(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】超音波造影イメージング用の時間的にバランスのとれたマルチモードマスタイメージングシーケンス
(51)【国際特許分類】
A61B 8/06 20060101AFI20240412BHJP
【FI】
A61B8/06
(21)【出願番号】P 2021572862
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(86)【国際出願番号】 EP2020065504
(87)【国際公開番号】W WO2020249464
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-06-01
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ロウパス タナシス
(72)【発明者】
【氏名】シーラン ポール
(72)【発明者】
【氏名】トレンブレイ‐ダルヴォー シャルル
(72)【発明者】
【氏名】パワーズ ジェフリー アール
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-180784(JP,A)
【文献】特開2013-252182(JP,A)
【文献】特開2005-319177(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0124895(US,A1)
【文献】TREMBLAY-DARVEAU, Charles et al.,The Role of Microbubble Echo Phase Lag in Multipulse Contrast-Enhanced Ultrasound Imaging,IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control,IEEE,2018年05月29日,Vol.65, No.8,pp.1389-1401
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血流及び/又は血液灌流から非灌流組織を区別するための超音波方法であって、
複数の超音波トランスデューサ素子を介して患者に超音波信号のシーケンスを伝送するステップと、
前記超音波信号のシーケンスに対応するエコー信号(E1(o)、E2、E3(e)、E4、E5(o))のシーケンスを受信するステップと、
前記エコー信号の第1の選択されたセット(E1(o)、-E2、E3(e))を組み合わせて、振幅変調信号を生成するステップであって、前記第1の選択されたセットは、第1の相補を形成する第1のサブセット(E1(o)、E3(e))と、第2の相補を形成する第2のサブセット(-E2)とを含み、前記エコー信号の前記第1の選択されたセットを組み合わせることは、前記第1の選択されたセットの前記第1の相補と前記第2の相補とを組み合わせることを含む、ステップと、
前記エコー信号の第2の選択されたセット(E3(e)、E4、E5(o))を組み合わせて、振幅変調
パルス反転信号を生成するステップであって、前記第2の選択されたセットは、第1の相補を形成する第1のサブセット(E3(e)、E5(o))と、第2の相補を形成する第2のサブセット(E4)とを含み、前記エコー信号の前記第2の選択されたセットを組み合わせることは、前記第2の選択されたセットの前記第1の相補と前記第2の相補とを組み合わせることを含む、ステップと、
前記振幅変調信号及び前記振幅変調
パルス反転信号のうちの少なくとも1つに基づいて少なくとも1つの画像を作成するステップと、
前記少なくとも1つの画像を表示するステップと、
を含み、
前記エコー信号の前記第1の選択されたセット及び前記エコー信号の前記第2の選択されたセットの各々が、時間的にバランスがとれており、時間的にバランスがとれているとは、前記エコー信号の前記第1の選択されたセット及び前記エコー信号の前記第2の選択されたセットの各々について、前記エコー信号の選択されたセットの順序が、前記第1の相補のエコー信号が前記第2の相補を形成するエコー信号の両側で発生するようにされていることを意味し、
前記エコー信号の各々が、前記振幅変調信号及び前記振幅変調
パルス反転信号を生成するための各組み合わせにおいて、均等に重み付けされている、
方法。
【請求項2】
前記超音波信号のシーケンスが、1番目の信号、2番目の信号、3番目の信号、4番目の信号、及び5番目の信号のシーケンスを含み、
前記1番目の信号及び前記5番目の信号が、第1の位相における前記複数の超音波トランスデューサ素子のうちの第1の半分による伝送に対応し、
前記2番目の信号が、前記第1の位相における前記複数のトランスデューサ素子による伝送に対応し、
前記3番目の信号が、前記第1の位相における前記複数の超音波トランスデューサ素子のうちの第2の半分による伝送に対応し、
前記第2の半分が、前記第1の半分の相補であり、
前記4番目の信号が、第2の位相における前記複数のトランスデューサ素子による伝送に対応し、
前記第2の位相が、前記第1の位相の相補である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1番目の信号が、前記エコー信号E1(o)に対応し、
前記2番目の信号が、前記エコー信号E2に対応し、
前記3番目の信号が、前記エコー信号E3(e)に対応する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記振幅変調
パルス反転信号が、前記3番目の信号、前記4番目の信号、及び前記5番目の信号の合計を含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記2番目の信号と前記4番目の信号とを合計して
パルス反転信号を提供するステップを含み、
前記少なくとも1つの画像が、前記
パルス反転信号にも基づいている、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
パルス反転信号が、時間的にバランスがとれている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの画像が、前記振幅変調信号及び前記振幅変調
パルス反転信号のうちの少なくとも1つのスペクトル応答にさらに基づいている、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの画像が、前記振幅変調信号及び前記振幅変調
パルス反転信号のうちの少なくとも1つの信号対雑音比にさらに基づいている、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの画像を作成するステップが、少なくとも2つの画像を作成するステップを含み、
前記方法が、前記少なくとも2つの画像を同時に表示するステップを含み、並びに/又は、
前記少なくとも1つの画像が、前記振幅変調信号及び前記振幅変調
パルス反転信号の両方に基づいている組み合わせ画像を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記エコー信号の前記第1の選択されたセット及び前記エコー信号の前記第2の選択されたセットの各々について、
前記第1の相補を形成する前記エコー信号の前記第1のサブセットが、
