(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】農作物選別装置
(51)【国際特許分類】
B07C 5/342 20060101AFI20240412BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20240412BHJP
G01B 11/28 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
B07C5/342
G01B11/24 K
G01B11/28 H
(21)【出願番号】P 2020217449
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】作田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】中西 正洋
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-240257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07C 5/342
G01B 11/24
G01B 11/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
農作物選別装置であって、
農作物を個別に搬送する搬送部と、
個別に搬送される前記農作物の撮影画像を出力する撮影部と、
前記農作物の評価情報としての前記農作物の大きさ等級を前記撮影画像から演算する大きさ演算部と、
前記評価情報としての前記農作物の表面異常を、前記撮影画像から演算する表面異常演算部と、
前記評価情報に基づいて前記農作物を選別する選別部と、
を備え、
前記大きさ演算部は、前記撮影画像から演算された前記農作物の輪郭と前記輪郭の内部領域の面積とに基づいて、前記大きさ等級を演算
し、
前記大きさ演算部は、前記撮影画像から演算された前記輪郭と前記内部領域の面積とに基づいて、前記農作物の重量を演算し、前記重量に基づいて前記大きさ等級を演算する農作物選別装置。
【請求項2】
農作物選別装置であって、
農作物を個別に搬送する搬送部と、
個別に搬送される前記農作物の撮影画像を出力する撮影部と、
前記農作物の評価情報としての前記農作物の大きさ等級を前記撮影画像から演算する大きさ演算部と、
前記評価情報としての前記農作物の表面異常を、前記撮影画像から演算する表面異常演算部と、
前記評価情報に基づいて前記農作物を選別する選別部と、
を備え、
前記大きさ演算部は、前記撮影画像から演算された前記農作物の輪郭と前記輪郭の内部領域の面積とに基づいて、前記大きさ等級を演算し、
前記表面異常演算部は、前記撮影画像における農作物領域と、予め選択された異常判定用参照画像との比較によって、前記表面異常を演算する比較演算機能を有する農作物選別装置。
【請求項3】
農作物選別装置であって、
農作物を個別に搬送する搬送部と、
個別に搬送される前記農作物の撮影画像を出力する撮影部と、
前記農作物の評価情報としての前記農作物の大きさ等級を前記撮影画像から演算する大きさ演算部と、
前記評価情報としての前記農作物の表面異常を、前記撮影画像から演算する表面異常演算部と、
前記評価情報に基づいて前記農作物を選別する選別部と、
を備え、
前記大きさ演算部は、前記撮影画像から演算された前記農作物の輪郭と前記輪郭の内部領域の面積とに基づいて、前記大きさ等級を演算し、
前記表面異常演算部は、前記輪郭の全体的な幾何学的特徴によって区分けされた部分の形状特性に基づいて前記表面異常を演算する農作物選別装置。
【請求項4】
農作物選別装置であって、
農作物を個別に搬送する搬送部と、
個別に搬送される前記農作物の撮影画像を出力する撮影部と、
前記農作物の評価情報としての前記農作物の大きさ等級を前記撮影画像から演算する大きさ演算部と、
前記評価情報としての前記農作物の表面異常を、前記撮影画像から演算する表面異常演算部と、
前記評価情報に基づいて前記農作物を選別する選別部と、
を備え、
前記大きさ演算部は、前記撮影画像から演算された前記農作物の輪郭と前記輪郭の内部領域の面積とに基づいて、前記大きさ等級を演算し、
前記表面異常演算部は、前記輪郭から形状特性幾何学的特徴によって区分けされた部分輪郭の形状特性に基づいて前記表面異常を演算する農作物選別装置。
【請求項5】
