(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】不活性ガスを使用する3Dプリンティングシステムにおける光開始重合反応の酸素阻害を防止するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/371 20170101AFI20240412BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20240412BHJP
B29C 64/264 20170101ALI20240412BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240412BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240412BHJP
C08J 3/28 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
B29C64/371
B29C64/106
B29C64/264
B33Y10/00
B33Y30/00
C08J3/28 CER
(21)【出願番号】P 2021533301
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(86)【国際出願番号】 IB2019060453
(87)【国際公開番号】W WO2020121132
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-12-02
(32)【優先日】2018-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519016549
【氏名又は名称】アイオー テック グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ゼノウ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ジラン ジブ
(72)【発明者】
【氏名】リプツ ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】シャイ ユヴァル
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-318050(JP,A)
【文献】特開平03-055225(JP,A)
【文献】特開平02-103128(JP,A)
【文献】特表2013-541849(JP,A)
【文献】特開2018-103405(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0065303(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0065296(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3Dプリンティングシステムによって使用される周囲条件での光開始重合反応の酸素阻害を防止するシステムであって、
UV光源(26)と、
UV硬化性材料の層(36)を有する加工物(34)を受け入れるUV硬化スペース(40)と、
前記UV光源(26)が前記UV硬化性材料の層(36)に光を放射するときに、前記UV硬化スペース(40)内で前記UV硬化性材料のUV硬化を促進するため前記UV硬化スペースから酸素をパージする手段と、
を備え、
酸素をパージする前記手段が、前記UV光源(26)と前記加工物(34)のUV硬化性材料の層(36)との間のワークスペースに不活性ガスを導入するガス拡散システム(22)と、前記UV光源(26)と前記ワークスペースを分離する透明カバー(24)と、を含み、前記ガス拡散システム(22)と前記透明カバー(24)は、前記ガス拡散システム(22)の1又は2以上のガス入口(28)から流入する不活性ガスがディフューザー(30)を通って前記ワークスペースに向かって流出できるように、互いに対して配置されており、前記ディフューザー(30)が、UV透過性材料のブリッジ(42)を有する複数の微細孔(38)を有し、前記UV透過性材料のブリッジが、前記微細孔(38)へのそれぞれの入口と前記UV光源との間に位置付けられるように前記微細孔上に配置される、システム(20)。
【請求項2】
