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特許7471356入力オーディオ信号のダイナミックレンジを調整する方法、オーディオ信号処理装置及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】入力オーディオ信号のダイナミックレンジを調整する方法、オーディオ信号処理装置及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G10L 19/00 20130101AFI20240412BHJP
   G10L 19/008 20130101ALI20240412BHJP
【FI】
G10L19/00 400Z
G10L19/008
G10L19/00 330B
【請求項の数】 3
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022129917
(22)【出願日】2022-08-17
(62)【分割の表示】P 2021209256の分割
【原出願日】2013-05-02
(65)【公開番号】P2022166205
(43)【公開日】2022-11-01
【審査請求日】2022-08-17
(31)【優先権主張番号】61/649,036
(32)【優先日】2012-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/664,507
(32)【優先日】2012-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/713,005
(32)【優先日】2012-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507236292
【氏名又は名称】ドルビー ラボラトリーズ ライセンシング コーポレイション
(73)【特許権者】
【識別番号】510185767
【氏名又は名称】ドルビー・インターナショナル・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】リードミラー,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ローエデン,カール イー
(72)【発明者】
【氏名】クヨーリング,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】プルンハーゲン,ヘイコ
(72)【発明者】
【氏名】メルコーテ,ヴィナイ
(72)【発明者】
【氏名】セルストロム,レイフ
【審査官】菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-517688(JP,A)
【文献】特開2007-109328(JP,A)
【文献】特表2013-519918(JP,A)
【文献】特表2011-528200(JP,A)
【文献】国際公開第2011/100155(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/026092(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10L 19/00-19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーディオ信号処理装置によって行われる、オーディオ信号のダイナミックレンジを調整する方法であって、
符号化されたオーディオ信号とエンコーダ生成のダイナミックレンジ制御(DRC)メタデータとを含むビットストリームを受信することであって、エンコーダ生成のDRCメタデータは、複数のDRCゲインセットを含み、複数のDRCゲインセットは、前記オーディオ信号のダイナミックレンジを調整するために前記オーディオ信号に適用される総DRCゲインの第1の部分を表す第1のDRCゲインセットと、前記オーディオ信号のダイナミックレンジを調整するために前記オーディオ信号に適用される前記総DRCゲインの第2の部分を表す第2のDRCゲインセットを含み、前記第1のDRCゲインセットと前記第2のDRCゲインセットDRCゲインは、dB値としてコード化される、受信することと、
前記符号化されたオーディオ信号を復号して前記オーディオ信号を取得することと、
前記第1のDRCゲインセットと前記第2のDRCゲインセットとを前記オーディオ信号に適用することによって、オーディオ信号のダイナミックレンジを調整し、前記オーディオ信号に適用される前記総DRCゲインを適用することとを含む
方法。
【請求項2】
オーディオ信号のダイナミックレンジを調整するオーディオ信号処理装置であって、1つ以上のプロセッサ有し、前記1つ以上のプロセッサは、
符号化されたオーディオ信号とエンコーダ生成のダイナミックレンジ制御(DRC)メタデータとを含むビットストリームを受信し、エンコーダ生成のDRCメタデータは、複数のDRCゲインセットを含み、複数のDRCゲインセットは、前記オーディオ信号のダイナミックレンジを調整するために前記オーディオ信号に適用される総DRCゲインの第1の部分を表す第1のDRCゲインセットと、前記オーディオ信号のダイナミックレンジを調整するために前記オーディオ信号に適用される前記総DRCゲインの第2の部分を表す第2のDRCゲインセットを含み、前記第1のDRCゲインセットと前記第2のDRCゲインセットDRCゲインは、dB値としてコード化され、
前記符号化されたオーディオ信号を復号して前記オーディオ信号を取得し、
前記第1のDRCゲインセットと前記第2のDRCゲインセットとを前記オーディオ信号に適用することによって、オーディオ信号のダイナミックレンジを調整し、前記オーディオ信号に適用される前記総DRCゲインを適用する、
オーディオ信号処理装置。
【請求項3】
オーディオ信号処理装置によって実行されたときに、前記オーディオ信号処理装置に、オーディオ信号のダイナミックレンジを調整する方法を実行させるソフトウェア命令を含む非一時的コンピュータ読み取り可能記憶媒体であって、前記方法は、
符号化されたオーディオ信号とエンコーダ生成のダイナミックレンジ制御(DRC)メタデータとを含むビットストリームを受信することであって、エンコーダ生成のDRCメタデータは、複数のDRCゲインセットを含み、複数のDRCゲインセットは、前記オーディオ信号のダイナミックレンジを調整するために前記オーディオ信号に適用される総DRCゲインの第1の部分を表す第1のDRCゲインセットと、前記オーディオ信号のダイナミックレンジを調整するために前記オーディオ信号に適用される前記総DRCゲインの第2の部分を表す第2のDRCゲインセットを含み、前記第1のDRCゲインセットと前記第2のDRCゲインセットDRCゲインは、dB値としてコード化される、受信することと、
前記符号化されたオーディオ信号を復号して前記オーディオ信号を取得することと、
前記第1のDRCゲインセットと前記第2のDRCゲインセットとを前記オーディオ信号に適用することによって、オーディオ信号のダイナミックレンジを調整し、前記オーディオ信号に適用される前記総DRCゲインを適用することとを含む、
非一時的コンピュータ読み取り可能記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示される発明は、概してオーディオビジュアルメディア配信に関する。具体的に、復号中に、高いビットレートモードと低いビットレートモードの両方と、シームレスモード移行とを可能にする適応的配信フォーマットに関する。本発明は、さらに、配信フォーマットにより信号を符号化及び復号する方法とデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
パラメトリックステレオ及びマルチチャネルコーディング法は、スケーラブルであり、リスニングクオリティの点で効率的であることが知られている。これにより、これらの方法は低ビットレートアプリケーションで特に魅力的である。しかし、ビットレートの限界が一時的なもの(例えば、ネットワークジッター、付加変動など)によるものである場合、利用できるネットワーク資源の全利益は、通常の状態では比較的高いビットレートを用い、ネットワークの機能が不十分な時に低ビットレートを用いる適応的配信フォーマットの利用により得られる。
【0003】
既存の適応的配信フォーマット及び関連(デ)コーディング手法は、その帯域幅効率、計算効率、エラー復元力、アルゴリズム的遅延の観点から改善され、さらに、オーディオビジュアルメディア配信においては、復号されるメディアを楽しんでいる人に対してビットレート切り替えイベントがどのくらい気づきやすいかについて改善されている。レガシーデコーダが新しい専用機器と並行して使われ続けることが予想されることにより、後方互換性を維持しなければならない限りにおいて、かかる潜在的な改善には限界がある。
【0004】
オーディオビジュアル信号の再生中により一貫性のあるダイナミックレンジを確保するダイナミックレンジ制御(DRC)法が、本技術分野において周知である。概観のため、非特許文献1とそれで引用されている参照文献を参照されたい。かかる手法により、レシーバは、オーディオビジュアル信号のダイナミックレンジを、比較的高度化されていない再生機器に適するように合わせ、信号自体は、より洗練された機器の利益のため、フルダイナミックレンジでブロードキャストされる。DRCの単純なインプリメンテーションは、0から1までの区間のゲインファクタをエンコードするメタデータフィールドを用いる。デコーダは適用するか否かを選択できる。
【0005】
既知のDRC手法を用いて、符号化されたオーディオビジュアル信号は、再生ダイナミックレンジをユーザの好みに合うように圧縮またはブーストし、または利用可能な再生機器にダイナミックレンジをマニュアルで合わせる能力をユーザに提供するメタデータと共に送信できる。しかし、既知のDRC手法は、適応的ビットレートコーディング手法と互換性がなく、2つのビットレート間での切り替えには時としてダイナミックレンジの不一致が伴い、特にレガシー機器ではそうである。本発明はこの問題を解決する。
[関連出願への相互参照]
