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特許7471207検査装置、検査方法、及び、検査プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】検査装置、検査方法、及び、検査プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20240412BHJP
   G06T 7/11 20170101ALI20240412BHJP
【FI】
G06T7/00 610Z
G06T7/11
G06T7/00 300D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020197398
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085624
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 公紀
(72)【発明者】
【氏名】劉 青
(72)【発明者】
【氏名】中鳥 真一
【審査官】山田 辰美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-4272(JP,A)
【文献】特開2005-221287(JP,A)
【文献】特開2009-300230(JP,A)
【文献】国際公開第2020/070156(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00-7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の対象物を被写体として含む入力画像において、それぞれが単一の対象物を包含する複数の注目領域を特定する第1特定処理と、
前記入力画像において、それぞれが単一の対象物を包含する単一又は複数の注目領域であって、前記第1特定処理にて特定した注目領域とは異なる注目領域を、前記第1特定処理にて特定した複数の注目領域の周期性に基づいて特定する第2特定処理と、
前記第1特定処理にて特定した複数の注目領域、及び、前記第2特定処理にて特定した単一又は複数の注目領域の各々に基づいて、当該注目領域に包含される対象物の画像検査を行う検査処理と、を実行する単一又は複数のプロセッサを備え
ている、
ことを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、テンプレートマッチングを用いて、前記第1特定処理を実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記第2特定処理において、(1)前記第1特定処理にて特定した複数の注目領域のうち、第1の方向に並んで隣接する2つの注目領域の代表点の間隔、及び、前記第1特定処理にて特定した複数の注目領域のうち、前記第1の方向と交わる第2の方向に並んで隣接する2つの注目領域の代表点の間隔の一方又は両方を算出する第1算出処理と、(2)前記第1算出処理にて算出された間隔に基づいて、前記第1特定処理にて特定した注目領域とは異なる注目領域の代表点の座標を算出する第2算出処理と、を実行する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記第1特定処理にて特定した複数の注目領域、及び、前記第2特定処理にて特定した単一又は複数の注目領域の各々を入力とし、入力された注目領域に包含される対象物が属するクラスを出力とする学習済モデルを用いて、前記検査処理を実行する、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の検査装置。
【請求項5】
単一又は複数のプロセッサが、複数の対象物を被写体として含む入力画像において、それぞれが単一の対象物を包含する複数の注目領域を特定する第1特定処理と、
前記プロセッサが、前記入力画像において、それぞれが単一の対象物を包含する単一又は複数の注目領域であって、前記第1特定処理にて特定した注目領域とは異なる注目領域を、前記第1特定処理にて特定した複数の注目領域の周期性に基づいて特定する第2特定処理と、
前記プロセッサが、前記第1特定処理にて特定した複数の注目領域、及び、前記第2特定処理にて特定した単一又は複数の注目領域の各々に基づいて、当該注目領域に包含される対象物の画像検査を行う検査処理と、を含んでいる、
ことを特徴とする検査方法。
【請求項6】
