(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240412BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20240412BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240412BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/06 301F
H01L29/06 301V
H01L29/78 653A
H01L29/78 652M
H01L29/78 652T
H01L29/78 658F
(21)【出願番号】P 2021045559
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】西口 俊史
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0330943(US,A1)
【文献】国際公開第2015/019862(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/06
H01L 29/12
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極の上に設けられた第1導電形の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域の上に設けられた第2導電形の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域の上に選択的に設けられた第1導電形の第3半導体領域と、
前記第3半導体領域の上に設けられ、前記第3半導体領域と電気的に接続された第2電極と、
前記第1電極から前記第1半導体領域に向かう第1方向に垂直な第2方向において、前記第1半導体領域及び前記第2半導体領域と並ぶ第3電極と、
前記第2方向において前記第3電極と前記第2半導体領域との間に設けられたゲート電極と、
前記第2方向において前記第3電極と前記第1半導体領域との間に設けられ、前記第2方向において前記第3電極と対向する第1絶縁領域と、前記第2方向において前記第1半導体領域と対向する第2絶縁領域と、前記第2方向において前記第1絶縁領域と前記第2絶縁領域との間に位置する少なくとも1つの空隙領域と、を含む第1絶縁部と、
前記第2方向において前記ゲート電極と前記第2半導体領域との間に設けられた第2絶縁部と、
を備え
、
前記第1絶縁部は、前記第2方向において前記第1絶縁領域と前記第2絶縁領域との間に位置する第5絶縁領域を含み、
前記空隙領域は、前記第2方向において前記第1絶縁領域と前記第5絶縁領域との間に位置する第1空隙領域と、前記第2方向において前記第5絶縁領域と前記第2絶縁領域との間に位置する第2空隙領域と、を含む、半導体装置。
【請求項2】
前記空隙領域は、前記第1方向において前記第3電極と重ならない、請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1絶縁部は、前記第1方向において前記空隙領域と前記第1半導体領域との間及び前記第3電極と前記第1半導体領域との間に位置する第3絶縁領域を含む、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第3絶縁領域の前記第1方向の厚さは、前記第2絶縁領域の前記第2方向の厚さよりも大きい、請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1絶縁部は、前記第1方向において前記空隙領域と前記第2電極との間に位置する第4絶縁領域を含む、請求項1~3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor(MOSFET)などの半導体装置は、電力変換等の用途に用いられる。半導体装置について、寄生容量の低減が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、寄生容量を低減できる半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体装置は、第1電極と、第1導電形の第1半導体領域と、第2導電形の第2半導体領域と、第1導電形の第3半導体領域と、第2電極と、第3電極と、ゲート電極と、第1絶縁部と、第2絶縁部と、を備える。