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特許7471351化粧シート、及び該シートを用いた化粧金属板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】化粧シート、及び該シートを用いた化粧金属板
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/04 20060101AFI20240412BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20240412BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
B29C59/04 Z
B32B3/30
B32B27/00 E
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022123722
(22)【出願日】2022-08-03
(62)【分割の表示】P 2018138345の分割
【原出願日】2018-07-24
(65)【公開番号】P2022159361
(43)【公開日】2022-10-17
【審査請求日】2022-08-03
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井原 誠司
(72)【発明者】
【氏名】山谷 幸平
(72)【発明者】
【氏名】高木 亮
(72)【発明者】
【氏名】川中 智大
(72)【発明者】
【氏名】永田 孝
(72)【発明者】
【氏名】栗山 亮一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】水本 幸男
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-036607(JP,A)
【文献】特開平07-144364(JP,A)
【文献】特開2006-212909(JP,A)
【文献】特開2010-042575(JP,A)
【文献】特開2016-069800(JP,A)
【文献】特開2016-196102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 31/00 - 73/34
B32B 3/30
27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
算術平均粗さRa(JIS B0601 2013)が0.5μm以下である鏡面部とエンボス加工部とを備える金属板貼合用化粧シートにおいて、
前記鏡面部の面積が、シート全体の面積の50%を超え、
前記エンボス加工部が、凹部と、該凹部内にある複数の凸部とからなり、
該凸部の上面が鏡面部の面を上回らず、
前記凸部が、以下のa)~c)のいずれかに該当することを特徴とする金属板貼合用化粧シート。
a)前記凸部が略筋状であり、隣接する凸部との間に形成される間隔が75~225μmである
b)前記凸部が略格子状であり、格子の一辺の長さが110~325μmである
c)前記凸部が突起状であり、隣接する凸部との間に形成される間隔が35~110μmである
【請求項2】
金属板に請求項1記載の金属板貼合用化粧シートを貼合したことを特徴とする化粧金属板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンボス加工により意匠性が付与された化粧シートに関する。また該化粧シートを貼合した化粧金属板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の壁、天井等の内装、ユニットバスやシステムキッチン、家具、キャビネット等の表面装飾材として、鏡面部とエンボス加工部とを備える化粧シートが採用されている。該化粧シートには、鏡面部とエンボス加工部の光沢性の違いにより意匠性が付与される。
図12に示す化粧シート1は、その表面に鏡面部2とエンボス加工部3とを備えており、鏡面部2とエンボス加工部3の光沢性の違いにより、化粧シート1の表面にはライン状の柄が浮き上がる(図12(A))。従来の化粧シート1は、図12(B)(C)に記すように、エンボス加工部3が複数の凸部3bから形成されているものが多い。
【0003】
特許文献1は傷の目立たない鏡面エンボス化粧シート及びその製造に用いる鏡面エンボス版に関する発明である。特許文献1では、エンボス加工部(エンボス部)の面積を20~50%、鏡面部の面積を50~80%とすることにより、シートの鏡面性を維持したまま、該化粧シートの埃や傷が目立つことを抑制する。
