IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コンスタンティア・ピルク・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディトゲゼルシャフトの特許一覧

特許7471284剛性が向上したリサイクル可能なPE包装用フィルム
<>
  • 特許-剛性が向上したリサイクル可能なPE包装用フィルム 図1
  • 特許-剛性が向上したリサイクル可能なPE包装用フィルム 図2
  • 特許-剛性が向上したリサイクル可能なPE包装用フィルム 図3
  • 特許-剛性が向上したリサイクル可能なPE包装用フィルム 図4
  • 特許-剛性が向上したリサイクル可能なPE包装用フィルム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】剛性が向上したリサイクル可能なPE包装用フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20240412BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021519124
(86)(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 EP2019077561
(87)【国際公開番号】W WO2020074688
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】201811038930
(32)【優先日】2018-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】519005196
【氏名又は名称】コンスタンティア・ピルク・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディトゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】グレフェンシュタイン・アヒム
(72)【発明者】
【氏名】シャー・プラグネシュ
(72)【発明者】
【氏名】ジャハ・サケット
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-532616(JP,A)
【文献】特表2019-522583(JP,A)
【文献】特表2010-526915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも60vol%(体積%)のHDPEの第1ラミネート層(4)、および、ポリプロピレンでできた第2ラミネート層(5)を有し、これが共押出しにより第1ラミネート層(4)に貼り付けられてポリエチレンフィルム(2)を形成し、ポリエチレンフィルム(2)の厚さが40μm未満であるリサイクル可能なポリエチレンフィルムであって、
前記第2ラミネート層(5)のポリプロピレンが、ポリエチレン含量が5~30質量%の異相性ポリプロピレンブロック共重合体であり、155℃よりも高い融点を有し、第2ラミネート層(5)の厚さが5μm未満であることを特徴とする、前記ポリエチレンフィルム。
【請求項2】
第1ラミネート層(4)が少なくとも80vol%のHDPEを含むことを特徴とする請求項1に記載のリサイクル可能な前記ポリエチレンフィルム。
【請求項3】
前記第2ラミネート層(5)のポリプロピレンが、160℃よりも高い融点を有することを特徴とする請求項1に記載のリサイクル可能な前記ポリエチレンフィルム。
【請求項4】
前記ポリプロピレンブロック共重合体が、20未満のヘイズ値を有することを特徴とする請求項1に記載のリサイクル可能なポリエチレンフィルム。
【請求項5】
前記ポリプロピレンブロック共重合体が、10未満のヘイズ値を有することを特徴とする請求項4に記載のリサイクル可能なポリエチレンフィルム。
【請求項6】
前記ポリエチレンフィルム(2)の外面において、ポリエチレンフィルム(2)がインプリントされていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のリサイクル可能なポリエチレンフィルム。
【請求項7】
前記第2ラミネート層(5)とは反対側を向く外面において、ポリエチレンフィルム(2)がインプリントされていることを特徴とする、請求項6に記載のリサイクル可能なポリエチレンフィルム。
【請求項8】
