(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】浴室用液体洗浄剤
(51)【国際特許分類】
C11D 1/72 20060101AFI20240412BHJP
C11D 1/83 20060101ALI20240412BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20240412BHJP
C11D 3/43 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C11D1/72
C11D1/83
C11D3/20
C11D3/43
(21)【出願番号】P 2020189747
(22)【出願日】2020-11-13
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 洋介
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-087092(JP,A)
【文献】米国特許第06017872(US,A)
【文献】特開2006-307148(JP,A)
【文献】特開昭61-258900(JP,A)
【文献】特開2015-199936(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0021113(US,A1)
【文献】特開2018-104637(JP,A)
【文献】特開2020-105322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:非石鹸系アニオン界面活性剤と、
(B)成分:下記式(b)で表される、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物と、
(C)成分:グリコールエーテル型溶剤と、
を含有する浴室用液体洗浄剤であり、
前記(A)成分の含有量が、前記浴室用液体洗浄剤の総質量に対して0.5質量%以上であり、
前記(B)成分/前記(C)成分で表される質量比が0.25~1.5であることを特徴とする、浴室用液体洗浄剤。
【化1】
ただし、EOはオキシエチレン基であり、m及びnはそれぞれ独立に、EOの平均繰り返し数を示す0~8の数であり、mとnとの総和は1~8である。
【請求項2】
前記(C)成分が、
(C1)成分:下記式(c1)で表されるグリコールエーテル型溶剤と、
(C2)成分:下記式(c2)で表されるグリコールエーテル型溶剤と、
を含有し、
前記(C1)成分/前記(C2)成分で表される質量比が0.1~10である請求項1に記載の浴室用液体洗浄剤。
R
1O-(A
1O)
r-R
2 ・・・(c1)
Ph-X-(A
2O)
s-R
3 ・・・(c2)
ただし、R
1は炭素数1~8の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、R
2は水素原子、炭素数1~4の直鎖状のアルキル基、又はアセチル基であり、A
1Oは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、rはA
1Oの平均繰り返し数を表す0.1~20の数であり、
Phはフェニル基であり、Xは酸素原子又はCH
2O基であり、A
2Oは炭素数2又は3のオキシアルキレン基であり、sはA
2Oの平均繰り返し数を表す1~6の数であり、R
3は水素原子又は炭素数1~3のアルキル基である。
【請求項3】
前記(A)成分/前記(C)成分で表される質量比が0.1~1.5である請求項1又は2に記載の浴室用液体洗浄剤。
【請求項4】
前記(B)成分と前記(C)成分との合計の含有量が、前記浴室用液体洗浄剤の総質量に対して1~8質量%である請求項1~3のいずれか一項に記載の浴室用液体洗浄剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室用液体洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浴室内の汚れを除去するための浴室用液体洗浄剤として様々なものが提案されている。
特許文献1には、非石鹸系アニオン界面活性剤を含む界面活性剤、グリコール系溶剤、アミノカルボン酸型キレート剤を含有し、pHが10を超え12未満である浴室用液体洗浄剤が開示されている。
特許文献2には、非石鹸系アニオン界面活性剤及びアミン型界面活性剤を含有する界面活性剤と、キレート剤と、グリコール系溶剤とを含有する浴室用液体洗浄剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-124965号公報
【文献】特開2020-105322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の浴室用液体洗浄剤は、皮脂洗浄力が充分ではない。
