(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】二次エア導入装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/30 20060101AFI20240412BHJP
F02F 1/42 20060101ALI20240412BHJP
F02F 7/00 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
F01N3/30 A
F01N3/30 G
F02F1/42 B
F02F7/00 N
(21)【出願番号】P 2020171037
(22)【出願日】2020-10-09
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】畑中 達也
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-101106(JP,A)
【文献】特開2006-97527(JP,A)
【文献】特開2006-226272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/30
F02F 1/42
F02F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気通路に空気を送り込んで排気に含まれる未燃焼ガスを燃焼させる二次エア導入装置であって、
前記排気通路に空気を導入するエア導入通路と、
前記エンジンのシリンダヘッドに取り付けられて前記エア導入通路を開閉制御する二次エアバルブと、
前記二次エアバルブを前記シリンダヘッドに取り付けるブラケットと、を備え、
前記二次エアバルブは、第1ケースと第2ケースの間に
弁体が挟持された状態で、前記第1ケースと第2ケースが連結され、
前記二次エアバルブは、前記弁体の厚み方向
がクランク軸の軸心方向となるように配置され、
前記二次エアバルブは、前記ブラケットを介して前記シリンダヘッドにおける
前記クランク軸の軸心方向の一方側の外側面に取り付けられ、
前記二次エアバルブにおける空気導入口が形成される部分が、前記クランク軸の軸心方向から見て、前記シリンダヘッドに重なっている二次エア導入装置。
【請求項2】
請求項1に記載の二次エア導入装置において、前記第1ケースに前記空気導入口が形成され、前記第2ケースに空気導出口が形成され、
前記空気導入口と前記空気導出口は、前記クランク軸の軸心方向に並んで配置され、
前記空気導出口が、前記空気導入口よりも前記シリンダヘッド寄りに配置されている二次エア導入装置。
【請求項3】
請求項2に記載の二次エア導入装置において、前記空気導入口に接続される配管がゴムチューブにより構成され、前記空気導出口に接続される配管が金属製材料により構成されている二次エア導入装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の二次エア導入装置において、前記エンジンの動弁機構に動力を伝達する動力伝達部材よりも前記クランク軸の軸心方向の一方側に前記二次エアバルブが配置され、他方側に排気ポートが設けられ、
前記エア導入通路における前記二次エアバルブと前記排気通路とを接続する下流部分を構成する配管が、金属製材料で形成されている二次エア導入装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の二次エア導入装置において、前記二次エアバルブが、
前記シリンダヘッドの外側面に設けられて前記シリンダヘッド内に形成される通路を塞ぐプラグ部材を介して前記シリンダヘッドに取り付けられている二次エア導入装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の二次エア導入装置において、さらに、前記シリンダヘッドの外側面に形成されたねじ孔に取り付けるプラグ部材を備え、
前記プラグ部材は、前記ねじ孔に締め付けられる雄ねじ部と、内部に雌ねじが形成された筒形のボス部とを有し、
前記プラグ部材の雌ねじに、前記ブラケットが着脱自在に取り付けられている二次エア導入装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の二次エア導入装置において、前記エンジンは自動二輪車に搭載され、
