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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】抗LIV1免疫細胞癌療法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20240412BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240412BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240412BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240412BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240412BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240412BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240412BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240412BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240412BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20240412BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240412BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20240412BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240412BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20240412BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N5/0783
A61K35/17
A61K38/02
A61K48/00
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P35/02
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N15/09 110
C07K14/705
C07K16/28
C07K19/00
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021523759
(86)(22)【出願日】2019-11-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 IB2019059586
(87)【国際公開番号】W WO2020095249
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】62/756,723
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518370079
【氏名又は名称】クリスパー セラピューティクス アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン アレクサンダー テレット
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン サガート
【審査官】北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/073393(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/161007(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00-5/28,15/00-15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
(i)キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸、ここで、前記CARがLIV1に特異的に結合する外部ドメインを含み、ここで前記CARの外部ドメインは抗LIV1一本鎖可変フラグメント(scFv)を含み、ここで前記抗LIV1scFvが、配列番号90に記載のVHと、配列番号88に記載のVLとを含み; 及び
(ii)破壊されたT細胞受容体アルファ鎖定常領域(TRAC)遺伝子及び破壊されたベータ-2-ミクログロブリン(β2M)遺伝子;
を含む、前記遺伝的に操作されたT細胞の集団。
【請求項2】
前記抗LIV1 scFvは、配列番号83及び86のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項に記載の遺伝的に操作されたT細胞の集団。
【請求項3】
前記抗LIV1 scFvは、配列番号83のアミノ酸配列を含む、請求項に記載の遺伝的に操作されたT細胞の集団。
【請求項4】
前記CARは、CD28共刺激ドメイン又は41BB共刺激ドメインをさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の遺伝的に操作されたT細胞の集団。
【請求項5】
前記CARは、CD3ζ細胞質シグナル伝達ドメインをさらに含む、請求項に記載の遺伝的に操作されたT細胞の集団。
【請求項6】
前記CARは、配列番号105及び109のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の遺伝的に操作されたT細胞の集団。
【請求項7】
前記CARは、配列番号105のアミノ酸配列を含む、請求項に記載の遺伝的に操作されたT細胞の集団。
【請求項8】
前記CARは、配列番号104若しくは108のいずれか1つのヌクレオチド配列又は配列番号104若しくは108と少なくとも90%同一である核酸配列を含むヌクレオチド配列によってコードされる、請求項1~のいずれか一項に記載の遺伝的に操作されたT細胞の集団。
【請求項9】
前記CARをコードする前記核酸は、前記破壊されたTRAC遺伝子に挿入される、請求項1~のいずれか一項に記載の遺伝的に操作されたT細胞の集団。
【請求項10】
前記破壊されたTRAC遺伝子は、配列番号107及び111のいずれか1つのヌクレオチド配列及び/又は配列番号104及び108のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の遺伝的に操作されたT細胞の集団。
【請求項11】
前記破壊されたβ2M遺伝子は、配列番号9~14のいずれか1つから選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の遺伝的に操作されたT細胞の集団。
【請求項12】
ヒトT細胞である、請求項1~1のいずれか一項に記載の遺伝的に操作されたT細胞の集団。
【請求項13】
請求項1~1のいずれか一項に記載の遺伝的に操作されたT細胞を含む細胞の集団であって、
(i)前記集団の遺伝的に操作されたT細胞の少なくとも15%又は少なくとも50%は、前記CARを発現し;
(ii)前記集団の遺伝的に操作されたT細胞の少なくとも50%は、検出可能なレベルのT細胞受容体(TCR)タンパク質を発現しない、及び/又は
(iii)前記集団の遺伝的に操作されたT細胞の少なくとも50%は、検出可能なレベルのβ2Mタンパク質を発現しない、前記集団。
【請求項14】
請求項1~1のいずれか一項に記載の遺伝的に操作されたT細胞の集団を作製する方法であって、
(a)T細胞に、
(i)RNA誘導型ヌクレアーゼと、
(ii)TRAC遺伝子を標的とするgRNA及びβ2M遺伝子を標的とするgRNAと、
(iii)LIV1に特異的に結合する外部ドメインを含むCARをコードする核酸を含むドナー鋳型を含み、LIV1に特異的に結合する前記外部ドメインが、配列番号90に記載のVH及び配列番号88に記載のVLを含む、ベクターと
を送達すること、及び
(b)破壊されたTRAC遺伝子及び破壊されたβ2M遺伝子を有し、且つ前記CARを発現する遺伝的に操作されたT細胞を作製すること
を含む、方法。
【請求項15】
前記TRAC遺伝子を標的とする前記gRNAは、配列番号18若しくは19のヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号40のヌクレオチド配列を標的とするか;又は
前記β2M遺伝子を標的とする前記gRNAは、配列番号20若しくは21のヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号41のヌクレオチド配列を標的とする、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ドナー鋳型は、配列番号63、64、107及び111のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、請求項1又は1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記RNA誘導型ヌクレアーゼは、Cas9ヌクレアーゼである、請求項1416のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記Cas9ヌクレアーゼが、S.pyogenes Cas9ヌクレアーゼである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
対象の癌の治療に使用するための遺伝的に操作されたT細胞の集団であって、前記遺伝的に操作されたT細胞が請求項1~13のいずれか一項に記載される前記遺伝的に操作されたT細胞の集団。
【請求項20】
前記対象が、ヒト癌患者である、請求項19に記載の使用のための遺伝的に操作されたT細胞の集団。
【請求項21】
前記癌は、膵癌、胃癌、卵巣癌、子宮癌、乳癌、前立腺癌、精巣癌、甲状腺癌、上咽頭癌、非小細胞肺(NSCLC)、膠芽腫、神経細胞、軟部肉腫、白血病、リンパ腫、黒色腫、結腸癌、結腸腺癌、脳膠芽腫、肝細胞癌、肝臓胆管癌、骨肉腫、胃癌、食道扁平上皮癌、進行期の膵癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、肺小細胞癌、腎癌及び肝内胆道癌からなる群から選択される、請求項19又は2に記載の使用のための遺伝的に操作されたT細胞の集団。
【請求項22】
前記癌は、LIV1を発現する癌細胞を含む、請求項1921のいずれか一項に記載の使用のための遺伝的に操作されたT細胞の集団。
【請求項23】
前記遺伝的に操作されたT細胞が前記対象に対して同種である、請求項1922のいずれか一項の使用のための遺伝的に操作されたT細胞の集団。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年11月7日に出願された米国仮特許出願第62/756,723号明細書の利益を主張し、この開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子的に提出された資料の参照による組み込み
本開示の一部である配列表は、テキストファイルとして本明細書と同時に提出されている。この配列表を含むテキストファイルの名称は、「CT113_Seqlisting.txt」であり、このテキストファイルは、2019年11月7に作成されており、且つ191,166バイトのサイズである。この配列表の主題は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は、遺伝的に改変されたT細胞を使用して、癌細胞をより特異的且つ効率的に標的化して死滅させる。T細胞が血液から回収された後、この細胞は、その表面上にCARを含むように操作される。CARは、CRISPR/Cas9遺伝子編集技術を使用してT細胞に導入され得る。これらの異質遺伝子型のCAR T細胞が患者に注射されると、受容体は、T細胞が癌細胞を死滅させることを可能にする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
高度に保存された膜貫通亜鉛輸送タンパク質のZIPファミリのメンバーであるLIV1は、エストロゲン受容体陽性乳癌及びリンパ節の腫瘍において高レベルで発現される。さらに、LIV1等の亜鉛輸送体の異常な発現により、無秩序なZnの摂取又は欠乏が引き起こされることが知られており、これにより、癌で起こるような無秩序な増殖が引き起こされる。そのため、LIV1は、癌の標的化に望ましい膜貫通タンパク質である。実際に、LIV-1タンパク質は、乳癌、前立腺癌、扁平上皮腫瘍及び神経細胞腫瘍に関与している。
【0005】
本開示のいくつかの態様は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を含む操作されたT細胞であって、このCARは、LIV1に特異的に結合する外部ドメインを含む、操作されたT細胞を提供する。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、破壊されたT細胞受容体アルファ鎖定常領域(TRAC)遺伝子をさらに含む。例えば、TRAC遺伝子は、CARをコードする核酸の挿入によって破壊され得る。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、破壊されたベータ-2-ミクログロブリン(β2M)遺伝子をさらに含む。
【0006】
CARの外部ドメインは、いくつかの実施形態では、抗LIV1抗体を含む。いくつかの実施形態では、抗LIV1抗体は、抗LIV1一本鎖可変断片(scFv)である。抗LIV1 scFvは、いくつかの実施形態では、配列番号54、70、83又は86のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗LIV1 scFvは、配列番号55若しくは90のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)及び/又は配列番号56若しくは88のいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、抗LIV1 scFvは、配列番号57、配列番号58及び/若しくは配列番号59のCDRアミノ酸配列を含むVHを含み、且つ/又は抗LIV1 scFvは、配列番号60、配列番号61及び/若しくは配列番号62のCDRアミノ酸配列を含むVL配列を含む。
【0007】
CARは、いくつかの実施形態では、CD3ζ細胞質シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARは、CD28共刺激ドメイン又は41BB共刺激ドメインを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子は、配列番号63、64、107若しくは111のいずれか1つのヌクレオチド配列を含み、且つ/又はCARは、配列番号49、51、104若しくは108のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、破壊されたβ2M遺伝子は、配列番号9~14のいずれか1つから選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む。
【0009】
同様に本明細書で提供されるのは、いくつかの態様では、操作されたT細胞(例えば、抗LIV1 CARをコードする核酸を含む)の集団であって、この集団の操作されたT細胞の少なくとも25%又は少なくとも50%は、CARを発現する、集団である。いくつかの態様では、この集団の操作されたT細胞の少なくとも15%又は少なくとも50%は、CARを発現する。例えば、この集団の操作されたT細胞の少なくとも70%は、CARを発現する。別の例では、この集団の操作されたT細胞の少なくとも30%は、CARを発現する。
【0010】
いくつかの実施形態では、集団の操作されたT細胞の少なくとも25%は、少なくとも7日間又は少なくとも14日間のインビトロでの増殖後にCARを発現する。
【0011】
いくつかの実施形態では、集団の操作されたT細胞の少なくとも50%は、検出可能なレベルのT細胞受容体(TCR)タンパク質を発現しない。例えば、集団の操作されたT細胞の少なくとも90%は、検出可能なレベルのTCRタンパク質を発現し得ない。
【0012】
いくつかの実施形態では、集団の操作されたT細胞の少なくとも50%は、検出可能なレベルのβ2Mタンパク質を発現しない。例えば、集団の操作されたT細胞の少なくとも70%は、検出可能なレベルのβ2Mタンパク質を発現し得ない。
【0013】
いくつかの実施形態では、集団の操作されたT細胞は、LIV1を発現する癌細胞の集団とインビトロで共培養された場合、この集団の癌細胞の少なくとも50%の細胞溶解を誘発する。例えば、集団の操作されたT細胞は、集団の癌細胞の少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%の細胞溶解を誘発し得る。いくつかの実施形態では、集団の操作されたT細胞は、癌細胞の集団とインビトロで共培養された場合、IFNγを分泌する。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞対癌細胞の比は、1:1~2:1である。癌細胞は、例えば、肉腫細胞又は乳癌細胞であり得る。他の癌細胞が標的とされ得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、集団の操作されたT細胞の増殖能は、対照細胞の増殖能の10%以内である。