前記システム全体に一定の圧力を確保するためのガス圧ホモジナイザー(32)を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ディフューザー(30)は、前記UV光源(26)からのUV光を透過させることを可能にするUV透過性材料で作られている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記微細孔(38)は、前記ワークスペース全体にわたってガス分布及びUV光分布を最適化するように、互いに対してサイズ及び間隔が設定されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記微細孔(38)は、ガスが前記ワークスペース全体にわたってほぼ均等に分配されるようにアレイ内で互いに対して間隔をあけて配置され、UV光が前記ワークスペース内でほぼ均等に分配されるように均等なサイズにされる、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
ガスが前記ワークスペース全体にわたってほぼ均等に分配され、UV光が前記ワークスペース内でほぼ均等に分配されるように、前記微細孔(38)がアレイ状に互いに対して間隔を置いて配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記不活性ガスの温度が均一な反応温度を生成するように制御される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
所望の均一な反応温度を維持するように前記不活性ガスが加熱される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
3Dプリンティングシステムによって使用される周囲条件での光開始重合反応の酸素阻害を防止する方法であって、
UV光源(26)からUV硬化スペース(40)に
UV光を周期的に照射するステップであって、前記UV硬化スペースは、UV硬化性フォトポリマーの層(36)を有する加工物(34)が前記UV硬化スペース(40)内で前記UV硬化性フォトポリマーのUV硬化を促進するように配置される、ステップと、
前記UV光源(26)が前記UV硬化性フォトポリマーの層(36)に光を放射するときに、前記UV硬化スペース(40)から酸素をパージするステップと、
前記UV硬化スペースから酸素をパージするステップは、ガス拡散システム(22)を介して、前記UV光源(26)と前記加工物(34)のUV硬化性フォトポリマーの層(36)との間のワークスペースに不活性ガスを導入するステップと、
を含
み、
前記不活性ガスは、前記ガス拡散システム(22)の1又は2以上のガス入口(28)と、前記UV光源(26)及び前記ワークスペースを分離する透明なディフューザー(30)の複数の微細孔(38)を通して前記ワークスペースに向けて導入され、
前記UV光源(26)からのUV光は、前記加工物(34)のUV硬化性フォトポリマーの層(36)に向かって、前記ディフューザー(30)の前記微細孔(38)上に配置されたUV透過性材料のブリッジ(42)を通過する方法。
【請求項10】
前記不活性ガスは、前記微細孔(38)を介して前記ワークスペース全体にほぼ均一に分配される、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記UV光は、前記微細孔(38)を介して前記ワークスペース内にほぼ均一に分配される、請求項
9に記載の方法。
【請求項12】
前記不活性ガスの温度は、均一な反応温度を生成するように制御される、請求項
9に記載の方法。
【請求項13】
前記不活性ガスは、所望の均一な反応温度を維持するように加熱される、請求項
9に記載の方法。
【請求項14】
前記UV硬化スペース(40)から酸素のパージするステップは、前記加工物(34)上のUV硬化性フォトポリマーの層(36)の堆積中に、前記加工物(34)が配置される前記UV硬化スペース(40)にディフューザー(30)を通して不活性ガスを導入することによって開始され、不活性ガスは、前記ディフューザー(30)に隣接する領域から酸素をパージするのに十分な圧力まで導入される、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
UV硬化性フォトポリマーの層(36)の硬化後に、UV硬化性材料の次の層の堆積のために前記加工物(34)を再配置し、前記ディフューザーに隣接する前記領域の不活性ガス圧を低下するステップを更に含む、請求項
14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2018年12月11日に提出された米国仮出願番号62/777,902に対する優先権を主張する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、不活性ガス流を使用して反応表面から酸素をパージすることにより3Dプリンティングシステムにより使用される光開始重合反応の酸素阻害を防止するシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
