(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】情報処理装置、予測方法、水処理システム、および予測プログラム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20230101AFI20240412BHJP
B01D 21/30 20060101ALI20240412BHJP
C02F 1/52 20230101ALI20240412BHJP
【FI】
C02F1/00 T
B01D21/30 A
C02F1/00 K
C02F1/52 Z
(21)【出願番号】P 2020200514
(22)【出願日】2020-12-02
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】布 光昭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 伸和
(72)【発明者】
【氏名】権 大維
【審査官】▲高▼橋 明日香
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-061444(JP,A)
【文献】特開2006-274577(JP,A)
【文献】特開2005-329359(JP,A)
【文献】特開2006-009522(JP,A)
【文献】中国実用新案第213977329(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00
B01D 21/00-21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象浄水場が取水する河川の上流で取水する上流側浄水場における凝集剤注入の適正制御量の予測誤差を示す誤差データを取得するデータ取得部と、
前記誤差データを用いて、前記対象浄水場における凝集剤注入の適正制御量を予測する予測部と、を備え
、
前記誤差データは、前記上流側浄水場における凝集剤注入の適正制御量の予測値と実際の適正値との誤差を示す、情報処理装置。
【請求項2】
前記予測部は、前記対象浄水場における凝集剤注入の適正制御量を目的変数とし、前記上流側浄水場における凝集剤注入の適正制御量の予測誤差を説明変数の1つとした予測モデルを用いて、前記誤差データから前記対象浄水場における凝集剤注入の適正制御量を予測する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記予測部は、上流側浄水場における凝集剤注入の適正制御量の予測に用いられたアルゴリズムと同じアルゴリズムにより前記対象浄水場における凝集剤注入の適正制御量を予測する、請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記予測部は、前記上流側浄水場におけるある時刻の予測誤差を示す前記誤差データを用いて、当該ある時刻から前記上流側浄水場から前記対象浄水場まで前記河川の水が流れる時間が経過した時刻の、前記対象浄水場における凝集剤注入の適正制御量を予測する、請求項1から3の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記上流側浄水場は、複数存在し、
前記データ取得部は、複数の前記上流側浄水場のそれぞれについて前記誤差データを取得し、
前記予測部は、複数の前記上流側浄水場のそれぞれの誤差データを用いて、前記対象浄水場における凝集剤注入の適正制御量を予測する、請求項1から4の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載の情報処理装置と、
前記情報処理装置が予測した、前記対象浄水場における凝集剤注入の適正制御量を用いて、当該対象浄水場における凝集剤の注入制御を行う制御装置と、を含む水処理システム。
【請求項7】
情報処理装置が実行する、凝集剤注入の適正制御量の予測方法であって、
対象浄水場が取水する河川の上流で取水する上流側浄水場における凝集剤注入の適正制御量の予測誤差を示す誤差データを取得するデータ取得ステップと、
前記誤差データを用いて、前記対象浄水場における凝集剤注入の適正制御量を予測する予測ステップと、を含
み、
前記誤差データは、前記上流側浄水場における凝集剤注入の適正制御量の予測値と実際の適正値との誤差を示す、予測方法。
【請求項8】
請求項1に記載の情報処理装置としてコンピュータを機能させるための予測プログラムであって、前記データ取得部および前記予測部としてコンピュータを機能させるための予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水場における凝集剤注入の適正制御量を予測する情報処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な浄水場では、河川などの水源から取水した原水に凝集剤を注入・混和し、原水中に含まれる懸濁物質などを凝集・沈澱させた上澄み水をさらにろ過して消毒したものを浄水としている。この際、凝集剤の注入率が低すぎても高すぎても清澄な浄水が得られなくなるため、適正な注入率を予測するための技術の開発が従来から進められている。
【0003】
