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特許7471311ポリマーの熱分解からのガス状流出物を処理するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】ポリマーの熱分解からのガス状流出物を処理するための方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/10 20060101AFI20240412BHJP
   C10G 1/10 20060101ALI20240412BHJP
   B01D 5/00 20060101ALI20240412BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20240412BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20240412BHJP
   C08J 11/12 20060101ALI20240412BHJP
   B01D 53/72 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C08J11/10
C10G1/10 ZAB
B01D5/00 Z
B01D53/14 210
B01D53/18 150
C08J11/12
B01D53/72 200
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021546483
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 FR2019052479
(87)【国際公開番号】W WO2020079380
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-10-18
(31)【優先権主張番号】1859659
(32)【優先日】2018-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(73)【特許権者】
【識別番号】521166825
【氏名又は名称】パイロヴァック
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】デュボワ, ジャン-リュック
(72)【発明者】
【氏名】デ コミア, ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】ブランシェット, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ロイ, クリスティアン
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-024754(JP,A)
【文献】特開2001-089768(JP,A)
【文献】特開2004-018563(JP,A)
【文献】特開2001-123007(JP,A)
【文献】特開平10-245569(JP,A)
【文献】特開平11-106427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/00-11/28
C10G 1/10
B01D 5/00
B01D 53/14
B01D 53/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーまたはポリマーブレンドの熱分解から得られたガス状流出物に含まれる1種以上のモノマーを回収するための、前記ガス状流出物の処理方法(200)であって、以下の工程:
‐ 第1の圧力pで維持された凝縮チャンバー(110)内にガス状流出物を注入することと、それを吸収液と接触させることとを含む凝縮工程(210)であって、前記吸収液の温度がガス状流出物の温度を下回り、その結果、前記モノマーが熱交換によって吸収液中に凝縮する凝縮工程、
‐ 第1の圧力pよりも低い第2の圧力pで維持されたチャンバー(130)内での凝縮物の膨張による、凝縮工程の終了時に得られた凝縮物の部分蒸発の工程(230)、
‐ 部分蒸発工程(230)の終了時に得られた第1の液体または蒸気留分を、ガス状流出物に含まれるモノマーを再度吸収するように、少なくとも部分的に凝縮チャンバー(110)に向け直すことを含む再注入工程(240);および
‐ 部分蒸発工程(230)の終了時に得られた、モノマーを充填した第2の液体または蒸気留分の精製を含む回収工程(250)
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
第1の圧力pが0.1から5barの間の絶対圧であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
吸収液の温度がガス状流出物の温度より少なくとも50℃低く、かつ、450℃以上低くなることはないことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第2のチャンバー130が0.001から0.8barの間の圧力pで維持されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第1のチャンバー110と第2のチャンバー130との間の絶対値としての圧力差が0.5bar以上であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
回収工程(250)が、モノマーを充填した第2の留分が蒸気留分である場合、部分蒸発工程230の終了時に得られた蒸気留分の凝縮を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
回収工程(250)が、モノマーを充填した第2の留分が液体留分である場合、部分蒸発工程230の終了時に得られた液体留分の濾過またはデカンテーションを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
再注入工程(240)の間、再注入される第1の留分が液体留分であり、回収工程(250)の間、回収される第2の留分が蒸気留分であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
‐ 吸収液が、標準状態でのその蒸発潜熱ΔHvと標準状態でのそのモル比熱Cpとの比が回収されるモノマーの比より大きくなるように選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
吸収液が、ベンゼン、ベンゾニトリル、式R-COOHの化合物、および式R-OHの化合物(式中、Rは、炭素数1~5のアルキル;フェニルまたは水素から選択されてもよい)のいずれかの化合物から選択されるか、
吸収液が、式R-OHの化合物、式R-COOHの化合物(式中、Rは、炭素数1~5のアルキル;または水素から選択されてもよい)のいずれかの化合物から選択されるか、
吸収液が一酸化二水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ギ酸、酢酸またはこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
吸収液が、その沸点が回収されるモノマーの沸点のオーダー±80℃になるように選択されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ポリマーが、ポリエチレン;オレフィンのホモポリマーおよびコポリマー;ポリプロピレン、ポリブタジエン、およびポリブチレン;アクリルホモポリマーおよびコポリマー、ならびにポリメチルメタクリレートなどのポリアルキルメタクリレート;ポリヒドロキシアルカノエート;ホモポリアミドおよびコポリアミド;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートを含むポリエステル;ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン、ポリオキシエチレンまたはポリエチレングリコールおよびポリオキシプロピレンなどのポリエーテル;ポリスチレン;スチレンと無水マレイン酸のコポリマー;ポリ塩化ビニル;ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンテトラフルオリド、およびポリクロロトリフルオロエチレンなどのフルオロポリマー;天然または合成ゴム;熱可塑性ポリウレタン;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)およびポリエーテルケトンケトン(PEKK)などのポリアリールエーテルケトン(PAEK);ポリエーテルイミド;ポリスルホン;ポリフェニレンスルフィド;セルロースアセテート;ポリ酢酸ビニル;ポリプロピオラクトン;またはこれらの2種以上のポリマーの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
モノマーが、次の化合物:メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、クロトン酸、ガンマブチロラクトン、デルタバレロラクトン、およびこれらの混合物から選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
凝縮工程(210)の間のガス状流出物の注入が、吸収液に対して並流または向流で行われることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
