(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】修飾型導電性複合体含有液の製造方法、及び導電性積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/12 20060101AFI20240412BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20240412BHJP
C08L 25/18 20060101ALI20240412BHJP
C08L 65/00 20060101ALI20240412BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20240412BHJP
C08K 5/1515 20060101ALI20240412BHJP
C08K 5/04 20060101ALI20240412BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C08L101/12
H01B13/00 Z
C08L25/18
C08L65/00
C08K5/17
C08K5/1515
C08K5/04
B05D7/24 303A
B05D7/24 302U
B05D7/24 302J
B05D7/24 302R
(21)【出願番号】P 2020205847
(22)【出願日】2020-12-11
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】松林 総
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-137815(JP,A)
【文献】特開2019-008912(JP,A)
【文献】特開2019-099606(JP,A)
【文献】特開2019-214636(JP,A)
【文献】特開2005-029678(JP,A)
【文献】特開2020-111650(JP,A)
【文献】特許第7269845(JP,B2)
【文献】特開2022-092880(JP,A)
【文献】特開2022-092872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
H01B 13/00
B05D 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と水系分散媒とを含有する導電性高分子水系分散液に、有機化合物を混合し、得られた混合液中で前記導電性複合体と前記有機化合物が反応してなる修飾型導電性複合体を析出させる工程と、
析出した前記修飾型導電性複合体を前記混合液の下層へ沈降させる工程と、
前記混合液の上層の溶液を除去した後、残りの前記下層に有機溶剤を添加する工程と、
を有する修飾型導電性複合体含有液の製造方法。
【請求項2】
π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と水系分散媒とを含有する導電性高分子水系分散液に、有機化合物を混合し、得られた混合液中で前記導電性複合体と前記有機化合物が反応してなる修飾型導電性複合体を析出させる工程と、
析出した前記修飾型導電性複合体を前記混合液の上層に浮遊させる工程と、
前記混合液の下層の溶液を除去した後、残りの前記上層に有機溶剤を添加する工程と、
を有する修飾型導電性複合体含有液の製造方法。
【請求項3】
前記有機化合物がアミン化合物を含む、請求項1又は2に記載の修飾型導電性複合体含有液の製造方法。
【請求項4】
前記有機化合物が第四級アンモニウム化合物を含む、請求項1又は2に記載の修飾型導電性複合体含有液の製造方法。
【請求項5】
前記有機化合物がエポキシ化合物を含む、請求項1又は2に記載の修飾型導電性複合体含有液の製造方法。
【請求項6】
前記有機化合物がアミン化合物若しくは第四級アンモニウム化合物、及びエポキシ化合物を含む、請求項1又は2に記載の修飾型導電性複合体含有液の製造方法。
【請求項7】
前記有機溶剤がアルコール系溶剤、ケトン系溶剤又はエステル系溶剤である、請求項1~6の何れか一項に記載の修飾型導電性複合体含有液の製造方法。
【請求項8】
前記π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)であるか、又は、前記ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸である、請求項1~7の何れか一項に記載の修飾型導電性複合体含有液の製造方法。
【請求項9】
バインダ成分をさらに添加する工程を有する、請求項1~8の何れか一項に記載の修飾型導電性複合体含有液の製造方法。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載の製造方法で修飾型導電性複合体含有液を得る工程と、
基材の少なくとも一方の面に、前記修飾型導電性複合体含有液を塗工する工程と、を含む、導電性積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、π共役系導電性高分子を含む修飾型導電性複合体含有液の製造方法、及び導電性積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
主鎖がπ共役系で構成されているπ共役系導電性高分子は、アニオン基を有するポリアニオンがドープすることによって導電性複合体を形成し、水に対する分散性が生じる。導電性複合体を含有する導電性高分子含有液をガラス基材やフィルム基材等に塗工することにより、導電層を備えた導電性積層体を製造することができる。
導電性高分子含有液の基材に対する濡れ性を高めること、塗膜の乾燥を速めること、疎水性のバインダ成分を添加すること等の目的で、導電性高分子含有液の溶剤として有機溶剤を用いる場合がある。この場合、水分散性の導電性複合体にアミン化合物やエポキシ化合物を反応させて、疎水化した導電性複合体(修飾型導電性複合体ということがある。)を得る必要がある。例えば、特許文献1には、水系分散媒に含まれる導電性複合体にエポキシ化合物を反応させて、修飾型導電性複合体を反応液中に析出させた後、濾過によって修飾型導電性複合体を分取する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、環式エポキシ化合物の使用により導電性を向上できることが開示されている。しかし、本発明者は、環式エポキシ化合物の使用に限らず、さらには導電性複合体に反応させる有機化合物の種類によらず、製造工程の改良によって導電性を向上させることを鋭意検討し、本発明を完成させた。
【0005】
本発明は、導電性に優れた導電層を形成できる修飾型導電性複合体含有液の製造方法、及びこれを用いた導電性積層体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と水系分散媒とを含有する導電性高分子水系分散液に、有機化合物を混合し、得られた混合液中で前記導電性複合体と前記有機化合物が反応してなる修飾型導電性複合体を析出させる工程と、析出した前記修飾型導電性複合体を前記混合液の下層へ沈降させる工程と、前記混合液の上層の溶液を除去した後、残りの前記下層に有機溶剤を添加する工程と、を有する修飾型導電性複合体含有液の製造方法。
[2]π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と水系分散媒とを含有する導電性高分子水系分散液に、有機化合物を混合し、得られた混合液中で前記導電性複合体と前記有機化合物が反応してなる修飾型導電性複合体を析出させる工程と、析出した前記修飾型導電性複合体を前記混合液の上層に浮遊させる工程と、前記混合液の下層の溶液を除去した後、残りの前記上層に有機溶剤を添加する工程と、を有する修飾型導電性複合体含有液の製造方法。
[3]前記有機化合物がアミン化合物を含む、[1]又は[2]に記載の修飾型導電性複合体含有液の製造方法。
[4]前記有機化合物が第四級アンモニウム化合物を含む、[1]又は[2]に記載の修飾型導電性複合体含有液の製造方法。
[5]前記有機化合物がエポキシ化合物を含む、[1]又は[2]に記載の修飾型導電性複合体含有液の製造方法。
[6]前記有機化合物がアミン化合物若しくは第四級アンモニウム化合物、及びエポキシ化合物を含む、[1]又は[2]に記載の修飾型導電性複合体含有液の製造方法。
[7]前記有機溶剤がアルコール系溶剤、ケトン系溶剤又はエステル系溶剤である、[1]~[6]の何れか一項に記載の修飾型導電性複合体含有液の製造方法。
[8]前記π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)であるか、又は、前記ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸である、[1]~[7]の何れか一項に記載の修飾型導電性複合体含有液の製造方法。
[9]バインダ成分をさらに添加する工程を有する、[1]~[8]の何れか一項に記載の修飾型導電性複合体含有液の製造方法。
[10][1]~[9]の何れか一項に記載の製造方法で修飾型導電性複合体含有液を得る工程と、基材の少なくとも一方の面に、前記修飾型導電性複合体含有液を塗工する工程と、を含む、導電性積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、導電性複合体と反応してこれを疎水化する有機化合物として従来知られている、アミン化合物、第四級アンモニウム化合物、エポキシ化合物の種類によらず、所望の有機化合物との反応により得た修飾型導電性複合体の導電性を損なわずに、目的の修飾型導電性複合体含有液を製造することができる。従来は反応液から濾過によって修飾型導電性複合体を固体状態で分取していたが、本発明では固体状態の修飾型導電性複合体を分散媒から分離せずに、溶液中に浮遊又は沈降した状態で溶媒置換を行うことにより、従来よりも優れた導電性を呈する修飾型導電性複合体を得ることができる。
本発明の導電性積層体の製造方法によれば、導電性に優れた導電層を備えた導電性積層体を容易に形成することができる。
【0008】
本発明はSDGs目標12「つくる責任 つかう責任」に資すると考えられる。
【0009】
本明細書及び特許請求の範囲において、「~」で示す数値範囲の下限値及び上限値はその数値範囲に含まれるものとする。
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪修飾型導電性複合体含有液の製造方法≫
本発明の第一態様は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と水系分散媒とを含有する導電性高分子水系分散液に、有機化合物を混合し、得られた混合液中で前記導電性複合体と前記有機化合物が反応してなる修飾型導電性複合体を析出させる工程を含む、修飾型導電性複合体含有液の製造方法である。
【0011】
第一実施形態は、前記混合液中に析出した前記修飾型導電性複合体を前記混合液の下層へ沈降させる工程と、前記混合液の上層の溶液を除去した後、残りの前記下層に有機溶剤を添加する工程と、を有する。
【0012】
第二実施形態は、前記混合液中に析出した前記修飾型導電性複合体を前記混合液の上層に浮遊させる工程と、前記混合液の下層の溶液を除去した後、残りの前記上層に有機溶剤を添加する工程と、を有する。
【0013】
前記有機化合物としては、前記ポリアニオンが有するドープに関与しない余剰のアニオン基に反応して、元のアニオン基よりも炭素数の多い置換基を形成するものであればよく、例えば、アミン化合物、第四級アンモニウム化合物、及びエポキシ化合物から選択される1種以上が挙げられる。
