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特許7471222睡眠段階の予測及びそれに基づいた介入準備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】睡眠段階の予測及びそれに基づいた介入準備
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20240412BHJP
   A61M 21/02 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
A61B5/16 130
A61M21/02 G
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020533747
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2018086061
(87)【国際公開番号】W WO2019122056
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】62/608,646
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア モリーナ,ゲイリー ネルソン
(72)【発明者】
【氏名】ブレッシュ,エリック
(72)【発明者】
【氏名】グロッセカテーファー,ウルフ
(72)【発明者】
【氏名】ハインリッヒ,アドリエンネ
(72)【発明者】
【氏名】パストール,サンデル テオドール
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-064390(JP,A)
【文献】国際公開第2016/087983(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0190086(US,A1)
【文献】特開2015-013046(JP,A)
【文献】国際公開第2016/157641(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/109621(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/16
A61M 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
睡眠段階の予測と、該睡眠段階の発生の前の介入準備とを容易にするよう構成されるウェアラブルデバイスであって、
対象の上に置かれ、該対象の脳活動に関する情報を運ぶ出力信号を生成するよう構成される1つ以上のセンサと、
介入を前記対象へ与えるよう構成される1つ以上の刺激装置と、
コンピュータ読み出し可能な命令によって、
睡眠セッションの第1期間に関して前記出力信号を表すサンプルを決定し、
前記睡眠セッションの前記第1期間中の第1時間に前記サンプルを予測モデルへ供給し、前記第1時間よりも後の前記睡眠セッションの第2時間付近の時刻に起こる前記対象の睡眠段階を予測し、
前記第2時間より前に、前記睡眠段階の前記予測に基づいて、末梢刺激に関する1つ以上の刺激装置パラメータを示す介入情報を決定し、
前記第2時間付近の時刻に前記対象へ介入を与える睡眠妨害リスクを決定し、
前記睡眠妨害リスクが所定のリスク基準を満たさないことを決定し、
前記介入情報と、前記睡眠妨害リスクが前記所定のリスク基準を満たさないとの決定とに基づいて、前記1つ以上の刺激装置に、前記睡眠セッションの前記第2時間付近の時刻に前記対象へ前記介入を与えさせ、
前記睡眠妨害リスクが前記所定のリスク基準を満たすとの決定に基づいて前記介入を低減する
よう構成される1つ以上の物理プロセッサと
を有するウェアラブルデバイス。
【請求項2】
前記1つ以上の物理プロセッサは、前記予測モデルから前記睡眠段階の前記予測を得るよう構成される、
請求項1に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項3】
前記1つ以上の物理プロセッサは、
前記予測モデルから、前記第2時間付近の時刻に起こる前記睡眠段階の確率と、前記第2時間付近の時刻に起こる1つ以上の他の睡眠段階の1つ以上の他の確率とを取得し、
前記確率及び前記1つ以上の他の確率に基づいて、前記睡眠段階の前記予測を得るよう前記睡眠段階を選択する
よう構成される、
請求項1に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項4】
前記第2時間は、前記第1時間の少なくとも10秒後である、
請求項1に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項5】
前記1つ以上の物理プロセッサは、
前記睡眠セッションの少なくとも一部の間に、前記睡眠セッションの1つ以上の他の期間に関して前記出力信号を表す他のサンプルを連続的に決定し、
前記睡眠セッションの少なくとも一部の間に、前記1つ以上の他の期間の各期間中に前記他のサンプルの各々のサンプルを前記予測モデルへ供給し、該供給後の他の時間付近の時刻に起こる前記対象の睡眠段階を予測し、
前記睡眠セッションの少なくとも一部の間に、前記睡眠段階の前記予測に基づいて更なる介入情報を連続的に決定する
よう更に構成される、
請求項1に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項6】
前記1つ以上の物理プロセッサは、
1つ以上の前の睡眠セッションに関する履歴情報又は前記対象に関する略歴情報を取得し、
前記予測モデルに、前記履歴情報又は前記略歴情報に基づいて、前記睡眠段階の前記予測に関する1つ以上の出力を生成させるよう、前記予測モデルへ前記履歴情報又は前記略歴情報を供給する
よう更に構成される、
請求項1に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項7】
前記介入は、磁気刺激、聴覚刺激、光刺激、電気刺激、触覚刺激、又は嗅覚刺激を有する、
請求項1に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項8】
睡眠段階の予測と、該睡眠段階の発生の前の介入準備とを容易にする方法であって、
1つ以上のセンサにより、対象の脳活動に関する情報を運ぶ出力信号を生成することと、
1つ以上の物理プロセッサにより、睡眠セッションの第1期間に関して前記出力信号を表すサンプルを決定することと、
前記1つ以上の物理プロセッサにより、前記睡眠セッションの前記第1期間中の第1時間に前記サンプルを予測モデルへ供給し、前記第1時間よりも後の前記睡眠セッションの第2時間付近の時刻に起こる前記対象の睡眠段階を予測することと、
前記1つ以上の物理プロセッサにより、前記第2時間より前に、前記睡眠段階の前記予測に基づいて、末梢刺激に関する1つ以上の刺激装置パラメータを示す介入情報を決定することと、
前記第2時間付近の時刻に前記対象へ介入を与える睡眠妨害リスクを決定することと、
前記睡眠妨害リスクが所定のリスク基準を満たさないことを決定することと、
前記1つ以上の物理プロセッサにより、前記介入情報と、前記睡眠妨害リスクが前記所定のリスク基準を満たさないとの決定とに基づいて、刺激装置に、前記睡眠セッションの前記第2時間付近の時刻に前記対象へ前記介入を与えさせることと、
前記睡眠妨害リスクが前記所定のリスク基準を満たすとの決定に基づいて、前記介入を低減すべきかどうかを判定することと
を有する方法。
【請求項9】
前記予測モデルから前記睡眠段階の前記予測を得ることを更に有する、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記1つ以上の物理プロセッサにより、前記予測モデルから、前記第2時間付近の時刻に起こる前記睡眠段階の確率と、前記第2時間付近の時刻に起こる1つ以上の他の睡眠段階の1つ以上の他の確率とを取得することと、
前記1つ以上の物理プロセッサにより、前記確率及び前記1つ以上の他の確率に基づいて、前記睡眠段階の前記予測を得るよう前記睡眠段階を選択することと
を更に有する、
請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第2時間は、前記第1時間の少なくとも10秒後である、
請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ以上の物理プロセッサにより、前記睡眠セッションの少なくとも一部の間に、前記睡眠セッションの1つ以上の他の期間に関して前記出力信号を表す他のサンプルを連続的に決定することと、
前記1つ以上の物理プロセッサにより、前記睡眠セッションの少なくとも一部の間に、前記1つ以上の他の期間の各期間中に前記他のサンプルの各々のサンプルを前記予測モデルへ供給し、該供給後の他の時間付近の時刻に起こる前記対象の睡眠段階を予測することと、
前記1つ以上の物理プロセッサにより、前記睡眠セッションの少なくとも一部の間に、前記睡眠段階の前記予測に基づいて更なる介入情報を連続的に決定することと
を更に有する、
