(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】弁を含むイオン導入法を提供するためのイヤセットアセンブリ
(51)【国際特許分類】
A61F 11/00 20220101AFI20240412BHJP
A61N 1/04 20060101ALI20240412BHJP
A61N 1/30 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
A61F11/00 350
A61N1/04
A61N1/30
(21)【出願番号】P 2020536216
(86)(22)【出願日】2019-01-15
(86)【国際出願番号】 US2019013664
(87)【国際公開番号】W WO2019143617
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2022-01-07
(32)【優先日】2018-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517038958
【氏名又は名称】タスカー メディカル,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロヒット・ギロトラ
(72)【発明者】
【氏名】エリック・ゴールドファーブ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ランツ
(72)【発明者】
【氏名】エルマー・イー
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0014272(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0361204(US,A1)
【文献】特表2010-524584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 11/00
A61N 1/04
A61N 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン導入装置であって、
作動チャネルを画定する本体と、
前記作動チャネル内に配設されている電極と、
前記電極から分離されて流体を保持するためのタンクであって、前記作動チャネルと流体連通している、タンクと、
前記タンクと流体連通する通気路と、
前記通気路内に配設され、(i)流体を前記タンク内から前記通気路を通して前記イオン導入装置の外部に流すことができ、(ii)前記流体が前記イオン導入装置の前記外部から前記通気路を通して前記タンクに入るのを防止する、ように構成されている弁と、を備える、イオン導入装置。
【請求項2】
前記本体の遠位端に配設されたシール要素をさらに備え、
前記シール要素が、耳の外耳道の表面に対してシールを形成し、前記耳の鼓膜とチャネルと流体連通する前記イオン導入装置との間に閉込容積を画定するように構成されている、請求項1に記載のイオン導入装置。
【請求項3】
前記流体が、第1の流体であり、
前記イオン導入装置が、前記チャネルおよび前記タンクのうちの少なくとも一方と流体連通し、前記チャネル、前記タンク、および前記閉込容積を第2の流体で充填するように構成されている流体導管をさらに備え、
前記弁が、前記第2の流体を前記タンク内から前記イオン導入装置の前記外部に流すことができるようにさらに構成されている、請求項2に記載のイオン導入装置。
【請求項4】
前記第1の流体が、空気である、請求項3に記載のイオン導入装置。
【請求項5】
前記弁が、傘形弁である、請求項1から4のいずれか1項に記載のイオン導入装置。
【請求項6】
前記流体が、空気である、請求項1に記載のイオン導入装置。
【請求項7】
前記弁が、
(i)前記タンク内の正のゲージ圧力に応答して、前記流体を前記通気路を通して前記タンク内から前記イオン導入装置の外部に流すことを可能とし、
(ii)前記タンクの内部と前記イオン導入装置の前記外部との間の差圧が所定の値未満であるときに、前記流体が前記イオン導入装置の前記外部から前記タンクに入るのを防止し、
(iii)前記差圧が前記所定の値よりも大きいときに、前記流体が前記イオン導入装置の前記外部から前記タンクに入ることができる、
ように構成されている、請求項1から6のいずれか1項に記載のイオン導入装置。
【請求項8】
前記所定の値が、1kPaである、請求項7に記載のイオン導入装置。
【請求項9】
前記弁が、第1の弁であり、前記流体が、第1の流体であり、
当該イオン導入装置が、
前記作動チャネルおよび前記タンクのうちの少なくとも一方と流体連通し、前記作動チャネルおよび前記タンクを第2の流体で充填するように構成されている流体導管と、
前記流体導管の近位端に配設され、前記第2の流体を提供する流体源に接続するように構成されているコネクタと、
前記コネクタまたは前記流体導管のうちの一方に配設され、(i)前記第2の流体を前記作動チャネルおよび前記タンクのうちの前記少なくとも一方に向かって第1の方向に流すことができ、(ii)前記第2の流体が前記第1の方向と反対側の第2の方向に流れるのを防止する、ように構成されている第2の弁と、
をさらに備える、請求項7に記載のイオン導入装置。
【請求項10】
前記本体の遠位端に配設されたシール要素をさらに備え、
前記シール要素が、耳の外耳道の表面に対してシールを形成し、前記耳の鼓膜と前記イオン導入装置との間に閉込容積を画定するように構成されており、
前記流体が、第1の流体であり、前記イオン導入装置が、前記作動チャネルおよび前記タンクのうちの少なくとも一方と流体連通し、前記作動チャネル、前記タンク、および前記閉込容積を第2の流体で充填するように構成されている流体導管をさらに備え、
前記弁が、前記第2の流体を前記タンク内から前記イオン導入装置の前記外部に流すことができるようにさらに構成されており、
前記電極は、前記流体導管が前記作動チャネルを前記第2の流体で充填した後に、前記第2の流体内に浸漬される、請求項7に記載のイオン導入装置。
【請求項11】
前記第1の流体が、空気であり、前記第2の流体が、治療用物質を含むイオン導入流体である、請求項10に記載のイオン導入装置。
【請求項12】
前記タンクが、前記電極から分離された空間内に前記第1の流体のポケットを収容するように構成され、前記作動チャネルは、前記第1の流体の前記ポケットが前記タンク内にあるときに、前記第2の流体内に前記電極の前記浸漬を維持するように構成されている、請求項10に記載のイオン導入装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載のイオン導入装置を有するイヤセットと、
前記作動チャネルおよび前記タンクのうちの少なくとも一方と流体連通し、前記作動チャネルおよび前記タンクを第2の流体で充填するように構成されている流体導管と、
前記流体導管の近位端に配設され、前記第2の流体を提供する流体源に接続するように構成されているコネクタと、
前記コネクタまたは前記流体導管のうちの一方に配設され、(i)前記第2の流体を前記作動チャネルおよび前記タンクのうちの前記少なくとも一方に向かって第1の方向に流すことができ、(ii)前記タンク内の負のゲージ圧力が所定の値未満のままであるように、前記第2の流体が前記第1の方向と反対側の第2の方向に流れるのを防止する、ように構成されている第2の弁と、
を備える、装置。
【請求項14】
請求項3、9および10のいずれか一項に記載のイオン導入装置を有
するイヤセットと、
前記作動チャネルおよび前記タンクのうちの少なくとも一方と流体連通し、前記作動チャネルおよび前記タンクを第2の流体で充填するように構成されている流体導管と、
前記流体導管の近位端に配設され、前記第2の流体を提供する流体源に接続するように構成されているコネクタと、
前記コネクタまたは前記流体導管のうちの一方に配設され、(i)前記第2の流体を前記作動チャネルおよび前記タンクのうちの前記少なくとも一方に向かって第1の方向に流すことができ、(ii)前記タンク内の負のゲージ圧力が所定の値未満のままであるように、前記第2の流体が前記第1の方向と反対側の第2の方向に流れるのを防止する、ように構成されている第2の弁と、
を備え、
前記第1の流体が、空気であり、前記第2の流体が、治療用物質を含むイオン導入流体である
、装置。
【請求項15】
請求項9に記載のイオン導入装置を有
するイヤセットと、
前記作動チャネルおよび前記タンクのうちの少なくとも一方と流体連通し、前記作動チャネルおよび前記タンクを第2の流体で充填するように構成されている流体導管と、
前記流体導管の近位端に配設され、前記第2の流体を提供する流体源に接続するように構成されているコネクタと、
前記コネクタまたは前記流体導管のうちの一方に配設され、(i)前記第2の流体を前記作動チャネルおよび前記タンクのうちの前記少なくとも一方に向かって第1の方向に流すことができ、(ii)前記タンク内の負のゲージ圧力が所定の値未満のままであるように、前記第2の流体が前記第1の方向と反対側の第2の方向に流れるのを防止する、ように構成されている第2の弁と、
を備え、
前記第1の弁が、傘形弁である
