(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】積層グレージング
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20240412BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240412BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20240412BHJP
B60J 1/02 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C03C27/12 L
C03C27/12 N
B32B7/023
B32B7/12
B60J1/02 M
(21)【出願番号】P 2020502478
(86)(22)【出願日】2018-07-18
(86)【国際出願番号】 GB2018052033
(87)【国際公開番号】W WO2019016548
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-06-21
(32)【優先日】2017-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】591229107
【氏名又は名称】ピルキントン グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】チャーリー ジェームス パトリクソン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン アンドリュー リディアルフ
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ジェレミー ブート
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/122507(WO,A1)
【文献】特表2004-522677(JP,A)
【文献】特表2008-537519(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0017472(US,A1)
【文献】特開2004-051466(JP,A)
【文献】特表2009-534245(JP,A)
【文献】国際公開第2017/104632(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/094884(WO,A1)
【文献】特表2014-509963(JP,A)
【文献】国際公開第2016/193669(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12
B32B 1/00 - 43/00
B60J 1/00
B60K 35/00
G02B 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドアップディスプレイにおける結合部材として使用するための積層グレージングであって、前記積層グレージングは、
少なくとも1つの接着性プライを備える層間構造によって接合されたグレージング材料の少なくとも第1のペインおよび第2のペインを備え、
前記グレージング材料の第1および第2のペインの各々は、それぞれ第1の主表面および対向する第2の主表面を有し、
前記積層グレージングは、前記グレージング材料の第1のペインの前記第2の主表面が、前記グレージング材料の第2のペインの前記第1の主表面に面するように構成され、
前記グレージング材料の第2のペインは、0.001重量%~0.12重量%の酸化鉄(Fe
2O
3)含有量を有するソーダ石灰シリカガラスのシートを備え、
前記グレージング材料の第1のペインと第2のペインとの間に赤外線反射フィルムがあり、前記赤外線反射フィルムは、少なくとも1つの金属層、特に少なくとも1つの銀層を備える多層コーティングであり、
さらに、前記グレージング材料の第1のペインの前記第1の主表面は、前記積層グレージングの露出表面であり、そのため、前記グレージング材料の第1のペインの前記第1の主表面上で、法線に対して60°の入射角において、前記グレージング材料の第1のペインの前記第1の主表面に向かって方向付けられる光は、前記積層グレージングで反射されて、第1の反射、第2の反射、および第3の反射を生成し、
前記第1の反射は、前記グレージング材料の第1のペインの前記第1の主表面から反射された光からであり、前記第2の反射は、前記グレージング材料の第2のペインの前記第2の主表面から反射された光からであり、前記第3の反射は、前記赤外線反射フィルムからの反射された光からであり、
前記積層グレージングは、前記第3の反射の強度を低減するために、前記グレージング材料の第1のペインの前記第1の主表面と前記赤外線反射フィルムとの間に光強度低減手段を備えることを特徴とし、
そのため、前記グレージング材料の第1のペインの前記第1の主表面上で、法線に対して60°の入射角において、前記グレージング材料の第1のペインの前記第1の主表面に向かって、770nmで強度I
0を有する電磁放射のビームを方向付け、770nmの波長での前記第3の反射の前記強度は、0.185×I
0以下であり、
法線入射で、前記積層グレージングは、70%を超える可視光透過率(CIE Illuminant A 10度観察者)を有する、積層グレージング。
【請求項2】
770nmでの前記第3の反射の強度は、I
770以下であり、I
770=0.18×I
0、または0.17×I
0、または0.16×I
0、または0.15×I
0、または0.14×I
0、または0.13×I
0、または0.12×I
0である、請求項1に記載の積層グレージング。
【請求項3】
前記電磁放射のビームは、660nmの波長で強度I
0を有し、660nmでの前記第3の反射の前記強度は、0.13×I
0以下であり、および/または、前記電磁放射のビームは、750nmの波長で強度I
0を有し、750nmでの前記第3の反射の前記強度は、0.17×I
0以下である、請求項1または2に記載の積層グレージング。
【請求項4】
前記第3の反射の前記強度を低減するための光強度低減手段は、前記グレージング材料の第1のペイン、前記層間構造、または、1つ以上の光学吸収体を備えるさらなる光吸収ガラスシートの少なくとも1つによって提供される、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層グレージング。
【請求項5】
前記グレージング材料の第1のペインは、酸化鉄(Fe
2O
3)を含む、請求項4に記載の積層グレージング。
【請求項6】
前記第3の反射の前記強度を低減するための光強度低減手段は、前記グレージング材料の第1のペインの前記第2の主表面上にコーティングを備え、前記コーティングは、前記第3の反射の前記強度を低減するための少なくとも1つの光吸収層を備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の積層グレージング。
【請求項7】
前記グレージング材料の第1のペインの前記第2の主表面上の前記コーティングの前記少なくとも1つの光吸収層は、0.1nm~5nmの厚さを有し、および/または、前記グレージング材料の第1のペインの前記第2の主表面上の前記コーティングの前記少なくとも1つの光吸収層は、ニクロムまたはニクロムの酸化物もしくは窒化物を含む、請求項6に記載の積層グレージング。
【請求項8】
前記グレージング材料の第1のペインと前記グレージング材料の第2のペインとが互いに平行ではなく、および/または、前記グレージング材料の第2のペインは、前記グレージング材料の第1のペインよりも可視光に対して高い透過率を有し、および/または、前記赤外線反射フィルムは、銀を含む少なくとも1つの層を備えるか、または前記赤外線反射フィルムは、少なくとも1つの銀の層を備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の積層グレージング。
【請求項9】
前記赤外線反射フィルムは、前記グレージング材料の第1のペインの前記第2の主表面上、または前記グレージング材料の第2のペインの前記第1の主表面上にあり、あるいは、前記赤外線反射フィルムは、キャリアプライ上にある、請求項1~8のいずれか1項に記載の積層グレージング。
【請求項10】
前記赤外線反射フィルムは、100nm~300nmの厚さを有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の積層グレージング。
【請求項11】
前記赤外線反射フィルムは、ZnSnOx、ZnO、またはZnO:Alの少なくとも1つの層を備え、および/または、
前記赤外線反射フィルムは、前記グレージング材料の第1または第2のペインと直接接触する第1の層を備え、および/または、
前記赤外線反射フィルムは、ZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの第1の層とZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの第2の層との間で、銀を含む第1の層を備え、および/または、
前記赤外線反射フィルムは、銀を含む第1の層と銀を含む第2の層とを備え、前記銀を含む第1の層は、ZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの第1の層とZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの第2の層との間にあり、さらに前記銀を含む第2の層は、前記ZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの第2の層とZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの第3の層との間にある、請求項1~10のいずれか1項に記載の積層グレージング。
【請求項12】
法線入射で、前記積層グレージングは、60%未満の(外表面の風速が約4m/秒でISO 13837:2008 Convention Aを使用して測定されたTTS%)全透過日射量を有し、および/または、
法線入射で、前記グレージング材料の第2のペインの前記第2の主表面から反射された光の割合(CIE Illuminant D65 10度観察者)は、12%未満であり、および/または、法線入射で、前記グレージング材料の第2のペインの前記第2の主表面から反射された光(CIE Illuminant D65 10度観察者)は、0未満のa*を有し、および/または、法線入射で、前記グレージング材料の第2のペインの前記第2の主表面から反射された光(CIE Illuminant D65 10度観察者)は、0未満のb*を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の積層グレージング。
【請求項13】
前記積層グレージングに組み込まれる前に、前記赤外線反射フィルムは、前記グレージング材料の第1または第2のシート上にあり、前記赤外線反射フィルムのシート抵抗(Ω/□)は、2Ω/□~4Ω/□であり、および/または、前記積層グレージングにおいて、前記赤外線反射フィルムは、前記グレージング材料の第1または第2のシート上にあり、前記赤外線反射フィルムのシート抵抗(Ω/□)は、2Ω/□~4Ω/□である、請求項1~12のいずれか1項に記載の積層グレージング。
【請求項14】
光の入射ビームが積層グレージングの露出面に衝突するときに、前記積層グレージングによって生じる第3の反射の強度を低減するための1つ以上の光学吸収体の使用であって、前記積層グレージングは、少なくとも1つの接着性プライを備える層間構造によって接合されたグレージング材料の少なくとも2つの(第1および第2の)ペインを備え、前記グレージング材料の第1および第2のペインの各々は、それぞれ第1の主表面および対向する第2の主表面を有し、前記積層グレージングは、前記グレージング材料の第1のペインの前記第2の主表面が、前記グレージング材料の第2のペインの前記第1の主表面に面するように構成され、前記グレージング材料の第2のペインは、0.001重量%~0.12重量%の酸化鉄(Fe
2O
3)含有量を有するソーダ石灰シリカガラスのシートを備え、前記グレージング材料の第1のペインと第2のペインとの間に赤外線反射フィルムがあり、前記グレージング材料の第1のペインの前記第1の主表面は、前記積層グレージングの露出表面であり、そのため、入射角において、前記グレージング材料の第1のペインの前記第1の主表面に向かって方向付けられる光のビームは、前記積層グレージングで反射されて、第1の反射、第2の反射、および第3の反射を生成し、前記第1の反射は、前記グレージング材料の第1のペインの前記第1の主表面から反射された光からであり、前記第2の反射は、前記グレージング材料の第2のペインの前記第2の主表面から反射された光からであり、前記第3の反射は、前記赤外線反射フィルムからの反射された光からであり、前記光学吸収体は、前記グレージング材料の第1のペインの前記第1の主表面と前記赤外線反射フィルムとの間にあり、さらに、前記光学吸収体は、
0.15重量%~2重量%のFe
2
O
3
の酸化鉄含有量を含むボディ着色されたグレージングペイン
である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グレージング材料の少なくとも2つのシートとその間の少なくとも1つの赤外線反射コーティングとを備える積層グレージング、特にヘッドアップディスプレイの結合部材として使用するための積層車両グレージングに関する。
【0002】
車両用のヘッドアップディスプレイ(HUD)システムは、よく知られている。典型的には、HUDは、4つの基本的な部分、(i)車両のドライバーに示す情報を表示するための光源、(ii)データを処理して視覚化する情報を提供するマイクロプロセッサを備える電子部品、(iii)光のビームを運び、ドライバーの目から一定の距離で画像の焦点を合わせる光学系、および(iv)運転情報の画像を外部環境の画像に重ね合わせる結合部材、を有する。
【0003】
結合部材として車両のフロントガラスを使用することが知られている。光源は、車両ドライバーの視線内に投影されるように、フロントガラスの内側に面する表面(換言すれば、車両のキャビンの内部に面する表面)上に投影するように構成される。
【0004】
WO2010/035031A1は、HUDを備えたフロントガラスとして使用するための積層グレージングを記載している。一例では、それぞれが1.8mmの厚さを持ち、80%の光透過率(CIE Illuminant A)で着色された淡緑色のガラスの2つの湾曲したプライが提供される。事前に成形され、完全にまたは部分的には楔型で成形されていない、PVB層間を使用して2つのガラスプライを結合する。
【0005】