例えば、凝集剤の注入率を目的変数とし、注入率に相関のある水質データ等を説明変数とする重回帰分析により、凝集剤の適正な注入率を予測することができることが知られている(例えば下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、凝集剤の注入率に相関のある全てのデータを説明変数とすることは困難である。このため、予測の際に考慮できていない外乱要因により、予測結果が適正な注入率から乖離したものとなってしまうことがあった。これは、注入率を予測する場合に限られず、注入量などの凝集剤注入における各種制御量の予測において共通して生じる問題点である。
【0006】
本発明の一態様は、外乱要因の影響を考慮した妥当な予測結果を得ることが可能な情報処理装置等を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る情報処理装置は、対象浄水場が取水する河川の上流で取水する上流側浄水場における凝集剤注入の適正制御量の予測誤差を示す誤差データを取得するデータ取得部と、前記誤差データを用いて、前記対象浄水場における凝集剤注入の適正制御量を予測する予測部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様に係る予測方法は、情報処理装置が実行する、凝集剤注入の適正制御量の予測方法であって、対象浄水場が取水する河川の上流で取水する上流側浄水場における凝集剤注入の適正制御量の予測誤差を示す誤差データを取得するデータ取得ステップと、前記誤差データを用いて、前記対象浄水場における凝集剤注入の適正制御量を予測する予測ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、外乱要因の影響を考慮した妥当な予測結果を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る情報処理装置と上流側情報処理装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】上記情報処理装置を含む水処理システムの構成例を示す図である。
【
図3】凝集剤注入率と濁度の相関曲線と、凝集剤注入率の適正値の関係を模式的に示す図である。
【
図4】適正制御量の予測モデルの構築方法の例を示す図である。
【
図5】情報処理装置と上流側情報処理装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】凝集剤の注入制御をフィードバック制御により行う上流側情報処理装置の構成を説明する図である。
【
図7】複数の上流側浄水場における誤差データを利用して対象浄水場における凝集剤注入の適正制御量を予測する水処理システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔水処理システムの構成〕
本実施形態に係る水処理システム7の概要を
図2に基づいて説明する。
図2は、水処理システム7の構成例を示す図である。水処理システム7は、浄水場における原水への凝集剤の注入に関する処理を行うシステムであり、情報処理装置1と、制御装置3と、上流側情報処理装置5とを含む。なお、ここでは河川の上流側と下流側に浄水場が設けられていることを想定しており、上流側の浄水場を上流側浄水場と呼び、下流側の浄水場を対象浄水場と呼ぶ。
【0012】
上流側情報処理装置5は、上流側浄水場における原水への凝集剤の注入に関する処理を行う装置である。具体的には、上流側情報処理装置5は、上流側浄水場における凝集剤注入の適正制御量を予測すると共に、その予測結果に従って凝集剤注入制御を行う。また、上流側情報処理装置5は、上記の予測を行った後、当該予測の予測誤差、すなわち上述の予測値と実際に実行された実績値である適正値との差を示す誤差データを生成し、情報処理装置1に通知する。なお、上流側浄水場における凝集剤注入の適正制御量の予測は、上流側情報処理装置5ではなく人が行ってもよい。この場合、上流側浄水場については、例えば、過去の実績に基づく相関曲線(原水濁度と適正注入率との相関を示すもの)や、早見表等を用いて適正制御量を予測すればよい。
【0013】
情報処理装置1は、対象浄水場における凝集剤注入の適正制御量を予測する装置である。この予測には、上流側情報処理装置5が生成する誤差データと、対象浄水場における原水の水質を示す水質データとが用いられる。そして、情報処理装置1は、予測した適正制御量を制御装置3に通知する。
【0014】
制御装置3は、対象浄水場における原水への凝集剤注入制御を行う装置である。より詳細には、制御装置3は、情報処理装置1から通知される適正制御量の予測結果に従って原水への凝集剤注入制御を行う。
【0015】
以上のように、水処理システム7は、上流側浄水場における凝集剤注入の適正制御量の予測誤差を示す誤差データを取得し、取得した誤差データを用いて、対象浄水場における凝集剤注入の適正制御量を予測する情報処理装置1を含む。また、水処理システム7は、情報処理装置1が予測した適正制御量を用いて、対象浄水場における凝集剤の注入制御を行う制御装置3を含む。
【0016】
上流側浄水場における適正制御量の予測結果は、種々の外乱要因により適正値から外れたものとなることがあり、その結果として予測誤差が生じる。このため、誤差データには、種々の外乱要因の影響が反映されているといえる。また、上流側浄水場における予測に影響を与えた外乱要因は、その下流で取水する対象浄水場における予測にも同様の影響を与え得る。
【0017】