、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年1月16日に出願された「Earset Assembly for Providing Iontophoresis Including Valve」と題する米国仮特許出願第62/617,945号に対する優先権、およびその利益を主張するものであり、その内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、イオン導入法を使用して、被験者の耳に物質を送達するためのシステム、装置、および方法に関する。より具体的には、本開示は、麻酔剤などの治療用物質を、被験者の鼓膜にイオン導入法による送達を行う際に使用するための弁設計を有するイヤセットアセンブリに関する。
【背景技術】
【0003】
中耳炎は、中耳の炎症であり、特にヒトの子供に共通しており、子供たちの解剖学的構造および免疫機能に起因する。中耳炎は、重度または未治療の場合、個々の鼓膜の裂傷、難聴、または頭蓋内合併症を引き起こす場合がある。
【0004】
重大なケースの治療には、鼓膜を通して均圧チューブまたは中耳腔換気用チューブを配置することを必要とする場合があり、中耳と外耳との間に流体連通を提供することによって、中耳の適切な排流を提供することができる。特に、係るチューブは、ユースタキー管を介して中耳から流体の排流を促進する通気路を提供することができ、このため、中耳内圧力から鼓膜にかかる圧迫を低減することができる。これは、さらに、将来の感染、および鼓膜の圧力誘発裂傷の可能性を低減することができる。
【0005】
均圧チューブの挿入は、場合によっては、一般的な麻酔を使用して実行することができるが、それには、手術室、麻酔専門医の存在、および回復室での時間などの追加のリソースを必要とし得る。さらに、一般的な麻酔を使用することは、患者が、治療を受けている際に快または不快であるかもしれないという特定のリスクを含み得る。それらのリスクを低減するために、局所麻酔送達法を使用することができる。いくつかの均圧チューブ送達システムおよび方法は、例えば、鼓膜の周りおよび鼓膜を含む領域へのイオン導入を通じて麻酔剤を提供する。
【0006】
イオン導入法は、帯電した薬物溶液に低レベルの電流を印加することを必要とする。電流は、溶液内の、同様に帯電した薬物イオンを寄せ付けず、皮膚または他の隔膜を横切ってそれらのイオンを輸送する。耳の手技において、イオン導入は、鼓膜を横切って中耳腔換気用チューブを配置する前に、鼓膜に麻酔をかけるために使用することができる。これらの手技では、薬物溶液が、外耳道内に配置され、電流が電極を介して溶液に印加され、このため、鼓膜を横切って薬物溶液内の麻酔剤を輸送する。
【0007】
既存および前述のイオン導入装置およびシステムは、特定の欠点を有する。例えば、一部の装置は、外耳道内の薬物溶液をシールせず、これにより、患者がイオン導入手技の間、患者の頭部を横たえ、傾ける必要があり得る。さらに、耳栓を含む装置などの、外耳道内で薬物溶液をシールする従来の装置は、外耳道の湾曲した解剖学的構造に適切に順応することができず、したがって、少なくとも一部の患者の外耳道内に良好なシールの形成に失敗する。シールが形成されない場合、外耳道内からの流体は、漏れ出す場合があり、イオン導入電極と溶液との間の接触を妨害し得る気泡の形成をもたらす可能性がある。したがって、これらおよび他の欠点を考慮するイオン導入システムを有することが望ましい。
【発明の概要】
【0008】
被験者の耳、特に被験者の鼓膜に物質を送達するためのシステム、装置、および方法が記載されている。治療用物質は、リドカインなどの麻酔剤であってもよく、この麻酔剤を使用して、例えば、鼓膜切開術もしくは鼓膜切開、または鼓室穿刺術のために、隔膜に穴を開ける準備に向けて鼓膜を麻酔することができる。
【0009】
いくつかの実施形態によれば、被験者の耳に麻酔剤を送達するための装置は、チャネルと、チャネルと流体連通するタンクと、タンクと流体連通する通気路と、を含む。電極が、チャネル内に配設され、チャネルおよび/またはタンク内の薬物溶液(すなわち、帯電した薬物を有するイオン導入溶液)に電流を印加するように構成することができる。通気路は、タンクが薬物溶液で充填されたときに、空気および/または流体をタンクから排出することができる。逆止弁が通気路内に位置決めされ、空気が通気路を介してタンクに再入するのを防止および/または限定することができ、それによって、タンクから外への薬物溶液の漏洩、およびイオン導入手技の途絶のリスクを低減することができる。いくつかの実施形態では、逆止弁は、傘形弁とすることができる。いくつかの実施形態では、逆止弁は、装置のチャネルおよび/またはタンク内の負圧を緩和するように設計することができる。例えば、逆止弁は、負のゲージ圧力が1kPaに到達したときに、空気がタンクに再入するのを閉鎖および可能にするように設計することができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、流体源を使用して、薬物溶液をチャネルおよび/またはタンクに供給することができる。流体源は、例えば、シリンジとすることができる。装置は、1つ以上のコネクタおよび/または導管を介して流体源と流体連通する。コネクタおよび/または導管は、流体の、装置から流体源への逆流を防止するアダプタを含むことができ、それによって、装置内の負圧の増大のリスクを低減することができる。いくつかの実施形態では、アダプタは、流体源からチャネルおよび/または装置のタンクへの前進流を可能にするが、装置から流体源に向かって戻る流体の逆流を防止するように設計された逆止弁を含むことができる。
【0011】
前述の概念、および以下に極めて詳細に説明される追加の概念のすべての組み合わせ(係る概念は、互いに相反していないと仮定する)は、本明細書に開示される本発明の主題の一部と見なされることを理解されたい。特に、本開示の末端に現れる請求項に記載された主題のすべての組み合わせは、本明細書に開示される本発明の主題の一部であると見なされる。また、参照により組み込まれる任意の開示の中にも現れ得る、本明細書で明示的に用いられる専門用語は、本明細書に開示される特定の概念と最も一致する意味に従うべきであることも理解されたい。
【0012】
他のシステム、プロセス、および特徴は、以下の図面、および詳細な説明を吟味することに基づいて、当業者に明らかになるであろう。係るすべての追加的なシステム、プロセス、および特徴は、本明細書内に含まれ、本発明の範囲内に含まれ、添付の特許請求の範囲によって保護されるべきであることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図面は、本質的に、説明を目的とするためのものであり、本明細書に記載される本発明の主題の範囲を限定することを意図されていないことは、当業者ならば理解するであろう。図面は、必ずしも縮尺通りであるとは限らず、場合によっては、本明細書に開示される本発明の主題の様々な態様は、異なる特徴の理解を容易にするために、図面中では、誇張され、または拡大されて示される場合がある。図面内では、同様の参照文字は、概して同様の特徴(例えば、機能的に類似した、かつ/または構造的に類似した要素)を指す。
【0014】
【
図1】いくつかの実施形態による、イヤセットを含むイオン導入システムの例を示す。
【
図2A】いくつかの実施形態による、例示的なイヤセットの説明図である。
図2Aは、イヤセットの斜視図を提供する。
【
図2B】いくつかの実施形態による、例示的なイヤセットの説明図である。
図2Bは、
図2Aの線2B-2Bに沿ったイヤセットの断面図を提供する。
【
図3A】いくつかの実施形態による、
図2Aおよび
図2Bのイヤセットの断面図を描写し、イヤセットが、水平配向における被験者の耳に隣接して位置決めされている。
【
図3B】いくつかの実施形態による、
図2Aおよび
図2Bのイヤセットの別の断面図を描写し、耳の外耳道が、流体で充填され、一部の流体が、イヤセットの通気路を通って排出している。
【
図3C】いくつかの実施形態による、
図2Aおよび
図2Bのイヤセットの別の断面図を描写し、耳の外耳道が、流体で充填され、気泡が流体内に形成されている。
【
図4】いくつかの実施形態による、
図2Aおよび
図2Bのイヤセットの別の断面図を描写し、耳の外耳道が、流体で充填され、耳の表面とイヤセットとの間での流体リークを伴っている。
【
図5】いくつかの実施形態による、イオン導入システムの別の例の概略説明図である。
【
図6】いくつかの実施形態による、イヤセットを含む別の例示的なイオン導入システムの斜視図を描写する。
【
図7A】いくつかの実施形態による、
図6のイオン導入システムのイヤセットの断面図を描写し、逆止弁が、イヤセットの通気路内に位置決めされている。
図7Aは、イヤセット内からの空気および/または流体がイヤセットの内外に流れない休止構成にある逆止弁を描写する。
【
図7B】いくつかの実施形態による、
図6のイオン導入システムのイヤセットの断面図を描写し、逆止弁が、イヤセットの通気路内に位置決めされている。
図7Bは、イヤセット内からの空気および/または流体が通気路を介して流れ出ることができる正圧構成にある逆止弁を描写する。
【
図8A】いくつかの実施形態による、
図6のイオン導入システムのイヤセットの追加の断面図を描写し、弁が、イヤセットの通気路内に位置決めされている。
図8Aは、イヤセット外からの空気および/または流体がイヤセットに入ることができない休止構成にある弁を描写する。
