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  • 特許-車両制御装置および車両制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】車両制御装置および車両制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/182 20200101AFI20240412BHJP
   B60W 30/14 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
B60W30/182
B60W30/14
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021044925
(22)【出願日】2021-03-18
(65)【公開番号】P2022144077
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】519373914
【氏名又は名称】株式会社J-QuAD DYNAMICS
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】小澤 有樹
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-114209(JP,A)
【文献】特開2019-055622(JP,A)
【文献】特開2016-016853(JP,A)
【文献】特開2019-142265(JP,A)
【文献】特開2007-112296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00- 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)に搭載された原動機(4)と車輪(2)との間の動力伝達経路を遮断するセーリング制御を行うセーリング制御部(12)と、
前記セーリング制御の開始および終了を判断し、判断結果を前記セーリング制御部に出力するセーリング判断部(13)と、を備えた車両制御装置であって、
前記セーリング判断部は、前記セーリング制御を終了すると判断する終了条件として、
前記車両制御装置が用いられる車両である自車両と前車との間の車間距離と、前記自車両の速度とにより定まる第1の相対時間(THW)が、事前に設定されている第1時間閾値(THt1)よりも短い場合に成立する第1条件と、
前記車間距離と、前記前車と前記自車両との相対速度により定まる第2の相対時間(TTC)の変化速度が、事前に設定されている変化速度閾値(THa)を超えており、且つ、前記第1の相対時間が第2時間閾値(THt2)よりも小さい場合に条件成立となる第2条件とを備え、
前記第2時間閾値は、前記第1時間閾値よりも大きい値に設定されており、
前記第1の相対時間は、前記車間距離を前記自車両の速度で割った車間時間であり、
前記第2の相対時間は、前記車間距離を前記相対速度で割った衝突余裕時間であり、
前記セーリング判断部は、前記第1条件および前記第2条件の少なくとも一方が成立した場合、前記セーリング制御を終了すると判断する、車両制御装置。
【請求項2】
車両制御装置(10)によって実行される車両制御方法であって、
車両(1)に搭載された原動機(4)と車輪(2)との間の動力伝達経路を遮断するセーリング制御を行うことと、
前記セーリング制御の開始および終了を判断することと、を含み、
前記セーリング制御を終了すると判断する終了条件に、
車両と前車との間の車間距離、および、前記車両の速度とにより定まる第1の相対時間(THW)が、事前に設定されている第1時間閾値(THt1)よりも短いという第1条件と、
前記車間距離と、前記前車と前記車両との相対速度により定まる第2の相対時間(TTC)の変化速度が、事前に設定されている変化速度閾値(THa)を超えており、且つ、前記第1の相対時間が第2時間閾値(THt2)よりも小さい場合に条件成立となる第2条件とが含まれ、
前記第2時間閾値は、前記第1時間閾値よりも大きい値に設定されており、
前記第1の相対時間は、前記車間距離を前記車両の速度で割った車間時間であり、
前記第2の相対時間は、前記車間距離を前記相対速度で割った衝突余裕時間であり、
前記第1条件および前記第2条件の少なくとも一方が成立した場合、前記セーリング制御を終了すると判断する、車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
車両制御装置および車両制御方法に関し、特に、セーリング制御を行う装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セーリング制御あるいはコースティング制御と呼ばれる制御が知られている。セーリング制御は、車両の走行中に、原動機と車輪との間の動力伝達経路を遮断する制御である。セーリング制御が実行されることにより、車両が惰性で走行する。原動機としてエンジンを備える場合には、エンジンブレーキが作動しないことになり、原動機としてモータを備える場合には、回生ブレーキが作動しないことになる。
【0003】