前記第1の相補を形成する前記エコー信号の発生の平均時間である第1の時間的中心を有し、
前記第2の相補を形成する前記エコー信号の前記第2のサブセットが、
前記第2の相補を形成する前記エコー信号の発生の平均時間である第2の時間的中心を有し、
前記第1の時間的中心が前記第2の時間的中心に等しい、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記患者の血管に造影マイクロバブルを注入するステップをさらに含み、
前記少なくとも1つの画像は、前記患者を通る前記造影マイクロバブルのフローを表示する、請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
超音波パルスのシーケンスを伝送し、前記超音波パルスのシーケンスに応えてエコー信号のシーケンスを受信する複数のトランスデューサ素子と、
請求項1から
11のいずれか一項に記載の方法により、前記超音波パルスのシーケンスを生成し、前記エコー信号のシーケンスを処理する、処理回路と、
を含む、超音波システム。
【請求項13】
プログラムを含む非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記プログラムは、処理システムによって実行されると、前記処理システムに、
複数の超音波トランスデューサ素子を介して患者に超音波信号のシーケンスを伝送させ、
前記超音波信号のシーケンスに対応するエコー信号のシーケンスを受信させ、
前記エコー信号の第1の選択されたセット(E1(o)、-E2、E3(e))を組み合わせて、振幅変調信号を生成させ、前記第1の選択されたセットは、第1の相補を形成する第1のサブセット(E1(o)、E3(e))と、第2の相補を形成する第2のサブセット(-E2)とを含み、前記エコー信号の前記第1の選択されたセットを組み合わせることは、前記第1の選択されたセットの前記第1の相補と前記第2の相補とを組み合わせることを含み、
前記エコー信号の第2の選択されたセット(E3(e)、E4、E5(o))を組み合わせて、振幅変調
パルス反転信号を生成させ、前記第2の選択されたセットは、第1の相補を形成する第1のサブセット(E3(e)、E5(o))と、第2の相補を形成する第2のサブセット(E4)とを含み、前記エコー信号の前記第2の選択されたセットを組み合わせることは、前記第2の選択されたセットの前記第1の相補と前記第2の相補とを組み合わせることを含み、
前記振幅変調信号及び前記振幅変調
パルス反転信号のうちの少なくとも1つに基づいて少なくとも1つの画像を作成させ、
前記少なくとも1つの画像を表示させ、
前記エコー信号の前記第1の選択されたセット及び前記エコー信号の前記第2の選択されたセットの各々が、時間的にバランスがとれており、時間的にバランスがとれているとは、前記エコー信号の前記第1の選択されたセット及び前記エコー信号の前記第2の選択されたセットの各々について、前記エコー信号の選択されたセットの順序が、前記第1の相補のエコー信号が前記第2の相補を形成するエコー信号の両側で発生するようにされていることを意味し、
前記エコー信号の各々が、前記振幅変調信号及び前記振幅変調
パルス反転信号を生成するための各組み合わせにおいて、均等に重み付けされている、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項14】
前記超音波信号のシーケンスが、1番目の信号、2番目の信号、3番目の信号、4番目の信号、及び5番目の信号のシーケンスを含み、
前記1番目の信号及び前記5番目の信号が、第1の位相における前記複数の超音波トランスデューサ素子のうちの第1の半分による伝送に対応し、
前記2番目の信号が、前記第1の位相における前記複数のトランスデューサ素子による伝送に対応し、
前記3番目の信号が、前記第1の位相における前記複数の超音波トランスデューサ素子のうちの第2の半分による伝送に対応し、前記第2の半分が、前記第1の半分の相補であり、
前記4番目の信号が、第2の位相における前記複数のトランスデューサ素子による伝送に対応し、前記第2の位相が、前記第1の位相の相補である、請求項
13に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造影超音波(CEUS)イメージングの分野に関し、特に複数のCEUSパルススキームの利点を組み合わせる高度パルスシーケンスを用いる方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波画像は、さまざまな振幅及び周波数で超音波パルスを伝送し、各伝送パルスに対応するエコーを受信し、エコーを処理して画像を作成することによって作成される。多くの場合、超音波造影剤が被検者の血管に注入されて、血管及び灌流組織を流れる血液の視認が高められる。通常、超音波造影剤には、血液から発せられる信号の強さを大幅に増大させるマイクロバブルが含まれているため、血液が灌流しない組織から受信した信号と比較して、これらの信号を優先的に高める。
【0003】
しかしながら、強い音圧を提供する超音波信号は、血管内のマイクロバブルを破壊する可能性がある。したがって、超音波信号の振幅は、マイクロバブル破壊を最小限に抑えるために、所定の制限未満のままであるように制御される。それに応じて、マイクロバブルエコーの振幅はかなり小さい。その結果、これらの低振幅マイクロバブルエコーは、周囲組織からのより大きなエコーによって不明瞭になることが多い。
【0004】
超音波画像で血管内の血流だけでなく組織灌流を表示できるようにすることで得られる利益の認識のもとに、エコーの特性に基づいて、マイクロバブルエコーを非灌流組織エコーから区別する技術が開発された。組織エコーは一般的に線形応答を示すが、マイクロバブルエコーは主に非線形応答を示し、マイクロバブルエコーの組織エコーからの区別は、従来では、受信したエコー信号内の線形信号をキャンセルする(「組織キャンセル」)ことによって達成される。
【0005】
組織キャンセルには、通常、パルス反転(PI)、振幅変調(AM)、及び振幅変調パルス反転(AMPI)の3つの技術(又はサブモード)が利用可能である。従来の造影イメージング超音波システムでは、3つのサブモードPI、AM、及びAMPIの各々を個別に又は組み合わせて使用して超音波画像を作成する。これは、これらのサブモードには、各々、解像度、バブル感度、ペネトレーション、アーチファクトなどに関する、それ独自の利点及び欠点のセットがあるからである。
【0006】
米国特許出願公開第2005/0256404号では、PI信号、AM信号、及びAMPI信号の各々を提供できる2つのパルスのシーケンスが開示されている。この出願公開は参照により本明細書に組み込まれる。
【0007】
図1Aにパルス反転(PI)を示す。2つのパルスP1、P2が伝送され、各々、逆位相にある。受信したエコー信号E1、E2は、ユニティ(+1)ゲイン増幅器110に提供され、加算器120で組み合わされる。加算器120では、逆位相信号が互いをキャンセルし、非灌流組織エコーによる信号の線形成分が除去される。残りの信号PIは、血管及び血液灌流組織からの造影マイクロバブルエコーによる非線形成分を表す。
【0008】