前記第1ラミネート層(4)および/または前記第2ラミネート層(5)が、0.1~1質量%の核形成剤を含むことを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のリサイクル可能なポリエチレンフィルム。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載のリサイクル可能なポリエチレンフィルム(2)を有するリサイクル可能な包装用積層体であって、第1ラミネート層(4)において、ポリエチレンフィルム(2)にシール可能なポリエチレンでできたシール層(3)が貼り付けられていることを特徴とする、前記包装用積層体。
【請求項10】
前記ポリエチレンフィルム(2)と前記シール層(3)の間にバリア層(7)が配置されていることを特徴とする請求項に記載のリサイクル可能な包装用積層体。
【請求項11】
前記バリア層(7)が、ポリアミドまたはエチル-ビニルアルコール共重合体からなることを特徴とする請求項10に記載のリサイクル可能な包装用積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも60vol%、好ましくは80vol%のHDPEの第1ラミネート層と、共押出しによって第1ラミネート層のポリエチレンフィルムに貼り付けられたポリプロピレンの第2ラミネート層とを有するリサイクル可能なポリエチレンフィルムであって、ポリエチレンフィルムの厚さが40μm未満であるポリエチレンフィルムに関する。本発明はさらに、このようなポリエチレンフィルムをシール層に貼り付けたリサイクル可能な包装用積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
包装業界では、用途に応じて異なる特性を示す包装フィルムまたは包装用積層体が使用されている。このような包装用フィルムや包装用積層体は、通常、、押出成形、共押出成形(いずれもキャストフィルムとブローフィルムの両方)、ラミネート成形(ラミネート用接着剤と押出ラミネートによる各層の接合)によって製造される多層プラスチックフィルム、およびこれらの混合物である。
【0003】
また、リサイクル性を考慮して、単一の種類のプラスチックを使用した純粋な包装用フィルムや包装用積層体を製造する試みも行われている。例えば、ポリエチレンのみからなる包装用積層体や、ポリエチレンをベースとしたプラスチックとリサイクル性に優れたプラスチックを許容可能な少量で混合したプラスチックからなる包装用積層体などが挙げられる。
【0004】
包装用積層体は、ヒートシールによって包装用積層体からパッケージ(例えば、袋)を作るために、通常、シール層も有している。シール層は、通常、ポリオレフィン、例えば、LLDPE、LDPE、MDPEまたはHDPEのような異なる密度のポリプロピレン(PP)またはポリエチレン(PE)、およびそれらの混合物の形で製造されるが、当然、シール層には異なる材料も使用可能である。シールするため、例えば袋などのパッケージを製造するために、折り畳まれた包装用積層体は、2つの温度制御されたシールジョー(シール顎部)の間で圧縮される。また、容器をカバー蓋で密封する際にも、温度制御されたシールジョーの間で包装用積層体が圧縮される。その後、シール媒体が溶融し、それによって冷却後に隣接するシール層間の結合が形成される。その際、包装機のスループット(処理量)を向上させるためには、当然ながら、シールにかかる時間をできるだけ短くすることが望ましい。例えば、シール温度を高くすれば、シール部の外側から内側への熱伝導がより速くなるため、これを実現することが可能である。しかし、可能な最大シール温度は、特に、シールジョーに面した包装積層体の最外層の材料、特にその材料の融点に依存する。例えば、HDPEの融点は約130℃である。最低限必要なシール温度を80℃と仮定すると(むしろそれを大幅に上回る)、シール範囲(シールが達成されるべき温度範囲)が狭くなる。このことは、一方で処理を難しくし、また他方では達成可能なシーリング時間を短くする。
【0005】
この問題を解決するには、最外層に耐熱性の高い材料、例えばポリエステル(PETなど)を使用することができる。しかし、PET層を持つPE材料で作られた包装用積層体は、リサイクルできないという事実があるため、この方法は除外される。外層のHDPEまたは薄いPP外層にポリプロピレン(PP)を混合すれば、例えばWO2016/156293A1に記載されているように、耐熱性が向上するが、これにはフィルム中に最大20vol%のPPを使用してもリサイクル性に悪影響を及ぼさないことも記載されている。HDPEとシクロオレフィン共重合体(COC)の混合物あれば耐熱性は向上し、COCの添加量が少量であればリサイクル性の観点からも問題ない。しかし、COCは高価であるため、コストが重要な役割を果たす包装用積層板に使用するには、どちらかというと魅力に欠ける。
【0006】