前記クランク軸の軸心が車幅方向に延び、
前記二次エアバルブが、前記シリンダヘッドに対して車幅方向に間隔をあけて、前記シリンダヘッドの外側方に配置されている二次エア導入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気通路に、空気を送り込んで排気に含まれる未燃焼ガスを燃焼させる二次エア導入装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動二輪車のような車両の駆動源として用いられるエンジンにおいて、エンジンの排気通路に二次エア導入装置を設けたものがある(例えば、特許文献1)。二次エア導入装置は、排気通路に空気を導入するエア導入通路を開閉する二次エアバルブを有し、特許文献1では、二次エアバルブが車体フレームに取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構造では、二次エアバルブが車体フレームに取り付けられている。したがって、二次エアバルブは、エンジンに対する相対変位量が大きくなり易い。このため、振動対策として、二次エアバルブをラバーマウントで支持したり、二次エアバルブと排気通路とを繋ぐ配管の一部をゴムチューブで構成したりする必要がある。
【0005】
本発明は、二次エアバルブとシリンダヘッドとの相対振動を抑えることができる二次エア導入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の二次エア導入装置は、エンジンの排気通路に空気を送り込んで排気に含まれる未燃焼ガスを燃焼させる二次エア導入装置であって、前記排気通路に空気を導入するエア導入通路と、前記エンジンのシリンダヘッドに取り付けられて前記エア導入通路を開閉制御する二次エアバルブとを備えている。前記二次エアバルブは、前記シリンダヘッドにおけるクランク軸の軸心方向の一方側の外側面に取り付けられ、前記二次エアバルブにおける空気導入口が形成される部分が、前記シリンダヘッドの外側面と前記クランク軸の軸心方向に対向して配置されている。例えば、前記二次エアバルブにおける空気導入口が形成される部分は、前記クランク軸の軸心方向から見て、前記シリンダヘッドに重なる。
【0007】
この構成によれば、二次エアバルブがシリンダヘッドに取り付けられているので、二次エアバルブとシリンダヘッドとの相対振動を抑えることができる。したがって、二次エアバルブの支持構造や、二次エアバルブと排気通路とを繋ぐ配管の材料選択の自由度が向上する。また、二次エアバルブにおける空気導入口が形成される部分が、シリンダヘッドの外側面に対向して配置されることで、吸排気配管と、二次エアバルブに接続される配管との干渉を防ぐことができ、二次エアバルブをシリンダヘッドに配置しやすい。
【0008】
本発明において、前記二次エアバルブは弾性を有する板状の弁体を有し、前記二次エアバルブは、前記弁体の厚み方向が前記クランク軸の軸心方向となるように配置されていてもよい。この構成によれば、二次エアバルブにおけるシリンダヘッドに対するクランク軸の軸心方向の突出量を抑えることができ、二次エアバルブをシリンダヘッドの外側面に配置しやすい。
【0009】
本発明において、前記エンジンの動弁機構に動力を伝達する動力伝達部材よりも前記クランク軸の軸心方向の一方側に前記二次エアバルブが配置され、他方側に排気ポートが設けられていてもよい。この構成によれば、二次エアバルブは、クランク軸の軸心方向に関して、動力伝達部材が配置される空間の分だけ排気ポートから離れて配置される。このため、排気ポートから二次エアバルブへの熱伝達を緩和することができ、排気熱の影響を抑制することができる。
【0010】
本発明において前記エンジンの排気管が、前記シリンダヘッドの前記クランク軸の軸心方向の他方側を通過していてもよい。この構成によれば、二次エアバルブは、シリンダヘッドを挟んで排気管と反対側の領域に配置される。これにより、二次エアバルブを排気管から離れた位置に配置することができるので、排気管から二次エアバルブへの熱伝達を防ぐことができ、排気熱の影響を抑制することができる。
【0011】
本発明において、前記二次エアバルブが、前記シリンダヘッド内に形成される通路を塞ぐプラグ部材を介して前記シリンダヘッドに取り付けられていてもよい。この構成によれば、シリンダヘッドに二次エアバルブ取付専用の構造を設けることが不要となる。