前記第1半導体領域は、前記第1電極の上に設けられる。前記第2半導体領域は、前記第1半導体領域の上に設けられる。前記第3半導体領域は、前記第2半導体領域の上に選択的に設けられる。前記第2電極は、前記第3半導体領域の上に設けられ、前記第3半導体領域と電気的に接続される。前記第3電極は、前記第1電極から前記第1半導体領域に向かう第1方向に垂直な第2方向において、前記第1半導体領域及び前記第2半導体領域と並ぶ。前記ゲート電極は、前記第2方向において前記第3電極と前記第2半導体領域との間に設けられる。前記第1絶縁部は、前記第2方向において前記第3電極と前記第1半導体領域との間に設けられる。前記第1絶縁部は、第1絶縁領域と、第2絶縁領域と、少なくとも1つの空隙領域と、を含む。前記第1絶縁領域は、前記第2方向において前記第3電極と対向する。前記第2絶縁領域は、前記第2方向において前記第1半導体領域と対向する。前記空隙領域は、前記第2方向において前記第1絶縁領域と前記第2絶縁領域との間に位置する。前記第2絶縁部は、前記第2方向において前記ゲート電極と前記第2半導体領域との間に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る半導体装置を表す断面図である。
【
図2】
図2(a)~
図2(c)は、第1実施形態に係る半導体装置の製造工程の一例を表す工程断面図である。
【
図3】
図3(a)~
図3(c)は、第1実施形態に係る半導体装置の製造工程の一例を表す工程断面図である。
【
図4】
図4(a)~
図4(c)は、第1実施形態に係る半導体装置の製造工程の一例を表す工程断面図である。
【
図5】
図5(a)~
図5(c)は、第1実施形態に係る半導体装置の製造工程の変形例を表す工程断面図である。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)は、第1実施形態に係る半導体装置の製造工程の変形例を表す工程断面図である。
【
図7】
図7(a)~
図7(c)は、第1実施形態に係る半導体装置の製造工程の別の変形例を表す工程断面図である。
【
図8】
図8(a)及び
図8(b)は、第1実施形態に係る半導体装置の製造工程の別の変形例を表す工程断面図である。
【
図9】第2実施形態に係る半導体装置を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
以下の説明及び図面において、n+、n-及びp+、pの表記は、各不純物濃度の相対的な高低を表す。すなわち、「+」が付されている表記は、「+」及び「-」のいずれも付されていない表記よりも不純物濃度が相対的に高く、「-」が付されている表記は、いずれも付されていない表記よりも不純物濃度が相対的に低いことを示す。これらの表記は、それぞれの領域にアクセプタとなる不純物とドナーとなる不純物の両方が含まれている場合には、それらの不純物が補償しあった後の正味の不純物濃度の相対的な高低を表す。
以下で説明する各実施形態について、各半導体領域のp形とn形を反転させて各実施形態を実施してもよい。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る半導体装置を表す断面図である。
第1実施形態に係る半導体装置100は、例えばMOSFETである。
図1に表したように、第1実施形態に係る半導体装置100は、n
-形(第1導電形)ドリフト領域1(第1半導体領域)、p形(第2導電形)ベース領域2(第2半導体領域)、n
+形ソース領域3(第3半導体領域)、p
+形コンタクト領域4、n
+形ドレイン領域5、ゲート電極10、FP電極20(第3電極)、ドレイン電極31(第1電極)、ソース電極32(第2電極)、ビア35、FP絶縁部40(第1絶縁部)、ゲート絶縁部50(第2絶縁部)、及び層間絶縁部60(第3絶縁部)を有する。なお、「FP」は、「フィールドプレート」を意味する。
【0009】
