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特許74713064-(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)モルホリンを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】4-(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)モルホリンを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 295/067 20060101AFI20240412BHJP
【FI】
C07D295/067
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021542488
(86)(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2020050928
(87)【国際公開番号】W WO2020152010
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-10-24
(31)【優先権主張番号】19153061.7
(32)【優先日】2019-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515174593
【氏名又は名称】アドヴェリオ・ファーマ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・フェイ
(72)【発明者】
【氏名】セルギー・パゼノク
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・フンケ
(72)【発明者】
【氏名】ナタリヤ・パヴロヴナ・コレスニク
(72)【発明者】
【氏名】オレクサンドル・イヴァノヴィッチ・グザー
(72)【発明者】
【氏名】ユーリー・グリゴリエヴィッチ・シェルモロヴィッチ
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-502844(JP,A)
【文献】特表2015-502932(JP,A)
【文献】Journal of General Chemistry of the USSR,1980年,Vol. 50, No. 4,pp. 662-665
【文献】Nippon Kagaku Kaishi ,1984年,No. 4,p. 598-604
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 295/067
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
【化1】
を調製する方法であって、
式(IIa)の化合物
【化2】
(式中、
Rは、メチルまたはフェニルを表し、
前記フェニルは、非置換であるか、または互いに独立に、メチル、塩素、アミノ、メチルスルホニルおよびスルホン酸2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステルからなる群から選択される1つ、2つもしくは3つの置換基によって置換されている)
を、密閉容器またはフロー反応器中、自己圧力下または1~50barで、100~170℃の温度で、有機溶媒中または溶媒を用いないで、式(III)のモルホリン
【化3】
と1対2~5の(IIa)対(III)のモル比で反応させて、式(I)の化合物
【化4】
および式(IVa)の化合物
【化5】
(式中、
Rは式(IIa)の化合物について定義される通りである)
を得る方法。
【請求項2】
式(II)の化合物
【化6】
を、密閉容器またはフロー反応器中、自己圧力下または1~50barで、100~170℃の温度で、有機溶媒中または溶媒を用いないで、式(III)のモルホリン
【化7】
と1対2~5の(II)対(III)のモル比で反応させて、式(I)の化合物
【化8】
および式(IV)の化合物
【化9】
を得る、請求項1に記載の式(I)の化合物
【化10】
を調製する方法。
【請求項3】
前記反応が溶媒を用いないで行われる、請求項1または2に記載の式(I)の化合物
【化11】
を調製する方法。
【請求項4】
式(II)または(IIa)の化合物対式(III)の化合物のモル比が1対2.0~2.5である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
式(II)または(IIa)の化合物対式(III)の化合物のモル比が1対2.1である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記反応が100~150℃の温度で行われる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記反応が120~150℃の温度で行われる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
式(I)および(IVa)または(IV)の化合物をもたらす反応が終了した後、前記密閉容器またはフロー反応器を20℃~80℃に冷却し、反応混合物を有機溶媒で希釈し、式(IV)または(IVa)の塩を、濾過を介して除去し、過剰のモルホリンおよび溶媒を真空中で除去し、式(I)の化合物を蒸留によって得る、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