この出願は、2012年5月18日出願の米国仮特許出願第61/649,036号、2012年 7月25日出願の米国仮特許出願第61/664,507号、及び2012年10月12日出願の米国仮特許出願第61/713,005号の優先権を主張するものであり、上記文献はそれぞれ全体をここに参照援用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】T. Carroll and J. Riedmiller, “Audio for Digital Television”, published as chapter 5.18 of E. A. Williams et al. (eds.), NAB Engineering Handbook, 10th ed. (2007), Academic Press
【図面の簡単な説明】
【0007】
添付した図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1】本発明の一実施形態によるオーディオ符号化システムを示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態によるオーディオ復号システムを示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態によるオーディオ符号化システムを示すブロック図である。
図4】本発明の一実施形態によるオーディオ復号システムを示すブロック図である。
図5】オーディオ符号化システムにおけるパラメトリック分析段階の一部を示す図である。
図6】本発明の一実施形態によるオーディオ復号システムを示すブロック図である。
図7】本発明の一実施形態によるオーディオ符号化システムを示すブロック図である。
図8】同じ長さの時間ブロックを参照する前処理及び後処理DRCパラメータに基づく補償された後処理DRCパラメータの計算を示す図である。
図9】違う長さの時間ブロックを参照する前処理及び後処理DRCパラメータに基づく補償された後処理DRCパラメータの計算を示す図である。
図10】本発明の一実施形態によるオーディオ符号化システムを示すブロック図である。
図11】オーディオ復号システムにおけるパラメトリック合成段階の一部を示す図である。
図12】オーディオ復号システムにおけるパラメトリック合成段階の一部を示す図である。
図13】本発明の一実施形態によるオーディオ復号システムを示すブロック図である。 すべての図面は概略図であり、本発明を説明するために必要な部分のみを示し、他の部分は省略してあるか、または示唆のみしている。特に断らなければ、異なる図面であっても、同じ参照数字は同じ部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
I.概要
ここで、「オーディオ信号」とは、純粋なオーディオ信号、またはオーディオビジュアル信号やマルチメディア信号のオーディオ部分である。
【0009】
本発明の一実施形態により、帯域幅を節約する方法でオーディオビジュアルメディアの配信を可能にする方法とデバイスを提案する。特に、一実施形態により、オーディオビジュアルメディア配信用のコーディングフォーマットであってレガシー受信器及びもっと最近の機器が一貫した会話レベルを有するオーディオ部分を出力できるものを提案する。特に、一実施形態により、適応的ビットレートを有するコーディングフォーマットを提案する。ここで、2つのビットレート間の切り替えには会話レベルの急激な変化を伴う必要がない。そうでなければ、これは再生時にオーディオ信号または信号のオーディオ部分における知覚可能なアーティファクトとなってしまう。
【0010】
本発明の一実施形態により、独立請求項に記載した特徴を有する符号化方法、符号化器、復号方法、復号器、コンピュータプログラム製品、及びメディアコーディングフォーマットを提供する。
【0011】
本発明の一実施形態により、ビットストリームPに基づきnチャンネルオーディオ信号Xを再構成する復号システムを提供する。 復号システムは、少なくともパラメトリックコーディングモードで動作可能であり、次を含む:
・ 前記ビットストリームを受け取り、符号化コア信号Y(訳注:「~」は「Y」の上にある)と一以上のマルチチャンネルコーディングパラメータ(これは集合的にαと表す);
・ 前記符号化されたコア信号を受け取り、mチャンネルコア信号を出力する、ここで1≦m<nであるコア信号デコーダ;
・ 前記コア信号とマルチチャンネルコーディングパラメータとを受け取り、前記マルチチャンネルコーディングパラメータに依存するゲインを用いて前記コア信号のチャンネルの線形結合を形成することにより、前記nチャンネル信号を出力するパラメトリック合成ステージ。
【0012】
この第1の実施形態では、前記ビットストリームはさらに一以上の前処理DRCパラメータDRC2を含み、これは前記ビットストリームを生成したエンコーダで行われたダイナミックレンジ制限を定量的に特徴付けるものである。 前記復号システムは、前記前処理DRCパラメータに基づき、前記エンコーダ側ダイナミックレンジ制限をキャンセルするように動作可能である。好ましくは、前記信号は時間ブロックにパーティションされ、前処理DRCパラメータDRC2は信号の一時間ブロックの分解能で確定される。そうであるから、パラメータDRC2の各値は少なくとも一時間ブロックに適用され、各時間ブロックをその時間ブロックに特有の値と関連づけることが可能である。本発明の範囲から逸脱することなく、パラメータDRC2の値は、連続した複数のブロックにわたり一定であってもよい。例えば、パラメータDRC2の値は、各時間フレームで1回だけ更新され、それゆえ、パラメータDRC2が一定である複数の時間ブロックを含む。
【0013】
第1の実施形態により利点は、前処理DRCパラメータDRC2が、復号システムに、エンコーダが、理由はどうであれ、ダイナミックレンジ制限(または圧縮)をした時間において、オーディオ信号をその元のダイナミックレンジに回復するオプションを提供する。回復は、ダイナミックレンジ制限のキャンセルすることになり、すなわち、ダイナミックレンジを拡大(またはブースティング)することになる。エンコーダにおいてダイナミックレンジを制限する理由の1つは、クリッピングの回避である。回復がされるか否かは、例えば、マニュアル入力されたユーザ入力、自動的に検出された再生機器の特性、外部情報源から得た目標DRCレベル、またはその他の要因に依存する。目標DRCレベルは、復号システムに適用される、(後処理DRCパラメータDRC1により定量化された)元の後処理ダイナミックレンジ制御の一部を表す。それは、適用されるDRCの大きさを、DRC1からf×DRC1(対数単位)に修正するパラメータf∈[0,1]により表される。
【0014】
単純なインプリメンテーションでは、DRC2パラメータは、すでに信号が受けた相対的振幅減少を定量化する正のdB値として、対数形式で表されたブロードスペクトル(すなわちブロードバンド)ゲイン計数の形式で符号化される。よって、DRC2=x>0とすると、エンコーダ側における相対的振幅変化は
【数1】
であり、キャンセレーションには、信号をデコーダ側において10+x/20>1だけスケーリングすることを含む。
【0015】
実際のキャンセルは、目標DRCレベルと入力DRCレベル(またはデコーダ入力DRCレベル)に応じて、すなわちダイナミックレンジ圧縮やダイナミックレンジブースティングがない再構成後にnチャンネルオーディオ信号が有するであろうDRCレベルに、完全にまたは部分的に行われる。入力DRCレベルは、元のダイナミックレンジを、前処理DRCパラメータDRC2に対応する大きさだけ減宿されたものである。目標DRCレベルは、元のダイナミックレンジをパラメータfと後処理DRCパラメータDRC1の積、すなわちf×DRC1(対数単位)に対応する大きさだけ減宿したものであってもよい。前述の単純なインプリメンテーションにおいて、f×DRC1<DRC2という条件は、部分的な、すなわちDRC2ではなくDRC2-×DRC1に対応する大きさだけのキャンセルを示す。例えば、目標DRCレベルが入力DRCレベル(例えば、ビットストリームを生成するエンコーダにより元々符号化されたオーディオ信号のダイナミックレンジ)に対応する場合、これはf=0と表せるが、そのときは、DRC2の大きさだけ完全なキャンセルが必要である。0<f<1かつf×DRC1<DRC2の場合のように、目標DRCレベルが入力DRCレベルより小さいとき、ダイナミックレンジ制限を部分的にキャンセルすれば十分である。目標DRCレベルが入力DRCレベルより大きいとき、すなわちf×DRC1>DRC2であるとき、指定されたDRCレベルはデコーダでさらなるダイナミックレンジ圧縮、すなわちf×DRC1-DRC2に対応する大きさだけダイナミックレンジ圧縮を行うことにより達成できる。この場合、最初に前処理DRCをキャンセルする必要はない。最後に、目標DRCレベルが、f=1で表されるように、DRC1により定量化されたフルDRCである場合、エンコーダ側ダイナミックレンジ制限の部分的キャンセレーションまたはさらなる圧縮を行うかは、DRC1<DRC2であるかDRC1>DRC2であるかに依存する。
【0016】
第2の実施形態において、ビットストリームに基づいてnチャンネルオーディオ信号Xの再構成をする方法が提供される。本方法によると、符号化コア信号Y(訳注:「~」は「Y」の上にある)と、一以上のマルチチャンネルコーディングパラメータαと、前処理DRCパラメータDRC2とのそれぞれを含むビットストリームの受信により次の動作がトリガーされる:
・前記符号化コア信号をmチャンネルコア信号に復号する、1m<nであるステップと、
・パラメトリック合成を行い、前記コア信号と前記マルチチャンネルコーディングパラメータとに基づき前記nチャンネル信号を再構成するステップ。
【0017】
第2の実施形態では、復号は、パラメータDRC2に基づくエンコーダ側ダイナミックレンジ制限のキャンセルを含む。
【0018】
第1と第2の実施形態は、機能的に同様であり、概して同じ利点を共有している。
【0019】
第1の実施形態のさらなる展開において、復号システムは、さらに、ビットストリームの一部として、システムがパラメトリックコーディングモードであるうちに、一以上の補償された後処理DRCパラメータDRC3を受け取る。これはデコーダにより適用されるDRCを定量化したものである。DRCの適用は、マニュアルユーザ入力、自動的に検知された再生機器の特性などによる。そのため、デコーダにより適用されるDRCは、完全に、部分的に作用され、または全く作用されない。一般的に言って、前処理DRCパラメータDRC2は、入力DRCレベルに対してダイナミックレンジをブーストするのに有用であり、一方、補償された後処理DRCパラメータDRC3は、レンジ圧縮も含め、ダイナミックレンジに入力DRCレベルから調整をするのに有用である。DRC3パラメータは、正または負のdB値として対数形式で表し得る。よって、DRC3=y>0、デコーダ側にける相対的振幅変更は