以下の各実施形態の説明では、第1方向D1、第2方向D2、及び第3方向D3を用いる。ドレイン電極31からn-形ドリフト領域1に向かう方向を第1方向D1とする。第1方向D1に垂直な一方向を、第2方向D2とする。第1方向D1に垂直であり、第2方向D2と交差する方向を、第3方向D3とする。また、説明のために、ドレイン電極31からn-形ドリフト領域1に向かう方向を「上」と言い、その反対方向を「下」と言う。これらの方向は、ドレイン電極31とn-形ドリフト領域1との相対的な位置関係に基づき、重力の方向とは無関係である。
【0010】
図1に表したように、半導体装置100の下面には、ドレイン電極31が設けられている。ドレイン電極31の上には、n
+形ドレイン領域5を介してn
-形ドリフト領域1が設けられている。n
-形ドリフト領域1は、n
+形ドレイン領域5を介してドレイン電極31と電気的に接続されている。p形ベース領域2は、n
-形ドリフト領域1の上に設けられている。p形ベース領域2の上には、n
+形ソース領域3及びp
+形コンタクト領域4が選択的に設けられている。
【0011】
FP電極20は、第2方向D2において、n-形ドリフト領域1及びp形ベース領域2と並んでいる。つまり、FP電極20は、第2方向D2において、n-形ドリフト領域1及びp形ベース領域2と重なる位置に設けられている。FP電極20は、第2方向D2において、n+形ソース領域3と並んでいてもよい。つまり、FP電極20は、第2方向D2において、n+形ソース領域3と重なる位置に設けられていてもよい。
【0012】
FP絶縁部40は、第2方向D2において、FP電極20とn-形ドリフト領域1との間に設けられている。この例では、FP絶縁部40の一部は、第2方向D2において、FP電極20とn-形ドリフト領域1との間に設けられており、FP絶縁部40の他の一部は、第2方向D2において、FP電極20とゲート電極10との間に設けられている。これにより、ゲート電極10とFP電極20は、互いに電気的に分離されている。
【0013】
FP絶縁部40は、第1絶縁領域41と、第2絶縁領域42と、少なくとも1つの空隙領域48と、を含む。第1絶縁領域41は、第2方向D2において、FP電極20と対向している。この例は、第1絶縁領域41は、第2方向D2において、FP電極20と接している。第2絶縁領域42は、第2方向D2において、n-形ドリフト領域1と対向している。この例は、第2絶縁領域42は、第2方向D2において、n-形ドリフト領域1と接している。空隙領域48は、第2方向D2において、第1絶縁領域41と第2絶縁領域42との間に位置している。空隙領域48は、FP絶縁部40の内部に設けられた空隙(エアギャップ)である。空隙領域48は、例えば、空気などを含んでいてもよいし、真空であってもよい。
【0014】
空隙領域48は、例えば、第1方向D1において、FP電極20と重ならない。空隙領域48は、例えば、第2方向D2において、FP電極20と並んでいる。空隙領域48の下端は、例えば、FP電極20の下端と同じ高さに位置する。空隙領域48の上端は、例えば、FP電極20の上端よりも下方に位置する。
【0015】
この例では、FP絶縁部40は、第3絶縁領域43と、第4絶縁領域44と、第5絶縁領域45と、をさらに含む。
【0016】
第3絶縁領域43は、空隙領域48の下及びFP電極20の下に設けられている。第3絶縁領域43の一部は、第1方向D1において、空隙領域48とn-形ドリフト領域1との間に位置している。第3絶縁領域43の他の一部は、第1方向D1において、FP電極20とn-形ドリフト領域1との間に位置している。第3絶縁領域43は、例えば、第1部分43aと、第2部分43bと、を有する。第1部分43aは、第1方向D1において、第2部分43bとn-形ドリフト領域1との間に設けられている。つまり、第2部分43bは、第1部分43aの上に設けられている。
【0017】
第3絶縁領域43の第1方向D1の厚さL3は、例えば、第1絶縁領域41の第2方向D2の厚さL1よりも大きい。また、第3絶縁領域43の第1方向D1の厚さL3は、例えば、第2絶縁領域42の第2方向D2の厚さL2よりも大きい。この例では、厚さL1は、厚さL2と同じである。厚さL1は、厚さL2よりも大きくてもよいし、厚さL2よりも小さくてもよい。厚さL3は、第1部分43aの第1方向D1の厚さL3aと、第2部分43bの第1方向D1の厚さL3bと、の合計で表される。厚さL3aは、例えば、厚さL2と同じである。
【0018】