【0012】
本発明において、前記エア導入通路における前記二次エアバルブと前記排気通路とを接続する下流部分を構成する配管が、金属製材料で形成されていてもよい。この構成によれば、エア導入通路の下流部分の配管の耐熱性が向上する。上述のように、二次エアバルブと排気通路(シリンダヘッド)が同一の振動系であるので、両者を結ぶ下流部分の配管の振動、振幅が大きくなるのを防ぐことができる。このため、下流部分の配管を耐熱性に優れた金属製材料で形成した場合でも、配管支持部分に生じる応力を抑制することができる。
【0013】
本発明において、前記エア導入通路における前記二次エアバルブと前記排気通路とを接続する下流部分を構成する配管が、シリンダヘッドカバーの頂部よりも低い領域をクランク軸の軸心方向に延びていてもよい。この構成によれば、シリンダヘッドカバーの上方に配置される部品とのクリアランスを確保しやすく、エア導入通路と他部品との干渉を回避しやすい。
【0014】
本発明において、さらに、前記二次エアバルブを前記シリンダヘッドに取り付けるブラケットを備え、前記ブラケットが、前記エア導入通路における前記二次エアバルブの上側の上流部分を構成する配管を支持する支持部分を有していてもよい。この構成によれば、二次エアバルブ取付用のブラケットが、配管の支持を兼用するので、部品点数の低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の二次エア導入装置によれば、二次エアバルブとエア導入管との相対振動を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る二次エア導入装置を備えたエンジンが搭載された自動二輪車の前部を示す側面図である。
【
図4】同エンジンにおける二次エア導入装置を取り外した状態を示す側面図である。
【
図5】同エンジンを車幅方向に平行な平面で切断した縦断面図である。
【
図6】同二次エア導入装置の二次エアバルブの展開図である。
【
図7】同二次エア導入装置の支持構造を示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る二次エア導入装置を備えたエンジンが搭載された自動二輪車の前部を示す側面図である。本明細書において、「右」、「左」は、車両に乗車した運転者から見た「右」、「左」をいう。また、「前」「後」とは、車両の進行方向の「前」「後」をいう。さらに、「上流」「下流」とは、空気の流れ方向の「上流」「下流」をいう。
【0018】
本実施形態の自動二輪車の車体フレームFRは、前半部を構成するメインフレーム1と、後半部を構成するリヤフレーム2とを有している。リヤフレーム2は、メインフレーム1の後部に連結されている。
【0019】
メインフレーム1の前端のヘッドパイプ4に、図示しないステアリングシャフトを介してフロントフォーク6が回動自在に支持されている。フロントフォーク6の下端に前輪8が取り付けられている。フロンクフォーク6の上端部に、ハンドル10が取り付けられている。
【0020】
メインフレーム1の後端部に、スイングアームブラケット12が設けられている。スイングアームブラケット12に、スイングアーム14が上下揺動自在に支持されている。スイングアーム14の後端部に、後輪(図示せず)が取り付けられている。
【0021】
メインフレーム1の下方でスイングアームブラケット12の前方に、駆動源であるエンジンEが取り付けられている。エンジンEにより、チェーンのような動力伝達部材18を介して後輪が駆動される。メインフレーム1の上部に燃料タンク22が配置され、リヤフレーム2に操縦者が着座するシート24が装着されている。
【0022】
本実施形態のエンジンEは、水冷単気筒エンジンである。ただし、エンジンの形式はこれに限定されず、空冷エンジンであってもよく、多気筒エンジンであってもよい。エンジンEは、クランク軸26を回転自在に支持するクランクケース28と、クランクケース28から上方に突出するシリンダ30と、シリンダ30の上部に連結されたシリンダヘッド32と、シリンダヘッド32の上部に取り付けられたシリンダヘッドカバー34とを有している。エンジンEは、車体フレームFRに支持され、前輪8と後輪(図示せず)の間に配置されている。本実施形態では、エンジンEは、前後方向に関して、ヘッドパイプ4とシート23の間に配置されている。
【0023】