特許文献1に記載されている装置では、車間時間が短くなると、減速モードに移るために、セーリング制御である惰行モードを終了する。特許文献1に記載されている装置は、減速モードとして急減速モードと通常減速モードとを備える。通常減速モードは、エンジンと回生発電機のみを作動させて減速するモードである。急減速モードは、摩擦ブレーキを作動させるモードである。車間時間が相対的に長いときは通常減速モードとなる。車間時間が相対的に短いときは急減速モードになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-34597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された装置では、前車が急減速を開始したとしても、車間時間がある閾値よりも小さくなるまでは、セーリング制御が継続されることになる。したがって、減速開始が十分に早いとは言えない。減速開始が遅くなると、摩擦ブレーキを使用して急減速する必要が生じるので、乗り心地が悪化する。さらに、回生ブレーキが使用できる車両であれば、減速開始が遅れると、回生により発電できる電力量が減ることになる。
【0006】
前車が急減速を開始したときに、早期にセーリング制御を終了できれば、エンジンブレーキ、回生ブレーキによる緩やかな減速が可能になり、好ましい。
【0007】
本開示は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、前車が急減速を開始したときに、早期にセーリング制御を終了できる車両制御装置および車両制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は独立請求項に記載の特徴の組み合わせにより達成され、また、下位請求項は更なる有利な具体例を規定する。特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的態様との対応関係を示すものであって、開示した技術的範囲を限定するものではない。
【0009】
上記目的を達成するための車両制御装置に係る1つの開示は、
車両(1)に搭載された原動機(4)と車輪(2)との間の動力伝達経路を遮断するセーリング制御を行うセーリング制御部(12)と、
セーリング制御の開始および終了を判断し、判断結果をセーリング制御部に出力するセーリング判断部(13)と、を備えた車両制御装置であって、
セーリング判断部は、セーリング制御を終了すると判断する終了条件として、
車両制御装置が用いられる車両である自車両と前車との間の車間距離と、自車両の速度とにより定まる第1の相対時間(THW)が、事前に設定されている第1時間閾値(THt1)よりも短い場合に成立する第1条件と、
車間距離と、前車と自車両との相対速度により定まる第2の相対時間(TTC)の変化速度が、事前に設定されている変化速度閾値(THa)を超えており、且つ、第1の相対時間が第2時間閾値(THt2)よりも小さい場合に条件成立となる第2条件とを備え、
第2時間閾値は、第1時間閾値よりも大きい値に設定されており、
第1の相対時間は、車間距離を自車両の速度で割った車間時間であり、
第2の相対時間は、車間距離を相対速度で割った衝突余裕時間であり、
セーリング判断部は、第1条件および第2条件の少なくとも一方が成立した場合、セーリング制御を終了すると判断する、車両制御装置である。
【0010】
上記目的を達成するための車両制御方法に係る1つの開示は、
車両制御装置(10)によって実行される車両制御方法であって、
車両(1)に搭載された原動機(4)と車輪(2)との間の動力伝達経路を遮断するセーリング制御を行うことと、
セーリング制御の開始および終了を判断することと、を含み、
セーリング制御を終了すると判断する終了条件に、
車両と前車との間の車間距離、および、車両の速度とにより定まる第1の相対時間(THW)が、事前に設定されている第1時間閾値(THt1)よりも短いという第1条件と、
車間距離と、前車と車両との相対速度により定まる第2の相対時間(TTC)の変化速度が、事前に設定されている変化速度閾値(THa)を超えており、且つ、第1の相対時間が第2時間閾値(THt2)よりも小さい場合に条件成立となる第2条件とが含まれ、
第2時間閾値は、第1時間閾値よりも大きい値に設定されており、
第1の相対時間は、車間距離を車両の速度で割った車間時間であり、
第2の相対時間は、車間距離を相対速度で割った衝突余裕時間であり、
第1条件および第2条件の少なくとも一方が成立した場合、セーリング制御を終了すると判断する、車両制御方法である。
【0011】
上記車両制御装置および車両制御方法は、セーリング制御を終了すると判断する終了条件として、第1条件を備えることで、相対時間が短くなればセーリング制御を終了すると判断できる。加えて、終了条件として第2条件を備えている。
【0012】
前車が急減速した場合、相対時間よりも相対時間の変化速度のほうが、変化が大きい。したがって、第2条件を備えることで、前車が急減速した場合に、早期にセーリング制御を終了できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】車両制御装置を備えた車両の構成図。
図2】セーリング制御の終了条件を示す図。
図3】第2時間閾値THt2と第1時間閾値THt1の大きさを示す図。