【0014】
本態様の修飾型導電性複合体含有液において、修飾型導電性複合体は、分散状態であってもよいし、溶解状態であってもよい。本明細書において、特に明記しない限り、分散状態と溶解状態とを区別せず、単に分散状態ということがある。
【0015】
[導電性高分子水系分散液]
本態様で用いる導電性高分子水系分散液は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、水と、を含有する。この水系分散液は、液中の導電性複合体が分散状態にある範囲で、有機溶剤を含んでいても構わない。
【0016】
前記ポリアニオンはπ共役系導電性高分子にドープし、導電性を有する導電性複合体を形成している。前記ポリアニオンにおいては、一部のアニオン基のみがπ共役系導電性高分子にドープしており、ドープに関与しない余剰のアニオン基を有する。余剰のアニオン基は親水基であるため、導電性複合体は水に対する分散性を有する。
【0017】
本態様で用いる導電性高分子水系分散液において、導電性複合体は分散状態にある。分散状態と析出状態の区別は、簡便には目視で行うことができる。分散状態の分散液の透明性は高く、分散液中に固体の浮遊物は見当たらない。一方、析出状態の液の透明性は低く、液中に固体物が観察される。通常、分散状態の導電性複合体は容易には沈殿せず、例えば12時間静置したとしても、沈殿は生じ難い。一方、析出物は、沈降し易く、例えば12時間程度静置することにより、沈殿を生じ易い。
【0018】
本態様で用いる導電性高分子水系分散液を、保留粒子径7μmのフィルターに通すと、分散状態の導電性複合体は分散媒とともにフィルターを通過する。一方、析出状態の導電性複合体は上記フィルターに捕捉され得る。
ここで、ろ紙の保留粒子径は目の粗さの目安であり、JIS P 3801〔ろ紙(化学分析用)〕で規定された硫酸バリウムなどを自然ろ過したときの漏えい粒子径により求められる。
【0019】
(π共役系導電性高分子)
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であればよく、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
【0020】
ポリチオフェン系導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3-エチルチオフェン)、ポリ(3-プロピルチオフェン)、ポリ(3-ブチルチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、ポリ(3-デシルチオフェン)、ポリ(3-ドデシルチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルチオフェン)、ポリ(3-ブロモチオフェン)、ポリ(3-クロロチオフェン)、ポリ(3-ヨードチオフェン)、ポリ(3-シアノチオフェン)、ポリ(3-フェニルチオフェン)、ポリ(3,4-ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4-ジブチルチオフェン)、ポリ(3-ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3-メトキシチオフェン)、ポリ(3-エトキシチオフェン)、ポリ(3-ブトキシチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3-デシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-メトキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-エトキシチオフェン)、ポリ(3-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルチオフェン)が挙げられる。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N-メチルピロール)、ポリ(3-メチルピロール)、ポリ(3-エチルピロール)、ポリ(3-n-プロピルピロール)、ポリ(3-ブチルピロール)、ポリ(3-オクチルピロール)、ポリ(3-デシルピロール)、ポリ(3-ドデシルピロール)、ポリ(3,4-ジメチルピロール)、ポリ(3,4-ジブチルピロール)、ポリ(3-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルピロール)、ポリ(3-ヒドロキシピロール)、ポリ(3-メトキシピロール)、ポリ(3-エトキシピロール)、ポリ(3-ブトキシピロール)、ポリ(3-ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2-メチルアニリン)、ポリ(3-イソブチルアニリン)、ポリ(2-アニリンスルホン酸)、ポリ(3-アニリンスルホン酸)が挙げられる。
これらのπ共役系導電性高分子のなかでも、導電性、透明性、耐熱性に優れることから、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
導電性複合体に含まれるπ共役系導電性高分子は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0021】
(ポリアニオン)
ポリアニオンは、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、またはカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、スルホ基を有するポリアクリル酸エステル、スルホ基を有するポリメタクリル酸エステル(例えば、ポリ(4-スルホブチルメタクリレート、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリメタクリロイルオキシベンゼンスルホン酸)、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸等のスルホ基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸等のカルボキシ基を有する高分子が挙げられる。ポリアニオンは、単一のモノマーが重合した単独重合体であってもよいし、2種以上のモノマーが重合した共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、導電性をより高くできることから、スルホ基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
前記ポリアニオンは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンの質量平均分子量は2万以上100万以下が好ましく、10万以上50万以下がより好ましい。質量平均分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィを用いて測定し、プルラン換算で求めた質量基準の平均分子量である。
【0022】
ポリアニオンが有する全てのアニオン基の個数を100モル%としたとき、余剰のアニオン基は、30モル%以上90モル%以下が好ましく、45モル%以上75モル%以下がより好ましい。
【0023】
導電性複合体中の、ポリアニオンの含有割合は、π共役系導電性高分子100質量部に対して1質量部以上1000質量部以下の範囲であることが好ましく、10質量部以上700質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上500質量部以下の範囲であることがさらに好ましい。ポリアニオンの含有割合が前記下限値以上であれば、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が強くなる傾向にあり、導電性がより高くなる。一方、ポリアニオンの含有量が前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子を充分に含有させることができるので、充分な導電性を確保できる。
【0024】
<導電性高分子水系分散液の製造方法>
π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体が水系分散媒に分散されてなる導電性高分子水系分散液は、例えば、ポリアニオンの水溶液中でπ共役系導電性高分子を形成するモノマーを化学酸化重合させて得ることができる。また、市販の導電性高分子水分散液を使用しても構わない。
【0025】
前記化学酸化重合は、公知の触媒及び酸化剤を用いて行うことができる。触媒としては、例えば、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。酸化剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩が挙げられる。酸化剤は、還元された触媒を元の酸化状態に戻すことができる。
【0026】
本態様の導電性高分子水系分散液に含まれる導電性複合体の含有量としては、水系分散液の総質量に対して、例えば、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、1.0質量%以上5.0質量%以下がより好ましい。
上記範囲であると、前記有機化合物との反応が良好となり、修飾型導電性複合体の析出が容易になる。
【0027】
本態様で用いる導電性高分子水系分散液には、導電性複合体が分散状態にある範囲において、有機溶剤を含んでいてもよい。有機溶剤の含有量は少ない程好ましく、実質的に含まれないことがより好ましく、例えば、水系分散液の総質量に対して10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
本態様で用いる導電性高分子水系分散液が含有してもよい有機溶剤としては、水に対する混和性が高いものが好ましく、例えば、後述のアルコール系溶剤が挙げられる。
なお、本明細書において、「導電性高分子水分散液」の用語は、分散媒として水を含み、有機溶剤を実質的に含んでいないことを明示する用語である。
【0028】
[混合液の調製]
導電性高分子水系分散液と、有機化合物を混合して混合液を得る方法は特に制限されず、例えば導電性高分子水系分散液を撹拌しながら前記有機化合物を徐々に添加する方法が挙げられる。この添加方法であると、導電性高分子水系分散液における有機化合物濃度が局所的に急上昇することを防止して、修飾型導電性複合体を穏やかに析出させることができる。
【0029】
前記有機化合物を添加する前、添加と同時又は添加した後には、有機溶剤を添加してもよい。有機溶剤としては、水溶性有機溶剤が好ましい。ここで、水溶性有機溶剤とは、温度20℃において水100gに対して溶解量が1g以上の有機溶剤である。水溶性有機溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤が挙げられる。添加する有機溶剤は、1種類でもよいし、2種以上でもよい。
【0030】
導電性高分子水系分散液にエポキシ化合物の1種以上を添加すると、エポキシ化合物のエポキシ基が、ポリアニオンの一部のアニオン基と反応する。これにより後述する置換基(A)が形成されて導電性複合体が疎水性の修飾型導電性複合体になるので、水系分散液中での安定的な分散が困難になり、析出する。
エポキシ化合物の添加の際には反応促進のために加熱してよい。加熱温度は、40℃以上100℃以下とすることが好ましい。