部分蒸発工程(230)の前の凝縮工程の終了時に得られた凝縮物の分離工程(220)を更に含むことを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ガス状流出物に含まれるモノマーを再度吸収するために、凝縮チャンバー(110)に向け直された留分の温度を調整する工程(260)を更に含むことを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
凝縮工程(210)の時点で、添加剤が吸収液に添加され、前記添加剤が、場合によって重合禁止剤から選択されていることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
部分蒸発工程(230)の時点で、添加剤が回路に添加され、前記添加剤が、場合によって重合禁止剤から選択されていることを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ポリマーまたはポリマーブレンドの熱分解から得られたガス状流出物に含まれる1種以上のモノマーを回収するための、前記ガス状流出物の処理システムであって、
‐ 第1の圧力pで維持され得る凝縮チャンバー(110)であって、その側壁に、ガス状流出物の入口開口部(111)と、前記ガス状流出物とその温度より低い温度の吸収液との接触を可能にする吸収装置(112)とを備え、更に、ガス出口開口部(113)をその上端に、得られた凝縮物のための出口開口部(114)をその下端に備える凝縮チャンバー、
‐ 凝縮チャンバー(110)と流体連通しており、凝縮工程の終了時に得られた凝縮物を受け入れるための第2のチャンバー(130)であって、凝縮物の膨張と断熱部分蒸発をもたらすように、第1の圧力pより低い第2の圧力pで維持されることが可能である、第2のチャンバー(130)、
‐ 第2のチャンバー(130)から得られた留分を回収して、それを吸収装置(112)を介して第1の凝縮チャンバー(110)に再注入するためのポンプ(140)
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項20】
第2のチャンバー(130)内での凝縮物の膨張によってもたらされる部分蒸発から得られたガス留分を凝縮するための、第2のチャンバー(130)の下流に位置する熱交換器(131)と、凝縮された前記ガス留分の構成成分を精製する手段(150)とを更に備えることを特徴とする、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
第2のチャンバー(130)の上流に位置する分離装置(120)を更に備えることを特徴とする、請求項19または20に記載のシステム。
【請求項22】
第1のチャンバー(110)の上流に、第2のチャンバー(130)から得られた液体留分の温度を、それが第1のチャンバー(110)に注入される前に調整することができる熱交換器(160)を更に備えることを特徴とする、請求項19から21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
第2のチャンバー(130)の下流に位置する、第2のチャンバー(130)から得られた液体留分の一部を精製することができる精製装置(170)を更に備えることを特徴とする、請求項19から22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
吸収液注入点(116)を更に備えることを特徴とする、請求項19から23のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本発明は、ポリマーの分解から得られたガス状流出物の処理の分野に関するものである。
【0002】
[002]より詳細には、本発明は、ポリマーまたはポリマーブレンドの熱分解から得られたガスを処理する方法に関する。本方法は、一般に、異なるグレードの複数のポリマーを含むプラスチックおよびプラスチック残留物のリサイクル、特に、1つのファミリーのポリマーのみを含むポリマー化合物のリサイクルに適用される。
【0003】
[背景技術]
[003]2017年には、世界中で何億メートルトンものプラスチックが生産された。このように、プラスチックの製造とリサイクルは、環境的および経済的観点からも大きな課題となっていることは明らかである。したがって、ポリマー樹脂を脱重合および/またはクラッキングし、再利用可能な生成物を得ることができるのは、経済的および環境的観点から有利である。従来のプラスチックのリサイクル方法の中で、最も頻繁に採用されているのが熱分解とメカニカルリサイクルである。
【0004】
[004]熱分解とは、処理用プラスチック製品を適切なチャンバーに入れ、その後チャンバーを加熱して熱が製品に伝達されるようにすることである。それはプラスチック廃棄物の処理を可能にし、通常、熱可塑性ポリマーマトリックスの製造にそのままでは再利用できない、すすけた残留物、油およびガスをもたらす。そのような熱分解方法は、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、ポリスチレンまたは他のプラスチック残留物を分解するために特に使用される。PMMAまたはポリスチレンの熱分解の場合、モノマーを回収できることが有利であろう。プラスチック残留物の熱分解の場合、可燃物または燃料として使用可能な生成物の混合物を回収することが可能である。ポリオレフィン熱分解のコア留分は、例えばナフサタイプ(熱分解ガソリン)のカットを多く含み、これを有利に使用して、蒸気クラッキング装置(石油化学の従来の装置)に供給し、再びオレフィンを製造することができる。一般に、ポリマー熱分解によるこの熱分解から得られたガス状流出物には、回収およびリサイクルが望まれる化合物が多く含まれている。
【0005】
[005]化合物(例えばモノマー)を単離し回収するためには、ガス状流出物を凝縮しなければならない。そのために、ガス状流出物が循環する熱交換器を使用するのが一般的であり、液体留分が生成されるまで熱交換器がガス状流出物を冷却する。
【0006】
[006]この凝縮の終了時に回収された生成物は比較的中等度の品質であり、洗浄およびその後の蒸留による精製の後続工程を必要とする。
【0007】
[007]ポリマーの熱分解から得られたガス状流出物は、軽質、中質、および重質成分モル分率で構成される。回収およびアップグレードが望まれるモノマーは、本質的には中質成分モル分率で存在する。したがって、本出願人は、目的のこのモル分率をより効率的に分離するためのソリューションを求めた。
【0008】
[008]国際公開第2017/179009号には、C3炭化水素をガス状混合物から分離する方法とシステムが記載されている。本システムでは成分の分離は成分の沸点に応じて行われ、したがって本方法と本システムは蒸留カラムに対応する。
【0009】
[009]米国特許第2016/145185号には、メタクリル酸の合成中に精製メタクリル酸を回収するための方法が記載されている。その文献では、化合物の合成プロセス中および蒸留カラムの加熱プロセス中の化合物の精製工程が記載されている。
【0010】
[0010]米国特許第2003/028052号は、アクリル酸を吸収および精製するための方法を記載している。その方法では蒸留カラムを使う。
【0011】
[技術的問題]
[0011]したがって、本発明の目的は、先行技術の上記の欠点の少なくとも1つを克服することである。
【0012】
[0012]本発明は、特に、ポリマーまたはポリマーブレンドの熱分解から得られたガス状流出物から目的のモル分率を単離し、品質の向上した1種以上の化合物(例えばモノマー)を回収するための、シンプルで効率的なソリューションを提案することに関する。
【発明の概要】
【0013】
[0013]この目的のために、本発明の1つの主題は、ポリマーまたはポリマーブレンドの熱分解から得られたガス状流出物に含まれる1種以上のモノマーを回収するための、前記ガス状流出物の処理方法であって、
‐ 第1の圧力pで維持された凝縮チャンバー内にガス状流出物を注入することと、それを吸収液と接触させることとを含む凝縮工程であって、前記吸収液の温度がガス状流出物の温度を下回り、その結果、前記モノマーが熱交換によって吸収液中に凝縮する凝縮工程、
‐ 第1の圧力pよりも低い第2の圧力pで維持されたチャンバー内での凝縮物の膨張による、凝縮工程の終了時に得られた凝縮物の部分蒸発の工程、
‐ 部分蒸発工程の終了時に得られた第1の液体または蒸気留分を、ガス状流出物に含まれるモノマーを再度吸収するように、少なくとも部分的に凝縮チャンバーに向け直すことを含む再注入工程であって、好ましくは、蒸気留分は凝縮チャンバーに導入される前に適宜再凝縮される、再注入工程;および
‐ 部分蒸発工程の終了時に得られた、モノマーを充填した第2の液体または蒸気留分の精製を含む回収工程
を含むことを特徴とする、方法である。
【0014】
[0014]このように、ガス状流出物をそれよりかなり低い温度の吸収液に接触させるための吸収装置を用いる凝縮、続いて得られた凝縮物の特に圧力差の存在下での部分蒸発により、1種以上のポリマーの分解から得られたガス状流出物に含まれるモノマーを効率的に単離することが可能になることが発見された。
【0015】
[0015]本方法の他の任意選択の特徴によると:
- 再注入工程の間、再注入される第1の留分は液体留分であり、回収工程の間、回収される第2の留分は蒸気留分である;
‐ 吸収液は、標準状態でのその蒸発潜熱ΔHvと標準状態でのそのモル比熱Cpとの比が回収されるモノマーの比より大きくなるように選択される;
‐ 吸収液は、次の化合物:ベンゼン、ベンゾニトリル、式R-COOHの化合物、および式R-OHの化合物[ここで、Rはアルキル(炭素数1~5)、フェニルまたは水素から選択され得る]から選択される;
‐ 吸収液は、その沸点が回収されるモノマーの沸点のオーダー±80℃、好ましくは±50℃、より好ましくは±30℃、より一層に好ましくは±10℃であるように選択される;
