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  • 特許-シリンダヘッド構造 図1
  • 特許-シリンダヘッド構造 図2
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  • 特許-シリンダヘッド構造 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】シリンダヘッド構造
(51)【国際特許分類】
   F02F 1/24 20060101AFI20240412BHJP
   F02F 1/36 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
F02F1/24 A
F02F1/36 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022105562
(22)【出願日】2022-06-30
(65)【公開番号】P2024005397
(43)【公開日】2024-01-17
【審査請求日】2024-01-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】田中 多聞
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 純也
(72)【発明者】
【氏名】井上 恭太
(72)【発明者】
【氏名】田中 貴巳
(72)【発明者】
【氏名】中馬 和幸
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-090957(JP,A)
【文献】実開昭63-171643(JP,U)
【文献】特開昭60-192857(JP,A)
【文献】実開昭62-117255(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/00- 1/42
7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダブロックの上に複数の締付ボルトによって組付けられるシリンダヘッドに、前記シリンダブロックにおける隣合うシリンダ間の両側に配置される前記締付ボルトを通すための挿通壁と、一対の前記挿通壁の上端部どうしを繋ぐヘッド上壁と、シリンダヘッド底壁とが設けられ、
一対の前記挿通壁と、前記ヘッド上壁と、前記シリンダヘッド底壁とで囲まれたヘッド冷却水路が形成され、
前記ヘッド上壁と前記シリンダヘッド底壁とに跨り、かつ、一対の前記挿通壁を結ぶ方向に延びて前記ヘッド冷却水路を遮る状態の縦壁が、一対の前記挿通壁どうしの間に形成され、
前記縦壁は、一対の前記挿通壁のいずれか一方に繋がって一体化され、
前記縦壁の前記挿通壁に繋がっていない側の端が、一対の前記挿通壁間の中央領域に存在する状態に形成されているシリンダヘッド構造。
【請求項2】
前記縦壁で仕切られた一方の側のヘッド冷却水路と、前記縦壁の直下又は他方の側の前記シリンダヘッド底壁の底面とに跨る斜め孔状の冷却水路が、前記縦壁の下部に設けられている請求項1に記載のシリンダヘッド構造。
【請求項3】
シリンダブロックの上に複数の締付ボルトによって組付けられるシリンダヘッドに、前記シリンダブロックにおける隣合うシリンダ間の両側に配置される前記締付ボルトを通すための挿通壁と、一対の前記挿通壁の上端部どうしを繋ぐヘッド上壁と、シリンダヘッド底壁とが設けられ、
一対の前記挿通壁と、前記ヘッド上壁と、前記シリンダヘッド底壁とで囲まれたヘッド冷却水路が形成され、
前記ヘッド上壁と前記シリンダヘッド底壁とに跨り、かつ、一対の前記挿通壁を結ぶ方向に延びて前記ヘッド冷却水路を遮る状態の縦壁が、一対の前記挿通壁どうしの間に形成され、
前記縦壁で仕切られた一方の側のヘッド冷却水路と、前記縦壁の直下又は他方の側の前記シリンダヘッド底壁の底面とに跨る斜め孔状の冷却水路が、前記縦壁の下部に設けられているシリンダヘッド構造。
【請求項4】
前記縦壁は、一対の前記挿通壁のいずれか一方に繋がって一体化されている請求項3に記載のシリンダヘッド構造。
【請求項5】