特許文献2では、グリコール系溶剤とアミン型界面活性剤を含むことで、ガラス表面に付着した皮脂に対する洗浄力が高められている。しかし、皮脂汚れは、ガラス表面のような親水面よりもPP(ポリプロピレン)樹脂のような疎水面に強固に付着する。特許文献2の浴室用液体洗浄剤は、疎水面に付着した皮脂汚れに対する洗浄力が充分ではない。
アニオン界面活性剤等を単純に増量して(例えば浴室用液体洗浄剤の総質量に対して5質量%超にして)洗浄力を高めようとすると、すすぎ性が低下する問題が生じてくる。
【0005】
本発明の一態様は、疎水面に付着した皮脂汚れに対する洗浄力及びすすぎ性に優れる浴室用液体洗浄剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
[1](A)成分:非石鹸系アニオン界面活性剤と、
(B)成分:下記式(b)で表される、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物と、
(C)成分:グリコールエーテル型溶剤と、
を含有する浴室用液体洗浄剤であり、
前記(A)成分の含有量が、前記浴室用液体洗浄剤の総質量に対して0.5質量%以上であり、
前記(B)成分/前記(C)成分で表される質量比が0.25~1.5であることを特徴とする、浴室用液体洗浄剤。
【0007】
【0008】
ただし、EOはオキシエチレン基であり、m及びnはそれぞれ独立に、EOの平均繰り返し数を示す0~8の数であり、mとnとの総和は1~8である。
[2]前記(C)成分が、
(C1)成分:下記式(c1)で表されるグリコールエーテル型溶剤と、
(C2)成分:下記式(c2)で表されるグリコールエーテル型溶剤と、
を含有し、
前記(C1)成分/前記(C2)成分で表される質量比が0.1~10である前記[1]の浴室用液体洗浄剤。
R1O-(A1O)r-R2 ・・・(c1)
Ph-X-(A2O)s-R3 ・・・(c2)
ただし、R1は炭素数1~8の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、R2は水素原子、炭素数1~4の直鎖状のアルキル基、又はアセチル基であり、A1Oは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、rはA1Oの平均繰り返し数を表す0.1~20の数であり、
Phはフェニル基であり、Xは酸素原子又はCH2O基であり、A2Oは炭素数2又は3のオキシアルキレン基であり、sはA2Oの平均繰り返し数を表す1~6の数であり、R3は水素原子又は炭素数1~3のアルキル基である。
[3]前記(A)成分/前記(C)成分で表される質量比が0.1~1.5である前記[1]又は[2]の浴室用液体洗浄剤。
[4]前記(B)成分と前記(C)成分との合計の含有量が、前記浴室用液体洗浄剤の総質量に対して1~8質量%である前記[1]~[3]のいずれかの浴室用液体洗浄剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、疎水面に付着した皮脂汚れに対する洗浄力及びすすぎ性に優れる浴室用液体洗浄剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一態様に係る浴室用液体洗浄剤は、下記(A)成分と下記(B)成分と下記(C)成分とを含有する。
浴室用液体洗浄剤は、必要に応じて、下記(D)成分をさらに含有していてもよい。
浴室用液体洗浄剤は、必要に応じて、(A)~(D)成分以外の他の成分(以下「任意成分」ともいう)をさらに含有していてもよい。
【0011】
<(A)成分>
(A)成分は、非石鹸系アニオン界面活性剤である。
(A)成分は、浴室内に付着した皮脂汚れやタンパク汚れ等に対して、効果的な洗浄力を発揮せしめるために使用される。
【0012】
(A)成分としては、スルホン酸塩型アニオン界面活性剤、硫酸エステル型アニオン界面活性剤、エーテルカルボン酸塩型アニオン界面活性剤、リン酸アルキル塩型アニオン界面活性剤、リン酸アルキルポリオキシエチレン塩型アニオン界面活性剤、アルケニルコハク酸塩型アニオン界面活性剤、N-アシルアミノ酸塩型アニオン界面活性剤、N-アシルメチルタウリン塩型アニオン界面活性剤等が挙げられる。
【0013】
スルホン酸塩型アニオン界面活性剤としては、オレフィンスルホン酸型、アルキルベンゼンスルホン酸型、スルホコハク酸ジアルキルエステル型、スルホコハク酸アルキル型、アルカンスルホン酸型、アルキルフェノキシフェニルジスルホン酸型、α-スルホ脂肪酸型等が挙げられる。
オレフィンスルホン酸型アニオン界面活性剤としては、炭素-炭素の二重結合位置が1位(α位)にあるα-オレフィンスルホン酸又はその塩(AOS)、炭素-炭素二重結合が2位以上(内部)にある内部オレフィンスルホン酸又はその塩(IOS)等が挙げられる。
