検体採取具と、採取した検体を保存する保存容器と、前記検体採取具と前記保存容器とを収容する個装袋とを備える検体採取キットであって、
前記個装袋は、1人の被検者に対して用意されており、
前記検体採取具、前記検体採取具を収容するパッケージ、または前記個装袋の少なくとも一つには、被検者の属性情報を文字印刷したラベルが被検者に提供される前に貼付されており、
前記保存容器には、被検者の識別情報をコード化したコード情報を印刷したラベルが被検者に提供される前に貼付されており、
前記保存容器には、被検者の属性情報を文字印刷したラベルが貼付されていない、
ことを特徴とする検体採取キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の検体を採取するための検査キットに関する。
【背景技術】
【0002】
PCR(Polymerase Chain Reaction)検査は、対象とするウイルスの遺伝子を選択的に増幅して、被検者がウイルスに感染しているか調べる検査である。PCR検査では血液、糞便、体液などさまざまな検体を使用できるが、2019年12月末に発生した、いわゆる新型コロナウイルスのPCR検査では、主として鼻咽頭ぬぐい液が検体として使用される。鼻咽頭ぬぐい液の採取に際し、医療従事者は被検者の鼻孔から滅菌綿棒を挿入するため、被検者のくしゃみやせきを誘発する場合があり、感染リスクにさらされる。このため医療従事者は、サージカルマスクと手袋に加え、ゴーグルやフェイスシールドといった眼の防護具および長袖ガウンを装着する必要がある。また現実には、鼻咽頭ぬぐい液を採取する医療従事者を多数確保することが容易でなく、PCR検査数が制限される要因にもなっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
2020年6月2日、厚生労働省は、新型コロナウイルスについて、唾液からのPCR検体採取を承認した。新型コロナウイルス等の感染症の検査においては、被検者から検体を採取する際等に、医療従事者等への感染リスクや、被検者の個人情報の漏洩リスクがあることが課題である。そこで、この承認を受けて本発明者らは、これらのリスクの低減を実現することを目的として、安全かつ簡単に被検者の検体を採取するための検体採取キットを開発した。
【0004】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、1つの目的は、被検者が自分で検体を採取するための検体採取キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、唾液を採取するための検体採取キットであって、唾液採取用の綿棒と、綿棒を差し込まれて採取した唾液を保存する保存容器とを収容する個装袋と、綿棒を差し込まれた保存容器を個別に収納するための複数の収納部を有する収納体と、保存容器を収納部に収納した収納体を包み込むための緩衝材と、緩衝材で包まれた収納体を密封して収容するための収容袋と、を備える。
【0006】
本発明の別の態様もまた、検体採取キットである。この検体採取キットは、被検者が自分で検体を採取するための検体採取具と、採取した検体を保存する保存容器と、検体採取具と保存容器とを収容する個装袋とを備え、保存容器に、被検者の識別情報をコード化したコード情報を印刷したラベルが貼付されており、個装袋または検体採取具に、被検者の属性情報を文字印刷したラベルが貼付されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被検者が自分で検体を採取するための検体採取キットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】企業に配送される段ボール箱を示す図である。
【
図2】唾液採取キットに含まれる検査用具の例を示す図である。
【
図3】保存容器を一時的に置くためのラックの例を示す図である。
【
図4】綿棒を差し込まれた保存容器を収納するための収納体の例を示す図である。
【
図5】収納体を包み込むための緩衝材の例を示す図である。
【
図6】緩衝材で包まれた収納体を収容するための収容袋の例を示す図である。
【
図7】収納体を収容した収容袋を入れる配送用の箱容器の例を示す図である。
【
図9】綿棒が差し込まれた保存容器を示す図である。
【
図10】保存容器を収納部に収納する様子を示す図である。
【
図11】折りたたまれた状態の収納体を示す図である。
【