よって、上流側浄水場の誤差データを用いて対象浄水場における凝集剤注入の適正制御量を予測する情報処理装置1によれば、対象浄水場における外乱要因の影響を考慮した妥当な予測結果を得ることが可能になる。また、制御装置3が、上記の予測結果に基づいて凝集剤の注入制御を行うので、水処理システム7によれば、対象浄水場において良好な浄水水質が安定的に得られる。さらに、水処理システム7によれば、対象浄水場において、運転維持管理の省人化が可能になると共に、凝集剤の過剰注入を抑えて薬剤費を低減することも可能になる。
【0018】
〔情報処理装置の構成〕
情報処理装置1のより詳細な構成について
図1に基づいて説明する。
図1は、情報処理装置1と上流側情報処理装置5の要部構成の一例を示すブロック図である。なお、上流側情報処理装置5の構成については、情報処理装置1の後で説明する。
【0019】
図1に示すように、情報処理装置1は、情報処理装置1の各部を統括して制御する制御部10と、情報処理装置1が使用する各種データを記憶する記憶部11とを備えている。また、情報処理装置1は、情報処理装置1が上流側情報処理装置5等の他の装置と通信するための通信部12と、情報処理装置1に対する入力を受け付ける入力部13と、情報処理装置1が情報を出力するための出力部14とを備えている。
【0020】
また、制御部10には、データ取得部101、予測部102、および予測結果通知部103が含まれている。そして、記憶部11には、予測用データ111および予測モデル112が記憶されている。
【0021】
データ取得部101は、上流側浄水場における原水に対する凝集剤注入の適正制御量の予測誤差を示す誤差データを取得する。より詳細には、データ取得部101は、上流側情報処理装置5から通信部12を介した通信により誤差データを取得する。
【0022】
また、データ取得部101は、上記原水の水質を示す水質データも取得する。水質データは、適正制御量と相関のあるデータを含むものであればよい。例えば、水質データは、原水の濁度、pH、アルカリ度、および水温の少なくとも何れかを示すデータを含むものであってもよい。特に濁度は適正制御量と相関が強いので、少なくとも濁度を含む水質データを用いることが望ましい。また、凝集状態に影響する因子として、有機物濃度を水質データに含めてもよい。有機物濃度の指標としては、例えばTOC(全有機炭素)やE260(紫外線吸光度)が挙げられる。データ取得部101は、対象浄水場に設けられたセンサ等から水質データを取得してもよいし、水質データをユーザが入力部13を介して入力する構成としてもよい。
【0023】
そして、データ取得部101は、取得した誤差データと水質データを予測用データ111として記憶部11に記録する。なお、誤差データの取得と水質データの取得をそれぞれ別のブロックで行うようにしてもよい。
【0024】
予測部102は、予測用データ111を用いて対象浄水場における凝集剤注入の適正制御量を予測する。なお、予測する制御量は、例えば凝集剤の注入率であってもよいし、凝集剤の注入量であってもよい。
【0025】
予測結果通知部103は、通信部12を介した通信により、予測部102が予測した適正制御量を対象浄水場に通知する。対象浄水場に設けられた制御装置3(
図2参照)は、上記通知を受信し、通知された適正制御量を適用して凝集剤の注入制御を行う。このため、予測結果通知部103は、予測部102の予測結果に従って凝集剤の注入制御が行われるように制御装置3を制御しているともいえる。
【0026】
予測用データ111は、予測部102が凝集剤注入の適正制御量を予測するために用いるデータである。上述のように、予測用データ111には、誤差データと水質データが含まれている。
【0027】
予測モデル112は、予測部102が予測用データ111から凝集剤注入の適正制御量を予測する際に用いるモデルである。予測モデル112の詳細については
図4に基づいて後述する。
【0028】
以上のように、データ取得部101は、上流側浄水場における凝集剤注入の適正制御量の予測誤差を示す誤差データを取得する。そして、予測部102は、データ取得部101が取得する誤差データを含む予測用データ111を用いて、対象浄水場における凝集剤注入の適正制御量を予測する。これにより、対象浄水場における外乱要因の影響を考慮した妥当な予測結果を得ることが可能になる。
【0029】
〔上流側情報処理装置の構成〕
引き続き
図1に基づいて、上流側情報処理装置5のより詳細な構成について説明する。
図1に示すように、上流側情報処理装置5は、上流側情報処理装置5の各部を統括して制御する制御部50と、上流側情報処理装置5が使用する各種データを記憶する記憶部51とを備えている。また、上流側情報処理装置5は、上流側情報処理装置5が情報処理装置1等の他の装置と通信するための通信部52と、上流側情報処理装置5に対する入力を受け付ける入力部53と、上流側情報処理装置5が情報を出力するための出力部54とを備えている。
【0030】
また、制御部50には、水質データ取得部501、予測部502、注入制御部503、および誤差データ生成部504が含まれている。そして、記憶部51には、予測用データ511および予測モデル512が記憶されている。
【0031】
水質データ取得部501は、上流側浄水場において凝集剤注入の対象となる原水の水質を示す水質データを取得する。そして、水質データ取得部501は、取得した水質データを予測用データ511として記憶部51に記録する。データ取得部101が取得する水質データと同様に、水質データ取得部501が取得する水質データは、凝集剤注入の適正制御量と相関のあるデータを含むものであればよい。水質データ取得部501は、上流側浄水場に設けられたセンサ等から水質データを取得してもよいし、水質データをユーザが入力部53を介して入力する構成としてもよい。
