(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】接触検知装置
(51)【国際特許分類】
G01L 1/14 20060101AFI20240412BHJP
【FI】
G01L1/14 L
(21)【出願番号】P 2022158514
(22)【出願日】2022-09-30
【審査請求日】2024-01-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 哲好
(72)【発明者】
【氏名】那須 将樹
(72)【発明者】
【氏名】前田 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】ゴー ティーン
(72)【発明者】
【氏名】黄田 尚宏
(72)【発明者】
【氏名】奥村 剛正
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-067125(JP,A)
【文献】特開2010-257181(JP,A)
【文献】特開2010-101827(JP,A)
【文献】特開2009-276279(JP,A)
【文献】特表2006-504948(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0127003(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00-1/26
G01L 5/00-5/28
G01B 7/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から定電圧である入力電圧を印加される印加電極と、前記印加電極に対向して配置されるとともに電位が計測される計測電極と、前記印加電極と前記計測電極との間に配置される誘電体と、を備え、導体が接触したことを検知するための静電型センサと、
前記計測電極の第一計測位置とグランド電位との間に直列接続される第一ブリッジ用キャパシタと、
前記計測電極と前記グランド電位との間に直列接続されるとともに、前記第一ブリッジ用キャパシタに対して並列接続され、閉状態時に前記計測電極の電位をグランド電位に放電させる充放電用スイッチング素子と、
前記入力電圧を前記印加電極に印加していない状態にし且つ前記充放電用スイッチング素子を閉状態にすることで、前記計測電極の電位をグランド電位に放電する工程と、前記放電する工程の後に、前記充放電用スイッチング素子を開状態にし且つ前記入力電圧を前記印加電極に印加する状態にすることで、前記静電型センサに充電する工程とを実行する制御装置と、
前記充電する工程において、前記計測電極の前記第一計測位置と前記第一ブリッジ用キャパシタとの間の第一電位を取得する計測器と、
を備える接触検知装置であって、
前記静電型センサは、前記導体が接触した面積及び前記導体との距離の少なくとも一方に応じて静電容量が変化するように構成され、かつ、前記第一計測位置からの距離に応じた電気抵抗により時定数が変化するように構成され、
前記計測器は、
前記充電する工程における、前記静電型センサへの充電が開始されてから所定時間経過後の第一サンプリング時点に取得した前記第一電位である第一電位第一サンプリング値と、前記第一サンプリング時点から所定時間経過後の第二サンプリング時点に取得した前記第一電位である第一電位第二サンプリング値と、に基づいて、前記導体が前記静電型センサに接触した位置を検知する、接触検知装置。
【請求項2】
前記第一サンプリング時点は、前記静電型センサへの充電が開始されてから所定の第一時間経過後であって、前記計測電極の電位の変化が飽和状態になる前までの過渡状態における時点であり、
前記第二サンプリング時点は、前記第一サンプリング時点よりも後であって、前記静電型センサへの充電が開始されてから所定の第二時間経過後の時点である、請求項1に記載の接触検知装置。
【請求項3】
前記計測器は、前記第一電位第二サンプリング値に対する前記第一電位第一サンプリング値の比に基づいて、前記導体が前記静電型センサに接触した位置を検知する、請求項2に記載の接触検知装置。
【請求項4】
前記静電型センサは、長手方向に細長い形状に形成され、前記長手方向の両端に第一端部と第二端部とを有しており、
前記第一ブリッジ用キャパシタは、前記計測電極の前記第一計測位置である前記長手方向の前記第一端部と前記グランド電位との間に接続されており、
前記印加電極の前記長手方向の前記第一端部は、前記電源に接続されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の接触検知装置。
【請求項5】
前記静電型センサは、長手方向に細長い形状に形成され、前記長手方向の両端に第一端部と第二端部とを有しており、
前記第一ブリッジ用キャパシタは、前記計測電極の前記第一計測位置である前記長手方向の前記第一端部と前記グランド電位との間に接続されており、
前記印加電極の前記長手方向の前記第二端部は、前記電源に接続されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の接触検知装置。
【請求項6】
前記静電型センサは、長手方向に細長い形状に形成され、前記長手方向の両端に第一端部と第二端部とを有しており、
前記第一ブリッジ用キャパシタは、前記計測電極の前記第一計測位置である前記長手方向の前記第一端部と前記グランド電位との間に接続されており、
さらに、
前記計測電極の第二計測位置である前記長手方向の前記第二端部と前記グランド電位との間に直列接続される第二ブリッジ用キャパシタ、を備え、
前記計測電極は、前記第一計測位置からの距離に応じて電気抵抗が変化するように構成され、且つ、前記第二計測位置からの距離に応じて電気抵抗が変化するように構成され、
前記計測器は、
前記充電する工程において、前記計測電極の前記第二計測位置と前記第二ブリッジ用キャパシタとの間の第二電位を取得し、
前記充電する工程における、前記第一電位第一サンプリング値と、前記第一サンプリング時点において取得する前記第二電位である第二電位第一サンプリング値と、前記第一電位第二サンプリング値と、前記第二サンプリング時点に取得する前記第二電位である第二電位第二サンプリング値と、に基づいて、前記導体が前記静電型センサに接触した位置を検知する、請求項1~3のいずれか1項に記載の接触検知装置。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記計測器が前記第一電位を取得するために、前記放電する工程、および、前記放電する工程に続く前記充電する工程を含む第一サイクルを実行し、
前記第一サイクルの後に、前記計測器が前記第二電位を取得するために、前記放電する工程、および、前記放電する工程に続く前記充電する工程を含む第二サイクルを実行する、請求項6に記載の接触検知装置。
【請求項8】
前記計測電極および前記印加電極は、導電性エラストマーからなる、請求項1~3のいずれか1項に記載の接触検知装置。
【請求項9】
前記印加電極と前記計測電極は、単位長さ当たりの電気抵抗が異なる、請求項8に記載の接触検知装置。
【請求項10】
前記計測電極の単位長さ当たりの電気抵抗は、前記印加電極の単位長さ当たりの電気抵抗よりも大きい、請求項9に記載の接触検知装置。
【請求項11】
前記計測電極は、複数の貫通孔を有する、請求項10に記載の接触検知装置。
【請求項12】
電源から定電圧である入力電圧を印加される印加電極と、前記印加電極に対向して配置されるとともに電位が計測される計測電極と、前記印加電極と前記計測電極との間に配置される誘電体と、を備え、導体が前記計測電極側に接触したことを検知するための静電型センサと、
前記計測電極の第一計測位置とグランド電位との間に直列接続される第一ブリッジ用キャパシタと、
前記計測電極と前記グランド電位との間に直列接続されるとともに、前記第一ブリッジ用キャパシタに対して並列接続され、閉状態時に前記計測電極の電位をグランド電位に放電させる充放電用スイッチング素子と、
前記入力電圧を前記印加電極に印加していない状態にし且つ前記充放電用スイッチング素子を閉状態にすることで、前記計測電極の電位をグランド電位に放電する工程と、前記放電する工程の後に、前記充放電用スイッチング素子を開状態にし且つ前記入力電圧を前記印加電極に印加する状態にすることで、前記静電型センサに充電する工程とを実行する制御装置と、
前記充電する工程において、前記計測電極の前記第一計測位置と前記第一ブリッジ用キャパシタとの間の第一電位を取得する計測器と、
を備える接触検知装置であって、
前記静電型センサは、面積及び前記導体との距離の少なくとも一方に応じて静電容量が変化するように構成され、かつ、前記第一計測位置からの距離に応じた電気抵抗により時定数が変化するように構成され、
前記計測器は、
前記充電する工程において、前記静電型センサへの充電が開始されてから所定の第一時間経過後であって、前記計測電極の電位の変化が飽和状態になる前までの過渡状態となる第一時点よりも後であって、前記静電型センサへの充電が開始されてから所定の第二時間経過後である第二時点で取得した前記第一電位である第一電位第二サンプリング値に基づいて、前記導体が前記静電型センサに接触した面積を検知する、接触検知装置。
【請求項13】
前記計測器は、
前記充電する工程において、前記第一時点における前記第一電位である第一電位第一サンプリング値を取得し、前記第一電位第一サンプリング値と、前記第一電位第二サンプリング値と、に基づいて、前記導体が前記静電型センサに接触した位置を検知する、請求項12に記載の接触検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静電容量の変化で人体の接触を検知する接触検知装置が、例えば特許文献1に提案されている。
【0003】
この特許文献1の接触検知装置は、シート状に形成された可撓性を有するセンサ本体を備える。センサ本体は、複数行の第一電極と、複数列の第二電極と、を備える。複数の第一電極のそれぞれの第一電極は帯状に形成され、相互に平行に配置されている(特許文献1の
図11参照)。複数列の第二電極のそれぞれの第二電極は、帯状に形成され、相互に平行に配置されている。複数行の第一電極と、複数列の第二電極とは互いに交差して配置されている。
【0004】
複数行の第一電極と、複数列の第二電極とはマトリックス状に配置されている。これにより、センサ本体に人間の手や指などの導体が接触した場合、導体が接触した位置や面積を、マトリックス状に配置された複数行の第一電極および複数列の第二電極によって検知することができる。
【0005】
