(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】汚泥処理設備及び汚泥処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 11/143 20190101AFI20240412BHJP
C02F 11/121 20190101ALI20240412BHJP
C02F 11/122 20190101ALI20240412BHJP
C02F 11/125 20190101ALI20240412BHJP
C02F 11/127 20190101ALI20240412BHJP
C02F 11/147 20190101ALI20240412BHJP
C02F 11/18 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C02F11/143
C02F11/121 ZAB
C02F11/122
C02F11/125
C02F11/127
C02F11/147
C02F11/18
(21)【出願番号】P 2021056414
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】523183714
【氏名又は名称】月島JFEアクアソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倭 常郎
(72)【発明者】
【氏名】富 雄暉
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-121253(JP,A)
【文献】特開2000-301187(JP,A)
【文献】特開2016-087584(JP,A)
【文献】特開2013-119081(JP,A)
【文献】特開平06-182324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00-11/20
C02F 1/52- 1/56
C02F 3/28- 3/34
B01D 21/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥濃度が1~4%である有機性汚泥が濃縮されて
、濃縮汚泥と濃縮排水に分離される濃縮槽を備えた濃縮手段と、
前記濃縮汚泥に凝集剤を添加する添加手段と、
凝集剤が添加された濃縮汚泥を脱水して、脱水ろ液と50℃以上、かつ100℃未満の脱水汚泥に分離する脱水手段とを有し、
前記濃縮槽は、前記有機性汚泥が流入する汚泥流入部を備えるものであり、
前記脱水ろ液は、前記汚泥流入部又は当該汚泥流入部よりも上流部に供給され、濃縮槽内に流入して濃縮排水として系外に排出されるものであ
り、
前記上流部は、前記汚泥流入部に接続され、前記有機性汚泥が圧送される圧送流路である、
ことを特徴とする汚泥処理設備。
【請求項2】
前記脱水ろ液の全量が濃縮槽に流入される、
請求項1に記載の汚泥処理設備。
【請求項3】
前記脱水ろ液の温度が50℃以上、かつ100℃未満である、
請求項1に記載の汚泥処理設備。
【請求項4】
凝集剤が添加された濃縮汚泥を直接に又は間接に加熱する加熱手段を有する、
請求項1に記載の汚泥処理設備。
【請求項5】
前記添加手段は、凝集剤が濃縮汚泥に1~15質量%含まれるように添加されるものである、
請求項1に記載の汚泥処理設備。
【請求項6】
濃縮汚泥を直接に又は間接に加熱する加熱手段を有し、
前記添加手段は、前記加熱手段により加熱された濃縮汚泥に凝集剤を添加するものである、
請求項1に記載の汚泥処理設備。
【請求項7】
汚泥濃度が1~4%であり、かつ温度が50℃以上、かつ100℃未満である有機性汚泥を凝集させて凝集汚泥を得る凝集手段と、