【0032】
予測部502は、予測用データ511を用いて上流側浄水場における凝集剤注入の適正制御量を予測する。予測する制御量は、例えば凝集剤の注入率であってもよいし、凝集剤の注入量であってもよい。適正制御量に影響を与え得る様々な因子を含む予測用データ511を用いることにより予測精度を高めることが可能であるが、全ての因子を考慮することは困難であるため予測部502の予測には予測誤差が生じる。
【0033】
注入制御部503は、予測部502が予測した適正制御量を適用して、上流側浄水場における凝集剤の注入制御を行う。つまり、上流側情報処理装置5は、凝集剤の注入制御を行う制御装置としての機能も有している。無論、上流側浄水場には、上流側情報処理装置5とは別に凝集剤の注入制御を行う制御装置が設けられていてもよい。この場合、注入制御部503は、予測部502が予測した適正制御量を当該制御装置に通知して注入制御を行わせればよい。
【0034】
誤差データ生成部504は、上流側浄水場における原水に対する凝集剤注入の適正制御量の予測誤差を示す誤差データを生成する。誤差データの生成方法については
図3に基づいて後述する。
【0035】
予測用データ511は、予測部502が凝集剤注入の適正制御量を予測するために用いるデータである。上述のように、予測用データ511には、上流側浄水場における原水の水質を示す水質データが含まれている。
【0036】
予測モデル512は、予測部502が予測用データ511から凝集剤注入の適正制御量を予測する際に用いるモデルである。予測モデル512の詳細については
図4に基づいて後述する。
【0037】
〔誤差データの生成方法の例〕
誤差データ生成部504による誤差データの生成方法について
図3に基づいて説明する。
図3は、凝集剤注入率と濁度の相関曲線と、凝集剤注入率の適正値の関係を模式的に示す図である。
図3には、グラフ平面上に上記相関曲線を描画すると共に、凝集剤注入率の適正値を示すプロットを描画している。凝集剤注入率の適正値は、例えばジャーテスト等により特定される。
【0038】
なお、ジャーテストとは、小分けした原水に対して異なる注入率で凝集剤を注入して撹拌し、それぞれの凝集状態を所定の評価項目で評価し、それらの評価結果に基づいて注入率の適正値を特定するものである。上記評価項目としては、例えばフロックの状態や、上澄み水の濁度が挙げられる。また、凝集剤注入率の予測は、原水の濁度と凝集剤注入率との関係をモデル化した予測モデル512、すなわち
図3に示す相関曲線を用いて行うことを想定している。このため、
図3のグラフの横軸は原水の濁度としている。
【0039】
図示の相関曲線に示される凝集剤注入率の予測値は、原水の濁度の上昇に伴って緩やかに増加している。また、凝集剤注入率の適正値も、全体としては原水の濁度の上昇に伴って緩やかに増加する傾向であるが、濁度以外の外乱要因により、予測値から大きく外れた値となっているものも少なくない。誤差データ生成部504は、このような予測値と適正値の差を誤差データとしてもよい。
【0040】
例えば、
図3の例では、原水濁度がa
1のとき、相関曲線から予測値はb
1と特定されるが、このときの実際の適正値はB
1である。この場合、誤差データ生成部504は、実際の適正値と予測値との差d
1=B
1-b
1を誤差データとすればよい。また、
図3の例では、原水濁度がa
2のとき、相関曲線から予測値はb
2と特定されるが、このときの実際の適正値はB
2である。この場合、誤差データ生成部504は、実際の適正値と予測値との差d
2=b
2-B
2を誤差データとすればよい。
【0041】
このように、誤差データ生成部504は、予測値(予測部502が予測した適正制御量)と適正値(実際の適正制御量)との差、すなわち予測誤差を算出し、これを誤差データとすればよい。適正値の特定方法は任意であり、例えば、原水をジャーテストに供し、その結果に基づいて決定してもよい。この場合、予測部502の予測値をベースとして、複数の制御量を設定し、設定した各制御量でジャーテストを行えばよい。そして、誤差データ生成部504は、予測部502の予測値と、入力部53を介して入力された適正値(ジャーテストで特定された値)との差を誤差データとすればよい。また、実際の適正制御量は、自動ジャーテスターで特定してもよく、この場合、誤差データ生成部504は、予測部502の予測値と、自動ジャーテスターが出力する適正値との差を誤差データとすればよい。
【0042】
なお、予測値と適正値との比も、予測値と適正値との乖離の程度を示すから、予測値と適正値との比を誤差データとしてもよい。
【0043】
また、実際の適正制御量は、上流側浄水場における凝集剤注入の管理者等の経験則に基づいて特定されたものであってもよい。経験則では、原水の水質のうち予測において考慮されていない各種因子を考慮することができる。例えば、季節、降雨状況、および原水濁度の変化傾向(上昇傾向か下降傾向か)等を考慮することもできる。
【0044】
具体例を挙げれば、冬季には、予測値よりも高めの値を実際の適正制御量としてもよい。また、降雨による濁度変動時において、降雨のピークを過ぎて濁度が下降傾向である場合にも、予測値よりも高めの値を実際の適正制御量としてもよい。さらに、取水地の上流の湖沼やダムで藻類が増殖したことが分かっている場合にも、予測値よりも高めの値を実際の適正制御量としてもよい。