本実施形態では、クランク軸26の軸心26aは車幅方向(左右方向)に延びている。以下の説明において、車体の左側をクランク軸26の軸心方向の一方側とし、車体の右側をクランク軸26の軸心方向の他方側とする。車体の左側(クランク軸26の軸心方向の一方側)にはサイドスタンド(図示せず)が設けられる。
【0024】
シリンダヘッド32の後面に吸気ポート36が形成され、前面に排気ポート38が形成されている。吸気ポート36に燃料供給装置40が接続され、燃料供給装置40にエアクリーナ42が接続されている。エアクリーナ42は、外気を濾過して清浄空気を生成する。燃料供給装置40は、エアクリーナ42からの清浄空気に燃料を噴射して混合気を生成し、吸気ポート36に供給する。燃料供給装置40は、例えば、燃料噴射弁を備えたスロットルボディ、キャブレター等である。
【0025】
排気ポート38に排気管44が接続されている。排気管44は、シリンダヘッド32の前面から前方に延びたあと、後方に向かってU字形状に湾曲し、シリンダヘッド32の右側方を後方に延びて排気マフラ(図示せず)が接続されている。排気管44におけるシリンダヘッド32の右側方(クランク軸26の軸心方向の他方側)を通過する部分は、エンジンEのクランク軸26の軸心26よりも上方で、シリンダヘッド32の上端よりも下方の領域を通過している。
【0026】
図4に示すように、シリンダ30の内部に燃焼室30aが形成され、シリンダヘッド32の内部に吸気通路32aおよび排気通路32bが形成されている。吸気通路32aは吸気ポート36と燃焼室30aを連通し、排気通路32bは燃焼室30aと排気ポート38を連通している。つまり、吸気通路32aを介して燃焼室30aに混合気が導入され、排気通路32bを介して燃焼室30aから排気が導出される。
【0027】
吸気通路32aの出口は吸気弁46で開閉され、排気通路32bの入口は排気弁48で開閉されている。シリンダヘッド32に、これら吸排気弁46,48を制御する動弁機構(図示せず)が設けられている。動弁機構は、公知の構成であり、例えば、カムと、これが設けられたカムシャフト等から構成されている。
【0028】
動弁機構は、エンジンEのクランク軸26(
図1)の動力により駆動される。具体的には、
図5に示す動力伝達部材50により、クランク軸26(
図1)の動力が動弁機構に伝達されている。動力伝達部材50は、例えば、ベルト、チェーン等である。動力伝達部材50は、エンジンEのクランク軸26の軸心方向の一方側部分、本実施形態ではエンジンEの左側部分に設けられている。詳細には、動力伝達部材50は、エンジンEにおける燃料室30aおよび吸排気通路32a(
図4),32bよりも左側に設けられた収納空間52内に配置されている。つまり、シリンダヘッド32は、収納空間52が形成される分だけ、シリンダ軸線CYから左側面(クランク軸26の軸心方向の一側面)までの軸心方向距離L1が、シリンダ軸線CYから右側面(クランク軸26の軸心方向の他側面)までの軸心方向距離L2よりも大きくなっている。
【0029】
エンジンEに、二次エア導入装置54が設けられている。二次エア導入装置54は、エアクリーナ42からの空気を排気通路32bに送り込んで排気に含まれる未燃焼ガスを燃焼させる。
図1に示すように、二次エア導入装置54は、排気通路32bに空気を導入するエア導入通路56と、エア導入通路56を開閉制御する二次エアバルブ58とを備えている。
【0030】
二次エアバルブ58は、空気を一方向にのみ流すためのもので、本実施形態では、リードバルブが用いられている。ただし、二次エアバルブ58は、リードバルブに限定されない。二次エアバルブ58は、シリンダヘッド32におけるクランク軸26の軸心方向の一方側の外側面に取り付けられ、シリンダヘッド32の外側方に配置されている。本実施形態では、クランク軸26の軸心方向からみて二次エアバルブ58の全体がシリンダヘッド32に重なっている。また、本実施形態では、二次エアバルブ58は、シリンダヘッド32の外側面における前後方向の中央部に配置されている。
【0031】
詳細には、二次エアバルブ58は、吸気カム軸と排気カム軸との前後方向間に配置さえている。換言すれば、二次エアバルブ58は、吸気弁46と排気弁48との間の領域に配置されている。
【0032】
詳細には、
図5に示すように、二次エアバルブ58は、収納空間52を挟んで、排気ポート38(