【0015】
本開示の他の態様は、本明細書で説明されている操作されたT細胞の集団を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象の体重のパーセントは、投与の5~10日後、対象の最初の体重の10%内であり、この対象の最初の体重は、投与時の対象の体重である。いくつかの実施形態では、対象は、ヒト対象である。いくつかの態様では、対象は、癌を有する。この癌は、例えば、LIV1を発現し得る。
【0016】
本開示のさらなる態様は、操作されたT細胞を作製する方法であって、(a)T細胞に、RNA誘導型ヌクレアーゼと、TRAC遺伝子を標的とするgRNAと、LIV1に特異的に結合する外部ドメインを含むCARをコードする核酸を含むドナー鋳型を含むベクターとを送達することであって、CARをコードする核酸は、TRAC遺伝子に対する左及び右の相同アームと隣接する、送達すること、及び(b)操作されたT細胞を作製することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子を標的とするgRNAは、配列番号18若しくは19のヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号40のヌクレオチド配列を標的とする。
【0017】
いくつかの実施形態では、この方法は、T細胞に、β2M遺伝子を標的とするgRNAを送達することをさらに含む。いくつかの実施形態では、β2M遺伝子を標的とするgRNAは、配列番号20若しくは21のヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号41のヌクレオチド配列を標的とする。
【0018】
いくつかの実施形態では、RNA誘導型ヌクレアーゼは、Cas9ヌクレアーゼ、任意選択的にS.ピオゲネス(S.pyogenes)Cas9ヌクレアーゼである。
【0019】
いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、配列番号63、64、107又は111のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、CARは、配列番号49、51、104又は108のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、編集された細胞集団の細胞表面でのTRAC、β2M及び抗Liv1a CARの発現レベルを評価するためのフローサイトメトリーの結果を示す。
図2図2A-2Bは、抗Liv1a CAR T細胞(特にCTX971コンストラクト、CTX975コンストラクト及びCTX976コンストラクトを発現するもの)がA498細胞系統(図2A)及びZR-75-1細胞系統(図2B)に対する強力な細胞毒性を示したことを示す。
図3図3A-3Dは、標的細胞系統A498及びZR-75-1と共培養された場合の抗Liv1a CAR T細胞のサイトカイン分泌を示す。図3A及び図3Bは、A498細胞系統(図3A)及びZR-75-1細胞系統(図3B)におけるエフェクターサイトカインインターフェロン-γ(IFN-γ)の分泌を示す。図3C及び図3Dは、A498細胞系統(図3C)及びZR-75-1細胞系統(図3D)におけるエフェクターサイトカインインターロイキン-2(IL-2)の分泌を示す。
図4図4は、scFVコンストラクト(VL及びVH)-971(配列番号54);973(配列番号82);975(配列番号83);977(配列番号84)のアラインメントを示す。
図5図5は、scFVコンストラクト(VH及びVL)-979(配列番号70);974(配列番号85);976(配列番号86);978(配列番号87)、972(配列番号127)のアラインメントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
LIV1癌抗原
いくつかの実施形態では、本開示のT細胞は、LIV1を標的とするように設計されたキメラ抗原受容体(CAR)で操作されている。LIV1(Solute Carrier Family 39 Member 6、SLC39A6、ZIP6及びLIV-1としても既知である)は、高度に保存された膜貫通亜鉛輸送タンパク質のZIPファミリのメンバーである。LIV1は、乳癌、例えばエストロゲン受容体陽性乳癌、前立腺癌、例えば皮膚、膀胱、肺、子宮頸部、子宮内膜、頭頸部及び胆道の扁平上皮腫瘍並びに神経細胞腫瘍において高レベルで発現される。特に、LIV1は、正常組織(例えば、非癌性の乳房、前立腺及び精巣)では発現が制限されている。そのため、LIV1は、癌の標的化に望ましい膜貫通タンパク質である。実際に、LIV-1タンパク質は、乳癌、前立腺癌、扁平上皮腫瘍及び神経細胞腫瘍に関与している。
【0023】
そのため、いくつかの実施形態では、本開示のT細胞は、抗LIV1抗体(例えば、抗LIV1 scFv)を含むCARを発現するように操作されている。いくつかの実施形態では、この抗LIV1抗体は、配列番号53、69、97、102、106、110、114又は118のいずれか1つの配列によってコードされる抗LIV1 scFvである。いくつかの実施形態では、この抗LIV1抗体は、配列番号54、70、82、83、84、85、86又は87のいずれか1つの配列を含む抗LIV1 scFvである。いくつかの実施形態では、この抗LIV1抗体は、配列番号55、90又は98のいずれか1つのアミノ酸配列を含むVHを含む抗LIV1 scFvである。いくつかの実施形態では、この抗LIV1抗体は、配列番号56、88又は128のいずれか1つのアミノ酸配列を含むVLを含む抗LIV1 scFvである。いくつかの実施形態では、抗LIV1抗体を含むCARは、配列番号49、51、65、67、95、100、104、108、112又は116のいずれか1つの配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、抗LIV7抗体を含むCARは、配列番号49、51、65、67、95、100、104、108、112又は116と少なくとも90%同一である核酸を含む配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、抗LIV1抗体を含むCARは、配列番号49、51、65、67、95、100、104、108、112又は116のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、抗LIV1抗体を含むCARは、米国特許第9,228,026号明細書で説明されているような抗LIV1抗体を含む。
【0024】
多重遺伝子編集
本開示の操作されたT細胞は、いくつかの実施形態では、例えば複数の遺伝子において複数の遺伝子編集を含む。例えば、操作されたT細胞は、破壊されたT細胞受容体アルファ鎖定常領域(TRAC)遺伝子、破壊されたベータ-2-ミクログロブリン(β2M)遺伝子、破壊されたプログラム細胞死-1(PD-1若しくはPDCD1)遺伝子、破壊されたCD70遺伝子又は前述の破壊された遺伝子の2つ以上の任意の組合せを含み得る。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、破壊されたTRAC遺伝子、破壊されたβ2M遺伝子及び破壊されたCD70遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、破壊されたTRAC遺伝子、破壊されたβ2M遺伝子及び破壊されたPD-1遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、破壊されたTRAC遺伝子、破壊されたβ2M遺伝子、破壊されたCD70遺伝子及び破壊されたPD-1遺伝子を含む。
【0025】
遺伝子破壊は、遺伝子編集(例えば、1つ又は複数のヌクレオチドを挿入するか又は欠失させるCRISPR/Cas遺伝子編集を使用する)を介した遺伝子改変を包含することを理解すべきである。いくつかの実施形態では、破壊された遺伝子とは、機能性タンパク質をコードしない遺伝子である。いくつかの実施形態では、破壊された遺伝子を含む細胞は、この遺伝子によってコードされる検出可能なレベル(例えば、抗体による、例えばフローサイトメトリーによる)のタンパク質を(例えば、細胞表面で)発現しない。検出可能なレベルのタンパク質を発現しない細胞は、ノックアウト細胞と呼ばれ得る。例えば、β2M遺伝子編集を有する細胞は、β2Mタンパク質が、β2Mタンパク質に特異的に結合する抗体を使用して細胞表面で検出され得ない場合、β2Mノックアウト細胞とみなされ得る。
【0026】
本明細書で提供されるのは、いくつかの実施形態では、一定のパーセンテージの細胞が編集されており(例えば、β2M遺伝子が編集されており)、結果として特定の遺伝子及び/又はタンパク質を発現しない一定のパーセンテージの細胞がもたらされる細胞の集団である。いくつかの実施形態では、遺伝子編集された細胞の集団の少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は85%)の細胞は、β2Mノックアウト細胞である。いくつかの実施形態では、この集団の少なくとも50%の細胞(例えば、T細胞)は、検出可能なレベルのβ2Mタンパク質を発現しない。いくつかの実施形態では、遺伝子編集された細胞の集団の少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%の細胞は、β2Mノックアウト細胞であり得る。
【0027】
細胞においてゲノム欠失をもたらす(例えば、細胞において遺伝子をノックアウトする)ためにCRISPR-Cas遺伝子編集技術を使用する方法は、既知である(Bauer DE et al.Vis.Exp.2015;95;e52118)。
【0028】
TRAC遺伝子編集
いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、破壊されたTRAC遺伝子を含む。この破壊は、TCRの機能喪失をもたらし、且つこの操作されたT細胞に同種移植への非アロ反応性及び適合性を与え、移植片対宿主疾患のリスクを最小化する。いくつかの実施形態では、内在性のTRAC遺伝子の発現は、移植片対宿主反応を予防するために除去される。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子発現における破壊は、キメラ抗原受容体(CAR)を(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター及びドナー鋳型を使用して)TRAC遺伝子にノックインすることによりもたらされる。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子発現における破壊は、TRACゲノム領域を標的とするgRNAによりもたらされる。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子発現におけるゲノム欠失は、キメラ抗原受容体(CAR)を(例えば、AAVベクター及びドナー鋳型を使用して)TRAC遺伝子にノックインすることによりもたらされる。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子発現における破壊は、TRACゲノム領域を標的とするgRNA及びキメラ抗原受容体(CAR)をTRAC遺伝子にノックインすることによりもたらされる。
【0029】
TRAC遺伝子においてゲノム破壊をもたらすために本明細書に記載されているように使用され得る改変及び未改変のTRAC gRNA配列の非限定的な例を表4に列挙する(例えば、配列番号18及び19)。また、参照により本明細書に組み込まれる、2018年5月11日に出願された国際出願番号PCT/米国特許出願公開第2018/032334号明細書も参照されたい。他のgRNA配列は、14番染色体上に位置するTRAC遺伝子配列を使用して設計され得る(GRCh38:14番染色体:22,547,506~22,552,154;.Ensembl;ENSG00000277734)。いくつかの実施形態では、TRACゲノム領域を標的とするgRNAにより、mRNA又はタンパク質の発現を破棄する、TRAC遺伝子におけるインデルが生じる。
【0030】
いくつかの実施形態では、操作されたT細胞の集団の少なくとも50%は、検出可能なレベルのT細胞受容体(TCR)表面タンパク質を発現しない。例えば、集団の少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%は、検出可能なレベルのTCR表面タンパク質を発現し得ない。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞の集団の50%~100%、50%~90%、50%~80%、50%~70%、50%~60%、60%~100%、60%~90%、60%~80%、60%~70%、70%~100%、70%~90%、70%~80%、80%~100%、80%~90%又は90%~100%は、検出可能なレベルのTCR表面タンパク質を発現しない。
【0031】
いくつかの実施形態では、TRACゲノム領域を標的とするgRNAにより、下記の表1の配列から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、TRAC遺伝子におけるインデルが生じる。
【0032】
【表1】
【0033】
いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、未改変のT細胞と比較して、TRAC遺伝子における欠失を含む。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、未改変のT細胞と比較して、TRAC遺伝子において、15~30個の塩基対の欠失を含む。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、未改変のT細胞と比較して、TRAC遺伝子において、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30個の塩基対の欠失を含む。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、未改変のT細胞と比較して、TRAC遺伝子において、30個超の塩基対の欠失を含む。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、未改変のT細胞と比較して、TRAC遺伝子において、20個の塩基対の欠失を含む。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、未改変のT細胞と比較して、TRAC遺伝子において、配列番号92(AGAGCAACAGTGCTGTGGCC)の欠失を含む。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、未改変のT細胞と比較して、TRAC遺伝子において、配列番号92(AGAGCAACAGTGCTGTGGCC)を含む欠失を含む。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、未改変のT細胞と比較して、TRAC遺伝子において、配列番号40の欠失を含む。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、未改変のT細胞と比較して、TRAC遺伝子において、配列番号40を含む欠失を含む。
【0034】
β2M遺伝子編集
いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、破壊されたβ2M遺伝子を含む。β2Mは、MHC I複合体の共通の(不変の)構成要素である。遺伝子編集によりβ2M遺伝子の発現が破壊されると、宿主対治療用異質遺伝子型T細胞反応が予防され、異質遺伝子型T細胞の持続の増加がもたらされる。いくつかの実施形態では、内在性のβ2M遺伝子の発現は、宿主対移植片反応を予防するために除去される。
【0035】
β2M遺伝子においてゲノム破壊をもたらすために、本明細書に記載されているように使用され得る改変及び未改変のβ2M gRNA配列の非限定的な例を表4に列挙する(例えば、配列番号20及び21)。また、参照により本明細書に組み込まれる、2018年5月11日に出願された国際出願番号PCT/米国特許出願公開第2018/032334号明細書も参照されたい。他のgRNA配列は、15番染色体上に位置するβ2M遺伝子配列を使用して設計され得る(GRCh38の座標:15番染色体:44,711,477-44,718,877;Ensembl:ENSG00000166710)。
【0036】
いくつかの実施形態では、β2Mゲノム領域を標的とするgRNAにより、mRNA又はタンパク質の発現を破壊する、β2M遺伝子におけるインデルがもたらされる。
【0037】
いくつかの実施形態では、操作されたT細胞の集団の少なくとも50%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのβ2M表面タンパク質を発現しない。例えば、集団の少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのβ2M表面タンパク質を発現し得ない。いくつかの実施形態では、集団の50%~100%、50%~90%、50%~80%、50%~70%、50%~60%、60%~100%、60%~90%、60%~80%、60%~70%、70%~100%、70%~90%、70%~80%、80%~100%、80%~90%又は90%~100%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのβ2M表面タンパク質を発現しない。