図12】緩衝材に3つの収納体を入れた状態を示す図である。
【
図13】収容袋に収納体が収容された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。なお実施例は例示であり、本発明は下記の構成に限定されるものではない。
実施例の検体採取キットは、PCR検査を希望する企業等に提供され、当該企業等に所属する被検者(たとえば従業員や職員等)が自分の検体を採取するために利用される。検査キット業者は当該企業等からの依頼を受けて、検体採取キットを段ボール箱に梱包し、当該企業等に配送する。実施例において検体採取キットは、被検者が自分の唾液を採取するための唾液採取キットである。
【0010】
PCR検査を希望する企業等は、検査キット業者に唾液採取キットの提供を依頼する際、検査を受診する複数の被検者の氏名、性別などの属性情報をあわせて通知する。検査キット業者は、複数の被検者の属性情報を受け取ると、各被検者の属性情報を文字印刷(テキスト印刷)したラベルおよび各被検者の識別情報をコード化したコード情報を印刷したラベルを作成する。実施例において検査キット業者は、被検者の属性情報を文字印刷したラベルを、唾液採取具および唾液保存容器を収容する個装袋に貼り付け、被検者の識別情報をコード化したコード情報を印刷したラベルを、唾液保存容器に貼り付ける。検査キット業者は、被検者の属性情報を文字印刷したラベルを、唾液採取具に直接または間接的に貼り付けてもよい。検査キット業者は、複数種類の検査用具からなる唾液採取キットを段ボール箱に梱包し、当該企業等に配送する。段ボール箱の配送は、配送業者により行われてよい。
【0011】
実施例において唾液採取キットを構成する検査用具は、器具だけでなく、器具を収容する袋体や、使用説明書など、検体採取および採取した検体の配送に使用する物を含む。なお検査用具にラベルを貼り付けるとは、検査用具に直接ラベルを貼り付ける場合だけでなく、検査用具に付随する別の検査用具にラベルを貼り付ける場合も含む。たとえば唾液採取具にラベルを貼付しにくい場合には、当該唾液採取具を収容するパッケージに、ラベルが貼り付けられてもよい。実施例では、唾液採取具を収容するパッケージにラベルが貼り付けられている場合に、当該パッケージに当該唾液採取具のみが収容されているのであれば、唾液採取具に間接的にラベルが貼り付けられているものとする。各被検者に検査用具が提供される前に、予め検査キット業者において各ラベルが検査用具に貼り付けられていることにより、唾液を採取する際又は採取後に、被検者又は医療従事者等が、貼付ラベルに属性情報を記入または入力する必要がなく、または貼付ラベルのコードと紐づけする作業等をする必要がないため、検体採取現場での被検者や医療従事者等(依頼企業のスタッフ等を含む)の労力を低減できる。
【0012】
属性情報を文字印刷したラベルは、被検者が自分の検査用具を認識できれば、貼付する場所や数に制限はないが、個人情報の漏洩リスクを低減するために、必要最低限の貼付とするのが好ましい。被検者の属性情報を文字印刷したラベルは、唾液採取具、または唾液保存容器を収容する個装袋の少なくとも一つに直接または間接的に貼り付けられてよい。
【0013】
唾液採取キットを受け取った企業等において、被検者は、自分の属性情報を文字印刷したラベルが貼り付けられた個装袋に収容された検査用具を使用して、唾液を採取する。唾液採取が被検者自身によって行われ、医療従事者等によるサポートを必要としないため、検体採取時の医療従事者等の感染リスクを低減できる。複数の被検者から採取された検体は、段ボール箱に同梱されていた箱容器に入れられて、保健所などの検査機関に配送される。なお実施例では、唾液採取キットが複数人用の検査用具を含むことを前提とするが、PCR検査を希望する個人に1人用の検査用具を含む唾液採取キットが提供されてもよい。
【0014】
図1は、検査キット業者から企業に配送される段ボール箱1を示す。段ボール箱1に梱包されている唾液採取キット2は、安全かつ簡単な唾液採取を実現するために、
図2に示す検査用具を含み、好ましくは
図3~
図7に示す検査用具を選択的に含んでよい。
【0015】
図2は、唾液採取キット2に含まれる検査用具の一例を示す。唾液採取キット2は、唾液採取用の綿棒12と、唾液採取した綿棒12を保存する保存容器14とを含む。段ボール箱1に梱包されている時点では、綿棒12と保存容器14はセットで個装袋10に収容されている。