車両フロントガラス用のHUDシステムで楔型PVBを使用すると、車両のドライバーが観察する「ゴースト」(または二次画像)の量を減らすことができることは、よく知られている。このようなゴーストは、HUD光源がフロントガラスの内面の空気/ガラスの界面で反射して、車両ドライバーが観察する主画像を生成するためであり、フロントガラスを透過したHUD光は、ガラス/空気の界面(フロントガラスの外側の表面)反射し、また、車両のドライバーに向かって戻って、車両のドライバーが見ることができるが、主画像からわずかにオフセットした副画像を生成する。楔型層間、換言すればPVBは、一次画像と二次画像との間の間隔を狭めており、例えば、US5,013,134を参照されたい。
【0006】
フロントガラスの内面上にコーティングを使用して、HUD光源に使用される狭帯域エミッターが使用する光の波長で、スペクトルの可視部分の他の波長と比較してより高い反射率を表面に提供することは、GB2537474Aから知られている。
【0007】
EP0448522A2は、入射光エネルギーの伝達を同時に減少させ、運転に関するデータを外部環境の画像と組み合わせるのに適した透過型コーティングを備えた自動車用のウインドウシールドを記載している。透過型コーティングは、日射を遮蔽し、ヘッドアップディスプレイタイプの装置から得られる情報を選別する能力を備えている。透明ガラスシートが多層エネルギー反射コーティングでコーティングされている場合、または厚さ2.4mmの透明ガラス、厚さ0.76mmの接着性PVB層、厚さ2.4mmの緑色のガラスで形成されたウインドウシールドの内面上にTiO2の層が蒸着されている例が提供されている。
【0008】
CN105459509Aは、ガラスに関し、より詳細には、より優れた断熱特性を有する二重層ガラスに関する。内側の平らなガラスと、赤外線反射層を備えた外側の平らなガラスと、内側の平らなガラスと外側の平らなガラスとの間に配置された赤外線吸収層とを備える、積層グレージングが記載されている。赤外線反射層は、赤外線吸収層の外側に置かれている。
【0009】
WO2015/056594A1は、色むらが発生しにくい赤外線遮蔽フィルムおよび積層グレージングに関する。WO2015/056594A1は、550nmの波長の光に対して110~150nmの面内リターデーションを有する位相差フィルムと、位相差フィルムの少なくとも一方の表面上に配置された赤外線反射層と、を備える赤外線遮蔽フィルムを提供する。
【0010】
EP28834747A1は、遮熱特性が高い積層グレージング用中間膜を記載している。
【0011】
J.J.Finleyによる「Thin Solid Films,351(1999),p.264-273」において、その表1に、単一および二重スタックコーティングからなる太陽光制御ウインドウシールドコーティングからの反射率および透過率特性が提供されている。
【0012】
赤外線反射コーティングが積層のガラスプライの間にある場合、コーティングされたフロントガラスの問題は、空気/ガラスおよびガラス/空気の界面からの可視光の反射に加えて、赤外線反射コーティングを形成する1つ以上の層と、隣接するコーティング層および/またはガラスおよび/または層間、換言すればPVBとの間の屈折率差のため、赤外線反射コーティングからの可視光の反射も可能である。
【0013】
この追加の反射の結果として、このようなコーティングされたフロントガラスが車両のHUD結合部材として使用される場合、ガラス層の間に赤外線反射コーティングを持たないフロントガラスの上記の一次および二次反射に加えて、また、赤外線反射コーティングからのHUD光源の反射による第3の反射が存在する。
【0014】
この追加の第3の(または3次)反射により、ドライバーが知覚する別の「ゴースト」画像が生じる。残念ながら、フロントガラスのガラス層の間に楔層間を使用して、第2または第3の反射のいずれかを一次反射に合わせることは可能であり得るが(コーティングされた積層を形成するプライの表面に応じて)、第2のおよび第3の反射の両方を一次反射と揃えることはできない。
【0015】
追加のゴースト画像のこの問題は、DE102013017697A1に記載されており、フロントガラスへの投影のための画像光源のスペクトル分布は、コーティングからの反射画像の強度を下げるためにコーティングの最低反射率値をほぼ仮定するように選択される人間の目で認識されなくなる。
【0016】
US5,005,009およびUS5,128,659には、フロントガラスの内側に投影された証拠のディスプレイの光波に一致する選択された光波の吸収剤または遮断剤を使用することが記載されている。一次反射は、車両のドライバーに情報を提示するために使用され、二次反射の強度は吸収体の存在により減少し、それによりゴーストが減少する。この解決策のある問題は、フロントガラスの全体的な光透過率を備えずに、吸収によって複数の異なる波長でゴーストを低減することができない可能性があるマルチカラーHUDシステムと共に存在する。さらに、US5,005,009およびUS5,128,659の両方で、フロントガラスのプライの間にコーティングは存在しない。
【0017】
しかしながら、適切な赤外線反射コーティングも電気的に導電性であるため、フロントガラスのガラスプライの間に赤外線反射コーティングを設けることが望ましい場合があり、そのため、フロントガラスに追加機能、例えば、赤外線反射コーティングに電流を流して、フロントガラスを曇り取り、または除氷することができる加熱可能なフロントガラス機能、を提供するために使用される場合がある。
【0018】
本発明は、上述の問題を少なくとも部分的に克服することを目的とする。
【0019】
したがって、本発明は、第1の態様から、ヘッドアップディスプレイにおける結合部材として使用するための積層グレージングであって、積層グレージングは、少なくとも1つの接着性プライを備える層間構造によって接合されたグレージング材料の少なくとも2つの(第1および第2の)ペインを備え、グレージング材料の第1および第2のペインの各々は、それぞれ第1の主表面および対向する第2の主表面を有し、積層グレージングは、グレージング材料の第1のペインの第2の主表面が、グレージング材料の第2のペインの第1の主表面に面するように構成され、グレージング材料の第1のペインと第2のペインとの間に赤外線反射フィルムがあり、さらに、グレージング材料の第1のペインの第1の主表面は、積層グレージングの露出表面であり、そのため、グレージング材料の第1のペインの第1の主表面上で、法線に対して60°の入射角において、グレージング材料の第1のペインの第1の主表面に向かって方向付けられる光は、積層グレージングで反射されて、第1の反射、第2の反射、および第3の反射を生成し、第1の反射は、グレージング材料の第1のペインの第1の主表面から反射された光からであり、第2の反射は、グレージング材料の第2のペインの第2の主表面から反射された光からであり、第3の反射は、赤外線反射フィルムからの反射された光からであり、積層グレージングは、第3の反射の強度を低減するために、グレージング材料の第1のペインの第1の主表面とグレージング材料の第2のペインの第2の主表面との間に光強度低減手段を備えることを特徴とし、そのため、グレージング材料の第1のペインの第1の主表面上で、法線に対して60°の入射角において、グレージング材料の第1のペインの第1の主表面に向かって、770nmの強度I0を有する電磁放射のビームを方向付けると、770nmの波長での第3の反射の強度は、0.185×I0以下である、積層グレージングを提供する。
【0020】
グレージング材料の第1のペインの第1の主要面とグレージング材料の第2のペインの第2の主要面の間に光強度低減手段を組み込むことにより、770nmでの第3の反射の絶対強度が、グレージング材料の第1のペインの第1の主表面とグレージング材料の第2のペインの第2の主表面との間に光強度低減手段を有さない、同じ積層グレージングと比較して低いことがわかった。
【0021】
光強度低減手段は、好適に高い可視光が積層グレージングを透過することができるようにしつつ、第3の反射の強度を選択的に低減する。
【0022】
容易に明白なように、グレージング材料の第1のペインの第1の主表面上の法線に対して60°の入射角でグレージング材料の第1のペインの第1の主表面に向けられる電磁放射のビームは、典型的には、入射ビームと呼ばれる。
【0023】
特定の波長での第3の反射の強度は、pおよびs偏光電磁放射の双方の下でのその波長における第3の反射の平均である。
【0024】
誤解を避けるために、積層グレージングは、グレージング材料の第1のペインの第2の主表面とグレージング材料の第2のペインの第1の主表面の両方が、赤外線反射フィルムに面するように構成される。
【0025】
誤解を避けるために、積層グレージングは、グレージング材料の第1のペインの第2の主表面とグレージング材料の第2のペインの第1の主表面の両方が少なくとも1つの接着性プライに面するように構成される。
【0026】
当技術分野で知られているように、グレージング材料のペインは、グレージング材料のプライまたはグレージング材料のシートとしばしば呼ばれる。
【0027】
好ましくは、光強度低減手段は、グレージング材料の第1のペインの第1の主表面と赤外線反射フィルムとの間にある。
【0028】
好ましくは、光強度低減手段は、光吸収手段を備える。
【0029】
好ましくは、電磁放射のビームは、波長770nmで強度I0を有し、770nmでの第3の反射の強度は、I770以下であり、ここで、I770=0.18×I0、またはここで、0.17×I0、またはここで、0.16×I0、またはここで、0.15×I0、またはここで、0.14×I0、またはここで、0.13×I0、またはここで、0.12×I0である。
【0030】
好適には、電磁放射の入射ビームが770nmの波長で強度I0を有するとき、770nmでの第3の反射の強度は、0.01×I0以上である。
【0031】
好ましくは、電磁放射のビームは、660nmの波長で強度I0を有し、660nmでの第3の反射の強度は、0.13×I0以下である。
【0032】
電磁放射のビームが660nmの波長で強度I0を有する場合、好ましくは、660nmでの第3の反射の強度は、I660以下であり、ここで、I660=0.12×I0、またはここで、I660=0.11×I0、またはここで、I660=0.1×I0、またはここで、I660=0.09×I0、またはここで、I660=0.08×I0、またはここで、I660=0.07×I0、またはここで、I660=0.06×I0、またはここで、I660=0.05×I0、またはここで、I660=0.04×I0である。
【0033】
好適には、電磁放射の入射ビームが660nmの波長で強度I0を有するとき、660nmでの第3の反射の強度は、0.005×I0以上である。
【0034】
好ましくは、電磁放射のビームは、750nmの波長で強度I0を有し、750nmでの第3の反射の強度は、0.17×I0以下である。
【0035】
電磁放射のビームが750nmの波長で強度I0を有する場合、好ましくは、750nmでの第3の反射の強度は、I750以下であり、ここで、I750=0.16×I0、またはここで、I750=0.15×I0、またはここで、I750=0.14×I0、またはここで、I750=0.13×I0、またはここで、I750=0.12×I0、またはここで、I750=0.11×I0、またはここで、I750=0.10×I0である。
【0036】
好適には、電磁放射の入射ビームが750nmの波長で強度I0を有するとき、750nmでの第3の反射の強度は、0.005×I0以上である。
【0037】
いくつかの実施形態において、光強度低減手段は、グレージング材料の第1のペインによって提供される。
【0038】
好ましくは、グレージング材料の第1のペインは、第3の反射の強度を低減するための吸収手段を備える。
【0039】
好ましくは、グレージング材料の第1のペインは、ガラス、より好ましくはソーダ石灰シリカガラスを含む。典型的なソーダ石灰シリカガラス組成物は、(重量で)SiO2が69~74%、Al2O3が0~3%、Na2Oが10~16%、K2Oが0~5%、MgOが0~6%、CaOが5~14%、SO3が0~2%、Fe2O3が0.005~2%である。ガラス組成物はまた、他の添加物、例えば、正常には2%までの量で存在する精製助剤を含んでもよい。
【0040】
好ましくは、グレージング材料の第1のペインは、酸化鉄(Fe2O3)を含む着色剤部分を含むガラス、特にソーダ石灰シリカガラスのシートである。好ましくは、グレージング材料の第1のペインのガラス組成物中の酸化鉄のレベルは、0.15重量%~2重量%のFe2O3であり、より好ましくは0.2重量%~1.5重量%のFe2O3である。
【0041】
いくつかの実施形態において、グレージング材料の第1のペインは、その第2の主表面上にコーティングを備え、コーティングは、第3の反射の強度を低減するための少なくとも1つの光吸収層を備える。グレージング材料の第1のペインの第2の主表面上のコーティングは、赤外線反射フィルムの一部であっても、またはそれとは別個であってもよい。
【0042】
好ましくは、グレージング材料の第1のペインの第2の主表面上のコーティングの少なくとも1つの光吸収層は、0.1nm~5nm、より好ましくは0.1nm~3nm、さらにより好ましくは0.2nm~2.5nmの厚さを有する。
【0043】
好ましくは、グレージング材料の第1のペインの第2の主表面上のコーティングの少なくとも1つの光吸収層は、ニクロムまたはニクロムの酸化物もしくは窒化物を含む。これらのニクロムの酸化物または窒化物は、化学量論的、準化学量論的、または超化学量論的であってもよい。
【0044】
いくつかの実施形態において、光強度低減手段は、グレージング材料の第2のペインによって提供される。
【0045】
好ましくは、グレージング材料の第2のペインは、第3の反射の強度を低減するための吸収手段を備える。
【0046】
好ましくは、グレージング材料の第2のペインは、ガラス、より好ましくはソーダ石灰シリカガラスを含む。
【0047】
好ましくは、グレージング材料の第2のペインは、酸化鉄(Fe2O3)を含む着色部分を含むガラス、特にソーダ石灰シリカガラスのシートである。好ましくは、グレージング材料の第2のペインのガラス組成物中の酸化鉄のレベルは、0.15重量%~2重量%のFe2O3であり、より好ましくは0.2重量%~1.5重量%のFe2O3である。
【0048】
いくつかの実施形態において、グレージング材料の第2のペインは、その第1の主表面上にコーティングを備え、コーティングは、第3の反射の強度を低減するための少なくとも1つの光吸収層を備える。グレージング材料の第2のペインの第1の主表面上のコーティングは、赤外線反射フィルムの一部であっても、またはそれとは別個であってもよい。
【0049】
好ましくは、グレージング材料の第2のペインの第1の主表面上のコーティングの少なくとも1つの光吸収層は、0.1nm~5nm、より好ましくは0.1nm~3nm、さらにより好ましくは0.2nm~2.5nmの厚さを有する。