第4絶縁領域44は、空隙領域48の上、第1絶縁領域41の上、及び第5絶縁領域45の上に設けられている。第4絶縁領域44の一部は、第1方向D1において、空隙領域48とソース電極32との間に設けられている。第4絶縁領域44の他の一部は、第1方向D1において、第1絶縁領域41とソース電極32との間に設けられている。第4絶縁領域44の他の一部は、第1方向D1において、第5絶縁領域45とソース電極32との間に設けられている。
【0019】
第5絶縁領域45は、第2方向D2において、第1絶縁領域41と第2絶縁領域42との間に設けられている。これにより、第5絶縁領域45は、空隙領域48を第2方向D2に分割している。第5絶縁領域45の第2方向D2の厚さL5は、例えば、厚さL2と同じである。厚さL5は、厚さL2よりも大きくてもよいし、厚さL2よりも小さくてもよい。
【0020】
この例では、第1絶縁領域41と第2絶縁領域42との間に1つの第5絶縁領域45が設けられており、FP絶縁部40は、第2方向に沿って配列された第1空隙領域48a及び第2空隙領域48bを含む。つまり、空隙領域48は、第1空隙領域48aと、第2空隙領域48bと、を含む。第1空隙領域48aは、第2方向D2において、第1絶縁領域41と第5絶縁領域45との間に位置する。第2空隙領域48bは、第2方向D2において、第5絶縁領域45と第2絶縁領域42との間に位置する。
【0021】
この例では、第1空隙領域48aの第2方向D2の幅W1は、第2空隙領域48bの第2方向D2の幅W2と同じである。幅W1は、幅W2よりも大きくてもよいし、幅W2よりも小さくてもよい。このように、各空隙領域48の幅は、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。各空隙領域48の幅は、例えば、FP電極20の第2方向D2の幅W3よりも小さい。
【0022】
第5絶縁領域45は、第2方向D2に沿って複数配列されてもよい。つまり、空隙領域48は、第2方向D2において、3つ以上に分割されてもよい。また、第5絶縁領域45は、設けられなくてもよい。つまり、空隙領域48は、第2方向D2において、分割されなくてもよい。
【0023】
ゲート電極10は、第2方向D2において、FP電極20とp形ベース領域2との間、及び、FP電極20とn+形ソース領域3との間に設けられている。
【0024】
ゲート絶縁部50は、第2方向D2において、ゲート電極10とp形ベース領域2との間、及び、ゲート電極10とn+形ソース領域3との間に設けられている。ゲート絶縁部50は、第2方向D2において、ゲート電極10とn-形ドリフト領域1との間に設けられていてもよい。
【0025】
FP電極20は、第2方向D2において、FP絶縁部40に挟まれている。つまり、FP絶縁部40は、第2方向D2において、FP電極20を隔てた両側に設けられている。また、FP電極20及びFP絶縁部40は、第2方向D2において、n-形ドリフト領域1に挟まれている。つまり、n-形ドリフト領域1は、第2方向D2において、FP電極20及びFP絶縁部40を隔てた両側に設けられている。FP電極20及びFP絶縁部40のそれぞれは、第2方向D2に沿って複数設けられている。FP電極20及びFP絶縁部40のそれぞれは、第3方向D3に沿って連続的に設けられている。
【0026】
ゲート電極10は、第2方向D2に沿って複数設けられている。ゲート電極10は、第3方向D3に沿って連続的に設けられている。FP電極20は、第2方向D2において、2つのゲート電極10の間に設けられている。p形ベース領域2、n+形ソース領域3、及びp+形コンタクト領域4は、複数のゲート電極10のそれぞれと対向する位置に設けられている。1つのFP電極20の両側に配置されたFP絶縁部40の構成は、FP電極20を中心として第2方向D2において概ね対称である。
【0027】
層間絶縁部60は、p形ベース領域2、n+形ソース領域3、ゲート電極10、FP電極20、及びFP絶縁部40の上に設けられている。層間絶縁部60は、第1方向D1において、n+形ソース領域3とソース電極32との間、ゲート電極10とソース電極32との間、FP電極20とソース電極32との間、及びFP絶縁部40とソース電極32との間に位置する。
【0028】