‐ 吸収液は、回収されるモノマーの沸点および/または回収されるモノマーと形成される共沸混合物の沸点を超えるかまたはそれと実質的に等しい沸点を有する;
‐ ポリマーは、以下から選択される:高密度ポリエチレン(HDPE)またはポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエチレン;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、スチレン-ブタジエン-アルキルメタクリレート(またはSBM)コポリマーなど、オレフィンのホモポリマーおよびコポリマー;ポリプロピレン、ポリブタジエン、およびポリブチレン;アクリルホモポリマーおよびコポリマー、ならびにポリメチルメタクリレートなどのポリアルキルメタクリレート;ポリヒドロキシアルカノエート;ホモポリアミドおよびコポリアミド;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートを含むポリエステル;ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン、ポリオキシエチレンまたはポリエチレングリコールおよびポリオキシプロピレンなどのポリエーテル;ポリスチレン;スチレンと無水マレイン酸のコポリマー;ポリ塩化ビニル;ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンテトラフルオリド、およびポリクロロトリフルオロエチレンなどのフルオロポリマー;天然または合成ゴム;熱可塑性ポリウレタン;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)およびポリエーテルケトンケトン(PEKK)などのポリアリールエーテルケトン(PAEK);ポリエーテルイミド;ポリスルホン;ポリフェニレンスルフィド;セルロースアセテート;ポリ酢酸ビニル;またはこれらの2種以上のポリマーの混合物;
‐ モノマーは、次の化合物から選択される:メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、クロトン酸、ガンマブチロラクトン、デルタバレロラクトン、およびこれらの混合物;
‐ 凝縮工程の間のガス状流出物の注入は、吸収液に対して並流または向流で行われる;
‐ 本方法には、部分蒸発工程の前の凝縮工程の終了時に得られた凝縮物の分離工程も含まれる;
‐ また、本方法は、凝縮チャンバーに向け直された留分の温度を、ガス状流出物に含まれるモノマーを再度吸収するように、調整する工程も含み、本工程には、例えば加熱または冷却が含まれる;
- 凝縮工程の時点で、添加剤が吸収液に加えられ、前記添加剤は、場合によって重合禁止剤から選択されている;
- 部分蒸発工程の時点で、添加剤が回路に加えられ、前記添加剤は、場合によって重合禁止剤から選択されている。
【0016】
[0016]本発明の主題はまた、ポリマーまたはポリマーブレンドの熱分解から得られたガス状流出物に含まれる1種以上のモノマーを回収するための、前記ガス状流出物の処理システムであって、前記システムが、
‐ 第1の圧力pで維持され得る凝縮チャンバーであって、その側壁に、ガス状流出物の入口開口部と、前記ガス状流出物とその温度より低い温度の吸収液との接触を可能にする吸収装置とを備え、また、ガス出口開口部をその上端に、得られた凝縮物のための出口開口部をその下端に備える凝縮チャンバー、
‐ 凝縮チャンバーと流体連通しており、凝縮工程の終了時に得られた凝縮物を含む液体を受け入れるための第2のチャンバーであって、凝縮物の膨張とその断熱部分蒸発をもたらすように、第1の圧力pより低い第2の圧力pで維持されることが可能である、第2のチャンバー、
‐ 第2のチャンバーから得られた液体留分を回収して、それを吸収装置を介して第1の凝縮チャンバーに再注入するためのポンプ
を備えることを特徴とする。
【0017】
[0017]本システムの他の任意選択の特徴によると:
‐ 本システムはまた、第2のチャンバー内での凝縮物の膨張によってもたらされる部分蒸発から得られたガス留分を凝縮するための、第2のチャンバーの下流に位置する熱交換器と、前記凝縮ガス留分の構成成分を精製する手段とを備える;
‐ 本システムはまた、第2のチャンバーの上流に位置する分離装置を備え、これは、好ましくは、濾過、デカンテーション、遠心分離またはエステル化によって化合物を分離することができる;
‐ 本システムはまた、第1のチャンバーの上流に熱交換器を備え、これは、第2のチャンバーから得られた液体留分が第1のチャンバーに注入される前に、該液体留分の温度を調節すること、好ましくは冷却することができる;
‐ 本システムはまた、第2のチャンバーの下流に位置する精製装置を備え、これは、第2のチャンバーから得られた液体留分の一部を精製することができる;
‐ 本システムはまた、吸収液注入点も含む。
【0018】
[0018]本発明の他の利点および特徴は、以下の添付の図面を参照して、例示的かつ非限定的な例として示している下記の説明を読むことで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明による方法の一例の概要図である。
図2】本発明によるシステムの一例の概要図である。
【発明の詳細な説明】
【0020】
[0019]本明細書の残りの部分では、「モノマー」という用語は、重合を起こし得る分子を意味する。「モノマー」という用語は、ポリマーを構成する最も優勢なモノマー単位を意味する。したがって、PMMAではモノマーはメチルメタクリレート(MMA)であるのに対し、ポリスチレンではスチレンである。
【0021】
[0020]用いられる用語「重合」は、モノマーまたはモノマーの混合物をポリマーへ変換するための方法に関するものである。
【0022】
[0021]用いられる用語「脱重合」は、ポリマーを、その初期ポリマーよりも小さいモル質量の、1種以上のモノマーおよび/またはオリゴマーおよび/またはポリマーに変換するための方法に関するものである。
【0023】
[0022]本発明においては、用語「熱分解」は、非常に高い温度まで上昇させて、モノマーを含む種々の化合物へのポリマーの変換をもたらす工程に相当する。
【0024】
[0023]用語「ポリマー」は、コポリマーまたはホモポリマーのいずれかを意味する。「コポリマー」は、いくつかの異なるモノマー単位が集まったポリマーであり、「ホモポリマー」は、同一のモノマー単位が集まったポリマーである。
【0025】
[0024]用語「熱可塑性ポリマー」とは、熱の作用下で繰り返し軟化または溶融することができ、加熱および加圧により新しい形状をとるポリマーを意味する。熱可塑プラスチックの例は、例えば、ポリエチレン;ポリメチルメタクリレート(PMMA)などの(メタ)アクリル系ポリマー;またはポリスチレン(PS);ポリ乳酸(PLA);ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)である。
【0026】
[0025]「(メタ)アクリル系ポリマー」という用語は、(メタ)アクリル系モノマーをベースとするホモポリマーまたはコポリマーを意味し、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、およびこれらの混合物から選択される。ポリメチルメタクリレート(PMMA)は、メチルメタクリレートモノマーの重合によって得られるメタクリルポリマーの特定の例である。本発明においては、用語「PMMA」は、メチルメタクリレート(MMA)のホモポリマーおよびコポリマーを指し、PMMA中のMMAの重量比は、MMAコポリマーの場合、好ましくは少なくとも70重量%である。
【0027】
[0026]「メチルメタクリレートベースのコポリマー」という用語は、少なくとも1のメチルメタクリレートモノマーを含むコポリマーを意味する。例えば、メチルメタクリレートベースのコポリマーは、PMMA中に少なくとも70重量%、好ましく量%、有利には90重量%のMMAを含むコポリマーであり得る。
【0028】
[0027]用語「軽質成分モル分率(fraction molaire legre)」とは、混合物の他の成分に対する相対揮発度が最も高い成分の割合を意味し、「中質成分モル分率(fraction molaire moyenne)」とは、混合物の他の成分に対する相対揮発度が中等度である成分の割合を意味し、「重質成分モル分率(fraction molaire lourde)」とは、混合物の他の成分に対する相対揮発度が最も低い成分の割合を意味する。
【0029】
[0028]J.mol-1で表される「標準状態での蒸発潜熱ΔHv」または「蒸発エンタルピー」という用語は、1モルの化合物の蒸発に伴うエンタルピーの変化量を意味する。
【0030】
[0029]J.mol-1.K-1で表される「標準状態でのモル比熱」という用語は、1モルの化合物に供給されてその温度を1℃上昇させる熱量を意味する。
【0031】
[0030]「凝縮」という用語は、気相から液相へ移行する化合物の状態変化を意味する。「蒸発」という用語は、液相から気相に移行する化合物の状態変化を意味する。
【0032】
[0031]本発明においては、「凝縮物」という用語は、ガスの凝縮工程の終了時に得られた化合物の混合物を意味する。本発明の文脈において、この混合物は、1種以上のモノマーと、特に熱交換によってモノマーの凝縮に関与した吸収液を好ましくは含む。凝縮物はまた、精製工程の後、1種以上のモノマーに対応することもある。凝縮されるガスは、少なくとも30質量%、好ましくは少なくとも40質量%、より好ましくは少なくとも50質量%の凝縮性物質を含む。
【0033】
[0032]本発明においては、用語「吸収液」は、温度50℃、絶対圧1barの液体状態にある、ガス状流出物のモノマーに由来する熱エネルギーを吸収することができる化合物に相当する。
【0034】