前記表面異常演算部は、前記輪郭内の明度特異点の面積と個数に基づいて前記表面異常を演算する請求項1から
4のいずれか一項に記載の農作物選別装置。
【請求項6】
前記選別部は、前記大きさ等級と前記表面異常との組み合わせに基づいて、前記農作物を選別して、前もって設定された各仕分け先に投与する請求項1から
5のいずれか一項に記載の農作物選別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送される人参や大根などの農作物の撮影画像を用いて農作物を評価し、その評価結果に基づいて農作物を選別する農作物選別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、農作物を貯溜部から1個ずつ搬出して、計量測定し、各重量等級に振り分けて選別回収する農作物自動選別装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、コンベア等の搬送手段により搬送される検査対象物を複数のカメラで撮像して、その複数の撮像画像に基づき検査対象物である青果物の外観検査を行なう検査装置が開示されている。この検査装置は、青果物が投入される投入部と、投入された青果物を搬送する搬送部と、搬送された青果物を撮影する撮像部と、青果物の複数の撮影画像を用いて青果物の大きさ、形状及びキズを識別する識別部と、識別結果に基づいて青果物を選別する選別部とを備えている。識別部による大きさ判定は、撮影画像の画像処理によって得られた青果物領域の画素数を面積としてその閾値と比べることで行われる。識別部による形状判定は、青果物領域と接する長方形の長辺と短辺との比率も用いて行われる。識別部によるキズ判定は、画像処理で得られたキズ画像の連結領域の面積を規格値と比べることで行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-156654号公報
【文献】特許第4649628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1による農作物自動選別装置では、計量選別のために、重量等級別に天秤アームを設ける必要があるので、重量等級数が多くなると、天秤アームの数も多くなり、装置が大型化する。
【0006】
特許文献2による検査装置では、青果物の大きさ、形状及びキズを判定するために、複数台のカメラを有する撮像部からの複数の撮影画像が必要となり、撮像部及び画像処理が複雑となる。さらに、青果物の大きさは、撮影画像で画像認識した青果物領域の画素数を面積とし、その面積を閾値と比較して、大きさの大小を判定しているので、その青果物が変形していても面積さえ大きければ、大きさが大と判定される可能性がある。
【0007】
このため、本発明の目的は、撮影画像を用いて評価された農作物の大きさ等級や表面異常に基づいて農作物を選別する農作物選別装置を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の農作物選別装置は、農作物を個別に搬送する搬送部と、個別に搬送される前記農作物の撮影画像を出力する撮影部と、前記農作物の評価情報としての前記農作物の大きさ等級を前記撮影画像から演算する大きさ演算部と、前記評価情報としての前記農作物の表面異常を、前記撮影画像から演算する表面異常演算部と、前記評価情報に基づいて前記農作物を選別する選別部と、を備え、前記大きさ演算部は、前記撮影画像から演算された前記農作物の輪郭と前記輪郭の内部領域の面積とに基づいて、前記大きさ等級を演算する。
【0009】
この構成では、大きさ演算部と表面異常演算部とは、共通の撮影画像を用いることができるので、撮影部を簡単化することができる。さらに、大きさ演算部は、農作物の輪郭とこの輪郭の内部領域の面積とに基づいて、当該農作物の大きさ等級を決定するので、形状がいびつなために生じる商品価値の少ない部分の面積も含めた総面積で大きさ等級を決定するという不都合を抑制することができる。
【0010】
多くの農作物は重量単位で価格が決められて販売されるので、農作物の選別基準として、農作物の重量は重要である。撮影画像からは正確な重量は算出できない。しかしながら、農産物の密度や形状などの固有特性を考慮すれば、撮影画像から容易に算出できる農作物の投影面積から、農作物の重量を正確に導出することができる相関関係を作成することができる。このことから、好適な実施形態では、前記大きさ演算部は、前記撮影画像から演算された前記輪郭と前記内部領域の面積とに基づいて、前記農作物の重量を演算し、前記重量に基づいて前記大きさ等級を演算することができる。