【0038】
いくつかの実施形態では、編集されたβ2M遺伝子は、下記の表2の配列から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む。
【0039】
【表2】
【0040】
PD-1遺伝子編集
PD-1は、活性化T細胞において下方制御される免疫チェックポイント分子であり、T細胞応答を弱めるか又は止める役割を果たす。遺伝子編集によりPD-1が破壊されると、より多くの持続的な及び/若しくは強力な治療的T細胞応答がもたらされ、且つ/又は対象における免疫抑制が低減される可能性がある。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、破壊されたPD-1遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、内在性のPD-1遺伝子の発現は、本開示のCAR T細胞の抗腫瘍効果を増強するめに除去される。
【0041】
PD-1遺伝子においてゲノム欠失をもたらすために本明細書に記載されているように使用され得る改変及び未改変のPD-1 gRNA配列の非限定的な例を表4に列挙する(例えば、配列番号22及び23)。また、参照により本明細書に組み込まれる、2018年5月11日に出願された国際出願番号PCT/米国特許出願公開第2018/032334号明細書も参照されたい。他のgRNA配列は、2番染色体上に位置するPD-1遺伝子配列を使用して設計され得る(GRCh38の座標:2番染色体:241,849,881~241,858,908;Ensembl:ENSG00000188389)。
【0042】
いくつかの実施形態では、PD-1ゲノム領域を標的とするgRNAにより、PD-1 mRNA又はタンパク質の発現を破壊する、PD-1遺伝子におけるインデルがもたらされる。
【0043】
いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、破壊されたPD-1遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞の集団の操作されたT細胞の少なくとも50%は、検出可能なレベルのPD-1表面タンパク質を発現しない。例えば、集団の少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのPD-1表面タンパク質を発現し得ない。いくつかの実施形態では、集団の50%~100%、50%~90%、50%~80%、50%~70%、50%~60%、60%~100%、60%~90%、60%~80%、60%~70%、70%~100%、70%~90%、70%~80%、80%~100%、80%~90%又は90%~100%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのPD-1表面タンパク質を発現しない。
【0044】
CD70遺伝子編集
表面抗原分類70(CD70)は、腫瘍壊死因子スーパーファミリのメンバーであり、且つその発現は、活性化T及びBリンパ球並びに成熟樹状細胞に限定される。CD70は、血液腫瘍上及び癌腫上でも検出されている。CD70は、そのリガンドであるCD27との相互作用を通して、腫瘍細胞及び制御性T細胞の生存に関与している。遺伝子編集によりCD70が破壊されると、細胞増殖が増加し、且つ細胞枯渇が減少する。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、破壊されたCD70遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、内在性のCD70遺伝子の発現は、本開示のCAR T細胞の抗腫瘍効果を増強するめに除去される。いくつかの実施形態では、CD70ゲノム領域を標的とするgRNAにより、CD70 mRNA及び/又はタンパク質の発現を破壊する、CD70遺伝子の部又は周囲におけるインデルがもたらされる。
【0045】
CD70遺伝子においてゲノム欠失をもたらすために本明細書に記載されているように使用され得る改変及び未改変のCD70 gRNA配列の非限定的な例を表4に列挙する(例えば、配列番号24~27)。他のgRNA配列は、19番染色体上に位置するCD70遺伝子配列を使用して設計され得る(GRCh38の座標:19番染色体:6,583,183~6,604,103;Ensembl:ENSG00000125726)。
【0046】
いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、破壊されたCD70遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞の集団の少なくとも50%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのCD70表面タンパク質を発現しない。例えば、集団の少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのCD70表面タンパク質を発現し得ない。いくつかの実施形態では、集団の50%~100%、50%~90%、50%~80%、50%~70%、50%~60%、60%~100%、60%~90%、60%~80%、60%~70%、70%~100%、70%~90%、70%~80%、80%~100%、80%~90%又は90%~100%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのCD70表面タンパク質を発現しない。
【0047】
細胞表現型
いくつかの実施形態では、細胞の集団内の1つ又は複数の遺伝子編集により、細胞の増殖能、細胞の枯渇、細胞の生存能、細胞溶解能(例えば、サイトカイン産生及び/若しくは放出を増加させる)又はこれらの任意の組合せにおける変化と関連する表現型がもたらされる。
【0048】
いくつかの実施形態では、本開示の操作されたT細胞は、対照T細胞と比較して、少なくとも20%高い細胞増殖能を示す。例えば、操作されたT細胞は、対照T細胞と比較して、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%又は少なくとも90%高い細胞増殖能を示し得る。いくつかの実施形態では、本開示の操作されたT細胞は、対照T細胞と比較して、20%~100%、20%~90%、20%~80%、20%~70%、20%~60%、20%~50%、30%~100%、30%~90%、30%~80%、30%~70%、30%~60%、30%~50%、40%~100%、40%~90%、40%~80%、40%~70%、40%~60%、40%~50%、50%~100%、50%~90%、50%~80%、50%~70%又は50%~60%高い細胞増殖能を示す。
【0049】
いくつかの実施形態では、本開示の操作されたT細胞は、対照細胞と比較して、細胞生存能において少なくとも20%の増加を示す。例えば、本開示の操作されたT細胞は、対照細胞と比較して、細胞生存能において少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%又は少なくとも90%の増加を示し得る。いくつかの実施形態では、本開示の操作されたT細胞は、対照細胞と比較して、細胞生存能において20%~100%、20%~90%、20%~80%、20%~70%、20%~60%、20%~50%、30%~100%、30%~90%、30%~80%、30%~70%、30%~60%、30%~50%、40%~100%、40%~90%、40%~80%、40%~70%、40%~60%、40%~50%、50%~100%、50%~90%、50%~80%、50%~70%又は50%~60%の増加を示す。
【0050】
いくつかの実施形態では、本開示の操作されたT細胞は、対照細胞と比較して、細胞溶解能において少なくとも20%の増加(少なくとも20%多く標的細胞を死滅させる)を示す。例えば、本開示の操作されたT細胞は、対照細胞と比較して、細胞溶解能において少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%又は少なくとも90%の増加を示し得る。いくつかの実施形態では、本開示の操作されたT細胞は、対照細胞と比較して、細胞溶解能において20%~100%、20%~90%、20%~80%、20%~70%、20%~60%、20%~50%、30%~100%、30%~90%、30%~80%、30%~70%、30%~60%、30%~50%、40%~100%、40%~90%、40%~80%、40%~70%、40%~60%、40%~50%、50%~100%、50%~90%、50%~80%、50%~70%又は50%~60%の増加を示す。例えば、操作されたT細胞により分泌されるサイトカイン(例えば、IL-2及び/又はIFN-ガンマ)のレベルは、対照T細胞により分泌されるサイトカインのレベルと比べて少なくとも2倍(例えば、少なくとも3倍、少なくとも4倍又は少なくとも5倍)高い場合がある。
【0051】
対照T細胞は、いくつかの実施形態では、操作されたT細胞(例えば、遺伝子編集されたT細胞)である。いくつかの実施形態では、対照T細胞は、破壊されたTRAC遺伝子、このTRAC遺伝子に挿入されるCAR(例えば、抗LIV1 CAR)をコードする核酸及び/又は破壊されたβ2M遺伝子を含む操作されたT細胞である。いくつかの実施形態では、対照T細胞は、未編集のT細胞である。
【0052】
遺伝子編集方法
遺伝子編集(ゲノム編集を含む)は、ヌクレオチド/核酸がDNA配列中(例えば、標的化された細胞のゲノム中)で挿入、欠失及び/又は置換される一種の遺伝子操作である。標的化された遺伝子編集により、標的化された細胞のゲノム中(例えば、標的化された遺伝子中又は標的化されたDNA配列中)の予め選択された部位での挿入、欠失及び/又は置換が可能になる。内在性の遺伝子の配列が例えばヌクレオチド/核酸の欠失、挿入又は置換により編集される場合、影響を受けた配列を含む内在性の遺伝子は、配列改変に起因してノックアウトされ得るか又はノックダウンされ得る。従って、標的化された編集を使用して、内在性の遺伝子発現を破壊し得る。「標的化された組込み」は、挿入部位での在性の配列の欠失の有無に関わらず、1つ又は複数の外来性の配列の挿入を含むプロセスを指す。標的化された組込みは、外来性の配列を含むドナー鋳型が存在する場合、標的化された遺伝子編集から生じ得る。
【0053】
標的化された編集を、ヌクレアーゼ非依存的な手法又はヌクレアーゼ依存的な手法のいずれかを介して達成し得る。ヌクレアーゼ非依存的な標的化された編集手法において、相同組換えは、宿主細胞の酵素機構を介して内在性の配列に導入される外来性のポリヌクレオチドに隣接する相同配列により誘導される。この外来性のポリヌクレオチドは、この在性の配列中においてヌクレオチドの欠失、挿入又は置換を導入し得る。
【0054】
代わりに、ヌクレアーゼ依存的な手法は、特異的なレアカッティングヌクレアーゼ(例えば、エンドヌクレアーゼ)による二重鎖切断(DSB)の特異的な導入を介して、比較的高い頻度で、標的化された編集を達成し得る。そのようなヌクレアーゼ依存的な標的化された編集は、DNA修復機構(例えば、DSBに応答して生じる非相同末端連結(NHEJ))も利用する。NHEJによるDNA修復は、少数の在性のヌクレオチドのランダムな挿入又は欠失(インデル)を引き起こす場合が多い。NHEJに媒介される修復とは対照的に、修復は、相同組換え修復(HDR)によっても生じ得る。相同性アームの対に隣接する外来性の遺伝子材料を含むドナー鋳型が存在する場合、この外来性の遺伝子材料を、この外来性の遺伝子材料の標的化された組込みをもたらすHDRによりゲノムに導入し得る。
【0055】
特異的な且つ標的化されたDSBを導入し得る利用可能なエンドヌクレアーゼとして下記が挙げられるが、これらに限定されない:ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)及びRNA誘導型CRISPR-Cas9ヌクレアーゼ(CRISPR/Cas9;クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート関連9)。加えて、phiC31インテグラーゼ及びBxb1インテグラーゼを利用するDICE(二重インテグラーゼカセット交換)システムも、標的化された組込みのために使用され得る。
【0056】
ZFNは、1つ又は複数のジンクフィンガーを介して配列特異的な様式でDNAに結合するポリペプチドドメインであるジンクフィンガーDNA結合ドメイン(ZFBD)に融合したヌクレアーゼを含む標的化ヌクレアーゼである。ジンクフィンガーは、構造が亜鉛イオンの配位を介して安定化されているジンクフィンガー結合ドメイン内の約30個のアミノ酸のドメインである。ジンクフィンガーの例として、C2H2ジンクフィンガー、C3Hジンクフィンガー及びC4ジンクフィンガーが挙げられるが、これらに限定されない。設計されたジンクフィンガードメインは、設計/組成が合理的な基準(例えば、既存のZFP設計及び結合データの情報を保管するデータベース中の情報を処理するための置換規則及びコンピューター処理されたアルゴリズムの適用)から主にもたらされる、天然に存在しないドメインである。例えば、米国特許第6,140,081号明細書;同第6,453,242号明細書;及び同第6,534,261号明細書を参照されたく;国際公開第98/53058号パンフレット;同第98/53059号パンフレット;同第98/53060号パンフレット;同第02/016536号パンフレット;及び同第03/016496号パンフレットも参照されたい。選択されたジンクフィンガードメインは、ファージディスプレイ、相互作用トラップ又はハイブリッド選択等の実験的なプロセスから主にもたらされる、天然に存在しないドメインである。ZFNは、米国特許第7,888,121号明細書及び同第7,972,854号明細書においてより詳細に説明されている。ZFNの最も認知されている例は、FokIヌクレアーゼとジンクフィンガーDNA結合ドメインとの融合物である。
【0057】
TALENは、TALエフェクターDNA結合ドメインに融合したヌクレアーゼを含む標的化ヌクレアーゼである。「転写活性化因子様エフェクターDNA結合ドメイン」、「TALエフェクターDNA結合ドメイン」又は「TALE DNA結合ドメイン」は、TALエフェクタータンパク質のDNAへの結合に関与するTALエフェクタータンパク質のポリペプチドドメインである。TALエフェクタータンパク質は、キサントモナス(Xanthomonas)属の植物病原体により、感染中に分泌される。このタンパク質は、植物細胞の核に入り、このタンパク質のDNA結合ドメインを介してエフェクター特異的なDNA配列に結合し、且つこのタンパク質の転写活性化ドメインを介してこの配列で遺伝子転写を活性化する。TALエフェクターDNA結合ドメインの特異性は、2アミノ酸残基からなる可変領域(RVD)と呼ばれる選択反復位置で多型を含む、エフェクターにより可変の数の不完全な34個のアミノ酸の反復に依存する。TALENは、米国特許出願公開第2011/0145940号明細書においてより詳細に説明されている。当技術分野におけるTALENの最も認知された例は、TALエフェクターDNA結合ドメインに対するFokIヌクレアーゼの融合ポリペプチドである。
【0058】
本明細書で提供される使用に好適な標的化ヌクレアーゼのさらなる例として、個別に使用されるか組み合わせて使用されるかに関わらず、Bxb1、phiC31、R4、PhiBT1及びWβ/SPBc/TP901-1が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
標的化ヌクレアーゼの他の非限定的な例として、天然に存在するヌクレアーゼ及び組換えヌクレアーゼ、例えばCRISPR/Cas9、制限エンドヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼホーミングエンドヌクレアーゼ及び同様のものが挙げられる。
【0060】
CRISPR-Cas9遺伝子編集
CRISPR-Cas9システムは、遺伝子編集のために使用されるRNA誘導型DNA標的化プラットフォームとして転用されている、原核生物において天然に存在する防御機構である。CRISPR-Cas9システムは、DNAの切断を標的化するDNAヌクレアーゼCas9並びに2つの非コードRNAであるcrisprRNA(crRNA)及びトランス活性化RNA(tracrRNA)に依拠する。
【0061】
crRNAは、典型的には標的DNA中の20個のヌクレオチド(nt)の配列とのワトソン-クリック塩基対形成を介して、CRISPR-Cas9複合体の配列認識及び特異性を促進する。crRNA中の5’20ntの配列の変化は、特定の座位へのCRISPR-Cas9複合体の標的化を可能にする。CRISPR-Cas9複合体は、標的配列が、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と呼ばれる特定の短いDNAモチーフ(配列NGGを有する)に続いている場合、crRNA、シングルガイドRNA(sgRNA)の最初の20ntに一致する配列を含むDNA配列に結合するのみである。
【0062】
TracrRNAは、crRNAの3’末端とハイブリダイズしてRNA二重鎖構造を形成し、このRNA二重鎖構造にCas9エンドヌクレアーゼが結合して、触媒活性のあるCRISPR-Cas9複合体が形成され、次いで、このCRISPR-Cas9複合体は、標的DNAを切断し得る。
【0063】
CRISPR-Cas9複合体が標的部位でDNAに結合すると、Cas9酵素内の2つの独立したヌクレアーゼドメインがそれぞれPAM部位の上流でDNA鎖の一方を切断し、DNAの両鎖が塩基対(平滑末端)で終結する二本鎖切断(DSB)を残す。