ソース電極32は、層間絶縁部60の上に設けられている。ソース電極32は、p形ベース領域2、n+形ソース領域3、ゲート電極10、FP電極20、及びFP絶縁部40の上に位置する。第1方向D1において、ソース電極32とp形ベース領域2との間には、第1方向D1に延びる柱状のビア35が設けられている。ビア35は、ソース電極32の下面から、層間絶縁部60及びn+形ソース領域3を第1方向D1に延伸し(又は通り)、p形ベース領域2に達している。p形ベース領域2及びn+形ソース領域3は、ビア35を介してソース電極32と電気的に接続されている。例えば、ソース電極32は、ビア35を介して、第2方向D2に沿って並ぶ複数のn+形ソース領域3と電気的に接続されている。
【0029】
p+形コンタクト領域4は、p形ベース領域2とビア35との間に設けられている。p形ベース領域2は、p+形コンタクト領域4及びビア35を介してソース電極32と電気的に接続されている。この例では、p+形コンタクト領域4は、n+形ソース領域3よりも下方に位置している。
【0030】
FP電極20は、ソース電極32と電気的に接続されている。各FP電極20は、例えば、第3方向D3の端部において、接続部を介してソース電極32と電気的に接続されている。
【0031】
ゲート電極10は、ソース電極32とは電気的に分離されている。ゲート電極10は、例えば、第3方向D3の端部において、ゲート配線を介してゲートパッドと電気的に接続される。
【0032】
半導体装置100の動作について説明する。
ソース電極32に対してドレイン電極31に正電圧が印加された状態で、ゲート電極10に閾値以上の電圧を印加する。これにより、p形ベース領域2にチャネル(反転層)が形成され、半導体装置100がオン状態となる。電子は、チャネルを通ってソース電極32からドレイン電極31へ流れる。その後、ゲート電極10に印加される電圧が閾値よりも低くなると、p形ベース領域2におけるチャネルが消滅し、半導体装置100がオフ状態になる。
【0033】
半導体装置100がオフ状態に切り替わると、ソース電極32に対してドレイン電極31に印加される正電圧が増大する。すなわち、n-形ドリフト領域1とFP電極20との間の電位差が増大する。電位差の増大により、FP絶縁部40とn-形ドリフト領域1との界面からn-形ドリフト領域1に向けて、空乏層が広がる。空乏層は主として第1方向D1及び第2方向D2に延び、隣り合うFP絶縁部40から延びた空乏層同士が繋がる。これにより、n-形ドリフト領域1のうち、隣り合うFP絶縁部40間に配置された部分の略全体に空乏層が形成される。この空乏層の広がりにより、半導体装置100の耐圧を高めることができる。または、半導体装置100の耐圧を維持したまま、n-形ドリフト領域1におけるドナーとなる不純物の濃度を高め、半導体装置100のオン抵抗を低減できる。
【0034】
半導体装置100の各構成要素の材料の一例を説明する。
n-形ドリフト領域1、p形ベース領域2、n+形ソース領域3、p+形コンタクト領域4、及びn+形ドレイン領域5は、半導体材料として、シリコン、炭化シリコン、窒化ガリウム、またはガリウムヒ素を含む。半導体材料としてシリコンが用いられる場合、ドナーとなる不純物として、ヒ素、リン、またはアンチモンを用いることができる。アクセプタとなる不純物として、ボロンを用いることができる。
【0035】
ゲート電極10及びFP電極20は、ポリシリコンなどの導電材料を含む。導電材料には、不純物が添加されていても良い。FP絶縁部40、ゲート絶縁部50、及び層間絶縁部60は、絶縁材料を含む。例えば、FP絶縁部40、ゲート絶縁部50、及び層間絶縁部60は、酸化シリコンまたは窒化シリコンを含む。ドレイン電極31及びソース電極32は、アルミニウムまたは銅などの金属を含む。ビア35は、タングステン、アルミニウム、または銅などの金属を含む。
【0036】
次に、半導体装置100の製造方法の一例について、
図2(a)~
図4(c)を用いて説明する。
図2(a)~
図2(c)、
図3(a)~
図3(c)、及び
図4(a)~
図4(c)は、第1実施形態に係る半導体装置の製造工程の一例を表す工程断面図である。
【0037】
まず、n
+形半導体層5aとn
-形半導体層1aとを有する半導体基板を用意する。次に、レジストR1を用いたフォトリソグラフィ及びエッチングにより、n
-形半導体層1aの表面に、第1方向D1に窪み第3方向D3に延びるメイントレンチT1及びサイドトレンチT2を形成する(