前記シリンダヘッド底壁に、一対の前記挿通壁どうしを結ぶ方向に延びる上方突出リブ状の補強壁部が形成されるとともに、前記補強壁部を上下に貫通する孔状の冷却水路が形成されている請求項1に記載のシリンダヘッド構造。
【請求項6】
前記シリンダヘッド底壁に、一対の前記挿通壁どうしを結ぶ方向に延びる上方突出リブ状の補強壁部が形成されるとともに、前記補強壁部を上下に貫通する孔状の冷却水路が形成されている請求項2に記載のシリンダヘッド構造。
【請求項7】
前記シリンダヘッド底壁に、一対の前記挿通壁どうしを結ぶ方向に延びる上方突出リブ状の補強壁部が形成されるとともに、前記補強壁部を上下に貫通する孔状の冷却水路が形成されている請求項3に記載のシリンダヘッド構造。
【請求項8】
前記シリンダヘッド底壁に、一対の前記挿通壁どうしを結ぶ方向に延びる上方突出リブ状の補強壁部が形成されるとともに、前記補強壁部を上下に貫通する孔状の冷却水路が形成されている請求項4に記載のシリンダヘッド構造。
【請求項9】
前記縦壁は、一対の前記挿通壁間の中央領域に存在する状態に形成されている請求項1~8の何れか一項に記載のシリンダヘッド構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダブロックの上に複数の締付ボルトによって組付けられるシリンダヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水冷式の多気筒ディーゼルエンジンなどにおいては、例えば特許文献1において開示されるように、ウォータポンプから吐出された冷却水は、シリンダブロック(シリンダ)の冷却水路に送られ、シリンダヘッドの冷却水路には、シリンダブロックの各シリンダボアの周囲の冷却水路から冷却水が上昇してくる、という構造が採られるのが一般的である。
【0003】
シリンダブロックとシリンダヘッドとはガスケットを挟んで組付けられるが、シリンダとシリンダとの間、即ちシリンダボア間は幅が狭く、ガスケットの幅も必然的に狭くなるため、燃焼ガスのシール力が低下し易い。
【0004】
また、シリンダヘッドにおける隣合う締付ボルトどうしの間が、冷却水路の存在による中空断面となって剛性が低下し易い面がある。特に、シリンダブロックにおける隣合うシリンダボア間を挟む一対の締付ボルトどうしの間においては(特許文献2の図4を参照)、シリンダヘッドを通じてのガスケットへの締付ボルトの軸力が伝わり辛くなり、ガスケット押付力が低下してシール力の低下を招くおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-97347号公報
【文献】特開2015-108346号公報(図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の高性能化に伴い、シリンダの間隔やシリンダ径を変えずにエンジンとしての出力アップを図ると、当然ながら燃焼圧の増大を招くことになる。そのため、隣合うシリンダ間のシール力をより高める必要があるが、前述の従来技術では限界があり、さらなる工夫が求められる。
【0007】
本発明の目的は、シリンダブロックとシリンダヘッド間のシール力を強化してエンジンの出力向上を図るにあたり、シリンダヘッドにおける隣合うシリンダ間の上側に位置するボア間対応部の剛性を増大させ、ボア間対応部のシール力を無理なく向上させることができるシリンダヘッド構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(請求項1と請求項3に係る発明に共通する発明特定事項)
本発明は、シリンダヘッド構造において、
シリンダブロックの上にシリンダヘッドが複数の締付ボルトによって組付けられシリンダヘッドに、前記シリンダブロックにおける隣合うシリンダ間の両側に配置される前記締付ボルトを通すための挿通壁と、一対の前記挿通壁の上端部どうしを繋ぐヘッド上壁と、シリンダヘッド底壁とが設けられ、
一対の前記挿通壁と、前記ヘッド上壁と、前記シリンダヘッド底壁とで囲まれたヘッド冷却水路が形成され、
前記ヘッド上壁と前記シリンダヘッド底壁とに跨り、かつ、一対の前記挿通壁を結ぶ方向に延びて前記ヘッド冷却水路を遮る状態の縦壁が、一対の前記挿通壁どうしの間に形成されている。