【0011】
農作物の表面異常は、以前から目視によって行われており、その評価基準は、農作物の種類、その品種、生育時期(早生または晩生)などの条件によって異なる。このため、表面異常は、そのような条件を考慮して設定された評価基準を用いて、評価されることが要求される。評価基準は、判定すべき表面異常を有する適時の農作物の撮影画像等に基づいて設定されることが好ましい。このことから、好適な実施形態では、前記表面異常演算部は、前記撮影画像における農作物領域と、予め選択された異常判定用参照画像との比較によって、前記表面異常を演算する比較演算機能を有する。ここでの異常判定用参照画像は、実際に表面異常と見なされる農作物の撮影画像でもよいし、実際に表面異常と見なされる農作物の疑似的に作成された画像でもよい。
【0012】
表面異常には、農作物の全体輪郭の変形、例えば、人参や胡瓜や茄子の曲がりなどが、含まれる。しかしながら、農作物の全体輪郭を一括して評価することは、画像分析の負荷が高い。農作物の形状特徴に応じて、先端区域、中間区域、根元区域に区分けし、区分けされた部分ごとに適した画像分析することで、この画像分析は簡単化される。このことから、好適な実施形態では、前記表面異常演算部は、前記輪郭の全体的な幾何学的特徴によって区分けされた部分の形状特性に基づいて前記表面異常を演算する。
【0013】
また、農作物の先端形状に生じる表面異常では、農作物の先端区域の画像分析だけで十分であり、根元に生じる表面異常では、農作物の根元区域の画像分析だけで十分である。また、農作物の先端区域と根元区域を除く本体区域に生じる表面異常では、農作物の本体区域の画像分析だけで十分である。このことから、好適な実施形態では、前記表面異常演算部は、前記輪郭から形状特性幾何学的特徴によって区分けされた部分輪郭の形状特性に基づいて前記表面異常を演算する。
【0014】
農作物の表面に生じるシミなどの特異点の発生が原因となる表面異常は、その大きさや個数が重要となる。大きいシミは1つでも問題となる場合があり、小さなシミでも、多数あれば問題となる。このことから、好適な実施形態では、前記表面異常演算部は、前記輪郭内の明度特異点の面積と個数に基づいて前記表面異常を演算する。
【0015】
農作物において問題となる大きさや表面異常に関して、農作物の種類、その品種、さらには生育時期によっても、その重要度が変化する場合があり、その結果、その選別条件や仕分け先も変化する。したがって、選別条件が自由に変更可能で、種々の仕分けが可能なことが要望される。このことから、好適な実施形態では、前記選別部は、前記大きさ等級と前記表面異常との組み合わせに基づいて、前記農作物を選別して、前もって設定された各仕分け先に投与するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】農作物選別装置の制御系を示す機能ブロック図である。
【
図3】大きさ判定のために評価基準設定用画面を示す模式図である。
【
図4】輪郭形状判定のために評価基準設定用画面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、農作物選別装置の実施形態として、大きさと表面異常とによって人参を選別する人参選別装置を説明する。
図1は、人参選別装置の概略斜視図である。人参選別装置は、供給部11と、整列部12と、搬送部13と、選別部14とから構成されている。供給部11は、貯留ホッパとして形成されている。整列部12は、供給部11から上方に搬送した人参を整列させて、1個ずつ送り出す。搬送部13は、供給部11から送り出された人参を選別部14に搬送する。選別部14には、8つの仕分け先が人参の搬送方向に沿って形成されている。選別部14は、後述する農作物評価処理によって生成された評価情報に基づいて、搬送されてくる人参を適切な仕分け先に投与する。
【0018】
人参選別装置の速度等を設定するために、人参選別装置には操作パネル15が設けられている。さらに、人参の評価情報としての、人参の大きさ等級及び表面異常レベル算出には、人参の撮影画像が用いられるので、搬送部13の上方には、搬送されている人参を撮影するカメラを含む撮影部2が設けられている。
【0019】