図4)と反対側の側面に取り付けられている。つまり、エンジンEの動力伝達部材よりもクランク軸26の軸心方向の一方側(本実施形態では左側)に二次エアバルブ58が配置され、他方側(本実施形態では右側)に排気ポート38が設けられている。また、二次エアバルブ58は、シリンダヘッド32の外側面における排気管44と反対側の側面に取り付けられている。つまり、本実施形態では、二次エアバルブ58は、シリンダヘッド32の左側面に取り付けられている。二次エアバルブ58の構成の詳細、支持構造は後述する。
【0033】
図1に示すように、エア導入通路56は、二次エアバルブ58とエアクリーナ42とを接続する上流部分60と、二次エアバルブ58と排気通路32b(
図5)とを接続する下流部分62を有している。エア導入通路56の上流部分60は、シリンダヘッドカバー34の上方をメインフレーム1に沿って後方に延びてエアクリーナ44に接続されている。
【0034】
エア導入通路56の上流部分60は、例えば、ゴムチューブにより構成されている。
図2に示すように、エア導入通路56の上流部分60に、調整バルブ64が設けられている。調整バルブ64は、二次空気を供給するタイミングを調整するためのもので、例えば、電磁弁である。調整バルブ64は、例えば、電子制御ユニット(ECU)により制御される。本実施形態では、調整バルブ64は、シリンダ30の左側方で、二次エアバルブ58の前方下方に配置されている。ただし、調整バルブ64の配置はこれに限定されない。また、調整バルブ64はなくてもよい。
【0035】
エア導入通路56の下流部分62を構成する配管が、金属製材料で構成されている。本実施形態では、エア導入通路56の下流部分62は鋼管で構成されている。エア導入通路56の下流部分62は、二次エアバルブ58から上方に延びたのち、
図3に示すように、シリンダヘッドカバー34の上方をクランク軸24の軸心方向(車幅方向)に延びる。エア導入通路56の下流部分62は、さらに、シリンダヘッドカバー34の上方で後方斜め下方に延びて、シリンダヘッド32の排気通路32bに接続されている。
【0036】
図2に示すように、エア導入通路56の下流部分62は、上方に向かって斜め前方に傾斜して延びている。エア導入通路56の下流部分62は、さらに、シリンダヘッドカバー34の頂部34aよりも低い領域をクランク軸24の軸心方向(車幅方向)に延びている。換言すれば、エア導入通路56の下流部分62が上方斜め前方に延びることで、シリンダヘッドカバー34の頂部34aを通過するのを避けている。上述のように、二次エアバルブ58が斜めに配置されているので、上方斜め前方に延びる配管を最短距離でレイアウトできる。
【0037】
図3に示すように、本実施形態のエア導入通路56の下流部分62は、鋼管からなる管本体62aと、その両端に設けられたフランジ62b,62cとを有している。管本体62aとフランジ62b,62cは、例えば、溶接により接合されている。
【0038】
エア導入通路56の下流部分62の上流端がフランジ62bを介して二次エアバルブ58にボルト連結され、エア導入通路56の下流部分62の下流端がフランジ62cを介してシリンダヘッド32にボルト連結されている。さらに、エア導入通路56の下流部分62の管本体62aの中間部が、シリンダヘッドカバー34に支持されている。詳細には、管本体62aの中間部に支持ステー66が溶接により固着されており、支持ステー66を介してシリンダヘッドカバー34にボルト65により取り付けられている。
【0039】
このように、エア導入通路56の下流部分62が、両端および中間部で支持されることで、エア導入通路56の下流部分62の支持が安定する。ただし、エア導入通路56の下流部分62の支持構造は、これに限定されない。
【0040】
図6に示すように、二次エアバルブ58は、第1ケース68と第2ケース70の間に弁部材69が挟持された状態で、両ケース68,70がボルト72により連結されている。第1ケース68の上部に空気入口部68aが形成され、第2ケース70の上部に空気出口部70aが形成されている。空気入口部68aは、二次エアバルブ58に空気を導入する空気導入口68aaが形成される部分である。空気出口部70aは、二次エアバルブ58から空気を導出する空気導出口70aaが形成される部分である。本実施形態では、空気入口部68aはプラグピンにより形成され、空気出口部70aはフランジにより形成されている。
【0041】
