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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】マルチパート凍結乾燥容器
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/02 20060101AFI20240412BHJP
   A61J 3/00 20060101ALI20240412BHJP
   A61J 1/10 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 9/19 20060101ALN20240412BHJP
【FI】
A61M1/02 175
A61J3/00 301
A61J1/10 333A
A61J1/10 335C
A61K9/19
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021555163
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-13
(86)【国際出願番号】 US2020022113
(87)【国際公開番号】W WO2020242552
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-02-01
(31)【優先権主張番号】62/818,214
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/952,752
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/971,072
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506313866
【氏名又は名称】テルモ ビーシーティー バイオテクノロジーズ,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Terumo BCT Biotechnologies, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】パラキニンカス、ケスタス ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン、エリック ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ワイマー、カーク エル.
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン、ナサニエル ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ラヴィンカ、デニス ジェイ.
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-517335(JP,A)
【文献】特表2010-522176(JP,A)
【文献】特開2018-202126(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0203871(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00-1/38
A61M 60/00-60/90
A61J 1/00-19/06
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/69
B65B 51/00-51/32
B65D 25/08
B65D 85/50-85/84
F26B 25/06-25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面部と、
背面部と、
ポート領域を有し、液体、固体、気体、又はそれらの組み合わせを収容するように構成された非通気性セクションと、
通気性膜を有し、気体のみを収容するように構成された通気性セクションと、
剥離可能シールを有し、前記非通気性セクションと前記通気性セクションとを橋渡しする境界を含む剥離可能領域と、
を備える、
マルチパート凍結乾燥容器。
【請求項2】
請求項1記載のマルチパート凍結乾燥容器において、
前記前面部と前記背面部はそれぞれ、通気性膜を有する前記通気性セクションの一部を備える、
マルチパート凍結乾燥容器。
【請求項3】
請求項1記載のマルチパート凍結乾燥容器において、
前記剥離可能領域は、第1の材料と、前記第1の材料とは異なる第2の材料とを含む、
マルチパート凍結乾燥容器。
【請求項4】
請求項1記載のマルチパート凍結乾燥容器において、
前記剥離可能領域は、第1の表面質感を有する第1の材料と、前記第1の表面質感とは異なる第2の表面質感を有する第2の材料とを含む、
マルチパート凍結乾燥容器。
【請求項5】
請求項1記載のマルチパート凍結乾燥容器において、
前記剥離可能領域の少なくとも1つの材料は、スリップ剤を有する添加剤を含む、
マルチパート凍結乾燥容器。
【請求項6】
請求項1記載のマルチパート凍結乾燥容器において、
前記剥離可能領域は、視覚的表示手段を有する、
マルチパート凍結乾燥容器。
【請求項7】
請求項1記載のマルチパート凍結乾燥容器において、
前記剥離可能領域の短辺寸法は、約0.95cmである、
マルチパート凍結乾燥容器。
【請求項8】
請求項1記載のマルチパート凍結乾燥容器において、
前記マルチパート凍結乾燥容器はさらに、ホールドオープン装置(HOD)を備える、
マルチパート凍結乾燥容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年3月14日に米国特許商標局に出願された米国仮特許出願第62/818,214号(タイトル:マルチパート凍結乾燥容器及びその使用方法)、2019年12月23日に米国特許商標局に出願された米国仮特許出願第62/952,752号(タイトル:凍結乾燥用ローディングトレイ組立体及びシステム)、及び2020年2月6日に米国特許商標局に出願された米国仮特許出願第62/971,072号(タイトル:凍結乾燥容器用充填治具、システム及び使用方法)の優先権を主張するものであり、該米国仮特許出願の全体は、ここでの開示により明確に本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、米国国防総省から授与された契約番号H92222-16-C-0081に基づく米国政府の支援を受けて行われた。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、流体を凍結乾燥及び保存する装置及びそれに関連するシステム及び方法を説明する。該装置は、剥離可能なシールを有する、継続的に適応変化する多区画タイプの凍結乾燥容器である。該容器は、充填、凍結乾燥、保管、再構成、注入のステップ全体にわたって適応変化していく。該方法は、凍結乾燥プロセス全体における該容器の操作を記載する。
【0004】
ヒト及び動物の血液並びに血漿のような関連する血液製剤を含む任意の適切な流体は、本明細書に記載される装置及び技術を使用して、凍結乾燥及び保存される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多くの凍結乾燥容器及び関連技術が当技術分野で知られている。これらの容器及び技術の多くは、通気性のある膜を含み、その結果、通気性のある膜が損なわれた場合には、容器の性能が低下しやすい。ヒトや動物の血液、又はその成分を凍結乾燥する際、血液と通気性膜材料とが直接接触すると、膜汚染やそれに伴う容器の性能低下が発生する。そのため、通気性膜材料と血漿との間の分離を維持する様々な凍結乾燥技術や装置が考案されてきた。例えば、半剛性の柱状部材を容器の空洞部分に組み込んだ可撓性のある凍結乾燥容器を利用する方法がある。容器が凍結乾燥機の棚に水平に配置されている場合、柱状部材は上方に延在し、通気性膜のフレーム部分を液体血漿の上方で維持する支持体となる。別のアプローチでは、通気性のある屋根部を含む剛性の高い凍結乾燥用トレイを利用する。容器部品の剛性により、凍結乾燥中、屋根部は血漿の上方で維持される。
【0006】
しかし、これらの技術はオペレータのミスに弱いという問題がある。すなわち、プレロード中又は輸送中に容器を不用意に傾けると、膜の汚れが生じる可能性がある。さらに、これらの技術は、比較的高価な使い捨ての備品を必要とする。そのため、凍結乾燥容器の設計を改善する必要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特定の実施形態は、これら及び他の事項を考慮して提供されるが、本明細書で論じられる特定の問題は、本発明の実施形態の適用性を決して限定するものとして解釈されるべきではない。