図2には、農作物選別装置の制御系を示す機能ブロック図が示されている。この制御系には、選別機制御装置10が含まれている。選別機制御装置10は、操作パネル15及び選別制御ユニット100からの制御パラメータを受け取り、人参選別装置を制御する。選別制御ユニット100は、撮影部2から人参の撮影画像を取得し、人参の大きさ等級や表面異常の状態などを演算し、その演算結果を評価情報として選別部14に送る。選別制御ユニット100は、農作物評価ユニット3、評価基準設定部4、参照画像管理部6を備えている。さらに、作業者による情報入力及び作業者への情報表示を行う表示部として機能するタッチパネルユニット5も備えられている。
【0020】
農作物評価ユニット3は、大きさ演算部31と表面異常演算部32とを有する。大きさ演算部31と表面異常演算部32とに用いられる評価基準は、評価基準設定部4によって設定される。撮影部2からの人参の撮影画像は、大きさ演算部31と表面異常演算部32とに与えられる。大きさ演算部31は、人参の大きさ等級を評価基準と撮影画像とを用いて演算し、表面異常演算部32は、人参の表面異常を評価基準と撮影画像とを用いて演算する。農作物評価ユニット3は、大きさ演算部31及び表面異常演算部32の演算結果に基づいて、人参の評価結果としての評価情報を生成して、選別部14に出力する。
【0021】
大きさ演算部31は、人参の撮影画像から演算された人参の輪郭とこの輪郭の内部領域の面積とに基づいて、大きさ等級を演算する。大きさ等級は、小さいものから順に、「SSS」、「SS」、「S」、「M」、「L」、「LL」、「LLL」である。これらから選択された等級が、実際に、選別部14による仕分け先に割り当てられる。なお、標準的な人参よりかなり細長い人参は、標準的な人参と同じ面積であっても、同じ大きさ等級と見なされるとは限らない。また、野菜や果物の種類によっては、見た目の大きさより、重量でその大きさが評価されるものもある。このため、この大きさ演算部31は、オプションとして、撮影画像から演算された輪郭とこの輪郭内の面積とに基づいて、その重量を推定演算し、その推定演算結果から大きさ等級を演算する機能も有する。
【0022】
表面異常演算部32は、人参の表面異常を演算するために、この実施形態では、大きく分けて3つの画像処理機能を有する。第1の機能は、撮影画像から抽出された人参領域の輪郭を複数に区分けして得られた特定部分の輪郭における形状特性に基づいて、特定の表面異常を演算する機能である。第2の機能は、撮影画像から抽出された人参領域における画像特異点の面積と個数に基づいて、特定の表面異常を演算する機能である。第3の機能は、撮影画像から抽出された人参領域の特定部分における特定色の分布度に基づいて、特定の表面異常を演算する機能である。
【0023】
農作物評価ユニット3を構成する大きさ演算部31及び表面異常演算部32は、評価基準設定部4によって設定される評価基準に基づいて、人参の評価を行う。この評価基準は、タッチパネルユニット5からの指示情報に基づいて、評価基準設定部4によって生成される。タッチパネルユニット5は、作業者による操作入力に基づいて、指示情報を生成して、評価基準設定部4に与える。
【0024】
タッチパネルユニット5は、表示制御部51と、FPDと略称されるフラットパネルディスプレイ50と、操作部52とを有する。フラットパネルディスプレイ50はタッチパネルとして機能する。操作部52は、フラットパネルディスプレイ50に表示されるソフトウエアスイッチ、及びフラットパネルディスプレイ50の周辺に設けられたハードウエアスイッチを有する。表示制御部51は、フラットパネルディスプレイ50に表示する各種情報を生成する。さらに、表示制御部51は、操作部52による操作入力を処理して得られた処理情報を他の機能部に出力する。つまり、タッチパネルユニット5は、選別制御ユニット100のグラフィックユーザインタフェースを構築している。
【0025】
参照画像管理部6は、後述される参照画像を管理する。フラットパネルディスプレイ50には、参照画像管理部6から取り込まれた参照画像が表示される。参照画像の一例は、人参であることが視認できる実参照画像であり、人参の種々の大きさを示す撮影画像や人参を表す参照画像の近似外形線である。実参照画像として、撮影画像に代えて、イラスト画像が用いられてもよい。参照画像の他の例は、種々の表面異常を示す人参の撮影画像(異常参照画像)である。この異常参照画像も、撮影画像に代えて、イラスト画像が用いられてもよい。
【0026】
次に、参照画像管理部6とタッチパネルユニット5と評価基準設定部4との協働によって、評価基準を生成する評価基準生成処理を説明する。