図2には、綿棒12および保存容器14を個装袋10から取り出した状態が示されている。実施例の個装袋10はチャック付きの袋体であるが、たとえば綿棒12および保存容器14を収容した状態で密封されていて、個装袋10を破くことで綿棒12および保存容器14が取り出されてもよい。
【0016】
綿棒12は唾液採取具であって、先端に検体採取用の滅菌済み綿球13を有し、パッケージ11に密封して収容されている。保存容器14は、上端を開放された有底円筒形状の容器であり、下端は半球状に形成されていてよい。保存容器14の上端はキャップ15で封止されている。個装袋10はチャック付きビニール袋であり、被検者はチャックを開いて、中に収容されているパッケージ11および保存容器14を取り出すことができる。
【0017】
個装袋10は、透明または半透明のフィルム材料により形成された平袋であって、被検者ごとに用意される。図示されるように、個装袋10には、被検者の属性情報を文字印刷した属性情報ラベル16が貼り付けられており、属性情報ラベル16には、所属する企業名、氏名、性別および年齢が印字されている。被検者は、個装袋10に貼り付けられた属性情報ラベル16を見て、自分用の個装袋10であることを確認した後、チャックを開いて、パッケージ11および保存容器14を取り出す。
【0018】
パッケージ11には、属性情報ラベル17が貼り付けられている。属性情報ラベル16と同様、属性情報ラベル17には、所属する企業名、氏名、性別および年齢が印字されている。なお属性情報ラベル16、17に印字されている属性情報は例示であって、本人確認のための他の情報、たとえば生年月日、企業における所属部署、役職等が印刷されていてよい。このように属性情報ラベル16、17には、属性情報が印字されて、被検者が自分用の検査用具であることを確認できるようになっている。
【0019】
なお実施例では、個装袋10およびパッケージ11に属性情報ラベル16、17が貼り付けられていることを前提とするが、被検者がこれらの検査用具を自分のものであると認識できるのであれば、いずれの検査用具に貼付されてよい。貼付する場所やラベルの枚数は、被検者が確実に検査用具を認識できるように設計されることが好ましい。なお唾液採取キット2において、属性情報を文字印刷した属性情報ラベルは、個人情報の漏洩リスクを低減するために保存容器14に貼付されないことが好ましい。
【0020】
一方で、保存容器14には、被検者の識別情報をコード化したバーコードを印刷したバーコードラベル18が貼り付けられる。ここで被検者の識別情報とは、被検者を管理するPCR検査システムにおいて被検者を特定するための情報であり、たとえば被検者の保険者番号などの属性情報を含んでよいが、PCR検査システムにおいて被検者に対して独自に設定する識別番号(たとえばシリアル番号)を含んでもよい。バーコードラベル18には、原則として属性情報の文字印刷は含まれない。なお検体の取り扱いの確実性を高める目的で、属性情報を文字印刷した属性情報ラベルを保存容器14に貼付する運用をとることも可能である。
【0021】
実施例では、被検者の識別情報をコード化したコード情報を、一次元コードであるバーコードで表現するが、二次元コードが使用されてもよい。コード化の手法は特に限定するものではなく、したがってバーコードラベル18は、被検者の識別情報を、ユーザが目視により認識できない記号や文字などに変換したコード情報を印刷したラベルであってよい。
【0022】
実施例の唾液採取キット2は、被検者毎に用意された検体採取具である綿棒12と、検体を保存するための保存容器14と、綿棒12および保存容器14を収容する個装袋10を少なくとも備える。唾液採取キット2は、さらに
図3~
図7に示す検査用具を備えてよい。
【0023】
図3は、保存容器14を一時的に置くためのラック20の例を示す。被検者は、たとえば会議室や自席などで綿棒12を用いて唾液採取した後、保存容器14のキャップ15を開けて、綿棒12を保存容器14の上端側から差し込み、保存容器14に固定する。被検者は、綿棒12を差し込んだ保存容器14を、ラック20の容器挿入孔21に挿入して、検体採取作業を終了する。上記したように保存容器14に貼り付けられているバーコードラベル18には属性情報が印字されていないため、容器挿入孔21に挿入された保存容器14は、バーコードラベル18を見ても、誰のものか特定できず、個人情報の漏洩リスクを低減できる。
【0024】
図4は、綿棒12を差し込まれた保存容器14を収納するための収納体22の例を示す。収納体22はシート状に形成されて、綿棒12を差し込まれた保存容器14を個別に収納するための複数の収納部23を備える。