特許文献2には、押圧位置と押圧力の両方を検出することができる感圧装置が提案されている。この感圧装置は、誘電体、所定の体積抵抗率を有する第1の電極、および、第2の電極を有する感圧部2を備える。また、感圧装置は、第1の電極の左端に位置する第1左端子21aと第2の電極の左端に位置する第2左端子22aとに接続された第1測定器30aと、第1の電極の右端に位置する第1右端子21bと第2の電極の右端に位置する第2右端子22bとに接続された第2測定器30bとを備える。
【0006】
感圧部2は、電極間の静電容量Cと、主として第1の電極の電気抵抗Rとによる、RC回路を形成する。感圧部は、外部から押圧力が加えられて変形することにより静電容量Cが変化する。また、第1の電極は、所定の体積抵抗率を有するため、外部から感圧部に加えられた押圧位置と第1左端子21aとの距離に応じて、押圧位置と第1左端子21aとの間の電気抵抗が変化し、同様に、押圧位置と第1右端子21bとの間の電気抵抗が変化する。第1測定器30aの測定値におけるRC遅延時間と、第2測定器30bの測定値におけるRC遅延時間とを用いて、押圧力と押圧位置とを求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-55589号公報
【文献】特開2019-196904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術によれば、複数行の第一電極と、複数列の第二電極とをマトリックス状に配置するため、配線および配線を接続するための端子を多くする必要があり、部品点数が多くなり、構造が複雑化するという問題があった。
【0009】
特許文献2に記載の技術によれば、押圧力および押圧位置を求めるためには、それぞれ異なる位置の端子に接続された第1測定器の測定値および第2測定器の測定値を用いなければならない。つまり、押圧力および押圧位置を求めるためには、2つの測定器が必要となる。従って、部品点数が多くなり、構造が複雑化するという問題があった。
【0010】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、簡易な構成により接触位置および接触面積の少なくとも一方を検知可能な接触検知装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、
電源から定電圧である入力電圧を印加される印加電極と、前記印加電極に対向して配置されるとともに電位が計測される計測電極と、前記印加電極と前記計測電極との間に配置される誘電体と、を備え、導体が接触したことを検知するための静電型センサと、
前記計測電極の第一計測位置とグランド電位との間に直列接続される第一ブリッジ用キャパシタと、
前記計測電極と前記グランド電位との間に直列接続されるとともに、前記第一ブリッジ用キャパシタに対して並列接続され、閉状態時に前記計測電極の電位をグランド電位に放電させる充放電用スイッチング素子と、
前記入力電圧を前記印加電極に印加していない状態にし且つ前記充放電用スイッチング素子を閉状態にすることで、前記計測電極の電位をグランド電位に放電する工程と、前記放電する工程の後に、前記充放電用スイッチング素子を開状態にし且つ前記入力電圧を前記印加電極に印加する状態にすることで、前記静電型センサに充電する工程とを実行する制御装置と、
前記充電する工程において、前記計測電極の前記第一計測位置と前記第一ブリッジ用キャパシタとの間の第一電位を取得する計測器と、
を備える接触検知装置であって、
前記静電型センサは、前記導体が接触した面積及び前記導体との距離の少なくとも一方に応じて静電容量が変化するように構成され、かつ、前記第一計測位置からの距離に応じた電気抵抗により時定数が変化するように構成され、
前記計測器は、
前記充電する工程における、前記静電型センサへの充電が開始されてから所定時間経過後の第一サンプリング時点に取得した前記第一電位である第一電位第一サンプリング値と、前記第一サンプリング時点から所定時間経過後の第二サンプリング時点に取得した前記第一電位である第一電位第二サンプリング値と、に基づいて、前記導体が前記静電型センサに接触した位置を検知する、接触検知装置にある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、1つの計測器を用いるという簡易な構成により、導体が静電型センサに接触した接触位置および接触面積の少なくとも一方を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態1の接触検知装置が適用されるステアリングホイールを示す正面図。
【
図3】実施形態1の静電型センサの一部拡大断面図であって、
図4のIII-III線断面図。
【
図4】実施形態1の静電型センサを示す一部切欠平面図。
【
図5】実施形態1の接触検知装置の構成を示すブロック図。
【
図6】実施形態1において、充放電用スイッチング素子、第一入力用スイッチング素子、静電型センサの入力電位および出力電位の動作のタイミングチャート。
【
図7】実施形態1の静電型センサを充電する工程において、静電型センサの出力電圧の経時変化を示すグラフ。
【
図8】実施形態1の静電型センサにおいて、指等の導体の接近および接触による静電容量の変化を示す模式図。
【
図9】実施形態1の静電型センサに指が接触した状態を示す模式的断面図。
【
図10】実施形態1の静電型センサに手が接触した状態を示す模式的断面図。
【
図11】実施形態1の静電型センサにおいて、手が接触したときの第一電圧、指が接触したときの第一電圧、および何も接触していない状態の第一電圧の経時変化を示すグラフ。
【
図12】実施形態1の静電型センサに指が接触したときに、印加電極および計測電極に流れる電流を示す模式的断面図。
【
図13】
図12に示す静電型センサにおいて、第一電位の経時変化を示すグラフ。
【
図14】
図12に示す静電型センサとは異なる位置に指が接触したときに、印加電極および計測電極に流れる電流を示す模式的断面図。
【
図15】
図14に示す静電型センサにおいて、第一電位の経時変化を示すグラフ。
【
図16】実施形態1の接触検知装置の動作を示すフローチャート。
【
図17】実施形態2の接触検知装置の構成を示すブロック図。
【
図18】実施形態2の静電型センサに指が接触したときに、印加電極および計測電極に流れる電流を示す模式的断面図。
【
図19】
図18に示す静電型センサとは異なる位置に指が接触したときに、印加電極および計測電極に流れる電流を示す模式的断面図。
【
図20】実施形態3の接触検知装置の構成を示すブロック図。
【
図21】実施形態3の静電型センサに指が接触したときに、印加電極および計測電極に流れる電流を示す模式的断面図。
【
図22】
図21に示す静電型センサにおいて、第一電位の経時変化を示すグラフ。
【
図23】
図21に示す静電型センサとは異なる位置に指が接触したときに、印加電極および計測電極に流れる電流を示す模式的断面図。
【
図24】
図23に示す静電型センサにおいて、第一電位の経時変化を示すグラフ。
【
図25】実施形態4の接触検知装置の構成を示すブロック図。
【
図26】実施形態4の接触検知装置に第一サイクルが実行され、且つ、静電型センサに指が接触したときに、印加電極および計測電極に流れる電流を示す模式的断面図。
【
図27】実施形態4の接触検知装置に第二サイクルが実行され、且つ、静電型センサに指が接触したときに、印加電極および計測電極に流れる電流を示す模式的断面図。
【
図28】実施形態4の接触検知装置の動作を示すフローチャート。
【
図29】実施形態4の第一サイクルを示すフローチャート。
【
図30】実施形態4の第二サイクルを示すフローチャート。
【
図31】実施形態5の静電型センサを示す部分拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
1.ステアリングホイール1の構成
本発明に係る接触検知装置10を車両(図示せず)のステアリングホイール1に適用した実施形態1について説明する。まず、ステアリングホイール1の構造について
図1~
図2を参照して説明する。ステアリングホイール1は、
図1に示すように、円形リング状に形成されたリング部2と、リング部2よりも小さく形成されてリング部2の径方向の内側に配置されるコア部3と、コア部3とリング部2とを接続する複数(本形態では3つ)の接続部4とを備える。ただし、接続部4の個数は特に限定されず、1~2つ、又は4つ以上でもよい。
【0015】
図2に示すように、リング部2は、芯体5、樹脂内層材6、静電型センサ7、及び、表皮材8を備える。芯体5は、リング部2の中心部を構成し、リング部2の形状に対応する形状に形成されている。つまり、芯体5は、円形リング状に形成され、円形状の軸直角断面を有している。ここで、芯体5の軸直角断面形状は、円形状に限られることなく、楕円形状、卵形状、U字状、C字状、多角形状等、任意の形状とすることができる。本形態の芯体5は、アルミニウム、マグネシウム等の金属により形成されており、導電性を有する。芯体5の材質は、金属以外の材料を適用することができる。
【0016】
樹脂内層材6は、芯体5の外面において、芯体5のリング形状の全周に亘って、且つ、芯体5の円断面形状の全周に亘って被覆する。本形態においては、樹脂内層材6の軸直角断面は円形状に形成されている。仮に、芯体5がU字状の軸直角断面を有する場合には、樹脂内層材6は、芯体5の軸直角断面における径方向外側に加えて、芯体5のU字状の凹所にも充填される。樹脂内層材6は、芯体5の外面側に射出成形により成形されており、芯体5の外面に直接的に接合されている。樹脂内層材6の軸直角断面形状は、円形状に限られることなく、卵形状、楕円形状、多角形状等、任意の形状とすることができる。樹脂内層材6は、例えば、発泡ウレタン樹脂を用いる。なお、樹脂内層材6は、非発泡樹脂を用いることもできる。
【0017】
樹脂内層材6の外面には、静電型センサ7が配置されている。静電型センサ7は、静電型センサ7に指または手等の導体(図示せず)が接触すると、静電型センサ7の静電容量相当値が変化するように構成されている。本形態に係る静電型センサ7は、車両のステアリングホイール1に適用されるステアリングホイール用センサである。静電型センサ7については、後に詳述する。
【0018】
表皮材8は、静電型センサ7の外面(静電型センサ7における樹脂内層材6とは反対側の面)において、静電型センサ7の全周に亘って被覆する。つまり、表皮材8は、後述するように、計測電極22が誘電体23の第一面24側に露出している場合には、計測電極22の被覆材としても機能する。表皮材8は、射出成形により成形されており、静電型センサ7の外面側に巻き付けられて静電型センサ7の外面に接合されている。表皮材8は、例えば、ウレタン樹脂により成形されている。表皮材8の外面は、意匠面を構成する。そこで、表皮材8は、非発泡ウレタン樹脂、又は、僅かに発泡させたウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0019】