【0045】
なお、以上のようにして実際の適正制御量が特定された場合、上流側情報処理装置5の注入制御部503は、特定された実際の適正制御量を適用して、上流側浄水場における凝集剤の注入制御を行ってもよい。また、注入制御部503は、誤差データ生成部504が生成する誤差データを用いて予測部502が予測した適正制御量を補正し、補正後の適正制御量を適用して、上流側浄水場における凝集剤の注入制御を行ってもよい。
【0046】
〔予測モデルの構築方法の例〕
図4は、適正制御量の予測モデル512および112の構築方法の例を示す図である。
図4には、教師データを用いた学習により予測モデル512および112を構築する例を示している。
【0047】
上流側浄水場における予測で用いられる予測モデル512用の教師データは、説明変数に目的変数が対応付けられたデータ構造である。説明変数は、上流側浄水場における原水の水質データであり、目的変数は上流側浄水場における凝集剤注入の適正制御量である。
【0048】
このような教師データを複数含む学習用データセットを用いて学習することにより、上流側浄水場における凝集剤注入の適正制御量を目的変数とし、上流側浄水場における原水の水質データを説明変数とした予測モデル512を構築することができる。そして、このようにして構築した予測モデル512を用いる場合、予測部502は、予測モデル512に水質データを入力することにより適正制御量の予測値を算出することができる。
【0049】
学習アルゴリズムは特に限定されず、例えば線形回帰により予測モデル512を構築してもよい。この場合の予測モデル512は線形予測を行う線形回帰モデルである。また、非線形予測を行う例えばニューラルネットワーク等のモデルを、予測モデル512としてもよい。また、予測モデル512は、過去の原水濁度と適切な凝集剤注入率から求めた相関曲線の数式であってもよいし、原水濁度と適切な凝集剤注入率との対応関係を示すテーブル等であってもよい。また、予測モデル512は、複数のモデルを組み合わせたものであってもよい。
【0050】
さらに、複数の予測モデル512を用意しておき、状況に応じてそれらを使い分けてもよい。例えば、原水の水質(例えば濁度の範囲)等に応じた複数の予測モデル512を用意しておいてもよい。この場合、予測モデル512に入力する入力データ(説明変数)をクラスタリングし、そのクラスタリング結果に応じた予測モデル512を用いればよい。これは、後述する予測モデル112についても同様である。
【0051】
対象浄水場における予測で用いられる予測モデル112用の教師データも、説明変数に目的変数が対応付けられたデータ構造である。説明変数は、対象浄水場における原水の水質データと誤差データであり、目的変数は対象浄水場における凝集剤注入の適正制御量である。
【0052】
このような教師データを複数含む学習用データセットを用いて学習することにより、対象浄水場における凝集剤注入の適正制御量を目的変数とし、対象浄水場における原水の水質データと誤差データを説明変数とした予測モデル112を構築することができる。そして、このようにして構築した予測モデル112を用いる場合、予測部102は、予測モデル112に水質データと誤差データを入力することにより適正制御量の予測値を算出することができる。
【0053】
このように、予測部102は、対象浄水場における凝集剤注入の適正制御量を目的変数とし、上流側浄水場における凝集剤注入の適正制御量の予測誤差を示す誤差データを説明変数の1つとした予測モデル112を用いて適正制御量を予測してもよい。
【0054】
上述のように、上流側浄水場における予測に影響を与えた外乱要因は、その下流で取水する対象浄水場における予測にも同様の影響を与え得る。このため、上流側浄水場における予測誤差を示す誤差データは、対象浄水場における凝集剤注入の適正制御量に相関があるデータであると考えられる。よって、誤差データを説明変数の1つとした予測モデル112を用いて予測を行うことにより、外乱要因の影響を考慮した妥当な予測結果を得ることが可能になる。
【0055】
予測モデル112を構築する際の学習アルゴリズムは特に限定されず、例えば線形回帰により予測モデル112を構築してもよい。この場合の予測モデル112は線形予測を行う線形回帰モデルである。また、非線形予測を行う例えばニューラルネットワーク等のモデルを予測モデル112としてもよい。また、予測モデル112は、複数のモデルを組み合わせたものであってもよい。
【0056】
ただし、予測部102は、上流側浄水場における凝集剤注入の適正制御量の予測に用いられたアルゴリズムと同じアルゴリズムにより対象浄水場における凝集剤注入の適正制御量を予測することが好ましい。
【0057】
これは、予測に用いるアルゴリズムが同じであれば、適正値に対する予測値のずれ方も同様になる可能性が高いためである。例えば、上流側浄水場において適正制御量よりも大きい値が予測された場合、対象浄水場においても適正制御量よりも大きい値が予測される可能性が高い。そして、対象浄水場における予測では、上記のようなずれが誤差データとして考慮される。
【0058】
よって、上流側浄水場と対象浄水場とで同じアルゴリズムを用いて凝集剤注入の適正制御量を予測する構成とすることにより、上流側浄水場と対象浄水場とで異なるアルゴリズムを用いて予測を行う場合と比べて、より精度の高い予測を行うことが可能になる。