特許文献2は化粧金属板に関する発明で、エンボス加工(型押し)により意匠性が付与された化粧シートが開示されている。該化粧シートは、エンボス加工により形成される微細な凸部の上面が平らであることを特徴とする。凸部上面が平らである為、該凸部が爪等で引っかかれても、光沢性が大きく変化せず、傷が目立ち難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-212909号公報
【文献】特開2010-42575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エンボス加工された化粧シートは、通常、その表面を手で撫でるとエンボスに起因する凹凸を感じる。しかしながら、近年、エンボス加工部により意匠性が付与されているにもかかわらず、手触りは滑らかな化粧シートが求められている。本発明はこのようなシートの提供を課題とする。換言すれば、視覚ではエンボス加工部を確認でき、触覚では確認できない化粧シートの提供を課題とする。
以下、必要に応じ、視覚でエンボス加工部を容易に確認できる状態を「柄立ちが良い」、視覚で確認でき難い状態を「柄立ちが悪い」と表現する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一般的なエンボスロールは、ロール状の鉄芯に銅メッキを行う等した鏡面ロールに、機械彫やエッチング法等によって微細な凹部を設けて作成される。エンボスロールの凹部は化粧シートに反転して転写される為、一般的な化粧シートは、エンボス加工部が凸部となり、鏡面部よりも突出する。
本発明者らは、エンボス加工部が鏡面部に対し突出していると、手で触ったときに凹凸を感じやすいことを見出し、更にはエンボス加工部が鏡面部に対し凹んでおり、尚且つその幅が十分に狭いと、手で触ったときに凹凸を感じにくいことを見出した。そこでエンボス加工部を幅の狭い凹部により形成することとしたが、エンボス加工部が単調な筋状の凹みのみでは柄立ちが悪い為、該凹部内に凸部を形成することとした。
【0007】
即ち本発明によると、上記課題を解決する為の手段として鏡面部とエンボス加工部を備える化粧シートにおいて、前記エンボス加工部が、幅0.1~15mmの凹部と、該凹部内にある複数の凸部とからなり、各凸部の上面が鏡面部の面を上回らないことを特徴とする化粧シートが提供される。
また前記凸部の上面と前記鏡面部の面との差が0~10μmであることを特徴とする前記化粧シートが提供される。
また前記凸部の上面と前記鏡面部の面との差が0μmを超え、10μm以下であることを特徴とする前記化粧シートが提供される。
【0008】
また前記凸部が略筋状であり、隣接する凸部との間に形成される間隔が70~1000μmであることと特徴とする前記化粧シートが提供される。
また前記凸部が略格子状であり、格子の一辺の長さが150~1000μmであることを特徴とする前記化粧シートが提供される。
また前記凸部が突起状であり、隣接する凸部との間に形成される間隔が30~1000μmであることを特徴とする前記化粧シートが提供される。
また前記鏡面部の面積が、フィルム全体の面積の50%を超えることを特徴とする前記化粧シートが提供される。
更に、金属板に前記化粧シートを貼合したことを特徴とする化粧金属板が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の化粧シートはエンボス加工部が幅の狭い凹部からなるため、手で触れられたときに凹凸感のない滑らかな触感を与える。また該凹部内に複数の凸部を備える為、柄立ちが良く、エンボス加工部が視覚により確認されやすい。特に凸部の上面と鏡面部の面(ツラ)の差が0~10μm、更には0μmを超え10μm以下であると、柄立ちが良い。
【0010】
また該凸部の間隔が広い、具体的には以下の(1)~(3)である場合、化粧シートは汚染され難い。
(1)凸部が略筋状である場合は、隣接する凸部との間に形成される間隔が70~1000μm。
(2)凸部が略格子状である場合は、格子の一辺の長さが150~1000μm。
(3)凸部が突起状であり、隣接する凸部との間に形成される間隔が30~1000μm。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の化粧シートの模式的平面図(A)とそのa-a’断面図(B)、b-b’断面図(C)である。
図2】本発明の化粧シートの模式的平面図である。
図3】本発明の化粧シートの模式的平面図である。
図4】実施例1の化粧シートの表面形状を、高い位置にあるものが薄い色、低い位置にあるものが濃い色となるように画像処理したものである。
図5】実施例2の化粧シートの表面形状を、高い位置にあるものが薄い色、低い位置にあるものが濃い色となるように画像処理したものである。