【0008】
本発明の凍結乾燥容器は、従来の容器構成の改良に関する。剥離可能な容器領域に剥離可能なシールを使用して容器内に最初に閉塞を形成しておき、それによって、凍結前に、対象液体(例えば、血漿)を、容器の非通気性セクションのみに隔離する。
【0009】
この節は、本発明のいくつかの実施形態の態様を簡略化した形で紹介するために提供されており、請求される発明の全ての重要又は必須の要素の網羅的なリストを含むものではなく、請求項の範囲を限定するものでもない。
【0010】
本発明の一態様では、マルチパート凍結乾燥容器が提供される。該容器は、前面部と、背面部と、ポート領域を有する非通気性セクションと、通気性膜を有する通気性セクションと、剥離可能シールを有し、前記非通気性セクションと前記通気性セクションとを橋渡しする境界を含む剥離可能領域と、を備える。前記非通気性セクションは、液体、固体、気体、のいずれか任意のものを収容するように構成される。前記通気性セクションは、気体のみを収容するように構成される。
【0011】
本発明の他の態様は、マルチパート容器において流体を凍結乾燥する方法を提供する。該方法は、流体を前記容器の非通気性セクションに投入するステップと、前記流体を凍結するステップと、凍結乾燥チャンバに、真空圧をかけるステップと、圧力差によって、前記剥離可能シールを開けるステップと、熱エネルギーを加えるステップと、前記流体を昇華させるステップと、前記容器の剥離可能領域に一時的な閉塞を形成するステップと、を有する。
【0012】
本発明のさらに他の態様は、マルチパート凍結乾燥容器において剥離可能シールを製造する方法を提供する。該方法は、前記容器の互いに対向する材料に、ヒートシール機の加熱要素を、約64℃で、約40秒間、当てるステップを有する。
【0013】
本発明の他の実施形態は、流体を凍結乾燥するための追加の装置及び方法及びシステムを含む。流体は、ヒト又は動物の血漿を含む任意の適切な液体である。
【0014】
非制限的且つ非包括的な実施形態は、添付図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態に係る凍結乾燥容器の平面図である。
図2図2は、図1の凍結乾燥容器の斜視図である。
図3A図3Aは、本発明の実施形態に係る凍結乾燥容器の非通気性セクションの平面図である。
図3B図3Bは、図3Aの凍結乾燥容器の非通気性セクションのポート領域の拡大図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る凍結乾燥容器の通気性セクションの平面図である。
図5図5は、図4に示される実施形態のホールドオープン装置(HOD)の断面図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る剥離可能領域の他の構成の側面断面図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る、流体を凍結乾燥するためのシステムの図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係る凍結乾燥プロセスを説明するワークフローの概略図である。
図9図9は、本発明の他の実施形態に係る、凍結乾燥プロセスを説明するワークフローの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書に記載されている原理は、以下の詳細な説明及び添付の図面に描かれている実施形態を参照することによってさらに理解することができる。特定の特徴が、特定の実施形態に関して以下に示され、説明されるが、本発明は、提供される特定の特徴又は実施形態に限定されない。さらに、以下の実施形態は、ヒト又は動物の血液又は血液成分を凍結乾燥及び保存することに関して説明される。しかしながら、そのような記述は単なる例示である。例えば、実施形態は、血漿、クリオプレシピテート(cryoprecipitate)を含む流体、溶解血小板(lysed platelets)を含む流体、又は細胞懸濁液に関連して利用することができるが、これらに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の実施形態が、任意の適切な流体又は液体又はそれらの成分の凍結乾燥に関連して使用され得ることを理解するであろう。
【0017】
本発明の実施形態は、流体を凍結乾燥及び保管するための、無菌流体経路を含む、閉鎖系の無菌容器を指す。本発明に記載されている実施形態は、Millrock TechnologyによるMagnum(登録商標)Lyophilizerを含む、多くの従来の市販されている凍結乾燥機と組み合わせて実装されてもよい。列挙された様々な実施形態のさらなる利点は、本明細書全体にわたって示される。
【0018】
「マルチパート容器」、「容器」、「凍結乾燥容器」、「マルチパート凍結乾燥容器」等の用語は、本明細書全体を通して互換に使用される。同様に、材料及び膜に関して「通気性」という用語は、「半透過性」という用語と交換可能に使用される場合がある。「非通気性」という用語は、「非透過性」という用語と交換可能に使用される場合がある。「剥離可能シール」という用語は、「剥離シール」という用語と交換可能に使用される。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る凍結乾燥容器の平面図である。
【0020】
図1を参照すると、凍結乾燥容器100は、ポート領域104を含む非通気性セクション102と、ホールドオープン装置(HOD)108とHOD捕獲ゾーン110と通気性膜112と内側膜溶着部114とハンドル凹部116とを含む通気性セクション106と、外周溶着部118と、剥離可能領域120と、切り離し後端部122と、を有する。
【0021】
図1に示すように、凍結乾燥容器100は、剥離可能領域120で接合された2つの主要セクション、すなわち、非通気性セクション102及び通気性セクション106から構成される。自然状態又は初期状態において、非通気性セクション102及び通気性セクション106の内部空洞部分は、剥離可能領域120の一時的剥離可能シールによって、互いに分離されている。非自然状態又は開放状態では、剥離可能領域120の一時的剥離可能シールが除去されており、非通気性セクション102及び通気性セクション106の内部空洞部分が互いに流体連通している。ポート領域104は、非通気性セクション102内において、1又は複数の流体ポートを組み込むように構成された領域を定義する。HOD108は、容器内の蒸気の流れを容易にする半剛性の治具であり、HOD捕獲ゾーン110によって所定の位置に保持される。切り離し後端部122は、通気性セクション106から引き離されるように構成された容器領域であり、吊り下げ用のハンガーホールを含む。ハンドル凹部116は、(図7に示すように)充填治具等のオプションのシステム構成要素と協働するように構成されている。通気性膜112は、気密シールである内側膜溶着部114によって通気性セクション106に組み込まれる。外周溶着部118も気密シールであり、ポート領域104を含む非通気性セクション102及び通気性セクション106の外周を規定する。
【0022】
「L」として示される凍結乾燥容器100の全長は、約50cmである。実施形態では、全長は、棚型凍結乾燥機又は他の凍結乾燥機への容器の配置に適した任意の寸法、又は蒸気の流れ抵抗を増減するのに適した任意の寸法、又は凍結された液体の厚さを増減するのに適した任意の寸法であってよい(例えば、30cm~70cm、より好ましくは40cm~60cm)。
【0023】
図示の例では、剥離可能領域の中点から測定された非通気性セクション102の長さは、約28cmである。実施形態では、非通気性セクション102の長さは、20cm~40cm、又はより好ましくは24cm~32cm等、任意の適切な寸法であってよい。剥離可能領域の中点から測定された、切り離し後端部122を含む通気性セクション106の長さは、約22cmである。実施形態では、通気性セクション106の長さは、10cm~30cm、又はより好ましくは18cm~26cm等、任意の適切な寸法であってよい。
【0024】