【0059】
また、同様の理由により、予測モデル112と512の説明変数についても、誤差データの部分を除いて、できるだけ共通化しておくことが好ましい。すなわち、予測モデル112は、予測モデル512の説明変数の全てを含むことが好ましく、誤差データの部分を除いて説明変数が同じであることがより好ましい。
【0060】
例えば、
図4の例のように、予測モデル512の構築に用いる水質データを、濁度、pH、および水温の3種類としたとする。この場合、予測モデル112の構築に用いる水質データは、濁度、pH、および水温の全てを含むことが好ましく、濁度、pH、および水温の3種類とすることがより好ましい。
【0061】
〔河川水が上流側浄水場から対象浄水場まで流れる時間の考慮〕
情報処理装置1の予測部102は、河川水が上流側浄水場から対象浄水場まで流れる時間を考慮して凝集剤注入の適正制御量を予測してもよい。例えば、予測部102は、上流側浄水場におけるある時刻の予測誤差を示す誤差データを用いて予測する場合、当該ある時刻から、上流側浄水場から対象浄水場まで河川の水が流れる時間が経過した時刻の適正制御量を予測してもよい。なお、上流側浄水場から対象浄水場まで河川の水が流れる時間は、例えば上流側浄水場から対象浄水場までの流下距離を河川水の平均流速で割ることにより求めればよい。
【0062】
上記の構成によれば、上流側浄水場から対象浄水場まで河川の水が流れる時間を考慮して予測を行うので、上流側浄水場における水質や外乱の影響を適切なタイミングで反映させて妥当な値の制御量を予測することができる。
【0063】
なお、このようなタイミングの調整は、制御装置3が行うようにしてもよい。例えば、制御装置3は、情報処理装置1から適正制御量の通知を受信した後、上流側浄水場から対象浄水場まで河川の水が流れる時間が経過したタイミングで、当該適正制御量に基づく凝集剤の注入制御を行ってもよい。
【0064】
〔情報処理装置と上流側情報処理装置が実行する処理の流れ〕
情報処理装置1と上流側情報処理装置5が実行する処理(予測方法)の流れを
図5に基づいて説明する。
図5は、情報処理装置1と上流側情報処理装置5が実行する処理の一例を示すフローチャートである。なお、以下説明する処理は、水処理システム7の稼働中、所定期間毎に繰り返し行われる。
【0065】
S1からS5の処理は、上流側情報処理装置5が実行する。まず、S1では、水質データ取得部501が上流側浄水場における原水の水質を示す水質データを取得し、予測用データ511として記憶部51に記録する。次に、S2では、予測部502が、上流側浄水場における凝集剤注入の適正制御量を予測する。具体的には、予測部502は、予測用データ511を予測モデル512に入力することにより算出された値を適正制御量の予測値とする。そして、S3では、注入制御部503が、S2における適正制御量の予測結果に従って、上流側浄水場における原水への凝集剤注入制御を行う。
【0066】
S4では、誤差データ生成部504が、実際の適正制御量を特定する。例えば、誤差データ生成部504は、入力部53を介して入力された適正制御量(ジャーテストの結果や経験則に基づいて入力されたもの)を実際の適正制御量と特定してもよい。なお、S3より先にS4の処理を行ってもよい。この場合、凝集剤の注入制御では、先に特定された実際の適正制御量を用いればよい。
【0067】
S5では、誤差データ生成部504は、S2で算出された適正制御量の予測値と、S4で特定した実際の適正制御量との差を算出し、これを誤差データとして情報処理装置1に送信する。これにより、上流側情報処理装置5の処理は終了する。
【0068】
S11以降は、情報処理装置1が実行する処理である。S11では、データ取得部101が、水質データを取得し、予測用データ111として記憶部11に記録する。また、S12(データ取得ステップ)では、データ取得部101は、上述のS5で送信された誤差データを取得する。なお、S11の処理はS12と並行で行ってもよいし、S12の後で行ってもよい。
【0069】
S13(予測ステップ)では、予測部102が、S11で取得された水質データとS12で取得された誤差データを含む予測用データ111を用いて、対象浄水場における凝集剤注入の適正制御量を予測する。例えば、水質データと誤差データを説明変数とし、適正制御量を目的変数とする予測モデル112を用いる場合、予測部102は、予測モデル112に水質データと誤差データを入力することにより、適正制御量の予測値を算出する。
【0070】
S14では、予測結果通知部103が、S13の予測結果を制御装置3に通知する。以上により、情報処理装置1の処理が終了する。この後、制御装置3は、通知された上記適正制御量に基づいて凝集剤の注入制御を行う。
【0071】
〔凝集剤の注入制御をフィードバック制御により行う例〕
上述のように、上流側浄水場において、ジャーテストの結果や経験則に基づいて実際の適正制御量を特定した場合、特定した適正制御量を適用して上流側浄水場における凝集剤の注入制御を行ってもよい。また、以下説明するように、上流側浄水場における凝集剤の注入制御は、フィードバック制御により行ってもよい。
【0072】
図6は、凝集剤の注入制御をフィードバック制御により行う上流側情報処理装置5Aの構成を説明する図である。