コンピュータを請求項1~4の何れか一項に記載の検査装置として動作させるための検査プログラムであって、前記コンピュータが備えるプロセッサに前記各処理を実行させる検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の対象物を被写体として含む入力画像に基づいて各対象物の検査を行う検査装置、検査方法、及び、検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の対象物を被写体として含む入力画像に基づいて各対象物の検査を行う技術が知られている。このような技術の適用対象としては、例えば、ウエハ上に形成された複数のレーザダイオードチップの品質検査等が挙げられる。
【0003】
このような技術を開示した文献としては、例えば、特許文献1が挙げられる。特許文献1に記載の検査装置においては、まず、複数の対象物を被写体として含む入力画像から、入力画像よりも解像度の低い低解像度画像を生成される。そして、入力画像において各対象物を包含する注目領域を特定する特定処理が、低解像度画像を参照して実行され、その領域に包含された対象物を分類する分類処理が、入力画像を参照して実行される。これにより、分類処理における分類精度を犠牲にすることなく、特定処理におけるプロセッサの負荷を低減することに成功している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-042754
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の検査技術においては、対象物に異物が付着していたり、入力画像における対象物の像に光学的又は電気的ノイズが乗っていたりすると、その対象物を包含する注目領域の特定に失敗することがあった。例えば、テンプレートマッチングを用いて注目領域を特定する場合、上述した異物やノイズによりテンプレートと対象物の像との一致度が低下すると、その対象物を包含する注目領域の特定に失敗する可能性が高くなる。
【0006】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、入力画像において対象物を包含する注目領域の特定に失敗する可能性が従来よりも低い検査技術を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様1に係る検査装置は、複数の対象物を被写体として含む入力画像において、それぞれが単一の対象物を包含する複数の注目領域を特定する第1特定処理と、前記入力画像において、それぞれが単一の対象物を包含する単一又は複数の注目領域であって、前記第1特定処理にて特定した注目領域とは異なる注目領域を、前記第1特定処理にて特定した複数の注目領域の周期性に基づいて特定する第2特定処理と、前記第1特定処理にて特定した複数の注目領域、及び、前記第2特定処理にて特定した単一又は複数の注目領域の各々に基づいて、当該注目領域に包含される対象物の画像検査を行う検査処理と、を実行する単一又は複数のプロセッサを備えている。
【0008】
本発明の態様2に係る検査装置においては、態様1に係る検査装置の構成に加え、前記プロセッサは、テンプレートマッチングを用いて、前記第1特定処理を実行する、という構成が採用されている。
【0009】
本発明の態様3に係る検査装置においては、態様1又は2に係る検査装置の構成に加えて、前記プロセッサは、前記第2特定処理において、(1)前記第1特定処理にて特定した複数の注目領域のうち、第1の方向に並んで隣接する2つの注目領域の代表点の間隔、及び、前記第1特定処理にて特定した複数の注目領域のうち、前記第1の方向と交わる第2の方向に並んで隣接する2つの注目領域の代表点の間隔の一方又は両方を算出する第1算出処理と、(2)前記第1算出処理にて算出された間隔に基づいて、前記第1特定処理にて特定した注目領域とは異なる注目領域の代表点の座標を算出する第2算出処理と、を実行する、という構成が採用されている。
【0010】
本発明の態様4に係る検査装置においては、態様1~3の何れか一態様に係る検査装置の構成に加えて、前記プロセッサは、前記第1特定処理にて特定した複数の注目領域、及び、前記第2特定処理にて特定した単一又は複数の注目領域の各々を入力とし、入力された注目領域に包含される対象物が属するクラスを出力とする学習済モデルを用いて、前記検査処理を実行する、という構成が採用されている。
【0011】
