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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/308 20060101AFI20240412BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20240412BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
H01L21/308 B
H01L21/306 R
H01L21/304 643A
H01L21/304 648K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020152986
(22)【出願日】2020-09-11
(65)【公開番号】P2022047206
(43)【公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】日野出 大輝
(72)【発明者】
【氏名】逸見 昂史
(72)【発明者】
【氏名】天久 賢治
【審査官】船越 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-128063(JP,A)
【文献】特開2016-066808(JP,A)
【文献】特開昭55-048933(JP,A)
【文献】特開2015-142065(JP,A)
【文献】特開2019-176125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/308
H01L 21/304-21/3063
H01L 21/465-21/467
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の処理液を用いて基板に対して第1の処理を行う工程と、
前記第1の処理の後、第2の処理液を用いて前記基板に対して第2の処理を行う工程と、
前記第1の処理に用いられた後の前記第1の処理液を前記第2の処理液へ添加する工程と
を備え、
前記第1の処理および前記第2の処理はいずれもシリコンのエッチング処理であり、
前記第1の処理液は少なくともフッ酸と硝酸とを含む混合液であり、
前記第2の処理液は少なくともフッ酸と硝酸と酢酸とを含む混合液である基板処理方法。
【請求項2】
基板に対する第1の処理に用いられる第1の処理液の第1の吐出を行う第1のノズルと、
前記基板に対する第2の処理に用いられる第2の処理液の第2の吐出を行う第2のノズルと、
前記第1の処理に用いられた後の前記第1の処理液を前記第2の処理液へ添加する添加系統と、
前記第1の吐出、前記第2の吐出、前記添加系統による添加を制御する制御ユニットと
を備える基板処理装置。
【請求項3】
前記制御ユニットによって制御され、前記第1の処理が行われる期間の少なくとも一部において前記基板を回転させる回転機構と、
前記第1の処理液を貯留する第1の貯留槽と、
前記第2の処理液を貯留する第2の貯留槽と
を更に備え、
前記第1のノズルには前記第1の貯留槽から前記第1の処理液が供給され、
前記第2のノズルには前記第2の貯留槽から前記第2の処理液が供給され、
前記添加系統は、
前記基板の回転によって前記基板から飛散する前記第1の処理液を受け止める第1のガードと、
前記第1のガードによって受け止められた前記第1の処理液の少なくとも一部を前記第2の貯留槽へ回収する回収系統と
を有する、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記回転機構は、前記第2の処理が実行される期間の少なくとも一部において前記基板を回転させ、
前記第1のガードは、前記回転によって前記基板から飛散する前記第2の処理液を受け止め、
前記回収系統は、前記第1のガードによって受け止められた前記第2の処理液を前記第2の貯留槽へ回収する、請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記添加系統は
第2のガード
を更に有し、
前記回転によって前記基板から飛散する前記第1の処理液は、まず前記第2のガードによって受け止められ、次いで前記第2のガードによって受け止められることなく前記第1のガードによって受け止められ、
前記回収系統は、前記第2のガードによって受け止められた前記第1の処理液を前記第1の貯留槽へ回収する、請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記回収系統は、前記第1のガードによって受け止められた前記第1の処理液を前記第1の貯留槽と前記第2の貯留槽とに分岐して選択的に回収する分岐機構を有し、
前記分岐機構は、前記制御ユニットによって制御されて、前記第1のガードによって受け止められた前記第1の処理液を前記第1の貯留槽へ回収してから、前記第1のガードによって受け止められた前記第2の処理液を前記第2の貯留槽へ回収する、請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記回転機構は、前記基板に前記第1の処理液が存在する状態で前記回転を停止する、請求項3から請求項6のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエハの薄型化のためのエッチング処理として、フッ酸と硝酸との混合液(フッ硝酸)を用いた技術が提案されている。例えば下記の特許文献1において、当該混合液はノズルによってウエハの上面に供給される。また特許文献1においてはリンス液をウエハの上面に供給するノズルも提案されている。
【0003】
エッチングの為に二種類のエッチング液が採用される技術が提案されている。例えば下記の特許文献2において、酸化シリコン層上に積層されたシリコン層が、濃度が異なるフッ硝酸によってエッチングされる技術が提案されている。特許文献2においてはフッ硝酸への添加物として酢酸が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-194090号公報
【文献】特許第5565718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フッ硝酸に対して酢酸を添加すると、これが半導体(例えばシリコン)をエッチングする速度(以下「エッチング速度」)は、酢酸が添加されない場合と比較して、当該半導体における不純物濃度(たとえばp型不純物の濃度)に影響されやすい。よって酢酸が添加されたフッ硝酸は、不純物濃度が相違する半導体層の一方をストッパとして他方を選択的にエッチングする処理に有用である。他方、酢酸を添加することでエッチング速度が低下する。
【0006】
不純物濃度が相違する半導体層の一方をストッパとして他方を選択的にエッチングする処理を行うときのエッチング速度を向上することが、本開示の目的の一つである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかる基板処理方法は、第1の処理液を用いて基板に対して第1の処理を行う工程と、前記第1の処理の後、第2の処理液を用いて前記基板に対して第2の処理を行う工程と、前記第1の処理に用いられた後の前記第1の処理液を前記第2の処理液へ添加する工程とを備える。前記第1の処理および前記第2の処理はいずれもシリコンのエッチング処理である。前記第1の処理液は少なくともフッ酸と硝酸とを含む混合液である。前記第2の処理液は少なくともフッ酸と硝酸と酢酸とを含む混合液である。
【0008】
本開示にかかる基板処理装置は、基板に対する第1の処理に用いられる第1の処理液の第1の吐出を行う第1のノズルと、前記基板に対する第2の処理に用いられる第2の処理液の第2の吐出を行う第2のノズルと、前記第1の処理に用いられた後の前記第1の処理液を前記第2の処理液へ添加する添加系統と、前記第1の吐出、前記第2の吐出、前記添加系統による添加を制御する制御ユニットとを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示にかかる基板処理方法は、不純物濃度が相違する半導体層の一方をストッパとして他方を選択的にエッチングする処理を行うときのエッチング速度を向上する。
【0010】
本開示にかかる基板処理装置は、本開示にかかる基板処理方法の実現に資する。
【0011】
本願明細書に開示される技術に関する目的と、特徴と、局面と、利点とは、以下に示される詳細な説明と添付図面とによって、さらに明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る基板処理システムの概略構成の一例を示す図である。
図2】ホストコンピュータの電気的な構成の一例を示すブロック図である。
図3】基板処理装置の概略構成の一例を示す模式的な平面図である。
図4】一つの処理ユニットの構成を例示する概略図である。
図5】本体制御ユニットの電気的な構成の一例を示すブロック図である。
図6】液管理制御ユニットの電気的な構成の一例を示すブロック図である。
図7】処理ユニットを用いた処理の流れの一例を示す図である。
図8】未処理の基板の構成を例示する断面図である。
図9】第5層が除去された後の基板の構成を例示する断面図である。
図10】処理液の回収を例示するブロック図である。
図11】ガードおよびカップの位置を例示する模式図である。
図12】ガードおよびカップの位置を例示する模式図である。
図13】ガードおよびカップの位置を例示する模式図である。