前記凝集汚泥が濃縮されて濃縮汚泥と濃縮排水に分離される濃縮槽を備えた濃縮手段と、
前記濃縮汚泥に凝集剤を添加する添加手段と、
凝集剤が添加された濃縮汚泥を脱水して、脱水ろ液と50℃以上、かつ100℃未満の脱水汚泥に分離する脱水手段とを有し、
前記濃縮槽は、前記凝集汚泥が流入する汚泥流入部を備えるものであり、
前記脱水ろ液は、前記汚泥流入部又は当該汚泥流入部よりも上流部に供給され、濃縮槽内に流入して濃縮排水として系外に排出されるものであ
り、
前記上流部は、
前記凝集手段、又は
前記凝集手段に接続され、前記有機性汚泥が圧送される圧送流路である、
ことを特徴とする汚泥処理設備。
【請求項8】
汚泥濃度が1~4%である有機性汚泥が濃縮されて
、第1濃縮汚泥と第1濃縮排水に分離される濃縮槽を備えた第1濃縮手段と、
前記第1濃縮汚泥を直接に又は間接に加熱する加熱手段と、
加熱された前記第1濃縮汚泥を第2濃縮汚泥と第2濃縮排水に分離する第2濃縮手段と、
前記第2濃縮汚泥に凝集剤を添加する添加手段と、
凝集剤が添加された第2濃縮汚泥を脱水して、脱水ろ液と、50℃以上、かつ100℃未満の脱水汚泥に分離する脱水手段とを有し、
前記濃縮槽は、前記有機性汚泥が流入する汚泥流入部を備えるものであり、
前記脱水ろ液及び
前記第2濃縮排水は、前記汚泥流入部又は当該汚泥流入部よりも上流部に供給され、濃縮槽内に流入して
前記第1濃縮排水として系外に排出されるものであ
り、
前記上流部は、前記汚泥流入部に接続され、前記有機性汚泥が圧送される圧送流路である、
ことを特徴とする汚泥処理設備。
【請求項9】
汚泥濃度が1~4%である有機性汚泥が濃縮されて濃縮汚泥と濃縮排水に分離される濃縮槽によって、前記有機性汚泥を濃縮する濃縮工程と、
前記濃縮汚泥に凝集剤を添加する添加工程と、
凝集剤が添加された濃縮汚泥を脱水して、脱水ろ液と50℃以上、かつ100℃未満の脱水汚泥に分離する脱水工程とを有し、
前記濃縮槽は、前記有機性汚泥が流入する汚泥流入部を備えるものであり、
前記脱水ろ液を、前記汚泥流入部又は当該汚泥流入部よりも上流部に供給し、濃縮槽内に流入して濃縮排水として系外に排出
し、
前記上流部は、前記汚泥流入部に接続され、前記有機性汚泥が圧送される圧送流路である、
ことを特徴とする汚泥処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥処理設備及び汚泥処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工場排水や家庭排水等は、その大部分が下水道施設によって処理され、河川や海域に放流される。放流される水には水質汚濁物質が含まれ、この水質汚濁物質に対して、水質汚濁防止法その他の法令等による排水基準が設けられている。水質汚濁物質の中でもリンは、富栄養化による赤潮等の発生原因となるので、近年その規制が強化されつつある状況にある。
【0003】
下水道施設の流入水に含まれるリン酸は溶解性成分であるため、通常の水処理では除去することができず、放流水として河川や海域に放流されてしまう。下水道施設において、リン酸の除去方法は、鉄塩やアルミニウム塩などの無機薬剤を添加し不溶性のリン化合物として除去する化学的処理、又は活性汚泥にリン酸を取り込ませて除去するAO法等の生物学的処理が一般的である。
【0004】
不溶化したリン化合物又はリン酸が取り込まれた活性汚泥は、余剰汚泥として汚泥処理設備に送られ、濃縮及び脱水等の工程を経て、最終的には脱水汚泥と排水に固液分離される。リン酸のほとんどは脱水汚泥に取り込まれる形で系外に排出されるが、排水中に残存した一部のリン酸は、返流水として水処理設備に戻され、再度無機薬剤を添加するか、AO法により除去する必要がある。そのため、返流水中のリン酸濃度が高くなるほど、無機薬剤の使用量又はAO法に要する動力が増加するため、薬剤費や電力費等の維持管理費の増大を招くことになる。