請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ以上の物理プロセッサにより、1つ以上の前の睡眠セッションに関する履歴情報又は前記対象に関する略歴情報を取得することと、
前記1つ以上の物理プロセッサにより、前記予測モデルに、前記履歴情報又は前記略歴情報に基づいて、前記睡眠段階の前記予測に関する1つ以上の出力を生成させるよう、前記予測モデルへ前記履歴情報又は前記略歴情報を供給することと
を更に有する、
請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記介入は、磁気刺激、聴覚刺激、光刺激、電気刺激、触覚刺激、又は嗅覚刺激を有する、
請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、睡眠段階の予測及び/又は睡眠段階の発生の前の介入準備を容易にするシステム及び方法に関係がある。
【背景技術】
【0002】
睡眠監視及び睡眠段階検出システムは、睡眠治療に関連して又は睡眠障害を特定するためにしばしば使用されている。典型的なシステムは、睡眠中に対象に対象への末梢(例えば、感覚、電気又は磁気)刺激を与えることによって、対象に睡眠治療を施し得る。しかし、そのようなシステムはしばしば、対象の現在の睡眠段階を顧慮せずに、及び/又は対象の睡眠段階に対応しないインターバルで、睡眠中に対象に連続的に感覚刺激を加える。本開示は、先行技術のシステムの欠点を解消する。
【発明の概要】
【0003】
従って、本開示の1つ以上の態様は、睡眠段階の予測と、睡眠段階の発生の前の介入準備とを容易にするよう構成されるシステムに係る。システムは、対象の上に置かれ、対象の脳活動に関する情報を運ぶ出力信号を生成するよう構成される1つ以上のセンサを有する。システムは、睡眠セッションの第1期間に関して出力信号を表すサンプルを決定し、睡眠セッション中に、睡眠セッションの第2時間の前後で起こる対象の睡眠段階を予測するよう睡眠セッションの第1時間に予測モデルへサンプルを供給し、第2時間より前に、睡眠段階の予測に基づいて、末梢刺激に関する1つ以上の刺激装置パラメータを示す介入情報を決定し、介入情報に基づいて、1つ以上の刺激装置に、睡眠セッションの第2時間の前後で対象へ介入を与えさせるようコンピュータ読み出し可能な命令によって構成される1つ以上の物理プロセッサを有する。
【0004】
本開示の他の態様は、睡眠段階の予測と、睡眠段階の発生の前の介入準備とを容易にする方法であって、1つ以上のセンサにより、対象の脳活動に関する情報を運ぶ出力信号を生成することと、1つ以上の物理プロセッサにより、睡眠セッションの第1期間に関して出力信号を表すサンプルを決定することと、1つ以上の物理プロセッサにより、睡眠セッション中に、睡眠セッションの第2時間の前後で起こる対象の睡眠段階を予測するよう睡眠セッションの第1時間に予測モデルへ前記サンプルを供給することと、1つ以上の物理プロセッサにより、第2時間より前に、睡眠段階の予測に基づいて、末梢刺激に関する1つ以上の刺激装置パラメータを示す介入情報を決定することと、1つ以上の物理プロセッサにより、介入情報に基づいて、1つ以上の刺激装置に、睡眠セッションの第2時間の前後で対象へ介入を与えさせることとを有する方法に係る。
【0005】
本開示の更なる他の態様は、睡眠段階の予測と、睡眠段階の発生の前の介入準備とを容易にするよう構成されるシステムに係る。システムは、対象の脳活動に関する情報を運ぶ出力信号を生成する手段と、睡眠セッションの第1期間に関して出力信号を表すサンプルを決定する手段と、睡眠セッション中に、睡眠セッションの第2時間の前後で起こる対象の睡眠段階を予測するよう睡眠セッションの第1時間に予測モデルへサンプルを供給する手段と、第2時間より前に、睡眠段階の予測に基づいて、末梢刺激に関する1つ以上の刺激装置パラメータを示す介入情報を決定する手段と、介入情報に基づいて、1つ以上の刺激装置に、睡眠セッションの第2時間の前後で対象へ介入を与えさせる手段とを有する。
【0006】
本開示のこれら及び他の目的、特徴、及び特性に加えて、構造の関連する要素の動作方法及び機能並びに製造の部品及び経済の組み合わせは、添付の図面を参照して、以下の説明及び添付の特許請求の範囲の検討時により明らかになるだろう。以下の説明、特許請求の範囲、及び図面は全て、本明細書の部分を形成し、同じ参照番号は、様々な図中の対応する部分を表す。なお、図面は、例示及び説明をもっぱら目的としており、本開示の限定の定義と指定とされないことが明らかに理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】1つ以上の実施形態に従って、睡眠段階の予測及び/又は睡眠段階の発生の前の介入準備とを容易にするよう構成されるシステムの概略図である。
図2】1つ以上の実施形態に従って、睡眠段階を検出するよう構成されるシステムによって実行される動作の例を表す。
図3】1つ以上の実施形態に従って、睡眠段階を予測するよう構成されるシステムによって実行される動作の例を表す。
図4】1つ以上の実施形態に従って、予測モデルの例を表す。
図5】1つ以上の実施形態に従って、サンプル出力信号の例を表す。
図6】1つ以上の実施形態に従って、予測モデル及び予測モデルに対する入出力の例を表す。
図7】1つ以上の実施形態に従って、予測モデルの例を表す。
図8】1つ以上の実施形態に従って、睡眠段階の予測及び睡眠段階の発生の前の介入準備のための方法を表す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書で使用されるように、「1つの」(a)、「1つの」(an)、及び「前記」(the)の単称形は、文脈が特段明示しない限りは、複数参照を含む。本明細書で使用されるように、語「又は」(or)は、文脈が特段明示しない限りは、「及び/又は」(and/or)を意味する。本明細書で使用されるように、2つ以上の部分又は構成要素が「結合される」(coupled)との記述は、リンクが起こる限りは、部分が直接に又は間接に、すなわち、1つ以上の中間部分若しくは構成要素を通じてつなぎ合わされるか又は一緒に動作することを意味すべきである。本明細書で使用されるように、「直接結合される」(directly coupled)は、2つの要素が互いに直接接していることを意味する。本明細書で使用されるように、「固定して結合される」(fixed coupled)又は「固定される」(fixed)は、2つの構成要素が互いに対して一定の姿勢を保ちながら一体として動くように結合されることを意味する。
【0009】
本明細書で使用されるように、語「単位の」(unitary)は、構成要素が単一の部品又はユニットとして作られることを意味する。すなわち、別々に作られてユニットとしてつなぎ合わせされている部品を含む構成要素は、“単位”構成要素又は本体ではない。本明細書で用いられているように、2つ以上の部分又は構成要素が互いに「係合する」(engage)との記述は、部分が直接に又は1つ以上の中間部分若しくは構成要素を通じて互いに対して力を加えることを意味すべきである。本明細書で用いられているように、語「数」(number)は、1又は1よりも大きい整数(すなわち、複数)を意味すべきである。
【0010】
例えば、制限なしに、上(top)、下(bottom)、左(left)、右(right)、上方(upper)、下方(lower)、前方、後方(back)、及びそれらの派生語などの、本明細書で使用される方向の語句は、図面に示されている要素の向きに関係があり、特許請求に範囲で明示的に挙げられない限りは特許請求に範囲を制限するものではない。
【0011】
睡眠中の介入(例えば、末梢刺激)は、睡眠の質を改善し、元気を回復させる睡眠の価値を高め、認知機能を強化するいくつかの認知的及び治療上の利点を有し得る。一般に、睡眠中の刺激は、睡眠アーキテクチャ全体を変えること又は睡眠障害を引き起こすことなしに、(例えば、末梢刺激により)睡眠中の脳活動を変えようと試みる。これを達成するために、睡眠段階の変化に応じて介入の性質を変更する閉ループ反応戦略が採用される。介入の最適化及び効果の増進は、将来の睡眠段階の以降をリアルタイムで予測する先行型戦略を必要とする。
【0012】
