(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用負極活物質、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/587 20100101AFI20240412BHJP
【FI】
H01M4/587
(21)【出願番号】P 2021535986
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(86)【国際出願番号】 KR2019017223
(87)【国際公開番号】W WO2020130443
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-06-18
(31)【優先権主張番号】10-2018-0165639
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0165645
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(73)【特許権者】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(73)【特許権者】
【識別番号】523180436
【氏名又は名称】ポスコヒューチャーエム株式会社
【氏名又は名称原語表記】POSCO FUTURE M CO. LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】アン、 ジョン-チョル
(72)【発明者】
【氏名】パク、 シ ミン
(72)【発明者】
【氏名】イ、 ガン ホ
(72)【発明者】
【氏名】チョ、 ムンキュ
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ビョン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ユン、 ジョン フン
(72)【発明者】
【氏名】ジョ、 ヒュン―チョル
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0133749(KR,A)
【文献】特開2007-141830(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0051083(KR,A)
【文献】特開2017-050184(JP,A)
【文献】国際公開第2018/198377(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/025376(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00 - 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリーンコークスを含む炭素原料を用いて一次粒子を製造する段階;
前記一次粒子とバインダーとを混合して
グリーンコークスを含む二次粒子を製造する段階;
前記二次粒子を炭化する段階;
前炭化した二次粒子を摩砕する段階;および
前記摩砕した二次粒子を黒鉛化して黒鉛材を製造する段階を含み、
前記摩砕した二次粒子を黒鉛化して黒鉛材を製造する段階で、前記製造された黒鉛材の二次粒子のD50粒径に対するD90粒径とD10粒径との差の比((D90-D10)/D50)は1.09~1.2であり、
前記摩砕した二次粒子を黒鉛化して黒鉛材を製造する段階で、前記製造された黒鉛材の比表面積(BET)は0.6~2.0m
2/gであり、
前記摩砕した二次粒子を黒鉛化して黒鉛材を製造する段階で、前記製造された黒鉛材の二次粒子の球形化度は0.9~1.0であるリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項2】
前記グリーンコークスを含む炭素原料を用いて一次粒子を製造する段階で、前記製造された一次粒子の粒径(D50)は5.5~10.0μmである、請求項
1に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項3】
前記グリーンコークスを含む炭素原料を用いて一次粒子を製造する段階において、
前記グリーンコークスは、針状コークス、等方性コークス、ピッチコークスまたはこれらの組み合わせを含む、請求項
1に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項4】
前記グリーンコークスを含む炭素原料を用いて一次粒子を製造する段階は、
前記炭素原料を粉砕および摩砕する段階を含む、請求項
1に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項5】
前記一次粒子とバインダーとを混合して二次粒子を製造する段階において、
前記一次粒子100重量部に対して、
前記バインダーは2~20重量部だけ含む、請求項
1に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項6】
前記一次粒子は、
5.5~8.0μmの小粒子と、
8.0μm超過および10.0μmの大粒子とを混合したものである、請求項
1から5のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項7】
前記グリーンコークスは、全体100重量%に対して、4~10重量%の揮発分を含む、請求項
1から6のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、リチウム二次電池用負極活物質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、携帯電話、タブレットPCなどのポータブル電子機器の高性能化および機能の集積化による消費電力の増加などによって電池の高容量化が進められ、電動工具、特にHEV(ハイブリッド自動車)、EV(電気自動車)用高出力電源を必要とするに伴い、充放電速度に優れた高出力特性を有する二次電池の必要性が大きく増加している。また、使用時間の増大により電池の充電/放電周期が減少して電池サイクル寿命の大幅な向上が要求されており、電池素材の劣化による電池の体積変化(膨張および収縮)の最小化も主な必要特性として浮かび上がっている。二次電池のうち、高エネルギー密度、高電圧などの利点によりリチウム二次電池が幅広く用いられており、商用リチウム二次電池は一般に金属酸化物系の正極活物質および黒鉛などの炭素系負極活物質が採用されている。