図14】ガードおよびカップの位置を例示する模式図である。
図15】ガードおよびカップの位置を例示する模式図である。
図16】処理液の吐出と、リンス液の吐出と、ガードの昇降との時間的関係を示すタイミングチャートである。
図17】処理液の回収についての変形を説明する模式図である。
図18】変形における処理液の回収を例示するブロック図である。
図19】処理液の供給についての変形を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略および構成の簡略化がなされるものである。また、図面に示される構成の大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。
【0014】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0015】
また、以下に記載される説明において、「第1」または「第2」などの序数が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、これらの序数によって生じ得る順序などに限定されるものではない。
【0016】
相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば「一方向に」「一方向に沿って」「平行」「直交」「中心」「同心」「同軸」など)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。等しい状態であることを示す表現(例えば「同一」「等しい」「均質」など)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。形状を示す表現(例えば、「四角形状」または「円筒形状」など)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲で、例えば凹凸や面取りなどを有する形状も表すものとする。一の構成要素を「備える」「具える」「具備する」「含む」または「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。「A,BおよびCの少なくともいずれか一つ」という表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A,BおよびCのうち任意の2つ、ならびに、A,BおよびCの全てを含む。
【0017】
<1.一実施形態>
<1-1.基板処理システムの概略構成>
図1は、一実施形態に係る基板処理システム1の概略構成の一例を示す図である。基板処理システム1は、例えば、ホストコンピュータ10と、基板処理装置20と、搬送装置30とを備える。基板処理装置20は複数設けられてもよい。ホストコンピュータ10と、複数の基板処理装置20と、搬送装置30とは例えば通信回線50を介して通信可能に接続される。通信回線50には、例えば、有線回線および無線回線の一方もしくは両方が採用される。
【0018】
<1-2.ホストコンピュータの構成>
図2は、ホストコンピュータ10の電気的な構成の一例を示すブロック図である。ホストコンピュータ10は、複数の基板処理装置20を統括的に管理するための装置(管理装置ともいう)である。
【0019】
ホストコンピュータ10は、例えば、コンピュータで実現され、バスラインBu1を介して接続された、通信部101、入力部102、出力部103、記憶部104、制御部105およびドライブ106を備える。
【0020】
通信部101は、例えば、通信回線50を介して各基板処理装置20および搬送装置30に対して信号を送信可能な送信部としての機能を有する。通信部101は、例えば、通信回線50を介して各基板処理装置20および搬送装置30からの信号を受信可能な受信部としての機能を有する。
【0021】
入力部102には、例えば、ホストコンピュータ10を使用するユーザの動作などに応じた信号が入力され得る。入力部102には、例えば、操作部、マイクおよび各種センサなどが含まれ得る。
【0022】
出力部103は、例えば、各種情報を出力することができる。出力部103には、例えば、表示部およびスピーカなどが含まれ得る。
【0023】
記憶部104は、例えば、各種情報を記憶することができる。この記憶部104は、例えば、ハードディスクおよびフラッシュメモリなどの記憶媒体で構成され得る。記憶部104には、例えば、プログラムPg1および処理計画の情報(「処理計画情報」とも称される)PP1を含む各種の情報が記憶され得る。記憶部104には、後述するメモリ105bが含まれてもよい。
【0024】
1つのロットを構成する複数枚の基板が基板群と称される。処理計画情報PP1は、例えば基板群に係る複数の連続した基板処理(「連続処理」とも称される)を実行するタイミング(実行タイミングともいう)を示す。
【0025】
制御部105は、例えば、プロセッサとして働く演算処理部105aおよび情報を一時的に記憶するメモリ105bなどを含む。演算処理部105aには、例えば、中央演算部(CPU)が採用される。メモリ105bには、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)が採用される。演算処理部105aにおいて、例えば、記憶部104に記憶されているプログラムPg1が読み込まれて実行されることで、ホストコンピュータ10の機能が実現される。制御部105における各種の情報処理によって一時的に得られる各種情報は、例えば適宜にメモリ105bに記憶される。
【0026】
ドライブ106は、例えば、可搬性の記憶媒体RMが脱着される部分である。ドライブ106では、例えば、記憶媒体RM1が装着されている状態で、この記憶媒体RM1と制御部105との間におけるデータの授受が行われる。例えば、プログラムPg1が記憶された記憶媒体RM1がドライブ106に装着されることで、記憶媒体RM1から記憶部104内にプログラムPg1が読み込まれて記憶される。
【0027】
<1-3.基板処理装置の構成>
図3は、基板処理装置20の概略構成の一例を示す模式的な平面図である。基板処理装置20は、例えば、基板Wの表面に対して処理液を供給することで各種処理を行うことができる枚葉式の装置である。ここでは、基板Wの一例として、半導体基板(ウエハ)が用いられる。各種処理には、例えば、エッチャントを用いたエッチング処理、液体で異物や除去対象物を除去する洗浄処理、水で洗い流すリンス処理およびレジストなどを塗布する塗布処理が含まれる。以下ではエッチング処理とリンス処理とを用いた説明が例示される。
【0028】
基板処理装置20はロードポートLP1~LP4を含む。ロードポートの個数は4に限定されない。ロードポートLP1~LP4の各々は、キャリアCを保持する収容器保持機構として機能する。キャリアCは複数枚の基板Wを収容する収容器として機能する。
【0029】
ロードポートLP1~LP4には、例えば、キャリア置き場40内から搬送装置30によってキャリアCが搬送されて載置される。搬送装置30の動作は、例えば、ホストコンピュータ10によって制御される。基板処理装置20が複数設けられるときには、例えば、搬送装置30はキャリアCを基板処理装置20同士の間で搬送する。
【0030】
基板処理装置20は、4台の処理ユニット21を更に含む。処理ユニット21の台数は4に限定されない。図3における例示では、2台の処理ユニット21が一組となって上下方向に積層して配置される。二組の処理ユニットが平面視上では2台の処理ユニット21として現れる。
【0031】
基板処理装置20は、更に、例えば、インデクサロボット81と、センターロボット82と、本体制御ユニット22と、液貯留部23L,23Rと、液管理制御ユニット24と、リンス液貯留部25とを含む。
【0032】
インデクサロボット81は、例えば、ロードポートLP1~LP4とセンターロボット82との間で基板Wを搬送する。センターロボット82は、例えば、インデクサロボット81と処理ユニット21との間で基板Wを搬送することができる。インデクサロボット81とセンターロボット82とは、キャリアCに収容されている複数枚の基板WをキャリアCから4台の処理ユニット21に向けて搬出する、搬送部83として機能する。
【0033】
本体制御ユニット22は例えば、基板処理装置20に備えられた各部の動作およびバルブの開閉などを制御する。本体制御ユニット22は例えば、液管理制御ユニット24との間で各種の信号の送受信を行う。
【0034】
液貯留部23Lは、処理液を貯留することが可能な貯留槽261L,262Lを含む。貯留槽261L,262Lには、図3の上側に図示されて1台の処理ユニット21として現れる一組の処理ユニット21が接続され、これらに採用される処理液を貯留する。
【0035】
液貯留部23Rは、処理液を貯留することが可能な貯留槽261R,262Rを含む。貯留槽261R,262Rは、図3の下側に図示されて1台の処理ユニット21として現れる一組の処理ユニット21が接続され、これらに採用される処理液を貯留する。
【0036】
以下では貯留槽261L,261Rに貯留される処理液が、少なくともフッ酸と硝酸とを含む混合液(以下、当該混合液は「処理液HFN」と仮称される)である場合が例示される。以下では貯留槽262L,262Rに貯留される処理液が、少なくともフッ酸と硝酸と酢酸とを含む混合液(以下、当該混合液は「処理液HNA」と仮称される)である場合が例示される。
【0037】