図2は、睡眠段階をリアルタイムで検出するよう構成されるシステム200によって実行される動作の例を表す。いくつかの実施形態で、システム200は、ウェアラブルデバイス201を含んでよい。ウェアラブルデバイス201は、1つ以上のセンサ、プロセッサ、刺激装置、又は他の構成要素を含んでよい。この例では、システム200は、脳波図(EEG)に基づいたシステムであり、深睡眠をリアルタイムで検出し、覚醒を引き起こさずに睡眠徐波を強めるように聴覚刺激を加える。ウェアラブルデバイス201は、感覚刺激装置203(この場合に聴覚刺激装置である)を含む。対象12の覚醒(例えば、睡眠微小覚醒)は、EEG信号202を用いて検出されてよい。覚醒は、EEG信号202で観察することができる高周波数イベントであり、これは、対象が目覚めていることを示す。覚醒を検出することは、アルファ(8~12Hz)周波数バンド及びベータ(15~30Hz)周波数バンドにおいてEEGパワーを計算し、それらを予め制定された閾値と比較することによって、達成されてよい。覚醒の存在は、次の聴覚刺激の開始を遅延させる。進行中の刺激は、覚醒が検出される場合に停止する。覚醒が検出される場合に、次いで、システムは、0.4から4Hzの周波数バンドにおいてEEGパワーを計算し、徐波の密度を定量化することによって、N3(徐波)睡眠を検出しようと試みる。検出されたN3睡眠の存続期間が少なくとも1.5分であり、睡眠深さ(デルタパワーとベータパワーとの間の比)が予め制定された閾値を超える場合には、次いで聴覚刺激が加えられる。これは図2から分かり、覚醒204が検出されずに、徐波212が検出される場合に、感覚刺激装置203は、聴覚刺激を対象12へ与える。聴覚刺激は、固定された1秒長のトーン間インターバルで互いに離された50ミリ秒長のトーンから成る。各トーンのボリュームは、ラウド(ソフト)トーンがより深い(より浅い)睡眠の間に再生されるように、睡眠深さによって変調される。聴覚刺激のボリュームを調整することは、徐波効果214を高める。覚醒204が刺激期間206の外で検出される場合に、感覚刺激装置は聴覚刺激210を遅延させる。睡眠中に介入するそのようなアプローチ(図2に記載)は、介入(例えば、特定の睡眠段階における刺激)するとの決定が介入の数秒内(100ミリ秒から5秒の間)に行われるので、本質的に反応的である。介入への一般的アプローチは、睡眠アーキテクチャ又は睡眠存続期間が影響を及ぼされないようにそうすることである。これは、より先回りした戦略の必要性を示す。
【0013】
システム10は、目下モニタされている睡眠信号が、数秒よりも長い(例えば、>10秒)予測範囲により将来の睡眠段階を予測するために睡眠ダイナミクスの履歴とともに利用されることを可能にし得る。これは、より正確な介入時間を可能にすることができ、睡眠状態の発生前に介入の準備(刺激のタイプ、刺激どうしの時間インターバル、刺激の強さ、刺激のボリューム、周波数、及び/又は感覚刺激の他のパラメータ)を可能にすることができる。より正確に睡眠状態に備えることは、介入が連続的でない(適切な睡眠状態が予測される場合にのみ起こる)ので、(例えば、システムの刺激装置及び/又は1つ以上の構成要素の)バッテリエネルギ管理及び寿命延長を可能にし得る。
【0014】
いくつかの実施形態で、システム10は、刺激装置16、センサ18、プロセッサ20、電子ストレージ22、クライアントコンピューティングプラットフォーム24、ネットワーク26、及び/又は他の構成要素の1つ以上を有する。図1において、刺激装置16、センサ18、プロセッサ20、電子ストレージ22、及びクライアントコンピューティングプラットフォーム24は、別個のエンティティとして示されている。いくつかの実施形態で、システム10の構成要素のうちの一部及び/若しくは全て並びに/又は他の構成要素は、1つ以上の単独デバイス(例えば、ウェアラブルデバイス又は他のユーザデバイス)にまとめられてよい。いくつかの実施形態で、ウェアラブルデバイスは、筐体、1つ以上のセンサ(例えば、センサ18)、プロセッサ(例えば、プロセッサ20)、刺激装置(例えば、刺激装置16)、又は他の構成要素を含んでよい。いくつかの実施形態で、ウェアラブルデバイスは、1つ以上のセンサ、1つ以上のプロセッサ、及び1つ以上のセンサ刺激装置を筐体内に含めるよう構成されてよい。いくつかの実施形態で、ウェアラブルデバイスは、1つ以上のセンサ及び1つ以上のプロセッサを筐体内に含め、1つ以上のセンサ刺激装置を筐体の外で含むよう構成されてもよい。いくつかの実施形態で、ウェアラブルデバイスは、1つ以上のプロセッサ及び1つ以上のセンサ刺激装置を筐体内に含め、1つ以上のセンサを筐体の外で含むよう構成されてもよい。ウェアラブルデバイスのそのようなセンサ、プロセッサ、刺激装置、及び他の構成要素は、筐体の中にあろうと外にあろうと、有線又は無線接続を介して互いと通信し得る。本明細書では、特定の動作を実行するウェアラブルデバイスに関していくつかの実施形態が記載されているが、1つ以上のそのような動作は、1つ以上の他の構成要素(例えば、1つ以上のサーバ、クライアントデバイス、など)によって実行されてよいことが留意されるべきである。一例として、そのような他の構成要素(例えば、1つ以上のサーバ、クライアントデバイス、など)は、サブシステムコンポーネント28~38と同じか又は類似している1つ以上のプロセッサコンポーネントを含んでよい。
【0015】
ウェアラブルデバイスは、対象の任意の身体部分に装着されているか、又は任意の身体部分に完全に若しくは部分的に接触している任意のデバイスであってよい。図3(以下で記載)は、ヘッドバンド302の形をとり得るウェアラブルデバイスの例を示す。いくつかの実施形態で、ヘッドバンドは、検知電極と、対象の耳の後ろに位置する基準電極と、EEGに関連した1つ以上のデバイスと、ワイヤレスオーディオデバイスと、対象の耳に及び/若しくはその近くに並びに/又は他の場所に位置する1つ以上のオーディオスピーカとを含んでよい。検知電極は、対象の脳活動に関する情報を運ぶ出力信号を生成するよう構成されてよい。出力信号は、無線により及び/又は配線を介して(ウェアラブルデバイスの中又は外の)コンピューティングデバイスへ送信されてよい。例えば、いくつかの実施形態で、図1のシステム10は、図3のウェアラブルデバイス301と同様であってよく、あるいは、図3のウェアラブルデバイス301に類似したウェアラブルデバイスに含まれてもよい。いくつかの実施形態で、図1のシステム10の一部又は全ての構成要素は、図3のウェアラブルデバイス301に類似したウェアラブルデバイスに含まれてよい。
【0016】
図1に戻ると、刺激装置16は、対象12へ刺激を与えるよう構成される。いくつかの実施形態で、対象へ与えられる刺激は、末梢刺激(例えば、感覚、電気、磁気、など)であってよい。いくつかの実施形態で、他のタイプの刺激が考えられてもよい。刺激装置16は、睡眠セッションより前に、現在の睡眠セッションの間に、睡眠セッションの後に、及び/又は他の時間に対象12へ刺激を与えるよう構成されてよい。いくつかの実施形態で、刺激は、聴覚刺激、光刺激、電気刺激、触覚刺激、磁気刺激、視覚刺激、及び/又は嗅覚刺激を有する。例えば、刺激装置16は、睡眠セッションにおける徐波睡眠中に対象12へ刺激を与えるよう構成されてよい。刺激装置16は、対象12において睡眠徐波を誘発するように及び/又は睡眠徐波を強めるように睡眠セッション中に対象12へ刺激を与えるよう構成されてよい。いくつかの実施形態で、刺激装置16は、非侵襲的な脳刺激及び/又は他の方法を通じて睡眠徐波を誘発し及び/又は強めるよう構成されてよい。刺激装置16は、香り、音響、視覚刺激、感触、味、及び/又は他の刺激を含む刺激を用いた非侵襲的な脳刺激を通じて睡眠徐波を誘発し及び/又は強めるよう構成されてよい。いくつかの実施形態で、刺激装置16は、対象12の聴覚刺激により睡眠徐派を誘発し及び/又は強めるよう構成されてよい。刺激装置16の例には、音楽プレイヤー、トーン発生器、対象12の頭皮上の電極の集合、振動刺激(体性感覚刺激としても知られる)を伝えるユニット、脳の皮質を直接刺激するよう磁場を発生させるコイル、光発生器、フレグランスディスペンサ、及び/又は他の刺激装置が含まれ得る。
【0017】
いくつかの実施形態で、デバイスが脳機能を調整するように小電流を頭皮にわたって送るところの経頭蓋直流刺激(Transcranial Direct Current Stimulation;TDCS)及び経頭蓋交流刺激(Transcranial Alternate Current Stimulation;TACS)が使用されてもよい。そのようなタイプの刺激装置は、刺激後に持続した余波を伴う睡眠に有益な効果をもたらし得る。低速振動刺激は、徐波睡眠の即時の増大、内因的な皮質徐波振動、及び前頭皮質における徐波紡錘活動を引き起こし得る。いくつかの実施形態で、TDCS及びTACSの供与は、具体的に、徐波睡眠の即時の増大を引き起こすように睡眠段階2の検出/予測後のノンレムにおいて対象とされる。
【0018】
いくつかの実施形態で、深いNREM中に与えられる経頭蓋磁気刺激(Transcranial Magnetic Stimulation;TMS)は、徐波を引き起こし、睡眠深さを増強し得る。いくつかの実施形態で、刺激(例えば、聴覚、触覚、嗅覚又は視覚)は、睡眠中の記憶想起(memory reactivation)を対象とするために使用されてよい。いくつかの実施形態で、特定のタスクを実行するよう学習中にサウンドキューを関連付けることによって、キューは、そのタスクの記憶を強化するために、対象が睡眠中であるときに再生されてよい。キューは、特定の睡眠サイクル(例えば、徐波フェーズ)に再生される場合に、より効果的である。
【0019】