【0003】
負極活物質の黒鉛は、鉱山で採掘して物理的選別および高純度化を経て加工された天然黒鉛と、石炭あるいは石油残渣(residue)などの有機物を熱処理して得られた炭素体のコークス(coke)を加工および高温熱処理して得た人造黒鉛とに区分される。
【0004】
一般に、人造黒鉛負極材を製造するために、石炭あるいは石油系残渣あるいは加工品であるピッチを炭化および高温熱処理(黒鉛化)工程により製造することができる。応用目的に応じて両素材がもつ欠点を補完するために、天然黒鉛と人造黒鉛とを混合した形態の複合負極材が使用されたりもする。
【0005】
一般に、人造黒鉛素材の高容量化のためには、黒鉛化熱処理温度を2800~3000℃以上維持して黒鉛化度を増加させるか、触媒黒鉛化反応誘導のために触媒物質を添加して熱処理する。充放電効率改善のためには、人造黒鉛の表面コーティングあるいは粒子摩砕(grinding)などにより粒子表面の黒鉛edge部の露出を最小化して電解液の分解などにより生成される不働態膜(passivated film)の過度な形成を抑制する方法を使用したりもする。
【0006】
高速充放電性能改善のために、人造黒鉛加工品内の黒鉛粒子の相互間配向を不規則に調節するか、粒子表面に炭素質コーティングを導入する場合もある。充放電による人造黒鉛素材および電極の体積変化を減少させるために、人造黒鉛加工品内の黒鉛粒子の相互間配向が不規則的形態に製造されるか、素材自体の強度を高めて充放電反応時の寸法安定性を改善する方法を使用したりもする。
【0007】
前述したケース以外にも、人造黒鉛の電池素材の性能を改善するための多様な技術開発がなされているが、一般に、性能間でtrade-offの関係が存在して、特定の性能を改善する場合、他の性能が減少する問題が生じてしまう。例えば、人造黒鉛粒子の大きさを減少させてリチウムイオンの拡散距離を短縮させる場合、高速充放電特性を改善することができるが、小さい粒子サイズに由来する比表面積の増加によって電池寿命も減少する問題が発生しうる。
【0008】
また、充放電中に発生する素材および電極の体積変化を抑制するために粒径の小さい粒子を一定の大きさに凝集および複合化した二次粒子形態の負極材を形成する場合、二次粒子内の不規則な配向性を有する一次粒子によって、充放電による素材の体積変化が相殺されて電極全体の体積変化が減少するという利点がある。しかし、単位一次粒子の加工形態や二次粒子化の工程条件により粒子の不規則な配向度が十分でなく、比表面積が増加したり、二次粒子の形状が均一でなくて、充放電による素材および電極膨張率の減少が十分でなく、電池寿命が減少するなどの副作用が生じることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一実施形態は、コークス材料とこのコークス材料の粒径を制御したリチウム二次電池用負極活物質の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態では、二次粒子を含む黒鉛材であって、前記二次粒子は複数の一次粒子が造粒されたものであり、前記一次粒子はグリーンコークスを含み、前記二次粒子のD50粒径に対するD90粒径とD10粒径との差の比((D90-D10)/D50)は1.0~1.32であるリチウム二次電池用負極活物質を提供する。
【0011】
前記二次粒子のD50粒径に対するD90粒径とD10粒径との差の比((D90-D10)/D50)であるspan値は1.0~1.2であってもよい。
前記二次粒子の球形化度は0.8~1.0であってもよい。
前記二次粒子の粒径(D50)は11~25μmであってもよい。
前記黒鉛材の比表面積(BET)は0.6~2.0m2/gであってもよい。
前記黒鉛材のタップ密度は0.8g/cc~1.2g/ccであってもよい。
前記黒鉛材は、下記の関係式1を満足できる。
[関係式1]
比表面積[m2/g]/タップ密度[g/cc]<2
【0012】
本発明の他の実施形態では、グリーンコークスを含む炭素原料を用いて一次粒子を製造する段階;前記一次粒子とバインダーとを混合して二次粒子を製造する段階;前記二次粒子を炭化する段階;および前記炭化した二次粒子を黒鉛化して黒鉛材を製造する段階を含み、前記一次粒子の粒径(D50)は5.5~10.0μmであるリチウム二次電池用負極活物質の製造方法を提供する。
【0013】
前記一次粒子は、5.5~8.0μmの小粒子と、8.0μm超過および10.0μmの大粒子とを混合した組成物であってもよい。
【0014】
本発明のさらに他の実施形態では、グリーンコークスを含む炭素原料を用いて一次粒子を製造する段階;前記一次粒子とバインダーとを混合して二次粒子を製造する段階;前記二次粒子を炭化する段階;および前記炭化した二次粒子を黒鉛化して黒鉛材を製造する段階を含み、前記二次粒子のD50粒径に対するD90粒径とD10粒径との差の比((D90-D10)/D50)は1.0~1.32であるリチウム二次電池用負極活物質の製造方法を提供する。
【0015】
前記二次粒子を炭化する段階は、前記炭化した二次粒子を摩砕する段階をさらに含むことができる。
前記炭化した二次粒子を摩砕する段階の後、前記二次粒子のD50粒径に対するD90粒径とD10粒径との差の比((D90-D10)/D50)であるspan値は1.0~1.2であってもよい。
前記炭化した二次粒子を摩砕する段階の後、前記二次粒子の球形化度は0.9~1.0であってもよい。
【0016】
前記グリーンコークスを含む炭素原料を用いて一次粒子を製造する段階において、前記グリーンコークスは、針状コークス、等方性コークス、ピッチコークスまたはこれらの組み合わせを含むことができる。
前記グリーンコークスを含む炭素原料を用いて一次粒子を製造する段階は、前記炭素原料を粉砕および摩砕する段階を含むことができる。
【0017】
前記一次粒子とバインダーとを混合して二次粒子を製造する段階において、前記一次粒子100重量部に対して、前記バインダーは2~20重量部だけ含むことができる。
前記グリーンコークスは、全体100重量%に対して、4~10重量%の揮発分を含むことができる。
【0018】