図1Bに振幅(AM)を示す。2つのパルスが伝送され、1つのパルスP1は半振幅(half amplitude)にあり、1つのパルスP2は両振幅(full amplitude)にあり、各々、同位相にある。半振幅エコーE1は、+2ゲイン増幅器112を介して2倍にされ、両振幅エコーE2は、負(-1)のユニティゲイン増幅器114で反転される。これらの信号を合計する(120)と、結果として得られる線形信号の振幅はゼロであり、残りの信号AMは非線形成分(マイクロバブルエコー)の別の表現である。
【0009】
図1Cに示す振幅変調パルス反転(AMPI)は、上記のAMシーケンスにおいて、フルアパーチャパルスP2の位相をハーフアパーチャパルスP1の位相と反対になるように設定することにより、AMサブモードとPIサブモードとを組み合わせる。この実施形態では、負(-1)のユニティゲイン増幅器114が、正(+1)のユニティゲイン増幅器110に置き換えられて信号が組み合わされる(120)。結果として得られる逆位相線形信号の振幅はゼロであり、残りの信号AMPIは非線形成分(マイクロバブルエコー)の別の表現である。
【0010】
米国特許出願公開第2005/0256404号ではさらに、超音波トランスデューサ素子の半分を作動させることで、半振幅パルスが得られることが開示されている。トランスデューサ素子には連番が付けられる。例示的な実施形態では、
図1Dに示すように、すべての奇数番号のトランスデューサ素子を作動して半振幅パルスP1(o)を生成し、すべての偶数番号のトランスデューサ素子を作動して半振幅パルスP2(e)を生成する。当業者であれば、半振幅パルスをさまざまなシーケンスで得られることを認識するであろう。例えば、「最初のN/2個のトランスデューサ素子を有効にし、次に残りのN/2個の伝送器を有効にする」、又は、「N個のトランスデューサ素子のうちのK個のトランスデューサ素子の1つおきのセットを繰り返し有効にする。ここで、N/Kは偶数整数である」(例えば、N=18、K=3:セット1={1、2、3、7、8、9、13、14、15};セット2={4、5、6、10、11、12、16、17、18})、又は、「N/2個のトランスデューサ素子のランダムセットを有効にし、次に残りのN/2個のトランスデューサ素子を有効にする」などで得られる。参照及び理解を容易にするために、半振幅のパルスに関する「奇数」(P1(o))及び「偶数」(P2(e))という用語は、本明細書では、トランスデューサ素子の半分の交互のセットを、これらのセットの選択方法に関わらず、示すために使用される。
【0011】
図1Dには、逆位相の2つの両振幅パルスP3及びP4も示されている。図に示すように、この4つのパルスのシーケンスは、PI信号、AM信号、及びAMPI信号の各々を提供するのに十分である。パルスP1(o)及びP2(e)による2つの半振幅エコー信号E1(o)、E1(o)が生成されるため、
図1B及び
図1Cの例のように、+2ゲイン増幅器112を介して受信した半振幅信号を2倍にする必要はない。
【0012】
PI信号、AM信号、及びAMPI信号の各々を提供するために4つのパルスを使用することで、PI、AM、及びAMPIを個別に取得する場合と比較して、3つの信号のセットを取得するために必要な時間が短縮されるが、特に組織の動きの存在下で、対応する画像に含まれる非灌流組織の量を低減する効果を必ずしも高めるものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
超音波画像内に現れる非灌流組織(以降「組織クラッタ」と呼ぶ)、特に組織の動きに起因する組織アーチファクトの量を低減することで、造影超音波画像の品質を向上させるシステム及び方法を提供することが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの懸念事項のうちの1つ以上により適切に対処するために、本発明の実施形態では、超音波伝送の特定のシーケンスと対応するエコー受信により、時間的にバランスのとれたAM信号及びAMPI信号を生成できる。時間的なバランス調整により、超音波エコーの取得中に組織の動きによって生じる組織アーチファクトが大幅に低減される。さらに、選択したエコー信号を組み合わせて、PI信号、AM信号、及びAMPI信号を生成する際に、各エコー信号は均等に重み付けされて、理想的なAM及びAMPIの合計を生成できる振幅バランスを容易にする。
【0015】
例示的な実施形態では、伝送パルスのシーケンスは(+0.5o、+1、+0.5e、-1、+0.5o)を含み、ここで、+/-符号は伝送の位相を示し、数字は振幅を示し、o/eは相補的なハーフアパーチャ伝送を示す。
【0016】
PI信号を生成するには、2番目(+1)及び4番目(-1)のエコーを合計する。
【0017】
時間的にバランスのとれたAM信号を生成するには、1番目(+0.5o)及び3番目(+0.5e)のエコーの合計から2番目(+1)のエコーを減算する。
【0018】
時間的にバランスのとれたAMPI信号を生成するには、3番目(+0.5e)、4番目(-1)、及び5番目(-0.5o)の信号を合計する。
【0019】
これらのPI信号、AM信号、及びAMPI信号に基づく画像は、個別に又は組み合わせて、ユーザに表示される。組み合わせは、患者の血流及び血液灌流の表示をさらに高めるために、これらの信号のうちの1つ以上の信号対雑音比(SNR)だけでなく、これらの信号のうちの1つ以上のスペクトル応答に基づいていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明について、ほんの一例として、添付の図面を参照してさらに説明する。
【0021】
【
図1A】
図1Aは、PI信号を生成するための超音波パルスの送受信を示す。
【
図1B】
図1Bは、AM信号を生成するための超音波パルスの送受信を示す。
【
図1C】
図1Cは、AMPI信号を生成するための超音波パルスの送受信を示す。
【
図1D】
図1Dは、PI信号、AM信号、及びAMPI信号を生成するための超音波パルスの送受信を示す。
【
図2A-2C】
図2Aから
図2Cは、先行技術の超音波パルスのシーケンスへの組織の動きの影響を示す。
【
図3】
図3は、動き誘発アーチファクトが低減されたAM信号及びAMPI信号と、PI信号との生成を可能にする超音波パルスのシーケンスを示す。
【
図4A-4C】
図4Aから
図4Cは、
図3のシーケンスのエコーから、動き誘発アーチファクトが低減されたAM信号及びAMPI信号と、PI信号とを提供するエコープロセッサの組み合わせを示す。
【
図5A】
図5Aは、AMの時間的にバランスのとれたエコー信号のない超音波画像を示す。
【
図5B】
図5Bは、AMの時間的にバランスのとれたエコー信号がある超音波画像を示す。
【
図5C】
図5Cは、AMPIの時間的にバランスのとれたエコー信号がない超音波画像を示す。
【
図5D】
図5Dは、AMPIの時間的にバランスのとれたエコー信号がある超音波画像を示す。
【
図6】
図6は、超音波システムの例示的なブロック図を示す。
【
図7】
図7は、時間的にバランスのとれたAM信号及びAMPI信号を生成するパルスシーケンスを作成するための例示的なフロー図を示す。
【0022】