【0005】
特許文献1は、汚泥処理設備に関する技術を開示しており、消化汚泥を加熱し、高い脱水効果を発揮する高分子凝集剤を用いて凝集させ、含水率の低い脱水汚泥を得ることを目的としている。脱水汚泥の含水率の低減化を図ることは、後段の焼却設備において補助燃料を削減させることが可能となり、焼却費用および温室効果ガス排出量を低減できることから、下水道施設において一般的に望まれることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-103952号公報
【文献】特開2020-121253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、脱水設備において汚泥を加熱した後に脱水していることから、加熱により溶出したリン酸が脱水ろ液とともに水処理設備に返流されるため、リンを除去するための動力および薬品を多く消費することとなる。なお、特許文献2には、温水を用いた有機性汚泥の処理設備に関する技術が開示されている。
【0008】
そこで、本発明が解決する課題は、汚泥を加熱し、可溶化させて発生したリン酸を効率よく除去する汚泥処理設備及び汚泥処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究を重ね、汚泥の加熱により溶出したリン酸、及び残留凝集剤を含む脱水ろ液を濃縮槽の前段に流入させることで、濃縮前の有機性汚泥と混合され、有機性汚泥中のリン酸及び加熱により溶出したリン酸と残留凝集剤が反応し、不溶性のリン化合物となり、固形物側(汚泥側)に取り込まれるため、結果として濃縮排水中に含まれるリン酸の濃度を低減できる知見を得た。この知見をもとに完成させた発明の態様が次に示すものである。
【0010】
[第1の態様]
有機性汚泥が濃縮されて濃縮汚泥と濃縮排水に分離される濃縮槽を備えた濃縮手段と、
前記濃縮汚泥に凝集剤を添加する添加手段と、
凝集剤が添加された濃縮汚泥を脱水して、脱水ろ液と50℃以上、かつ100℃未満の脱水汚泥に分離する脱水手段とを有し、
前記濃縮槽は、前記有機性汚泥が流入する汚泥流入部を備えるものであり、
前記脱水ろ液は、前記汚泥流入部又は当該汚泥流入部よりも上流部に供給され、濃縮槽内に流入して濃縮排水として系外に排出されるものである、
ことを特徴とする汚泥処理設備。
【0011】
[第2の態様]
有機性汚泥が濃縮されて濃縮汚泥と濃縮排水に分離される濃縮槽によって、前記有機性汚泥を濃縮する濃縮工程と、
前記濃縮汚泥に凝集剤を添加する添加工程と、
凝集剤が添加された濃縮汚泥を脱水して、脱水ろ液と50℃以上、かつ100℃未満の脱水汚泥に分離する脱水工程とを有し、
前記濃縮槽は、前記有機性汚泥が流入する汚泥流入部を備えるものであり、
前記脱水ろ液を、前記汚泥流入部又は当該汚泥流入部よりも上流部に供給し、濃縮槽内に流入して濃縮排水として系外に排出する、
ことを特徴とする汚泥処理方法。
【0012】
本態様では、凝集剤が添加された濃縮汚泥は脱水して、脱水ろ液と脱水汚泥に分離される。そして、当該脱水汚泥は、温度が上記の範囲にあるため、濃縮汚泥が可溶化されリン酸が溶出するとともに含水率が相対的に低いものとなる。脱水ろ液には、凝集剤が残留している場合があり、この脱水ろ液が濃縮槽に流入すると、濃縮前の有機性汚泥に含まれるリン酸と加熱により溶出したリン酸が残留凝集剤と反応して不溶性のリン化合物となるため、濃縮排水中のリン酸の濃度が低減される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、汚泥を加熱し、可溶化させて発生したリン酸を効率よく除去する汚泥処理設備及び汚泥処理方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は、本発明の一例である。本発明の範囲は、本実施の形態の範囲に限定されない。