2.静電型センサの構成
次に、
図3および
図4を参照して、静電型センサ7の構成について説明する。静電型センサ7は、印加電極21と、計測電極22と、誘電体23と、を備える。印加電極21は、後述する電源41から定電圧である入力電圧Vinを印加される。計測電極22は、印加電極21に対向して配置されるとともに電位が計測される。誘電体23は、印加電極と計測電極との間に配置される。印加電極21および計測電極22は、導電性を有するとともに、層状に形成されている。
【0020】
印加電極21は、誘電体23の第一面24に配置されている。印加電極21は、誘電体23よりもやや小さな相似形に形成されている。これにより、誘電体23の第一面24の端縁部は、印加電極21の端縁部から露出している。
【0021】
計測電極22は、誘電体23の第二面25に配置されている。計測電極22は、誘電体23よりもやや小さな相似形に形成されている。これにより、誘電体23の第二面25の端縁部は、計測電極22の端縁部から露出している。
【0022】
図3および
図4に示すように、計測電極22は、計測電極22の厚み方向に貫通する複数の貫通孔26を有する。貫通孔26は、計測電極22の長手方向に並んで配置されている。また、貫通孔26は、計測電極22の長手方向と直交する幅方向に並んで配置されている。貫通孔26の内形状は円形状に形成されている。複数の貫通孔26は同形同大に形成されている。ただし、貫通孔26は、長手方向に並んで配置されていなくてもよいし、幅方向に並んで配置されていなくてもよい。また、複数の貫通孔26の内形状は円形状に限られず、四角形状等の多角形状でもよいし、長円形状でもよく、任意の形状を選択できる。また、複数の貫通孔26は同形同大に限られず、任意の形状または大きさに適宜に形成できる。
【0023】
図3に示すように、本形態では、印加電極21は、誘電体23の第一面24と面一に形成されている。また、計測電極22は、誘電体23の第二面25と面一に形成されている。本形態においては、複数の貫通孔26の内部に誘電体23が充填されている。ただし、印加電極21は誘電体23の第一面24から突出していてもよいし、計測電極22は誘電体23の第二面25から突出していてもよい。
【0024】
誘電体23は、例えばエラストマーを主成分として含んで形成されている。従って、誘電体23は、柔軟である。つまり、誘電体23は、可撓性を有し、かつ、面方向に伸長可能に構成されている。誘電体23は、例えば、熱可塑性材料、特に熱可塑性エラストマーを主成分として含んで形成されている。誘電体23は、熱可塑性エラストマー自身により形成されるようにしても良いし、熱可塑性エラストマーを素材として加熱することによって架橋されたエラストマーを主成分として形成されるようにしても良い。
【0025】
また、誘電体23は、熱可塑性エラストマー以外のゴム、樹脂や他の材料などを含んでいても良い。例えば、誘電体23がエチレン-プロピレンゴム(EPM、EPDM)などのゴムを含む場合には、誘電体23の柔軟性が向上する。誘電体23の柔軟性を向上させるという観点から、誘電体23に可塑剤などの柔軟性付与成分を含有させてもよい。さらに、誘電体23は、反応硬化性エラストマー、熱硬化性エラストマーを主成分として構成されるようにしても良い。
【0026】
さらに、誘電体23は、熱伝導性の良好な材料が好適である。そこで、誘電体23は、熱伝導率の高い熱可塑性エラストマーを用いるようにしても良いし、熱伝導率を高めることができるフィラーを含有させるようにしても良い。
【0027】
印加電極21は、誘電体23の第一面24側に配置されており、計測電極22は、誘電体23の第二面25側に配置されている。印加電極21および計測電極22は、導電性を有する。さらに、印加電極21および計測電極22は、柔軟である。つまり、印加電極21および計測電極22は、可撓性を有し、かつ、面方向に伸長可能に構成されている。
【0028】
印加電極21および計測電極22は、導電性エラストマーにより形成されてもよい。印加電極21および計測電極22が導電性エラストマーにより形成される場合、印加電極21および計測電極22は、エラストマーを母材とし、導電性フィラーを含有させることにより形成されている。印加電極21および計測電極22の母材であるエラストマーは、誘電体23と主成分を同種としてもよいし、異なる材料を用いてもよい。印加電極21および計測電極22と、誘電体23とは、相互の融着(熱融着)によりと接合される。
【0029】
印加電極21および計測電極22は導電布により形成されてもよい。導電布は、導電性繊維により形成された織物または不織布である。ここで、導電性繊維は、柔軟性を有する繊維の表面を導電性材料により被覆することにより形成される。導電性繊維は、例えば、ポリエチレンなどの樹脂繊維の表面に、銅やニッケルなどをメッキすることにより形成される。この場合、印加電極21および計測電極22は、誘電体23自身の融着(熱融着)により誘電体23に接合される。
【0030】
印加電極21および計測電極22は金属箔により形成されてもよい。金属箔は、導通可能な金属材料であればよく、例えば、銅箔、アルミニウム箔などを適用できる。さらに、印加電極21および計測電極22は、導電布である場合と同様に、誘電体23自身の融着(熱融着)によりセンサシートに接合される。
【0031】
印加電極21は、印加電極21を厚み方向に貫通する貫通孔を有していてもよいし、有していなくてもよい。印加電極21が貫通孔を有していない場合、計測電極22が複数の貫通孔26を有することにより、計測電極22の電気抵抗値は、印加電極21の電気抵抗値よりも大きくすることができる。詳細には、長手方向について、計測電極22の単位長さ当たりの電気抵抗値は、印加電極21の単位長さ当たりの電気抵抗値よりも大きい構成とされる。
【0032】
一方、印加電極21が貫通孔を有している場合、計測電極22の貫通孔26の孔径を、印加電極21の貫通孔の孔径よりも大きく形成することにより、計測電極22の電気抵抗値は、印加電極21の電気抵抗値よりも大きくすることができる。
【0033】
3.接触検知装置10の全体構成
図5に示すように、接触検知装置10は、静電型センサ7と、第一入力用スイッチング素子11と、第一ブリッジ用キャパシタ12と、充放電用スイッチング素子13と、制御装置14と、計測器15と、を備える。
【0034】
第一入力用スイッチング素子11は、電源41と印加電極21の間に配置されて、電源41から印加電極21に印加される入力電圧Vinをオンまたはオフする。本形態に係る電源41は、図示しない直流電源に接続された電源ラインである。静電型センサ7は、長手方向に細長い形状に形成されている(
図3および
図4参照)。静電型センサ7は、長手方向の両端に第一端部27と第二端部28と、を有する。印加電極21の長手方向の第一端部27は、電源41に接続されている。
【0035】
第一ブリッジ用キャパシタ12は、計測電極22の長手方向の第一端部27と、グランド電位42との間に直列接続されている。計測電極22の長手方向の第一端部27は、計測電極22の第一計測位置29の一例である。
【0036】
充放電用スイッチング素子13は、計測電極22の第一計測位置29とグランド電位42との間に直列接続されるとともに、第一ブリッジ用キャパシタ12に対して並列接続されている。充放電用スイッチング素子13は、閉状態時に計測電極22の電位をグランド電位42に放電させる。
【0037】
制御装置14は、CPU(図示せず)、RAM(図示せず)、ROM(図示せず)等を備えたマイクロコンピュータである。制御装置14は、第一入力用スイッチング素子11を開状態または閉状態に制御する。また、制御装置14は、充放電用スイッチング素子13を開状態または閉状態に制御する。
【0038】
制御装置14は、第一入力用スイッチング素子11を開状態にし且つ充放電用スイッチング素子13を閉状態にする。これにより制御装置14は、計測電極22の電位をグランド電位42に放電する工程と実行する。制御装置14は、計測電極22の電位をグランド電位42に放電する工程の後に、充放電用スイッチング素子13を開状態にし且つ第一入力用スイッチング素子11を閉状態にする。これにより制御装置14は、静電型センサ7に充電する工程を実行する。
【0039】
計測器15は、静電型センサ7に充電する工程において、計測電極22の第一計測位置29と第一ブリッジ用キャパシタ12との間の第一電位V1を取得する。
【0040】
記憶装置16は、飽和第一電位SV1を格納する。飽和第一電位SV1は、静電型センサ7を充電する工程において静電型センサ7の計測電極22側のすべての表面に導体が接触した状態で、計測電極22の電位が飽和したときの第一電位V1である。
【0041】
4.静電型センサ7
(1)静電型センサ7の静電容量測定方法
次に、制御装置14が実行する充放電用スイッチング素子13の開閉のタイミングと、静電型センサ7の一端側の電位Vinおよび出力電圧Voutの関係について、
図6を参照して説明する。t1~t2において、充放電用スイッチング素子13がON(閉状態)とされる。また、第一入力用スイッチング素子11がグランド電位42側に接続される。従って、静電型センサ7の一端側の電位Vinが、グランド電位42となる。
【0042】
上記動作によって、静電型センサ7の電荷が、充放電用スイッチング素子13を介して、放電される。その結果、静電型センサ7と第一ブリッジ用キャパシタ12との間の電位(出力電圧)Voutが基準状態としてのグランド電位42となる。つまり、上記動作前においては、出力電圧Voutが不定であったが、上記動作によって、出力電圧Voutがグランド電位42に設定される。
【0043】
続いて、t2~t4において、充放電用スイッチング素子13がOFF(開状態)とされ、第一入力用スイッチング素子11が電源41側に接続される。従って、静電型センサ7の一端側の電位Vinが、入力電圧Vinとなる。上記動作によって、静電型センサ7に電荷が充電される。充電が開始された後、所定時間経過後の時刻(ST1、ST2)に、計測器15が出力電圧Voutを計測する。
【0044】
続いて、t4~t5において、充放電用スイッチング素子13はON(閉状態)とされ、第一入力用スイッチング素子11がグランド電位42側に接続される。この動作によって、静電型センサ7の一端側の電位Vinはグランド電位42となり、静電型センサ7の電荷が放電される。すなわち、上記出力電圧Voutがグランド電位42になる。続いて、t5~t9は、上述したt1~t5と同様の動作を繰り返す。