【数2】
に比例する。これは(0,1)におけるスカラーである。逆に、DRC3が負値である場合、デコーダ側でアップスケーリングがなされる。
【0020】
上記のさらに別の発展において、復号システムは、パラメータDRC2に基づきエンコーダ側ダイナミックレンジ圧縮をキャンセルするように動作可能なDRCプロセッサを含む。任意的には、DRCプロセッサは、上記のパラメータfにより表される、エンコーダ側で適用されたダイナミックレンジ圧縮の一部をキャンセルするように動作可能である。
【0021】
さらに別の展開では、復号システムは、さらに、DRCプロセッサとコア信号デコーダとを制御し、目標DRCレベルを達成するDRCプリプロセッサを含む。それゆえ、DRCプリプロセッサは、目標DRCレベル(例えば、f×DRC1)が入力DRCレベルより大きいか小さいか、決定する。入力DRCレベルは、元に符号化され、前処理DRCパラメータDRC2により定量化されたエンコーダ側DRCにより減宿されたオーディオ信号のダイナミックレンジである。この決定の結果に基づいて、復号されたオーディオ信号をブーストする必要があれば、DRCプリプロセッサは、(i)DRCプロセッサに、エンコーダ側ダイナミックレンジ制限を部分的にまたは完全にキャンセルするように指示する。復号されたオーディオ信号を圧縮する必要がある場合(例えば、f×DRC1>DRC2)、DRCプリプロセッサは、DRCプロセッサに、(ii)パラメータDRC3により定量化された、適用されるデコーダ側DRCを部分的にまたは完全に行うように指示する。目標DRCレベルが入力DRCレベルから大きく違わないとき
【数3】
DRCプリプロセッサは何もする必要はない。通常動作において、両動作(i)と(ii)は同じ時間ブロックに対して行われない。
【0022】
一実施形態では、復号システムは、さらに、離散復号モードにおいて、符号化nチャンネル信号X(訳注:「~」は「X」の上にある)を含むビットストリームに基づきオーディオ信号を再構成する。よって、この実施形態は、デュアルモードまたはマルチプルモード復号システムとなる。適応的コーディングの観点から、離散コーディングモードは、高ビットレートモードを表し、一方、パラメトリックコーディングモードは、一般的に低ビットレートモードに対応する。
【0023】
一実施形態では、復号システムは、デュアルモードタイプであり、すなわち、パラメトリックコーディングモードまたは離散コーディングモードで動作する。復号システムは、これらのモードの各々においてデコーダ側DRCを適用することが可能である。離散コーディングモードでは、復号システムは、後処理DRCパラメータDRC1を、DRCのガイドとして用いる。しかし、パラメトリックコーディングモードでは、nチャンネルオーディオ信号は、少なくとも幾つかの時間ブロックでは、エンコーダ側のダイナミックレンジ制限に関して潜在的に求められたコア信号に基づき生成される。すでに行われたダイナミックレンジ変更(すなわち、幾つかの時間ブロックにおけるダイナミックレンジ制限)に対応する(account for)ため、復号システムは、補償された後処理DRCパラメータDRC3をDRCに対するガイドとして用いる。両パラメータDRC1とDRC3はビットストリームから導かれるが、システムの通常動作時には、両方ではなくどちらかのパラメータタイプだけが時間ブロックで導ける。両パラメータDRC1とDRC3を含むと、パラメータDRC2がある時には、冗長な情報を送信することになる。この実施形態の復号システムは、パラメータDRC2を用いて、パラメータDRC1をパラメータDRC3のスケールに合わせること、またはパラメータDRC3を、DRC1のスケールに合わせる。例えば、復号システムは、パラメータDRC2とDRC3を受け取り、それに基づき、デコーダシステムにより適用される回復された後処理DRCパラメータを出力するDRCダウン補償器を含む。回復された後処理DRCパラメータは、後処理DRCパラメータDRC1と(同じスケールで)比較される。言い換えると、前記回復されたDRCパラメータにより表されるデコーダ側DRCは、前記コア信号のエンコーダ側ダイナミックレンジ制限と、前記補償された後処理DRCパラメータにより表されるデコーダ側DRCとの結合と数量的に等価である。上記の単純なインプリメンテーションにおいて、各DRCパラメータ間の関係は次の通りである:回復されたDRCパラメータがDRC2+DRC3として得られ、これはDRC1に等しい。
【0024】
本発明の第2の態様において、一実施形態は、時間ブロックにパーティションされたnチャンネルオーディオ信号XをビットストリームPとして符号化する符号化システムが提供される。該符号化システムは、
・前記nチャンネル信号を受け取り、それに基づいて、前記符号化システムのパラメトリックコーディングモードで、mチャンネルコア信号Yと一以上のマルチチャンネルコーディングパラメータαとを出力する、1m<nである、パラメトリック分析ステージと、
・前記コア信号を受け取り、符号化コア信号Y(訳注:「~」は「Y」の上にある)を出力するコア信号エンコーダ。
【0025】
符号化システムにおいて、前記パラメトリック分析ステージは、時間セグメントベースの適応的ダイナミックレンジ制限を行い、適用される前記ダイナミックレンジ制限を数量化する前処理DRCパラメータDRC2を出力する。時間セグメントは一時間ブロックまたは連続した複数の時間ブロック(例えば、6つの時間ブロックを含む時間フレーム)であり得る。符号化システムは、前処理DRCパラメータDRC2を、ビットストリームと共に(必ずしも必要ではないが好ましくはその一部として)送信するように構成されている。前処理DRCパラメータDRC2を送信することにより、符号化システムは、復号システムに、ビットストリームを受信して、パラメトリック分析ステージがコア信号に課したダイナミックレンジ制限をキャンセルできるようにする。時間ブロックベースでダイナミックレンジ制限が行われると、パラメータDRC2は時間ブロックの解像度を有する。あるいは、ダイナミックレンジ制限をフレームベースで行うと、パラメータDRC2は一フレームの解像度を有する。言い換えると、各時間ブロックは、パラメータDRC2の値と関連づけられ、または前に確定された値を参照するが、しかしこの値はフレームベースまたはブロックベースで更新できる。さらに、パラメトリック分析ステージにおけるダイナミックレンジ制限は、(例えば、コア信号にダイナミックレンジ制限を適用することにより)コア信号に直接的に、または(例えば、コア信号が求められる信号にダイナミックレンジ制限を適用することにより)間接的に、行われる。
【0026】
前述の実施形態のさらなる展開において、符号化システムは、パラメトリックコーディングモードと離散コーディングモードで動作できる。デコーダ側でDRCをイネーブルするため、エンコーダは、適用するデコーダ側DRCを定量化した一以上の前処理を求めるように構成されている。パラメータDRC1は離散コーディングモードで動作する。しかし、パラメトリックコーディングモードでは、パラメータDRC1は、パラメトリック分析ステージですでに行われたダイナミックレンジ制限を考慮するため、補償される。この圧縮プロセスの出力は、補償された後処理DRCパラメータDRC3を含む。本補償プロセスのガイド原理は、後処理DRCパラメータにより表されるデコーダ側DRCが、(パラメータDRC2により定量化される)パラメトリック分析ステージと、(補償された後処理DRCパラメータDRC3により定量化される)デコーダ側DRCとにより適用されるダイナミックレンジ制限の組み合わせと定量的に等価であることである。好ましくは、3つのパラメータタイプは、例えば対応する線形または対数単位を用いて、すべて互換性のあるスケールで表される。上記の単純なインプリメンテーションにおいて、各DRCパラメータ間の関係は(依然として対数スケールで)次の通りである:補償された後処理DRCパラメータがDRC1-DRC2として求められる。
【0027】
第2の態様のさらに別の一実施形態では、符号化方法は、次のステップを含む:
・時間ブロックにパーティションされたnチャンネルオーディオ信号Xを受け取るステップ;
・mチャンネルコア信号Yと一以上のマルチチャンネルコーディングパラメータαとを生成し、一方、時間ブロックベースでダイナミックレンジ制限を行い、適用されたダイナミックレンジ制限を定量化した一以上の前処理DRCパラメータDRC2を生成するステップ;
・コア信号と、マルチチャンネルコーディングパラメータと、前処理DRCパラメータDRC2とを含むビットストリームPを出力するステップ。
【0028】
さらに別の実施形態では、上記の実施形態による復号方法または符号化方法を実行するコンピュータ実行可能命令を有するコンピュータ読み取り可能媒体を含むコンピュータプログラム製品を提供する。コンピュータプログラム製品は汎用コンピュータで実行できる。汎用コンピュータは必ずしも専用ハードウェアコンポーネントを含まない。
【0029】
さらに別の実施形態では、本発明は、オーディオ信号の記憶または送信用のデータ構造を提供する。この構造は、mチャンネルコア信号Yと、一以上のミキシングパラメータαと、エンコーダ側ダイナミックレンジ制限を定量化した一以上の前処理DRCパラメータDRC2とを含む。この構造は、ダウンミックス信号チャンネルのnチャンネル線形結合(及び場合によっては、非相関信号のチャンネルの線形結合)により(前記一以上のミキシングパラメータは、少なくともその線形結合のゲインを制御する)、及びエンコーダ側ダイナミックレンジ制限をキャンセルすることにより、復号をすることができる。具体的に、本発明は、上記データ構造により構成された情報を記憶するコンピュータ読み取り可能媒体を提供する。上記データ構造では、前処理DRCパラメータDRC2は、指数を表す3ビットフィールド及び仮数を表す4ビットフィールドとして符号化される。復号時、指数と仮数は結合され、ゲイン値に対応するスカラー値になる。あるいは、前処理DRCパラメータDRC2は、指数を表す2ビットフィールドと仮数を表す5ビットフィールドとして符号化される。
【0030】
さらに別の実施形態は従属項に規定した。特筆しておくが、本発明は、相互に異なる請求項に記載されていたとしても、特徴のすべての組み合わせに関する。
II.実施形態:符号化側