図6】実施例3の化粧シートの表面形状を、高い位置にあるものが薄い色、低い位置にあるものが濃い色となるように画像処理したものである。
図7】実施例4の化粧シートの表面形状を、高い位置にあるものが薄い色、低い位置にあるものが濃い色となるように画像処理したものである。
図8】実施例5の化粧シートの表面形状を、高い位置にあるものが薄い色、低い位置にあるものが濃い色となるように画像処理したものである。
図9】実施例6の化粧シートの表面形状を、高い位置にあるものが薄い色、低い位置にあるものが濃い色となるように画像処理したものである。
図10】実施例7の化粧シートの表面形状を、高い位置にあるものが薄い色、低い位置にあるものが濃い色となるように画像処理したものである。
図11】比較例1の化粧シートの表面形状を、高い位置にあるものが薄い色、低い位置にあるものが濃い色となるように画像処理したものである。
図12】従来の化粧シートの模式的平面図(A)とその部分拡大図(B)、部分拡大図のa-a’の断面図(C)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。尚、各図面中、同一符号は同一または同等の構成要素を表している。また本発明は以下の形態に限定されるものではなく、種々の形態をとることができる。
【0013】
[化粧シート]
(樹脂組成)
本発明の化粧シートは熱可塑性樹脂からなる。該熱可塑性樹脂は特に限定されるものではなく、従来公知の材料を適宜選択して用いることができる。具体的には、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等が挙げられる。中でも、ポリトリメチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートは結晶化速度が速いため、これらの樹脂を採用することでエンボスロールの形状を精度よく化粧シートに転写することができる。尚、本発明の化粧シートは、上述した樹脂やその共重合体を単独で又は2種以上を組み合わせ用いることにより形成することができる。
【0014】
また本発明の化粧シートは、着色されていても良い。この場合は、上記のような熱可塑性樹脂に対して着色剤(顔料又は染料)を添加して着色することができる。着色剤としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄等の無機顔料、フタロシアニンブルー等の有機顔料のほか、各種の染料も使用することができる。これらは、公知又は市販のものから1種又は2種以上を選ぶことができる。また、着色剤の添加量も、所望の色合い等に応じて適宜設定すれば良い。
尚、本発明の化粧シートは単層のシートであってもよいが、多層のシートであっても良い。化粧シートを3層構成とし、中間層のみに着色を施せば、化粧シートを製膜する際に、押出機に目ヤニが付着するといった問題を回避することができる。
【0015】
更に化粧シートには、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等の各種の添加剤が含まれていても良い。
化粧シートの厚みは、最終製品の用途、使用方法等により適宜設定できるが、一般には20~300μmが好ましく、特に70~150μmが好ましい。
【0016】
図1は本発明の化粧シートの一実施例を表す平面図(A)とそのa-a’断面図(B)、b-b’断面図(C)である。本発明の化粧シート1は、鏡面部2とエンボス加工部3とからなる。鏡面部2とエンボス加工部3との面積割合(%)は特に限定されないが、鏡面部:エンボス加工部=50~95:50~5であることが好ましく、特に70~90:10~30であることが好ましい。鏡面部の面積割合が50%を下回ると、化粧シートに所期の意匠性を付与することが難しい。
【0017】
(鏡面部)
鏡面部2は、平滑で、光沢性に優れる部分で、化粧シートに重厚感や高級感を付与する。鏡面部2は算術平均粗さRa(JIS B0601 2013)が0.5μm以下であることが好ましい。鏡面部2の算術平均粗さが0.5μmを超えると、該部分の鏡面性が失われ、化粧シートに所期の意匠性を付与することができない。算術平均粗さRaは0.3μm以下が好ましく、特に0.1μm以下が好ましい。また算術平均粗さRaの下限値は特に限定されないが、0.01μm以上が好ましい。鏡面部2の算術平均粗さRaが0.01μmを下回ると、該鏡面部2に傷が入った際に、該傷が目立ち易い。
【0018】
(エンボス加工部)
エンボス加工部3は、鏡面部2よりも凹んだ凹部3aと、該凹部3a内に形成された複数の凸部3bとからなる。