【0045】
上記のとおり、第一ブリッジ用キャパシタ12が静電型センサ7に対して直列接続されており、計測器15が、静電型センサ7の他端側の電位、すなわち静電型センサ7と第一ブリッジ用キャパシタ12との間の電位(出力電圧)Voutに基づいて静電容量相当値を取得している。ここで、単なる2つのキャパシタの中間電位は不定であるため、当該中間電位を用いて計測された静電容量は高精度ではない。
【0046】
しかし、上記の通り、充放電用スイッチング素子13を閉状態にすることで、静電型センサ7の電荷が放電される。すなわち、上記出力電圧(中間電位)Voutが基準状態としてのグランド電位42になる。つまり、充放電用スイッチング素子13を閉状態にすることによって、出力電圧Voutのキャリブレーションを行うことができる。
【0047】
そして、計測器15は、放電された後に、充放電用スイッチング素子13を開状態にし、且つ、静電型センサ7の一端側に入力電圧Vinを印加した状態にされた時に、静電型センサ7の他端側の電位を計測する。つまり、計測器15が計測する電位は、静電型センサ7に応じた電位となる。従って、接触検知装置10は、静電型センサ7を高精度に計測できる。
【0048】
(2)静電型センサ7の時定数τについて
図7に、上記したt2~t3における、静電型センサ7の出力電圧Voutの時間に対する変化を示す。静電型センサ7が充電されるにしたがって出力電圧Voutは上昇し、十分に時間が経過すると、飽和電圧に収束する。
【0049】
図7には、静電型センサ7をRC等価回路と規定した場合における時定数τについて、静電型センサ7に充電を開始してから、τ、2τ(τの2倍)、3τ(τの3倍)、4τ(τの4倍)および5τ(τの5倍)経過したときの静電型センサ7の出力電圧Voutの、飽和電圧に対する百分率が記載されている。静電型センサ7の充電を開始してからτ経過後における、静電型センサ7の出力電圧Voutの、飽和電圧に対する百分率は63.2%であり、2τ経過後は86.5%であり、3τ経過後は95.0%であり、4τ経過後は98,2%であり、5τ経過後は99.3%である。
【0050】
静電型センサ7の出力電圧Voutを測定する際、出力電圧Voutが飽和電圧に収束するまで待ってから測定すると、測定に時間を必要とするので効率が低下する。このため、静電型センサ7の出力電圧Voutを測定する時点は、時定数τの5倍以上とされる。これにより、静電型センサ7の出力電圧Voutを測定する効率を向上させることができる。
【0051】
(3)導体の接触または非接触による静電型センサ7の静電容量変化
次に、本形態の静電型センサ7に指51等の導体が接触すること、または接触しないことにより、静電型センサ7の静電容量がどのように変化するかについて、
図8を参照しつつ説明する。なお、説明の便宜のため、指51の大きさは、誇張して記載してある。
【0052】
図8には、上段に、静電型センサ7と導体である指51との状態が記載されている。
図8の中段には、各状態における静電型センサ7の電気力線30の状態が、静電型センサ7の一部拡大断面図を用いて記載されている。
図8の下段には、各状態における静電型センサ7の静電容量について記載されている。
【0053】
図8の左端の上段には、非接触状態と記載されている。すなわち、導体の一例である指51と静電型センサ7とが接触していない状態について記載されている。
図8の左端の中段には、指51と静電型センサ7とが接触していない状態における電気力線30の状態が記載されている。印加電極21と計測電極22とが対向している領域においては、印加電極21から計測電極22へと電気力線30が記載されている。電気力線30は、計測電極22の貫通孔26から、計測電極22について印加電極21と反対側の領域に漏出している。貫通孔26から漏出した電気力線30のうち、貫通孔26の孔縁部近傍に位置する電気力線30は、計測電極22の貫通孔26の孔縁部に、印加電極21と反対側の領域から回り込んで、計測電極22に向かって流れるようになっている。
【0054】
図8の左端の下段には、非接触状態における静電型センサ7の静電容量が記載されている。非接触状態においては、計測電極22の貫通孔26から電気力線30が漏出しているので、静電型センサ7の静電容量は、計測電極22に貫通孔26が形成されていない場合に比べて小さくなっている。一方、貫通孔26の孔縁部の近傍に位置する電気力線30は、貫通孔26から外部に漏出した後に、計測電極22に戻っている。このため、静電型センサ7の静電容量は、貫通孔26から漏出した電気力線30が計測電極22に戻らない場合に比べて、やや大きくなっている。
【0055】
図8の上段中央には、接近状態と記載されている。すなわち、指51と静電型センサ7とが非接触状態であり、且つ、指51が静電型センサ7の近傍に接近している状態が示されている。
図8の中段中央には、接近状態における電気力線30の状態が記載されている。指51は、静電型センサ7に対して、計測電極22側に位置している。計測電極22の貫通孔26から漏出した電気力線30は、指51に引っ張られる。これにより、貫通孔26の孔縁部の近傍に位置する電気力線30の一部も、指51に引っ張られる。すると、貫通孔26から外部に漏出した後に、計測電極22に戻る電気力線30が減少する。この結果、
図8の下段中央に示すように、接近状態における静電型センサ7の静電容量は、非接触状態における静電型センサ7の静電容量に比べて減少する。
【0056】
図8の右端の上段には、接触状態と記載されている。すなわち、指51と静電型センサ7とが接触状態が示されている。
図8の右端の中央には、接触状態における電気力線30の状態が記載されている。指51は、静電型センサ7の表皮材の表面に接触している。換言すると、指51は、静電型センサ7のうち計測電極22側に接触している。指51は、計測電極22の貫通孔26の上方に位置している。換言すると、指51は、計測電極22の貫通孔26を、表皮材を介して間接的に塞いている。貫通孔26から漏出したすべての電気力線30は指51に引っ張られる。これにより、貫通孔26から外部に漏出した後に、計測電極22に回り込んで戻る電気力線30は存在しない。
【0057】
一方、計測電極22の貫通孔26の孔縁部から、表皮材8の表面に接触する指51に向かって電気力線30が延びている。これにより、
図8の右端の下段に示すように、導体である指51が、擬似的に計測電極22の一部となっている。このため、印加電極21から計測電極22に向かう電気力線30が貫通孔26から漏出しない構成となるので、静電型センサ7の静電容量が増加する。この結果、接触状態における静電型センサ7の静電容量は、貫通孔26から電気力線30が漏出する非接触状態および接近状態の静電型センサ7の静電容量よりも大きくなっている。
【0058】
本形態の静電型センサ7においては、指51等の導体によって間接的に塞がれる貫通孔26の個数が多くなるほど、静電型センサ7の静電容量は大きくなる。また、本形態の静電型センサ7は、指51等の導体が接触した位置に対応する単位面積当たりの静電容量と、指51等の導体が接触していない位置に対応する単位面積当たりの静電容量と、が異なる値となるように構成されている。
【0059】
次に、
図9~
図11を参照しつつ、静電型センサ7への導体の接触面積と、静電型センサ7の静電容量との関係について説明する。なお、説明の便宜のため、指51または手52の大きさは、誇張して記載してある。
【0060】
図9に、複数の貫通孔26が指51で間接的に塞がれた状態の静電型センサ7を示す。
図9においては、5つの貫通孔26から漏出した5本の電気力線30が指51に引き寄せられている。ただし、指51に引き寄せられる電気力線30の本数は限定されない。詳細に図示はしないが、他の貫通孔26から漏出した電気力線30は、各貫通孔26の中央寄りに位置する電気力線30が静電型センサ7の外部に漏出し、各貫通孔26の孔縁部の近傍の電気力線30が計測電極22に戻っている。
【0061】
図10に、複数の貫通孔26が手52の全体で間接的に塞がれた状態の静電型センサ7を示す。
図10においては、20本の電気力線30が手52の全体に引き寄せられている。ただし、手52の全体に引き寄せられる電気力線30の本数は20本に限定されない。他の貫通孔26から漏出した電気力線30については指51の場合と同様である。
【0062】
図11に、静電型センサ7に手52が接触したときの出力電圧VHoutと、静電型センサ7に指51が接触したときの出力電圧VFoutと、静電型センサ7に指51または手52等の導体が接触していないときの出力電圧VNoutと、を示す。
図11において、静電型センサ7の出力電圧VHout,VFout,VNoutは、静電型センサ7の静電容量が飽和した飽和時間Tsにおける出力電圧VHout,VFout,VNoutで比較する。静電型センサ7に指51または手52等の導体が接触していないときは、複数の貫通孔26から電気力線30が外部に漏出するので、静電型センサ7の静電容量は最も低くなり、静電型センサ7の出力電圧VNoutは最も低い。
【0063】
静電型センサ7に指51が接触するときは、複数の貫通孔26のうち指51で間接的に覆われた部分の電気力線30が指51に引き寄せられることにより、静電型センサ7の静電容量が増加し、静電型センサ7の出力電圧VFoutが上昇する。
【0064】
静電型センサ7に手52の全体が接触するときは、指51に比べて多くの貫通孔26を間接的に覆うことができるので、静電型センサ7の静電容量がさらに増加し、静電型センサ7の出力電圧VHoutがさらに上昇する。
【0065】
上記した飽和第一電位SV1は、例えば、静電型センサ7の計測電極22側のすべての表面に導体が接触した状態で、計測電極22の電位が飽和したときの第一電位V1である。このため、
図11には詳細に示さないが、飽和第一電位SV1は、静電型センサ7に手52が接触したときの出力電圧Voutよりもさらに大きい。
【0066】
計測器15は、導体が静電型センサ7に接触したときの第一電位V1の、飽和第一電位SV1に対する比に基づいて、指51等の導体が静電型センサ7に接触した面積を検知することができる。
【0067】
(4)導体の接触位置の検知方法
次に、
図12~
図15を参照して、静電型センサ7に指51に例示される導体が接触した位置の検知方法について説明する。