エポキシ化合物の添加量は、導電性複合体100質量部に対して、10質量部以上10000質量部以下が好ましく、100質量部以上5000質量部以下がより好ましく、500質量部以上3000質量部以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、導電性複合体の疎水性が充分に高くなり、有機溶剤に対する分散性が向上する。
上記範囲の上限値以下であると、未反応のエポキシ化合物による導電性低下を防止できる。
【0031】
導電性高分子水系分散液にアミン化合物の1種以上を添加すると、アミン化合物がポリアニオンの一部のアニオン基と反応する。これにより後述する置換基(B)が形成されて導電性複合体が疎水性の修飾型導電性複合体になるので、水系分散液中での安定的な分散が困難になり、析出する。
アミン化合物の添加量は、導電性複合体100質量部に対して、1質量部以上10000質量部以下が好ましく、10質量部以上5000質量部以下がより好ましく、50質量部以上1000質量部以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、導電性複合体の疎水性が充分に高くなり、有機溶剤に対する分散性が向上する。
上記範囲の上限値以下であると、未反応のアミン化合物による導電性低下を防止できる。
【0032】
導電性高分子水系分散液に第四級アンモニウム化合物の1種以上を添加すると、第四級アンモニウム化合物がポリアニオンの一部のアニオン基と反応する。これにより後述する置換基(C)が形成されて導電性複合体が疎水性の修飾型導電性複合体になるので、水系分散液中での安定的な分散が困難になり、析出する。
第四級アンモニウム化合物の添加量は、導電性複合体100質量部に対して、1質量部以上10000質量部以下が好ましく、10質量部以上5000質量部以下がより好ましく、50質量部以上1000質量部以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、導電性複合体の疎水性が充分に高くなり、有機溶剤に対する分散性が向上する。
上記範囲の上限値以下であると、未反応の第四級アンモニウム化合物による導電性低下を防止できる。
第四級アンモニウム化合物は、アミン化合物と類似した反応機構で、アミン化合物よりも少ない添加量で、導電性複合体に対して良好な反応性を示す。第四級アンモニウム化合物によって修飾された導電性複合体を含む導電層の導電性は、アミン化合物によって修飾された場合よりも優れる傾向がある。
【0033】
導電性高分子水系分散液に、エポキシ化合物と、アミン化合物若しくは第四級アンモニウム化合物との両方を添加する場合、その添加順序は特に限定されない。合成中間体(反応中間体)の取り扱いが容易であることから、導電性高分子水系分散液にエポキシ化合物を添加して、ポリアニオンの一部のアニオン基と反応させた後、アミン化合物若しくは第四級アンモニウム化合物を添加してポリアニオンの他部のアニオン基と反応させることが好ましい。
【0034】
(置換基A)
前記ポリアニオンとエポキシ化合物との反応によって形成される置換基(A)は、下記式(A1)で示される基、又は下記式(A2)で表される基であると推測される。
【0035】
【0036】
[式(A1)中、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、又は任意の置換基である。]
【0037】
【0038】
[式(A2)中、mは2以上の整数であり、複数のR5、複数のR6、複数のR7、及び複数のR8はそれぞれ独立に、水素原子、又は任意の置換基であり、複数のR5は同一でも異なっていてもよく、複数のR6は同一でも異なっていてもよく、複数のR7は同一でも異なっていてもよく、複数のR8は同一でも異なっていてもよい。]
【0039】
式(A1)及び(A2)において、左端の結合手は、置換基(A)が、アニオン基のプロトンと置換していることを表す。置換されるプロトンを有するアニオン基として、例えば、「-SO3H」のように酸素原子に結合した活性なプロトンを有するアニオン基が挙げられる。
【0040】
式(A1)において、R1、R2、R3、及びR4の任意の置換基としては、置換基を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基等が挙げられる。R1とR3とは結合して置換基を有していてもよい環を形成していてもよい。例えば、R1とR3とが前記炭化水素基であり、R1の1価の炭化水素基の任意の1つの水素原子を除いた2価の炭化水素基と、R3の1価の炭化水素基の任意の1つの水素原子を除いた2価の炭化水素基とが、前記水素原子が除かれた炭素原子同士で結合して環を形成する場合が挙げられる。
式(A2)において、R5、R6、R7、及びR8の任意の置換基としては、置換基を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基等が挙げられる。R5とR7とは結合して置換基を有していてもよい環を形成していてもよい。環を形成する例は、上記と同様である。
本明細書において、「置換基を有していてもよい」とは、水素原子(-H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(-CH2-)を2価の基で置換する場合との両方を含む。
置換基としての1価の基としては、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、トリアルコキシシリル基(トリメトキシシリル基等)、等が挙げられる。
置換基としての2価の基としては、酸素原子(-O-)、-C(=O)-、-C(=O)-O-等が挙げられる。
mは2以上の整数であり、2~100が好ましく、2~50がより好ましく、2~25がさらに好ましい。mが上記下限値以上であると、導電性複合体の疎水性が充分に高くなる。mが前記上限値以下であると、疎水性が高くなりすぎたり、導電性が低下したりするのを抑制することができる。
【0041】
エポキシ化合物は、1分子中にエポキシ基を1つ以上有する化合物(エポキシ基含有化合物)である。凝集又はゲル化を防止する点では、エポキシ化合物は、1分子中にエポキシ基を1つ有する化合物が好ましい。
前記導電性複合体と反応するエポキシ化合物は1種類でもよいし、2種以上でもよい。
【0042】
1分子中にエポキシ基を1つ有する単官能エポキシ化合物としては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、2,3-ブチレンオキサイド、イソブチレンオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシヘプタン、1,2-エポキシペンタン、1,2-エポキシオクタン、1,2-エポキシデカン、1,3-ブタジエンモノオキサイド、1,2-エポキシテトラデカン、グリシジルメチルエーテル、1,2-エポキシオクタデカン、1,2-エポキシヘキサデカン、エチルグリシジルエーテル、グリシジルイソプロピルエーテル、tert-ブチルグリシジルエーテル、1,2-エポキシエイコサン、2-(クロロメチル)-1,2-エポキシプロパン、グリシドール、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、ブチルグリシジルエーテル、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシ-9-デカン、2-(クロロメチル)-1,2-エポキシブタン、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-1H,1H,2H,2H,3H,3H-トリフルオロブタン、アリルグリシジルエーテル、テトラシアノエチレンオキサイド、グリシジルブチレート、1,2-エポキシシクロオクタン、グリシジルメタクリレート、1,2-エポキシシクロドデカン、1-メチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシシクロペンタデカン、1,2-エポキシシクロペンタン、1,2-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシ-1H,1H,2H,2H,3H,3H-ヘプタデカフルオロブタン、3,4-エポキシテトラヒドロフラン、グリシジルステアレート、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、エポキシコハク酸、グリシジルフェニルエーテル、イソホロンオキサイド、α-ピネンオキサイド、2,3-エポキシノルボルネン、ベンジルグリシジルエーテル、ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、3-[2-(パーフルオロヘキシル)エトキシ]-1,2-エポキシプロパン、1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチル-3-(3-グリシジルオキシプロピル)トリシロキサン、9,10-エポキシ-1,5-シクロドデカジエン、4-tert-ブチル安息香酸グリシジル、2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン、2-tert-ブチル-2-[2-(4-クロロフェニル)]エチルオキシラン、スチレンオキサイド、グリシジルトリチルエーテル、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-フェニルプロピレンオキサイド、コレステロール-5α,6α-エポキシド、スチルベンオキサイド、p-トルエンスルホン酸グリシジル、3-メチル-3-フェニルグリシド酸エチル、N-プロピル-N-(2,3-エポキシプロピル)ペルフルオロ-n-オクチルスルホンアミド、(2S,3S)-1,2-エポキシ-3-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-4-フェニルブタン、3-ニトロベンゼンスルホン酸(R)-グリシジル、3-ニトロベンゼンスルホン酸-グリシジル、パルテノリド、N-グリシジルフタルイミド、エンドリン、デイルドリン、4-グリシジルオキシカルバゾール、7,7-ジメチルオクタン酸[オキシラニルメチル]、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、炭素数10~16の高級アルコールグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0043】
前記高級アルコールグリシジルエーテルとしては、炭素数10~16の高級アルコールグリシジルエーテルの1種以上が好ましく、炭素数12~14の高級アルコールグリシジルエーテルの1種以上がより好ましく、C12(炭素数12)高級アルコールグリシジルエーテル及びC13(炭素数13)高級アルコールグリシジルエーテルのうち少なくとも1種がさらに好ましい。
【0044】
1分子中にエポキシ基を2つ以上有する多官能エポキシ化合物としては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,7-オクタジエンジエポキシド、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2:3,4-ジエポキシブタン、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、イソシアヌル酸トリグリシジル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,2:3,4-ジエポキシブタン、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトール系ポリグリシジルエーテル、エチレンオキシドラウリルアルコールグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0045】