[0033]「ガス状流出物」という用語は、熱分解から得られた反応生成物であって、特にモノマーを含む可能性のあるモル分率を含むものを意味する。凝縮されるガスは、少なくとも30質量%、好ましくは少なくとも40質量%、より好ましくは少なくとも50質量%の凝縮性物質を含む。
【0035】
[0034]本発明において、「熱交換」という用語は、第1の要素と第2の要素との間で熱を移動させるためのシステムを意味し、第1の要素は第2の要素よりも高い温度を有し、それが第1の要素の冷却と第2の要素の加熱をもたらす。本発明において、「に接触させる」という用語は、直接接触、すなわち第1の要素と第2の要素との間に分割壁がない熱交換を意味する。
【0036】
[0035]本発明において、「流体連通」という用語は、2つの部分が、第1の部分から第2の部分への流体の通過を全く漏れがなく可能にするように配置されているという事実に対応する。
【0037】
[0036]本発明において、「実質的に等しい」という用語は、比較値に対して30%未満、好ましくは20%未満、より一層好ましくは10%未満変動する値を意味する。
【0038】
[0037]本明細書の残りの部分では、同じ参照番号を用いて同じ要素を示す。
【0039】
[0038]一態様によれば、本発明は、ガス状流出物を処理するための方法200に関する。ガス状流出物は一般に、ポリマーまたはポリマーブレンドの熱分解に由来する。ポリマーは、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)またはポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエチレン;ポリプロピレン、プイブタンジエン、およびポリブチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、スチレン-ブタジエン-アルキルメタクリレート(またはSBM)コポリマーなど、オレフィンのホモポリマーおよびコポリマー;アクリルホモポリマーおよびコポリマー、ならびにポリメチルメタクリレート(PMMA)などのポリアルキルメタクリレート;ポリヒドロキシアルカノエート;ホモポリアミドおよびコポリアミド;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートを含むポリエステル;ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン、ポリオキシエチレンまたはポリエチレングリコールおよびポリオキシプロピレンなどのポリエーテル;ポリスチレン;スチレンと無水マレイン酸のコポリマー;ポリ塩化ビニル;ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンテトラフルオリド、およびポリクロロトリフルオロエチレンなどのフルオロポリマー;天然または合成ゴム;熱可塑性ポリウレタン;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)およびポリエーテルケトンケトン(PEKK)などのポリアリールエーテルケトン(PAEK);ポリエーテルイミド;ポリスルホン;ポリフェニレンスルフィド;セルロースアセテート;ポリ酢酸ビニル;ポリプロピオラクトン;またはこれらの2種以上のポリマーの混合物であり得る。
【0040】
[0039]ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)は、例えば、ポリ-3-ヒドロキシブチレート(P3HB)、ポリ-4-ヒドロキシブチレート(P4HB)、ポリ-3-ヒドロキシプロピオネート(P3HP)、ポリ-5-ヒドロキシバレレート(P5HV)、ポリ-6-ヒドロキシヘキサノエート、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸、ポリ-3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシプロピオネート、ポリ-3-ヒドロキシブチレート-co-(D)-ラクチド、ポリ-3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート(ポリ-3HB-co-4HB)、ポリ-3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバレレート(ポリ-3-HB-co-3HV)、ポリ-3-ヒドロキシブチレート-co-5-ヒドロキシバレレート、およびポリ-3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエートから選択され、これらは、本質的には微生物によって自然に生成され、1種以上のモノマーの重合によって形成されるポリマーである。
【0041】
[0040]PHAのモノマー成分は、限定されないが、アクリル酸、3-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシプロピオネート、3-ヒドロキシバレレート、3-ヒドロキシヘキサノエート、3-ヒドロキシヘプタノエート、3-ヒドロキシオクタノエート、3-ヒドロキシノナノエート、3-ヒドロキシデカノエート、3-ヒドロキシドデカノエート、4-ヒドロキシブチレート、4-ヒドロキシバレレート、5-ヒドロキシバレレート、6-ヒドロキシヘキサノエート、2-メチル-3-ヒドロキシプロパノエート、2-メチル-2-ヒドロキシプロパノエート、2-ヒドロキシプロパノエート(乳酸)、および2-ヒドロキシエタノエート(グリコール酸)などの酸もしくはエステル型;および/またはラクトン型またはラクタム型(カプロラクトンまたはカプロラクタム、またはプロピオラクトン、ブチロラクトンまたはバレロラクトンなど)を含む。このようなモノマー成分は、ホモポリマーまたはコポリマーを形成し得る。2種の異なるモノマー成分を有するPHAコポリマーの例を提供したが、PHAは3種以上の異なるモノマー成分を有することもある。PHAおよびPLAの熱分解中、他のモノマー成分が形成され、モノマーとして、または新規の合成における試薬として用いられることがある。
【0042】
[0041]好ましくは、ポリマーは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリヒドロキシアルカノエート、PLA、ポリスチレン、スチレンと無水物のコポリマー、またはこれらのポリマーのうちの2種以上のブレンドから選択される。
【0043】
[0042]更に、ポリマーは、ポリマーおよび強化材を含む複合材に由来してもよい。
【0044】
[0043]このような方法により、ガス状流出物に含まれる1種以上のモノマーを回収することが可能になる。ポリマーの熱分解は、機械的にモノマーの形成をもたらすわけではない。したがって、モノマーとしてアップグレードするのに同じくらい有利な他のモノマーが、この分解中に形成されることがある。したがって、目的の生成物は、ポリマーの分解から得られたモノマーまたはモノマー混合物であり得る。目的の生成物は、特に、ポリマーの分解から得られたモノマーまたはモノマー混合物であってよい。通常、該方法の最後にユーザーは、モノマーに富む留分を得ることができ、それを例えばそのまま使用したり、更に精製したり、あるいは変換したりすることができる。
【0045】
[0044]モノマーは、例えば、次の化合物:メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、クロトン酸、ガンマ-ブチロラクトン、デルタ-バレロラクトン、およびこれらの混合物。好ましくは、モノマーは、次の化合物:メチルメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、スチレン、およびこれらの混合物から選択され得る。
【0046】
[0045]好ましくは、処理されるガスは、熱可塑性ポリマーの熱分解から得られ、回収される目的生成物は、分解ポリマーのモノマーである。こうして回収されたモノマーは、その後再利用される可能性がある。
【0047】
[0046]これを行うため、本方法は、後で詳述する循環凝縮システムの文脈で有利に再利用され得る吸収液を要する。
【0048】
[0047]吸収液は、一方では、凝縮チャンバー110内でのガス状流出物との熱交換を、他方では、第2のチャンバー130内で膨張中の凝縮物の部分蒸発を最適に促進するために、有利に選択される。したがって、吸収液の選択は、好ましくは、回収されるモノマーに合わせられる。回収されるモノマーは、1013mbarの大気圧で液体である。
【0049】
[0048]好ましくは、吸収液は、標準状態でのその蒸発潜熱ΔHvと標準状態でのそのモル比熱Cpとの比が回収されるモノマーの比が可能な限り高く、すべての場合においても、回収されるモノマーの比より大きくなるように選択される。
このようにして、本発明による処理方法の効率は、大幅に改善される。これらの蒸発潜熱およびモル比熱の標準状態値は、当業者に知られているマニュアルに記載されている。これらの標準状態値は、好ましくは、1barの圧力での状態に相当する。吸収液の標準状態における蒸発潜熱ΔHvは、例えば、20kJ/mol以上、好ましくは30kJ/mol以上、より好ましくは40kJ/mol以上、より一層好ましくは50kJ/mol以上である。
【0050】
[0049]有利には、吸収液は、次の化合物:ベンゼン、ベンゾニトリル、式R-OHの化合物、式R-COOHの化合物(式中、Rは、炭素数1~5のアルキル;およびフェニルまたは水素から選択されてもよい)のうちのいずれから選択される。したがって、吸収液は、例えば、次のものから選択することができる:ベンゼン(71-43-2)、ベンゾニトリル(100-47-0)、一酸化二水素(7732-18-5)、メタノール(67-56-1)、エタノール(64-17-5)、プロパノール(71-23-8または67-63-0)、ブタノール(71-36-3;78-92-2;15892-23-6;14898-79-4;4221-99-2)、フェノール(108-95-2)、ギ酸(64-18-6)、酢酸(64-19-7)、またはこれらの混合物から選択することができる。