図1aは、一般化したブロック図形式で、一実施形態によるデュアルモード符号化システム1を示す。nチャンネルオーディオ信号Xを、上部(これは符号化システム1の少なくとも一離散的コーディングモードでアクティブである)及び下部(これはシステム1の少なくともパラメトリックコーディングモードでアクティブである)の各々に供給する。
【0031】
上部は、一般的に、離散モードDRCアナライザ10が符号化器11と並列に配置され、両者は入力としてオーディオ信号Xを受ける。この信号に基づき、エンコーダ11は符号化nチャンネル信号X~(訳注:「~」は「X」の上にある)を出力する。これに対し、DRCアナライザ10は、適用される復号器側DRCを定量化する一以上の後処理DRCパラメータDRC1を出力する。両ユニット10、11からの並列出力は、離散モードマルチプレクサ12により集められる。離散モードマルチプレクサ12はビットストリームPを出力する。
【0032】
符号化システム1の下部は、パラメトリック分析ステージ22がパラメトリックモードDRCアナライザ21と並列して配置され、パラメトリック分析ステージ22としてnチャンネルオーディオ信号Xを受け取る。パラメトリック分析ステージ22は、nチャンネルオーディオ信号Xに基づき、一以上のマルチチャンネルコーディングパラメータ(集合的にαと記す)と、mチャンネル(1≦m<n)コア信号Yとを出力する。mチャンネルコア信号Yは、次にコア信号符号化器23により処理される。コア信号符号化器23は、mチャンネルコア信号Yに基づき、符号化コア信号Y~(訳注:「~」は「Y」の上にある)を出力する。「g↓」との表記で示したように、パラメトリック分析ステージ22は、必要に応じて、時間ブロックにおける動的範囲制限を行う。動的範囲制限をいつ適用するか制御する可能性のある条件は、「ノンクリップ(non-clip)条件」または「インレンジ(in-range)条件」であり、これらはコア信号の振幅が大きい時間セグメントにおいて、信号が確定された範囲内に入るように信号が処理される。この条件は一時間ブロックまたは複数の時間ブロックよりなる一時間フレームに基づき実施される。好ましくは、この条件は、ピーク値のみを切り捨てたり同様のアプローチを用いるのではなく、ブロードスペクトル・ゲイン低減を用いることにより、実施される。本技術分野においてそれ自体周知であるように、ある複数の時間ブロックのみで制限が必要な場合、その制限を徐々にかけて及び/または無くしていくなどのように、一時的なダイナミックレンジ制限操作を気づきにくいようにレンダリングする手法がある。特に、システム1はDRCパラメータをスムース化するように構成されたフィードバックループ(図示せず)を含んでいてもよい。例えば、出力する現在のパラメータ値は、前のセグメントのパラメータ値の一部0<a<1と、現在のセグメントの「ノンクリップ条件」の実施の結果であるパラメータ値の一部(1-a)との和として得られる。処理後DRCパラメータDRC1と、処理前DRCパラメータDRC2とは、もちろん、独立にスムース化され、異なる定数aが使われる。
【0033】
図5は、パラメトリック分析ステージ22の可能性のあるインプリメンテーションを示し、これはプリプロセッサ527とパラメトリック分析プロセッサ528とを含む。プリプロセッサ527は、nチャンネル信号Xに動的レンジ制限を行う役割を有し、それによりダイナミックレンジ制限nチャンネル信号Xcを出力する。信号Xcはパラメトリック分析プロセッサ528に供給される。プリプロセッサ527は、さらに、処理前DRCパラメータDRC2のブロックまたはフレームの値を出力する。パラメータDRC2は、マルチチャンネルコーディングパラメータαとパラメトリック分析プロセッサ528からのmチャンネルコア信号Yとともに、パラメトリック分析ステージ22からの出力に含まれる。
【0034】
再び図1aを参照して、離散モードDRCアナライザ10は、用いられる復号器側を定業かする一以上の後処理DRCパラメータDRC1を出力する点で、パラメトリックモードDRCアナライザ21と同様に機能する。しかし、パラメトリックモードDRCアナライザ21により供給されるパラメータDRC1は、パラメトリックコーディングモードのビットストリームには含まれないが、パラメトリック分析ステージ22により行われるダイナミックレンジ制限が考慮されるように補償を受ける。この目的のため、DRCアップ補償器24は後処理DRCパラメータDRC1と前処理DRCパラメータDRC2とを受け取る。各時間ブロックについて、DRCアップ補償器24は、一以上の補償後後処理DRCパラメータDRC3の値を求める。これは、補償された後処理DRCパラメータDRC3と前処理DRCパラメータDRC2を組み合わせたアクション(combined action)が後処理DRCパラメータDRC1により定量化されたDRCと定量的に等しいようになっている。言い方を変えると、DRCアップ補償器24は、DRCアナライザ21により出力される後処理DRCパラメータを、すでにパラメトリック分析ステージ22により行われている分だけ(もしあれば)、低減するように構成されている。ビットストリームに含まれるべきものは、補償された後処理DRCパラメータDRC3である。引き続きシステム1の下部を参照して、パラメータモードマルチプレクサ25は、補償された後処理DRCパラメータDRC3、前処理DRCパラメータDRC2、マルチチャンネルコーディングパラメータα及び符号化コア信号Y~(訳注:「~」は「Y」の上にある、以下同様)を集めて、それらに基づきビットストリームPを形成する。可能性のあるインプリメンテーションにおいて、補償された後処理DRCパラメータDRC3と前処理DRCパラメータDRC2は、復号器側で振幅のアップスケーリングまたはダウンスケーリングに影響するdB値として、対数形式で符号かされる。補償された後処理DRCパラメータDRC3の符号は任意の符号を有する。しかし、前処理DRCパラメータDRC2は、「ノンクリップ条件」等の実施の結果であり、いつでも非負dBにより表される。
【0035】
符号化システム1の上部と下部の両方に共通して、セレクタ26(ハードウェアまたはソフトウェアでインプリメントされた任意の信号選択手段を記号化している)は、実際のコーディングモードに応じて、符号化システム1の上部または下部からのビットストリームが符号化システム1からの最終的出力を構成するか、判断する。同様に、システム1の入力側には、オーディオ信号Xをシステム1の上部または下部のどちらかに向けるスイッチ(図1aには図示せず)が設けられている。入力側スイッチは出力側スイッチ26と対応して起動され得る。
【0036】
図1a及び以下に説明する図を参照して、ビットストリームPはドルビーデジタルプラス(DD+またはE-AC-3、エンハンストAC-3)に即したフォーマットで符号化できる。ビットストリームは少なくともメタデータフィールドdynrng及びcomprを含む。DD+の一仕様によれば、dynrngは一時間ブロックの分解能を有し、他方comprは一フレームの分解能を有する。一フレームは4ないし6の時間ブロックを有する。これらのメタデータフィールドの重要性に関して、上で定義した後処理DRCパラメータDRC1は、例えば、「強い圧縮(heavy compression)」が起動されているかに応じて、モノフォニックダウンミックスがあるピークレベルを超えないことを保証する方法で機能するdynrngまたはcomprのどちらかに対応する。通常の環境では、dynrngとcomprフィールドの両方とも送信され、どちらを使うか決定するのは復号器の問題である。よって、後処理DRCパラメータDRC1は、ブロックの分解能かフレームの分解能かのいずれかを有するが、フォーマットのレガシー部分で送信でき、レガシーな復号器により理解される。しかし、前処理DRCパラメータDRC2は、DD+フォーマット中に対応するものが無く、好ましくは新しいメタデータフィールドに符号化される。前処理DRCパラメータDRC2は、信号が5.1フォーマット(n=6)からステレオフォーマット(m=2)にダウンミックスされたとき、信号がクリップされないことを保証するdynrng及び/またはcomprの部分に関することが思い起こされる。保証された後処理DRCパラメータDRC3は、前処理DRCパラメータDRC2により定量化されたクリップ防止を推論することによりdynrngまたはcompr値を補償した後の結果である;それゆえDD+ビットストリーム中のdynrngまたはcomprフィールドで送信される。
【0037】
前処理DRCパラメータDRC2の新しいメタデータフィールドは7ビット(xxyyyyy)あり、xの位置にあるビットは[0,3]の整数を表し、yの位置にあるビットは[0,31]の整数を表す。前処理DRCパラメータDRC2はゲインファクタ
【数4】
として得られる。
【0038】
さらに別のDD+フォーマットのメタデータパラメータはdialnormである。これはコンテンツの(場合によっては時間平均した)ラウドネスレベルである。実施形態では、ターゲット出力参照レベルLTは、場合によってはユーザにより制御される、復号器構成における設定である。ターゲット出力参照レベルLTを実現するため、復号システムは、差異dialnorm-LTにより定量化される静的な減衰を適用する。適用する総減衰を求めるため、復号システムは、この差異を、(補償されていない)後処理DRCパラメータDRC1により、または補償された後処理DRCパラメータDRC3により、または後処理DRCパラメータの一部f×DRC1として表されるターゲットDRCにより、規定される追加的減衰だけ増加させる。これにより、それぞれdialnorm-+DRC1またはdialnorm-L+DRC3またはdialnorm-+f×DRC1が得られる。これらの3つの線形結合の一つが正符号であれば、総減衰の非ゼロ量を復号システムに適用し、負符号であれば、信号は効果的にブーストされる。
【0039】
図7は、さらに別の一実施形態による、図1aに示した符号化システム1と同様に機能する符号化システム701を示す。同様の参照記号を用い、信号に関する表記は図1aと一貫しているので、符号化システム701の動作原理の詳細な説明は必要ないと思われる。しかし、重要な差異の1つは、1つのDRCアナライザ721が、図1aの離散モードDRCアナライザ10とパラメトリックモードDRCアナライザ21の両方のタスクを満たすことである。この目的のため、DRCアナライザ721は、符号化システム701により符号化されるnチャンネルオーディオ信号Xを受け取る。DRCアナライザ721は、nチャンネルオーディオ信号Xに基づき生成される後処理DRCパラメータDRC1を、離散モードマルチプレクサ712とDRCアップ補償器724との両方に供給する。DRCアップ補償器724は、図1aの符号化システム1のDRCアップ補償器24と機能的に等価である。