エポキシ化合物は、有機溶剤への分散性が高くなることから、分子量が50以上2000以下であることが好ましい。また、低極性の炭化水素系溶剤、エステル系溶剤への分散性が高くなることから、エポキシ化合物は、炭素数が4以上120以下のものが好ましく、7以上100以下のものがより好ましく、10以上80以下のものがさらに好ましく、15以上50以下のものが特に好ましい。
【0046】
(置換基B)
前記ポリアニオンとアミン化合物との反応によって形成される置換基(B)は、下記式(B)で表される基であると推測される。
【0047】
-HN+R11R12R13 ・・・(B)
[式(B)中、R11~R13はそれぞれ独立に、水素原子、又は置換基を有してもよい炭化水素基であり、ただし、R11~R13のうち少なくとも1つは置換基を有してもよい炭化水素基である。]
【0048】
置換基(B)において、左端の結合手は、アニオン基の負電荷と、アミン化合物の正電荷とが結合していることを表す。負に荷電し得るアニオン基として、例えば「-SO3
-」のように、酸素原子に活性なプロトンが結合したアニオン基が挙げられる。
【0049】
化学式(B)におけるR11~R13は水素原子、又は置換基を有していてもよい炭化水素基である。化学式(B)におけるR11~R13は後述するアミン化合物に由来する置換基である。
化学式(B)における炭化水素基は、置換基を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。
脂肪族炭化水素基の置換基としては、フェニル基、水酸基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基の置換基としては、炭素数1~5のアルキル基、水酸基等が挙げられる。
【0050】
前記アミン化合物は、第一級アミン、第二級アミン及び第三級アミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である。前記導電性複合体と反応するアミン化合物は1種類でもよいし、2種以上でもよい。
第一級アミンとしては、例えば、アニリン、トルイジン、ベンジルアミン、エタノールアミン等が挙げられる。
第二級アミンとしては、例えば、ジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、ジナフチルアミン等が挙げられる。
第三級アミンとしては、例えば、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、トリナフチルアミン等が挙げられる。
前記アミン化合物のうち、本態様の修飾型導電性複合体含有液を容易に製造できることから、第三級アミンが好ましく、トリオクチルアミン及びトリブチルアミンの少なくとも一方がより好ましい。
【0051】
有機溶剤への分散性、特に、低極性の炭化水素系溶剤、エステル系溶剤への分散性が高くなることから、アミン化合物は、窒素原子上に炭素数が4以上の置換基を有することが好ましく、6以上の置換基を有することがより好ましく、窒素原子上に炭素数が8以上の置換基を有することがさらに好ましい。
【0052】
修飾型導電性複合体が、置換基(A)及び置換基(B)を有する場合、[置換基(A)]:[置換基(B)]で表される質量比(以下、A/B比ともいう)は、10:90~90:10が好ましく、20:80~80:20がより好ましく、25:75~75:25がさらに好ましい。A/B比が上記範囲内であると、分散性、導電性のバランスを取りやすくなる。なお、[置換基(A)]の質量は、[(エポキシ化合物と導電性複合体とを反応させて得られる反応物Aの質量)-(エポキシ化合物と反応させる前の導電性複合体の質量)]で算出することができる。また、[置換基(B)が結合したアニオン基]の質量は、[(前記反応物Aとアミン化合物とを反応させて得られる反応物Bの質量)-(前記反応物Aの質量)]から算出することができる。
【0053】
(置換基C)
前記ポリアニオンと第四級アンモニウム化合物との反応によって形成される置換基(C)は、下記式(C)で表される基であると推測される。
【0054】
-N+R11R12R13R14 ・・・(C)
[式(C)中、R11~R14はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい炭化水素基である。]
【0055】
置換基(C)において、左端の結合手は、アニオン基の負電荷と、第四級アンモニウムカチオンの正電荷とが結合していることを表す。負に荷電し得るアニオン基として、例えば「-SO3
-」のように、酸素原子に活性なプロトンが結合したアニオン基が挙げられる。
【0056】
化学式(C)におけるR11~R14は置換基を有していてもよい炭化水素基である。化学式(C)におけるR11~R14は第四級アンモニウム化合物に由来する置換基である。
化学式(C)における炭化水素基は、置換基を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。
脂肪族炭化水素基の置換基としては、フェニル基、水酸基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基の置換基としては、炭素数1~5のアルキル基、水酸基等が挙げられる。
【0057】
有機溶剤への分散性が高くなることから、第四級アンモニウム化合物は、窒素原子上に炭素数が4以上の置換基を有することが好ましく、6以上の置換基を有することがより好ましく、窒素原子上に炭素数が8以上の置換基を有することがさらに好ましい。この窒素原子上の置換基の炭素数の上限値は特に制限されず、溶剤への溶解性や反応性を考慮して、例えば、50以下が好ましく、40以下がより好ましく、30以下がさらに好ましい。
また、第四級アンモニウム化合物が有する前記R11~R14の合計の炭素数は、8~44が好ましく、12~40がより好ましく、16~36がさらに好ましい。
前記窒素原子上の各置換基の炭素数の数は同じでも良いし、異なっていてもよい。
【0058】
第四級アンモニウム化合物の具体例としては、テトラ-n-オクチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラフェニルアンモニウム塩、テトラベンジルアンモニウム塩、テトラナフチルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩が挙げられる。アンモニウムカチオンのカウンターアニオンとしては、例えば、臭素イオン、塩素イオン等のハロゲンイオンやヒドロキシイオンが挙げられる。
【0059】
修飾型導電性複合体が置換基(A)及び置換基(C)を有する場合、[置換基(A)]:[置換基(C)]で表される質量比(以下、A/C比ともいう)は、10:90~90:10が好ましく、20:80~80:20がより好ましく、25:75~75:25がさらに好ましい。A/C比が上記範囲内であると、分散性、導電性のバランスを取りやすくなる。なお、[置換基(A)]の質量は、[(エポキシ化合物と導電性複合体とを反応させて得られる反応物Aの質量)-(エポキシ化合物と反応させる前の導電性複合体の質量)]で算出することができる。また、[置換基(C)が結合したアニオン基]の質量は、[(前記反応物Aと第四級アンモニウム化合物とを反応させて得られる反応物Cの質量)-(前記反応物Aの質量)]から算出することができる。
【0060】
以上の置換基(A)~(C)の何れか1種以上を有する修飾型導電性複合体中の、ポリアニオンの含有割合は、π共役系導電性高分子100質量部に対して1質量部以上1000質量部以下の範囲であることが好ましく、10質量部以上700質量部以下がより好ましく、100質量部以上500質量部以下がさらに好ましい。ポリアニオンの含有割合が前記下限値以上であれば、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が強くなる傾向にあり、導電性がより高くなる。一方、ポリアニオンの含有量が前記上限値以下であれば、ドープに関与しないアニオン基の量、すなわち置換基(A)~(C)の量が適当となり、有機溶剤に対する分散性が高まる。
【0061】
[修飾型導電性複合体の析出、沈降、浮遊]
前記混合液中に修飾型導電性複合体を析出させる方法は特に制限されず、前記混合液を静置するだけで析出させることができる。また、完全に静置させる必要はなく、穏やかに攪拌しながら析出させてもよい。
前記混合液中に析出した修飾型導電性複合体は、前記混合液を穏やかに保つことによって、自然に、前記混合液の下層に沈降するか、前記混合液の上層に浮遊する。沈降及び浮遊が生じるメカニズムの詳細は未解明であるが、生成した修飾型導電性複合体の比重と混合液の比重との関係性が影響していると考えられる。
【0062】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「修飾型導電性複合体を混合液中で沈降させること」に、「混合液を遠心分離処理して、修飾型導電性複合体のペレットを容器の底に形成すること」は含まれない。
【0063】
前記有機化合物としてエポキシ化合物を用いた場合、形成された修飾型導電性複合体は前記混合液の下層に沈降することが多い。
前記有機化合物としてアミン化合物を用いた場合、形成された修飾型導電性複合体は前記混合液の上層に浮遊することが多い。
前記有機化合物として第四級アンモニウム化合物を用いた場合、形成された修飾型導電性複合体は前記混合液の下層に沈降することが多い。
前記有機化合物としてエポキシ化合物及びアミン化合物を用いた場合、形成された修飾型導電性複合体は前記混合液の下層に沈降することが多い。
【0064】
修飾型導電性複合体が前記混合液の下層に沈降した場合、その混合液の上層には修飾型導電性複合体が殆ど含まれない。この上層を吸引やデカンテーション等で除去することにより、析出した修飾型導電性複合体の濃度が高まり、体積が減少した残留液が得られる。
【0065】
修飾型導電性複合体が前記混合液の上層に浮遊した場合、その混合液の下層には修飾型導電性複合体が殆ど含まれない。この下層を吸引や排出等で除去することにより、析出した修飾型導電性複合体の濃度が高まり、体積が減少した残留液が得られる。
【0066】
得られた残留液には、導電性高分子水系分散液に由来する水分が含まれている。修飾型導電性複合体の分散性を高める観点から、前記残留液に含まれる水分は少ないことが好ましい。そこで、前記残留液に有機溶剤を添加して混合液(第二混合液)を得た後、これを穏やかに保つと、再び修飾型導電性複合体を混合液の下層に沈降又は上層に浮遊させることができる。この混合液のうち、修飾型導電性複合体を含まない部分を前述と同様に除去することにより、析出した修飾型導電性複合体の濃度が高まり、水分含有量が低減し、体積が減少した残留液が得られる。ここで説明した、残留液に有機溶剤を添加して再び修飾型導電性複合体を沈降又は浮遊させる「溶媒置換方法」は1回に限られず、2回以上繰り返してもよい。
【0067】
前記溶媒置換方法により、水分含有量が分散媒の総質量に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下となった残留液に、任意の有機溶剤を添加することにより、目的の修飾型導電性複合体含有液が得られる。
得られた修飾型導電性複合体含有液における修飾型導電性複合体の分散性を高める目的で、高圧ホモジナイザー等の分散機を使用して分散処理を行うことが好ましい。
【0068】