いくつかの実施形態で、刺激のタイプ、刺激どうしの時間インターバル、刺激の強さ、刺激のボリューム、周波数、及び/又は刺激の他のパラメータは、システム10の中若しくは外の1つ以上の構成要素、又はユーザ若しくは対象からの入力によって、調整されてよい。刺激装置の1つ以上のパラメータ(例えば、刺激のタイプ、時間インターバル、強さ、ボリューム、周波数、など)に対する調整は、個々の対象からの情報、個々のユーザからの情報(例えば、ヘルスケア専門家、介護者、など)、個々の治療、製造者設定、及び/又は他の情報に基づいてよい。例えば、感覚刺激の1つ以上の特性(又はパラメータ)(例えば、刺激のタイプ、時間インターバル、強さ、ボリューム、周波数、など)は、上限閾値と下限閾値との間で調整されてよい。特性についての上限及び下限閾値は、前のテストに基づいて対象ごとに決定されてよい(あるいは、対象間の類似性に基づいてもよい)。例えば、所与の対象について上限閾値を設定するために、対象は、漸進的に増大する刺激を与えられ、対象が自身を起こすことができると考える刺激のレベルを見積もるよう求められ得る。他の例では、刺激の特性は、睡眠妨害のリスクが最も低い刺激の下限及び上限閾値を決定するように、1つ以上の睡眠セッションの間に対象に対して試験されてもよい。いくつかの実施形態で、刺激の特性(例えば、上限及び下限閾値)は、刺激に対する一人以上の他の対象の反応に基づいて設定されてもよい。一人以上の対象は、対象と1つ以上の類似点(例えば、脳活動、人口統計情報、バイタルサイン情報、医療/健康状態情報、治療履歴情報、類似した望ましい結果、及び/又は他の類似点)を有し得る。
【0020】
センサ18は、対象12の脳活動に関する情報を運ぶ出力信号を生成するよう構成される。対象12の脳活動は、対象12の睡眠状態及び/又は他の特性に対応してよい。睡眠状態は、睡眠段階を含み、それに対応し、かつ/あるいは、それを示し得る。対象12の脳活動は、急速眼球運動(Rapid Eye Movement;REM)睡眠、非急速眼球運動(Non-Rapid Eye Movement;NREM)睡眠(例えば、徐波睡眠)、及び/又は他の睡眠状態を含み、それらに対応し、かつ/あるいは、それらを示す睡眠状態及び/又は睡眠段階と関連付けられてよい。センサ18は、そのようなパラメータを直接測定する1つ以上のセンサを有してよい。例えば、センサ18は、対象12の脳内の電流フローから生じる対象12の頭皮に沿った電気活動を検出するよう構成された電極を含んでよい。センサ18は、対象12の脳活動に関する情報を運ぶ出力信号を間接的に生成する1つ以上のセンサを有してよい。例えば、1つ以上のセンサ18は、対象12の心拍(例えば、センサ18は、対象12の胸部に位置している心拍センサであってよく、かつ/あるいは、対象12の手首にあるブレスレットとして構成されてもよく、かつ/あるいは、対象12の他の肢に位置してもよい)、対象12の動き(例えば、センサ18は、睡眠がアクティグラフィ信号を用いて解析され得るように加速度計を備えて、対象12の身体上、対象12の手首及び/若しくは足首の周りのブレスレットに置かれた動き検出器、カメラ、光運動検出器、並びに/又は他の動き検出器を含んでよい)、対象12の呼吸、及び/又は対象12の他の特性に基づいて出力を生成してよい。センサ18は対象12の近くの一箇所に置かれているが、これは限定であるよう意図されない。センサ18は、複数の位置に、例えば、対象12の衣服と(着脱可能に)結合されて、(例えば、ヘッドバンド、リストバンド、などとして)対象12によって身につけられて、対象12が寝ている間に対象12に向くように位置づけられて(例えば、対象12の動きに関する出力信号を伝えるカメラ)、及び/又は他の位置で配置されたセンサを含んでよい。
【0021】
いくつかの実施形態で、センサ18は、陽電子放出断層撮影(PET)装置、脳磁図(MEG)装置、機能的(functional)MRI装置、機能的近赤外線分光法装置、単光子放出コンピュータ断層撮影装置、及び/又は脳活動を検出するよう構成された他のデバイス/装置の一部又は全ての部分を含んでよい。
【0022】
プロセッサ20は、システム10において情報処理機能を提供するよう構成される。そのようなものとして、プロセッサ20は、デジタルプロセッサ、アナログプロセッサ、及び情報を処理するよう設計されたデジタル回路、情報を処理するよう設計されたアナログ回路、状態機械、及び/又は電子的に情報を処理する他のメカニズムのうちの1つ以上を含んでよい。プロセッサ20は単一のエンティティとして図1では示されているが、これは単に説明のためである。いくつかの実施形態で、プロセッサ20は、複数のプロセッシングユニットを含んでもよい。これらのプロセッシングユニットは、同じデバイス(例えば、サーバ)内に物理的に位置してよく、あるいは、プロセッサ20は、協調して動作する複数のデバイス(例えば、1つ以上のサーバ、ユーザに関連した1つ以上のコンピューティングデバイス24、医療デバイス、刺激装置16、センサ18、病院機器の一部、外部リソース14の部分であるデバイス、電子ストレージ22、及び/又は他のデバイス)のプロセッシング機能を表してよい。
【0023】
図1に示されるように、プロセッサ20は、1つ以上のコンピュータプログラムコンポーネントを実行するよう構成される。1つ以上のコンピュータプログラムコンポーネントは、対象情報コンポーネント28、サンプリングコンポーネント30、検出コンポーネント32、予測コンポーネント34、リスクコンポーネント36、制御コンポーネント38、及び/又は他のコンポーネントのうちの1つ以上を有してよい。プロセッサ20は、ソフトウェア;ハードウェア;ファームウェア;ソフトウェア、ハードウェア、及び/若しくはファームウェアの何らかの組み合わせ;及び/又はプロセッサ20でプロセッシング機能を構成する他のメカニズムによってコンポーネント28、30、32、34、36、38及び/又は他のコンポーネントを実行するよう構成されてよい。
【0024】
当然ながら、コンポーネント28、30、32,34、36、及び38は、単一のプロセッシングユニット内に共在するように図1では表されているが、プロセッサ20が複数のプロセッシングユニットを有する実施形態では、コンポーネント28、30、32、34、36、38、及び/又は他のコンポーネントの1つ以上は、他のコンポーネントから遠く離れて位置してもよい。コンポーネント28、30、32、34、36及び/又は38のいずれも、記載されているよりも多い又は少ない機能を提供し得るということで、異なるコンポーネント28、30、32、34、36、38及び/又は他のコンポーネントによって提供される機能の下記の説明は、例示のためであり、限定であるよう意図されない。例えば、コンポーネント28、30、32、34、36及び/又は38の1つ以上は、削除されてもよく、その機能の一部又は全ては、他のコンポーネント28、30、32、34、36及び/又は38によって提供されてもよい。他の例として、プロセッサ20は、コンポーネント28、30、32、34、36及び/又は38の1つに以下で帰する機能の一部又は全てを実行し得る1つ以上の追加のコンポーネントを実行するよう構成されてもよい。
【0025】
対象情報コンポーネント28は、いくつかの実施形態で、対象12に関する情報を決定(及び/又は取得)するよう構成されてよい。いくつかの実施形態で、対象情報コンポーネント28は、センサ18からの出力信号に基づいて、対象の脳活動に関する情報を決定するよう構成されてよい。上述されたように、脳活動情報は、対象の睡眠状態情報を含んでよい。いくつかの実施形態で、対象12に関する情報は、略歴情報を含んでもよい。例えば、略歴情報は、人口統計情報(例えば、性別、民族性、年齢、など)、バイタルサイン情報(例えば、心拍、体温、呼吸数、体重、BMI、など)、医療/健康状態情報(例えば、疾病タイプ、疾病の深刻度、疾病の段階、疾病のカテゴリー分類、症状、行動、再入院、再発、など)、治療履歴情報(例えば、治療のタイプ、治療の長さ、現在及び過去の薬物治療、など)、及び/又は他の情報を含んでよい。いくつかの実施形態で、対象情報コンポーネント28は、睡眠及び/又は脳活動情報に関する情報(例えば、以前の睡眠検査、以前の脳活動情報、以前の睡眠状態情報、並びに/又は他の睡眠及び脳活動に関連した情報)を含んでよい。
【0026】
いくつかの実施形態で、対象情報コンポーネント28は、他の対象に関する情報を決定(及び/又は取得)するよう構成されてよい。例えば、対象は、対象12と類似した脳活動情報、人口統計情報、バイタルサイン情報、医療/健康状態情報、治療履歴情報、(例えば、感覚刺激からの)類似した望ましい結果、類似した睡眠情報、及び/又は他の類似性を有している。上記の対象情報は、限定であるよう意図されないことが留意されるべきである。対象に関する多数の情報が存在してよく、いくつかの実施形態に従ってシステム10により使用されてよい。例えば、ユーザは、システム10をカスタマイズし、彼らが関連すると思う任意のタイプの対象データを含めることを選択してもよい。
【0027】
いくつかの実施形態で、対象情報コンポーネント28は、1つ以上のデータベース(例えば、電子ストレージ22、外部リソース14、1つ以上の医療デバイス、他の内部若しくは外部データベース、及び/又は他の情報ソースに含まれている)から情報を取得/抽出するよう構成されてよい。いくつかの実施形態で、異なるデータベースは、対象12に関する異なる情報を含んでよい。いくつかの実施形態で、いくつかのデータベースは、特定の対象情報(例えば、病状、人口統計特性、治療、療法、使用された医療デバイス、バイタルサイン情報、など)に関連しても、あるいは、対象情報の組(例えば、病状の組、人口統計特性の組、治療の組、療法の組、使用された医療デバイスの組、バイタルサイン情報の組、など)に関連してもよい。いくつかの実施形態で、対象情報コンポーネント28は、外部リソース14(例えば、外部リソース14に含まれている1つ以上の外部データベース)、システム10に含まれている電子ストレージ22、1つ以上の医療デバイス、及び/又は他の情報ソースから対象情報を取得/抽出するよう構成されてよい。