弁部材69は、リードバルブであり、一方向のみに開く板材からなる弁体69aを有している。第1ケース68と第2ケース70の内部に弁室71が形成され、弁体69aにより上流側弁室71aと下流側弁室71bに区画されている。つまり、弁体69aよりも空気流れ方向上流側の空間が上流側弁室71aで、弁体69aよりも下流側の空間が下流側弁室71bを構成する。本実施形態では、第1ケース68により上流側弁室71aが形成され、第2ケース70により下流側弁室71bが形成されている。
【0042】
第1ケース68に、車幅方向に開口したボルト挿通孔74が形成されている。本実施形態では、ボルト挿通孔74が3つ設けられているが、ボルト挿通孔74の数はこれに限定されない。
【0043】
図2に示すように、二次エアバルブ58の空気入口部68aが、シリンダヘッド32の外側面とクランク軸26の軸心方向に対向して配置されている。換言すれば、二次エアバルブ58の空気入口部68aが、側面視で、シリンダヘッド32と重なっている。
図3に示すように、空気導入口68aaと空気導出口70aaは同じ向きに配置されている。本実施形態では、空気導入口68aaと空気導出口70aaはほぼ上方を向いている。より詳細には、空気導入口68aaと空気導出口70aaは、上方斜め前方(排気ポート38側)に開口している。このように斜めに配置することで、二次エアバルブ58をシリンダヘッド32の外側面における前後方向中央位置に安定して支持しつつ、金属配管からなる下流部分62の屈曲量を小さくできる。
【0044】
空気導入口68aaと空気導出口70aaは、クランク軸26の軸心方向に並んで配置されている。本実施形態では、空気導出口70aaが、空気導入口68aaよりもシリンダヘッド32寄りに配置されている。これにより、金属配管からなる下流部分62を短くするとともに、ゴムホースからなる上側配管60をシリンダヘッド32から離して配置できる。また、
図6に示すように、二次エアバルブ58の弁体69aの厚み方向がクランク軸26の軸心方向AXとなるように配置されている。
【0045】
つぎに、二次エアバルブ58の支持構造を説明する。
図2に示すように、二次エアバルブ58は、ブラケット76を介してシリンダヘッド32の外側面に取り付けられている。詳細には、ブラケット76がボルト75によりシリンダヘッド32に着脱自在に取り付けられ、二次エアバルブ58がボルト78によりブラケット76に着脱自在に取り付けられている。
【0046】
図7に示すように、本実施形態のブラケット76は、金属製の板材を折り曲げ加工することで形成されている。ブラケット76の製造方法はこれに限定されない。本実施形態のブラケット76は、前後方向に長い形状で、前後方向の両端部に車幅方向を向くボルト挿通孔80が形成されている。
【0047】
さらに、ブラケット76における二次エアバルブ58のボルト挿通孔74に対応する位置に、車幅方向を向くねじ孔82が形成されている。本実施形態では、ねじ孔82は、ブラケット76に接合された円筒形のボス84により構成されている。ねじ孔82の構成はこれに限定されない。
【0048】
また、ブラケット76の前端部に、支持部分86が形成されている。支持部分86は、エア導入通路56の上流部分60(
図2)を支持する。本実施形態の支持部分86は、ブラケット76から前方に突出する突出片86aと、この突出片86aに形成された貫通孔86bからなる。支持部分86の構成はこれに限定されない。また、支持部分86はなくてもよい。
【0049】
シリンダヘッド32の外側面に、ねじ孔88が形成されている。ねじ孔88は、前後方向に並んで2つ形成されている。本実施形態では、ねじ孔88として、シリンダヘッド34のオイル通路加工用のプラグ孔が用いられ、このプラグ孔に雌ねじを形成している。オイル通路は、吸排気弁46,48と収納空間52を連通するもので、バルブ潤滑後のオイルを回収して収納空間52(
図5)に落とす。このように、エンジンEの製造過程で形成されるプラグ孔を利用することで、部品点数および作業工数を低減できる。ただし、ねじ孔88はプラグ孔に限定されない。
【0050】
ねじ孔88に、プラグ部材90が取り付けられている。プラグ部材90は、シリンダヘッド32内に形成される通路(本実施形態では、オイル通路)を塞ぐ。プラグ部材90は、Oリング92を介してねじ孔88に着脱自在に取り付けられている。プラグ部材90は、ねじ孔88に締め付けられる雄ねじ部90aと、内部に雌ねじ90bが形成された筒形のボス部90cとを有している。つまり、プラグ部材90は、ねじ孔88(プラグ孔)に取り付けられてオイル通路を塞いだ状態で、二次エアバルブ58の取付部を構成している。