【0016】
(第1の実施形態)
本発明に係る汚泥処理設備の第1の実施形態は、有機性汚泥Aが濃縮されて濃縮汚泥Cと濃縮排水Rに分離される濃縮槽21を備えた濃縮手段20と、前記濃縮汚泥Cに凝集剤を添加する添加手段60と、凝集剤が添加された濃縮汚泥を脱水して、脱水ろ液Sと、50℃以上、かつ100℃未満の脱水汚泥Eに分離する脱水手段40とを有し、前記濃縮槽21は、前記有機性汚泥が流入する汚泥流入部22を備えるものであり、前記脱水ろ液Sは、前記汚泥流入部22又は当該汚泥流入部22よりも上流部に供給され、濃縮排水Rとして系外に排出されるものである、ことを特徴とする。なお、必要に応じ、有機性汚泥を濃縮する処理に先立って凝集する処理を行ってもよい。
【0017】
(有機性汚泥)
汚泥処理設備は、下水を処理する設備を備える水処理設備で発生した有機性汚泥Aを受け入れて、濃縮、脱水して脱水汚泥とし、この脱水汚泥を焼却処理する設備である。有機性汚泥Aは、水処理設備で発生する生汚泥や活性汚泥を含むものであり、またポリリン酸蓄積細菌などの微生物が含まれ、これらの微生物は、下水中のリン酸(通常リン酸イオンの形態で下水中に溶解している。)を好気的な条件では菌体内に吸収し、嫌気的な条件では菌体外に放出している(取り込み、及び吐き出しする)。
有機性汚泥Aの汚泥濃度は、水処理設備の処理方式にもよるが、1~4%である。
【0018】
(濃縮手段)
水処理設備から汚泥処理設備に圧送流路L1を通って圧送された有機性汚泥Aは、濃縮手段20によって濃縮される。濃縮手段20は、有機性汚泥Aを濃縮処理することによって、濃縮汚泥Cと濃縮排水Rに分離するものである。濃縮手段20は、有機性汚泥Aが流入する汚泥流入部22、流入した有機性汚泥Aを受け入れ濃縮を行う濃縮槽21、濃縮されて得られた濃縮汚泥Cを下流に流出する汚泥流出部23、濃縮処理で発生した濃縮排水Rを排出する排水部を有するものである。上記圧送流路L1の下流端が汚泥流入部22に接続されており、また、脱水手段40から排出された脱水ろ液Sが流れるろ液流路L4の下流端が、汚泥流入部22又は当該汚泥流入部22よりも上流部に接続されている。脱水ろ液Sは、ろ液流路L4を流れて導かれ、汚泥流入部22又は当該汚泥流入部22よりも上流部に供給され、濃縮槽21に流入される。ろ液流路L4には、脱水ろ液Sを送るためのポンプP3を設けておくとよい。ここで、汚泥流入部22よりも上流部とは、圧送流路L1でもよいし、濃縮手段20の上流側に凝集手段10が備わる場合には、凝集手段10の前段部や、水処理設備と当該凝集手段10を接続する圧送流路であってもよい。なお、凝集手段10が備わる場合は、有機性汚泥Aは、水処理設備から圧送流路を流れて、凝集手段10に流入し凝集されて凝集汚泥となり、この凝集汚泥が凝集手段10と濃縮手段20を接続する圧送流路を流れ、汚泥流入部22から濃縮槽21に流入する。
【0019】
濃縮手段20は、特に限定されず一般的なものを適用できるが、例えば、特開2020-199443号公報に開示されるろ過装置を適宜用いることができる。この装置は、流入された有機性汚泥A及び/又は脱水ろ液S、すなわち被処理物が保持される、縦方向に延びる軸線を中心とした有底円筒状の濃縮槽を備えており、被処理物は濃縮槽の上部から濃縮槽内に供給される。この濃縮槽の円筒状の胴部は、遮蔽部を除いてウェッジワイヤーやパンチングメタル等によって形成された濾過スクリーンとされるとともに、この濾過スクリーンの外周にはジャケット状の排水室が配設されている。濾過スクリーン内には、濃縮槽の軸線に沿って延びる軸線を中心として軸線を中心にして回転する円筒状の回転軸と、この回転軸に沿って螺旋状に配設されたスクリュー羽根とを備えた搬送手段が収容され、また、濃縮槽の上部には、回転軸を回転させるモーター等の回転駆動手段が配設されて回転軸と連結されている。