図12に、指51が、静電型センサ7のうち第一計測位置29に近い位置に接触している状態を示す。この状態で、上記した方法により静電型センサ7を充電すると、静電型センサ7を充電する電流は、印加電極21を矢線Aで示すように流れ、印加電極21と計測電極22とに電荷が充電され、計測電極22のうち指51と厚さ方向に重なる部分から第一計測位置29に、矢線Bで示すように流れる。
【0068】
上記したように、計測電極22の、長手方向について単位長さ当たりの電気抵抗値は、印加電極21の、長手方向の単位長さ当たりの電気抵抗値よりも大きな構成とされている。これにより、計測電極22の第一計測位置29と、指51が静電型センサ7に接触する位置との距離が変化すると、計測電極22のうち、第一計測位置29と、指51に対応する位置との間の電気抵抗値R1が、印加電極21に比べて大きく変化する。このため、計測電極22の第一計測位置29と、指51が静電型センサ7に接触する位置との距離により、静電型センサ7の時定数τが変化する構成となっている。
【0069】
図13に、指51が、静電型センサ7のうち第一計測位置29に近い位置に接触した状態で、静電型センサ7を充電する工程における、静電型センサ7の出力電圧Voutの経時変化を示す。静電型センサ7の出力電圧Voutは、時間とともに増加し、飽和する。静電型センサ7への充電が開始されてから所定時間経過後の第一サンプリング時点ST1における出力電位は、第一電位第一サンプリング値V11とされる。また、第一サンプリング時点ST1から所定時間経過後の第二サンプリング時点ST2における出力電位は第一電位第二サンプリング値V12とされる。
【0070】
第二サンプリング時点ST2は、計測電極22の電位が飽和した時点である。計測電極22の電位が飽和した時点とは、静電型センサ7への充電が開始されてから、計測電極22の電位の変化が所定値よりも小さくなる状態をいう。本形態では、第二サンプリング時点ST2は、時定数τの5倍以上における時点である。
【0071】
第一サンプリング時点ST1は、静電型センサ7が飽和状態になる前の過渡状態における時点である。本形態では、第一サンプリング時点ST1は、時定数τの1~4倍における時点である。
【0072】
本形態では、第一電位第一サンプリング値V11と、第一電位第二サンプリング値V12との比に基づいて、指51等の導体が、静電型センサ7に接触した位置を検知する。以下に詳細に説明する。上記したように、本形態の静電型センサ7は、計測電極22の第一計測位置29と、指51が静電型センサ7に接触する位置との距離により、静電型センサ7の時定数τが変化する構成となっている。このため、計測電極22の第一計測位置29と、指51が静電型センサ7に接触する位置との距離により、第一サンプリング時点ST1における第一電位第一サンプリング値V11が異なる。そこで、第一電位第一サンプリング値V11と、第一電位第二サンプリング値V12との比(V11/V12)を算出することにより、指51等の導体が、静電型センサ7のうち、第一計測点からどれだけ離れた位置で接触したかを検知することができる。
【0073】
図14に、指51が、静電型センサ7のうち第一計測位置29から離れた位置に接触している状態を示す。この状態で、上記した方法により静電型センサ7を充電すると、静電型センサ7を充電する電流は、印加電極21を矢線Cで示すように流れ、印加電極21と計測電極22とに電荷が充電され、計測電極22のうち指51と厚さ方向に重なる部分から第一計測位置29に、矢線Dで示すように流れる。
【0074】
図12と
図14とを比較すると、
図14においては、静電型センサ7のうち、第一計測点と、指51が接触した部分との距離が、
図12に比べて大きくなっている。このため、第一計測位置29から指51が接触した部分における、
図14に記載された計測電極22の電気抵抗値R2は、第一計測位置29から指51が接触した部分における、
図12に記載された計測電極22の電気抵抗値R1に比べて大きくなっている(R2>R1)。この結果、
図15に記載された静電型センサ7の時定数τは、
図13に記載された静電型センサ7の時定数τと比べて変化している。
【0075】
図15に、指51が、静電型センサ7のうち第一計測位置29から離れた位置に接触した状態で、静電型センサ7を充電する工程における、静電型センサ7の出力電圧Voutの経時変化を示す。静電型センサ7の出力電圧Voutは、時間とともに増加し、飽和する。静電型センサ7への充電が開始されてから所定時間経過後の第一サンプリング時点ST1における出力電位は、第一電位第一サンプリング値V11とされる。また、第一サンプリング時点ST1から所定時間経過後の第二サンプリング時点ST2における出力電位は第一電位第二サンプリング値V12とされる。
【0076】
第一計測位置29から離れた位置で指51が静電型センサ7に接触した場合(
図14)は、第一計測位置29に近い位置で指51が静電型センサ7に接触した場合(
図12)に比べて、第一計測位置29から指51までの計測電極22の電気抵抗値R2が大きくなり、時定数τが変化することにより、第一電位第一サンプリング値V11が小さくなっている。このように、本形態によれば、静電型センサ7において、第一計測位置29から指51が接触した距離によって、第一電位第一サンプリング値V11を異ならせることができる。この結果、第一電位第一サンプリング値V11と、第一電位第二サンプリング値V12との比(V11/V12)を算出することにより、指51等の導体が、静電型センサ7のうち、第一計測点からどれだけ離れた位置で接触したかを検知することができる。
【0077】
5.接触検知装置の動作
図16に本形態の接触検知装置の動作に係るフローチャートを示す。接触検知装置が起動されると、計測電極22の電位をグランド電位42に放電する工程(S1)が実行される。S1においては、制御装置14は、第一入力用スイッチング素子11を開状態にするとともに、充放電用スイッチング素子13を閉状態にする。これにより、印加電極21に入力電圧Vinが印加されていない状態で、計測電極22の電位がグランド電位42に放電される。
【0078】
所定の時間が経過して、計測電極22の電位がグランド電位42に放電された後、静電型センサ7を充電する工程(S2)が実行される。S2においては、制御装置14は、充放電用スイッチング素子13を開状態にするとともに、第一入力用スイッチング素子11を閉状態にする。これにより、静電型センサ7が充電される。
【0079】
静電型センサ7を充電する工程(S2)が実行されて、静電型センサ7が完全に充電されるまでの間に、計測器15は、静電型センサ7への充電が開始されてから所定時間経過後の第一サンプリング時点ST1において第一電位サンプリング値を計測し(S3)、第一サンプリング時点ST1から所定時間経過後の第二サンプリング時点ST2において第一電に第二サンプリング値を計測する(S4)。
【0080】
計測器15は、第一電位第二サンプリング値V12に対する第一電位第一サンプリング値V11の比に基づいて、導体が静電型センサ7に接触した位置を検知する(S5)。
【0081】
計測器15は、第一電位第二サンプリング値V12に基づいて、導体が静電型センサ7に接触した面積を検知する(S6)。
【0082】
以上により、接触検知装置10の動作が終了する。
【0083】
6.本形態の作用効果
次に、本形態の作用効果について説明する。本形態の接触検知装置10は、静電型センサ7と、第一ブリッジ用キャパシタ12と、充放電用スイッチング素子13と、制御装置14と、計測器15と、を備える。
【0084】
静電型センサ7は、電源41から定電圧である入力電圧Vinを印加される印加電極21と、印加電極21に対向して配置されるとともに電位が計測される計測電極22と、印加電極21と計測電極22との間に配置される誘電体23と、を備え、導体が接触したことを検知する。
【0085】
第一ブリッジ用キャパシタ12は、計測電極22の第一計測位置29とグランド電位42との間に直列接続される。充放電用スイッチング素子13は、計測電極22とグランド電位42との間に直列接続されるとともに、第一ブリッジ用キャパシタ12に対して並列接続され、閉状態時に計測電極22の電位をグランド電位42に放電させる。
【0086】
制御装置14は、入力電圧Vinを印加電極21に印加していない状態にし且つ充放電用スイッチング素子13を閉状態にすることで、計測電極22の電位をグランド電位42に放電する工程を実行する。制御装置14は、放電する工程の後に、充放電用スイッチング素子13を開状態にし且つ入力電圧Vinを印加電極21に印加する状態にすることで、静電型センサ7に充電する工程を実行する。
【0087】
計測器15は、静電型センサ7に充電する工程において、計測電極22の第一計測位置29と第一ブリッジ用キャパシタ12との間の第一電位V1を取得する。
【0088】
静電型センサ7は、導体が接触した面積及び導体との距離の少なくとも一方に応じて静電容量が変化するように構成され、かつ、第一計測位置29からの距離に応じた電気抵抗により時定数が変化するように構成される。
【0089】
計測器15は、第一電位第一サンプリング値V11と、第一電位第二サンプリング値V12と、に基づいて、導体が静電型センサ7に接触した位置を検知する。第一電位第一サンプリング値V11は、静電型センサ7に充電する工程における、静電型センサ7への充電が開始されてから所定時間経過後の第一サンプリング時点ST1に取得される第一電位V1である。第一電位第二サンプリング値V12は、第一サンプリング時点ST1から所定時間経過後の第二サンプリング時点ST2に取得される第一電位V1である。
【0090】
本形態によれば、1つの計測器15という簡易な構成により、導体が静電型センサ7に接触した位置を検知することができる。
【0091】
また、本形態によれば、第一サンプリング時点ST1は、静電型センサ7への充電が開始されてから所定の第一時間経過後であって、計測電極22の電位の変化が飽和状態になる前までの過渡状態における時点である。また、第二サンプリング時点ST2は、第一サンプリング時点ST1よりも後であって、静電型センサ7への充電が開始されてから所定の第二時間経過後の時点である。過渡状態である第一サンプリング時点ST1に取得された第一電位第一サンプリング値V11と、第一サンプリング時点ST1よりも後である第二サンプリング時点ST2に取得された第一電位第二サンプリング値V12とに基づくことにより、導体が静電型センサ7に接触した位置を精度よく検知することができる。
【0092】
本形態によれば、計測器15は、第一電位第二サンプリング値V12に対する第一電位第一サンプリング値V11の比に基づいて、導体が静電型センサ7に接触した位置を検知する。
【0093】