【0051】
このプラグ部材90の雌ねじ90bに、ボルト94によりブラケット76が着脱自在に取り付けられている。詳細には、ブラケット76のボルト挿通孔80に車幅方向内側から鍔付きのカラー96が挿入され、ボルト挿通孔80に装着された弾性部材からなる筒状のダンパ98にカラー96が挿入されている。この状態で、車幅方向外側からボルト94が、カラー96の中空孔に挿通され、プラグ部材90の雌ねじ90bに締め付けられている。なお、本実施形態では、ボルト94の頭部94aとダンパ98との間に、ワッシャ100が介装されている。
【0052】
さらに、二次エアバルブ58がボルト102によりブラケット76に着脱自在に取り付けられる。詳細には、車幅方向外側からボルト102が、二次エアバルブ58のボルト挿通孔74に挿通され、ブラケット76のねじ孔82に締め付けられている。以上により、二次エアバルブ58が、ブラケット76およびプラグ部材90を介してシリンダヘッド32に取り付けられている。
【0053】
エア導入通路56の下流部分62の上流端が、ボルト104を用いてフランジ62bを介して二次エアバルブ58の空気出口部70a(フランジ)に連結されている。フランジ62bと二次エアバルブ58の空気出口部70aとの間に、ガスケット105が介在されている。上述のように、二次エアバルブ58は、弾性部材からなるダンパ98を介してシリンダヘッド32に取り付けられている。したがって、本実施形態のようにエア導入通路56の下流部分62を金属製の配管で構成した場合でも、配管の傾きを吸収できる。
【0054】
二次エアバルブ58の空気入口部68aに、
図1に示すエア導入通路56の上流部分60の下流端が連結されている。詳細には、上流部分60を構成するゴムチューブが二次エアバルブ58の空気入口部68a(プラグピン)に装着され、クランプ部材106(
図2)により外周から締め付けられて抜け止めされている。
【0055】
エア導入通路56の上流部分60は、調整バルブ64を経由してシリンダヘッド32およびシリンダヘッドカバー34の外側方を上方に延びたのち、後方に延びてエアクリーナ42に接続される。上流部分60におけるシリンダヘッド32の外側方を上方に延びる部分が、ブラケット76の支持部分86に支持されている。詳細には、ブラケット76の支持部分86の貫通孔86bに把持部材108が取り付けられ、上流部分60を構成するゴムチューブが把持部材108により支持されている。
【0056】
つぎに、本実施形態の二次エア導入装置の作用について説明する。
図1に示すエンジンEが始動すると、エアクリーナ42から燃料供給装置40を介してエンジンEに燃料と空気の混合気Mが供給される。混合気Mは、
図4の燃焼室内30aで燃料され、その排気Gが排気通路32bを通って排気ポート38からエンジン外部に排出される。燃焼室内30aから排気通路32bに排出された排気Gには未燃焼ガスが含まれている。
【0057】
このとき、エンジンの内部は負圧となっており、二次エアバルブ58の弁体69a(
図6)は開状態になっている。このため、電子制御ユニット(ECU)からの指令により調整バルブ64が開くと、エア導入通路56を介してエアクリーナ42からの空気A(二次エア)が
図4のシリンダヘッド32内部の排気通路32bに導入される。この二次エアAにより排気G中の未燃焼ガスが燃料され、排気中のHC(ハイドロカーボン)やCO(一酸化炭素)が低減される。
【0058】
上記構成によれば、
図1の二次エアバルブ58がシリンダヘッド32に取り付けられているので、二次エアバルブ58とシリンダヘッド32との相対振動を抑えることができる。したがって、二次エアバルブ58の支持構造や、二次エアバルブ58と排気通路32b(
図4)とを繋ぐ配管(エア導入通路56の上流部分60)の材料選択の自由度が向上する。また、また、二次エアバルブ58の空気入口部68aがシリンダヘッド32の外側面に対向して配置されることで、吸排気ポート36,38に接続される配管(吸気管(燃料供給装置40)、排気管44)と二次エアバルブ58に接続される配管(上流部分60,下流部分62)との干渉を防ぐことができ、二次エアバルブ58をシリンダヘッド32に配置しやすい。