【
図8B】いくつかの実施形態による、
図6のイオン導入システムのイヤセットの追加の断面図を描写し、弁が、イヤセットの通気路内に位置決めされている。
図8Bは、イヤセット外からの空気および/または流体が通気路を介してイヤセット中に流れることができる、負圧構成にある弁を描写する。
【
図9】いくつかの実施形態による、
図6のイオン導入システムのイヤセットの側面斜視図を描写し、イヤセットの弁の下方に配設されている1つ以上の通気路を示す。
【
図10】いくつかの実施形態による、イオン導入システムで使用するための流体源アダプタの例を描写する。
【
図11A】いくつかの実施形態による、
図10の流体源アダプタの断面図を描写し、逆止弁コンポーネントを伴う。
図11Aは、流体が流体源から流れ出る第1の構成にある逆止弁コンポーネントを描写する。
【
図11B】いくつかの実施形態による、
図10の流体源アダプタの断面図を描写し、逆止弁コンポーネントを伴う。
図11Bは、流体が流体源に向かって流れることができない第2の構成にある逆止弁コンポーネントを描写する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
イオン導入システムのためのシステム、装置、および方法が、本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、イオン導入システム使用して、被験者の鼓膜内に中耳腔換気用チューブを導入する前に、被験者の耳を麻酔することができる。
【0016】
中耳腔換気用チューブまたは均圧チューブが、患者の鼓膜内に導入され、例えば、中耳炎を治療することができる。いくつかの実施形態では、送達器具を使用して鼓膜内に中耳腔換気用チューブを挿入することができる。中耳腔換気用チューブ送達システムの例が、2011年11月8日に出願された「System and Method for the Simultaneous Automated Bilateral Delivery of Pressure Equalization Tubes」と題する米国特許第8,052,693号、2014年10月21日に出願された「Tympanic Membrane Pressure Equalization Tube Delivery System」と題する米国特許第8,864,774号、2016年4月26日に出願された「Features to Improve and Sense Tympanic Membrane Apposition by Tympanostomy Tube Delivery Instrument」と題する米国特許第9,320,652号、2017年6月20日に出願された「Tympanostomy Tube Delivery Device with Cutting Dilator」と題する米国特許第9,681,891号、2016年2月11日に公開された「Tympanostomy Tube Delivery Device with Rotatable Flexible Shaft」と題する米国特許出願公開公報第2016/0038342号、および2017年12月5日に出願された「Tympanostomy Tube Delivery Device with Replaceable Shaft Portion」と題する米国特許第9,833,360号に開示されている。これらの各々の文献の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、中耳腔換気用チューブが、例えば、切断ツールを用いて鼓膜切開術の切開部を作り出し、鉗子等を使用して中耳腔換気用チューブを切開部の中に挿入することなどによって、手動で鼓膜中に挿入することができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、イオン導入システムは、被験者の耳の表面に対して流体密封を形成するように構成されている可撓性シール要素または耳栓を備えたイヤセットを含むことができる。このイヤセットは、イオン導入流体を送達することができる、耳内の容積を画定することができる。イオン導入システムは、イオン導入流体に電流を供給して薬物(例えば、麻酔剤)のイオンを鼓膜中に駆動するように作動することができる電極を含むことができる。イオン導入システムの例は、2013年5月27日に出願された「Systems and Methods for Anesthetizing Ear Tissue」と題する米国特許第8,452,392号、2014年9月23日に出願された「Systems and Methods for Anesthetizing Ear Tissue」と題する米国特許第8,840,602号、および2017年1月19日に公開された「Earplug Assembly for Iontophoresis System」と題する米国特許出願公開公報第2017/0014272号に開示されている。これらの各々の文献の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
図1は、イヤセット200を含む、イオン導入システム100の例を示す。イヤセット200は、コネクタ132および導管130を介して、流体源140(例えば、シリンジ)と連通している。ある実施形態では、導管130は、可撓性管材の形態とすることができる。イヤセット200はまた、コネクタ152およびケーブル150を介して、制御ユニット170および接地パッド180とも連通している。導管130およびケーブル150は、クリップ120とイヤセット200との間に延在する共有長さに沿って共に結合されている。導管130およびケーブル150の共有長さの一部分110は、コイル状に巻き付けられ得、拡張および/または短縮されてクリップ120とイヤセット200との間の距離を調節することができる。クリップ120は、導管130およびケーブル150の組み合わせを衣服および/または任意の他の好適な構造体に選択的に固定するように動作可能であり、その結果、イオン導入システム100は、イオン導入手技の間、被験者に固定することができる。
【0019】
図2Aおよび
図2Bは、イヤセット200の詳細図を提供する。
図2Aは、イヤセット200の斜視図を提供し、
図2Bは、
図2Aの線2B-2Bに沿って切り取られたイヤセット200の断面図を提供する。イヤセット200は、耳の中に挿入され得、追加の取り付けコンポーネント(例えば、ヘッドフレーム)を必要とせずに耳内に留めることができる。いくつかの実施形態では、イヤセット200は、イヤセット200を耳内の適所に保持するのを支援することができる、生体適合性を有する圧力感知粘着剤を有することができる。イヤセット200は、把持機構222などの挿入要素を含み、その把持機構は、ユーザが把持することができ、イヤセット200を耳の中に挿入する間のハンドルの役割を果たすことができる。イヤセット200はまた、プルタブ228などの取り出し要素も含み、そのプルタブは、把持および引っ張りを行うことができ、耳からイヤセット200を取り外す際の支援となり得る。いくつかの実施形態では、他の種類の挿入要素および/または取り出し要素が、イヤセット200の中に組み込まれ得る。1個のイヤセット200が示されているが、イオン導入システム100は、被験者の両方の耳内で使用され得る2つのイヤセット200を有して、イオン導入を介して治療用物質の同時かつ/または連続的な送達を提供することができることを理解されたい。
【0020】
イヤセット200は、可撓性シール要素または耳栓224、および遠位方向に突き出るノズル226を含む。シール要素224は、イヤセット200が耳内に挿入されるときに、外耳道の表面に対して流体密封を提供するように構成されている。いくつかの実施形態では、感圧性粘着剤が、シール要素224の外面に塗布されて、外耳道に対して流体密封を促進する。ノズル226は、イヤセット200が耳内に挿入されるときに、外耳道の中に突き出るように位置決めされ、その結果、ノズル226は、鼓膜、すなわち
図3A~
図3Cに示されるような鼓膜TM対して横方向に離間されている。ノズル226は、複数の噴霧アパーチャ227を有し、支柱225の遠位端に固定されている。支柱225は、導管130から噴霧アパーチャ227まで流体連通するための経路を提供する管腔を画定する。ある実施形態では、支柱225は、半剛性支柱とすることができ、この支柱は、屈曲することができ、それによって、噴霧アパーチャ227の噴霧の方向を調節することができる。したがって、噴霧アパーチャ227は、支柱225および導管130を介して流体源140と流体連通している。シール要素224は、剛性フレーム223に固定されている。シール要素224およびフレーム223は、共に作動チャネル221を画定している。
【0021】