【0064】
CRISPR-Cas9複合体が特定の標的部位でDNAに結合し、部位特異的なDSBが形成された後、次の重要なステップは、DSBの修復である。細胞は、DSBを修復するために、下記の2つの主要なDNA修復経路を使用する:非相同末端連結(NHEJ)及び相同組換え修復(HDR)。
【0065】
NHEJは、非分裂細胞を含む大多数の細胞型において高度に活性であるように見える堅固な修復機構である。NHEJは、誤りがちであり、多くの場合、DSBの部位において1~数百のヌクレオチド間で除去又は付加をもたらす可能性があるが、そのような改変は、典型的には<20ntである。得られた挿入及び欠失(インデル)は、遺伝子のコード領域又は非コード領域を破壊する可能性がある。代わりに、HDRは、内在的又は外因的に提供される長い一続きの相同性ドナーDNAを使用して、高い忠実度でDSBを修復する。HDRは、分裂細胞においてのみ活性であり、大部分の細胞型において相対的に低い頻度で生じる。本開示の多くの実施形態では、NHEJが修復オペラントとして利用される。
【0066】
いくつかの実施形態では、Cas9(CRISPR関連タンパク質9)エンドヌクレアーゼは、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)に由来するが、他のCas9相同体が使用され得る。本明細書に記載されているように、野生型Cas9が使用され得るか、又はCas9の改変されたバージョンが使用され得る(例えば、Cas9の発展させたバージョン又はCas9オルソログ若しくは変異体)ことを理解すべきである。いくつかの実施形態では、Cas9は、(クラスII CRISPR/Casシステムの)Cpf1等の別のRNA誘導型エンドヌクレアーゼと置き換えられ得る。
【0067】
ガイドRNA
本開示は、会合したポリペプチド(例えば、部位特異的ポリペプチド)の標的核酸内の特定の標的配列に対する活性を誘導し得るゲノム標的化核酸を提供する。このゲノム標的化核酸は、RNAであり得る。ゲノム標的化RNAは、本明細書では「ガイドRNA」又は「gRNA」と呼ばれる。ガイドRNAは、目的の標的核酸配列及びCRISPR反復配列にハイブリダイズする少なくとも1つのスペーサー配列を含む。II型システムにおいて、gRNAは、tracrRNA配列と呼ばれる第2のRNAも含む。II型ガイドRNA(gRNA)において、CRISPR反復配列及びtracrRNA配列は、互いにハイブリダイズして、二重鎖を形成する。V型ガイドRNA(gRNA)において、crRNAは、二重鎖を形成する。両方のシステムにおいて、二重鎖は、部位特異的ポリペプチドに結合し、その結果、ガイドRNA及び部位特異的ポリペプチドは、複合体を形成する。いくつかの実施形態では、ゲノム標的化核酸は、その部位特異的ポリペプチドとの会合により、複合体に標的特異性をもたらす。そのため、ゲノム標的化核酸は、部位特異的ポリペプチドの活性を誘導する。
【0068】
当業者に理解されているように、各ガイドRNAは、そのゲノム標的配列に相補的なスペーサー配列を含むように設計されている。Jinek et al.,Science,337,816-821(2012)及びDeltcheva et al.,Nature,471,602-607(2011)を参照されたい。
【0069】
いくつかの実施形態では、ゲノム標的化核酸は、二重分子ガイドRNAである。いくつかの実施形態では、ゲノム標的化核酸は、単一分子ガイドRNAである。
【0070】
二重分子ガイドRNAは、RNAの2つの鎖を含む。第1の鎖は、5’から3’の方向に、任意選択的なスペーサー延長配列、スペーサー配列及び最小CRISPR反復配列を含む。第2の鎖は、最小tracrRNA配列(最小CRISPR反復配列に相補的)、3’tracrRNA配列及び任意選択的なtracrRNA延長配列を含む。
【0071】
II型システムにおける単一分子ガイドRNA(sgRNA)は、5’から3’の方向に、任意選択的なスペーサー延長配列、スペーサー配列、最小CRISPR反復配列、単一分子ガイドリンカー、最小tracrRNA配列、3’tracrRNA配列及び任意選択的なtracrRNA延長配列を含む。任意選択的なtracrRNA延長は、ガイドRNAに追加の機能性(例えば、安定性)に付与する要素を含み得る。単一分子ガイドリンカーは、最小CRISPR反復及び最小tracrRNA配列を連結して、ヘアピン構造を形成する。任意選択的なtracrRNA延長は、1つ又は複数のヘアピンを含む。
【0072】
V型システムにおける単一分子ガイドRNA(「sgRNA」又は「gRNA」と称される)は、5’から3’の方向に、最小CRISPR反復配列及びスペーサー配列を含む。
【0073】
sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に20個のヌクレオチドのスペーサー配列を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に20個未満のヌクレオチドのスペーサー配列を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に20個超のヌクレオチドのスペーサー配列を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に17~30個のヌクレオチドを有する可変長スペーサー配列を含み得る(表3を参照されたい)。
【0074】
sgRNAは、sgRNA配列の3’末端にウラシルを含み得ない。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に1個又は複数のウラシルを含み得る。例えば、sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に1個のウラシル(U)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に2個のウラシル(UU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に3個のウラシル(UUU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に4個のウラシル(UUUU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に5個のウラシル(UUUUU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に6個のウラシル(UUUUUU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に7個のウラシル(UUUUUUU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に8個のウラシル(UUUUUUUU)を含み得る。
【0075】
sgRNAは、改変され得ないか又は改変され得る。例えば、改変されたsgRNAは、1つ又は複数の2’-O-メチルホスホロチオエートヌクレオチドを含み得る。
【0076】
【表3】
【0077】
実例として、CRISPR/Cas/Cpf1システムで使用されるガイドRNA又は他のより小さいRNAは、下記で説明されており且つ当技術分野で説明されているように、化学的手段により容易に合成され得る。化学合成方法が拡大し続けている一方、ポリヌクレオチドの長さが百数十ヌクレオチドを超えて大幅に長くなると、高速液体クロマトグラフィー(HPLC、PAGE等のゲルの使用を回避する)等の方法によるそのようなRNAの精製は、より難しくなる傾向がある。比較的長いRNAを生成するために使用される1つの手法は、一緒に連結される2つ以上の分子を生成することである。Cas9エンドヌクレアーゼ又はCpf1エンドヌクレアーゼをコードするもの等のはるかに長いRNAは、より容易に酵素的に生成される。当技術分野で説明されているように、様々な種類のRNA改変(例えば、安定性を増強し、自然免疫応答の可能性若しくは程度を低減し、且つ/又は他の特質を増強する改変)がRNAの化学合成及び/又は酵素的生成中又は後に導入され得る。
【0078】
スペーサー配列
gRNAは、スペーサー配列を含む。スペーサー配列は、目的の標的核酸の標的配列(例えば、ゲノム標的配列等のDNA標的配列)を定義する配列(例えば、20個のヌクレオチドの配列)である。いくつかの実施形態では、スペーサー配列は、15~30個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、スペーサー配列は、15、16、17、18、19、29、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、スペーサー配列は、20個のヌクレオチドである。
【0079】
「標的配列」は、PAM配列に隣接しており、RNA誘導型ヌクレアーゼ(例えば、Cas9)により改変された配列である。「標的核酸」は、下記の二重鎖分子である:一方の鎖は、標的配列を含み且つ「PAM鎖」と呼ばれ、他方の相補鎖は、「非PAM鎖」と呼ばれる。当業者は、gRNAスペーサー配列が、目的の標的核酸の非PAM鎖に位置する標的配列の逆相補鎖にハイブリダイズすることを認識している。そのため、gRNAスペーサー配列は、標的配列のRNA均等物である。例えば、標的配列が5’-AGAGCAACAGTGCTGTGGCC-3’(配列番号92)である場合、gRNAスペーサー配列は、5’-AGAGCAACAGUGCUGUGGCC-3’(配列番号93)である。gRNAのスペーサーは、ハイブリダイゼーション(即ち塩基対形成)を介して配列特異的な様式で目的の標的核酸と相互作用する。そのため、スペーサーのヌクレオチド配列は、目的の標的核酸の標的配列に依存して変化する。
【0080】
本明細書のCRISPR/Casシステムにおいて、スペーサー配列は、このシステムで使用されるCas9酵素のPAMの5’に位置する標的核酸の領域にハイブリダイズするように設計されている。このスペーサーは、標的配列と完全に一致し得るか、又はミスマッチを有し得る。各Cas9酵素は、標的DNA中で認識する特定のPAM配列を有する。例えば、S.ピオゲネス(S.pyogenes)は、標的核酸において、配列5’-NRG-3’(ここで、Rは、A又はGのいずれかを含み、Nは、任意のヌクレオチドであり、Nは、スペーサー配列により標的化される標的核酸配列の3’の直近にある)を含むPAMを認識する。
【0081】
いくつかの実施形態では、標的核酸配列は、20個のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、標的核酸は、20個未満のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、標的核酸は、20個超のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、標的核酸は、少なくとも5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30個又はより多くのヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、標的核酸は、最大で5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30個又はより多くのヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、標的核酸配列は、PAMの最初のヌクレオチドの5’の直近に20個の塩基を含む。例えば、
【化1】
を含む配列において、標的核酸は、N(複数)(ここで、Nは、任意のヌクレオチドであり、下線が引かれたNRG配列は、S.ピオゲネス(S.pyogenes)PAMである)に対応する配列を含む。
【0082】
本明細書に記載されているように使用され得るgRNAの非限定的な例は、表4及び2018年5月11日に出願されたPCT/米国特許出願公開第2018/032334号明細書に示されている。
【0083】
【表4】
【0084】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞
キメラ抗原受容体は、腫瘍細胞により発現された抗原を認識して結合するように操作されている人工の免疫細胞受容体を指す。一般に、CARは、T細胞用に設計されており、T細胞受容体(TCR)複合体のシグナル伝達ドメイン及び抗原認識ドメイン(例えば、抗体の一本鎖断片(scFv)又は他の抗体断片)のキメラである(Enblad et al.,Human Gene Therapy.2015;26(8):498-505)。CARを発現するT細胞は、CAR T細胞と呼ばれている。CARは、MHCに制限されない様式において、選択された標的に対するT細胞の特異性及び反応性を再指示する能力を有する。MHCに制限されない抗原認識は、CARを発現するT細胞に、抗原プロセシングに非依存的な抗原を認識する能力を与え、それにより腫瘍エスケープの主要な機構をバイパスする。さらに、T細胞中で発現される場合、CARは、内在性のT細胞受容体(TCR)のアルファ鎖及びベータ鎖と有利に二量体化しない。
【0085】
4つの世代のCARが存在し、その各々は、異なる構成要素を含む。第一世代のCARは、抗体に由来するscFvを、ヒンジ及び膜貫通ドメインを介してT細胞受容体のCD3ゼータ(ζ又はz)細胞内シグナル伝達ドメインに連結する。第二世代のCARは、追加のドメイン(例えば、CD28、4-1BB(41BB)又はICOS)を組み込んで、共刺激シグナルを供給する。第三世代のCARは、TCR CD3ζ鎖と融合した2つの共刺激ドメインを含む。第三世代の共刺激ドメインは、例えば、CD3ζ、CD27、CD28、4-1BB、ICOS又はOX40の組合せを含み得る。CARは、いくつかの実施形態では、一本鎖可変断片(scFv)に一般に由来する外部ドメイン(例えば、CD3ζ)、ヒンジ、膜貫通ドメイン並びにCD3ζ及び/又は共刺激分子に由来する1つ(第一世代)、2つ(第二世代)又は3つ(第三世代)のシグナル伝達ドメインを有する内部ドメインを含む(Maude et al.,Blood.2015;125(26):4017-4023;Kakarla and Gottschalk,Cancer J.2014;20(2):151-155)。
【0086】
CARは、典型的には、その機能特性が異なる。T細胞受容体のCD3ζシグナル伝達ドメインは、結合される場合、T細胞の増殖を活性化及び誘発するが、アネルギー(身体の防御機構による反応の欠如、末梢リンパ球寛容の直接的な誘発をもたらす)を引き起こす可能性がある。リンパ球は、特定の抗原に応答できない場合、アネルギー性であるとみなされる。第二世代のCARにおける共刺激ドメインの付加は、改変T細胞の複製能及び持続を向上させた。同様の抗腫瘍効果は、CD28又は4-1BB CARによりインビトロで観察されるが、前臨床インビボ研究は、4-1BB CARが優れた増殖及び/又は持続をもたらし得ることを示唆する。臨床試験は、これらの第二世代のCARの両方がインビボで実質的なT細胞増殖を誘発し得ることを示唆するが、4-1BB共刺激ドメインを含むCARは、より長く持続するように見える。第三世代のCARは、効力を増強する複数のシグナル伝達ドメイン(共刺激)を組み合わせる。
【0087】
いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体は、第一世代のCARである。他の実施形態では、キメラ抗原受容体は、第二世代のCARである。さらに他の実施形態では、キメラ抗原受容体は、第三世代のCARである。
【0088】
CARは、いくつかの実施形態では、抗原結合ドメイン(例えば、scFv等の抗体)、膜貫通ドメイン及び細胞質(内)ドメインを含む細胞外(外部)ドメインを含む。
【0089】
外部ドメイン
外部ドメインは、細胞外の体液に曝されるCARの領域であり、且ついくつかの実施形態では抗原結合ドメイン並びに任意選択的なシグナルペプチド、スペーサードメイン及び/又はヒンジドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、短いリンカーペプチドと連結した免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖を含む一本鎖可変断片(scFv)である。リンカーは、いくつかの実施形態では、可動性のための一続きのグリシン及びセリン並びに可溶性を加えるための一続きのグルタミン酸塩及びリシンと共に親水性残基を含む。一本鎖可変断片(scFv)は、実際には抗体の断片ではないが、代わりに、10~約25個のアミノ酸の短いリンカーペプチドと連結した免疫グロブリンの重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。リンカーは、通常、可動性のためにグリシンに富み、溶解性のためにセリン又はスレオニンに富み、VHのN末端をVLのC末端に連結するか又はその逆のいずれかであり得る。このタンパク質は、定常領域の除去及びリンカーの導入にも関わらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持する。抗LIV1 scFvを生成するために使用され得るVHタンパク質配列及びVLタンパク質配列の非限定的な例として、配列番号55、90又は98のアミノ酸配列(VH)及び配列番号56、88又は128のアミノ酸配列(VL)が挙げられ得る。いくつかの実施形態では、本開示のscFvは、ヒト化されている。他の実施形態では、scFvは、完全ヒトである。さらに他の実施形態では、scFvは、キメラ(例えば、マウス及びヒト配列)である。いくつかの実施形態では、scFvは、抗LIV1 scFvである(LIV1に特異的に結合する)。本明細書に記載されているように使用され得る抗LIV1 scFvタンパク質の非限定的な例として、配列番号54、70、82、83、84、85、86又は87のいずれか1つのアミノ酸配列が挙げられ得る。他のscFvタンパク質が使用され得る。