【0020】
汚泥流入部22は濃縮槽21の上部に、汚泥流出部23は濃縮槽21の下部(底部)に設けることができる。脱水ろ液Sを濃縮槽21に流入させる場合に、脱水ろ液Sが流入される位置は適宜選択することができる。例えば、脱水ろ液Sが流入される位置を、汚泥流入部22や、有機性汚泥Aの濃縮処理が半分程度なされた位置、すなわち濃縮槽21の中段部、汚泥流出部23等とすることができる。しかしながら、脱水ろ液Sが流入される位置を、汚泥流入部22とするのが望ましい。脱水ろ液Sの流入位置が汚泥流入部22であれば、凝集剤が残留する脱水ろ液Sが、濃縮処理される前の有機性汚泥Aと混ざり、凝集剤が有機性汚泥Aに溶解するリン酸と反応して不溶性のリン化合物となるため、有機性汚泥中のリン酸を低減できる。この点について、仮に脱水ろ液Sを濃縮槽21の中段部に流入させた場合は、汚泥流入部22から中段部に至るまでに濃縮処理によって発生した濃縮排水に、リン酸が多く含まれた状態で既に排出されてしまっているため、結果として系外に排出される排水に多くのリン酸が含まれたものとなってしまう。この観点を考慮すると、脱水ろ液Sが流入される位置を、汚泥流入部22又は汚泥流入部22よりも上流部の圧送流路L1や凝集手段10としても、もちろんよい。
【0021】
濃縮手段20によって濃縮された濃縮汚泥Cは、汚泥濃度が4~10%となる。
【0022】
濃縮手段20から流出された濃縮汚泥Cは、濃縮手段20とその下流に設置される脱水手段40を接続する流路である汚泥流路L2を流れ、脱水手段40に送られる。汚泥流路L2における濃縮汚泥Cの圧送は、汚泥の摩擦抵抗を考慮して、汚泥流路L2に設けられるポンプP1を用いて圧力を加えて行うことができる。
【0023】
脱水ろ液Sは、濃縮槽21に流入して、濃縮排水Rとして系外に排出される。ここで、水処理設備に流入した下水は、通常、上流側から下流側に向かって、着水井、最初沈殿池、反応タンク、最終沈殿池を通過して河川や海等に放流される。例えば、濃縮排水Rを、水処理設備の最初沈殿池の流入部又は最初沈殿池よりも上流部に供給することにより、流入した下水と一緒に処理され、最終的には河川や海等に放流されることとなる。
【0024】
(添加手段)
濃縮汚泥Cを脱水手段40により脱水すると、リン酸が多く含まれた脱水ろ液が発生する。ここで、脱水手段40による脱水に先立って濃縮汚泥Cに凝集剤を添加させておくと、リン酸が凝集剤と反応して不溶性のリン化合物となり濃縮汚泥側(固形物側)に移行するため、脱水ろ液に含まれるリン酸の濃度を低減させることができる。凝集剤の添加手段60としては、例えば、凝集剤が入った容器と汚泥流路L2の任意の箇所とを凝集剤添加用の配管で接続し、当該任意の箇所に撹拌機等を備えたものを挙げることができる。濃縮汚泥Cの流量に応じて当該容器から凝集剤を適量汚泥流路L2に流させ、凝集剤が混ざった濃縮汚泥Cを攪拌した後、脱水手段40に流入させる等の手段を採るとよい。
【0025】
凝集剤としては、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、ポリ硫酸第二鉄等の無機系凝集剤、有機系凝集剤、アニオン性あるいはノニオン性高分子凝集剤、カチオン性高分子凝集剤を例示することができる。特にポリ硫酸第二鉄やポリ塩化アルミニウムは、脱水ろ液に残る残留分が有機性汚泥中のリン酸と反応することで、不溶性のリン化合物となるため、排水中のリン酸濃度を下げるように働くため好ましい。