【0027】
(大きさ評価を行うための評価基準)
大きさ評価を行うための評価基準を生成する処理では、
図3に示すような、フラットパネルディスプレイ50の画面が用いられる。この画面の中央には、標準となる大きさの人参を示す実参照画像が表示され、さらに、この実参照画像に重ね合わせて、人参の外形を単純化した複数(
図3では4つ)の近似外形線が表示されている。この近似外形線も参照画像管理部6に管理されている。さらに、画面の下方領域には、人参の面積(投影面積)の等級を設定する第1横バーと、人参の太さ(幅)の等級を設定する第2横バーが表示されている。第1横バーには複数(
図3では3つ)の面積カーソルが、作業者の操作によって、第1横バーに沿って移動可能に配置されている。第2横バーにも複数(
図3では3つ)の太さカーソルが、作業者の操作によって、第2横バーに沿って移動可能に配置されている。複数の面積カーソルは、面積等級を設定するものである。各面積カーソルの第1横バーでの位置は、それぞれに割り当てられている近似外形線の面積と連動しており、各面積カーソルの位置により、S、M、L、LLといった面積等級が区分けされる。同様に、複数の太さカーソルは、太さ等級を設定するものである。各太さカーソルの第2横バーでの位置は、それぞれに割り当てられている近似外形線の幅と連動しており、各太さカーソルの位置により、S、M、L、LLといった太さ等級が区分けされる。この太さカーソルの位置により、面積だけで大きさの等級を設定するのではなく、太さによって大きさの等級を制限することができる。これにより、例えば、面積が同じでも細すぎる人参の等級を下げることが可能となる。
【0028】
面積カーソル及び太さカーソルに対する操作(操作入力)によって、各近似外形線が拡縮調整される。最終的に調整された近似外形線である複数の調整外形線が、評価基準設定部4に送られる。評価基準設定部4は、調整外形線に関するデータを指示情報として処理し、大きさに関する評価基準を生成し、農作物評価ユニット3に送る。この大きさに関する評価基準は、大きさ演算部31に設定される。大きさ演算部31は、撮影部2から送られてくる撮影画像の画像処理結果を評価基準と比較して、搬送中の人参の大きさ等級を演算する。
【0029】
具体的には、調整外形線には、基準となる大きさの人参を示す実参照画像(参照画像の一例)より大きな1つ以上の拡大外形線と、実参照画像より小さな1つ以上の縮小外形線と、拡大外形線と縮小外形線との間の面積を有する標準外形線とが含まれている。拡大外形線は、人参の面積及び太さに関して大サイズ(LLやL)の評価基準となり、前記縮小外形線は、人参の面積及び太さに関して小サイズ(SやSS)の評価基準となり、標準外形線は、人参の面積及び太さに関して中サイズ(M)の評価基準となる。なお、縮小外形線や標準外形線や拡大外形線などお各種外形線に代えて、それぞれの外形線に対応する参照画像のデータを指示情報として評価基準設定部4に送ってもよい。その場合、評価基準設定部4は指示情報として送られた参照画像のデータに基づいて、評価基準を生成して、農作物評価ユニット3に設定する。
【0030】
(表面異常評価を行うための評価基準)
表面異常評価を行うための評価基準を生成する処理では、例えば、
図4に示すような、フラットパネルディスプレイ50の画面が用いられる。
図4に示す例では、中央領域には、種々の形態の人参を示す異常参照画像群(比較のため異常でない参照画像も含まれている)がマトリックス状(
図4では5行×6列)に配置されており、その下方領域には、判定横バーが配置されている。判定横バーには、判定カーソルが、作業者の操作によって、判定横バーに沿って移動可能に配置されている。判定カーソルは、マトリックス状に配置された人参の各列の境界位置に移動可能である。この画面は、人参の表面異常としてのこぶの状態を判定するために用いられる。したがって、中央領域には、こぶの状態が正常から異常までの人参が段階的に並べられている。中央領域において、右端の列には、最も正常な等級(OK)とみなされる人参が配置されており、左端の列には、最も異常な等級(NG)とみなされる人参が配置されている。各列において、同じ等級であるが異なる正常状態または異常状態の人参が配置されている。つまり、異常度の大きさに準じて順番に表示されている。これにより、作業者は、種々の形態の人参の異常状態レベルを容易に視認することができる。なお、このような異常参照画像群は、その異常段階を示す属性値をもって、参照画像管理部6に管理されている。