貯留槽261L,261R,262L,262Rのそれぞれには、例えば、センサ27が設けられる。センサ27は処理液の状態、例えば濃度、水素イオン指数(pH:power of hydrogen)および温度を示す物理量を測定する。貯留槽261L,261R,262L,262Rのそれぞれには、例えば、それぞれが貯留する処理液を攪拌するための機構が設けられてもよい。
【0038】
液管理制御ユニット24は、例えば、液貯留部23L,23Rに設けられる各部の動作を制御することで、液貯留部23L,23R内の処理液の状態を管理する。具体的には、液管理制御ユニット24は、例えば、貯留槽261L,261R,262L,262Rのそれぞれのセンサ27から、処理液の状態を示す物理量に係る信号を得る。
【0039】
液管理制御ユニット24は、例えば、本体制御ユニット22との間で各種の信号の送受信を行う。例えば、液管理制御ユニット24は、センサ27から得た信号あるいは該信号から認識される物理量を示す数値を、本体制御ユニット22に送信する。
【0040】
リンス液貯留部25は、リンス液を貯留することが可能である。リンス液は例えば炭酸水である。リンス液は、炭酸水に限らず、純水(脱イオン水:Deionized Water)、電解イオン水、水素水、オゾン水であってもよい。
【0041】
ロードポートLP1~LP4は、基板処理装置20とこの基板処理装置20の外部との間で基板群の搬入および搬出を行うための部分(以下「搬出入部」とも称される)としての機能を有する。図3の例では、ロードポートLP1~LP4と処理ユニット21の各々とは、水平方向に間隔を空けて配置される。ロードポートLP1~LP4は、平面視したときに水平な第1方向DR1に沿って配列される。
【0042】
例えば搬送装置30は、ロードポートLP1~LP4に複数の基板群を搬送する。図3の例では、搬送装置30は、例えば、第1方向DR1およびこの第1方向DR1に直交する水平な第2方向DR2に沿って移動可能である。例えば、1つの基板群を成す複数枚の基板Wをそれぞれ収容するキャリアCが、キャリア置き場40内から搬送されてロードポートLP1~LP4の何れかに載置される。ロードポートLP1~LP4において複数のキャリアCは、第1方向DR1に沿って配列される。
【0043】
インデクサロボット81は、キャリアCからセンターロボット82に複数枚の基板Wを一枚ずつ搬送することができる。インデクサロボット81は、センターロボット82からキャリアCに複数枚の基板Wを一枚ずつ搬送することができる。
【0044】
同様に、センターロボット82は、インデクサロボット81から各処理ユニット21に複数枚の基板Wを一枚ずつ搬入することができる。センターロボット82は、各処理ユニット21からインデクサロボット81に複数枚の基板Wを一枚ずつ搬送することができる。また、例えば、センターロボット82は、必要に応じて複数の処理ユニット21の間において基板Wを搬送することができる。
【0045】
例えばインデクサロボット81は、4つのハンド(図示省略)を有する。ハンドの各々は、基板Wを水平な姿勢で支持できる。インデクサロボット81は、ハンドを水平方向および鉛直方向に移動させ得る。インデクサロボット81は、鉛直方向に沿った軸を中心として回転(自転)することができ、当該回転によってハンドの向きが変更される。
【0046】
インデクサロボット81は、受渡位置を通る経路201において第1方向DR1に沿って移動する。受渡位置は、平面視上、インデクサロボット81とセンターロボット82とが第2方向DR2において対向する位置である。
【0047】
インデクサロボット81は、任意のキャリアCおよびセンターロボット82にそれぞれハンドを対向させることができる。例えば、インデクサロボット81は、ハンドを移動させることにより、キャリアCに基板Wを搬入する搬入動作と、キャリアCから基板Wを搬出する搬出動作とを行う。例えば、インデクサロボット81は、センターロボット82と協働して、インデクサロボット81およびセンターロボット82の一方から他方に基板Wを移動させる受渡動作を受渡位置で行う。
【0048】
センターロボット82は、インデクサロボット81と同様に、例えば4つのハンド(図示省略)を有する。ハンドの各々は、基板Wを水平な姿勢で支持できる。センターロボット82は、ハンドを水平方向および鉛直方向に移動させ得る。センターロボット82は、鉛直方向に沿った軸を中心として回転(自転)することができ、当該回転によってハンドの向きが変更される。
【0049】
センターロボット82は、任意の処理ユニット21およびインデクサロボット81の何れかにハンドを対向させることができる。例えば、センターロボット82は、ハンドを移動させることにより、各処理ユニット21に基板Wを搬入する搬入動作と、各処理ユニット21から基板Wを搬出する搬出動作とを行う。例えば、センターロボット82は、インデクサロボット81と協働して、インデクサロボット81およびセンターロボット82の一方から他方に基板Wを移動させる受渡動作を行う。
【0050】
<1-4.処理ユニット21の構成例>
図4は、一つの処理ユニット21の構成を例示する概略図である。図4は鉛直方向に垂直な方向から見た図である。処理ユニット21は基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式のユニットである。処理ユニット21は本体制御ユニット22の制御の下で動作する。本体制御ユニット22は処理ユニット21に備えられた各部の動作やバルブの開閉を制御する。
【0051】
処理ユニット21の各々は、チャンバー4と、スピンチャック5と、処理液供給機構6と、ガード機構7とを含む。チャンバー4はスピンチャック5と、処理液供給機構6と、ガード機構7とを格納する。
【0052】
スピンチャック5は、チャンバー4内で一枚の基板Wを水平な姿勢で保持する基板保持機構として機能する。スピンチャック5は鉛直な線である基板回転軸A1まわりに基板Wを回転させる。基板回転軸A1は例えば基板Wの中心を通る。
【0053】
処理液供給機構6はスピンチャック5に保持された基板Wの処理の対象となる表面(主面)に処理液を供給する。ガード機構7は基板回転軸A1まわりにスピンチャック5を取り囲む。
【0054】
スピンチャック5は、スピンベース11と、スピン軸14と、スピンモータ15とを含む。スピンベース11は円板状であって水平な姿勢で保持される。スピンベース11の外径は、基板Wの直径よりも小さい。スピンベース11は真空チャックを用いて基板Wを吸着して保持することができる。基板Wの下面Wbがスピンベース11の上面に吸着した状態で、基板Wが水平に保持される。
【0055】
スピンベース11の中心線は、鉛直な線である基板回転軸A1上に位置する。基板回転軸A1は例えば基板Wの中心を通る。スピンベース11は基板回転軸A1まわりに基板Wを回転させる。
【0056】
スピン軸14はスピンベース11の中央部から鉛直下方に延びる。スピン軸14の内側には、スピンベース11における真空チャックに利用される排気孔13が設けられる。
【0057】
処理ユニット21は排気管42と、排気バルブ43とを含む。排気管42は排気孔13と連通する。排気バルブ43は排気管42に介挿される。排気孔13は排気管42と、排気バルブ43とを介し、不図示の機構(例えば基板処理システム1が設置される工場に設けられた排気設備)によって排気される。
【0058】
排気バルブ43を開くことにより、真空チャックによって基板Wがスピンベース11に吸着される。排気バルブ43を閉じ、更に不図示の機構によって排気孔13に気体(例えば窒素ガス)が供給されることにより、スピンベース11における真空チャックが解除される。
【0059】
スピンモータ15はスピン軸14を回転させ、ひいてはスピンベース11を基板回転軸A1まわり、例えば鉛直下方に沿って見て反時計回りの方向Rdrに回転させる。基板Wがスピンベース11に吸着された状態でスピンモータ15がスピン軸14を回転させることにより、基板Wはスピンベース11と共に基板回転軸A1まわりに回転する。
【0060】
処理液供給機構6は、処理液ノズル341,342と、処理液配管351,352と、処理液バルブ361,362とを含む。処理液ノズル341,342は基板Wの上面Wuに向けて処理液を吐出する上面ノズルとして機能する。処理液配管351は処理液ノズル341に接続され、処理液配管352は処理液ノズル342に接続される。処理液バルブ361は処理液配管351に介挿され、処理液バルブ362は処理液配管352に介挿される。
【0061】
処理液ノズル341は処理液配管351および処理液バルブ361を介して貯留槽261Lに接続され、処理液ノズル342は処理液配管352および処理液バルブ362を介して貯留槽262Lに接続される。あるいは処理液ノズル341は処理液配管351および処理液バルブ361を介して貯留槽261Rに接続され、処理液ノズル342は処理液配管352および処理液バルブ362を介して貯留槽262Rに接続される。
【0062】
処理液バルブ361が開かれると、処理液配管351から処理液ノズル341に供給された処理液HFNが、処理液ノズル341から下方に吐出される。処理液バルブ361が閉じられると、処理液ノズル341からの処理液HFNの吐出が停止される。
【0063】
処理液バルブ362が開かれると、処理液配管352から処理液ノズル342に供給された処理液HNAが、処理液ノズル342から下方に吐出される。処理液バルブ362が閉じられると、処理液ノズル342からの処理液HNAの吐出が停止される。
【0064】