図示の実施形態では、「WMAX」と示される容器の最も広い部分は、約14cmであり、非通気性セクション102に存在する。実施形態では、WMAXは、10cm~20cm、又はより好ましくは、13cm~17cmのように、任意の適切な寸法であってよい。図示の実施形態では、「WMIN」と表記される容器の最も狭い部分は、約7cmであり、ハンドル凹部116内に存在する。実施形態では、WMINは、5cm~12cm、又はより好ましくは6cm~10cmのように、任意の適切な寸法であってよい。上記の14cm×50cmの例示的な容器寸法は、約200ml~300mlの液体血漿を凍結乾燥するのに適している。より大きな又はより小さな容量の凍結乾燥においては、上記とは異なる好ましい寸法となるであろう。
【0025】
示された凍結乾燥容器100の「表面部」又は「前面部」は、容器100の「裏面部」又は「背面部」と基本的に同一である。すなわち、容器の表面部及び裏面部のそれぞれは、非通気性セクションの非通気性材料及び通気性セクションの通気性膜を含む。他の実施形態では、通気性膜は、通気性膜が表面又は前面の一部と裏面又は背面の一部とを橋渡しするように等斜褶曲部(すなわちヘアピン状部分)を含む連続したシートである。さらに他の実施形態では、通気性セクションは、容器の表面部のみに、又は容器の裏面部のみに通気性膜を含んでもよい。動作中、凍結乾燥容器100は、典型的には、容器の裏面部又は背面部が凍結乾燥機の棚板に向き合うように、凍結乾燥機の棚板上に配置される。すなわち、凍結乾燥中、非通気性セクション102及び(通気性膜を含む)通気性セクション106のそれぞれの一部は、凍結乾燥機の棚板に向き合う。非通気性セクション102は、伝導性及び/又は放射性の熱伝達を促進するために、凍結乾燥機の棚と十分に直接的又は間接的に熱的に連通しているべきである。さらに他の実施形態では、非通気性セクションのみが棚板と接触し、通気性セクションは棚板から離れていてもよい。他の実施形態では、凍結乾燥容器は、凍結乾燥チャンバ内において、垂直に配置されてもよい。
【0026】
動作中、凍結乾燥容器100は、非通気性セクション102のポート領域104に配置されたポートを介して流体を交換する。流体交換は、容器に液体血漿を最初に充填するとき、並びに、再構成及び患者への輸液のために凍結乾燥後に滅菌水で容器を充填するときにのみ行われる。凍結乾燥中における凍結流体の昇華及び蒸気の除去の前後において、非通気性セクション102と通気性セクション106とは互いに分離される。昇華の前に、非通気性セクション102と通気性セクション106は、剥離可能領域120の剥離可能シールによって形成された一時的な閉塞によって互いに隔離される。昇華後、クランプを用いて、非通気性セクション102と通気性セクション106との間の移行部を包含する剥離可能領域120に容器の閉塞を形成する。この点において、剥離可能領域120における閉塞の位置は、非通気性セクション102と通気性セクション106との間の境界を規定する。
【0027】
外周溶着部118は、容器の外周部を画定し(ある実施形態では、切り離し後端部122を除く)、非通気性セクション102のポート領域104を含む。外周溶着部118の平均幅は、約7mmである。実施形態では、しかしながら、外周溶着部118は、2mm~12mmのように、任意の適切な幅であってよく、さらに、長さに沿って最大3mmで変化してもよい。
【0028】
内側膜溶着部114は、通気性セクション106内の通気性膜112を取り囲む。内側膜溶着部114の平均幅も、約7mmである。しかしながら、実施形態では、内側膜溶着部114は、2mm~12mmのように、任意の適切な幅であってよく、長さに沿って最大3mmで変化してもよい。
【0029】
ポート領域104は、凍結乾燥容器と他の流体容器との間に無菌流体経路を形成可能な1又は複数の流体ポートを含むように構成された、非通気性セクション102の外周溶着部118の部分である。ポート領域104はまた、患者への輸血を容易にするように構成される。
【0030】
非通気性セクション102と通気性セクション106との間の境界を包含することに加えて、剥離可能領域120は、そのライフサイクル全体を通して容器が適応変化(evolution)し易いように構成されている。初期における剥離されていない状態にある剥離可能シールによる或いはそれに続く閉塞(例えば、クランプ)による剥離可能領域120における容器100の閉塞は、一時的な不透過性又は実質な不透過性のシールを形成し、非通気性セクション102と通気性セクション106との間の流体連通を閉塞する。すなわち、動作中、剥離されていない状態にある剥離可能シールによって形成される最初の閉塞によって、ポート領域104のポートを介して流体を導入する前に、非通気性セクション102は通気性セクション106から分離される。凍結した氷構造(すなわち、凍結乾燥される凍結流体構造)が形成されると、凍結乾燥室内に真空を適用することで圧力差が発生し、一時的剥離可能シールが開く。この閉塞されていない状態では、容器は、非通気性セクション102と通気性セクション106の間の蒸気の流れに対して開放された開放経路を有することになる。凍結乾燥室を開く前に、容器は、剥離可能領域120において再び(例えば、クランプによって)閉塞される。容器は形状及び機能において継続的に適応変化することができるので、対象の液体が非通気性セクション102のみで隔離及び凍結されることにより、並びに昇華及び脱離からの蒸気の流れのみが通気性セクション106と接触することが許容されることにより、対象流体と通気性セクション106との間で接触が起こらないことが保証される。すなわち、本発明の実施形態は、対象の流体と通気性セクション106との間に連続して物理的分離が形成されるように構成される。従って、非通気性セクション102は、固体、液体、又は気体のいずれかを収容するように構成され、一方、通気性セクション106は、気体のみを収容するように構成される(すなわち、気体のみのセクション)。
【0031】
剥離可能領域120は短辺寸法が約1cmである。しかしながら、ある実施形態では、剥離可能領域120は、短辺寸法0.5cm~3.0cm(例えば、短辺寸法0.8cm~1.5cm)であってよい。剥離可能領域120の最も近い縁部は、好ましくは、通気性セクション106の通気性膜112から5cm以内に配置されるが、通気性膜112から0.2cm~10cm(例えば3cm~7cm)に配置されてもよい。剥離可能領域120は、容器材料の効率的な使用を確実にして且つ蒸気が容器から出るために流れなければならない距離を最小にする程度に、通気性膜112に十分に近接しているべきであるが、さらに、凍結乾燥後に閉塞箇所と通気性膜との間の非通気性材料に恒久的な縫い目又は継ぎ目(シーム:seam)を形成できる程度に、通気性膜112から十分に離れているべきである。凍結乾燥後に閉塞箇所と通気性膜材料との間の非通気性材料に恒久的なシームを形成することで、恒久的なシールが形成され、容器セクション同士が永続的に分離され、通気性セクション106の取り離しと廃棄が可能になる。通気性セクション106の除去は、容器の適応変化におけるさらなるステップである。通気性セクション106を取り除くことにより、最終製剤の体積と質量が最小限に抑えられ、輸送と保管の両方にとって望ましい。さらに、通気性セクション106の除去によって、非通気性セクション102を、患者への輸液に適した、より従来的な容器にすることができる。実施形態では、最終容器をオペレータが掛けて持つことができる手段を作るために、切り離し後端部122を任意に通気性セクション106から取り去り、さらに任意に非通気性セクション102に取り付けてもよい。切り離し後端部122の非通気性セクション102への接続は、非通気性セクション102に最終製剤を収容するために形成される恒久シームを作製するために使用されるヒートシール装置を含む、任意の適切な装置を使用して行うことができる。
【0032】
実施形態では、剥離可能領域120において未剥離状態の剥離可能シールが最初は配置されており、そのような剥離可能シールの存在は、剥離可能領域120の位置を画定する視覚的表示を提供することができる。しかしながら、実施形態は、1つ以上の追加の位置表示を含んでもよい。例えば、剥離可能領域120は、線や配色、又はその他の視覚的表示の従来の手段によって示されてもよい。ある実施形態において、材料又は表面の質感や手触り(texture)を選択することによって、剥離可能領域120の位置を示すことができる。例えば、凹凸、エッチング又はその他のタイプの表面質感や手触り感或いはそのような処理は、剥離可能領域120の位置及び境界の表示を提供することができる。ある実施形態では、剥離可能領域120の容器材料の内面及び外面の一方又は両方に対して上記のような位置表示、材料、表面質感等を選択することで、シール特性を改善すること(例えば、滑らかな材料)や、材料が互いに引き離れる能力又は材料が対象流体の凍結中に形成される氷から引き離れる能力を向上させること(例えば、ざらつきのある材料(textured material))、を行える。実施形態では、剥離シールを開いたときに、引き続いて行われるクランプによる閉塞に有利な条件となり得る滑らかな表面を剥離可能領域に露出させるか、又は剥離可能領域が滑らかな表面となるようにする。剥離可能領域120の材料及び設計の選択は、最初の剥離されていない状態の剥離可能シール及びそれに続いて剥離可能領域120に構成される閉塞が、一時的な不透過性のシールを確実に形成しなければならないということを考慮すべきである。但し、状況によっては、閉塞は、完全に不透過性の又は気密性のバリアやシールではない場合もある。つまり、特定の状況では、閉塞箇所を介してわずかな漏れが許容される場合もある。