図面全体で、同じ参照番号は類似の若しくは対応する特徴又は機能を示す。図面は、例示目的に含まれており、発明の範囲を限定することを意図していない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の説明では、限定ではなく説明のために、特定のアーキテクチャ、インターフェース、技術などの具体的な詳細を示して、本発明の概念の十分な理解を提供する。しかしながら、当業者には、これらの特定の細部から逸脱する他の実施形態で本発明を実施し得ることが明らかであろう。同様に、本説明の文章は、図に示される例示的な実施形態に向けられたものであり、特許請求の範囲に明示的に含まれる制限を超えて請求項に係る発明を限定することを意図していない。単純及び明瞭にするために、よく知られているデバイス、回路、及び方法の詳細な説明は、本発明の説明を不必要な詳細で不明瞭にしないために省略されている。
【0024】
上記のように、血流及び血液灌流から組織を区別するためにPIサブモード、AMサブモード、及びAMPIサブモードを用いる先行技術のシステムは、何らかの形で相補的であるパルスのシーケンスの伝送に依存している。この結果、これらのパルスからのエコー信号の特定の組み合わせによって、静止物体(組織)からの線形エコー信号がキャンセルされ、血管又は灌流組織内のマイクロバブルから発せられる非線形信号が保持される。これらのサブモード(PI、AM、及びAMPI)は、静止物体からのエコーがパルスのシーケンスの持続期間中ずっと一貫しているという前提に基づいている。
【0025】
しかしながら、呼吸サイクル、心周期などの日常的な解剖学的プロセスや、超音波トランスデューサを持つオペレータによって導入される小さな動きによって、(比較的)静止している物体がしばしば動くことが分かっている。例えば、患者に息を止めるように指示して、そのような動きを最小限に抑えることができる場合もあるが、このような動きを患者が制御できない場合もある。この組織の動きは、静止組織からの、そうでなければ線形であるエコー信号に、非線形成分を導入する。これらの非線形エコー信号は、従来のPIサブモード、AMサブモード、又はAMPIサブモードによってキャンセルさない。これにより、超音波画像内に残留組織成分(クラッタ)(「動き誘発組織アーチファクト」)が部分的に現れる。これらのアーチファクトは、血流及び組織灌流を記録する画像の明瞭さを低下させ、場合によっては、そのような画像から抽出できる診断情報を減少させることもある。
【0026】
これまで、シーケンスにおけるパルスの特定の順序は、結果として得られる超音波画像には無関係であると考えられてきた(「[超音波]シーケンスにおけるパルスは任意の順序で伝送できる」(米国特許出願公開第2005/0124895号、参照により本明細書に組み込まれる、[0021])。しかしながら、本発明者は、各サブモードでのパルスシーケンスの順序が、動き誘発組織アーチファクトの出現の大きさに著しい影響を与える可能性があることを見つけ出した。理解しやすくするために、本明細書に提供される例は、主にAMサブモード及びAMPIサブモードを対象としている。当業者は、以下にさらに詳述されるように、同じ原理をPIサブモードに適用できることを認識するであろう。
図2A~
図2Cに、
図1Dの先行技術のパルスシーケンスを使用して、超音波伝送におけるパルスの順序が、動き誘発アーチファクトの大きさに影響を与える理由について説明する。
【0027】
図2Aは、2つの半振幅パルス(
図1のP1、P2)の後に2つの両振幅パルス(P3、P4)が続く伝送に対応するエコー信号の理想的な受信例を示している。これらのパルスは、時間T1、T2、T3、及びT4において静止物体から反射されている。図に示すように、これらのエコー信号からのAM信号は、E1(o)+E2(e)-E3になる。理想的には、非線形エコーがない場合、この合計はゼロになる。したがって、任意の残留信号は非線形エコーに対応する。これは主に関心のマイクロバブルエコーである。
【0028】
図2Bでは、組織の動きが点線210で示されている。説明のために、時間T1、T2、T3、T4において受信したエコーは動きの線210に重ねて表示されている。エコー信号E2(e)は、動きによって誘発された差d1だけエコー信号E1(o)と異なり、エコー信号E3は、動きによって誘発された差d2だけエコー信号E2(e)と異なる。同様に、E4はE3と異なる。上記のように、説明のために、エコーは動きの線210に重ねて表示されている。差d1及びd2は、組織が動いた距離に関連すると考えられている、組織の動きに起因する受信エコー信号の差を表す。つまり、組織が一方向に継続的に動くとき、エコー信号は単調に影響を受ける(つまり、継続的に増加又は継続的に減少する)。差d1、d2は、組織が動く距離自体ではなく、動きによって影響を受けるエコーのパラメータを表す。参照しやすいように、これらのパラメータは、以下、エコーの大きさと呼び、エコー信号の処理に使用される技術に応じて、エコーの振幅の大きさ、エコーの周波数変化の大きさなどを指し得る。同様に、エコー信号の大きさの相対的な差は、単に「より小さい」又は「より大きい」ものとして言及され得る。
【0029】
この例では、動きは、伝送されたパルスシーケンスに対応する期間にわたって受信された信号強度を低下する。したがって、後続の各エコーは、その先行するパルスに対して、動きの線210に沿ってより低いものとして示されている。しかしながら、他の場合は、後続の各エコーは、その先行するパルスに対して、動きの線210に沿ってより高い場合がある。
【0030】
この単純な例示的な例では、T2における3つのエコーE1(o)、E2(e)、及びE3の中心に対して、E1(o)は量d1だけE2(e)よりも大きく、E3は量d2だけE2(e)よりも小さい。したがって、
図2の加算配置に示されるように、E1(o)+d1、E2(e)、及びE3-d2がそれぞれの入力に現れる。したがって、結果として得られるAM信号は、(E1(o)+E2(e)-E3)+(d1+d2)になる。最初の項(E1(o)+E2(e)-E3)は、
図2Aに示されるように、動きの不在下でのAM信号と同じであり、したがって、AM信号がP1(o)、P2(e)、P3パルスシーケンスによって生成されるとき、AM信号への動きによって誘発される影響は(d1+d2)になる。
【0031】
同様に、E1(o)、E2(3)、E4の組み合わせによって生成されるAMPI信号は、さらに大きな量だけオフセットされる。これは、このAMPIの場合のE2(e)とE4との差が、上記のAMの場合のE2(e)とE3との距離d2よりも大きいからである。
【0032】
パルスの順序が
図2Bに対してP1(o)、P3、P2(e)に変更されている、
図2Cに示されている代替案を考える。この変更により、エコー信号E1(o)、E3、E2(e)が、この順序で生成される。
図2Bと同じ説明を使用して、T2での動きの線210に沿ったこれらのパルスの中心に対して、受信エコーE1(o)は、E3よりも量d1だけ大きく、受信エコーE2(e)はE3よりも量d2だけ小さい。これに対応して、加算配置への入力は、E1(o)+d1、E3、E2(e)-d2と表される。したがって、この並べ替えられたシーケンスを使用して出力されたAM信号は、(E1(o)-E3+E2(e))+(d1-d2)になる。
図2Aに示されているように、項(E1(o)-E3+E2(e))は、動きの不在下でのAM信号と同等である。したがって、シーケンスP1(o)、P3、P2(e)を使用する場合の動きによってもたらされる差は、シーケンスP1(o)、P2(e)、P3を使用する場合の同じ動きによってもたらされる差(d1+d2)と比較すると、(d1-d2)である。
【0033】