【0050】
好ましくは、グレージング材料の第2のペインの第1の主表面上のコーティングの少なくとも1つの光吸収層は、ニクロムまたはニクロムの酸化物もしくは窒化物を含む。これらのニクロムの酸化物または窒化物は、化学量論的、準化学量論的、または超化学量論的であってもよい。
【0051】
いくつかの実施形態において、グレージング材料の第2のペインは、グレージング材料の第1のペインよりも可視光に対して高い透過率を有する。光透過率は、CIE Illuminant C 10度観察者に従って計算され得る。
【0052】
いくつかの実施形態において、グレージング材料の第2のペインは、0.001重量%~0.19重量%のFe2O3、好ましくは0.001重量%~0.12重量%のFe2O3、好ましくは0.001重量%~0.1重量%のFe2O3、の酸化鉄含有量を有するソーダ石灰シリカガラスのシートを備える。高い可視光透過率と高い赤外線透過率を持つグレージング材料の第2のペインを使用することにより、赤外線反射フィルムはグレージング材料の第1のペインおよび/または層間構造から太陽放射を反射することができる。これは、グレージング材料の第1のペインおよび/または層間構造によって吸収される可能性のある太陽放射の量を減らすのに役立ち、これにより、グレージング材料の第1のペインの第1の主表面が車両内部に面する状態で積層グレージングが車両に取り付けられるときに、グレージング材料の第1のペインから離れること、換言すれば、車両内部に伝わる熱量を減らすことができる。
【0053】
いくつかの実施形態において、グレージング材料の第1および/または第2のペインは、透明フロートガラスよりも多くの酸化鉄(重量によるパーセントで表されるFe2O3)を含むガラスシートである。透明フロートガラスとは、BS EN 572 1およびBS EN 572-2(2012)で定義された組成物を有するガラスを意味する。
【0054】
透明フロートガラスの場合、Fe2O3の重量レベルは、典型的には0.11%である。Fe2O3の含有量がこのレベル未満のフロートガラスは、典型的には、低鉄フロートガラスと呼ばれる。そのようなガラスは、普通、他の成分酸化物と同じ基本組成物を有し、換言すれば、低鉄フロートガラスは透明フロートガラスと同様にソーダ石灰ケイ酸塩ガラスである。
【0055】
低鉄フロートガラスは、普通、低鉄含有原料を使用して作製される。典型的には、フロートガラスを含有している低鉄は、重量で0.001%~0.07%のFe2O3を含む。
【0056】
Fe2O3がガラス中に存在する場合、2つの酸化状態、つまり第一鉄(Fe2+)および第二鉄(Fe3+)の状態で存在し得る。ガラスの総酸化鉄Fe2O3含有量は、普通、Fe2O3のみで示され、第一鉄と第二鉄の比率は、総Fe2O3の割合として示される。
【0057】
低鉄含有ガラスの場合、第一鉄のレベルは低く、他の技術をより好適にするが、化学技術によって第一鉄を決定することは可能である。そのような手法の1つは、第一鉄による吸収のピーク領域にある1000nmでのガラスの吸収を測定することである。次いで、よく知られたラランベルト・ベール(Lambert-beer)の法則と適切な第一鉄の吸光係数を使用して、第一鉄の含有量を決定することが可能である。ガラス中の第一鉄と第二鉄の比率を光学的に決定する方法は、CR Bamfordによる「Colour Control and Generation in Glass」、Elsevier(1977)で記載されている。
【0058】
いくつかの実施形態において、第1のペインは、第2のペインよりも可視光に対する透過率が低い。これは、同じ組成物を有するが、第2のグレージングペインが第1のグレージングペインよりも薄い第1のグレージングペインおよび第2のグレージングペインによって達成され得る。あるいは、同等の厚さの場合、第1のグレージングペインは、第2のグレージングペインと比較して第1のグレージングペインの着色剤、特に酸化鉄のレベルが高いため、第2のグレージングペインと比較して可視光線透過率が低くなる。
【0059】
いくつかの実施形態において、第3の反射の強度を低減するための光強度低減手段は、1つ以上の光学吸収体を備えるさらなる光吸収ガラスシートを備える。
【0060】
好ましくは、さらなる光吸収ガラスシートの光学吸収体のうちの少なくとも1つは、酸化鉄(Fe2O3)である。
【0061】
好ましくは、さらなる光吸収ガラスシートの酸化鉄含有量は、0.001重量%~2重量%のFe2O3、好ましくは0.05重量%~1重量%のFe2O3である。
【0062】
積層グレージングがさらなる光吸収ガラスシートを備える場合、好適には、さらなる光吸収ガラスシートは、少なくとも1つの接着性プライを介してグレージング材料の第1のペインに接合され、さらなる光吸収ガラスシートは、少なくとも1つの接着性プライを介してグレージング材料の第2のペインに接合される。
【0063】
いくつかの実施形態において、第3の反射の強度を低減するための光強度低減手段は、着色された層間材料を含む。これは、第3の反射の強度を低減するために積層グレージングに具体的に含まれる着色された層間であってもよく、または他の機能、例えば音響減衰および/または楔止めに役立つ1つ以上の特性を有してもよい。
【0064】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの接着性プライは、着色された層間材料を含む。
【0065】
いくつかの実施形態において、赤外線反射フィルムは、銀を含む少なくとも1つの層を備える。好ましくは、銀を含む少なくとも1つの層の厚さは、1~20nm、より好ましくは5~15nmである。
【0066】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、少なくとも1つの銀層を備え、好ましくは、少なくとも1つの銀層の厚さは、1~20nm、より好ましくは5~15nmである。
【0067】
好ましくは、赤外線反射フィルムは少なくとも2つの層を備え、少なくとも2つの層の各々は銀を含む。
【0068】
好ましくは、赤外線反射フィルムは少なくとも3つの層を備え、少なくとも3つの層の各々は銀を含む。
【0069】
いくつかの実施形態において、第3の反射の強度を低減するための光強度低減手段は、光吸収コーティング層を備える。
【0070】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、光吸収コーティング層を備える。
【0071】
好ましくは、光吸収コーティング層は、グレージング材料の第1のシートの第2の主表面上にある。
【0072】
好ましくは、光吸収コーティング層は、グレージング材料の第2のペインの第1の主表面上にある。
【0073】
好ましくは、光吸収コーティング層は、ニクロムまたはニクロムの酸化物もしくは窒化物を含む。これらのニクロムの酸化物または窒化物は、化学量論的、準化学量論的、または超化学量論的であってもよい。
【0074】
好ましくは、光吸収コーティング層は、0.1nm~5nm、より好ましくは0.1nm~3nm、さらにより好ましくは0.2nm~2.5nmの厚さを有する。
【0075】
そのような層を蒸着する方法は、当業者に知られており、例えば、US5,279,722、WO0032530A1、WO2009/001443A1、WO2012/110823A1、WO2012/143704A1、WO2012/052749A1、およびWO2015/052494A1などの先行技術に記載されている。
【0076】
いくつかの実施形態において、赤外線反射フィルムは、グレージング材料の第1のペインの第2の主表面上にある。
【0077】
誤解を避けるために、赤外線反射フィルムがグレージング材料の第1のペインの第2の主表面上にあるとき、赤外線反射フィルムは、グレージング材料の第1のペインの第2の主表面と直接接触してもよい。
【0078】
いくつかの実施形態において、赤外線反射フィルムは、グレージング材料の第2のペインの第1の主表面上にある。
【0079】
誤解を避けるために、赤外線反射フィルムがグレージング材料の第2のペインの第1の主表面上にある場合、赤外線反射フィルムは、グレージング材料の第2のペインの第1の主表面と直接接触してもよい。
【0080】
いくつかの実施形態において、赤外線反射フィルムは、キャリアプライ(carrier ply)上にあり、キャリアプライは、グレージング材料の第1または第2のペインではない。
【0081】
キャリアプライは、ガラス、特にソーダ石灰シリカガラスを含んでもよい。
【0082】
好ましくは、キャリアプライは、プラスチック材料、特にポリエチレン、とりわけポリエチレンテレフタレート(PET)を含む。
【0083】
赤外線反射フィルムがキャリアプライ上にある場合、好ましくは、キャリアプライは、第1および第2の接着性プライの間に配置され、第1の接着性プライは、グレージング材料の第1のペインとキャリアプライの間にあり、第2の接着性プライは、グレージング材料とキャリアプライの第2のペイン間にある。
【0084】
好ましくは、キャリアプライは、接着性プライの切り抜き領域に配置される。好ましくは、切り取り領域を有する接着性プライは、第1および第2の接着性プライの間に配置される。
【0085】
本発明の第1の態様の実施形態は、他の好ましい特徴を有する。
【0086】
好ましくは、グレージング材料の第1および/または第2のペインは、ボディ着色されている。
【0087】
好ましくは、赤外線反射フィルムの厚さは、100nm~300nm、より好ましくは150nm~250nm、さらにより好ましくは160nm~200nmである。
【0088】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、少なくとも1つの金属層、特に少なくとも1つの銀層を備える多層コーティングである。
【0089】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、ZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの少なくとも1つの層を備え、ここで、ZnO:Alは、Al2O3でドープされたZnOであり、典型的には約3重量%のAl2O3のレベルである。
【0090】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、少なくとも1つの銀層によってグレージング材料の第1または第2のペインから間隔を空けられた少なくとも1つのZnSnOx層を備える。少なくとも1つのZnSnOx層は、約50/50重量%のZn:Snターゲットからの反応性スパッタリングにより蒸着させることができる。
【0091】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、グレージング材料の第1または第2のペインと直接接触する第1の層を備え、好ましくは第1の層は、ZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alであり、ここで、ZnO:Alは、Al2O3でドープされたZnOであり、典型的には約3重量%のAl2O3のレベルである。
【0092】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、ZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの第1の層とZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの第2の層の間に銀を含む少なくとも第1の層を備え、好ましくは、ZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの第1層は、グレージング材料の第1または第2ペインと直接接触しており、ここで、ZnO:Alは、Al2O3でドープされたZnOであり、典型的には約3重量%のAl2O3のレベルである。
【0093】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、銀を含む第1の層と銀を含む第2の層とを備え、銀を含む第1の層は、ZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの第1の層とZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの第2の層との間にあり、ZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの第1の層は、好ましくはグレージング材料の第1または第2のペインと直接接触しており、銀を含む第2の層は、ZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの第2の層とZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの第3の層の間にあり、ここで、ZnO:Alは、Al2O3でドープされたZnOであり、典型的には約3重量%のAl2O3のレベルである。
【0094】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、グレージング材料の第1または第2のペインと直接接触する第1の層を備え、第1の層は、ZnSnOxであり、25nm~32nmの厚さを有する。
【0095】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、25nm~32nmの厚さを有し、グレージング材料の第1または第2のペインと直接接触するZnSnOxの第1の層を備え、赤外線反射フィルムは、ZnSnOxの第1の層上に7nm未満の厚さを有するZnOxの層をさらに備える。
【0096】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、25nm~32nmの厚さを有し、グレージング材料の第1または第2のペインと直接接触するZnSnOxの第1の層を備え、赤外線反射フィルムは、厚さが75nm~85nmのZnSnOxの第2の層、およびZnSnOxの第1の層と第2の層との間の少なくとも1つの銀の層をさらに備え、好ましくは、少なくとも1つの銀の層は8nm~13nmの厚さを有する。
【0097】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、25nm~32nmの厚さを有し、グレージング材料の第1または第2のペインと直接接触するZnSnOxの第1の層、75nm~85nmの厚さを有するZnSnOxの第2の層、および銀の層を備え、好ましくはZnSnOxの第1の層と第2の層との間に7nm~13nmの厚さを有し、ここで、赤外線反射フィルムは、好ましくは30nm~45nmの厚さを有するZnSnOxの第3の層と、ZnSnOxの第2および第3の層の間の銀の別の層をさらに備え、銀の別の層は、好ましくは7nm~15nmの厚さを有する。