【0040】
図3は、符号化システム301を示す。これは後処理DRCパラメータを出力として生成しないという限りにおいて、図1aに示したものより比較的単純である。それため、符号化システム301により生成されるビットストリームPを受信する復号器は、必ずしもダイナミックレンジ圧縮を行えなくてもよい。しかし、かかる復号器は、符号化システム301により適用されたダイナミックレンジ制限をキャンセルすることができる。典型的には、これは、nチャンネルオーディオ信号Xが比較的高い振幅ピークを含む時間ブロックのダイナミックレンジを大きくすることである。
【0041】
図3において、符号化システム301の上部は、符号化システム301の少なくとも離散コーディングモードにおいてアクティブであり、システム301により符号化されるnチャンネル信号Xに基づき符号化されたnチャンネル信号X(訳注:「~」は「X」の上にある)を提供するように構成された符号化器311以外を含む必要はない。下部は、離散コーディングモードに対応し、図1aに示した符号化システムのアナログ部分より少ないコンポーネントしか含まず、すなわちnチャンネルオーディオ信号Xに基づき、前処理DRCパラメータDRC2、マルチチャンネルコーディングパラメータα及びmチャンネルコア信号Yを出力するパラメータ分析ステージ322しか含まない。コア信号Yがコア信号エンコーダ323(コア信号Yを符号化コア信号Y(訳注:「~」は「Y」の上にある)に変換する)で処理された後、パラメトリック分析ステージ322からの出力セットはパラメトリックモードマルチプレクサ325により合成されビットストリームPになる。符号化システム301の上部及び下部の両方の下流に配置されたセレクタ326は、符号化システム301の現在のコーディングモードに応じて、上部と下部のどちらかにより生成されたビットストリームを出力する役割を果たす。
【0042】
図10に示す符号化システム1001ではさらなる単純化を示す。この符号化システム1001は、さらに符号化操作を行わなくても記憶や伝送に適するフォーマットであるnチャンネルオーディオ信号Xを処理するように構成されている。それゆえ、離散コーディングモードでは、図10に示したセレクタ1026の位置により示されるように、オーディオ信号Xは別段の処理をされずに符号化システム1001から出力される。パラメトリックコーディングモードでは、パラメトリック分析ステージ1022がnチャンネルオーディオ信号Xを分析して、前処理DRCパラメータDRC2、マルチチャンネルコーディングパラメータα及びmチャンネルコア信号Yを出力する。上記の通り、パラメトリック分析ステージ1022は、nチャンネルオーディオ信号が伝送や記憶に適したフォーマットである場合にも、そのnチャンネルオーディオ信号に作用するように構成されている。図10の符号化システム1001では、コア信号Yは、伝送または記憶ができるフォーマットであり、パラメトリックコーディングモードでは、この信号が、マルチチャンネルコーディングパラメータα及びパラメータDRC2とともに、パラメトリックモードマルチプレクサ1025により合成され、ビットストリームとなり、符号化システム1001から出力される。
【0043】
図1bは、一実施形態によるシングルモード符号化システムを示す。nチャンネルオーディオ信号XはDRCアナライザ21とパラメトリック分析ステージ22と(両者は並列に配置されている)に提供される。パラメトリック分析ステージ22は、nチャンネルオーディオ信号Xに基づき、一以上のマルチチャンネルコーディングパラメータ(集合的にαと記す)と、mチャンネル(1≦m<n)コア信号Yとを出力する。mチャンネルコア信号Yは、次にコア信号符号化器23により処理される。コア信号符号化器23は、mチャンネルコア信号Yに基づき、符号化コア信号Y(訳注:「~」は「Y」の上にある)を出力する。パラメトリック分析ステージ22は、ダイナミックレンジ制限を、これが必要な時間ブロックに作用させる。DRCアップ補償器24は、後処理DRCパラメータDRC1と前処理DRCパラメータDRC2とを受け取る。各時間ブロックについて(この例では、後処理DRCパラメータDRC1の値が生成される分解能が1つの時間ブロックである)、DRCアップ補償器24は、一以上の補償された後処理DRCパラメータDRC3の値を求める。これは、補償された後処理DRCパラメータDRC3と前処理DRCパラメータDRC2の合成動作が、後処理DRCパラメータDRC1により定量化されるDRCと量的に等しくなるようなものである。
【0044】
図8は、図1図7のDRCアップ補償器24、724の可能性のある機能をより詳細に示している。各DRCアップ補償器24、724は、前処理DRCパラメータDRC2と後処理DRCパラメータDRC1とに基づいて、補償された後処理DRCパラメータDRC3を生成するように構成されている。各バーは信号の時間フレームを示す。毎回、フレームは前処理DRCパラメータDRC2の値及び後処理DRCパラメータDRC1の値と関連づけられる。図8及び9では、これらは負の符号を有するdBFS単位である。凡例が示すように、実線は後処理DRCパラメータDRC1を示し、その他の2つのDRCパラメータ値婦は異なる網掛けパターンに対応している。補償された後処理DRCパラメータDRC3の各値は、前処理DRCパラメータDRC2と補償された後処理DRCパラメータDRC3との合成動作が、後処理DRCパラメータDRC1により表されるデコーダ側DRCに定量的に等しいとの条件に基づいて生成される。図8図9は単純化されており、具体的なアプローチ(すなわち、上記のCarroll及びRiedmillerの論文)によるDRCの効果はスカラー、すなわち線形量により忠実にしめされていない。図8図9は、DRCパラメータがスカラーとして符号化された上記の単純化された実施形態の完全なピクチャを示しているだろう。
【0045】
図8は、後処理DRCパラメータDRC1が、上記の通り、DD+フォーマットのcomprパラメータと同様に、各時間フレーム内で一定である状態を示す。必ずしもこういう場合だけではない。例えば、レガシータイプのDRCアナライザは、一定数のp1時間ブロックを有するセグメントを分析するように構成されている。ここで、p1は、一般的に番組(例えば、ラジオ番組の歌、トラック、エピソード)全体中にある時間ブロックの数より大幅に少ない4、6、8、16、24、32、64その他の整数に等しい。この数p1は、前処理DRCパラメータの各アップデート間のフレームの数p2とは一致してもしなくてもよい。図8は、p1=6かつp2=6である具体的な場合を示す。好ましくは、後処理DRCパラメータDRC1が、オーディオ信号Xの少なくとも1秒に一回ずつ、より好ましくはオーディオ信号Xの1秒に数十ないし数百回ずつ、再評価されるのに十分なくらい小さい。
【0046】
図9は、DD+フォーマットのdynrngパラメータと同様に、p1=1の場合を示す。しかし、パラメトリック分析ステージ22、722のダイナミックレンジ制限は一度にp2=6つの時間ブロックに基づいて行われ、6時間ブロックごとに前処理DRCパラメータDRC2の新しい値が生成されるようになっている。細い各バーは一時間ブロックを表す。アップ補償器24、724は、後処理DRCパラメータDRC1により表される復号器側DRCが、各時間ブロックにわたる各パラメータ分析ステージ22、722により適用されるダイナミックレンジ制限と、補償された後処理DRCパラメータDRC3により数量化された復号器側DRCとの組み合わせに数量的に等しいように、補償された後処理DRCパラメータDRC3の各値を決定するように構成されている。
III.実施形態:復号器側
図2aは、ビットストリームPに基づきnチャンネルオーディオ信号を再構成するシングルモード復号システム51を示す。ビットストリームPは、符号化コア信号Y(訳注:「~」は「Y」の上にある)、マルチチャンネルコーディングパラメータα、前処理DRCパラメータDRC2、及び補償された後処理DRCパラメータDRC3を含み、これらの量は復号システム51の入力に配置されたデマルチプレクサ70により、ビットストリームから抽出される。コア信号復号器71は、符号化コア信号Y(訳注:「~」は「Y」の上にある)を受信し、それに基づき、mチャンネルコア信号Y(1≦m≦n)を出力する。復号に関して、コア信号復号器71は、さらに、復号された後処理DRCパラメータDRC3により数量化されたDRCを実行する。コア信号復号器71は、補償された後処理DRCパラメータDRC3またはその一部分により表されるフルDRCを生じさせるように動作する。この決定は、ユーザによりマニュアル制御されてもよいし、再生機器の特性の検出に基づいてもよい。コア信号デコーダ71の下流には、DRCプロセッサ74が配置され、g↑との表示が示すように、前処理DRCパラメータDRC2で定量化されている、符号化器側で科されたダイナミックレンジ制限をキャンセルすることにより、コア信号のダイナミックレンジを回復する。DRCプロセッサ74は、中間信号YCを出力する。これは、ダイナミックレンジを除けばコア信号Yと同じであり、パラメトリック合成段階72に入力される。パラメトリック合成ステージ72は、中間信号YC中のmチャンネルのnチャンネル線形結合を形成し(適用されるゲインはマルチチャンネルコーディングパラメータαにより制御される)、再構成されたnチャンネルオーディオ信号Xを出力する。パラメトリック合成ステージ72の線形結合は、中間信号YCまたはコア信号Yから得られる非相関信号(decorrelated signal)をさらに含む。非相関信号は、さらにアーティファクト減衰などの非線形処理をされる。非相関信号は、コア信号修正ユニットまたはデコリレータ(decorrelator)(図示せず)で生成され得る。概要を上記した単純な実施形態では、符号化器側で科されたダイナミックレンジ制限のDRCプロセッサ74におけるキャンセレーションは、信号を広いスペクトル範囲で、前処理ダイナミックレンジ制限を定量化するパラメータDRC2の逆数に対応する係数だけスケーリングするということになる。
【0047】