【0028】
サンプリングコンポーネント30は、睡眠セッションの所与の期間に関して出力信号を表すサンプルを決定(及び/又は受信)するよう構成されてよい。例えば、サンプリングコンポーネント30は、システム10の1つ以上の構成要素によってサンプリングされた出力信号のサンプルを決定(及び/又は受信)するよう構成されてよい。いくつかの実施形態で、サンプリングコンポーネント30は、センサ18からの受信された出力信号をサンプリングするよう構成されてよい。出力信号のサンプルは、睡眠セッション中の異なる期間に対応してよい。期間は、任意の長さを有してよい(例えば、長さは、数ミリ秒から数分の範囲に及んでよい)。いくつかの実施形態で、サンプリングコンポーネント30は、睡眠セッションの部分(又は全体)の間に連続的に出力信号をサンプリングするよう構成されてよい。いくつかの実施形態で、出力信号のサンプルは、連続的であってよく、重なり合ってよく、周期的であってよく、ランダムであってよく、あるいは、如何なる他のタイプのサンプルであってもよい。いくつかの実施形態で、サンプリングコンポーネント30は、ロー(raw)フォーマットで(例えば、直接に、センサから受信されたままで)出力信号をサンプリングするよう構成されてよい。いくつかの実施形態で、サンプリングコンポーネント30は、サンプルを生成する前に出力信号の表現を生成するよう構成されてよい。例えば、サンプリングコンポーネント30は、サンプルを生成する前に周波数領域における出力信号の表現を生成するよう構成されてよい。いくつかの実施形態で、出力信号の表現は、2D若しくは3D画像及び/又は出力信号の他の表現の形をとってよい。
【0029】
検出コンポーネント32は、対象12における睡眠状態及び/又は睡眠段階を検出するよう構成されてよい。いくつかの実施形態で、検出コンポーネント32は、センサ18からの出力信号に基づいて、かつ/あるいは、システム10の中又は外の他の構成要素から受信された他の情報に基づいて、睡眠状態(及び/又は睡眠段階)を検出するよう構成されてよい。いくつかの実施形態で、対象12の睡眠状態は、覚醒状態、REM睡眠、段階N1、段階N2、及び/又は段階N3睡眠、かつ/あるいは、他の睡眠状態のうちの1つ以上に対応してよい。いくつかの実施形態で、個々の睡眠状態は深睡眠段階を含む。いくつかの実施形態で、深睡眠、徐波睡眠、及び/又は徐波活動は、段階N3睡眠に対応してよい。いくつかの実施形態で、段階N2及び/又は段階N3睡眠は、深睡眠及び/又は徐波睡眠であってよく、かつ/あるいは、深睡眠及び/又は徐波活動に対応してよい。いくつかの実施形態で、検出コンポーネント32は、個々の睡眠段階を検出することは、潜在的な睡眠段階(例えば、覚醒状態、REM、N1、N2、N3)の組から睡眠段階を選択することを含む。ここで、潜在的な睡眠段階の組は、深睡眠段階を含む。
【0030】
いくつかの実施形態で、検出コンポーネントモジュール32は、センサ18の出力信号によって運ばれる情報解析に基づいて、対象12の現在の睡眠段階を決定してよい。解析は、睡眠セッションの部分又は全体の間に出力信号の表現を生成及び/又はモニタすることを含んでよい。例えば、解析は、対象12の睡眠セッション中にEEGを生成及び/又はモニタすることを含んでよい。いくつかの実施形態で、解析は、EEGのデルタバンドにおけるパワー及び/又はEEGのベータバンドにおけるパワー、かつ/あるいは、他の情報に基づいて、徐波睡眠を検出することを含んでよい。
【0031】
いくつかの実施形態で、予測コンポーネント34は、対象の睡眠状態を予測するよう構成されてよい。例えば、いくつかの実施形態で、予測コンポーネント34は、睡眠セッションの所与の睡眠期間中の第1時間にサンプリングコンポーネント30からサンプルを受け取ってよい。サンプルは、第1時間の間の対象の脳活動を示す出力信号を表す。予測コンポーネント34は、第2時間の前後(睡眠セッションの同じ睡眠期間又は異なる睡眠期間)で起こる可能性がある対象の睡眠状態を予測するよう構成されてよい。いくつかの実施形態で、第2時間は、第1時間のミリ秒のオーダ、1秒、2秒、5秒、10秒、1分、2分、5分、又は他の時間量の後であってよい。いくつかの実施形態で、第2時間は、第1時間の1msから数時間後であってよい。
【0032】
いくつかの実施形態で、予測コンポーネント34は、(例えば、検出モジュール30によって)以前に検出された睡眠状態に基づいて、1つ以上の(将来の)睡眠状態を予測するよう構成される。いくつかの実施形態で、予測コンポーネント34は、睡眠状態内での深睡眠及び/又は徐波睡眠の発生を予測するよう構成されてよい。いくつかの実施形態で、予測コンポーネント34は、以前の睡眠及び/又は脳活動の情報に基づいて1つ以上の睡眠状態を予測するよう構成されてよい。例えば、予測コンポーネント34は、第1時間に予測モデルへ供給されたサンプルから検出される睡眠状態に基づいて、第2時間の1つ以上の睡眠状態を予測するよう構成されてよい。いくつかの実施形態で、予測コンポーネント34は、睡眠セッションの少なくとも一部の間に、他のサンプルを連続的に受け取って、他のサンプルが夫々予測コンポーネントへ供給されることに続く他の時間の前後で起こる対象の睡眠段階を予測するよう構成されてよい。サンプルは、サンプリングコンポーネント30から受け取られてよい。
【0033】
いくつかの実施形態で、予測コンポーネント34は、対象12との1つ以上の類似点を有している対象からの情報(例えば、類似した脳活動情報、人口統計情報、バイタルサイン情報、医療/健康状態情報、治療履歴情報、(例えば、感覚刺激からの)類似した望ましい結果、類似した睡眠情報、及び/又は対象12との他の類似点)に基づいて1つ以上の睡眠状態を予測するよう構成されてよい。
【0034】
いくつかの実施形態で、予測コンポーネント34は、第2時間の前後で起こる可能性がある睡眠状態の確率を決定するよう構成された予測モデルを含んでよい。いくつかの実施形態で、予測モデルは、第2時間に又はその前後で起こる睡眠状態(例えば、覚醒状態、REM睡眠、段階N1、段階N2、及び/又は段階N3睡眠)のうちの個別的な1つの1つ以上の確率を供給するよう構成されてよい。いくつかの実施形態で、予測モデル(及び/又は予測コンポーネント34)は、第2時間の前後で起こる可能性がある睡眠状態のうちの個別的な1つの1つ以上の確率に基づいて、対象の(将来の)睡眠状態を決定するよう構成されてよい。例えば、いくつかの実施形態で、予測コンポーネント34は、確率がより高い睡眠状態が、第2時間に起こる可能性がある睡眠状態である、と決定してよい。予測モデルは、1つ以上のニューラルネットワーク(例えば、ディープニューラルネットワーク、人工ニューラルネットワーク、若しくは他のニューラルネットワーク)、他の機械学習モデル、又は他の予測モデルを含んでよい。一例として、ニューラルネットワークは、ニューラルユニット(又は人工ニューロン)の膨大な集合に基づいてよい。ニューラルネットワークは、生物学的な脳が(例えば、アクソンによって接続された生物学的ニューロンの大規模クラスタを介して)働く様態を大まかに模倣し得る。ニューラルネットワークの各ニューラルユニットは、ニューラルネットワークの多数の他のニューラルユニットと接続され得る。そのような接続は、接続されたニューラルユニットの活動状態に対するそれらの効果において、強制的又は抑制的であり得る。そのようなニューラルネットワークシステムは、明示的にプログラムされるのではなく、自主学習であり訓練され得、従来のコンピュータプログラムと比較して、問題解決の特定の領域において、相当により良く実行することができる。いくつかの実施形態で、ニューラルネットワークは、複数のレイヤを含み得る(例えば、信号パスは、前のレイヤから後ろのレイヤへ横切る)。いくつかの実施形態で、バックプロパゲーション技術がニューラルネットワークによって利用されてよく、このとき、順方向刺激が、“前方”のニューラルユニットに対する重みをリセットするために使用される。いくつかの実施形態で、ニューラルネットワークのための刺激及び抑制は、より混沌とした複雑な形式で相互作用する接続により、より自由に流れ得る。
【0035】