把持機構222は、剛性フレーム223にしっかりと固定されている。把持機構222およびフレーム223は、協働してタンク270を画定している。タンク270は、作動チャネル221と流体連通している。タンク270は、支柱225により画定される長手方向軸に対して横方向に延在する。したがって、タンク270および作動チャネル221は、共にL字形空洞を形成する。L字形空洞は、外耳道がイオン導入手技全体を通じて容積の変化を経験するときであっても、イオン導入電極252との流体接触を維持するように動作する。フレーム223はまた、少なくとも1つの通気路229も画定し、その通気路もまた、タンク270と流体連通している。以下にさらに詳細に説明されるように、通気路229は、タンク270および作動チャネル221がイオン導入溶液で充填されたときに、流体(例えば、空気および/または液体)をタンク270および作動チャネル221から排出することができるように構成されている。通気路229は、円形の開口部として形成することができる。ある実施形態では、通気路229は、ほぼ0.025インチの直径を有する円形の開口部とすることができる。別の方法として、通気路229は、異なるサイズおよび/または構成を有することができる。例えば、通気路229は、同じもしくは異なる形状および/またはサイズを有する、別個に形成された開口部を含むことができる。
【0022】
図2Bに描写してあるように、イオン導入電極252は、作動チャネル221の長さに沿って延在する。示された実施形態では、イオン導入電極252は、コイルのように形状加工され、剛性フレーム223の内面に沿って位置決めされている。他の実施形態では、イオン導入電極252は、異なる構成を有することができる。例えば、イオン導入電極252は、作動チャネル221の長さに沿って延在する1つ以上の直線ワイヤを含むことができる。いくつかの実施形態では、イオン導入電極252は、剛性フレーム223の壁または表面に隣接して位置決めすることができる。他の実施形態では、イオン導入電極252は、剛性フレーム223から離間された作動チャネル221内に位置決めすることができる。
【0023】
イオン導入電極252は、ケーブル150を介して制御ユニット170と結合され、制御ユニット170によって作動され得る。制御ユニット170は、イオン導入電極252を作動させて電流をイオン導入溶液に提供し、その結果、溶液内の帯電イオンが、鼓膜TM内に送達され得る。鼓膜TMを麻酔する場合、イオン導入溶液は、鼓膜TMを麻酔するための帯電麻酔薬(例えば、リドカイン)を含むことができる。流体源140は、治療用物質(例えば、リドカインなどの麻酔薬)を含むイオン導入溶液をイヤセット200に供給することができる。そして、制御ユニット170は、イオン導入電極252を作動させてイオン導入溶液内の治療用物質のイオンを、鼓膜TMを含む組織中に駆動することができる。
【0024】
タンク270は、イオン導入流体を収容するイヤセット200内の空間容積を増大させる。いくつかの実施形態では、タンク270は、作動チャネル221の容積の少なくとも2倍の容積を有することができる。イヤセット200内のイオン導入流体の容積を増大させることによって、タンク270は、例えば、気泡がイヤセット200内のイオン導入流体内に形成する場合に、電極252が空気に晒されるようになり得るというリスクを低減する。電極252の全体、または電極252の実質的な一部分が空気に晒される事例では、電極252は、治療用物質を鼓膜TMに送達するためのイオン導入流体に十分な電流を供給することができない。
図3Cおよび
図4を参照してさらに詳細に説明されるように、タンク270は、このリスクを低減する。
【0025】
通気路229は、タンク270に隣接して位置決めされ、その結果、流体(例えば、空気および/または流体)は、通気路229を介してタンク270から外に出ることができる。
図3Bに描写してあるように、通気路229は、タンク270の横方向の端部に位置決めされ得、その結果、流体既存タンク270から生じる任意の開放空間(例えば、気泡)が、タンクの横方向の端部に隣接するタンク270内に留まり、それによってイオン導入電極252から離間される。通気路229は、導管130を受容するための開口部と一体化して形成することができる。別の方法として、通気路229は、イヤセット200内に形成された別個の開口部、例えば、導管130が把持機構222に入る箇所から離間された、把持機構222内に形成された開口部であってもよい。
【0026】
図3A~
図3Cは、イオン導入手技で使用されるイヤセット200を示す。
図3Aに示すように、イヤセット200は、被験者の外耳道EC内に位置決めすることができる。シール要素224は、それが外耳道ECの表面に対して保持するように位置決めされている。シール要素224は、イヤセット200を耳に固定し、外耳道ECの表面に対して流体シールを形成することができる。外耳道ECのシールにより、イオン導入流体を受容することができる、鼓膜TMとイヤセット200との間の空洞を作り出す。いくつかの実施形態では、感圧性粘着剤が、シール要素224上に配設されることができる。ライナーストリップ220(
図1に示すように)は、イヤセット200を外耳道EC内に配置する間、感圧性粘着剤を覆うことができる。ライナーストリップ220を取り外して感圧性粘着剤を露出させることができ、その結果、感圧性粘着剤は、外耳道ECの表面を粘着させることができ、さらにイヤセット200が外耳道ECに固定されたままになること、および流体シールが可撓性シール要素224と外耳道ECとの間に形成されることを確実にすることができる。
【0027】
イヤセット200が外耳道EC内に固定されると、ユーザは、ノズル226を介してイオン導入流体の、外耳道EC中への投与を開始することができる。ユーザは、流体源140を導管130に接続し、流体源140を使用してイオン導入流体を供給することができる。イオン導入流体が供給されたとき、外耳道EC、作動チャネル221、およびタンク270は、流体で充填され得、外耳道EC、作動チャネル221、およびタンク270から移動した空気は、通気路229を通ってイヤセット200の外部に流れ出ることになる。
図3Bに示すように、ユーザは、流体320が通気路229を通って流れ出るのを観察されるまで、イオン導入流体を供給し続けることができる。通気路229を通って流れ出る流体320によって、外耳道EC、作動チャネル221、およびタンク270がイオン導入流体で満たされていること、および電極252を作動させることができることをユーザに知らせる。いくつかの実施形態では、把持機構222は、ユーザが、イオン導入流体で充填されているタンク270を観察することができるように、透明にすることができる。
【0028】
電極252を作動させる前に、ユーザは、流体源140を取り外すことができる。いくつかの事例では、流体源140の取り外しは、作動チャネル221およびタンク270からのイオン導入流体の損失を引き起こす場合がある。例えば、流体源140の取り外しによって、イオン導入流体の0.04ccまたはミリリットルの損失を引き起こす場合がある。その結果、
図3Cに示すように、対応する容積の空気ポケット330が、タンク270内に形成し得る。タンク270の形状に起因して、空気ポケット330は、イオン導入電極252から離間され、その結果、イオン導入電極252は、イオン導入流体内に完全に浸漬されたままになる。
【0029】
いくつかの事例では、流体は、イオン導入手技の前に、かつ/またはその最中にタンク270から排出することができる。多くの場合、流体は、通気路229を介してか、または外耳道内のイヤセット200の不適切な整合に起因して(例えば、可撓性シール要素224が、外耳道の表面に対して流体密封を形成しない場合)、イオン導入手技前に排出し得る。例えば、被験者による動き(例えば、咳、会話、飲み込み、叫び、あくび、またはそれ以外の結果として)によって、外耳道ECの容積に変動を引き起こす可能性がある。係る容積の変化により、ポンプ作用を引き起こし得、この作用により、タンク270内のイオン導入流体のレベルに変化をもたらし得る。いくつかの事例では、容積の変化は、イオン導入流体を通気路229から外に移動する原因となり得る。それに応じて、イオン導入流体の減少により、タンク270内の空気ポケット330を拡大および縮小させる。タンク270の容積およびL字形構成のために、空気ポケット330は、作動チャネル221、したがって電極252から離間したタンク270内に残ることができる。したがって、空気ポケット330は、電極252の動作に影響を及ぼさず、イオン導入手技に強い影響を与えないことになる。
【0030】
しかしながら、いくつかの事例では、リークは、外耳道ECの表面と、可撓性シール要素224との間に形成し得る。リークが外耳道ECの表面と、可撓性シール要素224との間で形成するとき、外耳道EC内、作動チャネル221内、およびタンク270内からのイオン導入流体は、漏れ出し得、これは、イオン導入手技を中断し得る。例えば、
図4に示すように、間隙または開口部304が、可撓性シール要素224と、外耳道ECの表面302との間に形成し得る。間隙304は、医師または患者が、患者の動き(例えば、会話、叫び、あくび、摂食、または患者の顎部の移動)からイヤセット200の一部を押したりもしくは引っ張ったりする(例えば、イヤセット200を調節する)とき、または外耳道内のイヤセット200の不適切な整合(例えば、可撓性シール要素224が、外耳道ECの表面に対して流体密封を形成しない場合)に起因して、形成する場合がある。間隙304は、イオン導入手技の前に、またはその最中に形成する場合がある。間隙304が形成すると、イオン導入流体は、間隙304から漏れ出し得、空気と置き換えられ、その空気は、通気路229を介してタンク270中に流れ込み得る。