【0090】
シグナルペプチドは、CAR結合の抗原特異性を増強し得る。シグナルペプチドは、抗体(例えば、限定されないが、CD8)及びエピトープタグ(例えば、限定されないが、GST又はFLAG)に由来し得る。シグナルペプチドの例として、MLLLVTSLLLCELPHPAFLLIP(配列番号94)及びMALPVTALLLPLALLLHAARP(配列番号73)が挙げられる。他のシグナルペプチドが使用され得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、スペーサードメイン又はヒンジドメインは、CARの細胞外ドメイン(抗原結合ドメインを含む)と膜貫通ドメインとの間に位置するか、又はCARの細胞質ドメインと膜貫通ドメインとの間に位置する。スペーサードメインは、膜貫通ドメインをポリペプチド鎖中の細胞外ドメイン及び/又は細胞質ドメインに連結するように機能する任意のオリゴペプチド又はポリペプチドである。ヒンジドメインは、CAR若しくはそのドメインに可動性をもたらすか、又はCAR若しくはそのドメインの立体障害を妨げるように機能する任意のオリゴペプチド又はポリペプチドである。いくつかの実施形態では、スペーサードメイン又はヒンジドメインは、最大で300個のアミノ酸(例えば、10~100個のアミノ酸又は5~20個のアミノ酸)を含み得る。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のスペーサードメインがCARの他の領域に含まれ得る。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、CD8ヒンジドメインである。他のヒンジドメインが使用され得る。
【0092】
膜貫通ドメイン
膜貫通ドメインは、膜をまたがる疎水性アルファヘリックスである。膜貫通ドメインは、CARの安定性をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるCARの膜貫通ドメインは、CD8膜貫通ドメインである。他の実施形態では、膜貫通ドメインは、CD28膜貫通ドメインである。さらに他の実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8膜貫通ドメイン及びCD28膜貫通ドメインのキメラである。他の膜貫通ドメインが、本明細書に記載されているように使用され得る。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8a膜貫通ドメイン:
【化2】
である。他の膜貫通ドメインが使用され得る。
【0093】
内部ドメイン
内部ドメインは、受容体の機能的な末端である。抗原認識後、受容体クラスター及びシグナルは、細胞に伝達される。最も一般的に使用される内部ドメインの構成要素は、CD3-ゼータであり、このCD3-ゼータは、3つの免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含む。これは、抗原が結合した後に活性化シグナルをT細胞に伝達する。多くの場合、CD3-ゼータは、十分に能力のある活性化シグナルをもたらさない場合があり、そのため、共刺激シグナル伝達が使用される。例えば、CD28及び/又は4-1BBが、CD3-ゼータ(CD3ζ)と共に使用されて、増殖/生存シグナルを伝達し得る。そのため、いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるCARの共刺激分子は、CD28共刺激分子である。他の実施形態では、この共刺激分子は、4-1BB共刺激分子である。いくつかの実施形態では、CARは、CD3ζ及びCD28を含む。他の実施形態では、CARは、CD3-ゼータ及び4-1BBを含む。さらに他の実施形態では、CARは、CD3ζ、CD28及び4-1BBを含む。表5には、本明細書に記載されているように使用され得るシグナル伝達分子の例が記載されている。
【0094】
【表5】
【0095】
抗体
抗体(複数の形態で互換的に使用される)は、免疫グロブリン分子であって、この免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチド等の標的に特異的に結合し得る免疫グロブリン分子である。本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、インタクトな(即ち完全長)モノクローナル抗体だけでなく、抗原結合断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv)、一本鎖可変断片(scFv)、その変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、ダイアボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、ラクダVHH抗体又はラマVHH抗体)、多重特異性抗体(例えば、二重特性抗体)並びに抗体のグリコシル化バリアント、抗体のアミノ酸配列バリアント及び共有結合的に修飾された抗体等、要求される特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾された配置も包含する。
【0096】
典型的な抗体分子は、抗原結合に通常関与する重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む。抗原結合に関与するこれらの領域/残基は、当技術分野で既知の方法により、参照抗体(例えば、本明細書で説明されている抗LIV1抗体)のVH/VL配列のアミノ酸配列から同定され得る。VH領域及びVL領域は、「フレームワーク領域」(「FR」)として既知である、より保存されている領域が挿入された、「相補性決定領域」(「CDR」)としても既知である超可変領域にさらに細分化され得る。各VH及びVLは、典型的には、下記の順でアミノ末端からカルボキシ末端に整列された、3つのCDR及び4つのFRで構成されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。フレームワーク領域及びCDRの範囲は、当技術分野で既知の方法論を使用して、例えば全てが当技術分野で公知であるKabat定義、Chothia定義、AbM定義及び/又はcontact定義により、正確に同定され得る。本明細書で使用される場合、CDRは、当技術分野で既知の任意の方法により定義されたCDRを指し得る。同一のCDRを有する2つの抗体は、これら2つの抗体が、同一の方法により決定されたCDRと同じアミノ酸配列を有することを意味する。例えば、Kabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242,Chothia et al.,(1989)Nature 342:877;Chothia,C.et al.(1987)J.Mol.Biol.196:901-917,Al-lazikani et al(1997)J.Molec.Biol.273:927-948;及びAlmagro,J.Mol.Recognit.17:132-143(2004)を参照されたい。hgmp.mrc.ac.uk及びbioinf.org.uk/absも参照されたい。
【0097】
いくつかの実施形態では、抗体は、抗LIV1 scFv等のscFvである。抗体は、IgD、IgE、IgG、IgA若しくはIgM(又はこれらのサブクラス)等の任意のクラスの抗体を含み、且つ抗体は、いずれかの特定のクラスのものである必要はない。重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、各種クラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンには、下記の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)にさらに分類され得、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2にさらに分類され得る。免疫グロブリンの各種クラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ及びミューと呼ばれる。免疫グロブリンの各種クラスのサブユニット構造及び三次元配置は、公知である。
【0098】
本明細書に記載されているように使用される抗体は、マウス、ラット、ヒト又は任意の他の起源(キメラ抗体若しくはヒト化抗体を含む)であり得る。いくつかの例では、抗体は、免疫学的に不活性である(例えば、補体に媒介される溶解を誘発しないか、又は抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を刺激しない)定常領域等の改変された定常領域を含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、ヒト化抗体である。ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含む特定のキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はこれらの抗原結合断片である非ヒト(例えば、マウス)抗体の形態を指す。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有する、マウス、ラット又はウサギ等の非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基に置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合により、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基に置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDR又はフレームワーク配列にも見出されないが、抗体性能をさらに洗練させ且つ最適化するために含まれる残基を含み得る。一般に、ヒト化抗体は、全て又は実質的に全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、且つ全て又は実質的に全てのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである少なくとも1つ(典型的には2つ)の可変ドメインを実質的に全て含むことになる。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域又はドメイン(Fc)(典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域又はドメイン(Fc))の少なくとも一部も含むことになる。ヒト化抗体の他の形態は、元の抗体からの1つ又は複数のCDRに「由来する」1つ又は複数のCDRとも呼ばれる、元の抗体に関して改変されている1つ又は複数のCDR(1、2、3、4、5又は6つ)を有する。ヒト化抗体は、親和性成熟も伴い得る。
【0100】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、ヒト抗体由来の重定常領域及び軽定常領域を含み得るキメラ抗体である。キメラ抗体は、第1の種に由来する可変領域又は可変領域の部分と、第2の種に由来する定常領域とを有する抗体を指す。典型的には、このキメラ抗体において、軽鎖及び重鎖の両方の可変領域は、哺乳動物(例えば、マウス、ウサギ及びラット等の非ヒト哺乳動物)の1つの種に由来する抗体の可変領域を模倣するが、定常部分は、ヒト等の別の哺乳動物に由来する抗体における配列と相同である。いくつかの実施形態では、アミノ酸改変は、可変領域及び/又は定常領域においてなされ得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、ヒトLIV1等の標的抗原に特異的に結合する。標的又はエピトープに「特異的に結合する」(本明細書では互換的に使用される)抗体は、当技術分野でよく理解されている用語であり、そのような特異的な結合を決定する方法も当技術分野でよく知られている。分子は、代替の標的よりも特定の標的抗原とより頻繁に、より迅速に、より長い持続時間で、且つ/又はより高い親和性で反応又は会合する場合、「特異的な結合」を示すと言われる。抗体は、他の基質に結合するよりも、より高い親和性で、より高い結合活性で、より迅速に、且つ/又はより長い持続時間で結合する場合、標的抗原に「特異的に結合する」。例えば、LIV1エピトープに特異的に(又は優先的に)結合する抗体は、他のLIV1エピトープ又は非LIV1エピトープに結合するよりも、より高い親和性で、より高い結合活性で、より迅速に、且つ/又はより長い持続時間でこのLIV1エピトープに結合する抗体である。これは、例えば、第1の標的抗原に特異的に結合する抗体が、第2の標的抗原に特異的又は優先的に結合し得るか又はし得ないというこの定義を読むことによっても理解される。そのため、「特異的な結合」又は「優先的な結合」は、必ずしも排他的結合を(含むことはできるが)必要とするものではない。一般に、必ずしもそうではないが、結合への参照は、優先的な結合を意味する。
【0102】
いくつかの実施形態では、抗体とLIV1との間の平衡解離定数(K)は、100pM~1μMである。いくつかの実施形態では、抗体とLIV1との間のKは、1nM~100nMである。
【0103】
本明細書で開示されている例示的な抗体のいずれかの機能的バリアントも本開示の範囲内である。機能的バリアントは、参照抗体を基準として、VH及び/若しくはVLにおいて又はVH CDRの1つ若しくは複数及び/又はVL CDRの1つ若しくは複数において、1つ又は複数のアミノ酸残基の変異を含み得るが、この参照抗体と実質的に同様の結合活性及び生物学的活性(例えば、実質的に同様の結合親和性、結合特異性、阻害活性、抗腫瘍活性又はこれらの組合せ)を保持している。
【0104】
いくつかの例では、本明細書で開示されている抗体は、VH:配列番号55、又は90、又は98;VL:配列番号56、又は88、又は128におけるもの等の参照抗体のVH CDR1、VH CDR2及びVH CDR3と比較して、10個以下のアミノ酸変異(例えば、9、8、7、6、5、4、3、2、1又は1個以下のアミノ酸変異)を合わせて含むVH CDR1、VH CDR2及びVH CDR3を含む。「合わせて」は、3つのVH CDRの全てにおけるアミノ酸変異の総数が、既定の範囲内であることを意味する。代わりに又は加えて、抗体は、参照抗体のVL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3と比較して、10個以下のアミノ酸変異(例えば、9、8、7、6、5、4、3、2又は1個以下のアミノ酸変異)を合わせて含むVL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3を含み得る。
【0105】
いくつかの例では、本明細書で開示されている抗体は、VH CDR1、VH CDR2及びVH CDR3を含み得、これらの少なくとも1つは、VH:配列番号55、又は90、又は98;VL:配列番号56、又は88、又は128におけるもの等の参照抗体の対応物のVH CDRのように、5個以下のアミノ酸変異(例えば、4、3、2又は1個以下のアミノ酸変異)を含む。特定の例では、抗体は、VH:配列番号55、又は90、又は98;VL:配列番号56、又は88、又は128におけるもの等の参照抗体のVH CDR3のように、5個以下のアミノ酸変異(例えば、4、3、2又は1個以下のアミノ酸変異)を含むVH CDR3を含む。代わりに又は加えて、抗体は、VL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3を含み得、これらの少なくとも1つは、参照抗体の対応物のVL CDRのように、5個以下のアミノ酸変異(例えば、4、3、2又は1個以下のアミノ酸変異)を含む。特定の例では、抗体は、参照抗体のLC CDR3のように、5個以下のアミノ酸変異(例えば、4、3、2又は1個以下のアミノ酸変異)を含むVL CDR3を含む。
【0106】
場合により、アミノ酸残基の変異は、保存的なアミノ酸残基置換であり得る。本明細書で使用される場合、「保存的なアミノ酸置換」は、アミノ酸置換がなされるタンパク質の相対的な電荷又はサイズの特徴を変えないアミノ酸置換を指す。バリアントは、そのような方法をまとめた参考文献、例えばMolecular Cloning:A Laboratory Manual,J.Sambrook,et al.,eds.,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,1989又はCurrent Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel,et al.,eds.,John Wiley&Sons,Inc.,New Yorkに見出されるような、当業者に既知のポリペプチド配列を改変するための方法に従って調製され得る。アミノ酸の保存的置換として、下記の群内のアミノ酸の中でなされる置換が挙げられる:(a)A→G、S;(b)R→K、H;(c)N→Q、H;(d)D→E、N;(e)C→S、A;(f)Q→N;(g)E→D、Q;(h)G→A;(i)H→N、Q;(j)I→L、V;(k)L→I、V;(l)K→R、H;(m)M→L、I、Y;(n)F→Y、M、L;(o)P→A;(p)S→T;(q)T→S;(r)W→Y、F;(s)Y→W、F;及び(t)V→I、L。