【0026】
従来より、汚泥の含水率を低減するため、濃縮汚泥に凝集剤を添加する処理が行われてきており、濃縮汚泥における凝集剤の添加率は、およそ10~35質量%としていた。一方で、本実施形態では、濃縮汚泥における凝集剤の添加率が1~15質量%、好ましくは2~10質量%となるように、添加することができる。本実施形態では、汚泥を加熱することにより、汚泥と凝集剤の反応性が高まることから、従来ほど凝集剤を添加しなくても、脱水汚泥の含水率を低減させることが可能となっている。
【0027】
(脱水手段)
脱水手段40は、濃縮汚泥Cが流入する汚泥流入部と、脱水処理された脱水汚泥が流出する汚泥流出部と、脱水ろ液が排出液Fとして排出される排出部と、脱水ろ液を循環水として汚泥処理設備の上流側に送る循環水流出部と、脱水機を有する。脱水手段40に流入した濃縮汚泥Cは、脱水処理され、脱水汚泥Eと脱水ろ液に分離される。脱水ろ液は、排出液Fとしてそのまま系外に排出してもよいが、排出液Fには通常、リン酸が含まれており、水処理設備に返流されると、水処理設備におけるリンの処理に負荷をかけてしまうことになる。
【0028】
水処理設備において、リンを除去するための負荷を軽減するため、本実施形態では脱水ろ液の全量又は一部、好ましくは脱水ろ液の全量を濃縮手段20に流入させることによって、水処理設備の返流水に含まれるリン酸イオンの濃度の低減化を図っている。
【0029】
脱水手段40としては、遠心脱水機、スクリュープレス、フィルタープレス及びベルトプレス等の脱水機を備えたものを用いることができる。
【0030】
脱水手段40によって脱水された脱水汚泥Eは、汚泥の可燃分にもよるが含水率を70%程度となるように調整すると、後工程の焼却設備において補助燃料を必要とすることなく処理を行うことができる。
【0031】
脱水汚泥Eの温度は、50℃以上、100℃未満であればよい。好ましくは、有機性汚泥Aの汚泥種により異なるが、混合生汚泥の場合は50℃以上80℃以下、中温消化汚泥の場合は60℃以上80℃以下、高温消化汚泥の場合は70℃以上90℃以下であればよい。50℃未満だと脱水汚泥Eの含水率が高くなるため、焼却設備において補助燃料が必要となるため、維持管理費の増大を招くおそれがある。100℃以上だと汚泥の温度が高すぎて設備の管理が困難になる。
【0032】
脱水汚泥Eの温度は、例えば、脱水手段40に備わる脱水機における脱水汚泥の汚泥流出部又は汚泥流出部近傍に設けられた温度センサーで測定することができる。温度センサーは脱水汚泥に対して接触式であっても非接触式であってもよい。
【0033】
脱水ろ液の温度は、例えば、脱水手段40に備わる脱水機における脱水ろ液の排出部又は排出部近傍に設けられた温度センサーで測定することができる。温度センサーは脱水ろ液に対して接触式であっても非接触式であってもよい。
【0034】
加熱された脱水ろ液が濃縮手段20に流入すると、濃縮槽21に入っている有機性汚泥が、脱水ろ液と混ざり加熱され、可溶化される。有機性汚泥に含まれるリン酸に加え、可溶化によってリン酸が溶出するが、脱水ろ液に残留する凝集剤の作用により、リン酸は不溶性のリン化合物となる、結果として濃縮排水中のリン酸濃度は低いものとなる。
【0035】
(加熱)
50℃以上100℃未満の脱水汚泥Eを得るためには、加熱手段50を汚泥処理設備に設けるとよい。加熱手段50を設ける位置は、加熱された脱水汚泥Eが得られる限り、限定されることはない。ここでは、凝集剤が添加された濃縮汚泥Cを直接に又は間接に加熱する加熱手段50を例示して説明する。
【0036】