本発明のさらに他の実施形態では、正極;前述した本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用負極活物質を含む負極;および電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一実施形態によれば、粒径を制御したグリーンコークスを用いた負極活物質を提供することができる。よって、この負極活物質による二次電池の優れた放電容量と充放電効率を提供することができる。特に、高速放電および充電出力特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態のリチウム二次電池用負極活物質を製造する方法を示すフローチャートである。
【
図2】実施例1の一次粒子をSEMで観察したものである。
【
図3】実施例1の負極活物質を1000倍のSEMで観察したものである。
【
図4】実施例1の負極活物質を5000倍のSEMで観察したものである。
【
図5】実施例3の負極活物質粒子を1000倍のSEMで観察したものである。
【
図6】実施例3の負極活物質粒子を5000倍のSEMで観察したものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付した図面と共に詳細に後述する実施例を参照すれば明確になる。しかし、本発明は以下に開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現可能であり、単に本実施例は本発明の開示が完全となるようにし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は特許請求の範囲の範疇によってのみ定義される。明細書全体にわたって同一の参照符号は同一の構成要素を称する。
【0022】
したがって、いくつかの実施例において、よく知られた技術は本発明が曖昧に解釈されることを避けるために具体的に説明されない。他に定義がなければ、本明細書で使われるすべての用語(技術および科学的用語を含む)は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に共通して理解できる意味で使われるであろう。明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。また、単数形は、文章で特に言及しない限り、複数形も含む。
【0023】
「リチウム二次電池用負極活物質」
本発明の一実施形態のリチウム二次電池用負極活物質は、二次粒子を含む黒鉛材であって、前記二次粒子は複数の一次粒子が造粒されたものであり、前記一次粒子はグリーンコークスを含み、前記二次粒子のD50粒径に対するD90粒径とD10粒径との差の比((D90-D10)/D50)は1.0~1.32であってもよい。
【0024】
具体的には、本明細書において、「二次粒子」とは、複数の一次粒子が凝集された後、後述する製造方法の段階で黒鉛化されて造粒された状態であってもよい。
【0025】
以下、本明細書において、「グリーンコークス(Green coke、raw coke)」とは、一般に、石炭あるいは石油系残渣あるいは加工品のピッチを高圧および高温条件でコーキング反応により製造するものを意味する。具体的には、原料の組成およびコーキング工程の条件によって、一軸方向に炭素質組織の配向性度が高い異方性あるいは針状コークス(anisotropic or needle coke)、または炭素質組織の配向度が低い等方性あるいはピッチコークス(isotropic or pitch coke)が得られる。さらにより具体的には、「グリーン」とは、コーキング工程直後に得られた状態でか焼(calcination)または炭化(carbonization)などの熱処理を経ておらず、一定の分率の揮発分を含んでいる状態を意味する。
【0026】
具体的には、前記グリーンコークスは、針状コークス、等方性コークス、ピッチコークスまたはこれらの組み合わせを含むことができる。
具体的には、グリーンコークスを用いる場合、膨張率が低く、高速充電および放電特性に優れたリチウム二次電池用負極活物質を提供することができる。
また、グリーンコークスを用いる場合、か焼コークスのように揮発分を除去するために別途の熱処理工程を実施しないため、価格競争力に優れることができる。
【0027】
さらに、前記二次粒子のD50粒径に対するD90粒径とD10粒径との差の比((D90-D10)/D50)は1.0~1.32であってもよい。
具体的には1.0~1.2であってもよい。
【0028】
このとき、D50粒径に対するD90粒径とD10粒径との差の比((D90-D10)/D50)は、span値を意味することができる。
具体的には、「span」値は、粒子の大きさを示す指標であるD10、D50、D90を用いて、(D90-D10)/D50の計算式を用いて得られる値を意味する。
【0029】
さらに具体的には、D10、D50、D90粒径は、多様な粒子サイズが分布している活物質粒子を体積比でそれぞれ10%、50%および90%まで粒子を累積させたときの粒子サイズを意味する。
【0030】
このため、黒鉛材のspan値が小さすぎる場合、工業的に粒度のばらつきが非常に小さい粉体を加工するためには、生産収率が大きく減少して費用が増加しうる。また、粉体間の空隙率が相対的に低く電解質の濡れ性が減少して電極内のイオン伝導性が減少する問題、およびタップ密度が高い電極を構成しにくい問題が誘発されることがある。
【0031】
一方、span値が大きすぎる場合、微粉による全体比表面積が増加して初期充放電効率が減少し、電極コーティングのためのスラリーの粘度が大きく増加して品質が均一な電極を製造しにくい問題がありうる。
【0032】
したがって、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用負極活物質の二次粒子のspan値は前述した範囲である。
後述するが、前記span値は1.0~1.32以下に制御することによって、前記のように二次粒子の粒度のばらつきを制御することができる。
【0033】
前記二次粒子の粒径(D50)は11~25μmであってもよい。具体的には、前記二次粒子の粒径(D50)は12~20μm、より具体的には15~18μmであってもよい。
前記二次粒子は、加熱混合により一次粒子が凝集された粉体の形状であってもよい。
【0034】
具体的には、二次粒子のサイズ(D50)が11μm未満の場合、二次粒子に加わる一次粒子の数が小さすぎて、電極層内で粒子間のランダムな配向(randomized orientation)が十分でなくて、充放電反応の繰り返しによる電極膨張率が増加しうる。また、負極材粉体の比表面積が増加し、電池効率が減少する問題がありうる。