多くの付加製造、又はいわゆる3次元(「3D」)プリンティング応用では、紫外線(「UV」)光硬化性ポリマーを使用する。UV硬化プロセスは、光開始、進行、及び終了の3段階からなる。光開始時に、UV放射に晒されると、光開始剤がフリーラジカルを生成する。これらのフリーラジカルは、近くのモノマーと反応してこれらをフリーラジカルに変換する。次に、進行段階で、フリーラジカルモノマーが他のモノマーと結合し、これらのモノマーをフリーラジカルに変える。このようにして、モノマーはポリマー鎖を形成する。プロセスは終端に到るまで継続する。2つの鎖が互いに結合する場合、フリーラジカルがモノマーに移行し、又は鎖がモノマーではなく環境からの分子と反応する場合など、終端は、様々な方法で発生することができる。
【0004】
酸素とフォトポリマーの間には、硬化を阻害する2つの相互作用、すなわち、クエンチングとスカベンジングがある。光開始剤は、UV放射線に曝露されることにより励起された後、フリーラジカルを生成する。分子状酸素はこのフリーラジカルと容易に反応し、連鎖成長プロセスでモノマーとの反応を阻止する。これがクエンチング反応である。この反応はまた、酸素フリーラジカルを生成する。スカベンジング反応では、この酸素フリーラジカルは、進行するポリマー鎖の一部であるフリーラジカルと反応する。この反応によりフリーラジカルの反応性が低下し、重合プロセスが早期に終了することになる。これら2つのプロセスは、以下のように記述することができる。
クエンチング反応: PI*+O2 ⇒ PI+O2
*
スカベンジング反応: R・+O2
* ⇒ R-O-O・
【0005】
これらの現象に起因して、3Dプリンティングプロセスの硬化中にフォトポリマーが酸素に晒された場合、空気に晒された表面上に未硬化のポリマー在留物がもたらされる可能性がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一実施形態では、UV硬化システムは、UV光源と加工物のUV硬化層との間のワークスペースに不活性ガスを導入するためのガス拡散システムを含む。透明カバーがUV光源とワークスペースを分離しており、不活性ガス(例えば、Ar、CO2、He、Neなど)がガス入口から流入し、ディフューザーを通って加工物に向かって流出する。ガス圧ホモジナイザーを用いて、システム全体で一定の圧力を確保する。ディフューザーは、UV光源からのUV光が通過できるように、透明又は拡散素材で作られる。ディフューザーは、不活性ガスが加工物に向かって通過するための微細孔のアレイを含む。孔の直径が小さいため、ガスがワークスペース全体(すなわち、硬化領域全体)に均等に分配されるように、最密充填アレイを可能にする。孔の直径が小さいということはまた、ディフューザーの表面のより広い領域に孔がなく、光学特性がより均質になることを意味する。これにより比較的均一な配光が確保される。孔は、ディフューザーが作られるUV透過性材料の「ブリッジ」で覆われている。これにより、ディフューザーを通過するすべての光が、少なくとも幾らかの厚みの透過性材料を通過し、配光が更に向上する。
【0007】
加工物の表面にUV硬化性材料が堆積され、加工物がUV硬化システムのワークスペースに導入された後、不活性ガスがディフューザーを通してポンプ送給される。このガスの流れは、ディフューザーに隣接するワークスペースの領域から酸素をパージする。この領域の厚さは、ディフューザーを通って送り込まれるときのガス圧に関係する。酸素がパージされたワークスペースの領域に加工物が維持された状態では、UV硬化システムは、UV光源からの光に曝露することでUV硬化性材料の層を硬化させる。
【0008】
本発明の更なる実施形態は、UV光源からUV硬化性材料の層を有する加工物が配置されているUV硬化スペースにUV光を周期的に放出し、UV硬化スペース内で、UV硬化性材料をUV硬化させ、UV光源がUV硬化性材料の層に光を放射するときにUV硬化スペースから酸素をパージすることによって、光開始重合反応の酸素阻害を防止することを提供する。UV硬化スペースから酸素をパージすることは、ガス拡散システムを介して、UV光源と加工物のUV材料の層との間のワークスペースに不活性ガスを導入することを含む。例えば、不活性ガスは、ガス拡散システムの1又は2以上のガス入口を介し、UV光源とワークスペースを分離する透明なディフューザーの複数の微細孔を通ってワークスペースに向けて導入することができる。UV光源からのUV光は、加工物のUV材料の層に向かって上記ディフューザーの微細孔上に配置されたUV透過性材料のスルーブリッジとすることができる。従って、不活性ガス及びUV光は各々、微細孔を介してワークスペース全体にほぼ均等に分配される。