目的の修飾型導電性複合体含有液の総質量に対する、修飾型導電性複合体の含有量は、例えば、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上2質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上1質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲の濃度であると、修飾型導電性複合体の分散性を充分に高めることができる。
【0069】
[分散媒]
本態様で製造する修飾型導電性複合体含有液に含まれる分散媒は、有機溶剤を含む。前記分散媒の総質量に対する前記有機溶剤の含有量は、70質量%以上100質量%以下が好ましく、80質量%以上100質量%以下がより好ましく、90質量%以上100質量%以下がさらに好ましい。
【0070】
<有機溶剤>
前記混合液に添加する有機溶剤、前記残留液に添加する有機溶剤、及び前記修飾型導電性複合体含有液に含まれる有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤、窒素原子含有化合物系溶剤等が挙げられる。前記有機溶剤は1種類でもよいし、2種以上でもよい。
【0071】
前記有機溶剤は水溶性有機溶剤であってもよいし、非水溶性有機溶剤であってもよい。
ここで、水溶性有機溶剤は、20℃の水100gに対する溶解量が1g以上の有機溶剤であり、非水溶性有機溶剤は、20℃の水100gに対する溶解量が1g未満の有機溶剤である。水溶性有機溶剤としては、アルコール系溶剤から選択される1種以上が好ましい。
【0072】
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、アリルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等の一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール等の二価アルコールが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
エステル系溶剤及び炭化水素系溶剤の例は、後述する。
窒素原子含有化合物系溶剤としては、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
上記に分類されない溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0073】
(エステル系溶剤)
エステル系溶剤は、エステル基(-C(=O)-O-)を有するエステル基含有化合物である。
前記導電性複合体がエポキシ化合物、及びアミン化合物若しくは第四級アンモニウム化合物の両方で修飾されている場合、前記有機溶剤がエステル系溶剤を含むと、修飾型導電性複合体の分散性がより高まるので好ましい。
修飾型導電性複合体の分散性を高める観点から、下記式1で表される1種類以上のエステル系溶剤を含むことが好ましい。
式1:R21-C(=O)-O-R22
[式中、R21は水素原子、メチル基又はエチル基を表し、R22は炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表す。]
【0074】
修飾型導電性複合体の分散性を高める観点から、R21はメチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。また、R22の炭素数は2~5が好ましく、2~4がより好ましい。
【0075】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル等が挙げられる。
【0076】
前記有機溶剤に含まれるエステル系溶剤の含有量は、前記有機溶剤の総質量に対し、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、70質量%以上がより一層好ましく、80質量%以上が特に好ましく、90質量%以上が最も好ましく、100質量%であってもよい。エステル系溶剤の含有量が上記範囲内であると、修飾型導電性複合体の分散性を高めることができる。
【0077】
本態様の修飾型導電性複合体含有液がエステル系溶剤を含む場合、エステル系溶剤以外の有機溶剤がさらに1種類以上含まれていても構わない。
エステル系溶剤以外の有機溶剤としては、例えば、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、窒素原子含有化合物系溶剤等が挙げられる。
炭化水素系溶剤としては、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。脂肪族炭化水素系溶剤としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等が挙げられる。芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブタノール、アリルアルコール等が挙げられる。
窒素原子含有化合物系溶剤としては、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0078】
(炭化水素系溶剤)
本態様の修飾型導電性複合体含有液に炭化水素系溶剤が含まれると、プラスチックフィルム基材に対する修飾型導電性複合体含有液の濡れ性が高くなり、低極性のバインダ成分を容易に添加できるので好ましい。
【0079】
前記炭化水素系溶剤としては、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。脂肪族炭化水素系溶剤としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等が挙げられる。芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン等が挙げられる。
上記のなかでも、修飾型導電性複合体の分散性が高いことから、トルエンが好ましい。また、バインダ成分としてシリコーン化合物を添加した場合には、シリコーン化合物の溶解性に優れることから、ヘプタン及びトルエンの少なくとも一方が好ましい。
【0080】
炭化水素系溶剤に加えてさらにメチルエチルケトンを含有すると、修飾型導電性複合体の分散性がより高くなるので好ましい。例えば、炭化水素系溶剤100質量部に対して、メチルエチルケトンは20質量部以上120質量部以下が好ましく、30質量部以上100質量量部以下がより好ましく、40質量部以上80質量部以下がさらに好ましい。
【0081】
炭化水素系溶剤の含有量は、前記有機溶剤の総質量に対し、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、70質量%以上がより一層好ましく、80質量%以上が特に好ましく、90質量%以上が最も好ましく、100質量%であってもよい。炭化水素系溶剤の含有量が上記範囲内であると、修飾型導電性複合体の分散性を高めることができる。
【0082】
本態様の修飾型導電性複合体含有液が炭化水素系溶剤を含む場合、炭化水素系溶剤以外の有機溶剤がさらに1種類以上含まれていても構わない。
炭化水素系溶剤以外の有機溶剤としては、前述したケトン系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、窒素原子含有化合物系溶剤等が挙げられる。
【0083】
<バインダ成分の添加>
本態様の修飾型導電性複合体含有液の製造方法は、上記の工程で得た修飾型導電性複合体含有液に、バインダ成分をさらに添加する工程を有してもよい。バインダ成分を含有する修飾型導電性複合体含有液を用いることにより、形成する導電層の強度を向上させたり、粘着性や離型性を付与したりすることができる。
バインダ成分は、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオン以外の樹脂又はその前駆体であり、熱可塑性樹脂、又は、導電層形成時に硬化する硬化性のモノマー又はオリゴマーである。熱可塑性樹脂はそのままバインダ樹脂となり、硬化性のモノマー又はオリゴマーは硬化により形成した樹脂がバインダ樹脂となる。
前記バインダ成分は後述する粘着剤であってもよい。
本態様で添加するバインダ成分は1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0084】
バインダ成分由来のバインダ樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂(アクリル化合物)、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン等が挙げられる。
【0085】
硬化性のモノマー又はオリゴマーは、熱硬化性のモノマー又はオリゴマーであってもよいし、光硬化性のモノマー又はオリゴマーであってもよい。ここで、オリゴマーは、質量平均分子量が1万未満の重合体のことである。
硬化性のモノマーとしては、例えば、アクリルモノマー(アクリル化合物)、エポキシモノマー、オルガノシロキサン等が挙げられる。硬化性のオリゴマーとしては、例えば、アクリルオリゴマー(アクリル化合物)、エポキシオリゴマー、シリコーンオリゴマー(硬化型シリコーン)等が挙げられる。
バインダ成分としてアクリルモノマー又はアクリルオリゴマーを用いた場合には、加熱又は光照射により容易に硬化させることができる。
【0086】
硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む場合には、さらに硬化触媒を含むことが好ましい。例えば、熱硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む場合には、加熱によりラジカルを発生させる熱重合開始剤を含むことが好ましく、光硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む場合には、光照射によりラジカルを発生させる光重合開始剤を含むことが好ましい。
【0087】
本態様の修飾型導電性複合体含有液に含まれるバインダ成分(ただし、後述するシリコーン化合物を除く。)の含有割合は、前記修飾型導電性複合体1質量部に対して、例えば、1質量部以上10000質量部以下が好ましく、10質量部以上5000質量部以下がより好ましく、100質量部以上1000質量部以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、本態様の修飾型導電性複合体含有液によって形成される導電層に含まれるバインダ成分の特性を充分に発揮させることができる。
上記範囲の上限値以下であると、本態様の修飾型導電性複合体含有液によって形成される導電層の充分な導電性を確保できる。
【0088】
(シリコーン化合物)
本態様の修飾型導電性複合体含有液は、分散媒として有機溶剤を使用しているため、バインダ成分として、低極性であるシリコーン化合物を添加して、充分に分散させることができる。前記有機溶剤が炭化水素系溶剤又はエステル系溶剤を含む場合、シリコーン化合物の分散性がより高められるので好ましい。
シリコーン化合物としては、硬化型シリコーンが挙げられる。バインダ成分が硬化型シリコーンである場合、硬化型シリコーンを硬化させることにより、導電層に離型性を付与することができる。
【0089】
硬化型シリコーンは、付加硬化型シリコーン、縮合硬化型シリコーンのいずれであってもよい。本態様では、付加硬化型シリコーンを使用しても硬化阻害が生じにくいため、好ましい。
【0090】