EP2409836B1からは、160℃以上の高融点を有するポリプロピレンブロック共重合体を、ポリプロピレン製の包装用積層体の外層に使用して、シールジョーへの付着を防ぐことが知られている。EP2409836B1では、ポリプロピレンが包装用積層体の材料として使用されているが、これは、それを用いて製造されたパッケージ、例えばバッグを121℃で滅菌するためであり、ポリエチレンはその低い融点のために滅菌可能な包装用積層体の材料としては除外されている。
【0007】
包装用フィルムまたは包装用積層体は、通常、製造時にいくつかの処理工程を経る。例えば、異なる層の接合、印刷、コーティングなどの工程があり、これらは高温で行われることもある。製造において、包装フィルムまたは包装用積層体は、ガイドローラー上での繰り返しの方向転換、ローラー上での繰り返しの巻き取り、繰り返しの温度変化なども含む、全体の製造工程を通過する。その際、包装フィルムまたは包装用積層体は、異なる長手方向の歪みを受けるが、これは時に望ましくない場合もある。例えば、多色印刷プロセスで印刷することにより、望ましくない長手方向の伸びのために見当誤差が大きくなり、印刷画像の品質を損なうことがある。包装フィルムまたは包装積層体の弾性率(E弾性率)およびそれに伴う高いウェブ剛性は、可能な限り高く、好ましくは加工方向に高く、その結果、そのような伸びを低減することができるので、望ましい。高いE弾性率(高いウェブ剛性)は、従来、包装フィルムまたは包装積層体の特別な材料によって、および/または、例えば、延伸などの追加の製造ステップによって達成されていた。
【0008】
70℃でPEフィルムの十分なウェブ剛性を達成するために、WO2016/156293A1においては、2つのHDPE外層の間にLLDPEまたはmLLDPEの中心層を配置し、PEフィルムを少なくとも一方向に延伸することを提案している。延伸によって剛性が十分に向上し、同時にヘイズ値が低下するため、透明性が向上すると考えられる。しかし、延伸は当然ながら追加の処理工程を必要とするため、製造コストが高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】WO2016/156293A1
【文献】EP2409836B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、簡便な方法で製造することができ、改善されたE弾性率および改善されたウェブ剛性を有する、リサイクル可能なPE包装用積層体を開示することである。
【0011】
この目的は、第2ラミネート層のポリプロピレンが、ポリエチレン含量が5~30質量%で、155℃より高い、好ましくは160℃より高い融点を有する異相性(ヘテロ相)ポリプロピレンブロック共重合体であり、かつ第2ラミネート層の厚さが5μm以下であることによって達成される。驚くべきことに、ポリエチレンフィルムや包装用積層体の外面に異相性ポリプロピレンブロック共重合体のこのような薄い層を設けることで、予測通りにシール時の耐熱性が大幅に向上するだけでなく、ポリエチレンフィルムのE弾性率やウェブの剛性も向上することが見いだされた。ポリエチレンフィルムは、HDPE含量が60vol%(60体積%)以上のものを使用すればよく、延伸する必要もなく、一定の層構造を有する必要もない。また、ポリプロピレンブロック共重合体層は、その厚みが薄いため、ポリエチレンフィルムや包装用積層体のリサイクル性に影響を与えない。ポリプロピレンブロック共重合体層は、ポリエチレンの含有量が比較的多く、また、独自の調査により、その下のポリエチレン材料がリサイクル装置のセンサー、例えばNIR(近赤外)センサーによって検出されるのに十分な薄さであることが判明したからである。また、外側のポリプロピレン層は耐熱性が高いため、厚みが薄いにもかかわらずシール温度を大幅に上げることができ、シール時間が短縮されるとともに、シール温度の範囲が大幅に広がるため、シール工程の自由度が高くなる。これにより、外側のポリプロピレン層がシールジョーに付着したり、包装用積層体に不要な視覚的マーキングが発生したりすることなく、シールプロセスをより速く、安全に、柔軟にすることができる。
【0012】
しかし、異相性ポリプロピレンブロック共重合体からなる外側ポリプロピレン層の驚くべき効果は、ポリプロピレン層の厚さが5μm未満と非常に薄いにもかかわらず、ポリエチレンフィルムを延伸する必要なく、さらなる加工の目的のために、HDPEを主成分とするポリエチレンフィルムの弾性率とウェブの剛性が向上し、それに伴って包装用積層体の弾性率とウェブの剛性も向上するという事実から明らかである。異相性ポリプロピレンブロック共重合体とHDPEは、使用されているポリマーの種類のデータシートによれば、ほぼ同じ弾性率を有する。そのため、この2つの材料を組み合わせれば、同じような弾性率が期待できる。しかしながら、驚くべきことに、両方の材料を同時に共押出しすることによって、好ましくはブローフィルム押出しプロセスによって、ポリプロピレンブロック共重合体と共押出しされたポリエチレンフィルムの弾性率は、出発材料の弾性率に基づいて予想されるよりも明らかに高いことが発見された。