【0098】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、グレージング材料の第1または第2のペインと直接接触する第1の層を備え、第1の層は、ZnOまたはZnO:Alであり、好ましくは30nm~40nmの厚さを有し、ここで、ZnO:Alは、Al2O3でドープされたZnOであり、典型的には約3重量%のAl2O3のレベルである。
【0099】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、グレージング材料の第1または第2のペインと直接接触する第1の層を備え、第1の層は、ZnOまたはZnO:Alであり、好ましくは30nm~40nmの厚さを有し、赤外線反射フィルムは、少なくとも1つの銀の層を有するZnOまたはZnO:Alの第2の層をさらに備え、ZnOまたはZnO:Alの第2の層は、好ましくは75nm~85nmの厚さを有し、少なくとも1つの銀の層は、好ましくは7nm~13nmの厚さを有し、ここで、ZnO:Alは、Al2O3でドープされたZnOであり、典型的には約3重量%のAl2O3のレベルである。
【0100】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、SiOxの層と、銀を含む少なくとも1つの層とを備え、銀を含む少なくとも1つの層は、グレージング材料の第1または第2のペインとSiOxの層との間にあり、より好ましくは、SiOxの層は、赤外線反射フィルムの最外層である。SiOxの層は、最大30重量%のAl2O3を含むSiターゲットを使用して蒸着され、SiOx:Al層を蒸着することができ、その層は、最大15重量%のAl2O3を含むことができる。
【0101】
好ましくは、少なくとも1つの接着性プライは、ポリビニルブチラール(PVB)、音響変性PVB、エチレンビニルアセテート(EVA)などのエチレンの共重合体、ポリウレタン(PU)、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル(PVC)またはエチレンとメタクリル酸の共重合体を含む。
【0102】
好ましくは、少なくとも1つの接着性プライは、0.3mm~2.3mm、好ましくは0.3mm~1.6mm、より好ましくは0.3mm~0.9mmの厚さを有する。
【0103】
好ましくは、層間構造は、少なくとも2つの接着性プライを備える。
【0104】
好ましくは、層間構造は、互いに離間した少なくとも2つの接着性プライを備える。
【0105】
好ましくは、層間構造は、20層未満の接着性プライ、より好ましくは10層未満の接着性プライ、さらにより好ましくは5層未満の接着性プライを有する。
【0106】
好ましくは、層間構造は、1つの接着性プライのみ、または2つの接着性プライのみ、または3つの接着性プライのみを有する。
【0107】
好ましくは、法線入射で、積層グレージングは、70%、または71%、または72%、または73%、または74%、または75%を超える、より好ましくは70%~80%の可視光透過率(CIE Illuminant A 10度観察者)を有する。
【0108】
好ましくは、法線入射で、積層グレージングは、60%未満、好ましくは55%未満、より好ましくは50%未満の(外表面の風速v1が約4m/秒で、)ISO 13837:2008 Convention Aを使用して測定された(TTS%)全透過日射量を有する。
【0109】
好ましくは、法線入射において、グレージング材料の第2のペインの第2の主表面から反射された光の割合(CIE Illuminant D65 10度)観察者は、12%未満、好ましくは11%未満、より好ましくは10%未満である。
【0110】
好ましくは、法線入射で、グレージング材料の第2のペインの第2の主表面から反射された光(CIE Illuminant D65 10度観察者)は、0以下、好ましくは-10~0のa*を有する。
【0111】
法線入射で、グレージング材料の第2のペイン(CIE Iluminant D65 10度観測者)の第2の主要面から反射された光は、0以下、好ましくは-15~0、より好ましくは-10~0のb*を有する。
【0112】
好ましくは、グレージング材料の第1のペインおよびグレージング材料の第2のペインは、互いに平行ではない。第1および第2のペインを互いに平行にならないように間隔を空けることにより、第2または第3の反射を変位させて、第1の反射と一致させるか、または実質的に一致させることができる。これは、第1と第2のペインの間に楔形状層間を使用することにより、便利に達成でき得る。好ましくは、第2の反射は、グレージング材料の第1および第2のペインの間に楔形状層間を使用することにより、第1の反射と一致するか、または実質的に一致するように変位される。
【0113】
好ましくは、第1のペインの第2の主表面は凹面であり、第2のペインの第2の主表面は対向する凸面である。
【0114】
好ましくは、グレージング材料の第1および/または第2のペインの厚さは、1mm~4mm、好ましくは1.5mm~2.5mmである。
【0115】
好ましくは、積層グレージングの厚さは3mm~10mmである。
【0116】
好ましくは、積層グレージングは、少なくとも一方向に湾曲している。好ましくは、少なくとも1つの方向の曲率半径は、500mm~20000mm、より好ましくは1000mm~8000mmである。
【0117】
好ましくは、グレージング材料の第1のペインは化学強化ガラスペインであり、グレージング材料の第2のペインはソーダ石灰シリカガラスのシートである。
【0118】
好ましくは、積層グレージングに組み込まれる前に、赤外線反射フィルムは、グレージング材料の第1または第2のシート上にあり、赤外線反射フィルムのシート抵抗(Ω/□)は、2Ω/□~4Ω/□、より好ましくは2.5Ω/□~3.5Ω/□である。
【0119】
好ましくは、積層グレージングにおいて、赤外線反射フィルムは、グレージング材料の第1のシートの第2の主平面上にあり、赤外線反射フィルムのシート抵抗(Ω/□)は、2Ω/□~4Ω/□、より好ましくは2.5Ω/□~3.5Ω/□である。
【0120】
好ましくは、積層グレージングにおいて、赤外線反射フィルムは、グレージング材料の第2のシートの第1の主平面上にあり、赤外線反射フィルムのシート抵抗(Ω/□)は、2Ω/□~4Ω/□、より好ましくは2.5Ω/□~3.5Ω/□である。
【0121】
好ましくは、積層グレージングは車両フロントガラスである。
【0122】
第2の態様から、本発明は、光の入射ビームが積層グレージングの露出面に衝突するときに、積層グレージングによって生じる第3の反射の強度を低減するための1つ以上の光学吸収体の使用であって、積層グレージングは、少なくとも1つの接着性プライを備える層間構造によって接合されたグレージング材料の少なくとも2つの(第1および第2の)ペインを備え、グレージング材料の第1および第2のペインの各々は、それぞれ第1の主表面および対向する主表面を有し、積層グレージングは、グレージング材料の第1のペインの第2の主表面が、グレージング材料の第2のペインの第1の主表面に面するように構成され、グレージング材料の第1のペインと第2のペインとの間に赤外線反射フィルムがあり、グレージング材料の第1のペインの第1の主表面は、積層グレージングの露出表面であり、そのため、入射角において、グレージング材料の第1のペインの第1の主表面に向かって方向付けられる光のビームは、積層グレージングで反射されて、第1の反射、第2の反射、および第3の反射を生成し、第1の反射は、グレージング材料の第1のペインの第1の主表面から反射された光からであり、第2の反射は、グレージング材料の第2のペインの第2の主表面から反射された光からであり、第3の反射は、赤外線反射フィルムからの反射された光からであり、光学吸収体は、グレージング材料の第1のペインの第1の主表面とグレージング材料の第2のペインの第2の主表面との間にあり、さらに、光学吸収体は、着色された層間プライ、ボディ着色されたグレージングペインおよびコーティング層からなるリストから選択される、使用を提供する。
【0123】
好ましくは、積層グレージングは車両フロントガラスである。
【0124】
好ましくは、光学吸収体は、グレージング材料の第1のペインの第1の主表面と赤外線反射フィルムとの間にある。
【0125】
好ましくは、着色された層間プライは、接着性着色された層間プライであり、より好ましくは、着色されたPVBまたは着色されたEVAである。好ましくは、接着性着色された層間プライは、少なくとも1つの接着性プライである。
【0126】
好ましくは、着色された層間プライはPETを含む。
【0127】
好ましくは、グレージング材料の第1のペインは、ボディ着色されたグレージングペインを備える。
【0128】
好ましくは、グレージング材料の第1のペインは、ボディ着色されたグレージングペインである。
【0129】
好ましくは、ボディ着色されたグレージングペインは、0.15重量%~2重量%のFe2O3、より好ましくは0.2重量%~1.5重量%のFe2O3、の酸化鉄含有量を含む。
【0130】
好ましくは、ボディ着色されたグレージングペインは、ソーダ石灰シリカガラスを含む。
【0131】
好ましくは、コーティング層は、ニクロムまたはニクロムの酸化物もしくは窒化物を含む。ニクロムの酸化物または窒化物は、化学量論的、準化学量論的、または超化学量論的であってもよい。
【0132】
好ましくは、コーティング層は、0.1nm~5nm、より好ましくは0.1nm~3nm、さらにより好ましくは0.2nm~2.5nmの厚さを有する。
【0133】
好ましくは、光学吸収体は、770nmの強度I0を有する電磁放射のビームを、グレージングの第1のペインの第1の主表面の法線に対して60°の入射角で、グレージング材料の第1のペインの第1の主表面に向けるように、第3の反射の強度を減らすために使用され、770nmの波長での第3の反射の強度は、0.185×I0以下である。
【0134】
好ましくは、光学吸収体は、660nmで強度I0を有する電磁放射のビームを、グレージングの第1のペインの第1の主表面の法線に対して60°の入射角で、グレージング材料の第1のペインの第1の主表面に向けるように、第3の反射の強度を減らすために使用され、660nmの波長での第3の反射の強度は、0.13×I0以下である。
【0135】
好ましくは、光学吸収体は、750nmで強度I0を有する電磁放射のビームを、グレージングの第1のペインの第1の主表面の法線に対して60°の入射角で、グレージング材料の第1のペインの第1の主表面に向けるように、第3の反射の強度を減らすために使用され、750nmの波長での第3の反射の強度は、0.17×I0以下である。
【0136】
光学吸収体は、1つ以上の波長での第3の反射の絶対強度を低減するために使用される。
【0137】
本発明の第2の態様の他の実施形態は、他の好ましい特徴を有する。
【0138】
好ましくは、赤外線反射フィルムの厚さは、100nm~300nm、より好ましくは150nm~250nm、さらにより好ましくは160nm~200nmである。
【0139】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、少なくとも1つの金属層、特に少なくとも1つの銀層を備える多層コーティングである。
【0140】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、ZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの少なくとも1つの層を備え、ここで、ZnO:Alは、Al2O3でドープされたZnOであり、典型的には約3重量%のAl2O3のレベルである。
【0141】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、少なくとも1つの銀層によってグレージング材料の第1または第2のペインから間隔を空けられた少なくとも1つのZnSnOx層を備える。少なくとも1つのZnSnOx層は、約50/50重量%のZn:Snターゲットからの反応性スパッタリングにより蒸着させることができる。
【0142】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、グレージング材料の第1または第2のペインと直接接触する第1の層を備え、好ましくは第1の層は、ZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alであり、ここで、ZnO:Alは、Al2O3でドープされたZnOであり、典型的には約3重量%のAl2O3のレベルである。
【0143】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、ZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの第1の層とZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの第2の層の間に銀を含む少なくとも第1の層を備え、好ましくは、ZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの第1層は、グレージング材料の第1または第2ペインと直接接触しており、ここで、ZnO:Alは、Al2O3でドープされたZnOであり、典型的には約3重量%のAl2O3のレベルである。
【0144】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、銀を含む第1の層と銀を含む第2の層とを備え、銀を含む第1の層は、ZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの第1の層とZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの第2の層との間にあり、ZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの第1の層は、好ましくはグレージング材料の第1または第2のペインと直接接触しており、銀を含む第2の層は、ZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの第2の層とZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの第3の層の間にあり、ここで、ZnO:Alは、Al2O3でドープされたZnOであり、典型的には約3重量%のAl2O3のレベルである。
【0145】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、グレージング材料の第1または第2のペインと直接接触する第1の層を備え、第1の層は、ZnSnOxであり、25nm~32nmの厚さを有する。