本発明の化粧シートは、該凹部3aの幅d(凹)が0.1~15mmである。該幅d(凹)が0.1mmを下回ると、凹部3a内に凸部3bを形成することが困難となり、エンボス加工部の柄立ちが悪くなる。また該幅d(凹)が15mmを超えると、化粧シート表面を手で撫でた際に凹凸を感じ易くなる。尚、該幅d(凹)は化粧シート内において一定でなくても良く、0.1~15mmの範囲内において変化しても良い。
【0019】
また本発明の化粧シートは、凹部3a内に複数の凸部3bを備えるが、該凸部3bの上面が鏡面部2の面(ツラ)を上回らない。凸部3bの上面が鏡面部2の面を上回ると、化粧シートを撫でた際に凹凸を感じる恐れがある。
凸部3bの上面と鏡面部2の面との差αは0以上、特に0μmを超えることが好ましく、更に10μm以下、特に5μmが好ましい。差αが10μmを上回ると、凸部3bが光を反射し難くなり、エンボス加工部の柄立ちが悪化する。また差αが0~5μmの場合、凸部3bはフィルムに滑らかな手触りを与えることに寄与する。よって凹部の幅d(凹)が10mmを超える場合は、凸部3bの上面と鏡面2の面との差αが0~5μmであることが好ましい。また差αが0μmでない(凸部3bの上面が鏡面部2の面と一致しない)場合、鏡面部2と凸部3bの光の反射の仕方が異なる為、化粧シート1は意匠性に優れる。
【0020】
尚、凸部3bの上面が平らでない場合、凸部3bの「上面」とは、「上端」に相当する。また鏡面部2の面が平らでない(なだらかにうねる)場合、「鏡面部2の面を上回らない」とは、「鏡面部の端縁2a、2a’を結ぶ線分を上回らない」に相当する。また、凸部3bが鏡面部2の面を極わずかに上回る場合であっても、触感として感じ取れない程度であれば、本発明の権利範囲に含まれる。
【0021】
また鏡面部2の面から凹部3aの底面までの距離も特に限定されないが、10~30μmが好ましく、特に10~20μmが好ましい。該距離が10μm未満では凸部3bが浅くなり、凹部3aと凸部3bの外観が近似し、柄立ちが悪化する。また該距離が30μmを超えると、耐汚染性が悪化する。
【0022】
また本発明の化粧シートは、図面に示されたものも、その他のものも、隣接する凸部との間隔が150μm、特に300μm以上であれば、耐汚染性に優れる。但し、後述するように、柄によっては隣接する凸部との間隔が150μmを下回るものであっても耐汚染性に優れる場合がある。また柄立ちを考慮すると、凸部の間隔は1000μm以下が好ましく、特に500μm以下が好ましい。
尚、エンボス加工部内で凸部の間隔が一定でない場合、化粧シートとして有効な範囲に現れる凸部の7割以上が上記範囲であることが好ましく、有効範囲における全ての凸部の間隔が上記範囲であることが望まれる。
【0023】
図1に示す化粧シートは、凸部3bが、凹部3aの幅方向に延びる筋状である。該凸部3bの、隣接する凸部との間に形成される間隔d1(凸)は70~1000μmであることが好ましく、特に220~500μmであることが好ましい。間隔d1(凸)が220μm未満、特に70μm未満では、凸部3b間に汚れが詰まりやすくなる。また筋状の凸部3bの間隔d1(凸)が500μm、特に1000μmを超えると、エンボス加工部3における光を反射する面が狭くなる為、柄立ちが悪くなる。
尚、筋状の凸部3bは、図1に示すように、凹部3aの幅方向に延びるものでもよいが、凹部3aと略平行に伸びるものでもよく、凹部3aと一定の角度を形成するものであってもよい。いずれの場合でも間隔d1(凸)は70~1000μmであることが好ましい。
【0024】
図2に示す化粧シート1は、凸部3bが格子状である。該格子の一辺d2(凸)-1、d2(凸)-2はいずれも150~1000μmであることが好ましく、特に300~500μmであることが好ましい。格子の間隔d2(凸)-1、d2(凸)-2が300μm未満、特に150μm未満では、凸部3b間に汚れが詰まりやすくなる。また格子の間隔d2(凸)-1、d2(凸)-2が500μm、特に1000μmを超えると、エンボス加工部の柄立ちが悪くなる。
尚、エンボス加工部3は、凹部の幅d(凹)-1、d(凹)-2がいずれも0.1~15mmであれば、図2に示すように、化粧シート内に複数形成されていても良い。
【0025】
図3に示す化粧シートは、凸部3bが突起状である。凸部3bの、隣接する凸部との間隔d3(凸)-1、d3(凸)-2は、耐汚染性と柄立ちを考慮すると、いずれも30~1000μmであることが好ましく、特に100~500μmであることが好ましい。
化粧シート1が複数のエンボス加工部3を備える場合、各エンボス加工部は幅d(凹)-1、d(凹)-2がいずれも0.1~15mmであれば、概略平行でなくても良く、例えば図3に示すように十字状に配されていても良い。
【0026】
[化粧シートの製造]