【0013】
また、ポリプロピレンブロック共重合体には、ポリエチレンフィルムが十分に低いヘイズ値を持つように、特に20以下、好ましくは10以下の十分に低いヘイズ値を持つタイプのものがある。これは、ポリエチレンフィルムが印刷された画像を透過させるのに十分な透明性を持っているので、反転印刷による印刷性に特に有利である。
【0014】
また、第2ラミネート層および/または第1ラミネート層のポリプロピレンブロック共重合体に核形成剤を添加することにより、耐熱性をさらに高め、ヘイズ値をさらに低下させることができる。
【0015】
以下、本発明の概略的かつ非制限的な実施形態を示す図1図5を参照して、本発明を記載する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明のポリエチレンフィルムを用いた本発明の包装用積層体の有利な実施形態を示す。
図2図2は、本発明の多層ポリエチレンフィルムを示す。
図3図3は、バリア層を有する包装用積層体を示す。
図4図4は、本発明の包装用積層体をシールして作られた袋を示す。
図5図5は、本発明の包装用積層体で作られたカバー蓋をシールした容器の密閉を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をより詳細に説明する一方で、以下のように測定および/または定義されるプラスチックフィルムの特定の特性を、その後の説明で参照する。なお、測定方法については、ASTM(American Society for Testing and Materials)の規格で定められているものを参考にしている。
【0018】
ヤング率またはE弾性率:
この特性は、ASTM D882に基づいて測定され、この規格で定義されている2%の二乗弾性率をここではE弾性率として使用している(単位:MPa)。このE弾性率の測定には、フィルムウェブの長さ100mm×幅25mmのサンプルを使用し、試験速度10mm/分でE弾性率を測定した。共押出しプラスチックフィルムのE弾性率は、通常、機械方向と横方向で異なる。
【0019】
透明度(ヘイズ):
ヘイズ値は、透明なサンプルの透明度を示す指標である。ヘイズ値が高いほど、曇りやすい(透明度が低い)プラスチックフィルムであることを示す。ヘイズ値の測定方法は、ASTM D1003に記載されている。
【0020】
ウェブ剛性
ウェブの剛性(単位:N/mm)は、上記で定義したE弾性率と、測定されたフィルムのウェブの厚さとの積であると理解される。
【0021】
図1は、本発明によるポリエチレンフィルム2と、シール可能なポリエチレンでできた貼り合わされたシール層3とを有する本発明による包装用積層体1を示す。シール層3は、例えば、押出成形または接着剤を用いてポリエチレンフィルム2に積層することができる。押出成形による積層の場合、ポリエチレンフィルム2とシール層3との間に適切な結合剤を設けることができる。また、接着剤による積層の場合には、適当な積層用接着剤が用いられる。
【0022】
本発明のポリエチレンフィルム2は、第1ラミネート層4と、貼り合わされた第2ラミネート層5とからなる。第1ラミネート層4は、ポリエチレン(PE)およびリサイクル性に関して相性の良い(互換性のある)材料で主に構成されている。本発明によれば、第1ラミネート層4は、高密度(HDPE)のポリエチレン(PE)の含有量が60vol%(体積%)以上、好ましくは80vol%以上である。第1ラミネート層4のPE含有量は、100vol%に近づくことができるが、包装用積層体1に含まれる通常の添加剤(スリップ添加剤、アンチブロッキング添加剤、染料、充填剤、核形成剤など)のため、100vol%のPE含有量に達することは通常ない。残りの部分(可能な添加剤は別として)は、包装用積層体1のリサイクル性に悪影響を及ぼさない互換性のあるポリオレフィン材料である。互換性のあるポリオレフィン材料は、原則としてあらゆる種類のポリエチレン、特に一般的なLDPE、LLDPE、mLLDPE、MDPE、およびエチレン共重合体、例えばエチレンビニルアセテート共重合体(EVA)、メタクリル酸エチルエステル(EMA)、エチル/アクリル酸共重合体(EAA)またはエチレン-ブチルアクリレート共重合体(EBA)である。また、互換性のあるポリオレフィン材料として、ポリプロピレン(PP)やシクロオレフィン共重合体(COC)を最大で20vol%の量で使用することも可能である。PPの場合は、少なくとも限定的なリサイクル性を実現するために、エチレンをコモノマーとするポリプロピレンランダム共重合体(通常5~15%)、mLLDPE、LLDPE、HDPEなどの線状PE材料と十分に相溶性のあるポリプロピレンホモポリマーが好ましく用いられる。