【0031】
作業者は、OKとNGとを区分けする境界となる位置に判定カーソルを移動させる。最終的な判定カーソルの位置に基づいて、タッチパネルユニット5は、こぶを評価するための指示情報を生成し、評価基準設定部4に送る。評価基準設定部4は、指示情報に基づいて、表面異常の一例であるこぶに関する評価基準を生成し、農作物評価ユニット3に送る。このこぶに関する評価基準は、表面異常演算部32に設定される。表面異常演算部32は、撮影部2から送られてくる撮影画像を画像処理するとともに、その画像処理結果と設定された評価基準とを照合し、撮影された人参の表面異常状態を演算する。
【0032】
人参の表面異常には、こぶ以外にへこみや曲根などがあるが、それらを選別条件にする場合にも、上述したように、異常参照画像群と判定カーソルとを用いて、作業者が所望する評価基準を生成して、設定することも可能である。
【0033】
大きさ演算部31によって演算された大きさ等級、及び表面異常演算部32によって演算された表面異常状態に基づいて、仕分け先を指定する評価情報を作成し、選別部14に与える。
【0034】
選別部14における仕分け先の設定には、例えば、
図4に示すような仕分け先設定画面が用いられる。この例では、仕分け先は8か所であり、仕分け条件は、大きさ等級と表面異常の種類とである。大きさ等級として、SSSからLLLまでの等級が選択可能あり、表面異常の種類として、異常なし、曲根、岐根、シミ、傷、着色不良、青首が選択可能である。例えば、設定に応じて、大きさ等級はMで表面異常なしの人参は仕分け先「1」に仕分けられ、大きさ等級はLでこぶ異常の人参は仕分け先「5」に仕分けられる。
【0035】
人参選別装置の稼働状態の確認、及び稼働状態の変更は、
図6に示す運転中画面を通じて可能である。この実施形態では、運転中画面の中央領域には、撮影部2からの撮影画像が表示される。下方領域には、装置の処理速度を調整するボタン群が表示されている。ボタン群には、停止ボタン、一時停止ボタン、運転開始ボタン、速度ダウンボタン、速度アップボタンが含まれている。
【0036】
(画像処理アルゴリズム)
次に、農作物評価ユニット3で実行される表面異常を検知するための画像処理アルゴリズムの例を説明する。
(1)こぶ、へこみ(外周領域)
図7に示すような人参の表面異常としてのこぶやへこみの検知では、人参の先端区域と根元区域とが除外される。除外される先端区域と根元区域との長さは、それぞれ全長のp%とする。このpは作業者によって任意に設定可能である。先端区域と根元区域とを除外した残りの中間区域が検出対象領域となる。なお、実際の撮影画像では、先端区域と元領域とが逆になることもあるので、先端区域と根元区域とは、区別しなくてもよい。あるいは、人参が円錐状であることから、自動的に先端区域が一方側となるように画像回転させてもよい。
図7に示された外周領域でのこぶの評価は、人参の断面に相当する人参の撮影画像の輪郭内部領域を所定画素数の幅で横断方向に断片化し、人参の仮想中心線P1から各断片の頂点までの長さに基づいて行う。具体的には、所定範囲での各断片の頂点の包絡線における極大値を求める。さらに、この極大値を有する断片の頂点を中心として、所定半径(
図7ではrで示されている)の判定円を設定する。この判定円における人参面積と背景面積の割合を求め、人参面積の割合がこぶ閾値以下であれば、こぶと判定する。このようにして抽出したこぶの数がこぶ判定値を超えた場合、この人参は表面異常(こぶ)と評価され、選別される。なお、へこみの評価は、こぶの評価に類似しており、所定範囲での各断片の頂点の包絡線における極大値に代えて、極小値を求め、あとは同じ方法でへこみが評価される。
【0037】
(2)こぶ、へこみ(内部領域)
人参の内部領域(人参撮影画像における内部領域)でのこぶやへこみの検出では、こぶやへこみの境界線で生じる輝度変化を利用したエッジ検出が用いられる。エッジ検出された領域の面積が所定値以上の場合、こぶまたはへこみと見なされ、その個数がこぶ(へこみ)判定値を超えた場合、この撮影画像の人参は表面異常(こぶ、へこみ)と評価され、選別される。なお、人参の表面に生じたシミも同様の方法で評価される。
【0038】
(3)曲根