図2(a))。メイントレンチT1の深さは、例えば、サイドトレンチT2の深さと同じである。メイントレンチT1の幅、すなわち、第2方向D2における長さは、例えば、サイドトレンチT2の幅よりも広くする。
【0038】
次に、レジストR1を除去し、n
-形半導体層1aを熱酸化することで、メイントレンチT1の内壁、サイドトレンチT2の内壁、及びn
-形半導体層1aの上面に沿う絶縁層IL1を形成する。これにより、メイントレンチT1とサイドトレンチT2との間に位置するn
-形半導体層1a、及びサイドトレンチT2同士の間に位置するn
-形半導体層1aは、それぞれ、第2方向D2における全域にわたって絶縁層IL1になる。続いて、異方性CVDにより、メイントレンチT1及びサイドトレンチT2の底に絶縁層IL1と同じ材質の絶縁層IL2を形成する(
図2(b))。異方性CVDは、例えば、プラズマCVDにより行われる。絶縁層IL2は、絶縁層IL1とは誘電率が異なる材質であってもよい。絶縁層IL2の形成は、必要に応じて行われ、省略可能である。
【0039】
次に、キャップCVDにより、メイントレンチT1及びサイドトレンチT2の上部を塞ぐように絶縁層IL3を形成する(
図2(c))。絶縁層IL3は、例えば、サイドトレンチT2の上端よりも下方に絶縁層IL3の一部が位置するように形成される。これにより、第1空隙領域48a及び第2空隙領域48bが形成される。キャップCVDは、例えば、ステップカバレッジの悪いモノシランなどを用いた常圧CVDにより行われる。
【0040】
次に、エッチングにより、メイントレンチT1の上部を塞ぐ絶縁層IL3を除去し、メイントレンチT1の内部に導電層を形成する。この導電層の上面をエッチバックすることで、FP電極20が形成される。続いて、FP電極20の上部を熱酸化することで、FP電極20の上面に沿う絶縁層IL4を形成する(
図3(a))。絶縁層IL4の形成は、必要に応じて行われ、省略可能である。
【0041】
次に、レジストR2を用いたフォトリソグラフィ及びウェットエッチングにより、絶縁層IL1及び絶縁層IL3の一部を除去し、n
-形半導体層1aの上面及び内側面を露出させるとともに、n
-形半導体層1aと絶縁層IL3との間にトレンチT3を形成する(
図3(b))。このとき、トレンチT3の下端は、絶縁層IL3の下端よりも上方に位置するようにする。
【0042】
次に、露出したn
-形半導体層1aの内側面を熱酸化することで、n
-形半導体層1aの内側面に沿う絶縁層IL5を形成する。続いて、トレンチT3の内部に導電層を形成する。この導電層の上面をエッチバックすることで、ゲート電極10が形成される(
図3(c))。続いて、絶縁層IL1及び絶縁層IL3の一部をエッチングにより除去する。
【0043】
次に、絶縁層IL5の側方に位置するn
-形半導体層1aにアクセプタとなる不純物及びドナーとなる不純物を順次イオン注入する。これにより、p形ベース領域2及びn
+形ソース領域3が形成される。続いて、ゲート電極10、絶縁層IL3、絶縁層IL4、及び絶縁層IL5の上に、絶縁層IL6を形成する(
図4(a))。
【0044】
次に、絶縁層IL6及びn
+形ソース領域3を第1方向D1に延伸し(又は通り)、p形ベース領域2に達する開口を形成し、この開口を通してp形ベース領域2の一部にアクセプタとなる不純物をイオン注入する。これにより、p
+形コンタクト領域4が形成される。続いて、n
+形ソース領域3、p
+形コンタクト領域4、及び絶縁層IL6を覆う金属層を形成する。これにより、ソース電極32と、ビア35と、が形成される(
図4(b))。
【0045】
次に、n
+形半導体層5aが所定の厚みになるまで、n
+形半導体層5aの裏面を研削し、n
+形半導体層5a上に金属層を形成する。これにより、ドレイン電極31が形成される(
図4(c))。
【0046】
以上の工程により、
図1に表す半導体装置100が得られる。n
-形半導体層1aは、例えば、n
-形ドリフト領域1に相当する。n
+形半導体層5aは、例えば、n
+形ドレイン領域5に相当する。絶縁層IL1は、例えば、第1絶縁領域41、第2絶縁領域42、第3絶縁領域43の第1部分43a、及び第5絶縁領域45に相当する。絶縁層IL2は、例えば、第3絶縁領域43の第2部分43bに相当する。絶縁層IL3は、例えば、第4絶縁領域44に相当する。絶縁層IL5の一部は、例えば、ゲート絶縁部50に相当する。絶縁層IL6は、例えば、層間絶縁部60に相当する。