本発明の化粧シートの製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、Tダイ-キャストエンボス法を採用することができる。具体的には、まず化粧シート用の樹脂組成物を押出機に投入し、これを溶融させてTダイへ供給し、次いでTダイから溶融状態の樹脂組成物を流下させ、キャスティングロールを兼ねるエンボスロールによって引き取ると同時にエンボス加工を付与する方法を採用できる。
【0027】
[化粧金属板]
本発明の化粧金属板は、金属板の表面に上述した化粧シートを貼合することにより得られる。金属板は、従来、化粧金属板に用いられてきたものを特に制限なく使用することができ、例えば、冷延鋼板、メッキ鋼板、ティンフリースチール、ステンレス鋼板等の各種鋼板やアルミニウム系合金板、ニッケル系合金板、チタン系合金板、マグネシウム系合金板等を使用できる。化粧シートを金属板に貼合する方法は特に限定されないが、熱硬化型接着剤による貼合が一般的である。また金属板を予め加熱しておき、接着剤を解すことなく、貼合する、いわゆる熱ラミネート法を採用することもできる。
また化粧シートと金属板の間に、接着剤を介してバッカー材をドライラミネート方式で積層してもよい。
【実施例
【0028】
次に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。本発明における評価方法は以下の通りである。
[平滑性]
化粧シートの表面を手で撫でる。凹凸を感じたものは×、感じなかったものは○と評価する。
[耐汚染性]
初めにカーボンブラックを含む染色液を化粧シート表面に滴下し、これを化粧シート表面に押し広げる。次いで、洗浄成分を含む布帛にて、化粧シート表面の染色液を拭き取る。化粧シートのエンボス加工部の50%以上の面積が黒く染まったものは×、エンボス加工部の10%以上50%未満の面積が黒く染まったものは△、染色液が残った面積が10%未満であったものは○と評価する。
【0029】
[実施例1]
ポリブチレンテレフタレートを用い、Tダイ-キャストエンボス法にて、100μmの化粧シートを製造した。エンボス加工部は、幅0.5~0.8mmの凹部と、該凹部間に形成された複数の凸部とからなり、凸部は図1に示すような、凹部の幅方向に延びる筋状とし、隣接する凸部との間に形成される間隔(図1におけるd1(凸)に相当)は225μmとした。また凸部の上面と鏡面部の面との差(α)は0μmとした。
[実施例2]
隣接する凸部との間に形成される間隔(図1におけるd1(凸)に相当)を75μmとした以外は、実施例1と同様にして化粧シートを製造した。
【0030】
[実施例3~5]
ポリブチレンテレフタレートを用い、Tダイ-キャストエンボス法にて、100μmの化粧シートを製造した。凸部は図2に示すような格子状とした。凹部の幅、格子の一辺の長さ(図2d2(凸)-1、d2(凸)-2に相当)は、表1に記すとおりである。
[実施例6、7]
ポリブチレンテレフタレートを用い、Tダイ-キャストエンボス法にて、100μmの化粧シートを製造した。凸部は図3に示すような突起状とした。凹部の幅、隣接する凸部との間に形成される間隔(図3d3(凸)-1、d3(凸)-2に相当)は、表1に記すとおりである。
【0031】
[比較例1]
図12に記すような凹部のない化粧シートを製造した。エンボス加工部を複数の凸部から形成した以外は、実施例1と同様にして化粧シートを製造した。尚、各凸部の間隔は35μmであった。
【0032】
実施例1乃至7、比較例1の化粧シートの平滑性と耐汚染性を評した。結果を表1に併せて記す。実施例1乃至7の化粧シートは、エンボス加工部が幅0.1~15mmの凹部と、該凹部内にある複数の凸部からなり、手で触ったときに凹凸を感じることがなかった。比較例1の化粧シートは、エンボス加工部が鏡面部よりも突出した凸部から形成されており、手で触ったときに凹凸を感じた。また実施例1、3、6の化粧シートは、凸部の間隔が十分に広く、耐汚染性に優れるものであった。
【0033】
【表1】
【0034】
実施例1の化粧シートの表面形状を、高い位置にあるものが薄い色、低い位置にあるものが濃い色となるように画像処理したものを図4に記す。同様に、実施例2~比較例1の表面形状の画像処理されたものを図5図11に記す。
また、実施例1乃至7を比較すると、隣接する凸部との間隔が一定の場合、突起状の凸部が最も耐汚染性に優れ、次いで筋状の凸部が優れ、格子状の凸部は最も汚染し易いことが推察される。これは、凹部に浸入した染料のかき出し易さに起因するものと推察する。
【符号の説明】
【0035】
1 化粧シート
2 鏡面部
2a、2a’ 鏡面部の端縁
3 エンボス加工部
3a 凹部
3b 凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12