(請求項1に係る発明に固有の発明特定事項)
前記縦壁は、一対の前記挿通壁のいずれか一方に繋がって一体化され、
前記縦壁の前記挿通壁に繋がっていない側の端が、一対の前記挿通壁間の中央領域に存在する状態に形成されている。
(請求項3に係る発明に固有の発明特定事項)
前記縦壁で仕切られた一方の側のヘッド冷却水路と、前記縦壁の直下又は他方の側の前記シリンダヘッド底壁の底面とに跨る斜め孔状の冷却水路が、前記縦壁の下部に設けられている。
【0009】
請求項2,4~9については、特許請求の範囲を参照のこと。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、一対の挿通壁どうしの間に縦壁が新設されているので、一対の挿通壁間の長さが大きく短縮化される(ヘッド上壁を両持ち梁と見立てた場合の梁の長さが大きく縮小される)ので、シリンダヘッドにおける隣合うシリンダ間の上側に位置するボア間対応部の強度・剛性を大きく改善することができる。
【0011】
一対の挿通壁に通される締付ボルトの締付による軸力が、各挿通壁だけでなく、ヘッド上壁及びシリンダヘッド底壁を通じても導かれるようになり、縦壁の無い従来構造に比べて、前記軸力がシリンダヘッドに極力均等に伝わるようになる。従って、一対の締付ボルト間に導かれる軸力が実質的に高まり、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間のシール性を大きく改善することが可能になる。
【0012】
その結果、シリンダブロックとシリンダヘッド間のシール力を強化してエンジンの出力向上を図るにあたり、シリンダヘッドにおける隣合うシリンダ間の上側に位置するボア間対応部の剛性を増大させ、ボア間対応部のシール力を無理なく向上させることができるシリンダヘッド構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】冷却水の移送構造を示すエンジンの概略の側面図
図2】シリンダボア間の概略構造を示し、(A)は縦断面図、(B)は(A)のB-B線断面図、(C)は(A)のC-C線断面図
図3】シリンダヘッドの平面図
図4図3のZ-Z線断面図(ボア間対応部分を示す横断断面図)
図5】シリンダヘッドのボア間対応部分を示す斜め上から見た一部切欠きの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明によるシリンダヘッド構造の実施の形態を、産業用ディーゼルエンジンの場合について図面を参照しながら説明する。なお、産業用ディーゼルエンジン(以下、エンジンと略称する)Eにおいては、冷却ファン10の有る側を前、フライホイール7の有る側を後、吸気ポート30の有る側〔吸気マニホルド(図示省略)の有る側〕)を右、排気ポート28〔排気マニホルド(図示省略)の有る側〕を左とする。また、図5においては、従来の構造のものに縦壁27を仮想線で追加してある。
【0015】
図1に示されるように、直列4気筒(多気筒)のエンジンEでは、シリンダブロック1の上にシリンダヘッド2が組付けられ、シリンダヘッド2の上にヘッドカバー3が組付けられ、シリンダブロック1の下にオイルパン4が組付けられている。5はクランク軸、6はピストン、7はフライホイール、8は伝動ベルト、9はウォータポンプ、10は冷却ファン、11はラジエータである。シリンダブロック1の上部は、ピストン6を内嵌するシリンダ部1Aに形成されている。
【0016】
このエンジンEの冷却装置における冷却水wは、概略、次の記載順に流れて行く。即ち、図1に示されるように、ウォータポンプ9→シリンダブロック1のシリンダ部1A→シリンダヘッド2→サーモスタット12→上手ホース13→ラジエータ11→下手ホース14→ウォータポンプ9である。また、冷却水wの一部は、シリンダヘッド2から専用ルートの供給路15でオイルクーラ16を冷やし、その後は排出路17を通ってウォータポンプ9に戻る経路も備えている。
【0017】