【0035】
一方、25μm超過の場合、タップ密度が過度に低くなり、圧延後にも平坦な電極表面の形成が難しく、適切な電極密度の実現が困難な問題など、優れた電池性能が発現する二次電池の電極を形成することが困難である。
【0036】
前記黒鉛材の比表面積(BET)は0.6~2.0m2/gであってもよい。具体的には、前記黒鉛材の比表面積(BET)は0.95~1.88m2/g、より具体的には1.3~1.65m2/gであってもよい。
【0037】
前記二次粒子の球形化度は0.8~1.0であってもよい。具体的には0.9~1.0であってもよい。
二次粒子の球形化度が1に近い球形であるほど、これを含む黒鉛材負極活物質のタップ密度が高い。
【0038】
これによって、前記黒鉛材のタップ密度は0.8g/cc~1.2g/ccであってもよい。
具体的には0.83g/cc~1.2g/ccであってもよい。
【0039】
前記黒鉛材は、下記の関係式1を満足できる。
[関係式1]
比表面積[m2/g]/タップ密度[g/cc]<2
【0040】
具体的には、タップ密度に対する比表面積の値は2未満であってもよい。
さらに具体的には、黒鉛材を含む負極活物質の場合、比表面積は小さく、タップ密度は大きいほど、リチウム二次電池への適用時、電池特性に優れることができる。
これによって、前記関係式1による値が小さいほど、電池特性に優れることができる。よって、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用負極活物質は、前記関係式1による値が2未満である。
【0041】
「リチウム二次電池用負極活物質の製造方法」
本発明の一実施形態のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法は、グリーンコークスを含む炭素原料を用いて一次粒子を製造する段階と、前記一次粒子とバインダーとを混合して二次粒子を製造する段階と、前記二次粒子を炭化する段階と、前記炭化した二次粒子を黒鉛化して黒鉛材を製造する段階とを含むことができる。
【0042】
まず、一次粒子を製造する段階において、前記グリーンコークスは、針状コークス、等方性コークス、ピッチコークスまたはこれらの組み合わせを含むことができる。
これによって、前記グリーンコークスは、針状コークス、等方性コークスまたはこれらの組み合わせを含むことができる。また、前記グリーンコークスは、全体100重量%に対して、4~10重量%の揮発分を含むことができる。
具体的には、グリーンコークスを用いる場合、膨張率が低く、高速充電および放電特性に優れたリチウム二次電池用負極活物質を提供することができる。
【0043】
また、グリーンコークスを用いる場合、か焼コークスのように揮発分を除去するために別途の熱処理工程を実施しないため、価格競争力に優れることができる。
参照として、グリーンコークスをか焼または炭化して揮発分を除去した熱処理製品を「か焼コークス(calcined coke)」と区分して称する。
【0044】
具体的には、グリーンコークスを含む炭素原料を用いて一次粒子を製造する段階において、前記グリーンコークスを粉砕および摩砕する段階を実施できる。
【0045】
まず、グリーンコークスを粉砕する段階において、紛砕機は、jet-mill、roller mill、または粉砕と同時に気相分級(air classification)可能な一般的な形態の連続式あるいはbatch式の粉砕装置(pulverizer)を用いることができる。ただし、これに限定するものではない。
【0046】
以後、粉砕されたコークスを摩砕する段階を実施できる。
粉砕されたグリーンコークス表面の粗さおよび粉砕時に発生した破断面の露出を減少させ、球状化(spheronized)された粒子形態への成形のために摩砕(grinding)工程を行う。
前記摩砕段階は、1500~8000rpm/分の回転数で実施できる。
【0047】
具体的には、摩砕工程は、一般に、粉砕粒子の球形化度を増大させて、充填密度(packing density)または見掛け密度であるタップ密度(tap density)を向上させ、工程中に追加的な気相分級(air classification)により微粉領域を除去して粒度分布をより均一に改善する機能を果たすことができる。
【0048】
摩砕工程のための装置は、一般の粉砕装置(pulverizer)または球状化効果の改善および微粉分級が可能な改造粉砕装置(modified pulverizer)を用いることができる。ただし、これに限定するものではない。
【0049】
このとき、前記粉砕および摩砕を実施して製造された一次粒子の粒径(D50)は5.5~10μmであってもよい。具体的には6~10μmであってもよい。
【0050】
まず、本明細書において、D50粒径は、多様な粒子サイズが分布している活物質粒子を体積比で50%まで粒子を累積させたときの粒子サイズを意味する。
【0051】
具体的には、一次粒子の粒径が小さすぎる場合、製造される二次粒子の粒径が目的よりも小さい。また、比表面積が過度に高くなって、二次粒子の製造段階で添加するバインダーの量が増大しうる。これによって、バインダーに由来する黒鉛質の含有量が高くて高容量の負極材を実現しにくいことがある。
【0052】
一方、一次粒子の粒径が大きすぎる場合には、これを用いて製造される二次粒子の粒径が過度に増加してタップ密度が減少するので、高密度の電極の成形が難しいことがある。これによって、充放電時の高出力の実現が難しいことがある。また、電極の配向度が増加して充放電時の電極膨張率が増加しうる。
したがって、前記一次粒子の粒径(D50)は前記の範囲である。
【0053】
具体的には、前記一次粒子は、5.5~8.0μmの小粒子と、8.0μm超過および10.0μmの大粒子とを混合したものであってもよい。
さらに具体的には、前記のように粒径が異なる一次粒子を混合して用いる場合、負極活物質のタップ密度が増加して緻密度の高い電極の製造が可能で、より高容量の電池を製造できるという側面から優れることができる。
【0054】
前記一次粒子の球形化度は0.75~1.0であってもよい。
具体的には、一次粒子の球形化度が前記範囲の場合、これを用いて二次粒子の製造時にタップ密度を向上させることができる。また、球形化加工により、一次粒子中の電子の蓄積および電気化学反応性が相対的に高いエッジ(edge)面の分率を減少させることができる。これによって、充電および放電反応中に電解液の分解による不働態膜(passivation layer)の生成を抑制することができる。特に、高速充電反応条件で黒鉛の表面上にリチウム金属の析出を遅延させられるなど優れた効果がある。