図2bは、復号システム51を示す。これは図2aの復号システムより少し進化したものである。本復号システム51には、DRCプリプロセッサ77が設けられている。これはコア信号復号器71とDRCプロセッサ74のDRC関係の動作をそれぞれ調整する。一方で、コア信号デコーダ71は、信号のダイナミックレンジを、補償された後処理DRCパラメータDRC3により確定される限度まで圧縮し、またはダイナミックレンジを圧縮するように動作可能である。他方、DRCプロセッサ74は、ダイナミックレンジを完全に符号化前のレベルまで、または部分的に、大きくするように動作可能である。この設定により、一般的には、コア信号デコーダ71とDRCプロセッサ74の一方のみのDRC処理をアクティブにすることにより、ある目標DRCレベルを達成可能である。補償された後処理DRCパラメータDRC3がダイナミックレンジ圧縮を示す場合、両方のユニットを同時に動作させることは、ある程度の相互的反作用(mutual counter-action)(相互キャンセレーション)があることを示唆し、これは出力の品質に負のインパクトを与えるおそれがある。
【0048】
DRCプリプロセッサ77は、前処理DRCパラメータDRC2と、補償された後処理DRCパラメータDRC3との両方を受け取る。DRCプリプロセッサ77は、さらに、所定のまたは可変の(例えば、ユーザ指定の)DRC目標レベルにアクセスできる。これは、パラメータf(例えば、f×DRC1)と、DRC2から得られる元のダイナミックレンジに対応する信号の入力DRCレベルにより表される。DRCプリプロセッサ77は、2つのDRCレベルの比較に基づいて、コア信号デコーダ71におけるダイナミックレンジ圧縮により、またはDRCプロセッサ74におけるダイナミックレンジのブースティング(boosting)により、DRC目標レベルが達成できるか、決定する。この目的のため、DRCプリプロセッサ77は、復号された制御信号k71、k74を出力する。これらはコア信号デコーダ71とDRCプロセッサ74のそれぞれに供給される。
【0049】
DRCプリプロセッサ77からコア信号デコーダ71とDRCプロセッサ74に供給される制御信号k71、74の振る舞いをここで説明する。第1の制御信号k71は、補償された後処理DRCパラメータDRC3により定量化されたデコーダ側DRCのどれだけがコア信号デコーダ71により適用されるか制御する。前述の単純な実施形態では、結果である相対的ゲイン変化は、係数
【数5】
により与えられ、最大値k71=1が最大ダイナミックレンジ圧縮に対応し、一方最小信号値はダイナミックレンジ圧縮が無いことに対応するようになっている。第2の制御信号k74は、DRCプロセッサ74がエンコーダ側ダイナミックレンジ制限をキャンセルする程度を制御する。上記の単純な実施形態では、DRC74はゲインを係数
【数6】
だけ変更する。ここで、最小値k74=0はキャンセレーションしないことに対応し、最大値は完全にキャンセレーションして、元のダイナミックレンジを100%回復することに対応する。DRCプリプロセッサ77は、量DRC2により低減(または圧縮)された元のダイナミックレンジとして理解される入力DRCレベルに関してダイナミックレンジブーストまたはダイナミックレンジ圧縮に対応するかどうかに応じて、目標DRCレベルを実行するように構成されている。さらにまた、DRCプリプロセッサ77は、前処理DRCパラメータDRC2の一部または補償された後処理DRCパラメータDRC3に対応する、目標DRCレベルを達成するために、最小値と最大値との間を補間するように構成されている。補間を用いて、補償されていない後処理DRCパラメータDRC1の一部として表された目標DRCレベルを達成することもできる。DRC2とDRC3の各部分は、パラメータfとDRC1とに基づいて計算できる。下記を参照されたい。前記の単純な実施形態の場合、DRCプリプロセッサ77が、後処理DRCパラメータDRC1の一部(fraction)fとして、ある目標DRCレベルにどう反応するかをここで説明する。前の段落の説明を考慮して、DRCプリプロセッサ77は、区間[0,1]の値を次式中のパラメータk71、k74に割り当てる。
【0050】
f×DRC1=k74×DRC2+k71×DRC3
ここで、f∈[0,1]は予め決まっており、DRC20かつDRC1=DRC2+DRC3(対数スケール)である。上記から、DRC1とDRC3は正でも負でもよいことがわかる。上記の通り、コア信号デコーダ71の動作がレンジコンパクティング(range compacting)(DRC3=y>0)である場合、コア信号デコーダ71とDRCプロセッサ74との両方を動作させることを回避することが望ましい。これは、k71=0またはk74=0の場合に上記の方程式を解くことになる。
【0051】
さらに可能性のある表現は、ラウドネス依存ゲイン係数であり、場合によっては対数スケールである。例えば、一組のゲイン係数がダイアローグレベル(dialogue level)とともに送信される。ダイアローグレベルよりうるさい時間セグメントには第1のゲイン係数が適用され、一方、静かな時間セグメントには第2のゲイン係数が適用される。これにより、ダイナミックレンジ圧縮と拡張が可能となる。第1と第2のゲイン係数は互いに従属した値を割り当てることができるからである。
【0052】
図2cは、デュアルモード復号システム51を示す。これは、パラメトリックにコード化されたか、または直接コード化されているオーディオ信号を含むビットストリームPを受け取るように構成されている。復号システム51のパラメトリックモードでは、パラメトリックモードデマルチプレクサ70の下流上部はアクティブであり、図2aに示したシステムの機能と同様に、チャンネルオーディオ信号Xを提供する。離散モードでは、ビットストリームPが、符号化nチャンネル信号X(訳注:「~」は「X」の上にある)と一以上の後処理DRCパラメータDRC1を抽出する、離散モードデマルチプレクサ60に供給される。復号システム51の入力側及び出力側の(任意のハードウェアまたはソフトウェアで実施される信号選択手段を記号化した)セレクタ52、82は、現在のモードにより動作する。セレクタは共に動作して、両者が常に上側位置または下側位置にあるようにしてもよい。離散モードでは、符号化されたnチャンネル信号X(訳注:「~」は「X」の上にある)がデコーダ61により処理される。デコーダ61は、後処理DRCパラメータDRC1によりDRCを実行することができる。離散コーディングモードとパラメトリックコーディングモードとの間のダイアローグレベルの一貫性は、復号システム51が、パラメトリックモードにおいて、(補償されていない)後処理DRCパラメータDRC1の替わりに補償された後処理DRCパラメータDRC3を用いるように構成されていることにより確保される。パラメータDRC1とDRC3との間の関係は前述した。
【0053】
図4は、単純化された復号システム451を示す一般化ブロック図である。この単純化された復号システム451は後処理DRCを行う機能はない。しかし、図4の復号システム451は、前処理DRCパラメータDRC2により定量化された、エンコーダ側で適用されたダイナミックレンジ制限をキャンセルするように動作可能である。より正確には、パラメトリック合成ステージ472は、シンボルg↑が示すように、このダイナミックレンジ制限を完全にまたは部分的にキャンセルするように構成されている。
【0054】
図11図12は、図4に示すパラメトリック合成ステージ472の可能性のある2つのインプリメンテーションを示している。図13に示したタイプの符号化システムでも、同様のインプリメンテーションも有用である。これについては後でさらに説明する。可能性のある第1のインプリメンテーションにおいて、図11に示したように、プリコンディショナ1174は、mチャンネルコア信号Yに対してダイナミックレンジ制限キャンセレーションを行い、それによりmチャンネル中間信号YCが得られる。中間信号YCはパラメトリック合成プロセッサ1175において処理される。これは中間信号YC中のチャンネルの線形結合を(及び、場合によっては追加的な非相関信号を)形成する。ここで、線形結合に適用されるゲインは、マルチチャンネルコーディングパラメータαにより制御可能である。これもパラメトリック合成プロセッサ1175に供給される。
【0055】
図12に示された第2のインプリメンテーションは、これの代替物を表している。第2のインプリメンテーションにおいて、パラメトリック合成は、処理ステップとして、ダイナミックレンジ制限キャンセレーションより前にある。この事実は、パラメトリック合成プロセッサ1275がポストコンディショナ1276の上流に配置されていることから明らかである。前処理DRCパラメータDRC2により定量化された、エンコーダ側ダイナミックレンジ制限のキャンセルの役割を果たすのはポストコンディショナ1276である。よって、パラメトリック合成プロセッサ1275からポストコンディショナ1276に供給される信号は、ダイナミックレンジが制限されたnチャンネル信号XCに関する。
【0056】
図13は、さらに別の実施形態による、復号システム1351を示す。デコーダ側DRCは、システム1351の離散モード部分とパラメトリックモード部分との両方の下流に配置されたDRCプロセッサ1383により影響を受ける。図2a、2b、2c及び4を参照して説明した復号システムのように、本復号システム1351は、後処理DRCパラメータDRC2により定量化された、エンコーダ側に適用されたダイナミックレンジ制限をキャンセルすることもできる。DRCプロセッサ1383は、(補償されていない)後処理DRCパラメータDRC1が受信ビットストリームPに含まれる離散コーディングモードと、補償された後処理DRCパラメータDRC3が受信されるパラメトリックコーディングモードとの両方で機能するものである。留意点として、復号システム1351は、後処理DRCがnチャンネル出力信号に、すなわちパラメトリック合成ステージ1372の下流に作用する点で、図2bに示したシステム51とは異なる。図2bのシステム51において、対応する動作がコア信号デコーダ71で起こる。
【0057】