【0023】
第1ラミネート層4には、特定の種類のPEを使用することができるが、異なる種類のPEの混合物、または共重合体の形態の異なる種類のPEの混合物を使用することもできる。第1ラミネート層4は、異なる層に同じまたは異なるPE材料、またはそれに適合するポリオレフィン材料を用いて、多層化(押出または共押出)することができる。第1ラミネート層4の厚さは、5~35μmであることが好ましい。
【0024】
第1ラミネート層4は、例えば、図2に示すように、中心PE層4aと2つの隣接するHDPE外層4bとで製造することができる。外層4bは、好ましくは、mLLDPEまたはLLDPEの含有量が低い(例えば5~10vol%)HDPE層、またはmLLDPEまたはLLDPEの追加層を有するHDPE層である。第1ラミネート層4のそのような対称的な構成では、第1ラミネート層4の2つの外側層4bは、例えば、x>1、特にx=1.5、2、3または4のx/1/x構造の形で、中央のPE層4aよりも厚くなるように設計することができる。
【0025】
HDPEは、0.94~0.97g/cmの密度を有するPEであると理解される。他の可能なPEは、例えば、低密度の直鎖状ポリエチレン(LLDPE)(密度が0.87~0.94g/cm)、低密度のポリエチレン(LDPE)(密度が0.915~0.935g/cm)または直鎖状低密度メタロセンポリエチレン(mLLDPE)である。
【0026】
添加剤は少量(最大でも5vol%)しか添加されないため、包装用積層体1のリサイクル性に悪影響を与えることはない。
【0027】
第2ラミネート層5は、ポリエチレンの含有量が5~30重量%の異相性ポリプロピレンブロック共重合体である。よく知られているように、PPブロック共重合体は、多段階重合プロセスによって製造され、ここでは、低α-オレフィンを有する共重合体、この場合はPEが、追加の反応ステップにおいてPPホモポリマーの傍らで重合される。第2ラミネート層5の厚さは、5μm未満である。使用されるポリプロピレンブロック共重合体は、好ましくは20未満、好ましくは10未満のヘイズ値を有し、155℃より高い、好ましくは160℃より高い融点を有することが望ましい。このような特性を有する異相性ポリプロピレンブロック共重合体は、例えば押出成形用の原料として市販されている。
【0028】
添加剤(スリップ添加剤、アンチブロック添加剤、染料、充填剤、核形成剤など)も、第2ラミネート層5に存在することができる。
【0029】
本発明のポリエチレンフィルム2は、プラスチックの特定の特性、例えば透明性(ヘイズ)または耐熱性を改善するために、第2ラミネート層5および/または第1ラミネート層4に、固化工程に影響を与える手段である核形成剤を含有することが特に有利である。耐熱性とは、本質的に、プラスチックフィルムが溶け始める温度を示す。適切な核形成剤を用いれば、ポリプロピレンブロック共重合体でできた第1ラミネート層4および/または第2ラミネート層5の耐熱性を5~10℃向上させることができ、ヘイズ値を数ポイント低下させることができる。代表的な核形成剤は、市販されており、例えば、タルク化合物、ソルビトール化合物、カルボン酸塩、例えば、シクロヘキサン(ジ)カルボン酸の塩やC8~20脂肪族カルボン酸塩などである。核形成剤は、0.01~1質量%の量で添加される。
【0030】
ポリエチレンフィルム2に貼り合わせられた第1ラミネート層4および第2ラミネート層5を伴うポリエチレンフィルム2は、共押出し工程、例えば、ブローフィルム押出し工程またはフラットフィルム押出し工程によって製造される。
【0031】
共押出しの後、ポリエチレンフィルム2は、2つの外面のうちの一方、すなわち、第1の積層層4の外面または第2の積層層5の外面にインプリントされる(刷り込まれる)ことができる。ポリエチレンフィルム2のヘイズ値が低いことは、第1ラミネート層4の第2ラミネート層5とは反対側の面にインプリントされていると有利である(いわゆるリバース印刷である)。この印刷は、例えば、グラビア印刷、レリーフ印刷、オフセット印刷など、従来の印刷工程によって行うことができる。
【0032】