【0014】
α-オレフィンスルホン酸の炭素数は、8~24が好ましく、10~20がより好ましい。
α-オレフィンスルホン酸の塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン塩などが挙げられる。
α-オレフィンスルホン酸塩としては、炭素数10~20のα-オレフィンスルホン酸塩が好ましい。
α-オレフィンスルホン酸塩は、炭素-炭素の二重結合位置が1位(α位)にあるオレフィンをスルホン化後、水酸化ナトリウム等のアルカリで中和、加水分解して得られる。
α-オレフィンスルホン酸塩としては市販品を用いることができ、例えばライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製の「リポランLB440」等が挙げられる。
【0015】
内部オレフィンスルホン酸の炭素数は、8~24が好ましく、10~20がより好ましい。
内部オレフィンスルホン酸の塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。
内部オレフィンスルホン酸塩としては、炭素数8~24の内部オレフィンスルホン酸塩が好ましく、例えば特開2003-81935号公報に記載された内部オレフィンスルホン酸塩が挙げられる。
内部オレフィンスルホン酸塩は、炭素-炭素の二重結合位置が2位以上(内部)にあるオレフィンをスルホン化後、水酸化ナトリウム等のアルカリで中和、加水分解して得られる。
【0016】
硫酸エステル型アニオン界面活性剤としては、アルキルエーテル硫酸エステル又はその塩等のアルキルエーテル硫酸エステル型、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル又はその塩等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル型等が挙げられる。
【0017】
(A)成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
(A)成分としては、上記の中でも、湯垢洗浄力、皮脂洗浄力の観点から、スルホン酸塩型アニオン界面活性剤が好ましく、オレフィンスルホン酸型又はアルキルベンゼンスルホン酸型アニオン界面活性剤がより好ましく、オレフィンスルホン酸型アニオン界面活性剤がさらに好ましい。
オレフィンスルホン酸型としては、皮脂洗浄力の観点から、α-オレフィンスルホン酸塩が好ましい。アルキルベンゼンスルホン酸型アニオン界面活性剤としては、皮脂洗浄力の観点から、アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましい。これらの塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。なかでもナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
【0018】
<(B)成分>
(B)成分は、下記式(b)で表される、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物である。(B)成分は、(C)成分と併用することで皮脂洗浄力を向上する機能を有し、さらに、(A)成分によるすすぎ性低下を抑制する効果を有する。
【0019】
【化2】
ただし、EOはオキシエチレン基であり、m及びnはそれぞれ独立に、EOの平均繰り返し数を示す0~8の数であり、mとnとの総和は1~8である。
【0020】
mとnとの総和は、m+nで表される。m+nが1~8であれば、良好な皮脂洗浄力が得られやすく、また(A)成分によるすすぎ性低下を抑制しやすい。m+nは、2~8が好ましく、3.5~6がより好ましく、3.5~4が特に好ましい。
【0021】
(B)成分のHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)値は、洗浄力及びすすぎ性の観点から、8~12が好ましく、8~11がより好ましく、8~9が特に好ましい。
(B)成分のHLB値は、グリフィン法により算出される値、具体的には下記式(1)によって算出される値である。(B)成分以外のノニオン界面活性剤のHLB値も同様にして算出される。
HLB値=20×親水基の割合(質量%) ・・・(1)
式中、親水基の割合は、(B)成分の分子量100質量%に対するオキシエチレン基(EO)の合計質量の割合である。オキシエチレン基(EO)の合計質量は、オキシエチレン基の分子量×(m+n)により算出される。
グリフィン法によるHLB値は、グリフィンが提唱した化合物の親水性を評価する値であり、0~20の範囲内の値を示す。数値が大きい程、化合物が親水性であることを示す。
【0022】