付加硬化型シリコーンとしては、シロキサン結合を有する直鎖状ポリマーであって、前記直鎖の両方の末端にビニル基を有するポリジメチルシロキサンと、ハイドロジェンシランとを有するものが挙げられる。このような付加硬化型シリコーンは、付加反応によって三次元架橋構造を形成して硬化する。硬化を促進させるために白金系硬化触媒を用いてもよい。
付加硬化型シリコーンの具体例としては、KS-3703T、KS-847T、KM-3951、X-52-151、X-52-6068、X-52-6069(信越化学工業社製)等が挙げられる。
付加硬化型シリコーンは有機溶剤に溶解又は分散しているものが好適に使用される。
【0091】
本態様の修飾型導電性複合体含有液に含まれるシリコーン化合物の含有割合は、前記修飾型導電性複合体100質量部に対して、10質量部以上10000質量部以下が好ましく、100質量部以上5000質量部以下がより好ましく、500質量部以上3000質量部以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、本態様の修飾型導電性複合体含有液によって形成される導電層に充分な離型性を付与することができる。
上記範囲の上限値以下であると、本態様の修飾型導電性複合体含有液によって形成される導電層の充分な導電性を確保できる。
【0092】
[粘着剤]
本態様の修飾型導電性複合体含有液は、バインダ成分として粘着剤を含有してもよい。粘着剤を含む修飾型導電性複合体含有液を用いることにより、粘着性を有する導電層を形成することができる。
本態様の修飾型導電性複合体含有液は、有機溶剤を含むため、有機溶剤に予め分散された粘着剤と容易に混合することができる。本態様の修飾型導電性複合体含有液が含む前記有機溶剤が炭化水素系溶剤又はエステル系溶剤を含む場合、炭化水素系溶剤又はエステル系溶剤に予め分散された粘着剤と容易に混合することができ、その混合液中において導電性複合体を安定に分散できるので好ましい。
【0093】
本態様の粘着剤が有する粘着性の程度は特に制限されず、貼付した後で、手で容易に剥離可能な程度の粘着性であってもよいし、貼付した後で剥離することが難しい程度の粘着性であってもよい。剥離することが困難な粘着性は接着性と言い換えることができる。つまり、粘着性は半永久的に接着することが可能な程度であってもよい。
【0094】
前記粘着剤として、公知の粘着剤が適用できる。導電性を維持しつつ良好な粘着性を発揮させる観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0095】
(アクリル系粘着剤)
アクリル系粘着剤は、同種又は異種の固体の面と面とを貼り合せて一体化させることができる。アクリル系粘着剤は、アクリル系樹脂(アクリル系重合体)を含む。
【0096】
アクリル系樹脂を形成するアクリルモノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、ビスフェノールA・エチレンオキサイド変性ジアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等のアクリレート;テトラエチレングリコールジメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、アリルメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のメタクリレート;ジアセトンアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、アクリロイルホルモリン、N-メチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、N-フェニルアクリルアミド、アクリロイルピペリジン、2-ヒドロキシエチルアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
前記アクリル系樹脂を形成するアクリルモノマーは1種類でもよいし、2種以上でもよい。アクリルモノマーを2種以上組み合わせることにより粘着性を調整することができる。
【0097】
アクリル系樹脂は、アクリルモノマーと、アクリルモノマー以外のビニル系モノマーとの共重合体であってもよい。
ビニル系モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸等が挙げられる。
上記共重合体におけるアクリルモノマー単位の含有量は、50モル%以上100モル%未満であることが好ましく、70モル%以上98モル%以下であることがより好ましい。
アクリルモノマー単位の含有量が前記下限値以上であれば、粘着性を容易に発現できる。
上記共重合体におけるビニル系モノマー単位の含有量は、例えば、2モル%以上20モル%以下とすることができる。
【0098】
前記アクリル系樹脂のガラス転移温度は、好ましくは80℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは0℃以下である。ガラス転移温度が80℃を超えるアクリル系樹脂は、粘着性が低い。アクリル系樹脂のガラス転移温度は-80℃以上であり、それよりガラス転移温度が低いものを得ることは困難である。アクリル系樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定又は動的粘弾性測定により求めることができる。
アクリル系樹脂のガラス転移温度を低くする傾向を有するアクリルモノマーとして、例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート(特にn-ブチルアクリレート)、2-エチルヘキシルアクリレート等が挙げられる。アクリル系樹脂において、これらのモノマー単位の割合が多くなる程、ガラス転移温度が低くなる。
【0099】
アクリル系樹脂の質量平均分子量は1万以上200万以下であることが好ましく、3万以上100万以下であることがより好ましい。アクリル系樹脂の質量平均分子量が前記下限値以上であれば、充分な凝集力を確保できる。前記上限値以下であれば、粘着性をより向上させることができる。
【0100】
アクリル系樹脂が、反応性官能基を有するアクリルモノマー単位を有する場合には、硬化剤と反応させて硬化させてもよい。アクリル系樹脂を硬化させると、粘着剤を含む導電層の凝集力が向上して強度を向上させることができる。また、導電層の凝集力を向上させることによって、接着と剥離を繰り返すことが可能な再剥離性の導電層とすることもできる。
前記反応性官能基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、エポキシ基等が挙げられる。後述する多官能イソシアネートと反応させる場合には、反応性官能基は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基が好ましく、ヒドロキシ基がより好ましい。
ヒドロキシ基を有するアクリルモノマーとしては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられる。
カルボキシ基を有するアクリルモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等が挙げられる。
アミノ基を有するアクリルモノマーとしては、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。
アミド基を有するアクリルモノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド等が挙げられる。
エポキシ基を有するアクリルモノマーとしては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
硬化剤として多官能イソシアネートを用いる場合には、前記反応性官能基を有するアクリルモノマーのなかでも、硬化性及びコストを勘案すると、ヒドロキシ基を有するアクリルモノマーが好ましく、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートがより好ましい。
前記アクリル樹脂を形成する、前記反応性官能基を有するアクリルモノマーは、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0101】
本態様の修飾型導電性複合体含有液に含まれる粘着剤の含有割合は、前記修飾型導電性複合体1質量部に対して10質量部以上10000質量部以下が好ましく、100質量部以上5000質量部以下がより好ましく、300質量部以上1000質量部以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、本態様の修飾型導電性複合体含有液によって形成される導電層に充分な粘着性を付与できる。
上記範囲の上限値以下であると、本態様の修飾型導電性複合体含有液によって形成される導電層の充分な導電性を確保できる。
【0102】
(硬化剤)
本態様の修飾型導電性複合体含有液に含まれる前記粘着剤が反応性官能基を有する場合、本態様の修飾型導電性複合体含有液は硬化剤を含有することが好ましい。
硬化剤としては、1分子中にイソシアネート基を2つ以上有する多官能イソシアネート等のイソシアネート系硬化剤、1分子中にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ化合物等のエポキシ系硬化剤等が挙げられる。これら硬化剤のなかでも、反応性の点から、多官能イソシアネートが好ましい。特に、粘着剤が、ヒドロキシ基を有するアクリルモノマー単位を有する場合には、硬化剤が多官能イソシアネートであることが好ましい。
【0103】
多官能イソシアネートとしては、脂肪族多官能イソシアネート、脂環族多官能イソシアネート及び芳香族多官能イソシアネートが挙げられる。
多官能イソシアネートの具体例としては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、4,4’-ジシクロメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタトリイソシアネート、トリメチルへキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
多官能イソシアネートは、前記ジイソシアネートを、NCO/OHモル比が2/1以上となるように変性した変性多官能イソシアネートより形成した変性ジイソシアネートであってもよい。
多官能イソシアネートは、変性ポリイソシアネートであってもよい。変性ポリイソシアネートしては、例えば、前記多官能イソシアネートを多価アルコールと反応させて得られるポリウレタンポリイソシアネート、多官能イソシアネートを重合させることによって得られる、イソシアヌレート環を含んだポリイソシアネート、多官能イソシアネートと水と反応させて得られる、ビュレット結合を含んだポリイソシアネート等が挙げられる。
本態様の修飾型導電性複合体含有液に含まれる硬化剤の種類は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0104】
本態様の修飾型導電性複合体含有液に含まれる硬化剤の含有割合は、前記粘着剤100質量部に対して、例えば、1質量部以上100質量部以下が好ましく、2質量部以上50質量部以下がより好ましく、3質量部以上10質量部以下がさらに好ましい。
上記範囲であると、本態様の修飾型導電性複合体含有液によって形成される導電層に充分な粘着性を付与することができる。
【0105】
(高導電化剤)
本態様の修飾型導電性複合体含有液は、高導電化剤を含んでもよい。
ここで、前述したπ共役系導電性高分子、ポリアニオン、有機溶剤、粘着剤、硬化剤、及びバインダ成分は、高導電化剤に分類しない。なお、前記エポキシ化合物、前記アミン化合物、前記第四級アンモニウム化合物は、ここで説明する高導電化剤に該当していてもよい。