【0107】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されている抗体は、抗体A(VH:配列番号55;VL:配列番号56)又は抗体B(VH:配列番号90;VL:配列番号88)等の参照抗体のVH CDRと合わせて少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%又は98%)同一であるVH CDRを含み得る。代わりに又は加えて、抗体は、参照抗体のVL CDRと合わせて少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%又は98%)同一であるVL CDRを含み得る。いくつかの実施形態では、抗体は、VH:配列番号55、若しくは90、若しくは98;VL:配列番号56、若しくは88、若しくは128におけるもの等の参照抗体のVHと少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%若しくは98%)同一であるVH及び/又は参照抗体のVL可変領域と少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%若しくは98%)同一であるVL可変領域を含み得る。
【0108】
ドナー鋳型
CARをコードする核酸は、ドナー鋳型と本明細書で呼ばれる(ドナーポリヌクレオチドとも呼ばれる)ものを含むT細胞に送達され得る。ドナー鋳型は、目的のゲノム位置で効率的なHDRを可能にする2つの相同な領域に隣接した、CARをコードする核酸等の非相同配列を含み得る。代わりに、ドナー鋳型は、DNA中の標的化された位置と相同な領域を有しない場合があり、標的部位での切断後のNHEJ依存的末端連結により組み込まれ得る。
【0109】
ドナー鋳型は、一本鎖及び/又は二重鎖のDNA又はRNAであり得、直鎖状又は環状の形態で細胞に導入され得る。直鎖状形態で導入される場合、ドナー配列の末端は、当業者に既知の方法により(例えば、エキソヌクレアーゼ分解から)保護され得る。例えば、1つ又は複数のジデオキシヌクレオチド残基が直鎖状分子の3’末端に付加され、且つ/又は自己相補的オリゴヌクレオチドが一方又は両方の末端に連結される。例えば、Chang et al.,(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:4959-4963;Nehls et al.,(1996)Science 272:886-889を参照されたい。外来性のポリヌクレオチドを分解から保護するための追加の方法として、末端アミノ基の付加並びに例えばホスホロチオエート、ホスホロアミデート及びO-メチルリボース又はデオキシリボース残基等の修飾されたヌクレオチド間結合の使用が挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
ドナー鋳型は、例えば、複製開始点、プロモーター及び抗生物質耐性をコードする遺伝子等の追加の配列を有するベクター分子の一部として細胞に導入され得る。さらに、ドナー鋳型は、裸の核酸として、リポソーム若しくはポロクサマー等の薬剤と複合体を形成した核酸として導入され得るか、又はウイルス(例えば、アデノウイルス、AAV、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス及びインテグラーゼ欠損レンチウイルス(IDLV))により送達され得る。
【0111】
ドナー鋳型は、いくつかの実施形態では、その発現が、組込み部位での在性プロモーター(即ちこのドナーが挿入される内在性遺伝子の発現を駆動するプロモーター)により駆動されるように挿入される。しかしながら、いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、外来性プロモーター及び/又はエンハンサー(例えば、構成的プロモーター、誘導性プロモーター又は組織特異的プロモーター)を含む。いくつかの実施形態では、内在性プロモーターは、配列番号79の配列を含むEF1αプロモーターである。他のプロモーターが使用され得る。
【0112】
さらに、外来性配列は、転写制御配列又は翻訳制御配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、インスレーター、配列内リボソーム進入部位、2Aペプチドをコードする配列及び/又はポリアデニル化シグナル)も含み得る。
【0113】
送達方法及びコンストラクト
ヌクレアーゼ及び/又はドナー鋳型は、ベクター系を使用して送達され得、このベクター系として、プラスミドベクター、DNA小環、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター;ヘルペスウイルスベクター及びアデノ随伴ウイルスベクター並びにこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
従来のウイルス及び非ウイルス系遺伝子導入方法を使用して、細胞(例えば、T細胞)においてヌクレアーゼをコードする核酸及びドナー鋳型を導入し得る。非ウイルスベクター送達系として、DNAプラスミド、DNA小環、裸の核酸及びリポソーム又はポロクサマー等の送達媒体と複合体を形成した核酸が挙げられる。ウイルスベクター送達系として、細胞に送達された後にエピソーム又は組込みゲノムのいずれかを有するDNAウイルス及びRNAウイルスが挙げられる。
【0115】
核酸の非ウイルス送達の方法として、エレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、ビロソーム、リポソーム、イムノリポソーム、ポリカチオン又は脂質:核酸コンジュゲート、裸のDNA、裸のRNA、キャップ付きRNA、人工ビリオン及び薬剤で増強されたDNAの取込みが挙げられる。例えば、ソニトロン2000システム(Rich-Mar)を使用するソノポレーションも核酸の送達に使用され得る。
【0116】
アデノ随伴ウイルス送達
CARコンストラクトをコードするドナー核酸は、アデノ随伴ウイルス(AAV)を使用して細胞に送達され得る。AAVは、宿主ゲノムに部位特異的に組み込み、従ってCAR等の導入遺伝子を送達し得る小型のウイルスである。逆位末端配列(ITR)は、AAVゲノム及び/又は目的の導入遺伝子に隣接して存在し、複製開始点として機能する。また、AAVゲノムには、転写された場合にAAVゲノムをカプセル化して標的細胞に送達するためのカプシドを形成するrepタンパク質及びcapタンパク質も存在する。これらのカプシド上の表面受容体は、AAVに血清型を付与し、カプシドが主にどの標的臓器に結合するかを決定し、そのため、AAVが最も効率的に感染することになる細胞を決定する。現在知られているヒトAAVの血清型は、12種類である。いくつかの実施形態では、AAVは、AAV血清型6(AAV6)である。
【0117】
アデノ随伴ウイルスは、いくつかの理由のために遺伝子療法に最も頻繁に使用されるウイルスの1つである。第一に、AAVは、ヒトを含む哺乳動物への投与時に免疫応答を誘発しない。第二に、AAVは、特に適切なAAV血清型を選択することを考慮する場合、標的細胞に効率的に送達される。最後に、AAVは、ゲノムが組込みを伴わずに宿主細胞において存続し得ることから、分裂細胞及び非分裂細胞の両方に感染する能力を有する。この形質により、AAVは、遺伝子療法の理想的な候補となる。
【0118】
相同組換え修復(HDR)
CARをコードするドナー核酸は、相同組換え修復(HDR)により標的遺伝子座位に挿入される。標的座位でのDNAの両方の鎖がCRISPR Cas9酵素により切断される。次いで、HDRが発生して、二重鎖切断(DSB)を修復し、ドナーDNAを挿入する。これが正しく発生させるために、ドナー配列は、標的遺伝子のDSB部位を取り囲む配列に相補的な隣接している残基(以下では「相同性アーム」)を有するように設計されている。これらの相同性アームは、DSB修復のための鋳型として機能し、本質的に誤りのない機構であるHDRを可能にする。相同組換え修復(HDR)の割合は、変異部位と切断部位との間の距離の関数であり、そのため、重複しているか又は近くの標的部位を選択することが重要である。鋳型は、相同領域に隣接した余分な配列を含み得るか、又はゲノム配列と異なる配列を含み得、そのため、配列編集が可能になる。
【0119】
標的遺伝子は、対象での免疫応答と関連し得、ここで、標的遺伝子の少なくとも一部を持続的に欠失させることは、免疫応答を調節することになる。例えば、CAR T細胞を生成するために、標的遺伝子は、TCRα定常領域(TRAC)であり得る。TRACの破壊は、内在性TCRの機能の喪失をもたらす。
【0120】
いくつかの実施形態では、標的遺伝子は、セーフハーバー座位に存在する。
【0121】
操作されたT細胞
本開示の操作された(遺伝子編集された)CAR T細胞は、自己由来(「自己」)又は非自己由来(「非自己」、例えば異質遺伝子型、同一遺伝子又は異種)であり得る。「自己由来」は、同じ対象からの細胞を指す。「異質遺伝子型」は、対象と同じ種であるが、対象中の細胞と遺伝的に異なる細胞を指す。いくつかの実施形態では、T細胞は、哺乳動物対象から得られる。いくつかの実施形態では、T細胞は、ヒト対象から得られる。
【0122】
T細胞を、いくつかの供給源から得ることができ、この供給源として、末梢血単核球、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織及び腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。ある種の実施形態では、T細胞を、遠心沈降(例えば、FICOLL(商標)分離)等の当業者に既知の任意の数の技術を使用して、対象から回収される血液の単位から得ることができる。
【0123】
いくつかの実施形態では、T細胞の単離された集団が使用される。いくつかの実施形態では、末梢血単核球(PBMC)の単離後、細胞傷害性及びヘルパーTリンパ球の両方は、活性化、増殖及び/又は遺伝的改変前又は後のいずれかでナイーブ、メモリー及びエフェクターT細胞亜集団に分別され得る。
【0124】
下記の細胞表面マーカー:TCRab、CD3、CD4、CD8、CD27、CD28、CD38、CD45RA、CD45RO、CD62L、CD127、CD122、CD95、CD197、CCR7、KLRG1、MCH-Iタンパク質及び/又はMCH-IIタンパク質の1つ又は複数を発現するT細胞の特定の亜集団が陽性又は陰性選択手法によってさらに単離され得る。いくつかの実施形態では、TCRab、CD4及び/又はCD8からなる群から選択されるマーカーの1つ又は複数を発現するT細胞の特定の亜集団は、陽性又は陰性選択手法によりさらに単離される。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞集団は、下記のマーカー:CD70、CD57、CD244、CD160、PD-1、CTLA4、HΜ3及びLAG3の1つ又は複数を発現しないか又は実質的に発現しない。いくつかの実施形態では、T細胞の亜集団は、遺伝子操作前及び/又は遺伝子操作後に陽性又は陰性選択により単離され得る。
【0125】
いくつかの実施形態では、T細胞の単離された集団は、CD3+、CD4+、CD8+又はこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されないマーカーの1つ又は複数を発現する。いくつかの実施形態では、T細胞は、対象から単離され、遺伝子編集を受ける前に、最初に活性化されてインビトロで増殖するように刺激される。
【0126】
T細胞組成物の十分な治療用量を実現するために、T細胞は、1回又は複数回の刺激、活性化及び/又は増殖にかけられる場合が多い。T細胞は、一般に、例えば米国特許第6,352,694号明細書;同第6,534,055号明細書;同第6,905,680号明細書;同第6,692,964号明細書;同第5,858,358号明細書;同第6,887,466号明細書;同第6,905,681号明細書;同第7,144,575号明細書;同第7,067,318号明細書;同第7,172,869号明細書;同第7,232,566号明細書;同第7,175,843号明細書;同第5,883,223号明細書;同第6,905,874号明細書;同第6,797,514号明細書;及び同第6,867,041号明細書で説明されているような方法を使用して、活性化されて増殖され得る。いくつかの実施形態では、T細胞は、ゲノム編集組成物のT細胞への導入前に約1日~約4日、約1日~約3日、約1日~約2日、約2日~約3日、約2日~約4日、約3日~約4日又は約1日、約2日、約3日若しくは約4日にわたり活性化されて増殖される。
【0127】
いくつかの実施形態では、T細胞は、遺伝子編集組成物のT細胞への導入前に約4時間、約6時間、約12時間、約18時間、約24時間、約36時間、約48時間、約60時間又は約72時間にわたり活性化されて増殖される。
【0128】
いくつかの実施形態では、T細胞は、ゲノム編集組成物がT細胞に導入されるのと同時に活性化される。
【0129】
処置方法及び組成物
本明細書で提供されるのは、いくつかの実施形態では、癌(例えば、乳癌)を処置する方法である。本明細書に記載されているように処置され得る癌の非限定的な例として、乳癌、例えばエストロゲン受容体陽性乳癌、前立腺癌、例えば皮膚、膀胱、肺、子宮頸部、子宮内膜、頭頸部及び胆道の扁平上皮腫瘍並びに神経細胞腫瘍が挙げられる。いくつかの実施形態では、この方法は、乳癌、例えばエストロゲン受容体陽性乳癌、前立腺癌、例えば皮膚、膀胱、肺、子宮頸部、子宮内膜、頭頸部及び胆道の扁平上皮腫瘍並びに/又は神経細胞腫瘍等の癌を有する対象に本開示のCAR T細胞(例えば、抗LIV1 CAR T細胞)を送達することを含む。
【0130】
投与する工程は、所望の効果がもたらされるように、腫瘍等の所望の部位での導入細胞の少なくとも部分的な局在をもたらす方法又は経路による、対象への細胞(例えば、操作されたT細胞)の配置(例えば、移植)を含み得る。操作されたT細胞を、移植された細胞又はこの細胞の構成要素の少なくとも一部が生存したままである対象における所望の位置への送達をもたらす任意の適切な経路により投与し得る。対象への投与後の細胞の生存期間は、数時間(例えば、24時間)という短い期間から、数日、数年又はさらに対象の寿命(即ち長期の生着)までであり得る。例えば、本明細書で説明されているいくつかの態様では、有効量の操作されたT細胞を、腹腔内又は静脈内経路等の全身性の投与経路を介して投与する。
【0131】
対象は、診断、処置又は治療が望まれている任意の対象であり得る。いくつかの実施形態では、この対象は、哺乳動物である。いくつかの実施形態では、この対象は、ヒトである。
【0132】
ドナーは、処置されている対象ではない個体である。ドナーは、患者ではない個体である。いくつかの実施形態では、ドナーは、治療される癌を有しないか又は有すると疑われていない個体である。いくつかの実施形態では、複数のドナー(例えば、2例以上のドナー)が使用される。
【0133】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されている方法に従って投与される操作されたT細胞集団は、1つ又は複数のドナーから得られた異質遺伝子型のT細胞を含む。異質遺伝子型は、1つ又は複数の座位での遺伝子がレシピエントと同一ではない細胞、細胞集団又は同じ種の1つ又は複数の異なるドナーから得られた細胞を含む生体サンプルを指す。例えば、対象に投与される操作されたT細胞集団は、1つ若しくは複数の血縁ではないドナー又は1つ若しくは複数の同一ではない同胞に由来し得る。いくつかの実施形態では、遺伝的に同一のドナー(例えば、同一の双子)から得られたもの等の同一遺伝子の細胞集団が使用され得る。いくつかの実施形態では、細胞は、自己細胞であり、即ち、操作されたT細胞は、対象から得られるか又は単離されて同じ対象に投与され、即ち、ドナー及びレシピエントは、同じである。
【0134】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されている方法に従って投与される操作されたT細胞集団は、対象中で毒性を誘発せず、例えば、この操作されたT細胞は、非癌細胞中で毒性を誘発しない。いくつかの実施形態では、投与される操作されたT細胞集団は、補体に媒介される溶解を誘発しないか、又は抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を刺激しない。
【0135】
有効量は、医学的状態(例えば、癌)の少なくとも1つ又は複数の徴候又は症状を予防又は軽減するのに必要な操作されたT細胞の集団の量を指し、所望の効果をもたらすのに(例えば、医学的状態を有する対象を処置するのに)十分な量の組成物に関する。有効量として、疾患の症状の発症を予防するか若しくは遅らせるか、疾患の症状の経過を変える(例えば、限定されないが、疾患の症状の進行を遅くする)か、又は疾患の症状を逆転させるのに十分な量も挙げられる。任意の所与の場合に関して、適切な有効量は、当業者により通常の実験を使用して決定され得ることが理解される。
【0136】
本明細書で説明されている様々な態様での使用に関して、有効量の細胞(例えば、操作されたT細胞)は、少なくとも10個の細胞、少なくとも5×10個の細胞、少なくとも10個の細胞、少なくとも5×10個の細胞、少なくとも10個の細胞、少なくとも5×10個の細胞、少なくとも10個の細胞、少なくとも2×10個の細胞、少なくとも3×10個の細胞、少なくとも4×10個の細胞、少なくとも5×10個の細胞、少なくとも6×10個の細胞、少なくとも7×10個の細胞、少なくとも8×10個の細胞、少なくとも9×10個の細胞、少なくとも1×10個の細胞、少なくとも2×10個の細胞、少なくとも3×10個の細胞、少なくとも4×10個の細胞、少なくとも5×10個の細胞、少なくとも6×10個の細胞、少なくとも7×10個の細胞、少なくとも8×10個の細胞、少なくとも9×10個の細胞又はこれらの複合を含む。細胞は、1つ若しくは複数のドナーに由来するか、又は自己の供給源から得られる。本明細書で説明されているいくつかの例において、細胞は、それを必要とする対象への投与前に培養で増殖される。