【0051】
[0050]第1の実施態様において、更に有利には、環境および生態学上の理由から、吸収液は、次の化合物:式R-OHの化合物、式R-COOHの化合物(式中、Rは、炭素数1~5のアルキル;または水素から選択されてもよい)のうちのいずれから選択される。したがって、吸収液は、例えば、次のものから選択することができる:一酸化二水素(7732-18-5)、メタノール(67-56-1)、エタノール(64-17-5)、プロパノール(71-23-8または67-63-0)、ブタノール(71-36-3;78-92-2;15892-23-6;14898-79-4;4221-99-2)、ギ酸(64-18-6)、酢酸(64-19-7)、またはこれらの混合物から選択することができる。
【0052】
[0051]好ましくは、吸収液は、その沸点が回収されるモノマーの沸点のオーダーであるように、すなわち、回収されるモノマーの沸点から上下80℃を超えることはなく、好ましくは上下50℃であるように選択される。この場合、吸収液とモノマーとの共沸混合物の生成は排除できない。好ましくは、吸収液は、回収されるモノマーの沸点および/または回収されるモノマーと形成される共沸混合物の沸点を上回るかまたは実質的に等しい沸点を有する。
【0053】
[0052]本発明による方法の一例を図1に示し、図2に模式的に表されるような本発明によるシステムに関連してこれを詳述する。図1に示されるように、本発明による方法は、第1の圧力pで維持された凝縮チャンバー110へのガス状流出物の注入を含む凝縮工程210を伴う。凝縮チャンバー110は、例えば、0.1~5barの間、好ましくは0.5~2barの間、好ましくは0.8~1.5barの間、より好ましくは0.9~1.2barの間の絶対圧pで維持され得る。
【0054】
[0053]凝縮工程210はまた、ガス状流出物と吸収液を接触させることも含む。吸収液の温度はガス状流出物の温度より低いため、前記モノマーは、吸収液と接触すると凝縮する。好ましくは、吸収液の温度は、ガス状流出物の温度よりも少なくとも50℃低く、より好ましくは少なくとも60℃低く、より一層好ましくは少なくとも80℃低い。また、吸収液の温度は、例えば、ガス状流出物の温度より450℃以上低くなることはない。吸収液の温度は、有利には、ガス状流出物の温度より少なくとも50℃低く、かつ、450℃以上低くなることはなく、更に有利には、少なくとも60℃低く、かつ、450℃以上低くなることはない。特に、吸収液は、凝縮チャンバー110への入口において、140℃以下、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下、より一層好ましくは80℃以下の温度を有し得る。
【0055】
[0054]接触させることは、例えば噴霧カラム、マイクロスプレー、気泡カラム、充填カラム、落下フィルム、プレートカラム、ベンチュリ効果(例えばバスループ型システム)、スピニングディスクタイプまたは回転充填層(RPB)タイプの遠心接触システム(HiGeeとしても知られている)によって、実施することができる。遠心システムでは、得られた重力を利用して、薄膜を発生させることにより液体に装置を通過させ、一方、ガスは、並流または向流モードで該装置を通過する。このRPB/HiGee技術は、本発明の気液接触を促進するのに特に適している。
【0056】
[0055]凝縮工程210の間に添加剤を、任意選択で吸収液に添加することができる。したがって、ヒドロキノン、フェノチアジン(PTZ)、ヒドロキノンモノメチルエーテル(HQME)、またはラジカル重合反応を制限する他の既知の生成物などの重合禁止剤を加えることで、ポリマー熱分解から得られた、一旦凝縮したガス状流出物を安定化させることが可能となる。
【0057】
[0056]有利には、本発明による方法はまた、吸収液の酸性度・塩基性度を制御する工程と、pHが4~9の間、好ましくは5~8の間になるように酸性または塩基性溶液の流量を調節することによって、そのpHを調整する工程とを含み得る。このようなpHの制御は、熱分解反応によって塩基性または酸性の副産物が生成され、それが吸収液中に蓄積して設備の腐食を引き起こす可能性のある場合、特に重要である。有利には、このpHの制御により、熱分解中に形成された酸を除去すること、またはその酸の酸性度定数に従ってこのような酸を他の成分から分離することが可能になる。
【0058】
[0057]例えば、リサイクルするプラスチックにPVC(ポリ塩化ビニル)が含まれている場合、その熱分解により塩酸が発生し、その塩酸が設備の腐食を引き起こすだけでなく、徐々に吸収液のpHを下げて凝縮ループに蓄積する。したがって、本発明による方法は、酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムまたは水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、または炭酸塩から選択される塩基などの基剤を吸収液中に注入する工程を含み得る。
【0059】
[0058]更に、この凝縮工程210の間に、ポリマー熱分解から得られたガス状流出物中に含有され得る軽質成分モル分率は、吸収液との接触によって完全に凝縮されない場合がある。それはその後、気体状態で、凝縮チャンバー110から凝縮チャンバー110の上端に位置する出口開口部113を経て排出され得る。したがって、本発明による方法には、凝縮されていない軽質成分モル分率を回収する工程およびそれを熱交換器に接触させる工程も含まれ得る。具体的には、例えばプラスチック残留物の脱重合を可能にするために、この軽質留分をエネルギー的にアップグレードすることができる。
【0060】
[0059]特定の場合において、本発明による方法は、凝縮工程210の下流に分離工程220を含んでもよい。この分離工程220は、部分蒸発工程230の前、凝縮工程210の間に生成された凝縮物を精製することを目的としていてもよい。この分離工程220は、例えば、濾過、デカンテーションまたは遠心分離を伴ってもよい。
【0061】
[0060]更に、凝縮物の温度は、第2のチャンバー130に伝わる前に、図1に示されていない追加の熱交換器によって、任意選択的に変更されてもよい。例えば、本方法には、部分蒸発工程230の前の凝縮工程210の終了時に得られた凝縮物の加熱工程も含まれる。
【0062】
[0061]本発明による方法はまた、凝縮工程210の終了時に得られた凝縮物の部分蒸発の工程230を含む。この部分蒸発は、第1の凝縮チャンバー110の圧力pよりも低い圧力pで維持された第2のチャンバー130内での凝縮物の膨張の実施によって可能になる。第2のチャンバー130は、例えば、0.001~0.8barの間、好ましくは0.01~0.5barの間、好ましくは0.1~0.4barの間、より好ましくは0.9~1.2barの間(境界値を含む)の圧力で維持され得る。
【0063】
[0062]有利には、第1のチャンバー110と第2のチャンバー130との間の絶対値としての圧力差Δp-pは、0.5bar以上、好ましくは0.6bar以上、より好ましくは0.7bar以上、より一層好ましくは0.8bar以上である。第1のチャンバー110と第2のチャンバー130との間の温度差は、これらの2つのチャンバー間の圧力差Δp-pを調整することによって達成されてもよい。好ましくは、第1のチャンバー110と第2のチャンバー130との間の温度差はまた、25℃と実質的に等しい。この温度差は、有利には5℃以上25℃以下であろう。当該値は、本処理方法の性能を改善することを可能にする。
【0064】
[0063]先に述べたように、部分蒸発工程230の時点で、添加剤を任意選択で回路に加えてもよい。ここでも、添加剤は、好ましくは重合禁止剤である。
【0065】
[0064]本発明による方法はまた、部分蒸発工程230の終了時に得られた、モノマーが充填された第2の液体または蒸気留分の精製を含む回収工程250を含む。
【0066】
[0065]したがって、モノマーが充填された第2の留分が蒸気留分である場合、回収工程250は、部分蒸発工程230の終了時に得られた蒸気留分の凝縮を好ましくは伴う。あるいは、モノマーが充填された第2の留分が液体留分である場合、回収工程250は、部分蒸発工程230の終了時に得られた液体留分の濾過またはデカンテーションを含む。部分蒸発工程230の終了時に得られた、前記蒸気留分の凝縮および前記液体留分の濾過またはデカンテーションもまた、回収工程250における精製と見なされる。
【0067】
[0066]更に、共沸混合物の形成の場合、本発明による方法は、追加の分離工程を含む。具体的には、共沸混合物の存在下で、共沸混合物の構成生成物(すなわち、本例では、吸収液およびモノマー)を、当業者に周知の方法で分離し、凝縮工程210で吸収液を再利用することができる。この分離は、例えば、異なる圧力で維持された2つの連続蒸留カラム、および/または液液抽出もしくは抽出蒸留を用いることを含む。この追加工程は、有利には、回収したいモノマーを単離することと、吸収液をリサイクルしてそれを凝縮ループに戻すこととを可能にする。
【0068】
[0067]回収工程はまた、モノマー溶液中に5~300mg/kgのオーダーの含有量を維持するように、重合禁止剤を注入してもよい。
【0069】
[0068]また、本発明による方法には、部分蒸発工程230の終了時に得られた第1の液体または蒸気留分を、少なくとも部分的に凝縮チャンバー110に向け直すことを含む再注入工程240も含まれる。部分蒸発工程230の後、この液状またはガス状の第1の留分は、好ましくは吸収液を主に含む。