高導電化剤は、糖類、窒素含有芳香族性環式化合物、2個以上の水酸基を有する化合物、1個以上の水酸基および1個以上のカルボキシ基を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ラクタム化合物、グリシジル基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
本態様の修飾型導電性複合体含有液に含有される高導電化剤は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
高導電化剤の含有割合は修飾型導電性複合体の100質量部に対して、1質量部以上10000質量部以下が好ましく、10質量部以上5000質量部以下がより好ましく、100質量部以上2500質量部以下がさらに好ましい。
高導電化剤の含有割合が前記下限値以上であれば、高導電化剤添加による導電性向上効果が充分に発揮され、前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子濃度の低下に起因する導電性の低下を防止できる。
【0106】
(その他の添加剤)
本態様の修飾型導電性複合体含有液には、公知のその他の添加剤が含まれてもよい。
添加剤としては、本発明の効果が得られる限り特に制限されず、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。また、ポリビニルピロリドンなどのポリマー系界面活性剤を添加してもよい。
無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等が挙げられる。なお、金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより生成させることができる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
カップリング剤としては、ビニル基又はアミノ基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
本態様の修飾型導電性複合体含有液が上記添加剤を含有する場合、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、例えば、修飾型導電性複合体の100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下の範囲とすることができる。
【0107】
≪導電性積層体≫
本発明の第二態様は、基材と、前記基材の少なくとも一つの面に形成された導電層を備えた、導電性積層体である。前記導電層は、第一態様の製造方法で得た修飾型導電性複合体含有液の硬化層からなる。
【0108】
[導電層]
基材の少なくとも一つの面に備えられた前記導電層の平均厚みとしては、例えば、10nm以上100μm以下であることが好ましく、20nm以上50μm以下であることがより好ましく、30nm以上30μm以下であることがさらに好ましい。
導電層の平均厚さが前記下限値以上であれば、充分に高い導電性を発揮でき、前記上限値以下であれば、導電層の基材に対する密着性がより向上する。
【0109】
本態様の導電性積層体が備える導電層は、前記修飾型導電性複合体を含有する。
基材に塗布した修飾型導電性複合体含有液が、バインダ成分を含む場合には、導電層にバインダ成分若しくはバインダ成分が硬化した硬化物が含まれる。
【0110】
[基材]
本態様の導電性積層体を構成する基材は、絶縁性材料からなる基材であってもよいし、導電性材料からなる基材であってもよい。基材の形状は特に制限されず、例えば、フィルム、基板等の平面を主体とする形状が挙げられる。
絶縁性材料としては、ガラス、合成樹脂、セラミックス等が挙げられる。
導電性材料としては、金属、導電性金属酸化物、カーボン等が挙げられる。
【0111】
(フィルム基材)
前記基材としてフィルム基材を用いると、導電性積層体は導電性フィルムとなる。
前記フィルム基材としては、例えば、合成樹脂からなるプラスチックフィルムが挙げられる。前記合成樹脂としては、例えば、エチレン-メチルメタクリレート共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。
フィルム基材と導電層との密着性を高める観点から、フィルム基材用の合成樹脂はバインダ樹脂と同種の樹脂であることが好ましく、なかでも、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂が好ましい。
【0112】
フィルム基材用の合成樹脂は、非晶性でもよいし、結晶性でもよい。
フィルム基材は、未延伸のものでもよいし、延伸されたものでもよい。
フィルム基材には、修飾型導電性複合体含有液から形成される導電層の接着性をさらに向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理等の表面処理が施されてもよい。
【0113】
フィルム基材の平均厚みは、5μm以上500μm以下が好ましく、20μm以上200μm以下がより好ましい。フィルム基材の平均厚みが前記下限値以上であれば、破断しにくくなり、前記上限値以下であれば、フィルムとして充分な可撓性を確保できる。
フィルム基材の平均厚みは、無作為に選択される10箇所について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
【0114】
(ガラス基材)
ガラス基材としては、例えば、無アルカリガラス基材、ソーダ石灰ガラス基材、ホウケイ酸ガラス基材、石英ガラス基材等が挙げられる。基材にアルカリ成分が含まれると、導電層の導電性が低下する傾向にあるため、前記ガラス基材のなかでも、無アルカリガラスが好ましい。ここで、無アルカリガラスとは、アルカリ成分の含有量がガラス組成物の総質量に対し、0.1質量%以下のガラス組成物のことである。
【0115】
ガラス基材の平均厚みとしては、50μm以上3000μm以下であることが好ましく、100μm以上1000μm以下であることがより好ましい。ガラス基材の平均厚みが前記下限値以上であれば、破損しにくくなり、前記上限値以下であれば、導電性積層体の薄型化に寄与できる。
ガラス基材の平均厚みは、無作為に選択される10箇所について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
【0116】
≪導電性積層体の製造方法≫
本発明の第三態様は、第一態様の製造方法により修飾型導電性複合体含有液を得る工程と、その修飾型導電性複合体含有液を基材の少なくとも一つの面に塗工する工程とを含む、導電性積層体の製造方法である。本態様の製造方法により、第二態様の導電性積層体を製造することができる。
【0117】
修飾型導電性複合体含有液を基材の任意の面に塗工(塗布)する方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等のコーターを用いた方法、エアスプレー、エアレススプレー、ローターダンプニング等の噴霧器を用いた方法、ディップ等の浸漬方法等を適用することができる。
【0118】
修飾型導電性複合体含有液の基材への塗布量は特に制限されないが、均一にムラなく塗工することと、導電性と膜強度を勘案して、固形分として、0.01g/m2以上10.0g/m2以下の範囲であることが好ましい。
【0119】
基材上に塗工した修飾型導電性複合体含有液からなる塗膜を乾燥させて、分散媒を除去することにより、前記塗膜が硬化してなる導電層(導電膜)が形成された導電性積層体を得ることができる。
塗膜を乾燥する方法としては、加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥としては、例えば、熱風加熱や、赤外線加熱などの方法を採用できる。
加熱乾燥を適用する場合、加熱温度は、使用する分散媒に応じて適宜設定されるが、通常は、50℃以上150℃以下の範囲内である。ここで、加熱温度は、乾燥装置の設定温度である。上記加熱温度の範囲における好適な乾燥時間としては、1分以上30分以下が好ましく、5分以上15分以下がより好ましい。
【0120】
前記修飾型導電性複合体含有液が活性エネルギー線硬化性のバインダ成分を含有する場合には、乾燥した塗膜に活性エネルギー線を照射する活性エネルギー線照射工程をさらに有してもよい。活性エネルギー線照射工程を有すると、導電層の形成速度を速くでき、導電性フィルムの生産性が向上する。
活性エネルギー線照射工程を有する場合、使用される活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、可視光線等が挙げられる。紫外線の光源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプなどの光源を用いることができる。
紫外線照射における照度は100mW/cm2以上が好ましい。照度が100mW/cm2未満であると、活性エネルギー線硬化性のバインダ成分が充分に硬化しないことがある。また、積算光量は50mJ/cm2以上が好ましい。積算光量が50mJ/cm2未満であると、充分に架橋しないことがある。なお、本明細書における照度、積算光量は、トプコン社製UVR-T1(工業用UVチェッカー、受光器;UD-T36、測定波長範囲;300nm以上390nm以下、ピーク感度波長;約355nm)を用いて測定した値である。
【実施例】
【0121】
(製造例1)
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。
得られたポリスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、ポリスチレンスルホン酸含有溶液を得た。続いて限外ろ過法によりポリスチレンスルホン酸含有溶液の約1000ml溶液を除去し、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。上記の限外ろ過処理による水洗を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
【0122】
(製造例2)
0.5gの3,4-エチレンジオキシチオフェンと、1.5gのポリスチレンスルホン酸を15.0gのイオン交換水に溶かした溶液を20℃で混合した。次に、イオン交換水89.5gを添加した。
得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、0.03gの硫酸第二鉄を4.97gのイオン交換水に溶かした溶液と、1.1gの過硫酸アンモニウムを8.9gのイオン交換水に溶かした溶液とをゆっくり添加し、得られた反応液を24時間攪拌して反応させた。
上記反応により、π共役系導電性高分子であるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホン酸を含む導電性複合体(PEDOT-PSS)と、分散媒である水とを含む導電性高分子水系分散液を得た。
この導電性高分子水系分散液にデュオライトC255LFH(住化ケムテックス社製、陽イオン交換樹脂)13.2gとデュオライトA368S(住化ケムテックス社製、陰イオン交換樹脂)13.2gを加え、濾過してイオン交換樹脂を除き、前記酸化剤及び前記触媒が除去された導電性高分子水系分散液(PEDOT-PSS濃度:約1.3質量%)を得た。
【0123】
(実施例1)