DRCプロセッサ1383は、ユーザ、メモリ、再生装置で実行されたハードウェア診断、またはその他の外部または内部データソースから目標DRCレベルを受け取る。例えば、目標DRCレベルfは、ユーザが復号システム1351により作用されることを欲するフル後処理DRCの一部分を表す。図から分かるように、復号システム1351の構造は、パラメータfの値を考慮するのにDRCプロセッサ1383のみが必要であるという利点を有する。これにより部分的なDRCのインプリメンテーションが便利になる。この目的のため、補償された後処理DRCパラメータDRC3を(補償されていない)後処理DRCパラメータDRC1のスケールに変換するように構成されている。実際、パラメトリック合成ステージ1372から出力されるnチャンネルオーディオ信号X(訳注:「~」は「X」の受けにある)は、エンコーダ側ダイナミックレンジ制限のキャンセレーションを行う。よって、補償された後処理DRCパラメータDRC3に基づくDRCを適用することは、過小なレンジ圧縮を含んでいる。このシナリオを未然に防ぐため、DRCダウン補償器1373は、前処理DRCパラメータDRC2に基づき、補償された後処理DRCパラメータDRC3を回復し、それにより、パラメトリックコーディングモードでは、回復された後処理DRCパラメータが得られ、DRCプロセッサ1383に供給される。前述の通り、回復されたDRCパラメータにより表されるデコーダ側DRCは、図8図9により示唆されているように、すでにコア信号に課されているエンコーダ側ダイナミックレンジ制限と、補償された後処理DRCパラメータDRC3により表されるデコーダ側DRCとの組み合わせと数量的に等しい。
【0058】
別の一実施形態では、復号システム1351は、離散モードデマルチプレクサ1360とデコーダ1361無しでインプリメントされる。図13のDRCパラメータセレクタ1381、1382は、DRCプロセッサ1383と、(回復された後処理DRCパラメータが受け取られる)DRCダウン補償器1373及び(nチャンネルオーディオ信号Xを供給する)パラメトリック合成ステージ1372のそれぞれとの間の接続により置き換えられる。この代替的実施形態は、シングルパラメトリック復号モードで動作するという点で、単純化されている。さらに、レガシータイプDRCプロセッサ1383であって、必ずしも補償された後処理DRCパラメータを処理するように構成されていないものを使うことができるので、インプリメントが単純である。
【0059】
図6は、受け取ったビットストリームPをmチャンネルオーディオ信号に復号するレガシー復号システム651を示す。パラメトリックコーディングモードでは、パラメータモードデマルチプレクサ670の下流にある上部は、アクティブであり、符号化されたmチャンネルコア信号Y(訳注:「~」は「Y」の上にある)及び補償された後処理DRCパラメータDRC3を出力する。符号化されたmチャンネルコア信号Y(訳注:「~」は「Y」の上にある)は、第1のデコーダ671により、mチャンネルコア信号Yに復号される。離散コーディングモードでは、出力されるオーディオ信号は、離散モードデマルチプレクサ660の下流に位置する下部により生成される。離散モードデマルチプレクサ660は、ビットストリームPから、符号化されたnチャンネル信号X(訳注:「~」は「X」の上にある)及び(補償されていない)後処理DRCパラメータDRC1を抽出する。符号化nチャンネル信号X(訳注:「~」は「X」の上にある)は、第2のデコーダ661により復号され、ダウンミックスステージ662において、mチャンネル信号Yにダウンミックスされる。この信号Yと、パラメトリックモードに関して述べた信号Yとは両方とも、両モードに共通のDRCプロセッサ683に供給される。パラメトリックモードでは、DRCプロセッサ683の定量的特性は、補償された後処理DRCパラメータDRC3により制御される。一方、離散モードでは、これらの特性は(補償されていない)後処理DRCパラメータDRC1により制御される。このように、復号システム651から出力されるmチャンネルオーディオ信号のダイアローグレベルの一貫性を維持できる。留意点として、本復号システム651はレガシータイプである。補償された後処理DRCパラメータと補償されていないものとを、同じでなければ、同様に扱うからである。
【0060】
IV.図面中の参照記号
【0061】
【表1-1】
【表1-2】
V.等価物、拡張、変更その他
本発明のさらなる実施形態は、上記の説明を読めば、当業者には明らかになるだろう。本明細書と図面は実施形態と実施例を開示しているが、本発明はこれらの具体的な例に制約されない。添付した特許請求の範囲で規定した本発明の範囲から逸脱することなく、多数の修正や変形をすることができる。請求項に現れる参照符号は、その範囲を限定するものと考えてはいけない。
【0062】
ここに開示したシステムと方法は、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェアまたはこれらの組み合わせとして実施できる。ハードウェアインプリメンテーションでは、上記の説明で参照した機能ユニット間のタスクの分け方は、物理的ユニットへの分け方と必ずしも一致しない。
【0063】
逆に、1つの物理的コンポーネントが複数の機能を有し、1つのタスクが複数の物理的コンポーネントにより協力して実行される。一部または全部のコンポーネントは、デジタルシグナルプロセッサやマイクロプロセッサにより実行されるソフトウェアとして実施でき、またはハードウェアまたは特定目的集積回路として実施できる。かかるソフトウェアは、コンピュータ読み取り可能媒体で配布可能である。コンピュータ読み取り可能媒体は、コンピュータ記憶媒体(すなわち非一時的媒体)と通信媒体(すなわち一時的媒体)とを含む。当業者には周知だが、コンピュータ記憶媒体という用語には、コンピュータ読み取り可能命令、データ構造、プログラムモジュールその他のデータなどの情報を記憶するための任意の方法や技術で実施された、揮発性および不揮発性、取り外し可能および取り外し不可能媒体を含む。コンピュータ記憶媒体は、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリその他のメモリ技術、CD-ROM、デジタルバーサタイルディスク(DVD)その他の光ディスク記憶媒体、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶その他の磁気記憶デバイス、またはその他の、所望の情報の記憶に使える任意の媒体を含むが、これらに限定されない。さらに、当業者には周知であるように、通信媒体は、一般的に、コンピュータ読み取り可能命令、データ構造、プログラムモジュール、その他の搬送波その他の伝送メカニズムなどの変調データ信号中のデータを化体し、任意の情報配信媒体を含む。
実施形態について付記する。
(付記1) ビットストリームに基づきnチャンネルオーディオ信号を再構成するように構成された復号システムであって、
前記ビットストリームを受け取り、それに基づいて、前記システムのパラメトリックコーディングモードにおいて、符号化されたコア信号とマルチチャンネルコーディングパラメータとを出力する、パラメトリックモードデマルチプレクサと、
前記符号化されたコア信号を受け取り、それに基づいて、mチャンネルコア信号を出力する、ここで1≦m<nであるコア信号復号器と、
前記コア信号と前記マルチチャンネルコーディングパラメータとを受け取り、それに基づき、前記nチャンネル信号を出力するパラメトリック合成ステージとを有し、
前記パラメータモードデマルチプレクサは、さらに、前記ビットストリームに基づいて、前記コア信号のエンコーダ側ダイナミックレンジ制限を定量化する前処理ダイナミックレンジ制御(DRC)パラメータを出力するように構成され、
前記復号システムは、前記前処理DRCパラメータに基づき、前記エンコーダ側ダイナミックレンジ制限をキャンセルするように動作可能である、
復号システム。
(付記2) 前記パラメトリックモードデマルチプレクサは、さらに、前記ビットストリームに基づき、前記システムの前記パラメトリックコーディングモードにおいて、適用されるデコーダ側DRCを定量化する補償された後処理DRCパラメータを出力するように構成され、
前記復号システムは、
1)前記パラメトリック合成ステージ内またはその下流、及び
2)前記コア信号デコーダ内、
のうち一方で、前記デコーダ側DRCを適用するように動作可能である、
付記1に記載の復号システム。
(付記3) さらに、前記エンコーダ側ダイナミックレンジ制限をまたはその一部をキャンセルし、補償されたコア信号を出力するように動作可能なDRCプロセッサを有し、
前記コア信号デコーダは、前記デコーダ側DRCまたはその一部を適用するように動作可能である、
付記2に記載の復号システム。
(付記4) 前記コア信号デコーダと前記DRCプロセッサに通信可能に結合したDRCプリプロセッサをさらに有し、前記DRCプリプロセッサは、目標DRCレベルと、前記前処理DRCパラメータと、前記補償された後処理DRCパラメータとを受け取り、
-前記目標DRCレベルが前記コア信号のデコーダ入力DRCレベルに関するダイナミックレンジブーストに対応するとき、前記DRCプロセッサに、前記目標DRCレベルに基づいて、前記エンコーダ側ダイナミックレンジ制限またはその一部をキャンセルさせ、
-前記目標DRCレベルが前記コア信号の前記デコーダ入力DRCレベルに関するダイナミックレンジ圧縮に対応するとき、前記コア信号デコーダに、前記目標DRCレベルに基づいて、前記デコーダ側DRCまたはその一部を適用させ、
前記DRCプリプロセッサは、前記目標DRCレベルに応じて前記一部を決定する、
付記3に記載の復号システム。
(付記5) 前記パラメトリックモードデマルチプレクサは、さらに、前記ビットストリームに基づき、前記システムの前記パラメトリックコーディングモードにおいて、補償された後処理DRCパラメータを出力するように構成され、
前記システムはさらに、
前記補償された後処理DRCパラメータと前記前処理DRCパラメータとを受け取り、それに基づいて、適用するデコーダ側DRCを定量化した回復された後処理DRCパラメータを出力するDRCダウン補償器と、
前記システムのパラメトリックコーディングモードにおいて、前記回復された後処理DRCパラメータに応じて前記nチャンネルオーディオ信号にDRCを適用するように構成されたDRCプロセッサとを有し、
前記回復されたDRCパラメータにより表されるデコーダ側DRCは、前記コア信号のエンコーダ側ダイナミックレンジ制限と、前記補償された後処理DRCパラメータにより表されるデコーダ側DRCとの結合と数量的に等価である、
付記1ないし4いずれか一項に記載の復号システム。
(付記6) 前記ビットストリームを受け取り、それに基づいて、前記システムの離散コーディングモードにおいて、符号化nチャンネル信号と、適用されるデコーダ側DRCを数量化した後処理DRCパラメータとを出力する離散モードデマルチプレクサと、