【0033】
前述のように、剥離可能領域120における容器の初期閉塞は、未剥離状態の剥離可能シールによって提供される。剥離可能領域120において引き続き行われる閉塞は、手動の締め付け、又は様々な自動化又は半自動化手段等の他の手段によって行うことができる。例示的な手動クランプとしては、一般的に使用されているねじクランプ又はバッグクリップが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、例示的なクランプとしては、2ピースタイプのギロチンクランプ等の特殊なクランプが挙げられる。様々な自動化又は半自動化された閉塞手段としては、例えば、凍結乾燥機の棚、又は凍結乾燥機の棚システムに組み込まれて動作する機械式圧縮圧搾手段が挙げられる。このような閉塞手段は、図7に示すような凍結乾燥用ローディングトレイ又はトレイ組立体と連携して動作することができる。
【0034】
図1に示す実施形態では、非通気性材料は、エチレンビニルアセテート(EVA)である。EVAは、その相対強度、低温での相対弾性と弾力性、相対クラック耐性、製造の容易さ等、いくつかの有利な特性を示す。EVAは、比較的良好な熱伝達特性も示す。しかしながら、実施形態では、非通気性材料の材料選択は限定されず、熱可塑性エラストマー(TPE)等の好ましい特性を示す様々な非通気性材料を用いてよい。TPEは比較的柔らかく、可撓性があり、いくつかのヘルスケア用途にメリットがある。例えば、TPEはオートクレーブ、ガンマ線照射、又はエチレンオキシドを使用して滅菌できる。さらに、TPEは、生体適合性をもち、高純度であり、溶出性物質が低レベルになるように設計できる。TPEはリサイクルも可能であり、極低温保管に比較的好ましい材料である。
【0035】
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)もまた、非通気性材料として望ましい。LLDPEは、その優れた耐穿刺性と耐衝撃性及び高い引張強度により、他の特定の材料よりも好ましい。例えば、LDPEと比較して、LLDPEは優れた可撓性と耐クラック性を示すため、特定の薄膜アプリケーションに対して、より適している。
【0036】
非通気性材料用に選択された材料は、凍結乾燥に必要なように、低温(例えば、-30℃~-60℃)で強度が維持される必要がある。低表面エネルギー及び超疎水性を示す材料が、非通気性セクションの内面にさらに組み込まれてよく、この場合、凍結後及び乾燥前の容器の内表面からの氷構造の取り離しが改善されるようになる。
【0037】
実施形態では、様々な追加の又は代替の樹脂膜を、非通気性セクション102に、又は特定の目的又は用途のための非通気性材料を含む容器の全ての領域に組み込むことができる。例えば、材料は、不透過性の向上、ヒートシール特性の向上、又は機械的強度の向上のいずれかのために実装されてもよい。さらに他の実施形態では、様々な追加の特徴が非通気性セクション102に含まれてもよい。例えば、比較的透明な容器材料のセクションを非通気性セクション102に組み込んで、凍結乾燥の前、最中、又は後に対象の流体の目視検査を可能にすることができる。
【0038】
注目すべきは、最初の段階における未剥離状態の剥離可能シールに対しては、凍結乾燥条件下で最適に機能するために、特定の材料及び設計を選択する必要がある。好ましい実施形態では、剥離シールは、表面と裏面で異なる材料を用いて構成される。表面と裏面で異なる材料を用いることによって、真空下で互いにより容易且つ確実に剥離することができる。同じ又は類似の材料を表面及び裏面に使用する実施形態では、真空下での剥離特性を改善するために、材料の一方に添加剤(例えば、スリップ剤)を塗布してもよい。他の好ましい実施形態では、シールは、異種の表面質感(texture)を有する材料をさらに含んでもよい。例えば、剥離可能シールの表面材料は、バンプ状又はエッチングされた表面質感を有し、裏面材料は、滑らかな表面質感を有してもよく、又はその逆であってもよい。ある実施形態では、異なる材料と異なる表面質感を同時に実施してもよい。
【0039】
実施形態では、望ましい剥離可能シールを生成するために、特定の製造パラメータがさらに必要になる場合がある。好ましくは、剥離可能シールの短辺寸法は0.95cm(±0.076cm)であるが、剥離可能シールの短辺寸法は、凍結乾燥される流体の種類、容器材料の選択等の様々な要因に応じて変更されてよい。実施形態では、ヒートシール機を用いた剥離シールの製造は、ヒートシール機の加熱要素(すなわち、ヒートバー)を、特定範囲の温度、特定範囲の圧力、及び特定範囲の時間で容器材料に当てることを必要とする場合がある。好ましい実施形態では、加熱要素は、約64℃(±0.25℃)の温度に維持され、約50psiの圧力で40秒間、容器材料に当てられる。しかし、他の実施形態では、これらのパラメータは限定されず、特定の用途に応じて変更されてもよい。例えば、加熱要素の温度は、60℃~70℃の範囲(例えば63℃~67℃)であってよい。同様に、クランプ圧力は、30psi~80psiの範囲(40psi~70psi)であってよい。同様に、クランプ時間は、10秒~90秒の時間範囲(例えば40秒~70秒)で行われてよい。
【0040】
インパルス的な熱や不連続的な熱は、材料の架橋やその結果としての機能不良を引き起こす可能性があるため、加熱要素の温度は狭い変動幅で連続的に維持されることが好ましい。連続的な熱源を達成するために、ヒートシール機の実施形態は、比較的冷たい容器材料との最初の接触によって生じる初期温度低下から迅速に回復するのに十分な熱エネルギーを蓄えることができ、且つ、それに続いて行われる過剰な熱の追加によって過剰に補われない、比較的大きな量の材料を含むように特別に構成されてもよい。例えば、クランプ又はシール機構の一部として1又は複数の大きな金属部品を備える、カスタマイズされた或いは特別に構成されたヒートシール機が必要な場合がある。ある実施形態では、金属部品は、電気ストリップ(electrical strip)や、或いは水、グリコールのような液体源、又は十分なエネルギーを蓄えることができる他の物質等、様々な従来の手段を用いて加熱することができる。他の実施形態では、赤外線やRF等の間接的な手段を用いて金属部品を加熱してもよい。金属部品が存在しない状態で剥離可能シールを作製するための代替的な間接的手段としては、超音波溶着及びレーザーアプリケーションが挙げられる。
【0041】
実施形態では、上述の材料選択と製造パラメータの組み合わせは、短辺寸法0.95cm(±0.076cm)のシールに好ましく、凍結乾燥条件下(例えば、400Torr~100Torrの間の凍結乾燥チャンバ圧力及び-30℃~-60℃の間の凍結乾燥チャンバ温度)で、その長さにわたって確実且つ均一に開く剥離可能シールをもたらし得る。
【0042】
図2は、本発明の図1の凍結乾燥容器の斜視図である。
【0043】
図2を参照すると、凍結乾燥容器200は、ポート領域204を含む非通気性セクション202と、ホールドオープン装置(開放保持装置)(Hold Open Device:HOD)208とHOD捕獲ゾーン210と通気性膜212と内側膜溶着部214とハンドル凹部とを含む通気性セクション206と、外周溶着部218と、剥離可能領域220と、切り離し後端部222と、を含む。
【0044】
図1及び図2では、不規則な形状の容器が示されているが、他の実施形態では、略長方形の形状のように、より規則的な形状で構成されていてもよい。また、他の容器構成では、別の不規則性を含んでいてもよい。例えば、特定の領域又は特定の特徴の寸法又は形状を変更して、設計又は性能目的を達成してもよい。様々な容器の変更は、本発明の範囲及び精神の範囲内であると当業者によって理解され得る。
【0045】
図3Aは、本発明の実施形態による凍結乾燥容器の非通気性セクションの平面図である。