(B)成分としては市販品を用いることができ、例えば、川研ファインケミカル株式会社製のアセチレノールE13T(m+n=1.3、HLB値:4)、アセチレノールE40(m+n=4、HLB値:9)、アセチレノールE60(m+n=6、HLB値:11)、日信化学工業株式会社製のサーフィノール420(m+n=1.3、HLB値:4)、サーフィノール440(m+n=3.5、HLB値:8)等が挙げられる。
(B)成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0023】
<(C)成分>
(C)成分は、グリコールエーテル型溶剤である。
(C)成分は、皮脂洗浄力の観点から、下記(C1)成分及び下記(C2)成分からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましく、(C1)成分と(C2)成分とを含有することがより好ましい。
【0024】
(C1)成分は、下記式(c1)で表されるグリコールエーテル型溶剤である。
R1O-(A1O)r-R2 ・・・(c1)
ただし、R1は炭素数1~8の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、R2は水素原子、炭素数1~4の直鎖状のアルキル基、又はアセチル基であり、A1Oは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、rはA1Oの平均繰り返し数を表す0.1~20の数である。
【0025】
(C1)成分の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコール系エーテル化合物;プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のプロピレングリコール系エーテル化合物が挙げられる。中でもエチレングリコール系エーテル化合物が好ましく、ジエチレングリコールモノブチルエーテルがより好ましい。これらの溶剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0026】
(C2)成分は、下記式(c2)で表されるグリコールエーテル型溶剤である。
Ph-X-(A2O)s-R3 ・・・(c2)
ただし、Phはフェニル基であり、Xは酸素原子又はCH2O基であり、A2Oは炭素数2又は3のオキシアルキレン基であり、sはA2Oの平均繰り返し数を表す1~6の数であり、R3は水素原子又は炭素数1~3のアルキル基である。
【0027】
(C2)成分の具体例としては、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル等が挙げられる。中でも皮脂洗浄力の観点から、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルが好ましい。これらの溶剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0028】
<(D)成分>
(D)成分は、アミノカルボン酸型キレート剤である。
(D)成分は、浴槽等に付着した脂肪酸金属塩、皮脂・タンパク汚れに対して優れた洗浄力を発揮する。
(D)成分としては、通常使用されるものであれば特に限定されない。具体的には、ニトリロトリ酢酸、イミノジ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミノペンタ酢酸、N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン酢酸、エチレンジアミンテトラプロピオン酢酸、トリエチレンテトラヘキサ酢酸、エチレングリコールジエーテルジアミンテトラ酢酸、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、シクロヘキサン-1,2-ジアミンテトラ酢酸等が挙げられる。なかでも洗浄力の観点から、エチレンジアミンテトラ酢酸が好ましい。これらの化合物は、酸の形でも使用可能であるし、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属との塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンとの塩等、塩基性物質との塩の形でも使用可能である。
(D)成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0029】
<任意成分>
任意成分としては、通常、洗浄剤に使用され得る成分を適宜含有することができる。このような任意成分としては、例えば、石鹸系アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、殺菌剤、防腐剤、抗カビ剤、色素、酸化防止剤、増粘剤、紫外線吸収剤、金属封鎖剤、可溶化剤、乳化剤、香料、pH調整剤、水等が挙げられる。