本形態によれば、静電型センサ7は、長手方向に細長い形状に形成され、長手方向の両端に第一端部27と第二端部28とを有している。第一ブリッジ用キャパシタ12は、計測電極22の第一計測位置29である長手方向の第一端部27とグランド電位42との間に接続されている。印加電極21の長手方向の第一端部27は、電源41に接続されている。静電型センサ7の第一端部27に、第一ブリッジ用キャパシタ12と、電源41とが接続されているので、静電型センサ7の第一端部27から、第一ブリッジ用キャパシタ12および電源41に接続されるリード線(図示せず)が導出される。これにより、静電型センサ7をステアリングホイール1に取付けたときに、リード線の配策を容易にすることができる。
【0094】
本形態によれば、計測電極22および印加電極21は、導電性エラストマーからなる。これにより、静電型センサ7は可撓性を有するので、ステアリングホイール1の形状に沿わせて取り付けることが容易になる。
【0095】
本形態の計測電極22は、複数の貫通孔26を有する。これにより、貫通孔26から電気力線30を静電型センサ7の外部に漏出させることができる。この結果、導体が貫通孔26を塞ぐ位置において静電型センサ7に接触することにより、貫通孔26からの電気力線30の漏出を抑制することができる。これにより、導体が静電型センサ7に接触したときに静電型センサ7の静電容量を増加させることができるので、静電型センサ7への導体の接触を容易に検知することができる。
【0096】
本形態の静電型センサ7は、静電型センサ7と、第一ブリッジ用キャパシタ12と、充放電用スイッチング素子13と、制御装置14と、計測器15と、を備える。
【0097】
静電型センサ7は、電源41から定電圧である入力電圧Vinを印加される印加電極21と、印加電極21に対向して配置されるとともに電位が計測される計測電極22と、印加電極21と計測電極22との間に配置される誘電体と、を備え、導体が計測電極22側に接触したことを検知する。
【0098】
第一ブリッジ用キャパシタ12は、計測電極22の第一計測位置29とグランド電位42との間に直列接続される。充放電用スイッチング素子13は、計測電極22とグランド電位42との間に直列接続されるとともに、第一ブリッジ用キャパシタ12に対して並列接続され、閉状態時に計測電極22の電位をグランド電位42に放電させる。
【0099】
制御装置14は、入力電圧Vinを印加電極21に印加していない状態にし且つ充放電用スイッチング素子13を閉状態にすることで、計測電極22の電位をグランド電位42に放電する工程を実行する。制御装置14は、放電する工程の後に、充放電用スイッチング素子13を開状態にし且つ入力電圧Vinを印加電極21に印加する状態にすることで、静電型センサ7に充電する工程を実行する。
【0100】
計測器15は、静電型センサ7に充電する工程において、計測電極22の第一計測位置29と第一ブリッジ用キャパシタ12との間の第一電位V1を取得する。
【0101】
静電型センサ7は、面積及び導体との距離の少なくとも一方に応じて静電容量が変化するように構成され、かつ、第一計測位置29からの距離に応じた電気抵抗により時定数が変化するように構成されている。
【0102】
計測器15は、第一電位第二サンプリング値V12に基づいて、導体が静電型センサ7に接触した面積を検知する。第一電位第二サンプリング値V12は、静電型センサ7に充電する工程において、静電型センサ7への充電が開始されてから所定の第一時間経過後であって、計測電極22の電位の変化が飽和状態になる前までの過渡状態となる第一時点よりも後であって、静電型センサ7への充電が開始されてから所定の第二時間経過後である第二時点で取得された第一電位V1である。
【0103】
本形態によれば、1つの計測器15という簡易な構成により、導体が静電型センサ7に接触した面積を検知することができる。
【0104】
(実施形態2)
次に、
図17を参照して、実施形態2の接触検知装置60について説明する。
図17に示すように、本形態の接触検知装置60においては、印加電極21の長手方向の第二端部28は電源41に接続されている。上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0105】
図18に、指51が、静電型センサ7のうち第一計測位置29に近い位置に接触している状態を示す。この状態で、上記した方法により静電型センサ7を充電すると、静電型センサ7を充電する電流は、印加電極21を矢線Eで示すように流れ、印加電極21と計測電極22とに電荷が充電され、計測電極22のうち指51と厚さ方向に重なる部分から第一計測位置29に、矢線Fで示すように流れる。
【0106】
指51が、静電型センサ7のうち第一計測位置29に近い位置に接触している状態における計測電極22の出力電位は、実施形態1の
図13に示したグラフと同じなので、重複する説明を省略する。
【0107】
図19に、指51が、静電型センサ7のうち第一計測位置29から離れた位置に接触している状態を示す。この状態で、上記した方法により静電型センサ7を充電すると、静電型センサ7を充電する電流は、印加電極21を矢線でG示すように流れ、印加電極21と計測電極22とに電荷が充電され、計測電極22のうち指51と厚さ方向に重なる部分から第一計測位置29に、矢線Hで示すように流れる。
【0108】
指51が、静電型センサ7のうち第一計測位置29から離れた位置に接触している状態における計測電極22の出力電位は、実施形態1の
図15に示したグラフと同じなので、重複する説明を省略する。
【0109】
本形態によれば、静電型センサ7は、長手方向に細長い形状に形成され、長手方向の両端に第一端部27と第二端部28とを有しており、第一ブリッジ用キャパシタ12は、計測電極22の第一計測位置29である長手方向の第一端部27とグランド電位42との間に接続されており、印加電極21の長手方向の第二端部28は、電源41に接続されている。
【0110】
本形態によれば、電源41と、第一ブリッジ用キャパシタ12とを、静電型センサ7の異なる端部に接続することができる。これにより、静電型センサ7の同じ端部からリード線を導出することが困難な場合にも、本発明を適用することができる。
【0111】
(実施形態3)
次に、
図20を参照して、実施形態3の接触検知装置70について説明する。
図20に示すように、本形態の接触検知装置70の静電型センサ7の第二端部28には、グランド電位42との間に第二ブリッジ用キャパシタ17が直列接続されている。計測器15は、静電型センサ7を充電する工程において、計測電極22の第二端部28と第二ブリッジ用キャパシタ17との間の第二電位Vout2を取得する構成とされる。本形態においては、計測電極22の第二端部28は第二計測位置31とされる。計測電極22は、第二計測位置31からの距離に応じて電気抵抗が変化するように構成されている。
【0112】
計測器15は、静電型センサ7を充電する工程において、第一電位第一サンプリング値V11と、第二電位第一サンプリング値V21と、第一電位第二サンプリング値V12と、第二電位第二サンプリング値V22と、に基づいて、導体が静電型センサ7に接触した位置を検知する。第二電位第一サンプリング値V21は、第一サンプリング時点ST1において取得する第二電位Vout2である。第二電位第二サンプリング値V22は、第二サンプリング時点ST2に取得する第二電位V2である。
【0113】
図21に、指51が、静電型センサ7のうち第一計測位置29に近い位置に接触している状態を示す。この状態で、上記した方法により静電型センサ7を充電すると、静電型センサ7を充電する電流は、印加電極21を矢線Iで示すように流れ、印加電極21と計測電極22とに電荷が充電され、計測電極22のうち指51と厚さ方向に重なる部分から第一計測位置29に、矢線Jで示すように流れる。また、静電型センサ7を充電する電流は、矢線Kで示すように、計測電極22のうち指51と厚さ方向に重なる部分から第二計測位置31に流れる。
【0114】
図21に示すように、第一計測位置29と、指51が静電型センサ7に接触した位置との距離は、第二計測位置31と、指51が静電型センサ7に接触した位置との距離よりも短い。このため、第一計測位置29と指51との間における計測電極22の電気抵抗値R3は、第二計測位置31と指51との間における計測電極22の電気抵抗値R4よりも小さい(R3<R4)。このため、静電型センサ7において、第一電位V1に係る時定数τは、第二電位V2に係る時定数τと異なっている。
【0115】
図22には、第一電位Vout1および第二電位Vout2の経時変化を示す。第一電位Vout1が実線で示されており、第二電位Vout2が一点鎖線で示されている。第一電位Vout1に係る時定数τと、第二電位Vout2に係る時定数τが異なっているので、第一電位Vout1の経時変化よりも、第二電位Vout2の経時変化の方が緩やかになっている。
【0116】
計測器15は、第一電位第一サンプリング値V11と、第一電位第二サンプリング値とV12を取得し、第一電位第二サンプリング値V12に対する第一電位第一サンプリング値V11の比(V11/V12)を算出する。計測器15は、この比に基づいて、第一計測位置29と、指51が静電型センサ7に接触した位置との距離を算出する。
【0117】
計測器15は、第二電位第一サンプリング値V21と、第二電位第二サンプリング値V22とを取得し、第二電位第二サンプリング値V22に対する第二電位第一サンプリング値V21の比(V21/V22)を算出する。計測器15は、この比に基づいて、第二計測位置31と、指51が静電型センサ7に接触した位置との距離を算出する。
【0118】
計測器15は、第一計測位置29と、指51が静電型センサ7に接触した位置との距離と、第二計測位置31と、指51が静電型センサ7に接触した位置との距離とに基づいて、指51が、静電型センサ7に接触した位置を検知する。本形態によれば、計測器15は、第一電位Vout1に係る第一電位第一サンプリング値V11および第一電位第二サンプリング値V12と、第二電位Vout2に係る第二電位第一サンプリング値V21および第二電位第二サンプリング値V22と、に基づいて、指51が、静電型センサ7に接触した位置を検知することができるので、接触検知装置70の精度を向上させることができる。
【0119】
図23に、指51が、静電型センサ7のうち第一計測位置29から遠い位置に接触している状態を示す。この状態で、上記した方法により静電型センサ7を充電すると、静電型センサ7を充電する電流は、印加電極21を矢線Lで示すように流れ、印加電極21と計測電極22とに電荷が充電され、計測電極22のうち指51と厚さ方向に重なる部分から第一計測位置29に、矢線Mで示すように流れる。また、静電型センサ7を充電する電流は、矢線Nで示すように、計測電極22のうち指51と厚さ方向に重なる部分から第二計測位置31に流れる。