図4に示すように、イオン導入流体が間隙304から漏れ出すに従って、空気ポケット330のサイズは増大し得る。いくつかの事例では、空気ポケットまたは気泡もまた、イオン導入電極252の表面を移動する可能性もある。リークが解決されない場合、そのとき、イオン導入電極252が、例えば、空気ポケット330のサイズの増大、またはイオン導入電極252の表面への空気ポケットの移動に起因して、空気に晒されるようになるまで、イオン導入流体は、外耳道ECから漏れ出し続け得る。空気に対する係る露出により、イオン導入手技の遅延または中断を引き起こす場合がある。イオン導入手技が開始または再開することができる前に、リークは、解決されなければならず(例えば、間隙304は、流体がもはやタンク270から漏れ出すことができないように塞がれなければならず)、タンク270は、イオン導入流体で再充填されなければならない。いくつかの事例では、イヤセット200は、外耳道ECの表面に対して新しい流体シールを形成することができる新しいイヤセットと置き換える必要があり得る。リークを解決し、かつ/またはイヤセット200を置き換えるという付加的な努力により、イオン導入手技に必要とされる時間量を延長させ、医師と患者との間で追加的な相互連携または接触を必要とし得る。この延長された時間、および/または医師と患者との間での追加的な接触により、不快、いら立ち、および非忍耐が引き起こされ得、特に若年患者では、潜在的に行動上の問題をもたらし得る。
【0031】
流体漏洩に対するある程度の耐性を提供するために、イヤセット200への空気の進入を可能にする、イヤセット200内の通気路229および/または他の開口部を閉鎖して、その結果、空気が、間隙304を通って漏れ出す流体を簡単には移動させないようにすることができる。ある実施形態では、ユーザは、手動で通気路229を閉鎖して、空気がイヤセット200に入ること、および間隙304を通って漏れ出す流体を移動させることを防止することができる。例えば、ユーザは、ユーザの指を使用して通気路229を覆うか、またはユーザは、プラグ、テープ、もしくは別のメカニズムを使用して通気路229を閉鎖してもよい。ユーザは、イオン導入手技が完了されるまで、かつ/または間隙304が塞がれるまで、通気路229を閉鎖のままにすることができる。しかしながら、いくつかの事例では、ユーザが通気路229を閉鎖し、かつ/または通気路229を閉鎖のままにすることは困難であり得る。例えば、通気路229は、ユーザがアクセスすることが困難である場所にあるイヤセット200上に位置決めされ得、または通気路229は、ユーザが閉鎖するのを困難にしているサイズおよび/または構成を有する場合がある(例えば、通気路229が凹部内に形成されている場合がある)。いくつかの実施形態では、通気路229は、イヤセット200がイオン導入流体で充填されているときに、通気路229を覆うことが望ましくないという理由から、通気路が容易には閉鎖または遮蔽されることを防止するようにサイズ設計および/または構成され得る。例えば、イヤセット200がイオン導入流体で充填されているときに、通気路229が遮蔽されるようになった場合、そのとき、圧力は、外耳道EC内で上昇し、患者に不快および/または損傷をもたらし得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、弁を使用して、空気が通気路を介してイヤセット(例えば、イヤセット200)に入るのを防止することができる。この弁は、イヤセットが流体で充填されているときに、空気がイヤセットから出るのを可能にすることができるが、リークが進展したときには、空気がイヤセットに逆流するのを防止することができる。
図5に概略的に示すように、イオン導入システム400は、弁440を含むことができる。この弁440は、通気路429を通る流体(例えば、空気および/または液体)の流れを限定することができる。いくつかの実施形態では、イオン導入システム400は、流体源402と、イオン導入システム400のタンク470との間の流体(例えば、イオン導入流体)の流れを制御することができる追加の弁434を任意選択的に含むことができる。
【0033】
イオン導入システム100と同様に、イオン導入システム400は、イオン導入電極452、タンク470、通気路429、流体源402、およびコントローラまたは制御ユニット404を含むことができる。
【0034】
イオン導入システム400は、被験者の外耳道EC内に位置決めすることができる。具体的には、イオン導入システム400の本体422の一部分が、外耳道EC内に位置決めすることができる。イオン導入システム400の本体422は、1つ以上の剛性、半剛性、または可撓性のコンポーネントを含むことができる。例えば、本体422は、イオン導入システム400を外耳道ECに固定し、外耳道ECの表面にシールを形成することができる、イオン導入システム100の可撓性シール要素224と同様の可撓性シール要素を含むことができる。いくつかの実施形態では、感圧性粘着剤もまた、可撓性シール要素上に配設されて、イオン導入システム400を外耳道ECに固定することに役立つことができる。イオン導入システム400が、外耳道ECに固定されているとき、本体422の一部分(例えば、可撓性シール要素)は、鼓膜TMの外側の外耳道EC内に閉込容積410を画定することができる。
【0035】
本体422は、タンク470を画定し、そのタンクは、イオン導入流体IFを受容することができる。タンク470は、閉込容積410と流体連通している。電極452を使用して、電流をイオン導入流体IFに供給し、イオン導入流体IF内の薬物イオンを鼓膜TMに駆動することができる。電極452は、タンク470と結合または分離されるが、係合可能であり得る。いくつかの実施形態では、電極452は、タンク470内および/またはそのタンクに隣接する本体422内に配設することができる。電極452は、任意の一般的な形状(例えば、コイル状ワイヤ、直線ワイヤ、網目状のものなど)を有することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、電極452は、表面積を増加させ、イオン導入を促進するための異なる構成を有することができる。例えば、電極452は、ブラシヘッドと同様に構成された複数のワイヤ、互いに内部に入れ子にした千鳥状の直径を有する複数の同心円管、鉄綿と同様に構成された銀メッシュ塊、スポンジ類似構造および金属めっきまたは蒸着(例えば、純粋銀めっきまたは蒸着)を有する成形ポリマーマトリックスプラグ、金属コーティングされた織布、ハニカム構造、コイル構造、複数の花弁または枝分かれ(例えば、花形状)を有する塊、可撓性バッグ構造、金属コーティングされた表面を有する1つ以上の空洞または凹部、テクスチャード加工された表面(例えば、斜交平行加工、腐蝕加工、サンドブラスト仕上げ)、空洞または凹部を有するレーザ切断等のうちの1つ以上を含むことができる。いくつかの実施形態では、電極452は、コントローラ404に結合され得、そのコントローラは、電極452が電流をイオン導入流体IFに印加するときに、電力を電極452に供給し、制御する。コントローラは、イオン導入システム400が外耳道EC内に適切に位置決めされ、イオン導入流体IFで充填されるまで、電極452が作動し、電流を印加するのを防止する安全機能を含むことができる。例えば、電極452は、センサを含むことができ、そのセンサは、ユーザがコントローラ404を始動し、電流を印加するのを可能にする前に、電極452がいつイオン導入流体IF内に浸漬されるかについてコントローラ404に知らせる。
【0037】
いくつかの実施形態では、電極452は、直流電気アノードまたは犠牲アノードとして機能する1つの金属(例えば、亜鉛)を有する複数の金属を含むことができる。いくつかの実施形態では、電極452は、イオン導入手技中に新鮮な電極表面を供給するように始動することができる移送システム(例えば、可撓性ベルト)を含むことができる。いくつかの実施形態では、電極452は、電極452の表面を清掃するように始動することができる拭き取りまたは掃除メカニズムを含むことができる。いくつかの実施形態では、電極452は、腐食の防止に役立つ保護コーティングを含むことができる。
【0038】
弁440は、逆止弁とすることができる。弁440は、流体が通気路429を通って流れるのを限定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、弁440は、流量制御弁、すなわち、弁を通る圧力が降下しても実質的に一定の流量を提供する弁とすることができる。他の実施形態では、弁440は、圧力制御弁、すなわち、所定の圧力閾値を越えると開放および/または閉鎖する弁とすることができる。
【0039】