【0046】
図3Aを参照すると、非通気性セクション300は、非通気性材料302と、流体ポート308を組み込んだポート領域306を含む外周溶着部304と、剥離可能領域310の一部と、を含む。
【0047】
非通気性セクション300は、上述の非通気性材料で構成される。非通気性セクション300の境界は、ポート領域306を含む外周溶着部304、及び剥離可能領域310の中点(すなわち、閉塞の推定位置)を含む。すなわち、容器が剥離可能領域310において閉塞されている場合、非通気性セクション300は、その閉塞に対して非通気性である側の容器のセクションとして定義される。図3Aに示すように、剥離可能領域310に閉塞が存在しない場合、非通気性セクションの境界は、剥離可能領域310の略中点であるとみなされる。
【0048】
図3Bは、図3Aの凍結乾燥容器の非通気性セクションのポート領域の拡大図である。
【0049】
図3Bを参照すると、ポート領域306は、3つのポート308を含む。ポート308は、凍結乾燥容器が他の容器と流体を交換する方法を規定する。ポート308は、破損、汚染、又は誤接続の可能性を排除する安全な無菌接続を提供する必要があり、充填、凍結乾燥、保管、再構成、及び凍結乾燥血漿の場合は注入、を含む、使用状態における全ての段階にわたって機能する必要がある。実施形態では、ポート308の構成及び数は、特定の用途に応じて異なる。例えば、実施形態は、3つのポートのように、1~5個のポートを含む。ポート308は、再シール可能な又は再シール不可能ないずれかの接続をさらに含んでよい。
【0050】
図3Bに示されるポート308は、様々なポートを含むように構成される。例えば、ポート308は、スパイクポート、ドッキングポート及び再構成ポートのいずれかを含んでよい。スパイクポートを含めることによって、再構成された血液製剤の患者への再注入を容易にすることができる。例示的なスパイクポートは、凍結乾燥容器での使用に適合する、当技術分野で知られている任意の溶着可能なスパイクポートであってよい。スパイクポートでの使用に適した材料の例としては、ポリ塩化ビニル(PVC)及びエチレンビニルアセテート(EVA)(例えば、デンマークのカルモによって製造されているもの等)が挙げられる。他の実施形態では、ポリプロピレン(PP)スパイクポートが望ましい場合もある。
【0051】
ドッキングポートを含めることによって、凍結乾燥容器を、血液プール容器又はプール容器セット等の別の流体容器と接続することができる。ドッキングポートをさらに使用して、空気又は他の気体を凍結乾燥容器に導入することができる。空気又は他の気体を、例えば、導入することによって、対象の液体の上方に蒸気空間を作り出したり又はpHを調整したりすることができる。例示的なドッキングポートとしては、PVCチューブが挙げられる。しかしながら、実施形態では、ドッキングポートは、当技術分野で知られている任意の適切なドッキング治具又はチューブを含むことができる。
【0052】
再構成ポートを含めることによって、凍結乾燥容器への再構成流体の流入を受け入れることができる。例示的な再構成ポート308は、偶発的な誤接続を防止するために、オス又はメスのルアーロックタイプの接続を含んでよい。そのような接続の1つの例としては、アフェレーシスアプリケーションで使用される標準化された接続システムである、Correct Connect(登録商標)システムが挙げられる。実施形態では、様々な一方向弁及びエラー防止接続を提供可能な他の手段も、再構成ポート308での使用に適している。特に、再構成に使用される接続のタイプは特に重要である。すなわち、再構成流体の取り扱いは、患者への再構成流体の直接輸液の潜在的なリスクを伴う。それらは、深刻で即時の健康被害を引き起こす。このため、偶発的な誤接続が発生しないようにするには、再構成ポートと関連する接続部とをはっきりと認識できるようにし、他のポートと非互換となるようにすることが重要である。
【0053】
図4は、本発明の実施形態による凍結乾燥容器の通気性セクションの平面図である。
【0054】
図4を参照すると、通気性セクション400は、外周溶着部402と、ホールドオープン装置(HOD)404と、HOD捕獲ゾーン406と、通気性膜408と、内側膜溶着部410と、切り離し後端部412と、ハンドル凹部414と、ハンガーホール416と、切り離し目418と、剥離可能領域420の一部と、を含む。
【0055】
剥離可能領域420の中点(すなわち、閉塞の推定位置)は、通気性セクション400の境界を構成する。すなわち、容器が未剥離の剥離可能シール又は続いて行われる閉塞によって剥離可能領域420において区画分離されている場合、通気性セクション400は、容器のうち、閉塞に対して通気性のある側のセクションである。図4に示すように、剥離可能領域420に閉塞が存在しない場合、通気性セクション400の境界は、剥離可能領域の略中点と推定されてよい。なお、切り離し後端部412はそれ自体通気性ではないが、通気性セクションに取り付けられているので、便宜上、通気性セクション400の一部とみなす。
【0056】
通気性セクション400は、非通気性材料内に埋め込まれた通気性膜408を含む。内側膜溶着部410は、通気性膜と非通気性材料との間の境界を規定する無菌シールである。外周溶着部402は、通気性セクション400の外周を規定する無菌シールである。
【0057】
ある実施形態では、通気性膜408は、1つの材料のみを含む。他の実施形態では、通気性膜408は、2つ以上の材料を含んでもよく、例えば、通気性膜は、通気性膜と基材からなる膜積層体を含んでもよい。膜積層体を含む実施形態では、膜材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又は延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を含むことができる。ePTFE膜は、いくつかの理由で、他の膜よりも好ましい。例えば、ePTFEは、精密に制御できる微細構造を提供し、これにより、所望の細孔径分布を得ることができる。さらに、ePTFEは基本的に不活性であり、広い温度範囲で動作可能で、過酷な環境に耐えることができる。また、これらの材料は疎水性があるため、剥離シールが早く開いてしまった場合でも、液体が容器から漏れないようにできる。少なくともこれらの理由により、ePTFEは他の材料と比較して好ましい特性を提供する。
【0058】
ePTFE膜の理想的な細孔サイズは、0.1ミクロン(μm)~0.5μm(例えば、0.15μm~0.45μm、0.2μm~0.3μm等)である。この範囲の細孔サイズを持つePTFE膜は、汚染物質の侵入を排除できる無菌バリアを維持しながら、比較的効率的な蒸気透過特性を示す。
【0059】
補強材料又は裏当て材料(backing material)は、通気性膜406の機能を損なうことなく、通気性材料を非通気性材料に結合するように設計される。補強材料又は裏当て材料の追加は、容器の構造的完全性を向上させる。すなわち、補強材料は、通気性膜と結合しなければならず、非通気性材料と結合しなければならず、さらに、凍結乾燥中に通気性膜を通過する蒸気の透過を妨げない孔サイズを有さなければならない。例示的な補強材料は、好ましくは、50:50のポリプロピレン/ポリエチレンブレンドである。しかしながら、実施形態では、好ましいブレンド比は様々な比であってよく、40:60~60:40の間のポリプロピレン:ポリエチレン比である。そのような裏当て材料は、とりわけ、約-40℃のような凍結乾燥温度での凍結中における材料の劣化を回避するのに十分に低いガラス転移点に対して有利である。
【0060】
膜積層体を含む実施形態では、様々な追加又は代替の樹脂膜を通気性膜又は裏当て材料に組み込んで、望ましいヒートシール特性、改善された透過性、又は全体の機械的強度のような所望の特性を付与することができる。
【0061】
HOD404は、HOD捕獲ゾーン406によって通気性セクション400内に取り付けられた、半剛性の凹凸のない面で構成された楕円形の治具(fixture)である。HOD404は、自然状態では開放状態であり、非通気性セクションと通気性セクション400との間の蒸気の流れの経路を容易に形成するために、容器空洞部分内に周方向に配置される。HOD404は、通気性セクション404内に全体が配置され、通気性膜408の一部と非通気性材料の一部とを橋渡しする。特に、実施形態では、HOD404の形状は限定されず、変形された長方形又は容器セクション間の蒸気の流れを促進することができる他の形状等、様々な他のHOD404の設計を行うことができる。
【0062】