図4】セーリング制御部12とセーリング判断部13が実行する処理を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態の車両制御装置(以下、制御装置)100を備えた車両1の構成図である。車両1は、制御装置10の他、車輪2、変速機3、エンジン4、ブレーキ装置5、センサ6などを備えている。
【0015】
車輪2は、車軸7を介して変速機3に連結されている。変速機3は、原動機であるエンジン4が発生する動力により、車軸7および車軸7に連結された車輪2を回転させる。変速機3と車軸7は、エンジン4と車輪2との間の動力伝達経路になっている。変速機3は、内部にクラッチを備えている。クラッチが切断されると、動力伝達経路が遮断された状態になる。
【0016】
エンジン4は、車両1を駆動させる動力を発生させる。エンジン4が発生した動力は、変速機3及び車軸7を介して車輪2に伝達される。エンジン4は、燃料が供給されないときは動力を発生しない。エンジン4が動力を発生しない状態で、動力伝達経路によりエンジン4と車輪2が連結されていると、エンジンブレーキが作動する。
【0017】
ブレーキ装置5は、車輪2の回転速度を低下させる装置であり、摩擦材と、その摩擦材を作動させる機構とを備えた構成である。
【0018】
センサ6は、車両1に複数備えられる。センサ6には、車速センサ、前車との車間距離を測定する車間距離センサ、アクセル開度センサ、ブレーキペダルセンサなどが含まれる。車速センサは、自車両である車両1の車速を検出する。車間距離センサは、レーダ、Lidar、カメラのうちの1つ以上を用いることができる。前車は、車両1と同じ車線において、車両1の前方であって車両1に最も近い他車両である。前車との車間距離を算出するために、複数の車間距離センサを備えていてもよい。アクセル開度センサは、車両1に備えられたアクセルペダルの踏み込み量を検出する。ブレーキペダルセンサは、ブレーキペダルが踏み込まれているか否かを検出する。
【0019】
制御装置10は、少なくとも1つのプロセッサを備えた構成により実現できる。たとえば、制御装置10は、プロセッサ、不揮発性メモリ、RAM、I/O、およびこれらの構成を接続するバスラインなどを備えたコンピュータにより実現できる。不揮発性メモリには、汎用的なコンピュータを制御装置10として作動させるためのプログラムが格納されている。プロセッサが、RAMの一時記憶機能を利用しつつ、不揮発性メモリに記憶されたプログラムを実行することで、制御装置10は、変速機3、エンジン4、ブレーキ装置5を制御する。
【0020】
また、制御装置10は、図1に示すように、ACC制御部11、セーリング制御部12、セーリング判断部13としても作動する。これらの作動が実行されることは、プログラムに対応する車両制御方法が実行されることを意味する。なお、制御装置10は、エンジン4を制御する装置、変速機3を制御する装置、ブレーキ装置5を制御する装置など、複数の装置から構成されていてもよい。
【0021】
ACC制御部11は、アダプティブクルーズ制御を実行する。アダプティブクルーズ制御は、前車が存在している場合、前車との車間距離を一定に保ちつつ、前車に追従する制御である。アダプティブクルーズ制御は、前車が存在していない場合には、車両1の速度を、事前に設定された速度に維持する。ACC制御部11は、運転者のスイッチ操作により、アダプティブクルーズ制御を開始および終了する。また、ACC制御部11は、アクセルペダルあるいはブレーキペダルの踏み込みなど、種々の終了条件が成立した場合にも、アダプティブクルーズ制御を一時的に、あるいは、完全に終了する。
【0022】
セーリング制御部12は、セーリング判断部13による判断に基づいて、セーリング制御を行う。セーリング制御は、エンジン4と車輪2との間の動力伝達経路を遮断する制御である。セーリング制御において、エンジン4は、燃料供給が停止される状態でもよいし、アイドル運転状態でもよい。
【0023】
セーリング判断部13は、セーリング制御の開始および終了を判断する。セーリング判断部13は、その判断の結果をセーリング制御部12に出力する。セーリング制御の開始条件は、1つ以上の互いに独立した条件とすることができる。セーリング制御の開始条件には、前車に追従して走行している時に、車間時間THWが開始時間閾値よりも短くなったという条件を含ませることができる。車間時間THWは、車間距離/車両1の速度である。車間時間THWは相対時間の一例である。
【0024】
セーリング制御は、追従走行をしていないときにも実行できる。追従走行をしていないときのセーリング制御の開始条件の一例は、車両1の車速と目標車速との差が一定値以下であるという条件である。セーリング制御は、手動走行のときにも実行できる。手動走行時のセーリング制御の開始条件の一例は、車両1の速度が、事前に設定されたセーリング実行速度範囲にあり、かつ、アクセルペダルおよびブレーキペダルが操作されておらず、シフトポジションがDポジションである、という条件である。
【0025】
次に、セーリング制御の終了条件を説明する。本実施形態では、セーリング制御の終了条件として、図2に示す第1条件、第2条件、第3条件を備える。第1条件は、車間時間THWが第1時間閾値THt1以下であるという条件である。車間時間THWが第1時間閾値THt1よりも短い場合、第1条件は成立する。また、車間時間THWが第1時間閾値THt1と等しい場合も第1条件は成立する。