【0120】
図23に示すように、第一計測位置29と、指51が静電型センサ7に接触した位置との距離は、第二計測位置31と、指51が静電型センサ7に接触した位置との距離よりも長い。このため、第一計測位置29と指51との間における計測電極22の電気抵抗値は、第二計測位置31と指51との間における計測電極22の電気抵抗値よりも大きい。このため、静電型センサ7において、第一電位V1に係る時定数τは、第二電位V2に係る時定数τと異なっている。
【0121】
図24には、第一電位V1および第二電位V2の経時変化を示す。第一電位V1を実線が実線で示されており、第二電位V2が一点鎖線で示されている。第一電位V1に係る時定数τと、第二電位V2に係る時定数τが異なっているので、第二電位V2の経時変化よりも、第一電位V1の経時変化の方が緩やかになっている。
【0122】
指51が、静電型センサ7のうち第一計測位置29に近い位置に接触した場合と同様に、計測器15は、第一電位V1に係る第一電位第一サンプリング値V11および第一電位第二サンプリング値V12と、第二電位V2に係る第二電位第一サンプリング値V21および第二電位第二サンプリング値V22と、に基づいて、指51が、静電型センサ7に接触した位置を検知することができる。これにより、接触検知装置70の精度を向上させることができる。
【0123】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0124】
本形態によれば、印加電極21と計測電極22は、単位長さ当たりの電気抵抗が異なる。また、計測電極22の単位長さ当たりの電気抵抗は、印加電極21の単位長さ当たりの電気抵抗値よりも大きい。これにより、計測電極22の第一端部27から取得された第一電位V1と、第二端部28から取得された第二電位V2とを、異ならせることができるので、導体の接触位置を検知する精度を向上させることができる。
【0125】
(実施形態4)
次に、
図25を参照して実施形態4について説明する。
図25に示すように、本形態の接触検知装置80においては、印加電極21の第二端部28と、電源41との間に第二入力用スイッチング素子18が接続されている。第二入力用スイッチング素子18は、電源41から印加電極21の第二端部28に印加される入力電圧Vinをオンまたはオフする。第二入力用スイッチング素子18は、第一入力用スイッチング素子11と並列接続されている。
【0126】
制御装置14は、第二入力用スイッチング素子18を閉状態または開状態に制御する。制御装置14は、第一入力用スイッチング素子11および第二入力用スイッチング素子18を開状態にし、且つ充放電用スイッチング素子13を閉状態にすることで、計測電極22の電位をグランド電位42に放電する工程と実行する。制御装置14は、計測電極22の電位をグランド電位42に放電する工程の後に、充放電用スイッチング素子13を開状態にし、且つ第一入力用スイッチング素子11を閉状態にし、且つ第二入力用スイッチング素子18を開状態にすることで、静電型センサ7の第一端部27から静電型センサ7を充電する工程を実行する。また、制御装置14は、計測電極22の電位をグランド電位42に放電する工程の後に、充放電用スイッチング素子13を開状態にし、且つ第一入力用スイッチング素子11を開状態にし、且つ第二入力用スイッチング素子18を閉状態にすることで、静電型センサ7の第二端部28から静電型センサ7を充電する工程を実行する。
【0127】
図26に、指51が、静電型センサ7のうち第一計測位置29に近い位置に接触している状態を示す。この状態で、第一端部27から静電型センサ7を充電すると、静電型センサ7を充電する電流は、印加電極21を矢線Oで示すように流れ、印加電極21と計測電極22とに電荷が充電され、計測電極22のうち指51と厚さ方向に重なる部分から第一計測位置29に、矢線Pで示すように流れる。また、静電型センサ7を充電する電流は、矢線Qで示すように、計測電極22のうち指51と厚さ方向に重なる部分から第二計測位置31に流れる。
【0128】
図27に、指51が、静電型センサ7のうち第一計測位置29に近い位置に接触している状態を示す。この状態で、第二端部28から静電型センサ7を充電すると、静電型センサ7を充電する電流は、印加電極21を矢線Rで示すように流れ、印加電極21と計測電極22とに電荷が充電され、計測電極22のうち指51と厚さ方向に重なる部分から第一計測位置29に、矢線Sで示すように流れる。また、静電型センサ7を充電する電流は、矢線Tで示すように、計測電極22のうち指51と厚さ方向に重なる部分から第二計測位置31に流れる。
【0129】
次に、
図28を参照して、本形態の接触検知装置80の動作について説明する。
図28に、本形態の接触検知装置80のメインフローに係るフローチャートを示す。接触検知装置80が起動されると、第一サイクルが実行される(S10)。次に、第二サイクルが実行される(S20)。次に、第一サイクルで得られた結果と、第二サイクルで得られた結果とに基づいて、指51等の導体が静電型センサ7に接触した位置と、指51等の導体が静電型センサ7に接触した面積と、を検知する(S30)。以上により、接触検知装置80の動作が終了する。
【0130】
図29に、第一サイクルのフローチャートを示す。第一サイクルが実行されると(S10)、制御装置14は、第二入力用スイッチング素子18を開状態にする。制御装置14は、第一入力用スイッチング素子11を開状態にするとともに、充放電用スイッチング素子13を閉状態にする。これにより、印加電極21に入力電圧Vinが印加されていない状態で、計測電極22の電位がグランド電位42に放電される(S11)。
【0131】
所定の時間が経過して、計測電極22の電位がグランド電位42に放電された後、静電型センサ7を充電する工程(S12)が実行される。S12においては、制御装置14は、充放電用スイッチング素子13を開状態にするとともに、第一入力用スイッチング素子11を閉状態にする。これにより、静電型センサ7の第一端部27から静電型センサ7が充電される。
【0132】
静電型センサ7を充電する工程(S12)が実行されて、静電型センサ7が完全に充電されるまでの間に、計測器15は、静電型センサ7への充電が開始されてから所定時間経過後の第一サンプリング時点ST1において第一電位第一サンプリング値V11を計測して取得し、第一サンプリング時点ST1から所定時間経過後の第二サンプリング時点ST2において第一電位第二サンプリング値V12を計測して取得する(S13)。
【0133】
計測器15は、第一電位第二サンプリング値V12に対する第一電位第一サンプリング値V11の比に基づいて、導体が静電型センサ7に接触した位置を検知する(S14)。ただし、計測器15は、第二電位第二サンプリング値V22に対する第二電位第一サンプリング値V21の比に基づいて、導体が静電型センサ7に接触した位置を検知してもよい。
【0134】
計測器15は、第一電位第二サンプリング値V12に基づいて、導体が静電型センサ7に接触した面積を検知する(S15)。ただし、計測器15は、第二電位第二サンプリング値V22に基づいて、導体が静電型センサ7に接触した面積を検知してもよい。
【0135】
以上により、第一サイクル(S10)が終了する。
【0136】
次に、
図30に第二サイクルのフローチャートを示す。第二サイクルが実行されると(S20)、制御装置14は、第一入力用スイッチング素子11を開状態にする。制御装置14は、第二入力用スイッチング素子18を開状態にするとともに、充放電用スイッチング素子13を閉状態にする。これにより、印加電極21に入力電圧Vinが印加されていない状態で、計測電極22の電位がグランド電位42に放電される(S21)。
【0137】
所定の時間が経過して、計測電極22の電位がグランド電位42に放電された後、静電型センサ7を充電する工程(S21)が実行される。S21においては、制御装置14は、充放電用スイッチング素子13を開状態にするとともに、第二入力用スイッチング素子18を閉状態にする。これにより、静電型センサ7の第二端部28から静電型センサ7が充電される。
【0138】
静電型センサ7を充電する工程(S21)が実行されて、静電型センサ7が完全に充電されるまでの間に、計測器15は、静電型センサ7への充電が開始されてから所定時間経過後の第一サンプリング時点ST1において第二電位第一サンプリング値V21を計測して取得し、第一サンプリング時点ST1から所定時間経過後の第二サンプリング時点ST2において第二電位第二サンプリング値V22を計測して取得する(S23)。
【0139】
計測器15は、第二電位第二サンプリング値V22に対する第二電位第一サンプリング値V21の比に基づいて、導体が静電型センサ7に接触した位置を検知する(S24)。ただし、計測器15は、第一電位第二サンプリング値V12に対する第一電位第一サンプリング値V11の比に基づいて、導体が静電型センサ7に接触した位置を検知してもよい。
【0140】
計測器15は、第二電位第二サンプリング値V22に基づいて、導体が静電型センサ7に接触した面積を検知する(S25)。ただし、計測器15は、第一電位第二サンプリング値V12に基づいて、導体が静電型センサ7に接触した面積を検知してもよい。
【0141】
以上により、第二サイクル(S20)が終了する。
【0142】
上記以外の構成については、実施形態3と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0143】
本形態によれば、制御装置14は、計測器15が第一電位V1を取得するために、放電する工程、および、放電する工程に続く充電する工程を含む第一サイクルを実行し、第一サイクルの後に、計測器15が第二電位V2を取得するために、放電する工程、および、放電する工程に続く充電する工程を含む第二サイクルを実行する。
【0144】
これにより、第一サイクルで得られた結果および第二サイクルで得られた結果に基づいて、導体が静電型センサ7に接触した位置を検出することができるので、接触検知装置80の精度を向上させることができる。また、第一サイクルで得られた結果および第二サイクルで得られた結果に基づいて、導体が静電型センサ7に接触した面積を検出することができるので、接触検知装置80の精度を向上させることができる。
【0145】
(実施形態5)
次に、
図31を参照して、実施形態5を説明する。実施形態5に係る静電型センサ7Aの計測電極22Aは、印加電極21と同形同大である。本形態の計測電極22Aは、貫通孔26を有しない点で実施形態1と異なる。上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0146】