式(I)および(IVa)または(IV)の化合物をもたらす反応が終了した後、前記密閉容器またはフロー反応器を80℃~100℃に冷却し、反応混合物を水で希釈し、生成物層を分離し、水層を有機溶媒で洗浄し、有機溶媒に溶解した式(I)の化合物を精製することなく使用するか、または蒸留によってさらに精製する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、医薬品を製造するための、ならびに心血管障害を治療および/または予防するための医薬品を製造するための中間体として働く4-(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)モルホリンを調製する新規で効率的な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
4-(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)モルホリンは、国際公開第2013/076168号に記載されるように、心血管障害を治療するための医薬品を製造するための有益な前駆体である置換5-フルオロ-1 H-ピラゾロピリジンの合成の重要な中間体である。
【0003】
国際公開第2013/076168号に記載され、以下のスキーム1に示される4-(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)モルホリンの合成は、モルホリンと式(XII)の2,2,3,3-テトラフルオロプロピルトリフルオロメタンスルホネートとの反応を含む。式(X)のトリフリン酸無水物(triflic anhydride)(トリフルオロメタンスルホン酸無水物)から調製される2,2,3,3-テトラフルオロプロピルトリフルオロメタンスルホネートは非常に高価である。式(XII)の2,2,3,3-テトラフルオロプロピルトリフルオロメタンスルホネートの調製では、トリフリン酸無水物1当量当たり1当量の遊離トリフリン酸(トリフルオロメタンスルホン酸)が廃棄物として形成され、これを除去および処分しなければならないため、これはさらに重要である。さらに、モルホリンを2,2,3,3-テトラフルオロプロピルトリフルオロメタンスルホネートでアルキル化すると、さらなる当量のトリフリン酸(トリフルオロメタンスルホン酸)が放出される。これは、トリフルオロメタンスルホン酸が最も強い酸の1つであり、皮膚接触すると、遅発性の組織破壊を伴う重度の熱傷を引き起こし、吸入すると、致命的な痙攣、炎症および浮腫を引き起こすため、廃棄物処理に問題を引き起こす。
【0004】
国際公開第2013/076168号に記載される合成をスキーム1に示す。
【0005】
スキーム1:
【化1】
[o)溶媒なし;p)ジクロロメタン、または溶媒なし、モルホリン]
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2013/076168号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、式(I)の4-(2,2,3,3)-テトラフルオロプロピルモルホリンを調製する高収率で効率的で費用削減の方法を提供することである。
【化2】
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、本発明によって、以下のように達成される。
【0009】
式(I)の化合物
【化3】
を調製する方法であって、
式(IIa)の化合物
【化4】
(式中、
Rは、C1~C4アルキル、フェニルまたはナフチルを表し、
フェニルは、非置換であるか、または互いに独立に、直鎖もしくは分岐C1~C4アルキル、塩素、フッ素、臭素、アミノ、ニトロ、メチルスルホニル、(ジメチル-オキソプロピル)アミノおよびスルホン酸2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステルからなる群から選択される1つ、2つもしくは3つの置換基によって置換されている)
を、密閉容器またはフロー反応器中、自己圧力(autogenic pressure)下または1~50barで、100~170℃の温度で、溶媒を用いないで、式(III)のモルホリン
【化5】
と1対2~5の(IIa)対(III)のモル比で反応させて、式(I)の化合物
【化6】
および式(IVa)の化合物
【化7】
(式中、
Rは式(IIa)の化合物について定義される通りである)
を得る方法。
【0010】
Rがフェニルであり、フェニルが1つ、2つまたは3つのスルホン酸2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル置換基によって置換されている場合、スルホン酸2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル置換基は、代わりに-SO2-O-CH2-CF2-CHF2と呼ばれ得る。
【0011】
以下のスキーム2は、例として個々の反応ステップを示す。
【0012】
スキーム2:
【化8】
【0013】
本発明の別の実施形態によると、式(IIa)の化合物
【化9】
中、
Rがメチルまたはフェニルを表し、
フェニルが、非置換であるか、または互いに独立に、メチル、塩素、アミノ、メチルスルホニルおよびスルホン酸2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステルからなる群から選択される1つ、2つもしくは3つの置換基によって置換されている。
【0014】
本発明の別の実施形態によると、式(IIa)の化合物
【化10】