処理液ノズル341は、上面Wuに対する処理液HFNの着液位置が、中央部と周縁との間で移動するように移動しながら処理液HFNを吐出するスキャンノズルとして機能してもよい。処理液ノズル341は、上面Wuにおける着液位置を固定して、処理液HFNを吐出してもよい。
【0065】
処理液ノズル342は、上面Wuに対する処理液HNAの着液位置が、中央部と周縁との間で移動するように移動しながら処理液HNAを吐出するスキャンノズルとして機能してもよい。処理液ノズル342は、上面Wuにおける着液位置を固定して、処理液HNAを吐出してもよい。
【0066】
処理ユニット21は処理液ノズル移動装置37を含む。処理液ノズル移動装置37は処理液ノズル341,342を移動させることにより、処理液HFN,HNAの着液位置を上面Wu内で移動させる。
【0067】
処理液ノズル移動装置37は、処理液ノズル341,342から吐出された処理液HFN,HNAが上面Wuに着液する処理位置と、処理液ノズル341,342がスピンチャック5の周囲に退避した退避位置との間で処理液ノズル341,342を移動させる。
【0068】
処理液供給機構6は、リンス液ノズル38と、リンス液配管39と、リンス液バルブ47とを含む。リンス液ノズル38は、上面Wuに向けてリンス液を吐出する上面ノズルとして機能する。リンス液配管39はリンス液ノズル38に接続される。リンス液バルブ47はリンス液配管39に介挿される。リンス液ノズル38はリンス液配管39およびリンス液バルブ47を介してリンス液貯留部25に接続される。
【0069】
リンス液バルブ47が開かれると、リンス液配管39からリンス液ノズル38に供給されたリンス液が、リンス液ノズル38から下方に吐出される。リンス液バルブ47が閉じられると、リンス液ノズル38からのリンス液の吐出が停止される。
【0070】
リンス液ノズル38は、上面Wuに対するリンス液の着液位置が中央部と周縁との間で移動するように移動しながら処理リンス液を吐出するスキャンノズルとして機能してもよい。リンス液ノズル38は、上面Wuにおける着液位置を固定、例えば上面Wuの中央付近に固定して、リンス液を吐出してもよい。
【0071】
処理ユニット21はリンス液ノズル移動装置41を含む。リンス液ノズル移動装置41は、リンス液ノズル38を移動させることにより、リンス液の着液位置を上面Wu内で移動させる。
【0072】
リンス液ノズル移動装置41は、リンス液ノズル38から吐出されたリンス液が上面Wuに着液する処理位置と、リンス液ノズル38がスピンチャック5の周囲に退避した退避位置との間でリンス液ノズル38を移動させる。
【0073】
処理ユニット21は下面ノズル44と、パージ配管45と、パージバルブ46とを含む。下面ノズル44は下面Wbの周縁近傍に向けて気体、例えば窒素ガスを吐出する。パージ配管45は下面ノズル44に接続される。パージバルブ46はパージ配管45に介挿される。窒素ガスは、例えば基板処理システム1が設置される工場に設けられた給気設備(図示省略)によってパージ配管45へ供給される。
【0074】
下面ノズル44が下面Wbへ窒素ガスを吐出することは、上面Wuに吐出された処理液HFN,HNAやリンス液が下面Wbへ回り込むことの回避に寄与する。
【0075】
処理ユニット21は、膜厚計を含んでもよい。膜厚計は、上面Wuにおける所定の膜厚を計測する。膜厚計には例えば光干渉式の膜厚計が採用される。膜厚計は例えば基板Wの上方において、リンス液ノズル移動装置41と類似した構成によって移動される。
【0076】
処理ユニット21はガード機構7を含む。ガード機構7は、保持状態にある基板Wよりも外方(基板回転軸A1から離れる方向)に位置し、処理液およびリンス液が基板Wから飛散する範囲を限定する。ガード機構7は、外壁70と、ガード71,72,73,74と、カップ75,76,77,78とガード昇降装置55とを含む。
【0077】
<1-5.本体制御ユニット、液管理制御ユニット>
図5は、本体制御ユニット22の電気的な構成の一例を示すブロック図である。本体制御ユニット22は、例えば、コンピュータで実現され、バスラインBu2を介して接続された、通信部221、入力部222、出力部223、記憶部224、制御部225およびドライブ226を備える。
【0078】
通信部221は、例えば、通信回線50を介してホストコンピュータ10に対して信号を送信可能な送信部としての機能を有する。通信部221は、例えば、通信回線50を介してホストコンピュータ10からの信号を受信可能な受信部としての機能を有する。通信部221は、例えば更に、ケーブルなどの配線を介して、液管理制御ユニット24との間で信号の送受信を行うことができる。
【0079】
入力部222には、例えば、基板処理装置20を使用するユーザの動作などに応じた信号が入力され得る。入力部222には、例えば、上記入力部102と同様に、操作部、マイクおよび各種センサなどが含まれ得る。
【0080】
出力部223は、例えば、各種情報を出力することができる。出力部223には、例えば、上記出力部103と同様に、表示部およびスピーカなどが含まれ得る。
【0081】
記憶部224は、例えば、各種情報を記憶することができる。この記憶部224は、例えば、ハードディスクおよびフラッシュメモリなどの記憶媒体で構成され得る。記憶部224には、例えば、プログラムPg2および各種情報Dt2が記憶され得る。記憶部224には、後述するメモリ225bが含まれてもよい。
【0082】
制御部225は、例えば、プロセッサとして働く演算処理部225aおよび情報を一時的に記憶するメモリ225bなどを含む。演算処理部225aには、例えば、CPUが採用される。メモリ225bには、例えば、RAMが採用される。演算処理部225aにおいて、例えば、記憶部224に記憶されているプログラムPg2が読み込まれて実行されることで、本体制御ユニット22の機能が実現される。制御部225における各種の情報処理によって一時的に得られる各種情報は、例えば適宜にメモリ225bに記憶される。
【0083】
ドライブ226は、例えば、可搬性の記憶媒体RM2の脱着される部分である。ドライブ226では、例えば、記憶媒体RM2が装着されている状態で、この記憶媒体RM2と制御部225との間におけるデータの授受が行われ得る。例えば、プログラムPg2が記憶された記憶媒体RM2がドライブ226に装着されることで、記憶媒体RM2から記憶部224内にプログラムPg2が読み込まれて記憶される。
【0084】
図6は、液管理制御ユニット24の電気的な構成の一例を示すブロック図である。液管理制御ユニット24は、例えば、上述した本体制御ユニット22と同様に、コンピュータなどで実現され、バスラインBu3を介して接続された、通信部241、入力部242、出力部243、記憶部244、制御部245およびドライブ246を備える。
【0085】
通信部241は、例えば、ケーブルなどの配線を介して、本体制御ユニット22との間で信号の送受信を行うことができる。
【0086】
入力部242には、例えば、基板処理装置20を使用するユーザの動作などに応じた信号が入力され得る。入力部242には、例えば、上記入力部102と同様に、操作部、マイクおよび各種センサなどが含まれ得る。
【0087】
出力部243は、例えば、各種情報を出力することができる。出力部243には、例えば、上記出力部103と同様に、表示部およびスピーカなどが含まれ得る。
【0088】
記憶部244は、例えば、各種情報を記憶することができる。この記憶部244は、例えば、上記記憶部224と同様に、ハードディスクおよびフラッシュメモリなどの記憶媒体で構成され得る。記憶部244には、例えば、プログラムPg3および各種情報Dt3が記憶され得る。記憶部244には、後述するメモリ245bが含まれてもよい。
【0089】
制御部245は、例えば、プロセッサとして働く演算処理部245aおよび情報を一時的に記憶するメモリ245bなどを含む。演算処理部245aには、例えば、CPUが適用される。メモリ245bには、例えば、RAMが適用される。演算処理部245aにおいて、例えば、記憶部244に記憶されているプログラムPg3が読み込まれて実行されることで、液管理制御ユニット24の機能が実現される。制御部245における各種情報処理によって一時的に得られる各種情報は、例えば適宜にメモリ245bに記憶される。
【0090】
ドライブ246は、例えば、可搬性の記憶媒体RM3の脱着が可能な部分である。ドライブ246では、例えば、記憶媒体RM3が装着されている状態で、この記憶媒体RM3と制御部245との間におけるデータの授受が行われ得る。例えば、プログラムPg3が記憶された記憶媒体RM3がドライブ246に装着されることで、記憶媒体RM3から記憶部244内にプログラムPg3が読み込まれて記憶される。
【0091】
<1-6.処理ユニットを用いた処理>
<1-6-1.全体的処理>
図7は、処理ユニット21を用いた処理の流れの一例を示す図である。この処理の流れは、本体制御ユニット22によって各部の動作が制御されることで実現される。ここでは、基板処理装置20のうちの1つの処理ユニット21に着目して説明する。
【0092】
ステップS1において基板Wが基板処理装置20に搬入される。具体的には、センターロボット82によって、未処理の基板Wがチャンバー4に搬入され、スピンベース11に載置される。上面Wuが後述される諸処理の対象である。本体制御ユニット22は、排気バルブ43を制御して、真空チャックによってスピンベース11において未処理の基板Wを略水平姿勢で保持させる。
【0093】