本発明の態様5に係る検査方法は、単一又は複数のプロセッサが、複数の対象物を被写体として含む入力画像において、それぞれが単一の対象物を包含する複数の注目領域を特定する第1特定処理と、前記プロセッサが、前記入力画像において、それぞれが単一の対象物を包含する単一又は複数の注目領域であって、前記第1特定処理にて特定した注目領域とは異なる注目領域を、前記第1特定処理にて特定した複数の注目領域の周期性に基づいて特定する第2特定処理と、前記プロセッサが、前記第1特定処理にて特定した複数の注目領域、及び、前記第2特定処理にて特定した単一又は複数の注目領域の各々に基づいて、当該注目領域に包含される対象物の画像検査を行う検査処理と、を含んでいる。
【0012】
本発明の態様6に係る検査プログラムは、コンピュータを態様1~4の何れか一態様に係る検査装置として動作させるための検査プログラムであって、前記コンピュータが備えるプロセッサに前記各処理を実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、入力画像において対象物を包含する注目領域の特定に失敗する可能性が従来よりも低い検査技術を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る検査装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る検査方法の流れを示すフロー図である。
図3図2の検査方法に含まれる特定処理の一具体例を示すフロー図である。
図4図3の特定処理の実行例を示す図である。
図5図2の検査方法に含まれる生成処理の一具体例を示すフロー図である。
図6図5の生成処理の実行例を示す図である。
図7図1の検査装置、及び、図2の検査方法の適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(検査装置の構成)
本発明の一実施形態に係る検査装置1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、検査装置1の構成を示すブロックである。
【0016】
検査装置1は、周期的に配置された複数の対象物O1,O2,…,On(nは2以上の自然数)を被写体として含む入力画像Imgに基づいて、各対象物Oi(i=1,2,…,n)の検査を行う装置である。対象物O1,O2,…,Onとしては、例えば、ウエハ上に形成されたレーザダイオードチップが挙げられる。
【0017】
検査装置1は、図1に示すように、メモリ11と、プロセッサ12と、ストレージ13と、を備えている。メモリ11、プロセッサ12、及びストレージ13は、不図示のバスを介して互いに接続されている。このバスには、更に、不図示の入出力インタフェース、及び、不図示の通信インタフェースが接続されていてもよい。この入出力インタフェースは、例えば、外部装置(例えば、カメラ)から検査装置1に入力画像を入力するため、或いは、検査装置1から外部装置(例えば、ディスプレイ)に検査結果を出力するために利用される。また、この通信インタフェースは、例えば、外部装置(例えば、カメラに接続された他のコンピュータ)から提供された入力画像を検査装置1が受信するため、或いは、外部装置(例えば、ディスプレイに接続された他のコンピュータ)に提供する検査結果を検査装置1が送信するために利用される。
【0018】
メモリ11は、後述する検査方法S1を実施するための検査プログラムPと、後述する検査方法S1で利用される学習済モデルMとを記録するための構成である。なお、メモリ11としては、例えば、半導体RAM(Random Access Memory)等を用いることができる。また、学習済モデルMとしては、例えば、CNN(Convolutional Neural Network)を用いることができる。また、ロジスティック回帰モデル、サポートベクトルマシン、ランダムフォレストなどを、学習済モデルMとして用いてもよい。
【0019】
プロセッサ12は、メモリ11に記憶された検査プログラムPに従って、後述する検査方法S1を実行するための構成である。プロセッサ12としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、マイクロプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ、マイクロコントローラ、TPU(Tensor Processing Unit)等のASIC(Application Specific Integrated Circuit)又は、これらの組み合わせ等を用いることができる。