静電型センサ7Aの計測電極22A側に指51等の導体が接触すると、計測電極22Aと、指51等の導体との間に表皮材8が介された一種のコンデンサが形成される。これにより、静電型センサ7Aの静電容量が変化する。この静電容量の変化に伴って、静電型センサ7Aに充電されるので、上記した実施形態1と同様にして、指51が静電型センサ7Aに接触した位置、および指51が静電型センサ7Aに接触した面積を検知することができる。
【0147】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において下記の態様を含む。
【0148】
(1)電源から定電圧である入力電圧を印加される印加電極と、前記印加電極に対向して配置されるとともに電位が計測される計測電極と、前記印加電極と前記計測電極との間に配置される誘電体と、を備え、導体が前記計測電極側に接触したことを検知するための静電型センサと、
前記計測電極の第一計測位置とグランド電位との間に直列接続される第一ブリッジ用キャパシタと、
前記計測電極と前記グランド電位との間に直列接続されるとともに、前記第一ブリッジ用キャパシタに対して並列接続され、閉状態時に前記計測電極の電位をグランド電位に放電させる充放電用スイッチング素子と、
前記入力電圧を前記印加電極に印加していない状態にし且つ前記充放電用スイッチング素子を閉状態にすることで、前記計測電極の電位をグランド電位に放電する工程と、前記放電する工程の後に、前記充放電用スイッチング素子を開状態にし且つ前記入力電圧を前記印加電極に印加する状態にすることで、前記静電型センサに充電する工程とを実行する制御装置と、
前記充電する工程において、前記計測電極の前記第一計測位置と前記第一ブリッジ用キャパシタとの間の第一電位を取得する計測器と、
を備える接触検知装置であって、
前記静電型センサは、前記導体が接触した位置に対応する単位面積当たりの静電容量と、前記導体が接触していない位置に対応する単位面積当たりの静電容量と、が異なる値となるように構成され、
前記計測電極は、前記第一計測位置からの距離に応じて電気抵抗が変化するように構成され、
前記計測器は、
前記充電する工程における、前記静電型センサへの充電が開始されてから所定時間経過後の第一サンプリング時点に取得した前記第一電位である第一電位第一サンプリング値と、前記第一サンプリング時点から所定時間経過後の第二サンプリング時点に取得した前記第一電位である第一電位第二サンプリング値と、に基づいて、前記導体が前記静電型センサに接触した位置を検知する、接触検知装置。
【0149】
(2)前記第一サンプリング時点は、前記静電型センサへの充電が開始されてから、前記計測電極の電位の変化が所定値よりも小さくなる飽和状態になる前までの過渡状態における時点であり、
前記第二サンプリング時点は、前記第一サンプリング時点よりも後であって、前記計測電極の電位が飽和した時点である、上記(1)に記載の接触検知装置。
【0150】
(3)前記計測器は、前記第一電位第二サンプリング値に対する前記第一電位第一サンプリング値の比に基づいて、前記導体が前記静電型センサに接触した位置を検知する、上記(2)に記載の接触検知装置。
【0151】
(4)前記第一サンプリング時点は、前記静電型センサをRC等価回路と規定した場合における時定数τの1~4倍における時点であり、前記第二サンプリング時点は、前記時定数τの5倍以上における時点である、上記(2)に記載の接触検知装置。
【0152】
(5)前記計測器は、さらに、
前記充電する工程における前記第一電位第二サンプリング値に基づいて、前記導体が前記静電型センサに接触した面積を検知する、上記(2)に記載の接触検知装置。
【0153】
(6)さらに、
前記充電する工程において前記静電型センサの前記計測電極側のすべての表面に前記導体が接触した状態で、前記計測電極の電位が飽和したときの前記第一電位である飽和第一電位が格納された記憶装置、を備え、
前記計測器は、
前記充電する工程における前記第一電位第二サンプリング値と、前記飽和第一電位とに基づいて、前記導体が前記静電型センサに接触した面積を検知する、上記(5)に記載の接触検知装置。
【0154】
(7)前記静電型センサは、長手方向に細長い形状に形成され、前記長手方向の両端に第一端部と第二端部とを有しており、
前記第一ブリッジ用キャパシタは、前記計測電極の前記第一計測位置である前記長手方向の前記第一端部と前記グランド電位との間に接続されており、
前記印加電極の前記長手方向の前記第一端部は、前記電源に接続されている、上記(1)~(6)のいずれか1つに記載の接触検知装置。
【0155】
(8)前記静電型センサは、長手方向に細長い形状に形成され、前記長手方向の両端に第一端部と第二端部とを有しており、
前記第一ブリッジ用キャパシタは、前記計測電極の前記第一計測位置である前記長手方向の前記第一端部と前記グランド電位との間に接続されており、
前記印加電極の前記長手方向の前記第二端部は、前記電源に接続されている、上記(1)~(6)のいずれか1つに記載の接触検知装置。
【0156】
(9)前記静電型センサは、長手方向に細長い形状に形成され、前記長手方向の両端に第一端部と第二端部とを有しており、
前記第一ブリッジ用キャパシタは、前記計測電極の前記第一計測位置である前記長手方向の前記第一端部と前記グランド電位との間に接続されており、
さらに、
前記計測電極の第二計測位置である前記長手方向の前記第二端部と前記グランド電位との間に直列接続される第二ブリッジ用キャパシタ、を備え、
前記計測電極は、前記第一計測位置からの距離に応じて電気抵抗が変化するように構成され、且つ、前記第二計測位置からの距離に応じて電気抵抗が変化するように構成され、
前記計測器は、
前記充電する工程において、前記計測電極の前記第二計測位置と前記第二ブリッジ用キャパシタとの間の第二電位を取得し、
前記充電する工程における、前記第一電位第一サンプリング値と、前記第一サンプリング時点において取得する前記第二電位である第二電位第一サンプリング値と、前記第一電位第二サンプリング値と、前記第二サンプリング時点に取得する前記第二電位である第二電位第二サンプリング値と、に基づいて、前記導体が前記静電型センサに接触した位置を検知する、上記(1)~(6)のいずれか1つに記載の接触検知装置。
【0157】
(10)前記第一サンプリング時点は、前記静電型センサへの充電が開始されてから、前記計測電極の電位の変化が所定値よりも小さくなる飽和状態になる前までの過渡状態における時点であり、
前記第二サンプリング時点は、前記第一サンプリング時点よりも後であって、前記計測電極の電位が飽和した時点であり、
前記計測器は、さらに、
前記充電する工程において、前記第一電位第二サンプリング値および前記第二電位第二サンプリング値に基づいて、前記導体が前記静電型センサに接触した面積を検知する、上記(9)に記載の接触検知装置。
【0158】
(11)前記制御装置は、
前記計測器が前記第一電位を取得するために、前記放電する工程、および、前記放電する工程に続く前記充電する工程を含む第一サイクルを実行し、
前記第一サイクルの後に、前記計測器が前記第二電位を取得するために、前記放電する工程、および、前記放電する工程に続く前記充電する工程を含む第二サイクルを実行する、上記(9)に記載の接触検知装置。
【0159】
(12)前記計測電極および前記印加電極は、導電性エラストマーからなる、上記(1)~(6)のいずれか1項に記載の接触検知装置。
【0160】
(13)前記印加電極と前記計測電極は、単位長さ当たりの電気抵抗が異なる、上記(12)に記載の接触検知装置。
【0161】
(14)前記計測電極の単位長さ当たりの電気抵抗は、前記印加電極の単位長さ当たりの電気抵抗よりも大きい、上記(13)に記載の接触検知装置。
【0162】
(15)前記計測電極は、複数の貫通孔を有する、上記(14)に記載の接触検知装置。
【0163】
(16)電源から定電圧である入力電圧を印加される印加電極と、前記印加電極に対向して配置されるとともに電位が計測される計測電極と、前記印加電極と前記計測電極との間に配置される誘電体と、を備え、導体が前記計測電極側に接触したことを検知するための静電型センサと、
前記計測電極の第一計測位置とグランド電位との間に直列接続される第一ブリッジ用キャパシタと、
前記計測電極と前記グランド電位との間に直列接続されるとともに、前記第一ブリッジ用キャパシタに対して並列接続され、閉状態時に前記計測電極の電位をグランド電位に放電させる充放電用スイッチング素子と、
前記入力電圧を前記印加電極に印加していない状態にし且つ前記充放電用スイッチング素子を閉状態にすることで、前記計測電極の電位をグランド電位に放電する工程と、前記放電する工程の後に、前記充放電用スイッチング素子を開状態にし且つ前記入力電圧を前記印加電極に印加する状態にすることで、前記静電型センサに充電する工程とを実行する制御装置と、
前記充電する工程において、前記計測電極の前記第一計測位置と前記第一ブリッジ用キャパシタとの間の第一電位を取得する計測器と、
を備える接触検知装置であって、
前記静電型センサは、前記導体が接触した位置に対応する単位面積当たりの静電容量と、前記導体が接触していない位置に対応する単位面積当たりの静電容量と、が異なる値となるように構成され、
前記計測電極は、前記第一計測位置からの距離に応じて電気抵抗が変化するように構成され、
前記計測器は、
前記充電する工程における、前記計測電極の電位が所定値よりも小さくなる飽和した時点で取得した前記第一電位である第一電位飽和サンプリング値に基づいて、前記導体が前記静電型センサに接触した面積を検知する、接触検知装置。
【符号の説明】
【0164】
7,7A 静電型センサ、10、60,70,80 接触検知装置、11 第一入力用スイッチング素子、12 第一ブリッジ用キャパシタ、13 充放電用スイッチング素子、14 制御装置、15 計測器、16 記憶装置、17 第二ブリッジ用キャパシタ、18 第二入力用スイッチング素子、21 印加電極、22,22A 計測電極、23 誘電体、26 貫通孔、27 第一端部、28 第二端部、29 第一計測位置、31 第二計測位置、42 グランド電位、51 指(導体)52 手(導体)、ST1 第一サンプリング時点、ST2 第二サンプリング時点、SV1 飽和第一電位、Ts 飽和時間、V1 第一電位、V2 第二電位、V11 第一電位第一サンプリング値、V12 第一電位第二サンプリング値、V21 第二電位第一サンプリング値、V22 第二電位第二サンプリング値、Vin 入力電圧、Vout 出力電圧、τ 時定数