基板Wがスピンベース11において保持された後、ステップS2において上面Wuに対する薬液処理が実行される。本実施の形態において薬液処理としてはエッチング処理が例示される。本体制御ユニット22は、スピンモータ15を制御して、基板回転軸A1を中心としてスピンベース11を回転させる。当該回転によって基板Wが回転する。本体制御ユニット22は、処理液供給機構6を制御して、処理液ノズル341,342から処理液HFN,HNAを、上面Wuに向けてこの順で吐出させる。本体制御ユニット22は、パージバルブ46を制御して、下面ノズル44から下面Wbへ窒素ガスを吐出させる。当該窒素ガスにより、上面Wuに吐出された処理液HFN,HNAが下面Wbへ回り込むことが抑制される。
【0094】
薬液処理が終了した後に、ステップS3において上面Wuに対する洗浄処理が実行される。本実施の形態において洗浄処理としてはリンス処理が例示される。本体制御ユニット22は、処理液供給機構6を制御して、リンス液ノズル38からリンス液を、基板Wの上面Wuに向けて吐出させる。リンス液は、上面Wuに付着した薬液およびパーティクルを除去する。
【0095】
本体制御ユニット22は、パージバルブ46を制御して、下面ノズル44から下面Wbへ窒素ガスを吐出させる。当該窒素ガスにより、上面Wuに吐出されたリンス液が下面Wbへ回り込むことが抑制される。
【0096】
洗浄処理が終了した後に、ステップS4において上面Wuに対する乾燥処理が実行される。例えば本体制御ユニット22は、スピンモータ15を制御して、基板回転軸A1を中心としてスピンベース11を回転させる。当該回転によって基板Wが回転し、上面Wuに残っていたリンス液を除去する。乾燥処理において、不図示のノズルから上面Wuに向けてガスが吐出されてもよい。乾燥処理において、本体制御ユニット22が、パージバルブ46を制御して、下面ノズル44から下面Wbへ窒素ガスが吐出されてもよい。
【0097】
薬液処理、リンス液処理、乾燥処理において、スピンベース11の回転速度が変動し、あるいは回転が停止してもよい。
【0098】
薬液処理、リンス液処理、乾燥処理において本体制御ユニット22は、ガード昇降装置55を制御して、ガード71,72,73,74と、カップ75,76,77,78との、基板Wに対する上下方向における相対的な位置を変化させる。この位置の変化についての詳細は後述される。
【0099】
乾燥処理が終了した後に、ステップS5において基板Wが基板処理装置20から搬出される。具体的には、本体制御ユニット22は、排気バルブ43を制御して、スピンベース11における真空チャックを解除する。センターロボット82によって、処理済みの基板Wがスピンベース11から外され、チャンバー4から搬出される。
【0100】
処理済みの基板Wの搬出が終了した後、ステップS6において、本体制御ユニット22が、例えば、レシピ等を参照して、処理ユニット21において処理の対象とされる次の基板Wが存在しているか否か判定する。処理ユニット21における次の処理対象としての未処理の基板Wが存在していればステップS1に処理が戻り、処理ユニット21における次の処理対象としての未処理の基板Wが存在していなければ、処理ユニット21を用いた一連の処理が終了する。
【0101】
<1-6-2.基板Wおよび薬液処理の一例>
図8は、未処理の基板Wの構成を例示する断面図である。未処理の基板Wは第1層L1、第2層L2、第3層L3、第4層L4、第5層L5が積層された構造を有する。未処理の基板Wにおける上面Wuには第1層L1が露出し、下面Wbには第5層L5が露出する。
【0102】
かかる構造は、例えば第1層L1、第2層L2、第3層L3を有する第1の基板と、第5層L5とを有する第2の基板とが、第4層L4によって接合されて得られる。第2層L2には例えば半導体素子m1,m2,m3が設けられる。半導体素子m1,m2,m3は第1層L1には接触しない。例えば半導体素子m1,m2,m3は第3層L3に接触し、第3層L3には半導体素子m1,m2,m3同士を接続する配線が設けられる。
【0103】
例えば第2層L2はp型のシリコン層である。第1層L1は例えばp型のシリコン層であって、その不純物濃度は第2層L2の不純物濃度よりも高い。第1層L1は第2層L2よりも厚く、例えば第2層L2の厚さは10μm未満であり、第1層L1の厚さは数十μm程度である。
【0104】
第1の基板において半導体素子m1,m2,m3およびこれらを接続する配線が設けられた後には第5層L5は不要であってエッチングによって除去される対象となる。当該エッチングの前に第2の基板を第1の基板と接合することは、第3層L3の保護と基板Wの容易な取り扱いとに寄与する。図9は、第5層L5が除去された後の基板Wの構成を例示する断面図である。
【0105】
処理液HFNのエッチング速度は高いが、エッチング対象の不純物濃度に関する選択性は低い。処理液HNAのエッチング速度は低いが、エッチング対象の不純物濃度に関する選択性は高い。このような処理液HFN,HNAが有するエッチングの特性の相違に由来して、処理液HFN,HNAをこの順に上面Wuに供給することは、第4層L4へのオーバーエッチを小さくしつつ第5層L5を効率的にエッチングによって除去することに寄与する。
【0106】
処理液HFNはシリコン層である第5層L5と共に次の2つの化学反応を生じさせ、エッチング対象となる第5層L5が除去される。
【0107】
3Si+4HNO⇔3SiO+4NO+2HO ・・・(1)
SiO+6HF⇔HSiF+2HO ・・・(2)
【0108】
式(1)は、シリコン(Si)と硝酸(HNO)との酸化反応を示しており、当該酸化反応によりシリコン酸化膜(SiO)が形成される。式(2)は、式(1)で生じたシリコン酸化膜とフッ酸(HF)との溶解反応を示しており、当該溶解反応によりシリコン酸化膜が除去される。つまり、第5層L5は、硝酸により酸化されて、一旦、シリコン酸化膜という中間生成膜となり、この中間生成膜がフッ酸により溶解されることで、除去される。
【0109】
さらに酸化反応をより詳細に確認すると、式(1)の酸化反応と並行して以下の反応も行われている。
【0110】
+NO +2NO+2HO⇔3HNO ・・・(3)
Si+4HNO⇔SiO+4NO+2HO ・・・(4)
【0111】
つまり、式(1)の酸化反応によって生じた一酸化窒素(NO)と硝酸とが反応し、亜硝酸(HNO)を生成し(式(3))、当該亜硝酸がシリコンに作用して、シリコンを酸化させる(式(4))。亜硝酸は硝酸よりも酸化力が強いので、式(4)の酸化反応により、速やかに第5層L5を酸化することができる。そして、フッ酸により、そのシリコン酸化膜を速やかに除去することができる。
【0112】
処理液HNAにおいても硝酸とフッ酸とが用いられており、上記の反応が発生する。処理液HNAによるエッチング速度は、当該エッチングに寄与する一酸化窒素の濃度が大きいほど高い。
【0113】
<1-6-3.ガード機構7の構成例>
外壁70は筒状であって、スピンチャック5と、ガード71,72,73,74と、カップ75,76,77,78とを取り囲む。
【0114】
ガード71はスピンチャック5を取り囲む円筒状の側壁71sと、基板Wよりも内径が大きな円環状の上板71tとを含む。上板71tの外周は側壁71sの上端と連結される。ガード72はスピンチャック5を取り囲む円筒状の側壁72sと、基板Wよりも内径が大きな円環状の上板72tとを含む。上板72tの外周は側壁72sの上端と連結される。ガード73はスピンチャック5を取り囲む円筒状の側壁73sと、基板Wよりも内径が大きな円環状の上板73tとを含む。上板73tの外周は側壁73sの上端と連結される。ガード74はスピンチャック5を取り囲む円筒状の側壁74sと、基板Wよりも内径が大きな円環状の上板74tとを含む。上板74tの外周は側壁74sの上端と連結される。側壁71s,72s,73s,74sは基板回転軸A1のまわりで同軸的に位置する。
【0115】
カップ75は、側壁72sの下方端において側壁72sに対して外周側に設けられ、上方に開口する環状の溝を有する。カップ76は、側壁73sの下方端において側壁73sに対して外周側に設けられ、上方に開口する環状の溝を有する。カップ77は、側壁74sの下方端において側壁74sに対して外周側に設けられ、上方に開口する環状の溝を有する。カップ78は側壁74sとスピンチャック5との間に設けられ、上方に開口する環状の溝を有する。
【0116】
上板71tはガード72およびカップ75よりも上方に位置する。側壁71sはガード72およびカップ75よりも外方に位置する。上板72tはガード73およびカップ76よりも上方に位置する。側壁72sはガード73よりも外方に位置する。側壁72sの下端はカップ76もしくはその外周端の鉛直上方に位置する。上板73tはガード74およびカップ77よりも上方に位置する。側壁73sはガード74よりも外方に位置する。側壁73sの下端はカップ77もしくはその外周端の鉛直上方に位置する。上板74tはカップ78よりも上方に位置する。側壁74sはカップ78よりも外方に位置する。
【0117】
ガード71,72,73,74は、ガード昇降装置55の制御により駆動され、独立して昇降する。カップ75,76,77は、それぞれガード72,73,74の昇降に付随して昇降する。
【0118】