驚くべきことに、ポリエチレンフィルム2の外層としてポリプロピレンブロック共重合体の第2ラミネート層5を用いることにより、耐熱性を高めることができるだけでなく、ウェブの剛性も高めることができるので、ポリエチレンフィルム2の後続の処理、特にインプリント(刷り込み)が容易になることがわかった。そのため、剛性の低い材料への印刷と比較して、より小さい見当合わせ誤差(連続した色塗布の印刷画像のずれ)を達成することもできる。ウェブの剛性、特に処理方向としてのポリエチレンフィルム2の機械方向の剛性が高ければ高いほど、ポリエチレンフィルム2が印刷機でインプリントされる(印刷される)際の伸びが少なくなり、それによって見当精度が向上する。このことは、以下の例示的な実施形態によって実証される。
【実施例
【0033】
ポリエチレンフィルムPE1として、厚さ23μmの純粋なHDPEフィルムを作製した。HDPEとしてThe Dow Chemical Company製のELIT(登録商標)5960Gを使用し、室温(23℃)で機械方向MD(通常は押出方向)および機械方向に直交する横方向TDのE弾性率を測定した。本発明によるポリエチレンフィルムPE2は、さらに、HDPE(再びELITE(登録商標)5960G)の厚さ20μmの第1ラミネート層4と、異相性ポリプロピレンブロック共重合体の厚さ3μmの第2ラミネート層5とを用いて製造され、E弾性率は、再び機械方向MDおよび横方向TDの室温(23℃)で測定された。採用したポリプロピレンブロック共重合体は、ヘイズ値が6、融点が166℃のLyondellBasell社製のMoplen EP310J HPである。ポリエチレンフィルムPE2の厚さは再び23μmとした。その結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
ポリエチレンフィルムPE1,PE2をブローフィルム押出し法による共押出しで製造した後は、ブローアップ工程やブローアップ率の影響で、例えば、機械方向MD(フィルムの長手方向)のE弾性率と、長手方向と横方向の横方向TDのE弾性率が常にわずかに異なる値となる。機械方向のE弾性率がより重要なのは、これはフィルムが通常処理される方向、例えばフィルムが印刷機を通過する方向だからである。ポリエチレンフィルムPE1、PE2は延伸されなかった。
【0036】
ポリエチレンフィルム2の外側に異相性PPブロック共重合体のこのような薄層を設けることにより、予想通り、シールを目的とした包装用積層体の耐熱性を(155℃以上の値に)大幅に向上させることができるだけでなく、ポリエチレンフィルムPE1のウェブ剛性と比較して、ポリエチレンフィルムPE2のE弾性率およびウェブ剛性も向上させることができることが明らかになった。ポリエチレンフィルムPE2のヘイズ値は、ヘイズ値の低いPPブロック共重合体を選択することにより、ポリエチレンフィルムPE1と比較して同様に改善することができる。
【0037】
この結果は、データシートによれば、共押出し用の原料であるHDPEとPPブロック共重合体のE弾性率がほぼ同じであることを考えると、驚くべきことである。したがって、共押出しポリエチレンフィルム2のE弾性率は、純粋なHDPEフィルムのE弾性率とほぼ同じであることも予想される。しかし、比較例の共押出しポリエチレンフィルム2のE弾性率(および同様にウェブの剛性)は、純粋なHDPEフィルムのE弾性率よりも約20%高く、これは予想外であった。
【0038】
この効果は、科学的な証明を必要とすることなく、PEやPPのような部分的に結晶性の熱可塑性プラスチックの場合、材料を速く冷却するほど結晶化度と剛性が低下するという事実に起因する。また、ブローフィルムやフラットフィルムなどの共押出しフィルムの外層部は、押出された後、コア部よりも急速に冷却されるため、外層部の剛性がコア部よりも低下する。しかし、全体的にはポリプロピレンの方がHDPEよりも結晶化度が低い。そのため、共押出しポリエチレンフィルムの冷却による剛性低下効果は、全体としては、外層の異相性ポリプロピレンブロック共重合体の方が、ポリエチレンフィルムのコアであるHDPEよりも低くなる。以上のことから、個々の層の材料のE弾性率と比較して、特に純粋なHDPEフィルムと比較して、共押出しポリエチレンフィルム2のE弾性率が驚くほど高くなっている。E弾性率が高いため、特に純粋なHDPEフィルムと比較して、ウェブの剛性も高くなっている。PPブロック共重合体の第2ラミネート層5の厚さが非常に薄いにもかかわらず、この驚くべき効果が得られる。
【0039】
本発明の包装用積層体1を製造するためには、ポリエチレンフィルム2を、例えばラミネートや押出によって、第1積層層4におけるシール層3に貼り付ける。ポリエチレンフィルム2には、上記のようにインプリントを施すことができるが、必ずしもインプリントを施さなくてもよい。インプリントされるいる場合は、図1に示すように、ポリエチレンフィルム2とシール層3の間にインプリント層6を配置することができる(リバースプリント)。有利な低ヘイズ値のため、ポリエチレンフィルム2は十分な透明性を有しており、インプリント層6上の印刷画像は外部から十分に視認できる。