【0146】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、25nm~32nmの厚さを有し、グレージング材料の第1または第2のペインと直接接触するZnSnOxの第1の層を備え、赤外線反射フィルムは、ZnSnOxの第1の層上に7nm未満の厚さを有するZnOxの層をさらに備える。
【0147】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、25nm~32nmの厚さを有し、グレージング材料の第1または第2のペインと直接接触するZnSnOxの第1の層を備え、赤外線反射フィルムは、厚さが75nm~85nmのZnSnOxの第2の層、およびZnSnOxの第1の層と第2の層との間の少なくとも1つの銀の層をさらに備え、好ましくは、少なくとも1つの銀の層は8nm~13nmの厚さを有する。
【0148】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、25nm~32nmの厚さを有し、グレージング材料の第1または第2のペインと直接接触するZnSnOxの第1の層、75nm~85nmの厚さを有するZnSnOxの第2の層、および銀の層を備え、好ましくはZnSnOxの第1の層と第2の層との間に7nm~13nmの厚さを有し、ここで、赤外線反射フィルムは、好ましくは30nm~45nmの厚さを有するZnSnOxの第3の層と、ZnSnOxの第2および第3の層の間の銀の別の層をさらに備え、銀の別の層は、好ましくは7nm~15nmの厚さを有する。
【0149】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、グレージング材料の第1または第2のペインと直接接触する第1の層を備え、第1の層は、ZnOまたはZnO:Alであり、好ましくは30nm~40nmの厚さを有し、ここで、ZnO:Alは、Al2O3でドープされたZnOであり、典型的には約3重量%のAl2O3のレベルである。
【0150】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、グレージング材料の第1または第2のペインと直接接触する第1の層を備え、第1の層は、ZnOまたはZnO:Alであり、好ましくは30nm~40nmの厚さを有し、赤外線反射フィルムは、少なくとも1つの銀の層を有するZnOまたはZnO:Alの第2の層をさらに備え、ZnOまたはZnO:Alの第2の層は、好ましくは75nm~85nmの厚さを有し、少なくとも1つの銀の層は、好ましくは7nm~13nmの厚さを有し、ここで、ZnO:Alは、Al2O3でドープされたZnOであり、典型的には約3重量%のAl2O3のレベルである。
【0151】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、SiOxの層と、銀を含む少なくとも1つの層とを備え、銀を含む少なくとも1つの層は、グレージング材料の第1または第2のペインとSiOxの層との間にあり、より好ましくは、SiOxの層は、赤外線反射フィルムの最外層である。SiOxの層は、最大30重量%のAl2O3を含むSiターゲットを使用して蒸着され、SiOx:Al層を蒸着することができ、その層は、最大15重量%のAl2O3を含むことができる。
【0152】
好ましくは、少なくとも1つの接着性プライは、ポリビニルブチラール(PVB)、音響変性PVB、エチレンビニルアセテート(EVA)などのエチレンの共重合体、ポリウレタン(PU)、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル(PVC)またはエチレンとメタクリル酸の共重合体を含む。
【0153】
好ましくは、少なくとも1つの接着性プライは、0.3mm~2.3mm、好ましくは0.3mm~1.6mm、より好ましくは0.3mm~0.9mmの厚さを有する。
【0154】
好ましくは、層間構造は、少なくとも2つの接着性プライを備える。
【0155】
好ましくは、層間構造は、互いに離間した少なくとも2つの接着性プライを備える。
【0156】
好ましくは、層間構造は、20層未満の接着性プライ、より好ましくは10層未満の接着性プライ、さらにより好ましくは5層未満の接着性プライを有する。
【0157】
好ましくは、層間構造は、1つの接着性プライのみ、または2つの接着性プライのみ、または3つの接着性プライのみを有する。
【0158】
第3の態様から、本発明は、少なくとも1つの接着性プライを備える層間構造によって接合されたグレージング材料の少なくとも2つの(第1および第2の)ペインを備える、積層グレージングであって、グレージング材料の第1および第2のペインの各々は、それぞれ第1の主表面および対向する主表面を有し、積層グレージングは、グレージング材料の第1のペインの第2の主表面が、グレージング材料の第2のペインの第1の主表面に面するように構成され、グレージング材料の第1のペインと第2のペインとの間に赤外線反射フィルムがあり、グレージング材料の第1のペインの第1の主表面は、積層グレージングの露出表面であり、そのため、入射角において、グレージング材料の第1のペインの第1の主表面に向かって方向付けられる光は、積層グレージングで反射されて、第1の反射、第2の反射、および第3の反射を生成し、第1の反射は、グレージング材料の第1のペインの第1の主表面から反射された光からであり、第2の反射は、グレージング材料の第2のペインの第2の主表面から反射された光からであり、第3の反射は、赤外線反射フィルムからの反射された光からであり、積層グレージングは、第3の反射の強度を低減するために、グレージング材料の第1のペインの第1の主表面とグレージング材料の第2のペインの第2の主表面との間に光強度低減手段を備える、積層グレージングを提供する。
【0159】
好適には、積層グレージングは、ヘッドアップディスプレイの結合部材として使用されてもよい。
【0160】
好ましくは、光強度低減手段は、グレージング材料の第1のペインの第1の主表面と赤外線反射フィルムとの間にある。
【0161】
好ましくは、光強度低減手段は光吸収手段を備える。
【0162】
好ましくは、積層グレージングは、グレージング材料の第1のペインの第1の主表面とグレージング材料の第2のペインの第2の主表面との間に、770nmの強度I0を有する電磁放射のビームを、グレージングの第1のペインの第1の主表面の法線に対して60°の入射角で、グレージング材料の第1のペインの第1の主表面に向けるように、第3の反射の強度を減らすために使用され、770nmの波長での第3の反射の強度は、0.185×I0以下である、光強度低減手段を備える。
【0163】
特定の波長での第3の反射の強度は、pおよびs偏光電磁放射の双方の下でのその波長における第3の反射の平均である。
【0164】
本発明の第3の態様は、前述の本発明の第1の態様と同様の他の好ましい特徴を有する。
【0165】
好ましくは、積層グレージングは、グレージング材料の第1のペインの第1の主表面とグレージング材料の第2のペインの第2の主表面との間に、60nmの強度I0を有する電磁放射のビームを、グレージングの第1のペインの第1の主表面の法線に対して60°の入射角で、グレージング材料の第1のペインの第1の主表面に向けるように、第3の反射の強度を減らすために使用され、660nmの波長での第3の反射の強度は、0.13×I0以下である、光強度低減手段を備える。
【0166】
好ましくは、積層グレージングは、グレージング材料の第1のペインの第1の主表面とグレージング材料の第2のペインの第2の主表面との間に、750nmで強度I0を有する電磁放射のビームを、グレージングの第1のペインの第1の主表面の法線に対して60°の入射角で、グレージング材料の第1のペインの第1の主表面に向けるように、第3の反射の強度を減らすために使用され、750nmの波長での第3の反射の強度は、0.17×I0以下である、光強度低減手段を備える。
【0167】
いくつかの実施形態において、光強度低減手段は、グレージング材料の第1のペインによって提供される。
【0168】
好ましくは、グレージング材料の第1のペインは、第3の反射の強度を低減するための吸収手段を備える。
【0169】
好ましくは、グレージング材料の第1のペインは、ガラス、より好ましくはソーダ石灰シリカガラスを含む。典型的なソーダ石灰シリカガラス組成物は、(重量で)SiO2が69~74%、Al2O3が0~3%、Na2Oが10~16%、K2Oが0~5%、MgOが0~6%、CaOが5~14%、SO3が0~2%、Fe2O3が0.005~2%である。ガラス組成物はまた、他の添加物、例えば、正常には2%までの量で存在する精製助剤を含んでもよい。
【0170】
好ましくは、グレージング材料の第1のペインは、酸化鉄(Fe2O3)を含む着色剤部分を含むガラス、特にソーダ石灰シリカガラスのシートである。好ましくは、グレージング材料の第1のペインのガラス組成物中の酸化鉄のレベルは、0.15重量%~2重量%のFe2O3であり、より好ましくは0.2重量%~1.5重量%のFe2O3である。
【0171】
いくつかの実施形態において、グレージング材料の第1のペインは、その第2の主表面上にコーティングを備え、コーティングは、第3の反射の強度を低減するための少なくとも1つの光吸収層を備える。グレージング材料の第1のペインの第2の主表面上のコーティングは、赤外線反射フィルムの一部であっても、またはそれとは別個であってもよい。
【0172】
好ましくは、グレージング材料の第1のペインの第2の主表面上のコーティングの少なくとも1つの光吸収層は、0.1nm~5nm、より好ましくは0.1nm~3nm、さらにより好ましくは0.2nm~2.5nmの厚さを有する。
【0173】
好ましくは、グレージング材料の第1のペインの第2の主表面上のコーティングの少なくとも1つの光吸収層は、ニクロムまたはニクロムの酸化物もしくは窒化物を含む。これらのニクロムの酸化物または窒化物は、化学量論的、準化学量論的、または超化学量論的であってもよい。
【0174】
いくつかの実施形態において、グレージング材料の第2のペインは、その第1の主表面上にコーティングを備え、コーティングは、第3の反射の強度を低減するための少なくとも1つの光吸収層を備える。グレージング材料の第2のペインの第1の主表面上のコーティングは、赤外線反射フィルムの一部であっても、またはそれとは別個であってもよい。
【0175】
好ましくは、グレージング材料の第2のペインの第1の主表面上のコーティングの少なくとも1つの光吸収層は、0.1nm~5nm、より好ましくは0.1nm~3nm、さらにより好ましくは0.2nm~2.5nmの厚さを有する。
【0176】
好ましくは、グレージング材料の第2のペインの第1の主表面上のコーティングの少なくとも1つの光吸収層は、ニクロムまたはニクロムの酸化物もしくは窒化物を含む。これらのニクロムの酸化物または窒化物は、化学量論的、準化学量論的、または超化学量論的であってもよい。
【0177】
いくつかの実施形態において、赤外線反射フィルムは、銀を含む少なくとも1つの層を備える。好ましくは、銀を含む少なくとも1つの層の厚さは、1~20nm、より好ましくは5~15nmである。
【0178】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、少なくとも1つの銀層を備え、好ましくは、少なくとも1つの銀層の厚さは、1~20nm、より好ましくは5~15nmである。
【0179】
好ましくは、赤外線反射フィルムは少なくとも2つの層を備え、少なくとも2つの層の各々は銀を含む。
【0180】
好ましくは、赤外線反射フィルムは少なくとも3つの層を備え、少なくとも3つの層の各々は銀を含む。
【0181】
いくつかの実施形態において、第3の反射の強度を低減するための光強度低減手段は、光吸収コーティング層を備える。
【0182】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、光吸収コーティング層を備える。
【0183】
好ましくは、光吸収コーティング層は、グレージング材料の第1のシートの第2の主表面上にある。
【0184】
好ましくは、光吸収コーティング層は、グレージング材料の第2のペインの第1の主表面上にある。
【0185】
好ましくは、光吸収コーティング層は、ニクロムまたはニクロムの酸化物もしくは窒化物を含む。これらのニクロムの酸化物または窒化物は、化学量論的、準化学量論的、または超化学量論的であってもよい。
【0186】
好ましくは、光吸収コーティング層は、0.1nm~5nm、より好ましくは0.1nm~3nm、さらにより好ましくは0.2nm~2.5nmの厚さを有する。
【0187】
いくつかの実施形態では、赤外線反射フィルムは、グレージング材料の第1のペインの第2の主表面上にある。
【0188】
いくつかの実施形態では、赤外線反射フィルムは、グレージング材料の第2のペインの第1の主表面上にある。
【0189】
いくつかの実施形態において、赤外線反射フィルムは、キャリアプライ上にあり、キャリアプライは、グレージング材料の第1または第2のペインではない。
【0190】
本発明の第3の態様の実施形態は、他の好ましい特徴を有する。
【0191】
好ましくは、グレージング材料の第1および/または第2のペインは、ボディ着色されている。
【0192】
好ましくは、赤外線反射フィルムの厚さは、100nm~300nm、より好ましくは150nm~250nm、さらにより好ましくは160nm~200nmである。
【0193】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、少なくとも1つの金属層、特に少なくとも1つの銀層を備える多層コーティングである。
【0194】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、ZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの少なくとも1つの層を備え、ここで、ZnO:Alは、Al2O3でドープされたZnOであり、典型的には約3重量%のAl2O3のレベルである。
【0195】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、少なくとも1つの銀層によってグレージング材料の第1または第2のペインから間隔を空けられた少なくとも1つのZnSnOx層を備える。少なくとも1つのZnSnOx層は、約50/50重量%のZn:Snターゲットからの反応性スパッタリングにより蒸着させることができる。
【0196】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、グレージング材料の第1または第2のペインと直接接触する第1の層を備え、好ましくは第1の層は、ZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alであり、ここで、ZnO:Alは、Al2O3でドープされたZnOであり、典型的には約3重量%のAl2O3のレベルである。