描写してあるように、弁440は、通気路429内に配設することができる。他の実施形態では、弁440は、通気路429に隣接または近接するように配設することができる。弁440は、流体(例えば、空気および/または液体)が低抵抗でタンク470から流れ出るのを可能にするが、流体(例えば、空気および/または液体)がタンク470に流れ込むのを限定するように構成することができる。特に、イオン導入システム400の使用中に、弁440は、空気および/または過剰なイオン導入流体IFがタンク470から流れ出るのを可能にするように構成することができ、その結果、タンク470がイオン導入流体IFで充填されているときに、圧力がタンク470内で上昇しない。弁440はまた、空気(または他の流体物質)の流れがタンク470に戻ることを限定するように構成することもできる。弁440は、傘形弁、または流体を一方向に流れることに限定し得る任意の好適なタイプの弁(例えば、カモノハシ弁、ドーム弁、シート弁、逆止め玉弁)とすることができる。弁440は、空気がタンク470に流れ込み、タンク470および/または外耳道ECから漏れ出した流体を移動させるのを防止することによって、タンク470および/または外耳道ECからの流体リークを低減することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、弁440は、負圧の緩和を提供するように設計することができる。例えば、弁440は、弁を通る圧力降下が現在のレベルよりも大きいときに、開放するように設計することができる。弁440は、タンク470内の圧力が特定のゲージ圧力未満でない場合、かつ/または同未満になるまで、流体(例えば、空気および/または液体)がタンク470に流れ込むのを防止することができ、それによって流体がタンク470内に流れ込むのを可能にする。流体がタンク470内に流れ込むのを可能にすることによって、弁440は、タンク470内の負圧を緩和させ、負圧によって生じる患者の不快を軽減することができる。医師が、流体送達経路430に接続されたシリンジ(例えば、流体源)を介して、意図せずに吸引を適用したときに、負圧は、タンク470内で上昇し得る。患者がその適用された吸引によって不快を経験するのを防止するために、弁440は、圧力が不快の閾値、例えば、-1kPaに到達する前に、流体がタンク470に入るのを閉鎖および可能にするように設計することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、イオン導入システムは、任意選択的に、第2の弁、例えば、弁434を含むことができる。弁434は、流体源402と流体送達経路430との間に配設することができるか、または流体送達経路430に沿ったある箇所に配設することができる。弁434は、流体(例えば、イオン導入流体IF)が流体源402からタンク470の方向に流れるのを可能にするが、流体が流体源402に向かって逆流するのを防止するように設計することができる。流体源402がシリンジである場合、弁434は、医師がシリンジを介して吸引を適用するのを防止し、それによって、タンク470内の負圧を回避する。弁440と同様に、弁434は、逆止弁とすることができる。
【0042】
図6は、弁を含むイオン導入システムの例を描写している。特に、イオン導入システム500は、イオン導入システム100と同様のコンポーネントを含むだけでなく、逆止弁580(
図7A~
図8Bに図示してある)も含む。イオン導入システム500は、イヤセット520を含む。イヤセット520は、1つ以上のコネクタ(例えば、コネクタ532)、および導管(例えば、導管530、564)を介して、流体源(図示せず)と連通している。イヤセット520はまた、コネクタおよびケーブル550を介して、制御ユニット(図示せず)および接地パッド(図示せず)とも連通している。導管530およびケーブル550は、イヤセット520とクリップとの間に延在する共有長さに沿って共に結合することができる。導管530およびケーブル550の共有長さの一部分510は、コイル状に巻き付けられ得、その結果、拡張および/または短縮されてクリップとイヤセット520との間の距離を調節することができる。
【0043】
イオン導入システム500は、アダプタ560を含むことができる。アダプタ560は、例えば、シリンジ540(
図10に示す)などの流体源に接続することができる。
図10、
図11A、および
図11Bを参照して以下にさらに詳細に説明されているように、アダプタ560は、流体源からの流体の流量を制御するための弁を含むことができる。アダプタ560は、導管564を介してコネクタ532に接続することができる。導管564は、導管530と共に、流体を流体源からイヤセット520に送達するための経路を提供することができる。
【0044】
1個のイヤセット520が
図6に示されているが、イオン導入システム500は、2個のイヤセット520を有することができ、それらのイヤセットは、被験者の両耳内で使用され、イオン導入を介して治療用物質の同時の、かつ/または連続的な送達を提供することができることを理解されたい。
【0045】
図7A、
図7B、
図8A、および
図8Bは、
図6の丸で囲まれた領域A内のイヤセット520の一部分の断面図を示す。イヤセット520は、ハウジング部分522、523を含む。ハウジング部分522、523は、協働してタンク570を画定することができる。タンク570は、導管530と流体連通し、その結果、例えば、イオン導入流体などの流体が、導管530を介してタンク570に送達することができる。ハウジング部分522は、把持機構を画定することができ、その把持機構は、ユーザによって把持され得、イヤセット520を被験者の耳に挿入する間、ハンドルとしての役割を果たすことができる。
【0046】
描写してあるように、イヤセット520は、傘形弁580を含む。他の実施形態では、イヤセット520は、カモノハシ弁、ドーム弁、シート弁、逆止め玉弁などの様々なタイプの弁を含むことができる。弁520は、例えば、エラストマーなどの可撓性材料で形成することができる。弁520は、1つ以上の通気路529を通る流量を限定するように構成することができる。通気路529は、ハウジング部分522内に開口部として形成することができる。他の実施形態では、通気路529は、異なるサイズおよび/または構成を有することができる。いくつかの実施形態では、弁520は、ハウジング部分522に解放可能に結合することができる。例えば、弁520は、ハウジング部分522内の開口部に挿入することができる一部分518(
図7Aに描写してある)を含むことができる。弁520の部分518は、弁520とハウジング部分522との間の結合を保持するようにサイズ設計することができる。弁520の部分518は、その部分がハウジング部分522に挿入されたときに、変形することができ、次いでその入れ子構成に戻ってハウジング部分522内に部分518を保持することができる。他の実施形態では、ハウジング部分522は、ハウジング部分522に恒久的に取り付けられるか、またはそれと一体化して形成され得る。
【0047】
イオン導入動作の間、流体源(例えば、シリンジ540)を使用して、イオン導入流体でタンク570を充填することができる。弁580は、タンク570がイオン導入流体で充填されているときに、タンク570内からの空気が通気路529および1つ以上の開口部584(
図9に示す)を介してタンク570から流れ出すのを可能にするように構成することができる。例えば、わずかな正圧がタンク570内で上昇することに応答して、弁580の傘形部分が移動し、通気路529を暴露することができ、それによって、
図7Bの矢印586によって示すように、空気がタンク570から流れ出すのを可能にしている。
【0048】
弁580は、さらに、空気もしくは別の気体、および/または液体がタンク570に逆流するのを防止するように構成されている。例えば、
図8Aに示すように、わずかな負圧がタンク570内で上昇し、かつ/または正圧が弁580上の方向588に動作するときに、弁580の傘形部分は、通気路529上の下方に閉鎖し、その結果、イヤセット520の外側からの空気が通気路529を介してタンク570に流れ込むことが防止される。空気がタンク570に逆流するのを防止することによって、弁580は、流体リークを低減することができる。例えば、間隙が広がり、その結果、耳および/またはタンク570内からのイオン導入流体が、間隙を介して漏れ出し得るとき、弁580は、空気がタンク570に流れ込むのを防止することができ、その結果、空気は、間隙を通って漏れ出すどんな流体も簡単には移動させない。したがって、弁580は、タンク570への流体の流量を限定することによって、流体リークに対してある程度の耐性を提供することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、弁580は、例えば、吸引が、例えば、医師によって、導管530に接続された流体源(例えば、シリンジ540)によりタンク570に適用されたとき(例えば、意図せず医師により)などの負圧の緩和を提供するように構成することができる。吸引は、負圧をタンク570内で上昇させ得る。特定のレベルにおいて、負圧は、患者を不快および/または損傷させ得る。したがって、不快および/または損傷を防止するために、弁580は、タンク570内のゲージ圧力が特定の圧力閾値未満であるときに、開放または閉鎖して空気がタンク570に入るのを可能にするように設計することができ、それによって、タンク570内の負圧を低減することができる。
図8Bに図示してあるように、弁580が閉鎖すると、矢印590(
図8Bに描写してある)で示すように、弁580の傘形部分は、外側へゆらめき、通気路529を暴露して、空気がタンク570に入るのを可能にすることができる。ある実施形態では、弁580は、1kPaの負のゲージ圧力を越えたときに、またはイヤセット520の内側(すなわち、タンク570内の圧力)と、イヤセット520の外部との間の圧力における差、または差圧が1kPaよりも大きいときに、閉鎖するように設計することができる。
【0050】