【0040】
包装用積層体1の第3のラミネート層としてのシール層3は、封止可能なPE材料から主に構成されており、シール層3のポリマーの全量におけるPEの含有量は、添加された鉱物、他の充填剤や添加物を数えずに、少なくとも80vol%となっている。この文脈において、シール可能という言葉は、シール層がポリプロピレンブロック共重合体でできた第2ラミネート層5の溶融温度よりも下(少なくとも40℃、好ましくは50℃、特に好ましくは60℃)で、顕著に溶融することを意味する。異なる種類のPE、例えばLDPE、LLDPE、MDPE、HDPEは、それら自体で、あるいはまた混合物として、あるいは共重合体の形で、あるいはまた複数の層(押出または積層)で使用することができる。シール層3の厚さは、当然ながら包装用積層体1の用途に依存し、典型的には20~100μmである。包装用積層体1の所望のリサイクル性の目的で、シール層3の残りの部分は、(少量の可能な添加物に加えて)少なくとも80vol%のPE材料を除いて、上述したような互換性のあるポリオレフィン材料からなる。シール層3は、例えば押出成形、共押出成形、積層成形などの多層構造にすることができる。
【0041】
ポリエチレンフィルム2および包装用積層体1に、PEとそれと互換性のある材料を使用することにより、特にリサイクル可能な材料を製造することができ、通常の方法で機械的なリサイクルを行うことにより、簡単かつ経済的にリサイクルすることができる。
【0042】
また、ポリプロピレンブロック共重合体でできた包装用積層体1の外層によって、耐熱性を大幅に向上させることができ、その結果、包装用積層体1を密封する際に、密封用ジョーの温度を大幅に上昇させることができる。実験の結果、より高い耐熱性により、第2の積層体層5が、包装用積層体1の外層として作用したり、シールジョーに付着したり、包装用積層体1に不要なマーキングを生じさせたりすることなく、ポリプロピレンブロック共重合体の性質に応じて、シールジョー温度を150℃~160℃まで上昇させることができることが見いだされた。
【0043】
包装用積層体1および/またはポリエチレンフィルム2は、リサイクル性を損なわないのであれば、追加のラミネート層を含むこともできる。例えば、接着力を高めるために、ポリエチレンフィルム2の第2ラミネート層5と第1ラミネート層4との間に化合物層を配置し、特に、包装用積層体1においてもポリエチレンフィルム2の望ましくない剥離を確実に防止することができる。このような化合物層は、ポリエチレンフィルム2および包装用積層体1の靭性をさらに高めることができる。適切な化合物層は、好ましくは、例えば、無水マレイン酸で変性されたポリオレフィン(PEまたはPPなど)、エチル-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-アクリル酸ブチル共重合体(EBA)、または同様のポリオレフィン共重合体などの、リサイクル特性に関してポリエチレンと互換性のあるポリマーをベースにした、極性を高めたポリマーからなる。このような化合物層の厚さは、典型的には1~5μmである。
【0044】
また、図3に示すように、包装用積層体1において、シール層3とポリエチレンフィルム2との間にバリア層7を設けることもできる。バリア層7は、好ましくは、バリアポリマー、すなわち、特に酸素、水素および/または臭気に対して十分なバリア特性を有するポリマーからなる。バリアポリマーは、好ましくは、ポリアミド(PA)またはエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)である。バリアポリマーとしては、EVOHが好ましい。バリア層7を使用する場合、包装用積層体1中のバリアポリマーの含有量が高くなりすぎてリサイクル性が損なわれないように、バリア層7が包装用積層体1の最大5vol%に構成することが重要である。
【0045】
さらに、バリア効果を高めるために、シール層3に面する側のバリア層7を(好ましくはアルミニウムで)金属化すること、ならびに/または、バリア効果および/または接着力を高めるために(例えばアルミナまたは酸化ケイ素で)コーティングすることが可能である。
【0046】
接着性を高める目的で、例えば上述のような適切な化合物層8を、バリア層7とポリエチレンフィルム2の第1ラミネート層4(インプリントされている場合も)との間(図3の場合)、および/またはバリア層7とシール層3との間に追加的に存在させることができる。バリア層7は、例えば、シール層3に積層した後、ポリエチレンフィルム2に貼り付けることができる。
【0047】