【0026】
第2条件は、2つの条件を備える。1つ目の条件を第2-1条件とし、2つ目の条件を第2-2条件とする。第2条件は、第2-1条件と第2-2条件が両方とも成立したときに成立する。第2-1条件は、衝突余裕時間TTCの時間微分値の大きさが、変化速度閾値THa以上であるという条件である。衝突余裕時間TTCは、車間距離/相対速度により算出できる。これら車間距離と相対速度により定まるので、衝突余裕時間TTCも相対時間の一例である。相対速度は、自車両の速度が大きい場合を正とする。衝突余裕時間TTCの時間微分値の大きさが変化速度閾値THaを超えている場合、すなわち、衝突余裕時間TTCの時間微分値の大きさが変化速度閾値THaよりも大きい場合には第2-1条件は成立する。また、衝突余裕時間TTCの時間微分値の大きさが変化速度閾値THaと等しい場合も第2-1条件は成立する。
【0027】
第2-2条件は、車間時間THWが第2時間閾値THt2以下であるという条件である。車間時間THWが第2時間閾値THt2よりも短い場合、第2-2条件は成立する。また、車間時間THWが第2時間閾値THt2と等しい場合も第2-2条件は成立する。
【0028】
第2時間閾値THt2は第1時間閾値THt1よりも大きい。第1条件が成立する車間時間THWの範囲と、第2-2条件が成立する車間時間THWの範囲は、図3に示す関係になる。ただし、第2条件が成立するには、第2-1条件も成立する必要があるのに対して、第1条件は車間時間THWの条件のみである。したがって、第2条件は、車間時間THWが第1時間閾値THt1から第2時間閾値THt2までの間で成立する点に意味がある条件である。
【0029】
第2-1条件は、衝突余裕時間TTCの時間微分値の大きさを判断する。衝突余裕時間TTCの時間微分値は、衝突余裕時間TTCの変化速度、あるいは、相対加速度と言うこともできる。衝突余裕時間TTCは車間距離/相対速度であるから、前車が急減速すると、衝突余裕時間TTCの時間微分値は大きく変化する。第2条件は、車間時間THWが第1時間閾値THt1から第2時間閾値THt2までの間であっても、前車が急減速した場合には、セーリング制御を終了するための条件である。
【0030】
変化速度閾値THaは、前車が急減速したことを判断できる値に設定されている。また、前車が遠くに存在していれば、前車が急減速しても自車両が減速する必要がない。第2時間閾値THt2は、前車が急減速したときに、自車両が減速する必要があるかどうかという観点で設定される。第2時間閾値THt2の一例は20秒である。第2時間閾値THt2よりも短い第1時間閾値THt1は、たとえば10秒である。
【0031】
第3条件は、アクセルペダルが踏み込まれた、ブレーキペダルが踏み込まれたなどであり、1つ以上の条件が設定される。第3条件は、アダプティブクルーズ制御の終了条件と同一の条件を含んでいる。
【0032】
セーリング判断部13は、セーリング制御実行中に、第1条件、第2条件、第3条件のい ずれか1つが成立した場合、セーリング制御の終了条件が成立したことを、セーリング制御部12に出力する。
【0033】
図4に、セーリング制御部12およびセーリング判断部13が実行する処理をフローチャートにして示す。図4に示す処理は、車両1が走行している間、周期的に実行する。ステップ(以下、ステップを省略)S1では、セーリング判断部13が、セーリング制御の開始条件を判断するためのセンサ信号を取得する。S1で取得するセンサ信号は、たとえば、車間距離センサが検出した信号、車速センサが検出した信号である。
【0034】
S2では、セーリング判断部13が、S1で取得したセンサ信号をもとに、セーリング制御の開始条件が成立したか否かを判断する。S2の判断結果がNOであれば図4に示す処理を終了する。S2の判断結果がYESであればS3に進む。S3では、セーリング判断部13がセーリング制御部12に、セーリング制御の開始条件が成立したこと示す信号を出力する。セーリング制御部12は、その信号を取得した場合に、セーリング制御を開始する。
【0035】
S4では、セーリング判断部13が、セーリング制御の終了条件を判断するためのセンサ信号を取得する。S4で取得するセンサ信号は、たとえば、車間距離センサが検出した信号、車速センサが検出した信号である。
【0036】
S5では、セーリング判断部13が、S4で取得した信号をもとに、セーリング制御の終了条件が成立したか否かを判断する。セーリング制御の終了条件には、衝突余裕時間TTCに関する条件が含まれる。衝突余裕時間TTCを算出するためには、相対速度が必要になる。相対速度は、車間距離の時間変化から算出する。S5の判断結果がNOであればS4に戻る。S5の判断結果がYESであればS6に進む。
【0037】
S6では、セーリング判断部13がセーリング制御部12に、セーリング制御の終了条件が成立したことを示す信号を出力する。セーリング制御部12は、その信号を取得した場合に、セーリング制御を終了する。
【0038】
〔実施形態のまとめ〕