図7A~
図8Bに示すように、弁580および通気路529は、イヤセット520内で画定される凹部582内に配設することができる。凹部582は、ユーザが1つ以上の開口部584を誤って覆うリスクを低減することができ、これは、通気路529の動作を損ない得る。複数の開口部584もまた、提供されて、通気路529の動作が損なわれ得るリスクを低減することができる。
【0051】
図9は、イヤセット520の背面図を図示している。図に示しているように、イヤセット520は、上述したイヤセット200と同様であり、プルタブ528などの取り出し要素、および可撓性シール要素524を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、イヤセット520は、通気路を画定する弁を含むことができる。係る実施形態では、イヤセット520のハウジング内に形成された別個の通気路(例えば、
図7A~
図8Bに示すような通気路529)は、必要でなくてもよい。弁は、支柱またはボール、および台座要素(例えば、台座リングまたは円板)を含むことができ、そこでは、台座要素は、通気路として機能する開口部を含み、支柱またはボールは、開口部を閉鎖するように構成されて、流体がイヤセット520内に流れ込むのを防止する。他の実施形態では、イヤセット520は、逆止弁として動作する電気的に始動されるコンポーネントを含むことができる。
【0053】
図10、
図11A、および
図11Bは、アダプタ560のより詳細な図を提供する。
図10は、シリンジ540を伴うアダプタ560の斜視図を提供し、そのシリンジは、アダプタ560に結合され得る。
図11Aおよび
図11Bは、アダプタ560の断面図を提供する。アダプタ560は、導管564に接続され得、その導管は、1つ以上の他の導管(例えば、導管530)に接続されてシリンジ540とタンク570との間の流体流路を提供することができる。シリンジ540を使用してイオン導入流体をタンク570に供給することができる。シリンジ540は、標準的なシリンジと同様のものとすることができ、バレル540内に配設されているプランジャ546を有するシャフト544を含むことができる。シリンジ540は、そのルアー先端部542を介してアダプタ560の端部562に解放可能に結合することができる。アダプタ560の端部562は、シリンジ540のルアー先端部542を受容および嵌合するように形状加工することができる。ルアー先端部542を有するシリンジ540、およびルアー先端部と係合するように形状加工された端部562を有するアダプタ560が示されているが、シリンジ、または流体源の他のタイプとアダプタとの間の他のタイプの接続を使用することができることは、当業者ならば理解するであろう。
【0054】
アダプタ560は、弁566を含むことができる。弁566は、流体(例えば、イオン導入流体)がシリンジ540から第1の方向561に流れるのを可能にすることができるが、流体がシリンジ540に向かって第2の逆の方向563に逆流するのを防止することができる。
図11Aおよび
図11Bに描写してあるように、弁566は、円板で形成され得、その円板は、開放位置(
図11A)と着座位置(
図11B)との間で移動することができる。弁566が開放位置にあるときに、弁566は、台座支柱568から離れ、その結果、シリンジ540内からの流体は、シリンジ540から流れ出ることができる。そして、弁566が着座位置にあるときに、弁566は、台座支柱568に対抗して着座し得、その結果、流体は、シリンジ540に向かって逆流することができない。シリンジ540に向かって流体の逆流を防止することによって、弁566は、吸引がシリンジ540によってタンク570に加えられるのを防止することができ、それによって、タンク570の負圧増加のリスクを低減することができる。弁580をイヤセット520に付加すると、医師がシリンジ540を後退させる場合、タンク570および外耳道内の負圧を意図せずに生成してもよい。上述したように、弁580は、イヤセット520内の負圧を減少させないように設計することができる。さらなる、または別の目安として、弁566を使用して、負圧が弁580の追加に起因してタンク570内で生成するのを防止することができる。
【0055】
様々な発明の実施形態が本明細書において記載および説明されてきたが、当業者ならば、本明細書に記載されている機能を実現し、かつ/またはそれらの結果および/もしくは1つ以上の利点を獲得するための種々の他の手段および/もしくは構造を容易に思い描くことができ、係る各々の変形および/もしくは修正は、本明細書に記載された発明の実施形態の範囲内であると見なされる。より一般的には、当業者ならば、本明細書に記載されたすべてのパラメータ、寸法、材料、および構成が、例示的なものであることを意味し、また実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は、本発明の教示が使用される特定の用途または応用分野に依存することを容易に理解するであろう。当業者は、せいぜい定型的な実験法を使用して、本明細書に記載された具体的な発明の実施形態に対する多くの等価物を認識し、または確認することができるであろう。したがって、前述の実施形態は、単に例としてのみ提示されていること、また添付の特許請求の範囲、およびそれらに対する等価物の範囲内において、本発明の実施形態は、具体的に記載および主張されたもの以外も実施され得ることを理解されたい。本開示の発明的実施形態は、本明細書に記載されたそれぞれの個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法を対象とする。さらに、2つ以上のそのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の任意の組み合わせは、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が、相互に相反していない場合、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0056】
また、様々な発明的概念が、1つ以上の方法として具現化することができ、それらの一例が提示されてきた。その方法の一部として実行される動作は、任意の好適な方法で順序付けすることができる。したがって、各実施形態は、各動作が例証したものと異なる順序で実行されるように構築されてもよく、例証した実施形態の一連の動作として示されたものであっても、いくつかの動作を同時に実行することを含むことができる。
【0057】
本明細書で定義および/または使用されるすべての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれた文献上の定義、および/または定義された用語の通常の意味にわたって調整することを理解されたい。
【0058】
不定冠詞「a」および「an」は、本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、特段明示的に示されていない限り、「少なくとも1つの」という意味に理解されたい。
【0059】
語句「および/または」は、本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、そのように接続された各要素のうちの「どちらか一方または両方」、すなわち、ある場合には接続的に表され、他の場合には離接的に表される要素の意味であると理解されたい。「および/または」を使って列挙される複数の要素は、同じ様式で、そのように接続された要素のうちの「1つ以上」と解釈されるべきである。他の要素は、特に識別された要素に関連するかまたは関連しないかにかかわらず、「かつ/または」節によって特に識別される要素以外に任意選択的に存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「含む」などの開放型言語と関連して使用される場合、「Aおよび/またはB」への参照は、一実施形態では、Aのみを指し(任意選択的に、B以外の要素を含む)、別の実施形態では、Bのみを指し(任意選択的に、A以外の要素を含む)、さらに別の実施形態では、AおよびBの両方を指す(任意選択的に、他の要素を含む)などである。
【0060】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「または」は、上記で定義したように、「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、列挙内で項目を分離する場合、「または」または「および/または」は、包括的なもの、すなわち、少なくとも1つという包括だけでなく、多数または列挙内の要素のうちの2つ以上、および任意選択的に追加の、列挙にない項目を含むものとする。「のうちの1つのみ」もしくは「のうちの正に1つ」、または特許請求の範囲で使用される場合の「から成る」などの明確に示されるオンリー用語は、多数または列挙内の要素のうちの正確に1つの包括を指すものとする。一般的に、本明細書で使用されるときの「または」という用語は、「どちらか」、「のうちの1つ」、「のうちの1つのみ」、または「のうちの厳密に1つ」などの排他性の用語が先行するときに、排他的代替物(すなわち、「一方または他方であるが、両方ではない」)を示すものとしてのみ解釈されるものとする。特許請求の範囲において使用される場合の「本質的に~からなる」という用語は、特許法の分野で使用されているように、その通常の意味を有するものとする。