前方からシリンダ部1Aに入る冷却水wは、基本は後方に流れながらも各シリンダ1a毎に上方へも流れる。従って、シリンダヘッド2のウォータジャケットであるヘッド冷却水路2Wには、シリンダ部1Aのウォータジャケットであるシリンダ冷却水路1Wから上向きに冷却水wが流入されるとともに、後方から前方に(前方のウォータポンプ9に)流れるようにもなっている。
【0018】
図2(A)に示されるように、シリンダ部1Aの隣合うシリンダ1a,1a間においては、隣合うシリンダ1a,1aを繋いで一体化する下連結壁18、中連結壁19、上連結壁20がシリンダ冷却水路1Wを横切る状態で設けられている。シリンダヘッド2のヘッド冷却水路2Wとシリンダ部1Aのシリンダ冷却水路1Wとは、各シリンダ1aの外側部位の複数個所において連通されており、隣合うシリンダ1a,1a間(ボア間)においては左右2カ所の連通孔21,22によって連通されている。
【0019】
図1図5に示されるように、シリンダヘッド2には冷却水wを通すヘッド冷却水路2Wが内部形成されており、シリンダヘッド2における隣合うシリンダ1a,1a間の上側に位置するボア間対応部(「気筒間部分」とも言われる)2bが図2(A)及び図4に示されている。ボア間対応部2bにおいては、締付ボルト23を通す挿通孔2cを有する左右で一対の挿通壁24の間で、かつ、シリンダヘッド底壁26と、ヘッド上壁25とで囲まれた箇所がヘッド冷却水路2Wに形成されている。
【0020】
シリンダヘッド底壁26の底面26aが、ガスケットGを介してシリンダ部1Aの上面1bに載せ付けられる面であり、ヘッド上壁25は、ヘッドカバー3が載せ付けられるシリンダヘッドとしての上壁である。なお、図3図5における28は排気ポートであり、その上下の箇所、及び右側の挿通壁24の右側のそれぞれにもヘッド冷却水路2Wが形成されている。
【0021】
つまり、図2図5に示されるように、シリンダブロック1の上に複数の締付ボルト23によって組付けられるシリンダヘッド2に、シリンダブロック1における隣合うシリンダ1a,1a間の両側に配置される締付ボルト23,23を通すための挿通壁24,24と、一対の挿通壁24,24の上端部どうしを繋ぐヘッド上壁25と、シリンダヘッド底壁26とが設けられ、一対の挿通壁24,24と、ヘッド上壁25と、シリンダヘッド底壁26とで囲まれたヘッド冷却水路2Wが形成され、ヘッド上壁25とシリンダヘッド底壁26とに跨り、かつ、一対の挿通壁24,24を結ぶ方向に延びてヘッド冷却水路2Wを遮る状態の縦壁27が、一対の挿通壁24,24どうしの間に形成されている。
【0022】
図2(A)、図3図4に示されるように、縦壁27は右側(吸気ポート側)の挿通壁24の左端に連続して繋がって一体化されており、縦壁27の左端(挿通壁24に繋がっていない側の端)27aの左右方向の位置iが、一対の挿通壁24,24間の中央領域Cに存在する状態に形成されている。中央領域Cの範囲の例としては、左右の挿通壁24どうしの中心間距離をDとした場合に、その左右中心の±10%(C:0.4D≦i<0.6D)が挙げられるが、それ以外(30%~70%の範囲など)でも良い。
【0023】
縦壁27の左右幅を、右側の挿通壁24の中心と左端27aとの間の長さdとすると、縦壁27の長さdは、一対の挿通壁24,24どうしの間隔、即ち前記中心間距離Dの半分程度の長さ(0.4D≦d≦0.6D)に設定されている。図4に示されるように、ボア間対応部2bにおけるシリンダヘッド底壁26に、上方突出リブ状で左右に(一対の挿通壁24,24どうしを結ぶ方向に)延びる補強壁29を形成すれば好都合である。
【0024】
補強壁29の左端部は、斜め上方にせり上がりながら左側の挿通壁24に繋がっており、その斜め補強壁部29aに縦孔水路(孔状の冷却水路)21Aが形成されている〔図2(A),(C)及び図4を参照〕。縦孔水路21Aはシリンダ部1Aの左側の連通孔21にガスケットGを挟んで連通されており、それら縦孔水路21A及び連通孔21により、シリンダ冷却水路1Wとヘッド冷却水路2Wとが上下に連通されている。
【0025】