ガード昇降装置55は、上板71tが基板Wより上方に位置する上位置と、上板71tが基板Wより下方に位置する下位置との間でガード71を昇降させ、上位置と下位置においてガード71の位置を維持する機能を有する。ガード昇降装置55は、上板72tが基板Wより上方に位置する上位置と、上板72tが基板Wより下方に位置する下位置との間でガード72を昇降させ、上位置と下位置においてガード72の位置を維持する機能を有する。ガード昇降装置55は、上板73tが基板Wより上方に位置する上位置と、上板73tが基板Wより下方に位置する下位置との間でガード73を昇降させ、上位置と下位置においてガード73の位置を維持する機能を有する。ガード昇降装置55は、上板74tが基板Wより上方に位置する上位置と、上板74tが基板Wより下方に位置する下位置との間でガード74を昇降させ、上位置と下位置においてガード74の位置を維持する機能を有する。
【0119】
ガード74がその下位置に位置するときに、ガード73はその下位置に位置することができる。ガード73,74のいずれもがそれぞれの下位置に位置するときに、ガード72はその下位置に位置することができる。ガード72,73,74のいずれもがそれぞれの下位置に位置するときに、ガード71はその下位置に位置することができる。
【0120】
ガード71がその上位置に位置するときに、ガード72はその上位置に位置することができる。ガード71,72のいずれもがその上位置に位置するときに、ガード73はその上位置に位置することができる。ガード71,72,73のいずれもがそれぞれの上位置に位置するときに、ガード74はその上位置に位置することができる。
【0121】
ガード71,72,73,74は基板Wの周囲に飛散した処理液またはリンス液を受け止める。ガード71が受け止めたリンス液を、カップ75が受け止める。ガード72が受け止めた処理液を、カップ76が受け止める。ガード73が受け止めた処理液を、カップ77が受け止める。ガード74が受け止めたリンス液を、カップ78が受け止める。
【0122】
図10は処理液の回収を模式的に例示するブロック図である。図10において、貯留槽261,262は、それぞれ貯留槽261L,262Lを表す。あるいは貯留槽261,262は、それぞれ貯留槽261R,262Rを表す。
【0123】
カップ76の底と貯留槽261とは回収配管266によって連結される。回収配管266には回収機構263が介挿される。カップ76が受け止めた処理液は貯留槽261Lあるいは貯留槽261Rへ、回収機構263によって回収配管266を介して回収される。
【0124】
カップ77の底と貯留槽262とは回収配管267によって連結される。回収配管267には回収機構264が介挿される。カップ77が受け止めた処理液は貯留槽262Lあるいは貯留槽262Rへ、回収機構264によって回収配管267を介して回収される。
【0125】
回収機構263,264は公知のポンプもしくはポンプおよびバルブを用いて実現される。回収機構263,264および回収配管266,267は、例えばそれぞれ二つ設けられる。回収機構263,264および回収配管266,267の第1の組は、第1の組に対応する一対の処理ユニット21の下方に配置される。回収機構263,264および回収配管266,267の第2の組は、第2の組に対応する一対の処理ユニット21の下方に配置される。回収機構263,264および回収配管266,267は図3および図4においては省略されている。
【0126】
カップ75が受け止めた処理液またはリンス液と、カップ78が受け止めたリンス液とは、不図示の排出機構によって処理ユニット21から排出される。
【0127】
<1-6-4.諸処理におけるガードの位置>
図11図15はガード71,72,73,74およびカップ75,76,77の位置を例示する模式図であり、鉛直方向と垂直な方向から見た図である。これらの図面においては処理液ノズル341,342と、リンス液ノズル38と、ガード機構7と、スピンチャック5と、基板Wと、スピンベース11以外が省略されて描かれている。
【0128】
図11図13は薬液処理(図7のステップS2参照)におけるガード71~74と基板Wとの位置関係を示す。図14は洗浄処理(図7のステップS3参照)におけるガード71~74と基板Wとの位置関係を示す。図15は乾燥処理(図7のステップS4参照)におけるガード71~74と基板Wとの位置関係を示す。
【0129】
図16は処理液HFN,HNAの吐出と、リンス液の吐出と、ガード71~74の昇降との時間的関係を示すタイミングチャートである。
【0130】
図16において、[HFN]の「ON」は処理液HFNが吐出されていることを示し、[HFN]の「OFF」は処理液HFNが吐出されていないことを示し、[HNA]の「ON」は処理液HNAが吐出されていることを示し、[HNA]の「OFF」は処理液HNAが吐出されていないことを示し、[COW]の「ON」はリンス液が吐出されていることを示し、[COW]の「OFF」はリンス液が吐出されていないことを示す。
【0131】
処理液バルブ361の動作によって[HFN]の「ON」と「OFF」とが切り替わる。処理液バルブ362の動作によって[HNA]の「ON」と「OFF」とが切り替わる。リンス液バルブ47の動作によって[COW]の「ON」と「OFF」とが切り替わる。
【0132】
図16において、[71]の「H」はガード71が上位置にあることを示し、[71]の「L」はガード71が下位置にあることを示し、[72]の「H」はガード72が上位置にあることを示し、[72]の「L」はガード72が下位置にあることを示し、[73]の「H」はガード73が上位置にあることを示し、[73]の「L」はガード73が下位置にあることを示し、[74]の「H」はガード74が上位置にあることを示し、[74]の「L」はガード74が下位置にあることを示す。
【0133】
ガード昇降装置55の動作によって、[71]の「H」と「L」とが切り替わり、[72]の「H」と「L」とが切り替わり、[73]の「ON」と「L」とが切り替わり、[74]の「H」と「L」とが切り替わる。
【0134】
ステップS1(図7参照)において未処理の基板Wがスピンベース11に載置される前には、ガード71~74のいずれもが、それぞれの下位置に位置する。未処理の基板Wがスピンベース11に載置され、真空チャックによってスピンベース11において保持された後、時刻T11においてガード71が上位置に移動する。図示および説明を簡単にするために、図16においてガード71は時刻T11において瞬時に下位置から上位置に移動するように描かれる。他の時刻においてガード71~74がそれぞれの上位置と下位置との間を移動する場合も同様に描かれる。
【0135】
時刻T11の後、時刻T21においてガード72が下位置から上位置に移動する。ガード71がガード72の移動と干渉しないのであれば、時刻T21は時刻T11と同時刻であってもよい。
【0136】
時刻T21の後、時刻Tf1において処理液HFNが処理液ノズル341から上面Wuへ吐出される。時刻Tf1の後、時刻Tf2において処理液HFNの吐出が停止される。時刻Tf1から時刻Tf2の間の少なくとも一部の期間において基板Wは回転する。
【0137】
基板Wの回転が開始される時刻は時刻Tf1よりも前であってもよいし、時刻Tf1と同時もしくはそれよりも後であってもよい。基板Wの回転が時刻Tf2よりも前に停止してもよい。処理液HFNが上面Wuへ吐出されて上面Wuに液膜として存在するとき、基板Wにおいていわゆるパドル処理が実現される。例えば処理液HFNの上面Wuへの吐出が停止されても、基板Wの回転を遅くして(停止も含む)パドル処理が実現される。
【0138】
図11は時刻Tf1から時刻Tf2の間であって基板Wが回転する状態を示す。処理液ノズル341から上面Wuに向かう実線の矢印は、処理液HFNの吐出を模式的に示す。処理液HFNは、上面Wuにおけるエッチング、より詳細には図8に示された第1層L1のエッチングに供される。
【0139】
処理液HFNが上面Wuに吐出されるときには、ガード71,72が上位置にあってガード73,74が下位置にある。処理液ノズル341から吐出されて上面Wuに到達した処理液HFNは、基板Wの回転によって上面Wuのほぼ水平方向に飛散し、ガード72によって、より詳細には側壁72sの内周面によって受け止められる。ガード72によって受け止められた処理液HFNは、カップ76によって受け止められ、回収機構263(図10参照)によって貯留槽261Lあるいは貯留槽261Rへ回収される。
【0140】
時刻Tf2と同時、もしくは前後してガード73が下位置から上位置に移動する。図16においては時刻Tf2よりも後の時刻T31においてガード73が下位置から上位置に移動する場合(以下「第1の場合」)が実線で描かれ、時刻Tf2よりも前よりも後の時刻T33においてガード73が下位置から上位置に移動する場合(以下「第2の場合」)が破線で描かれる。
【0141】
図12は、ガード73が下位置から上位置に移動した直後の状態を示す。第1の場合には、時刻T31よりも前の時刻Tf2において既に処理液HFNの吐出が停止されている。第2の場合には、時刻T33は時刻Tf2よりも前であるので、処理液HFNの吐出が継続する。図12においては処理液ノズル341から上面Wuに向かう破線の矢印は、第1の場合には処理液HFNが吐出されず、第2の場合には処理液HFNが吐出されることを示す。
【0142】
第1の場合には時刻T31の直後において基板Wが回転しており(時刻T31以前に基板Wが回転している場合も含む)、第2の場合には時刻T33の直後において基板Wが回転している(時刻T33以前に基板Wが回転している場合も含む)。いずれの場合も、上面Wuにおいて上式(1),(3),(4)で示された反応が生じた処理液HFNが、基板Wの回転によって上面Wuからほぼ水平方向に飛散する。飛散した処理液HFNはガード73によって、より詳細には側壁73sの内周面によって受け止められる。ガード73によって受け止められた処理液HFNは、カップ77によって受け止められ、回収機構264(図10参照)によって貯留槽262Lあるいは貯留槽262Rへ回収される。