加熱手段50としては、具体的には濃縮汚泥Cに温水や蒸気を直接に供給して加熱する手法、濃縮汚泥Cの流れの中に熱交換器を設けて、熱媒体を流して間接的に加熱する手法、濃縮汚泥Cの流れの中に投げ込みヒータを設置して加熱する手法等を例示できる。
【0037】
加熱手段50に温水を用いる場合は、汚泥処理設備に設けられる汚泥焼却設備の排煙処理塔排水や汚泥乾燥設備のスクラバー排水、消化ガス発電機から発生する温水を用いることができる。
【0038】
汚泥は、加熱されることで可溶化し、含水率が下がるので焼却しやすいものとなる。また、可溶化された汚泥は、粘性が低いので、摩擦抵抗が小さく輸送が容易となる。
【0039】
本実施形態の汚泥の質量収支はおおよそ次のようになる。汚泥処理設備に流入する有機性汚泥を100質量%とした場合、脱水汚泥は22~24質量%、残りが濃縮排水として系外に排出される。この点、従来の、加熱手段を備えない汚泥処理設備では、脱水汚泥は25~27質量%である。
【0040】
また、加熱手段を備えた本実施形態によれば、濃縮手段20に流入される有機性汚泥の流量は5~60m3/hであるのに対して、濃縮手段20に流入される脱水ろ液の流量は0.2~35m3/hとなる。
【0041】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について
図2を参照しつつ以下に説明する。第2の実施形態は、濃縮手段20の上流に凝集手段10を設けている点が第1の実施形態との違いである。凝集手段10としては、有機性汚泥Aと凝集剤が供給され、縦方向に延びる中心軸を有する有底円筒状の凝集槽を備えたものを例示できる。中心軸に沿った回転軸と、当該回転軸に沿って撹拌羽根が取り付けられて、凝集槽の上部に設けられたモーター等の回転駆動手段によって回転軸および撹拌羽根が回転することにより有機性汚泥Aと凝集剤を撹拌する撹拌手段が設けられている。この撹拌手段によって攪拌された有機性汚泥が、凝集手段10から流出し、濃縮手段20に供給される。凝集処理された有機性汚泥Bは、特に凝集汚泥ということができ、その汚泥濃度は1~4%となる。
【0042】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について
図3を参照しつつ説明する。第3の実施形態は、凝集手段10、濃縮手段20、脱水手段40を備え、かつ加熱手段50が2箇所に設けられた形態である。第3の実施形態と第2の実施形態とでは、加熱手段50の数が異なる。第1加熱手段50は、脱水手段40に流入した濃縮汚泥Cを加熱するものであり、第2加熱手段50は、濃縮手段20に流入した有機性汚泥を加熱するものである。
【0043】
濃縮手段20に加熱手段50を設けることで、濃縮手段20に流入した有機性汚泥が加熱手段50によって可溶化して濃縮されるので、濃縮手段20から流出される濃縮汚泥Cの汚泥濃度が高まる。そして、濃縮汚泥Cは、下流の脱水手段40に備わる加熱手段50によってさらに加熱されるので、脱水汚泥Eは、含水率がより低くなり、焼却処理に適したものとなる。
【0044】
第2加熱手段50で加熱されて、濃縮手段から流出された濃縮汚泥Cは、50℃以上100℃未満となっている。
【0045】
(第4の実施形態)
第4の実施形態について
図4を参照しつつ説明する。第4の実施形態は、第2の実施形態において脱水手段40に設けられていた加熱手段50が、濃縮手段20に設けられている点で第2の実施形態と異なる。
【0046】
(第5の実施形態)
第5の実施形態について