【0020】
ストレージ13は、上述した検査プログラムPと上述した学習済モデルMとを格納(不揮発保存)するための構成である。プロセッサ12は、後述する検査方法S1を実行する際に、ストレージ13に格納された検査プログラムP及び学習済モデルMをメモリ11上に展開して参照する。なお、ストレージ13としては、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又は、これらの組み合わせ等を用いることができる。
【0021】
なお、本明細書において、「画像」とは、画素値の2次元配列のことを指す。モノクロ画像における画素値は、例えば、輝度に対応する1つの数値であり、カラー画像における画素値は、例えば、RGB、CMY、YUV等のフォーマットに対応した3つ又は4つの数値である。また、後述する「注目領域」など、入力画像における一領域も、画素値の2次元配列であり、画像と見做すことができる。
【0022】
また、検査装置1が行う検査は、正常及び異常の種類を識別しない二値判定であってもよいし、正常及び/又は異常の種類を識別する多値判定であってもよい。二値判定の場合、検査結果は、2個のクラス(正常、異常)の何れかであり、例えば、ブーリアン型の数値によって表現される。この場合、正常である確率及び異常である確率の一方又は両方を表す実数型の数値又はその組み合わせを判定結果としてもよい。多値判定の場合、N種類の正常及びM種類の異常が識別可能であるとすると、検査結果は、N+M個のクラス(正常1、正常2、…、正常M、異常1、異常2、…、異常M)の何れかであり、例えば、整数型の数値によって表現することができる。この場合、正常1である確率、正常2である確率、…、正常Nである確率、異常1である確率、異常2である確率、…、及び異常Mである確率の一部又は全部を表す実数型の数値又はその組み合わせを判定結果としてもよい。ここで、N及びMのうち、一方は、1以上の自然数であり、他方は、2以上の自然数である。更に、検査結果に、「判定保留」など、正常でも異常でもないもの(又はその確率)が含まれていてもよい。
【0023】
なお、ここでは、検査方法S1を単一のコンピュータに設けられた単一のプロセッサ12が実行する構成について説明したが、これに限定されない。すなわち、検査方法S1を単一のコンピュータに設けられた、或いは、複数のコンピュータに分散して設けられた複数のプロセッサが共同して実行する構成を採用することも可能である。
【0024】
また、ここでは、学習済モデルMを単一のコンピュータに設けられた単一のメモリ11に記憶させる構成について説明したが、これに限定されない。すなわち、学習済モデルMを単一のコンピュータに設けられた、或いは、複数のコンピュータに分散して設けられた複数のメモリに分散して記憶させる構成を採用することも可能である。
【0025】
なお、プロセッサ12に検査方法S1を実行させるための検査プログラムPは、コンピュータ読み取り可能な一時的でない有形の記録媒体に記録され得る。この記録媒体は、メモリ11であってもよいし、ストレージ13であってもよいし、その他の記録媒体であってもよい。例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブル論理回路が、その他の記録媒体として利用可能である。
【0026】
(検査方法の流れ)
検査装置1が実施する検査方法S1の流れについて、図2を参照して説明する。図2は、検査方法S1の流れを示すフロー図である。
【0027】
検査方法S1は、図2に示すように、特定処理S11と、生成処理S12と、検査処理S13と、を含んでいる。なお、以下の説明においては、複数の対象物O1,O2,…,Onを被写体として含む入力画像Imgが検査装置1のメモリ11に格納されているものとする。
【0028】
特定処理S11は、入力画像Imgにおいて、それぞれが単一の対象物Oi(i=1,2,…,n)を包含する複数の注目領域A1,A2,…,Anを特定するための処理である。注目領域Aiは、入力画像Imgにおいて対応する対象物Oiを包含する領域であり、(1)対応する対象物Oiの像が注目領域Aiの外部と共通部分を持たないように、且つ、(2)それ以外の対象物Oj(j≠i)の像が注目領域Aiの内部と共通部分を持たないように設定されていることが好ましい。本実施形態において、特定処理S11は、検査装置1が備えるプロセッサ12によって実行される。
【0029】