【0197】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、ZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの第1の層とZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの第2の層の間に銀を含む少なくとも第1の層を備え、好ましくは、ZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの第1層は、グレージング材料の第1または第2ペインと直接接触しており、ここで、ZnO:Alは、Al2O3でドープされたZnOであり、典型的には約3重量%のAl2O3のレベルである。
【0198】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、銀を含む第1の層と銀を含む第2の層とを備え、銀を含む第1の層は、ZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの第1の層とZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの第2の層との間にあり、ZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの第1の層は、好ましくはグレージング材料の第1または第2のペインと直接接触しており、銀を含む第2の層は、ZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの第2の層とZnSnOx、ZnOまたはZnO:Alの第3の層の間にあり、ここで、ZnO:Alは、Al2O3でドープされたZnOであり、典型的には約3重量%のAl2O3のレベルである。
【0199】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、グレージング材料の第1または第2のペインと直接接触する第1の層を備え、第1の層は、ZnSnOxであり、25nm~32nmの厚さを有する。
【0200】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、25nm~32nmの厚さを有し、グレージング材料の第1または第2のペインと直接接触するZnSnOxの第1の層を備え、赤外線反射フィルムは、ZnSnOxの第1の層上に7nm未満の厚さを有するZnOxの層をさらに備える。
【0201】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、25nm~32nmの厚さを有し、グレージング材料の第1または第2のペインと直接接触するZnSnOxの第1の層を備え、赤外線反射フィルムは、厚さが75nm~85nmのZnSnOxの第2の層、およびZnSnOxの第1の層と第2の層との間の少なくとも1つの銀の層をさらに備え、好ましくは、少なくとも1つの銀の層は8nm~13nmの厚さを有する。
【0202】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、25nm~32nmの厚さを有し、グレージング材料の第1または第2のペインと直接接触するZnSnOxの第1の層、75nm~85nmの厚さを有するZnSnOxの第2の層、および銀の層を備え、好ましくはZnSnOxの第1の層と第2の層との間に7nm~13nmの厚さを有し、ここで、赤外線反射フィルムは、好ましくは30nm~45nmの厚さを有するZnSnOxの第3の層と、ZnSnOxの第2および第3の層の間の銀の別の層をさらに備え、銀の別の層は、好ましくは7nm~15nmの厚さを有する。
【0203】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、グレージング材料の第1または第2のペインと直接接触する第1の層を備え、第1の層は、ZnOまたはZnO:Alであり、好ましくは30nm~40nmの厚さを有し、ここで、ZnO:Alは、Al2O3でドープされたZnOであり、典型的には約3重量%のAl2O3のレベルである。
【0204】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、グレージング材料の第1または第2のペインと直接接触する第1の層を備え、第1の層は、ZnOまたはZnO:Alであり、好ましくは30nm~40nmの厚さを有し、赤外線反射フィルムは、少なくとも1つの銀の層を有するZnOまたはZnO:Alの第2の層をさらに備え、ZnOまたはZnO:Alの第2の層は、好ましくは75nm~85nmの厚さを有し、少なくとも1つの銀の層は、好ましくは7nm~13nmの厚さを有し、ここで、ZnO:Alは、Al2O3でドープされたZnOであり、典型的には約3重量%のAl2O3のレベルである。
【0205】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、SiOxの層と、銀を含む少なくとも1つの層とを備え、銀を含む少なくとも1つの層は、グレージング材料の第1または第2のペインとSiOxの層との間にあり、より好ましくは、SiOxの層は、赤外線反射フィルムの最外層である。SiOxの層は、最大30重量%のAl2O3を含むSiターゲットを使用して蒸着され、SiOx:Al層を蒸着することができ、その層は、最大15重量%のAl2O3を含むことができる。
【0206】
好ましくは、少なくとも1つの接着性プライは、ポリビニルブチラール(PVB)、音響変性PVB、エチレンビニルアセテート(EVA)などのエチレンの共重合体、ポリウレタン(PU)、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル(PVC)またはエチレンとメタクリル酸の共重合体を含む。
【0207】
好ましくは、少なくとも1つの接着性プライは、0.3mm~2.3mm、好ましくは0.3mm~1.6mm、より好ましくは0.3mm~0.9mmの厚さを有する。
【0208】
好ましくは、層間構造は、少なくとも2つの接着性プライを備える。
【0209】
好ましくは、層間構造は、互いに離間した少なくとも2つの接着性プライを備える。
【0210】
好ましくは、層間構造は、20層未満の接着性プライ、より好ましくは10層未満の接着性プライ、さらにより好ましくは5層未満の接着性プライを有する。
【0211】
好ましくは、層間構造は、1つの接着性プライのみ、または2つの接着性プライのみ、または3つの接着性プライのみを有する。
【0212】
好ましくは、法線入射で、積層グレージングは、70%、または71%、または72%、または73%、または74%、または75%を超える、より好ましくは70%~80%の可視光透過率(CIE Illuminant A 10度観察者)を有する。
【0213】
好ましくは、法線入射で、積層グレージングは、60%未満、好ましくは55%未満、より好ましくは50%未満の(外表面の風速V1が約4m/秒で、ISO 13837:2008 Convention Aを使用して測定されたTTS%)全透過日射量を有する。
【0214】
好ましくは、法線入射で、グレージング材料の第2のペインの第2の主表面から反射された光の割合(CIE Illuminant D65 10度観察者)は、12%未満、好ましくは11%未満、より好ましくは10%未満である。
【0215】
好ましくは、法線入射で、グレージング材料の第2のペインの第2の主表面から反射された光(CIE Illuminant D65 10度観察者)は、0以下、好ましくは-10~0のa*を有する。
【0216】
法線入射で、グレージング材料の第2のペイン(CIE Illuminant D65 10度観測者)の第2の主要面から反射された光は、0以下、好ましくは-15~0、より好ましくは-10~0のb*を有する。
【0217】
好ましくは、グレージング材料の第1のペインおよびグレージング材料の第2のペインは、互いに平行ではない。
【0218】
好ましくは、第1のペインの第2の主表面は凹面であり、第2のペインの第2の主表面は対向する凸面である。
【0219】
好ましくは、グレージング材料の第1および/または第2のペインの厚さは、1mm~4mm、好ましくは1.5mm~2.5mmである。
【0220】
好ましくは、積層グレージングの厚さは3mm~10mmである。
【0221】
好ましくは、積層グレージングは、少なくとも一方向に湾曲している。好ましくは、少なくとも1つの方向の曲率半径は、500mm~20000mm、より好ましくは1000mm~8000mmである。
【0222】
好ましくは、グレージング材料の第1のペインは化学強化ガラスペインであり、グレージング材料の第2のペインはソーダ石灰シリカガラスのシートである。
【0223】
好ましくは、積層グレージングに組み込まれる前に、赤外線反射フィルムは、グレージング材料の第1または第2のシート上にあり、赤外線反射フィルムのシート抵抗(Ω/□)は、2Ω/□~4Ω/□、より好ましくは2.5Ω/□~3.5Ω/□である。
【0224】
好ましくは、積層グレージングにおいて、赤外線反射フィルムは、グレージング材料の第1のシートの第2の主平面上にあり、赤外線反射フィルムのシート抵抗(Ω/□)は、2Ω/□~4Ω/□、より好ましくは2.5Ω/□~3.5Ω/□である。
【0225】
好ましくは、積層グレージングにおいて、赤外線反射フィルムは、グレージング材料の第2のシートの第1の主平面上にあり、赤外線反射フィルムのシート抵抗(Ω/□)は、2Ω/□~4Ω/□、より好ましくは2.5Ω/□~3.5Ω/□である。
【0226】
ここで、以下の図面(縮尺通りではない)を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0227】
【
図1】
図1は、ヘッドアップディスプレイの照明源からの光路を示す、車両フロントガラスなどの積層グレージングの断面を示す。
【
図2】
図2主表面からの反射が抑制された積層グレージングの断面を示す。
【
図3】
図3主表面からの反射が抑制されたガラスの単一ペインの断面を示す。
【
図4】
図4グレージング表面の法線に対して60°の角度の入射ビームを使用して決定された、さまざまな積層グレージングからの600nm~800nmの第3の反射のスペクトル分布を示す。
【
図5】
図5グレージング表面の法線に対して60°の角度の入射ビームを使用して決定された、さまざまな積層グレージングからの380nm~780nmの第3の反射のスペクトル分布を示す。
【
図6】
図6グレージング表面の法線に対して60°の角度のs偏光入射ビームを使用して決定された、さまざまな積層グレージングからの600nm~800nmの第3の反射のスペクトル分布を示す。
【
図7】
図7グレージング表面の法線に対して60°の角度のs偏光入射ビームを使用して決定された、さまざまな積層グレージングからの380nm~780nmの第3の反射のスペクトル分布を示す。
【0228】
図1は、車両フロントガラスなどの積層グレージング1の概略断面図を示す。積層グレージング1は、ガラスの第1のシート3とガラスの第2のシート5とを備える。ガラスシート3、5は、両方ともソーダ石灰シリカ組成物を有する。
図1において、積層グレージング1は、断面が平ら(または平面)として示されているが、典型的には、積層グレージング1は、(太陽に面する)凸状の外面および反対側の凹状の内面を有する。平坦なガラスシートを成形するためのガラス曲げプロセスは、例えば、重力たわみ曲げまたは相補的な曲げ部材間の熱曲げガラスシートのプレス曲げなど、当技術分野でよく知られている。
【0229】
第1のガラスシート3は、接着性層間プライ7によって第2のガラスシート5に接合されている。この実施例において、接着性層間材料はPVBであるが、他の接着性層間材料、例えば、エチレン酢酸ビニル(EVA)が当技術分野で知られている。接着性層間プライ7は、可視領域では着色されていないが、着色されていてもよい。単一の接着性層間プライ7の代わりに、2つ以上の接着性層間プライがあってもよく、その1つ以上が着色されていてもよい。
【0230】
第1のガラスシート3は、コーティングされていないが、第2のガラスシート5は、層間プライ7に面するその主表面上に赤外線反射フィルム9を有する。この実施例において、層間プライ7は、赤外線反射フィルム9と直接接触している。赤外線反射フィルム9は、大気圧化学蒸着および/またはマグネトロンスパッタリングを使用して、第2のガラスシートの主表面上に蒸着され得る。上述したように積層グレージングが湾曲している場合、赤外線反射フィルムは、ガラス曲げプロセスの前または後に蒸着されてもよい。
【0231】
この実施例において、赤外線反射フィルム9は、2つの銀層を備える多層コーティングである。
【0232】
赤外線反射フィルム9のための適切な層構成を表1に示す。
【0233】
赤外線反射フィルムを蒸着させる方法は、当技術分野で知られており、例えば、WO2009/001143A1、WO2010/073042A1、WO2012/007737A1、WO2012/110823A1、およびWO2012/143704A1を参照されたい。
【0234】
例えば、表1の赤外線反射フィルムは、適切な場合に適用される、ACおよび/またはDCマグネトロンスパッタリング装置、中周波、パルスDC、または双極パルスDCスパッタリングを使用して蒸着され得る。
【0235】
ZnおよびSnの酸化物の誘電体層(ZnSnOx、重量比Zn:Snがおよそ50:50)は、Ar/O2スパッタ雰囲気中で亜鉛-錫ターゲットから反応的にスパッタされてもよい。ZnSnOx層におけるZnとSnの重量比は、40~60重量%、換言すれば、ZnSnOx層、重量比Zn:Snがおよそ40:60~ZnSnOx層、重量比Zn:Snがおよそ60:40であってよい。
【0236】
銀(Ag)の層は、本質的に純粋な銀(Ag)で構成され、酸素を追加せずに、かつ10~5ミリバール未満の残留酸素分圧で、Arスパッタ雰囲気で銀ターゲットからスパッタされ得る。
【0237】
Tiの層は、チタンターゲット(純度99.9%)からスパッタされ得、その下の銀層のバリア層として機能する。容易に明白となるように、そのように蒸着されたTiの層は、その上に後続の層を蒸着すると酸化され得、そのためTiの層は、TiOxに酸化され、ここで、xは約2であり得る。TiO2層は、酸素を追加せずに純粋なArスパッタ雰囲気で、準化学量論的な導電性TiOxターゲット(ここで、xは約1.98)を使用して直接蒸着させることができる。
【0238】
ZnO:Alの層は、低レベルの酸素を添加または添加せずに、純粋なArスパッタ雰囲気で導電性ZnOx:Alターゲットからスパッタすることができる。ZnO:Al層は、Ar/O2スパッタ雰囲気中で、AlドープされたZnターゲット(Al含有量約2重量%で)からスパッタされてもよい。
【0239】