【0059】
二次エアバルブ58をシリンダヘッド32の外側面に設けることで、シリンダヘッドカバー34の上部に設けるのに比べて、エンジンEとその上方に配置される部材とのクリアランスを確保しやすい。本実施形態のエンジンEは単気筒エンジンであり、例えば、シリンダヘッド32の右側面(二次エアバルブ58が取り付けられる左側面と反対側の側面)に点火プラグ(図示せず)が設けられる。これにより、点火プラグ周辺に導入される走行風を二次エアバルブ58が阻害することがない。
【0060】
図6に示す二次エアバルブ58の弁体69aの厚み方向がクランク軸26の軸心方向AXと一致しているので、
図3に示す二次エアバルブ58におけるシリンダヘッド32に対するクランク軸26の軸心方向の突出量を抑えることができ、二次エアバルブ58をシリンダヘッド32の外側面に配置しやすい。
【0061】
図5に示すように、二次エアバルブ58は、動力伝達部材50を挟んで、排気ポート38と反対側の側面に取り付けられている。つまり、動力伝達部材50よりも左側に二次エアバルブ58が配置され、右側に排気ポート38が配置されている。このように、二次エアバルブ58は、動力伝達部材50の収納空間52の分だけ、排気ポート38から離れて配置されている。これにより、二次エアバルブ58に対する排気ポートから38の排気の熱による影響を抑制することができる。
【0062】
二次エアバルブ58は、シリンダヘッド32の外側面における排気管44と反対側の側面に取り付けられている。つまり、シリンダヘッド32の左側方の領域に二次エアバルブ58が配置され、シリンダヘッド32の右側方の領域に排気管44が配置されている。これにより、二次エアバルブ58に対する排気管44からの熱による影響を抑制することができる。
【0063】
図7に示すように、二次エアバルブ58が、プラグ部材90を介してシリンダヘッド32に取り付けられている。これにより、シリンダヘッド32に二次エアバルブ取付専用の構造を設ける必要がなくなるので、シリンダヘッド32の加工工数を削減できる。
【0064】
図2に示すエア導入通路56における二次エアバルブ58と排気通路32b(
図4)とを接続する下流部分62が、金属製の配管で形成されている。エンジンEからの放熱により、エア導入通路56の下流部分62は高温となりやすく、耐熱性の向上が求められている。上記構成のように下流部分62を金属製の配管で形成することで、エア導入通路56の下流部分62の耐熱性が向上する。本発明では、二次エアバルブ58と排気通路32b(シリンダヘッド)が同一の振動系であるので、両者を結ぶ下流部分62の配管の振動、振幅が大きくなるのを防ぐことができる。このため、下流部分62を耐熱性に優れた金属製材料で形成した場合でも、配管支持部分に生じる応力を抑制することができる。
【0065】
エア導入通路56の下流部分62が、シリンダヘッドカバー34の頂部34aよりも低い領域を車幅方向に延びている。これにより、シリンダヘッドカバー34の上方に配置される部品とのクリアランスを確保しやすく、エア導入通路56と他部品との干渉を回避しやすい。
【0066】
二次エアバルブ58がブラケット76を介してシリンダヘッド32に取り付けられ、ブラケット76に、エア導入通路56の上流部分60を支持する支持部分86が設けられている。このように、二次エアバルブ取付用のブラケット76が、配管の支持を兼用するので、部品点数の低減を図ることができる。
【0067】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、上記実施形態では、本発明の二次エア導入装置を自動二輪車に適用した例を説明したが、本発明の二次エア導入装置は、自動二輪車以外の車両のエンジンにも適用できる。また、本発明の二次エア導入装置は、車両以外の乗物のエンジンにも適用可能で、さらに、地上据え置きエンジンにも適用できる。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
26 クランク軸
32 シリンダヘッド
32b 排気通路
34 シリンダヘッドカバー
38 排気ポート
44 排気管
50 動力伝達部材
54 二次エア導入装置
56 エア導入通路
58 二次エアバルブ
60 上流部分
62 下流部分
68a 空気入口部
69a 弁体
76 ブラケット
86 支持部分
90 プラグ部材
E エンジン