例えば、患者が息を吸い込んだり吐き出したりしているときなどに典型的であるように、組織の動きが比較的一定の速度を有する場合、動きによって誘発される差d1及びd2は同様であり、したがって、シーケンスP1(o)、P3、P2(e)を使用する場合の動きに起因する出力AM信号の差(d1-d2)は、通常、従来技術のシーケンスP1(o)、P2(e)、P3を使用する場合の動きに起因する出力AM信号の差(d1+d2)よりも大幅に小さくなることに留意することが重要である。組織キャンセルにおけるこの大幅な向上は、以下にさらに詳述されるように、
図5A及び
図5Bに示されている画像において明らかである。
【0034】
動き誘発アーチファクトの低減において、パルスシーケンスのどの順序がより効果的であるか、又はあまり効果的でないかを説明するために、「時間的バランス」という概念を導入する。前述のとおり、造影超音波画像における組織キャンセルの背後にある基本原理は、2つの信号の相補的なセットを使用して、可能な限りエコーを互いにキャンセルすることである。動き誘発アーチファクトに関して、上記の
図2A~
図2Cで詳述したように、エコー信号の大きさは時間と共に変化するため、各パルスが伝送された時間、又は各エコーが受信された時間を考慮する必要がある。
【0035】
図2Cでは、パルスシーケンスP1(o)、P2、P3(e)、P4、及び組み合わせE1(o)、E2、E2(e)を使用してAM信号を提供すると、P1(o)信号及びP3(e)信号が1つの相補を形成し、P2信号が第2の相補を形成する。AM信号の動き誘発アーチファクトは、
図2Bと比較して低減される。これは、第1の相補のエコー(E1(o)、E2(e))がもう一方の相補(E3)の
両側で発生して、これらの相補的信号の「バランスのとれた」適用が提供されるからである。実際には、これはE1(o)とE2(e)との加算によって、E3と同様の平均変位を有する信号が生成されることを意味する。反対に、
図2Bでは、第1の相補のエコー(E1(o)、E2(e))の両方が、もう一方の相補(E3)よりも前に発生するため、加算された信号の実効変位はE3とは異なる。
【0036】
図2Cでは、相補エコー(E3)の発生時間はT2である。もう一方の相補エコー(E1(o)、E2(e))における信号の発生時間はT1及びT3である。相補(E1(o)、E2(e))における信号が組み合わされると、両方の信号の相補全体の発生時間が、事実上、それらの平均時間T2である。相補信号のセットの各々の実効発生時間は同じ(すなわち、T2)であるため、信号E1(o)、E3、E2(e)のセットは、時間的にバランスがとれていると言える。
【0037】
逆に、
図2Bでは、第1の相補のセットE1(o)、E2(e)の信号は、時間T1及びT2で発生し、このセットの実効発生時間は、T1とT2との中間で、便宜上、T1.5と指定されている。第2の相補のセットE3の発生時間はT3であり、T1.5から離れている。したがって、シーケンスE1(o)、E2(e)、E3は、1.5時間単位(T3-T1.5=1.5時間単位)だけ、時間的にアンバランスであると言える。各相補の実効発生時間の差が大きいほど、動き誘発アーチファクトの大きさが大きくなる。例えば、
図2BのE1(o)、E2(e)、E4の組み合わせによって生成されるAMPI信号は、2.5時間単位(T4-T1.5=2.5時間単位)の差について、T1.5(E1(o)とE2(e)との中点)及びT4の各相補の実効発生時間を有する。これにより、シーケンスP1(o)、P2(e)、P3、P4を使用したT1.5及びT4の実効時間を有するAMPI信号は、そのシーケンスを使用したT1.5及びT3の実効時間を有するAM信号よりも大きい動き誘発アーチファクトを示すという上記の説明が裏付けられる。
【0038】
しかしながら、AMPI信号を生成するために使用される
図2Cの信号E1(o)、E2(e)、E4も時間的にバランスがとられていない。E1(o)とE2(e)との時間的中心はT2にあり、E4の時間的中心はT4にあり、これは、2時間単位の時間的アンバランスを生成する。このアンバランスは、
図2Bのシーケンスを使用するAMPI信号のアンバランス(2.5時間単位)よりも少ないが、AMPI信号内の動き誘発組織アーチファクトを大幅に低減するには十分ではない。
【0039】
先行技術のシステムで一般的に使用されているように、2つの半振幅パルスと、逆位相の2つの両振幅パルスとを含む4パルスシーケンスは、AM信号及びAMPI信号の両方の時間的バランスを提供するために、任意の順序に配置できないことに留意することが重要である。また、ユニティゲイン増幅器を使用したPI信号の時間的バランスでは、各位相でのパルスの各対の間に時間的バランス点を作成するために、各位相での2つのパルスを含む少なくとも4つのパルスが必要であることに留意することも重要である。例えば、{位相1、位相2、位相2、位相1)でのフルパルスのシーケンスは、位相2での2つのパルス間の中間点での位相2信号の実効時間をもたらし、これはまた、位相1での2つのパルス間の中間の位相1信号の実効時間でもある。先行技術のシステムでは、冗長伝送は通常非効率と見なされるため、シーケンスにおける2つの連続したフルパルス(すなわち、上記のシーケンスでは位相2)が発生することがあるとしてもまれである。
【0040】
図3は、AM信号及びAMPI信号の両方に時間的バランスを提供し、当業者にとって標準的な手法に従ってPI信号の生成を可能にする5パルスシーケンスの例を示している。このシーケンスは、3つの半振幅パルスP1(o)、P3(e)、P5(o)が2つの両振幅パルスP2及びP4で互いに分離されて形成されている。P2及びP4は互いに反対の位相を有し、P1(o)、P3(e)、P5(o)は互いにかつP2と同位相である。同等の実施形態では、P1(o)、P3(e)、及びP5(o)はP1と同位相であってもよい。例示及び理解を容易にするために、次の記号を以下に定義する。「o」=半振幅奇数、「e」=半振幅偶数、「+」=両振幅、位相1、及び「-」=両振幅、位相2。したがって、
図3のシーケンスは、シーケンス(o,+,e,-,o)と呼ぶことができ、
図1Dの先行技術のシーケンスは、シーケンス(o,e,+,-)と呼ぶことができる。
【0041】
図4A~
図4Cは、ユニティゲイン増幅器110、114、及び加算器120を使用してPI超音波信号、AM超音波信号、及びAMPI超音波信号を提供するためのエコー合成ユニットを示している。
【0042】
図4Aは、両振幅、逆位相の信号E2及びE4の合計に基づいてPI信号を提供するための構成を示している。上記のように、PI信号のバランスは、この例に関しては対処されておらず、PI信号の時間的アンバランスは、2時間単位(T2-T4)である。つまり、信号E2の中心はT2で、信号E4の中心はT4である。
【0043】
図4Bは、2つの半振幅エコーE1(o)、E3(e)と、負の両振幅エコー-E2との合計に基づいてAM信号を提供するための構成を示している。セットE1(o)、E3(e)の実効発生時間はT2(信号E1(o)及びE3(e)は中心点T2の周りで均等に変位している)であり、E2の実効発生時間もT2(E2の中心は時間T2)であるため、時間的にバランスのとれたAM信号を提供する。
【0044】