以上、説明した本実施形態の制御装置10は、セーリング制御の終了条件として、第1条件を備えることで、車間時間THWが短くなればセーリング制御を終了する。加えて、終了条件として第2条件を備えている。
【0039】
前車が急減速した場合、車間時間THWよりも衝突余裕時間TTCの変化速度のほうが、変化が大きい。したがって、第2条件を備えることで、前車が急減速した場合に、早期にセーリング制御を終了できる。
【0040】
第2条件は、車間時間THWが第2時間閾値THt2以下であるという第2-2条件を含んでいる。したがって、車間時間THWが大きく、減速の必要がないときにまで、セーリング制御を終了して車両1を減速させてしまうことを抑制できる。
【0041】
本実施形態では、第2条件において、時間微分する相対時間として衝突余裕時間TTCを用いている。衝突余裕時間TTCは分母が相対速度であるので、分母が自車両の速度である車間時間THWよりも前車の急減速が反映された値になる。したがって、時間微分する相対時間を車間時間THWとするよりも迅速に、前車が急減速した場合にセーリング制御を終了できる。
【0042】
一方、第1条件では、相対時間として車間時間THWを用いている。車間時間THWが短い場合には、車間時間THWをもとに減速制御のタイミングを決定すると、運転者が自分でブレーキ操作するときの減速タイミングに近い減速タイミングで減速制御を開始できる。したがって、運転者に与える違和感を軽減できる。
【0043】
以上、実施形態を説明したが、開示した技術は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の変形例も開示した範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。なお、以下の説明において、それまでに使用した符号と同一番号の符号を有する要素は、特に言及する場合を除き、それ以前の実施形態における同一符号の要素と同一である。また、構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分については先に説明した実施形態を適用できる。
【0044】
<変形例1>
実施形態では、第1条件において車間時間THWを用いていた。しかし、第1条件において、車間時間THWに代えて衝突余裕時間TTCを用いてもよい。また、第2-2条件も、車間時間THWに代えて衝突余裕時間TTCを用いてもよい。
【0045】
<変形例2>
実施形態では、第2-1条件において、衝突余裕時間TTCを時間微分していた。しかし、衝突余裕時間TTCに代えて車間時間THWを時間微分してもよい。
【0046】
<変形例3>
第1条件において、車間時間THWが第1時間閾値THt1と等しい場合を除外してもよい。すなわち、車間時間THWが第1時間閾値THt1よりも小さいことを第1条件としてもよい。また、第2-1条件において、変化速度閾値THaと等しい場合を除外してもよい。第2-2条件において、車間時間THWが第2時間閾値THt2と等しい場合を除外してもよい。
【0047】
<変形例4>
第2-1条件は、衝突余裕時間TTCの時間微分値の大きさ、すなわち、絶対値を、変化速度閾値THaと比較していた。しかし、衝突余裕時間TTCの時間微分値を変化速度閾値THaと比較してもよい。前車が減速すると衝突余裕時間TTCは短くなる。したがって、前車が減速するときの衝突余裕時間TTCの時間微分値は負になる。衝突余裕時間TTCの時間微分値と比較する変化速度閾値THaはマイナスの値であり、前車が急減速すると、衝突余裕時間TTCの時間微分値は、変化速度閾値THaよりも小さくなる側に変化速度閾値THaを超える。
【0048】
<変形例5>
実施形態では原動機としてエンジン4を備えた車両1を開示した。しかし、原動機としてモータを備えた車両、または、原動機としてエンジンおよびモータを備えた車両にも、実施形態で開示下技術は適用できる。
【0049】
<変形例6>
本開示に記載の制御部およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部およびその手法は、専用ハードウエア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部およびその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウエア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。ハードウエア論理回路は、たとえば、ASIC、FPGAである。
【0050】
また、コンピュータプログラムを記憶する記憶媒体はROMに限られず、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていればよい。たとえば、フラッシュメモリに上記プログラムが記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1:車両 2:車輪 3:変速機 4:エンジン(原動機) 5:ブレーキ装置 6:センサ 7:車軸 10:制御装置 11:ACC制御部 12:セーリング制御部 13:セーリング判断部 THW:車間時間 THa:変化速度閾値 THt1:第1時間閾値 THt2:第2時間閾値 TTC:衝突余裕時間
図1
図2
図3
図4