いくつかの実施形態で、予測モデルはディープニューラルネットワークであってよい。ディープニューラルネットワークの形をとる機械学習は、他の特徴に基づいたアプローチと比較して相当に高い精度で、自動的に特徴を導出し、高性能の分類器を構築するために、大容量のデータを利用する。(例えば、EEG睡眠データ又は他の睡眠データの)大規模データベースを用いて、ディープラーニング分類器は、数分間の予測範囲により睡眠状態を予測するよう構築されてよい。いくつかの実施形態で、ディープニューラルネットワーク動作は、複数の線形及び/又は非線形変換から構成された複数のプロセッシングレイヤを備えたディープグラフを使用することによって、データ内の高度な抽象(high-level abstractions)をモデル化しようと試みるアルゴリズムの組を含んでよい。例えば、ディープニューラルネットワークは、畳込みレイヤ(例えば、フィルタ)から構成されたアーキテクチャを含んでよい。いくつかの実施形態で、予測モデルは回帰レイヤを含んでよい。いくつかの実施形態で、回帰レイヤは、予測精度を上げるよう過去の決定を使用するためにネットワークにメモリを与える長短期記憶要素として実装されてよい。いくつかの実施形態で、ニューラルネットワークの使用は、それらが、予め定義された睡眠段階(例えば、覚醒、REM、N1、N2、N3睡眠)に関連した確率に関してそれらの予測を生成することができるので、有利であり得る。いくつかの実施形態で、確率の組は、“軟判定”(soft decision)ベクトルを構成する。これは、睡眠段階予測を最も高い確率と関連付けることによって、“硬判定”(hard decision)へ変換され得る。いくつかの実施形態で、軟判定は、離散空間にある睡眠段階とは対照的に連続体にマッピングされる睡眠段階を考えることを可能にする。
【0036】
図3は、1つ以上の実施形態に従って、睡眠状態を予測するよう構成されたシステム10によって実行される動作300を例示する。いくつかの実施形態で、システム10は、装着型ヘッドバンド301の形をとってよい。いくつかの実施形態で、システム10の一部又は全ての構成要素は、装着型ヘッドバンド301に含まれてよい。いくつかの実施形態で、システム10の一部又は全ての構成要素は、上述された任意のタイプのウェアラブルデバイス(ここで図示せず。)に含まれてもよい。睡眠中の脳活動は、脳波図(EEG)302を用いてリアルタイムでモニタされる。時間“t-τ”304で、“W”個のサンプルを有するウィンドウ306が予測モデル308へ供給される。予測モデル308は、時間“t”での睡眠状態を予測(309)する能力を有している。予測モデル308は、畳込みレイヤ310(フィルタであると考えられ得る)及び回帰レイヤ312(一般性を失うことなしに、長短期記憶要素として実装され得る)を含んでよい。これらは、予測精度を上げるよう過去の決定を使用するために状態メモリを備えたネットワークを可能にする。時間“t”310で、睡眠中の介入をもたらす処理は、最初に、介入が睡眠を乱す可能性があるかどうかを考える(314)(EEGに含まれる高周波コンテンツを定量化することによって達成され得る)。睡眠を乱すリスクの定量化も、予測モデルから恩恵を受ける。睡眠を乱すリスクが十分に低い場合(316)、次のステップは、現在の睡眠状態を検出すること(318)から成る。現在の睡眠状態318は、介入が起こるべきかどうかを判定(320)するために、予測モデルが時間“t-τ”(すなわち、τ時間単位前)で生成した予測310と結合される(319)。設定(介入のパラメータ)は、予測を考慮しながら決定されてよい。設定は、データストレージ322に記憶されてよい。介入すると決定される場合(324)、刺激が対象12へ与えられる(324)。
【0037】
いくつかの実施形態で、予測モデル(例えば、ディープニューラルネットワーク又は他の機械学習モデル)は、学習のために、構造化された及び/又は構造化されていないデータを使用してよい。いくつかの実施形態で、データは、センサ18から受け取られたデータを含んでよい。例えば、画像、シンボル、映像、音声、テキスト、及び/又は他の構造化されたデータのうちの1つ以上。いくつかの実施形態で、学習は、教師あり又は教師なしであることができる。
【0038】
いくつかの実施形態で、予測モデルは、畳込みニューラルネットワーク(CNN)及び長短期記憶(LSTM)である。いくつかの実施形態で、ニューラルネットワークは、デンス(dense)レイヤ、畳込みレイヤ、回帰レイヤ又はそれらの組み合わせからなることができる。いくつかの実施形態で、ロー(raw)EEG信号(又は上記の他の出力信号)は、場合により重なり合って、ウィンドウ化(窓化)され、ニューラルネットワークの入力に適用されてよい。ネットワークの最終出力は、夫々の適用されたウィンドウについての夫々の睡眠段階クラスについての軟確率値である。いくつかの実施形態で、それらの確率値は、ARGMAX演算子により、夫々のウィンドウについて硬判定睡眠段階値へ変換されてよい。図4は、1つ以上の実施形態に従って、予測モデルの例を表す。予測モデル400は、畳込みレイヤ404を含む畳込みニューラルネットワーク(CNN)、及びLSTMレイヤ406を含む長短期記憶(LSTM)である。予測モデル400は、3つの連続したウィンドウ408について時間的に展開されて表示されている。EEG信号410は、ウィンドウ化され、ニューラルネットワーク402の入力に適用される。ネットワークの最終出力は、夫々の適用されたウィンドウについての夫々の睡眠段階クラスについての軟確率値412である。いくつかの実施形態で、それらの確率値は、ARGMAX演算子により、夫々のウィンドウについて硬判定睡眠段階値416へ変換されてよい。
【0039】
図5は、1つ以上の実施形態に従って、サンプル出力信号の例を表す。ダイアグラム502は、(図4に関して上述された)夫々の段階についての軟確率の詳細図を表す。異なる段階は、異なる色で表されている(紫、緑、橙、青、及び赤)。ダイアグラム504は、硬判定睡眠段階を表す。
【0040】
図6は、1つ以上の実施形態に従って、予測モデル600及び予測モデル600に対する入出力の例を表す。一例として、予測モデル600(例えば、ニューラルネットワーク又は他の機械学習モデル)は、1つ以上の畳込みレイヤ、長短期記憶レイヤ、又は他のコンポーネントを含んでよい。1つの使用ケースにおいて、予測モデル600の訓練中、睡眠段階ターゲットが順方向シフトにより適用される。これは、より正確な予測挙動を予測モデル600に与えると期待される。いくつかの実施形態で、τ(=1)ウィンドウ606の予測範囲が説明のために選択されている。より長い予測範囲が可能である。分類別交差エントロピー(categorical cross entropy)608が、予測の時間τ(=1)での睡眠状態に対する値を決定するために軟確率610に適用される。
【0041】
いくつかの実施形態で、予測モデル600の性能を改善するために、対象特有の情報が使用中に適用されてよい(例えば、ユーザの年齢、性別、BMI、又は他の対象情報)。いくつかの実施形態で、ニューラルネットワークの訓練中に、対象情報は、夫々のEEG学習例とともに適用される。いくつかの実施形態で、学習データセットの対象情報分布は、意図された対象ユーザグループの分布と大体一致すべきである(例えば、予測モデル600は、対象特有のデータ、対象との1つ以上の類似点を持った他の対象からのデータ、又は他のデータを用いて訓練される)。図7は、1つ以上の実施形態に従って、予測モデル700の例を表し、このとき、対象情報702は、予測モデルの実行を改善するようにニューラルネットワーク704に適用される。
【0042】
図1に戻ると、リスクコンポーネント36は、所与の時間に(又は所与の時間の前、又はその時間の前後に)対象へ与えられる刺激情報を決定するよう構成されてよい。いくつかの実施形態で、リスクコンポーネント36は、睡眠妨害(例えば、覚醒を引き起こすこと、又は対象に刺激を感じさせること、又は起床後に刺激を思い出させること)なしに対象へ与えられる刺激情報を決定するよう構成されてよい。いくつかの実施形態で、刺激情報は、刺激に関する1つ以上の刺激装置パラメータを示す。例えば、刺激のタイプ、存続期間、刺激どうしの時間インターバル、刺激の強さ、刺激のボリューム、周波数、及び/又は刺激装置の他のパラメータ。いくつかの実施形態で、刺激情報は、システム10の中又は外の1つ以上の構成要素から取得されてよい。いくつかの実施形態で、刺激情報は、ユーザ(ヘルスケア提供者、介護者、看護師、など)、対象、製造者、などによって供給されてよい。いくつかの実施形態で、刺激情報は、例えば、検出又は予測された睡眠状態に基づいて、睡眠セッション中に動的に取得(又は決定)されてよい(例えば、刺激情報の1つ以上のパラメータは、検出又は予測された睡眠状態に基づいて動的に変化し又は調整されてよい。)。いくつかの実施形態で、刺激情報は、第2時間での睡眠状態の予測に基づいて、第2時間より前に取得(又は決定)されてよい。いくつかの実施形態で、刺激情報は、睡眠セッションの部分(又は全体)の間に睡眠状態の予測に基づいて連続的に決定されてよい。
【0043】
いくつかの実施形態で、リスクコンポーネント36は、所与の時間に(又は所与の時間の前、又はその時間の前後に)刺激を与える睡眠妨害リスクを決定するよう構成されてよい。例えば、いくつかの実施形態で、睡眠妨害リスクは、EEGにおける高周波コンテンツを定量化することによって決定されてよい。いくつかの実施形態で、睡眠妨害リスクは、検出及び/又は予測された睡眠状態に基づいて決定されてよい。いくつかの実施形態で、睡眠妨害リスクは、対象からの又は他の対象からの履歴データに基づいて決定されてよい。例えば、睡眠妨害リスクは、検出又は予測された睡眠状態が過去に対象又は他の対象について睡眠妨害を引き起こしたことがある場合に、より高くなる。いくつかの実施形態で、睡眠妨害リスクは、検出又は予測された睡眠状態が過去に対象又は他の対象について全く又はほとんど睡眠妨害を引き起こしたことがない場合に、低くなる。例えば、検出又は予測された睡眠状態がノンレム睡眠段階2である場合に、睡眠妨害リスクは低くなる。いくつかの実施形態で、1つ以上のリスク基準が決定されてよい。いくつかの実施形態で、1つ以上のリスク基準は、1つ以上の閾値を含んでよい。例えば、上限リスク閾値、下限リスク閾値がある。いくつかの実施形態で、上限リスク閾値は、妨害リスクが上限リスク閾値に達するか、突破するか、又はおおよそなる場合に、刺激が睡眠妨害を引き起こす可能性が最も高いことを示す。いくつかの実施形態で、下限リスク閾値は、妨害リスクが下限リスク閾値に達するか、突破するか、又はおおよそなる場合に、刺激が睡眠妨害を引き起こさない可能性が最も高いことを示す。リスク基準は、リスクコンポーネント36、予測コンポーネント34、ユーザ、対象、又はシステム10の中若しくは外の他の構成要素によって決定されてよい。