生成処理S12は、特定処理S11にて特定した各注目領域Aiについて、その注目領域Aiを含む画像Imgiを生成するための処理である。本実施形態において、生成処理S12は、検査装置1が備えるプロセッサ12によって実行される。
【0030】
検査処理S13は、生成処理S12にて生成した各画像Imgiに基づいて、その画像Imgiに被写体として含まれる対象物Oiの画像検査を行うための処理である。本実施形態において、検査処理S13は、検査装置1が備えるプロセッサ12によって、学習済モデルMを用いて実行される。
【0031】
学習済モデルMは、対象物を被写体として含む画像を入力とし、その対象物が属するクラスを出力するモデルである。学習済モデルMは、例えば、対象物(属するクラスが既知の対象物)を被写体として含む画像とその対象物が属するクラスとの組を教師データとする機械学習によって構築される。
【0032】
(特定処理の具体例)
検査方法S1に含まれる特定処理S11の具体例について、図3を参照して説明する。図3は、本具体例に係る特定処理S11の流れを示すフロー図である。
【0033】
対象物Oiの状態、又は、入力画像Imgにおける対象物Oiの像の状態によっては、テンプレートマッチングを用いてその対象物Oiを包含する注目領域Aiを特定することが困難になる場合がある。本具体例に係る特定処理S11は、このような場合であっても、入力画像Imgに被写体として含まれる全ての対象物O1,O2,…,Onについて、対象物Oiを包含する注目領域Aiを特定することができるように工夫したものである。以下、説明の便宜上、n-m個の対象物O1,O2,…On-mを、テンプレートマッチングにより注目領域を特定することが可能な対象物とし、m個の対象物On-m+1,On-m+2,…,Onを、テンプレートマッチングにより注目領域を特定することが不可能な対象物とする。ここで、mは、1以上n-2以下の自然数であり、テンプレートマッチングにより注目領域を特定することが不可能な対象物の個数を表す。
【0034】
本具体例に係る特定処理S11は、図3に示すように、第1特定処理S111と、第2特定処理S112と、を含んでいる。
【0035】
第1特定処理S111は、入力画像Imgにおいて、それぞれが単一の対象物Oj(j=1,2,…,n-m)を包含するn-m個の注目領域A1,A2,…,An-mを、テンプレートマッチングを用いて特定するための処理である。第1特定処理S111にて特定される各注目領域Ajは、入力画像Imgにおいて対象物Ojを包含する領域となる。本実施形態において、第1特定処理S111は、検査装置1が備えるプロセッサ12によって実行される。
【0036】
第2特定処理S112は、入力画像Imgにおいて、第1特定処理S111にて特定した注目領域A1,A2,…,An-mとは異なるm個の注目領域An-m+1,An-m+2,…,Anを、第1特定処理S111にて特定したn-m個の注目領域A1,A2,…,An-mの周期性を用いて特定するための処理である。入力画像Imgにおいて対象物O1,O2,…,Onが周期的に配置されている場合、第2特定処理S112にて特定される各注目領域Akは、第1特定処理S111にて特定される注目領域Ajと同様、入力画像Imgにおいて対応する対象物Okを包含する領域となる。本実施形態において、第2特定処理S112は、検査装置1が備えるプロセッサ12によって実行される。
【0037】
第2特定処理S112は、図3に示すように、第1算出処理S112aと、第2算出処理S112bと、により構成することができる。
【0038】
第1算出処理S112aは、第1特定処理S111にて特定したn-m個の注目領域A1,A2,…,An-mのうち、画素行方向(特許請求の範囲における「第1の方向」の一例)に並んで隣接する2つの注目領域の代表点の間隔dx、及び、第1特定処理S111にて特定したn-m個の注目領域A1,A2,…,An-mのうち、画素列方向(特許請求の範囲における「第2の方向」の一例)に並んで隣接する2つの注目領域の代表点の間隔dyを算出するための処理である。
【0039】
第2算出処理S112bは、第1算出処理S112aにて算出された間隔dx,dyに基づいて、第1特定処理S111にて特定したn-m個の注目領域A1,A2,…,An-mとは異なるm個の注目領域An-m+1,An-m+2,…,Anの代表点の座標を算出するための処理である。m個の注目領域An-m+1,An-m+2,…,Anは、代表点の座標が第2算出処理S112bにて算出された座標に一致する注目領域に設定される。
【0040】