様々な実施形態では、HOD404は、凍結乾燥容器の通気性セクション400内に取り付けられるか、又はその外側に固定される、剛性又は半剛性の治具である。HOD404の正確な位置は様々である。例えば、HOD404は、全体が非通気性セクション内に、又は通気性セクションの非通気性材料の領域内に配置されてもよい。或いは、HOD404は、非通気性材料及び通気性材料の両方の部分に延在してもよい。さらに他の実施形態では、HOD404は、容器セクション間の一時的なシールの形成を補助するように配置及び構成されてもよい。好ましくは、HOD404は、HOD404と剥離可能領域420における閉塞の位置との間の距離を最小化するために剥離可能領域に近接して配置される。図示の例では、HOD404の最も近い縁は、剥離可能領域420の最も近い縁から約2.5cmに配置される。しかしながら、HOD404の配置は、容器構成又は剥離可能領域420の構成に従って、さらに最適化されてもよい。
【0063】
HOD捕獲ゾーン406は、容器の幅方向に突出する容器材料の一部であり、HOD404が確実に捕獲されるポケット又は空洞空間として機能する。実施形態では、HOD捕獲ゾーン406の外観や特徴は最適化されてもよい。例えば、HOD捕獲ゾーン406の短辺寸法又は奥行は、個々の容器構成又はHOD404の構成に応じて変更されてもよい。実施形態では、HOD捕獲ゾーン406の短辺寸法は、HOD404の短辺寸法よりも20%も大きくされる。同様に、HOD捕獲ゾーン406の奥行は、1mm~6mmの間、例えば、2mm~4mmの間である。さらに他の実施形態では、HOD捕獲ゾーン406の形状は変更してもよい。例えば、ある実施形態は、四角状の態様又は凸状の態様等を含んでもよい。当業者であれば、HOD捕獲ゾーン406のサイズ及び形状に対する様々な最適化は、本発明の範囲内であることを理解するであろう。
【0064】
切り離し後端部412は、容器のライフサイクルを通じて容器の適応変化に貢献するように構成された通気性セクション400の多機能領域である。図示するように、切り離し後端部は、容器を吊り下げるためのハンガーホール416を有する。切り離し後端部412はさらに、ハンドル凹部414の一部を形成する。ハンドル凹部414は、図7に示すガス充填治具等のあるシステム構成要素の機能特徴部分と協働することができる。例えば、実施形態では、ハンドル凹部414は、取り散らかりを排除し、システム測定値の取得を簡単化する目的で、ガス充填手順の間に容器の通気性セクションを充填治具に固定するため、充填治具ハンドルと協働してもよい。切り離し目418によって、オペレータは、廃棄のために或いは非通気性セクションに最終的に取り付けるために、切り離し後端部412を手動で切り離すことができる。すなわち、切り離し後端部412は、容器に恒久シームを作るために使用されるヒートシールマシン等の従来の手段を使用して、最終的に製剤の最終容器(すなわち、非通気性セクション)に取り付けられる。
【0065】
図5は、図4に示す実施形態のホールドオープン装置(HOD)の断面図である。
【0066】
図5を参照すると、HOD500は、尖った端部とフラットな面とを有する基本的に卵形又は楕円形の形状を有する半剛性の治具である。示されている実施形態では、HOD500は、剥離可能領域近傍の通気性セクションに取り付けられる。他の実施形態では、HOD500は、容器の外側に結合されてもよい。一般に、HOD500は、容器の通気性セクション内又はその外側に取り付けられるように設計され、容器のライフサイクルを通じて対象の液体から物理的に分離されるが、様々な他の実施形態では、非通気性セクションにHOD500を含むこともできる。
【0067】
楕円形のHOD500を組み込むことにより、薄く均一な氷の構造の上側に広い開放領域が形成される。好ましくは、容器の有効性及び効率を最大にするため、薄く均一な氷構造は、6mm~13mmの厚さを有する(例えば10mm)。HOD500を組み込むと、非通気性セクションと通気性セクションとの間に十分な蒸気経路を確保するのに役立ち、昇華時の容器内の全体の蒸気圧が低下する。HOD500はまた、剥離可能領域における閉塞の除去及び/又は形成を補完する。例えば、HOD500は、緊張(硬直)状態を容器材料に付与し、閉塞の信頼性又は質を改善する。HOD500は、同様に、閉塞の除去において剥離可能領域表面同士を引き離すことをアシストし、それにより、容器セクション間の蒸気経路の再形成を容易にする。凍結ステップの前に対象流体が剥離可能領域材料を不注意に濡らした結果として閉塞箇所に又は閉塞箇所の隣接箇所に氷が形成されることよって、剥離可能領域表面同士を引き離すことが、困難になる可能性がある。そのような不注意による湿潤は、充填工程の間に、又は容器を動かすことによって引き起こされる可能性がある。この点において、HODは、材料及び関連する質感の選択を含む、本明細書で説明される剥離可能領域表面の引き離しに関連する問題に対処するために使用される他の手段を補完するものである。
【0068】
示される実施形態では、HOD500は、半剛性高密度ポリエチレン(HDPE)を含む。しかしながら、実施形態では、いくつかの他の剛性又は半剛性材料が実装されてもよい。例えば、シリコーン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)又は特定の他の合成プラスチックポリマーは、好ましいHOD500材料である。ある実施形態では、半剛性材料は、剥離可能領域の閉塞に応答して曲がることができるようにするために組み込まれてもよい。そのような実施形態では、HODは、剥離可能領域の閉塞時にある程度圧縮され、閉塞の解除時に元の形状に向かって戻る。そのような形状記憶挙動は、対象の液体又は氷の上側に開放領域を維持すること、及び容器セクション間に広い蒸気経路を形成することをアシストすることができる。これは、半剛性HODと他の可撓性のある容器材料を組み合わせた実施形態において特に顕著になる。
【0069】
図5に示すHOD500の外部の高さは2cmである。しかしながら、実施形態では、外部の高さは、1.0cm~4cmであってよい。内部の高さは約1.8cmである。しかしながら、実施形態では、内部の高さは、HODのそのものの構成及びサイズに応じて、1cm~3cmの間をとってよい。HODの幅は、凍結乾燥容器の略幅である。HOD500の奥行きは約3.0cmである。しかしながら、実施形態では、HOD奥行きは、0.5cm~5cmである。HOD500の全体的なサイズ及び形状は限定されず、従って、個々の実施形態の所望の構成に応じて変更されてもよい。
【0070】
図6は、本発明の一実施形態による剥離可能領域の他の構成の側面断面図である。
【0071】
図6を参照すると、剥離可能領域600は上部材料602と、ダム604と、液体606と、を含む。
【0072】
図6に示す実施形態では、剥離可能領域600は、凍結乾燥機の棚に水平に配置された凍結乾燥容器に組み込まれる。剥離可能領域600の上部材料602は、非通気性材料を含み、容器空洞部分の、ダム604の反対側に配置される。ダム604は、非通気性セクションへ投入された液体606の分離を維持できる剛性又は半剛性の容器機能部である。凍結乾燥機の棚から測定したダム604の高さは、非通気性セクションに入る液体の高さを超えるのであれば、任意の高さでよい。この点で、ダム604は、図6に示されるように、非通気性セクションから通気性セクションへの流体の流れを禁止する。
【0073】
図6に示されるダム604は、ドーム形状を備える。しかしながら、実施形態では、他のダム設計が望ましい場合もある。例えば、フラットトップを含むダム設計、又は特定の閉塞装置又は部材と協働するように構成されたダム設計が望ましい場合もある。好ましいダム604材料としては、上部材料602と剥離可能なシールを形成することができる材料が挙げられ、これには、表面加工された材料(textured materials)や、添加剤を含む材料が含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、ダム604の材料は、上部材料602と異種であるが、特定の実施形態では、ダム材料は上部材料と同じであってもよい。さらに他の実施形態では、ダムの特徴を、垂直に吊るすように設計された凍結乾燥容器に組み込むことができる。ある実施形態では、非通気性セクションへ投入された流体の分離を維持するために、剥離可能領域の片側又は両側にダムを含めてもよい。
【0074】
図7は、本発明の一実施形態による流体を凍結乾燥させるシステムの説明図である。
【0075】
図7を参照すると、システム700は、ガス充填治具702と、凍結乾燥容器704と、凍結乾燥用ローディングトレイ706と、凍結乾燥機708とを含む。