【0044】
いくつかの実施形態で、睡眠妨害リスクは、予測コンポーネント34(又はシステム10の他の構成要素)によって決定されてよい。いくつかの実施形態で、睡眠妨害リスクは、確率(又は確率の組)の形で決定されてよい。例えば、予測コンポーネント34は、対象へ与えられる刺激の1つ以上のパラメータを決定することともに、かつ、刺激の1つ以上のパラメータの睡眠妨害リスクとともに、所与の時間の(又は所与の時間の前若しくは前後の)睡眠状態を予測するよう構成されてよい。いくつかの実施形態で、睡眠妨害リスクは、機械学習モデルによって決定(又は評価)されてよい。
【0045】
制御コンポーネント38は、対象12へ刺激を与えるように刺激装置16を制御するよう構成される。いくつかの実施形態で、制御コンポーネント38は、刺激装置16に、刺激情報、検出及び/若しくは予測された睡眠状態、睡眠妨害リスク、並びに/又は対象情報に基づいて、睡眠セッション中の所与の時間に(若しくは所与の時間の前後に)対象へ刺激を与えさせるよう構成されてよい。制御コンポーネント38は、睡眠セッションより前に、現在の睡眠セッションの間に、睡眠セッションの後で、及び/又は他の時間に対象12へ刺激を与えるように刺激装置16を制御するよう構成されてよい。制御コンポーネント38は、特定の睡眠状態及び/又は睡眠段階の間に刺激を与えるように刺激装置16を制御するよう構成されてよい。例えば、刺激装置16は、睡眠セッションにおける徐波睡眠中に対象12へ刺激を与えるよう構成されてよい。いくつかの実施形態で、制御コンポーネント38は、検出又は予測された個々の徐波に基づいて徐波のタイミングで刺激を与えるように刺激装置16を制御するよう構成されてよい。
【0046】
いくつかの実施形態で、制御コンポーネント38は、睡眠妨害リスクが所定のリスク基準(上限閾値)を満足しないとの決定に基づいて、刺激装置16に、睡眠セッションの所与の時間の前後で対象へ刺激を与えさせるよう構成されてよい。いくつかの実施形態で、制御コンポーネント38は、睡眠妨害リスクが所定のリスク閾値(例えば、上限閾値)を満足するとの決定に基づいて、刺激装置16に、睡眠セッションの所与の時間の前後に対象へ刺激を与えることを止めさせる(又は刺激を減らす)よう構成されてよい。
【0047】
いくつかの実施形態で、制御コンポーネント38は、刺激情報、検出及び/若しくは予測された睡眠状態、睡眠妨害リスク、並びに/又は対象情報に基づいて、睡眠セッション中の所与の時間に対象への刺激を調整するように刺激装置16を制御するよう構成されてよい。刺激は、上限閾値から下限閾値の間で調整されてよい。上限閾値及び下限閾値は、対象12に基づいて、かつ/あるいは、ユーザ並びに/又はシステム10の中若しくは外の1つ以上の構成要素によって決定された他のパラメータに基づいて、決定されてよい。いくつかの実施形態で、システム10は、刺激の1つ以上のパラメータ(例えば、刺激のタイプ、時間インターバル、強さ、ボリューム、周波数、など)を調整するよう構成されてよい。
【0048】
いくつかの実施形態で、図1に示されるように、システム10は、外部リソース14、電子ストレージ22、クライアントコンピューティングプラットフォーム24、ネットワーク26、及び/又は他の構成要素のうちの1つ以上を含んでよく、それらは全て、ネットワーク26を介して通信上結合されている。
【0049】
外部リソース14は、患者及び/又は他の情報のソースを含む。いくつかの実施形態で、外部リソース14は、データベース、ウェブサイト、などのような患者及び/若しくは他の情報のソース、システム10に参加している外部エンティティ(例えば、患者の個体群についての医療履歴情報を記憶しているヘルスケア提供者の医療記録システム)、システム10の外にある1つ以上のサーバ、ネットワーク(例えば、インターネット)、電子ストレージ、Wi-Fi技術に関連した設備、Bluetooth(登録商標)技術に関連した設備、データ入力デバイス、センサ、スキャナ、並びに/又は他のリソースを含む。いくつかの実施形態で、本願において外部リソース14に帰する機能の一部又は全ては、システム10に含まれているリソースによって提供されてもよい。外部リソース14は、プロセッサ20、コンピューティングデバイス24、電子ストレージ22、及び/又はシステム10の他の構成要素と、有線及び/若しくは無線接続を介して、ネットワーク(例えば、ローカルエリアネットワーク及び/若しくはインターネット)を介して、セルラー技術を介して、Wi-Fi技術を介して、並びに/又は他の資源を介して通信するよう構成されてもよい。
【0050】
電子ストレージ22は、情報を電子的に記憶する電子記憶媒体を含む。電子ストレージ22の電子記憶媒体は、システム10と一体的に設けられている(すなわち、実質的に着脱不可能である)システムストレージ、及び/又は例えばポート(例えば、USBポート、ファイアワイヤポート、など)若しくはドライブ(例えば、ハードディスクドライブ、など)を介してシステム10に着脱可能に接続されるリムーバブルストレージ、の一方又は両方を含んでよい。電子ストレージ22は、(全体的に又は部分的に)システム10内で別個の構成要素であってよく、あるいは、電子ストレージ22は、システム10の1つ以上の他の構成要素(例えば、コンピューティングデバイス24、プロセッサ20、など)と(全体的に又は部分的に)一体的に設けられてもよい。いくつかの実施形態で、電子ストレージ22は、プロセッサ20とともにサーバ内に、外部リソース14の部分であるサーバ内に、コンピューティングデバイス24内に、及び/又は他の場所に位置してよい。電子ストレージ22は、光学的に読み取り可能な記憶媒体(例えば、光ディスク、など)、磁気的に読み取り可能な記憶媒体(例えば、磁気テープ、磁気ハードドライブ、フロッピー(登録商標)ドライブ、など)、電荷に基づいた記憶媒体(例えば、EPROM、RAM、など)、ソリッドステート記憶媒体(例えば、フラッシュドライブ、など)、及び/又は他の電子的に読み取り可能な記憶媒体のうちの1つ以上を含んでよい。電子ストレージ22は、ソフトウェアアルゴリズム、プロセッサ20によって決定された情報、コンピューティングデバイス24及び/若しくはグラフィカルユーザインターフェイス40及び/若しくは他の外部コンピューティングシステムを介して受け取られた情報、外部リソース14、刺激装置16、センサ18から受け取られた情報、並びに/又はシステム10が本願で記載されるように機能することを可能にする他の情報を記憶してよい。
【0051】
クライアントコンピューティングプラットフォーム24は、システム10と、対象12、及び/又は他のユーザとの間のインターフェイスを提供するよう構成される。このインターフェイスを通じて、対象12及び/又は他のユーザは、システム10へ情報を提供し、システム10から情報を受け取り得る。例えば、クライアントコンピューティングプラットフォーム24は、センサ18からの出力信号の表現(例えば、EEG、2D/3D画像、映像、音声、テキスト、など)をユーザに表示してよい。これは、データ、キュー、結果、命令、及び/又はあらゆる他の通信可能なアイテム(集合的に「情報」と呼ばれる)が、ユーザ(例えば、対象12、医師、介護者、及び/又は他のユーザ)と、刺激装置16、プロセッサ20、電子ストレージ22、及び/又はシステム10の他の構成要素との間でやり取りされることを可能にする。
【0052】
クライアントコンピューティングプラットフォーム24に含まれるのに適したインターフェイスデバイスの例には、キーパッド、ボタン、スイッチ、キーボード、ノブ、レバー、表示スクリーン、タッチスクリーン、スピーカ、マイク、インジケータ灯、可聴アラーム、プリンタ、触覚フィードバックデバイス、及び/又は他のインターフェイスデバイスがある。いくつかの実施形態で、クライアントコンピューティングプラットフォーム24は、複数の別個のインターフェイスを有する。いくつかの実施形態で、クライアントコンピューティングプラットフォーム24は、プロセッサ20、刺激装置16、センサ18、及び/又はシステム10の他の構成要素と一体的に設けられている少なくとも1つのインターフェイスを有する。
【0053】