前記ビットストリームに含まれる符号化nチャンネル信号を受け取り、それに基づいて、前記システムの離散コーディングモードにおいて、前記nチャンネルオーディオ信号を出力するデコーダとを有し、
前記DRCプロセッサは、さらに、前記システムの離散コーディングモードにおいて、前記後処理DRCパラメータに応じて、前記nチャンネルオーディオ信号にDRCを適用するように構成されている、
付記5に記載の復号システム。
(付記7) 前記パラメトリック合成ステージは、
前記コア信号と前記前処理DRCパラメータとを受け取り、前記エンコーダ側ダイナミックレンジ制限をキャンセルすることにより得られたダイナミックレンジ補償されたコア信号を出力するプリコンディショナと、
前記ダイナミックレンジ補償されたコア信号と前記マルチチャンネルコーディングパラメータとを受け取り、それに基づき、前記nチャンネル信号を出力するパラメトリック合成プロセッサとを有する、
付記5または6に記載の復号システム。
(付記8) 前記パラメトリック合成ステージは、
前記コア信号と前記マルチチャンネルコーディングパラメータとを受け取り、それに基づき、中間信号を出力するパラメトリック合成プロセッサと、
前記中間信号と前記前処理DRCパラメータとを受け取り、前記エンコーダ側ダイナミックレンジ制限をキャンセルすることにより得られたnチャンネル信号を出力するポストコンディショナとを有する、
付記5または6に記載の復号システム。
(付記9) 前記パラメトリックモードデマルチプレクサは、前記前処理DRCパラメータの各値を、指数を表す2ビットフィールドと仮数を表す5ビットフィールドとして読むようにさらに構成されている、
付記1ないし4いずれか一項に記載の復号システム。
(付記10) ビットストリームに基づいてnチャンネルオーディオ信号を再構成する方法であって、
符号化コード信号と、マルチチャンネルコーディングパラメータと、前記コア信号のエンコーダ側ダイナミックレンジ制限を数量化する前処理ダイナミックレンジ制御(DRC)パラメータとを含むビットストリームに応じて、
a-1)前記符号化コア信号をmチャンネルコア信号に復号する、1m<nであるステップと、
a-2)パラメトリック合成を行い、前記コア信号と前記マルチチャンネルコーディングパラメータとに基づき前記nチャンネル信号を再構成するステップとを実行するステップを有し、
前記方法は、さらに、前記前処理DRCパラメータに基づき、前記エンコーダ側ダイナミックレンジ制限をキャンセルするステップを有する、
方法。
(付記11) 前記ビットストリームが、符号化コア信号と、マルチチャンネルコーディングパラメータと、前処理DRCパラメータとを含み、さらに適用されるデコーダ側DRCを数量化した補償された後処理DRCパラメータをさらに含む場合に応じて、
ステップa-1と、a-2と、
a-3)前記前処理DRCパラメータに基づいて、前記エンコーダ側ダイナミックレンジ制限またはその一部をキャンセルするステップ、及び
a-4)前記補償された後処理DRCパラメータに応じて、前記デコーダ側DRCまたはその一部を適用するステップのうち少なくとも一方とを実行するステップと、
付記10に記載の方法。
(付記12) ステップa-1及びa-2を実行することにより前記場合に対応するステップと、
目標DRCレベルを受け取り、これをデコーダ入力DRCレベルと比較して、前記目標DRCレベルがダイナミックレンジブーストに対応するかダイナミックレンジ圧縮に対応するか決めるステップと、
前記比較に基づいて、
a-3)前記前処理DRCパラメータに基づいて、前記エンコーダ側ダイナミックレンジ制限またはその一部をキャンセルするステップ、及び
a-4)前記補償された後処理DRCパラメータに応じて、前記デコーダ側DRCまたはその一部を適用するステップのうち選択された一方を実行するステップと、
を有する、付記11に記載の方法。
(付記13) 前記ビットストリームは、さらに、適用されるデコーダ側DRCを数量化した後処理DRCパラメータを含み、
前記方法は、さらに、前記後処理DRCパラメータにより前記nチャンネル信号にDRCを適用するステップを有し、前記ビットストリームが前処理DRCパラメータを含み、前記ビットストリーム中の前記後処理DRCパラメータが補償された後処理DRCパラメータであるとき、前記補償された後処理DRCパラメータの替わりに、回復された後処理DRCパラメータを用い、
前記回復された後処理DRCパラメータは前記補償された後処理DRCパラメータと前記前処理DRCパラメータに基づき得られ、前記回復されたDRCパラメータにより表されるデコーダ側DRCは、前記コア信号のエンコーダ側ダイナミックレンジ制限と、前記後処理DRCパラメータにより表されるデコーダ側DRCとの結合に数量的に等価である、
付記10ないし12いずれか一項に記載の方法。
(付記14) 前記ビットストリームが符号化nチャンネル信号を含むのに応じて、
b)前記符号化nチャンネル信号を復号することにより、前記nチャンネル信号を再構成するステップをさらに有する、
付記13に記載の方法。
(付記15) 時間ブロックにパーティションされたnチャンネルオーディオ信号をビットストリームとして符号化するように構成された復号システムであって、
前記nチャンネル信号を受け取り、それに基づいて、前記符号化システムのパラメトリックコーディングモードで、mチャンネルコア信号とマルチチャンネルコーディングパラメータとを出力する、1m<nである、パラメトリック分析ステージと、
前記コア信号を受け取り、それに基づいて、符号化コア信号を出力するコア信号エンコーダとを有し、
前記パラメトリック分析ステージは、さらに、時間セグメントベースの適応的ダイナミックレンジ制限を行い、適用される前記ダイナミックレンジ制限を数量化する前処理ダイナミックレンジ制御(DRC)パラメータを出力し、
前記システムは、さらに、前記システムのパラメトリックコーディングモードにおいて、前記システムから出力される、少なくとも前記符号化コア信号、前記マルチチャンネルコーディングパラメータ、及び前記前処理DRCパラメータを含むビットストリームを形成するように動作可能なパラメトリックモードマルチプレクサを有する、
復号システム。
(付記16) 前記nチャンネルオーディオ信号を受け取り、それに基づいて、適用されるデコーダ側DRCを数量化した後処理DRCパラメータを出力する少なくとも1つのDRCアナライザと、
前記後処理DRCパラメータと前記前処理DRCパラメータを受け取り、それに基づいて、適用されるデコーダ側DRCを数量化した補償された後処理DRCパラメータを出力する、前記補償された後処理DRCパラメータは前記パラメトリックコーディングモードにおいて前記ビットストリームに含まれる、DRCアップ補償器とを有し、
前記後処理DRCパラメータにより表されるデコーダ側DRCは、前記パラメトリック分析ステージにより適用されるダイナミックレンジ制限と、前記補償された後処理DRCパラメータにより数量化されたデコーダ側DRCとの結合と数量的に等価である、
付記15に記載の符号化システム。
(付記17) 前記少なくとも1つのDRCアナライザは、第1の数p 1の時間ロックを含むシングルセグメントに基づいて、前記後処理DRCパラメータの値を計算するように構成され、
前記パラメトリック分析ステージは、第2の数p 1の時間ブロックを含むシングルセグメントに基づいて、前記前処理DRCパラメータの値を計算するように構成され、
前記第1の数は前記第2の数以下である、すなわちp である、
付記16に記載の符号化システム。
(付記18) 前記nチャンネル信号を受け取り、それに基づいて、前記システムの離散コーディングモードにおいて前記システムから出力されるビットストリームの一部を形成する符号化nチャンネル信号を出力するエンコーダと、
前記システムの離散コーディングモードにおいて前記システムから出力されるビットストリームを形成するように動作可能な離散モードマルチプレクサとを有し、前記ビットストリームは少なくとも前記符号化nチャンネル信号と前記後処理DRCパラメータとを含む、
付記16または17に記載の符号化システム。
(付記19) 前記システムは、2つのDRCアナライザを有し、これらは機能的に等価であり、すなわち離散モードDRCアナライザとパラメトリックモードDRCアナライザとである、
付記15ないし18いずれか一項に記載の符号化システム。
(付記20) 前記後処理DRCパラメータと前記符号化nチャンネル信号とを受け取り、離散コーディングモードにおいて前記システムから出力するビットストリームを形成するように動作可能な離散モードマルチプレクサをさらに有する、
付記15ないし19いずれか一項に記載の符号化システム。
(付記21) 前記パラメトリック分析ステージは、
前記nチャンネル信号を受け取り、ダイナミックレンジ制限されたnチャンネル信号とDRCパラメータとを出力するプリプロセッサと、
前記ダイナミックレンジ制限されたnチャンネル信号を受け取り、それに基づき、前記mチャンネル信号とマルチチャンネルコーディングパラメータとを出力するパラメトリック分析プロセッサとを有する、
付記15ないし20いずれか一項に記載の符号化システム。
(付記22) 前記パラメトリックモードデマルチプレクサは、前記前処理DRCパラメータの各値を、指数を表す2ビットフィールドと仮数を表す5ビットフィールドとして含むように構成されている、
付記15ないし21いずれか一項に記載の符号化システム。
(付記23) 時間ブロックにパーティションされたnチャンネルオーディオ信号を符号化する方法であって、
前記方法は、mチャンネルコア信号とマルチチャンネルコーディングパラメータとを生成する、1m<nであるステップを有し、
前記生成するステップは、時間ブロックベースでダイナミックレンジ制限を実行するステップと、前記適用されたダイナミックレンジ制限を数量化した前処理ダイナミックレンジ制御(DRC)パラメータを生成するステップとを有し、
前記方法は、さらに、前記コア信号及び前記マルチチャンネルコーディングパラメータと同時に前記前処理DRCパラメータを送信するステップをさらに有する、
方法。
(付記24) 付記10ないし14及び23いずれか一項に記載の方法を実行するコンピュータ実行可能命令を有するコンピュータ読み出し可能媒体を含むコンピュータプログラム製品。
(付記25) n=6かつm=2である、付記1ないし24いずれか一項に記載のシステム、方法、またはコンピュータプログラム製品。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13