ポリエチレンフィルム2は、例えば、適切なラミネート剤を用いたラミネート、押出ラミネート、または押出コーティングによって、シール層3(バリア層7も)に取り付けることができる。ラミネーション(積層)を行う際には、シール層3は、押出ラミネーションの場合には、適切なラミネーション接着剤、例えば、ポリウレタン接着剤またはポリオレフィン共重合体をベースとするものによって、ポリエチレンフィルム2に貼り付けられる。ラミネーション接着剤の厚さは、ポリウレタンに基づく通常の接着剤を使用している間は2~5g/m2、押出ラミネーションにおいては5~20g/m2であることが好ましい。押出コーティングの場合、シール層3はポリエチレンフィルム2上に直接押し出される。
【0048】
シール層3にバリア層7が存在する場合、シール層3をポリエチレンフィルム2上に製造後すぐにコーティングすることが有利であり、それによってバリア層7の吸水率を低下させることができる。
【0049】
ポリエチレンフィルム2は、好ましくはブローフィルム押出プロセスによって製造されるが、これは製造の結果としてエッジのオフカットが少なくなるためである。また、MFI(マスフローインデックス)が3未満のより粘度の高いHDPE材料を、ブローフィルム押出しで使用することも可能である。このようなHDPE材料は、より高い分子量と優れた機械的特性を有しており、ポリエチレンフィルム2の使用、例えば包装用積層体1での使用に有利である。
【0050】
本発明の包装用積層体1は、通常、例えば、食品用のパッケージ10を製造するために使用される。これを達成するために、包装用積層体1は、図4において縦方向シール12および2つの横方向シール13を有する袋11の例に示すように、例えば折り曲げてシールすることにより、切断してパッケージ10に形成することができる。しかし、包装用積層体1は、既知の連続包装機、例えば、いわゆるフォームフィル機やチューブラーバッグ機で直接処理することもできる。シールを行うために、よく知られているように、折り畳まれた包装用積層体1のシール領域は、制御された温度に維持された2つのシールジョーの間で押し合わされる。その際、高い耐熱性を有する包装用積層体1の第2のラミネート層5がシールジョーに対向する。また、包装用積層体1を用いて、図5に示すように、包装の一形態として容器20を覆う目的で打ち抜かれるカバー蓋21を製造することも可能である。すべての例において、包装用積層体1のシール層3は、それ自身のシール層(例えば、バッグ、サック、ポーチなどの折り畳まれた包装の場合)または別のシール層(例えば、容器20のシールエッジ22)にシールされる。シール層3は、第2ラミネート層5を外側にして、完成したパッケージ10内の被包装物に面している。
なお、本発明は以下の項目を含む。
[項目1]
少なくとも60vol%(体積%)、好ましくは80vol%のHDPEの第1ラミネート層(4)、および、ポリプロピレンでできた第2ラミネート層(5)を有し、これが共押出しにより第1ラミネート層(4)に貼り付けられてポリエチレンフィルム(2)を形成し、ポリエチレンフィルム(2)の厚さが40μm未満であるリサイクル可能なポリエチレンフィルムであって、
前記第2ラミネート層(5)のポリプロピレンが、ポリエチレン含量が5~30質量%の異相性ポリプロピレンブロック共重合体であり、155℃よりも高く、好ましくは160℃よりも高い融点を有し、第2ラミネート層(5)の厚さが5μm未満であることを特徴とする、前記ポリエチレンフィルム。
[項目2]
前記ポリプロピレンブロック共重合体が、20未満、好ましくは10未満のヘイズ値を有することを特徴とする項目1に記載のリサイクル可能なポリエチレンフィルム。
[項目3]
前記ポリエチレンフィルム(2)の外面において、好ましくは前記第2ラミネート層(5)とは反対側を向く外面において、ポリエチレンフィルム(2)がインプリントされていることを特徴とする、項目1または2に記載のリサイクル可能なポリエチレンフィルム。
[項目4]
前記第1ラミネート層(4)および/または前記第2ラミネート層(5)が、0.1~1質量%の核形成剤を含むことを特徴とする、項目1~3のいずれか1項に記載のリサイクル可能なポリエチレン。
[項目5]
項目1~4のいずれか1項に記載のリサイクル可能なポリエチレンフィルム(2)を有するリサイクル可能な包装用積層体であって、第1ラミネート層(4)において、ポリエチレンフィルム(2)にシール可能なポリエチレンでできたシール層(3)が貼り付けられていることを特徴とする、前記包装用積層体。
[項目6]
前記ポリエチレンフィルム(2)と前記シール層(3)の間にバリア層(7)が配置されていることを特徴とする項目5に記載のリサイクル可能な包装用積層体。
[項目7]
前記バリア層(7)が、ポリアミドまたはエチル-ビニルアルコール共重合体からなることを特徴とする項目6に記載のリサイクル可能な包装用積層体。
図1
図2
図3
図4
図5