【0047】
なお、上述した製造方法について、各絶縁層及び各導電層の形成には、特に説明の無い限り、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いることができる。各金属層の形成には、PVD(Physical Vapor Deposition)法やめっき法を用いることができる。
また、各絶縁層及び各導電層のエッチングには、特に説明の無い限り、ウェットエッチングや、RIE(Reactive Ion Etching)法、CDE(Chemical Dry Etching)法などを適宜選択して用いることができる。
【0048】
次に、半導体装置100の製造方法の変形例について、
図5(a)~
図6(b)を用いて説明する。
図5(a)~
図5(c)、
図6(a)、及び
図6(b)は、第1実施形態に係る半導体装置の製造工程の変形例を表す工程断面図である。
【0049】
この変形例では、まず、n
+形半導体層5aとn
-形半導体層1aとを有する半導体基板を用意し、レジストR1を用いたフォトリソグラフィ及びエッチングにより、n
-形半導体層1aの表面に、メイントレンチT1を形成する(
図5(a))。
【0050】
次に、レジストR1を除去し、n
-形半導体層1aを熱酸化することで、メイントレンチT1の内壁及びn
-形半導体層1aの上面に沿う絶縁層IL11を形成する。次に、メイントレンチT1の底に絶縁層IL12を形成する。続いて、メイントレンチT1の内部に導電層を形成し、この導電層の上面をエッチバックすることで、FP電極20を形成する。続いて、FP電極20の上部を熱酸化することで、FP電極20の上面に沿う絶縁層IL13を形成する(
図5(b))。
【0051】
次に、FP電極20の側方において、絶縁層IL11の一部を除去し、n
-形半導体層1aの表面からn
-形半導体層1a中に、サイドトレンチT2を形成する(
図5(c))。次に、n
-形半導体層1aを熱酸化することで、サイドトレンチT2に沿う絶縁層IL14を形成する(
図6(a))。次に、サイドトレンチT2の上部を塞ぐように絶縁層IL15を形成する(
図6(b))。
【0052】
以降の工程は、上述の
図3(b)以降の工程と同様にして行うことができる。なお、絶縁層IL11及び絶縁層IL14は、絶縁層IL1に相当する。絶縁層IL12は、絶縁層IL2に相当する。絶縁層IL13は、絶縁層IL4に相当する。絶縁層IL15は、絶縁層IL3に相当する。
【0053】
このように、FP電極20を形成した後にサイドトレンチT2を形成し、その後にサイドトレンチT2の絶縁層を形成する方法でも、半導体装置100を製造することができる。
【0054】
次に、半導体装置100の製造方法の別の変形例について、
図7(a)~
図8(b)を用いて説明する。
図7(a)~
図7(c)、
図8(a)、及び
図8(b)は、第1実施形態に係る半導体装置の製造工程の別の変形例を表す工程断面図である。
【0055】
この変形例では、まず、n
+形半導体層5aとn
-形半導体層1aとを有する半導体基板を用意し、レジストR1を用いたフォトリソグラフィにより、n
-形半導体層1aの表面に、メイントレンチT1を形成する(
図7(a))。
【0056】
次に、レジストR1を除去し、n
-形半導体層1aを熱酸化することで、メイントレンチT1の内壁及びn
-形半導体層1aの上面に沿う絶縁層IL21を形成する。続いて、メイントレンチT1の内部に導電層を形成することで、FP電極20を形成する(
図7(b))。
【0057】
次に、絶縁層IL21の上面をエッチバックすることで、n
-形半導体層1aの上面を露出させる(
図7(c))。次に、レジストR2を用いたフォトリソグラフィ及び異方性エッチングにより、FP電極20の側方において、絶縁層IL21の表面から絶縁層IL21中に、サイドトレンチT2を形成する(
図8(a))。
【0058】
次に、レジストR2を除去し、サイドトレンチT2の上部を塞ぐように絶縁層IL22を形成する。続いて、FP電極20の上の絶縁層IL22を除去し、FP電極20の上部を熱酸化することで、FP電極20の上面に沿う絶縁層IL23を形成する(
図8(b))。
【0059】
以降の工程は、上述の