【0055】
以後、前記一次粒子とバインダーとを混合して二次粒子を製造する段階を実施できる。
具体的には、上述した一次粒子とバインダーとを混合して熱間ニーディング(kneading)工程により剪断力を活用して二次粒子を製造することができる。
【0056】
このとき、前記バインダーは、ピッチであってもよい。
前記ピッチは、コールタールのような石炭系原料あるいは石油系原料ベースの物質であってもよい。
【0057】
また、前記バインダーの軟化点は80~300℃であってもよい。
軟化点が80℃未満の場合、結着力が低くて円滑な一次粒子間の結合および二次粒子の形成が難しく、炭化収率が低くて経済的な製造工程の実現が難しいという欠点がある。一方、軟化点が300℃を超える場合、バインダー物質の溶融のための装置の運転温度が高くて設備製作費用が増加し、高温使用による一部の試料の熱変性および炭素化が進行する問題を起こすことがある。
【0058】
前記二次粒子を製造する段階において、前記一次粒子100重量部に対して、前記バインダーは2~20重量部だけ含むことができる。
具体的には、2重量部未満で添加する場合、結着効果が小さくて円滑な二次粒子化がなされないことがある。また、二次粒子内の一次粒子間の結着力が減少して、粉砕などの粉体処理工程中に微粉化されやすい問題が発生しうる。
【0059】
一方、20重量部超過で添加する場合、バインダーに由来する黒鉛質の含有量が相対的に高くて負極材の容量を減少させることがある。また、熱分解時に発生する気孔含有量が高く比表面積が増加して電池効率を減少させることがある。
【0060】
具体的には、一次粒子とバインダーとを混合して二次粒子を製造する段階は、前記バインダーの軟化点以上で実施できる。
【0061】
具体的には、二次粒子を製造するための混合は、常温で一次粒子とピッチとを高温で高粘度ペースト状の混合物として混合できる装置に入れて行うことができる。このとき、チャンバをピッチの軟化点対比30℃以上に維持できる。これによって、ピッチが十分に軟化して流動性を有し、円滑で均一な混合がなされる。
【0062】
具体的には、前記二次粒子を製造する段階は、上述した一次粒子とピッチとを混合し、設定した温度に到達した後、1時間~5時間進行させることができる。
1時間未満で進行させる場合、ピッチと一次粒子との均一な混合が難しいことがある。一方、5時間を超える場合には、過度な過熱によってピッチの変性(酸化および熱変性)が進行して、最終的に熱処理工程を終えた後に生成された黒鉛材が発現する容量および効率特性が減少する問題がある。
【0063】
前記段階によって製造された二次粒子の粒径(D50)は11~25μmであってもよい。具体的には、製造された二次粒子の粒径(D50)は12~20μm、より具体的には15~18μmであってもよい。前記二次粒子は、加熱混合により一次粒子が凝集された粉体の形状であってもよい。
【0064】
具体的には、二次粒子のサイズ(D50)が11μm未満の場合、二次粒子に加わる一次粒子の数が小さすぎて、電極層内で粒子間のランダムな配向(randomized orientation)が十分でなくて、充放電反応の繰り返しによる電極膨張率が増加しうる。また、負極材粉体の比表面積が増加し、電池効率が減少する問題がありうる。
【0065】
一方、25μm超過の場合、タップ密度が過度に低くなり、圧延後にも平坦な電極表面の形成が難しく、適切な電極密度の実現が困難な問題など、優れた電池性能が発現する二次電池の電極を形成することが困難である。
【0066】
ただし、二次粒子の粒径が25μm超過の場合は、解砕のためにピンミル(pin mill)などを用いて粉砕後に粒度を調節することができる。凝集粉体の適切な粒度調節のために紛砕機の回転数(rpm)を調節することができる。しかし、これに限定するものではなく、目標の粒度達成のために多様な紛砕機を用いることができる。
【0067】
このとき、前記二次粒子の球形化度は0.8~1.0であってもよい。具体的には、前記二次粒子の球形化度は0.9~1.0であってもよい。
【0068】
以後、前記二次粒子を炭化する段階をさらに含むことができる。
具体的には、前記二次粒子を炭化する段階は、非酸化性雰囲気、および800~1500℃の範囲で実施できる。
前記炭化段階は、1~3時間実施できる。
このとき、前記温度までの昇温速度は5~20℃/minであってもよい。前記速度でゆっくり昇温して構造的な変化を最小化することができる。
前記条件で炭化を実施して一次粒子に含まれている揮発分を除去することができる。
【0069】
また、前記二次粒子を炭化する段階の後、前記炭化した二次粒子を摩砕する段階をさらに実施できる。
【0070】
具体的には、表面の粗さおよび破断面の露出を減少させ、球状化(spheronized)された粒子形態への成形のために、炭化後、摩砕(grinding)工程を行うことができる。
これによって、摩砕後に得られた前記二次粒子の球形化度は0.9~1.0であってもよい。
このため、前記二次粒子を含む黒鉛材のタップ密度にさらに優れることができる。
【0071】
具体的には、前記摩砕された二次粒子を含む黒鉛材のタップ密度は0.83g/cc~1.2g/ccであってもよい。
【0072】
最後に、前記炭化した二次粒子を黒鉛化して黒鉛材を製造する段階を実施できる。
具体的には、前記二次粒子を黒鉛化して黒鉛材を製造する段階は、2800~3200℃で実施できる。
具体的には1時間以上実施できる。
また、炭化段階での組織維持のために同一の速度で昇温することができる。
【0073】
さらに、前記黒鉛化段階は、不活性雰囲気で実施できる。具体的には、窒素、アルゴン、またはヘリウムガス雰囲気で実施できるが、これに限定するものではない。
【0074】
より具体的には、前記黒鉛化段階は、使用する黒鉛化設備の形態と特性に応じて、昇温速度、最大温度での維持時間など熱処理温度条件を異ならせることができきるので、前述したところに限定しない。
【0075】
参照として、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用負極活物質は、アチソン(Acheson)形態の黒鉛化炉を用いた。
【0076】
また、必要に応じて、前記黒鉛化する段階で得られた黒鉛材を、pin millなどを用いた粉砕あるいは解砕工程をさらに実施できる。