【0143】
上述の回収によって処理液HFNが添加されることにより、貯留槽262Lあるいは貯留槽262Rに貯留される処理液HNAにおける一酸化窒素の濃度が高まる。一酸化窒素の濃度の高まりは処理液HNAによるエッチング速度を高める。
【0144】
時刻TN1において処理液HNAが処理液ノズル342から上面Wuへ吐出される。時刻TN1の後、時刻TN2において処理液HNAの吐出が停止される。時刻TN1から時刻TN2の間の少なくとも一部の期間において基板Wは回転する。時刻TN1から時刻TN2の間の全期間においてガード71,72,73は上位置に位置し、ガード74は下位置に位置する。
【0145】
第1の場合には時刻TN1は時刻T31と同時もしくはこれより後の時刻である。第2の場合には時刻TN1は時刻Tf2より後の時刻である。
【0146】
図13は、時刻TN1から時刻TN2の間であって基板Wが回転する状態を示す。処理液ノズル342から上面Wuに向かう実線の矢印は、処理液HNAの吐出を模式的に示す。処理液HNAは、上面Wuにおけるエッチング、より詳細には図8に示された第2層L2をストッパとする第1層L1の選択的エッチングに供される。
【0147】
上面Wuへ吐出された処理液HNAは、基板Wの回転によって上面Wuからほぼ水平方向に飛散する。飛散した処理液HNAはガード73によって、より詳細には側壁73sの内周面によって受け止められる。ガード73によって受け止められた処理液HNAは、カップ77によって受け止められ、回収機構264(図10参照)によって貯留槽262Lあるいは貯留槽262Rへ回収される。
【0148】
時刻TN2の後、時刻T41においてガード74が下位置から上位置に移動する。時刻T41の後、時刻TC1においてリンス液がリンス液ノズル38から上面Wuへ吐出される。時刻TC1の後、時刻TC2においてリンス液の吐出が停止される。時刻TC2の後、時刻T42においてガード74が上位置から下位置に移動する。時刻TC1から時刻TC2の間の少なくとも一部の期間において基板Wは回転する。
【0149】
上面Wuへ吐出されたリンス液は、基板Wの回転によって上面Wuのほぼ水平方向に飛散する。飛散したリンス液はガード74によって、より詳細には側壁74sの内周面によって受け止められる。ガード74によって受け止められたリンス液は、カップ78によって受け止められた後、不図示の排出機構によって排出される。
【0150】
時刻T42の後、時刻T32においてガード73が上位置から下位置に移動する。ガード74がガード73の移動と干渉しないのであれば、時刻T32は時刻T42と同時刻であってもよい。
【0151】
時刻T32の後、時刻T22においてガード72が上位置から下位置に移動する。ガード73がガード72の移動と干渉しないのであれば、時刻T22は時刻T32と同時刻であってもよい。
【0152】
時刻T22の後、時刻T12においてガード71が上位置から下位置に移動する。時刻T22から時刻T12の間の少なくとも一部の期間において基板Wは回転する。
【0153】
図15は、時刻T22から時刻T12の間であって基板Wが回転する状態を示す。処理液HFN,HNAおよびリンス液のいずれも上面Wuには供給されず、基板Wの回転は上面Wuの乾燥に寄与する。当該回転によって飛散したリンス液はガード71によって、より詳細には側壁71sの内周面によって受け止められる。ガード71によって受け止められたリンス液は、カップ75によって受け止められ、あるいはガード機構7の底部に受け止められ、不図示の排出機構によって排出される。
【0154】
時刻T12以降はガード71~74のいずれもが下位置に位置し、基板Wの搬出(図7のステップS5参照)に備える。
【0155】
時刻T11から時刻Tf1の間でステップS2における薬液処理が開始し、時刻TN2から時刻T41の間で当該薬液処理が終了するということができる。時刻Tf1から時刻Tf2までの期間は、例えば数十秒であって、例えば時刻TN1から時刻TN2までの期間の半分程度に選定される。
【0156】
時刻T41から時刻TC1の間でステップS3における洗浄処理が開始し、時刻TC2から時刻T42の間で当該洗浄処理が終了するということができる。
【0157】
時刻T22においてステップS4における乾燥処理が開始し、時刻T12において当該乾燥処理が終了するということができる。
【0158】
以上のようにして、処理液HFNを用いたエッチング処理の後、当該エッチング処理に用いられた処理液HFNを回収して処理液HNAに添加することは、処理液HNAを用いたエッチング処理におけるエッチング速度の向上に寄与する。処理液HNAは処理液HFNと比べて、エッチング選択比が高くエッチング速度が小さいことに鑑みれば、上記添加は第2層L2をストッパとして第1層L1を選択的にエッチングする際のエッチング速度の向上に寄与する。更に、上記添加は、処理液HNAのエッチング速度を高めるための他の手法、例えば貯留槽262L,262Rへ一酸化窒素を導入する処理を別途に設ける場合と比較して、エッチングに供された処理液HFNの回収という簡易な処理で実現される。
【0159】
<1-7.変形の例示>
<1-7-1.パドル処理>
上記の説明と部分的に重複するが、基板Wにおいていわゆるパドル処理が行われてもよい。例えば、時刻Tf2よりも前の時点から基板Wの回転が停止し、時刻TN1よりも前の時点で基板Wが回転する。処理液HFNによるエッチングにおけるパドル処理は、処理液HFNとシリコンとが反応する時間を長くし、回収される処理液HFNにおける一酸化窒素の濃度を高めることに寄与する。
【0160】
<1-7-2.処理液の回収についての変形>
上面Wuから飛散した処理液HFNは、第1の場合には時刻Tf1から時刻T31の間においては貯留槽261L,261Rへ回収され、時刻T31以降は貯留槽262L,262Rへ回収される。上面Wuから飛散した処理液HFNは、第2の場合には時刻Tf1から時刻T33の間においては貯留槽261L,261Rへ回収され、時刻T33以降は貯留槽262L,262Rへ回収される。
【0161】
上述の説明においては、このような回収先の変更が、時刻T31または時刻T33におけるガード73の昇降によって実現される場合が示された。かかる変更はガード73を省略しても実現される。以下、当該変形について説明される。
【0162】
図17は当該変形を説明する模式図であり、鉛直方向に対して垂直な方向からみた模式図である。ガード機構7のうち、カップ75およびガード72のカップ75の近傍部分と、カップ77およびガード74のカップ77の近傍部分とが拡大して示される。側壁72sの下端はカップ77もしくはその外周端の鉛直上方に位置する。
【0163】
当該変形ではガード73が省略された点を除けば、ガード71,72,74が昇降するタイミングは図16に示された場合と同じである。当該変形においては時刻T21から時刻T41までの間、ガード71,72のいずれもが上位置に位置し、ガード74が下位置に位置する。上面Wuから飛散した処理液HFN,HNAのいずれもがガード72によって、より詳細には側壁72sの内周面によって受け止められる。ガード72によって受け止められた処理液HFN,HNAは、カップ77によって受け止められる。
【0164】
図18は当該変形における処理液の回収を例示するブロック図である。図18においても図10と同様に、貯留槽261,262は、それぞれ貯留槽261L,262Lを表す。あるいは貯留槽261,262は、それぞれ貯留槽261R,262Rを表す。
【0165】
カップ77の底は、回収配管268、回収バルブ276、回収配管266をこの順に介して、貯留槽261へ連結される。カップ77の底は、回収配管268、回収バルブ277、回収配管267をこの順に介して、貯留槽262へ連結される。回収配管268には回収機構265が介挿される。
【0166】
回収機構265および回収配管266,267,268、回収バルブ276,277は、例えばそれぞれ二つ設けられる。回収機構265および回収配管266,267,268、回収バルブ276,277の第1組は、第1組に対応する一対の処理ユニット21の下方に配置される。回収機構265および回収配管266,267,268、回収バルブ276,277の第2組は、第2組に対応する一対の処理ユニット21の下方に配置される。
【0167】
時刻T31または時刻T33よりも前の時点において回収バルブ277が閉じ、回収バルブ276が開いた状態にある。時刻Tf1から時刻T31または時刻T33までの期間においては、飛散した処理液HFNがカップ77によって受け止められ、回収配管268,266をこの順に経由して、貯留槽261へ回収される。
【0168】
時刻T31または時刻T33よりも後の時点において回収バルブ277が開き、回収バルブ276が閉じた状態にある。時刻T31または時刻T33より後で時刻T41までの期間においては、飛散した処理液HFNがカップ77によって受け止められ、回収配管268,267をこの順に経由して、貯留槽262へ回収される。
【0169】