が、1-プロパノール-2,2,3,3-テトラフルオロ-1-メタンスルホネート、エタンスルホン酸-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、1-プロパノール-2,2,3,3-テトラフルオロ-1-ベンゼンスルホネート、1-プロパノール-2,2,3,3-テトラフルオロ-1-(4-メチルベンゼンスルホネート)、ベンゼンスルホン酸4-エチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸3-メチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸4-クロロ-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸3-クロロ-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸2-クロロ-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸3,5-ジクロロ-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸2,6-ジクロロ-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸4-フルオロ-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸3-フルオロ-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸2-フルオロ-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸2,4,5-トリフルオロ-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸4-ブロモ-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸3-ブロモ-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸2-ブロモ-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸4-ブロモ-2-クロロ-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸4-クロロ-2-フルオロ-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸4-ブロモ-3-メチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸4-ブロモ-2,6-ジクロロ-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸4-アミノ-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸4-(1-メチルプロピル)-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸4-(1,1ジメチルエチル)-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸2,4-ジメチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸2,5-ジメチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸2,5-ジメチル-3-(メチルスルホニル)-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸4-[(2,2-ジメチル-1-オキソプロピル)アミノ]-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸4-ニトロ-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼネスルホン酸2-ニトロ-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸4-メチル-2-ニトロ-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸2-クロロ-5-ニトロ-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、1,3,5-ベンゼントリスルホン酸2-アミノ-1,3,5-トリス(2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、および2-ナフタレンスルホン酸-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステルからなる群から選択される。
【0015】
本発明の別の実施形態によると、式(IIa)の化合物
【化11】
が、1-プロパノール-2,2,3,3-テトラフルオロ-1-メタンスルホネート、1-プロパノール-2,2,3,3-テトラフルオロ-1-ベンゼンスルホネート、1-プロパノール-2,2,3,3-テトラフルオロ-1-(4-メチルベンゼンスルホネート)、ベンゼンスルホン酸4-クロロ-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸3-クロロ-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸2-クロロ-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸3,5-ジクロロ-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸2,6-ジクロロ-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸2,4-ジメチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸2,5-ジメチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、ベンゼンスルホン酸2,5-ジメチル-3-(メチルスルホニル)-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステル、および1,3,5-ベンゼントリスルホン酸2-アミノ-1,3,5-トリス(2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステルからなる群から選択される。