図2(A),(B)及び図4に示されるように、縦壁27の前(一方)の側のヘッド冷却水路2Wと縦壁27の直下、即ち真下の底面26aとは、底面26aから前方上方に延びて形成された斜孔水路22Aにより連通されている。つまり、縦壁27で仕切られた一方の側のヘッド冷却水路2Wと、縦壁27の下端又は他方の側のシリンダヘッド底壁26の底面26aとに跨る斜孔水路22A(斜め孔状の冷却水路)が、縦壁27の下部に設けられている。ガスケットGを挟んで連通される斜孔水路22A及び右側の連通孔22によっても、シリンダ冷却水路1Wとヘッド冷却水路2Wとが上下に連通されている。
【0026】
〔作用効果について〕
従来では、図示は省略するが、シリンダヘッドのボア間対応部2bは、ヘッド冷却水路2Wを広く取るべく縦壁27が無い構造(特許文献1の図4を参照)であって、強度・剛性では不利であり、締付ボルト23の締付による軸力がシリンダヘッド底壁26には均一に伝わり難くなる傾向があった。そこで、シリンダヘッド底壁26に上方突出するリブ壁(補強壁29のようなもの)を設けることも試されたが、強度・剛性の向上は十分ではなく、限界があった。
【0027】
そこで、本発明では、ヘッド上壁25とシリンダヘッド底壁26とに跨り、かつ、一対の挿通壁24,24を結ぶ方向に延びてヘッド冷却水路2Wを遮る状態の縦壁27を、一対の挿通壁24,24どうしの間に形成したものである。縦壁27の新設により、挿通壁24,24間の長さが大きく短縮化される〔ヘッド上壁25を、左右に延びる両持ち梁と見立てた場合の梁の長さ(スパン)が大きく縮小される〕ので、ボア間対応部2bの強度・剛性を大きく改善することができる。
【0028】
つまり、一対の挿通壁24,24に通される締付ボルト23,23の軸力が、ボルト座面に接する縦壁27を通じて導かれるため、縦壁27の無い従来構造に比べて、シリンダヘッド2に極力均等に伝わるようになる。従って、一対の締付ボルト23,23間に導かれる軸力が実質的に高まり、シリンダ部1Aとシリンダヘッド2とのシール性が大きく改善される効果が得られる。
【0029】
右側の挿通壁24に一体化されている縦壁27の左端27aが、一対の挿通壁24,24間の中央領域Cに存在する状態に設定される構成(図4参照)とすれば、一対の挿通壁24,24どうしの間隔がおおよそ半減される(前記梁の長さが半減される)ので、ボア間対応部2bの強度・剛性をより大きく改善することができる。
【0030】
縦壁27の下部に、前又は後に傾く斜孔水路22Aを形成してあるので、縦壁27を設けたにも拘わらずに、縦壁27の下側(底面26a)と縦壁27の前又は後側のヘッド冷却水路2Wとを無理なく連通させて、円滑な冷却水wの流れを得ることができる。
そして、ボア間対応部2bにおける縦壁27の無い側においては、縦壁27の下側(底面26a)とヘッド冷却水路2Wとを連通させる縦孔水路21Aが補強壁部29aに形成されているので、縦孔水路21Aを設けることに寄る強度・剛性の低下が生じないように工夫されている。
【0031】
また、縦壁27はエンジンEとしての右側、即ち吸気ポート側(吸気マニホルド配置側)に偏らせて設けてあるので、温度が高くなり易い排気ポート側には縦壁27が無く冷却水wがヘッド冷却水路2Wを前後方向(気筒配列方向)に移動し易く、従って、効率良く排気側から吸熱できる利点もある。
【0032】
〔別実施形態〕
(1)縦壁27は、左側(排気ポート側)の挿通壁24に一体化されるように左側に寄せて設ける構成でも良い。
(2)一対の挿通壁24,24どうしの間の左右中央部に独立させて縦壁27を設ける構成でもよく、この場合は、縦壁27と各挿通壁24,24とのそれぞれの左右間に孔状の冷却水路を共に縦向き(上下向き)に設けることが可能である。
【0033】
(3)斜孔水路22Aを、縦壁27の後側のヘッド冷却水路2Wと縦壁27の前側の底面26aとを連通する斜め孔に形成しても良い。
(4)リブ状の補強壁29は、図2(A)では描かずに図4では描いてある。補強壁29は無くても良いが有れば好都合である。
【符号の説明】
【0034】
1 シリンダブロック
1a シリンダ
2 シリンダヘッド
2W ヘッド冷却水路
21A 孔状の冷却水路
22A 斜め孔状の冷却水路
23 締付ボルト
24 挿通壁
25 ヘッド上壁
26 シリンダヘッド底壁
26a 底面
27 縦壁
27a 端
29a 補強壁部
図1
図2
図3
図4
図5