図4は、本具体例に係る特定処理S11の実行例を示す図である。ここでは、図4の(a)に示すように、4つの対象物O1,O2,O3,O4を被写体として含む入力画像Imgを考える。3つの対象物O1,O2,O3は、テンプレートマッチングにより注目領域を特定することが可能な対象物であり、残り1つの対象物O4は、異物の付着等によりテンプレートマッチングにより注目領域を特定することが不可能な対象物である。
【0041】
第1特定処理S111においては、図4の(b)に示すように、3つの対象物O1,O2,O3をそれぞれ包含する3つの注目領域A1,A2,A3がテンプレートマッチングにより特定される。
【0042】
第2特定処理S112の第1算出処理S112aにおいては、図4の(c)に示すように、画素行方向に並んで隣接する2つの注目領域A1,A2の代表点P1,P2の間隔dxと、画素列方向に並んで隣接する2つの注目領域A1,A3の代表点P1,P3の間隔dyとが算出される。ここでは、各注目領域Aiを、画素行方向に平行な辺と画素列方向に平行な辺とを有する矩形領域とし、各注目領域Aiの代表点Piを、その矩形領域の左上隅の頂点とした。
【0043】
第2特定処理S112の第2算出処理S112bにおいては、図4の(d)に示すように、第1算出処理S112aにて算出された間隔dx,dyに基づいて、残り1つの注目領域A4の代表点P4の座標が算出される。具体的には、注目領域A4の代表点P4のx座標(画素行方向の座標)が、注目領域A3の代表点P3の画素行方向の座標に間隔dxを加算することによって算出され、注目領域A4の代表点P4のy座標(画素列方向の座標)が、注目領域A2の代表点P2の画素列方向の座標に間隔dyを加算することによって算出される。そして、注目領域A4が、左上隅の頂点の座標が第2算出処理S112bにて算出された座標に一致する矩形領域に設定される。
【0044】
(生成処理の具体例)
検査方法S1に含まれる生成処理S12の具体例について、図5を参照して説明する。図5は、本具体例に係る生成処理S12の流れを示すフロー図である。
【0045】
本具体例に係る生成処理S12は、図5に示すように、切り出し処理S121と、埋め込み処理122と、を含んでいる。
【0046】
切り出し処理S121は、特定処理S11にて特定した各注目領域Aiを入力画像Imgから切り出すための処理である。埋め込み処理S122は、切り出し処理S121にて切り出した各注目領域Aiを、予め定められたサイズの画像Imgiに無加工で埋め込むための処理である。ここで、注目領域Aiを「無加工で埋め込む」とは、拡大、縮小、回転などの画像処理を施すことなく、入力画像Imgから切り出した注目領域Aiをそのまま(全ての画素の画素値を変化させることなく)埋め込むことを指す。これにより、各注目領域Aiについて、予め定められたサイズの画像Imgiであって、その注目領域Aiが無加工で埋め込まれた画像Imgiが生成される。切り出し処理S121にて生成される画像Imgiにおいて、注目領域Aiが埋め込まれた部分以外の画素は、同一の画素値に設定される。これらの画素の画素値は、任意であり、例えば、黒に対応する画素値であってもよいし、白に対応する画素値であってもよい。
【0047】
図6は、本具体例に係る生成処理S12により生成される画像Imgiの具体例を示す図である。
【0048】
図6の(a)に示す画像Img1は、600画素×1200画素の画像である。注目領域A1は、入力画像Imgにおいて画素行方向に平行な辺と画素列方向に平行の辺とを有する長方形領域である。この注目領域A1が拡大されることも、縮小されることも、回転されることもなく、そのまま画像Img1に埋め込まれている。画像Img1において、注目領域A1が埋め込まれた部分以外の画素の画素値は、一律に黒を表す画素値に設定されている。
【0049】
図6の(b)に示す画像Img2は、図6の(a)に示す画像Img1と同様、600画素×1200画素の画像である。注目領域A2は、入力画像Imgにおいて画素行方向に平行な辺と画素列方向に平行な辺とを有する長方形領域である。この注目領域A2は注目領域A1よりも小さいが、この注目領域A2が拡大されることも、縮小されることも、回転されることもなく、そのまま画像Img2に埋め込まれている。画像Img2において、注目領域A2が埋め込まれた部分以外の画素の画素値は、画像Img1と同様、一律に黒を表す画素値に設定されている。
【0050】