【0070】
[0069]したがって、第1の留分が蒸気留分である場合、再注入工程240は、部分蒸発工程230の終了時に得られたこの蒸気留分の凝縮を好ましくは伴う。あるいは、第1の留分が液体留分である場合、再注入工程240は、部分蒸発工程230の終了時に得られた液体留分の少なくとも一部を、凝縮チャンバー110へと向け直すことを伴う。更に、液状留分の形態の第1の留分は、吸収液に富む留分を戻すことを可能にする分離工程を経ることができる。
【0071】
[0070]このようにして向け直された留分は、再びガス状流出物に含まれるモノマーを吸収するために使用され得る。
【0072】
[0071]特に、本発明による方法には、凝縮チャンバー110に向け直された留分の温度を調整する工程260も含まれ得る。したがって、原則として液体であるこの留分は、再度凝縮チャンバー110に導入される前に加熱または冷却され得る。
【0073】
[0072]先述の通り、吸収液は、特にポリマーまたはポリマーブレンドの熱分解から生じる残留物で汚染され得る。したがって、吸収装置112を介して再注入される前に、吸収液は、精製装置150または170によって実施され得る精製工程を経ることができる。この精製工程は、例えば、濾過、デカンテーション、遠心分離、蒸留、膜分離、溶媒抽出および/または凝縮、ならびに任意の可能な組合せに相当し得る。
【0074】
[0073]また、吸収液の精製の任意選択の工程に関連して、システム内の吸収液量が減少するか、またはそれを更新する必要がある可能性がある。したがって、好ましくは、本発明による方法は、注入点116でシステムに吸収液を注入する工程を含む。注入された吸収液は、吸収液の温度上昇が、吸収液の著しい蒸発を引き起こすことなく、モノマーの凝縮熱を吸収することを可能にするのに十分低い温度である。更に、注入点116はまた、添加剤、特に重合禁止剤を新鮮な吸収液とともに注入することを可能にし得る。好ましくは、この方法は、吸収液中に5~300mg/kgのオーダー、好ましくは50~200mg/kgのオーダーのモノマー含有量を維持するように、重合禁止剤を注入する工程を含む。
【0075】
[0074]更に、特に吸収液をリサイクルする文脈において、本発明による方法は、吸収液を分析する工程を含んでもよい。この分析工程には、例えば、pH、伝導度および/または密度の測定が含まれ得る。また、ガスクロマトグラフィー分析、または赤外線もしくはラマンスペクトルの確立を含むことができる。
【0076】
[0075]別の態様によると、本発明は処理システムに関する。本発明によるシステムの以下の記述は、一実施態様によるシステムのスキームを表す図2に関してなされる。当然ながら、本発明はこのスキームに限定されるものではなく、本発明の文脈から逸脱することなく、様々な可能性な変形で本システムを実施することができる。
【0077】
[0076]システム100は、ポリマーまたはポリマーブレンドの熱分解から得られたガス状流出物を処理して、このようなガス状流出物に含まれる目的の生成物を回収することができるようにする。
【0078】
[0077]システム100は、以下で凝縮チャンバーまたは凝縮段階とも呼ばれ、参照番号110の第1のチャンバーを備える。図示されている実施態様では、第1の圧力pに置かれ得るこの凝縮チャンバー110は、入口開口部111を備える。ポリマーの熱分解から得られたまだ高温のガス状流出物は、この入口開口部111を経由して凝縮チャンバー110に到達する。凝縮チャンバー110は、吸収装置112も備えている。この吸収装置112は、吸収液をチャンバー内に注入することを可能にし、したがって、この吸収液と流入するガス状流出物との接触が可能となる。吸収装置112は、図2に示されているように液体分散装置であってもよいが、充填カラム、分散および気液接触システムなどで構成されることもある。吸収液の温度は、ガス状流出物の温度よりもかなり低いため、ガス状流出物に含まれるモノマーは、熱交換によって吸収液中に凝縮することができる。
【0079】
[0078]チャンバー110内の冷却は、向流方向または並流方向に起こり得る。したがって、吸収装置112は、ガス状流出物入口開口部の上に位置し、かつ、ガス状流出物を補集することができる、吸収液を噴霧するための装置に相当し得る。このタイプの設備では、吸収剤の微小な液滴が原因で霧が発生することがある。その後、この霧が凝縮できないガスによって同伴され、吸収剤と生成物の損失をもたらすことがある。それで、この設備には、一般にパッキンで構成される霧除去システム(気液コアレッサー)、または液滴の合体をもたらす細かい格子が付いている。このタイプの設備は、当業者によく知られている。
【0080】
[0079]凝縮チャンバー110はまた、ポリマーの熱分解から得られたガス状流出物に含まれる、吸収液との接触によって凝縮されなかった任意の軽質成分モル分率の排出を可能にすることができる出口開口部113を含むことができる。この軽質成分モル分率は、例えば、特に凝縮を含み得る下流処理を受けることができる。
【0081】
[0080]第1の圧力pで凝縮された液体混合物(特にモノマーおよび吸収液を含む)は、本明細書の残りの部分では凝縮物とも呼ばれ、好ましくは凝縮チャンバー110の基部に位置する出口開口部114を経て排出され得る。
【0082】
[0081]一実施態様の変形例では、凝縮物が二相系の形態にある場合、例えば、濾過、デカンテーションまたは遠心分離による化合物の分離のための装置120も想定される。この場合、凝縮したモノマーを本質的に含まない第1の吸収液相は、ポンプによって、図2のスキームの点線の回路に従って、分離手段120の直後に、吸収システム112を介して凝縮段階110に再注入される、一方、凝縮した化合物を含有する他の吸収液相は、第2のチャンバー130に運ばれる。その後、この分離は、凝縮物の第1の精製を行うことを可能にすることを意味する。したがって、分離手段120は、第2のチャンバー130の上流に好ましくは配置される。一変形例では、デカンテーションによって分離された吸収液は、例えば、等温吸着によって精製されてもよく、吸収液に含まれる不純物は、例えば、活性炭、ゼオライト、イオン交換樹脂、または任意の他の吸着技術でトラップされる。その後、吸収液は、デカンテーションから得られたもう一方の吸収液相と再結合され、ユニット130に送られる。
【0083】
[0082]図2に示されている分離装置120は、熱分解に由来する粉塵を除去することを可能にする、凝縮物の濾過のための装置でもよい。したがって、分離装置120は、有利には、フィルタープレスなどのフィルター、活性炭フィルター、デカンターまたは遠心分離器から選択され得る。
【0084】
[0083]更に、分離装置120は、場合によっては、凝縮物の精製を改善するために、エステル化反応と組み合わせることができる。特に、吸収液がアルコールから選択されるか、またはかなりの量のアルコールと有機酸を含んでいる場合には、この流れを、安定した温度で機能する均一系触媒ユニットまたは不均一系触媒床に送ることが有利である。本システムでの使用に適している可能性のある不均一系触媒として、Amberlyst(登録商標)(例:Amberlyst A15、35、16、36、39、46、70、131)などの酸性樹脂、担持酵素触媒、および他の固体酸触媒を使用することができる。大量のアルコールの存在下では、有機酸のエステル化反応は平衡移動によって有利になり、水は変換された酸の量に対して化学量論的に生成される。エステル化反応は一般に、わずかに吸熱性または発熱性である。そのため、凝縮物の温度が維持される。
【0085】
[0084]本発明によるシステム100は、第2のチャンバー130を含み、このチャンバーに向けて、事前の分離を受けた、または受けていない凝縮物を運ぶことができる。この第2のチャンバー130は、第1の圧力pより低い第2の圧力pで維持されることが可能である。その後、この第2のチャンバー130に到達する凝縮物が膨張し、それが凝縮物の断熱部分蒸発をもたす。
【0086】
[0085]凝縮物を膨張させるため、および凝縮物の同伴断熱部分蒸発のための第2のチャンバー130は、例えば薄膜蒸発器の形態(例えば、UIC社またはVTA Verfahrenstechnische Anlagen社によりスクレイプド蒸発器(evaporateur a film racle)または短経路蒸発器として販売されているもの)であっても、あるいは、凝縮物を壁に対して接線方向に注入して流体の回転と中心に窪みを作る渦効果とをもたらす渦効果シリンダー(Penn Separator社によって販売されている)の形態であってもよい。また、容積内の流れを分散させるディフューザーを中央部に、蒸気留分に存在する液滴を合体させるためのパッキン/フォグトラップ(ミストエリミネーター/コアレッサー)を容積の頂部に、ガス出口を頂点に、および液体出口を底点に備えたタンクの形態で装置を使用することも可能である。この種の装置は当業者によく知られており、例えば、Techniques de l’Ingenieur[エンジニアリング技術]、すなわち、文献Evaporation dans le traitement des effluents liquides[液体流出物の処理における蒸発]、W 2 750(Bernard GALLICHERおよびOlivier SAVELの共著)、およびEvaporation[蒸発]、J2320 V1(Rene LELEU著)に記載されている。
【0087】
[0086]第2のチャンバー130は、少なくとも2つの出口開口部、部分蒸発から得られた蒸気留分を排出するための第1の開口部と非蒸発液体留分を排出するための第2の開口部とが設けられている。
【0088】