コンピューティングデバイス24は、介護者(例えば、医師、看護師、友人、家族、など)、患者、及び/又は他のユーザとシステム10との間のインターフェイスを提供するよう構成される。いくつかの実施形態で、個々のコンピューティングデバイス24は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォン、及び/又は個々の介護者、患者、及び/又は他のユーザに関連した他のコンピューティングデバイスであり、かつ/あるいは、それらに含まれる。いくつかの実施形態で、個々のコンピューティングデバイス24は、患者に対して病院、医師のオフィス、及び/又は他の医療施設で使用される設備;試験設備;患者を治療する設備;データ入力設備;及び/又は他のデバイスであり、かつ/あるいは、それらに含まれる。コンピューティングデバイス24は、介護者、患者、及び/又は他のユーザへ情報を提供するよう及び/又は彼らから情報を受け取るよう構成される。例えば、コンピューティングデバイス24は、データ解析の表現及び/又は他の情報を表示するのを助けるようにグラフィカルユーザインターフェイス40を介護者へ提示するよう構成される。いくつかの実施形態で、グラフィカルユーザインターフェイス40は、コンピューティングデバイス24、プロセッサ20、及び/又はシステム10の他の構成要素に関連した複数の別個のインターフェイス;介護者、患者及び/又は他のユーザへ情報を伝えるよう及び/又は彼らから情報を受け取るよう構成された複数のビュー及び/又はフィールド;及び/又は他のインターフェイスを含む。
【0054】
いくつかの実施形態で、コンピューティングデバイス24は、グラフィカルユーザインターフェイス40、プロセッシング機能、データベース、及び/又は電子ストレージをシステム10へ提供するよう構成される。そのようなものとして、コンピューティングデバイス24は、プロセッサ20、電子ストレージ22、外部リソース14、及び/又はシステム10の他の構成要素を含んでよい。いくつかの実施形態で、コンピューティングデバイス24は、ネットワーク(例えば、インターネット)へ接続されている。いくつかの実施形態で、コンピューティングデバイス24は、プロセッサ20、電子ストレージ22、外部リソース14、及びシステム10の他の構成要素を含まず、代わりに、ネットワークを介してそれらと通信する。ネットワークへの接続は、無線又は有線であってよい。例えば、プロセッサ20は、遠隔サーバに位置してよく、コンピューティングデバイス24上で介護者へのグラフィカルユーザインターフェイス40の表示を無線により引き起こし得る。上述されたように、いくつかの実施形態で、個々のコンピューティングデバイス24は、ラップトップ、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ、及び/又は他のコンピューティングデバイスである。個々のコンピューティングデバイス24に含まれるのに適したインターフェイスデバイスの例には、タッチスクリーン、キーパッド、タッチ検知式及び/若しくは物理ボタン、スイッチ、キーボード、ノブ、レバー、ディスプレイ、スピーカ、マイク、インジケータ灯、可聴アラーム、プリンタ、並びに/又は他のインターフェイスデバイスがある。本開示はまた、個々のコンピューティングデバイス24がリムーバブル記憶インターフェイスを含むことも企図する。この例では、情報は、介護者、患者及び/又は他のユーザがコンピューティングデバイス24の実装をカスタマイズすることを可能にするリムーバブルストレージ(例えば、スマートカード、フラッシュドライブ、リムーバブルディスク、など)からコンピューティングデバイス24にロードされてよい。コンピューティングデバイス24とともに使用されるよう適応された他の例となる入力デバイス及び技術には、制限なしに、RS-232ポート、RFリンク、IRリンク、モデム(電話、ケーブル、など)、及び/又は他のデバイスがある。
【0055】
ネットワーク26は、ローカルエリアネットワーク、セルラーネットワーク、イントラネット、近距離通信、周波数(RF)リンク、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi、及び/又はあらゆるタイプの有線若しくは無線ネットワークのような、インターネット及び/又は他のネットワークを含んでよい。そのような例は、制限であるよう意図されず、本開示の適用範囲は、外部リソース14、刺激装置16、センサ18、プロセッサ20、電子ストレージ22、及び/又はクライアントコンピューティングプラットフォーム24が何らかの他の通信媒体を介して動作上リンクされる実施形態を含む。
【0056】
図8は、睡眠段階の予測と、睡眠段階の発生の前の介入準備とを容易にする方法800を表す。システムは、1つ以上のセンサ、1つ以上の物理コンピュータプロセッサ、及び/又は他の構成要素を有する。1つ以上のプロセッサは、1つ以上のコンピュータプログラムコンポーネントを実行するよう構成される。1つ以上のコンピュータプログラムコンポーネントは、対象情報コンポーネント28、サンプリングコンポーネント30、検出コンポーネント32、予測コンポーネント34、リスクコンポーネント36、制御コンポーネント38、及び/又は他のコンポーネントを有してよい。以下で与えられている方法800の動作は、実例であるよう意図されている。いくつかの実施形態で、方法800は、記載されていない1つ以上の追加の動作を有して、かつ/あるいは、説明されている動作の1つ以上がない状態で、達成されてよい。更には、方法800の動作が図8で表され、以下で記載されている順序は、制限であるよう意図されない。
【0057】
いくつかの実施形態で、方法800は、1つ以上のプロセッシングデバイス(例えば、デジタルプロセッサ、アナログプロセッサ、情報を処理するよう設計されたデジタル回路、情報を処理するよう設計されたアナログ回路、状態機械、及び/又は情報を電子的に処理する他のメカニズム)において実装されてよい。1つ以上のプロセッシングデバイスは、電子記憶媒体に電子的に記憶されている命令に応答して方法800の動作の一部又は全てを実行する1つ以上のデバイスを含んでよい。1つ以上のプロセッシングデバイスは、方法800の動作の1つ以上の実行のために特に設計されるようハードウェア、ファームウェア、及び/又はソフトウェアを通じて構成された1つ以上のデバイスを含んでよい。
【0058】
動作802で、対象の脳活動に関する情報を運ぶ出力信号が生成される。いくつかの実施形態で、動作802は、センサ18(図1に図示され、本明細書で記載)と同じか又は類似した1つ以上のセンサによって実行される。
【0059】
動作804で、睡眠セッションの第1期間に関して出力信号を表すサンプルが決定される。いくつかの実施形態で、動作804は、サンプリングコンポーネント30(図1に図示され、本明細書で記載)と同じか又は類似したコンピュータプロセッサコンポーネントによって実行される。
【0060】
動作806で、睡眠セッション中に、睡眠セッションの第2時間の前後で起こる対象の睡眠段階を予測するよう睡眠セッションの第1時間に予測モデルへサンプルが供給される。いくつかの実施形態で、動作806は、予測コンポーネント34(図1に図示され、本明細書で記載)と同じか又は類似したコンピュータプロセッサコンポーネントによって実行される。
【0061】
動作808で、第2時間より前に、睡眠段階の予測に基づいて、末梢刺激に関する1つ以上の刺激装置パラメータを示す介入情報が決定される。いくつかの実施形態で、動作808は、リスクコンポーネント36(図1に図示され、本明細書で記載)と同じか又は類似したコンピュータプロセッサコンポーネントによって実行される。
【0062】
動作810で、介入情報に基づいて、1つ以上の刺激装置に、睡眠セッションの第2時間の前後で対象へ介入を与えさせる。いくつかの実施形態で、動作810は、制御コンポーネント38(図1に図示され、本明細書で記載)と同じか又は類似したコンピュータプロセッサコンポーネントによって実行される。
【0063】
特許請求の範囲において、カッコに入れられた如何なる参照符号も、請求項を制限するものとして解釈されるべきではない。語「有する」(comprising)又は「含む」(including)は、請求項で挙げられている以外の他の要素又はステップの存在を除外しない。いくつかの手段を列挙するデバイスクレームでは、それらの手段のいくつかがハードウェアの同一のアイテムによって具現されてもよい。単称形の要素(その要素に先行する不定冠詞a又はan)は、そのような要素の複数個の存在を除外しない。いくつかの手段を列挙するデバイスクレームでは、それらの手段のいくつかがハードウェアの同一のアイテムによって具現されてもよい。特定の要素が相互に異なった従属請求項に挙げられているという単なる事実は、それらの要素が組み合わせて使用されえないことを示すものではない。
【0064】
上記の説明は、最も実用的且つ好適な実施形態であると現在考えられているものに基づいて例示のために詳細を与えているが、そのような詳細はもっぱらその目的のためであり、本開示は明示的に開示されている実施形態に制限されず、対照的に、添付の特許請求の範囲の主旨及び適用範囲になる変更及び同等の配置をカバーするよう意図されることが理解されるべきである。例えば、本開示は、可能な限り、いずれかの実施形態の1つの特徴がいずれかの他の実施形態の1つ以上の実施形態と組み合わされ得ることを企図する。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8