【0077】
これによって、前記黒鉛材を微粉化して、最終的にリチウム二次電池用負極活物質を得ることができる。
【0078】
これによって、前記黒鉛材の比表面積は0.6~2.0m2/gであってもよい。具体的には、前記黒鉛材の比表面積は0.95~1.88m2/g、より具体的には1.3~1.65m2/gであってもよい。
【0079】
一方、前記黒鉛材のタップ密度は0.8g/cc~1.2g/ccであってもよい。具体的には0.83g/cc~1.2g/ccであってもよい。
【0080】
具体的には、比表面積は低く、タップ密度は大きい黒鉛材を提供することができる。
【0081】
このため、これをリチウム二次電池に適用するとき、電池の効率と性能に優れることができる。
【0082】
前記黒鉛材のspan値は1.0~1.32であってもよい。
具体的には、前記黒鉛材のspan値は1.0~1.2であってもよい。
【0083】
具体的には、本明細書において、「span」値は、粒子の大きさを示す指標であるD10、D50、D90を用いて、(D90-D10)/D50の計算式を用いて得られる値である。D10、D50、D90粒径は、多様な粒子サイズが分布している活物質粒子を体積比でそれぞれ10%、50%および90%まで粒子を累積させたときの粒子サイズを意味する。
【0084】
このため、黒鉛材のspan値が小さすぎる場合、工業的に粒度のばらつきが非常に小さい粉体を加工するためには、生産収率が大きく減少して費用が増加しうる。また、粉体間の空隙率が相対的に低く電解質の濡れ性が減少して電極内のイオン伝導性が減少する問題、およびタップ密度が高い電極を構成しにくい問題が誘発されることがある。
【0085】
一方、span値が大きすぎる場合、微粉による全体比表面積が増加して初期充放電効率が減少し、電極コーティングのためのスラリーの粘度が大きく増加して品質が均一な電極を製造しにくい問題がありうる。
【0086】
本発明のさらに他の実施形態では、正極と、負極と、電解質とを含み、前記負極は、前述した方法で製造された負極活物質を含むリチウム二次電池を提供する。
【0087】
具体的には、電解質は、フルオロエチレンカーボネート(fluoro ethylene carbonate、FEC)、ビニレンカーボネート(vinylene carbonate、VC)、エチレンスルホネート(ethylene sulfonate、ES)およびこれらの組み合わせを含む群より選択された少なくとも1つ以上の電解質添加剤をさらに含むものであってもよい。
【0088】
FECなどの電解質添加剤を追加的に適用することによって、そのサイクル特性がさらに向上でき、前記電解質添加剤によって安定した固体電解質界面(solid electrolyte interphase、SEI)が形成できるからである。この事実は後述する実施例により裏付けられる。
【0089】
負極活物質およびそれによるリチウム二次電池の特性は前述した通りである。また、負極活物質を除いた残りの電池構成は一般に知られた通りである。したがって、詳しい説明は省略する。
【実施例】
【0090】
以下、実施例を通じて詳しく説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0091】
(実施例1)
(1)負極活物質の製造
炭素原料として、石炭系プレミアム針状コークス製品のグリーンコークス(VM含有量約5.0重量%)を用いた。具体的には、空気分級ミル(air classifying mill)を用いてグリーンコークスの粒径(D50)が7μmとなるように1次粉砕した。粉砕された粒子は、気流分級装置付き紛砕機(pulverizer)型の粉砕装置を用いて追加的な摩砕を進行させて、得られた一次粒子の粒径(D50)は7.5μmであった。
【0092】
得られた一次粒子100重量部に、軟化点が120℃のピッチを5重量部で混合した。以後、加熱可能な混合ミキサを用いて2時間混合して二次粒子を製造した。このとき、二次粒子の粒径(D50)は15.1μmであった。
以後、1200℃の窒素雰囲気で1時間炭化した後、3000℃に昇温して1時間黒鉛化して負極活物質を製造した。
【0093】
(2)リチウム二次電池の製造
前記(1)で製造された負極活物質97重量%、カルボキシメチルセルロースとスチレンブタジエンラバーを含むバインダー2重量%、Super P導電材1重量%を蒸留水溶媒中で混合して負極活物質スラリーを製造した。
【0094】
前記負極活物質スラリーを銅(Cu)集電体に塗布した後、100℃で10分間乾燥してロールプレスで圧着した。以後、100℃の真空オーブンで12時間真空乾燥して負極を製造した。真空乾燥後、負極の電極密度は1.6g/ccとなるようにした。
【0095】
対電極としてはリチウム金属(Li-metal)を用い、電解液としてはエチレンカーボネート(EC、Ethylene Carbonate):ジメチルカーボネート(DMC、Dimethyl Carbonate)の体積比率が1:1の混合溶媒に1モルのLiPF6溶液を溶解させたものを用いた。
前記各構成要素を用いて、通常の製造方法により2032コインセルタイプの半電池(half coin cell)を作製した。
【0096】
(実施例2)
(1)負極活物質の製造
前記実施例1の(1)と比較して、一次粒子の粒径(D50)を6μmとし、一次粒子100重量部にピッチを10重量部で混合したことを除けば、同様の方法で負極活物質を製造した。
(2)リチウム二次電池の製造
前記(1)の負極活物質を用いて、実施例1の(2)と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0097】
(実施例3)
(1)負極活物質の製造
前記実施例1の(1)と比較して、二次粒子の製造後に摩砕工程を追加的に実施したことを除けば、同様の方法で負極活物質を製造した。
(2)リチウム二次電池の製造
前記(1)の負極活物質を用いて、実施例1の(2)と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0098】
(実施例4)
(1)負極活物質の製造
前記実施例1の(1)と比較して、一次粒子の粒径(D50)が6μmであることと、二次粒子の製造後に摩砕工程を追加的に実施したことを除けば、同様の方法で負極活物質を製造した。
(2)リチウム二次電池の製造
前記(1)の負極活物質を用いて、実施例1の(2)と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0099】