図6の(c)に示す画像Img3は、図6の(a)に示す画像Img1及び図6の(b)に示す画像Img2と同様、600画素×1200画素の画像である。注目領域A3は、入力画像Imgにおいて画素行方向に非平行な辺と画素列方向に非平行な辺とを有する長方形領域である。この注目領域A3は傾いているが、この注目領域A3が拡大されることも、縮小されることも、回転されることもなく、そのまま画像Img3に埋め込まれている。画像Img3において、注目領域A3が埋め込まれた部分以外の画素の画素値は、画像Img1及び画像Img2と同様、一律に黒を表す画素値に設定されている。
【0051】
(適用例)
本実施形態に係る検査装置1は、例えば、単一のウエハ上に形成された複数のレーザダイオードチップの検査に適用することができる。このようなウエハを撮像することにより得られた入力画像を、図7の(a)に示す。
【0052】
テンプレートマッチングに用いるテンプレートは、レーザダイオードの全体にマッチするテンプレートであってもよいし、レーザダイオードの一部にマッチするテンプレートであってもよい。後者のテンプレートの例としては、例えば、レーザダイオードの上端及び下端にマッチするテンプレートや、レーザダイオードの右端及び左端にマッチするテンプレートなどが挙げられる。レーザダイオードの上端及び下端にマッチするテンプレートを用いたテンプレートマッチングにより検出された領域を、図7の(b)に示す。図7の(b)においては、テンプレートマッチングにより検出された領域を点線の矩形で囲んで示している。
【0053】
レーザダイオードの全体にマッチするテンプレートを用いた場合、テンプレートマッチングにより検出された領域を、そのまま注目領域として特定すればよい。一方、レーザダイオードの一部にマッチするテンプレートを用いた場合、テンプレートマッチングにより検出された領域から所定のアルゴリズムに従って導出される領域を、注目領域として特定すればよい。例えば、レーザダイオードの上端及び下端にマッチするテンプレートを用いた場合、テンプレートマッチングにより検出された領域のうち画素列方向に並んで隣接する2つの領域を渡る矩形領域を、注目領域として特定すればよい。このようにして特定された注目領域を、図7の(c)に示す。図7の(c)においては、このようにして特定された注目領域を実線の矩形で囲んで示している。
【0054】
図7の(d)は、異物が付着しているウエハを撮像することにより得られた入力画像である。このような場合、異物が付着した領域に関して、テンプレートマッチングに失敗することがある。しかしながら、上述したように、注目領域を第1特定処理S111及び第2特定処理S112により二段階特定するようにすれば、異物が付着した領域において注目領域の設定に失敗する可能性を有意に低減することができる。
【0055】
(検査装置の効果1)
以上のように、本実施形態に係る検査装置1は、第1特定処理S111と、第2特定処理S112と、検査処理S13とを実行するプロセッサ12を備えている。第1特定処理S111は、n個の対象物O1,O2,…,Onを被写体として含む入力画像Imgにおいて、それぞれが単一の対象物Oj(j=1,2,…,n-m)を包含するn-m個の注目領域A1,A2,…,An-mを特定する処理である。また、第2特定処理S112は、第1特定処理S111にて特定したn-m個の注目領域A1,A2,…,An-mとは異なるm個の注目領域An-m+1,An-m+2,…,Anを、第1特定処理S111にて特定したn-m個の注目領域A1,A2,…,An-mの周期性に基づいて特定する処理である。検査処理S13は、第1特定処理S111にて特定したn-m個の注目領域A1,A2,…,An-m、及び、第2特定処理S112にて特定したm個の注目領域An-m+1,An-m+2,…,Anの各々に基づいて、注目領域Ai(i=1,2,…,n)に包含される対象物Oiの画像検査を行う処理である。
【0056】
上記の構成によれば、入力画像Imgにおいて対象物O1,O2,…,Onが周期的に配置されている場合、第1特定処理S111において対象物On-m+1,On-m+2,…,Onを包含する注目領域An-m+1,An-m+2,…,Anの特定に失敗しても、これらの対象物On-m+1,On-m+2,…,Onを包含する注目領域An-m+1,An-m+2,…,Anを、第2特定処理S112において特定することができる。したがって、入力画像Imgに被写体として含まれる対象物O1,O2,…,Onを漏れなく検査することが可能な検査装置1を実現することができる。なお、上述した検査方法S1によっても、同様の効果が得られる。また、上述した検査プログラムPをコンピュータに実行させることによっても、同様の効果が得られる。