【0076】
凍結乾燥容器704は、本発明の実施形態で説明した容器である。すなわち、容器704は、剥離可能領域に剥離可能シールを含む、柔軟可撓なマルチパート容器である。
【0077】
システム700は、それぞれの実施形態で、異なっていてもよい。例えば、ある実施形態では、システム700は、ガス充填治具702や凍結乾燥用ローディングトレイ706を完全に除外してもよい。他の実施形態では、システム700は、図示されたものとは異なる構成のコンポーネントを採用してもよい。例えば、凍結乾燥機708は、別体のシステム構成要素である冷凍庫と組み合わせて使用されてもよい。当業者が容易に想像できるように、システム又はその個々の構成要素に対する様々なさらなる変更が、例えば、特定の容器構成等に基づいて行われてもよく、それらの変更は、本発明の範囲内である。
【0078】
述べたように、本明細書に記載の凍結乾燥容器の実施形態は、凍結乾燥プロセスがそのサイクルを進むにつれて、連続的に適応変化していくように構成されている。以下に含まれる例示的なワークフローは、容器の適応変化を説明するものであり、容器の適応変化を促進する。
【0079】
図8は、本発明の実施形態による、凍結乾燥プロセスを説明するワークフローの概略図である。
【0080】
図8を参照すると、ステップ802で、対象流体(例えば、血漿)は、容器の、剥離可能領域に未剥離状態の剥離可能シールを有する非通気性セクションに導入される。ステップ804では、該流体が凍結され、非通気性セクションに薄い均一厚さを有する氷の構造が形成される。ステップ806では、真空圧がかけられる。ステップ808では、凍結乾燥チャンバと非通気性セクションの空洞部分との間に十分な圧力差が存在すると、剥離可能なシールが開かれる。剥離可能なシールの開封により、容器セクション間の連絡通路が形成される。ステップ810において、熱エネルギーが与えられる。真空圧及び熱エネルギーとの組み合わせによって、昇華及び脱離が促進され、固相から直接気相への氷構造の相変化を引き起こす。氷構造から放出された蒸気は、閉塞されていない剥離可能領域を経由して容器の空洞部分を通って流れ、通気性セクションを通って逃げていく。その結果、非通気性セクションには、凍結乾燥された血漿ケーキ(すなわち、凍結乾燥の結果として脱水された氷構造)が残る。ステップ812において、容器は、剥離可能領域で再び閉塞され、凍結乾燥物の汚染が防止される。ステップ814では、閉塞とHODとの間の通気性セクションの非通気性材料に永続的なシーム(閉じ目)(seam)が任意に形成される。ステップ816では、容器が恒久的なシームで分割され、通気性セクションが廃棄され、非通気性セクションに凍結乾燥された最終製剤が残る。ステップ818では、切り離し後端部が、通気性セクションから任意に切り離される。ステップ820では、切り離し後端部が、非通気性セクションに任意に取り付けられる。
【0081】
ステップ802において、流体の導入は、プレローディングと呼ばれることがある。プレローディング中、250ml~500mlの流体(例えば、血漿)がマルチパート凍結乾燥容器の非通気性セクションに投入される。次に、容器を、「前面」又は「上面」を上に向けて、凍結乾燥機の棚に水平に置く。
【0082】
ステップ804を参照すると、流体は約-40℃の温度に凍結される。しかしながら、実施形態では、初期凍結温度は、-30℃~-60℃でよく、例えば、-40℃~-50℃の範囲である。
【0083】
ステップ806からステップ810を参照すると、熱エネルギーと真空圧力の適用は、複数の機能を果たす。例えば、真空にすることで、凍結乾燥室内の圧力を低下させ、凍結乾燥室と凍結乾燥容器の非通気性セクション内の空洞部分との間に圧力差を生じさせる。この圧力差によって、容器の非通気性部分が膨張することになる。最終的には、この容器の非通気性部分の膨張により、剥離可能なシールが剥離する。実施形態では、この現象を達成するために必要な圧力は、400Torrから100Torrの範囲(例えば、250Torrから150Torr)である。剥離可能シールが十分に剥離されると、熱エネルギーと真空圧によって昇華と脱離が促進され続ける。なお、ステップ808で剥離シールを剥離した後、ステップ810で熱エネルギーが加えられるが、代替的な実施形態では、真空圧の導入と共に熱エネルギーを導入してもよい。好ましい乾燥温度は、-25℃である。しかしながら、乾燥温度は、-20℃~-60℃の範囲(例えば、-20℃~-40℃)であってよい。容器セクション間の十分に広い蒸気経路と通気性セクションの通気性膜の広い表面積により、氷構造からの蒸気は容器から比較的自由に逃げていく。これにより、凍結乾燥中の温度がより低くなり、最終的な乾燥製品の品質が向上する。さらに、従来の凍結乾燥技術と比較して昇華時間の短縮が実現される。さらに、実施形態は、通気性セクション内の蒸気圧の低減及び通気性セクションを通る物質移動の増加をもたらし、これにより、単一の乾燥段階だけで、氷構造の十分な乾燥が可能になる。すなわち、実施形態によって、従来の二段乾燥方法の二次乾燥段階(すなわち、脱離段階)の必要性がなくなる。
【0084】
ステップ812では、容器の剥離可能領域で閉塞が形成され、通気性セクションと非通気性セクションとの間に一時的なシールが形成される。実施形態では、この閉塞は、クランプによって、形成される。
【0085】
ステップ814では、通気性セクションの非通気性材料に恒久的なシームが形成される。該恒久的なシームによって、非通気性セクションに凍結乾燥ケーキが隔離される。示されている概略図では、恒久シーム形成ステップ814は独立したステップである。すなわち、付属の機器を使用して、恒久的なシーム(閉じ目)やシールが形成される。他の例では、ステップ814における恒久シーム形成は、閉塞ステップ812に統合されてもよい。そのような実施形態では、閉塞手段(例えば、クランプ)は、永久シール手段を含んでもよい。
【0086】
オプションのステップ816において、容器の分割及び通気性セクションの除去は、容器の最もコンパクトな形態への適応変化である。通気性セクションを取り除くことで、水分及び酸素が乾燥した製品に侵入する可能性がなくなり、保存可能期間と血漿安定性が向上する。さらに、最終的な凍結乾燥容器のサイズが小さくなるため、輸送、保管、再構成、注入のそれぞれにおいて、より利便性が高くなる。
【0087】
任意のステップ818及びステップ820では、それぞれ、切り離し後端部が切り離し目で通気性セクションから手動で切り離され、非通気性セクションに取り付けられる。実施形態では、ステップ818は、ステップ812で恒久シームを作製するために使用されるヒートシールマシンを使用して実行されてもよい。
【0088】
図9のワークフローは、図8のワークフローに様々なオプションのステップを追加したワークフローである。
【0089】
図9は、本発明の他の実施形態による、凍結乾燥プロセスを説明するワークフローの概略図である。
【0090】
図9を参照すると、ステップ902で、対象流体(例えば、血漿)は、容器の剥離可能領域に未剥離状態の剥離可能シールを有する可撓性凍結乾燥容器の非通気性セクションに導入される。ステップ904において、凍結乾燥容器は、充填治具に任意に導入される。ステップ906では、空気、不活性ガス(例えば、窒素)、又はpH調整ガス(例えば、CO2)が、ポート領域のポート(例えば、ドッキングポート)を通して非通気性セクションに任意に導入される。ステップ908では、凍結乾燥中の容器の性能を最適化するために、凍結乾燥容器をローディングトレイに任意で装着する。ステップ910では、容器内の該流体が凍結され、非通気性セクションに薄い均一厚さを有する氷の構造が形成される。ステップ912では、真空圧がかけられる。ステップ914では、凍結乾燥チャンバと非通気性セクションの空洞部分との間に十分な圧力差が存在すると、剥離可能なシールが開かれる。剥離可能なシールの開封により、容器セクション間の連絡通路が形成される。ステップ916において、熱エネルギーが与えられる。真空圧及び熱エネルギーとの組み合わせによって、昇華及び脱離が促進され、固相から直接気相への氷構造の相変化を引き起こす。氷構造から放出された蒸気は、閉塞されていない剥離可能領域を経由して容器の空洞部分を通って流れ、通気性セクションを通って逃げていく。その結果、非通気性セクションには、凍結乾燥された血漿ケーキ(すなわち、凍結乾燥の結果として脱水された氷構造)が残る。ステップ918では、容器が不活性ガスで充填され、容器の圧力を、大気圧の分圧(partial atmospheric pressure)まで上げる。ステップ920において、容器は、剥離可能領域で閉塞され、凍結乾燥物の汚染が防止される。ステップ922では、閉塞とHODとの間の通気性セクションの非通気性材料に恒久的なシーム(閉じ目)(seam)が任意に形成される。ステップ924では、容器が恒久的なシームにおいて分割され、通気性セクションが廃棄され、非通気性セクションに凍結乾燥された最終製剤が残る。ステップ926では、切り離し後端部が、通気性セクションから任意に切り離される。ステップ928では、切り離し後端部が、非通気性セクションに任意に取り付けられる。