(実施例5)
(1)負極活物質の製造
前記実施例1の(1)と比較して、一次粒子の粒径(D50)が9μmであることを除けば、同様の方法で負極活物質を製造した。
(2)リチウム二次電池の製造
前記(1)の負極活物質を用いて、実施例1の(2)と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0100】
(実施例6)
(1)負極活物質の製造
前記実施例4の(1)と比較して、二次粒子の製造後に摩砕工程を追加的に実施したことを除けば、同様の方法で負極活物質を製造した。
(2)リチウム二次電池の製造
前記(1)の負極活物質を用いて、実施例1の(2)と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0101】
(実施例7)
(1)負極活物質の製造
前記実施例1の(1)と比較して、粒径(D50)が6μmと9μmの一次粒子を1:1の重量比で混合したことを除けば、同様の方法で負極活物質を製造した。
(2)リチウム二次電池の製造
前記(1)の負極活物質を用いて、実施例1の(2)と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0102】
(実施例8)
(1)負極活物質の製造
前記実施例7の(1)と比較して、二次粒子の製造後に摩砕工程を追加的に実施したことを除けば、同様の方法で負極活物質を製造した。
(2)リチウム二次電池の製造
前記(1)の負極活物質を用いて、実施例1の(2)と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0103】
(実施例9)
(1)負極活物質の製造
前記実施例1の(1)と比較して、炭素原料として等方コークスを50%添加することを除けば、同様の方法で負極活物質を製造した。
(2)リチウム二次電池の製造
前記(1)の負極活物質を用いて、実施例1の(2)と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0104】
(比較例1)
(1)負極活物質の製造
前記実施例1の(1)と比較して、二次粒子製造工程を省略したことを除けば、同様の方法で負極活物質を製造した。
(2)リチウム二次電池の製造
前記(1)の負極活物質を用いて、実施例1の(2)と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0105】
(比較例2)
(1)負極活物質の製造
前記実施例1の(1)と比較して、炭素原料としてか焼コークスを50重量%添加したことを除けば、同様の方法で負極活物質を製造した。
(2)リチウム二次電池の製造
前記(1)の負極活物質を用いて、実施例1の(2)と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0106】
(比較例3)
(1)負極活物質の製造
前記実施例1の(1)と比較して、一次粒子の粒径(D50)が4.5μmであることを除けば、同様の方法で負極活物質を製造した。
(2)リチウム二次電池の製造
前記(1)の負極活物質を用いて、実施例1の(2)と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0107】
(比較例4)
(1)負極活物質の製造
前記実施例1の(1)と比較して、炭素原料としてか焼コークスのみ用いたことを除けば、同様の方法で負極活物質を製造した。
(2)リチウム二次電池の製造
前記(1)の負極活物質を用いて、実施例1の(2)と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0108】
(比較例5)
(1)負極活物質の製造
前記実施例1の(1)と比較して、一次粒子の粒径(D50)が11.0μmであることを除けば、同様の方法で負極活物質を製造した。
(2)リチウム二次電池の製造
前記(1)の負極活物質を用いて、実施例1の(2)と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0109】
下記表1は、前述した実施例と比較例の炭素原料と、一次粒子の粒径(D50)、および摩砕を実施した段階をまとめて示したものである。
【0110】
【0111】
前記実施例および比較例を用いた実験例は下記の通りである。
(実験例1:リチウム二次電池(Half-cell)の特性の測定)
前記実施例および比較例により製造された負極活物質を用いてリチウム二次電池を製造した。以後、前記リチウム二次電池に対して、比表面積(BET)、タップ密度、球形化度、二次粒子の粒径(D50)、およびSpanを測定して、下記表2に示した。
【0112】
「タップ密度の測定方法」
ASTM-B527に基づいて、50mLの容器に10gの粉末を入れた後、3000cycle@284cycle/minでタッピング(tapping)させて充填密度を測定した。
【0113】
「比表面積の測定方法」
BET法(Surface area and Porosity analyzer)(Micromeritics、ASAP2020)を用いて比表面積を測定した。
【0114】
「球形化度の測定方法」
光学式イメージを得るための分析器(Fluid Imaging Technologies、Flowcam8100)および分析S/W(visual spreadsheet)を用いて球形化度を測定した。
粒径(D50)とSpanの意味は先に記述したので、詳しい説明を省略する。
【0115】
【0116】
実施例3、実施例4、実施例6および実施例8のように、二次粒子を得た後に摩砕段階を経て作られた負極活物質が、二次粒子を得た後に追加的な摩砕段階を経ていない実施例の場合より、二次粒子の球形化度およびタップ密度が概ね増加したことが分かる。一方、粒径分布区間指標(span)および比表面積は減少したことを確認できる。
【0117】
また、一次粒子の粒径が増加するほど、製造された負極活物質の比表面積が概ね減少し、二次粒子化された負極活物質の粒径は比例して増加することを確認できる。
【0118】
負極活物質のタップ密度は高いほど、電極層の高密度化およびエネルギー密度の増加を期待できる。よって、前記表2に示された結果により、実施例による負極活物質は高容量の負極活物質を製造するのに有用に使用できることを確認できる。
【0119】