【0009】
本発明の幾つかの実施形態では、不活性ガス流を使用して、硬化中にUV硬化性材料を均一に加熱するか、又は不活性ガス温度を制御することによりUV硬化スペースの温度を制御する。
【0010】
本発明のこれら及び更なる実施形態は、本発明は限定ではなく例証として示されている添付図面を参照しながら以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1a】従来の3Dプリンティングプロセスにおけるプリンティングされた物体を示す図である。
【
図1b】従来の3Dプリンティングプロセスにおける、物体上に堆積されたUV硬化性材料の層を示す図である。
【
図1c】従来の3Dプリンティングプロセスにおける、UV硬化性材料の層がUV光への曝露によって硬化される図である。
【
図2】UV硬化プロセス中の重合プロセスの酸素阻害を防止するために不活性ガス流が配置されている、本発明の一実施形態に従って構成されたUV硬化システムを示す図である。
【
図4a】
図2に示すUV硬化システム用のUV光源及びガスディフューザーの配置の一例を示す図である。
【
図4b】
図2に示すUV硬化システム用のUV光源及びガスディフューザーの配置の一例を示す図である。
【
図5a】
図4に示すUV硬化システム用のガスディフューザー構成の態様を示す図である。
【
図5b】
図4に示すUV硬化システム用のガスディフューザー構成の態様を示す図である。
【
図6a】
図2に示すUV硬化システム、特にプリンティングのシーケンス、不活性ガス流、及びUV硬化プロセス(
図6a)、及び一面の無酸素層(
図6b)の動作の態様を示す図である。
【
図6b】
図2に示すUV硬化システム、特にプリンティングのシーケンス、不活性ガス流、及びUV硬化プロセス(
図6a)、及び一面の無酸素層(
図6b)の動作の態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を詳細に説明する前に、概要を説明すると有用である。
図1a、1b、及び1cに示される一連の画像を参照すると、物体10が製造されている多くの3Dプリンティングプロセスでは、表面16上にUV硬化性材料14を堆積するために、材料プリンティングシステム12が使用される。この堆積材料は、UV光源18で硬化されて、所望の部品10′の新しい層を生成する。このプロセスは、製造中の部品が完成するまで続く。
【0013】
本発明の実施形態は、周囲条件での光開始重合反応の酸素阻害を防止するためのシステム及び方法を提供する。ここで
図2を参照すると、本発明の一実施形態では、UV硬化システム20は、ガス拡散システム22を備えている。透明カバー24は、UV光源26とガス拡散システム22との間に配置されている。ガスは、ガス入口28から流入し、システムの底部にあるディフューザー30を通って流出する。ガス圧ホモジナイザー32を使用して、システム全体で一定の圧力を確保する。
【0014】
ディフューザー30は、UV光が加工物34上、特にその上に配置されたUV硬化性材料36の層上を通過できるように透明又は拡散材料で作られている。ディフューザー30は、微細孔38のアレイからなる。微細孔の直径が小さいため、ガスが硬化領域40全体に均一に分配されるように、微細孔の最密充填アレイが可能になる。微細孔38の直径が小さいということはまた、ディフューザー30の表面のより大きな領域に孔がなく、その光学特性をより均質にすることを意味する。これにより、より均一な配光が確保される。もちろん、硬化領域全体のガス分布及び配光を最適化するために、微細孔の他の配置及びサイズ設定を利用することができる。微細孔38は、ディフューザーが作られる材料の「ブリッジ」42で覆われている。これにより、ディフューザーを通過するすべての光が、透明材料の一部の領域を通過する必要がある。これにより、配光性が更に向上する。
【0015】
ここで
図3aを参照すると、UV硬化性材料36がプリンティング面上に堆積された後、ガスは、ガス入口28を介してディフューザー30を通ってポンプ送給される。このガスの流れは、ディフューザー30に隣接する領域44から酸素をパージする。この領域の厚さは、ディフューザーを通って送り込まれるときのガス圧に関係する。その後、
図3(b)に示すように、必要に応じて、製造中のデバイスを引き上げて、その上に配置されたUV硬化性材料36の層が無酸素領域44内に配置され、UV硬化システム20のUV源26が作動して、これにより、UV光48に晒された領域において製造を受ける部品のUV硬化性材料36の層の少なくとも一部36′を硬化させる。場合によっては、ガスがディフューザー30を介してポンプ送給されるときに、UV硬化性材料の層36が既に無酸素領域44内にあるので、製造中のデバイスを移動させる必要はない。本発明の実施形態では、ディフューザー30を通してポンプ送給されるガスは、UV硬化層36内のフォトポリマーと硬化を阻止するような相互作用をしない限り、不活性ガス(例えば、Ar、CO2、He、Neなど)であることが好ましい。