図4Cは、2つの半振幅エコーE3(o)、E5(e)、及び逆位相の両振幅エコーE4の合計に基づいてAMPI信号を提供するための構成を示している。セットE3(o)及びE5(e)の実効発生時間はT4(信号E3(o)及びE5(e)は中心点T4の周りで均等に変位している)であり、E4の実効発生時間もT4(E4の中心は時間T4)であるため、時間的にバランスのとれたAMPI信号を提供する。
【0045】
上記のように、組織の動きが一定の速度であり、パルスが等間隔に配置されている場合、このシーケンスによってAM及びAMPIベースの画像内の動き誘発組織アーチファクトが大幅に低減する。
【0046】
PI信号は、時間的にアンバランス(T2、T4;2時間単位のアンバランス)であり、動き誘発アーチファクトを示す。本発明の実施形態では、AM画像若しくはAMPI画像、又はその両方をPI画像と比較するか、PI画像と組み合わせて、PI画像からの動き誘発組織アーチファクトを特定して低減できる。
【0047】
図5A~
図5Dは、時間的にバランスのとれたパルスシーケンスを提供して時間的にバランスのとれたAM信号及びAMPI信号を生成することで、超音波イメージングにおいて達成できる大幅な向上を示している。
【0048】
図5Aは、(o,e,+,-)の先行技術の伝送シーケンス(
図1D)によって、また、oエコー信号、eエコー信号、及び+エコー信号を使用してAM信号(
図1D)を提供することによって得られた超音波画像を示している。
【0049】
図5Bは、本発明の例示的なシーケンス(o,+,e,-,o)によって、また、最初の3つのエコー信号(o、+、e)を使用して時間的にバランスのとれたAM信号(
図4B)を提供することによって得られた超音波画像を示している。
【0050】
図5A及び
図5Bの比較によって、
図5Aにおける領域510に比べて
図5Bにおける領域520での例示的な向上が示される。分かるように、(o,e,+,-)の先行技術のシーケンスを使用して生成された
図5Aの超音波画像では、510に、主にエコー信号の取得中に組織が動くことによるかなりの「組織クラッタ」(動き誘発組織アーチファクト)が導入されている。本発明にしたがって時間的にバランスのとれたエコー信号(o、+、e)を提供することで、動き誘発組織アーチファクトを低減又は除去できる伝送シーケンス(o,+,e,-,o)を提供することで、領域520は、領域510と比較して大幅に少ない組織クラッタを示す。
【0051】
図5Cは、(o,e,+,-)の先行技術の伝送シーケンスによって、また、oエコー信号、eエコー信号、及び-エコー信号を使用してAMPI信号(
図1D)を提供することによって得られた超音波画像を示している。分かるように、また、前述のとおり、
図5AのAM画像を生成するために使用されたエコー信号の時間的アンバランス(T1.5-T3)と比較して
図5CのAMPI画像を生成するために使用されたエコー信号の時間的アンバランス(T1.5-T4)がより大きいため、
図5CのAMPI画像内の領域530における組織クラッタの程度は、
図5AのAM画像内に生成される領域510における組織クラッタよりも明らかに大きい。
【0052】
図5Dは、本発明の例示的なシーケンス(o,+,e,-,o)によって、また、最後の3つのeエコー信号、-エコー信号、及びoエコー信号を使用して時間的にバランスのとれたAMPI信号を提供することによって得られた超音波画像を示している。分かるように、
図5Dの540における組織クラッタの量は、
図5Cの530における組織クラッタの量よりも大幅に少なくなっている。
【0053】
図6は、本発明の一態様による超音波システム600の例示的なブロック図を示している。
【0054】
スキャンヘッド610には、複数のトランスデューサ素子615とコントローラ630とが含まれている。複数のトランスデューサ素子615は、超音波信号を送受信する。コントローラ630は、スイッチ620を介して、伝送のためにトランスデューサ素子に信号を提供するか、又はトランスデューサ素子から信号を受信するかを決定する。トランスデューサ素子は通常、マトリクスとして構成され、各トランスデューサには連番が付けられている。そうすると、トランスデューサ素子は、前述したように、奇数又は偶数のトランスデューサ素子のいずれかを有効にすることで、半振幅信号を出力できる。
【0055】
スイッチ620が伝送状態にある場合、伝送器650は、時間的にバランスのとれたパルスのシーケンス655をトランスデューサ素子に提供する。また、伝送器650は、シーケンスにおける各パルスに対して有効にする必要があるトランスデューサ素子のセット(すべて、奇数、偶数)をコントローラ630に通知し、コントローラ630はそれに応じてトランスデューサ素子615を制御する。
【0056】
受信モードでは、受信したエコーはスイッチ620によってビームフォーマ640に向けられ、その後、組織キャンセラ660によって処理されてPI信号、AM信号、及びAMPI信号が提供される。エコー信号は、通常のやり方でキャンセラ660内で処理される。ただし、伝送されたパルスは時間的にバランスがとれているため、キャンセラ660におけるAMサブモード又はAMPIサブモードを介した組織キャンセルのためのエコーの処理結果は、時間的にバランスのとられていないエコーのAM又はAMPI処理の結果と比較して大幅に向上される。
【0057】
組織キャンセラ660からの結果として得られるPI信号、AM信号、及びAMPI信号は、画像プロセッサに提供される。画像プロセッサは、PI信号、AM信号、及びAMPI信号の各々、又はこれらの信号の2つ以上の組み合わせに基づいて選択的に画像を作成する。上記のように、これらの組織キャンセルされたPIサブモード、AMサブモード、及びAMPIサブモードの各々に、特定の利点と欠点とがある。例えば、各サブモードPI、AM、及びAMPIには、マイクロバブル及び組織からの固有の周波数依存応答がある。したがって、いくつかの実施形態では、各ピクセル又は各領域でのブレンドは、いくつかの周波数帯域のうちから最も強い特性によって決定できる。いくつかの実施形態では、マイクロバブル信号対雑音比が最も高い各サブモードの領域及び周波数帯を使用して、ピクセルを最終画像にブレンドできる。
【0058】
上記のように、サブモードデータを使用して特定の画像内の組織クラッタ領域を特定でき、画像をマスキング又はブレンドして不要な組織アーチファクトを抑制できる。
【0059】
同様に、1つのサブモードが動脈相で支配的で、別のサブモードが後の位相で支配的である場合において、深度/時間にわたるバブルスペクトル応答の変化を使用して、ブレンドの割合を変えることができる。つまり、例えば、AM出力信号は、動脈相中に少ないクラッタを示し、AMPI出力は、門静脈相中に少ないクラッタを示し、位相に基づいてAM出力とAMPI出力とを選択的にブレンドすることで合成画像が形成される。
【0060】
画像プロセッサ670によって生成された画像は、ディスプレイデバイス680に送られる。ディスプレイには、様々な組み合わせの画像を表示できる。例えば、各サブモードPI、AM、及びAMPIの画像を同時に臨床家に表示して、これにより、各サブモードに含まれる様々な情報を評価できる。同様に、サブモード信号の組み合わせに基づく画像を、基礎となっているサブモード画像の同時表示を伴って又は伴わないで、選択的に表示できる。
【0061】
上記のように、
図3のパルスシーケンスは、時間的にバランスのとれたAM信号及びAMPI信号を提供するパルスシーケンスの一例に過ぎない。