pH調整剤としては、特に限定されないが、塩酸、硫酸等の無機酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア及びその誘導体等のアルカリ剤が挙げられる。これらの中でも、塩酸及び硫酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸剤、又は水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ剤が好ましい。pH調整剤は、いずれか1種が単独で用いられても、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0030】
<各成分の含有量>
(A)成分の含有量は、浴室用液体洗浄剤の総質量に対して、0.5質量%以上であり、0.5~5.0質量%が好ましく、0.5~1.5質量%がより好ましい。(A)成分の含有量が前記下限値以上であれば、良好な皮脂洗浄力が得られ、前記上限値以下であれば、良好なすすぎ性が得られる。
【0031】
(B)成分と(C)成分との合計の含有量(以下「B+C」ともいう)は、浴室用液体洗浄剤の総質量に対して、1~8質量%が好ましく、2~5質量%がより好ましい。B+Cが前記範囲内であれば、より良好な皮脂洗浄力とすすぎ性が得られる。
【0032】
(B)成分の含有量は、浴室用液体洗浄剤の総質量に対して、0.1~3.0質量%が好ましく、0.5~3.0質量%がより好ましく、1.1~2.0質量%が特に好ましい。(B)成分の含有量が前記範囲内であれば、(C)成分との併用時に、より良好な皮脂洗浄力(とすすぎ性)が得られる。
【0033】
(C)成分の含有量は、浴室用液体洗浄剤の総質量に対して、0.1~5.0質量%が好ましく、1.0~2.5質量%がより好ましい。(C)成分の含有量が前記下限値以上であれば、より良好な皮脂洗浄力が得られ、前記上限値以下であれば、より良好なすすぎ性が得られる。
【0034】
(D)成分の含有量は、浴室用液体洗浄剤の総質量に対して、0.1~5.0質量%が好ましく、1.5~3.0質量%がより好ましい。(D)成分の含有量が上記範囲内であれば、より良好な湯垢洗浄力が得られる。
【0035】
浴室用液体洗浄剤は典型的には水を含む。
水の含有量は、例えば浴室用液体洗浄剤の総質量に対して、75~98質量%である。
【0036】
<(B)成分/(C)成分の質量比>
(B)成分/(C)成分で表される質量比(以下「B/C」ともいう)は、0.25~1.5であり、0.5~0.7が好ましい。B/Cが前記下限値以上であれば、良好な皮脂洗浄力が得られ、前記上限値以下であれば、良好な皮脂洗浄力とすすぎ性が得られる。
【0037】
<(C1)成分/(C2)成分の質量比>
(C1)成分/(C2)成分で表される質量比(以下「C1/C2」ともいう)は、0.1~10が好ましく、0.5~5がより好ましく、1.0~3.5が特に好ましい。C1/C2が前記範囲内であれば、より良好な皮脂洗浄力が得られる。
【0038】
<(A)成分/(C)成分の質量比>
(A)成分/(C)成分で表される質量比(以下「A/C」ともいう)は、0.1~1.5が好ましく、0.3~0.75がより好ましい。A/Cが前記範囲内であれば、より良好な皮脂洗浄力とすすぎ性が得られる。
【0039】
<(A)成分/(B)成分の質量比>
(A)成分/(B)成分で表される質量比(以下「A/B」ともいう)は、0.25~3.0が好ましく、0.5~1.5がより好ましい。A/Bが前記範囲内であれば、より良好な皮脂洗浄力とすすぎ性が得られる。
【0040】
<浴室用液体洗浄剤のpH>
浴室用液体洗浄剤の25℃におけるpHは、6以上が好ましく、9以上がより好ましく、9.5~12がさらに好ましく、10~11が特に好ましい。pHが前記範囲内であれば、より良好な湯垢洗浄力が得られる。
【0041】
<浴室用液体洗浄剤の製造方法>
浴室用液体洗浄剤は、従来公知の液体洗浄剤の製造方法に準じて製造できる。例えば、水の一部に、pH調整剤を除く各成分を加えて混合し、必要に応じてpH調整剤を添加してpHを調整した後、水の残部を加えて全体量を100質量%とすることにより浴室用液体洗浄剤を製造できる。また、得られた浴室用液体洗浄剤を容器(例えば後述する吐出容器)に収容して容器入り浴室用液体洗浄剤製品とすることができる。
【0042】
<浴室用液体洗浄剤の使用方法>
浴室用液体洗浄剤の使用方法としては、例えば、浴室用液体洗浄剤をスポンジ等の洗浄用具に含浸し、浴室の壁面、浴槽面、その他の浴室付帯設備等の洗浄対象をスポンジ等で擦り洗いをする方法;浴室用液体洗浄剤を吐出容器に収容し、この吐出容器から、適量の浴室用液体洗浄剤を上記洗浄対象に塗布し、一定時間経過後に、シャワー等ですすぐ、「擦らず洗い」をする方法等が挙げられる。