【0016】
幾つかの実施形態では、供給ガスの温度を制御して(例えば、ガス入口28の前及び/又はガス拡散システム22内で提供される加熱により)、加工物34の近傍にて均一な反応温度を生成することができる(例えば、加工物34の表面に配置されたUV硬化性材料36の層の硬化が行われる空間内)。例えば、不活性ガスは、ガス拡散システム22に導入する前に加熱して、UV硬化性材料の層36が配置されている加工物34の表面付近で所望の均一な反応温度を維持することができる。
【0017】
図4a及び4bは、ガス拡散システム22の一例を示す。
図4aでは、フロントカバー50が所定の位置にあり、
図4(b)では、ガス拡散システム22の内部の様子を示すために取り除かれている。この例では、ガス拡散システム22は、例えば、1又は2以上の発光ダイオード(LED)で構成されたUV光源26をボックスの上部内に搭載した直線ボックスである。ガスディフューザー30は、箱の底面を形成している。上述のように、ガスディフューザーは、光源26からのUV光が比較的減衰されずに通過できるように、透明な材料で作られている(構成中の部品を製造するのに使用される光硬化性材料の硬化に必要な照明の波長で)。
【0018】
図5a及び5bは、ディフューザー30の構造を強調している。上述のように、ブリッジ42(図示の例では、ディフューザー30の上面にわたって長手方向に延びるリブとして構築されている)は、ガス流孔38の上方に配置され、ガス拡散システム22にディフューザーと及びUV光源が組み込まれたときにUV光源26とガス流孔38との間の光路にある。これにより、硬化領域全体にわたり、UV光が少なくともある程度の厚さの透過性材料を通過することが保証される。これにより、光の均一性が向上し、UV硬化層36のフォトポリマーの硬化がより均一になる。
【0019】
図4bに戻ると、ガスは、1又は2以上の入口孔28を介して拡散システム22に入り(例えば、ポンプ装置の作用によって)、ディフューザー30を通って流出する。ガス圧ホモジナイザー(図示せず)を用いて、システム全体で一定の圧力を確保する。
【0020】
図6a及び
図6bは、プリンティング及び硬化プロセスで利用される協働動作を示している。次の層(6a-10)のプリンティングは、製造中の物体のプリンティング面にUV硬化性材料の層を堆積することから始まる。この堆積の終わりに向かって、
図6aのガス圧力曲線に示されるように、ガスは、ガス入口28を介してディフューザー30を通ってポンプ送給52される。ガス圧は、硬化プロセス(6a-20)に必要なレベルまで上昇し、ディフューザー30に隣接する領域44から酸素をパージする。この領域の厚さ(H)は、
図6aの無酸素領域の厚さ曲線に示されているように、時間の経過とともに増加し、ディフューザーを通って押し込まれる際のガス圧に関係する。所望の厚さH*が得られると、製造中のデバイスが引き上げられ(必要な場合)、加工物上に配置されたUV硬化性材料の層が無酸素領域44内にあり、次に、
図6aのUV光源曲線に示すように、UV硬化システム20のUV光源26が作動する(6a~30)。これにより、UV光に晒された領域の加工物上に配置されたUV硬化性材料の層の少なくとも一部が硬化する。硬化(6a-40)の完了時に、加工物は、UV硬化性材料の次の層の堆積のために再配置され、ガス圧が低下する。好ましくは、ガス圧は、次の硬化サイクルに必要な時間を短縮するために、拡散システム22が充填された状態を維持するのに十分なレベルに維持される。必要な層数が硬化すると、プロセスが終了する。
【0021】
(実施形態)
実施形態1. 周囲条件での光開始重合反応の酸素阻害を防止するシステムであって、
紫外線(UV)光源と、
UV硬化性材料の層を有する加工物を受け入れるUV硬化スペースと、
UV光源がUV硬化性材料の層に光を放射するときに、UV硬化スペース内でUV硬化性材料のUV硬化を促進するためUV硬化スペースから酸素をパージする手段と、
を備えるシステム。
【0022】
実施形態2. 酸素をパージする手段が、UV光源と加工物のUV材料の層との間のワークスペースに不活性ガスを導入するガス拡散システムと、UV光源とワークスペースを分離する透明カバーと、を含み、ガス拡散システムと透明カバーは、ガス拡散システムの1又は2以上のガス入口から流入する不活性ガスがディフューザーを通ってワークスペースに向かって流出できるように、互いに対して配置されている、実施形態1に記載のシステム。