【0025】
収納体22は、1枚の矩形状シートを略半分に折り返して、下側のシート体24aと上側のシート体24bの両側辺部分を貼着し、また幅方向に等間隔に側辺に平行なラインに沿って貼着することで形成される。この例では、両側辺の間を等間隔に5カ所で貼着し、5つの仕切り部25を設けることで、6つの収納部23が形成されている。この収納体22は、6つの保存容器14を収納できる。なお実施例ではシート状の収納体22を示すが、収納体22は他の形状を有してもよい。
【0026】
実施例の収納体22は吸水性材料で形成されることが好ましい。これにより万が一、保存容器14から綿棒12が外れてしまった場合に、唾液の水分を収納体22の外に漏らさないようにできる。
【0027】
実施例の収納体22は不透明材料で形成されることが好ましい。上記したように実施例では、原則として属性情報を文字印刷した属性情報ラベルは保存容器14に貼付されないが、検体の取り扱いの確実性を高める目的で属性情報ラベルを保存容器14に貼付することは生じうる。この場合であっても、収納体22を不透明材料で形成することで、収納体22に収納した保存容器14の属性情報ラベルを外から読み取られないようにできる。これにより個人情報に触れる医療従事者等を制限し、個人情報漏洩のリスクを低減できる。
【0028】
図5は、保存容器14を収納部23に収納した収納体22を包み込むための緩衝材26の例を示す。緩衝材26は、2枚の樹脂シートで空気を閉じ込めて円柱状の空気溜まりを形成したシートにより形成される。緩衝材26は空気溜まりにより、外部からの衝撃を吸収する機能をもつ。緩衝材26は、上端側に開口27を有する平袋として形成されてよい。
【0029】
図6は、緩衝材26で包まれた収納体22を密封して収容するための収容袋28の例を示す。収容袋28は、上端側に開口29を有し、開口29のさらに上端側に粘着部30を有する。粘着部30は、粘着シールと、粘着シールを保護する台紙(剥離紙)から構成される。
【0030】
図7は、収納体22を収容した収容袋28を入れる配送用の箱容器33の例を示す。箱容器33は、段ボール箱であってよい。収容袋28を入れた箱容器33は、配送業者により、検査機関である保健所などに配送される。
【0031】
図2~
図7に示した個装袋10、ラック20、収納体22、緩衝材26、収容袋28および箱容器33等は、唾液採取キット2を構成する検査用具の例であって、検査キット業者から配送される段ボール箱1に梱包されている。以下、唾液採取キット2を用いた唾液採取および梱包作業の方法について説明する。唾液採取の準備および梱包作業を行う人を「スタッフ」と呼び、唾液採取を、会議室のような空間で行うものとする。スタッフは、企業等の従業員や職員であってよいが、医療従事者であってもよい。
【0032】
スタッフは会議室に机を用意して、机の上にラック20を置くとともに、複数の個装袋10を属性情報ラベル16が貼り付けられた面を上向きにして並べる。スタッフは、使用済みの検査用具を廃棄するためにゴミ袋を用意してもよい。
【0033】
被検者は、自身の属性情報が印字された属性情報ラベル16を確認し、個装袋10を開けて、綿棒12を収容したパッケージ11を取り出す。被検者はパッケージ11を開けて、綿棒12を取り出し、綿棒12を口に差し込んで、綿球13を歯茎と頬の間に挟む。
【0034】
図8は、唾液採取中の被検者の様子を示す。被検者は、綿球13を歯茎と頬の間に挟み、その状態を2分間維持する。2分が経過すると、被検者は個装袋10から保存容器14を取り出し、保存容器14のキャップ15を外して、綿球13に唾液のしみ込んだ綿棒12を、保存容器14の中に強く押し込む。
【0035】
図9は、綿棒12が差し込まれた保存容器14を示す。保存容器14は、綿棒12を差し込まれて、綿球13に採取された唾液を保存する。綿棒12が保存容器14から抜けないように、被検者は綿棒12を保存容器14に強く押し込む必要がある。被検者は、綿棒12を差し込んだ保存容器14を、ラック20の容器挿入孔21に挿入する。被検者が自分で綿棒12を用いて唾液を採取し、その綿棒12を保存容器14に差し込むため、検体が周囲に漏れにくく、スタッフへの感染リスクを低減できる。
【0036】