【0057】
また、本実施形態に係る検査装置1において、プロセッサ12は、テンプレートマッチングを用いて第1特定処理S111を実行する。
【0058】
上記の構成によれば、第1特定処理S111において効率的に対象物O1,O2,…,On-mを包含する注目領域A1,A2,…,An-mを特定することが可能な検査装置1を実現することができる。
【0059】
また、本実施形態に係る検査装置1において、プロセッサ12は、第1特定処理S111にて特定したn-m個の注目領域A1,A2,…,An-m、及び、第2特定処理S112にて特定したm個の注目領域An-m+1,An-m+2,…,Anの各々を入力とし、入力された注目領域Aiに包含される対象物Oiが属するクラスを出力とする学習済モデルMを用いて、検査処理S13を実行する。
【0060】
上記の構成によれば、入力画像Imgに被写体として含まれる対象物O1,O2,…,Onをそれぞれ精度良く検査することが可能な検査装置1を実現することができる。
【0061】
(検査装置の効果2)
以上のように、本実施形態に係る検査装置1は、特定処理S11と、生成処理S12と、検査処理S13と、を実行するプロセッサ12を備えている。特定処理S11は、n個の対象物O1,O2,…,Onを被写体として含む入力画像Imgにおいて、それぞれが単一の対象物Ojを包含するn個の注目領域A1,A2,…,Anを特定する処理である。生成処理S12は、特定処理S11にて特定したn個の注目領域A1,A2,…,Anの各々について、予め定められたサイズの画像Imgi(i=1,2,…,n)であって、注目領域Aiが無加工で埋め込まれた画像Imgiを生成する処理である。検査処理S13は、生成処理S12にて生成したn個の画像Img1,Img2,…,Imgnの各々に基づいて、画像Imgiに埋め込まれた注目領域Aiに包含される対象物Oiの画像検査を行う処理である。
【0062】
上記の構成によれば、検査処理S13において参照される画像Img1,Img2,…,Imgnのサイズが一律になる。また、上記の構成によれば、検査処理S13において参照される各画像Imgiに加工により劣化していない注目領域Aiが埋め込まれる。したがって、検査処理S13を特定のアルゴリズムに従って精度良く実行することが可能な検査装置1を実現することができる。上述した検査方法S1によっても、同様の効果が得られる。また、上述した検査プログラムPをコンピュータに実行させることによっても、同様の効果が得られる。
【0063】
また、本実施形態に係る検査装置1において、プロセッサ12は、テンプレートマッチングを用いて第1特定処理S111を実行する。
【0064】
上記の構成によれば、第1特定処理S111において効率的に対象物O1,O2,…,Onを包含する注目領域A1,A2,…,Anを特定することが可能な検査装置1を実現することができる。
【0065】
また、本実施形態に係る検査装置1において、プロセッサ12は、生成処理S12において、注目領域Aiが埋め込まれた部分以外の画素の画素値が同一である画像Imgiを生成する。
【0066】
上記の構成によれば、画像Imgiにおいて注目領域Aiが埋め込まれた部分以外の画素の画素値が検査結果に与える影響を小さくすることができる。したがって、入力画像Imgに被写体として含まれる対象物O1,O2,…,Onをそれぞれ精度良く検査することが可能な検査装置1を実現することができる。
【0067】
また、本実施形態に係る検査装置1において、プロセッサ12は、生成処理S12にて生成した画像Img1,Img2,…,Imgnの各々を入力とし、入力された画像Imgiに埋め込まれた注目領域Aiに包含される対象物Oiが属するクラスを出力とする学習済モデルMを用いて、検査処理S13を実行する。
【0068】
上記の構成によれば、入力画像Imgに被写体として含まれる対象物O1,O2,…,Onをそれぞれ精度良く検査することが可能な検査装置1を実現することができる。
【0069】
(付記事項)
本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、上述した実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1 検査装置
11 メモリ
12 プロセッサ
13 ストレージ
P 検査プログラム
M 学習済モデル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7