ZnOx層は、Ar/O2スパッタ雰囲気中で、Znターゲットからスパッタされてもよい。
【0240】
亜酸化物NiCrOx層は、Ar/O2スパッタ雰囲気中で、Ni80Cr20ターゲットからスパッタされてもよい。
【0241】
SiOxの層は、30重量%までのAl2O3を含むSiターゲットを使用して蒸着することができるため、SiOx:Al層が蒸着し、換言すれば、そのSiOx層は、15重量%までのAl2O3を含むことができる。
【0242】
表1に示された多層コーティングは、マグネトロンスパッタリングを用いて第2のガラスシート5の主表面上に蒸着された。表1に示されるように、ガラス表面に隣接してZnSnOx層がある。他の実施例の反射フィルム赤外線反射フィルムは、表3のサンプル1~4に提供されている。表1における赤外線反射フィルムはまた、サンプル5として表3に提供されている。
【0243】
図1において、PVB層間は、楔型PVB層間であり得るが、PVB層間プライ7は、楔型PVB層間ではない。
【表1】
【0244】
従来の命名法を使用すると、積層グレージング1の外側に面する主表面11(換言すれば、太陽に面する主表面)は、「表面1」または単に「S1」として知られている。第2のガラスシート5の反対側の主表面は、積層グレージング1の「表面2」または「S2」である。第1のガラスシート3のシートの主表面13は、積層グレージング1の「表面4」または「S4」と呼ばれる。第1のガラスシート3の反対側の主表面は、積層グレージング1の「表面3」または「S3」と呼ばれる。
【0245】
当技術分野で慣例であるように、積層グレージング1が車両フロントガラスである場合、第1のガラスシート3は、普通、フロントガラスの内側ペインまたは内側プライとして知られており、第2のガラスシート5は、普通、フロントガラスの外側ペインまたは外側のプライとして知られている。
【0246】
図1から明らかなように、両方の主表面11、13は、露出した主表面である。
【0247】
積層グレージング1は、高温および高圧を使用する従来の積層条件を使用して、例えば、個々のコンポーネントの積層されていないスタックを約100℃~150℃の温度および約5~15気圧の圧力にさらして製造することができる。
【0248】
図1は、積層グレージング1を水平に対して15度傾けて、積層グレージングを水平方向に見るときに3つの画像がどのように観察され得るかを示している。これは、積層グレージング1が車両のフロントガラスとして取り付けられ、車両のドライバーがフロントガラス(換言すれば、積層グレージング1)を通して前方の道路を見るときの状況を示している。
【0249】
積層グレージング1の下には、主表面13上に光の入射ビーム19を照射するように構成された光源17が配置されている。光源17は、HUDシステムの一部であってもよく、白色光源であってもよい。この実施例において、光の入射ビーム19は、水平に対して直角であり、したがって垂直である。
【0250】
光の入射ビーム19は、主表面13上の法線20に対して角度18がある。光の入射ビームは垂直であるため、水平に対する角度15は、ガラス表面13上の法線に対する角度18と同じである。
【0251】
光の入射ビーム19は主表面13に当たり、入射光ビームのある割合が反射ビーム21として主表面13から反射されて、第1の反射を与える。また、反射ビーム21は、ガラス表面13上の法線20に対する角度18がある。
【0252】
図1が示すように、光源17からの光の入射ビーム19の一部は主表面13を透過し、空気/ガラスの境界を通過すると屈折する。光の入射ビームの一部は、第1のガラスシート3、接着性層間プライ7、赤外線反射フィルム9およびガラスシート5を通過して、ガラス/空気の境界(換言すれば、主表面11)から反射されて、反射ビーム23として主表面13を通って出て、第2の反射を与える。
【0253】
第1のガラスシート3および接着性層間プライ7を通過する光源17からの光の入射ビーム19の一部は、赤外線反射フィルム9で反射されて、反射ビーム25として主表面13から出て、第3の反射を与える。
【0254】
図示のようにグレージングを見る位置にいる観察者27は、第1の反射ビーム21からの光(換言すれば、第1の反射)による第1の画像21´(「一次画像」としてしばしば呼ばれる)、第2の反射ビーム23からの光(換言すれば、第2の反射)による第2の画像23´(「二次画像」としてしばしば知られている)、および第3の反射ビーム25からの光(換言すれば、第3の反射)による第3の画像25´(「三次画像」としてしばしば呼ばれる)の、3つの画像を見るであろう。
【0255】
第1のガラスシート3と第2のガラスシート5との間に赤外線反射フィルム9がない場合、第3の画像25´がないことは容易に明白となるであろう。
【0256】
楔型PVBなどの楔型層間プライを使用すると、第1と第2の画像21´、23´を一致させることができるが、層間7の代わりに楔型層間プライを使用して3つの画像21´、23´、および25´を全て一致させることはできない。
【0257】
普通、第1の画像21´は最も明るく、第1の反射ビーム21は、入射光ビーム19の波長分布と本質的に同じ波長分布を有する。
【0258】
第2および第3の反射ビーム23、25の波長分布は、ガラスシート3、5、接着性層間プライ7および赤外線反射フィルム9の性質に依存する。
【0259】
3つの画像(または楔型層間が使用されている場合は2つ)は、車両のドライバーの注意をそらす。
【0260】
第3の画像25´の視認性を最小限に抑えるために、適切な光源17を選択することは可能であり得るが、未知のスペクトル分布を有する、異なる光源、特に異なる白色光源で使用可能な積層グレージングを提供することが特に望ましい。
【0261】
赤外線反射フィルム9からの反射による反射量を定量化(換言すれば、第3の反射ビーム25の絶対反射の波長の分光分布強度変化)するために、市販利用可能な二重ビーム分光光度計を使用して、波長の関数として第3の反射の強度を決定した。以下に説明するように実行されたテストでは、CARY7000UMS分光光度計が使用された。
【0262】
そのような分光光度計を使用すると、各波長で既知の強度の入射電磁放射で波長範囲をスキャンすることが可能になる。CARY7000UMS分光光度計を使用すると、サンプルの完全な特性評価を行うことが可能になり、さまざまな角度および偏光で絶対反射測定を行うことが可能になる。
【0263】
CARY7000UMS分光光度計を使用して絶対反射測定を行う前に、p偏光状態とs偏光状態の両方についてベースラインを個別に実行した。基準光源は、分光光度計によって提供された。
【0264】
次に、必要な波長で分光光度計内の偏光子を使用して、反射のp偏光状態とs偏光状態を別々に測定することにより、各サンプルの反射測定を実施した。特定の波長での絶対反射は、その波長でのpおよびs偏光反射測定の平均であった。それは、
【数1】
ここで、
【数2】
【0265】
上記に従って、
図1を参照して、積層グレージング1の絶対反射スペクトルは、サンプル表面の法線に対する入射角が60°になるように、分光光度計のサンプルハウジングに積層グレージング(またはその一部)を配置することにより決定された。積層グレージングから反射された光は、分光光度計によってキャプチャされ、上記で議論された反射のp偏光状態およびs偏光状態を別々に測定した。
図1を参照すると、本質的に光源17は分光光度計によって提供される光源であり、観察者27は分光光度計(
図2および3に検出器29として示される)によって提供される検出システムであった。
【0266】
この方法で積層グレージング1からの絶対反射スペクトルを決定し、
図1を参照すると、分光光度計で測定される反射光には、第1、第2、および第3の反射ビーム21、23、および25からの光が含まれる。これにより、個々の反射ビーム21、23、および25のスペクトル分布を取得することは、非常に困難になる。
【0267】
したがって、サンプルは測定前に処理されて、ガラスの第2のシート5の主表面11、換言すれば、光が入射した主表面の反対側の積層グレージングの主表面からの反射を抑制し、換言すれば、車両に設置されたときに積層グレージングの「表面1」となることを意図した表面の処理が行われた。
【0268】
この反射は、主表面11をサンドブラストすること、および/または主表面11を黒色塗料で塗装することによって抑制された。CARY7000UMS分光光度計の構成は、処理された表面からまだ反射がある場合、散乱光が検出器によって収集されないことも意味していた。
【0269】
積層グレージング1の第2のガラス5の主表面11からの反射が抑制された状態で、処理後の積層グレージングを分光光度計のサンプルハウジングに挿入し、以前と同様に入射角60°で測定した。
【0270】
これは、
図2に示されており、主表面11は、そこからの反射を抑制するために処理されているため、表面11´としてラベル付けされている。第2の反射ビーム23がここで、抑制されているとすると、分光光度計は、第1および第3の反射ビーム、21および25からのみ光を測定、換言すれば、分光光度計の検出器29がビーム21、25からの合成反射を測定する。再度、sおよびp偏光状態を個別に反射で測定した。
【0271】
第1の反射ビーム21のスペクトル分布を決定するために、単一のガラスシート3は、前述と同様に裏面からの反射が抑制された状態で、以前と同様に分光光度計で60°の入射角で測定された。これは、ガラスシート3のサンドブラスト表面に13´としてラベルが付けられ、
図3に示される。
図3に示された構成において、表面13を通過する光からの表面13´から検出器29への光源17からの反射はない。再度、sおよびp偏光状態を個別に反射で測定した。
【0272】
図3に示された構成では、第1の反射ビーム21のスペクトル分布が得られた。
【0273】
そして、第3の反射ビーム25の波長の関数としての絶対反射の変動が以下のように得られた。
【0274】
図2を参照すると、検出器29は、第1および第3の反射ビームの組み合わされたスペクトル分布を測定する。
【数3】
ここで、
λは、ナノメートル単位の波長であり、
【数4】
は、s偏光電磁放射を用いて、分光光度計によって行われた波長λにおける反射測定であり、
【数5】
は、p偏光電磁放射を用いて、分光光度計によって行われた波長λにおける反射測定であり、
【数6】
は、s偏光電磁放射の下で第1の反射ビーム21の波長λにおける反射であり、
【数7】
は、s偏光電磁放射の下で第3の反射ビーム25の波長λにおける反射であり、
【数8】
は、p偏光電磁放射の下で第1の反射ビーム21の波長λにおける反射であり、および
【数9】
は、p偏光電磁放射の下で第3の反射ビーム25の波長λにおける反射である。
【0275】
波長λでの絶対反射
【数10】
は、式(4)によって与えられ、sおよびp偏光の電磁放射の両方を使用して行われた反射測定の平均値である。
【0276】
図3を参照すると、分光光度計を使用して別の一連の測定が行われ、検出器29は、反射ビーム21のみによる反射を測定する。
【数11】
ここで、
λは、ナノメートル単位の波長であり、
【数12】
は、s偏光電磁放射を用いて、分光光度計によって行われた波長λにおける反射測定であり、および
【数13】
は、p偏光電磁放射を用いて、分光光度計によって行われた波長λにおける反射測定である。
【0277】
パラメータ
【数14】
は、上記で定義した通りである。絶対反射
【数15】
は、式(7)によって与えられ、sおよびp偏光電磁放射の両方を使用して行われた反射測定の平均値である。
【0278】
第3の反射ビーム25の絶対反射の波長のスペクトル分布(式(1)を参照すると、
【数16】
である)を決定するために、第1の反射ビーム21と第3の反射ビーム25の両方からの合成反射情報を含む絶対反射スペクトルから、第1の反射ビーム21からの反射情報のみを含む絶対反射スペクトルを減算することが可能である。これにより、第3の反射ビーム25の波長による絶対反射変動のみが残る。上記の式を参照すると、これは、式(4)-式(7)と等価である。
【数17】
ここで、
【数18】
は、積層グレージング1の2枚のガラスシート3、5間における赤外線反射フィルム9からの反射による第3の反射ビーム25の波長λにおける絶対反射である。
【0279】
パラメータ
【数19】
は、上記ではサンプル表面の法線に対して60°の角度であった、電磁放射の入射ビームの入射角に依存していることに留意されたい。
【数20】
したがって、添字「60」がサンプル表面の法線に対する入射角(度)を指す、電磁放射の入射ビームのパラメータを参照すると便利であり得る。
【0280】
図1を参照すると、赤外線反射フィルム9は、「面2」->「面1」の方向に赤外線エネルギーを反射するように、換言すれば、積層グレージング1が取り付けられる車両に赤外線エネルギーが通過するのを防止するように構成される。サンプル表面の法線に対して60°の入射角での電磁放射の入射ビームのように、
【数21】
は、スペクトルの可視部分および他の選択された波長域を超える、例えば、
図4に示すように600nm~800nmの波長によって異なる。
【0281】
典型的な人間の目は、380nm~780nmの範囲の波長に敏感であるため、可視スペクトルの赤色端の絶対反射量を監視することにより、積層グレージング1が車両に取り付けられるときに、車両のドライバーが観察することができる第3の画像の強度の有用なガイドが提供される。
【0282】
上記のアプローチを使用して、上記のようにサンプル表面の法線に対して60°の入射角で電磁放射の入射ビームを使用して、Cary7000UMS分光光度計を使用して、多数の市販の積層グレージングを測定し、本発明に従って作製された異なる積層グレージングと比較して、第3の反射ビーム25の絶対反射のスペクトル分布を決定する。結果は、「比較例1~6」で表される市販の積層グレージングが
図4に示される。
【0283】
積層グレージング「比較例A」は、良好な日射制御特性(高い可視光透過率および低いTTS%)を達成することの難しさを示すために作製されたものであり、市販の赤外線反射フィルムのタイプの実施例である。
【0284】
図1を参照すると、ガラスシート3は内側ペインとして示され、ガラスシート5は外側ペインとして示される。
【0285】
サンプル1~5は、本発明に従って作製された。
【表2】
【0286】
I表2の全てのサンプルにおいて、赤外線反射フィルムは、ガラスの外側ペインの第1の主表面上にあり、したがって、
図1に示されるように、積層グレージングの中、換言すれば、主表面11と第2のガラスシート5の第1の主表面上の接着性層間プライ7との間に配置される。前述したように、従来の命名法を使用すると、これは、積層グレージング1の表面2である。
【0287】
表2のサンプルの各々についての、赤外線反射フィルム9の個々の層のタイプおよびナノメートル(nm)単位の厚さ、ならびにスタック構成は、表3に示した。誤解を避けるために、