全ての被検者が保存容器14を容器挿入孔21に挿入すると、スタッフは手袋をはめて、綿棒12が保存容器14に確実に差し込まれているか確認する。手袋は、唾液採取キット2の検査用具の一部として段ボール箱1に同梱されていてよい。スタッフは、綿棒12が保存容器14に確実に差し込まれていることを確認すると、収納体22の収納部23に収納する。保存容器14には、被検者の属性情報ラベルが貼付されていないので、スタッフは、保存容器14が誰のものであるか特定できない。
【0037】
図10は、綿棒12の差し込まれた保存容器14を収納部23に収納する様子を示す。なお図示の例では、収納する様子を説明するために、収納部23から綿棒12や保存容器14の一部が出ているが、スタッフは、保存容器14および綿棒12の全てが隠れるまで、保存容器14を収納部23に差し込む。図示の例では、2本の保存容器14が収納されているが、収納体22には、最大で6本の保存容器14を収納できる。
【0038】
スタッフは収納体22に保存容器14を収納すると、小さくまとまるように折りたたんで、筒状にする。
図11は、折りたたまれた状態の収納体22を示す。
【0039】
それから手袋をしていない別のスタッフが平袋状の緩衝材26の開口27を開けて、手袋をしたスタッフが、折りたたまれた状態の収納体22を緩衝材26に入れる。緩衝材26は収納体22を包み込むことで、外部からの衝撃を吸収し、収納体22を保護する。
図12は、緩衝材26に3つの折りたたんだ収納体22を入れた状態を示す。全ての収納体22を緩衝材26に入れると、スタッフは手袋を外し、緩衝材26を折りたたんでコンパクトにする。
【0040】
スタッフは、緩衝材26で包まれた収納体22を、収容袋28に収容する。
図13は、収容袋28に収納体22が収容された状態を示す。スタッフは開口29から、緩衝材26で包まれた収納体22を収容袋28に入れた後、粘着部30の台紙(剥離紙)を剥がして粘着部30の部分を折り返し、貼り付け密封する。これにより収納体22が、密封した収容袋28に収容される。
【0041】
スタッフは、収容袋28を箱容器33に入れて、配送先を記入する。なお配送先は、箱容器33に予め印字されていてもよい。配送業者は箱容器33を、配送先である保健所などの検査機関に配送する。
【0042】
上述した実施例および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施例および変形例それぞれの効果をあわせもつ。また、請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施例および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連携によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【0043】
実施例では、検査キット業者が、被検者の属性情報を事前に取得し、個装袋10、パッケージ11に属性情報ラベル16、17を貼り付け、保存容器14にバーコードラベル18を貼り付けることを説明した。たとえば唾液採取キット2が病院等の医療機関に提供される場合には、属性情報ラベル16、17およびバーコードラベル18の貼り付けが、医療機関で行われてよい。
【0044】
実施例では、検体が唾液であることを前提としたが、検体は、自分で採取可能な唾液以外の検体であってよい。そのため実施例では検体採取具が、唾液を採取するための綿棒12であり、検体保存容器が、唾液を採取した綿棒12を差し込む保存容器14であることを説明したが、本発明は、他の種類の検体採取具および検体保存容器にも応用できる。検体採取具は、被検者が自分で検体を採取できる器具であればよく、検体保存容器は、被検者が自分で採取した検体を保存できる容器であればよい。
【0045】
個別の検体採取具を必要とせず、検体保存容器に検体採取機能がある場合には、当該検体保存容器は、検体採取具および検体保存容器であるとみなせる。なお実施例では唾液採取キット2がPCR検査の検体を採取するためのものであることを説明したが、他の検査用の検体採取に利用されてもよい。
【符号の説明】
【0046】
2・・・唾液採取キット、10・・・個装袋、11・・・パッケージ、12・・・綿棒、13・・・綿球、14・・・保存容器、15・・・キャップ、16,17・・・属性情報ラベル、18・・・バーコードラベル、20・・・ラック、21・・・容器挿入孔、22・・・収納体、23・・・収納部、24a,24b・・・シート体、25・・・仕切り部、26・・・緩衝材、27・・・開口、28・・・収容袋、29・・・開口、30・・・粘着部、33・・・箱容器。