図7は、シーケンス内の固定数のパルスによって制限される、時間的にバランスのとれた超音波パルスシーケンスを生成するための例示的なフロー
図700を示している。シーケンスは、時間的にバランスのとれたAM信号及びAMPI信号を提供し、以下でさらに詳述されるように、時間的にバランスのとれたPI信号も提供するように拡張できる。当業者であれば、代替のプロセスを使用してもよいことを認識するであろう。
【0062】
710において、伝送に使用できる様々なパルス形態(例えば、半-奇数、半-偶数、両-位相1、両-位相2など)の数が特定され、シーケンスを形成するパルスの数(通常は5以上)が選択される。715において、使用可能なパルス形式及びパルスシーケンスを形成するパルスの数に基づいて、一度にN個取られたこれらのK個のパルス形式のシーケンスが、重複と共に決定され、フィルタリングされて、PIサブモード、AMサブモード、及びAMPIサブモードを有効にしない任意のパルスシーケンス(すべて同じ位相のパルス、半振幅パルスがない、など)が排除される。
【0063】
ループ720~785は、実行可能な各シーケンスを処理して、このシーケンスから時間的にバランスのとれたAM信号及び時間的にバランスのとれたAMPI信号が形成できるかどうかを決定する。
【0064】
720において、ループが開始し、時間的にバランスのとれたシーケンスが(765において)見つかるまで、715において特定された可能性のあるシーケンスの各々が増加的にテストされる。あるいは、可能性のあるすべてのシーケンスをテストして、時間的にバランスのとれたシーケンスのセットを作成してもよい。シーケンス内のどこに時間的バランス点があるかなど、他の基準に基づいて、このセット内のシーケンスを評価して、望ましいシーケンスを選択できる。
【0065】
725において、AM信号を提供するために使用できるシーケンス内の信号のセットが特定される。シーケンスには、AM信号を提供するためのエコーの代替配置(セット)が含まれ得る。ループ730~780では、エコーセットの各々が処理されて、セットが時間的にバランスがとれているかどうかが決定される。730において、ループが開始し、725において特定された、AM信号を生成するための可能性のあるシーケンスの各セットを増加的に選択する。735において、相補信号のセット(例えば、(半-奇数、半-偶数)、(両-位相1))の各々の時間的中心が決定され、740において比較される。シーケンス内のこの信号のセットがAMの時間的バランスを提供できない場合(740における「ノー」)、セットは不適切であり、次のAMセットがある場合は処理される。
【0066】
740において、シーケンスが時間的にバランスのとれたAM信号を提供する場合、745において、AMPI信号を提供するシーケンス内の信号のセットが特定され、ループ750~775は、各AMPIセットも時間的にバランスのとれたAMPI信号を提供するかどうかを決定する。755において、信号の相補セット(例えば、(半-奇数、半-偶数)、(両-位相2))の時間的中心が決定され、760において比較される。時間的中心が同じである場合、このシーケンスは、時間的にバランスのとれたAM信号及び時間的にバランスのとれたAMPI信号の両方を提供するのに適しており、765において、このシーケンス、並びにAMパルス信号及びAMPIパルス信号のセットが選択される。
【0067】
時間的にバランスのとれたAM信号及びAMPI信号を提供するパルスシーケンスが見つかったことにより、さらなる処理は不要であり、770において、プロセスは終了する。715における可能性のあるシーケンスはPI信号を提供できる必要があるため、この選択されたシーケンスもPI信号を提供することが保証される。
【0068】
760において、信号のセットが、時間的にバランスのとれたAMPI信号を提供できない場合、次のAMPIセットが、ある場合は、ループ750~775で処理される。このシーケンスのすべてのAMPIセットが時間的にバランスのとれたAMPI信号を提供しないと決定された後、次のAM信号のセットが、ある場合は、ループ730~780で処理される。シーケンスが時間的にバランスのとれたAM信号及びAMPI信号を提供できない場合、次のシーケンスが、ループ720~785で評価される。時間的にバランスのとれたAM信号及びAMPI信号を提供するシーケンスが見つからない場合、770において、シーケンスを選択することなくプロセスは終了する。
【0069】
当業者であれば、
図7のフロー図を修正して、時間的にバランスのとれたPI信号、AM信号、及びAMPI信号を提供するシーケンスを見つけることができることを認識するであろう。
【0070】
シーケンスが740においてAMバランスを提供し、760においてAMPIバランスを提供する場合、プロセスを修正して、PI信号を提供するために使用できるパルスのセットを特定する同じ手法を使用して、このシーケンスがバランスのとれたPI信号も提供できるかどうかを続けて決定し、次に、セットのうちの1つが時間的にバランスのとれたPI信号を提供するかどうかを評価する。例えば、Nを、シーケンス内の5個のパルスから8個のパルスに増加して、修正されたプロセスは、時間的にバランスのとれたPI信号、AM信号、及びAMPI信号を提供するシーケンス(o,+,e,-,o,-e,+)を特定する。2番目、4番目、6番目、及び8番目のパルスからのPI信号{+}、{-}、{-}、{+}はT5においてバランスがとられ、1番目、2番目、及び3番目のパルスからのAM信号{o}、{+}、{e}はT2においてバランスがとられ、3番目、4番目、及び5番目のパルスからのAMPI信号{e}、{-}、{o}はT4においてバランスがとられる。任意選択で、T6においてバランスがとられる、5番目、6番目、及び7番目のパルスから別のAMPI信号{o}、{-}、{e}を得ることができる。
【0071】
シーケンスのサイズを大きくするとサンプルあたりの時間が長くなるが、状況によっては、各サブモードでの動き誘発アーチファクトの低減又は除去は、追加時間の価値がある場合がある。さらに、AMPI信号は、e信号、-信号、o信号(T4)又はo信号、-信号、e信号(T6)によって提供できるため、両方の信号を生成及び結合して、向上されたAMPI信号を提供する可能性がある。
【0072】
当業者であれば、
図7のフロー図を使用して、異なる時間的にバランスのとれた信号も提供できることを認識するであろう。例えば、
図7のブロックの「AMPI」を「PI」に置き換えると、時間的にバランスのとれたAM信号及びPI信号を提供するシーケンスが生成される。
図7において「AM」を「PI」に置き換えると、時間的にバランスのとれたPI信号及びAMPI信号を提供するシーケンスが生成される。同様に、時間的にアンバランスな信号(例えば、PI)が使用されることが想定されていない場合、ブロック725におけるテストでは、シーケンスがこの時間的にアンバランスの信号を生成できるという要件を省略できる。
【0073】
当業者であれば、本発明の原理を、動き誘発アーチファクトの影響を受ける任意のセットの信号に適用して、信号の相補セットを使用して、基礎となる不必要な信号をキャンセルできることを認識するであろう。つまり、異なるサブモード及び/又は異なるパルスタイプが見つかった場合に、
図7のフロー図、及び例示的な拡張を適用して、基礎となる不要な信号がキャンセルできる。
【0074】