【0137】
投与の様式として、注射、注入、点眼又は経口摂取が挙げられる。注射として、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、脳室内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節腔内、被膜下、くも膜下、脊髄内、脳脊髄内及び胸骨内注射及び注入が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、経路は、静脈内である。
【0138】
いくつかの実施形態では、操作されたT細胞を、全身的に投与し、これは、標的の部位、組織又は臓器に直接的ではなく、代わりに対象の循環系に入り、それにより代謝及び他の同様の過程にかけられるような細胞の集団の投与を指す。
【0139】
医学的状態の処置のための組成物を含む処置の有効性は、熟達した臨床医により判定され得る。処置は、一例ではあるが、任意の1つ又は全ての徴候又は症状の機能的標的のレベルが有利な様式で変えられる(例えば、少なくとも10%増加する)か、又は疾患(例えば、癌)の他の臨床的に認められている症状又はマーカーが改善されるか又は緩和される場合、「有効な処置」とみなされる。有効性は、入院又は医学的介入の必要性により評価された場合、対象が悪化しないことによっても測定され得る(例えば、疾患の進行が止まるか又は少なくとも遅くなる)。これらの指標を測定する方法は、当業者に既知であり、且つ/又は本明細書で説明されている。処置は、対象における疾患の任意の処置を含み、且つ(1)疾患を阻害すること、例えば症状の進行を止めるか若しくは遅くすること;又は(2)疾患を軽減すること、例えば症状の退行をもたらすこと;及び(3)症状の発症の可能性を予防するか若しくは減少させることを含む。
【0140】
本開示を下記の実施形態により例示する。
【0141】
実施形態1.キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を含む操作されたT細胞であって、CARは、LIV1に特異的に結合する外部ドメインを含む、操作されたT細胞。
【0142】
実施形態2.破壊されたT細胞受容体アルファ鎖定常領域(TRAC)遺伝子をさらに含む、実施形態1に記載の操作されたT細胞。
【0143】
実施形態3.CARをコードする核酸は、TRAC遺伝子に挿入される、実施形態2に記載の操作されたT細胞。
【0144】
実施形態4.破壊されたベータ-2-ミクログロブリン(β2M)遺伝子をさらに含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の操作されたT細胞。
【0145】
実施形態5.CARの外部ドメインは、抗LIV1抗体を含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の操作されたT細胞。
【0146】
実施形態6.抗LIV1抗体は、抗LIV1一本鎖可変断片(scFv)である、実施形態5に記載の操作されたT細胞。
【0147】
実施形態7.抗LIV1 scFvは、参照抗体と同じ重鎖可変領域(VH)相補性決定領域(CDR)及び同じ軽鎖可変領域(VL)CDRを含み、参照抗体は、(i)配列番号55に記載のVH及び配列番号56に記載のVL、(ii)配列番号69に記載のVH及び配列番号70に記載のVL、(iii)配列番号76に記載のVH及び配列番号77に記載のVL、又は(iv)配列番号83に記載のVH及び配列番号84に記載のVLを含む、実施形態6に記載の操作されたT細胞。
【0148】
実施形態8.抗LIV1 scFvは、参照抗体と同じVH鎖及びVL鎖を含む、実施形態7に記載の操作されたT細胞。
【0149】
実施形態8.1.抗LIV1 scFvは、配列番号54又は70のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、実施形態7に記載の操作されたT細胞。
【0150】
実施形態9.CARは、CD28共刺激ドメイン又は41BB共刺激ドメインを含む、実施形態1~8.1のいずれか1つに記載の操作されたT細胞。
【0151】
実施形態10.CARは、CD3z細胞質シグナル伝達ドメインをさらに含む、実施形態9に記載の操作されたT細胞。
【0152】
実施形態11.TRAC遺伝子は、配列番号63、64、71若しくは72のいずれか1つのヌクレオチド配列を含み、且つ/又はCARは、配列番号49、51、65又は67のいずれか1つのヌクレオチド配列によってコードされる、実施形態3~10のいずれか1つに記載の操作されたT細胞。
【0153】
実施形態12.破壊されたβ2M遺伝子は、配列番号9~14のいずれか1つから選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、実施形態4~11のいずれか1つに記載の操作されたT細胞。
【0154】
実施形態13.実施形態1~12のいずれか1つに記載の操作されたT細胞の集団であって、集団の操作されたT細胞の少なくとも25%又は少なくとも50%は、CARを発現する、操作されたT細胞の集団。
【0155】
実施形態14.集団の操作されたT細胞の少なくとも70%は、CARを発現する、実施形態14に記載の集団。
【0156】
実施形態15.集団の操作されたT細胞の少なくとも25%は、少なくとも7日間又は少なくとも14日間のインビトロでの増殖後にCARを発現する、実施形態13に記載の集団。
【0157】
実施形態16.集団の操作されたT細胞の少なくとも50%は、検出可能なレベルのT細胞受容体(TCR)タンパク質を発現しない、実施形態13~15のいずれか1つに記載の集団。
【0158】
実施形態17.集団の操作されたT細胞の少なくとも90%は、検出可能なレベルのTCRタンパク質を発現しない、実施形態16に記載の集団。
【0159】
実施形態18.集団の操作されたT細胞の少なくとも50%は、検出可能なレベルのβ2Mタンパク質を発現しない、実施形態13~17のいずれか1つに記載の集団。
【0160】
実施形態19.集団の操作されたT細胞の少なくとも70%は、検出可能なレベルのβ2Mタンパク質を発現しない、実施形態18に記載の集団。
【0161】
実施形態20.集団の操作されたT細胞は、LIV1を発現する癌細胞の集団とインビトロで共培養された場合、集団の癌細胞の少なくとも10%、少なくとも25%又は少なくとも50%の細胞溶解を誘発する、実施形態13~19のいずれか1つに記載の集団。
【0162】
実施形態21.集団の操作されたT細胞は、LIV1を発現する癌細胞の集団とインビトロで共培養された場合、記癌細胞の集団の少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%の細胞溶解を誘発する、実施形態20に記載の集団。
【0163】
実施形態22.集団の操作されたT細胞は、癌細胞の集団とインビトロで共培養された場合、IFNγを分泌する、実施形態20又は21に記載の集団。
【0164】
実施形態23.操作されたT細胞対癌細胞の比は、1:1~2:1である、実施形態20~22のいずれか1つに記載の集団。
【0165】
実施形態24.癌細胞は、肉腫細胞を含む、実施形態20~23のいずれか1つに記載の集団。
【0166】
実施形態25.癌細胞は、乳癌細胞を含む、実施形態20~23のいずれか1つに記載の集団。
【0167】
実施形態27.対象にインビボで投与された場合、対象中で毒性を誘発しない、実施形態13~26のいずれか1つに記載の集団。
【0168】
実施形態26.実施形態13~27のいずれか1つに記載の操作されたT細胞の集団を対象に投与することを含む方法。
【0169】
実施形態27.対象は、ヒト対象である、実施形態26に記載の方法。
【0170】
実施形態28.対象は、癌を有する、実施形態27に記載の方法。
【0171】
実施形態29.癌は、乳癌、例えばエストロゲン受容体陽性乳癌、前立腺癌、例えば皮膚、膀胱、肺、子宮頸部、子宮内膜、頭頸部及び胆道の扁平上皮腫瘍並びに/又は神経細胞腫瘍からなる群から選択される、実施形態28に記載の方法。
【0172】
実施形態30.癌は、LIV1を発現する癌細胞を含む、実施形態28又は31に記載の方法。
【0173】
実施形態31.操作されたT細胞を作製する方法であって、(a)T細胞に、RNA誘導型ヌクレアーゼと、TRAC遺伝子を標的とするgRNAと、LIV1に特異的に結合する外部ドメインを含むCARをコードする核酸を含むドナー鋳型を含むベクターとを送達すること、及び(b)破壊されたTRAC遺伝子を有し、且つCARを発現する操作されたT細胞を作製することを含む方法。
【0174】
実施形態32.TRAC遺伝子を標的とするgRNAは、配列番号18若しくは19のヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号40のヌクレオチド配列を標的とする、実施形態31に記載の方法。
【0175】
実施形態33.CARをコードする核酸は、TRAC遺伝子に対する左及び右の相同アームと隣接する、実施形態31又は32に記載の方法。
【0176】
実施形態34.T細胞に、β2M遺伝子を標的とするgRNAを送達することをさらに含む、実施形態31~33のいずれか1つに記載の方法。
【0177】
実施形態35.β2M遺伝子を標的とするgRNAは、配列番号20若しくは21のヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号41のヌクレオチド配列を標的とする、実施形態34に記載の方法。
【0178】
実施形態36.RNA誘導型ヌクレアーゼは、Cas9ヌクレアーゼ、任意選択的にS.ピオゲネス(S.pyogenes)Cas9ヌクレアーゼである、実施形態31~35のいずれか1つに記載の方法。
【0179】
実施形態37.CARの外部ドメインは、抗LIV1抗体である、実施形態31~38のいずれか1つに記載の方法。
【0180】
実施形態38.抗LIV1抗体は、抗LIV1一本鎖可変断片(scFv)である、実施形態37に記載の方法。
【0181】
実施形態39.抗LIV1 scFvは、参照抗体と同じVH相補性決定領域(CDR)及び同じVL CDRを含み、参照抗体は、(i)配列番号55に記載のVH及び配列番号56に記載のVLを含む、実施形態38に記載の方法。
【0182】
実施形態40.抗LIV1 scFvは、参照抗体と同じVH鎖及びVL鎖を含む、実施形態39の方法。
【0183】
実施形態41.抗LIV1 scFvは、配列番号54又は70のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、実施形態39に記載の方法。
【0184】
実施形態42.CARは、CD28共刺激ドメイン又は41BB共刺激ドメインを含む、実施形態31~41のいずれか1つに記載の方法。
【0185】
実施形態43.CARは、CD3z細胞質シグナル伝達ドメインをさらに含む、実施形態42に記載の方法。
【0186】
実施形態44.ドナー鋳型は、配列番号63、64、71又は72のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、実施形態31~43のいずれか1つに記載の方法。
【0187】
実施形態45.CARは、配列番号49、51、65又は67のいずれか1つのヌクレオチド配列によってコードされる、実施形態31~44のいずれか1つに記載の方法。
【0188】
本開示を下記の実施形態によりさらに例示する。
【0189】
実施形態A1.キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を含む操作されたT細胞であって、CARは、LIV1に特異的に結合する外部ドメインを含む、操作されたT細胞。
【0190】
実施形態A2.破壊されたT細胞受容体アルファ鎖定常領域(TRAC)遺伝子をさらに含む、実施形態A1に記載の操作されたT細胞。
【0191】
実施形態A3.破壊されたベータ-2-ミクログロブリン(β2M)遺伝子をさらに含む、実施形態A1又はA2に記載の操作されたT細胞。
【0192】
実施形態A4.CARの外部ドメインは、抗LIV1抗体を含む、実施形態A1~3のいずれか1つに記載の操作されたT細胞。
【0193】
実施形態A5.抗LIV1抗体は、抗LIV1一本鎖可変断片(scFv)である、実施形態A4に記載の操作されたT細胞。
【0194】
実施形態A6.抗LIV1 scFvは、参照抗体と同じ重鎖可変ドメイン(VH)相補性決定領域(CDR)及び同じ軽鎖可変ドメイン(VL)CDRを含み、参照抗体は、(i)配列番号55に記載のVH及び配列番号56に記載のVL、又は(ii)配列番号90に記載のVH及び配列番号88に記載のVLを含む、実施形態A5に記載の操作されたT細胞。
【0195】
実施形態A7.抗LIV1 scFvは、参照抗体と同じVH鎖及びVL鎖を含む、実施形態A6に記載の操作されたT細胞。
【0196】
実施形態A8.抗LIV1 scFvは、配列番号54、70、83又は86のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、実施形態A6に記載の操作されたT細胞。
【0197】
実施形態A9.CARは、CD28共刺激ドメイン又は41BB共刺激ドメインをさらに含む、実施形態A1~A8のいずれか1つに記載の操作されたT細胞。
【0198】
実施形態A10.CARは、CD3ζ細胞質シグナル伝達ドメインをさらに含む、実施形態A9に記載の操作されたT細胞。
【0199】
実施形態A11.CARは、配列番号49、51、104若しくは108のいずれか1つのヌクレオチド配列又は配列番号49、51、104若しくは108と少なくとも90%同一である核酸配列を含むヌクレオチド配列によってコードされる、実施形態A1~A10のいずれか1つに記載の操作されたT細胞。
【0200】
実施形態A12.CARをコードする核酸は、破壊されたTRAC遺伝子に挿入される、実施形態A1~A11のいずれか1つに記載の操作されたT細胞。
【0201】
実施形態A13.破壊されたTRAC遺伝子は、配列番号63、64、107若しくは111のいずれか1つのヌクレオチド配列及び/又は配列番号49、51、104若しくは108のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、実施形態A2~A12のいずれか1つに記載の操作されたT細胞。
【0202】
実施形態A14.破壊されたβ2M遺伝子は、配列番号9~14のいずれか1つから選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、実施形態A4~A13のいずれか1つに記載の操作されたT細胞。
【0203】
実施形態A15.操作されたT細胞であって、(i)破壊されたTRAC遺伝子;(ii)破壊されたβ2M遺伝子;及び(iii)抗LIV1抗原結合断片を含むCARをコードする核酸を含む操作されたT細胞。
【0204】
実施形態A16.CARは、(a)抗LIV1抗原結合断片を含む外部ドメインと、(b)CD8膜貫通ドメインと、(c)41BB共刺激ドメイン及びCD3ζ細胞質シグナル伝達ドメインを含む内部ドメインとを含む、実施形態A15に記載の操作されたT細胞。
【0205】
実施形態A17.破壊されたTRAC遺伝子は、CARをコードする核酸を含む、実施形態A15又はA16に記載の操作されたT細胞。
【0206】
実施形態A18.操作されたT細胞であって、(i)破壊されたTRAC遺伝子であって、(a)抗LIV1抗原結合断片を含む外部ドメインと、(b)CD8膜貫通ドメインと、(c)41BB共刺激ドメイン及びCD3ζ細胞質シグナル伝達ドメインを含む内部ドメインとを含むCARをコードする核酸を含む破壊されたTRAC遺伝子;及び(ii)破壊されたβ2M遺伝子を含む操作されたT細胞。
【0207】
実施形態A19.操作されたT細胞であって、(i)破壊されたTRAC遺伝子であって、配列番号50、52、105、109、68又は66のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCARをコードする核酸を含む破壊されたTRAC遺伝子;及び(ii)破壊されたβ2M遺伝子を含む操作されたT細胞。
【0208】
実施形態A20.操作されたT細胞であって、(i)破壊されたTRAC遺伝子であって、CARをコードする核酸を含み、核酸配列は、配列番号49、51、104若しくは108と少なくとも90%同一であり、且つ/又は配列番号50、52、105、109、68若しくは66のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCARをコードする、破壊されたTRAC遺伝子;及び(ii)破壊されたβ2M遺伝子を含む操作されたT細胞。
【0209】
実施形態A21.ヒトT細胞である、実施形態A1~A20のいずれか1つに記載の操作されたT細胞。
【0210】
実施形態A22.実施形態A1~A21のいずれか1つに記載の操作されたT細胞を含む細胞の集団であって、集団の操作されたT細胞の少なくとも15%又は少なくとも50%は、CARを発現する、細胞の集団。
【0211】
実施形態A23.集団の操作されたT細胞の少なくとも30%は、CARを発現する、実施形態A22に記載の集団。
【0212】