【0016】
本発明のさらなる実施形態によると、式(I)の化合物が、以下のように合成される。
【0017】
式(II)の化合物
【化12】
を、密閉容器またはフロー反応器中、自己圧力下または1~50barで、100~170℃の温度で、溶媒を用いないで、式(III)のモルホリン
【化13】
と1対2~5の(II)対(III)のモル比で反応させて、式(I)の化合物
【化14】
および式(IV)の化合物
【化15】
を得る、式(I)の化合物
【化16】
を調製する方法。
【0018】
以下のスキーム3は、例として個々の反応ステップを示す。
【0019】
スキーム3:
【化17】
式(II)の2,2,3,3-テトラフルオロプロピルトシレートは、1-プロパノール-2,2,3,3-テトラフルオロ-1-(4-メチルベンゼンスルホネート)としても知られており、両名称は本発明において同様に使用される。
【0020】
国際公開第2005/018568号は、トシレートによるモルホリンのアルキル化に関する。国際公開第2005/018568号は、少なくとも、トシレートが式IIaによって網羅されず、最終生成物が式Iではないという点で本発明とは異なる。
【0021】
Markovskii LN、Kolesnik NP、Shermolovich、YG.、Zhurnal Obshchei Khimii(1980)、50(4)、826-9は、ペンタキス(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)ホスホランとモルホリンなどの第二級アミンとの反応を記載している。Markowskiiらはまた、式(II)の2,2,3,3-テトラフルオロプロパニルトシレートとモルホリンとの反応を記載している。本発明による方法と対照的に、Markovskiiらは、等モル量の2,2,3,3-テトラフルオロプロパニルトシレートおよびモルホリンを適用する。分析目的のための比較化合物を得ることを目的として、小型アンプル中で小規模で反応を行った。収率はわずか21%であり、技術的規模での合成には実現不可能であった。
【0022】
式(II)の2,2,3,3-テトラフルオロプロピルトシレートは、国際公開第2013/076168号に記載される反応に適用される2,2,3,3-テトラフルオロプロピルトリフルオロメタンスルホネートよりもかなり反応性が低く、文献から知られているように、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルトシレートとモルホリンを反応させて式(I)の4-(2,2,3,3)-テトラフルオロプロピルモルホリンを得た場合、高温でさえ、21%という低い収率しか得られなかった。
【0023】
したがって、本発明の方法によって、安価で容易に入手可能な式(IIa)の2,2,3,3-テトラフルオロプロピルスルホン酸エステルまたは式(II)の2,2,3,3-テトラフルオロプロピルトシレートを式(III)のモルホリンと反応させることによって、操作上好都合な条件下で式(I)の4-(2,2,3,3)-テトラフルオロプロピルモルホリンを非常に高収率で得ることができることは予想されなかった。さらに、驚くべきことに、反応を非常に大きな技術的に実現可能な規模で操作できることが分かった。
【0024】
式(II)の2,2,3,3-テトラフルオロプロピルトシレートは公知であり、スキーム4に示されるように、文献(Journal of Organic Chemistry(1961)26、4021-26参照)の手順に従って調製することができる。
【0025】
スキーム4:
【化18】
本発明による方法では、式(IIa)または(II)の化合物を、式(III)のモルホリンと、1対2~5、好ましくは1対2.0~2.5、最も好ましくは1対2.1の(IIaまたはII)対(III)のモル比で反応させる。反応時間は、バッチサイズおよび反応温度に応じて変化してもよく、1時間~最大20時間の間、好ましくは12時間~最大20時間の間の範囲内で選択される。反応をより高温で実施する場合、反応時間を短縮することができる。
【0026】
過剰のモルホリン中では溶媒を用いないで反応が進行する。
【0027】
必要に応じて、有機溶媒の存在下で反応を行うこともできる。適切な溶媒は、例えば脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素、例えば石油エーテル、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンまたはデカリン;およびハロゲン化炭化水素、例えばクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタンまたはトリクロロエタン;エーテル、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、メチルtert-アミルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタンまたはアニソール;ニトリル、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、n-もしくはイソブチロニトリルまたはベンゾニトリル;アミド、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルピロリドン;スルホキシド、例えばジメチルスルホキシド、あるいはスルホン、例えばスルホランである。例えば、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、スルホラン、トルエン、キシレン、クロロベンゼンが特に好ましく、例えば、クロロベンゼン、アセトニトリルおよびスルホランが極めて特に好ましい。
【0028】
本発明の別の実施形態によると、式(IIa)の化合物
【化19】
(式中、
Rは、C1~C4アルキル、フェニルまたはナフチルを表し、