図6には、上流側情報処理装置5Aの制御部50に含まれる各部と、上流側情報処理装置5Aの記憶部51に記憶されている各データをブロックで示している。上流側情報処理装置5Aは、制御部50に予測モデル生成部505と指標値算出部506がさらに含まれている点と、誤差データ生成部504が誤差データ生成部504Aに代わっている点を除けば上流側情報処理装置5と同様の構成である。
【0073】
また、
図6には、上流側浄水場に設けられた浄水用設備の一部についてもあわせて示している。具体的には、
図6には、河川から取水した原水を貯留する着水井、原水に凝集剤を注入して混和するための急速混和池、凝集剤が注入された原水を撹拌してフロックを形成させるためのフロック形成池、およびフロックを沈澱させる沈澱池を示している。
【0074】
予測モデル生成部505は、予測モデル512を構築する。より詳細には、予測モデル生成部505は、水質データ取得部501が取得する水質データに対し、当該水質データが示す水質の原水に対する凝集剤注入の適正制御量を正解データとして対応付けた教師データを用いた学習により予測モデル512を構築する。
【0075】
上記の教師データは、予測モデル512を構築するまでに予め用意しておく。教師データにおける適正制御量は、ジャーテストの結果等に基づいて、上流側情報処理装置5Aのユーザ等が入力してもよい。また、予測部502が予測した適正制御量の予測値を、誤差データ生成部504が生成する誤差データで補正した値を適正制御量としてもよい。この場合、上記のようにして教師データを生成する教師データ生成部を制御部50に追加して、上流側情報処理装置5Aが教師データを自動で生成することができるようにしてもよい。
【0076】
なお、予測モデル512の構築は、上流側情報処理装置5A以外の装置に行わせてもよい。この場合、予測モデル生成部505は省略すればよい。また、教師データの生成についても上流側情報処理装置5Aが行うようにしてもよいし、上流側情報処理装置5A以外の装置に行わせてもよい。
【0077】
指標値算出部506は、凝集剤の注入制御の結果の良し悪しを示す指標値を算出する。指標値は、予測部502が予測モデル512を用いて予測した適正制御量を適用した注入制御の結果の良し悪しを示すものであればよい。例えば、
図6に示すように、沈澱池でフロックを沈澱させた後の沈澱処理水(上澄み水)の濁度を指標値としてもよい。また、例えば、急速混和池における流動電流値を指標値としてもよい。さらに、例えば、フロック形成池で形成されたフロックの状態を示す指標値を用いてもよい。指標値は1種類のみ用いてもよいし、複数種類の指標値を併用してもよい。
【0078】
フロックの状態を示す指標値としては、例えば、フロックの平均面積や、フロックの形状が挙げられる。これらの指標値は、フロックを撮影した画像を解析することにより算出可能である。この他にも、例えば形成されたフロックの量を、フロックの状態を示す指標値としてもよい。
【0079】
誤差データ生成部504Aは、指標値算出部506が算出した指標値を用いて誤差データを生成する。上述のように、上記指標値は、凝集剤の注入制御の結果の良し悪しを示すから、適正制御量の予測値と実際の適正制御量の差を示す誤差データと相関がある。よって、上記指標値と誤差データとの関係を予めモデル化しておくことにより、誤差データ生成部504Aは、当該モデルを用いて、指標値算出部506が算出した指標値に応じた誤差データを生成することができる。そして、注入制御部503は、生成された誤差データを用いて、予測部502が予測した適正制御値を補正し、補正後の適正制御値を適用して凝集剤の注入制御を行う。
【0080】
また、上記と同様の理由により、上記指標値と実際の適正制御量との間にも相関があるといえる。よって、上記指標値と実際の適正制御量との関係を予めモデル化しておくことにより、誤差データ生成部504Aは、当該モデルを用いて、指標値算出部506が算出した指標値に応じた実際の適正制御量を算出することもできる。この場合、注入制御部503は、上記のようにして算出された適正制御値を適用して凝集剤の注入制御を行う。また、誤差データ生成部504Aは、予測部502が算出した予測値と、上記のようにして算出した適正制御量との差を誤差データとする。
【0081】
上流側情報処理装置5Aが実行する処理の流れを以下説明する。なお、予測モデル512は生成済みであるとする。また、適正制御量の予測値を時刻t1、t2(t2>t1)のそれぞれで算出するとする。
【0082】
まず、時刻t1において、水質データ取得部501が着水井内の原水の水質を示す水質データを取得し、これを予測用データ511として記憶部51に記憶させる。次に、予測部502が予測用データ511を予測モデル512に入力し、適正制御量の予測値を算出する。そして、注入制御部503が、上記予測値に従って急速混和池における凝集剤の注入制御を行う。この際、着水井から急速混和池に供給される原水の流量を考慮して凝集剤の注入制御を行う。例えば、適正制御量の予測値がx1(mg/L)であった場合に、流量がy1(L/min)であれば、x1/y1(mg/min)の速度で凝集剤を注入する。
【0083】
この後、指標値算出部506が指標値を算出する。指標値の算出のための計測は、時刻t1からt2の間で、上記注入制御の結果が現れるタイミングで行えばよい。次に、誤差データ生成部504Aが、指標値算出部506が算出した指標値を用いて誤差データを生成する。また、誤差データ生成部504Aは、生成した誤差データを情報処理装置1に通知する。