製造例2で得た導電性高分子水系分散液100gに、イソプロパノール190gとトリオクチルアミン10gを添加し、得られた混合液を1時間攪拌して、修飾型導電性複合体を析出させた。このとき、すべての修飾型導電性複合体が混合液の上層に浮遊していることを確認した。次に、前記混合液の下層の200gの溶液を除去し、イソプロパノール300gを添加し、1時間攪拌した後、修飾型導電性複合体が再び混合液の上層に浮遊していることを確認した。次に、再び混合液の下層の300gの溶液を除去した。続いて、イソプロパノール300gを添加し、1時間攪拌して、上記と同様にして下層の300gの溶液を除去した。
得られた修飾型導電性複合体含有液100gにイソプロパノール400gを添加し、高圧ホモジナイザーを用いて分散して、修飾型導電性複合体のイソプロパノール分散液500g(反応したトリオクチルアミンを考慮しないPEDOT-PSS濃度:約0.26質量%)を得た。
得られた分散液を#4のバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布し、100℃で1分間乾燥して、導電性フィルムを得た。得られた導電性フィルムの表面抵抗を測定した。
【0124】
(実施例2)
実施例1においてトリオクチルアミン10gをトリブチルアミン10gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、修飾型導電性複合体のイソプロパノール分散液500gを得た。得られた溶液を#4のバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布し、100℃で1分間乾燥して、導電性フィルムを得た。得られた導電性フィルムの表面抵抗を測定した。
【0125】
(実施例3)
製造例2で得た導電性高分子水系分散液100gに、メタノール175gとエポライトM1230(C12,13混合高級グリシジルエーテル、共栄社化学社製)25gを添加し、得られた混合液を60℃で4時間攪拌して、修飾型導電性複合体を析出させた。このとき、すべての修飾型導電性複合体が混合液の下層に沈降していることを確認した。次に、前記混合液の上層の200gの溶液を除去し、メチルエチルケトン300gを添加し、1時間攪拌した後、修飾型導電性複合体が再び混合液の下層に沈降していることを確認した。次に、再び混合液の上層の300gの溶液を除去した。続いて、メチルエチルケトン300gを添加し、1時間攪拌して、上記と同様にして上層の300gの溶液を除去した。
得られた修飾型導電性複合体含有液100gにメチルエチルケトン200gを添加し、高圧ホモジナイザーを用いて分散して、修飾型導電性複合体のメチルエチルケトン分散液300g(反応したエポキシ化合物を考慮しないPEDOT-PSS濃度:約0.43質量%)を得た。
得られた溶液を#4のバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布し、100℃で1分間乾燥して、導電性フィルムを得た。得られた導電性フィルムの表面抵抗を測定した。
【0126】
(実施例4)
実施例1においてエポライトM1230の25gをブチルグリシジルエーテル25gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、修飾型導電性複合体のメチルエチルケトン300gを得た。得られた溶液を#4のバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布し、100℃で1分間乾燥して、導電性フィルムを得た。得られた導電性フィルムの表面抵抗を測定した。
【0127】
(実施例5)
製造例2で得た導電性高分子水系分散液100gに、メタノール174gとエポライトM1230(C12,13混合高級グリシジルエーテル、共栄社化学社製)25gを添加し、得られた混合液を60℃で4時間攪拌した。次に、トリオクチルアミン1.0gを添加して、室温で1時間攪拌して、修飾型導電性複合体を析出させた。このとき、すべての修飾型導電性複合体が混合液の下層に沈降していることを確認した。次に、前記混合液の上層の200gの溶液を除去し、酢酸エチル300gを添加し、1時間攪拌した後、修飾型導電性複合体が再び混合液の下層に沈降していることを確認した。次に、再び混合液の上層の300gの溶液を除去した。続いて、酢酸エチル300gを添加し、1時間攪拌して、上記と同様にして上層の300gの溶液を除去した。
得られた修飾型導電性複合体含有液100gに酢酸エチル700gを添加し、高圧ホモジナイザーを用いて分散して、修飾型導電性複合体の酢酸エチル分散液(反応したエポキシ化合物及びアミン化合物を考慮しないPEDOT-PSS濃度:約0.16質量%)800gを得た。
得られた溶液を#4のバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布し、100℃で1分間乾燥して、導電性フィルムを得た。得られた導電性フィルムの表面抵抗を測定した。
【0128】
(実施例6)
製造例2で得た導電性高分子水系分散液100gに、メタノール198gとテトラオクチルアンモニウムブロミド2.0gを添加し、得られた混合液を室温で1時間攪拌して、修飾型導電性複合体を析出させた。このとき、すべての修飾型導電性複合体が混合液の下層に沈降していることを確認した。次に、前記混合液の上層の200gの溶液を除去し、メチルエチルケトン300gを添加し、1時間攪拌した後、修飾型導電性複合体が再び混合液の下層に沈降していることを確認した。次に、再び混合液の上層の300gの溶液を除去した。続いて、メチルエチルケトン300gを添加し、1時間攪拌して、上記と同様にして上層の300gの溶液を除去した。
得られた修飾型導電性複合体含有液100gにメチルエチルケトン400gを添加し、高圧ホモジナイザーを用いて分散して、修飾型導電性複合体のメチルエチルケトン分散液500g(反応した第四級アンモニウム化合物を考慮しないPEDOT-PSS濃度:約0.26質量%)を得た。
得られた分散液を#4のバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布し、100℃で1分間乾燥して、導電性フィルムを得た。得られた導電性フィルムの表面抵抗を測定した。
【0129】
(比較例1)
製造例2で得た導電性高分子水系分散液100gに、イソプロパノール190gとトリオクチルアミン10gを添加し、得られた混合液を1時間攪拌して、修飾型導電性複合体を析出させた。次に、析出した修飾型導電性複合体をろ取して、2.0gの修飾型導電性複合体を回収した。回収した修飾型導電性複合体にイソプロパノール498gを添加し、高圧ホモジナイザーを用いて分散して、修飾型導電性複合体のイソプロパノール分散液500gを得た。
得られた分散液を#4のバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布し、100℃で1分間乾燥して、導電性フィルムを得た。得られた導電性フィルムの表面抵抗を測定した。
【0130】
(比較例2)
製造例2で得た導電性高分子水系分散液100gに、イソプロパノール190gとトリブチルアミン10gを添加し、得られた混合液を1時間攪拌して、修飾型導電性複合体を析出させた。次に、析出した修飾型導電性複合体をろ取して、1.8gの修飾型導電性複合体を回収した。
回収した修飾型導電性複合体にイソプロパノール498.2gを添加し、高圧ホモジナイザーを用いて分散して、修飾型導電性複合体のイソプロパノール分散液500gを得た。
得られた分散液を#4のバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布し、100℃で1分間乾燥して、導電性フィルムを得た。得られた導電性フィルムの表面抵抗を測定した。
【0131】
(比較例3)
製造例2で得た導電性高分子水系分散液100gに、メタノール175gとエポライトM1230(C12,13混合高級グリシジルエーテル、共栄社化学社製)25gを添加し、得られた混合液を60℃で4時間攪拌して、修飾型導電性複合体を析出させた。次に、析出した修飾型導電性複合体をろ取して、1.6gの修飾型導電性複合体を回収した。
回収した修飾型導電性複合体にメチルエチルケトン298.4gを添加し、高圧ホモジナイザーを用いて分散して、修飾型導電性複合体のメチルエチルケトン分散液300gを得た。
得られた分散液を#4のバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布し、100℃で1分間乾燥して、導電性フィルムを得た。得られた導電性フィルムの表面抵抗を測定した。
【0132】
(比較例4)
製造例2で得た導電性高分子水系分散液100gに、メタノール175gとブチルグリシジルエーテル25gを添加し、得られた混合液を60℃で4時間攪拌して、修飾型導電性複合体を析出させた。次に、析出した修飾型導電性複合体をろ取して、1.5gの修飾型導電性複合体を回収した。
回収した修飾型導電性複合体にメチルエチルケトン298.5gを添加し、高圧ホモジナイザーを用いて分散して、修飾型導電性複合体のメチルエチルケトン分散液300gを得た。
得られた分散液を#4のバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布し、100℃で1分間乾燥して、導電性フィルムを得た。得られた導電性フィルムの表面抵抗を測定した。
【0133】
(比較例5)
製造例2で得た導電性高分子水系分散液100gに、メタノール174gとエポライトM1230(C12,13混合高級グリシジルエーテル、共栄社化学社製)25gを添加し、得られた混合液を60℃で4時間攪拌した。次に、トリオクチルアミン1.0gを添加して、室温で1時間攪拌して、修飾型導電性複合体を析出させた。次に、析出した修飾型導電性複合体をろ取して、1.7gの修飾型導電性複合体を回収した。
回収した修飾型導電性複合体に酢酸エチル798.3gを添加し、高圧ホモジナイザーを用いて分散して、修飾型導電性複合体の酢酸エチル分散液800gを得た。
得られた分散液を#4のバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布し、100℃で1分間乾燥して、導電性フィルムを得た。得られた導電性フィルムの表面抵抗を測定した。
【0134】
(比較例6)
製造例2で得た導電性高分子水系分散液100gに、メタノール198gとテトラオクチルアンモニウムブロミド2.0gを添加し、得られた混合液を室温で1時間攪拌して、修飾型導電性複合体を析出させた。次に、析出した修飾型導電性複合体をろ取して、2.3gの修飾型導電性複合体を回収した。
回収した修飾型導電性複合体にメチルエチルケトン497.7gを添加し、高圧ホモジナイザーを用いて分散して、修飾型導電性複合体のメチルエチルケトン分散液500gを得た。
得られた分散液を#4のバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布し、100℃で1分間乾燥して、導電性フィルムを得た。得られた導電性フィルムの表面抵抗を測定した。
【0135】
<表面抵抗値の測定方法>
各例で得た導電性フィルムの表面抵抗値を、抵抗率計(日東精工アナリテック社製ロレスタ)を用い、印加電圧10Vの条件で測定した。表において、「1.0E+07」は1.0×107の意味であり、他も同様である。
【0136】
【0137】
溶媒置換方法により修飾型導電性複合体含有液を得た実施例1~6では、濾過処理により固形状態の修飾型導電性複合体を分取した後これを分散処理して修飾型導電性複合体含有液を得た比較例1~6と比べて、何れも優れた導電性の導電性フィルムを形成することができた。本発明にあっては、濾過処理を行わないので、修飾型導電性複合体の分散性が向上していることが要因であると推測される。