図3(b)以降の工程と同様にして行うことができる。なお、絶縁層IL21は、絶縁層IL1及び絶縁層IL2に相当する。絶縁層IL22は、絶縁層IL3に相当する。絶縁層IL23は、絶縁層IL4に相当する。
【0060】
このように、FP電極20及び絶縁層を形成した後に絶縁層の内部にサイドトレンチT2を形成する方法でも、半導体装置100を製造することができる。
【0061】
ここで、本実施形態による作用及び効果について説明する。
半導体装置において寄生容量を低減させる手段として、FP電極20の周りに設けられるFP絶縁部40の厚さを大きくすることが考えられる。しかし、FP絶縁部40の厚さを大きくすると、ウェーハの反りが大きくなってウェーハの搬送に不具合が生じるおそれがある。
【0062】
本実施形態に係る半導体装置では、FP絶縁部40の内部に空隙領域48を設けることで、FP絶縁部40の厚さの増大を抑制しつつ、FP絶縁部40全体の誘電率を低減させ、寄生容量を低減させることができる。また、空隙領域48によってウェーハの反りを吸収できるため、ウェーハの反りによる搬送の不具合が生じることを抑制できる。また、空気中や真空中の比誘電率は、酸化シリコンなどの比誘電率よりも低いため、空隙領域48を設けることで、空隙領域48を設けない場合(すなわち、FP絶縁部40の全体を酸化シリコンなどで形成する場合)と比べて、FP絶縁部40の絶縁性を向上させることができる。したがって、空隙領域48を設けることで、空隙領域48を設けない場合と比べて、FP絶縁部40の厚さを薄くすることができる。これにより、半導体装置の製造にかかる時間やコストを低減できる。
【0063】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態に係る半導体装置を表す断面図である。
図9に表したように、第2実施形態に係る半導体装置200では、第2方向D2において、ゲート電極10と第4絶縁領域44との間に第4絶縁部70が設けられている。それ以外は、第1実施形態に係る半導体装置100と同じである。第4絶縁部70は、絶縁材料を含む。第4絶縁部70は、例えば、酸化シリコンまたは窒化シリコンを含む。
【0064】
第4絶縁部70は、例えば、以下のような方法で形成することができる。例えば、上述の
図3(b)の工程において、トレンチT3と絶縁層IL3との間に絶縁層IL1の一部が残るようにトレンチT3を形成することで、第4絶縁部70を形成することができる。あるいは、例えば、上述の
図3(c)の工程において、絶縁層IL3を透過した酸素によりゲート電極10のうち絶縁層IL3と接する一部が熱酸化されることで、第4絶縁部70が形成されてもよい。
【0065】
半導体装置200においても、FP絶縁部40の内部に空隙領域48を設けることで、FP絶縁部40の厚さの増大を抑制しつつ、寄生容量を低減させることができる。また、空隙領域48を設けることで、ウェーハの反りによる搬送の不具合が生じることを抑制できる。また、空隙領域48を設けることで、空隙領域48を設けない場合と比べて、FP絶縁部40の厚さを薄くすることができる。
【0066】
以上のように、本発明の実施形態によれば、寄生容量を低減できる半導体装置が提供される。
【0067】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 n-形ドリフト領域(第1半導体領域)、 1a n-形半導体層、 2 p形ベース領域(第2半導体領域)、 3 n+形ソース領域(第3半導体領域)、 4 p+形コンタクト領域、 5 n+形ドレイン領域、 5a n+形半導体層、 10 ゲート電極、 20 FP電極(第3電極)、 31 ドレイン電極(第1電極)、 32 ソース電極(第2電極)、 35 ビア、 40FP絶縁部(第1絶縁部)、 41~45 第1~第5絶縁領域、 43a、43b 第1、第2部分、 48 空隙領域、 48a、48b 第1、第2空隙領域、 50 ゲート絶縁部(第2絶縁部)、 60 層間絶縁部(第3絶縁部)、 70 第4絶縁部、 100、200 半導体装置、 D1~D3 第1~第3方向、 IL1~IL6、IL11~IL15、IL21~IL23 絶縁層、 L1~L3、L3a、L3b、L5 厚さ、 R1、R2 レジスト、 T1 メイントレンチ、 T2 サイドトレンチ、 T3 トレンチ、 W1~W3 幅