浴室用液体洗浄剤を収容する吐出容器としては、スプレー容器やスクイズ容器等が挙げられる。中でも、洗浄対象に対する塗布性に優れることから、浴室用液体洗浄剤を収容する吐出容器としては、スプレー容器が好ましい。
【0043】
スプレー容器としては、エアゾールスプレー容器、トリガースプレー容器(直圧型又は蓄圧型)、ディスペンサースプレー容器等が挙げられる。これらの容器は、手動式のものでもよいし、電動式のものでもよい。エアゾールスプレー容器としては、例えば、特開平9-3441号公報、特開平9-58765号公報等に記載されているものが挙げられる。エアゾールスプレー容器に充填する場合、噴射剤としてLPG(液化プロパンガス)、DME(ジメチルエーテル)、炭酸ガス、窒素ガス、亜酸化窒素ガス等を使用できる。これら噴射剤は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。トリガースプレー容器の例としては、例えば、特開平9-268473号公報、特開平10-76196号公報等に記載のものが挙げられる。蓄圧式のトリガースプレー容器としては、例えば、特開2013-154276号公報等に記載のものが挙げられる。ディスペンサースプレー容器の例としては、例えば、特開平9-256272号公報等に記載のものが挙げられる。これらの中でも、噴霧性状やスプレーパターンが良好であり、良好な塗布性が得られることから、トリガースプレー容器が好ましい。
【0044】
以上説明した浴室用液体洗浄剤にあっては、(A)成分と(B)成分と(C)成分とを含み、(A)成分の含有量が0.5質量%以上、B/Cが0.25~1.5であることで、PP樹脂のような疎水面に付着した皮脂汚れに対する洗浄力とすすぎ性とを両立できる。
特に、(C)成分として、アルキル系の(C1)成分とフェニル系の(C2)成分とを併用すると、洗浄力が向上する。
【実施例】
【0045】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本実施例において使用した原料は下記の通りである。
【0046】
(使用原料)
<(A)成分>
A-1:AOS、α-オレフィン(C14)スルホン酸ナトリウム、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、商品名「リポランLJ441」。なお、前記「C14」の「C」は炭素数を意味し、以下同様である。
A-2:LAS、直鎖アルキル(C12-14)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、商品名「ライポンPS-230」。
【0047】
<(B)成分>
B-1:アセチレングリコールEO付加物(m+n=4、HLB値:9)、川研ファインケミカル株式会社製、商品名「アセチレノールE40」。
B-2:アセチレングリコールEO付加物(m+n=6、HLB値:11)、川研ファインケミカル株式会社製、商品名「アセチレノールE60」。
B-3:アセチレングリコールEO付加物(m+n=3.5、HLB値:8)、日信化学工業株式会社製、商品名「サーフィノール440」。
【0048】
<(B)成分の比較品>
B’-1(比較品):ポリオキシエチレンアルキルエーテル(EO平均付加モル数:7、HLB値:13)、BASFジャパン株式会社製、商品名「ルテンゾールTO7」。
B’-2(比較品):アセチレングリコールEO付加物(m+n=10、HLB値:13)、川研ファインケミカル株式会社製、商品名「アセチレノールE100」。
【0049】
<(C)成分>
C1-1:ジエチレングリコールモノブチルエーテル、日本乳化剤株式会社製、商品名「ブチルジグリコール」。
C1-2:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ダウ・ケミカル日本株式会社製、商品名「DOWANOL DPM Glycol Ether」。
C2-1:エチレングリコールモノフェニルエーテル、日本乳化剤株式会社製、商品名「フェニルグリコール」。
C2-2:ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、日本乳化剤株式会社製、商品名「フェニルジグリコール」。
C2-3:エチレングリコールモノベンジルエーテル、日本乳化剤株式会社製、商品名「ベンジルグリコール」。
【0050】
<(D)成分>
D-1:エチレンジアミンテトラ酢酸、ヌーリオン・ジャパン株式会社製、商品名「ディゾルビン」。
【0051】
<その他の任意成分>
ヤシ油脂肪酸カリウム:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、商品名「ヤシ油脂肪酸カリウム」。
pH調整剤:1N水酸化ナトリウム水溶液、関東化学株式会社製。
水:イオン交換水。
【0052】