[0087]モノマー/吸収液の組合せに応じて、モノマー、好ましくはポリマーの分解から得られるモノマーは、主に蒸気留分または液体留分に含まれる。具体的には、吸収液の沸点が回収されるモノマーの沸点よりも著しく高くなるように吸収液が選択されれば、ポリマーの分解から得られたモノマーは、主に蒸気留分に含まれる可能性が高くなる。
【0089】
[0088]好ましくは、蒸気留分は、ガス状流出物の中質成分モル分率を含み、軽質成分モル分率は、凝縮チャンバー内で既に排出されており、重質成分モル分率は、吸収液に吸収されたままである。有利には、蒸気留分は、ポリマーの分解から得られたモノマー、好ましくはベースモノマーを含む。その後、この蒸気留分は、凝縮されるために熱交換器131に運ばれ、その後精製されるために精製装置150、例えば蒸留カラムに運ばれ得る。その後、このモノマーリッチ留分をアップグレードすることができる。
【0090】
[0089]液体留分が吸収液の大部分を含む場合、それは少なくとも部分的に凝縮チャンバー110に向け直され、そこで再び熱交換によってベースモノマーを吸収する。このように、吸収液は、システム100内のループを循環する。これを行うために、第2のチャンバー130の出口の下流に位置するポンプ140は、この液体留分を回収して、それを凝縮段階に運ぶことを可能にする。したがって、システム100を「凝縮ループ」ということもある。
【0091】
[0090]それにもかかわらず、前述したように、吸収液には汚染物質が混入することがある。このような文脈において、本システムは、有利には、凝縮物の膨張後に第2のチャンバー130から得られた吸収液の大部分を含む留分の一部を、例えば定期的に精製することができる精製装置170を含む。図2に例示されるように、吸収液の大部分を含む留分は、好ましくは液体留分である。精製装置170は、例えば、蒸留ユニット、膜、デカンター、抽出手段、吸着ユニット、イオン交換樹脂から選択することができる。精製装置170は、吸収液が凝縮チャンバー110内のループを通過する際に徐々に蓄積される不純物を吸収液から除去することを可能にする。
【0092】
[0091]更に、図2に示されているように、本発明によるシステム100は、吸収液を分析するための装置180を含むことができる。具体的には、再注入される吸収液が所定の品質基準を満たすかどうかを確認する必要がある。該分析装置は、例えば、赤外分光計、ラマン分析、ガスクロマトグラフィーシステム、導電率計、温度計またはpH計から選択され得る。
【0093】
[0092]このような文脈において、本システムは、有利には、不純物で飽和されておらず、回収されるモノマーを常に吸収することができる吸収液で本方法を行うことができるように、吸収液を、好ましくは規則的に除去することができるパージ点115と、好ましくは規則的に吸収液を再注入することができる注入点116とを含むことができる。
【0094】
[0093]更に、本発明によるシステム100は、第2のチャンバー130の出口と第1の凝縮チャンバー110の吸収装置112との間に位置する中間熱交換器160を好ましくは含む。このような熱交換器160は、本システムの起動段階の間に、第2のチャンバー130に由来する液体留分を更に冷却するか、または吸収液を冷却することを可能にすることができる。したがって、それは、工程130の間に十分に冷却されていない特定の吸収液に有用であり得る。
【実施例
【0095】
[0094]以下の実施例は、本発明の範囲を非限定的に示すものである。
【0096】
[0095]実施例1:ベンゼンとメタノールに富む吸収液によるPHA脱重合流の処理
【0097】
[0096]P3HP(ポリ‐3‐ヒドロキシ‐プロパノエート)脱重合ユニットから得られた流れは、特にアクリル酸(AA)、軽ガスの水分(HO)、重化合物、および固体粉塵から構成されている。
【0098】
[0097]総ガス流は21.8kg/hであり、主に20kg/hのAA、0.10kg/hの水、軽化合物および重化合物から成る。この流れは、98kPaで作動するカラムまたは凝縮チャンバーに送られる。ガス状流出物をカラムの底部に260℃の温度で注入する。カラムでは、この流れをシャワースプレーシステムによって吸収液流と接触させる。カラムの頂部で、軽ガスは、その冷却によって生じた凝縮物により、更にはフェノチアジンの供給を含む、10kg/hのメタノール、20kg/hのベンゼンの供給により向流洗浄される。
【0099】
[0098]カラムの底部では、凝縮物は65℃であり、367kg/hの流れの組成は、38kg/hのアクリル酸メチル(MA)、20kg/hのAA、140kgのMeOH(ΔHv°=32.8kJ/mol、Cp°L=81.1J/mol/K)、150kg/hのベンゼン(ΔHv°=33.8kJ/mol、Cp°L=136.0J/mol/K)、8kg/hの水に相当する。この流れは、約10ppm(すなわち4g/h)のフェノチアジンを含む。この流れをフィルタープレスに送り、脱重合の間に同伴された粉塵を除去する。
【0100】
[0099]その後、液体流をAmberlyst A36酸性樹脂で満たしたエステル化反応器に送る。反応器を上昇流として作動させる。存在するアクリル酸のエステル化反応は、大過剰のメタノールによって促進される。反応出口では、63kg/hのMAと13kg/hの水を含む流れを、10kPaで作動する、部分蒸発を可能にする第2のチャンバー(すなわち蒸発器)に送る。蒸発器は、その基部にディフューザーを備えた垂直シリンダーの形をしており、ディフューザーの役割はチャンバー内に液体を噴霧することであり、頂部にミストエリミネーターがあり、その役割は、霧を形成する液滴を合体させて、気化ガスによって同伴されたであろう重質生成物をチャンバー内に戻すことである。
【0101】
[00100]メタノールとMA(ΔHv°=29.2kJ/mol,Cp°L=158.8J/mol/K)に富む流れを含有する軽ガス留分を生成する。その後、35℃で液体の留分を65℃に加熱し、前のものと同じ条件下で動作する別の断熱蒸発器に注入する。この蒸発器から得られた2つの軽い流れを合わせ、MAとベンゼンからメタノールを分離するように冷却し再蒸留する。このようにして回収されたメタノールとベンゼンは、まだMAの一部を含んでおり、新鮮メタノールの補充とともに吸収ユニットに送られる。回収した精製MAを200mg/kgのHQME(ヒドロキノンモノメチルエーテル)で安定化する。
【0102】
[00101]第2のチャンバーからの重質留分は35℃である。この重質留分は、約13kg/hの水、39kg/hのMA、120kg/hのメタノール、130kg/hのベンゼン、および重化合物を含有する。この重質留分には、シリカへの吸着によって部分的に除去される「重い」不純物が含まれている。残りの重質留分は凝縮カラムに戻す。
【0103】
[00102]実施例2:キシレンに富む吸収液によるポリプロピオラクトン脱重合流の処理
【0104】
[00103]22.7kg/hの流れとしてポリプロピオラクトン脱重合ユニットから得られたガス状流出物は、主に20kg/hのAA、1kg/hの水、軽化合物、および重化合物から構成される。この流れは、98kPaで作動する吸収カラム(凝縮チャンバーとして機能)に送られる。ガス状流出物をカラムの底部に280℃の温度で注入する。カラムでは、この流れをシャワースプレーシステムによって吸収液と接触させる。カラムの頂部で、軽ガスは、その冷却によって生じた凝縮物により、更には10kg/hのキシレンの供給およびフェノチアジンの供給により向流洗浄される。
【0105】
[00104]カラムの底部では、凝縮物は85℃であり、約300kg/hの流れの組成は、38kg/hのアクリル酸(ΔHv°=53.1kJ/mol,Cp°L=145.7J/mol/K)、250kg/hのキシレン(ΔHv°=44.2kJ/mol,Cp°L=181.5J/mol/K)、5.7kg/hの水に相当する。この流れは、約10ppm(すなわち4g/h)のフェノチアジンを含む。この流れをフィルターに送り、脱重合の間に同伴された粉塵を除去する。
【0106】
[00105]その後、この流れは、10kPaで作動する断熱蒸発器に送られる。
【0107】
[00106]アクリル酸とキシレンに富む流れを含有する軽質留分が生成される。その後、この流れを精製し、キシレンを吸収カラムに戻す。
【0108】
[00107]断熱蒸発器からの重質留分は50℃である。この重質留分は、約19kg/hのAA、240kg/hのキシレン、5kg/hの水、および重化合物を含有する。この重質留分には「重い」不純物が含まれており、これは、ループに分散させるためのパージ(une purge pour deconcentrer la boucle)によって部分的に除去される。
【0109】
[00108]実施例3:メタノールに富む吸収液によるPMMA脱重合流の処理
【0110】
[00109]PMMA脱重合ユニットから得られたガス状流出物は、主にメチルメタクレート(MMA)、メタクリル酸(MAA)、メタノール(MeOH)、軽ガスの水分(HO)、重化合物、および固体粉塵から構成されている。
【0111】
[00110]ガス状流出物の総流30.5kg/hは、主に14kg/hのMMA、0.50kg/hの水、0.9kgのMeOH、およびの12kg/hのMAAから構成されている。この流れは、98kPaで作動する凝縮チャンバー吸収カラムに送られる。ガス状流出物をカラムの底部に425℃の温度で注入する。カラムでは、このガス状流出物をシャワースプレーシステムによって吸収液流と接触させる。カラムの頂部で、軽ガスは、その冷却によって生じた凝縮物により、更にはフェノチアジンの供給を含む、57kg/hのメタノール、10kg/hのMMAの供給により向流洗浄される。
【0112】
[00111]カラムの底部では、凝縮物は65℃であり、374kg/hの流れの組成は79kg/hのMMA(ΔHv°=40.1kJ/mol,Cp°L=191.2J/mol/K)、8.6kg/hのMAA、257kgのMeOH、13kg/hの水に相当する。この流れは、約20ppm(すなわち8g/h)のフェノチアジンを含む。この流れをフィルタープレスに送り、脱重合の間に同伴された粉塵を除去する。