図5を参照しつつ説明する。第5の実施形態は、第2の実施形態の汚泥流路L2に、さらに第2加熱手段50が設けられている形態である。汚泥流路L2を流れる濃縮汚泥Cは、濃縮されているので粘性が高く、摩擦抵抗があるのでポンプP1による動力を掛けて脱水手段40まで送ることになる。しかしながら、濃縮汚泥Cが加熱手段50によって加熱されて可溶化するので、粘性が下がり、脱水手段40まで送るのが容易になる。加熱手段50は汚泥流路L2のいずれの箇所にも設けることができる。特に添加手段60が設けられた箇所よりも上流側に設けておけば、可溶化された濃縮汚泥が、凝集剤と混ざることになり、容易に混和するので好ましい。
【0047】
(第6の実施形態)
第6の実施形態について
図6を参照しつつ説明する。第6の実施形態は、第2の実施形態に、さらに濃縮手段30と、濃縮手段30の汚泥流出部と脱水手段40の汚泥流入部とが接続された汚泥流路L3と、濃縮手段30の排水部とろ液流路L4が接続された汚泥流路L5と、汚泥流路L3に設けられたポンプP2と、汚泥流路L5に設けられたポンプP4を備えたものである。濃縮手段30は濃縮手段20と同様のものを用いることができる。
【0048】
上記の手段及び機器を備えることで、有機性汚泥が濃縮されて第1濃縮汚泥と第1濃縮排水に分離される濃縮槽を備えた第1濃縮手段と、前記第1濃縮汚泥を直接に又は間接に加熱する加熱手段と、加熱された前記第1濃縮汚泥を第2濃縮汚泥と第2濃縮排水に分離する第2濃縮手段と、前記第2濃縮汚泥に凝集剤を添加する添加手段と、凝集剤が添加された第2濃縮汚泥を脱水して、脱水ろ液と、50℃以上、かつ100℃未満の脱水汚泥に分離する脱水手段とを有し、前記濃縮槽は、前記有機性汚泥が流入する汚泥流入部を備えるものであり、前記脱水ろ液及び第2濃縮排水は、前記汚泥流入部から濃縮槽内に流入して、第1濃縮排水として系外に排出されるものである、ことを特徴とする汚泥処理設備となる。
【0049】
(第7の実施形態)
第7の実施形態について
図7を参照しつつ説明する。第7の実施形態は、第2の実施形態において脱水手段40に設けられていた加熱手段50が、凝集手段10の前段又は上流側に設けられている点で第2の実施形態と異なる。加熱手段50により加熱された有機性汚泥Aを凝集手段10に供給することにより、汚泥と凝集剤の反応性が高まることから、凝集手段10で添加する凝集剤の添加量を低減することができる。なお、加熱手段50で加熱されて凝集手段10に供給される有機性汚泥は、50℃以上100℃未満となる。
【実施例】
【0050】
第2の実施形態で、添加手段60の凝集剤としてポリ硫酸第二鉄を用い、加熱手段50として温水による直接加熱の手法で濃縮汚泥を加熱して、有機性汚泥(原汚泥)の処理を行い、脱水汚泥の含水率を測定した。測定は、ポリ硫酸第二鉄の添加率と、脱水汚泥の温度を変化させて行った。脱水汚泥の含水率の結果を
図9に示す。
【0051】
結果から、ポリ硫酸第二鉄の添加量を一定とした場合、脱水汚泥の含水率は、温度が高いほど低くなっている。
【0052】
また、同じ第2の実施形態を用いて有機性汚泥(原汚泥)の処理を行い、各処理工程におけるリン酸の濃度を測定した。処理条件として、温水による直接加熱の手法で濃縮汚泥を加熱する加熱手段50の有無、ポリ硫酸第二鉄による添加手段60の有無、脱水ろ液の汚泥流入部22への供給(脱水ろ液の循環)の有無を変えて行った。各処理工程の流量(m3/h)とリン酸の濃度(g/m3)から求めたリン酸の量(g/h)の算出結果を表1に示す。
【0053】
結果から、汚泥を加熱処理することによりリン酸が溶出するため、従来よりも返流水中のリン酸が増加していたが、ポリ硫酸第二鉄が添加された形態では、返流水等からリン酸が除去され、検出限界以下(ND)となっている。
【0054】
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、汚泥処理設備及び汚泥処理方法として利用可能である。