実施形態A24.集団の操作されたT細胞の少なくとも70%は、CARを発現する、実施形態A22に記載の集団。
【0213】
実施形態A25.集団の操作されたT細胞の少なくとも25%は、少なくとも7日間又は少なくとも14日間のインビトロでの増殖後にCARを発現する、実施形態A22に記載の集団。
【0214】
実施形態A26.集団の操作されたT細胞の少なくとも50%は、検出可能なレベルのT細胞受容体(TCR)タンパク質を発現しない、実施形態A22~A25のいずれか1つに記載の集団。
【0215】
実施形態A27.集団の操作されたT細胞の少なくとも90%は、検出可能なレベルのTCRタンパク質を発現しない、実施形態A26に記載の集団。
【0216】
実施形態A28.集団の操作されたT細胞の少なくとも50%は、検出可能なレベルのβ2Mタンパク質を発現しない、実施形態A22~A27のいずれか1つに記載の集団。
【0217】
実施形態A29.集団の操作されたT細胞の少なくとも70%は、検出可能なレベルのβ2Mタンパク質を発現しない、実施形態A28に記載の集団。
【0218】
実施形態A30.集団の操作されたT細胞は、LIV1を発現する癌細胞の集団とインビトロで共培養された場合、集団の癌細胞の少なくとも10%、少なくとも25%又は少なくとも50%の細胞溶解を誘発する、実施形態A22~A29のいずれか1つに記載の集団。
【0219】
実施形態A31.集団の操作されたT細胞は、LIV1を発現する癌細胞の集団とインビトロで共培養された場合、癌細胞の集団の少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%の細胞溶解を誘発する、実施形態A30に記載の集団。
【0220】
実施形態A32.集団の操作されたT細胞は、癌細胞の集団とインビトロで共培養された場合、IFNγを分泌する、実施形態A30又はA31に記載の集団。
【0221】
実施形態A33.操作されたT細胞対癌細胞の比は、1:1~2:1である、実施形態A30~A32のいずれか1つに記載の集団。
【0222】
実施形態A34.癌細胞は、肉腫細胞を含む、実施形態A30~A33のいずれか1つに記載の集団。
【0223】
実施形態A35.癌細胞は、乳癌細胞を含む、実施形態A30~A33のいずれか1つに記載の集団。
【0224】
実施形態A36.対象にインビボで投与された場合、対象中で毒性を誘発しない、実施形態A22~A35のいずれか1つに記載の集団。
【0225】
実施形態A37.操作されたT細胞を含む細胞の集団であって、操作されたT細胞は、(i)破壊されたTRAC遺伝子;(ii)破壊されたβ2M遺伝子;及び(iii)抗LIV1抗原結合断片を含むCARをコードする核酸を含む、細胞の集団。
【0226】
実施形態A38.CARは、(a)抗LIV1抗原結合断片を含む外部ドメインと、(b)CD8膜貫通ドメインと、(c)41BB共刺激ドメイン及びCD3ζ細胞質シグナル伝達ドメインを含む内部ドメインとを含む、実施形態37に記載の細胞の集団。
【0227】
実施形態A39.破壊されたTRAC遺伝子は、CARをコードする核酸を含む、実施形態A37又はA38に記載の細胞の集団。
【0228】
実施形態A40.操作されたT細胞を含む細胞の集団であって、操作されたT細胞は、(i)破壊されたTRAC遺伝子であって、(a)抗LIV1抗原結合断片を含む外部ドメインと、(b)CD8膜貫通ドメインと、(c)41BB共刺激ドメイン及びCD3ζ細胞質シグナル伝達ドメインを含む内部ドメインとを含むCARをコードする核酸を含む破壊されたTRAC遺伝子;及び(ii)破壊されたβ2M遺伝子を含む、細胞の集団。
【0229】
実施形態A41.操作されたT細胞を含む細胞の集団であって、操作されたT細胞は、(i)破壊されたTRAC遺伝子であって、CARをコードする核酸を含み、核酸配列は、配列番号49、51、104若しくは108と少なくとも90%同一であり、且つ/又は配列番号50、52、105、109、68若しくは66のCARをコードする、破壊されたTRAC遺伝子;及び(ii)破壊されたβ2M遺伝子を含む、細胞の集団。
【0230】
実施形態A42.実施形態A22~A41のいずれか1つに記載の操作されたT細胞の集団を対象に投与することを含む方法。
【0231】
実施形態A43.対象は、ヒト対象である、実施形態A42に記載の方法。
【0232】
実施形態A44.対象は、癌を有する、実施形態A43に記載の方法。
【0233】
実施形態A45.癌は、乳癌、例えばエストロゲン受容体陽性乳癌、前立腺癌、例えば皮膚、膀胱、肺、子宮頸部、子宮内膜、頭頸部及び胆道の扁平上皮腫瘍並びに/又は神経細胞腫瘍からなる群から選択される、実施形態A44に記載の方法。
【0234】
実施形態A46.癌は、LIV1を発現する癌細胞を含む、実施形態A44又はA45に記載の方法。
【0235】
実施形態A47.操作されたT細胞を作製する方法であって、(a)T細胞に、(i)RNA誘導型ヌクレアーゼと、(ii)TRAC遺伝子を標的とするgRNAと、(iii)LIV1に特異的に結合する外部ドメインを含むCARをコードする核酸を含むドナー鋳型を含むベクターとを送達すること、及び(b)破壊されたTRAC遺伝子を有し、且つCARを発現する操作されたT細胞を作製することを含む方法。
【0236】
実施形態A48.TRAC遺伝子を標的とするgRNAは、配列番号18若しくは19のヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号40のヌクレオチド配列を標的とする、実施形態A47に記載の方法。
【0237】
実施形態A49.T細胞に、β2M遺伝子を標的とするgRNAを送達することをさらに含む、実施形態A47又はA48に記載の方法。
【0238】
実施形態A50.β2M遺伝子を標的とするgRNAは、配列番号20若しくは21のヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号41のヌクレオチド配列を標的とする、実施形態A49に記載の方法。
【0239】
実施形態A51.CARの外部ドメインは、抗LIV1抗体を含む、実施形態A47~A50のいずれか1つに記載の方法。
【0240】
実施形態A52.抗LIV1抗体は、抗LIV1一本鎖可変断片(scFv)である、実施形態A51に記載の方法。
【0241】
実施形態A53.抗LIV1 scFvは、参照抗体と同じ重鎖可変ドメイン(VH)相補性決定領域(CDR)及び同じ軽鎖可変ドメイン(VL)CDRを含み、参照抗体は、(i)配列番号55に記載のVH及び配列番号56に記載のVL、又は(ii)配列番号90に記載のVH及び配列番号88に記載のVLを含む、実施形態A52に記載の方法。
【0242】
実施形態A54.抗LIV1 scFvは、参照抗体と同じVH鎖及びVL鎖を含む、実施形態A53に記載の方法。
【0243】
実施形態A55.抗LIV1 scFvは、配列番号54、83、86又は70のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、実施形態A53に記載の方法。
【0244】
実施形態A56.CARは、CD28共刺激ドメイン又は41BB共刺激ドメインをさらに含む、実施形態A47~A56のいずれか1つに記載の方法。
【0245】
実施形態A57.CARは、CD3ζ細胞質シグナル伝達ドメインをさらに含む、実施形態A56に記載の方法。
【0246】
実施形態A58.CARは、配列番号49、51、104若しくは108のいずれか1つのヌクレオチド配列又は配列番号49、51、104若しくは108と少なくとも90%同一である核酸配列を含むヌクレオチド配列によってコードされる、実施形態A47~A57のいずれか1つに記載の方法。
【0247】
実施形態A59.CARをコードする核酸は、TRAC遺伝子に対する左及び右の相同アームと隣接する、実施形態A47~A58のいずれか1つに記載の方法。
【0248】
実施形態A60.ドナー鋳型は、配列番号63、64、107又は111のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、実施形態A47~A59のいずれか1つに記載の方法。
【0249】
実施形態A61.RNA誘導型ヌクレアーゼは、Cas9ヌクレアーゼ、任意選択的にS.ピオゲネス(S.pyogenes)Cas9ヌクレアーゼである、実施形態A47~A60のいずれか1つに記載の方法。
【0250】
実施形態A62.実施形態A47~A61のいずれか1つに記載の方法によって作製される操作されたT細胞。
【0251】
実施形態A63.実施形態A62に記載の操作されたT細胞を含む細胞の集団。
【0252】
実施形態A64.対象の癌を処置する方法であって、実施形態A22~A41又はA63のいずれか1つ又は実施形態A62に記載の細胞の集団を対象に投与することを含む方法。
【0253】
実施形態A65.癌は、膵癌、胃癌、卵巣癌、子宮癌、乳癌、前立腺癌、精巣癌、甲状腺癌、上咽頭癌、非小細胞肺(NSCLC)、膠芽腫、神経細胞、軟部肉腫、白血病、リンパ腫、黒色腫、結腸癌、結腸腺癌、脳膠芽腫、肝細胞癌、肝臓胆管癌、骨肉腫、胃癌、食道扁平上皮癌、進行期の膵癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、肺小細胞癌、腎癌及び肝内胆道癌からなる群から選択される、実施形態A64に記載の方法。
【0254】
実施形態A66.癌は、LIV1を発現する癌細胞を含む、実施形態A64又はA65に記載の方法。
【実施例
【0255】
実施例1.CAR T細胞の生成及びCARの発現
活性化された初代ヒトT細胞にCas9:gRNA RNP複合体及びアデノ随伴アデノウイルスベクター(AAV)をエレクトロポレートして、TRAC/β2M/抗Liv1a CAR T細胞を生成した。抗Liv1a CAR(971(配列番号49)、972(配列番号65)、972b(配列番号67)、973(配列番号95)、974(配列番号100)、975(配列番号104)及び976(配列番号108))をコードするヌクレオチド配列の1つを含む組換えAAV血清型6(AAV6)をCas9:sgRNA RNP(1μM Cas9、5μM gRNA)と共に、活性化された同種ヒトT細胞に送達した。下記のsgRNAを使用した:TRAC(配列番号28)及びβ2M(配列番号30)。gRNAの未改変バージョン(又は他の改変バージョン)も使用され得る(例えば、配列番号18又は20)。
【0256】
エレクトロポレーションの約1週間後、細胞をフローサイトメトリーのために処理して、編集された細胞集団の細胞表面でのTRAC、β2M及び抗Liv1a CAR発現レベルを評価した(図1)。全ての抗Liv1a CAR T細胞及びTRAC/β2M対照細胞に関して、生存細胞の90%超がTCRの発現を欠いており、60%超がβ2Mの発現を欠いていた。975及び976 Liv1a CARをコードするコンストラクトで処理された細胞は、抗Liv1a CARを発現する生存細胞の割合が最も高かった(>30%)。
【0257】
実施例2.細胞毒性
細胞死滅アッセイ。細胞死滅(細胞毒性)アッセイを使用して、TRAC-/β2M-/抗Liv1a CAR+ T細胞の、接着性腎癌細胞系統及び乳癌細胞系統(それぞれA498及びZR-75-1)で細胞溶解を引き起こす能力を評価した。接着細胞を1つのウェル当たり50,000個の細胞で96ウェルプレートに播種し、37℃で一晩放置した。翌日、標的細胞を含むウェルにT細胞を8:1、4:1、2:1又は1:1のT細胞:標的細胞の比で添加した。陰性対照として、TRAC-/β2M- T細胞を使用した。約24時間後、100μLの上清をサイトカインの定量(下記を参照されたい)のために取り出し、T細胞を吸引により培養物から除去し、このプレートの各ウェルに100μLのCellTiter-Glo(登録商標)(Promega)を添加して、残存する生存細胞の数を評価した。次いで、各ウェルから放出された光の量を、プレートリーダーを使用して定量した。抗Liv1a CAR T細胞(特にCTX971コンストラクト、CTX975コンストラクト及びCTX976コンストラクトを発現するもの)は、A498細胞系統(図2A)及びZR-75-1細胞系統(図2B)に対する強力な細胞毒性を示した。
【0258】
実施例3.エフェクターサイトカインの分泌
磁気マイクロスフェア、抗ヒトIFNγビーズ(Millipore、カタログ# HCYIFNG-MAG)及び抗ヒトIL-2ビーズ(Millipore、カタログ# HIL2-MAG)をそれぞれ使用するMILLIPLEX MAP Human Cytokine/Chemokine Magnetic Bead Panel-Immunology Multiplex Assayキット(Millipore、カタログ# HCYTOMAG-60K)を使用して、細胞毒性アッセイからのサンプル中でのIFN-γ及びIL-2の分泌を定量した。このアッセイを製造業者のプロトコルに従って実行した。MILLIPLEX(登録商標)標準物質サンプル及び品質管理(QC)サンプルを再構成し、10,000pg/mLから3.2pg/mLへの作業標準物質の連続希釈液を調製した。各プレートにMILLIPLEX(登録商標)標準物質、QC及び細胞上清を添加し、アッセイ培地を使用して上清を希釈した。全てのサンプルを2時間にわたり抗ヒトIFNγ及び抗ヒトIL-2ビーズと共にインキュベートした。インキュベーション後、このプレートを、自動磁気プレート洗浄機を使用して洗浄した。各ウェルにヒトサイトカイン/ケモカイン検出抗体溶液を添加し、1時間にわたりインキュベートし、続いて30分にわたりストレプトアビジン-フィコエリトリンと共にインキュベートした。その後、このプレートを洗浄し、サンプルを150μLのSheath Fluidで再懸濁させ、5分にわたりプレート振盪機で撹拌した。サンプルを、xPONENT(登録商標)ソフトウェアと共にLuminex(登録商標)100/200(商標)装置を使用して読み取り、データの取得及び解析を、MILLIPLEX(登録商標)Analystソフトウェアを使用して完了させた。蛍光強度の中央値(MFI)データを、5パラメータのロジスティック曲線適合法を使用して自動的に解析して、未知のサンプル中で測定されたサイトカイン濃度を算出した。
【0259】
図3A~3Dに示すように、CTX971、975又は976 CARを含む同種T細胞は、バックグラウンド(標的細胞系統と共培養された2KO/AAV neg T細胞)を有意に超えるレベルで標的細胞系統A498及びZR-75-1と共培養された場合、エフェクターサイトカインインターフェロン-γ(3A、B)及びインターロイキン-2(3C、D)を分泌した。
【0260】
【表6】
【0261】
【表7】
【0262】
【表8】
【0263】
【表9】
【0264】
【表10】
【0265】
【表11】
【0266】
【表12】
【0267】
【表13】
【0268】
【表14】
【0269】
【表15】
【0270】
【表16】
【0271】
【表17】
【0272】
【表18】
【0273】
【表19】
【0274】
【表20】
【0275】
【表21】
【0276】
【表22】
【0277】
【表23】
【0278】
【表24】
【0279】
【表25】
【0280】
【表26】
【0281】
【表27】
【0282】
【表28】
【0283】
【表29】
【0284】
【表30】
【0285】
【表31】
【0286】
【表32】
【0287】
【表33】
【0288】
【表34】
【0289】
【表35】
【0290】
【表36】
【0291】
【表37】
【0292】
【表38】
【0293】
【表39】
【0294】
【表40】
【0295】
【表41】
【0296】
【表42】
【0297】
【表43】
【0298】
【表44】
【0299】
【表45】
【0300】
【表46】
【0301】
【表47】
【0302】
【表48】
【0303】
【表49】
【0304】
【表50】
【0305】
【表51】
【0306】
本明細書で開示されている全ての参考文献、特許及び特許出願は、それぞれ引用されている主題に関して参照により組み込まれており、場合により文献の全体を包含する場合がある。
【0307】
不定冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、反対に明確に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味するものと理解されるべきである。
【0308】
同様に、反対に明確に示されない限り、複数の工程又は行為を含む、本明細書で特許請求されている任意の方法において、この方法の工程又は行為の順序は、必ずしもこの方法の工程又は行為が列挙される順序に限定されないことも理解されるべきである。
【0309】
特許請求の範囲及び上記明細書において、「含む」、「包含する」、「保有する」、「有する」、「含有する」、「関与する」、「保持する」、「構成する」等の全ての移行句は、オープンエンド、即ち含むが、限定されないことを意味するものと理解される。「からなる」及び「本質的にからなる」という移行句のみが、United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures 2111.03に規定されるとおり、それぞれクローズド移行句又はセミクローズド移行句となるものとする。
【0310】
数値に先行する「約」及び「実質的に」という用語は、列挙された数値の±10%を意味する。
【0311】
値の範囲が提供される場合、この範囲の上限と下限との間の各値は、本明細書において具体的に企図及び記載されている。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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