(実施例1~25、比較例1~6)
表1~4に示す組成に従い、水の一部に、(A)~(D)成分及びヤシ油脂肪酸カリウムを添加して混合し、pH調整剤でpHを表中の値に調整した後、水の残部を加えて各例の浴室用液体洗浄剤を得た。得られた各例の浴室用液体洗浄剤の組成(配合成分、含有量(%))を表に示す。尚、特に断りがない限り、「%」は純分の「質量%」を示す。表中、空欄の配合成分がある場合、その配合成分は配合されていない。表中、pH調整剤の含有量「適量」は、各例の浴室用液体洗浄剤のpHを表中の値にするのに要した量である。表中、水の含有量「バランス」は、浴室用液体洗浄剤に含まれる全配合成分の合計の配合量(質量%)が100質量%となるように加えられる量を意味する。
各例の浴室用液体洗浄剤について、湯垢洗浄力、皮脂洗浄力、すすぎ性を以下のように評価した。結果を表1~4に示す。
【0053】
<湯垢洗浄力の評価>
一般家庭の浴槽内側壁面に、ガラス繊維強化プラスチック(FRP)製テストピース(2cm×10cm)を固定した後、成人男性3名がそれぞれ5回入浴(1日につき1回の入浴を5日間繰り返し、その間、風呂水のみを入れ替え、浴槽は洗わずに使用)し、テストピースに汚れを付着させた。
この汚れが付着したテストピースを充分乾燥させた後、該テストピースに対して、その全面が濡れるように各例の浴室用洗浄剤を滴下し、30秒間放置した後、水道水(15℃)ですすぎ流した。テストピースを充分乾燥させ、5枚のテストピース表面の汚れの除去状態を目視、指触で確認し、下記評価基準に従い評価した。下記評価基準において、◎又は○であれば実用上湯垢洗浄力が良好である。
[評価基準]
◎:汚れ落ちが非常に良好[5枚のテストピースのうち、5枚とも目視による汚れが観察されず、5枚ともテストピース全面につるつるとした指触が得られる]。
〇:汚れ落ちが良好[5枚のテストピースのうち、1枚以上は目視による汚れが観察されず、かつ、テストピース全面につるつるとした指触が得られ、5枚のテストピースのうち、1枚以上はテストピースにざらざらとした指触を感じる]。
△:ほとんど汚れが落ちない[5枚のテストピースのうち、5枚とも目視による汚れが観察され、5枚ともざらざらとした指触を感じるが、前記目視による汚れ及びざらざらとした指触は、洗浄前より軽減されている]。
×:全く汚れが落ちない[5枚のテストピースのうち、5枚とも目視による汚れが観察され、5枚ともざらざらとした指触を感じ、前記目視による汚れ及びざらざらとした指触は、洗浄前と変わらない]。
【0054】
<皮脂汚れ洗浄力の評価>
牛脂(関東化学株式会社製)30g、大豆油(関東化学株式会社製)20g、ズダンIV(関東化学株式会社製)0.05gをクロロホルム(関東化学株式会社製、特級)50mLと混合して汚垢液を調製した。この汚垢液50mLをガラス瓶に入れ、1×5cmのPP製板(株式会社テストピース製)を浸漬して引き上げ、1時間以上乾燥したものを汚垢板とした。
100mLガラス瓶に浴室用液体洗浄剤50mLを入れ、この浴室用液体洗浄剤に汚垢板を3分間浸漬し、その後、汚垢板を取り出して、汚れ落ちの状態を目視で観察し、下記評価基準に従い評価した。下記評価基準において、◎又は○であれば実用上皮脂汚れ洗浄力が良好である。
[評価基準]
◎:汚れ落ちが非常に良好。
〇:汚れ落ちが良好。
△:汚れ落ちにムラがある。
×:ほとんど汚れが落ちない。
【0055】
<すすぎ性の評価>
市販されている浴室用洗剤「おふろのルック」(ライオン株式会社製)のトリガー容器に浴室用液体洗浄剤を充填し、FRP製の浴槽内(100×75×65cm)に対して均等間隔で10回スプレーした。その後、ウレタン製スポンジを用いて、約10g/cm2の荷重をかけながら浴槽の内側全面を円を描くように擦った後、シャワーを用いて水道水ですすぎを行い(水温15℃、流量0.2L/秒)、浴槽の排水口から泡が完全になくなるまでの時間を測定し、下記評価基準に従って浴室用液体洗浄剤のすすぎ性を評価した。下記評価基準において、◎及び○を合格とした。
[評価基準]
◎:19秒以下。
○:20秒以上23秒未満。
△:23秒以上30秒未満。
×:31秒以上。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
実施例1~25の浴室用液体洗浄剤は、湯垢洗浄力、皮脂洗浄力及びすすぎ性が良好であった。
一方、比較例1の浴室用液体洗浄剤は、(A)成分の含有量が0.5質量%未満であるので、湯垢洗浄力、皮脂洗浄力に劣っていた。
(B)成分を含有しない比較例2の浴室用液体洗浄剤は、皮脂洗浄力に劣っていた。
(B)成分の代わりに比較品を用いた比較例3~4の浴室用液体洗浄剤は、皮脂洗浄力に劣っていた。
B/Cが0.25未満の比較例5の浴室用液体洗浄剤は、皮脂洗浄力に劣っていた。
B/Cが1.5超の比較例6の浴室用液体洗浄剤は、湯垢洗浄力に劣っていた。