一方、比較例3のように、グリーンコークスの粒径が小さいことを除けば、実施例1と同じ条件で製造した結果、二次粒子の粒径(D50)が目的の水準に及ばないことが分かる。それだけでなく、比較例3は、実施例に比べて、比表面積が高く、タップ密度が低い問題が発生した。
【0120】
また、比較例4のように、か焼コークスのみを用いて製造した負極材の場合にも、比表面積が実施例に比べて高いことを確認できた。
【0121】
(実験例2:リチウム二次電池(Half-cell)の初期放電容量および効率の測定)
これに先立ち、実施例および比較例でそれぞれ最終的に得られた活物質を半電池に適用して試験した。
具体的には、0.1C、5mV、0.005C cut-offの充電および0.1C、1.5V cut-offの放電条件で電池を駆動し、初期放電容量および初期効率の値を表3に記録した。
【0122】
【0123】
表3を参照すれば、実施例3のように、グリーンコークスを原料として用いて、二次粒子を得た後に摩砕段階を追加的に経た負極材(実施例3、4、6、8)の初期効率が、二次粒子を得た後に摩砕段階を省略した場合より優れていた。
また、実施例2および実施例4のように、一次粒子の大きさがより小さい実施例2の場合、実施例4より電池の効率が減少したことが分かる。これは、負極活物質の比表面積が相対的に高くて不働態膜の形成がより活発に行われたからである。
【0124】
さらに、前記実施例9は、グリーンコークス100重量%に対して、針状コークス50重量%と等方コークス50重量%とを混合したものである。その結果、等方コークスを混合することによって、他の実施例に比べて容量および効率がやや劣位であることが分かる。
【0125】
特に、一次粒子の大きさが最も小さい比較例3の場合、初期効率が最も低いことが分かる。これから、比較例3による二次電池は、初期充放電時に電極表面での副反応が最も活発であることが分かった。
【0126】
(実験例3:リチウム二次電池(Half-cell)の高速放電および充電特性の測定)
これに先立ち、実施例および比較例でそれぞれ最終的に得られた活物質を半電池に適用して試験した。
高速放電特性は3Cと0.2Cの条件で電池容量を測定して相対的な値を示した。高速充電特性は0.1C、5mV、0.005C cut-offの充電および0.1C、1.5V cut-offの放電条件で初期放電容量を確認した後、充電速度(C-rate)を0.1C、0.2C、0.5C、1.0C、2.0Cの条件の順に変化してそれぞれ3回充電および放電サイクルを繰り返し、2Cと0.1Cの条件で電池の充電容量を測定して相対的な値を示した。
その結果を下記表4に示した。
【0127】
【0128】
表4を参照すれば、粉砕された一次粒子のサイズおよび二次粒子のサイズが小さいほど、高速放電特性および充電特性に優れていることを確認できる。
特に、一次粒子の粒径(D50)が11.0μmである比較例5の場合にも、高速充放電特性が劣位であることが分かる。
また、二次粒子を得た後に摩砕段階を追加的に経た場合(実施例3、4、6、8)の高速放電および充電特性が、二次粒子を得た後に摩砕段階を省略した場合より優れていた。
【0129】
一方、実施例9のように、原料コークス中に等方性コークスを混合した場合、表3に示したように、負極材の容量は小幅減少した。ただし、表4に示したように、高速放電および充電特性は、針状コークスを単独で用いたケースに比べて優れていた。これは、等方性コークスに由来する黒鉛結晶子の大きさが、相対的に針状コークスに由来する結晶子に比べて小さくて、充電および放電時にリチウムイオンの拡散経路が短く抵抗が小さいことに起因する。
【0130】
一方、比較例1のように、二次粒子化を経ていない負極材の場合、表3に示したように、放電容量がやや高いという利点がある。ただし、表4に示したように、高速放電および充電特性は非常に劣位であるという結果が分かる。これは、電極構造内で粒子間のランダムな配向程度(randomized orientation)が低くて速いリチウムイオンの可逆的な拡散に不利な特性を有しているからである。
【0131】
比較例2のように、グリーンコークス炭素原料にか焼コークスを混入した場合、グリーンコークスを単独で用いて製造した負極材より、やや高速充電および放電特性が減少したことが分かる。これは、相対的に二次粒子の球形化度がグリーンコークスに由来する負極材に比べて低く、電極構造でのランダムな配向程度が低くて、比較例1と類似の理由からリチウムイオンの拡散速度が減少するからである。
【0132】
また、比較例3のように、一次粒子の粒径が小さすぎる場合、高速充放電特性には優れていることが分かるが、前記表2および3から確認したように、比表面積が過度に高く、初期効率が低くて、実質的に電池素材としての競争力は顕著に低下する問題がある。
【0133】
以下、図面を通じて本発明による実施例を説明することができる。
図1は、本発明の一実施形態のリチウム二次電池用負極活物質を製造する方法を示すフローチャートである。
図2は、実施例1の一次粒子をSEMで観察したものである。
図3は、実施例1の負極活物質をSEMで観察したものである。
図4は、実施例1の負極活物質をSEMで観察したものである。
図5は、実施例3の負極活物質粒子を1000倍のSEMで観察したものである。
図6は、実施例3の負極活物質粒子を5000倍のSEMで観察したものである。
【0134】
図3~6に示されているように、実施例1に比べて、実施例3の粒子が破砕された粒子面が鋭くなく、比較的に緩やかな楕円形と類似の形状を有していることを確認できる。つまり、実施例1のように追加的な摩砕を実施しなかった粒子に比べて、摩砕を経た実施例3の粒子の粗さがさらに減少したことを確認できる。
【0135】
以上、添付した図面を参照して本発明の実施例を説明したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明がその技術的な思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。
そのため、以上に述べた実施例はあらゆる面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。本発明の範囲は上記の詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および範囲、そしてその均等概念から導出されるあらゆる変更または変更された形態が本発明の範囲に含まれると解釈されなければならない。