【0061】
本明細書および特許請求の範囲の中で使用されるときに、1つ以上の列挙した要素を参照した「少なくとも1つ」という語句は、列挙した要素中の任意の1つ以上の要素から選択された少なくとも1つの要素を意味するが、列挙した要素内で特に挙げられたそれぞれの、かつあらゆる要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含むものではなく、また列挙した要素内の要素の任意の組み合わせを必ずしも排除するものでもない。また、この定義は、「少なくとも1つ」という語句が言及する列挙した要素内で特に識別された要素以外の要素が、それらの特に識別された要素に関連するかまたは関係しないかに関係なく、任意選択的に存在し得ることも許容するものである。したがって、非限定的な例として、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」(または同等的に「AもしくはBのうちの少なくとも1つ」、もしくは同等的に「Aおよび/またはBのうちの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、Bが存在しない(よって任意選択的に、B以外の要素を含む)、任意選択的に2つ以上を含むことができる少なくとも1つであるAを指し、別の実施形態では、Aが存在しない(よって任意選択的に、A以外の要素を含む)、任意選択的に2つ以上を含むことができる少なくとも1つであるBを指し、さらなる別の実施形態では、任意選択的に2つ以上を含むことができる少なくとも1つであるA、および任意選択的に2つ以上を含むことができる少なくとも1つであるB(よって任意選択的に、他の要素を含む)を指すことができる。
[付記項1]
装置であって、
チャネル、および前記チャネルと流体連通するタンクを画定する本体と、
前記チャネル内に配設されている電極と、
前記タンクと流体連通する通気路と、
前記通気路内に配設され、(i)流体を前記タンク内から前記装置の外部に流すことができ、(ii)前記流体が前記装置の前記外部から前記タンクに入るのを防止する、ように構成されている弁と、を備える、装置。
[付記項2]
前記本体の遠位端に配設されたシール要素をさらに備え、前記シール要素が、耳の外耳道の表面に対してシールを形成し、前記耳の鼓膜と、チャネルと流体連通する前記装置との間に閉込容積を画定するように構成されている、付記項1に記載の装置。
[付記項3]
前記流体が、第1の流体であり、前記チャネルおよび前記タンクのうちの少なくとも一方と流体連通し、前記チャネル、前記タンク、および前記閉込容積を第2の流体で充填するように構成されている流体導管をさらに備え、前記弁が、前記第2の流体を前記タンク内から前記装置の前記外部に流すことができるようにさらに構成されている、付記項2に記載の装置。
[付記項4]
前記電極は、前記流体導管が前記チャネルを前記第2の流体で充填した後に、前記第2の流体内に浸漬される、付記項3に記載の装置。
[付記項5]
前記第1の流体が、空気であり、前記第2の流体が、治療用物質を含むイオン導入流体である、付記項3に記載の装置。
[付記項6]
前記弁が、傘形弁である、付記項1に記載の装置。
[付記項7]
前記流体が、空気である、付記項1に記載の装置。
[付記項8]
装置であって、
チャネル、および前記チャネルと流体連通するタンクを画定する本体と、
前記チャネル内に配設されている電極と、
前記タンクと流体連通する通気路と、
前記通気路内に配設され、
(i)前記タンク内の正のゲージ圧力に応答して、流体を前記タンク内から前記装置の外部に流すことができ、
(ii)前記タンクの内部と、前記装置の前記外部との間の差圧が所定の値未満であるときに、前記流体が前記装置の前記外部から前記タンクに入るのを防止し、
(iii)前記差圧が前記所定の値よりも大きいときに、前記流体が前記装置の前記外部から前記タンクに入ることができる、ように構成されている弁と、を備える、装置。
[付記項9]
前記所定の値が、1kPaである、付記項8に記載の装置。
[付記項10]
前記弁が、第1の弁であり、前記流体が、第1の流体であり、
前記チャネルおよび前記タンクのうちの少なくとも一方と流体連通し、前記チャネルおよび前記タンクを第2の流体で充填するように構成されている流体導管と、
前記流体導管の近位端に配設され、前記第2の流体を提供する流体源に接続するように構成されているコネクタと、
前記コネクタまたは前記流体導管のうちの一方に配設され、(i)前記第2の流体を前
記チャネルおよび前記タンクのうちの前記少なくとも一方に向かって第1の方向に流すことができ、(ii)前記第2の流体が前記第1の方向と反対側の第2の方向に流れるのを防止する、ように構成されている第2の弁と、をさらに備える、付記項8に記載の装置。
[付記項11]
前記本体の遠位端に配設されたシール要素をさらに備え、前記シール要素が、耳の外耳道の表面に対してシールを形成し、前記耳の鼓膜と前記装置との間に閉込容積を画定するように構成されている、付記項8に記載の装置。
[付記項12]
前記流体が、第1の流体であり、前記チャネルおよび前記タンクのうちの少なくとも一方と流体連通し、前記チャネル、前記タンク、および前記閉込容積を第2の流体で充填するように構成されている流体導管をさらに備え、
前記弁が、前記第2の流体を前記タンク内から前記装置の前記外部に流すことができるようにさらに構成されている、付記項11に記載の装置。
[付記項13]
前記電極は、前記流体導管が前記チャネルを前記第2の流体で充填した後に、前記第2の流体内に浸漬される、付記項12に記載の装置。
[付記項14]
前記第1の流体が、空気であり、前記第2の流体が、治療用物質を含むイオン導入流体である、付記項12に記載の装置。
[付記項15]
前記タンクが、前記電極から分離された空間内に前記第1の流体のポケットを収容するように構成され、前記チャネルは、前記第1の流体の前記ポケットが前記タンク内にあるときに、前記第2の流体内に前記電極の前記浸漬を維持するように構成されている、付記項13に記載の装置。
[付記項16]
前記弁が、傘形弁である、付記項8に記載の装置。
[付記項17]
前記流体が、空気である、付記項8に記載の装置。
[付記項18]
装置であって、
イヤセットであって、
チャネル、および前記チャネルと流体連通するタンクを画定する本体と、
前記タンクと流体連通する通気路と、
前記通気路内に配設され、(i)第1の流体を前記タンク内から前記装置の外部に流すことができ、(ii)前記第1の流体が前記装置の前記外部から前記タンクに入るのを防止する、ように構成されている第1の弁と、を含む、イヤセットと、
前記チャネルおよび前記タンクのうちの少なくとも一方と流体連通し、前記チャネルおよび前記タンクを第2の流体で充填するように構成されている流体導管と、
前記流体導管の近位端に配設され、前記第2の流体を提供する流体源に接続するように構成されているコネクタと、
前記コネクタまたは前記流体導管のうちの一方に配設され、(i)前記第2の流体を前記チャネルおよび前記タンクのうちの前記少なくとも一方に向かって第1の方向に流すことができ、(ii)前記タンク内の負のゲージ圧力が所定の値未満のままであるように、前記第2の流体が前記第1の方向と反対側の第2の方向に流れるのを防止する、ように構成されている第2の弁と、を備える、装置。
[付記項19]
前記第1の流体が、空気であり、前記第2の流体が、治療用物質を含むイオン導入流体である、付記項18に記載の装置。
[付記項20]
前記第1の弁が、傘形弁である、付記項18に記載の装置。
[付記項21]
前記所定の値が、1kPaである、付記項18に記載の装置。
[付記項22]
方法であって、
装置を耳の外耳道に挿入することであって、その結果、前記装置のシール要素が、前記耳の鼓膜と前記装置との間に閉込容積を画定するように、前記外耳道の表面に対してシールを形成するようになり、前記装置が、チャネルおよびタンクを画定する本体を備え、前記チャネルおよび前記タンクは、前記装置が前記外耳道に挿入された後、前記閉込容積と流体連通する、挿入することと、
前記装置の流体導管を介して、前記閉込容積、前記チャネル、および前記タンクのうちの少なくとも1つに第1の流体を送達することと、
前記装置の通気路を介して、前記タンクから第2の流体を通気することであって、前記通気路が前記タンクと流体連通している、通気することと、
前記タンクの内部と、前記装置の外部との間の差圧が所定の値未満であるときに、前記装置の前記通気路内に配設された弁を介して、前記第2の流体が前記通気路を通って前記タンクに入るのを防止することと、を含む、方法。
[付記項23]
前記差圧が前記所定の値よりも大きいときに、前記差圧が減少するように、前記第2の流体を前記通気路を通して前記タンク中に提供することをさらに含む、付記項22に記載の方法。
[付記項24]
前記所定の値が、1kPaである、付記項22に記載の方法。
[付記項25]
前記第1の流体が、治療用物質を含むイオン導入流体であり、前記第2の流体が、空気である、付記項22に記載の方法。
[付記項26]
前記通気することは、前記外耳道内の圧力が増大しないように前記タンクから前記第2の流体を通気することを含む、付記項22に記載の方法。