図1を参照すると、サンプル1~5は、それぞれ、ガラスシート5と直接接触する太字で強調されたZnSnOx層(層iともいう)を有する。サンプル2においては、ニクロム含有層は、準化学量論的な酸化NiCrOxであるが、この層は、さまざまな化学量論を有する、NiCr金属層、またはニクロムの酸化物もしくは窒化物であり得ることに留意されたい。上述のように、Tiの層は、ZnSnOxの層などの後続の酸化物層をその上に蒸着すると、完全にまたは部分的に(TiOxに)酸化され得る。また、上述のように、SiOx層は、スパッタリング中に使用されるターゲットの正確なタイプに応じて、15重量%までのAl
2O
3(換言すれば、SiOx:Al層)を含んでもよい。
【0288】
「透明フロートガラス」による上記の表2では、BS EN 572 1およびBS EN 572-2(2012)で定義された組成物を有するガラスを意味する。透明フロートガラスの総酸化鉄含有量は、約0.082重量%のFe2O3であり、Fe2O3として表される第一鉄含有量は、27.3%であった。
【0289】
上記の表2において、「淡緑色フロートガラス」とは、24.5%のFe
2O
3として表される第一鉄含有量で、0.56重量%のFe
2O
3の酸化鉄を有するソーダ石灰シリカガラス組成物(換言すれば、フロートガラス)を意味する。当技術分野で知られているように、着色されたフロートガラス組成物は、透明フロートガラスバッチ組成物の「上部上」に所望のレベルの着色剤を加えることにより、またはガラス組成物中のシリカを犠牲にすることにより、しばしば作製される。透明フロートバッチ組成物を使用して、BS EN 572 1およびBS EN 572-2(2012)で定義された組成物の透明フロートガラスを作製する。
【表3】
【0290】
表3において、表1に示すコーティングを参照して前述したように、マグネトロンスパッタリングを使用して各層を蒸着した。他の真空蒸着プロセス(換言すれば、普通、約0.1ミリバール未満の圧力で行われる)は、例えば、スパッタリング、反応性スパッタリング、蒸着、および他の形態の物理蒸着法を使用して、赤外線反射フィルムを調製することができる。
【0291】
表3に示されたものと同様の他の実施例において、層iおよび/または層iiは、ZnOまたはZnO:Alの層であってもよく、ここで、ZnO:Alは、Al2O3でドープされたZnOであり得、典型的には約3重量%のAl2O3のレベルである。
【0292】
表3に示されたものと同様の他の実施例において、層iおよびiiは、単一の層i*で置き換えることができ、単一の層i*は、一方の側上でガラスシート5と、反対側上で層iiiと直接接触している。単一の層i*は、ZnSnOx、ZnOx、ZnO、またはZnO:Alであり得、ここで、ZnO:Alは、Al2O3でドープされたZnOであり、典型的には約3重量%のAl2O3のレベルである。別の言い方をすれば、層iおよび層iiは、同じ材料であってもよく、ZnSnOx、ZnOx、ZnO、またはZnO:Alであってもよくここで、ZnO:Alは、Al2O3でドープされたZnOであり、典型的には約3重量%のAl2O3のレベルである。上記のコーティングされたガラスシートの実施例から明らかなように、赤外線反射フィルムは、ガラス表面と直接接触するZnSnOx、ZnO、またはZnO:Alの層を有してもよい。
【0293】
また、コーティングされたガラスシートの上記の実施例から明らかなように、赤外線反射フィルムは、ZnSnOx、ZnO、またはZnO:Alの第1の層とZnSnOx、ZnO、またはZnO:Alの第2の層との間に銀を含む第1の層(換言すれば、銀の第1の層)を有してもよく、ZnSnOx、ZnO、またはZnO:Alの第1の層は、ガラス表面に直接接触している。
【0294】
また、コーティングされたガラスシートの上記の実施例から明らかなように、赤外線反射フィルムは、銀を含む第1の層(換言すれば、銀の第1の層)および銀を含む第2の層(換言すれば、銀の第2の層)を有してもよく、銀を含む第1の層は、ZnSnOx、ZnO、またはZnO:Alの第1の層とZnSnOx、ZnO、またはZnO:Alの第2の層の間にあり、ZnSnOx、ZnO、またはZnO:Alの第1の層は、ガラス表面と直接接触しており、そして、銀を含む第2の層は、ZnSnOx、ZnO、またはZnO:Alの第2の層とZnSnOx、ZnO、またはZnO:Alの第3の層との間にある。
【0295】
また、コーティングされたガラスシートの上記の実施例から明らかなように、赤外線反射フィルムは、SiOxの層を有してもよく、ここで、銀を含む少なくとも1つの層は、ガラスとSiOxの層との間にある。SiOxの層が赤外線反射フィルムの最外層であることが好ましく、例えば、SiOx層上に他のコーティング層が存在しなくてもよい。
【0296】
また、前述のように、SiOxの層は、15重量%までのAl2O3を含み得る、SiOx:Al層が蒸着されるように、30重量%までのAl2O3を含むSiターゲットを使用して蒸着させることができる。
【0297】
上記のように第3の反射ビームのスペクトル分布を測定することに加えて、従来の法線入射透過および反射の測定も各積層グレージングに対して行われ、その結果は表4に示されている。他の3つの市販の積層グレージングのこれらの特性は、「比較例7~9」として提供および表示されている。
【0298】
表4の「Tvis(%)」という見出しの列は、可視光線透過率の値(CIE Illuminant A 10度観測者)を示す。
【0299】
表4の「Rext vis(%)」という見出しの列は、グレージングの「表面1」からのISO 9050:2003に従上反射値、換言すれば、
図1を参照すると、主表面11からの可視光の反射値を示す。
【0300】
表4の「Rext a*」および「Rext b*」という見出しの列は、グレージングの「表面1」からの反射色の値(Illuminant D65 10度観測者)であり、換言すれば、
図1を参照すると、主表面11からの反射色である。
【0301】
図4の「TTS(%)」という見出しの列は、ISO 13837:2008Convention Aに従って計算された総透過太陽光量を示しており、外部風速v
1は、同規格の付録BのセクションB.2で指定されているように約4m/秒である。
【0302】
表4の「シート抵抗(Ω/□)」という見出しの列は、積層グレージングに組み込まれる前のコーティングされたガラスシート(コーティング側)のシート抵抗である。そのようなシート抵抗測定を行うための機器は、市販されており、例えば、NAGY,Messsysteme GmbH,Siedlerstr.34,71126 Gaufelden,ドイツを参照されたい。
【0303】
積層グレージングを車両フロントガラスとして使用する場合、シート抵抗は、重要なパラメータになる場合があり、積層グレージングが取り付けられる車両キャビンに入る赤外線エネルギーの量を減らす電気的導電性コーティングは、フロントガラスの曇りを減らすために加熱可能なグレージング機能を提供するために使用されてもよい。
【表4】
【0304】
上記のように決定された積層グレージングからの波長の関数としての第3の反射ビームの絶対反射
【数22】
の値(換言すれば、二重ビーム分光光度計および式1~8を使用して、グレージング材料の第1のペインの第1の主表面の法線に対して60°の入射角で)は、波長領域600~800nmにわたっては
図4に、波長領域380~780nmにわたっては
図5に示される。
図4および
図5から取得した特定の波長での第3の反射に対する特定の絶対反射値
【数23】
(%で)を表5に示す。
【表5】
【0305】
図4および上記の表を参照すると、淡緑色フロートガラスの内側ペインと透明フロートガラスの外側ペインを有するサンプル1は、サンプル比較例Aと比較して、770nmでの第3の反射ビームのための絶対反射
【数24】
の値が、大幅に減少している値を有することがわかる(比較例Aの34.84%と比較してサンプルの12.8%)。サンプル比較例Aは、透明フロートガラスの内側および外側ペインの両方があることに留意されたい。
【0306】
図4および表5を参照すると、770nmでのサンプル1は、770nmでの参照ビームとの比較と解釈して、12.80%の絶対反射
【数25】
を有し、770nmで上記(式1~8も参照)に従って決定された第3の反射の強度は、0.1280×I
oであり、ここで、I
oは、770nmでの参照ビームの強度である。すなわち、770nmでの第3の反射ビームの絶対反射
【数26】
は、12.80%である。
【0307】
透明フロートガラスの内側ペインと外側ペインの両方を有するサンプル2は、NiCrOxの層を備える表面2上に赤外線反射フィルムを有する。
図4からわかるように、サンプル2のNiCrOx層は、サンプル比較例Aと比較して第3の反射ビームの絶対反射の強度を低下させるが、サンプル1と同じ程度ではない。第3の反射ビームの強度は、より厚いNiCrOx層を使用することによりさらに低減され得る。
【0308】
サンプル3は、サンプル1と類似しており、車両フロントガラスとして使用するための許容可能なTvis(%)およびTTS(%)を有する。
【0309】
サンプル4は、特定の用途ではより望ましくあり得る積層グレージングの表面1からの反射において、よりニュートラルな色を有する。
【0310】
サンプル5は、サンプル4と比較して、第3の反射ビーム第3の絶対反射の強度が類似している。すなわち、サンプル5の場合、770nmでの第3の反射ビームの絶対反射は、サンプル4の9.37%と比較して9.36%である。
【0311】
上記のように、サンプル1、3、4、および5は、0.56重量%の酸化鉄(Fe2O3)を含むソーダ石灰シリカガラスのシートとしての、積層グレージングの内側ペイン(換言すれば、ガラスシート3)、および約0.082重量%の酸化鉄(Fe2O3)を含む透明フロートガラスのシートとしての、外側ペイン(換言すれば、ガラスシート5)を有し、ただし、外側ペインの酸化鉄の含有量は、より低い、換言すれば、0.001~0.07重量%のFe2O3であることが好ましい。外側ペインは、0.001~0.15重量%のFe2O3、または0.001~0.12重量%のFe2O3の領域中の酸化鉄含有量を有していてもよい。
【0312】
内側ペインのガラスにおける第一鉄(Fe2O3として表される)の割合は、好ましくは20%~30%であり、換言すれば、内側ペインのガラスは、Fe2O3として表される0.2×0.56=0.112重量%の第一鉄と、Fe2O3として表される0.3×0.56=0.168重量%の第一鉄との間を備える。
【0313】
図1を参照すると、内側ペイン(換言すれば、ガラスのシート3)の酸化鉄含有量は、積層グレージング1に第3の反射ビーム25の強度を低減する手段を提供する。さらに、第3の反射、換言すれば、第3の画像25´の色は、透明フロートガラスの内側ペインを有する積層グレージングと比較してよりニュートラルになる場合がある。
【0314】
サンプル2では、ガラスの内側ペインと外側ペインの両方が、約0.0.082重量%の酸化鉄(Fe
2O
3)含有量を有する透明フロートガラスであった。
図1を参照すると、サンプル2は、厚さ1.95nmの準化学量論的なニクロム酸化物層を有する赤外線反射フィルム9を有し、第3の反射ビーム25を選択的に吸収し、それによって観察者が見ることができる第3の画像25´の強度を低下させる。
【0315】
本発明による積層グレージング、車両フロントガラスなどの特定の用途を見い出し、車両フロントガラスは、ヘッドアップディスプレイシステムにおける結合部材として使用することができる。このようなヘッドアップディスプレイ(HUD)システムにおいて、特定の偏光状態を有する光源を有する光学システムを使用することが望ましい場合があり、例えば、HUDの光学システムの光源は、s偏光またはp偏光であり得る。
【0316】
当技術分野で知られているように、ガラス表面からの鏡面反射の量は、入射ビームの入射角と偏光状態の関数である。例えば、空気/ガラスの界面では、Brewster角で、p偏光の入射ビームは、0反射を有し、ガラスを通して完全に屈折する。対照的に、Brewster角でのs偏光の入射ビームの場合、反射率は、0ではなく、入射ビームの量が反射される。
【0317】
(当技術分野でしばしば偏光角として知られる)Brewster角θ
pは、以下によって定義される。
【数27】
θ
Pは、屈折率n
2のガラス表面上に、換言すれば、法線を有する媒体の表面上の法線に対して測定される。
【0318】
空気からガラスに移動する入射ビームの場合において、n2は、ガラスの屈折率であり、n1は、空気の屈折率である。
【0319】
例えば、ソーダ石灰シリカガラスは、540nmで1.52の屈折率(=n2)、540nmでの空気の屈折率(=n1)は、1.00である。上記の式(9)を使用すると、θPは、ガラス表面上の法線に対して56.7°程度である。そのため、ガラス表面上の法線に対して60°の入射角の非偏光の入射ビームでは、反射されたp偏光の量は非常に少なくなり(入射角がBrewster角に近いので)、ガラス表面からの反射は、本質的にs偏光のみと見なすことができる。
【0320】
上記の式(2)および(5)を参照すると、s偏光の入射ビームが使用された場合、
【数28】
それゆえ、式(2)および(5)を使用して、
【数29】
(s偏光電磁放射の下での第3の反射ビーム25の波長λでの反射)を分離することが可能であり、以下の式(10)を参照されたい。
【数30】
前述のように、
【数31】
は、s偏光電磁放射の下での第3の反射ビーム25の波長λでの反射である。
【0321】
図6は、ガラス表面上の法線に対して60°の入射角でのs偏光電磁放射の入射ビームを用いた、第3の反射ビームの反射強度の600nm~800nmの波長の変化を示すグラフであり、換言すれば、
図6は、上述したパラメータを示し、式(10)用いて計算される。
【数32】
予想通り、入射角はBrewster角に近いため、
図4および
図6に表されたデータ間には強い類似性がある。
【0322】
ガラス表面上の法線に対して
【数33】
660°の入射角でのs偏光電磁放射の入射ビームについて、660nm、750nm、770nm、および800nmにおける、パラメータの値を表6に提供する。
【表6】
【0323】
図7は、
図6と同様であり、ガラス表面上の法線に対して60°の入射角でのs偏光電磁放射の入射ビームを使用して、第3の反射ビームの反射強度の380nm~780nmの波長の変化を示すグラフである。再度、予想どおり、入射角はBrewster角に近いため、
図5および7に表されたデータには類似性がある。
【0324】
本発明は、フロントガラスとして使用するための積層グレージングを提供する。フロントガラスは、ヘッドアップディスプレイシステムの結合部材として使用されることができる。内側および外側ガラス板の間に赤外線反射フィルムを有する既知の積層フロントガラスと比較して、本発明の実施形態は、車両のドライバーによって見られる強度が低下した第3の画像に変換される、770nmでのより低い絶対反射を有する。