【0113】
[00112]その後、この流れをAmberlyst A36酸性樹脂で満たしたエステル化反応器に送る。反応器を上昇流として作動させる。存在するメタクリル酸のエステル化反応は、存在する大過剰のメタノールによって促進される。反応出口では、97kg/hのMMAと15.5kg/hの水を含む流れを、10kPaで作動する、第2のチャンバー(すなわち断熱蒸発器)に送る。
【0114】
[00113]MMA-メタノール共沸混合物(メタノール約82重量%、64.2℃)を含む、メタノールとMMAに富む流れを含む軽質留分が生成される。その後、35℃で液体の留分を65℃に加熱し、前のものと同じ条件下で動作する別の断熱蒸発器に注入する。この蒸発器から得られた2つの軽い流れを合わせ、MMAからメタノールを分離するように冷却し再蒸留する。このようにして回収されたメタノールは、まだMMAの一部を含んでおり、新鮮メタノールの補充とともに吸収ユニットに送られる。
【0115】
[00114]第2のチャンバーからの重質留分は35℃である。この重質留分には、11kg/hの水、69kg/hのMMA、更に重質化合物と196kg/hのメタノールが含まれている。この重質留分には、シリカへの吸着によって部分的に除去される「重い」不純物が含まれている。
【0116】
[00115]実施例4:PMMA脱重合流の処理
【0117】
[00116]PMMA脱重合ユニットから得られた流れは、主にメチルメタクレート(MMA)、メタクリル酸(MAA)、メタノール(MeOH)、軽ガスの水分(HO)、重化合物、および固体粉塵から構成されている。
【0118】
[00117]ガス状流出物は、総流が約22.4kg/hであり、主に20.7kg/hのMMA、0.08kg/hの水、0.33kgのMeOH、および0.9kg/hのMAAを含む。この流れは、98kPaで作動する凝縮カラムに送られる。ガス状流出物をカラムの底部に475℃の温度で注入する。カラムでは、この流れをシャワースプレーシステムによって吸収液流と接触させる。カラムの頂部で、軽ガスは、その冷却によって生じた凝縮物により、更には0.3kg/hの水の供給により向流洗浄される。
【0119】
[00118]カラムの底部では、凝縮物は65℃であり、403kg/hの流れの組成は330kg/hのMMA、10kg/hのMAA、3.2kgのMeOH、59kg/hの一酸化二水素に相当する。この流れをフィルタープレスに送り、脱重合の間に同伴された粉塵を除去する。次いで、この流れは、20kPaで作動する断熱蒸発器などの第2のチャンバーに送られる。出口では、軽質留分は、MMAに富む34.4kgの流れを含んでいる。その後、このガス留分を更に35℃に冷却し、デカンテーションにより分離する。その後、MMAに富む流れを単離する。もう一方の留分は吸収カラムに戻す。
【0120】
[00119]第2のチャンバーからの重質留分は45℃である。この重質留分には、MAA、54kg/hの一酸化二水素、301kg/hのMMA、更に重質化合物とメタノールが含まれている。この流れは、アニオン樹脂のベッドに送られ、上昇流として供給されたMAAをトラップする。該樹脂は、周期的に再生される。出ていく流れは、凝縮カラムに送られる。
【0121】
[00120]実施例5:PMMA脱重合流の処理
【0122】
[00121]ガス状流出物は、総流が約20.8kg/hであり、主に20kg/hのMMA、0.03kg/hの水、0.07kgのMeOH、および0.18kg/hのMAAを含む。このガス状流出物は、98kPaで作動する凝縮チャンバー(または吸収カラム)に送られる。ガス状流出物をカラムの底部に420℃の温度で注入する。カラムでは、この流れをシャワースプレーシステムによって吸収液流(一酸化二水素)と接触させる。カラムの頂部で、軽ガスは、その冷却によって生じた凝縮物により、更には1.5kg/hのメタノール、3kg/hの一酸化二水素の供給、更にはフェノチアジンの供給により向流洗浄される。
【0123】
[00122]カラムの底部では、凝縮物は65℃であり、294kg/hの流れの組成は112kg/hのMMA、8.1kg/hのMAA、1.4kgのMeOH、153kg/hの一酸化二水素に相当する。この流れは、約38ppm(すなわち11/h)のフェノチアジンを含む。この流れをフィルタープレスに送り、脱重合の間に同伴された粉塵を除去する。
【0124】
[00123]凝縮物のpHは、上流でナトリウムメトキシドを約0.1kg/hで吸収液流に加えることによって制御される。
【0125】
[00124]その後、この流れは、20kPaで作動する断熱蒸発器に送られる。
【0126】
[00125]MMAに富む流れを含む25.2kg/hの軽質留分が生成される。それは、200mg/kgのHQMEで安定化される。このようにして回収されたMMAは、98%を超える純度を有し、2つの主な不純物は、イソ酪酸メチル(0.6重量%)とアクリル酸エチル(0.3%)である。得られた生成物は、追加蒸留により更に精製することができる。
【0127】
[00126]断熱蒸発器からの重質留分は45℃である。この重質留分には、150kg/hの一酸化二水素、92kg/hのMMA、更にナトリウム塩形態の重質化合物とメタクリル酸が含まれている。
【0128】
[00127]この重質留分を、凝縮チャンバーに送る前にパージすることで、重化合物とメタクリル酸に分散させる。
【0129】
[00128]実施例6:ポリスチレン熱分解から得られた蒸気の流れの処理
【0130】
[00129]凝縮チャンバーは、熱分解ユニットから来る470℃で20kg/hのガス状流出物を処理する。吸収液は、ベンゼンを含むが、ガス状流出物から得られた有機化合物も含み得る。ベンゼン含有量を22質量%で維持する。冷却を可能にするために必要な吸収液の流量は1000kg/hのオーダーであり、温度は69℃である。主な生成物はスチレン(モノマー)647kg、ベンゼン212.5kg、トルエン23.2kg、トリメチルベンゼン(TMB)70kgであり、残りは重質生成物から構成される。
【0131】
[00130]出口113を介して凝縮チャンバーを出る軽質留質分は部分的に凝縮され、その液体は吸収液流に加えてもよい。
【0132】
[00131]断熱蒸発器などの第2のチャンバーでの部分蒸発から得られた重質留分は、ポンプで送られ、重質生成物を除去するように精製され、凝縮チャンバーで再び使用される。TMB溶媒の一部とフェナントレンなどの最重質生成物が合計約1.8kg/h除去される。
【0133】
[00132]第2のチャンバーの部分蒸発から得られた軽質留分は、50kg/hのオーダーである。それを、部分的に凝縮させた後、精製して、凝縮チャンバーで再び使用されるベンゼンリッチ相を生成する。このようにして32.4kg/hの95%ベンゼンリッチ相が生成され、リサイクルされる。
【0134】
[00133]17.8kg/hに相当する非リサイクル生成物は、主にスチレンを含む部分的に精製された混合物である。
【0135】
[00134]実施例7:発酵によって得られたPHA脱重合流の処理
【0136】
[00135]P3HP(ポリ‐3‐ヒドロキシ‐プロパノエート)脱重合ユニットから得られた流れは、主にアクリル酸(AA)、軽ガスの水分(HO)、および重化合物から構成される。
【0137】
[00136]総ガス流は、23.5kg/hであり、主に20kg/hのAA、0.33kg/hの酢酸、0.10kg/hの水、軽化合物(0.28kg/h)、および本質的にオリゴマーから成る重化合物(2.8kg/h)で構成される。この流れは、110kPaで作動するカラムまたは凝縮チャンバーに送られる。ガス状流出物をカラムの底部に250℃の温度で注入する。カラムでは、この流れをシャワースプレーシステムによって吸収液流と接触させる。カラムの頂部で、軽ガスは、その冷却によって生じた凝縮物により向流洗浄される。熱分解で生じた軽ガスの大部分は、吸収流を十分に高温に保つことによって、この凝縮工程で除去される。
【0138】
[00137]カラムの底部では、凝縮物は85℃であり、260kg/hの流れの組成は212kg/hのアクリル酸、2.7kg/hの酢酸(ΔHv°=52.1kJ/mol、Cp°L=123.3J/mol/K)、0.15kg/hの水、および45kg/hの重化合物に相当する。この流れは、約10ppmのフェノチアジンを含む。この流れをフィルタープレスに送り、脱重合の間に同伴された粉塵を除去する。
【0139】
[00138]次いで、この液体流れは、部分蒸発を可能にする、10kPaで作動する第2のチャンバー(すなわち蒸発器)に送られる。蒸発器は、その基部にディフューザーを備えた垂直シリンダーの形をしており、ディフューザーの役割はチャンバー内に液体を噴霧することであり、頂部にミストエリミネーターがあり、その役割は、霧を形成する液滴を合体させて、気化ガスによって同伴されたであろう重質生成物をチャンバー内に戻すことである。
【0140】
[00139]アクリル酸に富む流れを含む軽ガス留分が生成される。回収したアクリル酸(19kg/h)を200mg/kgのHQME(ヒドロキノンモノメチルエーテル)で安定化する。
【0141】
[00140]第2のチャンバーからの重質留分は55℃である。この重質留分に190kg/hのアクリル酸、2.5kg/hの酢酸、更に重質化合物(45kg/h)が含まれている。この重質留分は、本質的にアクリル酸オリゴマーである「重質」不純物を含有する。重質留分の約6%の回収を行い、重質生成物をループから分散させるようにする。アクリル酸とオリゴマーに富む該流出物をPHA熱分解反応器に戻し、脱重合が完了する。フェノチアジンの補充で安定化した残りの重質留分を凝縮カラムに戻す。
図1
図2