図8に示すような人参の表面異常としての曲根の検知でも、参の先端区域と根元区域とが除外される。評価対象領域である中間区域の外周輪郭線の近似直線が算出される。ここでは、近似直線は、根元区域と中間区域との境界点と、中間区域と先端区域との境界点を結ぶ直線である。次に、抽出された外周輪郭線の近似直線に対する乖離を算出する。この乖離の算出においても、人参の撮影画像の輪郭内部領域を所定画素数の幅で断片化されることによって得られた各断片の長さ(仮想中心線P1から頂点までの長さ)が用いられる。近似直線と断片の頂点との間の面積(膨らんでいる部分は正の面積、へこんでいる部分は負の面積として区分けられる)を乖離面積として、全ての断片にわたって積算する。なお、根元区域や先端区域に近い区域の断片の長さは、大きな誤差を含むので、平均化された長さが用いられる。積算された乖離面積が曲根判定値を超えた場合、この人参は表面異常(曲根)と評価され、選別される。
【0039】
(4)岐根
図9に示すような人参の表面異常としての岐根の検知は、人参の長手方向に沿って所定画素数間隔で横断線(
図9では点線で示されている画素線)を設定し、その横断線上に、人参部分と背景部分とが繰り返す場合、その横断線を岐根横断線とみなす。この岐根横断線の本数が岐根判定値を超えた場合、この人参は表面異常(岐根)と評価され、選別される。この岐根横断線の本数は、長さを表すことになる(本数×所定画素数)ので、
図8では、岐根判定値が長さqで表され、実際に演算された長さ(岐根横断線の本数)がrで表されている。
【0040】
(5)傷
人参の表面異常としての岐根の検知には、内部領域でのこぶやへこみ検出と同様に、エッジ検出が用いられる。エッジ検出で得られた閉領域を傷領域とし、その傷領域の長さと個数が算出される。第1傷判定値を超えた長さを有する傷領域の個数が、第2傷判定値を超えた場合、この人参は表面異常(傷)と評価され、選別される。
【0041】
(6)着色不良
人参の表面異常としての着色不良の検知にも、シミや傷の検出と同様に、エッジ検出が用いられる。エッジ検出のエッジ閾値として、着色不良を示す、色相、彩度、明度の閾値が設定される。エッジ検出によって得られた着色不良領域の面積が、着色不良判定値を超えた場合、この人参は表面異常(着色不良)と評価され、選別される。
【0042】
(7)青首
人参の表面異常としての青首の検知でも、人参は、先端区域と中間区域と根元区域に分けられる。撮影画像において、先端区域と根元区域とが区別されていない場合には、先端区域と根元区域との両方が検出対象領域となり、先端区域と根元区域とが区別されている場合には、根元区域が検出対象領域となる。検出対象領域において、撮影画像を、背景色、青系色、橙系色で3値化する。3値化された画像データにおいて、青系色の画素数の割合が青首判定値を超えた場合、この人参は表面異常(青首)と評価され、選別される。
【0043】
上述した、画像処理アルゴリズムにおける、表面異常検知のための各種判定値は、デフォルトで設定された値が用いられてもよい。あるいは、
図5に示すような表面異常を異常レベルで並べた異常参照画像群から、作業者が表面異常の境界を選択し、その選択結果に基づいて、表面異常判定値や各種閾値が設定されてもよい。例えば、着色不良の検知の場合、
図5に示されたような実際の着色不良の段階的な撮影画像群から、作業者によって選択された、着色不良とみなされる撮影画像から、着色不良の閾値用データが作成される。
【0044】
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、選別対象の農作物として人参が取り扱われたが、その他の青果物が取り扱われてもよい。
(2)
図2で示された各種機能ブロックは、説明目的のためであり、これらの機能ブロックは、他の機能ブロックと統合されてもよいし、また複数のサブブロックに分割されてもよい。
【0045】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、農作物の撮影画像を用いて、当該農作物を評価し、その評価結果に基づいて選別する農作物選別装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
2 :撮影部
3 :農作物評価ユニット
4 :評価基準設定部
5 :タッチパネルユニット
6 :参照画像管理部
10 :選別機制御装置
11 :供給部
12 :整列部
13 :搬送部
14 :選別部
31 :演算部
32 :表面異常演算部
50 :フラットパネルディスプレイ
51 :表示制御部
52 :操作部
100 :選別制御ユニット