回収バルブ277が閉じ、回収バルブ276が開いた状態はガード73が下位置に位置する状態に対応する。回収バルブ276が閉じ、回収バルブ277が開いた状態はガード73が上位置に位置する状態に対応する。かかる対応関係により、当該変形においても処理液HFNを用いたエッチング処理の後、当該エッチング処理に用いられた処理液HFNを回収して処理液HNAに添加することが実現される。
【0170】
<1-7-3.処理液の供給についての変形>
図19は当該変形を説明する模式図である。処理液ノズル34が処理液配管351,352の両方と接続される。処理液バルブ361は処理液配管351に介挿され、処理液バルブ362は処理液配管352に介挿される。
【0171】
処理液ノズル34には処理液バルブ361および処理液配管351を介して処理液HFNが供給され、処理液バルブ362および処理液配管352を介して処理液HNAが供給される。よって当該変形によれば、処理液ノズル34において処理液ノズル341,342のいずれの機能も果たされる。
【0172】
<2.包括的な説明>
上記の各項の説明に基づいて、以下に包括的な説明が行われる。
【0173】
<2-1.方法としての把握>
本開示において下記の方法が、基板処理方法として提示される。当該方法は、処理液HFNを用いて基板Wに対して第1の処理を行う工程を備える。当該工程は、例えば図16の時刻Tf1から時刻Tf2において実行される。当該方法は、第1の処理の後、処理液HNAを用いて基板Wに対して第2の処理を行う工程をも備える。当該工程は、例えば図16の時刻TN1から時刻TN2において実行される。第1の処理および第2の処理はいずれもシリコンのエッチング処理である。
【0174】
当該方法は、第1の処理に用いられた後の処理液HFNを処理液HNAへ添加する工程をも備える。当該添加は、上面Wuから飛散した処理液HFNが、例えばガード73、カップ77、回収配管267、回収機構264を経由して貯留槽262へ回収されることによって実現される(図10参照)。あるいは<1-7-2>に即して見れば、当該添加は、上面Wuから飛散した処理液HFNが、例えばガード72、カップ77、回収配管268、回収機構265、回収バルブ277、回収配管267を経由して貯留槽262へ回収されることによって実現される(図17図18参照)。
【0175】
かかる添加により、処理液HNAにおける一酸化窒素の濃度が高まり、第2の処理におけるエッチング速度が高まる。第2の処理は、不純物濃度が相違する半導体層(ここではシリコン)の一方(上述の例ではp型不純物濃度が低い第2層L2)をストッパとして他方(ここではp型不純物濃度が高い第1層L1)を選択的にエッチングする処理であり、このときのエッチング速度が高まる。このようなエッチング速度の高まりは、半導体層の一方(第2層L2)へのオーバーエッチを小さくしつつ半導体層の他方(第1層L1)を効率的にエッチングによって除去することに寄与する。
【0176】
<2-2.装置としての把握>
本開示において下記の装置が、基板処理装置20として例示される。当該装置は、上記の基板処理方法の実現に資する。
【0177】
基板処理装置20は本体制御ユニット22と、処理液ノズル341,342とを備える。処理液ノズル341は基板Wに対する処理液HFNの吐出を行い、処理液ノズル342は基板Wに対する処理液HNAの吐出を行う。第1の処理および第2の処理は、上記<2-1>において例示された。
【0178】
基板処理装置20は、第1の処理に用いられた後の処理液HFNを処理液HNAへ添加する添加系統を更に備える。添加系統の具体例について種々の構成が後述される。
【0179】
本体制御ユニット22は、処理液HFNの吐出、処理液HNAの吐出、添加系統による添加を制御する制御ユニットとして機能する。
【0180】
<2-2-1.添加系統の具体例>
基板処理装置20は、本体制御ユニット22によって制御され、基板Wを回転させる回転機構を更に備える。当該回転機構は例えばスピンチャック5である。
【0181】
基板処理装置20は、貯留槽261L,261R,262L,262Rを更に備える。貯留槽261L,261Rは処理液HFNを貯留する。貯留槽262L,262Rは処理液HNAを貯留する。
【0182】
処理液ノズル341には貯留槽261Lまたは貯留槽261Rから処理液HFNが供給される。処理液ノズル342には貯留槽262Lまたは貯留槽262Rから処理液HNAが供給される。
【0183】
添加系統は、ガード73あるいはガード72と、回収系統とを有する。回収系統は、ガード73またはガード72によって受け止められた処理液HFNの少なくとも一部を貯留槽262へ回収する。
【0184】
ガード73は基板Wの回転によって基板Wから飛散する処理液HFNの少なくとも一部を受け止める(図12、および図16における時刻T31または時刻T33から、時刻TN1までの期間を参照)あるいは<1-7-2>に即して見れば、基板Wの回転によって基板Wから飛散する処理液HFNはガード72によって受け止められる(図17参照)。
【0185】
例えば回収系統は、カップ77と、回収配管267と、回収機構264とを有し、これらによってその機能が実現される(ガード73が飛散した処理液HFNを受け止める場合:図10および図12参照)。
【0186】
あるいは<1-7-2>に即して見れば、回収系統は、カップ77と、回収配管268と、回収機構265と、回収配管267と、回収バルブ277とを有し、これらによってその機能が実現される(ガード72が飛散した処理液HFNを受け止める場合:図17および図18参照)。
【0187】
<2-2-2.処理液HNAの回収>
回転機構は、第2の処理が実行される期間の少なくとも一部において基板Wを回転させる。例えばガード73は、基板Wの回転によって基板Wから飛散する処理液HNAを受け止める(図13、および図16における時刻TN1から時刻TN2までの期間を参照)。回収系統は、ガード73によって受け止められた処理液HNAを貯留槽262L,262Rへ回収する。
【0188】
あるいは<1-7-2>に即して見れば、ガード72は、基板Wの回転によって基板Wから飛散する処理液HNAを受け止める(図17参照)。回収系統は、ガード72によって受け止められた処理液HNAを貯留槽262L,262Rへ回収する(図18参照)。
【0189】
<2-2-3.ガードの切り替えによる処理液HFNの回収の切り替え>
添加系統は、ガード72,73を有する。基板Wの回転によって基板Wから飛散する処理液HFNは、まずガード72によって受け止められ(図16の時刻Tf1から時刻T31までの期間または時刻Tf1から時刻T33までの期間、および図11参照)、次いでガード72によって受け止められることなくガード73によって受け止められる(図16の時刻T31から時刻TN1までの期間または時刻T33から時刻TN1までの期間、および図12参照)。
【0190】
回収系統は、ガード72によって受け止められた処理液HFNを貯留槽261へ回収する。当該回収系統は、カップ76と、回収配管266と、回収機構263とを有し、これらによってその機能が実現される。
【0191】
回収系統は、ガード73によって受け止められた処理液HFNを貯留槽262へ回収する。当該回収系統は、カップ77と、回収配管267と、回収機構264とを有し、これらによってその機能が実現される。
【0192】
<2-2-4.分岐による処理液HFNの回収の切り替え>
<1-7-2>に即して見れば、回収系統は分岐機構を有する。当該分岐機構は、ガード72によって受け止められた処理液HFNを貯留槽261L,262Rと貯留槽262L,262Rとに分岐して選択的に回収する。分岐機構は図18を参照して、回収配管266,267,268と回収バルブ276,277とを有し、これらによってその機能が実現される。
【0193】
分岐機構は、ガード72によって受け止められた処理液HFNを貯留槽261L,261Rへ回収してから、ガード72によって受け止められた処理液を貯留槽262L,262Rへ回収する。かかる機能は本体制御ユニット22によって制御される回収バルブ276,277の動作によって実現される。具体的な回収バルブ276,277の動作については<1-7-2>で例示された。
【0194】
<2-2-5.パドル処理>
スピンチャック5が、基板Wに処理液HFNあるいは処理液HNAが存在する状態で基板Wの回転を停止してもよい。これによりいわゆるパドル処理によるエッチングが行われる。
【0195】
<2-2-6.具体的なエッチング例>
例えば第1の処理および第2の処理はいずれもシリコンのエッチング処理である。同じ基板Wに対して第1の処理は第2の処理に先行する。
【0196】
以上のように、基板処理装置および基板処理方法は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この開示がそれに限定されるものではない。また、上述した各種変形例は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない多数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0197】
5 スピンチャック
20 基板処理装置
22 本体制御ユニット
34,341,342 処理液ノズル
71,72,73,74 ガード
75,76,77,78 カップ
261,261L,261R,262,262L,262R 貯留槽
263,264,265 回収機構
266,267,268 回収配管
276,277 回収バルブ
HFN,HNA 処理液
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19