フェニルは、非置換であるか、または互いに独立に、直鎖もしくは分岐C1~C4アルキル、塩素、フッ素、臭素、アミノ、ニトロ、メチルスルホニル、(ジメチル-オキソプロピル)アミノおよびスルホン酸2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエステルからなる群から選択される1つ、2つもしくは3つの置換基によって置換されている)
を、密閉容器またはフロー反応器中、自己圧力下または1~50barで、100~170℃の温度で、有機溶媒中で、式(III)のモルホリン
【化20】
と1対2~5の(IIa)対(III)のモル比で反応させて、式(I)の化合物
【化21】
および式(IVa)の化合物
【化22】
(式中、
Rは式(IIa)の化合物について定義される通りである)
を得る。
【0029】
本発明の別の実施形態によると、式(II)の化合物
【化23】
を、密閉容器またはフロー反応器中、自己圧力下または1~50barで、100~170℃の温度で、有機溶媒中で、式(III)のモルホリン
【化24】
と1対2~5の(IIa)対(III)のモル比で反応させて、式(I)の化合物
【化25】
および式(IV)の化合物
【化26】
を得る。
【0030】
本発明による化合物(II)とモルホリンとの反応は、100~170℃の温度、好ましくは100~150℃の温度、より好ましくは120~150℃で行われる。
【0031】
反応は、密閉容器またはフロー反応器中、自己圧力下または1~50barの圧力で行われる。
【0032】
本発明の意味における密閉容器は、本発明による温度および圧力に適した任意の密閉可能な容器である。一例によれば、密閉容器はオートクレーブである。
【0033】
本発明の意味におけるフロー反応器は、本発明による温度および圧力に適した任意のフロー反応器である。
【0034】
本発明の意味における自己圧力は、所与の温度および所与の量の遊離体での所与の密閉容器またはフロー反応器内の反応中に存在する平衡圧力として定義される。
【0035】
プロセスは、バッチプロセスまたは半バッチプロセスとして行うことができる。バッチプロセスとしてプロセスを行う場合、全ての反応物および溶媒を反応器に導入し、反応を上記の条件下で実施する。上記の条件下で半バッチプロセスとしてプロセスを行う場合、反応物の1つ(モルホリンまたは式(II)もしくは(IIa)の化合物のいずれか)を反応器に装入し、第2の反応物(それぞれ式(II)もしくは(IIa)の化合物またはモルホリン)を一定期間にわたって添加する。反応物モルホリンと式(II)または(IIa)の化合物の両方のさらなる投入は、容器に同時にまたはフロー反応器を使用して実施することができる。
【0036】
後処理のために、密閉容器またはフロー反応器を20℃~80℃に冷却し、反応混合物を有機溶媒、例えばメチルtert-ブチルエーテルで希釈し、式(IV)または(IVa)の塩を、濾過を介して除去し、モルホリンおよび溶媒のアクセスを真空中で除去し、式(I)の化合物を蒸留によって得る。
【0037】
あるいはおよび好ましくは、オートクレーブを80℃~100℃に冷却し、反応混合物を水で希釈し、生成物層を分離し、水層を有機溶媒、例えばメチルtert-ブチルエーテルで洗浄する。有機溶媒に溶解した式(I)の化合物を、精製することなく使用するか、または蒸留によってさらに精製する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
実施例1
式(II)の2,2,3,3-テトラフルオロプロピルトシレート(10.0g、0.035mol)およびモルホリン(6.08g、0.070mol)の攪拌混合物をオートクレーブ中140℃で5時間加熱した。オートクレーブを室温に冷却し、開き、反応混合物をメチルtert-ブチルエーテル75ml(3×25ml)で希釈した。モルホリン塩を濾別し、濾液を、真空中(10~20mmHg)、20~25℃で蒸発させた。式(I)の化合物(4-(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)モルホリン)を、大気圧下、蒸留によって無色液体として得た。
沸点165~168℃、収量5.6g(79%)。
【0039】
実施例2
式(II)の2,2,3,3-テトラフルオロプロピルトシレート(10.0g、0.035mol)およびモルホリン(6.08g、0.070mol)の攪拌混合物をオートクレーブ中120℃で12時間加熱した。オートクレーブを室温に冷却し、開き、反応混合物をメチルtert-ブチルエーテル75ml(3×25ml)で希釈した。モルホリン塩を濾別し、濾液を、真空中(10~20mmHg)、20~25℃で蒸発させた。式(I)の化合物(4-(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)モルホリン)を、大気圧下、蒸留して無色液体として得た。
沸点165~168℃、収量5.8g(82.4%)。
【0040】
実施例3
式(II)の2,2,3,3-テトラフルオロプロピルトシレート(330.0g、1.10mol)およびモルホリン(208.0g、2.39mol)の攪拌混合物をオートクレーブ中130℃で18時間加熱した。オートクレーブを80℃に冷却し、開き、反応混合物を水110mlで希釈し、室温にさらに冷却した。下側生成物層を分離し、水層をメチルtert-ブチルエーテル(2×83ml)で洗浄した。有機層を合わせ、溶媒を常圧で蒸発させた。式(I)の化合物(4-(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)モルホリン)を、真空185mmHg中、115℃で蒸留して無色液体として得た。
沸点115℃/185mbar、収量188.0g(85%)。
1H-NMR(400 MHz,CDCl3):δ=2.50-2.69(m,4H),2.89(tt,J=14.06,1.83Hz,2H),3.43-3.89(m,4H),5.72-6.28(m,1H)ppm