【0023】
実施形態3. ディフューザーが、UV透過性材料のブリッジを有する複数の微細孔を有し、UV透過性材料のブリッジが、微細孔へのそれぞれの入口とUV光源との間に位置付けられるように微細孔上に配置される、実施形態1~2の何れかに記載のシステム。
【0024】
実施形態4. システム全体に一定の圧力を確保するためのガス圧ホモジナイザーを更に備える、実施形態1~3の何れかに記載のシステム。
【0025】
実施形態5. ディフューザーは、UV光源からのUV光を透過させることを可能にするUV透過性材料で作られている、実施形態1~4の何れかに記載のシステム。
【0026】
実施形態6. 微細孔が、ワークスペース全体にわたってガス分布及びUV光分布を最適化するように、互いに対してサイズ及び間隔が設定されている、実施形態1~5の何れかに記載のシステム。
【0027】
実施形態7. 微細孔は、ガスがワークスペース全体にわたってほぼ均等に分配されるようにアレイ内で互いに対して間隔をあけて配置され、UV光がワークスペース内でほぼ均等に分配されるように均等なサイズにされる、実施形態1~6の何れかに記載のシステム。
【0028】
実施形態8. ガスがワークスペース全体にわたってほぼ均等に分配され、UV光がワークスペース内でほぼ均等に分配されるように、微細孔がアレイ状に互いに対して間隔を置いて配置される、実施形態1~7の何れかに記載のシステム。
【0029】
実施形態9. 不活性ガスの温度が均一な反応温度を生成するように制御される、実施形態1~8の何れかに記載のシステム。
【0030】
実施形態10. 所望の均一な反応温度を維持するように不活性ガスが加熱される、実施形態1~9の何れかに記載のシステム。
【0031】
実施形態11. 周囲条件での光開始重合反応の酸素阻害を防止する方法であって、
UV光源からUV硬化スペースに紫外(UV)光を周期的に照射するステップであって、UV硬化スペースは、UV硬化性材料の層を有する加工物がUV硬化スペース内でUV硬化性材料のUV硬化を促進するように配置される、ステップと、
UV光源がUV硬化性材料の層に光を放射するときに、UV硬化スペースから酸素をパージするステップと、
を含む方法。
【0032】
実施形態12. UV硬化スペースから酸素をパージするステップが、ガス拡散システムを介して、UV光源と加工物のUV材料の層との間のワークスペースに不活性ガスを導入するステップを含む、実施形態11に記載の方法。
【0033】
実施形態13. 不活性ガスが、ガス拡散システムの1又は2以上のガス入口と、UV光源及びワークスペース分離する透明なディフューザーの複数の微細孔を通してワークスペースに向けて導入される、実施形態11又は12の何れかに記載の方法。
【0034】
実施形態14. UV光源からのUV光が、加工物のUV材料の層に向かって、ディフューザーの微細孔上に配置されたUV透過性材料のブリッジを通過する、実施形態11~13の何れかに記載の方法。
【0035】
実施形態15. 不活性ガスが、微細孔を介してワークスペース全体にほぼ均一に分配される、実施形態11~14の何れかに記載の方法。
【0036】
実施形態16. UV光が、微細孔を介してワークスペース内にほぼ均一に分配される、実施形態11~15の何れかに記載の方法。
【0037】
実施形態17. 不活性ガス温度が、均一な反応温度を生成するように制御される、実施形態11~16の何れかに記載の方法。
【0038】
実施形態18. 不活性ガスが、所望の均一な反応温度を維持するように加熱される、実施形態11~17の何れかに記載の方法。
【0039】
実施形態19. UV硬化スペースから酸素をパージするステップが、加工物上へのUV硬化性材料の層の堆積中に、加工物が配置されるUV硬化スペースにディフューザーを通して不活性ガスを導入するステップを含み、不活性ガスは、ディフューザーに隣接する領域から酸素をパージするのに十分な圧力まで導入される、実施形態11に記載の方法。
【0040】
実施形態20. UV硬化性材料の層の硬化後に、UV硬化性材料の次の層の堆積のために加工物を再配置し、ディフューザーに隣接する領域の不活性ガス圧を低下するステップを更に含む、実施形態11又は19の何れかに記載の方法。
【0041】
このように、不活性ガス流を使用して反応表面から酸素をパージすることにより、又は酸素を反応表面から除去することにより、光開始重合反応の酸素阻害を防止するシステムが記載された。
【符号の説明】
【0042】
20 UV硬化システム
22 ガス拡散システム
28 ガス入口
30 ガスディフューザー
34 加工物
36 UV硬化性材料
44 無酸素領域
48 UV光