【0084】
時刻t2では、時刻t1と同様に、水質データ取得部501が着水井内の原水の水質を示す水質データを取得し、これを予測用データ511として記憶部51に記憶させる。次に、予測部502が予測用データ511を予測モデル512に入力し、適正制御量の予測値を算出する。
【0085】
ここで、注入制御部503は、上記予測値を誤差データで補正して制御量を決定する。例えば、予測値がx2であり、誤差データが示す誤差が+dであれば、注入制御部503は、制御量をx2+dと決定する。そして、注入制御部503は、決定した制御量で凝集剤の注入が行われるように制御する。
【0086】
〔複数の上流側浄水場における誤差データを利用する例〕
図7は、複数の上流側浄水場における誤差データを利用して対象浄水場における凝集剤注入の適正制御量を予測する水処理システム7Aの構成例を示す図である。
図7の例では、上流側浄水場と対象浄水場が取水する河川に支流が存在しており、この支流は上流側浄水場と対象浄水場との間で、上記河川に合流している。そして、この支流から取水する上流側浄水場(支流)が存在している。
【0087】
水処理システム7Aは、情報処理装置1Aを含む。情報処理装置1Aは、上述の情報処理装置1と概ね同様の構成であるが、以下説明するように複数の上流側浄水場における誤差データを用いて適正制御量を予測する点で情報処理装置1と相違している。
【0088】
また、図示は省略しているが、上流側浄水場には上流側情報処理装置5が、対象浄水場には制御装置3がそれぞれ配置されている。さらに、上流側浄水場(支流)にも上流側情報処理装置5が配置されている。これらの装置も水処理システム7Aに含まれる。
【0089】
図7の例のように上流側浄水場が複数存在する場合、情報処理装置1Aのデータ取得部101は、複数の上流側浄水場のそれぞれについて誤差データを取得する。そして、予測部102は、複数の上流側浄水場のそれぞれの誤差データを用いて、対象浄水場における凝集剤注入の適正制御量を予測する。これにより、1つの上流側浄水場の誤差データを用いる場合と比べてさらに多様な外乱要因を考慮することができる。よって、より精度の高い予測を行うことが可能になる。例えば、
図7の例では、支流の外乱因子も考慮した予測を行うことができる。
【0090】
上記のような予測を行う場合、複数の上流側浄水場のそれぞれの誤差データを説明変数として含む予測モデル112を用いればよい。なお、
図7には上流側浄水場が本流と支流の各1つである例を示しているが、誤差データの収集対象とする上流側浄水場の数、および誤差データの収集対象とする上流側浄水場が本流にあるか支流にあるかは特に限定されない。
【0091】
〔変形例〕
上記実施形態で説明した水処理システム7および7Aの装置構成は一例であり、様々な装置構成により同様の機能を有する水処理システムを構築することができる。そして、上記実施形態で説明した各処理の実行主体も一例に過ぎない。上述の各処理は、水処理システムを構成する各装置に適宜割り当てればよい。
【0092】
例えば、上流側情報処理装置5が実行する適正制御量の予測と、誤差データの生成を情報処理装置1(または1A)が行うようにしてもよい。この場合、上流側浄水場(支流も含む)に制御装置3を配置して、情報処理装置1(または1A)の予測結果に基づく凝集剤の注入制御を制御装置3に行わせればよい。
【0093】
また、例えば、制御装置3の機能を備えた情報処理装置1(または1A)を対象浄水場に配置してもよい。この場合、上流側浄水場(支流も含む)における誤差データは、クラウドを介さずに情報処理装置1(または1A)に送信してもよい。なお、水処理システム7および7Aの構成装置間における誤差データ等の各種データの伝送は、例えば、インターネット回線、携帯電話回線、またはテレメーター回線などデータ信号を伝送できる任意の伝送媒体を介して行うことができる。
【0094】
また、誤差データを用いた適正制御量の予測方法は上述の例(誤差データを説明変数とする例)に限られない。例えば、上流側浄水場の予測誤差と、対象浄水場の予測誤差との関係をモデル化しておき、当該モデルを用いて対象浄水場の予測誤差を求めてもよい。この場合、予測部102は、予測モデル112を用いて算出した予測値を、上記のようにして求めた予測誤差で補正して適正制御量とすればよい。
【0095】
〔ソフトウェアによる実現例〕
情報処理装置1(特に制御部10に含まれる各部)およびは、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0096】
後者の場合、情報処理装置1は、各機能を実現するソフトウェアである適正制御量の予測プログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記予測プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記予測プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。これは、情報処理装置1A、上流側情報処理装置5、および上流側情報処理装置5Aについても同様である。
【0097】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0098】
1、1A 情報処理装置
101 データ取得部
112 予測モデル
102 予測部
3 制御装置
7、7A 水処理システム