本発明は、図面及び上記の説明に詳細に例示及び説明されているが、このような例示及び説明は、例示的又は模範的と見なされるべきであって、限定的と見なされるべきではない。本発明は、開示された実施形態に限定されない。
結果として得られるシーケンスが時間的にバランスがとられている限り、例えば、シーケンスの順序が逆にされた、位相が逆にされた、などの実施形態において本発明を操作することが可能である。つまり、特許請求の範囲に開示される本発明を理解するために、「正」及び「負」、「奇数」及び「偶数」という用語の使用は絶対的ではなく、互いに相対的である。
【0075】
図8は、本開示の実施形態による例示的なプロセッサ800を示すブロック図である。プロセッサ800は、本明細書に説明される1つ以上のプロセッサ、例えば、
図6に示す処理要素のいずれか又はすべての実装に使用され得る。プロセッサ800は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、フィールドプログラマブルアレイ(FPGA)(FPGAはプロセッサを形成するようにプログラムされている)、グラフィック処理ユニット(GPU)、特定用途向け回路(ASIC)(ASICはプロセッサを形成するように設計されている)、又はこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない任意の適切なプロセッサタイプであってよい。
【0076】
プロセッサ800は、1つ以上のコア802を含み得る。コア802は、1つ以上の算術論理演算ユニット(ALU)804を含み得る。いくつかの実施形態では、コア802は、ALU804に加えて又はその代わりに、浮動小数点論理ユニット(FPLU)806及び/又はデジタル信号処理ユニット(DSPU)808を含み得る。
【0077】
プロセッサ800は、コア802に通信可能に結合された1つ以上のレジスタ812を含み得る。レジスタ812は、専用の論理ゲート回路(例えばフリップフロップ)及び/又は任意のメモリ技術を使用して実装され得る。いくつかの実施形態では、レジスタ812は、スタティックメモリを使用して実装され得る。レジスタは、コア802にデータ、命令、及びアドレスを提供できる。
【0078】
いくつかの実施形態では、プロセッサ800は、コア802に通信可能に結合された1つ以上のレベルのキャッシュメモリ810を含み得る。キャッシュメモリ810は、実行のためにコンピュータ可読命令をコア802に提供できる。キャッシュメモリ810は、コア802で処理するデータを提供できる。いくつかの実施形態では、コンピュータ可読命令は、ローカルメモリ(例えば外部バス816に接続されているローカルメモリ)によってキャッシュメモリ810に提供されていてもよい。キャッシュメモリ810は、例えば、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、及び/又は任意の他の適切なメモリ手法など、例えば金属酸化物半導体(MOS)メモリである、任意の適切なキャッシュメモリタイプで実装できる。
【0079】
プロセッサ800は、コントローラ814を含み得る。コントローラ814は、システムに含まれている他のプロセッサ及び/若しくは構成要素(例えば
図Bに示す構成要素BBB)からのプロセッサ800への入力、並びに/又は、システムに含まれている他のプロセッサ及び/若しくは構成要素(例えば
図Cに示す構成要素CCC)へのプロセッサ800からの出力を制御できる。コントローラ814は、ALU804、FPLU806、及び/又はDSPU808内のデータパスを制御できる。コントローラ814は、1つ以上のステートマシン、データパス、及び/又は専用制御論理として実装できる。コントローラ814のゲートは、スタンドアロンのゲート、FPGA、ASIC、又は任意の他の適切な手法として実装できる。
【0080】
レジスタ812及びキャッシュ810は、内部接続820A、820B、820C、及び820Dを介してコントローラ814及びコア802と通信できる。内部接続は、バス、マルチプレクサ、クロスバースイッチ、及び/又は任意の他の適切な接続手法として実装できる。
【0081】
プロセッサ800の入出力は、バス816を介して提供され得る。バス816には、1本以上の導電線が含まれ得る。バス816は、例えば、コントローラ814、キャッシュ810、及び/又はレジスタ812である、プロセッサ800の1つ以上の構成要素と通信可能に結合され得る。バス816は、前述の構成要素BBB及びCCCなど、システムの1つ以上の構成要素に結合され得る。
【0082】
バス816は、1つ以上の外部メモリに結合され得る。外部メモリには、読み出し専用メモリ(ROM)832が含まれ得る。ROM832は、マスクROM、電子的にプログラム可能な読み出し専用メモリ(EPROM)、又は任意の他の適切な手法であってよい。外部メモリには、ランダムアクセスメモリ(RAM)833が含まれ得る。RAM833は、スタティックRAM、バッテリバックアップスタティックRAM、ダイナミックRAM(DRAM)、又は任意の他の適切な手法であり得る。外部メモリには、電気的に消去可能なプログラム可能な読み出し専用メモリ(EEPROM)835が含まれ得る。外部メモリには、フラッシュメモリ834が含まれ得る。外部メモリには、ディスク836などの磁気ストレージデバイスが含まれ得る。いくつかの実施形態では、外部メモリは、
図6に示す超音波イメージングシステム600など、システム内に含まれていてもよい。
【0083】
プロセッサ800は、外部バス816及びメモリ832、834、833、835及びディスク836とは異なるものとして示されているが、代替実施形態では、これらのアイテムのうちのいくつか又はすべてが「プロセッサ」800の一部であってもよい。プロセッサ、プロセッサシステム、コンピュータ、コンピュータシステムコントローラ、又はコントローラシステムという用語は、プロセッサ800のみを指している場合もあれば、要素816、832、834、833、835、836のうちのいくつか又はすべてと共にプロセッサを指している場合もあることが理解されるべきである。
【0084】
開示された実施形態の他の変形は、図面、開示及び添付の特許請求の範囲の検討から、請求項に係る発明を実施する際に当業者によって理解され、実行され得る。特許請求の範囲において、「含む」という語は、他の要素やステップを排除するものではなく、単数形は複数を排除するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、特許請求の範囲に記載されているいくつかのアイテムの機能を果たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを意味するものではない。特許請求の範囲に記載される参照番号及び記号は、理解をし易くするためのみであり、例示的な実施形態を表し、特許請求の範囲を限定することを目的としたものではない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に又はその一部として供給される、光記憶媒体又はソリッドステート媒体などの任意の適切な媒体に格納/配布することができるが、インターネット又はその他の有線若しくは無線通信システムを介してなど他の形式で配布することもできる。特許請求の範囲における任意の参照符号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。