【0091】
オプションのステップ904を参照すると、オペレータが凍結乾燥容器にガスを充填する際、ガス充填治具を使用することで充填作業がアシストされる。すなわち、凍結乾燥容器は、ガス充填治具内に配置され、その後、ガスで充填される。ガス充填治具は、オペレータに正しいガス充填量の表示を提供する。例示的な実施形態では、図7に示すガス充填治具を使用することができる。他の実施形態では、ガス充填治具の正確な構成は限定されず、容器の構成、プロセスパラメータ等の複数の変数に応じて変更してもよい。
【0092】
任意のステップ906において、空気(又は窒素又は他の不活性乾燥ガス)、又はpH調整ガス(例えば、CO2)が凍結乾燥容器に導入される。空気を導入して、容器材料とプレロードされた流体との間に十分な物理的分離、すなわち蒸気空間を形成することができる。例示的な実施形態では、蒸気空間の導入により、容器圧力が、0.3ポンド/平方インチ(Psi)~1.0Psiの値(例えば、0.5Psi(約26mmHG))に到達する。好適には、容器内に蒸気空間を形成することにより、昇華作用のための広い自由表面が形成され、凍結工程中及びその後の容器材料への氷の「付着」の量が減少する。また、pH調整ガスを凍結乾燥容器に導入して、pHを調整することができる。他の実施形態では、pH調整ガスは、以下に記載されるステップ914中に導入される場合もある。
【0093】
オプションのステップ908を参照すると、容器の性能を最適化するために、(図7に示すような)ローディングトレイ又はローディングトレイ組立体が使用される。すなわち、凍結乾燥容器は、ローディングトレイ又はローディングトレイ組立体に取り付けられ、その後、凍結乾燥機に装着される。ローディングトレイ又はローディングトレイ組立体は、容器の性能を最適化する特徴を含む。例示的な実施形態では、図7に示すローディングトレイを使用することができる。他の実施形態では、ローディングトレイの正確な構成は限定されず、容器の構成、プロセスパラメータ等を含む複数の変数に応じて変更されてもよい。
【0094】
オプションのステップ918において、凍結乾燥容器は、pH調整ガス(例えば、CO2)で、大気圧の分圧まで充填される。例示的な実施形態では、充填圧力は、120Torr(又は120mmHG)の絶対圧力である。実施形態では、充填圧力は、40mmHG~200mmHGの範囲である(例えば、100mmHG~140mmHG)。大気圧の分圧になると、容器は閉塞され、次にステップ918及びステップ920でそれぞれ恒久的にシールされる。大気圧より低い圧力での容器の閉塞及び/又はシールは、容器が大気圧に曝されたときに、容器はしぼみ、その体積を減少させる。このプロセスは、非通気性部分にpH調整ガスを確保し、酸素と水分が容器に侵入するのを防ぐ。得られた容器は、大気圧よりも低い圧力で閉塞及び/又はシールされており、凍結乾燥機の真空が解除されると、最終的な容器の体積は減少した状態になるので、最終的な凍結乾燥製品を、より簡単に保管及び輸送できる。このようにして充填することは、可撓性の材料又は可撓性の構成要素を有する容器の実施形態に特に適用可能である。そのような容器容量の減少は、堅固で可撓性のない凍結乾燥容器では不可能だからである。
【0095】
オプションのステップ922では、閉塞部とHODの間の通気性セクションの非通気性材料に恒久シームを形成する。オプションのステップ924では、容器を恒久シームにおいて分割し、通気性セクションを廃棄することで、凍結乾燥された最終製品を非通気性セクションに残す。オプションのステップ926では、切り離し後端部を通気性セクションから分離する。オプションのステップ928では、切り離した後端部を非通気性セクションに取り付ける。
【0096】
上記のワークフローでは、閉塞を形成する手段は限定されない。例えば、閉塞手段は、図7に示すようなローディングトレイ組立体の一部である2つの部分からなるクランプ(two-part clamp)で構成されていてもよい。他の実施形態では、閉塞手段は、可撓性容器に統合されてもよく、或いは容器に外側から取り付ける再利用可能な機器や道具であってもよい。実施形態において、閉塞手段は、適応変化するマルチパート凍結乾燥容器の非通気性セクションと通気性セクションとの間に一時的な不透過性シール又は実質的に不透過性のシールを形成できることが必要である。
【0097】
上記のワークフローに従って非通気性セクションの流体を通気性セクションから分離するための物理的バリア(例えば、剥離可能シール)の使用により、流体が通気性セクションの通気性材料の細孔と接触したり、通気性材料の細孔に付着汚染したりする可能性がなくなる。膜の付着汚染は、凍結乾燥の昇華と脱離を中断させる可能性があり、それにより、総凍結乾燥時間が増加し、生存能力のある凍結乾燥物を得る能力が低下する。従って、付着汚染の可能性を排除すると、蒸気流が相対的に増加し、結果として、昇華冷却効果の増加とタンパク質と凝固因子の保持の増加により、一次乾燥において、凍結乾燥が速くなり、氷の温度が低くなる。
【0098】
さらに、凍結乾燥容器は、無菌の流体経路を含む閉鎖された無菌システムであるため、実施形態は、非無菌環境及び遠隔地の両方で凍結乾燥を行うことを可能にする。この点で、例えば、実施形態により、従来のクリーンルーム施設とは対照的に、通常の血液センターの現場で凍結乾燥を行うことができる。容器の実施形態はまた、オペレータが一般的な血液バンク環境で見られるような標準的な冷凍庫で血漿の冷凍在庫を凍結及び維持できるようなフレキシビリティーを提供できる。その後で、この凍結された血漿は、昇華と脱離のためにさらに特化した凍結乾燥装置に移動することができる。このようなワークフローのフレキシビリティーにより、血液や製剤の物流管理と血液バンク内のワークフローが改善される。
【0099】
本明細書に記載の実施形態のさらなる利点は、凍結乾燥後に凍結乾燥容器の非通気性セクションを取り外すことができることである。凍結乾燥後の通気性セクションの分離と除去により、結果として、最終的な凍結乾燥物を封入する、より小さくて軽い無菌容器が作製される。結果として得られる容器は、可撓性と高い携帯性の両方を備える。さらに、通気性セクションは水分と酸素の侵入に対して最も脆弱であるため、その除去により、凍結乾燥物の保存安定性が向上すると考えられる。本明細書に記載される一時的閉塞の使用は、この利点を可能にする。すなわち、ガラス容器を利用する従来のシステムでは、容器への水分及び酸素の侵入を防ぐために、凍結乾燥機を開く前に、ガラス凍結乾燥容器にストッパーが機械的に適用される。対照的に、本実施形態は、一時的な閉塞を利用することで、容器の前側と後側の非通気性材料部分の間に恒久的なシールができるまで、容器の非通気性部分への水分と酸素の侵入を防ぐ。
【0100】
本明細書の実施形態における、容器の構成が適応変化し、さらに、容器のライフサイクルの各段階を通じて閉鎖された無菌システムを維持する能力は、他に存在しないものであり、凍結乾燥空間において有利である。すなわち、本実施形態は適応変化していくことで、充填、凍結乾燥、輸送、保管、再構成及び注入のそれぞれの段階において、従来の装置及び方法を超える重要な利点を達成する。従って、本明細書に記載される属性及び利点の多くは、適応変化せずに且つクリーンルーム環境を必要とする従来の装置及び手法を使用することでは、達成が不可能である。この点で重要なのは、ここで説明された適応変化するマルチパート容器は、容器の構成要素の種類と配置によって容器がそのライフサイクル全体で様々な機能を実行できる限り、適応変化するマルチ機能容器とみなされてよい。
【0101】
この開示に列挙された様々な特定の実施形態にもかかわらず、当業者は、特定の用途のために様々な変形例及び最適化を実施できることを理解するであろう。さらに、本発明は、血液又は血液製剤の凍結乾燥に限定されない。すなわち、本発明の原理は、多くの流体の凍結乾燥に適用可能である。従って、本発明の方法及びシステムの構成、動作、及び詳細において、様々な変形や変更を行うことができることは、当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9